説明

α−ジフルオロハロメチルカルボニル化合物の製造法

【課題】 α−ジフルオロヨードメチルカルボニル化合物等のα−ジフルオロハロメチルカルボニル化合物を簡易に且つ効率よく製造する方法を提供する。
【解決手段】 本発明のα−ジフルオロハロメチルカルボニル化合物の製造法は、カルボニル化合物に、アルカリ金属化合物からなる塩基の存在下、CF3X(式中、Xはハロゲン原子を示す)を反応させて、カルボニル基のα位にCF2X基(式中、Xは前記に同じ)を導入することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬、農薬、その他の精密化学品、又はその中間体として有用なα−ジフルオロハロメチルカルボニル化合物の製造法に関する。
【背景技術】
【0002】
C−F結合の活性化或いは開裂は学術的にも工業的にも興味を引く現在的なテーマである。C−F結合の解離エネルギーは116kcal/molと非常に高いからである。α−トリフルオロメチルカルボニル化合物のメタルエノラートのβ−フルオリド脱離の例は多く知られているが、C−F結合を直接的に活性化する例はほとんど無い。
【0003】
最近、C−F結合の開裂を経由するグリニヤールクロスカップリングが報告されている(非特許文献1)。この反応は、ニッケル及びマグネシウム塩の二金属の相乗効果によるものと考えられている。また、電気化学的手法又は還元剤としてマグネシウムを用いる方法により、トリフルオロメチル基からC−F結合の還元的開裂を経由するジフルオロシリルエノールエーテル誘導体の合成法が報告されている(非特許文献2、3)。さらに、ニオブ化合物触媒を用いたC−F結合の還元的開裂が報告されている(非特許文献4)。
【0004】
一方、有機化合物中にジフルオロメチル部位を導入することは非常に重要である。ジフルオロメチレン基はエーテル官能基の等価体として働くことが報告されている。アミノ酸、ビタミンD3、プロスタグラノイドのジフルオロメチレン類縁体は生理活性において、劇的な変化を示したり、特殊な変更をもたらす。ジフルオロメチレン基を有する医薬、農薬として、イソフルフラン(isofluflane)、ゲムシタビン塩酸塩(Gemcitabine hydrochloride)、ジチオピル(dithiopyr)、スルフェントラゾン(sulfentrazon)などが知られている。
【0005】
しかしながら、従来、カルボニル化合物のカルボニル基のα位にα−ジフルオロヨードメチル基等のα−ジフルオロハロメチル基が導入された化合物を簡易に且つ効率よく製造する方法はなかった。
【0006】
【非特許文献1】ジャーナル・オブ・アメリカン・ケミカル・ソサイエティ、2005年、第127巻、第17978頁−第17979頁(J. Am. Chem. Soc. 2005, 127, 17978-17979)
【非特許文献2】ジャーナル・オブ・オーガニック・ケミストリー、1999年、第64巻、第6717頁−第6723頁(J. Org. Chem. 1999, 64, 6717-6723)
【非特許文献3】テトラへドロン・レターズ、2002年、第43巻、第6099頁−第6102頁(Tetrahedron Lett. 2002, 43, 6099-6102)
【非特許文献4】オーガニック・レターズ、2007年、第1497頁−第1499頁(Org. Lett. 2007, 1497-1499)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、α−ジフルオロヨードメチルカルボニル化合物等のα−ジフルオロハロメチルカルボニル化合物を簡易に且つ効率よく製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、前記目的を達成するため鋭意検討した結果、カルボニル化合物にアルカリ金属化合物からなる塩基を作用させてアルカリ金属エノラート(例えば、リチウムエノラート)を生成させ、これにトリフルオロヨードメタン(CF3I)を反応させると、CF3IのC−I結合ではなくC−F結合が活性化され、該カルボニル化合物のカルボニル基のα位にジフルオロヨードメチル基を導入できることを見出した。本発明は、これらの知見に基づき、さらに研究を重ねて完成したものである。
【0009】
すなわち、本発明は、カルボニル化合物に、アルカリ金属化合物からなる塩基の存在下、CF3X(式中、Xはハロゲン原子を示す)を反応させて、カルボニル基のα位にCF2X基(式中、Xは前記に同じ)を導入することを特徴とするα−ジフルオロハロメチルカルボニル化合物の製造法を提供する。
【0010】
この製造法において、下記式(1)
【化1】

[式中、R1、R2、R3は、それぞれ、水素原子又は有機基を示す。R1とR3とは、互いに結合して、隣接するY及び2つの炭素原子とともに環を形成していてもよい。Yは単結合、酸素原子、硫黄原子又は−NZ−基(式中、Zは水素原子又は有機基を示す)を示す]
で表されるカルボニル化合物に、アルカリ金属化合物からなる塩基の存在下、CF3X(式中、Xはハロゲン原子を示す)を反応させて、下記式(2)
【化2】

(式中、R1、R2、R3、X、Yは前記に同じ)
で表される化合物を得てもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、α−ジフルオロヨードメチルカルボニル化合物等のα−ジフルオロハロメチルカルボニル化合物を簡易に且つ効率よく製造することができる。本発明の方法は、特に、ジフルオロハロメチル基が四級炭素原子に結合した化合物の合成に有益である。このようにして得られるα−ジフルオロハロメチルカルボニル化合物は、医薬、農薬等の精密化学品又はその中間体として有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明では、カルボニル化合物に、アルカリ金属化合物からなる塩基の存在下、CF3X(式中、Xはハロゲン原子を示す)を反応させて、カルボニル基のα位にCF2X基(ジフルオロハロメチル基)(式中、Xは前記に同じ)を導入して、α−ジフルオロハロメチルカルボニル化合物を製造する。
【0013】
原料として用いるカルボニル化合物としては、例えば、ケトン、エステル、ラクトン、チオエステル、アミド、ラクタム等が挙げられる。
【0014】
原料として用いるカルボニル化合物には、前記式(1)で表される化合物が含まれる。式(1)中、R1、R2、R3は、それぞれ、水素原子又は有機基を示す。R1とR3とは、互いに結合して、隣接するY及び2つの炭素原子とともに環を形成していてもよい。Yは単結合、酸素原子、硫黄原子又は−NZ−基(式中、Zは水素原子又は有機基を示す)を示す。
【0015】
1、R2、R3における有機基としては、例えば、置換基を有していてもよい炭化水素基、置換基を有していてもよい複素環式基、置換オキシカルボニル基、アシル基、シアノ基などが挙げられる。
【0016】
置換基を有していてもよい炭化水素基の炭化水素基には、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基、及びこれらが2以上結合した基が含まれる。脂肪族炭化水素基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、s−ブチル、t−ブチル、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、t−ペンチル、ヘキシル、デシル、ドデシル基などの炭素数1〜20程度の直鎖状又は分岐鎖状アルキル基;ビニル、アリル、1−ブテニル、ウンデセニル基などの炭素数2〜20程度の直鎖状又は分岐鎖状アルケニル基;エチニル、プロピニル基などの炭素数2〜20程度の直鎖状又は分岐鎖状アルキニル基などが挙げられる。脂環式炭化水素基としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロオクチル基などの3〜20員程度のシクロアルキル基;シクロペンテニル、シクロへキセニル基などの3〜20員程度のシクロアルケニル基;パーヒドロナフタレン−1−イル基、ノルボルニル、1−アダマンチル、2−アダマンチル、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカン−3−イル基などの橋かけ環式炭化水素基などが挙げられる。芳香族炭化水素基としては、フェニル、α−ナフチル、β−ナフチル基などの炭素数6〜20程度の芳香族炭化水素基が挙げられる。
【0017】
脂肪族炭化水素基と脂環式炭化水素基とが結合した炭化水素基には、シクロペンチルメチル、シクロヘキシルメチル、2−シクロヘキシルエチル基などのシクロアルキル−アルキル基(例えば、C3-20シクロアルキル−C1-4アルキル基など);1−メチルシクロヘキシル、2−メチルシクロヘキシル、3−メチルシクロヘキシル、4−メチルシクロヘキシル基などのアルキル−シクロアルキル基;アダマンタン−1−イルメチル、1−(1−アダマンチル)−1−メチルエチル基などの橋架け炭化水素基置換アルキル基(例えば、橋架け炭化水素基置換C1-4アルキル基など);3,5−ジメチルアダマンタン−1−イル基などのアルキル置換橋架け炭化水素基(例えば、1〜4個程度のC1-20アルキル基が置換した橋架け炭化水素基など)などが含まれる。また、脂肪族炭化水素基と芳香族炭化水素基とが結合した炭化水素基には、ベンジル、2−フェニルエチル、1−フェニルエチル、3−フェニルプロピル、ジフェニルメチル、トリチル基などのアラルキル基(例えば、C7-20アラルキル基など)、アルキル置換アリール基(例えば、1〜4個程度のC1-20アルキル基が置換したフェニル基又はナフチル基など)などが含まれる。
【0018】
上記炭化水素基が有していてもよい置換基としては、例えば、ハロゲン原子、オキソ基、ヒドロキシル基、置換オキシ基(例えば、アルコキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、アシルオキシ基など)、カルボキシル基、置換オキシカルボニル基(アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アラルキルオキシカルボニル基など)、置換又は無置換カルバモイル基、シアノ基、ニトロ基、置換又は無置換アミノ基、スルホ基、複素環式基などが挙げられる。前記ヒドロキシル基やカルボキシル基は有機合成の分野で慣用の保護基で保護されていてもよい。また、脂環式炭化水素基や芳香族炭化水素基の環には芳香族性又は非芳香属性の複素環が縮合又は接合して多環を構成していてもよい。
【0019】
1、R2、R3における有機基としての置換基を有していてもよい複素環式基を構成する複素環には、芳香族性複素環及び非芳香族性複素環が含まれる。このような複素環としては、例えば、ヘテロ原子として酸素原子を含む複素環(例えば、フラン、テトラヒドロフラン、オキサゾール、イソオキサゾール、γ−ブチロラクトン環などの5員環、4−オキソ−4H−ピラン、テトラヒドロピラン、モルホリン環などの6員環、ベンゾフラン、イソベンゾフラン、4−オキソ−4H−クロメン、クロマン、イソクロマン環などの縮合環、3−オキサトリシクロ[4.3.1.14,8]ウンデカン−2−オン環、3−オキサトリシクロ[4.2.1.04,8]ノナン−2−オン環などの橋かけ環)、ヘテロ原子としてイオウ原子を含む複素環(例えば、チオフェン、チアゾール、イソチアゾール、チアジアゾール環などの5員環、4−オキソ−4H−チオピラン環などの6員環、ベンゾチオフェン環などの縮合環など)、ヘテロ原子として窒素原子を含む複素環(例えば、ピロール、ピロリジン、ピラゾール、イミダゾール、トリアゾール環などの5員環、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、ピペリジン、ピペラジン環などの6員環、インドール、インドリン、キノリン、アクリジン、ナフチリジン、キナゾリン、プリン環などの縮合環など)などが挙げられる。上記複素環式基が有していてもよい置換基としては、前記炭化水素基が有していてもよい置換基のほか、アルキル基(例えば、メチル、エチル基などのC1-4アルキル基など)、ハロアルキル基(例えば、トリフルオロメチル基などのC1-4ハロアルキル基など)、シクロアルキル基、アリール基(例えば、フェニル、ナフチル基など)などが挙げられる。
【0020】
1、R2、R3における有機基としての置換オキシカルボニル基としては、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、t−ブトキシカルボニル基などのアルコキシカルボニル基(例えば、C1-6アルコキシ−カルボニルシル基等);ベンジルオキシカルボニル基等のアラルキルオキシカルボニル基(例えば、C7-16アラルキルオキシ−カルボニル基等);フェノキシカルボニル基等のアリールオキシカルボニル基(例えば、C6-15アリールオキシ−カルボニル基等)などが挙げられる。R1、R2、R3における有機基としてのアシル基には、アセチル、プロピオニル、ブチリル基等の脂肪族アシル基、シクロヘキシルカルボニル基などの脂環式アシル基、ベンゾイル基等の芳香族アシル基などの炭素数1〜15程度のアシル基が挙げられる。
【0021】
1とR3とが互いに結合して隣接するY及び2つの炭素原子とともに形成する環としては、5〜15員環が挙げられる。そのような環には、前記炭化水素基が有していてもよい置換基として例示した置換基等を有していてもよい。また、そのような環には、1又は2以上の他の芳香族環又は非芳香族環が縮合又は接合して多環を構成していてもよい。R1とR3とが互いに結合して隣接するY及び2つの炭素原子とともに形成する環の代表的なものとして、環状ケトンを構成する環、ラクトン環、ラクタム環などが挙げられる。
【0022】
Yにおける−NZ−基中のZは水素原子又は有機基を示す。この有機基としては、メチル、エチル基等のアルキル基(例えば、C1-15アルキル基等);ビニル、アリル基等のアルケニル基(例えば、C2-15アルケニル基等);シクロペンチル、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;シクロペンテニル、シクロヘキセニル基等のシクロアルケニル基;パーヒドロナフタレン−1−イル基、ノルボルニル、1−アダマンチル、2−アダマンチル、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカン−3−イル基などの橋かけ環式炭化水素基;ベンジル、フェニルエチル基等のアラルキル基(例えば、C7-16アラルキル基等);フェニル、ナフチル基等のアリール基(例えば、C6-15アリール基等);アセチル、プロピオニル、ベンゾイル基等のアシル基(例えば、C1-15アシル基等);メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、t−ブトキシカルボニル基等のアルコキシカルボニル基(例えば、C1-6アルコキシ−カルボニル基等);ベンジルオキシカルボニル基等のアラルキルオキシカルボニル基(例えば、C7-16アラルキルオキシ−カルボニル基等);フェノキシカルボニル基等のアリールオキシカルボニル基(例えば、C6-15アリールオキシ−カルボニル基等);ベンゼンスルホニル、p−トルエンスルホニル等のアリールスルホニル基;メタンスルホニル、エタンスルホニル基等のアルカンスルホニル基;トリフルオロメタンスルホニル基等のハロアルカンスルホニル基;ピリジル、フリル基等の複素環式基等が挙げられる。
【0023】
Zはアミノ基の保護基(例えば、t−ブトキシカルボニル、ベンジルオキシカルボニル、アセチル、ベンゾイル、p−トルエンスルホニル基等)であることが多い。
【0024】
塩基として用いるアルカリ金属化合物としては、リチウム化合物、ナトリウム化合物、カリウム化合物、セシウム化合物等が挙げられる。これらの中でも、リチウム化合物が特に好ましい。また、アルカリ金属化合物としては、アルカリ金属アミド化合物、アルカリ金属アルコキシド、アルカリ金属炭酸塩等が挙げられるが、特にアルカリ金属アミド化合物(例えば、リチウムアミド化合物)が好ましい。
【0025】
アルカリ金属アミド化合物の代表的な例として、以下の化合物が挙げられる。式中、Phはフェニル基を示し、i−Prはイソプロピル基を示す。
【化3】

【0026】
CF3Xとしては、CF3I、CF3Br、CF3Cl等が挙げられる。これらの中でも、CF3I、CF3Brが好ましく、特に、CF3Iが好ましい。
【0027】
反応は、通常、溶媒中で行われる。溶媒としては反応に不活性な溶媒であれば特に限定されない。溶媒として、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロオクタン等の脂環式炭化水素;ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の脂肪族炭化水素;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、t−ブチルメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル等の鎖状エーテル;テトラヒドロフラン(THF)、ジオキサン等の環状エーテル等が挙げられる。これらの溶媒は単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
【0028】
アルカリ金属化合物からなる塩基の使用量は、原料であるカルボニル化合物に対して、例えば0.8〜5当量、好ましくは1〜3当量である。CF3Xの使用量は、原料であるカルボニル化合物に対して、例えば0.8〜30当量、好ましくは2〜20当量程度である。CF3Xを大過剰量用いてもよい。
【0029】
反応温度は、反応速度及び反応の選択性を考慮し、−100℃〜80℃(好ましくは−100℃〜40℃)程度の範囲で適宜設定できる。
【0030】
反応成分の添加順序は特に限定されないが、通常、カルボニル化合物を含む溶液中に、塩基を添加して、対応するアルカリ金属エノラートを生成させ、次いでCF3Xを添加して反応させ、目的のα−ジフルオロハロメチルカルボニル化合物を得る。前段の塩基を添加してアルカリ金属エノラートを生成させる際の温度は、例えば−100℃〜80℃、好ましくは−20℃〜50℃程度である。後段のCF3Xを反応させる際の温度は、例えば−100℃〜80℃、好ましくは−20℃〜50℃程度である。前段、後段ともに、室温付近で速やかに反応が進行する。CF3Xを系に添加する際には、例えば−100℃〜−20℃程度に冷却して行うのが好ましい。
【0031】
反応終了後、酢酸等でクエンチし、晶析、蒸留、カラムクロマトグラフィー等の一般的な分離精製法を用いることにより、目的のα−ジフルオロハロメチルカルボニル化合物を得ることができる。
【0032】
原料カルボニル化合物として、前記式(1)で表される化合物を用いた場合には、下記式(3)
【化4】

(式中、Mはアルカリ金属を示す。R1、R2、R3、Yは前記に同じ)
で表されるアルカリ金属エノラートを経て、前記式(2)で表されるα−ジフルオロハロメチルカルボニル化合物が生成する。
【0033】
なお、前記式(2)で表されるα−ジフルオロハロメチルカルボニル化合物は、下記式(4)
【化5】

(式中、R4はシリル基を示す。R1、R2、R3、Yは前記に同じ)
で表されるシリルエノールエーテル化合物に、n−ブチルリチウム等のアルキルアルカリ金属を作用させて、前記式(3)で表されるアルカリ金属エノラートを生成させ、次いでCF3Xを添加して反応させることにより得ることもできる。反応条件は、式(1)で表される化合物にアルカリ金属化合物からなる塩基を作用させて、式(3)で表されるアルカリ金属エノラートを生成させ、次いでCF3Xを添加して反応させる場合と同じである。
【0034】
4におけるシリル基としては、例えば、トリメチルシリル、t−ブチルジメチルシリル基等が挙げられる。
【0035】
本発明の方法で得られるα−ジフルオロハロメチルカルボニル化合物の代表的な例として下記の化合物(2-a)〜(2-e)が例示される。
【0036】
【化6】

【0037】
上記式中、nは1〜3の整数を示す。R1、R2、R3、X、Zは前記に同じ。式(2-a)、(2-b)、(2-c)中の環は置換基を有していてもよく、他の環(ベンゼン環等の芳香族環、シクロヘキサン環等の脂環)が縮合又は接合して多環を構成していてもよい。
【0038】
式(2-a)で表される化合物としては、特に、R2が、メチル、エチル、プロピル基等のアルキル基(例えば、C1-15アルキル基等);フェニル、ナフチル基等のアリール基(例えば、C6-15アリール基等);ベンジル、2−フェニルエチル基等のアラルキル基(例えば、C7-16アラルキル基等)などの炭化水素基である化合物が好ましい。該炭化水素基は、ハロゲン原子、オキソ基、ヒドロキシル基、C1-10アルコキシ基、C6-15アリールオキシ基、C7-16アラルキルオキシ基、C1-10アシルオキシ基、カルボキシル基、C1-6アルコキシ−カルボニル基、C6-15アリールオキシ−カルボニル基、C7-16アラルキルオキシ−カルボニル基、置換又は無置換カルバモイル基、シアノ基、ニトロ基、置換又は無置換アミノ基、スルホ基、複素環式基などの置換基を有していてもよい。また、ラクトン環には、式中に示される基以外に、アルキル基等の炭化水素基(例えば、炭素数1〜15程度の炭化水素基)や上記R2における炭化水素基が有していてもよい置換基と同様の置換基が結合していてもよい。また、ラクトン環に他の環(ベンゼン環等の芳香族環、シクロヘキサン環等の脂環)が縮合又は接合して多環を構成していてもよい。
【0039】
式(2-b)で表される化合物としては、特に、R2が、メチル、エチル、プロピル基等のアルキル基(例えば、C1-15アルキル基等);フェニル、ナフチル基等のアリール基(例えば、C6-15アリール基等);ベンジル、2−フェニルエチル基等のアラルキル基(例えば、C7-16アラルキル基等)などの炭化水素基である化合物が好ましい。該炭化水素基は、ハロゲン原子、オキソ基、ヒドロキシル基、C1-10アルコキシ基、C6-15アリールオキシ基、C7-16アラルキルオキシ基、C1-10アシルオキシ基、カルボキシル基、C1-6アルコキシ−カルボニル基、C6-15アリールオキシ−カルボニル基、C7-16アラルキルオキシ−カルボニル基、置換又は無置換カルバモイル基、シアノ基、ニトロ基、置換又は無置換アミノ基、スルホ基、複素環式基などの置換基を有していてもよい。また、環状ケトンを構成する環には、式中に示される基以外に、アルキル基等の炭化水素基(例えば、炭素数1〜15程度の炭化水素基)や上記R2における炭化水素基が有していてもよい置換基と同様の置換基が結合していてもよい。また、環状ケトンを構成する環に他の環(ベンゼン環等の芳香族環、シクロヘキサン環等の脂環)が縮合又は接合して多環を構成していてもよい。
【0040】
式(2-c)で表される化合物としては、特に、R2が、メチル、エチル、プロピル基等のアルキル基(例えば、C1-15アルキル基等);フェニル、ナフチル基等のアリール基(例えば、C6-15アリール基等);ベンジル、2−フェニルエチル基等のアラルキル基(例えば、C7-16アラルキル基等)などの炭化水素基である化合物が好ましい。該炭化水素基は、ハロゲン原子、オキソ基、ヒドロキシル基、C1-10アルコキシ基、C6-15アリールオキシ基、C7-16アラルキルオキシ基、C1-10アシルオキシ基、カルボキシル基、C1-6アルコキシ−カルボニル基、C6-15アリールオキシ−カルボニル基、C7-16アラルキルオキシ−カルボニル基、置換又は無置換カルバモイル基、シアノ基、ニトロ基、置換又は無置換アミノ基、スルホ基、複素環式基などの置換基を有していてもよい。また、ラクタム環には、式中に示される基以外に、アルキル基等の炭化水素基(例えば、炭素数1〜15程度の炭化水素基)や上記R2における炭化水素基が有していてもよい置換基と同様の置換基が結合していてもよい。また、ラクタム環に他の環(ベンゼン環等の芳香族環、シクロヘキサン環等の脂環)が縮合又は接合して多環を構成していてもよい。
【0041】
式(2-d)で表される化合物としては、特に、R1、R2、R3が、それぞれ、メチル、エチル、プロピル基等のアルキル基(例えば、C1-15アルキル基等);フェニル、ナフチル基等のアリール基(例えば、C6-15アリール基等);ベンジル、2−フェニルエチル基等のアラルキル基(例えば、C7-16アラルキル基等)などの炭化水素基である化合物が好ましい。該炭化水素基は、ハロゲン原子、オキソ基、ヒドロキシル基、C1-10アルコキシ基、C6-15アリールオキシ基、C7-16アラルキルオキシ基、C1-10アシルオキシ基、カルボキシル基、C1-6アルコキシ−カルボニル基、C6-15アリールオキシ−カルボニル基、C7-16アラルキルオキシ−カルボニル基、置換又は無置換カルバモイル基、シアノ基、ニトロ基、置換又は無置換アミノ基、スルホ基、複素環式基などの置換基を有していてもよい。
【0042】
式(2-e)で表される化合物としては、特に、R1、R2、R3が、それぞれ、メチル、エチル、プロピル基等のアルキル基(例えば、C1-15アルキル基等);フェニル、ナフチル基等のアリール基(例えば、C6-15アリール基等);ベンジル、2−フェニルエチル基等のアラルキル基(例えば、C7-16アラルキル基等)などの炭化水素基である化合物が好ましい。該炭化水素基は、ハロゲン原子、オキソ基、ヒドロキシル基、C1-10アルコキシ基、C6-15アリールオキシ基、C7-16アラルキルオキシ基、C1-10アシルオキシ基、カルボキシル基、C1-6アルコキシ−カルボニル基、C6-15アリールオキシ−カルボニル基、C7-16アラルキルオキシ−カルボニル基、置換又は無置換カルバモイル基、シアノ基、ニトロ基、置換又は無置換アミノ基、スルホ基、複素環式基などの置換基を有していてもよい。
【0043】
本発明の方法で得られるα−ジフルオロハロメチルカルボニル化合物は、医薬、農薬等の生理活性物質、その他の精密化学品、又はその合成中間体として有用である。
【0044】
例えば、式(2)で表されるα−ジフルオロハロメチルカルボニル化合物を水素化(還元)することにより、下記式(5)
【化7】

(式中、R1、R2、R3、Yは前記に同じ)
で表されるα−ジフルオロメチルカルボニル化合物を得ることができる。
【0045】
また、式(2)で表されるα−ジフルオロハロメチルカルボニル化合物を、パラジウム触媒及び亜鉛の存在下、RCHO(Rは水素原子又は有機基を示す)と反応させることにより、下記式(6)
【化8】

(式中、R1、R2、R3、Y、Rは前記に同じ)
で表される化合物を得ることができる。
【0046】
さらに、式(2)で表されるα−ジフルオロハロメチルカルボニル化合物を、下記式(7)
CH2=CHR′ (7)
(式中、R′は水素原子又は有機基を示す)
で表される化合物と反応(ラジカル反応)させることにより、下記式(8)
【化9】

(式中、R1、R2、R3、Y、R′は前記に同じ)
で表される化合物を得ることができる。
【実施例】
【0047】
以下、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。化学式及び反応工程式中、Bnはベンジル基、Phはフェニル基、Bocはt−ブトキシカルボニル基を示す。LHMDS、LTDDS、LTMP、LDAについては前記参照。NHMDS、KHMDSは、LHMDSのリチウム原子を、それぞれ、ナトリウム原子、カリウム原子に置き換えた化合物である。
【0048】
実施例1
3−ベンジルジヒドロフラン−2−オン(88.1mg、0.5mmol)のテトラヒドロフラン(THF)(1.0ml)溶液中に、LHMDS(96.1mg、0.575mmol)を室温で添加した。この混合液に、気体状のCF3I(約1g、約5mmol)を−78℃で加えた。反応混合液を室温で4時間撹拌し、酢酸(5M THF溶液)で室温下でクエンチした。BTF(ベンゾトリフルオリド;10μL、0.082mmol)を内標として加え、19F NMRにより分析したところ、目的化合物の収率は72%であった。なお、3−ベンジル−3−ヨード−ジヒドロフラン−2−オンが3%の収率で副生していた。粗生成物をカラムクロマトグラフィーにより精製し、下記の3−ベンジル−3−(ジフルオロヨードメチル)−ジヒドロフラン−2−オン(124.6mg、単離収率71%)を得た。
【化10】

【0049】
[3−ベンジル−3−(ジフルオロヨードメチル)−ジヒドロフラン−2−オンの分析データ]
無色固体
1H NMR (300 MHz, CDCl3) d 2.30-2.39 (m, 1H), 2.53-2.63 (m, 1H), 2.97 (d, J= 13.5 Hz. 1H), 3.09-3.17 (m, 1H), 3.58 (d, J= 13.2 Hz, 1H), 4.05-4.12 (m, 1H), 7.25-7.38 (m, 5H).
13C NMR (75 MHz, CDCl3) d 30.2, 39.3 (t, J= 3.2 Hz), 61.0 (t, J=17.6 Hz), 64.5, 106.9 (q, J= 321.8 MHz), 128.1, 129.1, 130.2, 133.4, 171.8.
19F NMR (282 MHz, CDCl3) d -44.9 (d, J= 179.6 Hz, 1F), -45.8 (d, J= 179.6 Hz, 1F).
IR (neat) 2924, 1768, 1455, 1381, 1036 cm-1.
HRMS (ESI-TOF) calcd for C12H11F2INaO2 [M+Na]+ m/z= 374.9670, found: 374.9652.
【0050】
[3−ベンジル−3−ヨード−ジヒドロフラン−2−オンの分析データ]
【化11】

白色固体
1H NMR (300 MHz, CDCl3) d 2.17 (m, 2H), 3.57 (d, J= 14.1 Hz, 1H), 3.64 (d, J= 14.1 Hz, 1H), 4.21-4.34 (m, 2H), 7.26-7.36 (m, 5H).
13C NMR (75 MHz, CDCl3) d 38.6, 39.2, 46.7, 65.9, 127.7, 128.7, 130.4, 136.3, 176.0 (ppm).
IR (KBr) 3029, 1757, 1602, 1453, 1371, 1172, 1081, 1021, 953, 928, 829, 752, 700, 619, 590, 531, 486, 437, 418 cm-1.
【0051】
実施例2
溶媒としてTHFの代わりにトルエンを用い、CF3I添加後の反応時間を24時間とした以外は実施例1と同様の操作を行った。その結果、目的化合物の19F NMRにより求めた収率は29%であった。
【0052】
実施例3
溶媒としてTHFの代わりにDME(エチレングリコールジメチルエーテル)を用いた以外は実施例1と同様の操作を行った。その結果、目的化合物の19F NMRにより求めた収率は37%であった。
【0053】
実施例4
溶媒としてTHFの代わりにt−ブチルメチルエーテルを用いた以外は実施例1と同様の操作を行った。その結果、目的化合物の19F NMRにより求めた収率は27%であった。
【0054】
実施例5
溶媒としてTHFの代わりにジエチルエーテルを用いた以外は実施例1と同様の操作を行った。その結果、目的化合物の19F NMRにより求めた収率は47%であった。なお、3−ベンジル−3−(トリフルオロメチル)−ジヒドロフラン−2−オンが7%の収率で副生していた。
【0055】
実施例6
溶媒としてTHFの代わりにトルエン/THF(3:1)混合溶媒を用いた以外は実施例1と同様の操作を行った。その結果、目的化合物の19F NMRにより求めた収率は51%であった。
【0056】
実施例7
CF3I添加後の反応温度及び反応時間を0℃、4時間とした以外は実施例1と同様の操作を行った。その結果、目的化合物の19F NMRにより求めた収率は61%であった。
【0057】
実施例8
CF3I添加後の反応温度及び反応時間を0℃、24時間とした以外は実施例1と同様の操作を行った。その結果、目的化合物の19F NMRにより求めた収率は68%であった。
【0058】
実施例9
CF3I添加後の反応温度及び反応時間を−78℃、24時間とした以外は実施例1と同様の操作を行った。その結果、目的化合物の19F NMRにより求めた収率は56%であった。
【0059】
実施例10
塩基としてLHMDSの代わりにNHMDSを用いた以外は実施例1と同様の操作を行った。その結果、目的化合物の19F NMRにより求めた収率は12%であった。
【0060】
実施例11
塩基としてLHMDSの代わりにKHMDSを用い、添加剤としてリチウムビス(トリフルオロメタンスルホニルアミド)(0.575mmol)を添加した以外は実施例1と同様の操作を行った。その結果、目的化合物の19F NMRにより求めた収率は11%であった。
【0061】
実施例12
LHMDSを1mmol用いた以外は実施例1と同様の操作を行った。その結果、目的化合物の19F NMRにより求めた収率は68%であった。
【0062】
実施例13
塩基としてLHMDSの代わりにLTDDSを用いた以外は実施例1と同様の操作を行った。その結果、目的化合物の19F NMRにより求めた収率は68%であった。
【0063】
実施例14
LTDDSを1mmol用いた以外は実施例13と同様の操作を行った。その結果、目的化合物の19F NMRにより求めた収率は63%であった。
【0064】
実施例15
塩基としてLHMDSの代わりにLTMPを用いた以外は実施例1と同様の操作を行った。その結果、目的化合物の19F NMRにより求めた収率は32%であった。
【0065】
実施例16
LTMPを1mmol用いた以外は実施例15と同様の操作を行った。その結果、目的化合物の19F NMRにより求めた収率は68%であった。
【0066】
実施例17
塩基としてLHMDSの代わりにLDAを1mmol用いた以外は実施例1と同様の操作を行った。その結果、目的化合物の19F NMRにより求めた収率は6%であった。なお、3−ベンジル−3−(トリフルオロメチル)−ジヒドロフラン−2−オンが3%の収率で副生していた。
【0067】
実施例18
3−ベンジル−2−トリメチルシリルオキシ−4,5−ジヒドロフラン(0.5mmol)のテトラヒドロフラン(THF)(1.0ml)溶液中に、n−ブチルリチウム(0.575mmol)を室温で添加し、30分撹拌した。この混合液に、気体状のCF3I(約1g、約5mmol)を−78℃で加えた。反応混合液を室温で4時間撹拌し、酢酸(5M−THF溶液)で室温下でクエンチした。BTF(ベンゾトリフルオリド;1μL、0.082mmol)を内標として加え、19F NMRにより分析したところ、目的化合物[3−ベンジル−3−(ジフルオロヨードメチル)−ジヒドロフラン−2−オン]の収率は68%であった。
【0068】
実施例19
CF3Iの代わりに、CF3Brを過剰量用いた以外は実施例1と同様の操作を行った。反応生成物を19F NMRにより分析したところ、下記の3−ベンジル−3−(ブロモジフルオロメチル)−ジヒドロフラン−2−オンが収率37%で生成していた。なお、3−ベンジル−3−(トリフルオロメチル)−ジヒドロフラン−2−オンが7%の収率で副生していた。
【化12】

【0069】
[3−ベンジル−3−(ブロモジフルオロメチル)−ジヒドロフラン−2−オンの分析データ]
1H NMR (300 MHz, CDCl3) d 2.35-2.43 (m, 1H), 2.62-2.70 (m, 1H), 3.07 (d, = 19.2 Hz, 1H), 3.13-3.19 (m, 1H), 3.60 (d, J= 13.2 Hz, 1H), 4.07-4.14 (m, 1H), 7.25-7.36 (m, 5H).
13C NMR (75 MHz, CDCl3)
d 28.9, 38.3 (t, J= 2.9 Hz), 59.9 (t, J= 19.3 Hz), 64.8, 123.6 (t, J= 312.6 Hz), 128.1, 129.1, 130.2, 133.4, 172.5.
19F NMR (282 MHz, CDCl3) d -52.6 (s) (ppm).
IR (neat) 2925, 1777, 1496, 1456, 1383, 1166, 1035, 854, 767 cm-1.
【0070】
参考例1
CF3Iの代わりに、CF3CF2Iを過剰量用いた以外は実施例1と同様の操作を行った。粗生成物をカラムクロマトグラフィーにより精製し、下記の3−ベンジル−3−ペンタフルオロエチル−ジヒドロフラン−2−オン(単離収率21%)を得た。
【化13】

【0071】
[3−ベンジル−3−ペンタフルオロエチル−ジヒドロフラン−2−オンの分析データ]
無色液体
1H NMR (300 MHz, CDCl3) d 2.33-2.43 (m, 1H), 2.61-2.71 (m, 1H), 3.00 (d, J= 13.5 Hz, 1H), 3.14-3.22 (m, 1H), 3.57 (d, J= 13.5 Hz, 1H), 4.03-4.11 (m, 1H), 7.23-7.41 (m, 5H).
13C NMR (75 MHz, CDCl3) d 26.4 (t, J= 2.4 Hz), 36.6 (t, J= 2.0 Hz), 52.7 (t, J= 20.5 Hz), 65.0, 110.4-121.6 (m), 128.2, 129.1, 130.4, 133.1, 172.4.
19F NMR (MHz, CDCl3) d -78.2 (s, 3F), -116.6 (d, J= 278.2 Hz, 1F), 119.1 (d, J= 278.2 Hz, 1F).
IR (neat) 2928, 1780, 1496, 1457, 1383, 1335, 1192, 1095, 1060, 1036, 928, 773, 746, 728, 702 cm-1
【0072】
実施例20
原料カルボニル化合物として3−ベンジルジヒドロフラン−2−オンの代わりに3−ベンジルテトラヒドロピラン−2−オンを用いた以外は実施例1と同様の操作を行った。反応生成物を19F NMRにより分析したところ、下記の3−ベンジル−3−(ジフルオロヨードメチル)−テトラヒドロピラン−2−オン(2b)(収率54%)と、3−ベンジル−3−トリフルオロメチル−テトラヒドロピラン−2−オン(3b)(収率7%)が生成していた。
【化14】

【0073】
[3−ベンジル−3−(ジフルオロヨードメチル)−テトラヒドロピラン−2−オン(2b)の分析データ]
1H NMR (300 MHz, CDCl3) d 0.83-0.93 (m, 1H), 1.60-1.65 (m, 1H), 2.07-2.22 (m, 2H), 2.78 (d, J= 12.9 Hz, 1H), 12.9 Hz, 1H), 4.03-4.07 (m, 1H), 4.26-4.34 (m, 1H), 7.22-7.33 (m, 5H).
13C NMR (75 MHz, CDCl3) d 21.1, 29.9, 41.5 (t, J= 3.6 Hz), 60.4 (t, J= 15.8 Hz), 70.0, 106.1 (t, J= 324.8 Hz), 127.8, 128.9, 130.4, 134.1, 167.2.
19F NMR (282 MHz, CDCl3) d -42.8 (d, J= 171.7 Hz, 1F), 46.0 (br d, J= 171.7 Hz, 1F).
HRMS (ESI-TOF) calcd for [M+Na]+ m/z= 388.9826, found 388.9815.
【0074】
[3−ベンジル−3−トリフルオロメチル−テトラヒドロピラン−2−オン(3b)の分析データ]
19F NMR (282 MHz, CDCl3) d -72.5 (s)
【0075】
実施例21
原料カルボニル化合物として3−ベンジルジヒドロフラン−2−オンの代わりに2−メチルインダン−1−オンを用いた以外は実施例1と同様の操作を行った。反応生成物を19F NMRにより分析したところ、目的化合物の収率は52%であった。粗生成物をカラムクロマトグラフィーにより精製し、下記の2−(ジフルオロヨードメチル)−2−メチルインダン−1−オン(単離収率51%)を得た。なお、対応するトリフルオロメチル体は検出されなかった。
【化15】

【0076】
[2−(ジフルオロヨードメチル)−2−メチルインダン−1−オンの分析データ]
無色液体
1H NMR (300 MHz, CDCl3) d 1.51 (s, 3H), 3.03 (d, J= 17.7 Hz, 1H), 3.57 (d, J= 17.7 Hz), 7.42-7.52 (m, 2H), 7.68 (t, J= 7.5 Hz, 1H), 7.81 (d, J= 7.5 Hz).
13C NMR (75 MHz, CDCl3) d 21.0, 40.4, 60.5 (t, J= 17.1 Hz), 105.6 (t, J= 318.9 Hz), 125.1, 126.5, 128.2, 135.3, 135.8, 150.6, 199.8.
19F NMR (282 MHz, CDCl3) d -43.5 (d, J= 174.8 Hz, 1F), -45.4 (d, J= 174.8 Hz, 1F).
IR (neat) 2935, 1720, 1607, 1465, 1377, 1281, 1211, 1094, 958, 831, 792, 731 cm-1.
【0077】
実施例22
原料カルボニル化合物として3−ベンジルジヒドロフラン−2−オンの代わりに2−メチル−3,4−ジヒドロ−2H−ナフタレン−1−オンを用いた以外は実施例1と同様の操作を行った。反応生成物を19F NMRにより分析したところ、目的化合物の収率は41%であった。粗生成物をカラムクロマトグラフィーにより精製し、下記の2−(ジフルオロヨードメチル)−2−メチル−3,4−ジヒドロ−2H−ナフタレン−1−オン(単離収率43%)を得た。なお、対応するトリフルオロメチル体は検出されなかった。
【化16】

【0078】
[2−(ジフルオロヨードメチル)−2−メチル−3,4−ジヒドロ−2H−ナフタレン−1−オンの分析データ]
無色液体
1H NMR (300 MHz, CDCl3) d 1.44 (s, 3H), 2.15-2.23 (m, 1H), 2.43 (m, 1H), 3.01-3.16 (m, 2H), 7.26-7.37 (m, 2H), 7.51 (m, 1H), 8.07 (d, J= 7.8 Hz, 1H).
13C NMR (75 MHz, CDCl3) d 18.6 (t, J= 3.7 Hz), 24.9, 33.6, 56.8 (t, J= 15.3 Hz), 108.9 (t, J= 318.9 Hz), 127.1, 128.4, 128.7, 131.6, 134.0, 142.6, 193.2.
19F NMR (282 MHz, CDCl3) d -40.8 (s).
IR (neat) 2938, 1687, 1600, 1455, 1382, 1300, 1229, 1068, 955, 901, 877, 849, 795, 749 cm-1.
MS (ESI-TOF) [M+Na]+ m/z= 359
【0079】
実施例23
原料カルボニル化合物として3−ベンジルジヒドロフラン−2−オンの代わりに2−フェニルプロピオン酸エチルエステルを用いた以外は実施例1と同様の操作を行った。反応生成物を19F NMRにより分析したところ、目的化合物の収率は56%であった。粗生成物をカラムクロマトグラフィーにより精製し、下記の3,3−ジフルオロ−3−ヨード−2−メチル−2−フェニルプロピオン酸エチルエステル(単離収率60%)を得た。なお、対応するトリフルオロメチル体は検出されなかった。
【化17】

【0080】
[3,3−ジフルオロ−3−ヨード−2−メチル−2−フェニルプロピオン酸エチルエステルの分析データ]
無色液体
1H NMR (300 MHz, CDCl3) d 1.30 (t, J= 6.9 Hz, 3H), 1.92 (s, 3H), 4.30 (q, J= 6.9 Hz, 2H) 7.37-7.44 (m, 5H).
13C NMR (75 MHz, CDCl3) d 13.9, 22.0, 62.0, 62.9 (t, J= 17.3 Hz), 105.5 (t, J= 321.7 Hz), 128.2, 128.4, 128.6, 135.1, 169.1.
19F NMR (282 MHz, CDCl3) d -41.0 (d, J= 177.3 Hz, 1F), -43.3 (d, J= 177.3 Hz, 1F).
IR (neat) 2983, 1739, 1499, 1447, 1382, 1255, 1180, 1058, 1017, 925, 879, 801, 718, 697 cm-1.
【0081】
実施例24
原料カルボニル化合物として3−ベンジルジヒドロフラン−2−オンの代わりに2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オンを用いた以外は実施例1と同様の操作を行った。反応生成物を19F NMRにより分析したところ、下記目的化合物(3,3−ジフルオロ−3−ヨード−2,2−ジメチル−1−フェニルプロパン−1−オン)が収率32%で生成していた。なお、対応するトリフルオロメチル体は検出されなかった。
【化18】

【0082】
[3,3−ジフルオロ−3−ヨード−2,2−ジメチル−1−フェニルプロパン−1−オンの分析データ]
無色液体
1H NMR (300 MHz, CDCl3) d 1.58 (s, 6H), 7.41-7.51 (m, 3H), 7.65 (d, J= 7.2 Hz, 2H).
13C NMR (75 MHz, CDCl3) d 23.6, 60.4 (t, J= 8.9 Hz), 107.7 (t, J= 320.4 Hz), 128.0, 128.2, 131.4, 138.6, 200.5.
19F NMR (282 MHz, CDCl3) d -41.7 (s).
IR (neat) 2988, 1683, 1597, 1469, 1445, 1394, 1371, 1242, 1094, 1018, 959, 895, 789, 699, 662 cm-1.
【0083】
実施例25
原料カルボニル化合物として3−ベンジルジヒドロフラン−2−オンの代わりに3−ベンジル−2−オキソピロリジン−1−カルボン酸t−ブチルエステルを用いた以外は実施例1と同様の操作を行った。反応生成物を19F NMRにより分析したところ、下記の3−ベンジル−3−(ジフルオロヨードメチル)−2−オキソピロリジン−1−カルボン酸t−ブチルエステル(2g)(収率18%)と、3−ベンジル−2−オキソ−3−トリフルオロメチルピロリジン−1−カルボン酸t−ブチルエステル(3g)(収率46%)が生成していた。
【化19】

【0084】
[3−ベンジル−3−(ジフルオロヨードメチル)−2−オキソピロリジン−1−カルボン酸t−ブチルエステル(2g)と3−ベンジル−2−オキソ−3−トリフルオロメチルピロリジン−1−カルボン酸t−ブチルエステル(3g)の混合物(28:72)の分析データ]
1H NMR (300 MHz, CDCl3) d 1.48 (s, 2.52H) (2g), 1.49 (s, 6.48H), (3g), 2.01-2.12 (m, 1H), 2.22-2.27 (m, 1H), 2.29-2.39 (m, 0.28H) (2g), 2.59-2.63 (m, 0.72H) (3g), 2.88 (d, J= 13.2 Hz, 1H), 3.36-3.53 (m, 1H), 3.50 (d, J= 13.2 Hz, 0.72H) (3g), 3.50 (d, J= 13.2 Hz, 0.28H) (2g), 7.21-7.33 (m, 5H).
13C NMR (75 MHz, CDCl3) d 21.90 (2g), 21.92 (3g), 27.9, 36.9 (q, J= 2.3 Hz) (3g), 39.6 (2g), 42.2 (2g), 42.7 (3g), 55.9 (q, J= 25.1 Hz) (3g), 62.9 (t, J= 16.8 Hz) (2g), 106.3 (t, J= 321.3 Hz) (2g), 125.7 (q, J= 282.6 Hz) (3g), 127.8 (3g), 128.0 (2g), 128.7 (2g), 128.7 (3g), 130.16 (3g), 130.22 (2g), 133.7 (3g), 133.8 (2g), 149.35 (3g), 149.41 (2g), 168.3 (2g), 169.0 (3g).
19F NMR (282 MHz, CDCl3) d -44.2 (d, J= 178.4 Hz), -45.5 (d, J= 178.4 Hz) (2g), -73.5 (s) (3g).
HRMS (ESI-TOF) calcd for C17H20F2I1N1O3 (2g) [M+Na]+ m/z= 474.0354, found: 474.0358. calcd for C17H20F3N1Na1O3 (3g) [M+Na]+ m/z= 366.1293, found: 366.1275.
【0085】
実施例26
[イブプロフェン(ibuprofen)のα−CF2H類縁体(アナログ)の合成]
イブプロフェンを常法によりメチルエステル化した(定量的)。これを、実施例1と同様の方法により、カルボニル基のα位をジフルオロヨードメチル化して下記式で表される3,3−ジフルオロ−3−ヨード−2−(4−イソブチルフェニル)−2−メチルプロピオン酸メチルエステルを得た(収率56%)。
【化20】

【0086】
[3,3−ジフルオロ−3−ヨード−2−(4−イソブチルフェニル)−2−メチルプロピオン酸メチルエステルの分析データ]
無色液体
1H NMR (300 MHz, CDCl3) d 0.92 (d, J= 6.6 Hz, 6H), 1.82-1.93 (m, 4H), 2.49 (d, J= 7.2 Hz, 2H), 3.81 (s, 3H), 7.15 (d, J= 8.4 Hz, 2H), 7.31 (d, J= 8.4 Hz, 2H).
13C NMR (75 MHz, CDCl3) d 21.9, 22.4, 45.0, 52.8, 62.8, 105.8 (t, J= 316.8 Hz), 127.8, 129.1, 132.3, 142.3, 169.7.
19F NMR (282 MHz, CDCl3) d -41.0 (d, J= 176.8 Hz, 1H), -43.5 (d, J= 176.8 Hz, 1H).
IR (neat) 2954, 2925, 1743, 1462, 1255, 1073, 922 cm-1.
【0087】
3,3−ジフルオロ−3−ヨード−2−(4−イソブチルフェニル)−2−メチルプロピオン酸メチルエステル(455.4mg、1.1mmol)のメタノール(11ml)溶液に、NaBH4(416.1mg、11mmol)を0℃で添加し、0℃で1時間撹拌した。反応混合液に飽和塩化アンモニウム水溶液を加え、ジエチルエーテルで抽出し、有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧下で濃縮し、濃縮残渣をカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:ジクロロメタン=2:1)により精製し、下記式で表される3,3−ジフルオロ−2−(4−イソブチルフェニル)−2−メチルプロピオン酸メチルエステルを得た(290.2g、収率98%)。
【化21】

【0088】
[3,3−ジフルオロ−2−(4−イソブチルフェニル)−2−メチルプロピオン酸メチルエステルの分析データ]
無色液体
1H NMR (300 MHz, CDCl3) d 0.94 (d, J= 6.9 Hz, 6H), 1.73 (s, 3H), 1.83-1.96 (m, 1H), 2.50 (d, J= 7.2 Hz, 2H), 3.77 (s, 3H), 6.40 (t, J= 55.8 Hz, 1H), 7.18 (d, J= 8.4 Hz, 2H), 7.29 (d, J= 8.1 Hz, 2H).
13C NMR (75 MHz, CDCl3) d 14.4 (t, J= 4.3 Hz), 22.4, 30.1, 44.9, 52.6, 54.3 (t, J= 6.6 Hz), 116.7 (t, J= 247.2 Hz), 126.2, 129.5, 133.7, 141.7, 172.2.
19F NMR (282 MHz, CDCl3) d -124.3 (dd, J= 275.9 Hz, J= 55.8 Hz, 1F), 130.2 (dd, J= 275.9 Hz, J= 55.8 Hz, 1F).
IR (neat) 2956, 1733, 1465, 1264, 1094, 1067 cm-1.
【0089】
3,3−ジフルオロ−2−(4−イソブチルフェニル)−2−メチルプロピオン酸メチルエステル(540.6mg、2mmol)のメタノール(2.0ml)溶液に、水酸化ナトリウム水溶液(NaOH500mg、水2.0ml)を室温で加えた。反応混合液を加熱して、14時間還流させた。反応混合液を室温まで冷却した後、1N−HClを加え、酢酸エチルで抽出し、有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧下で濃縮し、濃縮残渣をカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=10:1から2:1まで)により精製し、下記式で表される3,3−ジフルオロ−2−(4−イソブチルフェニル)−2−メチルプロピオン酸を得た(497.5mg、収率98%)。
【化22】

【0090】
[3,3−ジフルオロ−2−(4−イソブチルフェニル)−2−メチルプロピオン酸の分析データ]
無色固体
1H NMR (300 MHz, CDCl3) d 0.92 (d, J= 6.6 Hz, 6H), 1.75 (s, 3H), 1.88 (m, 1H), 2.49 (d, J= 7.2 Hz, 2H), 6.38 (t, J= 55.5 Hz, 1H), 7.19 (d, J= 8.1 Hz, 2H), 7.34 (d, J= 8.1 Hz, 2H).
13C NMR (75 MHz, CDCl3) d 14.1, 22.4, 30.1, 54.1 (t, JC-F= 21.5 Hz), 116.3 (JC-F= 246.5 Hz), 129.6, 132.7, 142.1, 177.8.
19F NMR (282 MHz, CDCl3) d -124.4 (dd, JF-F= 276.5 Hz, JF-H= 55.5 Hz, 1F), -130.3 (dd, JF-F= 276.5 Hz, JF-H= 55.5 Hz, 1F).
IR (KBr) 2957, 1708, 1293, 1057 cm-1.
HRMS (ESI-TOF) calcd for C14H18F2Na1O2 [M+Na]+ m/z= 279.1173, found: 279.1172.
【0091】
合成したα−ジフルオロメチル化したイブプロフェン[3,3−ジフルオロ−2−(4−イソブチルフェニル)−2−メチルプロピオン酸]の抗炎症作用活性とイブプロフェンの活性とを0.6%酢酸ライティングテスト(writing test)により比較した。キラルなイブプロフェンはED50:7.06mg/kg,p.o.を示した。一方、合成したα−ジフルオロメチル化したイブプロフェンはED50:30mg/kg,p.o.を示した。α−ジフルオロメチル化したイブプロフェンはラセミ体であり、純粋なエナンチオマーであれば活性が増大することは疑いないので、合成したα−ジフルオロメチル化したイブプロフェンはイブプロフェンとほぼ同等の活性を有していると考えられる。
【0092】
実施例27
3−ベンジル−2−オキソピペリジン−1−カルボン酸t−ブチルエステル(0.5mmol)のテトラヒドロフラン(THF)(1.0ml)溶液中に、LHMDS(0.575mmol)を室温で添加した。この混合液に、気体状のCF3I(約1g、約5mmol)を−78℃で加えた。反応混合液を室温で12時間撹拌し、酢酸(5M−THF溶液)で室温下でクエンチした。BTF(ベンゾトリフルオリド;1μL、0.082mmol)を内標として加え、19F NMRにより分析したところ、下記式で表される3−ベンジル−3−ジフルオロヨードメチル−2−オキソピペリジン−1−カルボン酸t−ブチルエステルが19%の収率で生成していた。
【化23】

【0093】
なお、下記式で表される3−ベンジル−3−トリフルオロメチル−2−オキソピペリジン−1−カルボン酸t−ブチルエステルが収率60%で副生していた。
【化24】

【0094】
実施例28
3−ベンジル−2−オキソピペリジン−1−カルボン酸t−ブチルエステルの代わりに1−ベンゾイル−3−ベンジル−2−オキソピペリジンを用いるとともに、CF3I添加後の反応温度及び反応時間を、室温、4時間とした以外は実施例27と同様の操作を行った。反応生成物を、19F NMRにより分析したところ、1−ベンゾイル−3−ベンジル−3−ジフルオロヨードメチル−2−オキソピペリジンが30%の収率で生成していた。なお、1−ベンゾイル−3−ベンジル−3−トリフルオロメチル−2−オキソピペリジンが収率3%で副生していた。
【0095】
実施例29
3−ベンジル−2−オキソピペリジン−1−カルボン酸t−ブチルエステルの代わりに3−ベンジル−2−オキソ−1−p−トルエンスルホニルピペリジンを用いるとともに、CF3I添加後の反応温度及び反応時間を、室温、4時間とした以外は実施例27と同様の操作を行った。反応生成物を、19F NMRにより分析したところ、3−ベンジル−3−ジフルオロヨードメチル−2−オキソ−1−p−トルエンスルホニルピペリジンが43%の収率で生成していた。3−ベンジル−3−トリフルオロメチル−2−オキソ−1−p−トルエンスルホニルピペリジンは検出されなかった。
【0096】
実施例30
3−ベンジル−2−オキソピロリジン−1−カルボン酸t−ブチルエステルの代わりに3−ベンジル−2−オキソピロリジン−1−カルボン酸ベンジルエステルを用いた以外は実施例25と同様の操作を行った。反応生成物を、19F NMRにより分析したところ、3−ベンジル−3−(ジフルオロヨードメチル)−2−オキソピロリジン−1−カルボン酸ベンジルエステル(収率30%)と3−ベンジル−2−オキソ−3−トリフルオロメチルピロリジン−1−カルボン酸ベンジルエステル(収率35%)が生成していた。
【0097】
実施例31
3−ベンジル−2−オキソピロリジン−1−カルボン酸t−ブチルエステルの代わりに1−ベンゾイル−3−ベンジル−2−オキソピロリジンを用いた以外は実施例25と同様の操作を行った。反応生成物を、19F NMRにより分析したところ、1−ベンゾイル−3−ベンジル−3−(ジフルオロヨードメチル)−2−オキソピロリジン(収率18%)と1−ベンゾイル−3−ベンジル−2−オキソ−3−トリフルオロメチルピロリジン(収率18%)が生成していた。
【0098】
実施例32
3−ベンジル−2−オキソピロリジン−1−カルボン酸t−ブチルエステルの代わりに3−ベンジル−2−オキソ−1−p−トルエンスルホニルピロリジンを用いた以外は実施例25と同様の操作を行った。反応生成物を、19F NMRにより分析したところ、3−ベンジル−3−(ジフルオロヨードメチル)−2−オキソ−1−p−トルエンスルホニルピロリジンが収率45%で生成していた。3−ベンジル−2−オキソ−3−トリフルオロメチル−p−トルエンスルホニルピロリジンは検出されなかった。
【0099】
実施例33
3−ベンジル−2−オキソピペリジン−1−カルボン酸t−ブチルエステル(0.5mmol)のテトラヒドロフラン(THF)(1.0ml)溶液中に、LHMDS(1.0mmol)を−78℃で加え、1時間撹拌した。この混合液に、気体状のCF3I(約1g、約5mmol)を−78℃で加えた。反応混合液を室温で4時間撹拌し、酢酸(5M−THF溶液)で室温下でクエンチした。BTF(ベンゾトリフルオリド;1μL、0.082mmol)を内標として加え、19F NMRにより分析したところ、3−ベンジル−3−ジフルオロヨードメチル−2−オキソピペリジン−1−カルボン酸t−ブチルエステル(収率24%)と、3−ベンジル−3−トリフルオロメチル−2−オキソピペリジン−1−カルボン酸t−ブチルエステル(収率54%)が生成していた。
【0100】
実施例34
LHMDSの代わりにLTDDSを用いた以外は実施例33と同様の操作を行った。反応生成物を19F NMRにより分析したところ、3−ベンジル−3−ジフルオロヨードメチル−2−オキソピペリジン−1−カルボン酸t−ブチルエステル(収率31%)と、3−ベンジル−3−トリフルオロメチル−2−オキソピペリジン−1−カルボン酸t−ブチルエステル(収率47%)が生成していた。
【0101】
実施例35
LHMDSの代わりにLTMPを用いた以外は実施例33と同様の操作を行った。反応生成物を19F NMRにより分析したところ、3−ベンジル−3−ジフルオロヨードメチル−2−オキソピペリジン−1−カルボン酸t−ブチルエステルが収率67%で生成していた。3−ベンジル−3−トリフルオロメチル−2−オキソピペリジン−1−カルボン酸t−ブチルエステルは検出されなかった。
【0102】
実施例36
LHMDSの代わりにLDAを用いた以外は実施例33と同様の操作を行った。反応生成物を19F NMRにより分析したところ、3−ベンジル−3−ジフルオロヨードメチル−2−オキソピペリジン−1−カルボン酸t−ブチルエステル(収率9%)と、3−ベンジル−3−トリフルオロメチル−2−オキソピペリジン−1−カルボン酸t−ブチルエステル(収率23%)が生成していた。
【0103】
実施例37
3−ベンジル−2−オキソピロリジン−1−カルボン酸t−ブチルエステル(0.5mmol)のテトラヒドロフラン(THF)(1.0ml)溶液中に、テトラメチルピペリジンとn−ブチルリチウムより調製したLTMP(1.0mmol)を−78℃で加え、1時間撹拌した。この混合液に、気体状のCF3I(約1g、約5mmol)を−78℃で加えた。反応混合液を室温で4時間撹拌し、酢酸(5M−THF溶液)で室温下でクエンチした。BTF(ベンゾトリフルオリド;1μL、0.082mmol)を内標として加え、19F NMRにより分析したところ、3−ベンジル−3−(ジフルオロヨードメチル)−2−オキソピロリジン−1−カルボン酸t−ブチルエステル(2g)が収率63%で生成していた。3−ベンジル−2−オキソ−3−トリフルオロメチルピロリジン−1−カルボン酸t−ブチルエステルは検出されなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カルボニル化合物に、アルカリ金属化合物からなる塩基の存在下、CF3X(式中、Xはハロゲン原子を示す)を反応させて、カルボニル基のα位にCF2X基(式中、Xは前記に同じ)を導入することを特徴とするα−ジフルオロハロメチルカルボニル化合物の製造法。
【請求項2】
下記式(1)
【化1】

[式中、R1、R2、R3は、それぞれ、水素原子又は有機基を示す。R1とR3とは、互いに結合して、隣接するY及び2つの炭素原子とともに環を形成していてもよい。Yは単結合、酸素原子、硫黄原子又は−NZ−基(式中、Zは水素原子又は有機基を示す)を示す]
で表されるカルボニル化合物に、アルカリ金属化合物からなる塩基の存在下、CF3X(式中、Xはハロゲン原子を示す)を反応させて、下記式(2)
【化2】

(式中、R1、R2、R3、X、Yは前記に同じ)
で表される化合物を得る請求項1記載のα−ジフルオロハロメチルカルボニル化合物の製造法。

【公開番号】特開2010−150205(P2010−150205A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−331325(P2008−331325)
【出願日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【出願人】(000002901)ダイセル化学工業株式会社 (1,236)
【出願人】(304021417)国立大学法人東京工業大学 (1,821)
【Fターム(参考)】