説明

α−リポ酸(誘導体)を含有している安定な酸性水溶液、その製造方法並びにその使用

本発明は、α−リポ酸又はその誘導体の安定な酸性水溶液を記載する。使用されるリポ酸−成分の本来の溶解度を上回る水溶液中の含量は、その際、好ましくは、第一段階において水中のリポ酸−成分の原液を塩基を用いて準備し、ついで場合により希釈及び温度調節することによりこの原液を所望の濃度範囲及び温度範囲にし、最終的に溶液の所望のpH−値を酸の添加により調節することによる製造方法によって達成される。とりわけこのようにして得られた溶液は、その安定性に基づき、薬剤学的、化粧学的、食餌療法学的又は工業的用途のための使用に、例えば光化学的な影響を低減することに卓越して適している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願の対象は、α−リポ酸(−誘導体)を含有している安定な酸性水溶液、その製造方法並びにその使用である。
【0002】
α−リポ酸(チオクト酸、1,2−ジチオラン−3−ペンタン酸)は、約50年来、微生物における増殖因子として公知であり、しかしα−リポ酸は、R−(+)−鏡像体として僅かな濃度で高等な植物及び動物中にも存在する。α−リポ酸は、親水性及び親油性の媒体中で、α−ケトカルボン酸(例えば焦性ブドウ酸、α−ケトグルタル酸)の酸化的脱カルボキシル化の補酵素として、生理学的に作用する。そのうえ、α−リポ酸は、特定のアミノ酸の分解の際にも補因子として関与している。おまけに、α−リポ酸は、ビタミンC、ビタミンE、グルタチオン及び補酵素Q10の再生に寄与する。α−リポ酸及びこれに付属のレドックスパートナー(Redoxpartner)であるジヒドロリポ酸はしかしまた、強い抗酸化性及び時々酸化促進(prooxidative)性も有し;しばしば、α−リポ酸は故に“万能な酸化防止剤”と呼ばれる。
【0003】
ラセミのα−リポ酸は、肝臓疾患及びニューロパシー(例えば糖尿病性多発性ニューロパシー)の処置のために認可されており;HIV−1−ウイルスの複製の有効な阻害剤としてのそれらの使用が議論されていた(Klin. Wochenschr. 1991, 69(15), 722-724参照)。α−リポ酸のR−鏡像体は、ドイツ連邦共和国(2000年12月以来)及びUSA(2001年5月以来)において臨床の第II相にある。薬剤学的な作用物質としてか又は食品添加物として、ラセミのα−リポ酸は、純粋な固体として、他の成分との混合物で、固体のガレヌス製剤において、並びにアンプル又はカプセルにおいてだけでなく、しかしまた輸液においても使用される。とりわけ、相応する臨床療法の初期において、好ましくはα−リポ酸の注射溶液が使用される。
【0004】
ラセミの又は鏡像体純粋なα−リポ酸の著しい欠点は、光及び温度に対するその不安定性並びに一般的に重合されうる傾向である。この理由は、分子の親油性部分中の張力のある(gespannten)5員環の特徴的なジスルフィド結合が極端に容易に開裂されうることにある。この開裂は、二量体、オリゴマー及びポリマーのリポ酸−誘導体をまねくジスルフィド橋の分子間形成を引き起こす(ドイツ連邦共和国特許(DE-PS)第16 17 740号明細書)。これは、光又は温度の影響下で、しかしまた適している求核試薬の添加によっても行われうる(J. Org. Chem. 1969, 34, 3131)。酸化による分解も文献から公知である(J. Org. Chem. 1975, 40, 58-62)。重合のしやすさは、α−リポ酸の純粋な鏡像体の場合に、ラセミ化合物の場合よりもさらに強く際立っている。さらにまた、α−リポ酸の僅かな酸性度及び高い親油性により、水への溶解度は、中性の、生理学的な又は酸性のpH−値で極めて僅かである(第1表):
【0005】
【表1】

【0006】
中性の、生理学的な又は酸性のpH−値での水中の、この固有の溶解度により制限された濃度及びα−リポ酸中の絶対含量は、それゆえに薬剤学的、食餌療法学的及び化粧学的な適用に必要な有効量をはるかに下回る。
【0007】
故に、薬剤工学において、通例、α−リポ酸の塩が使用される、それというのも、α−リポ酸の溶解度は、有機の弱酸よりも、アルカリ性で極めてはるかに高いからである。しかしながら、多様な塩形成剤を有するα−リポ酸のアルカリ性水溶液は、自発的に及び/又は頻繁に混濁又は沈殿する傾向を著しく示す。調節的な見地から、貯蔵の過程で混濁又は沈殿する傾向を有する注射溶液は、“分解している”もしくは“分解された”とみなされるので、これらの注射溶液はもはや、薬剤学的な適用に供給されてはならない。
【0008】
また、α−リポ酸と相応する塩形成剤との反応により製造された多様な注射溶液は、薬剤学的な適用において多数の合併症及び不相容性、例えば精神植物性ストレス(psychovegetativem Stress)、熱感、呼吸困難又は頭痛を伴う発作的な(anfallsweisen)皮膚発赤をまねく。例えば、相応するリポ酸−塩中のエチレンジアミン−含分の増大がより劣悪な相容性を引き起こすことは公知である。
【0009】
おまけに、技術水準から公知のリポ酸−水溶液の生理学的な、中性の又は弱アルカリ性の特徴は、その適用可能性を制限する。EP 318 891 B1により製造されるトロメタモル(Trometamol)とのリポ酸−塩の水溶液は、7.6〜8.8の塩基性のpH−値を示す。この特許には、フランス共和国及びスペイン国の特許が引用されており、これらの特許によれば、1%水溶液は、α−リポ酸とアミノ酸との等モルの反応により製造され、それによりこれらの溶液に中性のpH−値がもたらされる。ドイツ連邦共和国特許出願公開(DE-OS)第10 47 991号及び同第10 56 784号明細書からは、生理学的な又は弱アルカリ性のpH−値を有するリポ酸−塩の注射可能な溶液が公知である。Pharmazie 1988, 41, 98において、6.64〜8.35のpH−値を有する市販のリポ酸−輸液(例えばHepasteril(R) B compositum forte、Sterofundin(R) CH compositum、Tutofusin(R) LC forte、Thioctacid(R))が安定性試験に受けていた。
【0010】
2.5〜4の酸性のpHを有する飲料中の食品添加物として、例えば生理学的に有効な濃度でのα−リポ酸の使用は、これまで不可能であった。
【0011】
本発明の課題は、それゆえ、リポ酸−成分を生理学的に有効な濃度で含有し、並びに一般的に良好な相容性及び幅広い適用可能性を保証する、α−リポ酸又はその誘導体を含有している安定な酸性水溶液を提供することであった。
【0012】
この課題は、リポ酸−成分を、溶液の全質量に対して、0.001〜30質量%の含分で含有しかつ0.0〜6.5のpH−値を有する相応する溶液で解決される。
【0013】
意外なことに、本発明による水溶液が、従来のα−リポ酸の水への溶解度(第1表参照)により見込まれるであろうよりも、著しく高いリポ酸含量を有することができることが見出された。それゆえ、同じように、特許の保護が請求された溶液の連続した貯蔵の場合にも、好ましくは15〜40℃の温度並びに2.5〜4.0のpH−範囲で少なくとも1年の期間に亘り、混濁することもなく固体が沈殿することもないことは、想定することができなかった。本発明による溶液は、むしろ全貯蔵期間に亘って澄明なままであり、かつどの沈殿もなく、それにより、さらなる利点が、ガレヌス製剤もしくは薬剤学的、食餌療法学的又は化粧学的な用途の分野での可能な適用の万能性に関連してもたらされる。
【0014】
好ましいリポ酸−成分として、本発明による水溶液のためには、ラセミの α−リポ酸、鏡像体純粋なR−(+)−又はS−(−)−α−リポ酸又はそれからなる任意の混合物、同じように、例えばラセミのジヒドロリポ酸(6,8−ジメルカプトオクタン酸)、鏡像体純粋なR−(−)−又はS−(+)−ジヒドロリポ酸又はそれからなる任意の混合物が適している。さらに、溶液を製造する際に、α−リポ酸又はジヒドロリポ酸それ自体もしくは完全にか又は部分的にその塩の形で、例えばクレアチン−、ナトリウム−、カリウム−、アンモニウム−又はオルニチン−リポ酸塩が使用されることができることが意図されている。ラセミのα−リポ酸、鏡像体純粋な又は鏡像体豊富化したR−(+)−又はS−(−)−α−リポ酸、ラセミのジヒドロリポ酸、鏡像体純粋な又は鏡像体豊富化したR−(−)−又はS−(+)−ジヒドロリポ酸並びにその塩又は混合物の製造は、公知方法で行われることができる。
【0015】
本発明に本質的な幅広いリポ酸−含量の範囲から、その都度本発明による水溶液の全質量に対して0.01〜10質量%、特に好ましくは0.2〜5質量%である含分が好ましい。本明細書に記載された全ての質量含分は、その際、ラセミの又は光学的に純粋なα−リポ酸に基づいている。このことは、リポ酸−誘導体又は塩を使用する際に、計量供給のその都度記載された量が、遊離リポ酸に相当する量に、ひいては変化される分子量に適合されなければならないことを意味する。分解又は重合によるα−リポ酸の損失は、その際、本発明の範囲内で、溶液のpH−値が、同様に本発明に本質的な範囲内、これから2.0〜5.5、特に2.5〜4.0の値が好ましいとみなされうる範囲内で変動する場合になされることはない。
【0016】
最終的に、本発明による溶液が、特定の場合に、場合により別の常用の薬剤学的助剤及び/又は製剤助剤、例えばエタノール、液状ポリエチレングリコール(PEG)、特にタイプ200−600、プロピレングリコール、ブチレングリコール、テトラグリコール、ベンジルアルコール、ソルビトール、マンニトール又はグリセリンを含有することも意図されている。
【0017】
ことによると必要な本発明による溶液の滅菌は、例えば過熱された水蒸気を用いて、原則的に同様に可能である。例えば、飲料容器のアンプルへの詰めかえ前に、本発明による溶液は、必要に応じて、例えばブルーバンド−又はブラックバンドフィルターを通してろ過されてもよい。
【0018】
溶液自体及びその変型に加えて、本発明は、その製造方法の特許の保護も請求し、前記方法の場合に、
(a)まず最初に、塩基を用いて5.5〜14.0のpH−値を有するリポ酸−成分の水性原液を準備し、ついで
(b)場合により希釈することにより段階(a)から得られた原液中のリポ酸−成分の含量を0.001〜30質量%に調節し、及び/又は温度調節することにより温度を−5〜80℃の値にし、最終的に
(c)段階(b)からの溶液のpH−値を、酸を用いて0.0〜6.5の値に調節する。
【0019】
原液は、その際、段階(a)において、α−リポ酸又は適している誘導体並びに同様に適している塩基を必要な量の水に添加することにより製造される。個々の成分の添加の順序は、その際、任意に変えることができる。しかしながら、添加は、全ての可能な段階(a)、(b)及び(c)において、−5〜80℃、好ましくは0〜50℃、特に好ましくは4〜30℃の温度で行われるべきである。
【0020】
本発明による手順の個々の処理工程の間に、それぞれの溶液は、その際、記載された幅広い温度限界内で任意に温度調節されることができる。
【0021】
α−リポ酸又はその誘導体の原液を製造するために、特に、アルカリ金属(例えばナトリウム又はカリウム)又はアルカリ土類金属(例えばカルシウム又はマグネシウム)の中からのカチオンの成分を含有するブレーンステッド塩基及び/又はルイス塩基が適している。アニオンとして、とりわけ水酸化物、チオール酸塩(Thiolate)、酢酸塩、炭酸塩及び炭酸水素塩が適している。しかしながらまた、簡単に、他の塩基が用いられてもよく、その際、本発明によれば、そのカチオン成分は、特に鉄、銅、亜鉛、パラジウム、バナジウム及びセレンの中から由来すべきである。また、有機カチオン及びここでは好ましくは開鎖状又は環状のアンモニウム化合物、例えばベンジルアンモニウム、ジイソプロピルアンモニウム、トリエチルアンモニウム又はシクロヘキシルアンモニウム、又は場合により金属の中心原子、例えば鉄(III)、クロム(III)又はコバルト(II)及び/又は中性、カチオン性又はアニオン性のリガンド、例えば水、アンモニア、カルボニル、シアノ又はニトロソを有する錯カチオン、又はオキソカチオン、例えばオキソバナジウム(V)(VO3+)又はオキソバナジウム(IV)(VO2+))を有する塩基も、本発明による水溶液に最も好適である。
【0022】
本発明による水溶液の製造のためには、原液をリポ酸−成分及び相応する塩基の等モルの含分により製造することは一般的に必要ではない。むしろ、非対称な化学量論を有する原液も、澄明な外観及び相容性を有する本発明による安定な酸性水溶液をもたらすことが示されている。このための決定的な基準は、すなわち、リポ酸−成分、塩基及び酸の間の化学量論ではなくて、むしろ段階(a)における澄明な原液の調節であることは明らかである。本発明によれば、例えば水1.9 l中の50%水性カセイソーダ液64g(0.8mol)を有する(±)−ジヒドロリポ酸208g(1.0mol)を含有している最初の溶液が、酸添加により2.0〜6.5のpH−値にされることができる澄明な溶液をもたらす。この溶液の澄明さの証明は、外観によりもたらされるが、しかしまた常用で当業者に周知の混濁測定により標準溶液に比較して行われてもよい。
【0023】
一般的に、塩基−成分は段階(a)において0.1〜5.0モル当量、好ましくは0.3〜3.0モル当量、特に好ましくは0.6〜1.5モル当量の量で、その都度α−リポ酸に対して、使用されることができる。
【0024】
全体として、段階(a)の最後でのpH−値が6.0〜11.0、特に好ましくは6.5〜10.5であることは、同様に好ましいとみなされうる。
【0025】
本発明の好ましい一実施態様において、α−リポ酸、誘導体又は適している前駆物質の相応する原液は段階8a)において濃縮された形で製造され、段階(c)において酸性化する前に、段階(b)において、所望の濃度範囲に希釈され、これは好ましくは水で行われる。
【0026】
酸として、本発明の範囲内で、段階(c)において特に生理学的に相容性の酸、例えば有機又は無機のブレーンステッド酸、例えば塩酸、酢酸、アスコルビン酸及びグルタミン酸、同じように例えば有機又は無機のルイス酸が使用されることができ、これらの中から、とりわけ二酸化炭素、Ca2+及びFe2+が特に適している。しかしまた、錯体の酸、特にヘキサアコアルミニウム−(III)[Al(HO)3+]並びに重合酸が適しており、その中ではポリリン酸(PPA)、イソポリ酸、例えばヘプタモリブデン酸(HMo24)又はヘテロポリ酸、例えばドデカタングストリン酸(H[PW1240])が特に好ましい。最終的に、これに関連して、個々の酸の形の任意の混合物を互いに、しかしまた個々の酸の形の間で考慮することも可能である。酸の形又はそれからなる混合物は好ましくは、0.1〜5.0モル当量、好ましくは0.2〜4.0モル当量、特に好ましくは0.9〜2.0モル当量の量で、その都度α−リポ酸に対して使用されることができる。
【0027】
最終的に、本発明は、さらにまた、薬剤学的、化粧学的又は食餌療法学的な用途に対して、特に補充療法又は組合せ療法の範囲において又はしかし輸液としての本発明による溶液の使用を考慮する。
【0028】
これに関連して、殊に、2.0〜5.5、好ましくは2.5〜4.0、特に好ましくは3.0〜3.5のpH−値を有する飲料における本発明による安定な酸性水溶液の使用が特に好ましい。
【0029】
特別な使用変型において、本発明による溶液は、光化学的な障害を予防又は低減するために、及びここでは特に、太陽光線(Sonneneinstrahlung)、UVA線、UVB線、X線、γ線及びその混合物により引き起こされ、かつ特に好ましくはヒト又は動物の場合に生じる障害の場合に使用される。
【0030】
本発明による溶液は、繊維処理剤としても使用されることができ、その際、溶液を特に、それぞれの繊維材料に作用させ、引き続いて使用された溶剤を、特に好ましくは乾燥させるか又は遠心脱水機にかけることにより除去する。この適用のためには、特に木綿、亜麻、バージンウール(Schurwolle)、羊毛、天然絹糸、ケラチン、合成繊維又はそれからなる任意の混合物からなる繊維が考慮される。
【0031】
とりわけ、光化学的な障害と関連した、最後に挙げられた特別な使用目的は、特に有利で幅広い分野をカバーする、それというのも、伝統的な薬剤学的及び化粧学的な適用分野及び食糧工業及び食品工業の分野に加えて、例えば生物工学的な適用分野も、例えば培地への本発明による溶液の添加により、適しているからである。
【0032】
しかしまた、例えば潤滑油への添加剤の形でか又は繊維処理剤としてその特別な形で織物処理剤又は毛髪処理剤として純粋に工業的に適用することも可能であり、その際、特に、皮膚に直接塗布されるだけではなく、又は天然又は人工の毛髪を破壊性の放射線の影響から守る日焼け止めとして適している。
【0033】
全体として、本発明は、リポ酸−成分を含有している特許の保護が請求された安定な酸性水溶液を提供することにより、技術水準の納得できるさらなる発展を提供し、このことは特に、付加的に特許の保護が請求され、かつ相対的に単純な製造方法により肯定的に補充される。
【0034】
次の例は、本発明のこれらの利点を具体的に示す。
【実施例】
【0035】
例1:
α−リポ酸1.0gを、室温で水98.76g中の水酸化ナトリウム0.24gの溶液に添加し、その際、11.5のpH−値に調節された。溶液を、40℃に温度調節し、30min撹拌し、ついで15%水性HClを用いて5.9のpH−値に酸性化した。HPLCによる含量測定は、溶液中の1.07±0.1質量%のα−リポ酸−含量となった。
例2:
50%水性カセイソーダ液480gを、水198.52kg中のα−リポ酸1000gの懸濁液に室温で添加し、60min撹拌した。その際、11.65のpH−値に調節された。澄明な溶液を40℃に温度調節し、さらに30min撹拌した。引き続いて、半濃塩酸を用いて5.3のpH−値に調節した。HPLCによる含量測定は、溶液中の0.55±0.1質量%のα−リポ酸−含量となった。
例3:
α−リポ酸2.0kg及び固体水酸化ナトリウム0.47kgを、40℃で水97.53kgに添加した。生じた溶液を60min撹拌し、その際、12.0のpH−値に調節された。引き続いて、溶液を希塩酸を用いて6.2のpH−値に酸性化した。HPLCによる含量測定は、溶液中の2.14±0.15質量%のα−リポ酸−含量となった。
例4:
α−リポ酸5gを、室温で水9985g中の50%水酸化カリウム水溶液10gの溶液に添加した。澄明な溶液を30min撹拌し、その際、12.96のpH−値に調節された。溶液を4℃に冷却し、15%塩酸を用いて2.0のpH−値に酸性化した。含量測定は、溶液中の0.06±0.03質量%のα−リポ酸−含量となった。
例5:
R−(+)−α−リポ酸10gを、室温で水9980g中の水酸化カリウム10gの溶液に添加した。澄明な溶液を30min撹拌し、その際、13.0のpH−値に調節された。溶液を4℃に冷却し、15%塩酸を用いて2.1のpH−値に酸性化した。含量測定は、溶液中の0.11±0.04質量%のR−(+)−α−リポ酸−含量となった。
例6:
(±)−ジヒドロリポ酸208gを、水1.9L中の50%水性カセイソーダ液64gに添加した。澄明な溶液を室温で30min撹拌し、20℃に温度調節し、ついで10%塩酸を用いて20℃で3.0のpH−値に酸性化した。溶液は澄明なままであり;HPLCによる含量測定は、溶液中の0.90質量%のジヒドロリポ酸−含量となった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
α−リポ酸又はその誘導体を含有している安定な酸性水溶液において、
溶液が、リポ酸−成分を、溶液の全質量に対して0.001〜30質量%の含分で含有しており、かつ0.0〜6.5のpH−値を有していることを特徴とする、安定な酸性水溶液。
【請求項2】
リポ酸−成分として、ラセミのα−リポ酸、鏡像体純粋なR−(+)−又はS−(−)−α−リポ酸又はそれからなる任意の混合物を含有している、請求項1記載の溶液。
【請求項3】
リポ酸−成分として、ラセミのジヒドロリポ酸、鏡像体純粋なR−(−)−又はS−(+)−ジヒドロリポ酸又はそれからなる任意の混合物を含有している、請求項1又は2記載の溶液。
【請求項4】
リポ酸−成分が少なくとも部分的に、例えばクレアチン−、Na−、K−、NH−又はオルニチン−リポ酸塩のような塩の形で溶液を製造するために使用されている、請求項1から3までのいずれか1項記載の溶液。
【請求項5】
リポ酸−成分の含分が、溶液の全質量に対して、0.01〜10.0質量%、特に好ましくは0.2〜5.0質量%である、請求項1から4までのいずれか1項記載の溶液。
【請求項6】
2.0〜5.5、特に好ましくは2.5〜4.0のpH−値を有している、請求項1から5までのいずれか1項記載の溶液。
【請求項7】
薬剤学的助剤及び/又は製剤助剤、例えばエタノール、液状ポリエチレングリコール(PEG)、特にタイプ200〜600、プロピレングリコール、ブチレングリコール、テトラグリコール、ベンジルアルコール、ソルビトール、マンニトール又はグリセリンを含有している、請求項1から6までのいずれか1項記載の溶液。
【請求項8】
請求項1から7までのいずれか1項記載の溶液の製造方法において、
(a)まず最初に、塩基を用いて5.5〜14.0のpH−値を有しているリポ酸−成分の水性原液を準備し、ついで
(b)場合により、希釈することにより段階a)から得られた原液中のリポ酸−成分の含量を0.001〜30質量%に調節し、及び/又は温度調節することにより温度を−5〜80℃の値にし、最終的に
(c)段階(b)からの溶液のpH−値を、酸を用いて0.0〜6.5の値に調節する
ことを特徴とする、溶液の製造方法。
【請求項9】
段階(a)において塩基として、ブレーンステッド塩基及び/又はルイス塩基を使用する、請求項8記載の方法。
【請求項10】
塩基が、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の中からのカチオンを含有する、請求項8又は9記載の方法。
【請求項11】
塩基が、鉄、銅、亜鉛、パラジウム、バナジウム及びセレンの中からのカチオンを含有する、請求項8から10までのいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
塩基が、有機のカチオン、特に開鎖状又は環状のアンモニウム化合物、例えばベンジルアンモニウム、ジイソプロピルアンモニウム、トリエチルアンモニウム、シクロヘキシルアンモニウム、又は場合により金属の中心原子、例えば鉄(III)、クロム(III)又はコバルト(II)及び/又は中性、カチオン性又はアニオン性のリガンド、例えば水、アンモニア、カルボニル、シアノ又はニトロソを有する錯カチオン又はオキソカチオン、例えばオキソバナジウム(V)(VO)又はオキソバナジウム(IV)(VO)又はそれからなる混合物を含有する、請求項8から11までのいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
塩基を、段階(a)において、その都度リポ酸−成分に対して、0.1〜5.0モル当量、好ましくは0.3〜3.0モル当量、特に好ましくは0.6〜1.5モル当量の量で使用する、請求項8から12までのいずれか1項記載の方法。
【請求項14】
段階(a)における温度が、−5〜80℃、好ましくは0〜50℃、特に好ましくは4〜30℃である、請求項8から13までのいずれか1項記載の方法。
【請求項15】
段階(a)の最後での溶液のpH−値が6.0〜11.0、特に好ましくは6.5〜10.5である、請求項8から14までのいずれか1項記載の方法。
【請求項16】
段階(a)からの原液を、段階(b)において水で希釈する、請求項8から15までのいずれか1項記載の方法。
【請求項17】
段階(a)からの原液を段階(b)において希釈する前に、又は段階(b)において場合により希釈された原液を、−5〜80℃、好ましくは0〜50℃、特に好ましくは4〜30℃の範囲内の温度にする、請求項8から16までのいずれか1項記載の方法。
【請求項18】
段階(c)において、有機又は無機のブレーンステッド酸、特に酢酸、塩酸、アスコルビン酸又はグルタミン酸を使用する、請求項8から17までのいずれか1項記載の方法。
【請求項19】
段階(c)において、有機又は無機のルイス酸、特に二酸化炭素、Ca2+又はFe2+を使用する、請求項8から17までのいずれか1項記載の方法。
【請求項20】
段階(c)において、錯体の酸、特にヘキサアコアルミニウム−(III)[(Al(HO)3+]を使用する、請求項8から17までのいずれか1項記載の方法。
【請求項21】
段階(c)において、重合酸、特にポリリン酸(PPA)、イソポリ酸、例えばヘプタモリブデン酸(HMo24)又はヘテロポリ酸、例えばドデカタングストリン酸(H[PW1240])を使用する、請求項8から17までのいずれか1項記載の方法。
【請求項22】
酸を、段階(c)において、その都度リポ酸−成分に対して、0.1〜5.0モル当量、好ましくは0.2〜4.0モル当量、特に好ましくは0.9〜2.0モル当量の量で使用する、請求項8から21までのいずれか1項記載の方法。
【請求項23】
薬剤学的、化粧学的又は食餌療法学的な用途のための、請求項1から8までのいずれか1項記載の溶液の使用。
【請求項24】
補充療法又は組合せ療法の範囲における又は輸液としての、請求項23記載の使用。
【請求項25】
殊に、2.0〜5.5、好ましくは2.5〜4.0、特に好ましくは3.0〜3.5のpH−値を有している飲料における、請求項23又は24記載の使用。
【請求項26】
特に好ましくはヒト又は動物の場合の、光化学的な障害、殊に太陽光線及び/又はUVA線及び/又はUVB線及び/又はX線及び/又はγ線により引き起こされる障害を予防するか又は低減するための、請求項1から8までのいずれか1項記載の溶液の使用。
【請求項27】
繊維処理剤の形での、請求項26記載の使用。
【請求項28】
繊維材料に溶液を作用させ、引き続いて溶剤を除去することにより、特に好ましくは乾燥させるか又は遠心脱水機にかけることによる、請求項27記載の使用。
【請求項29】
木綿、亜麻、バージンウール、羊毛、天然絹糸、ケラチン、合成繊維又はそれからなる混合物からなる繊維への、請求項27又は28記載の使用。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬剤学的又は食餌療法学的な使用のための、α−リポ酸又はその誘導体を含有している安定な酸性水溶液において、
溶液が、リポ酸−成分を、溶液の全質量に対して0.001〜30質量%の含分で含有しており、かつ0.0〜6.5のpH−値を有していることを特徴とする、安定な酸性水溶液。
【請求項2】
溶液が、リポ酸−成分として、ラセミのα−リポ酸、鏡像体純粋なR−(+)−又はS−(−)−α−リポ酸又はそれからなる任意の混合物を含有している、請求項1記載の溶液。
【請求項3】
溶液が、リポ酸−成分として、ラセミのジヒドロリポ酸、鏡像体純粋なR−(−)−又はS−(+)−ジヒドロリポ酸又はそれからなる任意の混合物を含有している、請求項1又は2記載の溶液。
【請求項4】
リポ酸−成分が少なくとも部分的に、例えばクレアチン−、Na−、K−、NH−又はオルニチン−リポ酸塩のような塩の形で溶液を製造するために使用されている、請求項1から3までのいずれか1項記載の溶液。
【請求項5】
リポ酸−成分の含分が、溶液の全質量に対して、0.01〜10.0質量%、特に好ましくは0.2〜5.0質量%である、請求項1から4までのいずれか1項記載の溶液。
【請求項6】
溶液が、2.0〜5.5、特に好ましくは2.5〜4.0のpH−値を有している、請求項1から5までのいずれか1項記載の溶液。
【請求項7】
溶液が、薬剤学的助剤及び/又は製剤助剤、例えばエタノール、液状ポリエチレングリコール(PEG)、特にタイプ200〜600、プロピレングリコール、ブチレングリコール、テトラグリコール、ベンジルアルコール、ソルビトール、マンニトール又はグリセリンを含有している、請求項1から6までのいずれか1項記載の溶液。
【請求項8】
α−リポ酸又はその誘導体を含有している安定な酸性水溶液の製造方法であって、溶液が、リポ酸−成分を、溶液の全質量に対して、0.001〜30質量%の含分で含有しており、かつ0.0〜6.5のpH−値を有している安定な酸性水溶液の製造方法において、
(a)まず最初に、塩基を用いて5.5〜14.0のpH−値を有しているリポ酸−成分の水性原液を準備し、ついで
(b)希釈することにより段階a)から得られた原液中のリポ酸−成分の含量を0.001〜30質量%に調節し、及び/又は温度調節することにより温度を−5〜80℃の値にし、最終的に
(c)段階(b)からの溶液のpH−値を、酸を用いて0.0〜6.5の値に調節する
ことを特徴とする、安定な酸性水溶液の製造方法。
【請求項9】
段階(a)において塩基として、ブレーンステッド塩基及び/又はルイス塩基を使用する、請求項8記載の方法。
【請求項10】
塩基が、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の中からのカチオンを含有する、請求項8又は9記載の方法。
【請求項11】
塩基が、鉄、銅、亜鉛、パラジウム、バナジウム及びセレンの中からのカチオンを含有する、請求項8から10までのいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
塩基が、有機のカチオン、特に開鎖状又は環状のアンモニウム化合物、例えばベンジルアンモニウム、ジイソプロピルアンモニウム、トリエチルアンモニウム、シクロヘキシルアンモニウム、又は場合により金属の中心原子、例えば鉄(III)、クロム(III)又はコバルト(II)及び/又は中性、カチオン性又はアニオン性のリガンド、例えば水、アンモニア、カルボニル、シアノ又はニトロソを有する錯カチオン又はオキソカチオン、例えばオキソバナジウム(V)(VO)又はオキソバナジウム(IV)(VO)又はそれからなる混合物を含有する、請求項8から11までのいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
塩基を、段階(a)において、その都度リポ酸−成分に対して、0.1〜5.0モル当量、好ましくは0.3〜3.0モル当量、特に好ましくは0.6〜1.5モル当量の量で使用する、請求項8から12までのいずれか1項記載の方法。
【請求項14】
段階(a)における温度が、−5〜80℃、好ましくは0〜50℃、特に好ましくは4〜30℃である、請求項8から13までのいずれか1項記載の方法。
【請求項15】
段階(a)の最後での溶液のpH−値が6.0〜11.0、特に好ましくは6.5〜10.5である、請求項8から14までのいずれか1項記載の方法。
【請求項16】
段階(a)からの原液を、段階(b)において水で希釈する、請求項8から15までのいずれか1項記載の方法。
【請求項17】
段階(a)からの原液を段階(b)において希釈する前に、又は段階(b)において場合により希釈された原液を、−5〜80℃、好ましくは0〜50℃及び特に好ましくは4〜30℃の範囲内の温度にする、請求項8から16までのいずれか1項記載の方法。
【請求項18】
段階(c)において、有機又は無機のブレーンステッド酸、特に酢酸、塩酸、アスコルビン酸又はグルタミン酸を使用する、請求項8から17までのいずれか1項記載の方法。
【請求項19】
段階(c)において、有機又は無機のルイス酸、特に二酸化炭素、Ca2+又はFe2+を使用する、請求項8から17までのいずれか1項記載の方法。
【請求項20】
段階(c)において、錯体の酸、特にヘキサアコアルミニウム−(III)[(Al(HO)3+]を使用する、請求項8から17までのいずれか1項記載の方法。
【請求項21】
段階(c)において、重合酸、特にポリリン酸(PPA)、イソポリ酸、例えばヘプタモリブデン酸(HMo24)又はヘテロポリ酸、例えばドデカタングストリン酸(H[PW1240])を使用する、請求項8から17までのいずれか1項記載の方法。
【請求項22】
酸を、段階(c)において、その都度リポ酸−成分に対して、0.1〜5.0モル当量、好ましくは0.2〜4.0モル当量、特に好ましくは0.9〜2.0モル当量の量で使用する、請求項8から21までのいずれか1項記載の方法。
【請求項23】
補充療法又は組合せ療法の範囲において又は輸液として使用するための、請求項1から7までのいずれか1項記載の溶液
【請求項24】
殊に、2.0〜5.5、好ましくは2.5〜4.0、特に好ましくは3.0〜3.5のpH−値を有している飲料において使用するための請求項1から7までのいずれか1項又は請求項23記載の溶液
【請求項25】
特に好ましくはヒト又は動物の場合の、光化学的な障害、殊に太陽光線及び/又はUVA線及び/又はUVB線及び/又はX線及び/又はγ線により引き起こされる障害を予防するか又は低減するための薬剤を製造するための、溶液がリポ酸−成分を、溶液の全質量に対して、0.001〜30質量%の含分で含有しており、かつ0.0〜6.5のpH−値を有しているα−リポ酸又はその誘導体を含有している安定な酸性水溶液の使用。
【請求項26】
繊維処理剤の形での、特に好ましくはヒト又は動物の場合の、光化学的な障害、殊に太陽光線及び/又はUVA線及び/又はUVB線及び/又はX線及び/又はγ線により引き起こされる障害を予防するか又は低減するための、溶液がリポ酸−成分を、溶液の全質量に対して、0.001〜30質量%の含分で含有しており、かつ0.0〜6.5のpH−値を有しているα−リポ酸又はその誘導体を含有している安定な酸性水溶液の使用。
【請求項27】
繊維材料に溶液を作用させ、引き続いて溶剤を除去することにより、特に好ましくは乾燥させるか又は遠心脱水機にかけることによる、請求項26記載の使用。
【請求項28】
木綿、亜麻、バージンウール、羊毛、天然絹糸、ケラチン、合成繊維又はそれからなる混合物からなる繊維への、請求項26又は27記載の使用。

【公表番号】特表2006−502245(P2006−502245A)
【公表日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−501541(P2005−501541)
【出願日】平成14年11月28日(2002.11.28)
【国際出願番号】PCT/EP2002/013446
【国際公開番号】WO2003/047567
【国際公開日】平成15年6月12日(2003.6.12)
【出願人】(501073862)デグサ アクチエンゲゼルシャフト (837)
【Fターム(参考)】