説明

α−ヒドロキシケトン化合物の製造方法

【課題】α−ヒドロキシケトン化合物を容易に且つ収率良く製造すること。
【解決手段】式(1)


(式中、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基または置換基を有していてもよいアリール基を表わすか、或いは、RとRとが互いに結合して、それらの結合する炭素原子とともに環を形成する。RおよびRは、それぞれ独立して、1つ以上の電子求引性基を有するアリール基を表わす。Xは陰イオンを表す。)
で示されるイミダゾリニウム塩と塩基化合物との存在下に、アルデヒド化合物のカップリング反応を行うことを特徴とするα−ヒドロキシケトン化合物の製造方法等。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
α−ヒドロキシケトン化合物の製造方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
アルデヒド化合物のカップリング反応によりα−ヒドロキシケトン化合物を製造する方法として、特許文献1には、1,3−ビス(2,4,6−トリメチルフェニル)イミダゾリニウム−2−カルボキシレートを触媒として用いる方法や、1,3−ビス(2,6−ジイソプロピルフェニル)イミダゾリニウムクロライドと塩基化合物とから調製された触媒または1,3−ビス(2,4,6−トリメチルフェニル)イミダゾリニウムクロライドと塩基化合物とから調製された触媒を用いる方法が記載されている。
そして、当該触媒の製造方法としては、例えば、ビス(トリメチルシリル)アミドのカリウム塩と1,3−ビス(2,4,6−トリメチルフェニル)イミダゾリニウムクロライドとから得られる塩に炭酸ガスを通気する方法が非特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2008/19927号 Table 3
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】J. of Organometallic Chemistry, 691, 5359, Scheme3 (2006)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
α−ヒドロキシケトン化合物を製造する方法に用いられる上記触媒のうち、1,3−ビス(2,6−ジイソプロピルフェニル)イミダゾリニウムクロライドと塩基化合物とから調製された触媒または1,3−ビス(2,4,6−トリメチルフェニル)イミダゾリニウムクロライドと塩基化合物とから調製された触媒を用いる場合には、α−ヒドロキシケトン化合物の収率が必ずしも充分に満足できるものではなかった。また、1,3−ビス(2,4,6−トリメチルフェニル)−2−カルボキシレートを触媒として用いる場合には、当該触媒を調製する際に、ビス(トリメチルシリル)アミドのカリウム塩を用いることが必要であり、操作性・安全性の面から容易性がなく、工業的に有利ではなかった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような状況下、本発明者は鋭意検討した結果、以下の本発明に至った。すなわち、本発明は、以下の通りである。
〔1〕式(1)

(式中、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基または置換基を有していてもよいアリール基を表わすか、或いは、RとRとが互いに結合して、それらの結合する炭素原子とともに環を形成する。RおよびRは、それぞれ独立して、1つ以上の電子求引性基を有するアリール基を表わす。Xは陰イオンを表す。)
で示されるイミダゾリニウム塩と塩基化合物との存在下に、アルデヒド化合物のカップリング反応を行うα−ヒドロキシケトン化合物の製造方法。
〔2〕塩基化合物が、有機塩基、アルカリ金属塩およびアルカリ土類金属塩からなる群から選ばれる少なくとも一種の化合物である前記〔1〕記載の製造方法。
〔3〕RおよびRが、それぞれ独立して、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、アルコキシカルボニル基、アシル基、並びに、スルホ基からなる群から選ばれる少なくとも一種の基を有するアリール基である前記〔1〕または〔2〕記載の製造方法。
〔4〕式(1)で示されるイミダゾリニウム塩が、式(1A)

(式中、R、RおよびXはそれぞれ上記と同一の意味を表わす。R3AおよびR4Aは、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい2,6−ジクロロフェニル基、置換基を有していてもよい2,6−ジブロモフェニル基、置換基を有していてもよい2,6−ビス(トリフルオロメチル)フェニル基、2,6−ジフェニルフェニル基または2,6−ジイソプロピル−4−ニトロフェニル基を表わす。)
で示されるイミダゾリニウム塩である前記〔1〕または〔2〕記載の製造方法。
〔5〕アルデヒド化合物のカップリング反応が、二酸化炭素の存在下に行われる前記〔1〕〜〔4〕のいずれか1項記載の製造方法。
〔6〕アルデヒド化合物のカップリング反応が、式(2)

(式中、Rは水素原子または置換基を有していてもよいアルキル基を表わす。)
で示されるアルデヒド化合物のホモカップリング反応である前記〔1〕〜〔5〕のいずれか1項記載の製造方法。
〔7〕アルデヒド化合物のカップリング反応が、式(2)

(式中、Rは水素原子または置換基を有していてもよいアルキル基を表わす。)
で示されるアルデヒド化合物と式(4)

(式中、RはRと異なり、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基または置換基を有していてもよいヘテロアリール基を表わす。)
で示されるアルデヒド化合物とのクロスカップリング反応である〔1〕〜〔5〕のいずれか1項記載の製造方法。
〔8〕Rが置換基を有していてもよいアルキル基であり、Rが水素原子である前記〔7〕記載の製造方法。
〔9〕式(4)で示されるアルデヒド化合物が、水と共に存在するホルムアルデヒドである前記〔8〕記載の製造方法。
〔10〕式(2)で示されるアルデヒド化合物が3−メチルチオプロパナールであり、α−ヒドロキシケトン化合物が4−メチルチオ−2−オキソ−1−ブタノールである前記〔8〕または〔9〕記載の製造方法。
〔11〕式(1A)

(式中、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基または置換基を有していてもよいアリール基を表わすか、或いは、RとRとが互いに結合して、それらの結合する炭素原子とともに環を形成する。RおよびRは、それぞれ独立して、1つ以上の電子求引性基を有するアリール基を表わす。R3AおよびR4Aは、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい2,6−ジクロロフェニル基、置換基を有していてもよい2,6−ジブロモフェニル基、置換基を有していてもよい2,6−ビス(トリフルオロメチル)フェニル基、2,6−ジフェニルフェニル基または2,6−ジイソプロピル−4−ニトロフェニル基を表わす。Xは陰イオンを表わす。)
で示されるイミダゾリニウム塩。
〔12〕RおよびRが共に水素原子であり、R3AおよびR4Aが、それぞれ独立して、2,6−ジブロモフェニル基、4−tert−ブチル−2,6−ジブロモフェニル基、4−ドデシル−2,6−ジブロモフェニル基、2,4,6−トリブロモフェニル基、4−フルオロ−2,6−ジブロモフェニル基または2,6−ジイソプロピル−4−ニトロフェニル基である前記〔11〕記載のイミダゾリニウム塩。
〔13〕RおよびRが共に水素原子であり、R3AおよびR4Aが、それぞれ独立して、2,6−ジブロモフェニル基、2,4,6−トリブロモフェニル基、4−フルオロ−2,6−ジブロモフェニル基または2,6−ジイソプロピル−4−ニトロフェニル基である前記〔11〕記載のイミダゾリニウム塩。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、α−ヒドロキシケトン化合物を容易に且つ収率良く製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明は、式(1)

(式中、R、R、R、R及びXは、いずれも上記と同一の意味を表す。)
で示されるイミダゾリニウム塩(以下、イミダゾリニウム塩(1)と記すこともある。)と塩基化合物との存在下に、アルデヒド化合物のカップリング反応(以下、本反応と記すこともある。)を行うことを特徴とする。
【0009】
およびRで表されるアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、デシル基、シクロプロピル基、2,2−ジメチルシクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、メンチル基等の直鎖状、分枝鎖状または環状の炭素数1〜10のアルキル基が挙げられる。
【0010】
およびRで表されるアルキル基が有していてもよい置換基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、4−メチルフェニル基、4−メトキシフェニル基等の炭素数1〜10のアルコキシ基を有していてもよい炭素数6〜10のアリール基;メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、トリフルオロメトキシ基等のフッ素原子を有していてもよい炭素数1〜10のアルコキシ基;ベンジルオキシ基、4−メチルベンジルオキシ基、4−メトキシベンジルオキシ基等の炭素数1〜10のアルコキシ基を有していてもよい炭素数6〜10のアリール基を有する炭素数1〜10のアルコキシ基;3−フェノキシベンジルオキシ基等の炭素数6〜10のアリールオキシ基を有する炭素数6〜10のアリール基を有する炭素数1〜10のアルコキシ基;フェノキシ基、2−メチルフェノキシ基、4−メチルフェノキシ基、4−メトキシフェノキシ基等の炭素数1〜10のアルコキシ基を有していてもよい炭素数6〜10のアリールオキシ基;3−フェノキシフェノキシ基等の炭素数6〜10のアリールオキシ基を有する炭素数6〜10のアリールオキシ基;アセチル基、プロピオニル基、ベンジルカルボニル基、4−メチルベンジルカルボニル基、4−メトキシベンジルカルボニル基、ベンゾイル基、2−メチルベンゾイル基、4−メチルベンゾイル基、4−メトキシベンゾイル基等の炭素数1〜10のアルコキシ基を有していてもよい炭素数2〜10のアシル基;カルボキシ基;並びに、フッ素原子が挙げられる。
【0011】
およびRで表される置換基を有するアルキル基としては、例えば、フルオロメチル基、トリフルオロメチル基、メトキシメチル基、エトキシメチル基、2−メトキシエチル基、ベンジル基、4−フルオロベンジル基、4−メチルベンジル基、フェノキシメチル基、2−オキソプロピル基、2−オキソブチル基、フェナシル基および2−カルボキシエチル基が挙げられる。
【0012】
およびRで表されるアリール基としては、例えば、フェニル基、2−メチルフェニル基、4−メチルフェニル基、ナフチル基等の炭素数6〜10のアリール基等が挙げられる。
アリール基が有していてもよい置換基としては、例えば、メトキシメチル基、エトキシメチル基、2−メトキシエチル基等の炭素数1〜10のアルコキシ基を有する炭素数1〜10のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、シクロペンチルオキシ基、フルオロメトキシ基、トリフルオロメトキシ基、メトキシメトキシ基、エトキシメトキシ基、2−メトキシエトキシ基等の炭素数1〜10のアルコキシ基またはフッ素原子を有していてもよい炭素数1〜10のアルコキシ基;並びに、フッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子が挙げられる。
置換基を有するアリール基としては、例えば、4−クロロフェニル基および4−メトキシフェニル基が挙げられる。
【0013】
また、RとRとが互いに結合して、それらの結合する炭素原子とともに環を形成してもよく、かかる環としては、例えば、シクロペンタン環およびシクロヘキサン環が挙げられる。
およびRは、共に水素原子であることが好ましい。
【0014】
およびRは、それぞれ独立して、1つ以上の電子求引性基を有するアリール基を表わす。
、Rにおけるアリール基としては、例えば、フェニル基、2−メチルフェニル基、4−メチルフェニル基、2,6−ジイソプロピルフェニル基、ナフチル基等の炭素数6〜12のアリール基等が挙げられる。
アリール基が有する電子求引性基としては、例えば、ニトロ基;シアノ基;メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等の炭素数2〜10のアルコキシカルボニル基;ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基等のアシル基;スルホ基;およびフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子が挙げられる。
【0015】
およびRで表わされる1つ以上の電子求引性基を有するアリール基としては、例えば、2−フルオロフェニル基、2−ニトロナフチル基、2−シアノフェニル基、4−ニトロフェニル基、2,6−ジクロロフェニル基、2,4,6−トリブロモフェニル基、2,6−ビス(トリフルオロメチル)フェニル基等の炭素数6〜20のアリール基が挙げられる。
【0016】
およびRのアリール基がフェニル基である場合、フェニル基上の2位および6位の水素原子のどちらか一方が電子求引性でかつ嵩高い基で置換されていることが好ましく、フェニル基上の2位および6位の水素原子が共に電子求引性でかつ嵩高い基で置換されていることがより好ましい。フェニル基上の2位および6位の水素原子が共に電子求引性でかつ嵩高い基で置換されている場合、フェニル基上の2位および6位の水素原子は、同一の電子求引性でかつ嵩高い基で置換されていてもよいし、異なる電子求引性でかつ嵩高い基で置換されていてもよい。
フェニル基上の2位および6位における電子求引性でかつ嵩高い基としては、例えば、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、ニトロ基、シアノ基、カルボメトキシ基、アシル基、スルホ基、フェニル基、3,4,5−トリフルオロフェニル基等を挙げることができる。
【0017】
は、好ましくはR3Aで表わされる基であり、Rは、好ましくはR4Aで表わされる基である。R3AおよびR4Aは、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい2,6−ジクロロフェニル基、置換基を有していてもよい2,6−ジブロモフェニル基、置換基を有していてもよい2,6−ビス(トリフルオロメチル)フェニル基、2,6−ジフェニルフェニル基または2,6−ジイソプロピル−4−ニトロフェニル基を表わす。該置換基を有していてもよい2,6−ジクロロフェニル基、該置換基を有していてもよい2,6−ジブロモフェニル基および該置換基を有していてもよい2,6−ビス(トリフルオロメチル)フェニル基がベンゼン環上の3位、4位及び/又は5位に有していてもよい置換基としては、例えば、R、Rにおけるアリール基が有する電子吸引性基と同様の基及びアルキル基が挙げられる。
3AおよびR4Aとしては、好ましくは、2−トリフルオロメチルフェニル基、2,6−ビス(トリフルオロメチル)フェニル基、2,6−ジクロロフェニル基、2,6−ジブロモフェニル基、4−tert−ブチル−2,6−ジブロモフェニル基、4−ドデシル−2,6−ジブロモフェニル基、2,4,6―トリブロモフェニル基、、4−フルオロ−2,6−ジブロモフェニル基、2,6−ジヨードフェニル基または2,6−ジイソプロピル−4−ニトロフェニル基であり、より好ましくは、2,6−ジブロモフェニル基、4−tert−ブチル−2,6−ジブロモフェニル基、4−ドデシル−2,6−ジブロモフェニル基、2,4,6−トリブロモフェニル基、4−フルオロ−2,6−ジブロモフェニル基または2,6−ジイソプロピル−4−ニトロフェニル基であり、さらに好ましくは、2,6−ジブロモフェニル基、2,4,6−トリブロモフェニル基、4−フルオロ−2,6−ジブロモフェニル基または2,6−ジイソプロピル−4−ニトロフェニル基である。
【0018】
で表される陰イオン、すなわち1価のアニオンとしては、例えば、塩化物イオン、臭化物イオン及びヨウ化物イオン等のハロゲン化物イオン;メタンスルホナートイオン、トリフルオロメタンスルホナートイオン等の置換基としてフッ素原子を有していてもよいアルカンスルホナートイオン;トリフルオロアセテートイオン及びトリクロロアセテートイオン等の、置換基としてハロゲン原子を有していてもよいアセテートイオン;硝酸イオン;過塩素酸イオン;テトラフルオロボレートイオン及びテトラクロロボレートイオン等のテトラハロボレートイオン;ヘキサフルオロホスファートイオン等のヘキサハロホスファートイオン;ヘキサフルオロアンチモナート、及びヘキサクロロアンチモナートイオン等のヘキサハロアンチモナートイオン;ペンタフルオロスタンナートイオン及びペンタクロロスタンナートイオン等のペンタハロスタンナートイオン;テトラフェニルボレートイオン、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートイオン及びテトラキス[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ボレートイオン等の置換基を有していてもよいテトラアリールボレートイオン;が挙げられる。
【0019】
かかるイミダゾリニウム塩(1)としては、例えば1,3−ビス(2,6−ジフルオロフェニル)イミダゾリニウムクロライド、1,3−ビス(2,6−ジクロロフェニル)イミダゾリニウムクロライド、1,3−ビス(2,6−ジブロモフェニル)イミダゾリニウムクロライド、1,3−ビス(4−メチル−2,6−ジブロモフェニル)イミダゾリニウムクロライド、1,3−ビス(4−tert−ブチル−2,6−ジブロモフェニル)イミダゾリニウムクロライド、1,3−ビス(4−ドデシル−2,6−ジブロモフェニル)イミダゾリニウムクロライド、1,3−ビス(4−フルオロ−2,6−ジブロモフェニル)イミダゾリニウムクロライド、1,3−ビス(2,6−ジヨードフェニル)イミダゾリニウムクロライド、1,3−ビス(2,4,6−トリブロモフェニル)イミダゾリニウムクロライド、1,3−ビス[(2,6−ジフェニル)フェニル]イミダゾリニウムクロライド、1,3−ビス[(2,6−トリフルオロメチル)フェニル]イミダゾリニウムクロライド、1,3−ビス[(2,6−ジイソプロピル)−4−ニトロフェニル]イミダゾリニウムクロライド等を挙げることができる。
また、これらのイミダゾリニウム塩(1)における「クロライド」がそれぞれ「ヨーダイド」、「ブロマイド」、「メタンスルホナート」、「トリフルオロメタンスルホナート」、「ニトラート」、「ペルクロラート」、「テトラフルオロボレート」、「テトラクロロボレート」、「ヘキサフルオロホスファート」、「ヘキサフルオロアンチモナート」、「ヘキサクロロアンチモナート」、「ペンタフルオロスタンナート」、「ペンタクロロスタンナート」、「テトラフェニルボレート」、「テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート」、「テトラキス[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ボレート」に置き換わったイミダゾリニウム塩(1)も挙げることができる。
【0020】
かかるイミダゾリニウム塩(1)は、例えば、J.Amer.Chem.Soc.,第128巻,第11768頁(2006)に記載された方法に準じて製造することができる。
【0021】
本発明に用いられる塩基化合物としては、有機塩基、アルカリ金属炭酸塩等のアルカリ金属塩およびアルカリ土類金属炭酸塩等のアルカリ土類金属塩からなる群から選ばれる少なくとも一種の化合物が挙げられる。
かかる有機塩基としては、例えば、トリエチルアミン、トリオクチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、4−ジメチルアミノピリジン等の3級アミン;1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセン、1,5,7−トリアザビシクロ[4,4,0]−5−デセン等の含窒素環状化合物;ピリジン、イミダゾール等の含窒素芳香族化合物;ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド等のアルカリ金属アルコキシド;が挙げられる。
かかるアルカリ金属炭酸塩としては、例えば、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、炭酸リチウム、炭酸水素リチウムが挙げられる。
かかるアルカリ土類金属炭酸塩としては、例えば、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウムが挙げられる。
本発明に用いられる塩基としては、好ましくは有機塩基である。
【0022】
本発明に用いられる塩基の使用量は、イミダゾリニウム塩(1)1モルに対して、好ましくは、0.1モル〜2モル、より好ましくは0.5モル〜1.5モルである。
【0023】
本発明は、イミダゾリニウム塩(1)と塩基との存在下に、アルデヒド化合物のカップリング反応(即ち、本反応)を行うことを特徴とする。そして、本反応は、触媒量単位当たりのα−ヒドロキシケトン化合物の生成における選択性を向上させることができる点で、好ましいものである。
以下にアルデヒド化合物及び本反応について、それらの詳細を説明するが、本発明では、反応活性な該アルデヒド化合物の重合体も同様に本反応に用いることができる。
【0024】
本発明に用いられるアルデヒド化合物は、その分子内にホルミル基を少なくとも1つ有する化合物であれば、限定されない。また、本反応は、同一のアルデヒド化合物がカップリングするホモカップリング反応および異なるアルデヒド化合物がカップリングするクロスカップリング反応を含む。
【0025】
ホモカップリング反応としては、例えば、式(2)

(式中、Rは上記と同一の意味を表わす。)
で示されるアルデヒド化合物(以下、アルデヒド(2)と記すこともある。)のホモカップリング反応が挙げられる。アルデヒド(2)のホモカップリング反応により、式(3)

(式中、Rは上記と同一の意味を表わす。)
で示されるα−ヒドロキシケトン化合物(以下、α−ヒドロキシケトン(3)と記すこともある。)が得られる。
【0026】
クロスカップリング反応としては、例えば、アルデヒド(2)と式(4)

(式中、Rは上記と同一の意味を表わす)
で示されるアルデヒド化合物(以下、アルデヒド(4)と記すこともある。)とのクロスカップリング反応が挙げられる。
【0027】
アルデヒド(2)とアルデヒド(4)とのクロスカップリング反応により、式(5)

(式中、RおよびRは、いずれも上記と同一の意味を表わす。)
で示されるα−ヒドロキシケトン化合物、式(6)

(式中、RおよびRは、いずれも上記と同一の意味を表わす。)
で示されるα−ヒドロキシケトン化合物またはそれらの混合物が生成する。その生成比率は、RおよびRの種類により異なり、それらのいずれかが選択的に生成することがある。
【0028】
およびRにおけるアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、デシル基、シクロプロピル基、2,2−ジメチルシクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、メンチル基等の直鎖状、分枝鎖状または環状の炭素数1〜10のアルキル基が挙げられる。
アルキル基が有していてもよい置換基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、トリフルオロメトキシ基等のフッ素原子を有していてもよい炭素数1〜6のアルコキシ基;ベンジルオキシ基、4−メチルベンジルオキシ基、4−メトキシベンジルオキシ基等の炭素数1〜10のアルコキシ基を有していてもよい炭素数6〜10のアリール基を有する炭素数1〜10のアルコキシ基;3−フェノキシベンジルオキシ基等の炭素数6〜10のアリールオキシ基を有する炭素数6〜10のアリール基を有する炭素数1〜10のアルコキシ基;フェノキシ基、2−メチルフェノキシ基、4−メチルフェノキシ基、4−メトキシフェノキシ基等の炭素数1〜10のアルコキシ基を有していてもよい炭素数6〜10のアリールオキシ基;3−フェノキシフェノキシ基等の炭素数6〜10のアリールオキシ基を有する炭素数6〜10のアリールオキシ基;アセチル基、プロピオニル基、ベンジルカルボニル基、4−メチルベンジルカルボニル基、4−メトキシベンジルカルボニル基、ベンゾイル基、2−メチルベンゾイル基、4−メチルベンゾイル基、4−メトキシベンゾイル基等の炭素数1〜10のアルコキシ基を有していてもよい炭素数2〜10のアシル基;メチルチオ基、エチルチオ基、イソプロピルチオ基等の炭素数1〜10のアルキルチオ基;メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等の炭素数2〜10のアルコキシカルボニル基;並びに、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子が挙げられる。
置換基を有するアルキル基としては、例えば、クロロメチル基、フルオロメチル基、トリフルオロメチル基、メトキシメチル基、エトキシメチル基、2−メトキシエチル基、メトキシカルボニルメチル基、1−エトキシカルボニル−2,2−ジメチル−3−シクロプロピル基および2−メチルチオエチル基が挙げられる。
【0029】
におけるアリール基としては、例えば、フェニル基、2−メチルフェニル基、4−メチルフェニル基、ナフチル基等の炭素数6〜20のアリール基が挙げられる。
アリール基が有していてもよい置換基としては、例えば、フルオロメチル基、トリフルオロメチル基等のフッ素原子を有する炭素数1〜10のアルキル基;メトキシメチル基、エトキシメチル基、2−メトキシエチル基等の炭素数1〜10のアルコキシ基を有する炭素数1〜10のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、シクロペンチルオキシ基、フルオロメトキシ基、トリフルオロメトキシ基、メトキシメトキシ基、エトキシメトキシ基、2−メトキシエトキシ基等のフッ素原子または炭素数1〜10のアルコキシ基を有していてもよい炭素数1〜10のアルコキシ基;フェノキシ基、2−メチルフェノキシ基、4−メチルフェノキシ基、4−メトキシフェノキシ基等の炭素数1〜10のアルコキシ基を有していてもよい炭素数6〜10のアリールオキシ基;3−フェノキシフェノキシ基等の炭素数6〜10のアリールオキシ基を有する炭素数6〜10のアリールオキシ基;アセチル基、プロピオニル基、ベンジルカルボニル基、4−メチルベンジルカルボニル基、4−メトキシベンジルカルボニル基等の炭素数1〜10のアルコキシ基を有していてもよい炭素数2〜10のアシル基;ニトロ基;フッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子;並びに、メチレンジオキシ基等の炭素数1〜6のアルキレンジオキシ基が挙げられる。置換アリール基としては、4−クロロフェニル基、4−メトキシフェニル基および3−フェノキシフェニル基等が挙げられる。
【0030】
におけるヘテロアリール基としては、例えば、ピリジル基、フリル基、5−メチルフリル基等の窒素原子、酸素原子、硫黄原子等のヘテロ原子を少なくとも一つ含む炭素数4〜10のヘテロアリール基等が挙げられる。
ヘテロアリール基が有していてもよい置換基としては、例えば、フルオロメチル基、トリフルオロメチル基等のフッ素原子を有する炭素数1〜10のアルキル基;メトキシメチル基、エトキシメチル基、2−メトキシエチル基等の炭素数1〜10のアルコキシ基を有する炭素数1〜10のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、シクロペンチルオキシ基、フルオロメトキシ基、トリフルオロメトキシ基、メトキシメトキシ基、エトキシメトキシ基、2−メトキシエトキシ基等のフッ素原子または炭素数1〜10のアルコキシ基を有していてもよい炭素数1〜10のアルコキシ基;フェノキシ基、2−メチルフェノキシ基、4−メチルフェノキシ基、4−メトキシフェノキシ基等の炭素数1〜10のアルコキシ基を有していてもよい炭素数6〜10のアリールオキシ基;3−フェノキシフェノキシ基等の炭素数6〜10のアリールオキシ基を有する炭素数6〜10のアリールオキシ基;アセチル基、プロピオニル基、ベンジルカルボニル基、4−メチルベンジルカルボニル基、4−メトキシベンジルカルボニル基等の炭素数1〜10のアルコキシ基を有していてもよい炭素数2〜10のアシル基;ニトロ基;並びに、フッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子が挙げられる。
置換基を有するヘテロアリール基としては、例えば、2−クロロピリジル基等が挙げられる。
【0031】
アルデヒド(2)としては、例えば、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、n−ブチルアルデヒド、シクロペンタンカルボアルデヒド、シクロヘキサンカルボアルデヒド、2−メチルプロパナール、2,2−ジメチルプロパナール、3−メチルチオプロパナール、2,2−ジメチルブタナール、1−メチルシクロヘキサンカルボアルデヒド、2,2−ジメチルノナナール、2,2−ジメチル−3−オキソプロパン酸メチル等の脂肪族アルデヒドが挙げられる。またアルデヒド(2)としては、パラホルムアルデヒド等のホルムアルデヒドの重合体も用いることができ、さらに、ホルマリン等、水と共に存在する状態で用いることもできる。
【0032】
アルデヒド(4)としては、例えば、前記脂肪族アルデヒド;ベンズアルデヒド、4−フルオロベンズアルデヒド、4−ニトロベンズアルデヒド、3−ブロモベンズアルデヒド、2−クロロベンズアルデヒド、4−メチルベンズアルデヒド、3−メトキシベンズアルデヒド、3,4,5−トリメトキシベンズアルデヒド、3,4−メチレンジオキシベンズアルデヒド、1−ナフトアルデヒド等の芳香族アルデヒド;並びに、ピコリンアルデヒド、ニコチンアルデヒド等のヘテロ芳香族アルデヒドが挙げられる。またアルデヒド(4)としては、パラホルムアルデヒド等のホルムアルデヒドの重合体も用いることができ、さらに、ホルマリン等、水と共に存在する状態で用いることもできる。
【0033】
アルデヒド(2)とアルデヒド(4)とのクロスカップリング反応の場合、Rが置換基を有していてもよいアルキル基であり、Rが水素原子であることが好ましい。アルデヒド(4)が、水と共に存在するホルムアルデヒドであることがより好ましく、アルデヒド(2)が3−メチルチオプロパナールであることがさらに好ましい。
【0034】
本発明には、アルデヒド化合物として、市販のものを用いてもよいし、公知の方法により製造したものを用いてもよい。
【0035】
本反応は、溶媒の存在下で行うことが好ましい。
溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン、クロロベンゼン等の芳香族炭化水素溶媒;ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素溶媒;ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素溶媒;ジエチルエーテル、メチルtert−ブチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル溶媒;酢酸エチル等のエステル溶媒;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド溶媒;メタノール、エタノール等のアルコール溶媒等が挙げられる。
アルデヒド化合物として、ホルマリンのような水溶液、即ち、水と共に存在するホルムアルデヒドを用いる場合は、水と相溶性の無い溶媒を用いることで、効率よく反応を実施することができる。水と相溶性の無い溶媒としては、前述した芳香族炭化水素溶媒;脂肪族炭化水素溶媒;ハロゲン化炭化水素溶媒が好ましく用いられる。
溶媒の使用量は、容積効率を考慮すると、実用的には、アルデヒド化合物の総量1重量部に対して、好ましくは、100重量部以下である。
【0036】
本反応は、二酸化炭素の存在下で行われることが好ましい。本反応に用いられる二酸化炭素は、ガス状のものであってもよいし、固体状のもの(ドライアイス)であってもよいし、超臨界状態のものであってもよい。ガス状の二酸化炭素は、窒素等の不活性ガスで希釈されたものであってもよい。
二酸化炭素の使用量は、塩基化合物の総量1モルに対して、好ましくは1モル以上であり、その上限は制限されないが、生産性の面から例えば1000モル以下である。
【0037】
本反応は、例えば、アルデヒド化合物とイミダゾリニウム塩(1)と塩基化合物と、必要に応じて溶媒とを混合する方法により行われる。アルデヒド化合物、イミダゾリニウム塩(1)、塩基化合物及び必要に応じて用いられる溶媒の混合順序は制限されないが、アルデヒド化合物とイミダゾリニウム塩(1)と、必要に応じて溶媒とを加えて撹拌し、ここに塩基化合物を添加して撹拌を継続する方法が好ましく用いられる。本反応を二酸化炭素雰囲気で行う方法が、さらに好ましく用いられる。
【0038】
本反応の反応温度としては、例えば、−20℃〜200℃の範囲を挙げることができる。
【0039】
本反応がホモカップリング反応である場合、イミダゾリニウム塩(1)の使用量は、アルデヒド化合物1モルに対して、好ましくは、0.0001モル〜0.2モル、より好ましくは0.001モル〜0.1モルである。
本反応がクロスカップリング反応である場合、イミダゾリニウム塩(1)の使用量は、使用量が少ない一方のアルデヒド化合物1モルに対して、好ましくは、0.0001モル〜0.2モル、より好ましくは0.001モル〜0.1モルであり、他方のアルデヒド化合物の使用量は、1モル以上である。
【0040】
本反応は、常圧下で行ってもよいし、加圧下で行ってもよい。ガス状の二酸化炭素により、加圧下に本反応を行うこともできる。
【0041】
本反応の進行度合いは、ガスクロマトグラフィ、高速液体クロマトグラフィ、薄層クロマトグラフィ、NMR、IR等の分析手段により確認することができる。
【0042】
本反応終了後、例えば、得られた反応混合物を濃縮することにより、α−ヒドロキシケトン化合物を取り出すことができる。取り出したα−ヒドロキシケトン化合物は、例えば、蒸留、カラムクロマトグラフィ等の精製手段により、さらに精製してもよい。
【0043】
かくして得られるα−ヒドロキシケトン化合物としては、例えば、2−ヒドロキシアセトアルデヒド、3−ヒドロキシ−2−ブタノン、4−ヒドロキシ−3−ヘキサノン、1,6−ジメチルチオ−4−ヒドロキシ−3−ヘキサノン、5−ヒドロキシ−4−オクタノン、2−ヒドロキシ−1−フェニルエタノン、2−ヒドロキシ−1−(4−クロロフェニル)エタノン、2−ヒドロキシ−1−(2−フルオロフェニル)エタノン、4−(メチルチオ)−2−オキソ−1−ブタノール、1−ヒドロキシ−2−プロパノン、1−ヒドロキシ−2−ブタノン、1−ヒドロキシ−2−ペンタノンおよび2−ヒドロキシ−1−シクロヘキサノンが挙げられる。
【0044】
本発明によれば、α−ヒドロキシケトン化合物を容易に且つ収率良く製造することができるので、工業的に有利である。
【実施例】
【0045】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。
【0046】
(実施例1)<1,3−ビス(2,6−ジブロモフェニル)イミダゾリニウムクロライドの合成>
窒素置換した200mLフラスコに、2,6−ジブロモアニリン10g、クロロホルム120gおよびトリエチルアミン4.8gを仕込んだ。得られた混合物に、オキザリルクロライド6gを0℃で30分間かけて滴下した。得られた混合物を、0℃で2時間攪拌した後、さらに室温で18時間攪拌した。得られた反応混合物に水を100g加えることにより、結晶を析出させた。次いで、析出した結晶をろ過操作により回収した後、得られた回収物を水10g、ジエチルエーテル20gで洗浄し、さらに乾燥することにより、白色結晶9.2gを得た。得られた白色結晶は、ガスクロマトグラフィ/質量分析法(GC−MS)より、N,N’−ビス(2,6−ジブロモフェニル)エタンジアミドであることを確認した。収率:84%。
MS(m/z):555(M
【0047】
200mLステンレス製オートクレーブに、上記で得たN,N'−ビス(2,6−ジブロモフェニル)エタンジアミド2.5gと、BH・テトラヒドロフランの1M溶液30mLとを仕込んだ後、75℃で16時間加熱攪拌した。室温まで冷却したのち、反応液を、メタノール80gおよび35重量%塩酸5gの混合液中に少しずつ添加攪拌した。得られた反応液から軽沸物を留去し、残渣にさらにメタノール100gを加え、再度、軽沸物を留去することにより、白色結晶2.1gを得た。収率:82%
得られた結晶は、GC−MSより、N,N’−ビス(2,6−ジブロモフェニル)−1,2−エタンジアミン塩酸塩であることを確認した。
MS(m/z):528(M、フリーアミン)
【0048】
窒素置換した200mLフラスコに、上記で得たN,N’−ビス(2,6−ジブロモフェニル)−1,2−エタンジアミン塩酸塩2gと、オルトギ酸トリエチル24gとを仕込み、得られた混合物を1時間還流した後、室温まで冷却することにより、結晶を析出させた。次いで、析出した結晶をろ過操作により回収した後、得られた回収物をテトラヒドロフラン5gで洗浄、乾燥することにより、白色結晶560mgを得た。得られた結晶は、H−NMRより、1,3−ビス[(2,6−ジブロモ)フェニル]イミダゾリニウムクロライドであることを確認した。収率:27%
H−NMR(δ/ppm、DMSO−d6、テトラメチルシラン基準):4.60(s,4H),7.5(m,2H),8.0(m,4H),9.81(s,1H)
【0049】
(実施例2)<1,3−ビス(2,4,6−トリブロモフェニル)イミダゾリニウムクロライドの合成>
窒素置換した300mLフラスコに、2,4,6−トリブロモアニリン25g、クロロホルム200gおよびトリエチルアミン9.2gを仕込んだ。得られた混合物に、オキザリルクロライド11.5gを0℃で30分間かけて滴下した。得られた混合物を、0℃で2時間攪拌した後、さらに室温で18時間攪拌した。得られた反応混合物に水を100g加えることにより、結晶を析出させた。次いで、析出した結晶をろ過操作により回収した後、得られた回収物を水10g、ジエチルエーテル20gで洗浄し、さらに乾燥することにより、白色結晶20.4gを得た。得られた白色結晶は、GC−MSより、N,N’−ビス(2,4,6−トリブロモフェニル)エタンジアミドであることを確認した。収率:76%。
MS(m/z):713(M
【0050】
200mLステンレス製オートクレーブに、上記で得たN,N’−ビス(2,4,6−トリブロモフェニル)エタンジアミド10.1gと、BH・テトラヒドロフランの1M溶液85mLとを仕込んだ後、75℃で16時間加熱攪拌した。室温まで冷却したのち、反応液を、メタノール170gおよび35重量%塩酸8.5gの混合液中に少しずつ添加攪拌した。得られた反応液から軽沸物を留去し、残渣にさらにメタノール150gを加え、再度、軽沸物を留去することにより、白色結晶9.1gを得た。収率:89%
得られた結晶は、GC−MSより、N,N’−ビス(2,4,6−トリブロモフェニル)−1,2−エタンジアミン塩酸塩であることを確認した。
MS(m/z):685(M、フリーアミン)
【0051】
窒素置換した200mLフラスコに、上記で得たN,N’−ビス(2,4,6−トリブロモフェニル)−1,2−エタンジアミン塩酸塩9gと、オルトギ酸トリエチル100gとを仕込み、得られた混合物を1時間還流した後、室温まで冷却することにより、結晶を析出させた。次いで、析出した結晶をろ過操作により回収した後、得られた回収物をテトラヒドロフラン10gで洗浄、乾燥することにより、白色結晶を3.1g得た。得られた結晶は、H−NMRより、1,3−ビス[(2,4,6−トリブロモ)フェニル]イミダゾリニウムクロライドであることを確認した。収率:32%
H−NMR(δ/ppm、DMSO−d6、テトラメチルシラン基準):4.66(s,4H),8.3(s,4H),9.70(s,1H)
【0052】
(実施例3)<1,3−ビス[(2,6−ジイソプロピル)−4−ニトロフェニル]イミダゾリニウムクロライドの合成>
窒素置換した100mLフラスコに、市販の1,3−ビス[(2,6−ジイソプロピル)フェニル]イミダゾリニウムクロライド1.0gと、濃硫酸10mLとを加え、0℃に冷却した。ここに、68重量%硝酸7.5mLをゆっくりと加え、その後、室温まで昇温し、1.5時間攪拌した後、この反応液を、氷水100mLに加え、結晶を析出させた。次いで、析出した結晶をろ過操作により回収した後、得られた回収物を水20gと、ジエチルエーテル20gで洗浄、乾燥することにより、白色結晶を1.52g得た。得られた結晶は、H−NMRより、1,3−ビス[(2,6−ジイソプロピル)−4−ニトロフェニル]イミダゾリニウムクロライドであることを確認した。収率:98%
H−NMR(δ/ppm、DMSO−d6、テトラメチルシラン基準):1.1−1.5(m,12H),2.9−3.1(m,2H),3.3−3.5(m,2H),4.6−4.8(m,4H),7.7(d,2H),7.9(d,2H),9.70(s,1H)
【0053】
(実施例4)<1,3−ビス(4−ドデシル−2,6−ジブロモフェニル)イミダゾリニウムクロライドの合成>
窒素置換した300mLフラスコに、4−ドデシルアニリン9.3g、クロロホルム150gおよびトリエチルアミン4.3gを仕込んだ。得られた混合物に、オキザリルクロライド5.4gを0℃で30分かけて滴下した。得られた混合物を、0℃で2時間攪拌した後、さらに室温で18時間攪拌した。得られた反応混合物に水を100g加えると、結晶は析出せず、油層はエマルジョン状態となり、水層と分液した。水層を分液後、さらに水50gで油層を水洗、分液した。次いで、油層を濃縮、乾燥して、薄茶色の結晶としてN,N’−ビス(4−ドデシルフェニル)エタンジアミド11.4gを得た。
【0054】
200mLステンレス製オートクレーブに、上記で得たN,N’−ビス(4−ドデシルフェニル)エタンジアミド9gと、BH・テトラヒドロフランの1M溶液100mLとを仕込んだ後、75℃で16時間加熱攪拌した。室温まで冷却したのち、反応液を、メタノール170gおよび35重量%塩酸8.5gの混合液中に少しずつ添加攪拌した。得られた反応液から軽沸物を留去し、残渣にさらにメタノール150gを加え、再度、軽沸物を留去することにより、白色結晶5.0gを得た。収率:58%
得られた結晶は、H−NMRより、N,N’−ビス(4−ドデシルフェニル)−1,2−エタンジアミン塩酸塩であることを確認した。
H−NMR(δ/ppm、CDCL3、テトラメチルシラン基準):0.95(m,6H),1.4−1.7(m,40H),2.48−2.54(m,4H),3.90(s,4H),7.0−7.3(m,8H)
【0055】
窒素置換した50mLフラスコに、上記で得たN,N’−ビス(4−ドデシルフェニル)−1,2−エタンジアミン塩酸塩2gと、クロロホルム20gとを仕込み、ここにN−ブロモスクシンイミド2.5gを少しずつ加え、得られたスラリーを70℃まで昇温し、同温度で1時間攪拌した。室温まで冷却後、水20gを加え、分液ロートでクロロホルム層を、水洗浄、分液し、もう一度同じ操作を繰り返した。クロロホルム層を硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を留去し、褐色オイルとしてN,N’−ビス(4−ドデシル−2,6−ジブロモフェニル)−1,2−エタンジアミン塩酸塩3.2gを得た。
【0056】
窒素置換した100mLフラスコに、上記で得たN,N’−ビス(4−ドデシル−2,6−ジブロモフェニル)−1,2−エタンジアミン塩酸塩の全量と、オルトギ酸トリエチル20gと、濃塩酸720mgとを仕込み、得られた混合物を、発生するエタノールを除きながら1時間還流した後、室温まで冷却することにより、結晶を析出させた。次いで、析出した結晶をろ過操作により回収した後、得られた回収物をジエチルエーテル10gで洗浄後、乾燥することにより、白色結晶を1.5g得た。得られた結晶は、H−NMRより、1,3−ビス[(4−ドデシル−2,6−ジブロモ)フェニル]イミダゾリニウムクロライドであることを確認した。
収率:45%(臭素化とイミダゾリウム塩化の2工程で)
H−NMR(δ/ppm、CDCL3、テトラメチルシラン基準):0.90(m,6H),1.2−1.8(m,40H),2.50−2.56(m,4H),4.70(s,4H),7.49(bs,4H)、10.19(s、1H)
【0057】
(実施例5)<1,3−ビス(4−メチル−2,6−ジブロモフェニル)イミダゾリニウムクロライドの合成>
窒素置換した50mLフラスコに、N,N’−ビス(4−メチルフェニル)−1,2−エタンジアミン塩酸塩2gと、クロロホルム20gとを仕込み、ここにN−ブロモスクシンイミド5.7gを少しずつ加え、得られたスラリーを室温で1時間攪拌した。反応後、水20gを加え、分液ロートでクロロホルム層を、水洗浄、分液し、もう一度同じ操作を繰り返した。クロロホルム層を硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を留去し、薄黄色結晶3.5gを得た。得られた結晶は、GC−MSより、N,N’−ビス(4−メチル−2,6−ジブロモフェニル)−1,2−エタンジアミン塩酸塩であることを確認した。
MS(m/z):555(M、フリーアミン)
【0058】
窒素置換した100mLフラスコに、上記で得たN,N’−ビス(4−メチル−2,6−ジブロモフェニル)−1,2−エタンジアミン塩酸塩の全量と、オルトギ酸トリエチル16gと、濃塩酸1.6gとを仕込み、得られた混合物を、発生するエタノールを除きながら1時間還流した後、室温まで冷却することにより、結晶を析出させた。次いで、析出した結晶をろ過操作により回収した後、得られた回収物をジエチルエーテル10gで洗浄後、乾燥することにより、白色結晶を1.04g得た。得られた結晶は、H−NMRより、1,3−ビス[(4−メチル−2,6−ジブロモ)フェニル]イミダゾリニウムクロライドであることを確認した。
収率:27%(臭素化とイミダゾリウム塩化の2工程で)
H−NMR(δ/ppm、CDCL3、テトラメチルシラン基準):2.48(s,6H),4.67(s,4H),7.48(bs,4H),10.01(s,1H)
【0059】
(実施例6)<1,3−ビス(4−tert−ブチル−2,6−ジブロモフェニル)イミダゾリニウムクロライドの合成>
窒素置換した300mLフラスコに、4−tert−ブチル−2,6−ジブロモアニリン10g、クロロホルム120gおよびトリエチルアミン4.0gを仕込んだ。得られた混合物に、オキザリルクロライド5.0gを0℃で30分間かけて滴下した。得られた混合物を、0℃で2時間攪拌した後、さらに室温で18時間攪拌した。得られた反応混合物に水を100g加えると、結晶は析出せず、油層はオイル状態となり、水層と分液した。水層を分液後、さらに水50gで油層を水洗、分液した。次いで、油層を濃縮、乾燥して、薄茶色の結晶としてN,N’−ビス(4−tert−ブチル−2,6−ジブロモフェニル)エタンジアミド10.5gを得た。
【0060】
200mLステンレス製オートクレーブに、上記で得たN,N’−ビス(4−tert−ブチル−2,6−ジブロモフェニル)エタンジアミド5gと、BH・テトラヒドロフランの1M溶液100mLとを仕込んだ後、75℃で16時間加熱攪拌した。室温まで冷却したのち、反応液を、メタノール170gおよび35重量%塩酸8.5gの混合液中に少しずつ添加攪拌した。得られた反応液から軽沸物を留去し、残渣にさらにメタノール150gを加え、再度、軽沸物を留去することにより、茶褐色オイルとしてN,N’−ビス(4−tert−ブチル−2,6−ジブロモフェニル)−1,2−エタンジアミン塩酸塩5.5gを得た。
窒素置換した100mLフラスコに、上記で得たN,N’−ビス(4−tert−ブチル−2,6−ジブロモフェニル)−1,2−エタンジアミン塩酸塩の全量と、オルトギ酸トリエチル20gと、濃塩酸1.5gとを仕込み、得られた混合物を、発生するエタノールを除きながら1時間還流した後、室温まで冷却することにより、結晶を析出させた。次いで、析出した結晶をろ過操作により回収した後、得られた回収物をジエチルエーテル10gで洗浄、乾燥することにより、白色結晶を900mg得た。得られた結晶は、H−NMRより、1,3−ビス[(4−tert−ブチル−2,6−ジブロモ)フェニル]イミダゾリニウムクロライドであることを確認した。収率:18%(還元とイミダゾリウム塩化の2工程で)
H−NMR(δ/ppm、CDCL3、テトラメチルシラン基準):1.32(s,18H),4.60(bs,4H),7.61(s,4H),10.14(s,1H)
【0061】
(実施例7)<1,3−ビス(2,6−ジブロモ−4−フルオロフェニル)イミダゾリニウムクロライドの合成>
窒素置換した200mLフラスコに、2,6−ジブロモ−4−フルオロアニリン10.8g、テトラヒドロフラン108gおよびトリエチルアミン4.1gを仕込んだ。得られた混合物に、オキザリルクロライド5.1gを0℃で30分間かけて滴下した。得られた混合物を、0℃で2時間攪拌した後、さらに室温で18時間攪拌した。得られた反応混合物に水を100g加えることにより、結晶を析出させた。次いで、析出した結晶をろ過操作により回収した後、得られた回収物を水10g、ジエチルエーテル20gで洗浄し、さらに乾燥することにより、白色結晶9.0gを得た。得られた白色結晶は、H−NMRより、N,N’−ビス(2,6−ジブロモ−4−フルオロフェニル)エタンジアミドであることを確認した。収率:76%。
H−NMR(δ/ppm、DMSO−d6、テトラメチルシラン基準):7.83(d,J=8.1Hz,4H),10.84(s,2H)
【0062】
200mLステンレス製オートクレーブに、上記で得たN,N’−ビス(2,6−ジブロモ−4−フルオロフェニル)エタンジアミド3.0gと、BH・テトラヒドロフランの1M溶液50mLとを仕込んだ後、75℃で16時間加熱攪拌した。室温まで冷却したのち、反応液を、メタノール80gおよび35重量%塩酸5gの混合液中に少しずつ添加攪拌した。得られた反応液から軽沸物を留去し、残渣にさらにメタノール100gを加え、再度、軽沸物を留去することにより、白色結晶2.7gを得た。得られた結晶は、H−NMRより、N,N’−ビス(2,6−ジブロモ−4−フルオロフェニル)−1,2−エタンジアミン塩酸塩であることを確認した。収率:80%
H−NMR(δ/ppm、DMSO−d6、テトラメチルシラン基準):3.30(s,4H),5.99(br,2H),7.61(d,J=8.1Hz,4H)
【0063】
窒素置換した50mLフラスコに、上記で得たN,N’−ビス(2,6−ジブロモ−4−フルオロフェニル)−1,2−エタンジアミン塩酸塩1.1gと、オルトギ酸トリエチル20gとを仕込み、得られた混合物を3時間還流した後、室温まで冷却することにより、結晶を析出させた。次いで、析出した結晶をろ過操作により回収した後、得られた回収物をテトラヒドロフラン5gで洗浄、乾燥することにより、白色結晶560mgを得た。得られた結晶は、H−NMRより、1,3−ビス[2,6−ジブロモ−4−フルオロフェニル]イミダゾリニウムクロライドであることを確認した。収率:55%
H−NMR(δ/ppm、DMSO−d6、テトラメチルシラン基準):4.55(s,4H),8.08(d,J=8.1Hz,4H),9.71(s,1H)
【0064】
(実施例8)
窒素置換した50mLシュレンク管に、3−メチルチオプロパナール3.0g、パラホルムアルデヒド865mg、実施例1で得た1,3−ビス(2,6−ジブロモフェニル)イミダゾリニウムクロライド166mgおよびテトラヒドロフラン6gを仕込んだ。得られた混合物を、60℃に加温し、攪拌下に、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセン40mgを加え、得られた混合物を60℃で3時間撹拌した。得られた反応混合物を室温まで冷却することにより、4−(メチルチオ)−2−オキソ−1−ブタノールを含む反応混合物を得た。ガスクロマトグラフィ内部標準法による分析の結果、4−(メチルチオ)−2−オキソ−1−ブタノールの収率は75%であり、3−メチルチオプロパナールが23%回収された。
【0065】
(実施例9)
実施例8において、1,3−ビス(2,6−ジブロモフェニル)イミダゾリニウムクロライド166mgの代わりに、1,3−ビス(2,6−ジクロロフェニル)イミダゾリニウムクロライド114mgを用いたこと以外は実施例8と同様な方法により、反応混合物を得た。ガスクロマトグラフィ内部標準法による分析の結果、4−(メチルチオ)−2−オキソ−1−ブタノールの収率は54%であり、3−メチルチオプロパナールが34%回収された。
【0066】
(実施例10)
実施例8において、1,3−ビス(2,6−ジブロモフェニル)イミダゾリニウムクロライド166mgの代わりに、実施例2で合成した1,3−ビス(2,4,6−トリブロモフェニル)イミダゾリニウムクロライド106mgを用い、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセンの使用量を22mgとしたこと以外は実施例8と同様な方法により、反応混合物を得た。ガスクロマトグラフィ内部標準法による分析の結果、4−(メチルチオ)−2−オキソ−1−ブタノールの収率は32%であり、3−メチルチオプロパナールが67%回収された。
【0067】
(実施例11)
窒素置換した50mLシュレンク管に、3−メチルチオプロパナール1.0g、パラホルムアルデヒド290mg、実施例3で得た1,3−ビス[(2,6−ジイソプロピル)−4−ニトロフェニル]イミダゾリニウムクロライド40mgおよびテトラヒドロフラン2gを仕込んだ。得られた混合物を、40℃に加温し、攪拌下に、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセン15mgを加え、得られた混合物を40℃で3時間撹拌した。得られた反応混合物を室温まで冷却することにより、4−(メチルチオ)−2−オキソ−1−ブタノールを含む反応混合物を得た。ガスクロマトグラフィ内部標準法による分析の結果、4−(メチルチオ)−2−オキソ−1−ブタノールの収率は12%であり、3−メチルチオプロパナールが83%回収された。
【0068】
(比較例1)
実施例8において、1,3−ビス(2,6−ジブロモフェニル)イミダゾリニウムクロライド166mgの代わりに、1,3−ビス(2,6−ジイソプロピルフェニル)イミダゾリニウムクロライド(因みに、式(1)で示されるイミダゾリニウム塩におけるRおよびRが2つの電子供与性基を有するアリール基である化合物に相当する。)123mgを用いたこと以外は実施例8と同様な方法により、反応混合物を得た。ガスクロマトグラフィ内部標準法による分析の結果、4−(メチルチオ)−2−オキソ−1−ブタノールの収率は6%であり、3−メチルチオプロパナールが55%回収された。
【0069】
(実施例12)
窒素置換した50mLシュレンク管に、3−メチルチオプロパナール200mg、35重量%ホルマリン300mg、実施例1で得た1,3−ビス(2,6−ジブロモフェニル)イミダゾリニウムクロライド10mgおよびトルエン1gを仕込んだ。得られた混合物を、60℃に加温し、攪拌下に、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセン3mgとトルエン100mgの混合液を加え、得られた混合物を60℃で3時間撹拌した。得られた反応混合物を室温まで冷却することにより、4−(メチルチオ)−2−オキソ−1−ブタノールを含む反応混合物を得た。ガスクロマトグラフィ内部標準法による分析の結果、4−(メチルチオ)−2−オキソ−1−ブタノールの収率は55%であり、3−メチルチオプロパナールが20%回収された。
【0070】
(実施例13)
窒素置換した50mLシュレンク管に、3−メチルチオプロパナール1.0g、35重量%ホルマリン1.2g、実施例2で得た1,3−ビス(2,4,6−トリブロモフェニル)イミダゾリニウムクロライド70mgおよびトルエン3gを仕込んだ。得られた混合物を、60℃に加温し、攪拌下に、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセン15mgとトルエン100mgの混合液を加え、得られた混合物を60℃で3時間撹拌した。得られた反応混合物を室温まで冷却することにより、4−(メチルチオ)−2−オキソ−1−ブタノールを含む反応混合物を得た。ガスクロマトグラフィ内部標準法による分析の結果、4−(メチルチオ)−2−オキソ−1−ブタノールの収率は60%であり、3−メチルチオプロパナールが35%回収された。
【0071】
(実施例14)
窒素置換した50mLシュレンク管に、3−メチルチオプロパナール1.14g、35重量%ホルマリン1.9g、実施例2で得た1,3−ビス(2,4,6−トリブロモフェニル)イミダゾリニウムクロライド40mgおよびトルエン3gを仕込んだ。ここに、ドライアイス1gを加え、発生する二酸化炭素ガスを排気して常圧とした。得られた混合物を、60℃に加温し、攪拌下に、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセン9mgとトルエン100mgの混合液を加え、得られた混合物を50℃で2時間撹拌した。得られた反応混合物を室温まで冷却することにより、4−(メチルチオ)−2−オキソ−1−ブタノールを含む反応混合物を得た。ガスクロマトグラフィ内部標準法による分析の結果、4−(メチルチオ)−2−オキソ−1−ブタノールの収率は36%であり、3−メチルチオプロパナールが63%回収された。
【0072】
(実施例15)
窒素置換した50mLシュレンク管に、3−メチルチオプロパナール1.14g、パラホルムアルデヒド620mg、実施例2で得た1,3−ビス(2,4,6−トリブロモフェニル)イミダゾリニウムクロライド40mgおよびトルエン3gを仕込んだ。ここに、ドライアイス1gを加え、発生する二酸化炭素ガスを排気して常圧とした。得られた混合物を、50℃に加温し、攪拌下に、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセン9mgとトルエン100mgの混合液を加え、得られた混合物を50℃で2時間撹拌した。得られた反応混合物を室温まで冷却することにより、4−(メチルチオ)−2−オキソ−1−ブタノールを含む反応混合物を得た。ガスクロマトグラフィ内部標準法による分析の結果、4−(メチルチオ)−2−オキソ−1−ブタノールの収率は56%であり、3−メチルチオプロパナールが43%回収された。
【0073】
(実施例16)
窒素雰囲気下、50mLステンレス反応管をドライアイス/メタノールバスで冷却し、ここに、3−メチルチオプロパナール200mg、実施例1で得た1,3−ビス(2,6−ジブロモフェニル)イミダゾリニウムクロライド50mg、ドライアイス1.5g、および、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセン15mgとテトラヒドロフラン500mgとの混合液を加え、密閉した後、40℃で3時間撹拌した。反応管の圧力は1.0MPaまで上昇した。得られた反応混合物を室温まで冷却することにより、1,6−ジメチルチオ−4−ヒドロキシ−3−ヘキサノンを含む反応混合物を得た。ガスクロマトグラフィ面積百分率法による分析の結果、1,6−ジメチルチオ−4−ヒドロキシ−3−ヘキサノンの収率は85%であり、3−メチルチオプロパナールが7%回収された。1,6−ジメチルチオ−4−ヒドロキシ−3−ヘキサノンの同定はGC−MSにて実施した。MS(m/z):208(M
【0074】
(実施例17)
窒素置換した50mLシュレンク管に、プロパナール1.0g、実施例2で得た1,3−ビス(2,4,6−トリブロモフェニル)イミダゾリニウムクロライド126mgおよびテトラヒドロフラン1.5gを仕込んだ。得られた混合物を、40℃に加温し、攪拌下に、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセン26mgおよびテトラヒドロフラン500mgの混合液を加え、得られた混合物を40℃で2時間撹拌した。得られた反応混合物を室温まで冷却することにより、4−ヒドロキシ−3−ヘキサノンを含む反応混合物を得た。ガスクロマトグラフィ内部標準法による分析の結果、4−ヒドロキシ−3−ヘキサノンの収率は11%であり、プロパナールが70%回収された。
【0075】
(実施例18)
窒素置換した50mLシュレンク管に、3−メチルチオプロパナール1.2g、パラホルムアルデヒド500mg、実施例4で得た1,3−ビス(4−ドデシル−2,6−ジブロモフェニル)イミダゾリニウムクロライド50mgおよびトルエン3gを仕込んだ。ここに、ドライアイス0.5gを加え、発生する二酸化炭素ガスを排気して常圧とした。得られた混合物を、50℃に加温し、攪拌下に、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセン8mgとトルエン100mgの混合液を加え、得られた混合物を50℃で2時間撹拌した。得られた反応混合物を室温まで冷却することにより、4−(メチルチオ)−2−オキソ−1−ブタノールを含む反応混合物を得た。ガスクロマトグラフィ内部標準法による分析の結果、4−(メチルチオ)−2−オキソ−1−ブタノールの収率は75%であり、3−メチルチオプロパナールが16%回収された。
【0076】
(実施例19)
窒素置換した50mLシュレンク管に、3−メチルチオプロパナール1.14g、35重量%ホルマリン1.3g、実施例4で得た1,3−ビス(4−ドデシル−2,6−ジブロモフェニル)イミダゾリニウムクロライド50mgおよびトルエン3gを仕込んだ。ここに、ドライアイス0.5gを加え、発生する二酸化炭素ガスを排気して常圧とした。得られた混合物を、50℃に加温し、攪拌下に、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセン9mgとトルエン100mgの混合液を加え、得られた混合物を50℃で8時間撹拌した。得られた反応混合物を室温まで冷却することにより、4−(メチルチオ)−2−オキソ−1−ブタノールを含む反応混合物を得た。ガスクロマトグラフィ内部標準法による分析の結果、4−(メチルチオ)−2−オキソ−1−ブタノールの収率は34%であり、3−メチルチオプロパナールが61%回収された。
【0077】
(実施例20)
窒素置換した50mLシュレンク管に、3−メチルチオプロパナール1.05g、35重量%ホルマリン1.2g、実施例5で得た1,3−ビス(4−メチル−2,6−ジブロモフェニル)イミダゾリニウムクロライド30mgおよびトルエン3gを仕込んだ。ここに、ドライアイス0.5gを加え、発生する二酸化炭素ガスを排気して常圧とした。得られた混合物を、50℃に加温し、攪拌下に、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセン8mgとトルエン100mgの混合液を加え、得られた混合物を50℃で4時間撹拌した。得られた反応混合物を室温まで冷却することにより、4−(メチルチオ)−2−オキソ−1−ブタノールを含む反応混合物を得た。ガスクロマトグラフィ内部標準法による分析の結果、4−(メチルチオ)−2−オキソ−1−ブタノールの収率は16%であり、3−メチルチオプロパナールが78%回収された。
【0078】
(実施例21)
窒素置換した50mLシュレンク管に、3−メチルチオプロパナール907mg、35重量%ホルマリン1.1g、実施例6で得た1,3−ビス(4−tert−ブチル−2,6−ジブロモフェニル)イミダゾリニウムクロライド30mgおよびトルエン3gを仕込んだ。ここに、ドライアイス0.5gを加え、発生する二酸化炭素ガスを排気して常圧とした。得られた混合物を、50℃に加温し、攪拌下に、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセン7mgとトルエン100mgの混合液を加え、得られた混合物を50℃で2時間撹拌した。得られた反応混合物を室温まで冷却することにより、4−(メチルチオ)−2−オキソ−1−ブタノールを含む反応混合物を得た。ガスクロマトグラフィ内部標準法による分析の結果、4−(メチルチオ)−2−オキソ−1−ブタノールの収率は34%であり、3−メチルチオプロパナールが65%回収された。
【0079】
(実施例22)
窒素置換した50mLシュレンク管に、3−メチルチオプロパナール1.00g、35重量%ホルマリン0.88g、実施例7で得た1,3−ビス(2,6−ジブロモ−4−フルオロフェニル)イミダゾリニウムクロライド33mgおよびトルエン2gを仕込んだ。ここに、ドライアイス1gを加え、発生する二酸化炭素ガスを排気して常圧とした。得られた混合物を、60℃に加温し、攪拌下に、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセン7.5mgとトルエン100mgの混合液を加え、得られた混合物を50℃で2時間撹拌した。得られた反応混合物を室温まで冷却することにより、4−(メチルチオ)−2−オキソ−1−ブタノールを含む反応混合物を得た。ガスクロマトグラフィ内部標準法による分析の結果、4−(メチルチオ)−2−オキソ−1−ブタノールの収率は55%であり、3−メチルチオプロパナールが30%回収された。
【0080】
(実施例23)
窒素置換した100mL反応容器に、3−メチルチオプロパナール10.0g、パラホルムアルデヒド3.45g、実施例2で得た1,3−ビス(2,4,6−トリブロモフェニル)イミダゾリニウムクロライド1.10gおよびテトラヒドロフラン20gを仕込んだ。得られた混合物を、45℃に加温し、攪拌下、気相部に二酸化炭素ガスを導入した後、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセン0.21gとトルエン5.25gの混合液を2.5時間かけて滴下し、得られた混合物を50℃でさらに2時間撹拌した。得られた反応混合物を室温まで冷却することにより、4−(メチルチオ)−2−オキソ−1−ブタノールを含む反応混合物を得た。ガスクロマトグラフィ内部標準法による分析の結果、4−(メチルチオ)−2−オキソ−1−ブタノールの収率は88%であり、3−メチルチオプロパナールが5%回収された。得られた反応混合物を減圧蒸留することで4−(メチルチオ)−2−オキソ−1−ブタノール7.1g(沸点85〜94℃/46.7Pa、含量94%)を得た。
【0081】
(実施例24)
窒素置換した50mLシュレンク管に、ベンズアルデヒド500mg、パラホルムアルデヒド290mg、実施例2で得た1,3−ビス(2,4,6−トリブロモフェニル)イミダゾリニウムクロライド35mgおよびトルエン3gを仕込んだ。ここに、ドライアイス0.5gを加え、発生する二酸化炭素ガスを排気して常圧とした。得られた混合物を、50℃に加温し、攪拌下に、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセン7mgとトルエン100mgの混合液を加え、得られた混合物を50℃で2時間撹拌した。得られた反応混合物を室温まで冷却することにより、2−ヒドロキシ−1−フェニルエタノンを含む反応混合物を得た。ガスクロマトグラフィ内部標準法による分析の結果、2−ヒドロキシ−1−フェニルエタノンの収率は15%であり、ベンズアルデヒドが84%回収された。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明によれば、α−ヒドロキシケトン化合物を容易に且つ収率良く製造することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)

(式中、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基または置換基を有していてもよいアリール基を表わすか、或いは、RとRとが互いに結合して、それらの結合する炭素原子とともに環を形成する。RおよびRは、それぞれ独立して、1つ以上の電子求引性基を有するアリール基を表わす。Xは陰イオンを表わす。)
で示されるイミダゾリニウム塩と塩基化合物との存在下に、アルデヒド化合物のカップリング反応を行うα−ヒドロキシケトン化合物の製造方法。
【請求項2】
塩基化合物が、有機塩基、アルカリ金属塩およびアルカリ土類金属塩からなる群から選ばれる少なくとも一種の化合物である請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
およびRが、それぞれ独立して、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、アルコキシカルボニル基、アシル基、並びに、スルホ基からなる群から選ばれる少なくとも一種の基を有するアリール基である請求項1または2記載の製造方法。
【請求項4】
式(1)で示されるイミダゾリニウム塩が、式(1A)

(式中、R、RおよびXはそれぞれ上記と同一の意味を表わす。R3AおよびR4Aは、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい2,6−ジクロロフェニル基、置換基を有していてもよい2,6−ジブロモフェニル基、置換基を有していてもよい2,6−ビス(トリフルオロメチル)フェニル基、2,6−ジフェニルフェニル基または2,6−ジイソプロピル−4−ニトロフェニル基を表わす。)
で示されるイミダゾリニウム塩である請求項1または2記載の製造方法。
【請求項5】
アルデヒド化合物のカップリング反応が、二酸化炭素の存在下に行われる請求項1〜4のいずれか1項記載の製造方法。
【請求項6】
アルデヒド化合物のカップリング反応が、式(2)

(式中、Rは水素原子または置換基を有していてもよいアルキル基を表わす。)
で示されるアルデヒド化合物のホモカップリング反応である請求項1〜5のいずれか1項記載の製造方法。
【請求項7】
アルデヒド化合物のカップリング反応が、式(2)

(式中、Rは水素原子または置換基を有していてもよいアルキル基を表わす。)
で示されるアルデヒド化合物と式(4)

(式中、RはRと異なり、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基または置換基を有していてもよいヘテロアリール基を表わす。)
で示されるアルデヒド化合物とのクロスカップリング反応である請求項1〜5のいずれか1項記載の製造方法。
【請求項8】
が置換基を有していてもよいアルキル基であり、Rが水素原子である請求項7記載の製造方法。
【請求項9】
式(4)で示されるアルデヒド化合物が、水と共に存在するホルムアルデヒドである請求項8記載の製造方法。
【請求項10】
式(2)で示されるアルデヒド化合物が3−メチルチオプロパナールであり、α−ヒドロキシケトン化合物が4−メチルチオ−2−オキソ−1−ブタノールである請求項8または9記載の製造方法。
【請求項11】
式(1A)

(式中、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基または置換基を有していてもよいアリール基を表わすか、或いは、RとRとが互いに結合して、それらの結合する炭素原子とともに環を形成する。RおよびRは、それぞれ独立して、1つ以上の電子求引性基を有するアリール基を表わす。R3AおよびR4Aは、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい2,6−ジクロロフェニル基、置換基を有していてもよい2,6−ジブロモフェニル基、置換基を有していてもよい2,6−ビス(トリフルオロメチル)フェニル基、2,6−ジフェニルフェニル基または2,6−ジイソプロピル−4−ニトロフェニル基を表わす。Xは陰イオンを表わす。)
で示されるイミダゾリニウム塩。
【請求項12】
およびRが共に水素原子であり、R3AおよびR4Aが、それぞれ独立して、2,6−ジブロモフェニル基、4−tert−ブチル−2,6−ジブロモフェニル基、4−ドデシル−2,6−ジブロモフェニル基、2,4,6−トリブロモフェニル基、4−フルオロ−2,6−ジブロモフェニル基または2,6−ジイソプロピル−4−ニトロフェニル基である請求項11記載のイミダゾリニウム塩。
【請求項13】
およびRが共に水素原子であり、R3AおよびR4Aが、それぞれ独立して、2,6−ジブロモフェニル基、2,4,6−トリブロモフェニル基、4−フルオロ−2,6−ジブロモフェニル基または2,6−ジイソプロピル−4−ニトロフェニル基である請求項11記載のイミダゾリニウム塩。

【公開番号】特開2013−67602(P2013−67602A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−9797(P2012−9797)
【出願日】平成24年1月20日(2012.1.20)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】