説明

α−ヒドロキシケトン

式(I)[式中、xは1〜4の整数であり;pは1〜3の整数であり;qは0〜3の整数であり;Arはフェニル、ナフチル、アントリルまたはフェナントリルであり、そのそれぞれは場合によって1つ以上のCl、CN、OR5、C3−C5アルケニルまたは場合によって1つ以上のOR6、COORもしくはハロゲンにより置換されているC1−C6アルキルにより置換され;R1は、xが1である場合、OR7、O-+、NR89、場合によって1つ以上のCOOR10により置換されているC1−C20アルキルであるか、または1つ以上のOによって中断されたC2−C20アルキルであるか、またはC2−C5アルケニルもしくはフェニル−C1−C4アルキルであり;R1は、xが2である場合、たとえば例えば、C1−C20アルキレンであり;R1は、xが3である場合、たとえば例えば、三価基であり;R1は、xが4である場合、たとえば例えば、4価基であり;R2およびR3は、水素もしくはC1−C8アルキルであるか、またはR2およびR3は一緒になって、O、C1−C3アルキレンもしくはCH=CHであり;R4はC1−C4アルキルであり;R5、R6、R7、R8、R9およびR10は、たとえば例えば、水素またはC1−C4アルキルであり;そしてXはx価カチオン性カウンターイオンである]の化合物は、UV−A光(320〜450nm)での硬化用光開始剤として特に適している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は新規α−ヒドロキシケトン化合物および重合性組成物における光開始剤としてのその使用に関する。
【0002】
α−ヒドロキシケトンは当該技術分野において光開始剤として知られている。このような化合物は、例えばUS4318791、US4347111またはWO03/040076に開示されている。α−ヒドロキシケトン化合物の他の光開始剤との組み合わせにおける使用は、例えばUS4563438、US6361925またはGB2259704から公知である。
【0003】
α−ヒドロキシケトン型光開始剤は、<320nm(UV−C、UV−B)の波長のUV光を用いたクリアコーティングの有効な光開始剤である。さらに、前記開始剤は、良好な表面硬化を提供するが、例えば光安定剤パッケージまたは顔料を含む配合物においては、スルー硬化は不十分であることが多い。したがって今までのところ、α−ヒドロキシケトン型化合物は、十分なスルー硬化を達成するために、より長い波長を吸収する光開始剤、例えばモノアシルホスフィンオキシドまたはビスアシルホスフィンオキシドと併用される。
【0004】
意外なことに、新種のα−ヒドロキシケトンは、アシルホスフィンオキシドまたは他のUV−A光開始剤と比べてブルーシフトした吸収を有するが、UV−A光を用いた照射に非常に反応性であり、したがってこれらの条件下で有効なスルー硬化および表面硬化が得られることが判明した。この特性は、新規置換パターンによって達成され、同じ条件下で最先端のα−ヒドロキシケトン光開始剤の性能を考慮しても予想できなかった。
【0005】
したがって、本発明の対象は、式I
【化1】

の化合物であり、式中
xは1〜4の整数であり;
pは1〜3の整数であり;
qは0〜3の整数であり;
Arは、フェニル、ナフチル、アントリルまたはフェナントリルであり、そのそれぞれは場合によって1つ以上のCl、CN、OR5、C3−C5アルケニルまたは場合によって1つ以上のOR6、COOR6またはハロゲンで置換されているC1−C6アルキルにより置換されている;
1は、xが1であるならば、OR7、O-+、NR89、場合によって1つ以上のCOOR10により置換されているC1−C20アルキルであるか、または1つ以上のOによって中断されているC2−C20アルキルであるか、またはC2−C5アルケニルもしくはフェニル−C1−C4アルキルであり;
1は、xが2であるならば、C1−C20アルキレン、場合によって1つ以上のOによって中断されているC2−C20アルキレンであるか、またはO−A−O、O−A−NR15、NR15−A−O、NR’15−A−NR15、NR15a−A1−NR15bもしくはNR’15−(CH2x’−A−(CH2x’−NR15であるか、またはO-2+O−であり;
x’はxについて記載した意味のうちの1つを有し;
1は、xが3であるならば、N(R30O)3−;場合によってOHにより置換されているC3−C20アルカントリイルトリオキシ;C3−C20アルカントリイルトリアミノ;三価シロキサン、または3O-3+であり;
1は、xが4であるならば、場合によってOHにより置換されているC4−C20アルカンテトライルテトラオキシ;C4−C20アルカンテトライルテトラアミノ;四価シロキサン;または4O-4+であり;
2およびR3は互いに独立して、水素またはC1−C8アルキルであるか、またはR2およびR3は一緒になって、O、C1−C3アルキレンまたはCH=CHであり;
4は、C1−C4アルキルであり;
5は、水素、C1−C4アルキル、場合によって1つ以上のC1−C4アルキル、C1−C4アルコキシまたはハロゲンにより置換されているフェニルであるか;または(C2−C6アルキレンO)n−R6であり;
nは1〜20の整数であり;
6は、水素、C1−C4アルキル、C2−C5アルケニルまたはC2−C6アルカノイルであり;
7は、水素、C2−C5アルケニル、場合によって1つ以上のOH、NR1112もしくはSi(R14y(OR13zにより置換されているC2−C20アルキルであるか;または1つ以上のOもしくはNR15によって中断されており、場合によって1つ以上のOH、NR1112もしくはSi(R14y(OR13zにより置換されているC2−C20アルキルであるか;または場合によって1つ以上のOH、NR1112またはSi(R14y(OR13zにより置換されているC1−C20ハロアルキルであるか;または1つ以上のOもしくはNR15によって中断されているC2−C20ハロアルキルであり;
8およびR9は互いに独立して、水素、C1−C20アルキル;CN、COOR11またはSi(R14y(OR13zにより置換されているC1−C8アルキル;1つ以上のNR1112またはOR11により置換されているC2−C8アルキルであるか;あるいはC3−C8シクロアルキル、C3−C5アルケニル、フェニル−C1−C4アルキルまたは場合によってC1−C4アルキル、OR11もしくはハロゲンにより置換されているフェニルであるか;
あるいはR8およびR9は一緒になって、場合によって1つ以上のOもしくはNR15によって中断されているC3−C7アルキレンであり、このC3−C7アルキレンまたは中断されたC3−C7アルキレンは、場合によって1つ以上のC1−C4アルキルもしくはCOOR11により置換されている;
zは0〜3の整数であり;
yは0〜3の整数であり、ここでy+zの合計は3であり;
10は水素またはC1−C4アルキルであり;
11およびR12は互いに独立して、水素または場合によってOHにより置換されているC1−C4アルキルであり;
13は、水素、C1−C4アルキルまたはSi(R14)(R’14)(R"14)であり;
14、R’14およびR"14は互いに独立して、水素またはC1−C4アルキルであり;
15およびR’15は互いに独立して、水素;場合によってOH、COOR11もしくはCNにより置換されているC1−C20アルキルであるか;または場合によって1つ以上のOによって中断されているC2−C20アルキルであるか;またはC3−C5アルケニル、フェニル−C1−C4アルキル、C1−C8アルカノイルもしくはベンゾイルであり;
15aおよびR15bは互いに独立して、A1の炭素原子と一緒になって脂肪族環を形成するか、またはR15aおよびR15bは一緒になってC1−C3アルキレンであり;
30は、場合によって1つ以上のOによって中断されているC2−C8−アルキレンであり;
Aは、場合によって1つ以上のOもしくはNR15によって中断されているC2−C20アルキレン;場合によって1つ以上のOもしくはNR15によって中断されているC2−C20ハロアルキレン;C5−C20シクロアルキレンであるか;またはAは二価シロキサンであり
1は、場合によって1つ以上のOもしくはNR15によって中断されているC2−C20アルキレンであり;そして
Xはx価カチオン性カウンターイオンである。
【0006】
本発明の光開始剤は、UV−A照射下で優れた表面硬化およびスルー硬化の両方をもたらすことができる。これまでは、同効果は、モノアシルホスフィンオキシドまたはビスアシルホスフィンオキシド光開始剤化合物(スルー硬化を提供)およびα−ヒドロキシケトン(表面硬化を提供)の組み合わせを用いてしか達成されなかった。驚くべきことに、新規光開始剤を使用するならば、より良好な表面硬化およびスルー硬化の両方が達成される。光開始剤は、アシルホスフィンオキシド構造よりもレッドシフトした吸収が少ないので、後者よりも硬化前および硬化後に黄色っぽくなく、長期風化による変色に関して優れた性能を維持する。
【0007】
1−C20アルキルは、直鎖または分岐であり、例えば、C1−C18−、C1−C14−、C1−C12−、C1−C8−、C1−C6−またはC1−C4アルキルである。例としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、2,4,4−トリメチルペンチル、2−エチルヘキシル、オクチル、ノニル、デシル、ドデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、オクタデシルおよびアイコシルである。
【0008】
1つ以上のOによって中断されているC2−C20アルキルは、例えばOによって、1〜9回、1〜7回または1回もしくは2回中断されている。この基に2回以上Oによって中断されている場合、前記O原子は少なくとも1つのメチレン基により互いに隔てられている。すなわち、O原子は連続していない。例としては次の構造単位である:−CH2−O−CH3、−CH2CH2−O−CH2CH3、−[CH2CH2O]y−CH3(ここで、y=1〜9)、−(CH2CH2O)7CH2CH3、−CH2−CH(CH3)−O−CH2−CH2CH3、または−CH2−CH(CH3)−O−CH2CH3である。
【0009】
1−C20ハロアルキルは、例えば、直鎖または分岐C1−C18−、C1−C14−、C1−C12−、C1−C8−、C1−C6−もしくはC1−C4ハロアルキルであり、ハロゲンにより一置換されているか、もしくは最高ですべてのH原子がハロゲンにより置換されるまで多置換されているC1−C20アルキルである。例としては、クロロメチル、トリクロロメチル、トリフルオロメチルまたは2−ブロモプロピル、特にトリフルオロメチルまたはトリクロロメチルである。C1−C20ハロアルキルは、例えば、Cn[HxHaly2n+1(ここで、合計x+y=2n+1であり、Halは、ハロゲン、好ましくはFである)。
【0010】
1つ以上のOまたはNR15によって中断されているC2−C20ハロアルキルは、前述と同様に、1つ以上のOまたはNR15によって中断されているC2−C20アルキルであって、アルキルの1個以上のH原子がハロゲンにより置換されているものに相当する。
【0011】
3−C8シクロアルキルは、例えば、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチルまたはシクロオクチル、特にシクロペンチルおよびシクロヘキシル、好ましくはシクロヘキシルである。
【0012】
本出願に関連するC3−C8シクロアルキルは、少なくとも1個の環を含むアルキルであると理解される。したがって、例えば、メチルシクロペンチル、メチルシクロヘキシルまたはジメチルシクロヘキシルもこの用語に含まれると理解される。さらなる例としては、
【化2】

などの構造、ならびに例えば
【化3】

などの架橋もしくは縮合環系もこの用語に含まれることを意味する。
【0013】
2−C5アルケニルおよびC3−C5アルケニルは一不飽和または多不飽和、直鎖または分岐であり、例えば、C2−C4−またはC3−C4アルケニルである。例としては、アリル、メタリル、ビニル、1,1−ジメチルアリル、1−ブテニル、3−ブテニル、2−ブテニルまたは1,3−ペンタジエニル、特にアリルまたはビニルである。
【0014】
1−C4アルコキシは、直鎖または分岐であり、例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、n−ブチルオキシ、sec−ブチルオキシ、イソ−ブチルオキシまたはtert−ブチルオキシ、特にメトキシまたはエトキシである。
【0015】
1−C8アルカノイルは、直鎖または分岐であり、例えば、C1−C6−もしくはC1−C4アルカノイルまたはC4−C8−もしくはC2−C8アルカノイルである。例としては、ホルミル、アセチル、プロピオニル、ブタノイル、イソブタノイル、ペンタノイル、ヘキサノイル、ヘプタノイルまたはオクタノイル、好ましくはアセチルである。
【0016】
フェニル−C1−C4アルキルは、例えば、ベンジル、フェニルエチル、α−メチルベンジル、フェニルプロピル、フェニル−ブチルまたはα,α−ジメチルベンジル、特にベンジルである。置換フェニル−C1−C5アルキルは、1〜4回、例えば、1回、2回または3回、特に2回または3回、好ましくはフェニル環上で置換されている。
【0017】
1−C20アルキレンは、直鎖または分岐アルキレン、例えば、メチレン、エチレン、プロピレン、1−メチルエチレン、1,1−ジメチルエチレン、ブチレン、1−メチルプロピレン、2−メチル−プロピレン、ペンチレン、ヘキシレン、ヘプチレン、オクチレン、ノニレン、デシレン、ドデシレン、テトラデシレン、ヘキサ−デシレンまたはオクタデシレンである。特に、C1−C12アルキレンは、例えば、エチレン、デシレン、
【化4】

である。
【0018】
1回以上−O−によって中断されているC2−C20アルキレンは、1〜9回、例えば、1〜7回、または1回もしくは2回中断されている。これにより、例えば:−CH2−O−CH2−、−CH2CH2−O−CH2CH2−、−[CH2CH2O]y−、−[CH2CH2O]y−CH2−(ここで、y=1〜9)、−(CH2CH2O)7CH2CH2−、−CH2−CH(CH3)−O−CH2−CH(CH3)−または−CH2−CH(CH3)−O−CH2−CH2CH2−などの構造単位が得られる。
【0019】
この中断している原子は非連続的である。
【0020】
2−C20ハロアルキレンは、直鎖または分岐C1−C18−、C1−C14−、C1−C12−、C1−C8−、C1−C6−またはC1−C4ハロアルキレンであり、少なくとも1つのH原子がハロゲン原子により置換されているC1−C20アルキレンを意味し、すなわち、C1−C20アルキレンは、ハロゲンにより一置換されているか、または最高ですべてのH原子がハロゲンにより置換されるまで多置換されている。
【0021】
1つ以上のOまたはNR15によって中断されているC2−C20ハロアルキレン。構造は、中断されたC1−C20アルキレンと類似している。ただし、少なくとも1個のH原子がハロゲン原子により置換されている。
【0022】
5−C20シクロアルキレンは、例えば、シクロペンチレン、シクロヘキシレン、シクロオクチレン、シクロドデシレン、特にシクロペンチレンおよびシクロヘキシレン、好ましくはシクロヘキシレンである。本出願に関連してC5−C20シクロアルキレンは、例えば、
【化5】

[式中、x’およびy’は互いに独立して0〜6であり、合計x’+y’は≦6である]、または
【化6】

[式中、x’およびy’は互いに独立して、0〜7であり、合計x’+y’は≦7である]の構造単位を表すことも意図される。さらに、架橋環または縮合環系は、例えば、
【化7】

として対象となることが意図される。
【0023】
ハロゲンは、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素、特にフッ素、塩素および臭素、好ましくはフッ素および塩素である。
【0024】
置換フェニルは、例えば、1〜5回、例えば1回、2回または3回、特に1回または2回、フェニル環で置換されている。
【0025】
2およびR3が一緒になって、OまたはC1−C3アルキレンであるならば、これらは一緒になって、例えば、O、CH2、CH2CH2、C(CH32)を表し、その結果、例えば次の構造
【化8】

[式中、R1、R4、Ar、p、qおよびxは前記定義のとおりである]
が得られる。
【0026】
8およびR9が一緒になって、場合によって1つ以上のOまたはNR15によって中断されているC3−C7アルキレンであるならば、飽和環、例えば、シクロヘキシル、シクロペンチル、アジリジン、オキシラン、オキソラン、アゾリジン=ピロリジン、1,3−ジアジン、1,2−ジアジン、ピペリジン、モルホリン環、
【化9】

特に、モルホリン環が形成される。
【0027】
15aおよびR15bが互いに独立してA1の炭素原子と脂肪族環を形成するならば、例えば次の構造
【化10】

[式中、Ar、R2、R3、R4、qおよびpは前記定義のとおりである]が形成される。
【0028】
15aおよびR15bが一緒になってC1−C3アルキレンであるならば、例えば次のような構造:
【化11】

[式中、Ar、R2、R3、R4、qおよびpは前記定義のとおりである]が形成される。
【0029】
二価シロキサンは、例えば、式X
【化12】

[式中、
【化13】

はランダムに配置されているか、またはブロックで配置されており;
aは0〜100の整数であり;
jは0〜10000の整数であり;
kは1または2の整数であり;
16、R17およびR18は、互いに独立して、C1−C18アルキル、フェニル、C2−C6ヒドロキシアルキル、C2−C6アミノアルキル、C5−C8シクロアルキル、
【化14】

であり;
19、R20およびR21は互いに独立して、C1−C8アルキルである]により表される。
【0030】
三価シロキサンは、例えば、式XI
【化15】

[式中、A2、A3およびA4は互いに独立して、直接結合、場合によって[O(CH2g−O]hまたは[O(CH2ghにより置換されているC1−C10アルキレンであり;
a、b、cおよびdは互いに独立して、0〜100の整数であり;
sおよびtは互いに独立して、0または1の整数であり;
gは1〜10の整数であり;
hは1、2または3の整数である]により表される。
【0031】
四価シロキサンは、例えば、式XII
【化16】

[式中、A2、A3、A4およびA5は互いに独立して、直接結合、場合によって[O(CH2g−O]hまたは[O(CH2ghにより置換されているC1−C10アルキレンであり;
gは1〜10であり;
hは1〜3であり;
a、b、c、dおよびe互いに独立して0〜100の整数であり;
sおよびtは互いに独立して、0または1の整数であり;
1は、xが3である場合、三価連結基として、例えば、場合によってOHにより置換されているC2−C20アルカントリイルトリオキシ;例えば
【化17】

などであり;
1は、xが3である場合、三価連結基として、例えば、C2−C20アルカントリイルトリアミノ、例えば
【化18】

である]により表される。本出願に関連して、この用語は、アミノ基のH原子の1つまたは全部がC1−C4アルキルにより置換されている対応する基、例えば
【化19】

を表すことも意図される。
【0032】
1は、xが4である場合、四価連結基として、例えば、場合によってOHにより置換されているC4−C20アルカンテトライルテトラオキシ、例えば
【化20】

などであり;
1は、xが4である場合、四価連結基として、例えば、C4−C20アルカンテトライルテトラアミノ、例えば、
【化21】

である。本出願に関連して、この用語は、アミノ基のH原子の1つまたは全部がC1−C4アルキルにより置換されている対応する基、例えば
【化22】

などを表すことも意図される。
【0033】
x価カチオン性カウンターイオンXは、例えば、1、2、3、または4の正電荷を有するカチオンである。
【0034】
したがって、Xは、例えば、酸化状態+1の金属カチオン、例えば、Li+、Na+、K+、Cs+、「オニウム」カチオン、例えば、アンモニウム、ホスホニウム、ヨードニウムもしくはスルホニウムカチオンであるか;またはXは、酸化状態+2の金属カチオン、例えば、Mg2+、Ca2+、Zn2+、Cu2+、例えば、Mg2+、Ca2+、Zn2+、好ましくはMg2+またはCa2+であるか;
またはXは、酸化状態+3の金属カチオン、例えばAl3+、または
酸化状態+4の金属カチオン、例えばSn4+またはTi4+である。
【0035】
オニウムカチオンの例としては、アンモニウム、テトラアルキルアンモニウム、トリアルキルアリールアンモニウム、ジアルキルジアリールアンモニウム、トリアリールアルキルアンモニウム、テトラアリールアンモニウム、テトラアルキルホスホニウム、トリアルキルアリールホスホニウム、ジアルキルジアリールホスホニウム、トリアリールアルキルホスホニウム、テトラアリールホスホニウムである。
【0036】
例えば、N+22232425またはP+22232425(ここで、
22、R23、R24、R25は互いに独立して、水素、フェニル、OHにより置換されているフェニルもしくはC1−C4アルキルであるか、または場合によって、OH、C1−C4アルコキシ、NR2627、ベンゾイル、フェニルもしくはSi(OH)y(OC1−C4アルキル)zにより置換されているC1−C20アルキルであるか;
あるいはR22、R23、R24またはR25のうちの2つは一緒になって5または6員飽和環もしくは不飽和環を形成し(場合によって、他の環系上に縮合し、この5または6員飽和もしくは不飽和環は場合によってさらなるヘテロ原子、例えば、S、NR15またはOを含む);
26およびR27は互いに独立して、水素または場合によってOHにより置換されているC1−C4アルキルであり;
yおよびzは互いに独立して、0〜3である。ただし、y+zの合計は3である。
【0037】
適切なアンモニウム化合物の例としては、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラプロピルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム、ベンジルトリメチルアンモニウム、ベンジルトリエチルアンモニウム、ベンジルトリプロピルアンモニウムおよびベンジルトリブチルアンモニウムである。トリス(C1−C8アルキル)−アンモニウムイオン、例えば、トリメチルアンモニウムも好適である。
【0038】
他の好適なカチオン性カウンターイオンは、例えば、スルホニウムまたはヨードニウム化合物、例えば
【化23】

[式中、
70、R71およびR72は、互いに独立して、C1−C20アルキル、非置換フェニル、または−S−フェニルにより置換されているフェニルであり;
80は、C1−C12アルキル、特にエチル、またはベンジルであり;そして
93、R94、R95およびR96はそれぞれ互いに独立して、水素、C1−C20アルキル、OH置換C1−C20アルキル、C1−C20アルコキシ、OH置換C1−C20アルコキシ、ハロゲン、C2−C12アルケニル、シクロアルキル、特にメチル、イソプロピルまたはイソブチルである]である。
【0039】
色素カチオンもカチオン性カウンターイオンXとして好適である。例としては、トリアリール−メタンのカチオン、例えば、マラカイトグリーン、インドリン、チアジン、例えば、メチレンブルー、キサントン、チオキサントン、オキサジン、アクリジン、シアニン、ローダミン、フェナジン、例えば、サフラニンである。酸基を含む染料、例えば、メチルレッド、エチルオレンジ、メチルオレンジ、アシッドイエロー、ロゾール酸、フェノールレッド、フルオレセイン、ローズベンガル、チモールフタレイン一リン酸、オーラミンO、クレシルバイオレット、ローダミンB、ブリリアントグリーンまたはバリミアンブルーも好適である。
【0040】
Xは、好ましくはLi+、Na+、K+、Cs+、N+22232425またはP+22232425;例えば、Li+、Na+、K+、N+22232425またはP+22232425、特にLi+、Na+、K+またはN+22232425である。
【0041】
「場合によって置換されている」という用語は、置換されていないか、または置換されているかのいずれかの基を指すことを意味する。
【0042】
この文脈で「および/または」あるいは「または/および」という用語は、規定された選択肢(置換)のうちの1つが存在し得るだけでなく、規定の選択肢(置換)が一緒に、すなわち異なる選択肢(置換)の混合物のうちのいくつかも存在し得ることを表すことを意味する。
【0043】
「少なくとも」という用語は、1または1より多い、例えば、1または2または3、好ましくは1または2を規定することが意図される。
【0044】
本明細書全体およびそれに続く請求の範囲全体にわたって、特にことわりのない限り、「含む」またはその変化形、例えば「含む(三人称単数)」または「含んでいる(進行形)」は、記載された整数もしくはステップまたは整数もしくはステップの群を含むが、任意の他の整数もしくはステップまたは整数もしくはステップの群を除外しないことを意味すると理解される。
【0045】
式Iの化合物の製造
式Iの化合物を、例えば異なる方法にしたがって、式(A)
【化24】

[式中、p、q、R2、R3、R4およびArは前記定義のとおりである]の対応する芳香族カルボン酸から製造する。
好ましくは、化合物(A):
【化25】

[式中、R2およびR3は水素を意味し、qは0であり、pは2である]を使用する。
【0046】
方法1:式C1およびC2の中間体を経由(下記参照)
ステップ1 式(A)の芳香族カルボン酸をハロゲンで処理して、ハロゲン化中間体(B1)もしくは(B2)もしくは(B3)または(B1)および(B2)の混合物または(B1)および(B3)の混合物または(B1)および(B2)および(B3)の混合物を得る。
【0047】
【化26】

[式中、Hal2は、ハロゲン、例えばCl2またはBr2を意味し、p、q、R2、R3、R4およびArは前記定義のとおりである]。
【0048】
ステップ2 (B1)、(B2)、(B3)を塩基で処理することにより、対応するヒドロキシ置換化合物(C1)および(C2)にする:
【化27】

(C1)は、式I[式中、R1はOR7であり、R7は水素を表す]の化合物に対応する。
【0049】
ステップ3 最終的に、式Iの化合物におけるR1がOR7(R7は水素を表す)以外であるならば、R1を、好適な一価、二価、三価、もしくは四価アルコールまたはアミンR1(H)x(ここで、R1およびxはエステル化反応において前記定義のとおりである)との反応により導入して、式I:
【化28】

[式中、xおよびR1は前記定義のとおりである]の化合物を得る。
【0050】
方法2:式Fの中間体を経由(下記参照)
ステップ1 式(A)の芳香族カルボン酸を無水酢酸/酢酸中臭素で処理して、臭素化中間体(D):
【化29】

[式中、p、q、R2、R3、R4およびArは前記定義のとおりである]を得る。
【0051】
ステップ2 臭素化中間体(D)を酸で処理して、中間体(E1)もしくは(E2)または(E1)および(E2)の混合物を得る:
【化30】

【0052】
ステップ3 (E1)および(E2)を炭酸水素ナトリウムで処理すると、ラクトン(F):
【化31】

が形成される。
【0053】
ステップ4 式(F)のラクトンを好適な一価、二価、三価、もしくは四価アルコールまたはアミンR1(H)x(ここで、R1およびxは前記定義のとおりである)とエステル化反応において反応させることにより、R1基:
【化32】

[式中、xおよびR1は前記定義のとおりである]
を導入して、式Iの化合物にする。
【0054】
好ましくは、化合物(A’)を、特に方法2において、出発物質として用いると、結果として、式I(ここで、pは2であり、qは0であり、R2およびR3は水素を意味する)の化合物を製造するための次の反応スキームになる:
【化33】

[式中、Ar、R1およびxは前記定義のとおりである]。
【0055】
式(A)の中間体化合物の製造
方法1および2の両方の出発化合物(A)または(A’)を、異なる反応経路にしたがって製造する:
経路1:フリーデル・クラフツ反応による
芳香族炭化水素(ArH)を環状炭化水素無水物(B)または(B’)とフリーデル・クラフツ反応において、フリーデル・クラフツ触媒の存在下で反応させて、それぞれ対応する芳香族カルボン酸(A)または(A’)を得る:
【化34】

[式中、Ar、R2、R3、R4、pおよびqは前述の意味を有する]。
【0056】
【化35】

[式中、Arは前述の意味を有する]。
【0057】
当業者は、式(B)または(B’)の化合物を得る方法を知っており、いくつかは市販されている。製造法の例を後述する:
(B)または(B’)は、例えば、対応する芳香族化合物(H)、(H’)の水素化により得られる。
【0058】
【化36】

(B)および(B’)は、例えば、無水マレイン酸の好適な共役ジエン化合物とのディールス・アルダー反応と、それに続く水素化により製造することもできる:
【化37】

[式中、Qは、式Iの化合物[式中、R2およびR3をあわせて定義する]におけるO、C1−C3アルキレンまたはCH=CHを示す]。
【0059】
経路2:ディールス・アルダー反応による
式(A)または(A’)の化合物は、桂皮酸またはその誘導体および好適な共役ジエン化合物を用いるディールス・アルダー反応と、それに続く水素化によっても得ることができる(下記例を参照):
【化38】

【0060】
前記反応において3−アロイルアクリル酸の代わりに3−アロイルアクリル酸エステルを用いることにより、それぞれ直接化合物(A)または(A’)のエステルになる:
【化39】

【0061】
前記の2つの1及び2の方法では、エステル。
【0062】
例えば、ディールス・アルダー反応を、例えば、無水マレイン酸および好適な共役ジエン化合物を用いて行うことができ、続いて水素化、そしてその後に芳香族化合物Ar−Hを用いてフリーデル・クラフツ反応をおこなって、それぞれ式(A)または(A’)の化合物を得ることもできる:
【化40】

【0063】
方法1の反応ステップ1におけるハロゲン化を、有利には当業者に既知のハロゲン化剤を用いることにより実施する。例としては、塩素または臭素であり、好適なのは、例えば、塩素ガスまたは酢酸中の臭素である。前記反応で用いることができるもう1つ別のハロゲン化剤は、例えば、キシレンなどの中性溶媒中、塩化スルフリルなどである。
【0064】
すなわち、アリールハロゲノシクロアルキルケトンを、例えば、対応するアリールシクロアルキルケトンから、ケトンの一般的に既知のα−ハロゲン化法により製造する。例えば、クロロスルホン酸またはトルエンスルホン酸などの酸性触媒を用いることにより、反応を加速する。
【0065】
かかるハロゲン化反応において使用される好適な溶媒の例としては、純粋な酢酸、クロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン、塩化メチレン、テトラクロロエタンである。ハロゲン化は、例えば、溶融状態で、溶媒を用いないで実施することもできる。
【0066】
ハロゲン化反応を、例えば、周囲温度または高温、場合によって用いられる溶媒の還流温度までで実施する。
【0067】
ハロゲン化中間体化合物(B1)、(B2)または(B3)の、方法1の反応ステップ2におけるヒドロキシル化中間体化合物(C1)または(C2)への変換は、例えば、(B1)、(B2)および(B3)を、水性アルカリ水酸化物、例えば、水酸化ナトリウム、またはナトリウムメタノラートなどのアルカリ−アルコラート溶液と反応させることにより達成される。当業者はこのようなヒドロキシル化反応を熟知しており、対応する反応条件および好適な試薬を知っている。小過剰のアルカリは、例えば、加水分解の終了を支援し得る。アルカリアルコラートを用いて加水分解を行うか、またはアルコールを水酸化ナトリウム溶液に添加して加水分解を行う場合、エポキシエーテルが形成され、これを追加の段階で反応混合物の酸性化により開環してα−ヒドロキシケトンにする。好ましくは、前記開環を、塩酸または硫酸の添加により開始する。
【0068】
通常、加水分解反応を、例えば、周囲温度または高温、場合によっては用いる溶媒の還流温度までで行う。
【0069】
この反応に適した好ましい溶媒は、例えば、メタノールもしくはエタノールなどのアルコール、水、トルエンまたは前記溶媒の混合物である。場合によって、先のハロゲン化ステップにおいて用いる溶媒を加水分解にも使用する。溶媒がアルコールでない場合、加水分解を、例えば相転移触媒、例えば、第4アンモニウム塩またはホスホニウム塩により支援することができる。
【0070】
方法1のステップ3および方法2のステップ4における式(C1)または(C2)の中間体化合物の、モノアルコール、ジアルコール、トリアルコールまたはテトラアルコールR1(H)x[式中、R1およびxは前記定義のとおりである]とのエステル化反応を、当業者によく知られている化学の教科書から既知の方法で行う。
【0071】
好都合には、場合によっては好適な溶媒中、酸性条件で、すなわち、例えば、硫酸、酢酸などの酸の存在下、または触媒の存在下、例えば、ジシクロヘキシルカルボジイミドなど触媒の存在下反応物質を、混合することにより反応を行う。
【0072】
例えば、モノアルコールを使用する場合、過剰の前記アルコールを使用することができ、溶媒を後に留去することができる。好適なアルコールを使用して、当該技術分野において開示されている方法にしたがって、補助溶媒を用いた共沸蒸留により、水を除去する。
【0073】
例えば、それぞれ(A)または(A’)の対応する酸塩化物を経由して迂回することにより、エステル化反応においてより良好な結果が得られる。例えば、塩化チオニルまたは別の好適な試薬との慣例的な反応により、酸塩化物を製造する。次いで、酸塩化物を用い、例えばトリエチルアミンまたはピリジンなどの好適な塩基の存在下、および対応するアルコールR1−Hの存在下で、エステル化を行う。
【0074】
アミンR1−Hの酸塩化物との反応も、式(I)のアミドを製造するために最適な反応である。前記反応において形成される塩酸を、例えば、好適な塩基の添加により中和する。
【0075】
しかし、アミドのエステル化または製造に最も好適な方法は、アルコールR1−HまたはアミンR1−Hを用いたラクトン化合物(F)の開環反応にある。
【0076】
方法2、ステップ1において、対応する酸を等モル量の臭素と周囲温度で、溶媒として酢酸中で反応させることにより、臭素化ラクトン(D)または(D’)を製造する。式(A)の化合物の臭素化を、例えば、溶媒として酢酸または無水酢酸中で行う。好適には、式(A)の中間体化合物および臭素をそれぞれ酢酸または無水酢酸中に溶解させ、臭素溶液を中間体にゆっくりと添加する。有利には、反応温度を約20℃に保つように、反応混合物を冷却する。好ましくは、無水酢酸を溶媒として使用する。その理由は、生成物が前記媒体から析出し、したがって濾過、特に0℃での濾過により単離することができ、収率を向上させることができるからである。
【0077】
式(D)または(D’)の化合物中のアセト基をヒドロキシ基にして、それぞれ中間体(E1)および(E2)または(E1’)もしくは(E2’)を得るために、方法2,ステップ2における式(D)または(D’)の化合物を、例えば、酸で処理する。化合物を、例えば酢酸中に溶解させ、次いでさらに強い酸、例えば濃塩酸または硫酸で処理する。ラクトンの加水分解を、有利には強酸性媒体中で実施して、アルカリで不安定な臭化物のこの段階での加水分解を防止する。懸濁液を約35〜50℃に加熱することにより、反応を促進し、完了させる。反応混合物を水中に注ぐか、または水中に滴下し、生成物を、例えば濾過するか、または例えばエーテルもしくは塩素化炭化水素などの好適な溶媒で抽出する。好適な溶媒は、酢酸エチル、ジメチルエーテル、tert−ブチルメチルエーテル、塩化メチレンまたはクロロホルムである。好適には、有機相を水で洗浄して、残留する酢酸を除去する。乾燥し、溶媒を蒸発させた後、生成物を得る。
【0078】
例えば、生成物(E)を溶媒(水と非混和性)中に残し、次の反応ステップにおいて溶媒した中間体を直接導入することも可能である。好ましくは、酢酸エチル、tert−ブチルメチルエーテルまたはクロロホルムを溶媒として使用する。
【0079】
中間体(F)または(F’)それぞれをβ−ラクトンとして良好な収率で得るために、4員β−ラクトン環を形成するための位置選択的および立体選択的に最適な位置で出発物質を有する条件を作り出すことが必須である。ブロモカルボン酸(E1)および(E2)または(E1’)および(E2’)はそれぞれ前記条件を満たすことがあらたに判明している。このように、方法2、ステップ3にしたがって、中間体(E1)、(E2)または(E1’)、(E2’)をそれぞれ、塩基として炭酸水素ナトリウムの希溶液で処理する。有利には、反応を0℃〜20℃の温度、例えば、5℃〜10℃で行う。例えば、炭酸水素ナトリウム溶液(約0.5%〜2%の濃度)の一部を反応容器中に入れ、その間にさらに高濃度の炭酸水素ナトリウムを滴下し、pHを約5〜7、好ましくは6〜7の範囲内に保ちながら、水と混和性でない溶媒中の中間体(E)を滴下する。好適な溶媒の例としては、エーテル、例えば、tert−ブチルメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル;エステル、例えば、酢酸エチルエステル、酢酸ブチルエステル;塩素化炭化水素、例えば、塩化メチレンまたはクロロホルム;ならびにケトン、例えば、メチルエチルケトンまたはメチルイソブチルケトンである。好適なのは、tert−ブチルメチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、酢酸エチルエステル、塩化メチレンである。反応を撹拌下でおこない、CO2形成を制御しながら、前記温度およびpH範囲に保つ。反応中にβ−ラクトンが制御されず結晶化し始める場合、有利には、有機溶媒の量が増加する。
【0080】
β−ラクトンを製造するための反応および反応の詳細な概説は、例えば、H.Kroeperにより、Houben−Weyl,Methoden der Organischen Chemie[Methods of Organic Chemistry],4.Ed.,Vol.V1/2、pages 511ff(1963)で開示されている。この開示は参考として本明細書で援用される。
【0081】
方法2、ステップ4にしたがって、ラクトン中間体(F)または(F’)を、当業者に既知の方法により、式(I)または(I’)の対応するエステルまたはアミドに変換する。例えば、対応する酸塩化物を式(I)のエステルまたはアミドに変換するために使用される方法を、出発物質として式(F)のラクトンを使用して適用することもできる。
このように、(F)を希酸または塩基で処理すると、式(C1)および(C2)または(C1’)および(C2’)の中間体がそれぞれ形成され、これを次いで反応させて、前述のような所望の生成物を得ることができる。
【0082】
あるいは、例えば、中間体(F)をアルコールおよび触媒量の酸で処理すると、生成物から分離しなければならない副生物が形成されることなく、式(I)または(I’)の対応するエステルが形成される。式(I)のエステルを得る別の可能性は、(F)をアルコールおよび少量の対応するアルコラートで処理することにある。
【0083】
例えば、中間体(F)を対応するアミンと反応させることにより対応するアミドを得る。
【0084】
このような反応は当該技術分野において既知であり、例えば、化学の教科書または前述のHouben−Weylの参考に記載されている。
【0085】
フリーデル・クラフツ反応(中間体の製造、経路Aを参照)は好適には、フリーデル・クラフツ触媒の存在下で実施する。このような触媒は当業者に既知であり、化学の教科書で開示されている。フリーデル・クラフツ反応に適した触媒は、例えば、A.Olah,Friedel−Crafts and Related Reactions,Vol.I,201 and 284−90(1963)に記載されている。三ハロゲン化アルミニウム、例えばAlBr3およびAlCl3が特に適している。
【0086】
他の例としては、SnCl4;希土類金属トリフルオロメタンスルホン酸塩(Bulletin of the Chemical Society of Japan,2000,73(10),2325に開示);銅トリフルオロメタンスルホン酸塩(Tetrahedron,2001,57,241から既知);ウラニル塩(Journal of Molecular Catalysis A:Chemical,2000,164(1−2),195に開示)である。HFの使用は、Journal of Organic Chemistry,1991,56(20),5955に記載されており、一方、Journal of Organic Chemistry,1996,61(26),9546では、アルミナ/トリフルオロ無水酢酸をマイクロ波条件下で使用している。触媒としてのZnCl2は、Indian Journal of Heterocyclic Chemistry,2002,11,229から既知である。
【0087】
フリーデル・クラフツ反応におけるゼオライト触媒は、例えば、J.Molecular Catalysis:Chemical 1998,134,121,Applied Catalysis A:General,2000,201,159に開示されており、一方、クレイまたは交換クレイの使用は、US4304941から既知である。好適なクレイ触媒は、さらに、例えば、Rockwood Additives Ltd.によりFULCAT(商標)として販売されている。
【0088】
ヘテロポリ酸またはヘテロポリ酸含有固体支持体、例えばフリーデル・クラフツ触媒の用途は、例えば、Molecular Catalysis A:Chemical 2004,209(1−2),189に記載されている。
【0089】
好都合には、反応を不活性溶媒中で実施する。しかし、例えば、芳香族炭化水素ArH自体が液体である場合、溶媒として使用することも可能であり、この場合、過剰に使用する。方法を不活性溶媒中で実施できることは容易に理解されるであろう。好適な溶媒は、例えば、George A.Olah,Friedel−Crafts and Related Reactions,Vol.I,298−302(1963)に記載されている溶媒である。それぞれの溶媒の選択は、遊離体および触媒の溶解度に依存する。この方法において使用できる溶媒の典型例としては、ハロゲン化炭化水素、例えばクロロベンゼン、ジクロロベンゼン、四塩化炭素、ジクロロメタン、テトラクロロエチレン、ブロモベンゼン、芳香族炭化水素誘導体、例えばニトロベンゼン、ジニトロベンゼン、ベンゼンおよびトルエン、飽和脂肪族炭化水素、例えばペンタン、ヘキサン、ヘプタンならびにこれらの異性体の混合物、石油エーテルもしくはシクロヘキサン、またはさらに別の溶媒、典型的には、二硫化炭素、ニトロアルカン、例えばニトロメタン、ジエチルエーテル、ジメチルスルホキシドまたはテトラメチレンスルホンである。
【0090】
クロロベンゼン、ジクロロメタン、ベンゼン、トルエンおよびヘプタンが好適な溶媒である。
【0091】
反応を一般的には、式(B)の化合物をArHと混合し、加熱手段および冷却手段を備えた適切な容器中で前記出発物質を反応させることにより実施する。反応を不活性条件下で都合よく実施する。すなわち、容器は、窒素雰囲気中で作業することにより、前記雰囲気を作り出すための適切な手段を備えていなければならない。他の不活性ガス、例えば、アルゴンを用いることもできる。当業者はこれらの事実を熟知している。
【0092】
前記反応を異なる方法で実施できる。代表的であるが、排他的でない例を以下に記載する。
a)触媒を最小量の出発物質の一方または両方のいずれかに懸濁させ、次いで反応物質を任意の順序で連続して添加するか、または一緒に添加する;
b)式(B)の化合物を反応中に、あらかじめ混合しておいた芳香族炭化水素ArHおよび触媒に添加する;
c)芳香族炭化水素ArHを反応中に、あらかじめ混合しておいた式(B)の化合物および触媒に添加する;
d)触媒を反応中に、あらかじめ混合しておいた芳香族炭化水素ArHおよび式(B)の化合物に添加する。
【0093】
反応容器はまた、例えば、触媒を充填したカラムからなり、芳香族炭化水素ArHおよび式(B)の化合物を(例えば連続的に)カラムを通して触媒上にポンプで供給する。
【0094】
さらに別の可能性は、触媒化学反応および蒸留が1つの装置中で同時に起こる方法である反応蒸留により反応物質を合することである。
【0095】
出発物質のモル比は重要ではない。過剰の式(B)の化合物または過剰の芳香族炭化水素ArHのいずれかを使用できる。式(B)の化合物の芳香族炭化水素ArHに対するモル比は、例えば、1:10から、1:5、1:2、もしくは1:1であるか、または逆に芳香族炭化水素ArHの式Bの化合物に対するモル比は例えば、1:10から、1:5、1:2、または1:1である。
【0096】
フリーデル・クラフツ反応において使用される触媒の量は、使用される触媒の種類によって変わる。当業者はこれらの事実を熟知している。例えば、AlCl3またはAlBr3を触媒として使用する場合、前記触媒を好都合には等モル量または若干過剰で添加する。クレイ、例えば、FULCAT(登録商標)を触媒として使用する場合、等モル比を減少させることができる。好適な量は、例えば、異なる触媒に関して前述した文献に開示されている。
【0097】
反応温度は好都合には、原則として反応に使用される触媒の種類に応じて約−30℃〜約200℃の範囲である。AlCl3の場合、例えば、約−5℃〜約20℃;FULCAT(登録商標)などのクレイについては、例えば、約80℃〜約150℃である。
【0098】
式(A)および(A’)の化合物をディールス・アルダー付加環化反応により製造する。当業者は、一般的にこのような反応の実施[式(A)の化合物の製造に関して;ならびに式(B)の化合物を製造するための一方法に関しては経路2を参照]を熟知しており、このような実施は文献および通常の化学の教科書に十分に記載されている。
【0099】
前述の様に(経路2参照)、3−アロイル−アクリル酸およびその誘導体を好適な共役ジエン化合物と反応させる。
【0100】
3−ベンゾイル−アクリル酸を1,3−ブタジエンとエタノール中、圧力下、100℃で反応させると、6−ベンゾイル−シクロヘキシ−3−エンカルボン酸が得られ、例えば、LF.FieserおよびM.FieserによりJACS 57,1679(1935)に開示されており、一方、H.L.Holmes et alはJACS 70,141(1948)で、3−ベンゾイル−アクリル酸と2,3−ジメチル−1,3−ブタジエンとのトルエン中、125℃での反応により6−ベンゾイル−3,4−ジメチル−シクロヘキシ−3−エンカルボン酸を得ることを記載している。M.Mamaghani,Tetrahedron 58,1,147−152(2002)の開示によると、3−ベンゾイル−アクリル酸メチラートおよびシクロペンタジエンをベンゼン中、周囲温度で反応させると、3−ベンゾイル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2−カルボン酸メチルエステルが形成される。例えば、次の溶媒をディールス・アルダー反応において使用する:芳香族炭化水素、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、エーテル、例えば、ジオキサン、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、アルコール、例えば、エタノールまたは他の溶媒、例えば、ジクロロメタンまたはアセトニトリル。反応を実施するための温度は、通常、周囲温度から最高約200℃までの範囲であり、一方、高温が利用可能な場合、多くの場合は低揮発性成分が蒸発するのを防止するために、反応を圧力下で行うことも必要である。ラジカル重合に対して感受性であるジエンを用いる場合、少量の、例えばヒドロキノンまたはメルカプタンが、前記望ましくないラジカル重合を抑制する。場合によっては、少量の触媒の添加が有利である。例えば、ルイス酸型の触媒、例えばAlCl3またはトリフルオロメタンスルホン酸が好適である。不均一触媒を用いることにより、補助物質は反応表面を拡大することができ、これにより製造方法において費用削減をもたらす。
【0101】
2.1.2〜2.4.2において前述のように、無水マレイン酸を好適な共役ジエン化合物と反応させて、望ましいディールス・アルダー反応生成物を得る。例えば、ベンゼンまたはジオキサン中、周囲温度でブタジエンと反応させた無水マレイン酸は、定量的にシス−1,2,3,6−テトラヒドロフタル酸無水物になる[K.Alder et al,Liebigs Annalen der Chemie,460,98(1928)and 514,1(1934))。無水マレイン酸の2,3−ジメチル−1,3−ジブタジエンとのニトロメタン中での反応および5mol%のヒドロキシルアパタイト支持体上ルテニウム触媒の添加において、5,6−ジメチル−3a,4,7,7a−テトラヒドロ−イソベンゾフラン−1,3−ジオンが形成される(K.Mori et al.JACS 125,11460(2003))。無水マレイン酸をフランとジエチルエーテル中で反応させることにより、4,10−ジオキサ−トリシクロ[5.2.1.02,6]デク−8−エン−3,5−ジオンが形成される。まず、速度論的に速いエンド生成物が形成され、このエンド生成物は周囲温度で8時間の間に、熱力学的に安定なエキソ生成物に完全に変換される(R.B.Woodward and H.Baer,JACS 70 1161(1948))。ベンゼン中、無水マレイン酸および1,3−シクロヘキサジエンは、周囲温度で加熱しながら定量的に反応して、4−オキサ−トリシクロ[5.2.2.02,6]ウンデク−8−エン−3,5−ジオンになる。
【0102】
ディールス・アルダー反応の実施に関する一般概論は、例えば、Organic Reactions 1,60(1940)and ,136(1949);Chem Rev.61,537(1961);A.S.Onishenko,"Diene Synthesis",D,Davey Co.,New York(1964);R.Huisgen,R.Grashey and J.Sauer,"The Chemistry of Alkenes",Ed.S.Patai,Interscience,New York(1964),Chapter 11;A.Wasser−mann"Diels−Alder Reactions",Elsevier,New York(1965);Angew.Int.,211(1966)and ,16(1967);Houben−Weyl,"Methoden der Organischen Chemie",Vol.5/1c,977,G.Thieme,Stuttgart(1970)に記載されている。
【0103】
好適なルイス酸についてのさらなる情報は、例えば、JACS 86,3899(1964)and 95、4094(1973);Tetrahedron Letters 5127(1970);Can.J.Chem.59,2377(1972)およびJOC 45 5012(1980)で見いだすことができる。
【0104】
前記文書すべての開示は、参考として本明細書で援用される。
【0105】
式Iの化合物[式中、R1塩構造である。すなわち、O-+、2O-2+、3O-3+ または4O-4+]は、対応する酸から、この酸を好適な塩、例えば、NaCl、またはアミンもしくはホスフィン、例えばNR232425またはPR232425と反応させて、塩にすることにより得られる。
【0106】
生成物の単離は、それ自体既知の方法で、例えば、溶媒の蒸発化、蒸留、好適な溶媒もしくは溶媒混合物からの結晶化、またはクロマトグラフィーにより実施される。
【0107】
芳香族炭化水素化合物ArHならびに好適なアルコールおよびアミンR1(H)xは、市販されている、または通常の化学の教科書から既知であり、当業者に自明である方法にしたがって製造される。
【0108】
式Iの化合物を製造するための方法もまた本発明の対象であり、この方法においては、式(F)
【化41】

[式中、p、q、R2、R3、R4およびArは前記定義のとおりである]の化合物をR1(H)x[式中、R1およびxは前記定義のとおりである]と反応させる。
【0109】
次のような方法がさらに興味深い:
1.芳香族炭化水素ArHを、前述の式(B)の環状炭化水素無水物と、フリーデル・クラフツ触媒の存在下、場合によって溶媒中、そして場合によって高温で、場合によって不活性条件下、前述のモル比で、反応させる;
2.このようにして得られた生成物を臭素で、例えば、酢酸中で処理して、前述の式(D)の化合物を得る;
3.続いて、式(D)の化合物を酸で処理して、式(E1)もしくは(E2)の化合物または前述の式(E1)および(E2)の化合物の混合物を得る;そして
4.このようにして得られた化合物を炭酸水素塩溶液で処理して、式(F)の化合物を得る。
【0110】
前記方法の1、2、3および4後の別の興味深い方法において、式(F)の化合物をアルコールまたはアミンR1(H)x[式中、R1およびxは前記定義のとおりである]と反応させることにより、R1基を導入して、前述の式Iの化合物を得る。
【0111】
式(F)
【化42】

[式中、p、q、R2、R3、R4およびArは前記定義のとおりである]の新規中間体化合物も本発明の対象である。
【0112】
さらに興味深いのは、前述の式Iの化合物であって、式中、
xは1〜4の整数であり;
pは2であり;
qは0であり;
Arは、フェニルあるいは1つ以上のCl、OR5または場合によって1つ以上のOR6もしくはCOOR6により置換されているC1−C6アルキルにより置換されているフェニルであり;
1は、xが1であるならば、OR7、O-+、NR89またはC1−C20アルキルであり;
1は、xが2であるならば、O−A−O、NR’15−A−NR15、NR15a−A1−NR15bまたはNR’15−(CH2x’−A−(CH2x’−NR15であり;
x’はxについて記載した意味のうちの1つを有し;
1は、xが3であるならば、N(R30O)3−であり;
1は、xが4であるならば、式XII
【化43】

の四価シロキサンであり;
2、A3、A4およびA5は、場合によって[O(CH2g−O]hにより置換されているC1−C10アルキレンであり;
gは2であり;
hは1であり;
aは0であり;
b、c、d、e、sおよびtは1であり;
2およびR3は水素であり;
5は、C1−C4アルキル、C1−C4アルコキシまたは(C2−C4アルキレンO)n−R6であり;
6は、水素、C1−C4アルキルまたはC2−C4アルカノイルであり;
nは1〜4の整数であり;
6は水素であり;
7は、水素、場合によってOHにより置換されているC2−C20アルキルであるか;または1つ以上のOによって中断されており、場合によってOHにより置換されているC2−C20アルキルであるか;または場合によってOHにより置換されているC1−C20ハロアルキルであり;
8およびR9は互いに独立して、水素、C1−C20アルキル;Si(R14y(OR13zにより置換されているC1−C8アルキルであるか;
またはR8およびR9は一緒になって、場合によってCOOR11により置換されているC3−C7アルキレンであり;
zは0〜3の整数であり;
yは0〜3の整数であり(ここで、y+zの合計は3である);
11およびR13はC1−C4アルキルであり;
14はC1−C4アルキルであり;
15およびR’15は、水素またはC1−C20アルキルであり;
15aおよびR15bは互いに独立して、A1の炭素原子と脂肪族環を形成するか、または
15aおよびR15bは一緒になってC1−C3アルキレンであり;
30はC2−C8−アルキレンであり;
Aは、場合によって1つ以上のOによって中断されているC2−C20アルキレン;C2−C20ハロアルキレン;
5−C20シクロアルキレンであるか;または式X
【化44】

の二価シロキサンであり;
aは0であり;
jは1であり;
kは2であり;そして
16、R17およびR18はC1−C18アルキルであり;
1は、C2−C20アルキレンであり;そして
Xは、NR22232425であり;
22、R23、R24、R25は互いに独立して、水素;または場合によって、OH、NR2627、ベンゾイルもしくはSi(OH)y(OC1−C4アルキル)zにより置換されているC1−C20アルキルであるか;
またはR22、R23、R24もしくはR25のうちの2つは一緒になって、場合によって追加のヘテロ原子としてOを含む6員飽和環を形成し;そして
26およびR27は、水素または場合によってOHにより置換されているC1−C4アルキルである、式Iの化合物である。
【0113】
したがって、式Iの化合物を製造するための中間体としての式(F)の化合物の使用も本発明の対象である。
【0114】
xおよびx’は、例えば、1〜3の整数、特に1または2の整数、好ましくは1である。pは、好ましくは2である。
【0115】
qは、例えば、0〜2の整数、特に0または1、好ましくは0である。
【0116】
Arは、例えば、置換されていないか、または1つ以上のハロゲン、CN、OR5、C3−C5アルケニルまたは場合によって、1つ以上のOR6、COOR6もしくはハロゲンにより置換されているC1−C6アルキルにより置換されているフェニルである。
【0117】
Arは、好ましくは、置換されていないか、あるいは1または2つのCl、OR5、C3−C5アルケニルもしくはC1−C4アルキル(場合によって、1つ以上のOR6、COOR6もしくはハロゲンにより置換されている)により置換されているフェニルであり、特にR5は、C1−C4アルキルまたは水素を表し、R6はC1−C12アルキル、フェニルまたは1つ以上のOによって中断されているC2−C12アルキルを表す。
【0118】
Arは特に、置換されていないか、またはC1−C4アルキル、C1−C4アルコキシ(OR5基において、R5はアルキルであることを意味する)、または1つ以上の、特に2つのOによって中断されているC2−C8アルキルにより置換されているフェニルである。
【0119】
特に好適なのは、置換されていないか、または1もしくは2つのメチルもしくはメトキシにより置換されているフェニルとしてのArである。
【0120】
1は、xが1である場合、例えば、OR7、O-+、NR89、場合によって1つ以上の1つ以上のCOOR10により置換されているC1−C20アルキルであるか、または1つ以上のOによって中断されたC2−C20アルキル;好ましくはOR7、O-+またはNR89;特にOR7またはNR89である。
【0121】
1は、xが2である場合、例えば、O−A−O、O−A−NR15、NR15−A−O、NR’15−A−NR15、NR15a−A1−NR15bまたはNR’15−(CH2x’−A−(CH2x’−NR15であるか、またはO-2+、好ましくはO−A−O、NR’15−A−NR15、NR15a−A1−NR15bまたはNR’15−(CH2x’−A−(CH2x’−NR15、特にO−A−Oである。
【0122】
2およびR3は、例えば、互いに独立して、水素もしくはC1−C4アルキルであるか、またはR2およびR3は一緒になって、O、C1−C3アルキレンまたはCH=CH2、特に水素またはC1−C4アルキル、好ましくは水素である。
【0123】
4は、好ましくは水素である。
【0124】
5は、例えば、水素、C1−C4アルキル、場合によって1つ以上のC1−C4アルキル、C1−C4アルコキシもしくはハロゲンにより置換されているフェニルであるか;または(C2−C6アルキレンO)n−R6であり;特に、水素、C1−C4アルキルもしくはフェニル、特に水素もしくはC1−C4アルキル、好ましくはC1−C4アルキルである。
【0125】
6は、例えば、水素、C1−C4アルキル、C2−C5アルケニルまたはC2−C6アルカノイル;特に、水素またはC1−C4アルキル、特に水素である。
【0126】
7は、例えば、水素、アリル;場合によってOHにより置換されているC1−C12アルキル;または1つ以上のOによって中断されており、場合によってOHにより置換されているC1−C12アルキル;好ましくは水素、場合によってOHにより置換されているC1−C12アルキル;または1つ以上のOによって中断されており、場合によってOHにより置換されているC1−C12アルキルである。
【0127】
8およびR9は互いに独立して、特に水素、C1−C8アルキル、シクロヘキシル、アリル、ベンジル、フェニル;または1もしくは2のNR1112、OR11もしくはSi(R14y(OR13z(ここで、R11およびR12は互いに独立して、特に水素もしくはメチルを表す)により置換されているC2−C8アルキルを表すか、またはR8およびR9は一緒になって、場合によって1つ以上のOまたはNR15(ここで、R15は特に水素またはC1−C4アルキルである)によって中断されているC3−C7アルキレンを表す。
【0128】
好ましくは、R8およびR9は互いに独立して、特に水素、C1−C8アルキル、または1もしくは2のNR1112、OR11もしくはSi(R14y(OR13z、特にSi(R14y(OR13zにより置換されているC2−C8アルキルを表す。
【0129】
Aは、例えば、場合によって1つ以上のOまたはNR15、特にOによって中断されているC2−C20アルキレンを表すか;または場合によって1つ以上のOもしくはNR15、特にOによって中断されているC2−C20ハロアルキレンであるか;またはAは、二価シロキサンである。好ましくは、Aは、場合によって1つ以上のO、C2−C12ハロアルキレンもしくは二価シロキサンによって中断されているC2−C12アルキレン;特にC2−C12アルキレンである。
【0130】
1は、例えば、場合によって1つ以上、例えば1または2のOまたはNR15;特にOによって中断されているC2−C20アルキレンであり;好ましくはA1は、例えば、場合によって1つ以上、例えば1または2のOまたはNR15によって中断されているC2−C12アルキレンであり;特にC2−C12アルキレンである。
【0131】
Xは、例えば、アルカリ金属カチオン、例えばLi+、Na+、K+もしくはCs+を表すか、またはN+22232425もしくはP+22232425、例えばLi、Na、K、N+2223242SもしくはP+22232425、特にLi+、Na+、K+もしくはN+22232425である。
【0132】
22、R23、R24、R25は、互いに独立して、例えば水素;または場合によってOH、NR2627、ベンゾイルもしくはSi(OH)y(OC1−C4アルキル)zにより置換されているC1−C8アルキルであるか;またはR22、R23、R24もしくはR25の2つは一緒になって、場合によってOを追加のヘテロ原子として含む6員飽和環を形成し、特にR22、R23、R24またはR25のうちの2つは一緒になってモルホリノ環を形成する。
【0133】
特に好適なのは、式(I’)
【化45】

で示される式Iの化合物、すなわち、式中、qが0であり、R2およびR3が水素であり、pが2である式Iの化合物である。これらの化合物のうち、xが1であるものが特に好適である。
【0134】
式I’
【化46】

[式中、
Arがフェニルまたはナフチルであり、そのそれぞれが、場合によって1つ以上のCl、CN、OR5、C3−C5アルケニルにより置換されているか、または場合によって1つ以上のOR6、COOR6もしくはハロゲンにより置換されているC1−C6アルキルで置換されており、R1、R5、R6およびxは前記定義のとおりである]の化合物が興味深い。
【0135】
式I
[式中、
xは1〜4の整数であり;
pは2であり;
qは0であり;
Arは、フェニルあるいは1つ以上のCl、OR5または場合によって1つ以上のOR6もしくはCOOR6により置換されているC1−C6アルキルにより置換されているフェニルであり;
1は、xが1であるならば、OR7、O-+、NR89またはC1−C20アルキルであり;
1は、xが2であるならば、O−A−O、NR’15−A−NR15、NR15a−A1−NR15bまたはNR’15−(CH2x’−A−(CH2x’−NR15であり;
x’はxについて示された意味のうちの1つを有し;
1は、xが3であるならば、N(R30O)3−であり;
1は、xが4であるならば、式XII:
【化47】

の四価シロキサンであり;
2、A3、A4およびA5は、場合によって[O(CH2g−O]hで置換されているC1−C10アルキレンであり;
gは2であり;
hは1であり;
aは0であり
b、c、d、e、sおよびtは1であり;
2およびR3は水素であり;
5はC1−C4アルキルであり;
6は水素であり;
7は、水素、場合によってOHで置換されているC2−C20アルキルであるか;または1つ以上のOによって中断されており、場合によってOHにより置換されているC2−C20アルキルであるか;または場合によってOHにより置換されているC1−C20ハロアルキルであり;
8およびR9は互いに独立して、水素、C1−C20アルキル;Si(R14y(OR13zにより置換されているC1−C8アルキルであるか;
またはR8およびR9は一緒になって、場合によってCOOR11により置換されているC3−C7アルキレンであり;
zは0〜3の整数であり;
yは0〜3の整数であり(ここで、y+zの合計は3である);
11およびR13はC1−C4アルキルであり;
14はC1−C4アルキルであり;
15およびR’15は、水素またはC1−C20アルキルであり;
15aおよびR15bは互いに独立してA1の炭素原子と脂肪族環を形成するか、またはR15aおよびR15bは一緒になってC1−C3アルキレンであり;
30はC2−C8−アルキレンであり;
Aは、場合によって1つ以上のOによって中断されているC2−C20アルキレン;C2−C20ハロアルキレン;C5−C20シクロアルキレン;または式X
【化48】

の二価シロキサンであり;
aは0であり;
jは1であり;
kは2であり;そして
16、R17およびR18はC1−C18アルキルであり;
1はC2−C20アルキレンであり;そして
XはNR22232425であり;
22、R23、R24、R25は互いに独立して、水素;または場合によってOH、NR2627、ベンゾイルもしくはSi(OH)y(OC1−C4アルキル)zにより置換されているC1−C20アルキルであるか;
またはR22、R23、R24もしくはR25のうちの2つは一緒になって、場合によってOを追加のヘテロ原子として含む6員飽和環を形成し;そして
26およびR27は、水素または場合によってOHにより置換されているC1−C4アルキルである]の化合物が好適である。
【0136】
特に好適なものは、次の化合物である:
2−ベンゾイル−2−ヒドロキシ−シクロヘキサンカルボン酸;
2−ヒドロキシ−2−(4−メチル−ベンゾイル)−シクロヘキサンカルボン酸;
2−(3,4−ジメチル−ベンゾイル)−2−ヒドロキシ−シクロヘキサンカルボン酸;
2−ヒドロキシ−2−(4−メトキシ−ベンゾイル)−シクロヘキサンカルボン酸;
2−(3,4−ジメトキシ−ベンゾイル)−2−ヒドロキシ−シクロヘキサンカルボン酸;
2−ベンゾイル−2−ヒドロキシ−シクロヘキサンカルボン酸メチルエステル;
2−ベンゾイル−2−ヒドロキシ−シクロヘキサンカルボン酸エチルエステル;
2−ベンゾイル−2−ヒドロキシ−シクロヘキサンカルボン酸3−メチル−ブチルエステル;
2−ベンゾイル−2−ヒドロキシ−シクロヘキサンカルボン酸4−ヒドロキシ−ブチルエステル;
2−ヒドロキシ−2−(4−メチル−ベンゾイル)−シクロヘキサンカルボン酸エチルエステル;
2−(3,4−ジメチル−ベンゾイル)−2−ヒドロキシ−シクロヘキサンカルボン酸エチルエステル;
2−ヒドロキシ−2−(4−メトキシ−ベンゾイル)−シクロヘキサンカルボン酸エチルエステル;
2−(3,4−ジメトキシ−ベンゾイル)−2−ヒドロキシ−シクロヘキサンカルボン酸エチルエステル;
2−ヒドロキシ−2−(4−メトキシ−ベンゾイル)−シクロヘキサンカルボン酸2−ヒドロキシ−エチルエステル;
2−ヒドロキシ−2−(4−メトキシベンゾイル)−シクロヘキサンカルボン酸2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチルエステル;
2−(4−クロロ−ベンゾイル)−2−ヒドロキシ−シクロヘキサンカルボン酸エチルエステル;
2−ベンゾイル−2−ヒドロキシ−シクロヘキサンカルボン酸6−ヒドロキシ−ヘキシルエステル;
2−(3,4−ジメチル−ベンゾイル)−2−ヒドロキシ−シクロヘキサンカルボン酸6−ヒドロキシ−ヘキシルエステル;
2−ヒドロキシ−2−(4−メチル−ベンゾイル)−シクロヘキサンカルボン酸6−ヒドロキシ−ヘキシルエステル;
2−ヒドロキシ−2−(4−メトキシ−ベンゾイル)−シクロヘキサンカルボン酸6−ヒドロキシ−ヘキシルエステル;
2−ベンゾイル−2−ヒドロキシ−シクロヘキサンカルボン酸2−(2−ヒドロキシ−エトキシ)−エチルエステル;
2−(3,4−ジメチル−ベンゾイル)−2−ヒドロキシ−シクロヘキサンカルボン酸2−(2−ヒドロキシ−エトキシ)−エチルエステル;
2−ヒドロキシ−2−(4−メトキシ−3−メチル−ベンゾイル)−シクロヘキサンカルボン酸2−(2−ヒドロキシ−エトキシ)−エチルエステル;
2−ヒドロキシ−2−(4−メトキシ−ベンゾイル)−シクロヘキサンカルボン酸2−(2−ヒドロキシ−エトキシ)−エチルエステル;
2−ベンゾイル−2−ヒドロキシ−シクロヘキサンカルボン酸2−[2−(2−ヒドロキシ−エトキシ)−エトキシ]−エチルエステル;
2−(3,4−ジメチル−ベンゾイル)−2−ヒドロキシ−シクロヘキサンカルボン酸2−[2−(2−ヒドロキシ−エトキシ)−エトキシ]−エチルエステル;
2−ヒドロキシ−2−(4−メトキシ−ベンゾイル)−シクロヘキサンカルボン酸2−[2−(2−ヒドロキシ−エトキシ)−エトキシ]−エチルエステル;
2−ヒドロキシ−2−(4−メトキシ−ベンゾイル)−シクロヘキサンカルボン酸2−ヒドロキシ−プロピルエステル;
2−ベンゾイル−2−ヒドロキシ−シクロヘキサンカルボン酸ブチルアミド;
2−ベンゾイル−2−ヒドロキシ−シクロヘキサンカルボン酸ブチル−メチル−アミド;
2−(3,4−ジメチル−ベンゾイル)−2−ヒドロキシ−シクロヘキサンカルボン酸ブチル−メチル−アミド;
2−ヒドロキシ−2−(4−メトキシ−ベンゾイル)−シクロヘキサンカルボン酸ブチルアミド;
2−ヒドロキシ−2−(4−メトキシ−ベンゾイル)−シクロヘキサンカルボン酸ブチル−メチル−アミド;
2−ヒドロキシ−2−(4−メトキシ−ベンゾイル)−シクロヘキサンカルボン酸(3−ジメチルアミノ−プロピル)−アミド;
2−ベンゾイル−2−ヒドロキシ−シクロヘキサンカルボン酸メチル−(2−メチルアミノ−エチル)−アミド;
2−ヒドロキシ−2−(4−メトキシ−ベンゾイル)−シクロヘキサンカルボン酸メチル−(2−メチルアミノ−エチル)−アミド;
2−ヒドロキシ−2−(4−メトキシ−ベンゾイル)−シクロヘキサンカルボン酸{2−[2−(2−アミノ−エトキシ)−エトキシ]−エチル}−アミド;
[1−ヒドロキシ−2−(ピペラジン−1−カルボニル)−シクロヘキシル]−(4−メトキシ−フェニル)−メタノン;
2−ヒドロキシ−2−(4−メトキシ−ベンゾイル)−シクロヘキサンカルボン酸{3−[3−(3−アミノ−プロピル)−1,1,3,3−テトラメチル−ジシロキサニル]−プロピル}−アミド;および
2−ヒドロキシ−2−(4−メトキシ−ベンゾイル)−シクロヘキサンカルボン酸2−メチル−プロピル−アミド。
【0137】
式Iの化合物は、ラジカル重合性成分の光重合用光開始剤である。
【0138】
したがって、
(a)少なくとも1つのエチレン性不飽和化合物;および
(b)少なくとも1つの請求項1記載の式Iの光開始剤化合物
を含む光重合性組成物も本発明の対象である。
【0139】
不飽和化合物(a)は1つ以上のオレフィン性二重結合を含み得る。これらは低分子量(モノマー)または高分子量(オリゴマー)物質であり得る。二重結合を含むモノマーの例としては、アルキル、ヒドロキシアルキルもしくはアミノアクリレート、またはアルキル、ヒドロキシアルキルもしくはアミノメタクリレート、例えば、メチル、エチル、ブチル、2−エチルヘキシルもしくは2−ヒドロキシエチルアクリレート、イソ−ボルニルアクリレート、メチルメタクリレートもしくはエチルメタクリレートである。シリコーンアクリレートも有利である。他の例としては、アクリロニトリル、アクリルアミド、メタクリルアミド、N置換(メタ)アクリルアミド、ビニルエステル、例えば酢酸ビニル、ビニルエーテル、例えばイソブチルビニルエーテル、スチレン、アルキルスチレンおよびハロスチレン、N−ビニルピロリドン、塩化ビニルまたは塩化ビニリデンである。2以上の二重結合を含むモノマーの例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、ヘキサメチレングリコールのジアクリレートまたはビスフェノールAのジアクリレート、および4,4’−ビス(2−アクリロイルオキシエトキシ)ジフェニルプロパン、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレートまたはテトラアクリレート、ビニルアクリレート、ジビニルベンゼン、ジビニルスクシネート、ジアリルフタレート、トリ−アリルホスフェート、トリアリルイソシアヌレートまたはトリス(2−アクリロイルエチル)イソシアヌレートである。
【0140】
比較的高分子量(オリゴマー)のポリ不飽和化合物の例としては、アクリレート化エポキシ樹脂、アクリレート基、ビニルエーテル基またはエポキシ基を含むポリエステル、ならびにポリウレタンおよびポリエーテルである。不飽和オリゴマーのさらなる例としては、不飽和ポリエステル樹脂であり、これは通常、マレイン酸、フタル酸および1つ以上のジオールから製造され、約500〜3000の分子量を有する。加えて、ビニルエーテルモノマーおよびオリゴマー、ならびにポリエステル、ポリウレタン、ポリエーテル、ポリビニルエーテルおよびエポキシ主鎖を有するマレエート末端オリゴマーを用いることも可能である。ビニルエーテル基を有するオリゴマーの組み合わせおよびWO90/01512に記載されているポリマーの組み合わせが特に好適である。しかし、ビニルエーテルおよびマレイン酸官能化モノマーのコポリマーも好適である。この種類の不飽和オリゴマーは、プレポリマーとも称する。
【0141】
特に好適な例としては、エチレン性不飽和カルボン酸およびポリオールまたはポリエポキシドのエステル、ならびにエチレン性不飽和基を鎖または側基中に有するポリマー、例えば、不飽和ポリエステル、ポリアミドおよびポリウレタンならびにこれらのコポリマー、(メタ)アクリル基を側鎖中に含むポリマーおよびコポリマー、ならびに1つ以上のかかるポリマーの混合物である。
【0142】
不飽和カルボン酸の例としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、桂皮酸、および不飽和脂肪酸、例えばリノレン酸またはオレイン酸である。アクリル酸およびメタクリル酸が好適である。
【0143】
好適なポリオールは、芳香族および、特に脂肪族および脂環式ポリオールである。芳香族ポリオールの例としては、ヒドロキノン、4,4’−ジヒドロキシジフェニル、2,2−ジ(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ならびにノボラックおよびレゾールである。ポリエポキシドの例としては、前記ポリオール、特に芳香族ポリオール、およびエピクロロヒドリンベースのものである。他の好適なポリオールは、ポリマー鎖または側基中にヒドロキシル基を含むポリマーおよびコポリマーであり、例としては、ポリビニルアルコールおよびそのコポリマーまたはポリヒドロキシアルキルメタクリレートもしくはそのコポリマーである。さらに別の好適なポリオールは、ヒドロキシル末端基を有するオリゴエステルである。
【0144】
脂肪族および脂環式ポリオールの例としては、好ましくは2〜12個のC原子を有するアルキレンジオール、例えばエチレングリコール、1,2−または1,3−プロパンジオール、1,2−、1,3−または1,4−ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、ドデカンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、好ましくは200〜1500の分子量を有するポリエチレングリコール、1,3−シクロペンタンジオール、1,2−、1,3−または1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−ジヒドロキシメチルシクロヘキサン、グリセロール、トリス(β−ヒドロキシエチル)アミン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトールおよびソルビトールである。
【0145】
ポリオールを、1つのカルボン酸または異なる不飽和カルボン酸を用いて部分的または完全にエステル化することができ、部分エステルにおいて、遊離ヒドロキシル基を修飾することができ、例えば他のカルボン酸を用いてエーテル化またはエステル化することができる。
【0146】
エステルの例としては:
トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールエタントリメタクリレート、テトラメチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ペンタエリスリトールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールジアクリレート、ジペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、トリペンタエリスリトールオクタアクリレート、ペンタエリスリトールジメタクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ジペンタエリスリトールジメタクリレート、ジペンタエリスリトールテトラメタクリレート、トリペンタエリスリトールオクタメタクリレート、ペンタエリスリトールジイタコネート、ジペンタエリスリトールトリス−イタコネート、ジペンタエリスリトールペンタイタコネート、ジペンタエリスリトールヘキサイタコネート、エチレングリコールジアクリレート、1,3−ブタンジオールジアクリレート、1,3−ブタンジオールジメタクリレート、1,4−ブタンジオールジイタコネート、ソルビトールトリアクリレート、ソルビトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトール修飾トリアクリレート、ソルビトールテトラメタクリレート、ソルビトールペンタアクリレート、ソルビトールヘキサアクリレート、オリゴエステルアクリレートおよびメタクリレート、グリセロールジアクリレートおよびトリアクリレート、1,4−シクロヘキサンジアクリレート、200〜1500の分子量を有するポリエチレングリコールのビスアクリレートおよびビスメタクリレート、またはこれらの混合物である。
【0147】
同じかまたは異なる不飽和カルボン酸と、好ましくは2〜6個、特に2〜4個のアミノ基を有する芳香族、脂環式および脂肪族ポリアミンとのアミドも、成分(a)として好適である。このようなポリアミンの例としては、エチレンジアミン、1,2−または1,3−プロピレンジアミン、1,2−、1,3−または1,4−ブチレンジアミン、1,5−ペンチレンジアミン、1,6−ヘキシレンジアミン、オクチレンジアミン、ドデシレンジアミン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、イソホロンジアミン、フェニレンジアミン、ビスフェニレンジアミン、ジ−β−アミノエチルエーテル、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ジ(β−アミノエトキシ)−またはジ(β−アミノプロポキシ)エタンである。他の好適なポリアミンは、ポリマーおよびコポリマー、好ましくは側鎖中に追加のアミノ基を有するもの、およびアミノ末端基を有するオリゴアミドである。このような不飽和アミドの例としては、メチレンビスアクリルアミド、1,6−ヘキサメチレンビスアクリルアミド、ジエチレントリアミントリスメタクリルアミド、ビス(メタクリルアミドプロポキシ)エタン、β−メタクリルアミドエチルメタクリレートおよびN[(β−ヒドロキシ−エトキシ)エチル]アクリルアミドである。
【0148】
好適な不飽和ポリエステルおよびポリアミドは、例えば、マレイン酸およびジオールまたはジアミンから誘導される。マレイン酸のいくつかは、他のジカルボン酸により置換することができる。これらはエチレン性不飽和コモノマー、例えば、スチレンとともに使用できる。ポリエステルおよびポリアミドは、ジカルボン酸およびエチレン性不飽和ジオールまたはジアミン、特に、例えば、6〜20個のC原子を有する比較的長鎖のものから誘導することもできる。ポリウレタンの例としては、飽和または不飽和ジイソシアネートからなるもの、および不飽和または、それぞれ飽和したジオールからなるものである。
【0149】
側鎖中に(メタ)アクリレート基を有するポリマーも同様に既知である。これらは、例えば、ノボラック系エポキシ樹脂の(メタ)アクリル酸との反応生成物であってもよいし、またはビニルアルコールまたは(メタ)アクリル酸でエステル化されたそのヒドロキシアルキル誘導体のホモポリマーまたはコポリマーであってもよいし、またはヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートでエステル化された(メタ)アクリレートのホモポリマーおよびコポリマーであってもよい。
【0150】
側鎖中にアクリレートまたはメタクリレート基を有する他の好適なポリマーは、例えば、溶媒可溶性またはアルカリ溶解性ポリイミド前駆体、例えば、分子中の主鎖またはエステル基のいずれかに結合した光重合性側基を有するポリ(アミド酸エステル)化合物、すなわち、EP624826のポリ(アミド酸エステル)化合物である。このようなオリゴマーまたはポリマーを新規光開始剤および場合によって多官能性(メタ)アクリレートなどの反応性希釈剤と配合して、高感度ポリイミド前駆体レジストを製造することができる。
【0151】
成分(a)の例としてはまた、少なくとも2つのエチレン性不飽和基および少なくとも1つのカルボキシル官能基を分子構造内に有するポリマーまたはオリゴマー、例えば、飽和または不飽和多塩基酸無水物と、エポキシ化合物および不飽和モノカルボン酸の反応生成物との反応により得られる樹脂、例えば、JP10−301276に記載されている感光性化合物および市販用製品、例えば、EB9696、UCB Chemicals;KAYARAD TCR1025、Nippon Kayaku Co.,LTD.、Shin−Nakamura Chemical Co.,Ltd.製のNKオリゴEA−6340、EA−7440、またはカルボキシル基含有樹脂ならびにα,β−不飽和二重結合およびエポキシ基を有する不飽和化合物間に形成される付加生成物(例えば、ACA200M、Daicel Industries,Ltd.)である。成分(a)の例としてのさらなる市販用製品は、Daicel Chemical Industries,Ltd.製のACA200、ACA210P、ACA230AA、ACA250、ACA300、ACA320である。
【0152】
光重合性化合物を単独または任意の望ましい混合物で使用する。ポリオール(メタ)アクリレートの混合物を使用することが好適である。
【0153】
好適な組成物は、少なくとも1つの遊離カルボン酸基を有する少なくとも1つの化合物を含み、前記化合物は、成分(a)の対象であるか、またはバインダーポリマーの対象であるかのいずれかである。
【0154】
希釈剤として、一官能性もしくは多官能性エチレン性不飽和化合物、または前記化合物のいくつかの混合物を前記組成物中に、組成物の固体部分基準で最高70質量%まで含めることができる。
【0155】
不飽和化合物(a)を、非光重合性フィルム形成成分との混合物で使用することもできる。これらは、例えば、物理的乾燥ポリマーまたはこれらのニトロセルロースもしくはセルロースアセトブチレートなどの有機溶媒中溶液である。しかし、これらは化学硬化性および/または熱硬化性(熱硬化可能な)樹脂でもあり、例としては、ポリイソシアネート、ポリエポキシドおよびメラミン樹脂、ならびにポリイミド前駆体である。熱硬化可能な樹脂を同時に使用することは、第1段階において光重合され、第2段階において熱的後処理により架橋されるハイブリッド系として知られている系における使用に関して重要である。
【0156】
本発明はまた、成分(a)として、水中に乳化または溶解させた少なくとも1つのエチレン性不飽和光重合性化合物を含む組成物も提供する。このような放射線硬化性水性プレポリマー分散液の多くの変形は、市販されている。プレポリマー分散液は、水およびその中に分散された少なくとも1つのプレポリマーの分散液であると理解される。これらの系中の水の濃度は、例えば、5〜80質量%、特に30〜60質量%である。放射線硬化性プレポリマーまたはプレポリマー混合物の濃度は、例えば、95〜20質量%、特に70〜40質量%である。これらの組成物において、水およびプレポリマーについて記載されたパーセンテージの合計は、それぞれの場合で100であり、目的とする使用に応じた様々な量で補助物質および添加剤を添加する。
【0157】
水中に分散され、溶解されていることも多い放射線硬化性フィルム形成プレポリマーは、それ自体既知である一官能性または多官能性エチレン性不飽和プレポリマーの水性プレポリマー分散液であり、フリーラジカルにより開始することができ、例えば、プレポリマー100gあたり0.01mol〜1.0molの重合性二重結合の含有量を有し、例えば、少なくとも400、特に500〜10000の平均分子量を有する。しかし、目的とする用途に応じて、さらに高分子量を有するプレポリマーも検討することができる。重合性C−C二重結合を含み、10以下の酸価を有するポリエステル、重合性C−C二重結合を含むポリエーテル、1分子あたり少なくとも2つのエポキシド基を含むポリエポキシドと少なくとも1つのα,β−エチレン性不飽和カルボン酸とのヒドロキシル含有反応生成物、ポリウレタン(メタ)アクリレート、およびα,β−エチレン性不飽和アクリル基を含むアクリルコポリマーを、EP12339に記載されているように、利用する。これらのプレポリマーも同様に使用できる。少なくとも600の平均分子量を有し、プレポリマー100gあたり0.2〜15%のカルボキシル基含有量を有し、0.01〜0.8molの重合性C−C二重結合含有量を有する重合性プレポリマーのチオエーテル付加物である、EP33896に記載されている重合性プレポリマーも好適である。特定のアルキル(メタ)アクリレートポリマーベースの他の好適な水性分散液は、例えば、EP41125に記載されており、ウレタンアクリレートの好適な水分散性放射線硬化性プレポリマーは、例えば、DE2936039で見いだすことができる。
【0158】
さらに、例えば、分散補助物質、乳化剤、酸化防止剤、例えば、2,2−チオビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)または2,6−ジ−t−ブチルフェノール、光安定剤、染料、顔料(具体例を後述する)、充填剤例えば、例えばガラスまたはアルミナ、例えば、タルク、石膏、ケイ酸、ルチル、カーボンブラック、酸化亜鉛、酸化鉄、反応促進剤、レベリング剤、潤滑剤、湿潤剤、増粘剤、つや消し剤、消泡剤および塗料法において慣例的な他の補助物質などの添加剤をこれらの放射線硬化性水性プレポリマー分散液中に含めることができる。好適な分散補助物質は、高分子量を有し、極性基を含む水溶性有機化合物であり、例としては、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドンまたはセルロースエーテルである。使用できる乳化剤は、非イオン性乳化剤であり、所望によりイオン性乳化剤でもよい。
【0159】
成分(a)として、水中に乳化または分散された少なくとも1つのエチレン性不飽和光重合性化合物を含むこのような組成物を硬化させるために、特に「塩基」を有する式Iの化合物、すなわちR1がO-+、O-2+-、3O-3+または4O-4+である化合物。
【0160】
本発明の組成物は、光開始剤(b)に加えて、少なくとも1つのさらなる光開始剤(c)、および/または他の添加剤(d)を含んでもよい。
【0161】
ある場合では、2以上の新規光開始剤の混合物を使用することが有利であり得る。もちろん、既知光開始剤(c)との混合物、例えばカンファーキノン;ベンゾフェノン、ベンゾフェノン誘導体例えば、例えば2,4,6−トリメチルベンゾフェノン、2−メチルベンゾフェノン、3−メチルベンゾフェノン、4−メチル−ベンゾフェノン、2−メトキシカルボニルベンゾフェノン4,4’−ビス(クロロメチル)ベンゾフェノン、4−クロロベンゾフェノン、4−フェニルベンゾフェノン、3,3’−ジメチル−4−メトキシ−ベンゾフェノン、[4−(4−メチルフェニルチオ)フェニル]−フェニルメタノン、メチル−2−ベンゾイルベンゾエート、3−メチル−4’−フェニルベンゾフェノン、2,4,6−トリメチル−4’−フェニルベンゾフェノン、4,4’−ビス(ジメチルアミノ)−ベンゾフェノン、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン;ケタール化合物例えば、ベンジルジメチルケタール(IRGACURE(登録商標)651)として;アセトフェノン、アセトフェノン誘導体、例えば、α−ヒドロキシシクロアルキルフェニルケトンまたはα−ヒドロキシアルキルフェニルケトン、例えば、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパノン(DAROCUR(登録商標)1173)、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン(IRGACURE(登録商標)184)、1−(4−ドデシルベンゾイル)−1−ヒドロキシ−1−メチル−エタン、1−(4−イソプロピルベンゾイル)−1−ヒドロキシ−1−メチル−エタン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン(IRGACURE(登録商標)2959);2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]−フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン(IRGACURE(登録商標)127);2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−フェノキシ]−フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン;ジアルコキシアセトフェノン、α−ヒドロキシ−またはα−アミノアセトフェノン、例えば、(4−メチルチオベンゾイル)−1−メチル−1−モルホリノエタン(IRGACURE(登録商標)907)、(4−モルホリノベンゾイル)−1−ベンジル−1−ジメチル−アミノプロパン(IRGACURE(登録商標)369)、(4−モルホリノベンゾイル)−1−(4−メチルベンジル)−1−ジメチル−アミノプロパン(IRGACURE(登録商標)379)、(4−(2−ヒドロキシエチル)アミノベンゾイル)−1−ベンジル−1−ジメチル−アミノプロパン)、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(3,4−ジメトキシフェニル)ブタノン−1;4−アロイル−1,3−ジオキソラン、ベンゾインアルキルエーテルおよびベンジルケタール、例えば、ジメチルベンジルケタール、フェニルグリオキサル酸エステルおよびこれらの誘導体、例えば、オキソ−フェニル−酢酸2−(2−ヒドロキシ−エトキシ)−エチルエステル、二量体フェニルグリオキサル酸エステル、例えば、オキソ−フェニル−酢酸1−メチル−2−[2−(2−オキソ−2−フェニル−アセトキシ)−プロポキシ]−エチルエステル(IRGACURE(登録商標)754);オキシムエステル、例えば、1,2−オクタンジオン1−[4−(フェニルチオ)フェニル]−2−(O−ベンゾイルオキシム)(IRGACURE(登録商標)OXE01)、エタノン1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−1−(O−アセチルオキシム)(IRGACURE(登録商標)OXE02)、9H−チオキサンテン−2−カルボキシアルデヒド9−オキソ−2−(O−アセチルオキシム)、パーエステル、例えばEP126541に記載されているようなベンゾフェノンテトラカルボン酸パーエステル、モノアシルホスフィンオキシド、例えば、(2,4,6−トリメチルベンゾイル)ジフェニルホスフィンオキシド(DAROCUR(登録商標)TPO)、エチル(2,4,6トリメチルベンゾイルフェニル)ホスフィン酸エステル;ビスアシルホスフィンオキシド、例えば、ビス(2,6−ジメトキシ−ベンゾイル)−(2,4,4−トリメチル−ペンチル)ホスフィンオキシド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキシド(IRGACURE(登録商標)819)、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−2,4−ジペントキシ−フェニルホスフィンオキシド、トリスアシルホスフィンオキシド、ハロメチルトリアジン、例えば、2−[2−(4−メトキシ−フェニル)−ビニル]−4,6−ビス−トリクロロメチル−[1,3,5]トリアジン、2−(4−メトキシ−フェニル)−4,6−ビス−トリクロロ−メチル−[1,3,5]トリアジン、2−(3,4−ジメトキシ−フェニル)−4,6−ビス−トリクロロメチル−[1,3,5]トリアジン、2−メチル−4,6−ビス−トリクロロメチル−[1,3,5]トリアジン、ヘキサアリールビスイミダゾ−ル/共開始剤系、例えば、2−メルカプトベンズチアゾール、フェロセニウム化合物と組み合わせたオルト−クロロヘキサフェニル−ビスイミダゾ−ル、またはチタノセン、例えば、ビス(シクロペンタジエニル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−ピリル−フェニル)−チタン(IRGACURE(登録商標)784)との混合物を使用することも可能である。さらに、ホウ酸塩化合物を共開始剤として使用できる。
【0162】
新規光開始剤系をハイブリッド系において用いる場合、新規フリーラジカル硬化剤に加えて、カチオン性光開始剤の、例えば、過酸化化合物例えば、例えば、過酸化ベンゾイル(他の好適な過酸化物は、米国特許第4950581号、第19欄、17〜25行に記載されている)、例えば、米国特許第4950581号、第18欄、60行から第19欄、10行に記載されている芳香族スルホニウム塩、ホスホニウム塩またはヨードニウム塩、またはシクロペンタジエニル−アレーン−鉄(II)錯塩、例えば(η6−イソ−プロピルベンゼン)(η5−シクロペンタジエニル)鉄(II)ヘキサフルオロリン酸塩またはオキシムスルホン酸塩が用いられる。
【0163】
DAROCUR(登録商標)およびIRGACURE(登録商標)化合物はCiba Specialty Chemicalsから入手可能である。
【0164】
新規光開始剤は、単独または他の既知光開始剤および感光剤との混合物のいずれかであり、水または水溶液中分散液またはエマルジョンの形態でも使用することができる。
【0165】
光重合性組成物は、一般的に固体組成物基準で、0.05〜20質量%、好ましくは0.01〜10質量%、特に0.01から5質量%の光開始剤を含む。この量は、開始剤の混合物を用いる場合、添加されたすべての光開始剤の合計を意味する。したがって、この量は、光開始剤(B)または光開始剤(b)+(c)のいずれかを意味する。
【0166】
光開始剤に加えて、光重合性混合物は様々な添加剤(d)を含み得る。これらの例としては、時期尚早の重合を防止することを目的とする熱阻害剤であり、例としては、ヒドロキノン、ヒドロキノン誘導体、p−メトキシフェノール、β−ナフトールまたは立体的に遮蔽されたフェノール例えば、例えば、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾールである。暗所での貯蔵に際しての安定性を増大させるために、例えば、銅化合物例えば、例えば、ナフテン酸銅、ステアリン酸銅またはオクタン酸銅、リン化合物、例えば、トリフェニルホスフィン、トリブチルホスフィン、亜リン酸トリエチル、亜リン酸トリフェニルまたは亜リン酸トリベンジル、第4アンモニウム化合物、例えば、塩化テトラメチルアンモニウムまたは塩化トリメチルベンジルアンモニウム、またはヒドロキシルアミン誘導体、例えば、N−ジエチルヒドロキシルアミンを使用することが可能である。
【0167】
特に二成分および多成分ポリウレタン形成組成物の可使時間を、約0.05〜3%のpK2.8〜4.5の酸(例えば、サリチル酸もしくはフタル酸またはアルミノケイ酸ナトリウム、ケイ酸)を添加することにより延長することができる。延長された可使時間を得るためにさらに好適なのは、例えば、高分散シリカを添加することである。
【0168】
重合中に大気中の酸素を排除するために、パラフィンまたは類似したワックス様物質を添加することが可能であり、これらは不適切なポリマー中溶解度を有するが、重合のはじめに表面へ移動して、空気の侵入を防ぐ透明な表面層を形成する。コーティングの上面上に酸素不透過性層、例えば、ポリ(ビニルアルコール−コ−酢酸ビニル)を適用することも可能である。少量で添加できる光安定剤は、UV吸収剤、例えば、ヒドロキシフェニルベンゾトリアゾール、ヒドロキシフェニル−ベンゾフェノン、オキサルアミドまたはヒドロキシフェニル−s−トリアジン型のものである。
【0169】
これらの化合物は、個々に使用できるか、または立体的に遮蔽されたアミン(HALS)を含むか、または含まない混合物で使用できる。
【0170】
かかるUV吸収剤および光安定剤の例としては、WO04/074328、12ページ、9行から14ページ、23行までに開示されており、前記開示は、参考として本明細書で援用される。
【0171】
光重合を促進するために、成分(d)として、アミン、例えば、トリエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、エチル−p−ジメチルアミノベンゾエート、2−(ジメチルアミノ)エチルベンゾエート、2−エチルヘキシル−p−ジメチルアミノベンゾエート、オクチル−パラ−N,N−ジメチル−アミノベンゾエート、N−(2−ヒドロキシエチル)−N−メチル−パラ−トルイジンまたはミヒラーのケトンを添加することが可能である。ベンゾフェノン型の芳香族ケトンの添加によりアミンの作用を増強することができる。酸素スカベンジャーとして使用できるアミンの例としては、EP339841に記載されているような置換N,N−ジアルキルアニリンである。他の促進剤、共開始剤および自動酸化剤は、例えば、EP438123、GB2180358および特開平6−68309に記載されているようにチオール、チオエーテル、ジスルフィド、ホスホニウム塩、ホスフィンオキシドまたはホスフィンである。
【0172】
当該技術分野において慣用の連鎖移動剤を成分(d)として本発明の組成物に添加することもさらに可能である。例としては、メルカプタン、アミンおよびベンゾチアゾールである。
【0173】
分光感度をシフトさせるか、または拡大する、さらなる感光剤または共開始剤を(成分(d)として)添加することによっても光重合を促進できる。これらは、特に芳香族化合物、例えば、ベンゾフェノンおよびその誘導体、チオキサントンおよびその誘導体、アントラキノンおよびその誘導体、クマリンおよびフェノチアジンならびにその誘導体、ならびに3−(アロイルメチレン)チアゾリン、ローダニン、カンファーキノンであるが、さらにはエオシン、ローダミン、エリスロシン、キサンテン、チオキサンテン、アクリジン、例えば、9−フェニルアクリジン、1,7−ビス(9−アクリジニル)ヘプタン、1,5−ビス(9−アクリジニル)ペンタン、シアニンおよびメロシアニン染料である。
【0174】
感光剤として、前記アミンを検討することも可能である。
【0175】
好適な感光剤化合物(d)の例としては、WO06/008251、36ページ、30行から38ページ、8行に開示されており、この開示は、参考として本明細書において援用される。
【0176】
硬化方法は、熱的条件下でフリーラジカルを形成する成分、例えば、アゾ化合物、例えば例えば2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、トリアゼン、ジアゾスルフィド、ペンタザジエンまたはペルオキシ化合物、例えばヒドロペルオキシドまたはペルオキシカーボネート、例えば、EP245639に記載されているようなt−ブチルヒドロペルオキシドを添加することにより支援することができる。
【0177】
本発明の組成物は、さらなる添加剤(d)として、光還元性染料、例えば、キサンテン、ベンゾキサンテン、ベンゾチオキサンテン、チアジン、ピロニン、ポルフィリンまたはアクリジン染料、および/または照射により開裂させることができるトリハロゲンメチル化合物を含み得る。類似の組成物は、例えば、EP445624に記載されている。
【0178】
さらなる添加剤(d)の別の例としては、UV露光下で発色する発色剤である。発色剤の例としては、トリフェニルメタンロイコ染料、フタリド誘導体およびフルオラン誘導体のようなロイコ染料である。具体例は、ロイコクリスタルバイオレット、ロイコマラカイトグリーン、4,4’−[(9−ブチル−9H−カルバゾール−3−イル)メチレン]ビス[N−メチル−N−フェニル−アニリン]およびクリスタルバイオレットラクトンである。
【0179】
当該技術分野において既知のさらなる添加剤を、成分(d)として、例えば、流動性向上剤、接着促進剤例えばとして、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシランビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノ−エチル)3アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシ−シラン、3−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシランおよび3−メルカプトプロピルトリメトキシシランを添加することができる。界面活性剤、蛍光増白剤、顔料、染料、湿潤剤、レベリング補助剤、分散剤、凝集防止剤、酸化防止剤または充填剤は、添加剤(d)のさらなる例である。
【0180】
厚く、着色されたコーティングを硬化させるために、例えば、US5013768に記載されているように、ガラス微小球または粉砕ガラス繊維を添加することが適切である。
【0181】
添加剤(d)の選択は、応用分野およびこの分野に必要な特性に応じてなされる。前述の添加剤は当該技術分野において慣例的であり、したがって、各用途において通常の量で添加する。
【0182】
バインダー(e)も新規組成物に添加することができる。これは、光重合性化合物が液体または粘稠性物質である場合に特に好都合である。バインダーの量は、例えば、全固形分に対して2〜98質量%、好ましくは5〜95質量%、特に20〜90質量%である。バインダーの選択は、応用分野およびこの分野に必要とされる特性、例えば水性および有機溶媒系中での現像能力、基体に対する接着力および酸素に対する感受性に応じてなされる。
【0183】
好適なバインダーの例としては、約2000〜2000000、好ましくは5000〜1000000の分子量を有するポリマーである。アルカリ現像可能なバインダーの例としては、ペンダント基としてカルボン酸官能基を有するアクリルポリマーであり、例えば、エチレン性不飽和カルボン酸例えば、例えば(メタ)アクリル酸、2−カルボキシエチル(メタ)アクリル酸、2−カルボキシプロピル(メタ)アクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸などおよびω−カルボキシポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレートを、(メタ)アクリル酸のエステル例えば、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリセロールモノ(メタ)アクリレート、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−8−イル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、2−メチルグリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシブチル(メタ)アクリレート、6,7−エポキシヘプチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノ−プロピル(メタ)アクリレート;ビニル芳香族化合物、例えばスチレン、α−メチルスチレン、ビニル−トルエン、p−クロロスチレン、ビニルベンジルグリシジルエーテル、4−ビニルピリジン;アミド型不飽和化合物、(メタ)アクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−ブトキシメタクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド;およびポリオレフィン型化合物、例えばブタジエン、イソプレン、クロロプレンなど;メタクリロニトリル、メチルイソプロペニルケトン、モノ−2−[(メタ)アクリロイルオキシ]エチルスクシネート、N−フェニルマレイミド、無水マレイン酸、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバル酸ビニル、ビニルピロリドン、N,N−ジメチルアミノエチルビニルエーテル、ジアリルアミン、ポリスチレンマクロモノマー、またはポリメチル(メタ)アクリレートマクロモノマーから選択される1つ以上のモノマーと共重合させることにより得られる従来既知のコポリマーである。コポリマーの例としては、アクリレートおよびメタクリレートの、アクリル酸またはメタクリル酸およびスチレンまたは置換スチレン、フェノール樹脂、例えばノボラック、(ポリ)ヒドロキシスチレンとのコポリマー、およびヒドロキシスチレンのアルキルアクリレート、アクリル酸および/またはメタクリル酸とのコポリマーである。コポリマーの好ましい例としては、メチルメタクリレート/メタクリル酸のコポリマー、ベンジルメタクリレート/メタクリル酸のコポリマー、メチルメタクリレート/エチルアクリレート/メタクリル酸のコポリマー、ベンジルメタクリレート/メタクリル酸/スチレンのコポリマー、ベンジルメタクリレート/メタクリル酸/ヒドロキシエチルメタクリレートのコポリマー、メチルメタクリレート/ブチルメタクリレート/メタクリル酸/スチレンのコポリマー、メチルメタクリレート/ベンジルメタクリレート/メタクリル酸/ヒドロキシフェニルメタクリレートのコポリマーである。溶媒現像可能なバインダーポリマーの例としては、ポリ(アルキルメタクリレート)、ポリ(アルキルアクリレート)、ポリ(ベンジルメタクリレート−コ−ヒドロキシエチルメタクリレート−コ−メタクリル酸)、ポリ(ベンジル−メタクリレート−コ−メタクリル酸);セルロースエステルおよびセルロースエーテル、例えばセルロースアセテート、セルロースアセトブチレート、メチルセルロース、エチルセルロース;ポリビニルブチラール、ポリビニル−ホルマール、環化ゴム、ポリエーテル、例えばポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシドおよびポリテトラヒドロフラン;ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリウレタン、塩素化ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル/ビニリデンコポリマー、塩化ビニリデンのアクリロニトリル、メチルメタクリレートおよび酢酸ビニルとのコポリマー、ポリ酢酸ビニル、コポリ(エチレン/酢酸ビニル)、ポリマー、例えばポリカプロラクタムおよびポリ(ヘキサメチレンアジパミド)、ならびにポリエステル、例えばポリ(エチレングリコールテレフタレート)およびポリ(ヘキサメチレングリコールスクシネート)およびポリイミドバインダー樹脂である。
【0184】
ポリイミドバインダー樹脂は、溶媒可溶性ポリイミドまたはポリイミド前駆体、例えば、ポリ(アミド酸)のいずれかであり得る。
【0185】
バインダーポリマー(e)として、メタクリレートおよびメタクリル酸のコポリマーを含む光重合性組成物が興味深い。例えば、JP10−171119−Aに記載されているようなポリマーバインダー成分がさらに興味深い。
【0186】
本発明の新規光開始剤は、「デュアル硬化性」または「二重硬化性」組成物においても用いることができる。
したがって、本発明はさらに、
(a)少なくとも1つのエチレン性不飽和化合物;
(f)熱架橋性化合物;および
(b)少なくとも1つの前記式Iの化合物を光開始剤として含むデュアル硬化性コーティング組成物に関する。
【0187】
本発明はまた、
(a)少なくとも1つのエチレン性不飽和化合物;
(b)エチレン性不飽和化合物のUV硬化を可能にするために有効なUV光開始剤として前述の式Iの少なくとも1つの化合物;および
(g)エチレン性不飽和化合物のIR硬化もしくはNIR硬化を可能にするか、または対流熱硬化を可能にするために有効な少なくとも1つの熱ラジカル開始剤
を含む、二重(熱およびUV)硬化性コーティング組成物に関する。
【0188】
「熱硬化」とは、組成物を基体に適用した後の、対流熱またはIRもしくはNIR放射線の適用を意味する。粉末コーティングの場合、接着された粉末コーティングをまず好ましくは対流熱により溶融させて、表面層を形成する。フリーラジカル重合を開始し、完了させるために適した温度は、60〜180℃である。
【0189】
「二重硬化性組成物」は、UV放射線により重合できるか、あるいはIRもしくはNIR放射線によるか、または対流熱により熱的に誘発されて重合させることができる、エチレン性不飽和モノマーである。二重硬化システムにおいて、熱硬化に続いて好ましくはUV硬化を行う。しかし、UV硬化を熱硬化の後に行うことも可能である。
【0190】
「デュアル硬化性組成物」は、IRまたはNIR放射線によるか、または対流熱により熱的に誘発されて重合できるエチレン性不飽和モノマーを含む。さらに、少なくとも1つの第2の熱架橋性化合物が存在する。第2の化合物は、好ましくはポリオール−イソシアネート反応により架橋して、ポリウレタンを形成する。
【0191】
エチレン性不飽和化合物(a)の例はすでに記載した。
【0192】
二重硬化組成物において、少なくとも1つの第2の熱架橋性化合物(f)が存在する。前記化合物の例は次のとおりである:
1.冷または熱架橋性アルキド、アクリレート、ポリエステル、エポキシもしくはメラミン樹脂またはかかる樹脂の混合物ベースの表面コーティング(場合によって硬化触媒を添加する);
2.ヒドロキシル基含有アクリレート、ポリエステルまたはポリエーテル樹脂および脂肪族もしくは芳香族イソシアネート、イソシアヌレートまたはポリイソシアネートベースの二成分ポリウレタン表面コーティング;
3.チオール基含有アクリレート、ポリエステルまたはポリエーテル樹脂および脂肪族もしくは芳香族イソシアネート、イソシアヌレートまたはポリイソ−シアネートベースの二成分ポリウレタン表面コーティング;
4.ブロック化イソシアネート、イソシアヌレートまたはポリイソシアネートベースの一成分ポリウレタン表面コーティング(これらは焼き付け中に脱ブロック化され;メラミン樹脂の添加も所望により可能である);
5.脂肪族もしくは芳香族ウレタンまたはポリウレタンおよびヒドロキシル基含有アクリレート、ポリエステルまたはポリエーテル樹脂ベースの一成分ポリウレタン表面コーティング;
6.ウレタン構造中に遊離アミン基を有する脂肪族もしくは芳香族ウレタンアクリレートまたはポリウレタンアクリレートならびにメラミン樹脂またはポリエーテル樹脂ベースの一成分ポリウレタン表面コーティング(場合によって、硬化触媒を添加する);
7.(ポリ)ケチミンおよび脂肪族もしくは芳香族イソシアネート、イソシアヌレートまたはポリイソシアネートベースの二成分表面コーティング;
8.(ポリ)ケチミンおよび不飽和アクリレート樹脂またはポリアセトアセテート樹脂またはメタクリルアミドグリコレートメチルエステルベースの二成分表面コーティング;
9.カルボキシル基またはアミノ基含有ポリアクリレートおよびポリエポキシドベースの二成分表面コーティング;
10.無水物基含有アクリレート樹脂およびポリヒドロキシまたはポリアミノ成分ベースの二成分表面コーティング;
11.アクリレート含有無水物およびポリエポキシドベースの二成分表面コーティング;
12.(ポリ)オキサゾリンおよび無水物基含有アクリレート樹脂もしくは不飽和アクリレート樹脂または脂肪族もしくは芳香族イソシアネート、イソシアヌレートもしくはポリイソシアネートベースの二成分表面コーティング;
13.不飽和(ポリ)アクリレートおよび(ポリ)マロネートベースの二成分表面コーティング;
14.エーテル化メラミン樹脂との組み合わせた、熱可塑性アクリレート樹脂または外因性架橋性アクリレート樹脂ベースの熱可塑性ポリアクリレート表面コーティング;
15.クロスリンカー(酸で触媒された)としてメラミン樹脂(例えば、ヘキサメトキシメチルメラミン)を含むマロネートブロック化イソシアネートベースの表面コーティングシステム、特にクリアコート;
16.場合によって、他のオリゴマーまたはモノマーを添加した、オリゴマーウレタンアクリレートおよび/またはアシル化アクリレートベースのUV硬化性システム;
17.まず熱により硬化させ、次いでUVにより硬化させるか、またはその逆の二重硬化システムであって、表面コーティング配合物の構成成分は、UV光および光開始剤および/または電子線硬化により誘発されて反応することができる二重結合を含む。
【0193】
IR硬化もしくはNIR硬化を可能にするため、または対流熱を可能にするために有効な熱ラジカル開始剤(g)は、過酸化物、例えば、過酸化ベンゾイル(他の好適な過酸化物は、米国特許第4950581号、第19欄、17〜25行に記載されている);アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、ベンズピナコールまたはN置換イミド、例えば、その開示が参考として本明細書で援用されるWO06/051047に記載されているものからなる群から選択される化合物である。
【0194】
光開始剤および光重合性組成物は当業者に既知の広範囲におよぶ利用法がある。以下の実施例の記載は、本発明の新規光開始剤および光硬化性組成物に関して排他的であることを意味しない。
【0195】
光重合性組成物を様々な目的のために、例えば、印刷インク、例えばスクリーン印刷インク、オフセット印刷またはフレキソ印刷用インクとして、透明仕上げとして、例えば木材または金属用の白色または着色仕上げとして、粉末コーティングとして、例えば、木材、織物、紙、セラミック、ガラス、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、ポリオレフィンまたはセルロースアセテートなどの、特にフィルムの形態におけるプラスチック、ならびにAl、Cu、Ni、Fe、Zn、MgまたはCoおよびGaAs、SiもしくはSiO2などの金属(これに対して保護層を適用することが意図されるか、または画像どおりに露光することにより、イメージを作製することが意図される)、例えば金属板および管、缶、ビンのキャップのコーティングの場合の金属コーティング、および、例えば、PVCベースの床仕上げ材または壁紙のポリマーコーティングの光硬化、紙コーティング、例えば、ラベル、レコードジャケットおよびブックカバーの無色ニスの光硬化などのあらゆる種類の物質のコーティング材料として、建築物および路面標識をマーキングするため、写真複写技術のため、記録物質のため、ホログラフィック記録物質のため、画像記録技術のため、または有機溶媒もしくは水性アルカリで現像できる印刷版を製造するため、スクリーン印刷用マスクを製造するための日光硬化性コーティングとして、歯科充填組成物として、接着剤として、感圧性接着剤として、積層樹脂として、レジストとして、エッチレジスト、ソルダレジスト、電気めっきレジスト、もしくはパーマネントレジストとして(液体および乾燥フィルムの両方)、光造形可能な誘電体として、プリント基板および電子回路用、TFT用途用、様々なディスプレイ用途のカラーフィルターを製造するためまたはプラズマディスプレイパネルおよびエレクトロルミネッセンスディスプレイの製造方法において構造を生成させるため、(例えば、US5853446、EP863534、JP09−244230−A、JP10−62980−A、JP08−171863−A、US5840465、EP855731、JP05−271576−A、JP05−67405−Aに記載されているように)照射部分と未照射部分の間の屈折率における差を利用する光スイッチの製造のため、ホログラフィ、導波管、光格子(干渉格子)、光回路の製造用、保護層、誘電体層のため、複合材料(例えば、所望によりガラス繊維および/または他の繊維および他の補助物質を含み得るスチレン系ポリエステル)ならびに他の肉厚層の組成物を製造するために、例えば塊状硬化(透明型中でのUV硬化)によるかまたはUS4575330に記載されているようなステレオリソグラフィー技術により三次元物品を製造するため、電子部品および集積回路のコーティングまたはシーリングのためのレジストとして、あるいは光ファイバー、または光学レンズ、例えば、コンタクトレンズもしくはフレスネルレンズを製造するためのコーティングとして使用できる。本発明の組成物はさらに、医療機器、補助物質またはインプラントの製造にも適している。さらに、本発明の組成物は、例えば、DE19700064およびEP678534に記載されているような、サーモトロピック特性を有するゲルの製造に適している。新規光開始剤を含む組成物を、例えば補修材として、およびパテ材料として使用することもできる。
【0196】
新規光開始剤をさらに、乳化重合、パール重合または懸濁重合の開始剤として、液晶モノマーおよびオリゴマーの規則状態を固定するための重合開始剤、または有機材料上に染料を定着させるための開始剤として用いることもできる。
【0197】
新規光開始剤は、放射線硬化性粉末コーティングの重合用に使用することもできる。粉末コーティングは、反応性二重結合を含む固体樹脂およびモノマー、例えば、マレエート、ビニルエーテル、アクリレート、アクリルアミドおよびそれらの混合物ベースであり得る。る。不飽和ポリエステル樹脂を固体アクリルアミド(例えば、メチルメチルアクリルアミドグリコレート)およびフリーラジカル光開始剤と混合することによりフリーラジカルUV硬化性粉末コーティングを配合することができ、このような配合物は、例えば、M.WittigおよびTh.Gohmannによる論文"Radiation Curing of Powder Coating"、Conference Proceedings,Radtech Europe 1993に記載されている。不飽和ポリエステル樹脂を固体アクリレート、メタクリレートまたはビニルエーテルと、および新規光開始剤と混合することにより、フリーラジカルUV硬化性粉末コーティングを配合することもできる。粉末コーティングは、一般的に、例えば、DE4228514およびEP636669に記載されているように、バインダーも含むことができる。UV硬化性粉末コーティングは、白色または着色顔料をさらに含み得る。例えば、好ましくはルチル型二酸化チタンを最高50質量%までの濃度で用いて、良好な隠蔽力を有する硬化粉末コーティングを得ることができる。手順は、通常、基体、例えば金属または木材上への粉末の静電または摩擦静電的噴霧、加熱による粉末の溶融および、平滑フィルムが形成された後の、例えば中圧水銀灯、ハロゲン化金属ランプまたはキセノンランプを使用する紫外および/または可視光を用いたコーティングの放射線硬化を含む。放射線硬化性粉末コーティングがその熱硬化性カウンターパートよりも優れている具体的な利点は、平滑で高光沢コーティングの形成を確実にするために、粉末粒子の溶融後の流動時間を遅らせことができることである。熱硬化性システムと対照的に、放射線硬化性粉末コーティングを配合して、その寿命を短縮するという望ましくない影響がなく、さらに低い温度で溶融させることができる。この理由のために、これらは感熱性基体、例えば、木材またはプラスチックのコーティングとしても適している。新規光開始剤に加えて、粉末コーティング配合物はUV吸収剤も含み得る。適切な例としては、WO04/074328、12ページ、9行から14ページ、23行に記載されており、前記開示は参考として本明細書で援用される。
【0198】
イメージング法および情報担体の光学製造のための光硬化性組成物の使用も重要である。このような用途において、支持体に適用された層(湿潤または乾燥)を画像どおりに、例えばフォトマスクを通してUV光または可視光で照射し、現像液での処理により層の未露光部分を除去する。光硬化性層の金属への適用を電着によって行うこともできる。露光部分は架橋によりポリマーになり、したがって不溶性であり、支持体上に残留する。適切な着色により可視画像が作製される。支持体が金属化層である場合、金属は、露光および現像後に、未露光部分でエッチングにより除去できるかまたは電気めっきにより強化することができる。このようにして、電子回路およびフォトレジストを製造することが可能である。画像形成材料において用いられる場合、新規光開始剤は、いわゆるプリントアウト画像を作製する際に優れた性能を提供し、これによって照射により変色が誘発される。このようなプリントアウト画像を形成するために、異なる染料および/またはそれらのロイコ形態を使用し、このようなプリントアウト画像システムの例としては、例えば、WO96/41240、EP706091、EP511403、US3579339、およびUS4622286で見いだすことができる。
【0199】
新規放射線感受性組成物は、光に対して非常に高い感受性を有し、水性アルカリ性媒体中で膨潤することなく現像できるネガレジストとして適用される。これらは、凸版印刷、平版印刷、グラビア印刷用印刷フォームの製造またはスクリーン印刷フォームの製造、レリーフ複製物の製造、例えば、点字での文章の作成、スタンプの製造、化学研磨における使用または集積回路の製造におけるマイクロレジストとして適している。組成物は、光パターン形成可能な誘電体層またはコーティング、封入材料およびコンピュータチップ、プリント基板および他の電気または電子部品の製造における単離コーティングとしてさらに用いることができる。可能な層支持体、およびコーティング基体の加工条件は、同様に変化する。
【0200】
新規組成物はまた、感光性熱硬化性樹脂組成物およびこれらの使用によりソルダレジストパターンを形成する方法にも関し、さらに詳細には、プリント基板の製造用材料として有用な新規感光性熱硬化性樹脂組成物、金属物品の精密製作、ガラスおよび石材のエッチング、プラスチック物品のレリーフ、および印刷版の製造に関し、プリント基板のソルダレジストとして特に有用であり、パターンを有するフォトマスクを通して化学線に対して選択的に樹脂組成物の層を画像どおりに露光するステップ、および層の未露光部分を現像する段階により、ソルダレジストパターンを形成する方法に関する。
【0201】
感光性樹脂組成物が基体上にコーティングされ、乾燥される方法に加えて、本発明の感光性樹脂組成物を、層転写物質としても使用できる。
【0202】
「画像どおり」の露光という用語は、あらかじめ決められたパターンを含むフォトマスク、例えばスライド、クロムマスク、ステンシルマスクまたはレチクルを通した露光、ならびに、例えば、コーティングされた基体の表面全体にわたってコンピュータ制御下で移動し、このようにして画像を作製するレーザーまたは光線を用いた露光の両方を包含する。この目的のために好適なUVレーザー露光システムは、例えば、Etec and Orbotech(DP−100(商標)DIRECT IMAGING SYSTEM)により提供される。そして、コンピュータ制御された照射は、電子線によっても達成することができる。デジタル画像を形成するための画素ごとに指定できる液晶で作られたマスク、例えばA.Bertsch,J.Y.Jezequel,J.C.Andreにより、Journal of Photochemistry and Photobiology A:Chemistry 1997,107,p.275−281およびK.−P.NicolayによりOffset Printing 1997,6,p.34−37に記載されているものを使用することも可能である。
【0203】
物質を画像どおりに露光した後、そして現像前に、熱処理を短時間行うことが有利であり得る。現像後、熱的ポストベークをおこなって、組成物を硬化させることができ、溶媒を残らず除去することができる。用いる温度は、一般的に50〜250℃、好ましくは80〜220℃であり;熱処理の期間は一般的に0.25から60分の間である。
【0204】
本発明の感光性樹脂組成物がアルカリ溶解性樹脂またはアルカリ溶解性モノマーもしくはオリゴマーを含むならば、この組成物の現像液として、アルカリ性物質の希水溶液を用いることができ、さらに、少量の水混和性有機溶媒をこれに添加することにより製造される現像液も同様に含まれる。特に好適な水性−アルカリ性現像液は、テトラアルキルアンモニウムヒドロキシドの水溶液またはアルカリ金属ケイ酸塩、リン酸塩、水酸化物および炭酸塩の水溶液である。少量の湿潤剤および/または有機溶媒も、所望によりこれらの溶液に添加することができる。現像液に少量で添加できる典型的な有機溶媒の例としては、シクロヘキサノン、2−エトキシエタノール、トルエン、アセトンおよびかかる溶媒の混合物である。基体に応じて、同様に溶媒、例えば、有機溶媒も現像液として使用できるか、または前述のように、水性アルカリのかかる溶媒との混合物も使用できる。溶媒現像に特に有用な溶媒としては、メタノール、エタノール、2−プロパノール、1−プロパノール、ブタノール、ジアセトンアルコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチル−3−エトキシプロピオネート、メチル−3−メトキシプロピオネート、n−ブチルアセテート、ベンジルアルコール、アセトン、メチルエチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、2−ヘプタノン、2−ペンタノン、イプシロン−カプロラクトン、γ−ブチロラクトン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ヘキサメチルホスホルアミド、乳酸エチル、乳酸メチル、イプシロン−カプロラクタム、およびN−メチル−ピロリジノンが挙げられる。場合により、これらの溶媒に、依然として透明溶液が得られ、感光性組成物の未露光部分の十分な溶解性が維持されるレベルまで、水を添加することができる。さらに、公知の表面活性剤を添加することができる。表面活性剤の濃度は、好ましくは0.001〜10質量%である。
【0205】
本発明の感光性樹脂組成物を、2以上の溶媒のブレンドを含み、アルカリ性化合物を含まない有機溶媒で現像することもできる。現像液を当業者に既知のあらゆる形態、例えば浴溶液、浴溶液、パドル、または噴霧溶液の形態で使用することができる。
【0206】
最終熱処理は、好ましくは現像方法後におこなわれる。したがって、露光することにより光重合された層(以下、光硬化層と称する)を有する支持体を電気炉および乾燥機中で加熱するか、または光硬化層を赤外ランプで照射するか、またはホットプレート上で加熱する。加熱温度および時間は、使用される組成物および形成される層の厚さによって変わる。一般的に、好ましくは約120℃から約250℃で、約5〜約60分間加熱する。
【0207】
新規光開始剤もまた、逐次ビルドアップ方法により製造される多層回路基板の誘電体層を形成するための光パターン形成可能な組成物に適している。
【0208】
本発明の光硬化性組成物は良好な熱安定性を有し、酸素による阻害に対して十分耐性であるので、例えば、EP320264に記載されているようなカラーフィルターまたはカラーモザイクシステムの製造に適している。カラーフィルターレジスト組成物において、光重合性組成物中に含まれるモノマーの総量は、組成物の全固形分、すなわち、溶媒以外の全成分の量基準で、好ましくは5〜80質量%、特に10〜70質量%である。
【0209】
加工における差に関係なく、適用できる追加の層に関係なく、そしてカラーフィルターのデザインにおける差に関係なく、カラーフィルターを製造するための赤、緑、および青色ピクセルおよび黒色マトリックスを生成させるために本発明の感光性組成物を使用できることは、当業者には明らかである。着色要素を形成するための本発明の組成物の使用は、かかるカラーフィルターの異なるデザインおよび製造方法により限定されると見なされるべきではない。
【0210】
本発明の感光性組成物はまた、液晶ディスプレイ(LCD)、さらに詳細には、薄膜トランジスタ(TFT)をスイッチング装置として有するアクティブマトリックス型ディスプレイ、およびスイッチング装置のない受動マトリックス型をはじめとする反射型液晶ディスプレイにおいて、中間絶縁層または誘電体層の製造に適している。
【0211】
本発明の感光性組成物をさらに、液晶ディスプレイパネルにおける液晶部品のセルギャップを制御するスペーサーを製造するために使用することができる。
【0212】
本発明の感光性組成物は、液晶ディスプレイパネル、画像センサ等において用いられるマイクロレンズアレイの製造にも適している。
【0213】
マイクロレンズは、それらの光入力または出力品質を改善するために能動型光電子デバイス、例えば、検出器、ディスプレイ、および発光デバイス(発光ダイオード、横および垂直キャビティレーザー)上に取り付けられた微細受動光学部品である。応用分野は広範囲であり、電気通信、インフォメーションテクノロジー、視聴覚サービス、太陽電池、検出器、固体光源、および光相互接続などの分野を網羅する。
【0214】
本発明の光硬化性組成物は低黄変特性を有するので、熱的および光化学的のどちらでも、前述のマイクロレンズアレイの製造に適している。
【0215】
新規放射線感受性組成物はまた、プラズマディスプレイパネル(PDP)、DC(直流)型およびAC(交流)型の製造方法において使用されるフォトリソグラフィーステップ、特に、バリヤリブ、蛍光体層および電極の画像形成方法にも適している。
【0216】
本発明の組成物はまた、画像記録または画像再生(複製、複写)(単色であっても、多色であってもよい)の1つ以上の層状材料の製造に適用される。さらに、この物質は、色校正システムに適している。この技術において、マイクロカプセルを含む配合物を適用することができ、結像のために、放射線硬化に続いて熱処理を行うことができる。このようなシステムおよび技術およびその応用は、例えば、US5376459に開示されている。
【0217】
インクの乾燥時間は、図形作品の生成速度の重要な因子であるので、光硬化は印刷に非常に重要であり、数分の1秒程度である。UV硬化性インクは、スクリーン印刷およびオフセットインクに特に重要である。本発明の光開始剤も前記UV硬化性印刷用インクにおいて好適である。このような印刷用インクは当業者に既知であり、当該技術分野において広く用いられ、文献に記載されている。これらは、例えば、顔料で着色された印刷用インクおよび染料で着色された印刷用インクである。印刷インクは、例えば、着色剤(顔料または染料)、バインダーおよびさらに場合により溶媒および/または場合により水および添加剤を含む液体またはペースト形分散液である。液体印刷インクにおいて、バインダーおよび、適用可能ならば、添加剤を一般的に溶媒中に溶解させる。Brookfield粘度計の慣用的粘度は、例えば、液体印刷インクについては、20〜5000mPa・s、例えば、20〜1000mPa・sである。ペースト形印刷用インクについては、値は、例えば、1〜100Pa・s、好ましくは5〜50Pa・sの範囲である。当業者は、印刷用インクの成分および組成物を熟知しているであろう。当該技術分野において慣用の印刷インク配合物などの好適な顔料は、一般的に既知であり、広く記載されている。
【0218】
印刷用インクを、例えば、出版、包装または輸送において、ロジスティックにおいて、広告において、偽造防止印刷において、またはオフィス備品の分野において、例えば、一般的に既知の配合物を用いて本発明の方法にしたがって前処理された物質上に、凹版印刷、フレキソ印刷、スクリーン印刷、オフセット印刷、リソグラフィーまたは連続もしくは液滴インクジェット印刷するために、印刷インクを使用できる。
【0219】
好適な印刷用インクは溶媒系印刷用インクおよび水性印刷用インクの両方である。水性アクリレートベースの印刷用インクが興味深い。
【0220】
凹版印刷またはフレキソ印刷に関して、印刷インクは通常、印刷インク濃縮物を希釈することにより製造され、次いでそれ自体既知の方法に従って使用できる。印刷インクは、例えば、酸化的に乾燥するアルキドシステムも含む。
【0221】
インクは通常、顔料もしくは染料または顔料もしくは染料の組み合わせ、分散剤およびバインダーを含む。印刷用インクは、さらなる補助物質、例えば慣用のもの、例えば、保存料、酸化防止剤、脱気剤/消泡剤、粘度調節剤、増粘剤、流動性向上剤、沈降防止剤、光沢改良剤、潤滑剤、接着促進剤、皮張り防止剤、マット剤、乳化剤、安定剤、疎水性物質、光安定剤、取り扱い改良剤、帯電防止剤、緩衝物質、界面活性剤、保湿剤ならびに真菌および/または細菌の成長を阻害する物質をさらに含み得ると理解される。
【0222】
慣例的方法で各成分を一緒に、例えば所望の量の水中で混合することにより、印刷用インクを製造することもできる。
【0223】
印刷用インクは、例えば、その上に画像が形成される基体に向けられる液滴の形態で印刷インクが小さな開口部から絞り出される種類の記録システムにおける使用にも適している。好適な基体は、例えば、本発明の方法により前処理された織物繊維物質、紙、プラスチックまたはアルミ箔である。好適な記録システムは、例えば、市販のインクジェットプリンターである。
【0224】
すでに記載したように、光硬化性組成物は、印刷版、例えば、凸版印刷版、平板印刷版、凹版印刷版;さらには、露光に際して別個の現像段階を必要としない、いわゆる方法レスプレートの製造にも非常に適している。この応用は、例えば、可溶性直鎖ポリアミドまたはスチレン/ブタジエンおよび/またはスチレン/イソプレンゴム、カルボキシル基含有ポリアクリレートもしくはポリメチルメタクリレート、光重合性モノマー、例えばアクリルアミドおよび/またはメタクリルアミド、またはアクリレートおよび/またはメタクリレートを有するポリビニルアルコールもしくはウレタンアクリレート、ならびに光開始剤の混合物を使用する。これらのシステムのフィルムおよびプレート(湿式または乾式)を印刷原盤のネガ(またはポジ)上で露光させ、適切な溶媒または水溶液を用いて未硬化部分を続いて洗浄除去する。
【0225】
複合組成物から作られる成形品を硬化させるための新規光開始剤の使用も興味深い。複合化合物は、例えば光硬化性配合物を含浸させた、例えばガラス繊維織物、あるいは、例えば植物繊維[K.−P.Mieck,T.Reussmann in Kunststoffe 85(1995),366−370参照]などの自立性マトリックス材料からなる。複合化合物を含む成形部分は、新規化合物を用いて製造されると、高レベルの機械的安定性および耐性を達成する。例えば、EP7086に記載されているように、新規化合物を、成形、含浸およびコーティングにおける光硬化剤としても使用できる。かかる組成物の例としては、硬化活性および黄変耐性に関する厳しい要求に支配されるゲルコート樹脂、繊維強化成形品、例えば平面的であるかまたは縦方向もしくは横方向のコルゲーションを有する光拡散パネルである。このような成形品を製造するための技法、例えば、ハンドレイアップ法、スプレーレイアップ法、遠心キャスティングまたはフィラメント・ワインディングは、例えば、P.H.Seldenにより、"Glasfaserverstaerkte Kunststoffe"、page 610,Springer Verlag Berlin−Heidelberg−New York 1967に記載されている。これらの技法により製造できる物品の例としては、ボート、ガラス繊維強化プラスチックの両面コーティングを有するファイバーボードまたはチップボードパネル、パイプ、容器、サーフボードなどである。成形、含浸およびコーティング組成物のさらなる例としては、コルゲートシートおよびラミネート紙などのガラス繊維(GRP)を含む成形品用UP樹脂ゲルコートである。ラミネート紙は、尿素樹脂またはメラミン樹脂ベースであってよい。ラミネート製造前に、ゲルコートを支持体(例えば、フィルム)上に製造する。新規光硬化性組成物を、樹脂のキャスティングまたは電子部品などの物品の埋め込みにも使用できる。
【0226】
本発明の光開始剤システムは、光ファイバー用コーティングとしての組成物における使用にも適している。一般的に、光ファイバーは製造直後に保護コートでコーティングされる。ガラス繊維を延伸し、次いで1つ以上のコーティングをガラスストリングに適用する。通常、1、2、または3のコートを適用し、トップコーティングは、例えば着色されている(「インク層またはインクコーティング」)。さらに、このようにしてコーティングされたいくつかの光ファイバーを集めて束にし、全部一緒にコーティングすることができる。すなわち、ファイバーのケーブル化が可能である。本発明の組成物は一般的に、広い温度範囲にわたって良好な柔軟性、良好な引っ張り強度および靱性ならびに迅速なUV硬化特性を示さなければならない、これらのコーティングのいずれかに適している。
【0227】
コート、内部第1コート(通常、柔軟性コーティング)、外部第1または第2コート(通常、内部コーティングよりも硬質のコーティング)、第3またはケーブル化コートは、少なくとも1つの放射線硬化性オリゴマー、少なくとも1つの放射線硬化性モノマー希釈剤、少なくとも1つの光開始剤、および添加剤を含み得る。
【0228】
好適な放射線硬化性オリゴマーの製造および、例えば、酸化防止剤、光安定剤、UV吸収剤、湿潤剤、シランカップリング剤、蛍光増白剤、顔料などの適切な添加剤を含む光ファイバーコーティング用組成物の製造は、当業者に既知であり、参考として本明細書において援用されるUS6,136,880に公開されている。
【0229】
この用途において、新規光開始剤化合物をさらなる光開始剤との混合物、特に例えば、モノ−またはビスアシルホスフィンオキシド、例えば、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジ−フェニルホスフィンオキシド(DAROCUR(登録商標)TPO)またはビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキシド(IRGACURE(登録商標)819)との混合物において使用することが有利である。
【0230】
本発明の組成物は、接着剤、例えば、積層、構造または感圧性接着剤、例えば感圧性ホットメルト接着剤の製造にも適している。
【0231】
写真情報記録のために使用される基体としては、例えば、ポリエステル、セルロースアセテートまたはポリマーコーティングされた紙のフィルムが挙げられ;オフセット印刷フォームの基体は、特別に処理されたアルミニウムであり、プリント回路の製造用基体は、銅被覆ラミネートであり、そして集積回路の製造用基体は、例えば、シリコンウェハである。写真材料およびオフセット印刷フォーム用感光性層の層厚さは、一般的に約0.5μm〜10μmであり、一方、プリント回路用は、0.1μm〜約100μmである。基体のコーティング後、一般的には乾燥により溶媒を除去すると、基体上にフォトレジストのコートが残る。
【0232】
基体のコーティングは、基体に液体組成物、溶液または懸濁液を適用することにより行うことができる。溶媒および濃度の選択は、主に、組成物の種類およびコーティング技法に応じて変わる。溶媒は不活性でなければならない。すなわち、溶媒は成分との化学反応を受けず、乾燥の課程で、コーティング後に再度除去できなければならない。好適な溶媒の例としては、ケトン、エーテルおよびエステル、例えばメチルエチルケトン、イソブチルメチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、N−メチルピロリドン、ジオキサン、テトラヒドロフラン、2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、1−メトキシ−2−プロパノール、1,2−ジメトキシエタン、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、2−メトキシプロピルアセテート、メチル−3−メトキシプロピオネート、2−ヘプタノン、2−ペンタノン、および乳酸エチルである。
【0233】
既知コーティング技法、例えばスピンコーティング、ディップコーティング、ナイフコーティング、カーテンコーティング、刷毛塗り、スプレー、特に静電スプレー、およびリバースロールコーティング、ならびに電気泳動析出により、溶液を基体に均一に塗布する。層を積層により移すことにより、感光性層を一時的柔軟性支持体に塗布し、次いで最終基体、例えば銅被覆回路基板、またはガラス基体にコーティングすることも可能である。
【0234】
塗布された量(コート厚さ)および基体(層支持体)の性質は、所望の応用分野に依存する。コート厚さの範囲は、一般的に、約0.1μmから100μm超、例えば、0.1μm〜1cm、好ましくは0.5μm〜1000μmの値を含む。
【0235】
基体のコーティング後に、溶媒を一般的に乾燥により除去すると、基体上に本質的に乾燥フィルムが残される。
【0236】
新規組成物の光感受性は、一般的に約150nmから600nm、例えば、190〜600nm、(UV〜可視領域)に及び得る。好適な放射線は、例えば、太陽光または人工光源からの光中に存在する。したがって、多数の非常に異なる種類の光源が用いられる。点光源およびアレイ(ランプカーペット)のどちらも好適である。例としては、カーボンアークランプ、キセノンアークランプ、低、中、高および超高圧水銀灯であり、おそらくはハロゲン化金属ドープを有するもの(金属−ハロゲンランプ)、マイクロ波刺激金属蒸気ランプ、エキシマ−ランプ、超化学線蛍光管、蛍光灯、アルゴン白熱灯、電子式閃光器具、写真用フラッドランプ、発光ダイオード(LED)、電子線およびX線である。ランプと本発明にしたがって露光される基体との間の距離は、意図される用途ならびにランプの種類および出力によって変わり、例えば、5cm〜200cmである。レーザー光源、例えば、エキシマ−レーザー、例えば157nm露光でのF2エキシマ−レーザー、248nmでの露光用KrFエキシマ−レーザーおよび193nmでの露光用ArFエキシマ−レーザーも好適である。さらに好適なのは、固体状態UVレーザー(例えば、ManiaBarcoから得られるGemini,PENTAXから得られるDI−2050)および405nm出力の紫色レーザーダイオード(PENTAXから得られるDI−2080、DI−PDP)である。可視領域のレーザーも用いることができる。
【0237】
本発明の光開始剤を含む組成物をプラズマ、例えばアークまたはプラズマチャンバー中での放電により提供されるプラズマに露光することにより、硬化をさらに行うことができる。
【0238】
本発明は、エチレン性不飽和二重結合を含む化合物、すなわち、少なくとも1つのエチレン性不飽和二重結合を含む不揮発性モノマー、オリゴマーまたはポリマー化合物の光重合のための方法も提供し、この方法は、前述のように組成物を電磁放射線、例えば、150〜600nm、特に190〜600nmの波長の光、電子線、またはX線で照射することを含む。本発明はさらに、150〜600nmの波長範囲の光で照射することによる、少なくとも1つのエチレン性不飽和二重結合を有する不揮発性モノマー、オリゴマーまたはポリマー化合物の光重合について前述の光開始剤の使用にも関する。
【0239】
本発明は、前述のように、着色および非着色表面コーティング、印刷用インク、スクリーン印刷用インク、オフセット印刷用インク、フレキソ印刷用インク、インクジェット印刷用インク、刷り重ねニス、粉末コーティング、印刷版、接着剤、感圧性接着剤、歯科用材料、光導波路、光学スイッチ、カラー試験システム、複合材料、ゲルコート、ガラス繊維ケーブルコーティング、スクリーン印刷ステンシル、レジスト材料、プリント基板製造用レジスト材料、一次画像化レジストおよびソルダレジスト、カラーフィルター、プラズマディスプレイパネル製造用レジストを製造するため、電気および電子部品を封止するため、磁気記録材料を製造するため、ステレオリソグラフィーによる三次元物体、写真複写、画像記録材料の製造のため、ホログラフィック記録のため、脱色物質を製造するため、マイクロカプセルを用いて画像記録材料を製造するための組成物;ならびに着色および非着色表面コーティング、印刷用インク、スクリーン印刷用インク、オフセット印刷用インク、フレキソ印刷用インク、インクジェット印刷用インク、粉末コーティング、印刷版、接着剤、感圧性接着剤、歯科用材料、光導波路、光スイッチ、カラー試験システム、複合材料、ゲルコート、ガラス繊維ケーブルコーティング、スクリーン印刷ステンシル、レジスト材料、プリント基板製造用レジスト材料、一次画像化レジストおよびソルダレジスト、カラーフィルター、プラズマディスプレイパネル製造用レジスト材料を製造するため、電気および電子部品を封止するため、磁気記録材料を製造するため、ステレオリソグラフィーにより三次元物体、写真複写、画像記録材料を製造するため、ホログラフィック記録のため、脱色材料を製造するため、マイクロカプセルを用いて画像記録材料を製造するための方法を提供する。
【0240】
本発明は、少なくとも1つの表面上を、前述の組成物でコーティングされた、コーティング基体をさらに提供し、レリーフイメージの写真による製造方法を記載し、この方法では、コーティングされた基体を画像どおりに露光し、次いで未露光部分を現像液で除去する。
【0241】
本特許出願において請求項に係る新規光開始剤は、UV−A光(320〜450nm)を用いたクリアコーティングの硬化を特に有効に可能にする。これらの硬化条件は、自動車補修システム、装飾用コーティング、日曜大工および工業用途に特に有用である。応用は、主にビスアシルホスフィンオキシド光開始剤(BAPO)との組み合わせであり、この場合、新規化合物との混合物は、硬化前後ならびに風化に際する硬化効率および色に関して最先端のα−ヒドロキシケトン/BAPO混合物に勝る。
【0242】
以下の実施例は、前記実施例のみに範囲を限定することなく、本発明をさらに詳細に説明するものである。説明の残りの部分および請求項における部およびパーセンテージは、特に断りのない限り質量基準である。具体的な異性体についての記載がなく、3個より多い炭素原子を有するアルキル基が実施例において言及される場合、それぞれの場合でn−異性体も意味する。以下の実施例のすべての化合物は、提案された構造と一致する分析データを与える。
【0243】
実施例1:2−ベンゾイル−2−ヒドロキシ−シクロヘキサンカルボン酸
【化49】

【0244】
1.1:2−ベンゾイル−シクロヘキサンカルボン酸
【化50】

【0245】
メカニカルスターラー、温度計および冷却装置を備えた2.5lの硫化フラスコ中で、154.17g(0.5mol)のヘキサヒドロフタル酸無水物をベンゼン800ml中に溶解させる。溶液を氷浴中で冷却し、温度を0℃〜5℃に維持しながら、133.34g(1.1mol)のAlCl3を数回に分けて1時間にわたって添加する。添加が完了したら、氷浴をはずし、反応混合物を室温で2時間撹拌し、続いて1時間還流加熱する。室温まで冷却した後、メカニカルスターラーで撹拌しながら、氷と水との混合物上に反応混合物を注ぐ。沈殿した生成物を濾去し、洗浄水のpHが中性になるまで、水で数回洗浄する。物質を真空中で乾燥させ、残存する生成物をクロロホルム中に溶解させる。溶液をハイフロ上で濾過し、濾液の体積を真空中で減じる。生成物が灰白色固体として沈殿し、これを濾去し、追加の溶媒で洗浄し、真空中で乾燥させる。66g(収率57%)の生成物を、130〜132℃の融点を有する白色固体として得る。1H−NMR分析は、シクロヘキサン環上にシス構造の置換基を有する化合物の存在と一致する。
【0246】
1.2:3a−クロロ−3−ヒドロキシ−3−フェニル−ヘキサヒドロ−イソベンゾフラン−1−オン
【化51】

【0247】
1.2.1:塩素を用いた塩素化
23.2g(0.1mol)の2−ベンゾイル−シクロヘキサンカルボン酸および100mlのクロロベンゼンを撹拌しながら55℃まで加熱する。次いで、温度を58〜60℃に維持しながら、2時間にわたって塩素ガスを懸濁液中にゆっくりと導入する。薄層クロマトグラフィー(TLC)分析によりもはや出発物質が検出されなくなったら、若干黄色がかった溶液を窒素で1時間パージし、続いて室温まで冷却する。溶媒を次いで真空中で留去して、黄色がかった油状物を得、これはTLC分析によると2つの主な生成物からなる。これらの生成物を、揮発油/酢酸エチル(1:4)を溶離剤として用いてシリカゲル上分取カラムクロマトグラフィーにより単離する。89〜92℃の融点を有する白色固体として第1フラクションを単離し、1H−NMRおよび元素分析により3a−クロロ−3−ヒドロキシ−3−フェニル−ヘキサヒドロ−イソベンゾフラン−1−オン9.3g(収率35%)と同定する。第2のフラクションを粘稠性の黄色がかった油状物として得、これは1H−NMRおよび元素分析により3,3a−ジクロロ−3−フェニル−ヘキサヒドロ−イソベンゾフラン−1−オン(6.7g、収率25%)と同定する。
【0248】
【化52】

【0249】
1.2.2:塩化スルフリルを用いた塩素化
23.2g(0.1mol)の2−ベンゾイル−シクロヘキサンカルボン酸を60mlのキシレン中に55℃で懸濁させる。27.0g(0.2mol)の塩化スルフリルを次いで温度を51〜55℃に維持しながら3時間にわたって添加する。ガスクロマトグラフィー(GC)分析が反応混合物の組成物においてそれ以上の変化を示さなくなるまで、若干緑がかった懸濁液をこの温度で7時間、保持する。反応混合物を室温まで冷却し、水で4回洗浄し、溶媒を蒸発させる。粗生成物のGC分析は、66%の3a−クロロ−3−ヒドロキシ−3−フェニル−ヘキサヒドロ−イソベンゾフラン−1−オンおよび24%のジクロロ化合物3,3a−ジクロロ−3−フェニル−ヘキサヒドロ−イソベンゾフラン−1−オンの組成物を示す。この粗生成物混合物をさらに精製せずに加水分解ステップに使用する。
【0250】
1.3:2−ベンゾイル−2−ヒドロキシ−シクロヘキサンカルボン酸
1.3.1:1.2.1にしたがって得られた3a−クロロ−3−ヒドロキシ−3−フェニル−ヘキサヒドロ−イソベンゾフラン−1−オンのナトリウムメタノラートおよび水を用いた加水分解
3.25gのナトリウムメタノラートのメタノール中30%溶液を10mlのメタノールで希釈し、還流加熱する。実施例1.2.1にしたがって得られた3a−クロロ−3−ヒドロキシ−3−フェニル−ヘキサヒドロ−イソベンゾフラン−1−オンを10mlのメタノール中に溶解させたもの4.0g(0.015mol)を、この溶液に撹拌しながら滴下する。不透明反応混合物を還流で1時間保持した後、15mlのメタノールを留去する。次いで20mlの水を滴下し、得られた懸濁液を70℃まで1時間加熱する。室温まで冷却した後、酢酸エチルを添加し、有機相を分離する。塩基性水溶液を中和し、酢酸エチルで数回抽出する。合した有機相を硫酸マグネシウム上で乾燥させ、溶媒を真空中で蒸発させ、残留する粘稠性粗生成物を、石油エーテル/酢酸エチル8:1を溶離剤として用いてシリカゲル上クロマトグラフィーにより精製する。2.8g(72%)の2−ベンゾイル−2−ヒドロキシ−シクロヘキサンカルボン酸を粘稠性物質として得、これは静置すると凝固する。融点165〜167℃を有する白色固体。
【0251】
1.3.2:1.2.2にしたがって得られる生成物混合物の加水分解
実施例1.2.2に記載のように得られた粗生成物混合物を85mlのキシレン中に室温で溶解させる。撹拌し、水浴中で冷却しながら、75gの水性15%NaOH(0.28molのNaOH)をこの溶液に滴下する。温度が33℃まで上昇する間に、黄色がかった懸濁液が反応混合物中で形成され、これは次に室温で一夜撹拌している間に粘稠性物質になる。混合物を氷浴中で冷却し、pH1が測定されるまで、25mlの濃HClをゆっくりと添加する。懸濁液はここで容易に撹拌可能になり、粗生成物を濾去し、キシレンで洗浄する。生成物をメタノール/水(70:5)から再結晶することにより精製して、2−ベンゾイル−2−ヒドロキシ−シクロヘキサンカルボン酸を、166〜167℃の融点を有する白色固体として得る。収量9.2g、2−ベンゾイル−シクロヘキサンカルボン酸基準で37%。
【0252】
実施例2〜7:
実施例2〜7の化合物を、例えば、第1表に記載の芳香族化合物をステップ1.1におけるベンゼンの代わりに使用する以外は、実施例1に記載の手順と同じ手順にしたがって製造する。
【0253】
【表1】

【0254】
実施例8〜9
フリーデル・クラフツアシル化を行う前に、芳香族出発物質上の官能基を保護する以外は、実施例1に記載の反応シーケンスと同様の反応シーケンスにより、実施例8および9(第2表)の化合物を製造する。
【0255】
【表2】

【0256】
実施例10:6−(4−メトキシ−ベンゾイル)−7−オキサ−ビシクロ[4.2.0]オクタン−8−オン
【化53】

【0257】
10.1:7a−ブロモ−1−(4−メトキシ−フェニル)−3−オキソ−オクタヒドロ−イソベンゾ−フラン−1−イルアセテート
【化54】

【0258】
40g(0.153mol)の2−ヒドロキシ−2−(4−メトキシ−ベンゾイル)−シクロヘキサンカルボン酸(=実施例6の化合物)を125mlの無水酢酸中に溶解させる。温度を20℃に保ちながら、24mlの酢酸中24.37g(0.153mol)の臭素をこの溶液に1時間40分かけてゆっくりと添加する。1/3〜1/2当量の臭素溶液を添加した後、黄色がかった懸濁液が形成される。反応混合物を20℃で30分間、続いて0℃で1時間撹拌して、生成物を完全に沈殿させる。黄色がかった固体を濾過し、無水酢酸で洗浄して、51g(88%)の7a−ブロモ−1−(4−メトキシ−フェニル)−3−オキソ−オクタヒドロ−イソベンゾ−フラン−1−イルアセテートを黄白色固体として得、これを真空中、40℃で乾燥させ、さらに精製することなく次の段階で使用する。
【0259】
10.2:2−ブロモ−2−(4−メトキシ−ベンゾイル)−シクロヘキサンカルボン酸と3a−ブロモ−3−ヒドロキシ−3−(4−メトキシ−フェニル)−ヘキサヒドロ−イソベンゾフラン−1−オンとの混合物の製造
【化55】

【0260】
実施例10.1にしたがって製造した粗生成物を180mlの酢酸中に溶解させる。23.7mlの濃HClを撹拌しながら溶液にゆっくりと添加する。結果として得られた懸濁液を50℃まで加熱すると、この懸濁液は透明溶液になる。TLC分析により、残存する出発物質がないことが示され、溶液を急速に室温まで冷却し、続いて激しく撹拌しながら600mlの水上に注ぐ。沈殿した生成物を濾去し、水で数回洗浄する。粗物質を200mlの酢酸エチル中に溶解させ、有機溶液を250mlの水で2回洗浄する。水相を酢酸エチルで2回抽出し、合した有機相をNa2SO4上で乾燥し、溶媒を真空中で留去する。このようにして得られた白色固体(44g、97%)は、1H−NMR分析によると、約69%の2−ブロモ−2−(4−メトキシ−ベンゾイル)−シクロヘキサン−カルボン酸および31%の3a−ブロモ−3−ヒドロキシ−3−(4−メトキシ−フェニル)−ヘキサヒドロ−イソベンゾフラン−1−オンからなる。この混合物をさらに精製することなく次の反応ステップにおいて使用する。
【0261】
10.3:6−(4−メトキシ−ベンゾイル)−7−オキサ−ビシクロ[4.2.0]オクタン−8−オンの製造
実施例10.2にしたがって製造した粗生成物を135mlのtert−ブチルメチルエーテル中に溶解させ、340mlの水中7gのNaHCO3の溶液中にゆっくりと滴下する。混合物を撹拌し、NaHCO3の8%溶液12mlを数回に分けて添加して、pH7を保持する。1時間撹拌後、有機相を分離し、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、溶媒を真空中で留去する。20.8g(62%)の6−(4−メトキシ−ベンゾイル)−7−オキサ−ビシクロ[4.2.0]−オクタン−8−オンを、77.5〜78.5℃の融点を有する白色固体として得る。
【0262】
実施例11〜12
第3表に記載のカルボン酸誘導体を出発物質として用いる以外は、実施例10に記載の手順と同じ手順にしたがって、実施例11および12(第3表)の化合物を製造する。
【0263】
【表3】

【0264】
実施例13:2−ヒドロキシ−2−(4−メトキシ−ベンゾイル)−シクロヘキサンカルボン酸ジプロピルアンモニウム塩
【化56】

【0265】
6.96g(0.025mol)の実施例6の化合物および2.53gのジプロピルアミンおよび50mlのトルエンを、撹拌しながら100mlの反応フラスコ中で65℃まで加熱する。白色分散液をこの温度で4時間保持し、続いて一夜還流加熱する。反応混合物を室温まで冷却し、溶媒を真空中で留去する。残存する黄色がかった物質を冷ヘキサンで数回洗浄し、真空中で乾燥させる。生成物2−ヒドロキシ−2−(4−メトキシ−ベンゾイル)−シクロヘキサンカルボン酸ジプロピルアンモニウム塩を、114〜124℃の融点を有するベージュ色固体として定量的に得る。
【0266】
実施例14:2−(3,4−ジメチル−ベンゾイル)−2−ヒドロキシ−シクロヘキサンカルボン酸ジプロピルアンモニウム塩
【化57】

【0267】
5.53g(0.02mol)の2−(3,4−ジメチル−ベンゾイル)−2−ヒドロキシ−シクロヘキサンカルボン酸(=実施例3の化合物)を30mlのアセトン中に溶解させる。2.02g(0.02mol)のジプロピルアミンの、30mlのアセトン中溶液および反応混合物を室温で30分間撹拌する。溶媒を真空中で蒸発させ、残存する残留物を真空中で乾燥させる。7.4gの2−(3,4−ジメチル−ベンゾイル)−2−ヒドロキシ−シクロヘキサンカルボン酸ジプロピルアンモニウム塩を、122〜129℃の融点範囲を有する若干黄色がかった結晶として得る。
【0268】
実施例15〜32
第4表に記載の2−ベンゾイル−2−ヒドロキシ−シクロヘキサンカルボン酸誘導体およびアミンを出発物質として用いる以外は、実施例15に記載の手順と同じ手順に従って、実施例15〜32(第4表)の化合物を製造する。
【0269】
【表4】

【0270】
【表5】

【0271】
【表6】

【0272】
【表7】

【0273】
実施例33:2−ベンゾイル−2−ヒドロキシ−シクロヘキサンカルボン酸メチルエステル
【化58】

【0274】
実施例1の方法に従って製造した9.93g(0.04mol)の2−ベンゾイル−2−ヒドロキシ−シクロヘキサンカルボン酸および1.4gのメタノール(0.044mol)を200mlのジクロロメタン中に溶解させる。9.91g(0.044mol)のジシクロヘキシルカルボジイミドを溶液に添加し、結果として得られる懸濁液を3時間室温で撹拌する。この後、TLC分析によりもはやカルボン酸は検出されない。反応混合物を濾過し、固体ジシクロヘキシルウレタンをジクロロメタンで洗浄する。有機溶液を重炭酸ナトリウムおよび水で洗浄し、MgSO2上で乾燥させ、真空中で蒸発させる。残留する粗生成物をシリカゲル上クロマトグラフィー[溶離剤:石油エーテル/酢酸エチル(9:1)]により精製して、7.03g(71%)の2−ベンゾイル−2−ヒドロキシ−シクロヘキサンカルボン酸メチルエステルを粘稠性樹脂として得る。
【0275】

【0276】
実施例34:2−ベンゾイル−2−ヒドロキシ−シクロヘキサンカルボン酸3−メチル−ブチルエステル
【化59】

【0277】
10g(0.04mol)の2−ベンゾイル−2−ヒドロキシ−シクロヘキサンカルボン酸(実施例1)、7.05molの3−メチル−ブタン−1−オールおよび0.5gのH2SO4を200mlのCHCl3中に溶解させ、水分離器を用いて18時間還流加熱して、反応中に形成された水を除去する。反応混合物を次に室温まで冷却し、重炭酸ナトリウムおよび水で洗浄し、Mg2SO4上で乾燥させる。溶媒の蒸留後、粗反応生成物をフラッシュクロマトグラフィー[シリカゲル、溶離剤:石油エーテル/酢酸エチル(1:1)]により精製して、3gの2−ベンゾイル−2−ヒドロキシ−シクロヘキサンカルボン酸3−メチル−ブチルエステルを無色液体として得る。
【0278】

【0279】
実施例35〜44
表に記載のカルボン酸誘導体およびアルコールを出発物質として用いる以外は実施例33の手順に従って、第5表に記載の実施例35〜44の化合物を製造する。実施例42〜44の化合物の製造において、トルエンを溶媒として使用する。ジオールのモノエステルを製造するために、大過剰のジオールを表に示すように添加する。
【0280】
【表8】

【0281】
【表9】

【0282】
実施例45〜54
トルエンを溶媒として用い、1当量のカルボン酸誘導体につき0.5当量のジオールを用いる以外は実施例34に記載の手順に従って、第6表に記載の実施例45〜47、および49〜54のポリエステル化合物を製造する。1当量のカルボン酸誘導体につき0.33当量のトリオールを用いる以外は実施例33に記載の手順に従って実施例48の化合物を製造する。実施例45〜47および49〜54の場合、粗生成物は、ジオールのモノエステルおよびジエステルをどちらも含む混合物である。実施例48を、トリオールのモノエステル、ジエステルおよびトリエステルの混合物として得る。石油エーテル/酢酸エチル(9:1)を溶離剤として用いてフラッシュクロマトグラフィーにより、化合物を分離する。
【0283】
【表10】

【0284】
【表11】

【0285】
【表12】

【0286】
実施例55および56:2−ヒドロキシ−2−(4−メトキシ−ベンゾイル)−シクロヘキサンカルボン酸2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロ−6−ヒドロキシ−ヘキシルエステル(実施例55)および2−ヒドロキシ−2−(4−メトキシ−ベンゾイル)−シクロヘキサンカルボン酸2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロ−6−[2−ヒドロキシ−2−(4−メトキシ−ベンゾイル)−シクロヘキサンカルボニルオキシ]−ヘキシルエステル(実施例56)
【化60】

【0287】
35.4g(0.136mol)の6−(4−メトキシベンゾイル)−7−オキサ−ビシクロ[4.2.0]オクタン−8−オン(=実施例10の化合物)を100mlのジクロロメタン中に溶解させる。触媒量のH2SO4および17.83gの2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロヘキサン−1,6−ジオールを添加し、反応混合物を室温で48時間撹拌する。この後、TLC分析は、出発物質が消費され、2つの主な生成物が形成されたことを示す。溶媒を真空中で蒸発させ、残存する暗色混合物をシリカゲル上で濾過する。1H−NMR分析は、53%のモノエステルと47%のジエステルとの混合物を示す。2つの化合物を続いてヘプタン/酢酸エチル(6:4)を溶離剤として用いてシリカゲル上で繰り返しクロマトグラフィーを行うことにより精製し、分離する。純粋なモノエステル2−ヒドロキシ−2−(4−メトキシ−ベンゾイル)−シクロヘキサンカルボン酸6−ヒドロキシ−2,2,3,3,4,4,5,5−オクタ−フルオロ−ヘキシルエステル(=実施例55の化合物)を含むフラクション2.24gを、5gの純粋なジエステル2−ヒドロキシ−2−(4−メトキシ−ベンゾイル)−シクロヘキサンカルボン酸2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロ−6−[2−ヒドロキシ−2−(4−メトキシ−ベンゾイル)−シクロヘキサンカルボニルオキシ]−ヘキシルエステル(=実施例56の化合物)を含むフラクション、およびモノエステル(53%)とジエステル(47%)との混合物である8.6gのフラクションに加えて単離する。
【0288】
2−ヒドロキシ−2−(4−メトキシ−ベンゾイル)−シクロヘキサンカルボン酸2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロ−6−ヒドロキシ−ヘキシルエステル(実施例55):

【0289】
2−ヒドロキシ−2−(4−メトキシ−ベンゾイル)−シクロヘキサンカルボン酸2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロ−6−[2−ヒドロキシ−2−(4−メトキシ−ベンゾイル)−シクロヘキサンカルボニルオキシ]−ヘキシルエステル(実施例56):

【0290】
実施例57:3,7,11,15−テトラキス−(3−{2−[2−ヒドロキシ−2−(4−メトキシ−ベンゾイル)−シクロヘキサン−カルボニルオキシ]−エトキシ}−プロピル)−オクタデカメチル−デカシロキサン
【化61】

【0291】
実施例55について記載された手順に従い、3.32g(約0.003mol)のシロキサンカルビノールQC 02668(Wacker)および3.12g(0.012mol)の6−(4−メトキシ−ベンゾイル)−7−オキサ−ビシクロ[4.2.0]オクタン−8−オン(実施例10)を出発物質として用いて、この化合物を製造する。溶媒を蒸発させた後、茶色がかった粗生成物をシリカゲル上で濾過して、5g(約78%)の3,7,11,15−テトラキス−(3−{2−[2−ヒドロキシ−2−(4−メトキシ−ベンゾイル)−シクロヘキサンカルボニルオキシ]−エトキシ}−プロピル)−オクタデカメチル−デカシロキサンを粘稠性油状物として得る。1H−NMRから得られた評価は、シロキサンカルビノールあたり4個のヒドロキシル基のうち約3.25がエステル化されることを示唆している。
【0292】

【0293】
実施例58:2−ヒドロキシ−2−(4−メトキシ−ベンゾイル)−シクロヘキサンカルボン酸ブチル−アミド
【化62】

【0294】
20.8g(0.08mol)の6−(4−メトキシ−ベンゾイル)−7−オキサ−ビシクロ[4.2.0]オクタン−8−オン(実施例10)を200mlのtert−ブチルメチルエーテル中に溶解させる。10.46g(0.143mol)のn−ブチルアミンをこの溶液に1時間かけてゆっくりと添加する。反応混合物を一夜室温で撹拌し、溶媒を続いて真空下で留去する。このようにして得られた黄色がかった油状物を静置すると結晶化し、ヘプタンからの再結晶化により精製する。22.5g(85%)の2−(4−メトキシベンゾイル)−2−ヒドロキシ−シクロヘキサンカルボン酸ブチル−アミドをこのようにして94〜95℃の融点を有する白色固体として得る。
【0295】

【0296】
実施例59〜65
実施例59〜65の化合物(第7表)を実施例58について記載した手順にしたがい、第7表に記載のラクトンおよびアミンを出発物質として用いて製造する。
【0297】
【表13】

【0298】
【表14】

【0299】
実施例66〜75
実施例66〜75の化合物(第8表)を、実施例58について記載された手順にしたがい、第8表に記載のラクトンおよび0.5モル当量のジアミンを用いて製造する。
【0300】
【表15】

【0301】
【表16】

【0302】
実施例76:2−ヒドロキシ−2−(4−メトキシ−ベンゾイル)−シクロヘキサンカルボン酸3−(ジエトキシ−ヒドロキシ−シラニル)プロピル−アミド
【化63】

【0303】
6.96g(0.025mol)の2−ヒドロキシ−2−(4−メトキシ−ベンゾイル)−シクロヘキサンカルボン酸(実施例6にしたがって製造)を、5.5g(0.025mol)の3−アミノプロピル−トリエトキシシランの50mlエタノール中溶液に添加する。反応混合物を室温で2時間撹拌した後、溶媒を真空下で蒸発させて、11gの無色粘稠性樹脂を得る。
【0304】
生成物の1H−NMR分析は、生成物について2−ヒドロキシ−2−(4−メトキシ−ベンゾイル)−シクロヘキサンカルボン酸3−(ジエトキシ−ヒドロキシ−シラニル)プロピル−アミドの構造を示す。
【0305】

【0306】
実施例77:2−ヒドロキシ−2−(4−メトキシ−ベンゾイル)−シクロヘキサンカルボン酸2−メチル−プロピル−アミド
【化64】

【0307】
20.8g(0.08mol)の6−(4−メトキシ−ベンゾイル)−7−オキサ−ビシクロ[4.2.0]オクタン−8−オン(実施例10の化合物)を270mlのtert−ブチルメチルエーテル中に溶解させる。10.46g(0.143mol)のsec−ブチルアミンをこの溶液に1時間かけてゆっくりと添加する。反応混合物を24時間室温で撹拌する。この後、1H−NMR分析は、反応混合物が、60%の出発物質と、40%の生成物とからなることを示す。別の10.46g(0.143mol)のsec−ブチルアミンを添加し、反応混合物を室温でさらに4時間撹拌する。その後、溶媒を部分的に留去し、50mlのヘプタンをゆっくりと添加することにより置換する。形成した沈殿を集め、残存する液体をさらにヘキサンで希釈すると、結果としてさらに沈殿が形成される。固体を集め、ヘキサンで洗浄して、白色粉末を得、この粉末は1H−NMR分析によると64%の生成物および36%の出発物質からなる。これらの化合物をシリカゲル上フラッシュクロマトグラフィー[溶離剤:トルエン/酢酸エチル(9:1)]により分離して、2−ヒドロキシ−2−(4−メトキシ−ベンゾイル)−シクロヘキサンカルボン酸2−メチル−プロピル−アミドを、143〜147℃の融点を有する無色固体として得る。
【0308】

【0309】
実施例78:UV−A照射下でのアクリルコーティングの硬化
次の成分を混合することにより、光硬化性組成物を製造する:
【表17】

【0310】
3質量%の光開始剤化合物を配合物に添加し、40℃で1時間撹拌することにより十分溶解させる。実施例1;2;3;4;5;7;15;16;17;18;19;20;21;22;27;30;31;32;33;34;35;36;37;38;39;40、41;42;44;45;48;51;54;55;56;57;58;59;61;64;65;66;67;70;72;73の光開始剤を用いて個々の塗料試料を製造する。光開始剤を含む冷配合物を次いで白色コイルコートアルミニウムパネル上に塗布して、35μmの乾燥フィルム厚さを達成する。基体とランプ間の距離が20cmで、黒色光フィルター有するPanacol F−450ランプを用いて、試料をUVA光に5分間露光する。塗料試料の有効な硬化を乾燥摩擦試験により試験する。この方法により、照射された塗料試料上で組織を手でこする。塗料が硬化しているならば、フィルムは強固であり、パネルから除去できない。
【0311】
UV−A光で照射後にすべての塗料試料は硬化する。
【0312】
実施例79:UV−A照射を用いた光安定剤の存在下でのアクリルコーティングの硬化
次の塗料配合物を製造する:
【表18】

【0313】
3質量%の光開始剤化合物を配合物に添加し、40℃で1時間撹拌することにより十分溶解させる。実施例2;3;41;58;63の光開始剤を用いて個々の塗料試料を製造する。冷配合物を次いで白色のプレコーティングされたアルミニウムパネル上に塗布して、35μmの乾燥フィルム厚さを得る。塗料試料をポリエステルフィルム上に塗布することにより、もう一つ別の試料を製造する。物質とランプ間を20cm離して黒色光フィルターを有するPanacol F−450ランプを用いて両試料を5分間UVA光に露光する。
【0314】
金属基体上に塗布された試料に関してKoenigによるペンデュラム硬度を測定し、[s]で記載する。
【0315】
コーティングされたフィルムをポリエステルフィルムから剥がし、AT−IR分光法を用いてコーティングの上面とフィルム底部に関して二重結合変換率(DBC)を測定する。反応の程度を、810cm-1でアクリレート二重結合をモニターすることにより追跡する。参考ピークを1525cm-1での−CH−ピークに帰属する。二重結合変換率を、液体非照射試料に対する参考における割合(%)で計算する。結果を下記第9表に示す。
【0316】
【表19】

【0317】
実施例80:通常のUV光下でのアクリルコーティングの硬化
次の配合を用いてUV硬化性塗料を製造する:
【表20】

【0318】
3質量%の光開始剤化合物を配合物に添加し、50℃で1時間撹拌することにより十分に溶解させる。実施例3;37;38;41;45;58;63の光開始剤を用いて、個々の塗料試料を製造する。冷塗料試料を白色のプレコーティングされたアルミニウムパネル上に塗布して、35〜40μmの乾燥フィルム厚さを得、2個のHg電球を備えたIST GmbH製造のUV硬化実験室装置を用いて(100W/cm、線速度10m/分)硬化させる。硬化後、Koenigによるペンデュラム硬度を測定し、sで記載する。結果を下記第10表に示す。
【0319】
【表21】

【0320】
実施例81:UV−A蛍光灯下でのアクリルコーティングの硬化
実施例77および78に記載の2つのUV硬化性配合物を製造する。実施例58の光開始剤化合物を用いて、個々の塗料試料を製造する。3質量%の光開始剤を配合物に添加し、40℃で1時間撹拌することにより十分溶解させる。光開始剤を含む冷配合物を次いで白色コイルコートアルミニウムパネル上に塗布して、35μmの乾燥フィルム厚さを得る。照射のために、試料を20cm離れた5つの蛍光電球の下に設置する。それぞれ2種の異なるランプを使用する。365nmで発光ピークを有するPhilips TL−K 40W Actinice BLを用いて第1の試料を25分間照射し、特注の340nmで発光ピークを有する40Wランプを用いて第2の試料を60分間照射する。有効な硬化を、前述の乾燥摩擦試験により測定する。
【0321】
両サンプルは照射後に硬化する。
【0322】
実施例82:不飽和ポリエステルの硬化
次の成分を混合することにより、スチレン中不飽和ポリエステルベースの配合物を製造する:
【表22】

【0323】
3質量%の実施例58の光開始剤化合物を添加し、60分間40℃で撹拌することにより、十分に溶解させる。冷塗料を白色のプレコーティングされたアルミニウムパネル上に塗布して、約35μmの厚さの乾燥フィルムを得、2個のHg電球を100W/cm、線速度10m/分で用いてIST実験室用UV硬化装置で照射する。有効な硬化を、前述の乾燥摩擦試験により測定する。
【0324】
試料は照射後に硬化する。
【0325】
実施例83:水性UV硬化性配合物の硬化
以下の配合にしたがって、水で希釈可能なUV硬化性塗料を製造する:
【表23】

【0326】
1.25%の光開始剤を配合物に添加し、室温で撹拌することにより溶解させる。実施例20;21;29;30に記載された光開始剤化合物を用いて、個々の塗料試料を製造する。塗料を白色のプレコーティングされたアルミニウムパネル上に塗布して、厚さ約35μmの乾燥フィルムを得る。まず対流オーブン中で10分間60℃で水を蒸発させ、次いでIST GmbH製造の実験室用UV硬化装置で2個のHg電球を用いて100W/cm、線速度5m/分で照射することによって試料を硬化させる。二重結合変換率(DBC)を塗料表面のAT−IR分光法により測定する。反応の程度を、810cm-1でアクリレート二重結合をモニターすることにより追跡する。参考ピークを2900cm-1での−CH−ピークに帰属する。乾燥したが、照射していない試料の基準における割合(%)で二重結合変換率を計算する。結果を下記第11表に示す。
【0327】
【表24】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I
【化1】

[式中、
xは1〜4の整数であり;
pは1〜3の整数であり;
qは0〜3の整数であり;
Arは、フェニル、ナフチル、アントリルまたはフェナントリルであり、そのそれぞれは場合によって、1つ以上のCl、CN、OR5、C3−C5アルケニルまたは、場合によって1つ以上のOR6、COOR6もしくはハロゲンにより置換されているC1−C6アルキルにより置換され;
1は、xが1であるならば、OR7、O-+、NR89、場合によって1つ以上のCOOR10により置換されているC1−C20アルキルであるか、または1つ以上のOによって中断されているC2−C20アルキルであるか、またはC2−C5アルケニルもしくはフェニル−C1−C4アルキルであり;
1は、xが2であるならば、C1−C20アルキレン、場合によって1つ以上のOによって中断されているC2−C20アルキレンであるか、またはO−A−O、O−A−NR15、NR15−A−O、NR’15−A−NR15、NR15a−A1−NR15bまたはNR’15−(CH2x’−A−(CH2x’−NR15であるか、またはO-2+O−であり;
x’はxについて記載した意味のうちの1つを有し;
1は、xが3であるならば、N(R30O)3−;場合によってOHにより置換されているC3−C20アルカントリイルトリオキシ;C3−C20アルカントリイルトリアミノ;三価シロキサン、もしくは3O-3+であり;
1は、xが4であるならば、場合によってOHにより置換されているC4−C20アルカンテトライルテトラオキシ;C4−C20アルカンテトライルテトラアミノ;四価シロキサン;または4O-4+であり;
2およびR3は互いに独立して、水素もしくはC1−C8アルキルであるか、またはR2およびR3は一緒になってO、C1−C3アルキレンもしくはCH=CHであり;
4は、C1−C4アルキルであり;
5は、水素、C1−C4アルキル、場合によって1つ以上のC1−C4アルキル、C1−C4アルコキシもしくはハロゲンにより置換されているフェニルであるか;または(C2−C6アルキレンO)n−R6であり;
nは1〜20の整数であり;
6は、水素、C1−C4アルキル、C2−C5アルケニルまたはC2−C6アルカノイルであり;
7は、水素、C2−C5アルケニル、場合によって1つ以上のOH、NR1112もしくはSi(R14y(OR13zにより置換されているC2−C20アルキルであるか;または1つ以上のOもしくはNR15によって中断されており、場合によって1つ以上のOH、NR1112もしくはSi(R14y(OR13zにより置換されているC2−C20アルキルであるか;または場合によって1つ以上のOH、NR1112もしくはSi(R14y(OR13zにより置換されているC1−C20ハロアルキルであるか;または1つ以上のOもしくはNR15によって中断されているC2−C20ハロアルキルであり;
8およびR9は互いに独立して、水素、C1−C20アルキル;CN、COOR11もしくはSi(R14y(OR13zにより置換されているC1−C8アルキル;1つ以上のNR1112もしくはOR11により置換されているC2−C8アルキルであるか;あるいはC3−C8シクロアルキル、C3−C5アルケニル、フェニル−C1−C4アルキルまたは場合によってC1−C4アルキル、OR11もしくはハロゲンにより置換されているフェニルであるか;
あるいはR8およびR9は一緒になって、場合によって1つ以上のOまたはNR15によって中断されているC3−C7アルキレンであり(このC3−C7アルキレンまたは中断されたC3−C7アルキレンは、場合によって1つ以上のC1−C4アルキルもしくはCOOR11により置換されている);
zは0〜3の整数であり;
yは0〜3の整数であり(ここで、y+zの合計は3である);
10は、水素またはC1−C4アルキルであり;
11およびR12は互いに独立して、水素または場合によってOHにより置換されているC1−C4アルキルであり;
13は、水素、C1−C4アルキルまたはSi(R14)(R’14)(R"14)であり;
14、R’14およびR"14は互いに独立して、水素またはC1−C4アルキルであり;
15およびR’15は互いに独立して、水素;場合によってOH、COOR11もしくはCNにより置換されているC1−C20アルキルであるか;または1つ以上のOによって中断されているC2−C20アルキルであるか;またはC3−C5アルケニル、フェニル−C1−C4アルキル、C1−C8アルカノイルもしくはベンゾイルであり;
15aおよびR15bは互いに独立して、A1の炭素と脂肪族環を形成するか、または
15aおよびR15bは一緒になって、C1−C3アルキレンであり;
30は、場合によって1つ以上のOによって中断されているC2−C8−アルキレンであり;
Aは、1つ以上のOまたはNR15によって中断されているC2−C20アルキレン;場合によって1つ以上のOまたはNR15によって中断されているC2−C20ハロアルキレン;C5−C20シクロアルキレンであるか;またはAは二価シロキサンであり
1は、場合によって1つ以上のOまたはNR15によって中断されているC2−C20アルキレンであり;そして
Xは、x価カチオン性カウンターイオンである]で示される化合物。
【請求項2】
式I’
【化2】

[式中、Arは、フェニルまたはナフチルであり、そのそれぞれは場合によって1つ以上のCl、CN、OR5、C3−C5アルケニル、または場合によって1つ以上のOR6、COOR6もしくはハロゲンにより置換されているC1−C6アルキルにより置換され;そして
1、R5、R6およびxは請求項1において定義するとおりである]で示される、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
式中、
xは1〜4の整数であり;
pは2であり;
qは0であり;
Arは、フェニルあるいは、1つ以上のCl、OR5または、場合によって1つ以上のOR6もしくはCOOR6により置換されているC1−C6アルキルにより置換されているフェニルであり;
1は、xが1であるならば、OR7、O-+、NR89またはC1−C20アルキルであり;
1は、xが2であるならば、O−A−O、NR’15−A−NR15、NR15a−A1−NR15bまたはNR’15−(CH2x’−A−(CH2x’−NR15であり;
x’はxについて記載した意味のうちの1つを有し;
1は、xが3であるならば、N(R30O)3−であり;
1は、xが4であるならば、式XII
【化3】

の四価シロキサンであり;
2、A3、A4およびA5は、場合によって[O(CH2g−O]hにより置換されているC1−C10アルキレンであり;
gは2であり;
hは1であり;
aは0であり
b、c、d、e、sおよびtは1であり;
2およびR3は水素であり;
5はC1−C4アルキルであり;
6は水素であり;
7は、水素、場合によってOHにより置換されているC2−C20アルキルであるか;または1つ以上のOによって中断されており、場合によってOHにより置換されているC2−C20アルキルであるか;または場合によってOHにより置換されているC1−C20ハロアルキルであり;
8およびR9は互いに独立して、水素、C1−C20アルキル;Si(R14y(OR13zにより置換されているC1−C8アルキルであるか;
またはR8およびR9は一緒になって、場合によってCOOR11により置換されているC3−C7アルキレンであり;
zは0〜3の整数であり;
yは0〜3の整数であり(ここで、y+zの合計は3である);
11およびR13はC1−C4アルキルであり;
14はC1−C4アルキルであり;
15およびR’15は、水素またはC1−C20アルキルであり;
15aおよびR15bは互いに独立して、A1の炭素原子と脂肪族環を形成するか、または
15aおよびR15bは一緒になってC1−C3アルキレンであり;
30はC2−C8−アルキレンであり;
Aは、場合によって1つ以上のOによって中断されているC2−C20アルキレン;C2−C20ハロアルキレン;C5−C20シクロアルキレンであるか;または式X
【化4】

の二価シロキサンであり;
aは0であり;
jは1であり;
kは2であり;そして
16、R17およびR18は、C1−C18アルキルであり;
1は、C2−C20アルキレンであり;そして
XはNR22232425であり;
22、R23、R24、R25は互いに独立して、水素;または場合によってOH、NR2627、ベンゾイルもしくはSi(OH)y(OC1−C4アルキル)zにより置換されているC1−C20アルキルであるか;
あるいはR22、R23、R24もしくはR25のうちの2つが、場合によって追加のヘテロ原子としてOを含む6員飽和環を形成し;そして
26およびR27は、水素または場合によってOHにより置換されているC1−C4アルキルである、請求項1に記載の式Iの化合物。
【請求項4】
請求項1に記載の式Iの化合物を製造するための方法であって、式(F)
【化5】

[式中、p、q、R2、R3、R4およびArは請求項1において定義するとおりである]の化合物をR1(H)x[式中、R1およびxは請求項1において定義するとおりである]と反応させる製造方法。
【請求項5】
式(F)
【化6】

[式中、p、q、R2、R3、R4およびArは請求項1において定義するとおりである]の化合物。
【請求項6】
式Iの化合物を製造するための中間体としての、請求項5に記載の式(F)の化合物の使用。
【請求項7】
(a)少なくとも1つのエチレン性不飽和化合物;および
(b)少なくとも1つの請求項1に記載の式Iの光開始剤化合物
を含む光重合性組成物。
【請求項8】
成分(a)および(b)に加えて、さらなる光開始剤(c)および/またはさらなる添加剤(d)を含む、請求項7に記載の光重合性組成物。
【請求項9】
150〜600nmの波長範囲の光で照射することによる、少なくとも1つのエチレン性不飽和二重結合を有するモノマー、オリゴマーまたはポリマー化合物の光重合用光開始剤としての、請求項1に記載の式Iの化合物の使用。
【請求項10】
着色および非着色表面コーティング、印刷用インク、スクリーン印刷用インク、オフセット印刷用インク、フレキソ印刷用インク、インクジェット印刷用インク、刷り重ねニス、粉末コーティング、印刷版、接着剤、感圧性接着剤、歯科用材料、光導波路、光学スイッチ、カラー試験システム、複合材料、ゲルコート、ガラス繊維ケーブルコーティング、スクリーン印刷ステンシル、レジスト材料、プリント基板製造用レジスト材料、一次画像化レジストおよびソルダレジスト、カラーフィルター、プラズマディスプレイパネル製造用レジストを製造するため、電気および電子部品を封止するため、磁気記録材料を製造するため、ステレオリソグラフィーによる三次元物体、写真複写、画像記録材料の製造のため、ホログラフィック記録のため、脱色物質を製造するため、マイクロカプセルを用いて画像記録材料を製造するための、請求項7に記載の組成物の使用。
【請求項11】
150〜600nmの範囲の光で請求項7に記載の組成物を照射することを含む、少なくとも1つのエチレン性不飽和二重結合を有するモノマー、オリゴマーまたはポリマー化合物の光重合のための方法。
【請求項12】
着色および非着色表面コーティング、印刷用インク、スクリーン印刷用インク、オフセット印刷用インク、フレキソ印刷用インク、インクジェット印刷用インク、刷り重ねニス、粉末コーティング、印刷版、接着剤、感圧性接着剤、歯科用材料、光導波路、光学スイッチ、カラー試験システム、複合材料、ゲルコート、ガラス繊維ケーブルコーティング、スクリーン印刷ステンシル、レジスト材料、プリント基板製造用レジスト材料、一次画像化レジストおよびソルダレジスト、カラーフィルター、プラズマディスプレイパネル製造用レジストを製造するため、電気および電子部品を封止するため、磁気記録材料を製造するため、ステレオリソグラフィーによる三次元物体、写真複写、画像記録材料の製造のため、ホログラフィック記録のため、脱色物質を製造するため、マイクロカプセルを用いて画像記録材料を製造するための、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
コーティングされた基体であって、少なくとも1つの表面上を請求項7に記載の組成物でコーティングされた、基体。
【請求項14】
請求項13に記載のコーティングされた基体を画像どおりに露光し、次いで溶媒を用いて露光されていない部分を除去する、レリーフ画像の写真製造用方法。
【請求項15】
(a)少なくとも1つのエチレン性不飽和化合物;
(f)熱架橋性化合物;および
(b)光開始剤としての、少なくとも1つの請求項1において定義された式Iの化合物
を含むデュアル硬化性コーティング組成物である、請求項7に記載の組成物。
【請求項16】
二重(熱およびUV)硬化性コーティング組成物であって、
(a)少なくとも1つのエチレン性不飽和化合物;
(b)エチレン性不飽和化合物のUV硬化を可能にするために有効なUV光開始剤としての、少なくとも1つの請求項1で定義された式Iの化合物;および
(g)IR硬化またはNIR硬化を可能にするか、またはエチレン性不飽和化合物の対流熱硬化を可能にするために有効な、少なくとも1つの熱ラジカル開始剤を含む、請求項7に記載の組成物。

【公表番号】特表2010−523516(P2010−523516A)
【公表日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−501475(P2010−501475)
【出願日】平成20年3月25日(2008.3.25)
【国際出願番号】PCT/EP2008/053458
【国際公開番号】WO2008/122504
【国際公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】