説明

α−トコフェロールグラフトを含むアクリル又はメタクリル系ポリマー

本発明は、α−トコフェロールグラフトを有し、中性pH下、水性媒体中でナノ粒子を形成することができる新規のアクリル及び/又はメタクリル系のポリマーに関する。本発明は、活性成分、特には、低い又は平均的な水溶性の活性成分と非共有結合されているその様なナノ粒子の使用にも関し、前記活性成分を溶解し及び/又は水可溶化を増加する使用方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
本発明は、骨格に結合したα−トコフェロールグラフトを含有する、アクリル及び/又はメタクリル系の直鎖状骨格を有するポリマーに関する。これらのポリマーは水中でナノ粒子を形成し、様々な種類の活性成分を結合することができ、さらに特には活性成分の水溶解度を増加する目的のために有利であることを証明する。
【0002】
後述する通り、多数の活性成分は、治療用、予防薬用、又は化粧品用であれ、不適切であると考えられている水溶解度に関して製剤という点で問題を引き起こし得る。
【0003】
特に、経口経由、特に患者の安心や多種多様な製剤との相性に関して活性成分の投与が特に重んじられる経路での投与に適合するように弱水溶性の活性成分を処方することは非常に困難であることを、証明している。
【0004】
従って、生物薬剤学分類のクラスII又はクラスIVの活性成分、AIsは、それらの低溶解性によって制限される経口生物学的利用率を大抵有している。特に、腫瘍の治療のために広く使用されているパクリタキセル、天然タキソイドはこれらの弱水溶性活性成分の代表である。該化合物の非常に低い水溶性、1μg/ml未満、はその製剤を困難にする。
【0005】
この背景において、活性成分の水溶解度を増加できる添加剤の開発は相当興味深い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
理想的には、可溶化添加剤はいくつかの必須特性を有さなければならない。
【0007】
第一に、明白な理由のために、高い可溶化力を有さなければならない。その為、ポリマーには十分に大量のAIを可溶化することが必要とされる。これには2つの利点がある。この能力は添加剤の量を最小にすることができ、非経口の場合、許容量のために非常に重要であり得る。さらに、高い溶解度は、経口経由又は非経口経由であれ、単回投与を患者へ投与しやすくすることができる。
【0008】
一方で、低い粘度を持つことは可溶化添加剤を用いた活性成分の製剤に有利である。そのため、非経口投与向けの活性成分にとって、活性成分及び可溶化添加剤を含む懸濁物の粘度は、小さい直径を有する針、例えば27ゲージ〜31ゲージ針を通して容易に注射できる程に十分低くなければならない。実際、錠剤に含まれるAIの経口投与の場合にさえ、活性成分を可溶化する懸濁物の低い粘度は、微小粒子、錠剤、又は該技術分野における当業者が知っているその他の医薬品形態の製造段階に明白に有利な状態である。この低い粘度の要求は特に限定的であり、可溶化添加剤の許容量を制限し、及び高水溶性であるが高粘度である高分子量ポリマー系添加剤の使用を排除する。
【0009】
十分に高い濃度で活性成分の可溶化を許し、同時に上述した基準の全てを満たす可溶化添加剤の開発は困難である。
【0010】
弱水溶性活性成分の生物学的利用能の不足を補うために、いくつかの代替物が既に提供されている。最近では、特に有用な代替物はミセル溶液を利用している。そのため、両新媒性のコポリマー、例えばPLGA−PEGダイブロックコポリマーによって形成された高分子ミセルが知られている。この製剤方法では、活性成分はミセルの疎水性PLGA核にて可溶化される。
【0011】
しかし、この方法は特に二つの制約を有している:一つには、例えば平均的な溶解性のペプチドのような、適度に溶解するAIは疎水性の核にて可溶化するのが困難であり得り、また他方には、該ナノ粒子の製造方法は、疎水性溶液にPLGAを可溶化する段階、ある不安定なAIには避けられなければならない段階を含む。
【0012】
これらの欠点を解決するために、出願人は、約10年間、ポリグルタミン酸に基づく、様々な疎水性グラフトを含有するポリマーを開発してきた。これらのポリマーはインスリンやインターフェロン・アルファのようなタンパク質の調節された放出の分野において特に使用されている。国際公開03/104303号公報は、更に特に、ポリアミノ酸、特にはポリグルタミン酸のポリマーを記載しており、エステル官能基によって、グルタミン酸のガンマ位でカルボキシレートに結合されたα−トコフェロールグラフトを含むタイプを記載している。該ポリマーは水中でナノ粒子を形成し、及び低分子又はタンパク質を結合することができる。皮下組織への注射による投与後、これらのナノ粒子は数日から2週間まで変化できる一定期間に渡ってタンパク質を放出する。これらのポリマーは生体内で酵素によって生物分解される。
【0013】
しかし、この代替物は特に高価であるという欠点を有し、ポリグルタミン型ポリマーの特に高い製造費を与えられる。
【0014】
さらに、腸管に存在する酵素による加水分解に対する増加した耐性を示しているポリマーを有し得るのに有利であろう。
【0015】
そのため、酵素加水分解による分解に対する改善された耐性を示しており、水性媒体中で安定であるナノ粒子を形成することができ、及び、ナノ粒子状態で、活性成分、特には、低い及び平均的な水溶性の活性成分と非共有的に結合し、また生体内でそれらから分離されることができる、両親媒性ポリマーのより実用的な代替物を有することを依然と必要としている。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、上述した要求の全てを満たすことができる、新規な類のポリマー及び新規な組成物を目的とすることをまさに意図している。
【0017】
更に正確には、その態様の一つに従い、本発明は、アクリル及び/又はメタクリル系の直鎖状骨格を有し、該骨格にα−トコフェロールグラフトが結合しているポリマーにおいて、前記α−トコフェロールグラフトが、少なくとも1の加水分解性基によって部分的に形成されたスペーサーを介して前記骨格に結合しており、前記骨格上の前記グラフトの分布はランダムであることを特徴とする、ポリマーに関する。
【0018】
有利には、これらのポリマーは生体適合性を有する。
【0019】
好ましくは、本発明のポリマーは、30モル%に等しい又はそれ未満である、α−トコフェロール基のモルグラフト率を示す。
【0020】
更には、本発明のポリマーは、水性媒体、pH5〜8である水媒体、特には水に分散させると、自発的にナノ粒子を形成することができる。
【0021】
別の態様に従い、本発明は、先に定義した少なくとも1のポリマーを含有する組成物に関し、特には製薬、化粧品、食事、又は植物衛生に関する。
【0022】
特には、本発明の組成物は、少なくとも1の活性成分、特には低い又は平均的な水溶性の活性成分を含むことができ、該活性成分は先に定義した少なくとも1のポリマーによって形成されたナノ粒子に非共有結合されている状態で存在する。
【0023】
本発明の組成物は、特に、活性成分の調節された放出特性を時間関数として確保できる。
【0024】
別の態様に従い、本発明はまた、活性成分の伝達、溶解、及び/又は水可溶化を増加することを目的として、活性成分、特には低い又は平均的な水溶性の活性成分と非共有結合されている、本発明の少なくとも1のポリマーのナノ粒子の使用方法にも関する。
【0025】
以下に示す通り、本発明に従うポリマーは、特にアクリル及び/又はメタクリル系の骨格に関して有能である。
【0026】
先ず第一に、該アクリル及び/又はメタクリル系のポリマー骨格は生体内で酵素によって分解するのが困難である。
【0027】
これらはまた、市販品であり、比較的安価である。
【0028】
そのため、アクリル又はメタクリル系のポリマーは、経口経由による投与のための生薬の分野において既に多数の使用を有している。商品名でカーボポール(登録商標)又はカルボマー(登録商標)として知られている一般に使用されているポリマーは、ビスコシファイヤー、放出制御マトリクス、又は粘膜付着性剤として非常によく使用されている、架橋ポリマーである。商品名でユードラギット(登録商標)、コリコート(登録商標)、又はイーストアクリル(登録商標)として知られている他の類は、例えば高濃度エマルション又は懸濁物である。これらのポリマーは固形物、塗膜、又は高濃度材料として一般的に使用されている。しかし、この種のポリマーは本出願人により要求された特性を得ることはできない。
【0029】
一方、本発明に従うアクリル又はメタクリル系のポリマー、すなわち、少なくとも一の加水分解性基によって部分的に形成されたスペーサーを介して、そのポリマー骨格にα−トコフェロールグラフトを支持しているポリマーは、これまで一度も記載されていない。
【0030】
Plasencia et al., J. Mater. Sci. 1999, 641−648は、2−ヒドロキシエチルメタクリレート系モノマーとトコフェロールメタクリレート系モノマーのラジカル共重合から得られるコポリマーのフィルムを記載している。これらのコポリマーは腱の瘢痕形成用途に推薦されている。これらは、水(膜)の存在下で水和され水相で分散性でないヒドロゲルを形成する。
【0031】
Yasuzawa et al.は文献Makromol. Chem. Rapid. Commum. 1985, 6, 727−731にて、ホスファチジル基を含むアクリルモノマーとα―トコフェロールのラジカル重合によって得られるアクリル系のホモポリマーを記載している。ここで得られるポリマーも水相で非分散性である。
【0032】
Kim et al.(US 5,869,703)は、アクリレート又はメタクリレート基を含有する非イオン性α−トコフェロールモノマーを記載している。これらのモノマーから生じ、水中でラジカル重合により調製されるホモポリマーは、300〜1200nmのベシクルの形で自らをまとめることができる。該非イオン性ベシクルは酸化防止剤として推薦されている。
【発明の効果】
【0033】
α−トコフェロールグラフトとアクリル及び/又はメタクリルポリマー鎖の間で本発明に従う特定の種類の結合をすることを基準として、水相で安定であり及び加水分解性であるナノ粒子システムを形成する、アクリル及び/又はメタクリル系の直鎖状骨格を有し、及びα−トコフェロールグラフトを有する新規のポリマーを開発したことは本出願人の名誉である。
【0034】
従って、以下に記載されている実施例によって示されるように、本発明のポリマーは、弱可溶性である又は水に不溶でさえある活性成分、及び、いかなる種類の、特にはペプチドやタンパク質系の、より一般的な活性成分の溶解度を顕著に増加することを可能にする。更には、これらのポリマーの有利に低い粘度は、その濃度を増加することにより、溶液中で活性成分の量を増加することを可能にする。
【0035】
別の態様に従い、本発明は、先に定義したポリマーの製造方法に関し、該製造方法は、それらの相互作用に好適な条件下で、少なくとも1の(メタ)アクリル(コ)ポリマーと、前記ポリマーの酸性官能基と相互作用できる官能基を遊離末端に与えられたスペーサーで官能化されたα−トコフェロール誘導体の少なくとも1とを接触させることを少なくとも含み、前記スペーサーが、前記(コ)ポリマーとの反応の完了時に、少なくとも1の加水分解性基を含むものであることを特徴とする。
【発明を実施するための形態】
【0036】
(メタ)アクリル系のポリマー
「アクリル及び/又はメタクリル系の」ポリマーは、その直鎖状骨格又はその主鎖もが、アクリル酸及び/又はメタクリル酸単位によって、及び、メチル、エチル、プロピル、又はブチルアクリレート及び/又はメタクリレート単位によって形成されているポリマーを意味する。
【0037】
少なくとも1のα−トコフェロール単位を有する上記骨格を形成しているアクリル酸又はメタクリル酸単位の誘導体化は、アクリレート又はメタクリレート単位へのこれらの単位の転化を引き起こすと理解されている。
【0038】
もちろん、該ポリマー鎖は、トコフェロール基によって誘導化されたものとは異なるアクリレート及び/又はメタクリレート単位を更に含むことができる。
【0039】
例えば、アクリレート及び/又はメタクリレート単位は、以下で説明するポリアルキレングリコール単位、又は本発明に従うスペーサーによって誘導体化されることができるが、トコフェロール単位によってその遊離末端で官能化されることはできない。
【0040】
上記の適例は、特に、本発明のポリマーが、ポリマー鎖上へスペーサーをグラフティングし、その後α−トコフェロールの連続的なグラフティングが起きる前段階に係る方法にて調製されるときに生じることができ、後者はそのときグラフトされたスペーサーの全てと反応しない。
【0041】
本発明のアクリル及び/又はメタクリル系の(コ)ポリマーの主鎖は、アクリル酸及びアクリレート単位又はメタクリル酸及びメタクリレート単位を含むことができ、又は、主鎖が少なくとも2の異なるモノマーの共重合によって形成された、例えばアクリル及びメタクリル系のコポリマーである場合には、二つの先の代替物の混合物をも含むことができる。
【0042】
好ましくは、本発明のポリマーは、上記で特定した通り、アクリル酸及びアクリレート系単位によって構成されており、後者はα−トコフェロールグラフトを含有する。
【0043】
α−トコフェロールグラフトを支持するアクリレート及び/又はメタクリレート系の単位の分配は、本発明に従い、そうして構成されたポリマーがランダムタイプのポリマーであるようなものでよい。
【0044】
「ランダムタイプのポリマー」は、α−トコフェロールグラフトを支持するアクリレート及び/又はメタクリレート系のモノマー単位が、隣接する単位の性質とは無関係に、ポリ(メタ)アクリル鎖に不規則に分配されていることを意味する。
【0045】
特に好ましい態様に従い、本発明に従うポリマーのα−トコフェロールグラフトに付されるモルグラフト率は、30モル%に等しい又はそれ未満、特には20モル%に等しい又はそれ未満、特には3モル%に等しい又はそれより大きく、好ましくは5モル%と10モル%の間に含まれる。言い換えると、本発明に従う(コ)ポリマーの骨格を形成するアクリル及び/又はメタクリル単位の30%以下が、α−トコフェロール系のサイドセグメントを支持する。
【0046】
該α−トコフェロールは、D−α−トコフェロール型(その天然型)又はD,L−α−トコフェロール型(ラセミ体及び合成型)で存在することができる。
【0047】
本発明に従うα−トコフェロールは天然起源又は合成起源であることができる。好ましくは、α−トコフェロールは合成起源のものである。
【0048】
先に述べた通り、本発明に従うポリマーの主鎖へのα−トコフェロールの結合はスペーサーを介して固定される。
【0049】
本発明の「スペーサー」は、少なくとも1の加水分解性基によって部分的に形成された化学的な存在を表している。そのため二官能性であり単純な化学結合とは異なる。同様に、このスペーサーは、ポリマー骨格の酸性官能基とトコフェロール骨格をもたらす官能基との直接的な相互作用によって得られる反応単位とは異なる。
【0050】
該加水分解性基は、ポリマー骨格に結合した上記スペーサーの末端、α−トコフェロール基に結合した上記スペーサーの末端、又は上記スペーサーの内部に位置することができる。
【0051】
好ましい変形に従い、該加水分解性基は、ポリマー骨格に存在する官能基又はα−トコフェロール分子に存在する官能基と、スペーサーの前駆体分子に存在する反応性基との反応により生じる。
【0052】
該スペーサーは少なくとも1の炭素原子を含む。
【0053】
(コ)ポリマーの(メタ)アクリレート系単位にα−トコフェロール単位が結合している本発明に従うスペーサーは、有利に二つの加水分解性基を含有しており、一つはポリマー骨格との共有結合を、もう一つはα−トコフェロール単位との共有結合を示している。
【0054】
該スペーサー上に存在する加水分解性基は、より好ましくはエステル、アミド、カーボネート、又はカルバメート基である。
【0055】
本発明の好ましい態様に従い、本発明に従うスペーサーはアミノ酸残基である。好ましくは、天然アミノ酸残基であり、特には、アラニン、グリシン、フェニルアラニン、又はロイシンから選択される。
【0056】
特に好ましい態様に従い、該スペーサーはアラニン残基である。
【0057】
特に有利な態様に従い、本発明に従うポリマーは下記式(I)のポリマーである。
【化1】

(I)
式中、
、R及びRは独立にH又はメチルを表し、
−R−A−(R−は本発明のスペーサーを構成し、
は−NH−又は−O−を表し、
Aは、直鎖状C〜Cアルキル、又は直鎖状又は分岐状C〜Cアルキル、又はベンジル基で置換されたメチレンを表し、
pは0又は1に等しく、好ましくはpは1に等しく、
はC=O、O−C=O、又はNH−C=Oを表し、
は−OH又はOMを表し、Mはカチオンを表し、又はRはエステル基又はアミド基を介してポリマーに結合したポリアルキレングリコール置換基を表し、
m及びnは正の整数であり、
qは0に等しい又は正の整数であり、好ましくはqは0に等しく、
(m+n+q)は20〜300,000であり、
α−トコフェロール基のモルグラフト率n/(m+n+q)は30モル%に等しい又はそれ未満であり、
式(I)の骨格を形成している二種又は三種の単位の順序は全くランダムである。
【0058】
特に有利な態様に従い、本発明に従うポリマーは下記式(I’)のポリマーである。
【化2】

(I’)
式中、R〜R、m、n及びpは先に定義した通りである。
【0059】
先の定義に示される通り、上述した一般式(I)及び(I’)は、骨格を形成している二種又は三種の表された単位間の特定の状態に関しており、連続した(又はブロック)コポリマーを表すものとして解釈されるべきでない。本発明の意味においては、二種又は三種の単位の連続の順序は全くランダムである。
【0060】
有利には、ポリ(メタ)アクリルポリマーは、中性(COOH型)であるか、又はpHに基づきイオン化された、およびその組成物であるカルボキシル基を含む。
【0061】
水溶液にて、カウンターカチオンは、ナトリウム、カルシウム、マグネシウム、又はアンモニウムのような無機カチオン、又は、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、トリ(ヒドロキシメチル)アミノメタン又はテトラアルキルアンモニウム(アルキルはメチル、エチル、プロピル又はブチル)のプロトン化型、又はアミノ酸、特にはリジン又はアルギニンのプロトン化型のような有機カチオンであることができる。
【0062】
特には、上記式(I)又は(I’)において、p=0のとき、α−トコフェロール単位を(コ)ポリマーの(メタ)アクリル系単位に結合している本発明に従うスペーサーは、アミド基又はエステル基であり得る(メタ)アクリレート単位に結合する一つの加水分解性基を含む。
【0063】
好ましい態様ではpは1に等しく、該スペーサーはそして二つの加水分解性基を有する。
【0064】
一般式(I)又は(I’)のポリマー、好ましくは式(I’)のポリマーであり、pが1に等しく、加水分解性化学構成−R−A−R−がアミノ酸残基、好ましくは天然アミノ酸残基を構成しているポリマーが、かなり特に本発明に適している。
【0065】
特に好ましい態様に従い、本発明に従うポリマーは、式(I)又は(I’)のポリマー、好ましくは式(I’)のポリマーであり、−R−A−R−がアラニン残基を構成するポリマーである。
【0066】
特に際立つ態様に従い、本発明に従うポリマーは2,000〜1,000,000、好ましくは5,000〜50,000の範囲にある平均モル質量を有する。
【0067】
有利には、該ポリマーは生体適合性である。
【0068】
先に特定されたように、本発明に従う(コ)ポリマーは、特にはポリマーを構成している(メタ)アクリレート系単位に結合された、1又はそれ以上のポリアルキレングリコール系グラフトをさらに支持することができる。
【0069】
好ましくは、ポリアルキレングリコールグラフトは、1,000〜5,000kDaの範囲にある平均モル質量を有するポリエチレングリコールであり、下記構造の一つにより図式的に表されることができる。
【化3】

【0070】
このようなグラフトはエステル基(式(II))又はアミド基(式(III))を介してポリマーに結合されている。
【0071】
好ましくは、ポリアルキレングリコール系グラフトは、1〜10%の範囲のグラフトモル%で使用される。
【0072】
上記で特定した通り、本発明に従うポリマーは、pH5〜7の範囲を有する水性媒体、特には水に分散されると、自発的にナノ粒子を形成することができる。
【0073】
一般的に、ナノ粒子の形成は、ナノドメインでの疎水性基の分離を伴う多数のポリマー鎖の自己会合による。ナノ粒子は1以上の疎水性ナノドメインを含むことができる。
【0074】
ナノ粒子のサイズは、1〜1,000nm、特には5〜500nm、特には10〜300nm、さらに特には10〜200nm、さらには10〜100nmに変化できる。
【0075】
ナノ粒子のサイズは光回折によって測定され得る。
【0076】
調製方法
先に特定した通り、本発明に従うポリマーは、それらの相互作用に好適な条件下で、少なくとも1の(メタ)アクリル(コ)ポリマーと、前記ポリマーの酸性官能基と相互作用できる官能基を遊離末端に与えられたスペーサーで官能化されたα−トコフェロール誘導体の少なくとも1とを接触させることを少なくとも含み、前記スペーサーが、前記(コ)ポリマーとの反応の完了時に、少なくとも1の加水分解性基を含む方法により得ることができる。
【0077】
本発明に従うスペーサーで官能化されたα−トコフェロール誘導体の例として、国際公開03/104303号公報の実施例に記載されるように、α−トコフェロールロイシンで作られることができる。
【0078】
α−トコフェロールグリシン及びα−トコフェロールγ−アミノブチレートも、Takata et al.,J. Pharm. Sci.,1995, 84, 96−100に記載されている通り、引用されることができる。
【0079】
好ましい変形に従い、上記(コ)ポリマーと上記α−トコフェロール誘導体との相互作用又はグラフティングが、二つの化合物間の結合部位で加水分解性基の形成をもたらす。
【0080】
そのような方法は、特にグラフト率を調整しやすくすること、及びランダム型のポリマーを得ることを可能にする。
【0081】
本発明に従い官能化されたα−トコフェロール誘導体と(メタ)アクリル(コ)ポリマーの酸性官能基とのグラフティングは、本技術分野における当業者の能力の範囲内である。
【0082】
二種類の化合物は、30モル%未満の比率でグラフティングが有利に行われるように調整された重量又はモル比にて接触させられる。
【0083】
例えば、二つの化合物間の共有結合の確立は、カップリング剤としてのカルボジイミドの存在下で、好ましくは4−ジメチルアミノピリジンのような触媒の存在下で、及びジメチルホルムアミド(DMF)のような適切な溶媒中で、ポリ(メタ)アクリル(コ)ポリマーとスペーサーにより官能化されたα−トコフェロール誘導体との反応により容易に成し遂げられる。グラフト率は構成成分及び試薬及び/又は反応時間の化学量論によって化学的に制御される。
【0084】
特に好ましい態様に従い、α−トコフェロール誘導体は、遊離末端に1級アミノ基を有し上記(メタ)アクリル系(コ)ポリマーにグラフティング後にアミド結合を形成するスペーサーによって官能化される。
【0085】
好ましい変形に従い、上記スペーサーはアミノ酸残基である。対応するα−トコフェロール誘導体の(メタ)アクリル(コ)ポリマーへのグラフティングは、その後、該スペーサーの遊離アミノ基と、該(コ)ポリマーの(メタ)アクリレート単位の酸性官能基との反応を介して行われる。
【0086】
本発明に従うスペーサーによるα−トコフェロールの官能化に関しては、これもまた、本技術分野の当業者の能力の範囲内である。
【0087】
例えば、カップリング剤と触媒の存在下で、α−トコフェロールと二官能試薬、本発明に従い検討されるスペーサーの前駆体との反応によって行われることができ、その官能基の一つはα−トコフェロールに関する反応である。α−トコフェロールとの反応に貢献しない第二の官能基は、その後、保護基で保護される形で一般的に使用される。カップリング反応の完了時に、この第二の官能基は、保護基で保護されているならば、(メタ)アクリル(コ)ポリマーの酸性官能基と相互作用させるために脱保護される。
【0088】
例えば、α−トコフェロールの官能化は、α−トコフェロールと、一方に保護されたアミノ基又はアルコール基を含み、他方にカップリング剤と触媒の存在下でα−トコフェロールと反応することができるカルボキシル基を含む試薬との反応によって行われることができる。いったん脱保護されると、アミノ基又はアルコール基は、その後、α−トコフェロールによって官能化されたスペーサーのポリマーに対するグラフティングを許す。例として、スペーサーがアラニンの場合、トコフェロールアラニン誘導体を調製するためにBoc−アラニン誘導体が試薬として使用される。
【0089】
別の変形に従い、「スペーサー」を先ずポリマーにグラフトし、その後、α−トコフェロールを、先に記述され及び本技術分野における当業者に周知であるいくつかの化学反応でグラフトすることもできる。この場合、本発明のポリマーにおいて、α−トコフェロールによって官能化されない形態にあるスペーサーのいくつかを有することができる。
【0090】
特に好ましくは、先に記述されたような少なくとも1のポリマーによって形成されるナノ粒子が、活性成分と容易に非共有結合できる。
【0091】
活性成分
本発明は、大抵の活性成分、特には平均的な又は低い水溶性の活性成分の水可溶化を増加することを有利に可能にする。
【0092】
本発明は、従って、弱水溶性活性成分に関して極めて特別な有用性を明らかにする。
【0093】
本発明の意味の範囲内では、低い水溶性の活性成分は、大気温度、即ち約25℃で測定された、純水に1g/l未満、特には0.1g/l未満の溶解度を有する成分である。
【0094】
本発明の意味の範囲内では、純水は中性(pH5とpH8の間)に近いpHを有する水であり、界面活性剤やポリマー(PVP、PEG)のような該技術分野における当業者に周知の他の可溶化成分を有さないものである。
【0095】
本発明に従い検討される活性成分は、有利には、動物や人に投与され得る生物活性化合物である。
【0096】
一態様の変形に従い、これらの活性成分は非ペプチドである。
【0097】
通常、本発明に従う活性成分は、治療用、化粧品用、予防薬用、又は画像処理用のどんな分子であってもよい。
【0098】
従って、製薬の分野において、本発明に従う低い水溶性を有する活性成分は、特に、抗がん剤、β−ブロッカー、抗カビ剤、ステロイド、抗炎症剤、性ホルモン、免疫抑制剤、抗ウイルス剤、麻酔剤、抗吐薬、及び抗ヒスタミン剤から選ばれ得る。
【0099】
さらに特には、低水溶性を有する特定の活性成分を表すものとして、パクリタキセル、ニフェジピン、カルベジロール、カンプトテシン、ドキソルビシン、シスプラチン、5−フルオロウラシル、シクロスポリンA、PSC 833、アンホテリシンB、イトラコナゾール、ケトコナゾール、ベタメタゾン、インドメタシン、テストステロン、エストラジオール、デキサメタゾン、プレドニソロン、トリアムシノロンアセトニド、ニスタチン、ジアゼパム、アミオダロン、ベラパミル、シンバスタチン、ラパマイシン、及びエトポシド等のタキサン誘導体が言及されてよい。
【0100】
特定の一態様に従い、本発明に従って検討される活性成分は、治療目的の活性成分である。
【0101】
別の特定の態様に従い、活性成分は、パクリタキセル、カルベジロール塩、シンバスタチン、ニフェジピン、及びケトコナゾールから選ばれ得る。
【0102】
本発明の一態様に従い、活性成分は平均的な水溶性の分子であることができ、その溶解度は本発明に従う組成物により増加させられ得る。
【0103】
平均的な水溶性の分子とは、大気温度下で先に示した通り測定される純水中でのその溶解度が、純水の1〜30g/Lの間に含まれる、特には2〜20g/Lの間に含まれる分子を意味する。
【0104】
特定の一態様に従い、本発明に従い検討される活性成分は、ペプチド又はタンパク質系のものである。
【0105】
ペプチド又はタンパク質に関して、それらの可溶化は、本質的にその用量としてかなり制限され得るが、より低いものであり得る。実例であり非限定的である本発明に従う活性成分の例としては、特に:
−タンパク質又は糖たんぱく質、特にはインターロイキン、エリトロポイエチン、又はサイトカイン、
−1以上のポリアルキレングリコール鎖[好ましくは、ポリエチレングリコール(PEG):「PEG化タンパク質」]に結合したタンパク質、
−ペプチド、
−多糖、
−リポ糖
−オリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチド
及びこれらの混合物、が言及されればよい。
【0106】
さらに特には、下記ペプチド又はタンパク質を言及してもよい:インスリン又は類似体、GLP−1誘導体、エキセナチド、サイクロスポリン、インターフェロン、インターロイキン、及び成長ホルモン。
【0107】
活性成分とポリマーの組合せ
活性成分は、先に記載したポリマーと自発的に結合することができる。
【0108】
1以上の活性成分と本発明に従うポリマーの間にある関係を特定するために使用される用語「結合」又は「結合された」は、非共有的な物理学的相互作用、特には疎水性相互作用、及び/又は静電的相互作用、及び/又は水素結合によって、及び/又は本発明に従うポリマーによる立体的封入を介して、活性成分又は成分がポリマーと結合されていることを示す。
【0109】
該組合せは、通常、疎水性相互作用及び/又は静電的相互作用の問題であり、ポリマー単位、特には疎水性又はイオン化された単位によって成され、この種の相互作用を生み出すことができる。
【0110】
1以上の活性成分と本発明に従うポリマーとの組合せの技術は、特に、米国特許6630171号に記載されているものと同様である。
【0111】
得られる粒子の化学的架橋結合の段階はひとつも提供されない。化学的架橋結合の欠如は、活性成分を含む粒子を架橋結合する段階の間に活性成分の化学的分解を避けることを可能にする。そのような化学的架橋結合は実際には、重合可能物質の活性化によって通常行われ、UV放射物やグルタルアルデヒドのような変性剤を潜在的に含む。
【0112】
活性成分とポリマーの本発明に従う組合せは、特には、下記態様によって行われ得る。
【0113】
第一の態様では、該活性成分は、水溶液に溶解され、ポリマーの水性懸濁物と混合される。
【0114】
第二の態様では、粉末状態にある活性成分が該ポリマーの水性懸濁物に分散され、該混合物は均一で透明な懸濁物が得られるまで撹拌される。
【0115】
第三の態様では、該ポリマーは、粉末状態にて活性成分の分散液又は水溶液に導入される。
【0116】
第四の態様では、該活性成分及び/又は該ポリマーは、エタノールやイソプロパノールのような水に混和できる有機溶媒を含む溶液に溶解される。上記態様一〜三に従う工程がその後続けられる。任意的に、透析又は該技術分野における当業者に知られている他の技術によってこの溶媒は除去され得る。
【0117】
これらの態様全てにとって、超音波又は温度上昇を使用して活性成分とポリマーの間の相互作用を促進することは有利であり得る。
【0118】
微小粒子
本発明の態様に従い、前記活性成分と非共有結合されるナノ粒子は、微小粒子の形で本発明に従う組成物に利用され得る。
【0119】
第一の態様に従い、これらの微小粒子は、該技術分野における当業者に知られている方法、例えば、非限定的な例として、フロキュレーション、微粒化、凍結乾燥、又はコアセルベーションに従う本発明のナノ粒子の凝集によって得ることができる。
【0120】
ナノ粒子体または微小粒子体は、中性又はイオン化された形態で、より一般的には、単独で、又は液体組成物、固体組成物、又はゲル組成物にて、及び水性媒体又は有機媒体にて使用されることができる。
【0121】
微小粒子体は、通常、前記ナノ粒子を含む核及び少なくとも1の被膜を有する。
【0122】
有意には、本発明のポリマーは、被膜物質単体として又は特に後述される他のポリマーとの組合せで使用されることもできる。
【0123】
別の態様に従い、微小粒子は上記ナノ粒子を含む核と、pHの関数としての前記活性成分の調節された放出特性に影響する少なくとも1のコーティング層を有しており、前記コーティング層が、5より小さいpHで水に不溶であり7より大きいpHで水に可溶であり、少なくとも1の疎水性化合物Bと結合されているポリマーAの少なくとも1を含む物質によって形成されている。
【0124】
pHの関数としての微小粒子からのナノ粒子の調節された放出は、それぞれの貯留粒子の核を囲む被膜によって確実にされる。該被膜は、例えば胃腸管で活性成分の吸収ウィンドウに相当する胃腸管のまさに特定の側で、活性成分及び(メタ)アクリル(コ)ポリマーを放出するために構成される。
【0125】
該被膜の特性に起因して、本発明に従い検討される微小粒子は、時間とpHの関数としてダブルの放出機構を有利に有する。
【0126】
この言い回しは、これらが下記二つの特異性を有することを意味する。これら微小粒子の被膜を形成するポリマーAの可溶化pH値の下で、これらはナノ粒子の極めて制限された量のみを放出する。一方で、これらが腸又は類似媒体に存在するとき、これらはナノ粒子の効果的な放出を確実にする。該放出は、その後、24時間未満で、特には12時間未満で、特には6時間未満で、特には2時間未満で、又は1時間未満で有利に行われ得る。
【0127】
例えば十二指腸又はパイエル板に限定された、極めて狭い吸収ウィンドウを有する活性成分の場合、ナノ粒子の放出時間は2時間未満であり、好ましくは1時間未満である。
【0128】
従って、本発明に従う組成物は、第一段階にて本発明のポリマーのナノ粒子と結合された活性成分の放出を促進し、その後の第二段階にて該ナノ粒子からの活性成分の分離を促進する。
【0129】
本発明のこの変形に従い検討される微小粒子の大きさは、有利には、2,000μm未満、特には100〜1,000μmに変化し、特には100〜800μmであり、特には100〜500μmである。
【0130】
微小粒子の大きさは、レーザー粒度分布によって測定されることができる。
【0131】
本発明の態様の変化に従い、ナノ粒子の被膜は、下記を混合することにより得られる複合材料によって形成され得る:
−5より小さいpHで水に不溶であり7より大きいpHで水に可溶である少なくとも1の化合物A;
−少なくとも1の疎水性化合物B;
−及び任意で、少なくとも1の可塑剤、一つの酸化防止剤、及び/または他の従来の添加剤。
【0132】
ポリマーA
本発明に適する、即ち、5より小さいpHで水に不溶であり7より大きいpHで水に可溶であるポリマーAの非制限的な例として、特には下記が言及され得る:
−メタクリル酸とメチルメタクリレートコポリマー、
−メタクリル酸とエチルアクリレートコポリマー、
−酢酸フタル酸セルロース(CAP)、
−酢酸コハク酸セルロース(CAS)、
−酢酸トリメリット酸セルロース(CAT)、
−フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース(即ちフタル酸ヒプロメロース)(HPMCP)、
−酢酸コハク酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース(即ち酢酸コハク酸ヒプロメロース)(HPMCAS)、
−カルボキシメチルエチルセルロース、
−シェラックガム、
−酢酸フタル酸ポリビニル(PVAP)、
−及びこれらの混合物。
【0133】
本発明の好ましい態様に従い、該ポリマーAは、メタクリル酸とメチルメタクリレートコポリマー、メタクリル酸とエチルアクリレートコポリマー、及びこれらの混合物から選択される。
【0134】
ポリマーAは、5〜7の間で構成される所定のpH値で水に溶解し、この値は、化学的性質及び鎖長のような、ポリマーAに内在する物理化学的特性の関数として変化する。
【0135】
例えば、ポリマーAは、可溶pH値が
−5.0であるポリマー、例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、特には信越によりHP−50の名前で市販されているもの、
−5.5であるポリマー、例えば、フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、特には信越によりHP−55の名前で市販されているもの、又は、メタクリル酸とエチルアクリレートコポリマー1:1、特には、エボニックによりユードラギット L 100−55の名前で市販されているもの、
−6.0であるポリマー、例えば、メタクリル酸とメチルメタクリレートコポリマー1:1、特には、エボニックによりユードラギット L 100の名前で市販されているもの、
−7.0であるポリマー、例えば、メタクリル酸とメチルメタクリレートコポリマー1:2、特には、エボニックによりユードラギット S 100の名前で市販されているもの
であることができる。
【0136】
これらのポリマーの全ては、その可溶pHより大きいpH値にて可溶性である。
【0137】
被膜は、その合計重量に対し、25〜90重量%、特には30〜80重量%、特には35〜70重量%、又は40〜60重量%のポリマーAで有利には構成される。
【0138】
さらに好ましくは、ポリマーAはメタクリル酸とエチルアクリレートコポリマー1:1である。
【0139】
疎水性化合物B
第一の変形に従い、化合物Bは、固体状態の結晶化された生成物から選択され、及び、融点Tfb≧40℃、好ましくはTfb≧50℃、さらに好ましくは40℃≦Tfb≦90℃を有する。
【0140】
さらに好ましくは、該化合物はそして下記生産物の群から選択される:
−植物ろう、特には1種で又は相互混合物で、例えば、ダイナサン(登録商標)P60;ダイナサン(登録商標)116の名前で市販されているもの;
−水素化された植物油の1種又は相互混合物;好ましくは、水素化された綿実油、水素化された大豆油、水素化されたヤシ油、及びこれらの混合物を含む群から選択されたもの;
−グリセロールのモノ及び/又はジ及び/又はトリエステル、及び少なくとも1の脂肪酸、好ましくはベヘン酸のモノ及び/又はジ及び/又はトリエステル、特には1種で又は相互混合物で;
−及びこれらの混合物。
【0141】
この態様に従い、B/A重量比は0.2と1.5の間、好ましくは0.45と1の間を変化できる。
【0142】
更に好ましくは、化合物Bは水素化された綿実油である。
【0143】
その様な被膜は特には国際公開03/30878号公報に記載されている。
【0144】
第二の変形に従い、該化合物Bは水に不溶であるポリマーであることができる。
【0145】
水に不溶のポリマーBは、更に特には、エチルセルロース、例えばエトセル(登録商標)の名前で市販されているもの、酢酸酪酸セルロース、酢酸セルロース、アンモニオ(メタ)アクリレートコポリマー(エチルアクリレート、メチルメタクリレート、及びトリメチルアンモニオエチルメタクリレートのコポリマー)、特にはユードラジット(登録商標)RL及びユードラジット(登録商標)RSの名前で市販されているもの、ポリ(メタ)アクリル酸エステル、特にはユードラジット(登録商標)NEの名前で市販されているもの、及びこれらの混合物から選ばれる。
【0146】
エチルセルロース、酢酸酪酸セルロース、及びアンモニオ(メタ)アクリレートコポリマー、特にはユードラジット(登録商標)RS及びユードラジット(登録商標)RLの名前で市販されているものは、本発明に極めて特に適する。
【0147】
微小粒子の被膜は、その合計重量に対し、10重量%〜75重量%、好ましくは15重量%〜60重量%、更に好ましくは20重量%〜55重量%、又は25重量%〜55重量%、更に特には30〜50重量%のポリマーBを含むことができる。
【0148】
有利には、被膜は、この態様に従い、0.25より大きい、特には0.3に等しい又はそれより大きい、特には0.4に等しい又はそれより大きい、特には0.5に等しい又はそれより大きい、又は0.75に等しい又はそれより大きい、ポリマーB/ポリマーA重量比にて、ポリマーAとポリマーBの二種類の混合物から形成されることができる。
【0149】
本発明の別の態様の変形に従い、該ポリマーA/ポリマーB比は、更には8より小さく、特には4より小さく、又は2より小さく、更に特には1.5より小さい。
【0150】
一つの特定の態様に従い、微小粒子の被膜は、ポリマーAとして、少なくともエチルセルロース、又は酢酸酪酸セルロース、又はアンモニオ(メタ)アクリレートコポリマー、またはその混合物と、ポリマーBとして、少なくとも1のメタクリル酸とエチルアクリレートのコポリマー、又はメタクリル酸とメチルメタクリレートのコポリマー、又はその混合物とを含む、少なくとも1の混合物によって形成される。
【0151】
上述した二種類の化合物A及びBとは別に、本発明に従うナノ粒子の被膜は少なくとも1の可塑剤を含むことができる。
【0152】
可塑剤
この可塑剤は特には、下記から選択され得る:
−グリセロール及びそのエステル、好ましくはアセチル化グリセリド、モノステアリン酸グリセリル、グリセリルトリアセタート、及びグリセリルトリブチレート
−フタル酸塩、好ましくはジブチルフタレート、ジエチルフタレート、ジメチルフタレート、及びジオクチルフタレート
−クエン酸塩、好ましくはアセチルクエン酸トリブチル、アセチルクエン酸トリエチル、クエン酸トリブチル、クエン酸トリエチル
−セバケート、好ましくはジエチルセバケート、ジブチルセバケート
−アジピン酸塩、
−アゼライン酸塩、
−安息香酸塩、
−クロロブタノール、
−ポリエチレングリコール、
−植物油、
−フマル酸塩、好ましくはフマル酸ジエチル
−マレイン酸塩、好ましくはマレイン酸ジエチル、
−シュウ酸塩、好ましくはシュウ酸ジエチル、
−コハク酸塩、好ましくはコハク酸ジブチル、
−酪酸塩、
−セチルアルコールエステル、
−マロン酸塩、好ましくはマロン酸ジエチル、
−ひまし油、
−及びその混合物。
【0153】
特には、被膜は、合計重量に対して、30重量%より少なく、好ましくは1重量%〜25重量%、さらに好ましくは5〜20重量%の可塑剤を含むことができる。
【0154】
もちろん、該被膜は、被膜の分野において標準方法で使用される様々な他の付加補助剤を含むことができる。これらは例えば下記であり得る:
−二酸化チタン、硫酸カルシウム、沈降炭酸カルシウム、酸化鉄のような顔料及び着色剤、カラメル、カロチノイド、カーマイン、クロロフィリン、ロコウ(アナットー)、キサントフィル、アントシアン、ベタニン、アルミニウムのような天然食品着色剤、及び、黄色5号及び6号、赤色3号及び40号、緑色3号及びエメラルドグリーン、青色1号及び2号のような合成食品着色剤;
−タルク、ステアリン酸マグネシウム、ケイ酸マグネシウムのような充填剤;
−シメチコン、ジメチコンのような消泡剤;
−リン脂質、ポリソルベート、ステアリン酸ポリオキシエチレン、脂肪酸エステル、及びポリオキシエチレン化ソルビトール、ポリオキシエチレン化水添ひまし油、ポリオキシエチレン化アルキルエーテル、グリセロールモノオレエートのような界面活性剤;
−及びその混合物。
【0155】
被膜は単層または多層であり得る。一態様の変形に従い、それは先に定義した複合材料によって形成された単層から成っている。
【0156】
本発明の該変形に従う微小粒子の形成は、特に上記で定義したポリマーのナノ粒子と非共有結合している少なくとも1の活性成分によってその核が全体的にまたは部分的に形成されている、貯留カプセルの形成に適する従来技術によって行われ得る。
【0157】
好ましくは、溶質状態で可塑剤を一般的に含む他の成分が存在するなら、微小粒子は化合物A及びBを噴霧することにより形成される。該溶液媒体は、水と混合した又は混合していない有機溶媒を通常含む。そのように形成された被膜は、大抵水溶液中で、同じポリマーの分散によって形成される被膜とは対照的に、組成物に関して均一さを明白にする。
【0158】
好ましい態様の変形に従い、噴霧された溶液は、40重量%より少ない水、特には30重量%より少ない水、さらには25重量%より少ない水を含む。
【0159】
別の態様の変形に従い、活性成分と非共有結合されているナノ粒子は、特には1以上の結合剤を使用し1以上の従来の添加剤を伴う中性基材上で、微小粒子系の、支持された形で利用されることができる。
【0160】
支持された形で存在するこれらの微小粒子は、次いで、上述した通り1以上のコーティング層で被覆され得る。
【0161】
AI/ポリマー混合物を中性球体形の中性基材に適用することが望ましい場合は、下記工程が続けられることができる。
【0162】
中性核上に付与された層の結合を確実にするための従来の結合剤が、活性成分及びポリマーの均一な混合物に加えられる。
【0163】
そのような結合剤は、特には、Khankari R.K. et. al., Binders and Solvents in Handbook of Pharmaceutical Granulation Technology, Dilip M. Parikh ed., Marcel Dekker Inc., New York, 1997に提案されている。
【0164】
下記は結合剤として本発明に極めて特に適切である:ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ポリビニルピロリドン(PVP)、メチルセルロース(MC)、及びヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)。
【0165】
相当する混合物の付与はそして該技術分野における当業者に知られている標準技術によって行われる。これは特に、流動床にある基材の上で、活性成分と結合されたナノ粒子のコロイド懸濁物を噴霧すること、結合剤と任意で他の成分を含むこと、を含んでもよい。
【0166】
これらは制限されることなく、本発明に従う組成物は、活性成分と結合されているナノ粒子とは別の、従来の添加剤、スクロース、及び/又はデキストロース、及び/又はラクトース、または上記ナノ粒子を支持するように働いているセルロースのような不活性物質の微小粒子をも例えば含むことができる。
【0167】
即ち、該変形の第一の好ましい態様では、本発明に従う組成物は、本発明のポリマーを含む粒状物、活性成分、粒状物の結合を確実にする1以上の結合剤、及び本発明の技術分野における当業者に知られている様々な添加剤を含むことができる。
【0168】
被膜はそして、該技術分野における当業者に知られている技術によって、有利には噴霧コーティングによって、この粒状物の上に付与させられることができ、先に記述した通り、微小粒子の形成をもたらす。
【0169】
該態様に従う微小粒子の重量組成は以下の通りである:
−核で活性成分と結合されるナノ粒子の重量含有量は、0.1%と80%の間、好ましくは2%と70%の間、好ましくは10%と60%の間を含む;
−核での結合剤の重量含有量は、0.5%と40%の間、好ましくは2%と25%の間を含む;
−微小粒子での膜の重量含有量は、5%と50%の間、好ましくは15%と35%の間を含む。
【0170】
該変形の第二の好ましい態様では、本発明に従う組成物は、活性成分、ポリマーナノ粒子、該層の結合を確実にする結合剤、及び任意で該技術分野の当業者に知られている異なる添加剤、例えばスクロース、トレハロース、及びマンニトールを含む層が周りに付与されている中性核を含むことができる。該中性核は、被膜に適している、セルロース、又は糖、又はいかなる不活性有機物、又は塩類化合物の粒子であることができる。
【0171】
このように被覆された中性核は、その後少なくとも1のコーティング層で被覆され、上記に記載した通り、微小粒子を形成する。
【0172】
該態様に従う微小粒子の重量組成は、以下である:
−核で活性成分と結合されるナノ粒子の重量含有量は、0.1%と80%の間、好ましくは2%と70%の間、好ましくは10%と60%の間を含む;
−微小粒子の核での中性核の重量含有量は、5%と50%の間、好ましくは10%と30%の間を含む;
−微小粒子の核での結合剤の重量含有量は、0.5%と40%の間、好ましくは2%と25%の間を含む;
−微小粒子での膜の重量含有量は、5%と50%の間、好ましくは15%と35%の間を含む。
【0173】
本発明はまた、本発明に従う組成物に基づく、新規の製薬、植物衛生、食品、化粧品、または食事療法のための製剤に関する。
【0174】
本発明に従う組成物はそのため、粉、溶液、懸濁物、錠剤、又はゼラチンカプセルの形で提供されることができる。
【0175】
本発明に従う組成物は特には薬剤の調製に用いられることができる。
【0176】
本発明に従う組成物は経口経路による投与又は非経口経路による投与に用いられることができる。
【0177】
本発明は以降の、例として単に与えられる実施例でさらによく説明される。
【実施例】
【0178】
実施例1
ポリマー1の合成:アラニンを介して結合した約5モル%のα−トコフェロールグラフトで置換されたポリアクリル酸
【0179】
段階1:市販のポリアクリル酸(Degacryl 4779L)の精製
75gのDEGACRYL 4779L溶液(エボニック製)が1425gのミリQ水で希釈され、8倍量の水で透析ろ過される。得られた溶液はその後凍結乾燥される。排除クロマトグラフィーで測定される平均モル質量Mnは、PMMA(ポリメチルメタクリレート)等量で33.6kDaであり、多分散指数は2.4である。
【0180】
段階2:アラニンとα−トコフェロールエステルの合成(AlaVE)
22.08mLのN,N’−ジイソプロピルカルボジイミド(DIPC)が21.1gのN−Bocアラニン、40gのα−トコフェロール、及び0.567gのジメチルアミノピリジン(DMAP)の400mlジクロロメタン溶液に滴下される。20℃で22時間攪拌後、該反応混合物は、連続的に0.1N塩酸溶液、水、5%重炭酸ナトリウム溶液、及び最後に水で洗浄される。有機相は蒸発乾固され、得られたオイルは4M塩酸ジオキサン溶液の400mLに溶解される。大気温度で4時間攪拌後、該反応混合物は蒸発乾固され、エタノールから結晶化される。そうして調製されたAlaVE塩酸塩(33.8gの白い粉)はCDClでのプロトンNMRによって分析され、化学構造に従うスペクトルを示す。
【0181】
段階3:精製されたポリアクリル酸上へのAlaVEのグラフティング
3.74gのAlaVEが50mLのDMF及び0.97mlのトリエチルアミンに溶解される。並行して、10gの精製Degacryl(段階1)が250mLのN,N’−ジメチルホルムアミド(DMF)と0.34gの4−ジメチルアミノピリジン(DMAP)に溶解される。該溶液は15℃に冷やされ、AlaVE/トリエチルアミンの懸濁物、そして1.93gのN,N’−ジイソプロピルカルボジイミド(DIPC)が連続して加えられる。該反応混合物は15℃で一晩攪拌される。3mLのDMFで希釈された35%塩酸溶液(1.16mL)を添加後、反応混合物は1N炭酸ナトリウムの900mL水で中和される。得られた溶液は、8倍量の塩水(0.9%NaCl)で、その後4倍量の水で透析ろ過され、約400mLの体積に濃縮される。100mLのエタノールが加えられ、得られた溶液は大気温度で一晩攪拌され、その後8倍量の水で透析ろ過され、約45g/Lの濃度に濃縮される。
【0182】
グラフトされたAlaVEの割合は、TFA−dでのプロトンNMRで測定して5.3%である。粒子の大きさは光回折により測定して17nmである。平均モル質量は37kDa(PMMA等量)であり、多分散指数は2.6である。
【0183】
実施例2
ポリマー2の合成:アラニンを介して結合した約8モル%のα−トコフェロールグラフトで置換されたポリアクリル酸
【0184】
1.20gのAlaVE(実施例1の段階2)は10mLのDMF及び0.31mLのトリエチルアミンに溶解される。並行して、2gの精製Degacryl(実施例1の段階1)が50mLのDMFと0.14gのDMAPに溶解される。該溶液は15℃に冷やされ、AlaVE/トリエチルアミンの懸濁物、そして0.49gのDIPCが連続して加えられる。該反応混合物は15℃で一晩攪拌される。2mLのDMFで希釈された35%塩酸溶液(0.23mL)を添加後、該反応混合物は1時間攪拌され、その後40mLのエタノールが加えられる。該混合物は1N炭酸ナトリウムの110mL水で中和され、その後得られた懸濁物は連続的に、塩水(0.9%NaCl)、その後水で透析ろ過され、最終的に約250mLに濃縮される。110mLのエタノールが加えられ、混合物は45℃で2時間加熱され、大気温度で一晩攪拌された。得られた溶液は8倍量の塩水(0.9%)で、その後4倍量の水で透析ろ過され、最終的に約20mLの体積に濃縮される。
【0185】
グラフトされたAlaVEの割合は、TFA−dでのプロトンNMRで測定して7.8%である。粒子の大きさは光回折により測定して12nmである。平均モル質量は39kDa(PMMA等量)であり、多分散指数は2.9である。
【0186】
実施例3
ポリマー3の合成:アラニンを介して結合した約10モル%のα−トコフェロールグラフトで置換されたポリアクリル酸
【0187】
段階1:市販のポリアクリル酸(Acumer 1100)の精製
100gのAcumer 1100(ローム・アンド・ハース製)が1000gのミリQ水で希釈される。該溶液は1N塩酸溶液でpH=1.9に調整され、その後8倍量の水で透析ろ過される。得られた溶液はその後凍結乾燥される。排除クロマトグラフィーで測定される平均モル質量Mnは、PMMA(ポリメチルメタクリレート)等量で14.5kDaであり、多分散指数は1.27である。
【0188】
段階2:精製されたポリアクリル酸上へのAlaVEのグラフティング
7.48gのAlaVEは190mLのDMF及び1.95mLのトリエチルアミンに溶解される。並行して、10gの精製Acumer(段階1)が250mLのN,N’−ジメチルホルムアミド(DMF)と0.85gの4−ジメチルアミノピリジン(DMAP)に溶解される。該溶液は15℃に冷やされ、AlaVE/トリエチルアミンの懸濁物、そして2.98gのN,N’−ジイソプロピルカルボジイミド(DIPC)が連続して加えられる。該反応混合物は15℃で一晩攪拌される。12mLのDMFで希釈された35%塩酸溶液(1.16mL)を添加後、該反応混合物は1N炭酸ナトリウムの730mL水で中和される。得られた溶液は透析ろ過によって精製され、約400mLの体積に濃縮される。
【0189】
グラフトされたAlaVEの割合は、TFA−dでのプロトンNMRで測定して9.9%である。粒子の大きさは光回折により測定して10nmである。平均モル質量は15.2kDa(PMMA等量)であり、多分散指数は1.29である。
【0190】
実施例4
ポリマー4の合成:アラニンを介して結合した約20モル%のα−トコフェロールグラフトで置換されたポリアクリル酸
【0191】
14.96のAlaVEは380mLのDMF及び3.87mLのトリエチルアミンに溶解される。並行して、10gの精製Acumer(段階1)が250mLのN,N’−ジメチルホルムアミド(DMF)と1.70gの4−ジメチルアミノピリジン(DMAP)に溶解される。該溶液は15℃に冷やされ、AlaVE/トリエチルアミンの懸濁物、そして4.73gのN,N’−ジイソプロピルカルボジイミド(DIPC)が連続して加えられる。該反応混合物は15℃で一晩攪拌される。12mLのDMFで希釈された35%塩酸溶液(1.16mL)を添加後、該反応混合物は1N炭酸ナトリウムの1,040mL水で中和される。得られた溶液は透析ろ過によって精製され、約68mLの体積に濃縮される。
【0192】
グラフトされたAlaVEの割合は、TFA−dでのプロトンNMRで測定して18.5%である。粒子の大きさは光回折により測定して13nmである。平均モル質量は13.3kDa(PMMA等量)であり、多分散指数は1.28である。
【0193】
実施例5
本発明に従わないポリマーC1の合成:約5モル%のオクタデシルアミンで置換された実施例1と同じポリアクリル酸
【0194】
3gの精製Degacryl(実施例1の段階1)が75mLのDMFと0.10gのDMAPに溶解され、15℃に冷やされる。その後、0.56gオクタデシルアミンの18.5mLDMF懸濁物、及び0.58gのDIPCが連続して加えられる。該反応混合物は15℃で2時間攪拌され、その後20℃で一晩攪拌される。2mLのDMFで希釈された35%塩酸溶液(0.35mL)を添加後、該反応混合物は1N炭酸ナトリウムの250mL水で中和される。得られた溶液は、8倍量の塩水(0.9%)、そして4倍量の水で透析ろ過され、約100mLの体積に濃縮される。20mLのエタノールが加えられ、得られた溶液は大気温度で一晩攪拌され、その後8倍量の水で透析ろ過され、約25g/Lの濃度に濃縮される。
【0195】
グラフトされたオクタデシルアミンの割合は、DMSO−d6でのプロトンNMRで測定して5.7%である。平均モル質量は38kDa(PMMA等量)であり、多分散指数は2.5である。
【0196】
実施例6
10s−1の速度勾配で水溶液のせん断下粘度(mPa/s)の測定
【0197】
上記実施例1のポリマー1と実施例5のポリマーC1をそれぞれ含む水溶液の粘度が、10s−1の速度勾配でせん断下で測定された(Bohlinからの装置Gemini 150上で、コーン−プレーンジオメトリー、1°に傾けた40mmコーン、を用いて20℃にサーモスタット制御された測定)。これらの測定は下記表1に示される。
【0198】
【表1】

【0199】
本発明のポリマー1は、同じグラフティング率で、粘度がポリマーC1よりかなり小さい。これは、さらにもっと高い濃度で使用しやすい状態(注入可能性、活性成分との均一な組合せ)である。
【0200】
実施例7
パクリタキセル配合の検討
【0201】
増加された量のパクリタキセルが2mLのポリマーを含むバイアルに加えられ、攪拌は12時間25℃で維持される。そして溶液の透明度が視認で評価される。溶液が透明であれば化合物は完全に溶解されており、曇りが現れるとその溶解限に達する。ポリマー溶液でのパクリタキセルの溶解度(ポリマーのmg/gで示される)が下限値として示される。最初の不溶解値がその結果最大値となる。
結果は下記表2に示される。
【0202】
【表2】

【0203】
該結果は、本発明のポリマー1がかなりの量のパクリタキセル(ポリマーのgあたり)を効果的に溶解可能にできることを示す。水に0.25μg/mLより低いパクリタキセルの溶解度は、44mg/mLでポリマー溶液に対し少なくとも2.7mg/mLに増加され得る。
【0204】
実施例8
ポリマー1(実施例1)とカルベジロールとの組合せの検討
【0205】
実施例1のポリマー(10mg/mL)はカルベジロール(4mg、原料)と溶解され、該混合物は1時間超音波に曝され、その後一晩回転撹拌下に置かれた。遠心分離後の溶液中のカルベジロールの量はUV分光法で測定された。溶液中10mgのポリマーに対して約3mgの可溶化、即ち、3g/Lの可溶化が達成された。原料のカルベジロールは純水にわずか50mg/Lしか溶解しない。
【0206】
実施例9
ポリマー2(実施例2)とケトコナゾールとの組合せの検討
【0207】
実施例2のポリマー2(20mg/mL)はケトコナゾール(1〜5mg/g)と溶解され、該混合物は1時間超音波に曝され、その後一晩回転撹拌下に置かれた。溶液の透明度は視認で評価された。溶液が透明であれば化合物は完全に溶解されており、曇りが現れるとその溶解限に達する。純水でのケトコナゾールの溶解度がわずか10mg/Lであるのに対し、下限の溶解限は3mg/g、即ち、約3g/Lである。
【0208】
実施例10
ポリマー2(実施例2)とインスリンとの組合せの検討
【0209】
pH7.4でミリリットルあたり10mgのポリマー及び400IUのインスリン(14.8mg)を含む水溶液が調製される。該溶液は攪拌下、25℃で1時間30分間インキュベートに置かれ、限外濾過(100kDaのしきい値、18℃で10,000G下15分)によって遊離インスリンが結合したインスリンから分離される。ろ過で回収された遊離インスリンはその後HPLC(高速液体クロマトグラフィー)にて分析され、結合したインスリンの量が推定される。結合したインスリンは97%に等しい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクリル及び/又はメタクリル系の直鎖状骨格を有し、該骨格にα−トコフェロールグラフトが結合しているポリマーにおいて、前記α−トコフェロールグラフトが、少なくとも1の加水分解性基によって部分的に形成されたスペーサーを介して前記骨格に結合しており、前記骨格上の前記グラフトの分布はランダムであることを特徴とする、ポリマー。
【請求項2】
α−トコフェロール基のモルグラフト率が30モル%に等しい又はそれ未満であることを特徴とする、請求項1記載のポリマー。
【請求項3】
pH5〜8である水媒体、特には水に分散させると、自発的にナノ粒子を形成できることを特徴とする、請求項1又は2記載のポリマー。
【請求項4】
ナノ粒子の大きさが、1〜1000nm、特には5〜500nm、特には10〜300nm、さらに特には10〜200nm、又は10〜100nmであることを特徴とする、請求項3記載のポリマー。
【請求項5】
前記スペーサーが、アミノ酸残基であり、好ましくは天然アミノ酸残基であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項記載のポリマー。
【請求項6】
下記式(I)を有することを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項記載のポリマー
【化1】

(I)
式中、
、R及びRは独立にH又はメチルを表し、
−R−A−(R−は本発明のスペーサーを構成し、
は−NH−又は−O−を表し、
Aは、直鎖状C〜Cアルキル、又は直鎖状又は分岐状C〜Cアルキル、又はベンジル基で置換されたメチレンを表し、
pは0又は1に等しく、好ましくはpは1に等しく、
はC=O、O−C=O、又はNH−C=Oを表し、
は−OH又はOMを表し、Mはカチオンを表し、又はRはエステル基又はアミド基を介してポリマーに結合したポリアルキレングリコール置換基を表し、
m及びnは正の整数であり、
qは0に等しい又は正の整数であり、好ましくはqは0に等しく、
(m+n+q)は20〜300,000であり、
α−トコフェロール基のモルグラフト率n/(m+n+q)は30モル%に等しい又はそれ未満であり、
式(I)の骨格を形成している二種又は三種の単位の順序は全くランダムである。
【請求項7】
スペーサーがアラニン残基であることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項記載のポリマー。
【請求項8】
2,000〜1,000,000、好ましくは5,000〜50,000の重量モル質量を有することを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項記載のポリマー。
【請求項9】
ポリアルキレングリコール系、特にはポリエチレングリコールの少なくとも1のグラフトをも支持し、さらに特には1〜10%のグラフティングのモル%を有しながら利用されることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか1項記載のポリマー。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項記載のポリマーの製造方法であって、それらの相互作用に好適な条件下で、少なくとも1の(メタ)アクリル(コ)ポリマーと、前記ポリマーの酸性官能基と相互作用できる官能基を遊離末端に与えられたスペーサーで官能化されたα−トコフェロール誘導体の少なくとも1とを接触させることを少なくとも含み、前記スペーサーが、前記(コ)ポリマーとの反応の完了時に、少なくとも1の加水分解性基を含むものであることを特徴とする、製造方法。
【請求項11】
遊離末端に1級アミノ基を有し、前記(メタ)アクリル系(コ)ポリマーにグラフティング後にアミド結合を形成するスペーサーによって、前記α−トコフェロール誘導体が官能化されていることを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
請求項1〜9のいずれか1項記載のポリマーの少なくとも1を含有することを特徴とする組成物。
【請求項13】
少なくとも1の活性成分、特には、低い又は平均的な水溶性の活性成分を含み、前記活性成分が、請求項1〜9のいずれか1項記載のポリマーの少なくとも1によって形成されたナノ粒子に非共有結合されている形態で存在していることを特徴とする、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
ペプチド系又はタンパク質系の活性成分の少なくとも1を含むことを特徴とする、請求項12又は13記載の組成物。
【請求項15】
前記活性成分が治療用、化粧品用、予防薬用、又は画像処理用の分子である、請求項12〜14のいずれか1項記載の組成物。
【請求項16】
前記組成物が、前記活性成分の調節された放出特性を時間関数として確保できる、請求項12〜15のいずれか1項記載の組成物。
【請求項17】
前記ナノ粒子が微小粒子の形で塊になっている、請求項12〜16のいずれか1項記載の組成物。
【請求項18】
前記ナノ粒子が微小粒子の形で利用され、前記微小粒子が、前記ナノ粒子を含む核と、pHの関数としての前記活性成分の調節された放出特性に影響する少なくとも1のコーティング層を有しており、前記コーティング層が、5より小さいpHで水に不溶であり7より大きいpHで水に可溶であり、少なくとも1の疎水性化合物Bと結合されているポリマーAの少なくとも1を含む物質によって形成されている、請求項12〜17のいずれか1項記載の組成物。
【請求項19】
ポリマーAが、メタクリル酸及びメチルメタクリレートコポリマー、メタクリル酸及びエチルアクリレートコポリマー、酢酸フタル酸セルロース、酢酸コハク酸セルロース、酢酸トリメリット酸セルロース、フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、酢酸コハク酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルエチルセルロース、シェラックガム、酢酸フタル酸ポリビニル、及びこれらの混合物から選ばれる、請求項18記載の組成物。
【請求項20】
疎水性化合物Bが、固体状態の結晶化された生成物から選択され、及び、融点Tfb≧40℃、好ましくはTfb≧50℃、さらに好ましくは40℃≦Tfb≦90℃を有し、さらに特には、植物ろう;水素化された植物油の1種又は相互混合物;好ましくは、水素化された綿実油、水素化された大豆油、水素化されたヤシ油、及びこれらの混合物を含む群から選択されたもの;グリセロールのモノ及び/又はジ及び/又はトリエステル、及び少なくとも1の脂肪酸、好ましくはベヘン酸のモノ及び/又はジ及び/又はトリエステル;及びこれらの混合物から選ばれる、請求項18及び19のいずれか1項記載の組成物。
【請求項21】
化合物Bが、水に不溶であるポリマーであり、さらに特には、エチルセルロース、酢酸酪酸セルロース、酢酸セルロース、アンモニオ(メタ)アクリレートコポリマー、ポリ(メタ)アクリル酸エステル、及びこれらの混合物から選択される、請求項18及び19のいずれか1項記載の組成物。
【請求項22】
粉、溶液、懸濁物の状態に、又は、錠剤又はゼラチンカプセルの形に作られた請求項12〜21のいずれか1項記載の組成物。
【請求項23】
薬剤の調製に用いられることを特徴とする、請求項12〜22のいずれか1項記載の組成物。
【請求項24】
前記活性成分の伝達、溶解、及び/又は水可溶化を増加することを目的として、活性成分、特には低い又は平均的な水溶性の活性成分と非共有結合されている、請求項1〜9のいずれか1項記載の少なくとも1のポリマーのナノ粒子の使用方法。

【公表番号】特表2013−512301(P2013−512301A)
【公表日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−540532(P2012−540532)
【出願日】平成22年11月26日(2010.11.26)
【国際出願番号】PCT/IB2010/055440
【国際公開番号】WO2011/064743
【国際公開日】平成23年6月3日(2011.6.3)
【出願人】(511025765)フラメル テクノロジーズ (6)
【Fターム(参考)】