説明

α−ヒドロキシ酸重合体組成物およびそれを用いた成形品の製造方法

【課題】生体内で安全に吸収および/または代謝されるα−ヒドロキシ酸重合体組成物、およびそれを用いた成形サイクルが短時間であり、得られる成形品のもろさを改善でき、成形品において「ひけ」や固化不十分による成形不良が生じ難く、かつ、生産性に優れる成形品の製造方法を提供する。
【解決手段】α−ヒドロキシ酸重合体と、結晶核剤としてアミノ酸とを含むα−ヒドロキシ酸重合体組成物、およびそれを用いた成形品の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、α−ヒドロキシ酸重合体組成物に関し、さらに詳細には、生体内、特に血管内の埋込用デバイスとして用いられる、α−ヒドロキシ酸重合体とアミノ酸とを含むα−ヒドロキシ酸重合体組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリ(p−ジオキサノン)やポリ乳酸などのα−ヒドロキシ酸重合体は、体温や室温程度の穏和な条件でも、周囲の水分によって加水分解しうる熱可塑性ポリエステルである。加水分解を受けて生じたα−ヒドロキシ酸は、細菌や生体内で代謝されるか、または、過剰な毒性を示さず体外へ排出されることから、廃棄後土中の細菌によって吸収され消失することを目的とした用途や、医療用具として体内に埋めこまれた後消失することを特徴としたデバイスへの応用検討がなされている(例えば、特許文献1〜3参照)。
【0003】
前記α−ヒドロキシ酸重合体は、結晶化速度が遅いことが知られている。結晶化速度が遅いことは、溶融した樹脂を特定の形状の型に注入して、樹脂を冷却固化し成形する方法、すなわち、射出成形と呼ばれる方法で製品を製造する際に、大きなデメリットとなる。一般的な射出成形機は、シリンダーで樹脂を溶融させ、一定量の溶融樹脂を冷却している型に注入して固化成形し、型を開いて成形物を取りだした後、型を閉じて、再度シリンダーから溶融樹脂を型に注入するという一連の作業を繰り返し行い、多数の成形品を得る。このサイクルが早いほど、樹脂がシリンダー内で溶融され、型に注入され固化されるまでの時間が短いため、樹脂の熱分解を防止することができ、短時間に多数の成形品を得ることができるため生産コストの低減に繋がる。溶融樹脂の注入や金型からの成形物の取り出しにかかる時間がせいぜい10秒前後であるため、数分の冷却時間が成形物の分子量安定化や生産性に最もつながる要素なのである。
【0004】
例えば、ポリ乳酸では、好適な結晶化温度に冷却しても、半結晶化時間が5分以上必要である(例えば、非特許文献1参照)。
【0005】
特許文献4は、ポリ(p−ジオキサノン)の射出成形時の冷却時間として75〜120秒、好ましい冷却時間として90〜105秒をそれぞれ開示している。ガラス転移温度が−20℃程度であるポリ(p−ジオキサノン)の場合、金型内部で室温付近に冷却できた状態でも、結晶化が進んでいないときには変形し易いゴム状態であり、金型から取り出す際変形し易く、場合によっては取り出せないという問題が生じる場合がある。さらには、結晶化の際に大きな球晶を形成し易く、成形物がもろくなる可能性がある。また押出成形の場合でも、結晶化が進むまでの間に成形品が粘着しやすく、管理が難しくなるという欠点がある。
【0006】
ポリ(p−ジオキサノン)の冷却固化に要する時間を短くするための一つの方法として、ポリ(p−ジオキサノン)をシリンダー内で溶融する際に、完全に溶融させずに自己結晶核を残した状態のまま成形する方法がある。非特許文献2によれば、このような自己結晶核の形成は、ポリ(p−ジオキサノン)の融点から116℃の間で確認されており、ポリ(p−ジオキサノン)の射出成形が記載されている特許文献4でも、好ましい溶融温度として105〜115℃が開示されている。しかし、このような条件でも、前記の特許文献4で開示されている通り、90秒以上の冷却時間を要する。
【0007】
ポリ乳酸では、ガラス転移温度(Tg)が60℃程度と比較的高いことを利用して、室温付近まで急冷し、型から取り出す条件を設定することは可能である。しかし、保存時の形状を安定化させるために、ポリ乳酸の成形品は型から取り出した後高温でアニールすることが好ましく、その結果、収縮をおこしたり、変形したりしやすく、製造できるポリ乳酸の成形品は、形状が不安定であっても良いものに限定される。
【0008】
さらに、冷却時間が長いと、溶融した状態でシリンダー内に長時間滞留してしまうという問題がある。α−ヒドロキシ酸重合体は加熱によって分解し分子量の低下を招きやすいため、得られた成形物ごとに分子量がばらつき、その結果、α−ヒドロキシ酸重合体の特徴の一つである分解速度が、個々の成形物によって異なってくる可能性がある。これは、特に、生体内で加水分解して一定期間後に消失させることを目的とした医療用デバイスを安定的に製造するには重要な問題である。
【0009】
以上のような問題を解決するために、一般的に、樹脂に結晶核剤を添加することが行われている。例えば、特許文献5には、結晶核剤としてジベンザルソルビットをポリプロピレンに添加し溶融成形することにより、成形物の収縮率を低下させ「ひけ」の防止に効果があることが記載されている。またα−ヒドロキシ酸重合体についても、タルクをポリ乳酸に添加することによって、高結晶化速度を達成し、重合体の脆性が低下しうることが非特許文献3に記載されている。また、特許文献6には、結晶核剤として4級アンモニウム化合物を用いることが開示されている。
【特許文献1】米国特許第4,052,988号明細書
【特許文献2】米国特許第4,490,326号明細書
【特許文献3】米国特許第4,620,541号明細書
【特許文献4】米国特許第5,611,986号明細書
【特許文献5】特公昭52−5935号公報
【特許文献6】特開2006−117834号公報
【非特許文献1】S.Iannace and L.Nicolais,Journal of Applied Polymer Scinece,1997,vol64,pp911
【非特許文献2】M.A.Sabino et al.,Macromolecular Chemistry and Physics,2000,201,pp2687
【非特許文献3】プラスチックエージ、2003年4月号、p132〜135
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上記のジベンザルソルビットやタルクのような結晶核剤は、生体内で分解され難く、生体内で分解吸収されることを目的として製造された移植用具に含まれた場合、体内で吸収され難いため、慢性炎症や異物発ガンの原因となる可能性がある。また、上記の4級アンモニウム化合物も、体内に存在しない化合物であり、組織反応により生体に悪影響を及ぼす可能性がある。
【0011】
そこで本発明は、α−ヒドロキシ酸重合体を主成分とし、生体内で安全に吸収および/または代謝されるα−ヒドロキシ酸重合体組成物を提供することを目的とする。
【0012】
さらに本発明は、成形サイクルが短時間であり、得られる成形品のもろさを改善でき、成形品において「ひけ」や固化不十分による成形不良が生じ難く、かつ、生産性に優れる成形品の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、上記のような状況に鑑みて鋭意研究を積み重ねた結果、α−ヒドロキシ酸重合体に対する結晶核剤としてアミノ酸を加えることにより、α−ヒドロキシ酸重合体を含む組成物の結晶化速度が速くなり、その結果、α−ヒドロキシ酸重合体を含む組成物の成形性が改善されることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0014】
すなわち、本発明は、α−ヒドロキシ酸重合体と、アミノ酸と、を含むα−ヒドロキシ酸重合体組成物である。
【0015】
また、本発明は、α−ヒドロキシ酸重合体とアミノ酸とを混合してα−ヒドロキシ酸重合体組成物を製造する段階と、前記α−ヒドロキシ酸重合体組成物を成形する段階と、を含む成形品の製造方法である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、生体内で安全に吸収および/または代謝されるα−ヒドロキシ酸重合体組成物が提供されうる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0018】
本発明は、α−ヒドロキシ酸重合体と、アミノ酸と、を含むα−ヒドロキシ酸重合体組成物である。本発明のα−ヒドロキシ酸重合体組成物は、生体内で安全に代謝されがたい成分や毒性のある成分を含んでおらず、また、アミノ酸の添加量は通常の核剤程度である数%以下といったα−ヒドロキシ酸重合体自体の性能に影響を与えない量で、α−ヒドロキシ酸重合体の大きな問題であった結晶化速度を大きく改善するものである。
【0019】
本発明に用いられるα−ヒドロキシ酸重合体は、α−ヒドロキシ酸の単独重合体、ランダム共重合体、ブロック共重合体、またはこれらの混合物を、単独でまたは2種以上組み合わせて使用することができる。具体的には、下記化学式(1)で表される化学構造部分を含む結晶性ポリマーである。
【0020】
【化1】

【0021】
前記化学式(1)中、Rは水素原子、または炭素数が1〜3の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基である。
【0022】
前記化学式(1)で表される化学構造部分を含むα−ヒドロキシ酸重合体の例として、具体的には、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリ(p−ジオキサノン)、およびこれらの共重合体が好ましく挙げられる。これらの材料は、目的とするデバイスの要求性能によって選択され、例えば組織用クリップや、後述するような血管壁閉鎖用デバイスのように柔軟性および弾性が要求されるデバイスには、ポリ(p−ジオキサノン)が好ましく用いられる。
【0023】
また、ステントや縫合糸など高強度が要求されるデバイスには、ポリ乳酸、ポリグリコール酸が好ましく用いられるが、生体への埋植後、比較的長時間強度を維持する必要がある場合には、ポリ乳酸が好ましく用いられる。
【0024】
前記α−ヒドロキシ酸重合体の入手経路は、特に制限されるものではない。α−ヒドロキシ酸重合体の商品が市販されている場合には、当該商品を購入したものを用いてもよいし、開環重合など従来公知の方法を用いて自ら調製したα−ヒドロキシ酸重合体を用いてもよい。
【0025】
前記α−ヒドロキシ酸重合体の分子量については、特に制限はないが、成形品の機能を維持できる分子量であることが好ましく、例えば、ポリ(p−ジオキサノン)であれば、インヘレント粘度で、0.5〜5.0dl/gであることが好ましく、1.0〜4.0dl/gであることがより好ましい。なお、前記インヘレント粘度は、20mlのヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)に、20mgのα−ヒドロキシ酸重合体を溶解させ、25℃で、JIS K 7367−1に記載されている1型ウベローデ形粘度計を用いて測定した値を採用するものとする。
【0026】
本発明で用いられるアミノ酸は、生体内で分解および/または代謝されるものであれば、特に制限はない。例えば、グリシン、D−アラニン、L−アラニン、D−バリン、L−バリン、D−ロイシン、L−ロイシン、D−イソロイシン、L−イソロイシン、D−アロイソロイシン、L−アロイソロイシン、D−セリン、L−セリン、D−スレオニン、L−スレオニン、D−アロスレオニン、L−アロスレオニン、D−アスパラギン酸、L−アスパラギン酸、D−アスパラギン、L−アスパラギン、D−グルタミン酸、L−グルタミン酸、D−グルタミン、L−グルタミン、D−リジン、L−リジン、D−δ‐オキシリジン、L−δ‐オキシリジン、D−アルギニン、L−アルギニン、D−システイン、L−システイン、D−シスチン、L−シスチン、D−メチオニン、L−メチオニン、D−アミノ酪酸、L−アミノ酪酸、D−オルニチン、L−オルニチン、D−シトルリン、L−シトルリンなどの脂肪族アミノ酸、D−フェニルアラニン、L−フェニルアラニン、D−チロシン、L−チロシン、D−3,5−ジブロムチロシン、L−3,5−ジブロムチロシン、D−3,5−ジヨードチロシン、L−3,5−ジヨードチロシン、D−3,5,3’−トリヨードチロシン、L−3,5,3’−トリヨードチロシン、D−チロキシン、L−チロキシンなどの芳香族アミノ酸、D−プロリン、L−プロリン、D−オキシプロリン、L−オキシプロリン、D−トリプトファン、L−トリプトファン、D−ヒスチジン、L−ヒスチジン等の複素環式アミノ酸などを挙げることができ、これらは単独でもまたは2種以上混合しても使用することができる。これらアミノ酸の中でも、生体に対する安全性および環境負荷の観点から、グリシン、L−アラニン、L−バリン、L−ロイシン、L−イソロイシン、L−アロイソロイシン、L−セリン、L−スレオニン、L−アロスレオニン、L−アスパラギン酸、L−アスパラギン、L−グルタミン酸、L−グルタミン、L−リジン、L−δ‐オキシリジン、L−アルギニン、L−システイン、L−シスチン、L−メチオニン、L−アミノ酪酸、L−オルニチン、L−シトルリン、L−フェニルアラニン、L−チロシン、L−3,5−ジブロムチロシン、L−3,5−ジヨードチロシン、L−3,5,3’−トリヨードチロシン、L−チロキシン、L−プロリン、L−オキシプロリン、L−トリプトファン、L−ヒスチジンなどのL体アミノ酸が好ましく、L−チロシンがより好ましい。
【0027】
チロシンは、ヒドロキシ基の位置によって、o−チロシン、m−チロシン、およびp-チロシンの3種の構造異性体が存在する。チロシンは、生体内では、通常の代謝反応であるフェニルアラニンの酵素反応によって産生されるが、このときに生成するのはp−チロシンのみである。p−チロシンは、生体に対する安全性が確認されており、日本薬局外医薬品規格および食品添加物公定書に収載され、医薬品や食品添加物として広く使用されている。また、p−チロシンは、微生物培養のための培地としても使用されるなど、微生物によって容易に分解され、廃棄後の環境への負荷が低いこともわかっている。
【0028】
一方、o−チロシンおよびm−チロシンは、生体内においては、活性酸素の存在などの通常より酸化的ストレスが高い場合に産生されることがわかっているが、医薬品など一般的には使用されておらず、生体や環境に対する安全性を考慮すると、p−チロシンを使用することが最も好ましい。
【0029】
また、p−チロシンは、工業的にも多く生産されており、生産コスト低減という観点からも、前記3種の構造異性体のうち、p−チロシンを使用することが最も好ましい。
【0030】
本発明のα−ヒドロキシ酸重合体組成物におけるアミノ酸の含量は、α−ヒドロキシ酸重合体の種類およびアミノ酸の種類により適宜決定すればよいが、α−ヒドロキシ酸重合体組成物の総質量を100質量%として、好ましくは0.01〜10質量%、より好ましくは0.01〜5.0質量%、さらに好ましくは0.01〜2.0質量%である。アミノ酸の含量が0.01質量%未満であるとα−ヒドロキシ酸重合体の結晶化速度を速める効果が得られない場合があり、10質量%を超えるとα−ヒドロキシ酸重合体組成物の強度や弾性率などの物理的特性が低下する場合がある。
【0031】
前記アミノ酸がチロシンの場合、その含量は、α−ヒドロキシ酸重合体組成物の総質量を100質量%として、好ましくは0.01〜2質量%、より好ましくは0.01〜1.5質量%、さらに好ましくは0.01〜1.0質量%である。チロシンの含量が0.01質量%未満であると、α−ヒドロキシ酸重合体の結晶化速度を速める効果が得られない場合があり、2質量%を超えると、α−ヒドロキシ酸重合体の結晶化速度を速める効果が、前記範囲内の含量の場合と比べてほとんど変化しない場合がある。
【0032】
前記アミノ酸として、酸性アミノ酸または塩基性アミノ酸を用いる場合、酸性アミノ酸に対しては塩基性化合物を、塩基性アミノ酸に対しては酸性化合物を、それぞれ混合させて、電荷を中性にしておくことが好ましい。その理由は、アミノ酸の電荷が中性でない場合、アミノ酸が酸または塩基として作用することでα−ヒドロキシ酸重合体の分解を促進し、所望のα−ヒドロキシ酸重合体の分解速度が得られない虞があるためである。
【0033】
前記酸性アミノ酸に対して混合させうる塩基性化合物の例としては、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム、または水酸化マグネシウムなどの塩が好ましく挙げられる。
【0034】
前記塩基性アミノ酸に対して混合させうる酸性化合物の例としては、リン酸、硫酸、または塩酸などの酸が好ましく挙げられる。
【0035】
前記酸性化合物または前記塩基性化合物を混合させる量は、酸性アミノ酸または塩基性アミノ酸の価数により決まる。ここでいう「価数」とは、分子内のアミノ基およびイミノ基の数とカルボキシル基の数との差を意味する。例えば、酸性アミノ酸であるアスパラギン酸を用いる場合、アスパラギン酸はカルボキシル基2個とアミノ基1個とをそれぞれ分子内に有していることから、1価の酸であるとし、1価の酸を中和させる量の塩基を混合させればよい。また、例えば、塩基性アミノ酸であるリジンを用いる場合、リジンはカルボキシル基1個とアミノ基2個とをそれぞれ分子内に有していることから、1価の塩基であるとし、1価の塩基を中和させる量の酸を混合させればよい。
【0036】
前記酸性アミノ酸と前記塩基性化合物とを混合する方法、および前記塩基性アミノ酸と前記酸性化合物とを混合する方法は、特に制限されず、例えば、酸性アミノ酸と塩基性化合物とを、または塩基性アミノ酸と前記酸性化合物とを、水またはアルコールなどの溶媒中で混合させる方法が挙げられる。
【0037】
また、本発明のα−ヒドロキシ酸重合体組成物は、第3成分として色素を添加し、着色することができる。本発明で用いられうる色素の例としては、例えば、D&C Violet No.2などが挙げられる。前記色素の添加量は、α−ヒドロキシ酸重合体の質量に対して、好ましくは100〜3000ppm、より好ましくは500〜2000ppm、添加することができる。前記色素を添加しても特に問題なく、成形性の良い着色されたα−ヒドロキシ酸重合体組成物を得ることができる。
【0038】
(成形品の製造方法)
続いて、本発明の成形品の製造方法を説明する。
【0039】
本発明の成形品の製造方法は、例えば、α−ヒドロキシ酸重合体とアミノ酸とを混合してα−ヒドロキシ酸重合体組成物を製造する工程(α−ヒドロキシ酸重合体組成物製造工程)と、得られたα−ヒドロキシ酸重合体組成物を成形して成形品を得る工程(成形工程)と、を含む。
【0040】
以下、かような製造方法について、工程順に詳細に説明するが、下記の形態のみには制限されない。
【0041】
(α−ヒドロキシ酸重合体組成物製造工程)
本工程では、α−ヒドロキシ酸重合体とアミノ酸とを混合して、α−ヒドロキシ酸重合体組成物を製造する。
【0042】
混合方法は、特に限定されず、一般的なポリマーブレンドの方法を採用することができる。例えば、α−ヒドロキシ酸重合体とアミノ酸とを、押出機やバンバリーミキサーで溶融混練する方法、例えばヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)、クロロホルム、塩化メチレン、またはベンゼンなどの溶媒に、好ましくは0.1〜30質量%の濃度でα−ヒドロキシ酸重合体を溶解させた溶液に対してアミノ酸を混合分散または溶解させ、その後、溶媒を蒸発させる方法などを採用することができる。
【0043】
前記α−ヒドロキシ酸重合体組成物を、α−ヒドロキシ酸重合体とアミノ酸との溶融混練で製造する場合、用いるアミノ酸は微粉末であることが好ましい。前記アミノ酸は、α−ヒドロキシ酸重合体に対する結晶核剤としての役割を果たす。結晶核剤は結晶性樹脂が硬化する際の結晶化の開始点であるため、樹脂中にできるだけ分散させることが好ましく、したがって、アミノ酸はできるだけ細かい粉末であることが好ましい。具体的には、前記アミノ酸の粒径は、個数平均径が好ましくは0.04〜10μm、より好ましくは0.04〜1μmである。また、前記α−ヒドロキシ酸重合体の形状は、好ましくは円筒状等のペレット、破砕ペレット、または粉砕品である。さらに、前記α−ヒドロキシ酸重合体の粒径は、好ましくは1〜5mmである。なお、前記アミノ酸の粒径は、2−プロパノールを分散媒とし、レーザ回折散乱法粒度分布測定装置 LS230(ベックマン・コールター社製)により測定した値を採用するものとする。
【0044】
アミノ酸の微粉末化の方法は、特に限定されるものではなく、従来公知の方法を適用することができる。例えば、アミノ酸を熱水等に溶解させた希薄溶液を、急速冷凍した後に凍結乾燥する方法もしくはスプレードライヤーで乾燥する方法、アミノ酸を酸もしくはアルカリ溶液に溶解させた後急速に中和することで析出させる方法、またはボールミル等を用いてアミノ酸を機械的に粉砕する方法などが挙げられる。
【0045】
前記の範囲の粒径を有するアミノ酸を得るための分級方法は、特に制限されるものではなく、従来公知の方法を適用することができる。例えば、ふるいを用いて分級する方法、粒子の落下速度や落下位置の違いによって分級する方法、気流中の慣性力を利用して分級する方法、または流体に液体を用いてふるいにかけ分級する方法などが挙げられる。
【0046】
溶融混練の温度や混練時間等の条件は、用いられるα−ヒドロキシ酸重合体の融点、粘度、耐熱性や、アミノ酸の耐熱性、最終製品に要求される物性とそれに至る加工方法により様々に設定することができる。一般的には、α−ヒドロキシ酸重合体が熱分解し易いことから、α−ヒドロキシ酸重合体の融点より20℃前後高い温度で、バンバリーミキサーや2軸混練押出機を用いて混練することで、本発明のα−ヒドロキシ酸重合体組成物を製造することができる。具体的には、溶融混練の温度は、好ましくは、α−ヒドロキシ酸重合体組成物中のα−ヒドロキシ酸重合体の融点の温度から前記α−ヒドロキシ酸重合体の融点より40℃高い温度までの範囲、より好ましくは、α−ヒドロキシ酸重合体組成物中のα−ヒドロキシ酸重合体の融点の温度から前記α−ヒドロキシ酸重合体の融点より20℃高い温度までの範囲である。例えば、融点106℃のポリ(p−ジオキサノン)の場合、容量250mlのバンバリーミキサーを用い、前述の凍結乾燥で作製した粒径が0.1μmであるL−p−チロシン微粉末とポリ(p−ジオキサノン)の破砕ペレットとを、室温でドライブレンドした後、120℃で溶融しながら混練すれば、15分程度でほぼ均質なα−ヒドロキシ酸重合体組成物を得ることができる。
【0047】
前記アミノ酸は、α−ヒドロキシ酸重合体の溶融温度で分解や変質などが生じないものを適宜選択して使用すればよい。アミノ酸の分解温度は、一般的に200℃以上である。本発明のα−ヒドロキシ酸重合体組成物において、好ましいアミノ酸であるチロシンの分解温度は344℃であり、α−ヒドロキシ酸重合体のなかでも高融点であるポリグリコール酸(融点218℃)や、ポリD乳酸とポリL乳酸とのステレオコンプレックス(融点228℃)に対する結晶核剤として使用することができる。
【0048】
また、本段階で、α−ヒドロキシ酸重合体組成物に対して、第3成分として色素を添加し、着色することができる。例えば、ポリ(p−ジオキサノン)の場合、D&C Violet No.2をα−ヒドロキシ酸重合体とアミノ酸との総質量に対して、好ましくは100〜3000ppm、より好ましくは500〜2000ppm添加することができ、このような場合でも特に問題なく、成形性の良い着色されたα−ヒドロキシ酸重合体組成物とすることができる。
【0049】
(α−ヒドロキシ酸重合体組成物成形工程)
本工程では、本発明のα−ヒドロキシ酸重合体組成物を成形して、成形品を製造する。
【0050】
成形方法は、特に制限されず、例えば、押出成形、射出成形、ブロー成形、圧縮成形、または熱成形など従来公知の方法を採用することができる。これら成形方法の中でも、射出成形が好ましい。以下、本発明の好ましい実施形態である射出成形の方法について述べる。
【0051】
射出成形法では、図1に示すように、射出成形機に原料樹脂を供給した後溶融させ、(1)型締め、(2)溶融した樹脂の射出、(3)冷却、(4)型開き、(5)取出し、のサイクルを繰り返し、多数個の製品を製造する。
【0052】
図2は、本工程で用いられる射出成形機10の一例を示す概略図である。
【0053】
図2を参照すれば、原料である本発明のα−ヒドロキシ酸重合体組成物は、原料供給装置20から投入され、シリンダー30で溶融される。型締め装置40により金型50が型締めされる。溶融されたα−ヒドロキシ酸重合体組成物は、射出動力部60から前進するスクリューにより金型50内に注入される。金型50内でα−ヒドロキシ酸重合体組成物が冷却され、その後、金型50が開かれ、成形品は取り出され、成形品取り出し部70より成形品を取り出す。製品を取り出した後、金型50を閉じて、再度シリンダー30から溶融樹脂を金型50に注入するという一連の作業を繰り返し行い、多数個の成形品を得る。
【0054】
射出成形法の成形条件の中で重要なものは、射出成形機のシリンダー温度、射出成形機の金型温度、および金型における射出された樹脂の冷却時間である。
【0055】
例えば、日精樹脂工業株式会社製20t射出成形機NS20を用いて射出成形を行った場合、金型温度が45℃、シリンダー温度が120℃、冷却時間が7〜8秒で成形できる。また、金型温度が45℃でシリンダー温度が140℃の場合、冷却時間が好ましくは10〜20秒で成形することができ、シリンダー温度が160℃の場合では、冷却時間が好ましくは40秒程度で成形できる。すなわち、シリンダー温度が好ましくは106〜160℃の範囲で、冷却時間を好ましくは1分以下に抑えることができ、成形サイクルの時間を短縮することができる。
【0056】
本発明のα−ヒドロキシ酸重合体組成物を用いた成形品において、使用中の変形を抑えるべき製品の成形品を製造する場合、成形品の若干のもろさや、樹脂流れ不良による形状のばらつきを無視して、溶融が不完全で自己結晶核の残る状態、すなわち融点に近い温度で射出成形に必要な樹脂の流れが確保できる温度までシリンダー温度を下げて、成形することができる。このような場合、好ましい成形条件は、シリンダー温度が106℃〜120℃、金型温度が40〜50℃、冷却時間は5〜20秒である。
【0057】
一方、例えば、バネのように、大きな変形が要求される製品の成形品の場合は、均一に溶融した樹脂を射出させたほうが好ましい。このような場合、好ましい成形条件は、シリンダー温度が120〜140℃、金型温度が40〜50℃、冷却時間が10〜40秒である。添加したアミノ酸が結晶核剤として働くため、シリンダー温度や溶融後の時間によって生成する不安定な自己結晶核に頼ることなく、α−ヒドロキシ酸重合体組成物は安定的に成形されうる。
【0058】
また、冷却時間は、α−ヒドロキシ酸重合体組成物中のアミノ酸の含量を増やすことで、より短くすることができる。結晶核剤の含量が多いほど、組成物中のポリマーの結晶粒が小さくなり、組成物のもろさが改善されうるためである。このことから、アミノ酸の含量を変化させることによって、前述の好ましい温度条件を広くすることができ、かつ冷却時間をより短くすることができる。しかしながら、結晶核剤の量はできるだけ抑えることが好ましいため、バランスが取れた好ましい成形条件は、射出成形機のシリンダー温度は106〜140℃、射出成形機の金型温度は40〜50℃、射出成形機の金型における冷却時間は5〜40秒となる。
【0059】
本発明のα−ヒドロキシ酸重合体組成物は、生体に対する安全性が高く、かつ、所定の期間で生体内に吸収されるものであるため、縫合糸、癒着防止材、補綴材、メッシュ、パッチ、クリップ、ステープル、または補綴材などの生体内埋込用デバイスとして好適に用いられ、特に、最も安全性が要求される血管内への埋込用デバイスとして用いることができる。具体的には、カテーテルの導入によって動脈に形成された穿刺孔を閉鎖する血管壁閉鎖用のデバイスとして好適に用いられ、例えば、特開2006−167311号公報に記載のものが挙げられる。
【0060】
図3は、前記血管壁閉鎖用のデバイスを備える生体内組織閉鎖装置100を示す断面図である。生体内組織閉鎖装置100は血管等の生体管腔、生体内部器官、生体内部組織等の生体内組織膜に形成され、経皮的に貫通した傷穴(生体内組織膜を貫通する傷穴)を閉じる(閉鎖する)装置である。図3に示すように、生体内組織閉鎖装置100は長尺上の本体部110と、本体部110の先端部に着脱が自在なように装着(保持)され、生体内組織膜を貫通する傷穴を閉じる生体内組織閉鎖具であるクリップ120と、クリップ120を牽引する牽引手段である糸130を備えている。
【0061】
図4は前記クリップ120を示す斜視図であり、本発明のα−ヒドロキシ酸重合体組成物は、このクリップ120の材料として好適に用いられる。
【実施例】
【0062】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、これらの実施例は何ら本発明を制限するものではない。
【0063】
(製造例1〜7)
〈アミノ酸の微粉末の作製〉
下記表1に示すアミノ酸を用いて、0.1質量%のアミノ酸水溶液を調製し、これを液体窒素中に滴下して、急速に凍結させた後、凍結乾燥することで、下記表1に示すような粒径であるアミノ酸の微粉末をそれぞれ得た。ただし、水に溶解し難いL−p−チロシンやL−フェニルアラニンの場合は、沸騰水に溶解させ、同様に処理して微粉末とした。得られたアミノ酸の粒径は、2−プロパノールを分散媒とし、レーザ回折散乱法粒度分布測定装置 LS230(ベックマン・コールター社製)により測定した。
【0064】
【表1】

【0065】
〈アミノ酸添加による結晶化速度への影響〉
色素として1000ppmのD&C Violet No2を含む、ポリ(p−ジオキサノン)の破砕ペレット(インヘレント粘度:2.4dL/g)、および色素を含まないポリ(p−ジオキサノン)の破砕ペレット(インヘレント粘度:2.3dL/g)をそれぞれヘキサフルオロイソプロパノールに溶解させ、ポリマー濃度が5g/dLである溶液を調製した。また、ポリL乳酸の破砕ペレット(インヘレント粘度:1.9dl/g)をクロロホルムに溶解させ、ポリマー濃度が5g/dLである溶液を調製した。色素を含むポリ(p−ジオキサノン)の溶液およびポリL乳酸溶液に対して、上記で作製した製造例1〜7のアミノ酸微粉末を、ポリマーに対して1質量%となるようにそれぞれ添加した。色素を含まないポリ(p−ジオキサノン)の溶液には、前記製造例1のL−p−チロシン微粉末をポリマーに対して1質量%となるように添加した。超音波をかけて分散させた後、ガラス上にキャストし、溶媒を揮発させた。その後、真空乾燥機を用い、ロータリーポンプで減圧しながら、常温で3時間乾燥させ、α−ヒドロキシ酸重合体組成物の試験片を作製した(実施例1〜15)。同様にアミノ酸を含まないポリマー溶液もキャストして試験片とした(比較例1)。18mm四方のカバーガラスに試験片をはさみ、結晶化速度測定器MK−701(コタキ商事株式会社製)で結晶化速度を計測した。この際の温度条件は、ポリ(p−ジオキサノン)では樹脂溶融温度は150℃で結晶化温度は45℃、また、ポリL乳酸では樹脂溶融温度は190℃で結晶化温度は100℃であった。結晶化速度は、結晶化が充分進んだ状態の脱偏光強度の2分の1の脱偏光強度を示すのに必要な時間(=半結晶化時間)とした。結果を下記表2に示す。
【0066】
【表2】

【0067】
各種アミノ酸を添加した実施例1〜15の本発明のα−ヒドロキシ酸重合体組成物は、アミノ酸を添加していない比較例1〜2のポリマーと比較して半結晶化時間が大幅に短い、すなわち、冷却後固化しやすいことがわかった。また、実施例1および実施例8の結果から、色素の有無は結晶化速度には影響しないことがわかった。
【0068】
(実施例16)
(アミノ酸濃度依存性)
色素として1000ppmのD&C Violet No2を含み、ポリ(p−ジオキサノン)の破砕ペレット(インヘレント粘度2.3dL/g)のヘキサフルオロイソプロパノール溶液(濃度5g/dL)に対して、製造例1、2、および6で作製したL−p−チロシン、L−ロイシン、およびL−フェニルアラニン微粉末を、ポリマーの質量に対する含量を変化させて添加し、前記「アミノ酸添加による結晶化速度への影響」の方法と同様にして試験片を作製した。前記「アミノ酸添加による結晶化速度への影響」の方法と同様にして半結晶化時間を測定し、各アミノ酸の濃度に対する半結晶化時間を測定した。結果を図5に示す。
【0069】
図5からわかるように、L−p−チロシン、L−ロイシン、およびL−フェニルアラニンは、0.01質量%以上の含量でα−ヒドロキシ酸重合体組成物の結晶化速度を速めることが明らかとなり、特にL−p−チロシンを添加した場合、その効果が大きいことがわかった。
【0070】
(実施例17)
L−p−チロシンを含む本発明のα−ヒドロキシ酸重合体組成物の成形性を、以下の方法で評価した。
【0071】
(成形用α−ヒドロキシ酸重合体組成物の作製)
色素として1000ppmのD&C Violet No2を含み、ポリ(p−ジオキサノン)粉砕品(インヘレント粘度2.2〜2.4dL/g)と、製造例1で作製したL−p−チロシン微粉末0.2gをドライブレンドした後、バンバリーミキサー(東洋精機株式会社製ラボプラストミル75C100にバンバリーミキサーB250を装着したもの)で120℃、約20分間溶融混練した。回収した樹脂を120℃でプレスし、厚さ約0.5mmのシート状にした後、シートを2mm×6mmの大きさに裁断し、80℃のオーブンで1晩以上乾燥させ、成形用α−ヒドロキシ酸重合体組成物を得た。作製した成形用α−ヒドロキシ酸重合体組成物の粘度は、2.1〜2.4dL/gの範囲であった。また、前記「アミノ酸添加による結晶化速度への影響」と同様の方法で半結晶化時間を計測すると、0.4分であった。
【0072】
(射出成形)
20t射出成形機(日精樹脂工業株式会社製、スクリュー径19mm、最大射出容量18ml/ショット、最大射出圧力1990kg/cm、最大射出速度36cm/秒、最大型締力20t)を用いて、上記で作製した成形用α−ヒドロキシ酸重合体組成物の成形を行った。成形品の形状は、図3に示すパンタグラフ状のものであり、この評価用成形物の容積は0.05mlであった。成形機の射出条件は、シリンダー温度が120℃または140℃、金型温度が45℃であり、所望の形状で安定して取り出せる冷却時間を求めた。
【0073】
また、図6に示す評価用成形品に対して、上部から約15Nの力を加え変形させた後、図6の黒塗り矢印部を上から観察し割れや線が入ったものを不良品とし、この不良品が出る割合を求め、成形不良率とした。結果を下記表3に示す。
【0074】
(比較例3)
L−p−チロシンを添加しなかったこと以外は、実施例17と同様に、成形用α−ヒドロキシ酸重合体組成物の作製および射出成形を行った。結果を下記表3に示す。
【0075】
【表3】

【0076】
表3から明らかなように、L−p−チロシンを添加した本発明のα−ヒドロキシ酸重合体組成物から形成された成形品の冷却時間は、L−p−チロシンを添加していない比較例3と比べて短縮された。また、本発明のα−ヒドロキシ酸重合体組成物である実施例17の成形不良率も、比較例3と比べて改善されることがわかった。さらに、表には記載していないが、実施例17のα−ヒドロキシ酸重合体組成物を用いたシリンダー温度が160℃での成形の検討も行ったが、冷却時間は40秒であり、160℃においても、従来と比べて冷却時間が短くできることがわかった。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本発明のα−ヒドロキシ酸重合体組成物を射出成形する場合の工程を示す図である。
【図2】本発明のα−ヒドロキシ酸重合体組成物の成形工程で用いられる射出成形機の一例を示す概略図である。
【図3】生体内組織閉鎖装置を示す断面図である。
【図4】図3に示す生体内組織閉鎖装置の生体内組織閉鎖具を示す斜視図である。
【図5】本発明のα−ヒドロキシ酸重合体組成物中のアミノ酸の含量と半結晶化時間との関係を示すグラフである。
【図6】本発明のα−ヒドロキシ酸重合体組成物の成形性を評価するための成形品の断面図である。
【符号の説明】
【0078】
10 射出成形機、
20 原料供給装置、
30 シリンダー、
40 型締め装置、
50 金型、
60 射出動力部、
70 成形品取り出し部、
100 生体内組織閉鎖装置、
110 本体部、
120 クリップ(生体内組織閉鎖具)、
125 クリップ本体、
130 糸。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
α−ヒドロキシ酸重合体と、
アミノ酸と、
を含むα−ヒドロキシ酸重合体組成物。
【請求項2】
前記アミノ酸の含量が、前記α−ヒドロキシ酸重合体組成物100質量%に対して、0.01〜10質量%である、請求項1に記載のα−ヒドロキシ酸重合体組成物。
【請求項3】
前記アミノ酸がチロシンである、請求項1または2に記載のα−ヒドロキシ酸重合体組成物。
【請求項4】
前記チロシンがp−チロシンである、請求項3に記載のα−ヒドロキシ酸重合体組成物。
【請求項5】
前記チロシンの含量が、前記α−ヒドロキシ酸重合体組成物100質量%に対して、0.01〜2質量%である、請求項3または4に記載のα−ヒドロキシ酸重合体組成物。
【請求項6】
前記α−ヒドロキシ酸重合体が、ポリ(p−ジオキサノン)である、請求項1〜5のいずれか1項に記載のα−ヒドロキシ酸重合体組成物。
【請求項7】
前記α−ヒドロキシ酸重合体がポリ乳酸である、請求項1〜5のいずれか1項に記載のα−ヒドロキシ酸重合体組成物。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載のα−ヒドロキシ酸重合体組成物を用いた、生体内埋込用デバイス。
【請求項9】
α−ヒドロキシ酸重合体とアミノ酸とを混合してα−ヒドロキシ酸重合体組成物を製造する段階と、
前記α−ヒドロキシ酸重合体組成物を成形する段階と、
を含む、成形品の製造方法。
【請求項10】
前記α−ヒドロキシ酸重合体組成物を製造する段階は、前記α−ヒドロキシ酸重合体と前記アミノ酸とを溶融混練して製造することを特徴とする、請求項9に記載の製造方法。
【請求項11】
前記α−ヒドロキシ酸重合体組成物を成形する段階は、射出成形機のシリンダー温度が120〜140℃、射出成形機の金型温度が40〜50℃、および射出成形機の金型における冷却時間が5〜40秒の条件で射出成形を行うことを特徴とする、請求項9または10に記載の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−138051(P2008−138051A)
【公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−324571(P2006−324571)
【出願日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【出願人】(000109543)テルモ株式会社 (2,232)
【Fターム(参考)】