α−N−アセチルガラクトサミニダーゼおよびα−ガラクトシダーゼを使用する赤血球A、BおよびABの変換
【課題】本発明は、血液製剤中における血液型群A、B、およびABに反応性の細胞からA型抗原およびB型抗原の酵素的除去、それによって、これらを非Aおよび非B反応性細胞に変換することに関する。
【解決手段】本発明はさらに、血液型群A抗原および血液型群B抗原を除去するための免疫的に優勢なモノサッカリドを除去するためのすばらしい速度論的特性および赤血球の酵素的変換における高性能を有する特定のN−アセチルガラクトサミニダーゼおよびα−ガラクトシダーゼの使用に関する。
【解決手段】本発明はさらに、血液型群A抗原および血液型群B抗原を除去するための免疫的に優勢なモノサッカリドを除去するためのすばらしい速度論的特性および赤血球の酵素的変換における高性能を有する特定のN−アセチルガラクトサミニダーゼおよびα−ガラクトシダーゼの使用に関する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、血液産物中の血液型群A、B、およびAB反応性細胞からA型抗原およびB型抗原を酵素的に除去し、それによってこれらを非A反応性細胞および非B反応性細胞に変換することに関する。特に、本発明は、血液型群A抗原およびB抗原を特定する免疫優先的モノサッカリド(単糖)(すなわち、それぞれ、α1,3−D−ガラクトースおよびα1,3−D−N−アセチルガラクトサミン)の酵素的除去に関する。より詳細には、本発明は、血液型群A抗原およびB抗原の免疫優先的モノサッカリドの除去について優勢な動力学的特性ならびに赤血球の酵素的変換において改善された性能を有する、特有のα−N−アセチルガラクトサミニダーゼおよびα−ガラクトシダーゼの使用に関する。具体的には、好ましい特有のα−N−アセチルガラクトサミニダーゼおよびα−ガラクトシダーゼは、以下の特性を示す:(i)単一のモノサッカリド構造およびジサッカリド構造ならびにこれらのアグリコン誘導体に関する測定可能な活性に比べて、A型分枝鎖ポリサッカリド構造およびB型分枝鎖ポリサッカリド構造に対する、排他的な基質特異性、好ましい基質特異性または10%以上の基質特異性;(ii)血液型群オリゴサッカリド(オリゴ糖)との中性pHにおける最適な性能および細胞の酵素的変換における最適な性能;ならびに(iii)モノサッカリド基質およびオリゴサッカリド基質との好ましい動力学的定数(Km)。本発明はさらに、標準的血液バンクの血清学的型別および交差一致分析によって決定された、A型、B型およびAB型細胞のA抗原およびB抗原を完全に除去することにおける、これらの特有のα−N−アセチルガラクトサミニダーゼおよびα−ガラクトシダーゼの使用についての方法に関する。より詳細には、本発明は、以前に使用されたより有意に低い量の組換えグリコシダーゼ酵素タンパク質を使用し、そして全ての血液型群A赤血球および血液型群B赤血球の完全なセロコンバージョンを得る、細胞の変換方法に関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
本明細書中で使用される場合、用語「血液産物」は、血液(成熟赤血球(赤血球)および血小板)に由来する、全血および細胞性成分を含む。
【0003】
30を超える血液型(血液型群)(group)(または型(type))系が、存在し、これらのうち最も重要な1つは、ABO系である。この系は、抗原Aおよび/または抗原Bの存在または非存在に基づく。これらの抗原は、成熟赤血球および血小板の表面ならびに内皮細胞およびほとんどの上皮細胞の表面に見い出される。輸血に使用される主要な血液産物は、成熟赤血球であり、これは、ヘモグロビンを含む赤血球であり、この主な機能は、酸素の輸送である。A型の血液は、その成熟赤血球上に抗原Aを含む。同様に、B型の血液は、その成熟赤血球上に抗原Bを含む。AB型の血液は、両方の抗原を含み、O型の血液は、どちらの抗原も含まない。
【0004】
血液型群構造は、糖タンパク質および糖脂質であり、そしてかなりの研究が、A決定基(または抗原)およびB決定基(または抗原)をつくる特定の構造を同定するためになされてきた。ABH血液型群は、炭水化物鎖の末端でのモノサッカリドの性質および結合によって決定される。炭水化物鎖は、ペプチド骨格(糖タンパク質)または脂質(グリコスフィンゴリピド)骨格に結合され、これらは、細胞の細胞膜に結合される。A型特異性を決定する免疫優先的モノサッカリドは、末端のα1−3結合N−アセチルガラクトサミン(GalNAc)であるのに対して、B型特異性の対応するモノサッカリドは、α1−3結合ガラクトース(Gal)である。O型細胞は、オリゴサッカリド鎖の末端のこれらのモノサッカリドのいずれも欠き、これは、代わりとして、α1−2結合フコース(Fuc)残基で終結する。
【0005】
血液型群ABH炭水化物構造の非常に大きな多様性は、ABH免疫優先的サッカリドを保有するオリゴサッカリド鎖における構造のバリエーションに起因して見出される。表1は、男性において報告された構造であり、ヒト赤血球、または血液抽出物において見出される構造を列挙する。概説については、Clausen & Hakomori,Vox
Sang 56(1):1−20,1989を参照のこと。赤血球は、N−結合型糖タンパク質およびグリコスフィンゴリピド上にABH抗原を含むのに対して、一般的に、成熟赤血球の糖タンパク質(主に、グリコホリン)は、シアル酸によって終結するが、ABH抗原では終結しないと考えられている。1型鎖グリコスフィンゴリピドは、赤血球の内因性生成物ではなく、血漿から吸着されたものである。
【0006】
(表I:ヒト細胞の組織−血液型群ABH免疫反応性決定基1)
【0007】
【表1−1】
【0008】
【表1−2】
【0009】
【表1−3】
【0010】
1ClausenおよびHakomori,Vox Sang 56(1):1−20,1989を改変。記号:「クエスチョンマーク」は、現在まで報告されなかった潜在的な糖脂質構造を示す。
【0011】
血液型群AおよびBには、いくつかの亜型が存在する。血液型群Aは、最も頻繁に存在し、そして血液型Aとして3つの認識される主要な亜型が存在する。これらの亜型は、A1、A中間体(Aint)およびA2として公知である。これらの3つの亜型を区別する、定量的相違および定性的相違が存在する。定量的に、A1成熟赤血球は、Aint成熟赤血球より多くの抗原性A部位(すなわち、末端N−アセチルガラクトサミン残基)を有し、このAint成熟赤血球は、次いで、A2成熟赤血球より多くの抗原性A部位を有する。定性的には、A1成熟赤血球は、部分集団のグリコスフィンゴリピドに二重反復A構造を有するが、一方A2成熟赤血球は、類似する部分集団の糖脂質において内部A構造上のH構造を有する(Clausenら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA
82(4):1199−203,1985,Clausenら、J.Biol.Chem.261(3):1380−7,1986)。A1亜型と弱いA亜型との間のこれらの差異は、A抗原の形成を担う血液型型Aアイソザイム改変体の動力学的特性における差異に関すると考えられる(Clausenら、J.Biol.Chem.261(3):1388−92,1986)。B型亜型の差異は、定量的性質のみであると考えられる。
【0012】
A型血液は、抗原Bに対する抗体を含む。逆に、B型血液は、抗原Aに対する抗体を含む。AB型血液は、いずれの抗体も含まず、O型血液は、両方を含む。これらおよび他の炭水化物規定血液型群抗原に対する抗体は、関連する炭水化物構造を保有する微生物的生物に連続的に曝露されることによって惹起されると考えられる。抗A抗体または抗B抗体のいずれか(または両方)を含む個々の全血は、対応する不適合性抗原を含む血液の輸血を受容し得ない。個体が、不適合性基の血液の輸血を受容する場合、輸血患者の抗体は、輸血された不適合性基の赤血球を覆い、そして輸血赤血球を凝集または一緒に粘着させる。輸血反応および/または溶血(赤血球の破壊)は、これらから生じ得る。
【0013】
赤血球凝集、輸血反応および溶血を避けるために、輸血型は、輸血レシピエントの血液型に対して交差試験される。例えば、血液型Aレシピエントは、適合性抗原を含む、A型血液で安全に輸血される。O型血液は、A抗原もB抗原も含まないので、これは、任意の血液型を有する任意のレシピエント(すなわち、血液型(A、B、ABまたはO)を有するレシピエント)に輸血され得る。従って、O型血液は、「万能」であると考えられ、そして全ての輸血について使用され得る。それ故、大量のO型血液を維持することが血液バンクにとって望ましい。しかし、血液型Oのドナーは、不十分である。従って、大量の万能血液産物を維持するために、A型血液、B型血液およびAB型血液中の免疫優先性A抗原および免疫優先性B抗原を除去することが望ましくかつ有用である。
【0014】
O型血液の供給を増加させる試みにおいて、特定のA型血液、B型血液およびAB型血液をO型血液に変換するための方法が、開発されてきた。B型細胞のO型細胞への変換は、過去において達成された。しかし、より豊富なA型細胞の変換は、より少ない弱いA亜型細胞でのみ達成された。酵素変換万能O細胞の開発および使用に対する主要な障害は、過去において、強いA1細胞を酵素的に変換することの失敗していた。この障害は、まだ残っている。以下に詳細に示すように、先行技術で使用された酵素および方法は、不十分であり、非実用的であり、そして/または市販されるプロセスにおいて使用し、万能O型細胞を供給するには非常に費用がかかり過ぎる。
【0015】
(B細胞の変換:)
精製または組換えの、コーヒーマメ(Coffea canephora)α−ガラクトシダーゼを使用するB型血液の酵素的変換は、100〜200U/ml(米国特許第4,427,777号;Zhuら、Arch Biochem Biophys 1996;327(2):324−9;Kruskallら、Transfusion 2000;40(11):1290−8)を使用して達成される。コーヒーマメα−ガラクトシダーゼの比活性は、1分間に加水分解される1μモルの基質として定義される1単位(U)を用いて、p−ニトロフェニルα−D−Galを使用して、32U/mgであることが報告された(Zhuら、Arch Biochem Biophys 1996;327(2):324−9)。酵素的変換は、pH5.5で、80〜90%のヘマトクリットで約6mg/mlの酵素を使用して実施され、そして得られた変換O細胞は、輸血実験において通常に機能し、有意な有害臨床パラメーターの観察されなかった(Kruskallら、Transfusion 2000;40(11):1290−8)。以前の刊行物に加えてこのデータは、赤血球の酵素的変換が、可能であり、このような酵素群B変換O細胞(B ECO)が、輸血医学において一致した型の未処理細胞型として十分に機能し得ることをはっきりと示す。それにも関わらず、これらの研究において使用される酵素の量は、現在の最も有効な組換え発現技術を用いてさえも、主に経済的理由で、ECO細胞を非実用的にする。
【0016】
約200U/mgの比活性を有する組換えGlycine maxのα−ガラクトシダーゼを用いたB細胞の変換のための改善されたプロトコルの請求項は、16%ヘマトクリットにて5〜10単位/mlを用いて報告されている(米国特許第5,606,042号;同第5,633,130号;同第5,731,426号;同第6,184,017号)。このようにして用いられたGlycine maxのα−ガラクトシダーゼは、25μg/ml〜50μg/mlであった。これは、必要とされる酵素タンパク質量の顕著な低減(50倍〜200倍)を表す(Davisら,Biochemistry and Molecular Biology International,39(3):471−485,1996)。この低減は、Glycine maxのα−ガラクトシダーゼ(約6倍)のより高い比活性、ならびに変換および評価のために用いられる異なる方法に部分的に起因する。Kruskallら(Transfusion,40(11):1290−8,2000)の研究において用いられた200U/mlの酵素は、80%〜90%ヘマトクリットでの十分な単位(約220mlの充填細胞)変換となり、そして標準的血液銀行分類ならびにより高感度の交差適合分析によって徹底的に分析された。さらに、変換効率は、変換細胞の複数回の輸血を受けた患者における、生存率および誘導された免疫の分析によって評価された。酵素的変換を、米国特許第5,606,042号(および米国特許第5,633,130号;同第5,731,426号;同第6,184,017号)に記載されるとおりに、Glycine maxのα−ガラクトシダーゼを用いて、16%ヘマトクリットにて、ml規模で試験管において行い、そして変換効率を交差一致分析によって評価しなかった。16%ヘマトクリットでの細胞の変換は、10U/mlを必要とし、一方、8%での変換は、5U/mlを必要とした。このことは、増大したヘマトクリットでの変換が、より多くの酵素を必要とすることを示すが、より高い細胞濃度は試験されなかった。従って、Kruskallら(Transfusion 2000;40(11):1290−8)によって報告されるプロトコルと比較した、必要とされた酵素タンパク質量の低減部分は、変換に用いられる細胞の濃度(ヘマトクリット)に関連し、そしてこれは、5〜10倍よりも高いことをを表し得るが、直接比較は、実験なしでは不可能である。米国特許第5,606,042号(および米国特許第5,633,130号;同第5,731,426号;同第6,184,017号)は、それほど酸性ではないpH(好ましくはpH5.8)にてクエン酸Naおよびグリシンを用い、安定化のためにBSA(ウシ血清アルブミン)の形態のさらなるタンパク質を含む、変換緩衝液における改善をさらに提供する。興味深いことに、Glycine maxのα−ガラクトシダーゼのために開発された変換緩衝液は、コーヒーマメのα−ガラクトシダーゼに適用可能ではないことがわかった。B細胞の変換におけるいくつかの改善は、米国特許第5,606,042号(および米国特許第5,633,130号;同第5,731,426号;同第6,184,017号)によって提供され得るが、開示されたプロトコルを用いると、1mlの充填B型赤血球につき少なくとも0.5mgを超える酵素が必要とされることが明らかである。これよりも相当多量の酵素が、標準的な血液銀行分類プロトコルにおいて用いられる最も感度の高い分類手順によってO型細胞へと十分に変換された細胞を得るために必要とされるようである。さらに、このプロトコルは、さらなる外部タンパク質(BSAまたはヒト血清アルブミン)の導入ならびに細胞を酸性pHに暴露することを必要とする。
【0017】
これを実用的に適用可能な技術および商業的に適用可能な技術とするために、B細胞の変換におけるさらなる改善が必要とされることが上記から明らかである。必要な改善は、より効率的なα−ガラクトシダーゼ酵素を得ること含む。より効率的なα−ガラクトシダーゼ酵素は、変換が、中性pHにて、外部タンパク質を添加することなく、好適に生じることを可能にする。
【0018】
(A細胞の変換:)
LevyおよびAnimoff(J.Biol.Chem.255:1737−42,1980)は、精製されたClostridium perfringensのα−N−アセチルガラクトサミニダーゼがA細胞を変換する能力を試験し、そして抗原発現における低下を見出したが、相当の血液型A活性が残っていた。この酵素のさらなる研究は、αGalNAc p−ニトロフェニル基質を用いて43.92U/mgの比活性を有する、明らかに均質になるまでの精製をもたらした(Hsiehら,IUBMB Life,50(2):91−7,2000;PCT出願第WO 99/23210号)。この精製された酵素は、αGalNAc p−ニトロフェニル基質について中性の至適pHを有したが、オリゴサッカリドを用いたこの酵素の活性の研究は提示されなかった。ELISAアッセイにおいてこの精製された酵素を用いたA2エピトープのいくらかの分解が報告されているが、この酵素は、適切な血液分類を用いてA2細胞の酵素変換において評価されていない。
【0019】
Goldstein(Prog Clin Biol Res 165:139−57,1984;Transfus Med Rev 3(3):206−12,1989)は、ニワトリ肝臓のα−N−アセチルガラクトサミニダーゼを用いてA細胞を変換することに失敗した。米国特許第4,609,627号(「Enzymatic Conversion of Certain Sub−Type A and AB Erythrocytes」との発明の名称)は、AintおよびA2(A2B赤血球を含む)をH抗原型の赤血球へと変換するためのプロセス、ならびにA抗原を欠くB型赤血球の組成物(この組成物は、処置の前に、この赤血球の表面にA抗原およびB抗原の両方を含んでいた)に関する。Aint赤血球およびA2赤血球をH抗原型の赤血球へと変換するためのプロセス(これは、米国特許第4,609,627号に記載される)は、特定のサブタイプAの赤血球またはサブタイプABの赤血球を平衡化する工程、この平衡化した赤血球を、A抗原をH抗原へと変換するに十分な期間にわたって、精製されたニワトリ肝臓α−N−アセチルガラクトサミニダーゼ酵素と接触させる工程、この酵素をこの赤血球から除去する工程、およびこの赤血球を再度平衡化する工程を包含する。「Recombinant
α−N−acetylgalactosaminidase enzyme and cDNA encoding said enzyme」との発明の名称の米国特許第6,228,631号は、ニワトリ酵素についての組換え供給源を提供する。精製されたニワトリ肝臓α−N−アセチルガラクトサミニダーゼおよび組換えPichia pastorisによって産生されたニワトリ肝臓α−N−アセチルガラクトサミニダーゼの比活性は、p−ニトロフェニルαGalNAcを基質として用いて約51U/mg〜約56U/mgであると報告された(Zhuら,Protein Expression and
Purification 8:456−62,1996)。米国特許第4,609,627号における、Aint細胞およびA2細胞についてのこの記載された変換条件は、酸性pH5.7での180U/ml細胞(ヘマトクリットは指定されていない)を含んでおり、そして処理された細胞は、不特定の抗A試薬と凝集しなかった。このプロトコルは、3mg/mlより多くの酵素タンパク質を必要とし、そしてA1型細胞を変換するとは報告されていない。
【0020】
Hataら(Biochem Int.28(1):77−86,1992)はまた、ニワトリ肝臓α−N−アセチルガラクトサミニダーゼを酸性pHにて用いる、A2細胞の変換を報告した。米国特許第5,606,042号(および米国特許第5,633,130号;同第5,731,426号;同第6,184,017号)は、同様の結果を開示する。
【0021】
Falkら(Arch Biochem Biophys 290(2):312−91991,1991)は、Ruminococcus torques IX−70株から精製されたα−N−アセチルガラクトサミニダーゼが、Dolichus biflorusの凝集性を破壊し得ることを実証した。このことは、A1細胞のA抗原強度が、A2細胞レベルまで低減したことを示す。
【0022】
Izumiら(Biochem Biophys Acta 1116:72−74,1992)は、A1型細胞に対して、精製されたAcremonium sp.α−N−アセチルガラクトサミニダーゼを試験した。凝集力価におけるいくらかの低減が、7,000U/ml(140U/20μl)の4%ヘマトクリットを用いて観察されたとはいえ、変換は完全ではなかった。
【0023】
ヒトα−N−アセチルガラクトサミニダーゼ酵素が単離され、クローニングされ、そして発現された(Tsujiら,Biochem.Biophys.Res.Commun.163:1498−1504,1989,Wangら,Human α−N−acetylgalactosaminidase−molecular cloning,nucleotide sequence,and expression of a full−length cDNA.Homology with human α−galactosidase A suggests evolution from a common ancestral gene.J.Biol.Chem.265:21859−66,1990)(米国特許第5,491,075号)。ヒトα−N−アセチルガラクトサミニダーゼの至適pHは3.5であり(Dean KJ,Sweeley CC.Studies on human liver alpha−galactosidases.II.Purification and enzymatic properties of alpha−galactosidase B(alpha−N−acetylgalactosaminidase).J.Biol.Chem.254:10001−5,1979)、これは、ヒトα−ガラクトシダーゼの至適pHと同様である(Dean K J,Sweeley C C.Studies on human liver alpha−galactosidases.I.Purification of alpha−galactosidase A and its enzymatic properties with glycolipid and oligosaccharide substrates.J.Biol.Chem.254:9994−10000,1979)。
【0024】
A型細胞、および特に、A型の80%までを構成するサブグループA1細胞の酵素的変換が今日まで達成されていないことが上記から明らかである。それゆえ、全ての免疫反応性A抗原を除去することによってA型細胞を変換し得る適切な酵素を同定する必要性が当該分野において存在する。さらに、適切な変換条件(好ましくは中性pHでかつさらなる外部タンパク質が必要ない変換条件)を開発する必要性が存在する。
【0025】
(スクリーニングアッセイ:)
エキソ−グリコシダーゼの探索、同定および特徴付けのための以前の方法は、一般に、単純なモノサッカリド誘導体を基質として使用してサッカリド特異性および潜在的結合特異性を同定することを頼りとする。誘導体化されたモノサッカリド基質または稀にはオリゴサッカリド基質としては、p−ニトロフェニル(pNP)、ベンジル(Bz)、4−メチル−ウンベリフェリル(4−methyl−umbrelliferyl)(Umb)、および7−アミノ−4−メチル−クマリン(AMC)が挙げられるがこれらに限定されない。このような基質の使用は、グリコシダーゼ活性を同定するための、そして実用的に適用可能な多様な酵素供給源の大規模スクリーニングを行うための、容易で迅速でかつ安価なツールを提供する。しかし、グリコシダーゼ酵素の反応速度特性および優れた基質特異性は、このような単純な構造体を用いるアッセイにおいて必ずしも反映されないかもしれない。複雑なオリゴサッカリドおよび独特の糖結合体構造についての高い程度の特異性および/または選択的効率を有する新規の酵素が存在することもまた可能であるが、これらは、分析方法に起因して、見過ごされて認識されていないままであるかもしれない。従って、特定の複雑なオリゴサッカリドまたは糖結合体構造について最適なエキソ−グリコシダーゼを同定および選択するために、酵素供給源をスクリーニングするために用いられるアッセイにおいてこのような複雑な構造体を使用することが好適であり得る。さらに、スクリーニングするために用いられるアッセイは、好ましい反応速度特性(例えば、pH必要要件および(例えば、細胞の膜に結合した)基質についての性能)についての選択を含み得る。
【0026】
先行技術では、血球のB抗原およびA抗原を破壊するために用いられる全てのα−ガラクトシダーゼ(EC 3.2.1.22)およびα−N−アセチルガラクトサミニダーゼ(EC 3.2.1.49)が、主にp−ニトロフェニルモノサッカリド誘導体を用いて同定され、そして特徴付けられている。興味深いことに、細胞上のA抗原およびB抗原の除去を試みる過去の研究において用いられた全てのα−ガラクトシダーゼおよびα−N−アセチルガラクトサミニダーゼ酵素は、顕著なDNA配列類似性およびアミノ酸配列類似性によって明らかなように、進化的に相同である。従って、ヒトα−ガラクトシダーゼおよびα−N−アセチルガラクトサミニダーゼは、密接に相同であり(Wangら,J Biol Chem,265:21859−66,1990)、そして血球変換において以前に用いられた他の酵素(ニワトリ肝臓のα−N−アセチルガラクトサミニダーゼ、真菌acremoniumのα−N−アセチルガラクトサミニダーゼ、および細菌のα−ガラクトシダーゼを含む)は、全て、顕著な配列類似性を示す。細菌のα−N−アセチルガラクトサミニダーゼの一次構造は、科学文献において報告されている。これらのグリコシダーゼは、配列類似性を共有するので、この酵素が関連の反応速度特性を有することが予期され得る。全ての既知のO−グリコシドヒドロラーゼの配列分析によって、配列分析に基づいて85の異なるファミリーに分類され、そして上記のα−ガラクトシダーゼおよびα−N−アセチルガラクトサミニダーゼは、ファミリー27およびファミリー36に分類される(例えば、「CAZy−Carbohydrate−Active Enzymes (Family GH32)」との表題で、http://afmb.cnrs−mrs.fr/〜azy/CAZY/GH_32.htmlに位置するウェブページを参照のこと)。これらの酵素は、維持される触媒機構を有することおよびアスパラギン酸を触媒求核試薬として用いることによって特徴付けられる(Henrissat,Biochem Soc Trans,26(2):153−6,1998;RyeおよびWithers,Curr Opin Chem Biol,4(5):573−80,2000)。
【0027】
それゆえ、当該分野には、新たなα−ガラクトシダーゼ活性およびα−N−アセチルガラクトサミニダーゼ活性、ならびに対応する酵素タンパク質を同定する必要性が存在する。このような酵素が存在するならば、これらはファミリー27およびファミリー36には分類されないようである。なぜなら、これらは、顕著に異なる反応速度特性を有するように選択されるからである。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0028】
(発明の要旨)
本発明は、血液製剤中の血液型A反応細胞、血液型B反応細胞、および血液型AB反応細胞からの、A型抗原およびB型抗原の酵素的除去のための組成物および方法、ならびに非A反応性細胞および非B反応性細胞へのこれらの変換を提供する。具体的には、本発明は、血液型A抗原および血液型B抗原を指定する免疫優性モノサッカリド(すなわち、それぞれ、α1,3−D−ガラクトースおよびα1,3−D−N−アセチルグルコサミン)の酵素的除去のための組成物および方法を提供する。したがって、本発明は、以下を提供する。
(1)血液製剤中の血液型群B反応性細胞または血液型群AB反応性細胞からB型抗原を除去するためα−ガラクトシダーゼであって、ここで、該α−ガラクトシダーゼは、以下の特徴:
(i)単純なα−Galモノサッカリド誘導体と比較して、血液型群B型オリゴサッカリドに関する少なくとも10%の活性、および
(ii)中性pHでの、血液型群B型オリゴサッカリドの赤血球細胞変換における活性
を有する、α−ガラクトシダーゼ。
(2)項目1に記載のα−ガラクトシダーゼであって、ここで、前記血液型群B型オリゴサッカリドが群B型テトラサッカリドである、α−ガラクトシダーゼ。
(3)項目1に記載のα−ガラクトシダーゼであって、該α−ガラクトシダーゼが、α−Gal p−ニトロフェニルモノサッカリド誘導体に関する検出可能な活性を有さない、α−ガラクトシダーゼ。
(4)配列番号1を含む、項目1に記載のα−ガラクトシダーゼ。
(5)項目1に記載のα−ガラクトシダーゼであって、該α−ガラクトシダーゼは、還元SDS−PAGE分析によって40〜80kD領域を移動するとしてさらに特徴付けられる、α−ガラクトシダーゼ。
(6)項目1に記載のα−ガラクトシダーゼであって、P1抗原に関して検出可能な活性を有さない、α−ガラクトシダーゼ。
(7)項目1に記載のα−ガラクトシダーゼを発現することが可能な原核生物細胞系統。
(8)項目2に記載のα−ガラクトシダーゼを発現することが可能な原核生物細胞系統。
(9)項目3に記載のα−ガラクトシダーゼを発現することが可能な原核生物細胞系統。
(10)項目4に記載のα−ガラクトシダーゼを発現することが可能な原核生物細胞系統。
(11)項目5に記載のα−ガラクトシダーゼを発現することが可能な原核生物細胞系統。
(12)項目6に記載のα−ガラクトシダーゼを発現することが可能な原核生物細胞系統。
(13)血液製剤中の、血液型群A型反応性細胞または血液型群AB型反応性細胞からA型抗原を除去するための方法であって、該方法は、以下(a)〜(b)の工程:
(a)該A型抗原を除去するのに十分な期間にわたって、中性pH条件下で、α−N−アセチルガラクトサミニダーゼ酵素と該血液製剤を接触させる工程、ならびに
(b)該血液製剤から該酵素を除去する工程であって、ここで、該α−N−アセチルガラクトサミニダーゼ酵素は、以下(i)〜(iii)の特徴:
(i)血液型群A型反応性細胞または血液型群AB型反応性細胞から全ての検出可能なA型抗原を除去することが可能であること
(ii)単純なα−Gal NAcモノサッカリド誘導体と比較して、血液型群A型オリゴサッカリドに関する少なくとも10%の活性、および
(iii)中性pHでの、赤血球細胞変換における活性
を有する、工程
を包含する、
方法。
(14)A型赤血球またはAB型赤血球を非A型赤血球に変換するための方法であって、該方法は、以下(a)〜(b)の工程:
(a)該赤血球の中の該A型抗原をH抗原に変換するのに十分な期間にわたって、中性pH条件下で、α−N−アセチルガラクトサミニダーゼ酵素と該赤血球を接触させる工程、ならびに
(b)該赤血球から該酵素を除去する工程であって、ここで、該α−N−アセチルガラクトサミニダーゼ酵素は、以下(i)〜(iii)の特徴:
(i)群A型反応性細胞または群AB型反応性細胞から検出可能なA型抗原を除去することが可能であること
(ii)単純なα−Gal NAcモノサッカリド誘導体と比較して、血液型群A型オリゴサッカリドに関する少なくとも10%の活性、および
(iii)中性pHでの、赤血球細胞変換における活性
を有する、工程
を包含する、
方法。
(15)血液製剤中の、血液型群B型反応性細胞または血液型群AB型反応性細胞からB型抗原を除去するための方法であって、該方法は、以下(a)〜(b)の工程:
(a)該B型抗原を除去するのに十分な期間にわたって、中性pH条件下で、α−ガラクトシダーゼ酵素と該血液製剤を接触させる工程、ならびに
(b)該血液製剤から該酵素を除去する工程であって、ここで、該α−ガラクトシダーゼ酵素は、以下(i)〜(ii)の特徴:
(i)単純なα−Galモノサッカリド誘導体と比較して、血液型群B型オリゴサッカリドに関する少なくとも10%の活性、および
(ii)中性pHでの、赤血球細胞変換における活性
を有する、工程
を包含する、
方法。
(16)B型赤血球またはAB型赤血球を非B型赤血球に変換するための方法であって、該方法は、以下(a)〜(b)の工程:
(a)該B型抗原を除去するのに十分な期間にわたって、中性pH条件下で、α−N−ガラクトシダーゼ酵素と該赤血球を接触させる工程、ならびに
(b)該血液製剤から該酵素を除去する工程であって、ここで、該α−ガラクトシダーゼ酵素は、以下(i)〜(ii)の特徴:
(i)単純なα−Galモノサッカリド誘導体と比較して、血液型群B型オリゴサッカリドに関する少なくとも10%の活性、および
(ii)中性pHでの、赤血球細胞変換における活性
を有する、工程
を包含する、
方法。
(17)血液製剤中の、血液型群A型反応性細胞、血液型群B型反応性細胞または血液型群AB型反応性細胞からA型抗原およびB型抗原を除去するための方法であって、該方法は、以下(a)〜(b)の工程:
(a)該A型抗原および該B型抗原を除去するのに十分な期間にわたって、中性pH条件下で、α−N−アセチルガラクトサミニダーゼ酵素およびα−ガラクトシダーゼ酵素と、該血液製剤を接触させる工程、および
(b)該血液製剤から該酵素を除去する工程であって、ここで、該α−N−アセチルガラクトサミニダーゼ酵素は、以下(i)〜(iii)の特徴:
(i)群A型反応性細胞または群AB型反応性細胞から全ての検出可能なA型抗原を除去することが可能であること
(ii)単純なα−Gal NAcモノサッカリド誘導体と比較して、血液型群A型オリゴサッカリドに関する少なくとも10%の活性、および
(iii)中性pHでの、赤血球細胞変換における活性
を有しており、ここで、該α−ガラクトシダーゼ酵素は、以下(i)〜(ii)の特徴:
(i)単純なα−Galモノサッカリド誘導体と比較して、血液型群B型オリゴサッカリドに関する少なくとも10%の活性、および
(ii)中性pHでの、赤血球細胞変換における活性
を有する、工程
を包含する、
方法。
(18)血液製剤中の血液型群A、BまたはAB反応性細胞からの、A型赤血球およびB型赤血球を、非A非B型赤血球に変換するための方法であって、該方法は、以下(a)〜(b)の工程:
(a)該赤血球の中の該A型抗原および該B抗原を変換するのに十分な期間にわたって、中性pH条件下で、α−N−アセチルガラクトサミニダーゼ酵素およびα−ガラクトシダーゼ酵素と、該赤血球を接触させる工程、および
(b)該赤血球から該酵素を除去する工程であって、ここで、該α−N−アセチルガラクトサミニダーゼ酵素は、以下(i)〜(iii)の特徴:
(i)群A型反応性細胞および血液型群AB型反応性細胞から全ての検出可能なA型抗原を除去することが可能であること
(ii)単純なα−Gal NAcモノサッカリド誘導体と比較して、血液型群A型オリゴサッカリドに関する少なくとも10%の活性、および
(iii)中性pHでの、赤血球細胞変換における活性
を有しており、ここで、該α−ガラクトシダーゼ酵素は、以下(i)〜(ii)の特徴:
(i)単純なα−Galモノサッカリド誘導体と比較して、血液型群B型オリゴサッカリドに関する少なくとも10%の活性、および
(ii)中性pHでの、赤血球細胞変換における活性
を有する、工程
を包含する、
方法。
(19)中性条件下で、血液製剤中の血液型群B反応性細胞および血液型群AB反応性細胞からB型抗原を除去するのに有用なα−ガラクトシダーゼ酵素をスクリーニングおよび選択するための方法であって、該方法は、以下の(a)〜(c)の工程:
(a)中性pH条件下で、該B型群オリゴサッカリド基質と、候補α−ガラクトシダーゼ酵素を接触させ、該B型群オリゴサッカリド基質に関する、該候補酵素の活性を測定する工程、
(b)中性pH条件下で、α−Galモノサッカリド誘導体と、該候補α−ガラクトシダーゼ酵素を接触させ、該B型群モノサッカリド誘導体に関する、該候補酵素の活性を測定する工程、ならびに
(c)該B型群オリゴサッカリド基質に関する、該候補酵素の活性と、α−Galモノサッカリド誘導体に関する、該候補酵素の活性とを比較する工程、
を包含し、
ここで、単純なα−Galモノサッカリド誘導体と比較して、血液型群B型オリゴサッカリド誘導体に関する少なくとも10%の活性を有する、候補α−ガラクトシダーゼが、中性pH条件で、血液製剤中の血液型群B型反応性細胞および血液型群AB型反応性細胞から、B型抗原を除去するのに有用であるとして選択される、
方法。
(20)中性pH条件下で、血液製剤中の血液型群B反応性細胞および血液型群AB反応性細胞からA型抗原を除去するのに有用なα−N−アセチルガラクトサミニダーゼ酵素をスクリーニングおよび選択するための方法であって、該方法は、以下の(a)〜(b)の工程:
(a)中性pH条件下で、A型群オリゴサッカリド基質と、候補α−N−アセチルガラクトサミニダーゼ酵素を接触させ、該A型群オリゴサッカリド基質に関する、該候補酵素の活性を測定する工程、
(b)中性pH条件下で、α−Gal NAcモノサッカリド誘導体と、該候補α−N−アセチルガラクトサミニダーゼ酵素を接触させ、該A型群モノサッカリド誘導体に関する、該候補酵素の活性を測定する工程、ならびに
(c)該A型群オリゴサッカリド基質に関する、該候補酵素の活性と、α−GalNAcモノサッカリド誘導体に関する候補酵素の活性とを比較する工程、
を包含し、
ここで、単純なα−GalNAcモノサッカリド誘導体と比較して、血液型群B型オリゴサッカリドに関する少なくとも10%の活性を有する、候補α−N−アセチルガラクトサミニダーゼ酵素が、中性pH条件下で、血液製剤中の血液型群B型反応性細胞および血液型群AB型反応性細胞から、A型抗原を除去するのに有用であるとして選択される、
方法。
(21)血清変換型赤血球であって、ここで、該血清変換型赤地球は、:
(a)α−N−アセチルガラクトサミニダーゼによって、A型赤血球またはAB赤血球から非A赤血球へと変換され、
(b)A結合H構造を有し、そして
(c)標準的な血液銀行血清型分類によって決定されるような、検出可能なA型抗原を有さない、
血清変換型赤血球。
(22)血清変換型赤血球を含む血液製剤であって、ここで、該血清変換型赤血球が:
(a)α−N−アセチルガラクトサミニダーゼによって、A型赤血球またはAB赤血球から非A赤血球へと、変換され、
(b)A結合H構造を有して、そして、
(c)標準的な血液銀行血清型分類によって決定されるような、検出可能なA型抗原を有さない、
血液製剤。
(23)血清変換型赤血球であって、ここで、該血清変換型赤血球が:
(a)α−ガラクトシダーゼによって、B型赤血球またはAB赤血球から非B赤血球へと変換され、
(b)P1抗原を保持し、そして、
(c)標準的な血液銀行血清型分類によって決定されるような、検出可能なB型抗原を有さない、
血清変換型赤血球。
(24)血清変換型赤血球を含む血液製剤であって、ここで、該血清変換型赤血球は:
(a)α−ガラクトシダーゼによって、B型赤血球またはAB赤血球から非B赤血球へと変換され、
(b)P1抗原を保持し、そして、
(c)標準的な血液銀行血清型分類によって決定されるような、検出可能なB型抗原を有さない、
血液製剤。
(25)血清変換型赤血球であって、ここで、該血清変換型赤血球は:
(a)α−N−アセチルガラクトサミニダーゼおよびα−ガラクトシダーゼによって、A型赤血球またはAB赤血球から非A非B型赤血球へと変換され、
(b)A結合H構造を有し、
(c)P1抗原を保持し、そして、
(d)標準的な血液銀行血清型分類によって決定されるような、検出可能なA型抗原およびB型抗原を有さない、
血清変換型赤血球。
(26)血清変換型赤血球を含む血液製剤であって、ここで、該血清変換型赤血球は:
(a)α−N−アセチルガラクトサミニダーゼおよびα−ガラクトシダーゼによって、AB型赤血球から、非A非B赤血球へ変換され、そして
(b)A結合H構造を有して、
(c)P1抗原を保持し、そして、
(d)標準的な血液銀行血清型分類によって決定されるような、検出可能なA型抗原またはB型抗原を有さない、
血液製剤。
(27)Streptomyces chattanoogensis(ATCC受託番号PTA−4076)である、項目7に記載の系統。
(28)Streptomyces griseoplanus(ATCC受託番号PTA−4077)である、項目7に記載の系統。
(29)ATCC受託番号PTA−4076である、Streptomyces chattanoogensis。
(30)ATCC受託番号PTA−4077である、Streptomyces griseoplanus。
(31)前記α−N−アセチルガラクトサミニダーゼがNEB α−N−アセチルガラクトサミニダーゼである、項目13に記載の方法。
(32)前記α−N−アセチルガラクトサミニダーゼがNEBα−N−アセチルガラクトサミニダーゼである、項目14に記載の方法。
(33)前記α−N−アセチルガラクトサミニダーゼがNEB α−N−アセチルガラクトサミニダーゼである、項目17に記載の方法。
(34)前記α−N−アセチルガラクトサミニダーゼがNEB α−N−アセチルガラクトサミニダーゼである、項目18に記載の方法。
【0029】
本発明の新規グルコシダーゼ酵素は、免疫優性の単糖類、αGalNAcおよびαGalを、血液産物中の細胞表面の真性A型糖質抗原および真性B型糖質抗原に近接した複合オリゴ糖標的から除去する際の使用のために、特異的に選択される。本発明の好ましいα−N−アセチルガラクトサミニダーゼ酵素は、以下の(i)〜(ii)の特徴を有する:(i)単純なα−GalNAc単糖類誘導体と比較して、A型オリゴ糖(四糖類またはそれより高次)との10%以上の活性;および、(ii)天然のpH(pH6〜8)での赤血球変換における、A型オリゴ糖との活性。本発明のα−N−アセチルガラクトサミニダーゼは、全てのA型群(A1型群を含む)細胞の、全ての検出可能なA型抗原を除去する。本発明の好ましいα−ガラクトシダーゼ酵素は、以下の(i)〜(ii)の特徴を有する:(i)単純なα−Gal単糖類誘導体と比較して、B型オリゴ糖(四糖類またはそれより高次)との10%以上の活性;および、(ii)天然のpH(pH6〜8)での赤血球変換における、B型オリゴ糖に関する活性。本発明のα−ガラクトシダーゼ酵素は、P1抗原との検出可能な活性を有さない。より好ましいアセチルガラクトサミニダーゼ酵素およびα−ガラクトシダーゼ酵素は、細菌起源または真菌起源のものであり、それによって、原核生物および下等真核生物における、効果的かつ安価な組換え発現が可能になる。好ましい実施形態において、本発明の酵素は、p−ニトロフェニル単糖類誘導体との検出可能な活性を有さない。別の好ましい実施形態において、本発明の酵素は、単糖類基質およびオリゴ糖基質との好ましい速度定数Kmを有する。特に好ましいα−ガラクトシダーゼ酵素は、還元性SDS−PAGE分析によって、40〜80kDの領域で移動するとしてさらに特徴付けられる。別の特に好ましいα−ガラクトシダーゼ酵素は、アミノ酸配列:Phe−Ala−Asn−Gly−Leu−Leu−Leu−Thr(配列番号1)を含む。
【0030】
別の局面において、本発明は、全ての血液型群A型および血液型群B型の赤血球の完全なセロコンバージョンのための方法を提供し、この結果、A型細胞、B型細胞、およびAB型細胞から、A型抗原およびB型抗原が完全に除去される。このA型抗原および/またはB型抗原の除去は、標準的な血液銀行の血清学分類または交叉分析によって、決定され得る。本発明の方法に従って、このA型抗原およびB型抗原は、α−N−アセチルガラクトサミニダーゼおよび/またはα−ガラクトシダーゼを使用して除去され、これらの、α−N−アセチルガラクトサミニダーゼおよび/またはα−ガラクトシダーゼは、(i)単純な単糖類構造および二糖類構造ならびにアグリコン誘導体と比較して、血液型群A型または血液型群B型のオリゴ糖(四糖類またはそれより高次)に対して10%以上の活性を有し;かつ、(ii)中性のpH(pH6〜8)での赤血球変換において活性である。好ましい実施形態において、これらのセロコンバージョン方法は、当該分野で公知の方法よりも、有意に低量の組換えグリコシダーゼ酵素タンパク質を使用する。これらの方法は、以下の(a)〜(b)の工程を包含する:(a)中性のpH条件下で、抗体を除去するのに十分な時間、血液産物を酵素と接触させる工程;および(b)この血液産物から酵素を除去する工程。
【0031】
1つの実施形態において、本発明は、α−N−アセチルガラクトサミニダーゼを使用して、全ての検出可能なA型抗原を、A型赤血球およびAB型赤血球(A1型を含む)から除去するための方法を提供し、このα−N−アセチルガラクトサミニダーゼは、(i)単純なα−GalNAc単糖類誘導体と比較して、血液型群A型のオリゴ糖(四糖類またはそれより高次)に対して10%以上の活性を有し;かつ、(ii)中性のpH(pH6〜8)での赤血球変換において、血液型群A型オリゴ糖に対して活性である。
【0032】
別の実施形態において、本発明は、α−ガラクトシダーゼを使用して、検出可能な全てのB型抗原を、B型赤血球またはAB型赤血球から除去するための方法を提供し、このα−ガラクトシダーゼは、(i)単純なα−Gal単糖類誘導体と比較して、血液型群B型オリゴ糖(四糖類またはそれより高次)に対して10%以上の活性を有し;かつ、(ii)中性のpH(pH6〜8)での赤血球変換において、血液型群オリゴ糖に対して活性である。
【0033】
なお別の実施形態において、本発明は、α−N−アセチルガラクトサミニダーゼおよびα−ガラクトシダーゼを使用して、全ての検出可能なA型抗原およびB型抗原をAB型赤血球から除去するための方法を提供し、これらの各々は、以下の(i)〜(ii)の1つ以上の特徴を有する:(i)単純な単糖類構造および二糖類構造ならびにアグリコン誘導体と比較して、オリゴ糖構造(四糖類またはそれより高次)に対して10%以上の活性を有し;そして(ii)中性pH(pH6〜8)での赤血球変換において、血液型群オリゴ糖に対して活性である。
【0034】
本発明の別の局面において、セロコンバージョン赤血球が提供される。1つの実施形態において、このセロコンバージョン赤血球は、以下の(i)〜(iii)のように特徴付けられる:(i)α−N−アセチルガラクトサミニダーゼによって、A型またはAB型の赤血球から非A型赤血球に変換される;(ii)A型関連H構造を有する;および(iii)標準的な血液銀行の血清学分類または交叉分析によって決定されるような、検出可能なA型抗原(A1型抗原を含む)を有さない。別の実施形態において、このセミコンバゼーション赤血球は、以下の(i)〜(iii)のように特徴付けられる:(i)α−ガラクトシダーゼによって、B型赤血球またはAB型赤血球から非B型赤血球に変換される;(ii)P1型血液型群である場合、保持されたP1抗原性を有する;および(iii)標準的な血液銀行の血清学分類または交叉分析によって決定されるような、検出可能なB型抗原を有さない。なお別の実施形態において、このセミコンバゼーション赤血球は、以下の(i)〜(iii)のように特徴付けられる:(i)α−N−アセチルガラクトサミノダーゼおよびα−ガラクトシダーゼによって、AB型赤血球から非A型赤血球、非B型赤血球に変換される;(ii)A型関連H構造を有する;および(iii)P1型血液型群である場合、保持されたP1抗原性を有する;および(iii)標準的な血液銀行の血清学分類または交叉分析によって決定されるような、検出可能なB型抗原を有さない。
【0035】
なお別の局面において、本発明は、上記の好ましい独自の特徴を有する酵素のスクリーニング方法および選択方法、ならびにこれらの酵素をコードする遺伝子のクローニングおよび発現に有用な精製方法およびこれらのアミノ酸の配列決定方法を提供する。これらの方法は、このような好ましい酵素を産生する細菌単離物を提供する。
【0036】
1つの実施形態において、中性のpH条件下で、血液産物中で血液型群B型反応性細胞および血液型群AB型反応性細胞からB型抗原を除去するために有用なα−ガラクトシダーゼ酵素をスクリーニングおよび選択するための方法は、以下の(a)〜(c)の工程を包含する:(a)中性のpH条件下で、候補α−ガラクトシダーゼ酵素を、B型オリゴ糖基質と接触させて、この候補酵素のB型オリゴ糖基質に対する活性を測定する工程;(b)中性の条件下で、この候補α−ガラクトシダーゼ酵素を、α−Gal単糖類誘導体と接触させて、この候補酵素のB型単糖類誘導体に対する活性を測定する工程;および(c)この候補酵素の、B型オリゴ糖基質およびα−Gal単糖類誘導体に対する相対的な活性を比較する工程。単純なα−Gal単糖類誘導体と比較して、血液型群B型オリゴ糖(四糖類またはそれより高次)に対する10%以上の活性を有する候補体は、中性のpH条件下において血液産物中で血液型群B型および血液型群AB型の反応性細胞からB型抗原を除去するために有用であるように選択される。
【0037】
別の実施形態において、中性のpH条件下において、血液産物中で血液型群A型および血液型群AB型の反応性細胞からA型抗原を除去するために有用なα−N−アセチルガラクトサミニダーゼ酵素をスクリーニングおよび選択するための方法は、以下の(a)〜(c)の工程を包含する:中性のpH条件下で、候補α−N−アセチルガラクトサミニダーゼ酵素を、A型オリゴ糖基質と接触させて、この候補酵素をA型オリゴ糖基質に対する活性を測定する工程;(b)中性の条件下で、この候補α−N−アセチルガラクトサミニダーゼ酵素を、α−GalNAc単糖類誘導体と接触させて、この候補酵素のA型単糖類誘導体に対する活性を測定する工程;および(c)この候補酵素の、A型オリゴ基質およびα−GalNAc単糖類誘導体に対する相対的な活性を比較する工程。単純なα−GalNAc単糖類誘導体と比較して、血液型群A型オリゴ糖(四糖類またはそれより高次)に対する10%以上の活性を有する候補体は、中性のpH条件下において血液産物中で血液型群A型および血液型群AB型の反応性細胞からA型抗原を除去するために有用であるように選択される。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】図1は、異なるpHにおける、Galα−pNPに関する組換えコーヒーマメα−ガラクトシダーゼの活性を示す。1.25μmol(2.5mM)の基質を含む0.5mlの反応容量で、アッセイを行った。反応を、26℃にて20分間インキュベートし、そして等量の0.2Mホウ酸ナトリウム緩衝液(pH9.8)を添加することによって、クエンチした。p−ニトロフェニルの放出を、OD405nmで定量し、そしてpHに対してプロットした。以下の緩衝液を使用した:pH5.0および5.5:20mM NaOAc;pH6.0〜8.0:20mM NaPO4。
【図2】図2は、異なるpHにおける、血液型群B型四糖AMC基質に関する組換えコーヒーマメα−ガラクトシダーゼの活性を示す。クエン酸ナトリウム−NaPO4緩衝液(pH2.6〜7.4)およびNaPO4緩衝液(pH8.0)中1nmolの基質を含有する10μlの反応容量で、アッセイを行った。反応を、26℃にて40分間インキュベートし、3μlの反応混合物を、HPTLC上にスポットし、そしてCHCl3:メタノール:H2O(60:35:8)中に展開し、写真に撮った。パネルAは、HPTLC分析を示し、Stdは、酵素を含まない基質の移動を示し;パネルBは、スキャニングによって定量し、pHに対してプロットした基質切断を示す。
【図3】図3は、異なるpHにおける、Galili五糖(ペンタサッカリド)基質に関する組換えコーヒーマメα−ガラクトシダーゼの活性を示す。クエン酸ナトリウム−NaPO4緩衝液中5nmolの基質を含有する10μの反応容量で、アッセイを行った。反応を、26℃にて20分間インキュベートし、2μlの各反応混合物を、HPTLC上にスポットし、そしてCHCl3:メタノール:H2O(30:60:20)中に展開して、オルシノール噴霧によって可視化した。パネルAは、HPTLC分析を示し;パネルBは、スキャニングによって定量し、pHに対してプロットした基質切断を示す。
【図4】図4は、B型四糖AMC基質に関する、5つの選択されたStreptomycete α−ガラクトシダーゼ活性のHPTLC分析である。表Vと同様に、株の数を設定する。HPTLCによって評価される、20分、100分および1000分の時間点を用いる時間経過に従って、アッセイを行った。標準的な二糖類、三糖類(H)、および四糖類(B)のAMC誘導体の移動を、矢印によって示す。NE、酵素コントロールなし;Origin、サンプル適用位置。2075番において最も顕著であった二糖類AMC産物の出現は、汚染されたα−フコシダーゼの活性に起因する。
【図5】図5は、Galα−pNP基質に関する、5つの選択されたStreptomycete α−ガラクトシダーゼ活性のHPTLC分析である。アッセイを、30℃にて4日間行った。2260番の株のみが、pNP基質に対する有意な活性を示し、2357番の株の抽出物中に、ガラクトースの放出は全く検出されなかった。
【図5b】図5bは、血液型群A型四糖類(パネルA)および血液型群A型五糖類AMC(パネルB)の基質に関する、5つの選択されたStreptomycete α−N−ガラクトサミニダーゼ活性のHPTLC分析である。Streptomycete株を、表VIIにおけるような数によって同定した。1nmolのAMC基質、5.0μlの選択された酵素の画分、および緩衝液(0.05Mクエン酸ナトリウム(pH6.0))を含有する10μlの反応物中で、アッセイを行った。反応を、30℃にて180分間インキュベートし、そして2.5μlの反応混合物を、HPTLC上にスポットし、そしてCHCl3:メタノール:H2O(60:35:8)中に展開して、写真に撮った。三糖類(H)、および四糖類(A)、七糖類(ヘプタサッカリド)および六糖類(ヘキササッカリド)(H−A)のAMC誘導体の移動を、矢印によって示す。NE、酵素コントロールなし;rCHl−Az、組換えニワトリ肝臓A−Zyme;Origin、サンプル適用位置。二糖類AMCの出現は、汚染されたα−フコシダーゼの活性に起因する。
【図6】図6は、S12クロマトグラフィーによって分離されたStreptomycete 2357番のα−ガラクトシダーゼ酵素の分析である。Pre:クロマトグラフィー前のサンプル。パネルA:B型四糖類AMC基質に対する活性のHPTLC分析。50mMクエン酸ナトリウム(pH6.0)中1nmolの基質、2μlの指向されたS12画分を含有する10μlの容量で、30℃にて80分間、反応を行った。HPTLCを、2.5μlで行い、そしてCHCl3:メタノール:H2O(60:35:8)中に展開し、乾燥し、そして写真に撮った。7〜9の画分においてα−フコシダーゼ活性を含むピーク活性領域を、プールした。意味:Std、酵素を含まないB型四糖類AMC基質;Co、コーヒーマメα−ガラクトシダーゼに対するコントロール反応。パネルB:画分のSDS−NuPAGE分析。パネルAと同じ意味。
【図7】図7は、2357番から精製された酵素活性のS12クロマトグラフィーからプールした画分のSDS−NuPAGEである。R−250は、SDS−NuPAGEのPVDF膜を染色した。配列決定のために取られたタンパク質バンドを、矢印によって示す。
【図8】図8は、組換えコーヒーマメα−ガラクトシダーゼおよび2357番から精製されたα−ガラクトシダーゼの基質特異性のHPTLC分析である。このコーヒーマメα−ガラクトシダーゼ(レーン1)は、試験した全ての基質を切断したが、2357番から精製されたα−ガラクトシダーゼのみが、血液型群B型四糖類を選択的に切断した。パネルA:Galili基質(Galα1−3Galβ1−4GlcNAcβ1−3Galβ1−4Glc);パネルB:Pk基質(Galα1−3Galβ1−4Glc−OGr);パネルC:P1基質(Galα1−3Galβ1−4GlcNAc−OGr);およびパネルD:B基質(Galα1−3[Fucα1−2]Galβ1−4GlcNAcβ−OGr)。パネルA、B、およびCにおけるHPTLCを、CHCl3:メタノール:H2O(60:35:8)を使用して展開し、そしてパネルDにおけるHPTLCを、CHCl3:メタノール:H2O(30:60:10)を使用して展開した。
【図9】図9は、種々のpHにおいて、血液型群B四糖AMC基質を用いて、#2357由来の精製α−ガラクトシダーゼの活性を示す。20mM NaOAc(pH5.0〜5.5)またはNaPO4(pH6.0〜8.0)中の1nmolの基質を含む10μlの反応容積で、アッセイを実施した。反応物を、40分間、26℃でインキュベーションし、3μlの反応混合物をHPTLC上にスポットし、そしてCHCl3:メタノール:H2O(60:35:8)中で展開し、写真を撮影した。パネルA:HPTLC分析。Stdは、酵素なしの基質の移動を示す;パネルB:基質切断は、走査によって定量化され、そしてpHに対してプロットした。
【図9B】図9Bは、S12クロマトグラフィーによって分離されたBSAを用いてスパイクした#2357由来の精製α−ガラクトシダーゼの分析を示す。パネルA:画分26〜36のSDS−NuPAGE分析。命名:Mw:分子量マーカー;Pre:クロマトグラフィーの前のサンプル。パネルB:B四糖AMC基質を用いた活性のHPTLC分析。反応を、1nmol基質、2μlの示されたS12画分を、50mM NaPO4(pH7.0)中に含む10μlの容積で行った。HPTLCを2μlで行い、CHCl3:メタノール:H2O(60:35:8)で展開し、乾燥し、そして写真を撮影した。命名:Std、酵素のないB四糖AMC基質;Co、コーヒーマメα−ガラクトシダーゼを用いるコントロール反応;D−AMC、二糖−AMC;Tri−AMC、三糖−AMC;Tetr−AMC、四糖−AMC。
【図10】図10は、種々のpHにおいて、血液型群A四糖AMC基質を用いる、E.coli発現α−N−アセチルガラクトサミニダーゼの活性を示す。pH2.6〜8.0で変動する、1nmolのA−tetra、0.05μg酵素、および緩衝液Na−クエン酸−NaPO4を含む10μlの反応でアッセイを実施した。反応物を、40分間、26℃でインキュベーションし、3μlのサンプルをHPTLCによって分析した。パネルA:HPTLC分析;パネルB:基質切断は、走査によって定量化され、そしてpHに対してプロットした。
【図11】図11は、E.coli発現α−N−アセチルガラクトサミニダーゼを使用する、A2細胞の酵素変換に対する緩衝系の影響を示す。洗浄したA2赤血球を、25℃で、指定された緩衝液中の5〜20mU/mlのα−N−アセチルガラクトサミニダーゼ(30%細胞懸濁液)とともにインキュベートし、そしてOrtho抗−Aとの凝集によって30分および60分に変換を評価した。
【図12】図12は、E.coli発現α−N−アセチルガラクトサミニダーゼを使用する、A1細胞およびA2細胞の酵素変換に対する250mMグリシン緩衝液を使用するpHの影響を示す。洗浄した赤血球を、25℃で、250mMグリシン緩衝液(pH6.0〜8.0)中の7.5mU/mlのα−N−アセチルガラクトサミニダーゼ(30%細胞懸濁液)とともにインキュベートし、そしてOrtho抗−Aとの凝集によって30分および60分に変換を評価した。
【図13】図13は、E.coli発現α−N−アセチルガラクトサミニダーゼを使用する、A1細胞の酵素変換に対するグリシン緩衝液濃度の影響を示す。洗浄した赤血球を、25℃で、100〜400mMグリシン緩衝液(pH7.0)中の7.5mU/mlのα−N−アセチルガラクトサミニダーゼ(30%細胞懸濁液)とともにインキュベートし、そしてOrtho抗−Aとの凝集によって30分および60分に変換を評価した。
【図14】図14は、A1細胞およびA2細胞の酵素変換に対するE.coli発現α−N−アセチルガラクトサミニダーゼの濃度の影響を示す。洗浄した赤血球を、25℃で、250mMグリシン緩衝液(pH7.0)中の5〜50mU/mlのα−N−アセチルガラクトサミニダーゼ(30%細胞懸濁液)とともにインキュベートし、そしてOrtho抗−Aとの凝集によって30分および60分に変換を評価した。
【図15】図15は、E.coli発現α−N−アセチルガラクトサミニダーゼを使用する、A1細胞の酵素変換に対する細胞(ヘマトクリット)濃度の影響を示す。洗浄した赤血球を、25℃で、20〜90%の濃度で変化させて、250mMグリシン(pH7.0)中の20mU/mlのα−N−アセチルガラクトサミニダーゼとともにインキュベートし、そしてOrtho抗−Aとの凝集によって30分および60分に変換を評価した。
【図16】図16は、E.coli発現α−N−アセチルガラクトサミニダーゼを使用する、A1細胞およびA2細胞の酵素変換に対する反応時間の影響を示す。洗浄した赤血球を、25℃で、150mMグリシン(pH7.0)中の5〜50mU/mlのα−N−アセチルガラクトサミニダーゼ(30%細胞懸濁液)とともにインキュベートし、そしてOrtho抗−Aとの凝集によって20分、40分、60分および120分に変換を評価した。
【図17】図17は、E.coli発現α−N−アセチルガラクトサミニダーゼを使用する、A2細胞の酵素変換に対する温度の影響を示す。洗浄した赤血球を、15℃、25℃および37℃で、200mMグリシン(pH5.5)中の1〜10mU/mlのα−N−アセチルガラクトサミニダーゼ(30%細胞懸濁液)とともにインキュベートし、そしてOrtho抗−Aとの凝集によって20分、40分、および60分に変換を評価した。
【発明を実施するための形態】
【0039】
(発明の詳細な説明)
本発明は、血液型群AおよびBの構造に対する好ましい特異性および中性pHにおける血球の酵素変換における好ましい性能を用いる、新規なα−N−アセチルガラクトサミニダーゼおよびα−ガラクトシダーゼについてのスクリーニングおよび選択ストラテジーの開発および適用に関する。表1は、血球において見出されるA抗原およびB抗原の複合体構造を列挙する。これらの複合体構造を用いる既存のグリコシダーゼの速度論的特性の定量的研究は、報告されていない。これは、これらの化合物を天然の供給源から得ることの困難性に一部起因し、そして有機化学によってこのような複合体オリゴ糖を合成することに関する困難性および時間のかかることに一部起因する。
【0040】
本発明の目的のために、血液型群AおよびBの活性なオリゴ糖AMC誘導体は、合成され(構造3、6、11、25)、そしてそれらのH改変体は、上記構造からのαGalまたはαGalNAcの酵素的除去によって合成または産生された。さらに、構造3、6、21および25を有するグリコスフィンゴリピドは、ヒト赤血球から精製されたか、または先に記載されるように、グリコシダーゼ処理によってヒト赤血球から精製された(Clausenら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 82(4):1199−203,1985,Clausenら,J Biol Chem.261(3):1380−7,1986,Clausenら,Biochemistry 25(22):7075−85,1986,Clausenら,J Biol Chem.262(29):14228−34,1987)。AMC誘導体またはグリコスフィンゴリピドからのαGalまたはαGalNAcの除去を定量的に決定するための薄層クロマトグラフィーアッセイが開発された。
【0041】
p−ニトロフェニルα−ガラクトシドおよび血液型B抗原の代表として、四糖群Bハプテン基質(構造11AMC誘導体)を用いて活性を比較する、組換えコーヒーマメα−ガラクトシダーゼの相対的比活性の本発明者らの最初の分析は、2000倍近い顕著な差を明らかにした。従って、コーヒーマメα−ガラクトシダーゼは、先に報告される(Zhuら,Arch Biochem Biophys 324:65−70,1995)ように、p−ニトロフェニルα−ガラクトシドを用いてpH6.5で約30〜40U/mgの比活性を有したが、四糖群B基質を用いると、たった17mU/mgであった。従って、この酵素は、群B抗原を破壊するのに比較的不活性であり、B四糖に対して好ましい酵素は、群B基質とかなりより良い速度論的効率を示すようである。
【0042】
p−ニトロフェニル α−N−アセチルガラクトサミニン、および血液型群A抗原の代表としての四糖群Aハプテン基質(構造3AMC誘導体)を用いた活性を比較する、組換えニワトリ肝臓α−N−アセチルガラクトサミニダーゼの相対的な比活性の本発明者らの最初の分析は、100倍を超える顕著な差を再び明らかにした。従って、先に報告されたニワトリα−N−アセチルガラクトサミニダーゼは、p−ニトロフェニルα−N−アセチルガラクトサミニンを用いて約50U/mg(pH3.65)の比活性を有した(Zhuら,Protein Exp and Purification 8:456−462,1996)が、四糖群A基質を用いて、たった0.2U/mg(pH5.5)(0.3U/mg(pH3.65))であった。従って、この酵素は、群A抗原の破壊において相対的に非常に非効率である。
【0043】
これらの2つの酵素が血球の酵素的変換における先端技術の性能を構成し、そしてこれらが、両方の酵素が酸性pHでのみ血球変換を実施する事に加えて、細胞を変換しない(群A)かまたは必要とされる酵素量に起因して実施不可能である(群B)かのいずれかであるので、血液変換における使用のための酵素の改善された速度論的特性が必要とされ、そして最初の同定のための1つの類似のストラテジーが、p−ニトロフェニルおよび複合体A/B基質を用いて活性の比を分析することであることが明らかである。群Aまたは群Bの複合体基質の対する好ましいまたは排他的な活性を有する酵素は、血球変換においてより効率的に実行するようである。
【0044】
群A血球を変換することにおける過去の困難性は、主に、強力なA1亜群を変換することができないことに起因した。上記のように、群A1亜群は、他の亜群よりも多いA抗原を有するが、グリコスフィンゴリピドの形態で繰り返しA構造もまた含む(表1、構造6)。A2および可能なより弱い亜群はまた、A拡大シリーズのグリコスフィンゴリピド(H−AおよびGal−Aと指定される)(表1、構造21、および25)を含むが、これらは、元々、Clausenら(Clausenら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 82(4):1199−203,1985,Clausenら,J Biol Chem.261(3):1380−7,1986,Clausenら,Biochemistry 25(22):7075−85,1986,Clausenら、J Biol Chem.262(29):14228−34,1987)によって記載されるように、抗A抗体と反応しない。これは、過剰なα−N−アセチルガラクトサミニダーゼが、上記のように分類試薬を用いて亜群A2細胞型をOとして処理したという発見によってさらに確認された。従って、亜群A2と比較して、亜群A1を変換することの困難性は、ある量のA抗原における定量的な差、A1細胞のみの反復Aグリコスフィンゴリピドの存在、またはこれらの組合せに起因し得る。群A変換における使用のための好ましいα−N−アセチルガラクトサミニダーゼの重要なパラメーターは、反復Aグリコスフィンゴリピド上の末端αGalNAc残基を効率的に切断する能力である。組換えニワトリ肝臓α−N−アセチルガラクトサミニダーゼの効率性の分析は、A2型四糖AMC誘導体(構造3)および反復A3型AMC誘導体(構造6)の比較可能な比活性(約0.3U/mg)を明らかにした。ニワトリ肝臓α−N−アセチルガラクトサミニダーゼが、全ての群A細胞を変換しないことは、独特のA1構造に起因しないことが、このことから結論づけられ得る。さらに、このデータは、A四糖がα−N−アセチルガラクトサミニダーゼの速度論的特性および特異性を決定し、血球変換におけるそれらの性能の予測のために使用されるのに十分な構造の群A(およびB)抗原を含むことを示し得る。
【0045】
好ましいα−N−アセチルガラクトサミニダーゼおよびα−ガラクトシダーゼは、中性pHで最適であり、単細胞生物(例えば、細菌および酵母)における組換えタンパク質として対費用効果的に産生され得る。本発明は、AおよびBの四糖AMC誘導体基質を使用し、そして中性pHでの活性を測定して、好ましい酵素活性についてのスクリーニングアッセイを開発した。さらに、活性は、複合体基質に対する優先性または排他性を有する活性を同定するために、p−ニトロフェニル単糖類誘導体を使用して、活性を比較した。大きなパネルの細菌および真菌の単離物(3100)についてのこのスクリーニングの適用は、AまたはBの四糖AMC基質を用いて測定されたα−N−アセチルガラクトサミニダーゼまたはα−ガラクトシダーゼの活性を発現するいくつかの細菌単離物を同定したが、対応のp−ニトロフェニル単糖類基質では活性レベルがないかまたは些細なレベルであった。各活性の1つは、Streptomuces株としてこれらを血清型特徴付けおよび遺伝子型特徴付けした後に、さらに分析された。α−N−アセチルガラクトサミニダーゼ活性を発現することが決定された株#8の分析は、この活性が、不溶性であり、細胞塊と会合していたことを明らかにした。株#8は、2002年2月14日に、American Type Culture Collection(ATCC)に寄託され、そしてATCC寄託番号PTA−4076と指定された。対照的に、α−ガラクトシダーゼ活性を発現すると決定された#2357は、この活性が、可能性であり、そしてFrenchプレスの上清に見出されたことを明らかにした。株#2357は、2002年2月14日に、American Type Culture Collectionに寄託され、そしてATCC寄託番号PTA−4077と指定された。可溶性タンパク質を精製することはかなり単純であるので、本発明者らは、最初に、#2357由来の酵素タンパク質を精製し、そして配列決定することを選ぶ。#2357の活性は、B四糖基質を用いて、10Umgより高い比活性に精製されたが、p−ニトロフェニルα−ガラクトシドを用いた活性は、検出可能でなかった。得られた調製物のSDS−PAGE分析は、40〜80kDの領域において3〜4のタンパク質バンドを明らかにした。調製物のゲル濾過分析は、40〜80kDの分子量を示すBSAと匹敵する活性の移動を示した。単一の短い配列を得た:
Phe−Ala−Asn−Gly−Leu−Leu−Leu−Thr(配列番号1)。
【0046】
部分的に精製されたα−ガラクトシダーゼ活性の基質特異性の詳細な分析は、分枝B血液型群構造に対して先例のない良好な特異性を示し、そしてα1−3またはα1−4のガラクトース残基によってキャップされた線形構造が切断されなかったことを示した。pH最適の分析は、これが、5.5〜7.0であることを示した。従って、同定されたα−ガラクトシダーゼ活性は、制限された基質特異性、群B構造に対する高い比活性、およびpH最適に関して、先行技術における酵素よりも非常に好ましい。
【0047】
#8のα−N−アセチルガラクトサミニダーゼ活性の予備的分析は、同様の特性を示したが、直鎖状構造もまた切断した。精製が困難であることに起因して、この酵素の比活性を評価することは可能でなかったが、0.1U/mgでの部分的に精製した調製物でさえ、p−ニトロフェニル単糖誘導体についての検出可能な活性は示さなかった。
【0048】
2つの同定された活性および部分的に特徴付けられた活性が、性質が似ており、そして以前に報告されたあらゆるα−ガラクトシダーゼ活性およびα−N−アセチルガラクトサミニダーゼ活性とは全く異なるという知見は、独特の相同なグリコシダーゼの新規ファミリーが、用いられたスクリーニングストラテジーによって同定されることを強力に示唆した。
【0049】
本発明者らは次いで、本発明者らの選択アッセイを用いて全ての市販のα−ガラクトシダーゼおよびα−N−アセチルガラクトサミニダーゼのアッセイに着手し、好ましい特異性を有する酵素が入手可能であるか否かを決定した。AテトラサッカリドAMC誘導体およびAヘプタサッカリドAMC誘導体について、単純なαGalNAc単糖誘導体と比較して相対的に高い基質特異性を示す、1つのα−N−アセチルガラクトサミニダーゼ(NEBのα−N−アセチルガラクトサミニダーゼ)が同定された。この酵素は、供給業者(New England BioLabs Inc,カタログ番号P0734B)によって、特許株に由来し、かつE.coliにおいて発現されると開示され、そしてその基質特異性は、オリゴサッカリドからの末端α−GalNAc結合の加水分解を触媒すると記載されている。詳細には、酵素とともに供給された材料に、この基質特異性が、p−ニトロフェニル−α−D−N−アセチルガラクトサミノピラノシド(p−ニトロフェニルα−GalNAc)およびAテトラサッカリドAMC基質(構造3〜構造8)を含むと開示される。本発明者らは、科学文献においても他の箇所でも、この酵素に関してさらなる情報を見出さなかった。本発明者らの基質パネルを用いてのこの酵素の反応速度特性の分析は、この酵素が、AテトラサッカリドAMC基質について約0.25U/mgの比活性を、そしてp−ニトロフェニルαGalNAcについて2.5U/mg未満の比活性を有すること明らかにした。さらに、この酵素は、6.0〜8.0という広い至適pHを有する。この酵素は、AテトラサッカリドAMC基質についての中程度の優先的基質特異性しか示さず、そしてこの基質についての比活性は比較的低いが、この酵素は、血球変換において用いられるべき最適酵素の提案された特性を部分的に有し、そしてこれは細菌において発現され得る。
【0050】
上記のように、同定されたStreptomycesのα−ガラクトシダーゼは、Bテトラサッカリド基質についての、10U/mgを超える比活性を有し、そしてこれは、中性pHにて最大速度で機能する。しかし、この酵素は、血球変換におけるその性能の評価のために必要とされる量および純度では入手可能でなかった。この同定されたStreptomycesのα−N−アセチルガラクトサミニダーゼは、同様に入手可能でなかった。このNEBのα−N−アセチルガラクトサミニダーゼは、Aテトラサッカリド基質についてのその比活性はほんの約0.25U/mgであるとはいえ、2つの同定されたStreptomyces活性と同じ同定特徴を有するので、純粋な組換え形態でのこの入手可能性は、この新たなクラスのグリコシダーゼの、血球変換における評価を可能にした。
【0051】
それゆえ、本発明者らは、上記のスクリーニングおよび選択のストラテジーにおいて用いられるα−N−アセチルガラクトサミニダーゼの提案された好ましい特性が、赤血球の酵素変換において改善された特徴を有する酵素を実際に選択したことを確認するために、A型血球変換におけるNEBのα−N−アセチルガラクトサミニダーゼの性能を試験した。このNEBのα−N−アセチルガラクトサミニダーゼは、中性pHでのA1血球およびA2血球の両方の変換において顕著な効率を示した。酵素反応において30%という固定されたヘマトクリットを用いて、変換プロセスの多数のパラメーターを分析した。好ましい緩衝液系は、pH6.5〜pH7.5での200mM〜300mMのグリシンである。以下を含むがこれらに限定されないいくつかの添加物をこの緩衝液系に添加し得る:1mM〜5mM NaCl、1mM〜5mM CaCl2、1mM〜10mMリン酸緩衝化クエン酸塩、0.25mMクエン酸三ナトリウム、および300〜10,000の種々の分子量の0.1%〜10%ポリエチレングリコール(PEG)。60分間(30%ヘマトクリット)において、約5mU/mlのNEB α−N−アセチルガラクトサミニダーゼは、A2細胞を変換して、そして約20mU/mlではA1細胞を変換して、慣用的な血液銀行試薬および手順によってOと分類される細胞にした。増大した量の使用酵素は、変換に必要な時間の短縮をもたらした。変換された細胞は、抗H試薬とO細胞として反応し、そして変換された細胞の物理的パラメーターの分析は、未処理細胞と何の違いもないことを明らかにした(メトヘモグロビン、2,3DPG、ATPおよび浸透圧ぜい弱性)。本発明者らが知る限り、これは、インタクトなA1型細胞の、Oと分類される細胞への、酵素的変換の初めての例である。
【0052】
A型細胞の変換のために必要とされる、E.coli発現α−N−アセチルガラクトサミニダーゼの量(5〜20mU/ml)は、20〜80μg/ml酵素タンパク質に等しい。これは、先行技術においてA2細胞を変換するために用いられたα−N−アセチルガラクトサミニダーゼの量(3mg/ml)と比べてかなりの改善である。これはまた、コーヒーマメのα−ガラクトシダーゼ(80%ヘマトクリットにて6mg/ml)またはGlycine maxのα−ガラクトシダーゼ(16%ヘマトクリットにて50μg/ml)のいずれであろうと、B細胞を変換するために用いられたα−ガラクトシダーゼの量と比較しての改善である。さらに、NEBのα−N−アセチルガラクトサミニダーゼを用いた変換を中性pHにて行ったが、一方、過去の他の全ての変換は、酸性pHである4.5〜5.8にて行われた。
【0053】
それゆえ、E.coli発現α−N−アセチルガラクトサミニダーゼの性能は、上記のような基準によって定義されたとおりの、この提案された新たなクラスのエキソ−グリコシダーゼの特性が、AおよびBの血球変換において改善された特性を有することを明らかに確認する。さらに、A型テトラサッカリドについてのNEBのα−N−アセチルガラクトサミニダーゼの比活性と比較して、血液型Bテトラサッカリド基質について40倍以上高い比活性を有するStreptomycesのα−ガラクトシダーゼの同定および特徴付けは、このStreptomyces酵素が、変換において40倍以上少ない(すなわち、反応中30%ヘマトクリットにおいて0.5μg/ml〜2μg/mlの)タンパク質を必要とし得ることを示す。従って、1単位のパックされた血球(約220ml)の変換は、0.35mg/単位〜1.4mg/単位未満を必要とする。本発明の細菌発現技術、酵母発現技術および真菌発現技術を用いて、5US$/mg〜10US$/mgにて組換え酵素を産生することが可能である。それゆえ、血球の酵素的変換は、本発明によって提供される酵素の特性および性能を有する酵素を必要とすることが明らかである。
【0054】
系統8および系統2357の両方は、2002年2月14日付けで、アメリカン タイプ カルチャー コレクションに寄託され、そして、これらは、それぞれ、ATCC寄託番号PTA−4076および同 PTA−4077が割り当てられた。特許手続上の微生物の寄託の国際的承認に関するブタベスト条約の合意の下で、ATCCに対するこれらの寄託は行われた。特許が発行される期間の終わりの前のこの寄託物の条件のために、この保管においては、要求されたとしても、分与することはないが、サンプルを刷新する義務を本出願人は承認する。本出願人はまた、ATCCにこの特許の発行を知らせる責任を認め、特許が発行されるときに、この寄託物は、公に利用可能となる。そのときの前に、この寄託物は、C.F.R.第37章第1.14節およびU.S.C.第35章第112節に基づき、特許庁にとって利用可能である。
【実施例】
【0055】
(使用した一般的な方法:)
7−アミノ−4−メチル−クマリン誘導体のような、一連の複雑な血液型群ABHのオリゴサッカリド構造は、表II、表IIIおよび表IVにおいて列挙されるように、アルバート ケミカル リサーチ カウンシル(Alberta Chemical Research Council)によってつくられた慣習であった。他の構造が、異なる供給業者(Sigma,CalbioChem,New England Biolabs)から入手可能であった。酵素は、これまで報告されているように(Zhuら,Protein Expr Purif.8(4):456−62,1996,Zhuら,Arch Biochem Biophys.324(1):65−70,1995)調製されるか、または指示されるような供給業者から購入された。使用した全ての試薬は、分析等級またはそれ以上のものであった。標準的な酵素アッセイを用いて様々なグリコシダーゼを以下のように実施した:
(P.pastorisにおいて発現される組換えコーヒーマメα−ガラクトシダーゼ:)
p−ニトロフェニルモノサッカリド誘導体を用いたアッセイを、以下の2つの手順によって実施した:
i)50mMクエン酸ナトリウムおよび20mMリン酸ナトリウム(pH5.5)を含む総容積0.5mlの反応混合物中に1.25μmolの基質を、26℃にて、10分間でインキュベートした。等容積の0.2Mホウ酸ナトリウム緩衝液(pH9.8)を添加することによって、反応をクエンチした。遊離したp−ニトロフェノールの量を、p−ニトロフェノールの標準曲線(0.01μmol〜0.15μmol)と比較して、405nmの吸光度を測定することによって決定した;
ii)50mMクエン酸ナトリウムおよび20mMリン酸ナトリウム(pH 5.5)を含む総容積0.5mlの反応混合物中の1.25μmol基質を、26℃でインキュベートした。5μlアリコートを、異なる時点(0分、5分、15分、30分、60分)で採取して、生成物の発生を追跡し、そして、オルシノール染色によって可視化した。生成物の発生を、クロロホルム−メタノール−水(容積/容積/容積:60/35/8)中の高速薄層クロマトグラフィー(HPTLC)によって分析した。
【0056】
(誘導化オリゴサッカリド基質を用いたアッセイ)
誘導化オリゴサッカリド(AMC,OGr)基質を用いたアッセイを、以下の手順によって実施した:
iii)50mMクエン酸ナトリウム(pH6.0)を含む総容積10μlの反応混合物中の1(AMC)nmolまたは5(OGr)の基質を、26℃でインキュベートした。2.5μl〜3.0μlのアリコートを、異なる時点(0分、15分、30分、60分)で採取して、生成物の発生を追跡した。生成物の発生を、クロロホルム−メタノール−水(容積/容積/容積:60/35/8)中のHPTLCによって分析し、そして、UVまたはオルシノール染色によって可視化した。
【0057】
遊離したオリゴサッカリド基質を用いたアッセイを、以下の手順によって実施した:
iv)5mmol基質を、26℃または30℃で30〜180分間にて、50mMクエン酸ナトリウム(pH6.0)を含む10μl反応容積の中でインキュベートした。生成物の発生を、クロロホルム−メタノール−水(容積/容積/容積:30/60/10)中のHPTLCによって分析し、そして、オルシノール染色によって可視化した。
【0058】
基質に対するKmを決定するためのアッセイを、以下のように改変した:
v)0.1〜0.5μgの酵素を使用してαGal p−ニトロフェニル基質の濃度を、5.0mMから0.04mM(5pmol/10μl)で変化させた。
【0059】
P.pastorisで発現される組換えニワトリ肝臓α−N−アセチルガラクトサミニダーゼ:
p−ニトロフェニルモノサッカリド誘導体を用いたアッセイを、以下の2つの手順で実施した:
vi)1.25μmolのαGalNAc p−ニトロフェニルモノサッカリドを、50mMクエン酸ナトリウムおよび20mMリン酸ナトリウムを含む試験管内で、pH2.8、37℃にて、60分間に亘りインキュベートした。5.0μlのアリコートを、異なる時点(0分、15分、30分、60分)で採取して、生成物の発生の速度論を追跡した。生成物の発生を、クロロホルム−メタノール−水(容積/容積/容積:60/35/8)中の高速薄層クロマトグラフィー(HPTLC)によって分析し、p−アニスアルデヒドで染色し、そして、UVまたはオルシノール染色によって可視化した。
【0060】
(市販の組換えα−N−アセチルガラクトサミニダーゼ(New England Biolabs)):
vii)0.05Mリン酸ナトリウム緩衝液pH7.0を含む試験管中のαGalNAc p−ニトロフェニルモノサッカリド誘導体の出発濃度としての、0.5mMを、これを等容積の緩衝液を混合することによって、続いて、2倍に希釈した。0.5μgの酵素を、各試験管に添加し、そして、37℃で10分間に亘ってインキュベートした。等容量の0.2Mのホウ酸ナトリウム緩衝液(pH9.8)を添加することによって、この反応をクエンチした。遊離したp−ニトロフェノールの量を、405nmで吸光度を測定することによって決定した。
【0061】
(実施例1:A/B血液細胞変換において以前に使用された、α−N−アセチルガラクトサミニダーゼおよびα−ガラクトシダーゼの、詳細な基質特異性の特徴付け)
赤血球のB抗原性活性およびA抗原性活性を排除するために、過去において使用された最も有効なエキソグリコシダーゼは、それぞれコーヒーマメα−ガラクトシダーゼおよびニワトリ肝α−N−アセチルガラクトサミニダーゼであった。これらの酵素は、広範囲に研究されており、そして赤血球変換におけるこれらの特徴および性能は、上で参照されるように、文献および特許出願に記載されている。
【0062】
((i)異なる基質との比活性(U/mg))
表IIは、p−ニトロフェニル単糖類誘導体とのこれらの酵素の報告された比活性を列挙する。1単位は、規定された最適なアッセイ条件下で1分間に1マイクロモルの基質を変換する活性として定義される。p−ニトロフェニル基質を用いるアッセイを、使用した基質の10%未満を用いて、初速度で評価した。
【0063】
【表2】
【0064】
本発明において、精製した組換えコーヒーマメα−ガラクトシダーゼおよびニワトリ肝α−N−アセチルガラクトサミニダーゼについて、類似の結果を得た。A抗原およびB抗原に類似のオリゴ等基質との比活性の情報は、報告されていない。このことはおそらく、このような化合物の制限された利用可能性に起因する。本発明において、複合体Aおよび
Bの構造を合成し、そして赤血球において見出されるような抗原を模倣する基質とのこれらの酵素の反応速度論的パラメータの分析は、赤血球の変換においてより良好な特性を有する新規な酵素を選択するための基準を規定する際に役立つと予測された。
【0065】
表IIIに示されるように、これら2つの酵素の、四糖類AMC誘導体との比活性の分析は、p−ニトロフェニル単糖類誘導体を用いて得られる活性より劇的に低かった。
【0066】
【表3】
【0067】
1 比活性を、以下の実施例に記載されるように、3つの時間点(20分、40分、および60分)において評価した基質の約50%および100%の最終変換でのアッセイを使用して決定した。
【0068】
酵母中で発現され、そして均質まで精製された組換えコーヒーマメα−ガラクトシダーゼの比活性は、Galα1−pNPを用いて(最適なpH6.5において)32U/mgを示した。しかし、組換えコーヒーマメα−ガラクトシダーゼの比活性は、この酵素での赤血球の酵素的変換のために使用される最適なpH(pH5.5)において、血液型Bの四糖類−AMC基質を用いて測定される場合に、ほんの17mU/mg(約2000分の1の低さ)であった(表III)。
【0069】
同様に、ニワトリ肝由来の組換えα−N−アセチルガラクトサミニダーゼは、非血液型A構造に対する強い優先を示し、最高の活性が、非天然基質GalNAcα1−pNPを用いて測定された。酵母中で発現され、そして均質まで精製された組換えニワトリα−N−アセチルガラクトサミニダーゼの比活性は、最適な3.65のpHにおいて、GalNAcα1−pNPを用いて、約50U/mgを示し(表II)、一方でほんの0.3U/mg(166分の1の低さ)が、pH3.65において、血液型A四糖類−AMC基質を用いて測定された(表III)。pH5.5における比活性は、ほんの0.2U/mg程度に低かった。
【0070】
Acremonium sp.およびPatella vulgataのα−N−アセチルガラクトサミニダーゼについて、類似の結果が見出された(示さず)。
【0071】
((ii)異なる基質についてのKm)
コーヒーマメα−ガラクトシダーゼおよびニワトリ肝α−N−アセチルガラクトサミニダーゼの、異なる基質での報告されたミヒャエーリス−メンテン定数KmおよびVmax(ラインウィーヴァー−ブルクプロットから決定した)を、表IVに示す。
【0072】
表IV:モノサッカリド誘導体を含むα−ガラクトシダーゼおよびα−N−アセチルガラクトサミニダーゼの見かけのKmおよびVmax
【0073】
【表4】
【0074】
1 Zhuら,(1995)Arch Biochem Biophys 324:65−70、2 Vosnidouら,Biochem Mol Biol Int 46(1):175−186,1998、 3 Zhuら,(1996)Protein Exp and Purification 8:456−462.意味:n.d.=決定せず。
【0075】
本発明において、類似のKm値を、組換え精製コーヒーマメα−ガラクトシダーゼおよびニワトリ肝臓α−N−アセチルガラクトサミニダーゼについて得た。これらのKm値は、比較的高く、そして10〜100倍低いKmを有する酵素は、抗原のほぼ完全な除去が重要であると予想される場合、赤血球変換に好ましい候補を示す。
【0076】
従って、全ての基質を含むこれらの酵素の観察された高いKmは、赤血球の変換におけるこれらの酵素の乏しい性能の別の理由を示すようである。
【0077】
R.torguesから見かけの均一性まで単離されたα−N−アセチルガラクトサミニダーゼは、GalNAcα-pNPに対する50U/mgの比活性および2〜8mMの
Kmを有することが報告されている(Hoskinsら、J Biol Chem.272(12):7932−9,1997)。この酵素は、中性pH最適条件を有するようであるが、実験は、現在まで、A型細胞の効率的な酵素的変換を証明できていない(Hoskinsら、Transfusion.41(7):908−16,2001)。この酵素の乏しい性能は非常に高いKmに関連しているようである。
【0078】
(iii)異なる基質についてのpH最適条件
コーヒーマメおよびダイズ(グリシンマックス)(Glycine max)のα−ガラクトシダーゼのpH最適条件は、広く、そして中性のpHを含むことが報告されている。pH最適条件を測定するためのアッセイを、簡単な人工α−Galモノサッカリドp−ニトロフェニル誘導体を用いて実施した。それにもかかわらず、これらの酵素のいずれも、中性pHにおける血球変換において機能せず、そして変換は、pH5.5〜6.4においてのみ首尾良く観察された(上記の考察を参照のこと)。この現象に関する知見を提供するために、本発明者らは、コーヒーマメ酵素のpH最適条件を、p−ニトロフェニルガラクトースならびにオリゴサッカリド基質のBテトラサッカリドおよびGaliliペンタサッカリドを用いて分析した。図1に示されるように、単純なモノサッカリド基質を用いた場合のpH最適条件は、以前に報告されたように、広く、6.4で最大活性を有した。逆に、Bテトラサッカリド基質を用いた場合のpH最適条件は、酸性であり、図2に示されるように、3.5〜5.0で最大であった。さらに、同様の低いpH最適条件が、図3に示されるように、Galiliオリゴサッカリドの切断について観察された。
【0079】
メリビオース、ラフィノースおよびスタキオースを用いた場合のコーヒーマメ酵素のpH最適条件は、低い(3.6〜4の間)ことが報告されている(Zhuら、(1995)Arch Biochem Biophys 324:65−70,CourtoisおよびPetek(1996)Methods Enzymol 3:565−571)。これは、BおよびGaliliオリゴサッカリドについての本発明者らの知見と一致しており、このことは、酵素が一般に、天然のジサッカリドおよびオリゴサッカリドを用いた場合に低いpH最適条件を有することを示唆している。
【0080】
p−ニトロフェニル基質を用いた場合の酵素のpH最適条件は、人工的であり、そして天然の基質を用いた場合の酵素の特性を示すよりもむしろアグリカン(aglycan)の物理的特性に関連するようである。従って、本明細書中で示されるデータは、この酵素が中性のpHにおいて赤血球変換を行わないことについての説明を提供し得る。
【0081】
ニワトリ肝臓α−N−アセチルガラクトサミニダーゼは、上記のように、GalNAcα−pNPを使用してpH3.65のpH最適条件を有することが報告された。血液型AテトラサッカリドAMC基質を用いた場合のこの酵素活性に対するpHの影響の分析は、報告されたデータと一致し、そして3.5〜4.5のpH最適条件を示した(示さず)。
【0082】
上記のように、ニワトリ肝臓α−N−アセチルガラクトサミニダーゼおよびコーヒーマメα−ガラクトシダーゼ酵素は、ヒトリソソーム酵素を含む大きな相同グリコシダーゼ遺伝子ファミリーのメンバーである。リソソーム酵素は、一般に、酸性pHで機能し、そしてこれらの全ては、酸性pH最適条件を有すると報告されている。従って、この群と配列類似性を有する他の相同酵素は、酸性pH最適条件のこの特徴的な特性を共有するようである。従って、本発明者らは、適切な基質および中性pHを使用して、α−N−アセチルガラクトサミニダーゼおよびα−ガラクトシダーゼの活性のための新たな供給源をスクリーニングすることを選択する。
【0083】
(実施例2:中性pHにおける血液型Aおよび/または血液型Bの構造に対して高度に優先的または排他的な基質特異性を有するα−N−アセチルガラクトサミニダーゼおよびα−ガラクトシダーゼの同定)
血液型Aおよび血液型Bの構造に対して好ましいおよび/または排他的な特異性を有する潜在的な酵素を同定するために、真菌単離体および細菌単離体の大きなパネルを分析した。血液型A/BテトラサッカリドAMC誘導体およびGal/GalNAcα−pNP誘導体を用いる最初のスクリーニングのためのプロトコールを開発した。簡単には、培養物の貯蔵した凍結ストックを、YM斜面培養物(管サイズ:1.8×1.8cm)に播種し、27℃で8日間増殖させ、そしてこの培養物(胞子)を、5mlの凍結剤(10%グリセロール+5%ラクトース)で洗い流し、次いで解離(ネジ付き管1.3×13cm中、ガラスビーズと共に激しく回転)することにより収集した。1mlの斜面培養物を、有酸素発酵のための適切な特定の培地に、72〜96時間かけて播種した(真菌培養について25℃、および放線菌類培養について28℃)。各増殖培養物の2.5mlのサンプルを、約8〜10個のガラスビーズ(サイズ=直径3mm)を含むネジ付き管(1.3×13cm)中で、15分間撹拌することによって解離し、その後、クエン酸緩衝液を用いてpHを6.5に調整し、そしてこの解離した培養物を、管中、−20℃で凍結した。凍結培養物を解凍し、そして上記のようにして再び解離し、そして2100×gで15分間遠心分離した。この上清は、初期アッセイのための酵素供給源として働いた。10μlのサンプルを、以下のように試験した:
(A型およびB型のテトラサッカリドAMC基質を用いるアッセイ)
50mMのクエン酸ナトリウム(pH6.5)、0.25nmolのオリゴサッカリドAMC基質および10μlの上記のような酵素供給源を含有する反応混合物(10μl)を、30℃でインキュベートし、そして生成物の発生を、異なる時間間隔(20分〜48時間)でHPTLCによりモニタリングした。
【0084】
(p−ニトロフェニルモノサッカリド基質を用いたアッセイ)
上記のような、50mMクエン酸ナトリウム(pH6.5)、2〜5mMモノサッカリドpNP基質および10μl酵素供給源を含む反応混合物(20μl)を、30℃でインキュベートし、そして生成物の発生を、異なる時間間隔(20分間〜24時間)で、OD405nmまたはHPTLCによりモニターした。
【0085】
(α−ガラクトシダーゼ活性についてのスクリーニング)
合計2400個の単離体をスクリーニングし、そしてB群テトラサッカリドAMC基質との顕著な活性を有する5つの株を単離した。これらの株は、小規模発酵のために選択され、これらはFrenchプレス、(NH4)2SO4での沈殿、およびQ−Sepharoseでの分離によって処理された。Q−Sepharose画分において見出された活性ピークのプールについてのさらなる分析により、(表VI)に列挙されるような、2つの基質との比活性が明らかにされた。
【0086】
(表VI:同定された5つのStreptomyces α−ガラクトシダーゼ活性の基質特異性)
【0087】
【表6】
【0088】
1比活性の分析を、Q−Sepharoseクロマトグラフィーからプールされた活性画分において決定した。精製を、10,000psiでのFrenchプレス処理に供されたプロテアーゼインヒビター(PMSF、ロイペプチン、ペプスタチン(pepstain)、EDTA)を含むブロス(60ml)から行った。この調製物を、13,000×gで30分間にわたり遠心分離し、そして上清を、15%および50%の硫酸アンモニウム沈降によって分画した。15〜50%のペレットを、20mMのTris(pH7.5)中に溶解し、そして0.45μmフィルターを通して濾過した。清澄化濾液を、5ml
Pharmacia Hi−trap Qカラムにロードし、そしてタンパク質を、0〜0.15M NaCl勾配で溶出した。表示:n.d.決定されず。
【0089】
5つの候補株のB群テトラサッカリドAMC基質を用いたHPTLC分析を、図4に示す。5つの株の活性は、B群テトラサッカリドAMC基質を、H トリサッカリドAMCとして移動する生成物へと、そしていくつかの場合にはジサッカリドAMC誘導体へと、種々の程度で切断した。この後者は、夾雑したα−フコシダーゼ活性に起因する。
【0090】
株2057および2357は、B群テトラサッカリド基質との最高の活性を発現した。αGal p−ニトロフェニル基質との活性は、B群テトラサッカリド基質との活性と相関しなかった。精製の間に、この2つの活性は分離され得ることがさらに確認された。このことは、これらの2つの活性が、異なるタンパク質に由来したことを示す。株2357のみが、αGal p−ニトロフェニル基質との活性を完全に欠損した。このことはさらなる分析をより容易にする。そしてこの活性を、さらなる精製および特徴付けのために選択した。#2357の小規模発酵を実施し、そして酵素活性を、Frenchプレス(表VIの説明文を参照のこと)後の溶解画分において見出した。
【0091】
コロニー形態による株#2357の血清型決定を、Accugenix Newark,DEによって実施し、これを放線菌類として確認した。500塩基対のShort Tandem Repeatsによる遺伝子型決定は、株#2357を、1.60%差異で、Streptomyces griseoplanusの属に位置づけた。
【0092】
(α−N−アセチルガラクトサミニダーゼ活性についてのスクリーニング)
A群テトラサッカリドAMC基質との顕著な活性を有する合計4つの株を同定した(表IV)。
【0093】
(表VII:同定された4つのStreptomyces α−N−アセチルガラクトサミニダーゼ活性の基質特異性)
【0094】
【表7】
【0095】
1精製およびアッセイは、表VIに対する説明文に記載の通り。
【0096】
4つの候補株のA群テトラサッカリドAMC基質を用いたHPTLC分析を、図5bに示す。
【0097】
A群テトラサッカリド基質との顕著な活性を有する同定されたすべての株は、p−ニトロフェニル誘導体とは、全くまたはほとんど検出可能なレベルの活性を示さなかった。
【0098】
株8、1488、および1647は、A群テトラサッカリド基質と最も高い活性を発現したが、#8における活性のみが安定であり、そしてさらなる特徴付けのために回収され得た。この単離体を、さらなる分析のために選択した。小規模発酵を実施した。そして、酵素活性は、不溶性であり、そしてFrenchプレス後のペレット化画分と関連付けられることが見出された。
【0099】
コロニー形態による株#8の血清型決定を、Accugenix,Newark,DEによって実施し、これを放線菌類として確認した。500塩基対のShort Tandem Repeatsによる遺伝子型決定は、株#8を、0.00%差異で、Streptomyces chattanoogensisの属に位置づけた。
【0100】
上記のデータにより、この細菌が、複合的な血液型A抗原およびB抗原の免疫優性なαGalNAc残基またはαGal残基に対して独特な基質特異性を有するα−ガラクトシダーゼおよびα−N−アセチルガラクトサミニダーゼエキソグリコシダーゼを含むことが示された。このような酵素は、赤血球において見出されるような基質に対するその高度に優先的または排他的な特異性に起因して、酵素学的な血球変換における使用に好ましいことが提案される。
【0101】
(実施例3:分枝血液型B抗原に対する排他的な基質特異性を有し、このような基質との予期せぬ高い比活性を有する、Streptomyces株2357番から同定された新規のα−ガラクトシダーゼの単離および特徴付け)
20リットルの発酵培養物を、フレンチプレス法により処理した。主なα−ガラクトシダーゼ活性が、10,000×gでの遠心分離後の上清に存在することを決定した。この上清を、硫酸アンモニウム沈殿により分画し、そして20〜60%画分に約70%の活性を見出した。20〜60%カットの沈殿物を、20mM Tris(pH7.5)中に溶解し、そして遠心分離により清澄化した。この上清を、Q−セファロース(緩衝液20mM Tris、pH7.5、0〜1.5MのNaCl勾配)、S−セファロース(緩衝液20mM NaOAc、pH5.3、0〜0.1MのNaCl勾配)、におけるクロマトグラフィー、およびS12ゲル濾過クロマトグラフィー(0.5M NaClを含有する緩衝液20mM NaOAc、pH5.3、または0.5M NaClを含有する20mM NaPO4、pH6.5)により連続的に分画した。この精製スキームを通じて、B四糖AMC基質との酵素活性を、回収した画分においてモニタリングした。Galα−pNPとの活性の欠如を、分離工程を通して確認した。最終的に精製した酵素活性を、ウシ血清アルブミン(標準)の溶出に類似する、分子量約70,000に対応して溶出したS12クロマトグラフィーの画分において回収した(図6、パネルA)。S12クロマトグラフィー画分のSDS−NuPAGE分析により、α−ガラクトシダーゼ活性を含む画分において複数のバンドが明らかになったが、ピーク活性を有する画分は、40〜80kDの領域で移動するいくつかのバンドを含むに過ぎなかった(図6、パネルB)。
【0102】
最後のS12クロマトグラフィー工程からプールした酵素ピークの比活性は、約10U/mg(SDS−NuPAGEの銀染色および分子量マーカーにおけるタンパク質バンド中のタンパク質量と所望のタンパク質バンドとの比較により決定されたタンパク質)であった。ウシ血清アルブミンの溶出とこの活性の溶出を比較すると、活性がBSAの後に溶出したことが明らかになった。このことは、この活性タンパク質が、ゲル濾過クロマトグラフィーによって評価した場合、BSAより小さい(すなわち、65kdよりも小さい)分子サイズを有するという証拠を提供する(図9b)。
【0103】
ピーク活性を含有するS12クロマトグラフィーからプールした画分を、C4カラム(BioRad)(緩衝液:0.1%TFA、0〜100%のアセトニトリル勾配)を用いた逆相クロマトグラフィーによりさらに精製した。溶出したタンパク質を、SDS−NuPAGEにより分析し、70kDに移動する所望のタンパク質バンドの大部分を含む画分をプールし、そして真空下で乾燥させた。プールした画分を、SDS−NuPAGEで再度泳動し、PVDF膜にブロットし、R−250で染色した(図7)。所望のタンパク質バンドを切り出し、そしてModel 140C Microgradient Delivery SystemとModel 785A Programmable Absorbance Detectorとを備えたApplied Biosystems Model 494 Precise Protein Sequencerを用いたN末端配列決定に供した。以下のような単一の短い配列を得た:
Phe−Ala−Asn−Gly−Leu−Leu−Leu−Thr(配列番号1)。
【0104】
単離されたα−ガラクトシダーゼ活性は、均一に精製されていなかったので、得られた配列が、別のタンパク質に由来する可能性がある。この新規の酵素タンパク質およびそのコード遺伝子を単離および特徴付けるために、さらなる精製が必要であり、これは現在進行中である。
【0105】
そうであるとしても、この新規のα−ガラクトシダーゼ活性を高度に精製し、そしてこれは、B四糖を用いて、10U/mgを超える比活性を有した。この酵素調製物は、この新規の酵素の基質特異性および反応速度特性の詳細な研究を可能にした。精製された2357番α−ガラクトシダーゼの基質特異性を、末端α−Gal残基を有するオリゴ糖および誘導体の大パネルを用いて特徴付けた。このアッセイを、上記のように、1〜4nmolの基質およびこの量のB四糖AMC構造物を60分以内に切断するのに必要とされる酵素量を用いて実施した。HPTLC分析を、異なる時点で実施した。この分析の例を、図8に示す。精製された2357番α−ガラクトシダーゼ活性の基質特異性を、表VIIIに要約する。
【0106】
【表8】
【0107】
1表示:「+」:切断が60分以内に検出された、「−」:切断が、一晩のインキュベーションによって検出されなかった。直鎖三糖(トリサッカリド)およびGalili B切断反応物を、CHCl3:メタノール:H2O(30:60:10)を用いるHPTLCによって評価した。全ての他の切断反応物を、CHCl3:メタノール:H2O(60:35:8)を用いて分析した。
【0108】
比較のために、組換えコーヒーマメα−ガラクトシダーゼを、すべての分析に含めた。実施例1に記載した本発明者らの研究と一致して、コーヒーマメα−ガラクトシダーゼは、末端α−Gal残基を含むすべての構造にて活性を示した。α1−3(血液型B、およびフコースを含まない「Galiliエピトープ」)およびα1−4(血液型P1およびPk)の両方が基質であった。そのオリゴサッカライド構造の長さまたは分枝のみが、相対的活性(すなわち、完了に達するに必要な酵素の量)に対して影響を有した(比活性のみを、Galα p−ニトロフェニルおよびBテトラサッカライドAMCについて決定した)。
【0109】
著しく対照的に、Streptomyces株#2357から同定および精製した活性のみが、テトラサッカライドまたはそれより長いものとして提示された場合、血液型B構造にて活性を示す。この酵素がp−ニトロフェニルモノサッカライドαGal誘導体もメチル−ウンベリフリルモノサッカライドαGal誘導体も切断できないことは、モノサッカライドにて活性が欠如していることが、単にアグリカンおよび結合体化にのみ起因しないことを示した。結合化学に関連し得るトリサッカライド構造であるGalα1−3(Fucα1−2)Gal−AMCは、対応する構造Galα1−3(Fucα1−2)Galβ−OGrが基質として役立ったので、不活性であった。このこと以外は、Streptomyces α−ガラクトシダーゼは、すべての分枝型B群関連構造(これは、すべて、赤血球上に見出される公知のB構造を示す(表1))を効率的に利用した。これは、血液型B構造に対して独特の基質特異性を示しかつヒト血液型抗原P1および希な抗原Pkとの活性を示さない、最初のα−ガラクトシダーゼである。従って、Streptomyces α−ガラクトシダーゼによる赤血球の酵素的変換は、コーヒーマメα−ガラクトシダーゼ(Kruskallら、Transfusion 2000;40(11):1290〜8)を含む公知のα−ガラクトシダーゼによる処理とは対照的に、インタクトなP1抗原性を生じる。同様に、希なPk抗原は、酵素的変換後にインタクトであると予測される。白色人種集団の約80%が、赤血球上にP1抗原を発現し、そしてこの抗原の機能は未知であるが、A血液型抗原およびB血液型抗原に対してのみ抗原除去を制限することは、酵素的変換において重要な改善であると見なされる。
【0110】
精製Streptomyces α−ガラクトシダーゼの至適pHを、図9に示されるように分析した。BテトラサッカライドAMC基質との酵素活性は、5.5〜7.0付近の広範な至適pHを有した。従って、この酵素は、過去に使用した酵素とは対照的に、中性pHにて、赤血球変換を実施すると予測される。
【0111】
これは、単純なモノサッカライド誘導体を超える血液型B構造または血液型A構造について包括的な基質特異性を有するかまたは好ましい基質特異性さえ有する、同定された最初のα−ガラクトシダーゼ活性またはα−N−アセチルガラクトサミニダーゼ活性である。α−ガラクトシダーゼ酵素は、10U/mgより高い血液型B構造との比活性を有し、これは、実施例1に記載されるようなコーヒーマメα−ガラクトシダーゼについて測定された比活性より500倍高い。この情報は、同定され特徴付けられた他のすべてのα−ガラクトシダーゼについて利用可能ではないが、これらは、コーヒーマメα−ガラクトシダーゼと同じ乏しい特性を示しそうである。なぜなら、これらは、一般には、αGal p−ニトロフェニル誘導体と効率的に機能し、そしてこれらをコードする遺伝子は、相同性であるからである。従って、本発明において同定されたStreptomyces α−ガラクトシダーゼは、独特であり、先行技術において先行物は存在せず、そしてこの酵素について同定された速度論特性は、酵素的B型血球変換における性能について大きな期待を保持する。
【0112】
(実施例4:E.coliにおいて発現される組換えα−N−アセチルガラクトサミニダーゼの特徴付け)
New England BioLabs Inc.は、E.coliにおいて発現されるように開示された組換えα−N−アセチルガラクトサミニダーゼ(カタログ番号P0734B)を最近市販した。この酵素は、私有株に由来し、報告によると、オリゴサッカライドおよびαGalNAc p−ニトロフェニルからの末端α−GalNAc結合の加水分解を触媒する(New England BioLabs Inc.カタログ情報)。市販のエキソ−グリコシダーゼのスクリーニングにおいて、本発明者らは、このα−N−アセチルガラクトサミニダーゼが、αGalNAcモノサッカライド誘導体と比較してAテトラサッカライドAMC誘導体およびAヘプタサッカライドAMC誘導体と比較的高い比活性を有する好ましい特徴を部分的に示すことを見出した(表IX)。重要なことには、この酵素の血液型A誘導体との絶対的比活性は、例えば、ニワトリ肝酵素とかなり異なるわけではない。しかし、モノサッカライド基質と比較した相対的活性は、かなり異なる。従って、このデータは、E.coliに発現されたα−N−アセチルガラクトサミニダーゼが、血液型A抗原について良好な相対的特異性を有することを示唆する。
【0113】
(表IX:E.coliに発現されたα−N−アセチルガラクトサミニダーゼの比活性)
【0114】
【表9】
【0115】
1アッセイ条件は、以下の通りであった:p−ニトロフェニルを用いるアッセイを、0.05マイクロモル(100μM)、50mMリン酸ナトリウム(pH5.5または7.0)および0.5μg酵素を含む、反応体積0.5mlにて行った。反応を、37℃にて10分間インキュベートし、そして等体積の0.2Mホウ酸ナトリウム緩衝液(pH9.8)を添加することによりクエンチした。AMC基質を用いるアッセイを、1ナノモル基質(100μM)、50mMリン酸ナトリウムまたは0.25Mグリシン(pH5.5または7.0)、および0.05〜0.1μg酵素を含む、反応体積10μlにて行った。反応を、26℃または37℃にてインキュベートし、そして0分、15分、30分、および60分の時点でHPTLCにて分析した。タンパク質定量を、クーマシーブルー染色SDS−PAGE分析を使用し秤量BSAを比較物として使用する半定量によって、実施した。
【0116】
E.coliに発現されたα−N−アセチルガラクトサミニダーゼの微細な基質特異性の分析により、このE.coliに発現されたN−アセチルガラクトサミニダーゼが、ニワトリ肝α−N−アセチルガラクトサミニダーゼと同様に、等しく効率的な血液型Aおよび反復A構造を使用したことが明らかになった(表IX)。
【0117】
末端αGalNAc残基を備える一群の非フコシル化オリゴサッカライド構造を用いるさらなる分析により、この酵素が、A群分枝型基質と比較してこれらの基質とほぼ等しい効率を有することが示された(表X)。
【0118】
(表X:E.coli発現α−N−アセチルガラクトサミニダーゼの基質特異性)
【0119】
【表10】
【0120】
1アッセイを、1〜4ナノモルの基質(100〜400μM)、50mMのクエン酸ナトリウム(pH6.0)、および0.125μgの酵素を含む10μlの反応混合物において実施した。反応物を、31℃でインキュベートし、そして0分、30分、60分、および120分の時点で、HPTLCにより分析した。
【0121】
E.coli発現α−N−アセチルガラクトサミニダーゼは、図10の単糖基質およびオリゴ糖基質の両方についてpH6.0〜7.0を含む広範な至適pHを示した。5.5を下回る酸性のpHにおいて、この活性は、迅速に減少し、そしてpH4.4以下では、活性は、ほとんど検出不可能である。これは、赤血球変換に特徴的な好ましい中性の至適pHと共に同定された最初のα−N−アセチルガラクトサミニダーゼである。
【0122】
α−N−アセチルガラクトサミニダーゼ活性は、以下の緩衝液の型にほとんど影響されなかった:50〜250mMグリシン、0.1Mグリシルグリシン、20〜50mMリン酸ナトリウム、12.5〜25.0mMクエン酸ナトリウム、12.5〜25.0mMクエン酸ナトリウムおよび5.0〜10.0mMリン酸ナトリウム、McIlvineナトリウムpH5.5、PBS、MES。この酵素はまた、NaCl(0〜150mM)、グルタチオンおよびn−オクチル−β−D−グルコピラノシドにより影響されなかった。
【0123】
最後に、単糖誘導体についての速度定数Kmの評価により、この酵素が、実施例1(表IV)に記載されるニワトリ肝臓のα−N−アセチルガラクトサミニダーゼまたはα−ガラクトシダーゼと比較して有意に低い見かけのKmを有すること(表XI)が明らかになった。
【0124】
(表XI:E.coli発現α−N−アセチルガラクトサミニダーゼの、単糖誘導体との見かけのKmおよびVmax)
【0125】
【表11】
【0126】
1アッセイ条件は、以下の通りであった:p−ニトロフェニルを用いるアッセイを、3.9〜50ナノモル(1.5〜100μM)、50mMリン酸ナトリウム(pH5.5またはpH7.0)、および0.5μgの酵素を含む0.5mlの反応物容量で行った。反応物を、37℃で10分間、インキュベートし、そして等容量の20mMホウ酸ナトリウム緩衝液(pH9.8)を添加することによってクエンチした。遊離p−ニトロフェノールの量を、405nmでの吸光度で測定し、p−ニトロフェノールの標準曲線と比較することによって決定した。ミカエリス−メンテン定数KmおよびVmaxを、ラインウェーバー−バークプロットから決定した。
【0127】
3Zhuら、(1996)Protein Exp and Purification 8:456−462。
【0128】
さらに、予備実験の結果は、血液型Aのオリゴ糖基質についてのKmが、同様に約20μMであることを示す。この決定のために用いられるアッセイは、四糖(テトラサッカリド)AMC基質(GalNAcα1−3(Fucα1−2)Galβ1−4GalNAc−AMC)を用いる基質/生成物比の濃度測定走査を包含した。このアッセイは、低濃度では信頼性がなく、従って、Kmは、20μMより低くさえあることがあり得る。
【0129】
要するに、E.coli発現α−N−アセチルガラクトサミニダーゼは、血液型Aの基質について相対的に高い選択性を示し、中性pHで血液型A基質と最大の活性を示し、そして低いKmにより規定される有利な速度論的特性を示す。
【0130】
(実施例5:従来の型決定プロトコルにより評価される、E.coli発現α−N−アセチルガラクトサミニダーゼを用いる、A1赤血球およびA2赤血球からO表現型細胞への酵素的変換)
ヒトA型赤血球上の免疫優性Aエピトープの完全な除去は、以前に、上で詳述されるように報告されていた。弱い(weak)サブグループA2のA型血球の酵素的変換が、酸性のpHでニワトリ肝臓α−N−アセチルガラクトサミニダーゼを用いて報告されているが、変換の結果は、標準的な血液型決定手順において用いられる感度の高い型決定試薬および型決定方法により実証されなかった。以下の表XIIにおいて詳述されるように、種々の反応条件を用いるニワトリ肝臓α−N−アセチルガラクトサミニダーゼの能力を改善するための最初の試みは、完全に変換された細胞を産生することに失敗した。Dako由来のモノクローナル抗A抗体との反応性は、A2細胞について破壊され得たが、一方で、より感度の高い試薬を用いる型決定は、A型エピトープの酵素的分解が不完全であったことを明白に、明らかにした。
【0131】
(表XII.組換えニワトリ肝臓α−N−アセチルガラクトサミニダーゼを用いるA1赤血球およびA2赤血球の変換1)
【0132】
【表12】
【0133】
1ニワトリα−N−アセチルガラクトサミニダーゼを用いる変換について用いたプロトコル:
3つの変換プロトコルを、組換えニワトリ肝臓α−N−アセチルガラクトサミニダーゼを用いるA1赤血球およびA2赤血球について評価した。
【0134】
(変換プロトコル−A)
EDTAチューブに吸引しそして7日間まで4℃で保存した、A2赤血球(Beth Israel Deaconess Medical Center、Boston、MA)を、PBS(リン酸緩衝化生理食塩水、pH7.4)中で3回洗浄し、そしてPBSおよび7.5%PEGの溶液(pH7.4)中に10%まで再懸濁した。細胞を、組換えニワトリ肝臓α−N−アセチルガラクトサミニダーゼ(100U/ml)を用いて、振盪しながら、30℃で、180分間、処理した。細胞を、0.9%生理食塩水中で3回洗浄し、そして型決定のために生理食塩水中に3〜5%まで再懸濁した。
【0135】
(変換プロトコル−B)
EDTAチューブに吸引したA1赤血球(Beth Israel Deaconess Medical Center、Boston、MA)および白血球を減少させたA2赤血球(American Red Cross、New England Region、Dedham、MA)を、AABB Technical Manual、13版、Method6.6に従い、Glycerolyte57(Baxter Healthcare Corporation、Fenwal Division:Deerfield、IL)中で凍結し、そして−70℃で保存した。酵素処理の前に、細胞を、9.0%の生理食塩水、2.5%生理食塩水、および0.9%生理食塩水を用いて脱グリセロールし(American Red CrossによるImmunohematology MethodsのMethod 125に従った)、PBSおよび7.5%PEGの溶液(pH7.4)中に50%のヘマトクリットまで再懸濁し、そして組換えニワトリ肝臓α−N−アセチルガラクトサミニダーゼ(200U/ml)を添加した。反応物を、4時間にわたり撹拌しながら37℃でインキュベートし、引き続き、0.9%生理食塩水で3回洗浄し、そして型決定のために生理食塩水中に3〜5%まで最終的に懸濁した。
【0136】
(変換プロトコル−C)
細胞の起源および保存は、プロトコルBに記載したのと同様である。脱グリセロールした赤血球を、150mM NaClを有するPCI(pH5.5)中で2回洗浄し、そして150mM NaClを含むPCI中に50%ヘマトクリットまで再懸濁した。細胞を、4時間にわたり撹拌しながら37℃で組換えニワトリ肝臓α−N−アセチルガラクトサミニダーゼ(200U/ml)で処理し、引き続き0.9%生理食塩水で3回洗浄し、そして型決定のために生理食塩水中に3〜5%まで最終的に懸濁した。
【0137】
表XIIのデータから、A抗原の見かけ上の除去が、血液型決定手順(DAKO)について認可されていない1つの特定の抗血液型A特異的モノクローナル抗体によって定義される場合、に達成されることが明らかである。多くのこのような抗体が存在し、そしてこれらの特異性および低い親和性結合に起因して、これらは、血清学的な型決定目的のために不適切である。従来使用されるポリクローナル抗体試薬に代わるABOの常用の型決定用のモノクローナルカクテルの開発は、1990年代の血液バンク産業にとって主要な成果であった。これらの高感度かつ認められた常用の型決定試薬によるA抗原の除去の分析は、DAKOとは対照的に、凝集素価によって定義されるような、ごくわずかな変換しか生じない抗体を示した。この実施例において使用される型決定アッセイの詳細は、以下のとおりである:
赤血球凝集アッセイにおいて使用される認可された型決定試薬は、マウスモノクローナル抗体およびOrtho Clinical Diagnostics,Raritan,NJ;Gammma Biologicals/Immucor,Norcross,GAから入手される植物レクチンであった。非認可試薬としては、Dako製のマウスモノクローナル抗A抗体およびH.Clausenによって製造される血液型A改変体(Clausenら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA82(4):1199−203,1985、Clausenら、J.Biol.Chem.261(3):1380−7,1986、Clausenら、Biochemistry25(22):7075−85、1986、Clausenら、J.Biol.Chem.262(29):14228−34,1987)に対するモノクローナル抗体のパネルが挙げられる。型決定試薬は、製造業者の推奨および滴定によって決定されるような他のモノクローナル抗体に従って使用された。
【0138】
赤血球凝集アッセイ(室温)
1.等張性血液バンク生理食塩水中の、3〜5%の洗浄された赤血球の懸濁液を調製した。
2.抗体/レクチン試薬を一滴(約50μl)加えた。
3.赤血球懸濁液を一滴(約50μl)加えた。
4.チューブを混合し、3500rpmで15秒間遠心分離した。
5.細胞を穏やかな攪拌で再懸濁し、そして凝集について顕微試験した。
6.この凝集を、AABB 技術マニュアル(Technical Manual)第13版の方法1.8に従って、等級付けした。
【0139】
同様の結果を、精製したacremonium sp.(Calbiochem)製の真菌α−N−アセチルガラクトサミニダーゼで得た(示さず)。
【0140】
前述の実施例に記載するように、赤血球由来の血液型AまたはBのエピトープを除去するのに使用するための好ましい酵素は、オリゴ糖基質が血液型AまたはBの抗原と似ている、特に良好な力学的特性を有しているようである。このような好ましい力学的特性は、血液型AまたはBのオリゴ糖についての好ましい基質特性または排他的な基質特性、および単糖−pNP基質のような単純な単糖誘導体に対して低い活性を有するかまたは活性を有さないことで表され得る。好ましい力学的特性はまた、関連する基質に対する特に低いKmによって表され得る。さらに好ましい力学的特性は、関連する血液型活性基質に対する反応、および赤血球の品質および機能に適合する他の反応条件の中性の至適pHからなる。酵素の他の好ましい特性(例えば、サイズ、電荷、溶解度、および他の物理化学的特性)はまた、赤血球の酵素変換における性能に関する。
【0141】
改良された力学的特性を有する新規のα−ガラクトシダーゼおよびα−N−アセチルガラクトサミニダーゼは、実施例2、3、および4に記載されるように、本発明の種々の細菌株から同定された。実施例4に記載されるα−N−アセチルガラクトサミニダーゼ(New England Biolabs)は、α−N−アセチルガラクトサミニダーゼのような一例を示し、そして、上述の好ましい特性を有する酵素は、赤血球変換における優れた性能を示すという本発明者らの仮定を試験するために、十分に精製された組換え形態で利用可能であった。
【0142】
中性pHでの赤血球変換における、このα−N−アセチルガラクトサミニダーゼの性能は、表XIIIに示される。このα−N−アセチルガラクトサミニダーゼは、常用の血液バンク型決定プロトコルによってOとして規定される細胞型に、A1およびA2赤血球の両方を完全に変換し得た。
【0143】
【表13】
【0144】
プロトコル:白血球が減少した(leuko−reduced)赤血球(Oklahoma Blood Institute)またはボランティアから回収される赤血球(ACD)は、0.9%の生理食塩水中で一旦洗浄され、そして30%のヘマトクリットまで変換緩衝液中に再懸濁された。細胞を10〜20mU/ml(1単位(unit)は、他に記載される標準的な反応条件を使用して、1分間で1μmolの四糖AMCを加水分解する量の酵素として定義される)α−N−アセチルガラクトサミニダーゼ(New England Biolabs)で処理し、そして混合しながら25℃にて60分間インキュベートした。処理した細胞を0.9%の生理食塩水で1度洗浄し、生理食塩水中に3〜5%で再懸濁し、上記のとおりに型決定した。
【0145】
中性pHで、10〜20mUのα−N−アセチルガラクトサミニダーゼで処理したA1サブタイプおよびA2サブタイプの両方の赤血球は、直接的な凝集アッセイにおいて抗A型試薬に対して全体的に未反応性であった。酵素処理されたA細胞が、レクチンUlex
Europaeusに対して、コントロールのO細胞と等しく反応性になるかわりに、一般的に、抗H試薬として使用される。抗A1試薬として一般的に使用されるDolichus Biflorusに対する反応性は、処理の始めの数分間で破壊された(示さず)。
【0146】
表XIVに示されるα−N−アセチルガラクトサミニダーゼ処理された細胞の交差試験分析によって、両方のA1およびA2酵素が、Oコントロール細胞として振舞ったことが確認された。
【0147】
(表XIV.NEBα-N−アセチルガラクトサミニダーゼを用いた、変換されたA1
赤血球およびA2赤血球の交差一致分析(cross match analysis)(IS,即時スピン(immediate spin)))
【0148】
【表14】
【0149】
この結果は、O型の個体とB型の個体(彼らは、A型赤血球の血液型A抗原に対する抗体の種々の力価を有する)が、免疫優勢なαGalNAc残基が十分に取り除かれる場合、これら細胞を認識しないことを示す。「発明の背景」の節に記載し、そしてさらに表Iに示されるように、この結果は、実施例4における本発明者らの分析に合致する反復性の血液型A型構造を含有する、より少量の糖スフィンゴ脂質がH関連A型構造に完全に変換されることを示す(表I、構造21)。さらに、このH関連A型構造が免疫系によって正常なH抗原として認識されることを示す。このことは、マウスにおけるこの糖脂質抗原の免疫原性についての本発明者らの以前の研究と、合致する。(Clausenら、J.Biol Chem.261(3)1380−7、1986;Clausenら、J.Biol.Chem.261(3):1388−92、1989)α−N−アセチルガラクトサミニダーゼ酵素単独での酵素的消化が、抗A型決定試薬ならびにO型個体およびB型個体の血漿に対して、A1赤血球およびA2赤血球を無反応性にさせるという知見は、新規であり、そして普遍的に受容可能な酵素で変換されたO型細胞を提供するための、商業的に実施可能な技術の開発における、重要な進歩である。酵素変換されたB細胞は、化学的に、O型細胞と同一であることが予測される一方、酵素変換されたA細胞は、O型としての表現型をとる(phenotype)が、2つの異なる型のH抗原を有する。これら2つの大部分が、O型細胞上で見出される存在する2型H構造(表I、構造18)であるが、また、マスクされたA型の三糖からなる内部構造を有する、少量のH糖脂質が存在する(表I、構造21)。従って、α−N−アセチルガラクトサミニダーゼ酵素単独で変換されたA型細胞は、前もって調製され、そして輸血薬中で使用された、O型細胞および任意の赤血球とは異なるが、これらは、O型細胞と同一に機能することが予測される。
【0150】
E.coliで発現されたα−N−アセチルガラクトサミニダーゼ酵素を用いた、赤血球細胞の酵素変換のパラメーターについての詳細な研究を、最適化のために実施した。pHは、A型四糖AMC基質に対する酵素活性の活性に影響を与えたが、試験し、そして以下に記載したパラメーターのいずれも、この活性には有意には影響しなかった。
【0151】
(緩衝系)
図11に示されるように、最適な緩衝系は、250mM グリシンであるようである。NaP緩衝液およびPCI緩衝液(これらは、一般的にB細胞の酵素的変換のために使用される)における反応は、有意な変換を生成しなかった。
【0152】
(グリシン緩衝液のpH)
E.coliで発現されたα−N−アセチルガラクトサミニダーゼは、実施例4で、中性pHの辺りで、幅広い至適pHを有することが見出された。A1細胞およびA2細胞の酵素的変換における至適pHの分析は、pH7により規定された至適を明らかにした(図12)。弱いA2細胞の変換は、7.5mU/mlの酵素を用いて、pH6〜8のより幅広い範囲で達成したが、より少ない酵素を使用した場合は、至適はpH7にあった(示さず)。
【0153】
(グリシン緩衝液のモル濃度)
グリシンの濃度は、E.coliで発現されたα−N−アセチルガラクトサミニダーゼを用いた、A型細胞の酵素変換のための重要なパラメーターであることが見出された(図13)。最適な変換は、250mM〜300mMで達成された。
【0154】
(酵素濃度)
図14は、A1細胞およびA2細胞を用いた、5〜50mU/mlの、E.coliで発現されたα−N−アセチルガラクトサミニダーゼの滴定を図示する。A1がA2よりも多くのA抗原性のエピトープを有することと一致して、A1細胞を変換するためにより多くの酵素を必要とする。1〜10mUの、A2細胞についての酵素の滴定は、使用された条件を用いて完全に変換するのに、3mU/mlを必要とすることを明らかにした(示さず)。
【0155】
(処理の間の細胞濃度(ヘマトクリット)の影響)
一定量の酵素(20mU)を用いた、20%〜90%の濃度でのA1細胞の処理は、細胞濃度の増加に伴い変換効率が減少することを示した(図15)。より高濃度の酵素では変換はより速やかに生じたが、50%より高い細胞濃度での変換効率は、比例して向上せず、最適な変換条件が20%〜50%であることを示唆する。
【0156】
(処理時間の影響)
図16は、変換が酵素量および時間に比例することを示す。
【0157】
(温度の影響)
温度20℃〜40℃の間での、E.coliで発現されたα−N−アセチルガラクトサミニダーゼのサッカリド誘導体に対する活性は、同等であることが見出され、そして図17に示される、A型細胞の変換における酵素の能力は、このことを確認した。
【0158】
これらの結果は、本発明において規定される好ましい特有の速度論的特性を有するこの実施例において使用されるE.coli発現α−N−アセチルガラクトサミニダーゼにより例示される、1つのα−N−アセチルガラクトサミニダーゼが、A型細胞の酵素的変換における改善された性能を示すことを、明確に示す。A1型細胞の変換(これは以前に達成されていない)を、中性のpHで、かつA2細胞およびB細胞を変換させるのに以前に使用された濃度より、かなり低い酵素タンパク質濃度で、好ましい酵素を用いて達成した。細胞の30%懸濁物(ヘマトクリット)の変換のために使用された酵素量(10〜20mU/ml(これは30〜60μg/mlに等価))は、A赤血球およびB赤血球を酵素的に変換する先行技術において報告されている、いかなる酵素量よりも低い。
【0159】
本実施例において使用されるE.coli発現α−N−アセチルガラクトサミニダーゼとしてのエキソ−N−アセチルガラクトサミニダーゼ(これは、全てのA型血液構造体からのGalNAcを開裂することが可能である)により処理されるA1細胞およびA2細胞は、血液O型細胞上に見出されるような古典的なH2型鎖抗原(構造体18、表1)を露出するが、これはまた、A関連H構造体(構造体21、表1)を有する、少量の糖脂質を残す。H2型(BE2)およびH3型(HH14、MBr−1)に対して特異的に反応するモノクローナル抗体についての研究(Clausenら、J Biol Chem.261(3):1380〜7、1986年を参照のこと)は、予想されるように、エキソ−N−アセチルガラクトサミニダーゼ処理したA細胞が、BE2と強く反応し、そしてHH14およびMBr−1とはより弱く反応したことを明らかにした(図示せず)。通常の血液型決定に使用される抗体を含む抗A抗体は、処理細胞とは何ら反応しなかったので(表13)、A関連H糖脂質構造体は、A抗原として認識されない。このことは、交差適合分析によりさらに確実となった(表14)。H3型鎖抗体は、上記糖脂質と、H−GloboおよびムチンH型と称される構造体(それぞれ構造体22および21、表1)との間を、区別不能であるという事実に一致する(Clausenら、J Biol Chem.261(3):1380〜7、1986年)。従って、エキソ−N−アセチルガラクトサミニダーゼ処理したA細胞は、表現型的にO細胞として振る舞うが、それらは、より少ない量の特有H糖脂質抗原を有することにより、O細胞とは構造的に異なる。従って、O型として型決定する、A型酵素で変換された細胞は、万能の輸血可能な血液型として非常に有用である新規な実体を構築する。
【0160】
実施例3において規定される新規なStreptomyces酵素は、本実施例において使用されるα−N−アセチルガラクトサミニダーゼと比較して30倍以上の特性を有し、Streptomyces酵素および類似の特性を有する他の酵素は、酵素的赤血球変換において、同様により良く機能すると予想される。
【0161】
(等価物)
当業者は、本明細書で記載される特定の手順に対する多くの等価物を認識するか、または通常の実験以上のものを使用せずに、確認し得る。このような等価物は、本発明の範囲内にあると考えられ、そして、添付の特許請求の範囲によって包含される。種々の置換、変更、および改変が、添付の特許請求の範囲により規定されるように、本発明の精神および範囲から逸脱することなく本発明に対してなされ得る。他の局面、利点、および改変は、本発明の範囲内にある。本出願の全体を通じて引用される、全ての引用文献、URL、発行された特許、および公開された特許出願の内容は、本明細書で参考として援用される。これらの特許、出願および他の文献の適切な構成要素、プロセス、および方法が、本発明および本発明の実施形態のために選択され得る。
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、血液産物中の血液型群A、B、およびAB反応性細胞からA型抗原およびB型抗原を酵素的に除去し、それによってこれらを非A反応性細胞および非B反応性細胞に変換することに関する。特に、本発明は、血液型群A抗原およびB抗原を特定する免疫優先的モノサッカリド(単糖)(すなわち、それぞれ、α1,3−D−ガラクトースおよびα1,3−D−N−アセチルガラクトサミン)の酵素的除去に関する。より詳細には、本発明は、血液型群A抗原およびB抗原の免疫優先的モノサッカリドの除去について優勢な動力学的特性ならびに赤血球の酵素的変換において改善された性能を有する、特有のα−N−アセチルガラクトサミニダーゼおよびα−ガラクトシダーゼの使用に関する。具体的には、好ましい特有のα−N−アセチルガラクトサミニダーゼおよびα−ガラクトシダーゼは、以下の特性を示す:(i)単一のモノサッカリド構造およびジサッカリド構造ならびにこれらのアグリコン誘導体に関する測定可能な活性に比べて、A型分枝鎖ポリサッカリド構造およびB型分枝鎖ポリサッカリド構造に対する、排他的な基質特異性、好ましい基質特異性または10%以上の基質特異性;(ii)血液型群オリゴサッカリド(オリゴ糖)との中性pHにおける最適な性能および細胞の酵素的変換における最適な性能;ならびに(iii)モノサッカリド基質およびオリゴサッカリド基質との好ましい動力学的定数(Km)。本発明はさらに、標準的血液バンクの血清学的型別および交差一致分析によって決定された、A型、B型およびAB型細胞のA抗原およびB抗原を完全に除去することにおける、これらの特有のα−N−アセチルガラクトサミニダーゼおよびα−ガラクトシダーゼの使用についての方法に関する。より詳細には、本発明は、以前に使用されたより有意に低い量の組換えグリコシダーゼ酵素タンパク質を使用し、そして全ての血液型群A赤血球および血液型群B赤血球の完全なセロコンバージョンを得る、細胞の変換方法に関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
本明細書中で使用される場合、用語「血液産物」は、血液(成熟赤血球(赤血球)および血小板)に由来する、全血および細胞性成分を含む。
【0003】
30を超える血液型(血液型群)(group)(または型(type))系が、存在し、これらのうち最も重要な1つは、ABO系である。この系は、抗原Aおよび/または抗原Bの存在または非存在に基づく。これらの抗原は、成熟赤血球および血小板の表面ならびに内皮細胞およびほとんどの上皮細胞の表面に見い出される。輸血に使用される主要な血液産物は、成熟赤血球であり、これは、ヘモグロビンを含む赤血球であり、この主な機能は、酸素の輸送である。A型の血液は、その成熟赤血球上に抗原Aを含む。同様に、B型の血液は、その成熟赤血球上に抗原Bを含む。AB型の血液は、両方の抗原を含み、O型の血液は、どちらの抗原も含まない。
【0004】
血液型群構造は、糖タンパク質および糖脂質であり、そしてかなりの研究が、A決定基(または抗原)およびB決定基(または抗原)をつくる特定の構造を同定するためになされてきた。ABH血液型群は、炭水化物鎖の末端でのモノサッカリドの性質および結合によって決定される。炭水化物鎖は、ペプチド骨格(糖タンパク質)または脂質(グリコスフィンゴリピド)骨格に結合され、これらは、細胞の細胞膜に結合される。A型特異性を決定する免疫優先的モノサッカリドは、末端のα1−3結合N−アセチルガラクトサミン(GalNAc)であるのに対して、B型特異性の対応するモノサッカリドは、α1−3結合ガラクトース(Gal)である。O型細胞は、オリゴサッカリド鎖の末端のこれらのモノサッカリドのいずれも欠き、これは、代わりとして、α1−2結合フコース(Fuc)残基で終結する。
【0005】
血液型群ABH炭水化物構造の非常に大きな多様性は、ABH免疫優先的サッカリドを保有するオリゴサッカリド鎖における構造のバリエーションに起因して見出される。表1は、男性において報告された構造であり、ヒト赤血球、または血液抽出物において見出される構造を列挙する。概説については、Clausen & Hakomori,Vox
Sang 56(1):1−20,1989を参照のこと。赤血球は、N−結合型糖タンパク質およびグリコスフィンゴリピド上にABH抗原を含むのに対して、一般的に、成熟赤血球の糖タンパク質(主に、グリコホリン)は、シアル酸によって終結するが、ABH抗原では終結しないと考えられている。1型鎖グリコスフィンゴリピドは、赤血球の内因性生成物ではなく、血漿から吸着されたものである。
【0006】
(表I:ヒト細胞の組織−血液型群ABH免疫反応性決定基1)
【0007】
【表1−1】
【0008】
【表1−2】
【0009】
【表1−3】
【0010】
1ClausenおよびHakomori,Vox Sang 56(1):1−20,1989を改変。記号:「クエスチョンマーク」は、現在まで報告されなかった潜在的な糖脂質構造を示す。
【0011】
血液型群AおよびBには、いくつかの亜型が存在する。血液型群Aは、最も頻繁に存在し、そして血液型Aとして3つの認識される主要な亜型が存在する。これらの亜型は、A1、A中間体(Aint)およびA2として公知である。これらの3つの亜型を区別する、定量的相違および定性的相違が存在する。定量的に、A1成熟赤血球は、Aint成熟赤血球より多くの抗原性A部位(すなわち、末端N−アセチルガラクトサミン残基)を有し、このAint成熟赤血球は、次いで、A2成熟赤血球より多くの抗原性A部位を有する。定性的には、A1成熟赤血球は、部分集団のグリコスフィンゴリピドに二重反復A構造を有するが、一方A2成熟赤血球は、類似する部分集団の糖脂質において内部A構造上のH構造を有する(Clausenら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA
82(4):1199−203,1985,Clausenら、J.Biol.Chem.261(3):1380−7,1986)。A1亜型と弱いA亜型との間のこれらの差異は、A抗原の形成を担う血液型型Aアイソザイム改変体の動力学的特性における差異に関すると考えられる(Clausenら、J.Biol.Chem.261(3):1388−92,1986)。B型亜型の差異は、定量的性質のみであると考えられる。
【0012】
A型血液は、抗原Bに対する抗体を含む。逆に、B型血液は、抗原Aに対する抗体を含む。AB型血液は、いずれの抗体も含まず、O型血液は、両方を含む。これらおよび他の炭水化物規定血液型群抗原に対する抗体は、関連する炭水化物構造を保有する微生物的生物に連続的に曝露されることによって惹起されると考えられる。抗A抗体または抗B抗体のいずれか(または両方)を含む個々の全血は、対応する不適合性抗原を含む血液の輸血を受容し得ない。個体が、不適合性基の血液の輸血を受容する場合、輸血患者の抗体は、輸血された不適合性基の赤血球を覆い、そして輸血赤血球を凝集または一緒に粘着させる。輸血反応および/または溶血(赤血球の破壊)は、これらから生じ得る。
【0013】
赤血球凝集、輸血反応および溶血を避けるために、輸血型は、輸血レシピエントの血液型に対して交差試験される。例えば、血液型Aレシピエントは、適合性抗原を含む、A型血液で安全に輸血される。O型血液は、A抗原もB抗原も含まないので、これは、任意の血液型を有する任意のレシピエント(すなわち、血液型(A、B、ABまたはO)を有するレシピエント)に輸血され得る。従って、O型血液は、「万能」であると考えられ、そして全ての輸血について使用され得る。それ故、大量のO型血液を維持することが血液バンクにとって望ましい。しかし、血液型Oのドナーは、不十分である。従って、大量の万能血液産物を維持するために、A型血液、B型血液およびAB型血液中の免疫優先性A抗原および免疫優先性B抗原を除去することが望ましくかつ有用である。
【0014】
O型血液の供給を増加させる試みにおいて、特定のA型血液、B型血液およびAB型血液をO型血液に変換するための方法が、開発されてきた。B型細胞のO型細胞への変換は、過去において達成された。しかし、より豊富なA型細胞の変換は、より少ない弱いA亜型細胞でのみ達成された。酵素変換万能O細胞の開発および使用に対する主要な障害は、過去において、強いA1細胞を酵素的に変換することの失敗していた。この障害は、まだ残っている。以下に詳細に示すように、先行技術で使用された酵素および方法は、不十分であり、非実用的であり、そして/または市販されるプロセスにおいて使用し、万能O型細胞を供給するには非常に費用がかかり過ぎる。
【0015】
(B細胞の変換:)
精製または組換えの、コーヒーマメ(Coffea canephora)α−ガラクトシダーゼを使用するB型血液の酵素的変換は、100〜200U/ml(米国特許第4,427,777号;Zhuら、Arch Biochem Biophys 1996;327(2):324−9;Kruskallら、Transfusion 2000;40(11):1290−8)を使用して達成される。コーヒーマメα−ガラクトシダーゼの比活性は、1分間に加水分解される1μモルの基質として定義される1単位(U)を用いて、p−ニトロフェニルα−D−Galを使用して、32U/mgであることが報告された(Zhuら、Arch Biochem Biophys 1996;327(2):324−9)。酵素的変換は、pH5.5で、80〜90%のヘマトクリットで約6mg/mlの酵素を使用して実施され、そして得られた変換O細胞は、輸血実験において通常に機能し、有意な有害臨床パラメーターの観察されなかった(Kruskallら、Transfusion 2000;40(11):1290−8)。以前の刊行物に加えてこのデータは、赤血球の酵素的変換が、可能であり、このような酵素群B変換O細胞(B ECO)が、輸血医学において一致した型の未処理細胞型として十分に機能し得ることをはっきりと示す。それにも関わらず、これらの研究において使用される酵素の量は、現在の最も有効な組換え発現技術を用いてさえも、主に経済的理由で、ECO細胞を非実用的にする。
【0016】
約200U/mgの比活性を有する組換えGlycine maxのα−ガラクトシダーゼを用いたB細胞の変換のための改善されたプロトコルの請求項は、16%ヘマトクリットにて5〜10単位/mlを用いて報告されている(米国特許第5,606,042号;同第5,633,130号;同第5,731,426号;同第6,184,017号)。このようにして用いられたGlycine maxのα−ガラクトシダーゼは、25μg/ml〜50μg/mlであった。これは、必要とされる酵素タンパク質量の顕著な低減(50倍〜200倍)を表す(Davisら,Biochemistry and Molecular Biology International,39(3):471−485,1996)。この低減は、Glycine maxのα−ガラクトシダーゼ(約6倍)のより高い比活性、ならびに変換および評価のために用いられる異なる方法に部分的に起因する。Kruskallら(Transfusion,40(11):1290−8,2000)の研究において用いられた200U/mlの酵素は、80%〜90%ヘマトクリットでの十分な単位(約220mlの充填細胞)変換となり、そして標準的血液銀行分類ならびにより高感度の交差適合分析によって徹底的に分析された。さらに、変換効率は、変換細胞の複数回の輸血を受けた患者における、生存率および誘導された免疫の分析によって評価された。酵素的変換を、米国特許第5,606,042号(および米国特許第5,633,130号;同第5,731,426号;同第6,184,017号)に記載されるとおりに、Glycine maxのα−ガラクトシダーゼを用いて、16%ヘマトクリットにて、ml規模で試験管において行い、そして変換効率を交差一致分析によって評価しなかった。16%ヘマトクリットでの細胞の変換は、10U/mlを必要とし、一方、8%での変換は、5U/mlを必要とした。このことは、増大したヘマトクリットでの変換が、より多くの酵素を必要とすることを示すが、より高い細胞濃度は試験されなかった。従って、Kruskallら(Transfusion 2000;40(11):1290−8)によって報告されるプロトコルと比較した、必要とされた酵素タンパク質量の低減部分は、変換に用いられる細胞の濃度(ヘマトクリット)に関連し、そしてこれは、5〜10倍よりも高いことをを表し得るが、直接比較は、実験なしでは不可能である。米国特許第5,606,042号(および米国特許第5,633,130号;同第5,731,426号;同第6,184,017号)は、それほど酸性ではないpH(好ましくはpH5.8)にてクエン酸Naおよびグリシンを用い、安定化のためにBSA(ウシ血清アルブミン)の形態のさらなるタンパク質を含む、変換緩衝液における改善をさらに提供する。興味深いことに、Glycine maxのα−ガラクトシダーゼのために開発された変換緩衝液は、コーヒーマメのα−ガラクトシダーゼに適用可能ではないことがわかった。B細胞の変換におけるいくつかの改善は、米国特許第5,606,042号(および米国特許第5,633,130号;同第5,731,426号;同第6,184,017号)によって提供され得るが、開示されたプロトコルを用いると、1mlの充填B型赤血球につき少なくとも0.5mgを超える酵素が必要とされることが明らかである。これよりも相当多量の酵素が、標準的な血液銀行分類プロトコルにおいて用いられる最も感度の高い分類手順によってO型細胞へと十分に変換された細胞を得るために必要とされるようである。さらに、このプロトコルは、さらなる外部タンパク質(BSAまたはヒト血清アルブミン)の導入ならびに細胞を酸性pHに暴露することを必要とする。
【0017】
これを実用的に適用可能な技術および商業的に適用可能な技術とするために、B細胞の変換におけるさらなる改善が必要とされることが上記から明らかである。必要な改善は、より効率的なα−ガラクトシダーゼ酵素を得ること含む。より効率的なα−ガラクトシダーゼ酵素は、変換が、中性pHにて、外部タンパク質を添加することなく、好適に生じることを可能にする。
【0018】
(A細胞の変換:)
LevyおよびAnimoff(J.Biol.Chem.255:1737−42,1980)は、精製されたClostridium perfringensのα−N−アセチルガラクトサミニダーゼがA細胞を変換する能力を試験し、そして抗原発現における低下を見出したが、相当の血液型A活性が残っていた。この酵素のさらなる研究は、αGalNAc p−ニトロフェニル基質を用いて43.92U/mgの比活性を有する、明らかに均質になるまでの精製をもたらした(Hsiehら,IUBMB Life,50(2):91−7,2000;PCT出願第WO 99/23210号)。この精製された酵素は、αGalNAc p−ニトロフェニル基質について中性の至適pHを有したが、オリゴサッカリドを用いたこの酵素の活性の研究は提示されなかった。ELISAアッセイにおいてこの精製された酵素を用いたA2エピトープのいくらかの分解が報告されているが、この酵素は、適切な血液分類を用いてA2細胞の酵素変換において評価されていない。
【0019】
Goldstein(Prog Clin Biol Res 165:139−57,1984;Transfus Med Rev 3(3):206−12,1989)は、ニワトリ肝臓のα−N−アセチルガラクトサミニダーゼを用いてA細胞を変換することに失敗した。米国特許第4,609,627号(「Enzymatic Conversion of Certain Sub−Type A and AB Erythrocytes」との発明の名称)は、AintおよびA2(A2B赤血球を含む)をH抗原型の赤血球へと変換するためのプロセス、ならびにA抗原を欠くB型赤血球の組成物(この組成物は、処置の前に、この赤血球の表面にA抗原およびB抗原の両方を含んでいた)に関する。Aint赤血球およびA2赤血球をH抗原型の赤血球へと変換するためのプロセス(これは、米国特許第4,609,627号に記載される)は、特定のサブタイプAの赤血球またはサブタイプABの赤血球を平衡化する工程、この平衡化した赤血球を、A抗原をH抗原へと変換するに十分な期間にわたって、精製されたニワトリ肝臓α−N−アセチルガラクトサミニダーゼ酵素と接触させる工程、この酵素をこの赤血球から除去する工程、およびこの赤血球を再度平衡化する工程を包含する。「Recombinant
α−N−acetylgalactosaminidase enzyme and cDNA encoding said enzyme」との発明の名称の米国特許第6,228,631号は、ニワトリ酵素についての組換え供給源を提供する。精製されたニワトリ肝臓α−N−アセチルガラクトサミニダーゼおよび組換えPichia pastorisによって産生されたニワトリ肝臓α−N−アセチルガラクトサミニダーゼの比活性は、p−ニトロフェニルαGalNAcを基質として用いて約51U/mg〜約56U/mgであると報告された(Zhuら,Protein Expression and
Purification 8:456−62,1996)。米国特許第4,609,627号における、Aint細胞およびA2細胞についてのこの記載された変換条件は、酸性pH5.7での180U/ml細胞(ヘマトクリットは指定されていない)を含んでおり、そして処理された細胞は、不特定の抗A試薬と凝集しなかった。このプロトコルは、3mg/mlより多くの酵素タンパク質を必要とし、そしてA1型細胞を変換するとは報告されていない。
【0020】
Hataら(Biochem Int.28(1):77−86,1992)はまた、ニワトリ肝臓α−N−アセチルガラクトサミニダーゼを酸性pHにて用いる、A2細胞の変換を報告した。米国特許第5,606,042号(および米国特許第5,633,130号;同第5,731,426号;同第6,184,017号)は、同様の結果を開示する。
【0021】
Falkら(Arch Biochem Biophys 290(2):312−91991,1991)は、Ruminococcus torques IX−70株から精製されたα−N−アセチルガラクトサミニダーゼが、Dolichus biflorusの凝集性を破壊し得ることを実証した。このことは、A1細胞のA抗原強度が、A2細胞レベルまで低減したことを示す。
【0022】
Izumiら(Biochem Biophys Acta 1116:72−74,1992)は、A1型細胞に対して、精製されたAcremonium sp.α−N−アセチルガラクトサミニダーゼを試験した。凝集力価におけるいくらかの低減が、7,000U/ml(140U/20μl)の4%ヘマトクリットを用いて観察されたとはいえ、変換は完全ではなかった。
【0023】
ヒトα−N−アセチルガラクトサミニダーゼ酵素が単離され、クローニングされ、そして発現された(Tsujiら,Biochem.Biophys.Res.Commun.163:1498−1504,1989,Wangら,Human α−N−acetylgalactosaminidase−molecular cloning,nucleotide sequence,and expression of a full−length cDNA.Homology with human α−galactosidase A suggests evolution from a common ancestral gene.J.Biol.Chem.265:21859−66,1990)(米国特許第5,491,075号)。ヒトα−N−アセチルガラクトサミニダーゼの至適pHは3.5であり(Dean KJ,Sweeley CC.Studies on human liver alpha−galactosidases.II.Purification and enzymatic properties of alpha−galactosidase B(alpha−N−acetylgalactosaminidase).J.Biol.Chem.254:10001−5,1979)、これは、ヒトα−ガラクトシダーゼの至適pHと同様である(Dean K J,Sweeley C C.Studies on human liver alpha−galactosidases.I.Purification of alpha−galactosidase A and its enzymatic properties with glycolipid and oligosaccharide substrates.J.Biol.Chem.254:9994−10000,1979)。
【0024】
A型細胞、および特に、A型の80%までを構成するサブグループA1細胞の酵素的変換が今日まで達成されていないことが上記から明らかである。それゆえ、全ての免疫反応性A抗原を除去することによってA型細胞を変換し得る適切な酵素を同定する必要性が当該分野において存在する。さらに、適切な変換条件(好ましくは中性pHでかつさらなる外部タンパク質が必要ない変換条件)を開発する必要性が存在する。
【0025】
(スクリーニングアッセイ:)
エキソ−グリコシダーゼの探索、同定および特徴付けのための以前の方法は、一般に、単純なモノサッカリド誘導体を基質として使用してサッカリド特異性および潜在的結合特異性を同定することを頼りとする。誘導体化されたモノサッカリド基質または稀にはオリゴサッカリド基質としては、p−ニトロフェニル(pNP)、ベンジル(Bz)、4−メチル−ウンベリフェリル(4−methyl−umbrelliferyl)(Umb)、および7−アミノ−4−メチル−クマリン(AMC)が挙げられるがこれらに限定されない。このような基質の使用は、グリコシダーゼ活性を同定するための、そして実用的に適用可能な多様な酵素供給源の大規模スクリーニングを行うための、容易で迅速でかつ安価なツールを提供する。しかし、グリコシダーゼ酵素の反応速度特性および優れた基質特異性は、このような単純な構造体を用いるアッセイにおいて必ずしも反映されないかもしれない。複雑なオリゴサッカリドおよび独特の糖結合体構造についての高い程度の特異性および/または選択的効率を有する新規の酵素が存在することもまた可能であるが、これらは、分析方法に起因して、見過ごされて認識されていないままであるかもしれない。従って、特定の複雑なオリゴサッカリドまたは糖結合体構造について最適なエキソ−グリコシダーゼを同定および選択するために、酵素供給源をスクリーニングするために用いられるアッセイにおいてこのような複雑な構造体を使用することが好適であり得る。さらに、スクリーニングするために用いられるアッセイは、好ましい反応速度特性(例えば、pH必要要件および(例えば、細胞の膜に結合した)基質についての性能)についての選択を含み得る。
【0026】
先行技術では、血球のB抗原およびA抗原を破壊するために用いられる全てのα−ガラクトシダーゼ(EC 3.2.1.22)およびα−N−アセチルガラクトサミニダーゼ(EC 3.2.1.49)が、主にp−ニトロフェニルモノサッカリド誘導体を用いて同定され、そして特徴付けられている。興味深いことに、細胞上のA抗原およびB抗原の除去を試みる過去の研究において用いられた全てのα−ガラクトシダーゼおよびα−N−アセチルガラクトサミニダーゼ酵素は、顕著なDNA配列類似性およびアミノ酸配列類似性によって明らかなように、進化的に相同である。従って、ヒトα−ガラクトシダーゼおよびα−N−アセチルガラクトサミニダーゼは、密接に相同であり(Wangら,J Biol Chem,265:21859−66,1990)、そして血球変換において以前に用いられた他の酵素(ニワトリ肝臓のα−N−アセチルガラクトサミニダーゼ、真菌acremoniumのα−N−アセチルガラクトサミニダーゼ、および細菌のα−ガラクトシダーゼを含む)は、全て、顕著な配列類似性を示す。細菌のα−N−アセチルガラクトサミニダーゼの一次構造は、科学文献において報告されている。これらのグリコシダーゼは、配列類似性を共有するので、この酵素が関連の反応速度特性を有することが予期され得る。全ての既知のO−グリコシドヒドロラーゼの配列分析によって、配列分析に基づいて85の異なるファミリーに分類され、そして上記のα−ガラクトシダーゼおよびα−N−アセチルガラクトサミニダーゼは、ファミリー27およびファミリー36に分類される(例えば、「CAZy−Carbohydrate−Active Enzymes (Family GH32)」との表題で、http://afmb.cnrs−mrs.fr/〜azy/CAZY/GH_32.htmlに位置するウェブページを参照のこと)。これらの酵素は、維持される触媒機構を有することおよびアスパラギン酸を触媒求核試薬として用いることによって特徴付けられる(Henrissat,Biochem Soc Trans,26(2):153−6,1998;RyeおよびWithers,Curr Opin Chem Biol,4(5):573−80,2000)。
【0027】
それゆえ、当該分野には、新たなα−ガラクトシダーゼ活性およびα−N−アセチルガラクトサミニダーゼ活性、ならびに対応する酵素タンパク質を同定する必要性が存在する。このような酵素が存在するならば、これらはファミリー27およびファミリー36には分類されないようである。なぜなら、これらは、顕著に異なる反応速度特性を有するように選択されるからである。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0028】
(発明の要旨)
本発明は、血液製剤中の血液型A反応細胞、血液型B反応細胞、および血液型AB反応細胞からの、A型抗原およびB型抗原の酵素的除去のための組成物および方法、ならびに非A反応性細胞および非B反応性細胞へのこれらの変換を提供する。具体的には、本発明は、血液型A抗原および血液型B抗原を指定する免疫優性モノサッカリド(すなわち、それぞれ、α1,3−D−ガラクトースおよびα1,3−D−N−アセチルグルコサミン)の酵素的除去のための組成物および方法を提供する。したがって、本発明は、以下を提供する。
(1)血液製剤中の血液型群B反応性細胞または血液型群AB反応性細胞からB型抗原を除去するためα−ガラクトシダーゼであって、ここで、該α−ガラクトシダーゼは、以下の特徴:
(i)単純なα−Galモノサッカリド誘導体と比較して、血液型群B型オリゴサッカリドに関する少なくとも10%の活性、および
(ii)中性pHでの、血液型群B型オリゴサッカリドの赤血球細胞変換における活性
を有する、α−ガラクトシダーゼ。
(2)項目1に記載のα−ガラクトシダーゼであって、ここで、前記血液型群B型オリゴサッカリドが群B型テトラサッカリドである、α−ガラクトシダーゼ。
(3)項目1に記載のα−ガラクトシダーゼであって、該α−ガラクトシダーゼが、α−Gal p−ニトロフェニルモノサッカリド誘導体に関する検出可能な活性を有さない、α−ガラクトシダーゼ。
(4)配列番号1を含む、項目1に記載のα−ガラクトシダーゼ。
(5)項目1に記載のα−ガラクトシダーゼであって、該α−ガラクトシダーゼは、還元SDS−PAGE分析によって40〜80kD領域を移動するとしてさらに特徴付けられる、α−ガラクトシダーゼ。
(6)項目1に記載のα−ガラクトシダーゼであって、P1抗原に関して検出可能な活性を有さない、α−ガラクトシダーゼ。
(7)項目1に記載のα−ガラクトシダーゼを発現することが可能な原核生物細胞系統。
(8)項目2に記載のα−ガラクトシダーゼを発現することが可能な原核生物細胞系統。
(9)項目3に記載のα−ガラクトシダーゼを発現することが可能な原核生物細胞系統。
(10)項目4に記載のα−ガラクトシダーゼを発現することが可能な原核生物細胞系統。
(11)項目5に記載のα−ガラクトシダーゼを発現することが可能な原核生物細胞系統。
(12)項目6に記載のα−ガラクトシダーゼを発現することが可能な原核生物細胞系統。
(13)血液製剤中の、血液型群A型反応性細胞または血液型群AB型反応性細胞からA型抗原を除去するための方法であって、該方法は、以下(a)〜(b)の工程:
(a)該A型抗原を除去するのに十分な期間にわたって、中性pH条件下で、α−N−アセチルガラクトサミニダーゼ酵素と該血液製剤を接触させる工程、ならびに
(b)該血液製剤から該酵素を除去する工程であって、ここで、該α−N−アセチルガラクトサミニダーゼ酵素は、以下(i)〜(iii)の特徴:
(i)血液型群A型反応性細胞または血液型群AB型反応性細胞から全ての検出可能なA型抗原を除去することが可能であること
(ii)単純なα−Gal NAcモノサッカリド誘導体と比較して、血液型群A型オリゴサッカリドに関する少なくとも10%の活性、および
(iii)中性pHでの、赤血球細胞変換における活性
を有する、工程
を包含する、
方法。
(14)A型赤血球またはAB型赤血球を非A型赤血球に変換するための方法であって、該方法は、以下(a)〜(b)の工程:
(a)該赤血球の中の該A型抗原をH抗原に変換するのに十分な期間にわたって、中性pH条件下で、α−N−アセチルガラクトサミニダーゼ酵素と該赤血球を接触させる工程、ならびに
(b)該赤血球から該酵素を除去する工程であって、ここで、該α−N−アセチルガラクトサミニダーゼ酵素は、以下(i)〜(iii)の特徴:
(i)群A型反応性細胞または群AB型反応性細胞から検出可能なA型抗原を除去することが可能であること
(ii)単純なα−Gal NAcモノサッカリド誘導体と比較して、血液型群A型オリゴサッカリドに関する少なくとも10%の活性、および
(iii)中性pHでの、赤血球細胞変換における活性
を有する、工程
を包含する、
方法。
(15)血液製剤中の、血液型群B型反応性細胞または血液型群AB型反応性細胞からB型抗原を除去するための方法であって、該方法は、以下(a)〜(b)の工程:
(a)該B型抗原を除去するのに十分な期間にわたって、中性pH条件下で、α−ガラクトシダーゼ酵素と該血液製剤を接触させる工程、ならびに
(b)該血液製剤から該酵素を除去する工程であって、ここで、該α−ガラクトシダーゼ酵素は、以下(i)〜(ii)の特徴:
(i)単純なα−Galモノサッカリド誘導体と比較して、血液型群B型オリゴサッカリドに関する少なくとも10%の活性、および
(ii)中性pHでの、赤血球細胞変換における活性
を有する、工程
を包含する、
方法。
(16)B型赤血球またはAB型赤血球を非B型赤血球に変換するための方法であって、該方法は、以下(a)〜(b)の工程:
(a)該B型抗原を除去するのに十分な期間にわたって、中性pH条件下で、α−N−ガラクトシダーゼ酵素と該赤血球を接触させる工程、ならびに
(b)該血液製剤から該酵素を除去する工程であって、ここで、該α−ガラクトシダーゼ酵素は、以下(i)〜(ii)の特徴:
(i)単純なα−Galモノサッカリド誘導体と比較して、血液型群B型オリゴサッカリドに関する少なくとも10%の活性、および
(ii)中性pHでの、赤血球細胞変換における活性
を有する、工程
を包含する、
方法。
(17)血液製剤中の、血液型群A型反応性細胞、血液型群B型反応性細胞または血液型群AB型反応性細胞からA型抗原およびB型抗原を除去するための方法であって、該方法は、以下(a)〜(b)の工程:
(a)該A型抗原および該B型抗原を除去するのに十分な期間にわたって、中性pH条件下で、α−N−アセチルガラクトサミニダーゼ酵素およびα−ガラクトシダーゼ酵素と、該血液製剤を接触させる工程、および
(b)該血液製剤から該酵素を除去する工程であって、ここで、該α−N−アセチルガラクトサミニダーゼ酵素は、以下(i)〜(iii)の特徴:
(i)群A型反応性細胞または群AB型反応性細胞から全ての検出可能なA型抗原を除去することが可能であること
(ii)単純なα−Gal NAcモノサッカリド誘導体と比較して、血液型群A型オリゴサッカリドに関する少なくとも10%の活性、および
(iii)中性pHでの、赤血球細胞変換における活性
を有しており、ここで、該α−ガラクトシダーゼ酵素は、以下(i)〜(ii)の特徴:
(i)単純なα−Galモノサッカリド誘導体と比較して、血液型群B型オリゴサッカリドに関する少なくとも10%の活性、および
(ii)中性pHでの、赤血球細胞変換における活性
を有する、工程
を包含する、
方法。
(18)血液製剤中の血液型群A、BまたはAB反応性細胞からの、A型赤血球およびB型赤血球を、非A非B型赤血球に変換するための方法であって、該方法は、以下(a)〜(b)の工程:
(a)該赤血球の中の該A型抗原および該B抗原を変換するのに十分な期間にわたって、中性pH条件下で、α−N−アセチルガラクトサミニダーゼ酵素およびα−ガラクトシダーゼ酵素と、該赤血球を接触させる工程、および
(b)該赤血球から該酵素を除去する工程であって、ここで、該α−N−アセチルガラクトサミニダーゼ酵素は、以下(i)〜(iii)の特徴:
(i)群A型反応性細胞および血液型群AB型反応性細胞から全ての検出可能なA型抗原を除去することが可能であること
(ii)単純なα−Gal NAcモノサッカリド誘導体と比較して、血液型群A型オリゴサッカリドに関する少なくとも10%の活性、および
(iii)中性pHでの、赤血球細胞変換における活性
を有しており、ここで、該α−ガラクトシダーゼ酵素は、以下(i)〜(ii)の特徴:
(i)単純なα−Galモノサッカリド誘導体と比較して、血液型群B型オリゴサッカリドに関する少なくとも10%の活性、および
(ii)中性pHでの、赤血球細胞変換における活性
を有する、工程
を包含する、
方法。
(19)中性条件下で、血液製剤中の血液型群B反応性細胞および血液型群AB反応性細胞からB型抗原を除去するのに有用なα−ガラクトシダーゼ酵素をスクリーニングおよび選択するための方法であって、該方法は、以下の(a)〜(c)の工程:
(a)中性pH条件下で、該B型群オリゴサッカリド基質と、候補α−ガラクトシダーゼ酵素を接触させ、該B型群オリゴサッカリド基質に関する、該候補酵素の活性を測定する工程、
(b)中性pH条件下で、α−Galモノサッカリド誘導体と、該候補α−ガラクトシダーゼ酵素を接触させ、該B型群モノサッカリド誘導体に関する、該候補酵素の活性を測定する工程、ならびに
(c)該B型群オリゴサッカリド基質に関する、該候補酵素の活性と、α−Galモノサッカリド誘導体に関する、該候補酵素の活性とを比較する工程、
を包含し、
ここで、単純なα−Galモノサッカリド誘導体と比較して、血液型群B型オリゴサッカリド誘導体に関する少なくとも10%の活性を有する、候補α−ガラクトシダーゼが、中性pH条件で、血液製剤中の血液型群B型反応性細胞および血液型群AB型反応性細胞から、B型抗原を除去するのに有用であるとして選択される、
方法。
(20)中性pH条件下で、血液製剤中の血液型群B反応性細胞および血液型群AB反応性細胞からA型抗原を除去するのに有用なα−N−アセチルガラクトサミニダーゼ酵素をスクリーニングおよび選択するための方法であって、該方法は、以下の(a)〜(b)の工程:
(a)中性pH条件下で、A型群オリゴサッカリド基質と、候補α−N−アセチルガラクトサミニダーゼ酵素を接触させ、該A型群オリゴサッカリド基質に関する、該候補酵素の活性を測定する工程、
(b)中性pH条件下で、α−Gal NAcモノサッカリド誘導体と、該候補α−N−アセチルガラクトサミニダーゼ酵素を接触させ、該A型群モノサッカリド誘導体に関する、該候補酵素の活性を測定する工程、ならびに
(c)該A型群オリゴサッカリド基質に関する、該候補酵素の活性と、α−GalNAcモノサッカリド誘導体に関する候補酵素の活性とを比較する工程、
を包含し、
ここで、単純なα−GalNAcモノサッカリド誘導体と比較して、血液型群B型オリゴサッカリドに関する少なくとも10%の活性を有する、候補α−N−アセチルガラクトサミニダーゼ酵素が、中性pH条件下で、血液製剤中の血液型群B型反応性細胞および血液型群AB型反応性細胞から、A型抗原を除去するのに有用であるとして選択される、
方法。
(21)血清変換型赤血球であって、ここで、該血清変換型赤地球は、:
(a)α−N−アセチルガラクトサミニダーゼによって、A型赤血球またはAB赤血球から非A赤血球へと変換され、
(b)A結合H構造を有し、そして
(c)標準的な血液銀行血清型分類によって決定されるような、検出可能なA型抗原を有さない、
血清変換型赤血球。
(22)血清変換型赤血球を含む血液製剤であって、ここで、該血清変換型赤血球が:
(a)α−N−アセチルガラクトサミニダーゼによって、A型赤血球またはAB赤血球から非A赤血球へと、変換され、
(b)A結合H構造を有して、そして、
(c)標準的な血液銀行血清型分類によって決定されるような、検出可能なA型抗原を有さない、
血液製剤。
(23)血清変換型赤血球であって、ここで、該血清変換型赤血球が:
(a)α−ガラクトシダーゼによって、B型赤血球またはAB赤血球から非B赤血球へと変換され、
(b)P1抗原を保持し、そして、
(c)標準的な血液銀行血清型分類によって決定されるような、検出可能なB型抗原を有さない、
血清変換型赤血球。
(24)血清変換型赤血球を含む血液製剤であって、ここで、該血清変換型赤血球は:
(a)α−ガラクトシダーゼによって、B型赤血球またはAB赤血球から非B赤血球へと変換され、
(b)P1抗原を保持し、そして、
(c)標準的な血液銀行血清型分類によって決定されるような、検出可能なB型抗原を有さない、
血液製剤。
(25)血清変換型赤血球であって、ここで、該血清変換型赤血球は:
(a)α−N−アセチルガラクトサミニダーゼおよびα−ガラクトシダーゼによって、A型赤血球またはAB赤血球から非A非B型赤血球へと変換され、
(b)A結合H構造を有し、
(c)P1抗原を保持し、そして、
(d)標準的な血液銀行血清型分類によって決定されるような、検出可能なA型抗原およびB型抗原を有さない、
血清変換型赤血球。
(26)血清変換型赤血球を含む血液製剤であって、ここで、該血清変換型赤血球は:
(a)α−N−アセチルガラクトサミニダーゼおよびα−ガラクトシダーゼによって、AB型赤血球から、非A非B赤血球へ変換され、そして
(b)A結合H構造を有して、
(c)P1抗原を保持し、そして、
(d)標準的な血液銀行血清型分類によって決定されるような、検出可能なA型抗原またはB型抗原を有さない、
血液製剤。
(27)Streptomyces chattanoogensis(ATCC受託番号PTA−4076)である、項目7に記載の系統。
(28)Streptomyces griseoplanus(ATCC受託番号PTA−4077)である、項目7に記載の系統。
(29)ATCC受託番号PTA−4076である、Streptomyces chattanoogensis。
(30)ATCC受託番号PTA−4077である、Streptomyces griseoplanus。
(31)前記α−N−アセチルガラクトサミニダーゼがNEB α−N−アセチルガラクトサミニダーゼである、項目13に記載の方法。
(32)前記α−N−アセチルガラクトサミニダーゼがNEBα−N−アセチルガラクトサミニダーゼである、項目14に記載の方法。
(33)前記α−N−アセチルガラクトサミニダーゼがNEB α−N−アセチルガラクトサミニダーゼである、項目17に記載の方法。
(34)前記α−N−アセチルガラクトサミニダーゼがNEB α−N−アセチルガラクトサミニダーゼである、項目18に記載の方法。
【0029】
本発明の新規グルコシダーゼ酵素は、免疫優性の単糖類、αGalNAcおよびαGalを、血液産物中の細胞表面の真性A型糖質抗原および真性B型糖質抗原に近接した複合オリゴ糖標的から除去する際の使用のために、特異的に選択される。本発明の好ましいα−N−アセチルガラクトサミニダーゼ酵素は、以下の(i)〜(ii)の特徴を有する:(i)単純なα−GalNAc単糖類誘導体と比較して、A型オリゴ糖(四糖類またはそれより高次)との10%以上の活性;および、(ii)天然のpH(pH6〜8)での赤血球変換における、A型オリゴ糖との活性。本発明のα−N−アセチルガラクトサミニダーゼは、全てのA型群(A1型群を含む)細胞の、全ての検出可能なA型抗原を除去する。本発明の好ましいα−ガラクトシダーゼ酵素は、以下の(i)〜(ii)の特徴を有する:(i)単純なα−Gal単糖類誘導体と比較して、B型オリゴ糖(四糖類またはそれより高次)との10%以上の活性;および、(ii)天然のpH(pH6〜8)での赤血球変換における、B型オリゴ糖に関する活性。本発明のα−ガラクトシダーゼ酵素は、P1抗原との検出可能な活性を有さない。より好ましいアセチルガラクトサミニダーゼ酵素およびα−ガラクトシダーゼ酵素は、細菌起源または真菌起源のものであり、それによって、原核生物および下等真核生物における、効果的かつ安価な組換え発現が可能になる。好ましい実施形態において、本発明の酵素は、p−ニトロフェニル単糖類誘導体との検出可能な活性を有さない。別の好ましい実施形態において、本発明の酵素は、単糖類基質およびオリゴ糖基質との好ましい速度定数Kmを有する。特に好ましいα−ガラクトシダーゼ酵素は、還元性SDS−PAGE分析によって、40〜80kDの領域で移動するとしてさらに特徴付けられる。別の特に好ましいα−ガラクトシダーゼ酵素は、アミノ酸配列:Phe−Ala−Asn−Gly−Leu−Leu−Leu−Thr(配列番号1)を含む。
【0030】
別の局面において、本発明は、全ての血液型群A型および血液型群B型の赤血球の完全なセロコンバージョンのための方法を提供し、この結果、A型細胞、B型細胞、およびAB型細胞から、A型抗原およびB型抗原が完全に除去される。このA型抗原および/またはB型抗原の除去は、標準的な血液銀行の血清学分類または交叉分析によって、決定され得る。本発明の方法に従って、このA型抗原およびB型抗原は、α−N−アセチルガラクトサミニダーゼおよび/またはα−ガラクトシダーゼを使用して除去され、これらの、α−N−アセチルガラクトサミニダーゼおよび/またはα−ガラクトシダーゼは、(i)単純な単糖類構造および二糖類構造ならびにアグリコン誘導体と比較して、血液型群A型または血液型群B型のオリゴ糖(四糖類またはそれより高次)に対して10%以上の活性を有し;かつ、(ii)中性のpH(pH6〜8)での赤血球変換において活性である。好ましい実施形態において、これらのセロコンバージョン方法は、当該分野で公知の方法よりも、有意に低量の組換えグリコシダーゼ酵素タンパク質を使用する。これらの方法は、以下の(a)〜(b)の工程を包含する:(a)中性のpH条件下で、抗体を除去するのに十分な時間、血液産物を酵素と接触させる工程;および(b)この血液産物から酵素を除去する工程。
【0031】
1つの実施形態において、本発明は、α−N−アセチルガラクトサミニダーゼを使用して、全ての検出可能なA型抗原を、A型赤血球およびAB型赤血球(A1型を含む)から除去するための方法を提供し、このα−N−アセチルガラクトサミニダーゼは、(i)単純なα−GalNAc単糖類誘導体と比較して、血液型群A型のオリゴ糖(四糖類またはそれより高次)に対して10%以上の活性を有し;かつ、(ii)中性のpH(pH6〜8)での赤血球変換において、血液型群A型オリゴ糖に対して活性である。
【0032】
別の実施形態において、本発明は、α−ガラクトシダーゼを使用して、検出可能な全てのB型抗原を、B型赤血球またはAB型赤血球から除去するための方法を提供し、このα−ガラクトシダーゼは、(i)単純なα−Gal単糖類誘導体と比較して、血液型群B型オリゴ糖(四糖類またはそれより高次)に対して10%以上の活性を有し;かつ、(ii)中性のpH(pH6〜8)での赤血球変換において、血液型群オリゴ糖に対して活性である。
【0033】
なお別の実施形態において、本発明は、α−N−アセチルガラクトサミニダーゼおよびα−ガラクトシダーゼを使用して、全ての検出可能なA型抗原およびB型抗原をAB型赤血球から除去するための方法を提供し、これらの各々は、以下の(i)〜(ii)の1つ以上の特徴を有する:(i)単純な単糖類構造および二糖類構造ならびにアグリコン誘導体と比較して、オリゴ糖構造(四糖類またはそれより高次)に対して10%以上の活性を有し;そして(ii)中性pH(pH6〜8)での赤血球変換において、血液型群オリゴ糖に対して活性である。
【0034】
本発明の別の局面において、セロコンバージョン赤血球が提供される。1つの実施形態において、このセロコンバージョン赤血球は、以下の(i)〜(iii)のように特徴付けられる:(i)α−N−アセチルガラクトサミニダーゼによって、A型またはAB型の赤血球から非A型赤血球に変換される;(ii)A型関連H構造を有する;および(iii)標準的な血液銀行の血清学分類または交叉分析によって決定されるような、検出可能なA型抗原(A1型抗原を含む)を有さない。別の実施形態において、このセミコンバゼーション赤血球は、以下の(i)〜(iii)のように特徴付けられる:(i)α−ガラクトシダーゼによって、B型赤血球またはAB型赤血球から非B型赤血球に変換される;(ii)P1型血液型群である場合、保持されたP1抗原性を有する;および(iii)標準的な血液銀行の血清学分類または交叉分析によって決定されるような、検出可能なB型抗原を有さない。なお別の実施形態において、このセミコンバゼーション赤血球は、以下の(i)〜(iii)のように特徴付けられる:(i)α−N−アセチルガラクトサミノダーゼおよびα−ガラクトシダーゼによって、AB型赤血球から非A型赤血球、非B型赤血球に変換される;(ii)A型関連H構造を有する;および(iii)P1型血液型群である場合、保持されたP1抗原性を有する;および(iii)標準的な血液銀行の血清学分類または交叉分析によって決定されるような、検出可能なB型抗原を有さない。
【0035】
なお別の局面において、本発明は、上記の好ましい独自の特徴を有する酵素のスクリーニング方法および選択方法、ならびにこれらの酵素をコードする遺伝子のクローニングおよび発現に有用な精製方法およびこれらのアミノ酸の配列決定方法を提供する。これらの方法は、このような好ましい酵素を産生する細菌単離物を提供する。
【0036】
1つの実施形態において、中性のpH条件下で、血液産物中で血液型群B型反応性細胞および血液型群AB型反応性細胞からB型抗原を除去するために有用なα−ガラクトシダーゼ酵素をスクリーニングおよび選択するための方法は、以下の(a)〜(c)の工程を包含する:(a)中性のpH条件下で、候補α−ガラクトシダーゼ酵素を、B型オリゴ糖基質と接触させて、この候補酵素のB型オリゴ糖基質に対する活性を測定する工程;(b)中性の条件下で、この候補α−ガラクトシダーゼ酵素を、α−Gal単糖類誘導体と接触させて、この候補酵素のB型単糖類誘導体に対する活性を測定する工程;および(c)この候補酵素の、B型オリゴ糖基質およびα−Gal単糖類誘導体に対する相対的な活性を比較する工程。単純なα−Gal単糖類誘導体と比較して、血液型群B型オリゴ糖(四糖類またはそれより高次)に対する10%以上の活性を有する候補体は、中性のpH条件下において血液産物中で血液型群B型および血液型群AB型の反応性細胞からB型抗原を除去するために有用であるように選択される。
【0037】
別の実施形態において、中性のpH条件下において、血液産物中で血液型群A型および血液型群AB型の反応性細胞からA型抗原を除去するために有用なα−N−アセチルガラクトサミニダーゼ酵素をスクリーニングおよび選択するための方法は、以下の(a)〜(c)の工程を包含する:中性のpH条件下で、候補α−N−アセチルガラクトサミニダーゼ酵素を、A型オリゴ糖基質と接触させて、この候補酵素をA型オリゴ糖基質に対する活性を測定する工程;(b)中性の条件下で、この候補α−N−アセチルガラクトサミニダーゼ酵素を、α−GalNAc単糖類誘導体と接触させて、この候補酵素のA型単糖類誘導体に対する活性を測定する工程;および(c)この候補酵素の、A型オリゴ基質およびα−GalNAc単糖類誘導体に対する相対的な活性を比較する工程。単純なα−GalNAc単糖類誘導体と比較して、血液型群A型オリゴ糖(四糖類またはそれより高次)に対する10%以上の活性を有する候補体は、中性のpH条件下において血液産物中で血液型群A型および血液型群AB型の反応性細胞からA型抗原を除去するために有用であるように選択される。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】図1は、異なるpHにおける、Galα−pNPに関する組換えコーヒーマメα−ガラクトシダーゼの活性を示す。1.25μmol(2.5mM)の基質を含む0.5mlの反応容量で、アッセイを行った。反応を、26℃にて20分間インキュベートし、そして等量の0.2Mホウ酸ナトリウム緩衝液(pH9.8)を添加することによって、クエンチした。p−ニトロフェニルの放出を、OD405nmで定量し、そしてpHに対してプロットした。以下の緩衝液を使用した:pH5.0および5.5:20mM NaOAc;pH6.0〜8.0:20mM NaPO4。
【図2】図2は、異なるpHにおける、血液型群B型四糖AMC基質に関する組換えコーヒーマメα−ガラクトシダーゼの活性を示す。クエン酸ナトリウム−NaPO4緩衝液(pH2.6〜7.4)およびNaPO4緩衝液(pH8.0)中1nmolの基質を含有する10μlの反応容量で、アッセイを行った。反応を、26℃にて40分間インキュベートし、3μlの反応混合物を、HPTLC上にスポットし、そしてCHCl3:メタノール:H2O(60:35:8)中に展開し、写真に撮った。パネルAは、HPTLC分析を示し、Stdは、酵素を含まない基質の移動を示し;パネルBは、スキャニングによって定量し、pHに対してプロットした基質切断を示す。
【図3】図3は、異なるpHにおける、Galili五糖(ペンタサッカリド)基質に関する組換えコーヒーマメα−ガラクトシダーゼの活性を示す。クエン酸ナトリウム−NaPO4緩衝液中5nmolの基質を含有する10μの反応容量で、アッセイを行った。反応を、26℃にて20分間インキュベートし、2μlの各反応混合物を、HPTLC上にスポットし、そしてCHCl3:メタノール:H2O(30:60:20)中に展開して、オルシノール噴霧によって可視化した。パネルAは、HPTLC分析を示し;パネルBは、スキャニングによって定量し、pHに対してプロットした基質切断を示す。
【図4】図4は、B型四糖AMC基質に関する、5つの選択されたStreptomycete α−ガラクトシダーゼ活性のHPTLC分析である。表Vと同様に、株の数を設定する。HPTLCによって評価される、20分、100分および1000分の時間点を用いる時間経過に従って、アッセイを行った。標準的な二糖類、三糖類(H)、および四糖類(B)のAMC誘導体の移動を、矢印によって示す。NE、酵素コントロールなし;Origin、サンプル適用位置。2075番において最も顕著であった二糖類AMC産物の出現は、汚染されたα−フコシダーゼの活性に起因する。
【図5】図5は、Galα−pNP基質に関する、5つの選択されたStreptomycete α−ガラクトシダーゼ活性のHPTLC分析である。アッセイを、30℃にて4日間行った。2260番の株のみが、pNP基質に対する有意な活性を示し、2357番の株の抽出物中に、ガラクトースの放出は全く検出されなかった。
【図5b】図5bは、血液型群A型四糖類(パネルA)および血液型群A型五糖類AMC(パネルB)の基質に関する、5つの選択されたStreptomycete α−N−ガラクトサミニダーゼ活性のHPTLC分析である。Streptomycete株を、表VIIにおけるような数によって同定した。1nmolのAMC基質、5.0μlの選択された酵素の画分、および緩衝液(0.05Mクエン酸ナトリウム(pH6.0))を含有する10μlの反応物中で、アッセイを行った。反応を、30℃にて180分間インキュベートし、そして2.5μlの反応混合物を、HPTLC上にスポットし、そしてCHCl3:メタノール:H2O(60:35:8)中に展開して、写真に撮った。三糖類(H)、および四糖類(A)、七糖類(ヘプタサッカリド)および六糖類(ヘキササッカリド)(H−A)のAMC誘導体の移動を、矢印によって示す。NE、酵素コントロールなし;rCHl−Az、組換えニワトリ肝臓A−Zyme;Origin、サンプル適用位置。二糖類AMCの出現は、汚染されたα−フコシダーゼの活性に起因する。
【図6】図6は、S12クロマトグラフィーによって分離されたStreptomycete 2357番のα−ガラクトシダーゼ酵素の分析である。Pre:クロマトグラフィー前のサンプル。パネルA:B型四糖類AMC基質に対する活性のHPTLC分析。50mMクエン酸ナトリウム(pH6.0)中1nmolの基質、2μlの指向されたS12画分を含有する10μlの容量で、30℃にて80分間、反応を行った。HPTLCを、2.5μlで行い、そしてCHCl3:メタノール:H2O(60:35:8)中に展開し、乾燥し、そして写真に撮った。7〜9の画分においてα−フコシダーゼ活性を含むピーク活性領域を、プールした。意味:Std、酵素を含まないB型四糖類AMC基質;Co、コーヒーマメα−ガラクトシダーゼに対するコントロール反応。パネルB:画分のSDS−NuPAGE分析。パネルAと同じ意味。
【図7】図7は、2357番から精製された酵素活性のS12クロマトグラフィーからプールした画分のSDS−NuPAGEである。R−250は、SDS−NuPAGEのPVDF膜を染色した。配列決定のために取られたタンパク質バンドを、矢印によって示す。
【図8】図8は、組換えコーヒーマメα−ガラクトシダーゼおよび2357番から精製されたα−ガラクトシダーゼの基質特異性のHPTLC分析である。このコーヒーマメα−ガラクトシダーゼ(レーン1)は、試験した全ての基質を切断したが、2357番から精製されたα−ガラクトシダーゼのみが、血液型群B型四糖類を選択的に切断した。パネルA:Galili基質(Galα1−3Galβ1−4GlcNAcβ1−3Galβ1−4Glc);パネルB:Pk基質(Galα1−3Galβ1−4Glc−OGr);パネルC:P1基質(Galα1−3Galβ1−4GlcNAc−OGr);およびパネルD:B基質(Galα1−3[Fucα1−2]Galβ1−4GlcNAcβ−OGr)。パネルA、B、およびCにおけるHPTLCを、CHCl3:メタノール:H2O(60:35:8)を使用して展開し、そしてパネルDにおけるHPTLCを、CHCl3:メタノール:H2O(30:60:10)を使用して展開した。
【図9】図9は、種々のpHにおいて、血液型群B四糖AMC基質を用いて、#2357由来の精製α−ガラクトシダーゼの活性を示す。20mM NaOAc(pH5.0〜5.5)またはNaPO4(pH6.0〜8.0)中の1nmolの基質を含む10μlの反応容積で、アッセイを実施した。反応物を、40分間、26℃でインキュベーションし、3μlの反応混合物をHPTLC上にスポットし、そしてCHCl3:メタノール:H2O(60:35:8)中で展開し、写真を撮影した。パネルA:HPTLC分析。Stdは、酵素なしの基質の移動を示す;パネルB:基質切断は、走査によって定量化され、そしてpHに対してプロットした。
【図9B】図9Bは、S12クロマトグラフィーによって分離されたBSAを用いてスパイクした#2357由来の精製α−ガラクトシダーゼの分析を示す。パネルA:画分26〜36のSDS−NuPAGE分析。命名:Mw:分子量マーカー;Pre:クロマトグラフィーの前のサンプル。パネルB:B四糖AMC基質を用いた活性のHPTLC分析。反応を、1nmol基質、2μlの示されたS12画分を、50mM NaPO4(pH7.0)中に含む10μlの容積で行った。HPTLCを2μlで行い、CHCl3:メタノール:H2O(60:35:8)で展開し、乾燥し、そして写真を撮影した。命名:Std、酵素のないB四糖AMC基質;Co、コーヒーマメα−ガラクトシダーゼを用いるコントロール反応;D−AMC、二糖−AMC;Tri−AMC、三糖−AMC;Tetr−AMC、四糖−AMC。
【図10】図10は、種々のpHにおいて、血液型群A四糖AMC基質を用いる、E.coli発現α−N−アセチルガラクトサミニダーゼの活性を示す。pH2.6〜8.0で変動する、1nmolのA−tetra、0.05μg酵素、および緩衝液Na−クエン酸−NaPO4を含む10μlの反応でアッセイを実施した。反応物を、40分間、26℃でインキュベーションし、3μlのサンプルをHPTLCによって分析した。パネルA:HPTLC分析;パネルB:基質切断は、走査によって定量化され、そしてpHに対してプロットした。
【図11】図11は、E.coli発現α−N−アセチルガラクトサミニダーゼを使用する、A2細胞の酵素変換に対する緩衝系の影響を示す。洗浄したA2赤血球を、25℃で、指定された緩衝液中の5〜20mU/mlのα−N−アセチルガラクトサミニダーゼ(30%細胞懸濁液)とともにインキュベートし、そしてOrtho抗−Aとの凝集によって30分および60分に変換を評価した。
【図12】図12は、E.coli発現α−N−アセチルガラクトサミニダーゼを使用する、A1細胞およびA2細胞の酵素変換に対する250mMグリシン緩衝液を使用するpHの影響を示す。洗浄した赤血球を、25℃で、250mMグリシン緩衝液(pH6.0〜8.0)中の7.5mU/mlのα−N−アセチルガラクトサミニダーゼ(30%細胞懸濁液)とともにインキュベートし、そしてOrtho抗−Aとの凝集によって30分および60分に変換を評価した。
【図13】図13は、E.coli発現α−N−アセチルガラクトサミニダーゼを使用する、A1細胞の酵素変換に対するグリシン緩衝液濃度の影響を示す。洗浄した赤血球を、25℃で、100〜400mMグリシン緩衝液(pH7.0)中の7.5mU/mlのα−N−アセチルガラクトサミニダーゼ(30%細胞懸濁液)とともにインキュベートし、そしてOrtho抗−Aとの凝集によって30分および60分に変換を評価した。
【図14】図14は、A1細胞およびA2細胞の酵素変換に対するE.coli発現α−N−アセチルガラクトサミニダーゼの濃度の影響を示す。洗浄した赤血球を、25℃で、250mMグリシン緩衝液(pH7.0)中の5〜50mU/mlのα−N−アセチルガラクトサミニダーゼ(30%細胞懸濁液)とともにインキュベートし、そしてOrtho抗−Aとの凝集によって30分および60分に変換を評価した。
【図15】図15は、E.coli発現α−N−アセチルガラクトサミニダーゼを使用する、A1細胞の酵素変換に対する細胞(ヘマトクリット)濃度の影響を示す。洗浄した赤血球を、25℃で、20〜90%の濃度で変化させて、250mMグリシン(pH7.0)中の20mU/mlのα−N−アセチルガラクトサミニダーゼとともにインキュベートし、そしてOrtho抗−Aとの凝集によって30分および60分に変換を評価した。
【図16】図16は、E.coli発現α−N−アセチルガラクトサミニダーゼを使用する、A1細胞およびA2細胞の酵素変換に対する反応時間の影響を示す。洗浄した赤血球を、25℃で、150mMグリシン(pH7.0)中の5〜50mU/mlのα−N−アセチルガラクトサミニダーゼ(30%細胞懸濁液)とともにインキュベートし、そしてOrtho抗−Aとの凝集によって20分、40分、60分および120分に変換を評価した。
【図17】図17は、E.coli発現α−N−アセチルガラクトサミニダーゼを使用する、A2細胞の酵素変換に対する温度の影響を示す。洗浄した赤血球を、15℃、25℃および37℃で、200mMグリシン(pH5.5)中の1〜10mU/mlのα−N−アセチルガラクトサミニダーゼ(30%細胞懸濁液)とともにインキュベートし、そしてOrtho抗−Aとの凝集によって20分、40分、および60分に変換を評価した。
【発明を実施するための形態】
【0039】
(発明の詳細な説明)
本発明は、血液型群AおよびBの構造に対する好ましい特異性および中性pHにおける血球の酵素変換における好ましい性能を用いる、新規なα−N−アセチルガラクトサミニダーゼおよびα−ガラクトシダーゼについてのスクリーニングおよび選択ストラテジーの開発および適用に関する。表1は、血球において見出されるA抗原およびB抗原の複合体構造を列挙する。これらの複合体構造を用いる既存のグリコシダーゼの速度論的特性の定量的研究は、報告されていない。これは、これらの化合物を天然の供給源から得ることの困難性に一部起因し、そして有機化学によってこのような複合体オリゴ糖を合成することに関する困難性および時間のかかることに一部起因する。
【0040】
本発明の目的のために、血液型群AおよびBの活性なオリゴ糖AMC誘導体は、合成され(構造3、6、11、25)、そしてそれらのH改変体は、上記構造からのαGalまたはαGalNAcの酵素的除去によって合成または産生された。さらに、構造3、6、21および25を有するグリコスフィンゴリピドは、ヒト赤血球から精製されたか、または先に記載されるように、グリコシダーゼ処理によってヒト赤血球から精製された(Clausenら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 82(4):1199−203,1985,Clausenら,J Biol Chem.261(3):1380−7,1986,Clausenら,Biochemistry 25(22):7075−85,1986,Clausenら,J Biol Chem.262(29):14228−34,1987)。AMC誘導体またはグリコスフィンゴリピドからのαGalまたはαGalNAcの除去を定量的に決定するための薄層クロマトグラフィーアッセイが開発された。
【0041】
p−ニトロフェニルα−ガラクトシドおよび血液型B抗原の代表として、四糖群Bハプテン基質(構造11AMC誘導体)を用いて活性を比較する、組換えコーヒーマメα−ガラクトシダーゼの相対的比活性の本発明者らの最初の分析は、2000倍近い顕著な差を明らかにした。従って、コーヒーマメα−ガラクトシダーゼは、先に報告される(Zhuら,Arch Biochem Biophys 324:65−70,1995)ように、p−ニトロフェニルα−ガラクトシドを用いてpH6.5で約30〜40U/mgの比活性を有したが、四糖群B基質を用いると、たった17mU/mgであった。従って、この酵素は、群B抗原を破壊するのに比較的不活性であり、B四糖に対して好ましい酵素は、群B基質とかなりより良い速度論的効率を示すようである。
【0042】
p−ニトロフェニル α−N−アセチルガラクトサミニン、および血液型群A抗原の代表としての四糖群Aハプテン基質(構造3AMC誘導体)を用いた活性を比較する、組換えニワトリ肝臓α−N−アセチルガラクトサミニダーゼの相対的な比活性の本発明者らの最初の分析は、100倍を超える顕著な差を再び明らかにした。従って、先に報告されたニワトリα−N−アセチルガラクトサミニダーゼは、p−ニトロフェニルα−N−アセチルガラクトサミニンを用いて約50U/mg(pH3.65)の比活性を有した(Zhuら,Protein Exp and Purification 8:456−462,1996)が、四糖群A基質を用いて、たった0.2U/mg(pH5.5)(0.3U/mg(pH3.65))であった。従って、この酵素は、群A抗原の破壊において相対的に非常に非効率である。
【0043】
これらの2つの酵素が血球の酵素的変換における先端技術の性能を構成し、そしてこれらが、両方の酵素が酸性pHでのみ血球変換を実施する事に加えて、細胞を変換しない(群A)かまたは必要とされる酵素量に起因して実施不可能である(群B)かのいずれかであるので、血液変換における使用のための酵素の改善された速度論的特性が必要とされ、そして最初の同定のための1つの類似のストラテジーが、p−ニトロフェニルおよび複合体A/B基質を用いて活性の比を分析することであることが明らかである。群Aまたは群Bの複合体基質の対する好ましいまたは排他的な活性を有する酵素は、血球変換においてより効率的に実行するようである。
【0044】
群A血球を変換することにおける過去の困難性は、主に、強力なA1亜群を変換することができないことに起因した。上記のように、群A1亜群は、他の亜群よりも多いA抗原を有するが、グリコスフィンゴリピドの形態で繰り返しA構造もまた含む(表1、構造6)。A2および可能なより弱い亜群はまた、A拡大シリーズのグリコスフィンゴリピド(H−AおよびGal−Aと指定される)(表1、構造21、および25)を含むが、これらは、元々、Clausenら(Clausenら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 82(4):1199−203,1985,Clausenら,J Biol Chem.261(3):1380−7,1986,Clausenら,Biochemistry 25(22):7075−85,1986,Clausenら、J Biol Chem.262(29):14228−34,1987)によって記載されるように、抗A抗体と反応しない。これは、過剰なα−N−アセチルガラクトサミニダーゼが、上記のように分類試薬を用いて亜群A2細胞型をOとして処理したという発見によってさらに確認された。従って、亜群A2と比較して、亜群A1を変換することの困難性は、ある量のA抗原における定量的な差、A1細胞のみの反復Aグリコスフィンゴリピドの存在、またはこれらの組合せに起因し得る。群A変換における使用のための好ましいα−N−アセチルガラクトサミニダーゼの重要なパラメーターは、反復Aグリコスフィンゴリピド上の末端αGalNAc残基を効率的に切断する能力である。組換えニワトリ肝臓α−N−アセチルガラクトサミニダーゼの効率性の分析は、A2型四糖AMC誘導体(構造3)および反復A3型AMC誘導体(構造6)の比較可能な比活性(約0.3U/mg)を明らかにした。ニワトリ肝臓α−N−アセチルガラクトサミニダーゼが、全ての群A細胞を変換しないことは、独特のA1構造に起因しないことが、このことから結論づけられ得る。さらに、このデータは、A四糖がα−N−アセチルガラクトサミニダーゼの速度論的特性および特異性を決定し、血球変換におけるそれらの性能の予測のために使用されるのに十分な構造の群A(およびB)抗原を含むことを示し得る。
【0045】
好ましいα−N−アセチルガラクトサミニダーゼおよびα−ガラクトシダーゼは、中性pHで最適であり、単細胞生物(例えば、細菌および酵母)における組換えタンパク質として対費用効果的に産生され得る。本発明は、AおよびBの四糖AMC誘導体基質を使用し、そして中性pHでの活性を測定して、好ましい酵素活性についてのスクリーニングアッセイを開発した。さらに、活性は、複合体基質に対する優先性または排他性を有する活性を同定するために、p−ニトロフェニル単糖類誘導体を使用して、活性を比較した。大きなパネルの細菌および真菌の単離物(3100)についてのこのスクリーニングの適用は、AまたはBの四糖AMC基質を用いて測定されたα−N−アセチルガラクトサミニダーゼまたはα−ガラクトシダーゼの活性を発現するいくつかの細菌単離物を同定したが、対応のp−ニトロフェニル単糖類基質では活性レベルがないかまたは些細なレベルであった。各活性の1つは、Streptomuces株としてこれらを血清型特徴付けおよび遺伝子型特徴付けした後に、さらに分析された。α−N−アセチルガラクトサミニダーゼ活性を発現することが決定された株#8の分析は、この活性が、不溶性であり、細胞塊と会合していたことを明らかにした。株#8は、2002年2月14日に、American Type Culture Collection(ATCC)に寄託され、そしてATCC寄託番号PTA−4076と指定された。対照的に、α−ガラクトシダーゼ活性を発現すると決定された#2357は、この活性が、可能性であり、そしてFrenchプレスの上清に見出されたことを明らかにした。株#2357は、2002年2月14日に、American Type Culture Collectionに寄託され、そしてATCC寄託番号PTA−4077と指定された。可溶性タンパク質を精製することはかなり単純であるので、本発明者らは、最初に、#2357由来の酵素タンパク質を精製し、そして配列決定することを選ぶ。#2357の活性は、B四糖基質を用いて、10Umgより高い比活性に精製されたが、p−ニトロフェニルα−ガラクトシドを用いた活性は、検出可能でなかった。得られた調製物のSDS−PAGE分析は、40〜80kDの領域において3〜4のタンパク質バンドを明らかにした。調製物のゲル濾過分析は、40〜80kDの分子量を示すBSAと匹敵する活性の移動を示した。単一の短い配列を得た:
Phe−Ala−Asn−Gly−Leu−Leu−Leu−Thr(配列番号1)。
【0046】
部分的に精製されたα−ガラクトシダーゼ活性の基質特異性の詳細な分析は、分枝B血液型群構造に対して先例のない良好な特異性を示し、そしてα1−3またはα1−4のガラクトース残基によってキャップされた線形構造が切断されなかったことを示した。pH最適の分析は、これが、5.5〜7.0であることを示した。従って、同定されたα−ガラクトシダーゼ活性は、制限された基質特異性、群B構造に対する高い比活性、およびpH最適に関して、先行技術における酵素よりも非常に好ましい。
【0047】
#8のα−N−アセチルガラクトサミニダーゼ活性の予備的分析は、同様の特性を示したが、直鎖状構造もまた切断した。精製が困難であることに起因して、この酵素の比活性を評価することは可能でなかったが、0.1U/mgでの部分的に精製した調製物でさえ、p−ニトロフェニル単糖誘導体についての検出可能な活性は示さなかった。
【0048】
2つの同定された活性および部分的に特徴付けられた活性が、性質が似ており、そして以前に報告されたあらゆるα−ガラクトシダーゼ活性およびα−N−アセチルガラクトサミニダーゼ活性とは全く異なるという知見は、独特の相同なグリコシダーゼの新規ファミリーが、用いられたスクリーニングストラテジーによって同定されることを強力に示唆した。
【0049】
本発明者らは次いで、本発明者らの選択アッセイを用いて全ての市販のα−ガラクトシダーゼおよびα−N−アセチルガラクトサミニダーゼのアッセイに着手し、好ましい特異性を有する酵素が入手可能であるか否かを決定した。AテトラサッカリドAMC誘導体およびAヘプタサッカリドAMC誘導体について、単純なαGalNAc単糖誘導体と比較して相対的に高い基質特異性を示す、1つのα−N−アセチルガラクトサミニダーゼ(NEBのα−N−アセチルガラクトサミニダーゼ)が同定された。この酵素は、供給業者(New England BioLabs Inc,カタログ番号P0734B)によって、特許株に由来し、かつE.coliにおいて発現されると開示され、そしてその基質特異性は、オリゴサッカリドからの末端α−GalNAc結合の加水分解を触媒すると記載されている。詳細には、酵素とともに供給された材料に、この基質特異性が、p−ニトロフェニル−α−D−N−アセチルガラクトサミノピラノシド(p−ニトロフェニルα−GalNAc)およびAテトラサッカリドAMC基質(構造3〜構造8)を含むと開示される。本発明者らは、科学文献においても他の箇所でも、この酵素に関してさらなる情報を見出さなかった。本発明者らの基質パネルを用いてのこの酵素の反応速度特性の分析は、この酵素が、AテトラサッカリドAMC基質について約0.25U/mgの比活性を、そしてp−ニトロフェニルαGalNAcについて2.5U/mg未満の比活性を有すること明らかにした。さらに、この酵素は、6.0〜8.0という広い至適pHを有する。この酵素は、AテトラサッカリドAMC基質についての中程度の優先的基質特異性しか示さず、そしてこの基質についての比活性は比較的低いが、この酵素は、血球変換において用いられるべき最適酵素の提案された特性を部分的に有し、そしてこれは細菌において発現され得る。
【0050】
上記のように、同定されたStreptomycesのα−ガラクトシダーゼは、Bテトラサッカリド基質についての、10U/mgを超える比活性を有し、そしてこれは、中性pHにて最大速度で機能する。しかし、この酵素は、血球変換におけるその性能の評価のために必要とされる量および純度では入手可能でなかった。この同定されたStreptomycesのα−N−アセチルガラクトサミニダーゼは、同様に入手可能でなかった。このNEBのα−N−アセチルガラクトサミニダーゼは、Aテトラサッカリド基質についてのその比活性はほんの約0.25U/mgであるとはいえ、2つの同定されたStreptomyces活性と同じ同定特徴を有するので、純粋な組換え形態でのこの入手可能性は、この新たなクラスのグリコシダーゼの、血球変換における評価を可能にした。
【0051】
それゆえ、本発明者らは、上記のスクリーニングおよび選択のストラテジーにおいて用いられるα−N−アセチルガラクトサミニダーゼの提案された好ましい特性が、赤血球の酵素変換において改善された特徴を有する酵素を実際に選択したことを確認するために、A型血球変換におけるNEBのα−N−アセチルガラクトサミニダーゼの性能を試験した。このNEBのα−N−アセチルガラクトサミニダーゼは、中性pHでのA1血球およびA2血球の両方の変換において顕著な効率を示した。酵素反応において30%という固定されたヘマトクリットを用いて、変換プロセスの多数のパラメーターを分析した。好ましい緩衝液系は、pH6.5〜pH7.5での200mM〜300mMのグリシンである。以下を含むがこれらに限定されないいくつかの添加物をこの緩衝液系に添加し得る:1mM〜5mM NaCl、1mM〜5mM CaCl2、1mM〜10mMリン酸緩衝化クエン酸塩、0.25mMクエン酸三ナトリウム、および300〜10,000の種々の分子量の0.1%〜10%ポリエチレングリコール(PEG)。60分間(30%ヘマトクリット)において、約5mU/mlのNEB α−N−アセチルガラクトサミニダーゼは、A2細胞を変換して、そして約20mU/mlではA1細胞を変換して、慣用的な血液銀行試薬および手順によってOと分類される細胞にした。増大した量の使用酵素は、変換に必要な時間の短縮をもたらした。変換された細胞は、抗H試薬とO細胞として反応し、そして変換された細胞の物理的パラメーターの分析は、未処理細胞と何の違いもないことを明らかにした(メトヘモグロビン、2,3DPG、ATPおよび浸透圧ぜい弱性)。本発明者らが知る限り、これは、インタクトなA1型細胞の、Oと分類される細胞への、酵素的変換の初めての例である。
【0052】
A型細胞の変換のために必要とされる、E.coli発現α−N−アセチルガラクトサミニダーゼの量(5〜20mU/ml)は、20〜80μg/ml酵素タンパク質に等しい。これは、先行技術においてA2細胞を変換するために用いられたα−N−アセチルガラクトサミニダーゼの量(3mg/ml)と比べてかなりの改善である。これはまた、コーヒーマメのα−ガラクトシダーゼ(80%ヘマトクリットにて6mg/ml)またはGlycine maxのα−ガラクトシダーゼ(16%ヘマトクリットにて50μg/ml)のいずれであろうと、B細胞を変換するために用いられたα−ガラクトシダーゼの量と比較しての改善である。さらに、NEBのα−N−アセチルガラクトサミニダーゼを用いた変換を中性pHにて行ったが、一方、過去の他の全ての変換は、酸性pHである4.5〜5.8にて行われた。
【0053】
それゆえ、E.coli発現α−N−アセチルガラクトサミニダーゼの性能は、上記のような基準によって定義されたとおりの、この提案された新たなクラスのエキソ−グリコシダーゼの特性が、AおよびBの血球変換において改善された特性を有することを明らかに確認する。さらに、A型テトラサッカリドについてのNEBのα−N−アセチルガラクトサミニダーゼの比活性と比較して、血液型Bテトラサッカリド基質について40倍以上高い比活性を有するStreptomycesのα−ガラクトシダーゼの同定および特徴付けは、このStreptomyces酵素が、変換において40倍以上少ない(すなわち、反応中30%ヘマトクリットにおいて0.5μg/ml〜2μg/mlの)タンパク質を必要とし得ることを示す。従って、1単位のパックされた血球(約220ml)の変換は、0.35mg/単位〜1.4mg/単位未満を必要とする。本発明の細菌発現技術、酵母発現技術および真菌発現技術を用いて、5US$/mg〜10US$/mgにて組換え酵素を産生することが可能である。それゆえ、血球の酵素的変換は、本発明によって提供される酵素の特性および性能を有する酵素を必要とすることが明らかである。
【0054】
系統8および系統2357の両方は、2002年2月14日付けで、アメリカン タイプ カルチャー コレクションに寄託され、そして、これらは、それぞれ、ATCC寄託番号PTA−4076および同 PTA−4077が割り当てられた。特許手続上の微生物の寄託の国際的承認に関するブタベスト条約の合意の下で、ATCCに対するこれらの寄託は行われた。特許が発行される期間の終わりの前のこの寄託物の条件のために、この保管においては、要求されたとしても、分与することはないが、サンプルを刷新する義務を本出願人は承認する。本出願人はまた、ATCCにこの特許の発行を知らせる責任を認め、特許が発行されるときに、この寄託物は、公に利用可能となる。そのときの前に、この寄託物は、C.F.R.第37章第1.14節およびU.S.C.第35章第112節に基づき、特許庁にとって利用可能である。
【実施例】
【0055】
(使用した一般的な方法:)
7−アミノ−4−メチル−クマリン誘導体のような、一連の複雑な血液型群ABHのオリゴサッカリド構造は、表II、表IIIおよび表IVにおいて列挙されるように、アルバート ケミカル リサーチ カウンシル(Alberta Chemical Research Council)によってつくられた慣習であった。他の構造が、異なる供給業者(Sigma,CalbioChem,New England Biolabs)から入手可能であった。酵素は、これまで報告されているように(Zhuら,Protein Expr Purif.8(4):456−62,1996,Zhuら,Arch Biochem Biophys.324(1):65−70,1995)調製されるか、または指示されるような供給業者から購入された。使用した全ての試薬は、分析等級またはそれ以上のものであった。標準的な酵素アッセイを用いて様々なグリコシダーゼを以下のように実施した:
(P.pastorisにおいて発現される組換えコーヒーマメα−ガラクトシダーゼ:)
p−ニトロフェニルモノサッカリド誘導体を用いたアッセイを、以下の2つの手順によって実施した:
i)50mMクエン酸ナトリウムおよび20mMリン酸ナトリウム(pH5.5)を含む総容積0.5mlの反応混合物中に1.25μmolの基質を、26℃にて、10分間でインキュベートした。等容積の0.2Mホウ酸ナトリウム緩衝液(pH9.8)を添加することによって、反応をクエンチした。遊離したp−ニトロフェノールの量を、p−ニトロフェノールの標準曲線(0.01μmol〜0.15μmol)と比較して、405nmの吸光度を測定することによって決定した;
ii)50mMクエン酸ナトリウムおよび20mMリン酸ナトリウム(pH 5.5)を含む総容積0.5mlの反応混合物中の1.25μmol基質を、26℃でインキュベートした。5μlアリコートを、異なる時点(0分、5分、15分、30分、60分)で採取して、生成物の発生を追跡し、そして、オルシノール染色によって可視化した。生成物の発生を、クロロホルム−メタノール−水(容積/容積/容積:60/35/8)中の高速薄層クロマトグラフィー(HPTLC)によって分析した。
【0056】
(誘導化オリゴサッカリド基質を用いたアッセイ)
誘導化オリゴサッカリド(AMC,OGr)基質を用いたアッセイを、以下の手順によって実施した:
iii)50mMクエン酸ナトリウム(pH6.0)を含む総容積10μlの反応混合物中の1(AMC)nmolまたは5(OGr)の基質を、26℃でインキュベートした。2.5μl〜3.0μlのアリコートを、異なる時点(0分、15分、30分、60分)で採取して、生成物の発生を追跡した。生成物の発生を、クロロホルム−メタノール−水(容積/容積/容積:60/35/8)中のHPTLCによって分析し、そして、UVまたはオルシノール染色によって可視化した。
【0057】
遊離したオリゴサッカリド基質を用いたアッセイを、以下の手順によって実施した:
iv)5mmol基質を、26℃または30℃で30〜180分間にて、50mMクエン酸ナトリウム(pH6.0)を含む10μl反応容積の中でインキュベートした。生成物の発生を、クロロホルム−メタノール−水(容積/容積/容積:30/60/10)中のHPTLCによって分析し、そして、オルシノール染色によって可視化した。
【0058】
基質に対するKmを決定するためのアッセイを、以下のように改変した:
v)0.1〜0.5μgの酵素を使用してαGal p−ニトロフェニル基質の濃度を、5.0mMから0.04mM(5pmol/10μl)で変化させた。
【0059】
P.pastorisで発現される組換えニワトリ肝臓α−N−アセチルガラクトサミニダーゼ:
p−ニトロフェニルモノサッカリド誘導体を用いたアッセイを、以下の2つの手順で実施した:
vi)1.25μmolのαGalNAc p−ニトロフェニルモノサッカリドを、50mMクエン酸ナトリウムおよび20mMリン酸ナトリウムを含む試験管内で、pH2.8、37℃にて、60分間に亘りインキュベートした。5.0μlのアリコートを、異なる時点(0分、15分、30分、60分)で採取して、生成物の発生の速度論を追跡した。生成物の発生を、クロロホルム−メタノール−水(容積/容積/容積:60/35/8)中の高速薄層クロマトグラフィー(HPTLC)によって分析し、p−アニスアルデヒドで染色し、そして、UVまたはオルシノール染色によって可視化した。
【0060】
(市販の組換えα−N−アセチルガラクトサミニダーゼ(New England Biolabs)):
vii)0.05Mリン酸ナトリウム緩衝液pH7.0を含む試験管中のαGalNAc p−ニトロフェニルモノサッカリド誘導体の出発濃度としての、0.5mMを、これを等容積の緩衝液を混合することによって、続いて、2倍に希釈した。0.5μgの酵素を、各試験管に添加し、そして、37℃で10分間に亘ってインキュベートした。等容量の0.2Mのホウ酸ナトリウム緩衝液(pH9.8)を添加することによって、この反応をクエンチした。遊離したp−ニトロフェノールの量を、405nmで吸光度を測定することによって決定した。
【0061】
(実施例1:A/B血液細胞変換において以前に使用された、α−N−アセチルガラクトサミニダーゼおよびα−ガラクトシダーゼの、詳細な基質特異性の特徴付け)
赤血球のB抗原性活性およびA抗原性活性を排除するために、過去において使用された最も有効なエキソグリコシダーゼは、それぞれコーヒーマメα−ガラクトシダーゼおよびニワトリ肝α−N−アセチルガラクトサミニダーゼであった。これらの酵素は、広範囲に研究されており、そして赤血球変換におけるこれらの特徴および性能は、上で参照されるように、文献および特許出願に記載されている。
【0062】
((i)異なる基質との比活性(U/mg))
表IIは、p−ニトロフェニル単糖類誘導体とのこれらの酵素の報告された比活性を列挙する。1単位は、規定された最適なアッセイ条件下で1分間に1マイクロモルの基質を変換する活性として定義される。p−ニトロフェニル基質を用いるアッセイを、使用した基質の10%未満を用いて、初速度で評価した。
【0063】
【表2】
【0064】
本発明において、精製した組換えコーヒーマメα−ガラクトシダーゼおよびニワトリ肝α−N−アセチルガラクトサミニダーゼについて、類似の結果を得た。A抗原およびB抗原に類似のオリゴ等基質との比活性の情報は、報告されていない。このことはおそらく、このような化合物の制限された利用可能性に起因する。本発明において、複合体Aおよび
Bの構造を合成し、そして赤血球において見出されるような抗原を模倣する基質とのこれらの酵素の反応速度論的パラメータの分析は、赤血球の変換においてより良好な特性を有する新規な酵素を選択するための基準を規定する際に役立つと予測された。
【0065】
表IIIに示されるように、これら2つの酵素の、四糖類AMC誘導体との比活性の分析は、p−ニトロフェニル単糖類誘導体を用いて得られる活性より劇的に低かった。
【0066】
【表3】
【0067】
1 比活性を、以下の実施例に記載されるように、3つの時間点(20分、40分、および60分)において評価した基質の約50%および100%の最終変換でのアッセイを使用して決定した。
【0068】
酵母中で発現され、そして均質まで精製された組換えコーヒーマメα−ガラクトシダーゼの比活性は、Galα1−pNPを用いて(最適なpH6.5において)32U/mgを示した。しかし、組換えコーヒーマメα−ガラクトシダーゼの比活性は、この酵素での赤血球の酵素的変換のために使用される最適なpH(pH5.5)において、血液型Bの四糖類−AMC基質を用いて測定される場合に、ほんの17mU/mg(約2000分の1の低さ)であった(表III)。
【0069】
同様に、ニワトリ肝由来の組換えα−N−アセチルガラクトサミニダーゼは、非血液型A構造に対する強い優先を示し、最高の活性が、非天然基質GalNAcα1−pNPを用いて測定された。酵母中で発現され、そして均質まで精製された組換えニワトリα−N−アセチルガラクトサミニダーゼの比活性は、最適な3.65のpHにおいて、GalNAcα1−pNPを用いて、約50U/mgを示し(表II)、一方でほんの0.3U/mg(166分の1の低さ)が、pH3.65において、血液型A四糖類−AMC基質を用いて測定された(表III)。pH5.5における比活性は、ほんの0.2U/mg程度に低かった。
【0070】
Acremonium sp.およびPatella vulgataのα−N−アセチルガラクトサミニダーゼについて、類似の結果が見出された(示さず)。
【0071】
((ii)異なる基質についてのKm)
コーヒーマメα−ガラクトシダーゼおよびニワトリ肝α−N−アセチルガラクトサミニダーゼの、異なる基質での報告されたミヒャエーリス−メンテン定数KmおよびVmax(ラインウィーヴァー−ブルクプロットから決定した)を、表IVに示す。
【0072】
表IV:モノサッカリド誘導体を含むα−ガラクトシダーゼおよびα−N−アセチルガラクトサミニダーゼの見かけのKmおよびVmax
【0073】
【表4】
【0074】
1 Zhuら,(1995)Arch Biochem Biophys 324:65−70、2 Vosnidouら,Biochem Mol Biol Int 46(1):175−186,1998、 3 Zhuら,(1996)Protein Exp and Purification 8:456−462.意味:n.d.=決定せず。
【0075】
本発明において、類似のKm値を、組換え精製コーヒーマメα−ガラクトシダーゼおよびニワトリ肝臓α−N−アセチルガラクトサミニダーゼについて得た。これらのKm値は、比較的高く、そして10〜100倍低いKmを有する酵素は、抗原のほぼ完全な除去が重要であると予想される場合、赤血球変換に好ましい候補を示す。
【0076】
従って、全ての基質を含むこれらの酵素の観察された高いKmは、赤血球の変換におけるこれらの酵素の乏しい性能の別の理由を示すようである。
【0077】
R.torguesから見かけの均一性まで単離されたα−N−アセチルガラクトサミニダーゼは、GalNAcα-pNPに対する50U/mgの比活性および2〜8mMの
Kmを有することが報告されている(Hoskinsら、J Biol Chem.272(12):7932−9,1997)。この酵素は、中性pH最適条件を有するようであるが、実験は、現在まで、A型細胞の効率的な酵素的変換を証明できていない(Hoskinsら、Transfusion.41(7):908−16,2001)。この酵素の乏しい性能は非常に高いKmに関連しているようである。
【0078】
(iii)異なる基質についてのpH最適条件
コーヒーマメおよびダイズ(グリシンマックス)(Glycine max)のα−ガラクトシダーゼのpH最適条件は、広く、そして中性のpHを含むことが報告されている。pH最適条件を測定するためのアッセイを、簡単な人工α−Galモノサッカリドp−ニトロフェニル誘導体を用いて実施した。それにもかかわらず、これらの酵素のいずれも、中性pHにおける血球変換において機能せず、そして変換は、pH5.5〜6.4においてのみ首尾良く観察された(上記の考察を参照のこと)。この現象に関する知見を提供するために、本発明者らは、コーヒーマメ酵素のpH最適条件を、p−ニトロフェニルガラクトースならびにオリゴサッカリド基質のBテトラサッカリドおよびGaliliペンタサッカリドを用いて分析した。図1に示されるように、単純なモノサッカリド基質を用いた場合のpH最適条件は、以前に報告されたように、広く、6.4で最大活性を有した。逆に、Bテトラサッカリド基質を用いた場合のpH最適条件は、酸性であり、図2に示されるように、3.5〜5.0で最大であった。さらに、同様の低いpH最適条件が、図3に示されるように、Galiliオリゴサッカリドの切断について観察された。
【0079】
メリビオース、ラフィノースおよびスタキオースを用いた場合のコーヒーマメ酵素のpH最適条件は、低い(3.6〜4の間)ことが報告されている(Zhuら、(1995)Arch Biochem Biophys 324:65−70,CourtoisおよびPetek(1996)Methods Enzymol 3:565−571)。これは、BおよびGaliliオリゴサッカリドについての本発明者らの知見と一致しており、このことは、酵素が一般に、天然のジサッカリドおよびオリゴサッカリドを用いた場合に低いpH最適条件を有することを示唆している。
【0080】
p−ニトロフェニル基質を用いた場合の酵素のpH最適条件は、人工的であり、そして天然の基質を用いた場合の酵素の特性を示すよりもむしろアグリカン(aglycan)の物理的特性に関連するようである。従って、本明細書中で示されるデータは、この酵素が中性のpHにおいて赤血球変換を行わないことについての説明を提供し得る。
【0081】
ニワトリ肝臓α−N−アセチルガラクトサミニダーゼは、上記のように、GalNAcα−pNPを使用してpH3.65のpH最適条件を有することが報告された。血液型AテトラサッカリドAMC基質を用いた場合のこの酵素活性に対するpHの影響の分析は、報告されたデータと一致し、そして3.5〜4.5のpH最適条件を示した(示さず)。
【0082】
上記のように、ニワトリ肝臓α−N−アセチルガラクトサミニダーゼおよびコーヒーマメα−ガラクトシダーゼ酵素は、ヒトリソソーム酵素を含む大きな相同グリコシダーゼ遺伝子ファミリーのメンバーである。リソソーム酵素は、一般に、酸性pHで機能し、そしてこれらの全ては、酸性pH最適条件を有すると報告されている。従って、この群と配列類似性を有する他の相同酵素は、酸性pH最適条件のこの特徴的な特性を共有するようである。従って、本発明者らは、適切な基質および中性pHを使用して、α−N−アセチルガラクトサミニダーゼおよびα−ガラクトシダーゼの活性のための新たな供給源をスクリーニングすることを選択する。
【0083】
(実施例2:中性pHにおける血液型Aおよび/または血液型Bの構造に対して高度に優先的または排他的な基質特異性を有するα−N−アセチルガラクトサミニダーゼおよびα−ガラクトシダーゼの同定)
血液型Aおよび血液型Bの構造に対して好ましいおよび/または排他的な特異性を有する潜在的な酵素を同定するために、真菌単離体および細菌単離体の大きなパネルを分析した。血液型A/BテトラサッカリドAMC誘導体およびGal/GalNAcα−pNP誘導体を用いる最初のスクリーニングのためのプロトコールを開発した。簡単には、培養物の貯蔵した凍結ストックを、YM斜面培養物(管サイズ:1.8×1.8cm)に播種し、27℃で8日間増殖させ、そしてこの培養物(胞子)を、5mlの凍結剤(10%グリセロール+5%ラクトース)で洗い流し、次いで解離(ネジ付き管1.3×13cm中、ガラスビーズと共に激しく回転)することにより収集した。1mlの斜面培養物を、有酸素発酵のための適切な特定の培地に、72〜96時間かけて播種した(真菌培養について25℃、および放線菌類培養について28℃)。各増殖培養物の2.5mlのサンプルを、約8〜10個のガラスビーズ(サイズ=直径3mm)を含むネジ付き管(1.3×13cm)中で、15分間撹拌することによって解離し、その後、クエン酸緩衝液を用いてpHを6.5に調整し、そしてこの解離した培養物を、管中、−20℃で凍結した。凍結培養物を解凍し、そして上記のようにして再び解離し、そして2100×gで15分間遠心分離した。この上清は、初期アッセイのための酵素供給源として働いた。10μlのサンプルを、以下のように試験した:
(A型およびB型のテトラサッカリドAMC基質を用いるアッセイ)
50mMのクエン酸ナトリウム(pH6.5)、0.25nmolのオリゴサッカリドAMC基質および10μlの上記のような酵素供給源を含有する反応混合物(10μl)を、30℃でインキュベートし、そして生成物の発生を、異なる時間間隔(20分〜48時間)でHPTLCによりモニタリングした。
【0084】
(p−ニトロフェニルモノサッカリド基質を用いたアッセイ)
上記のような、50mMクエン酸ナトリウム(pH6.5)、2〜5mMモノサッカリドpNP基質および10μl酵素供給源を含む反応混合物(20μl)を、30℃でインキュベートし、そして生成物の発生を、異なる時間間隔(20分間〜24時間)で、OD405nmまたはHPTLCによりモニターした。
【0085】
(α−ガラクトシダーゼ活性についてのスクリーニング)
合計2400個の単離体をスクリーニングし、そしてB群テトラサッカリドAMC基質との顕著な活性を有する5つの株を単離した。これらの株は、小規模発酵のために選択され、これらはFrenchプレス、(NH4)2SO4での沈殿、およびQ−Sepharoseでの分離によって処理された。Q−Sepharose画分において見出された活性ピークのプールについてのさらなる分析により、(表VI)に列挙されるような、2つの基質との比活性が明らかにされた。
【0086】
(表VI:同定された5つのStreptomyces α−ガラクトシダーゼ活性の基質特異性)
【0087】
【表6】
【0088】
1比活性の分析を、Q−Sepharoseクロマトグラフィーからプールされた活性画分において決定した。精製を、10,000psiでのFrenchプレス処理に供されたプロテアーゼインヒビター(PMSF、ロイペプチン、ペプスタチン(pepstain)、EDTA)を含むブロス(60ml)から行った。この調製物を、13,000×gで30分間にわたり遠心分離し、そして上清を、15%および50%の硫酸アンモニウム沈降によって分画した。15〜50%のペレットを、20mMのTris(pH7.5)中に溶解し、そして0.45μmフィルターを通して濾過した。清澄化濾液を、5ml
Pharmacia Hi−trap Qカラムにロードし、そしてタンパク質を、0〜0.15M NaCl勾配で溶出した。表示:n.d.決定されず。
【0089】
5つの候補株のB群テトラサッカリドAMC基質を用いたHPTLC分析を、図4に示す。5つの株の活性は、B群テトラサッカリドAMC基質を、H トリサッカリドAMCとして移動する生成物へと、そしていくつかの場合にはジサッカリドAMC誘導体へと、種々の程度で切断した。この後者は、夾雑したα−フコシダーゼ活性に起因する。
【0090】
株2057および2357は、B群テトラサッカリド基質との最高の活性を発現した。αGal p−ニトロフェニル基質との活性は、B群テトラサッカリド基質との活性と相関しなかった。精製の間に、この2つの活性は分離され得ることがさらに確認された。このことは、これらの2つの活性が、異なるタンパク質に由来したことを示す。株2357のみが、αGal p−ニトロフェニル基質との活性を完全に欠損した。このことはさらなる分析をより容易にする。そしてこの活性を、さらなる精製および特徴付けのために選択した。#2357の小規模発酵を実施し、そして酵素活性を、Frenchプレス(表VIの説明文を参照のこと)後の溶解画分において見出した。
【0091】
コロニー形態による株#2357の血清型決定を、Accugenix Newark,DEによって実施し、これを放線菌類として確認した。500塩基対のShort Tandem Repeatsによる遺伝子型決定は、株#2357を、1.60%差異で、Streptomyces griseoplanusの属に位置づけた。
【0092】
(α−N−アセチルガラクトサミニダーゼ活性についてのスクリーニング)
A群テトラサッカリドAMC基質との顕著な活性を有する合計4つの株を同定した(表IV)。
【0093】
(表VII:同定された4つのStreptomyces α−N−アセチルガラクトサミニダーゼ活性の基質特異性)
【0094】
【表7】
【0095】
1精製およびアッセイは、表VIに対する説明文に記載の通り。
【0096】
4つの候補株のA群テトラサッカリドAMC基質を用いたHPTLC分析を、図5bに示す。
【0097】
A群テトラサッカリド基質との顕著な活性を有する同定されたすべての株は、p−ニトロフェニル誘導体とは、全くまたはほとんど検出可能なレベルの活性を示さなかった。
【0098】
株8、1488、および1647は、A群テトラサッカリド基質と最も高い活性を発現したが、#8における活性のみが安定であり、そしてさらなる特徴付けのために回収され得た。この単離体を、さらなる分析のために選択した。小規模発酵を実施した。そして、酵素活性は、不溶性であり、そしてFrenchプレス後のペレット化画分と関連付けられることが見出された。
【0099】
コロニー形態による株#8の血清型決定を、Accugenix,Newark,DEによって実施し、これを放線菌類として確認した。500塩基対のShort Tandem Repeatsによる遺伝子型決定は、株#8を、0.00%差異で、Streptomyces chattanoogensisの属に位置づけた。
【0100】
上記のデータにより、この細菌が、複合的な血液型A抗原およびB抗原の免疫優性なαGalNAc残基またはαGal残基に対して独特な基質特異性を有するα−ガラクトシダーゼおよびα−N−アセチルガラクトサミニダーゼエキソグリコシダーゼを含むことが示された。このような酵素は、赤血球において見出されるような基質に対するその高度に優先的または排他的な特異性に起因して、酵素学的な血球変換における使用に好ましいことが提案される。
【0101】
(実施例3:分枝血液型B抗原に対する排他的な基質特異性を有し、このような基質との予期せぬ高い比活性を有する、Streptomyces株2357番から同定された新規のα−ガラクトシダーゼの単離および特徴付け)
20リットルの発酵培養物を、フレンチプレス法により処理した。主なα−ガラクトシダーゼ活性が、10,000×gでの遠心分離後の上清に存在することを決定した。この上清を、硫酸アンモニウム沈殿により分画し、そして20〜60%画分に約70%の活性を見出した。20〜60%カットの沈殿物を、20mM Tris(pH7.5)中に溶解し、そして遠心分離により清澄化した。この上清を、Q−セファロース(緩衝液20mM Tris、pH7.5、0〜1.5MのNaCl勾配)、S−セファロース(緩衝液20mM NaOAc、pH5.3、0〜0.1MのNaCl勾配)、におけるクロマトグラフィー、およびS12ゲル濾過クロマトグラフィー(0.5M NaClを含有する緩衝液20mM NaOAc、pH5.3、または0.5M NaClを含有する20mM NaPO4、pH6.5)により連続的に分画した。この精製スキームを通じて、B四糖AMC基質との酵素活性を、回収した画分においてモニタリングした。Galα−pNPとの活性の欠如を、分離工程を通して確認した。最終的に精製した酵素活性を、ウシ血清アルブミン(標準)の溶出に類似する、分子量約70,000に対応して溶出したS12クロマトグラフィーの画分において回収した(図6、パネルA)。S12クロマトグラフィー画分のSDS−NuPAGE分析により、α−ガラクトシダーゼ活性を含む画分において複数のバンドが明らかになったが、ピーク活性を有する画分は、40〜80kDの領域で移動するいくつかのバンドを含むに過ぎなかった(図6、パネルB)。
【0102】
最後のS12クロマトグラフィー工程からプールした酵素ピークの比活性は、約10U/mg(SDS−NuPAGEの銀染色および分子量マーカーにおけるタンパク質バンド中のタンパク質量と所望のタンパク質バンドとの比較により決定されたタンパク質)であった。ウシ血清アルブミンの溶出とこの活性の溶出を比較すると、活性がBSAの後に溶出したことが明らかになった。このことは、この活性タンパク質が、ゲル濾過クロマトグラフィーによって評価した場合、BSAより小さい(すなわち、65kdよりも小さい)分子サイズを有するという証拠を提供する(図9b)。
【0103】
ピーク活性を含有するS12クロマトグラフィーからプールした画分を、C4カラム(BioRad)(緩衝液:0.1%TFA、0〜100%のアセトニトリル勾配)を用いた逆相クロマトグラフィーによりさらに精製した。溶出したタンパク質を、SDS−NuPAGEにより分析し、70kDに移動する所望のタンパク質バンドの大部分を含む画分をプールし、そして真空下で乾燥させた。プールした画分を、SDS−NuPAGEで再度泳動し、PVDF膜にブロットし、R−250で染色した(図7)。所望のタンパク質バンドを切り出し、そしてModel 140C Microgradient Delivery SystemとModel 785A Programmable Absorbance Detectorとを備えたApplied Biosystems Model 494 Precise Protein Sequencerを用いたN末端配列決定に供した。以下のような単一の短い配列を得た:
Phe−Ala−Asn−Gly−Leu−Leu−Leu−Thr(配列番号1)。
【0104】
単離されたα−ガラクトシダーゼ活性は、均一に精製されていなかったので、得られた配列が、別のタンパク質に由来する可能性がある。この新規の酵素タンパク質およびそのコード遺伝子を単離および特徴付けるために、さらなる精製が必要であり、これは現在進行中である。
【0105】
そうであるとしても、この新規のα−ガラクトシダーゼ活性を高度に精製し、そしてこれは、B四糖を用いて、10U/mgを超える比活性を有した。この酵素調製物は、この新規の酵素の基質特異性および反応速度特性の詳細な研究を可能にした。精製された2357番α−ガラクトシダーゼの基質特異性を、末端α−Gal残基を有するオリゴ糖および誘導体の大パネルを用いて特徴付けた。このアッセイを、上記のように、1〜4nmolの基質およびこの量のB四糖AMC構造物を60分以内に切断するのに必要とされる酵素量を用いて実施した。HPTLC分析を、異なる時点で実施した。この分析の例を、図8に示す。精製された2357番α−ガラクトシダーゼ活性の基質特異性を、表VIIIに要約する。
【0106】
【表8】
【0107】
1表示:「+」:切断が60分以内に検出された、「−」:切断が、一晩のインキュベーションによって検出されなかった。直鎖三糖(トリサッカリド)およびGalili B切断反応物を、CHCl3:メタノール:H2O(30:60:10)を用いるHPTLCによって評価した。全ての他の切断反応物を、CHCl3:メタノール:H2O(60:35:8)を用いて分析した。
【0108】
比較のために、組換えコーヒーマメα−ガラクトシダーゼを、すべての分析に含めた。実施例1に記載した本発明者らの研究と一致して、コーヒーマメα−ガラクトシダーゼは、末端α−Gal残基を含むすべての構造にて活性を示した。α1−3(血液型B、およびフコースを含まない「Galiliエピトープ」)およびα1−4(血液型P1およびPk)の両方が基質であった。そのオリゴサッカライド構造の長さまたは分枝のみが、相対的活性(すなわち、完了に達するに必要な酵素の量)に対して影響を有した(比活性のみを、Galα p−ニトロフェニルおよびBテトラサッカライドAMCについて決定した)。
【0109】
著しく対照的に、Streptomyces株#2357から同定および精製した活性のみが、テトラサッカライドまたはそれより長いものとして提示された場合、血液型B構造にて活性を示す。この酵素がp−ニトロフェニルモノサッカライドαGal誘導体もメチル−ウンベリフリルモノサッカライドαGal誘導体も切断できないことは、モノサッカライドにて活性が欠如していることが、単にアグリカンおよび結合体化にのみ起因しないことを示した。結合化学に関連し得るトリサッカライド構造であるGalα1−3(Fucα1−2)Gal−AMCは、対応する構造Galα1−3(Fucα1−2)Galβ−OGrが基質として役立ったので、不活性であった。このこと以外は、Streptomyces α−ガラクトシダーゼは、すべての分枝型B群関連構造(これは、すべて、赤血球上に見出される公知のB構造を示す(表1))を効率的に利用した。これは、血液型B構造に対して独特の基質特異性を示しかつヒト血液型抗原P1および希な抗原Pkとの活性を示さない、最初のα−ガラクトシダーゼである。従って、Streptomyces α−ガラクトシダーゼによる赤血球の酵素的変換は、コーヒーマメα−ガラクトシダーゼ(Kruskallら、Transfusion 2000;40(11):1290〜8)を含む公知のα−ガラクトシダーゼによる処理とは対照的に、インタクトなP1抗原性を生じる。同様に、希なPk抗原は、酵素的変換後にインタクトであると予測される。白色人種集団の約80%が、赤血球上にP1抗原を発現し、そしてこの抗原の機能は未知であるが、A血液型抗原およびB血液型抗原に対してのみ抗原除去を制限することは、酵素的変換において重要な改善であると見なされる。
【0110】
精製Streptomyces α−ガラクトシダーゼの至適pHを、図9に示されるように分析した。BテトラサッカライドAMC基質との酵素活性は、5.5〜7.0付近の広範な至適pHを有した。従って、この酵素は、過去に使用した酵素とは対照的に、中性pHにて、赤血球変換を実施すると予測される。
【0111】
これは、単純なモノサッカライド誘導体を超える血液型B構造または血液型A構造について包括的な基質特異性を有するかまたは好ましい基質特異性さえ有する、同定された最初のα−ガラクトシダーゼ活性またはα−N−アセチルガラクトサミニダーゼ活性である。α−ガラクトシダーゼ酵素は、10U/mgより高い血液型B構造との比活性を有し、これは、実施例1に記載されるようなコーヒーマメα−ガラクトシダーゼについて測定された比活性より500倍高い。この情報は、同定され特徴付けられた他のすべてのα−ガラクトシダーゼについて利用可能ではないが、これらは、コーヒーマメα−ガラクトシダーゼと同じ乏しい特性を示しそうである。なぜなら、これらは、一般には、αGal p−ニトロフェニル誘導体と効率的に機能し、そしてこれらをコードする遺伝子は、相同性であるからである。従って、本発明において同定されたStreptomyces α−ガラクトシダーゼは、独特であり、先行技術において先行物は存在せず、そしてこの酵素について同定された速度論特性は、酵素的B型血球変換における性能について大きな期待を保持する。
【0112】
(実施例4:E.coliにおいて発現される組換えα−N−アセチルガラクトサミニダーゼの特徴付け)
New England BioLabs Inc.は、E.coliにおいて発現されるように開示された組換えα−N−アセチルガラクトサミニダーゼ(カタログ番号P0734B)を最近市販した。この酵素は、私有株に由来し、報告によると、オリゴサッカライドおよびαGalNAc p−ニトロフェニルからの末端α−GalNAc結合の加水分解を触媒する(New England BioLabs Inc.カタログ情報)。市販のエキソ−グリコシダーゼのスクリーニングにおいて、本発明者らは、このα−N−アセチルガラクトサミニダーゼが、αGalNAcモノサッカライド誘導体と比較してAテトラサッカライドAMC誘導体およびAヘプタサッカライドAMC誘導体と比較的高い比活性を有する好ましい特徴を部分的に示すことを見出した(表IX)。重要なことには、この酵素の血液型A誘導体との絶対的比活性は、例えば、ニワトリ肝酵素とかなり異なるわけではない。しかし、モノサッカライド基質と比較した相対的活性は、かなり異なる。従って、このデータは、E.coliに発現されたα−N−アセチルガラクトサミニダーゼが、血液型A抗原について良好な相対的特異性を有することを示唆する。
【0113】
(表IX:E.coliに発現されたα−N−アセチルガラクトサミニダーゼの比活性)
【0114】
【表9】
【0115】
1アッセイ条件は、以下の通りであった:p−ニトロフェニルを用いるアッセイを、0.05マイクロモル(100μM)、50mMリン酸ナトリウム(pH5.5または7.0)および0.5μg酵素を含む、反応体積0.5mlにて行った。反応を、37℃にて10分間インキュベートし、そして等体積の0.2Mホウ酸ナトリウム緩衝液(pH9.8)を添加することによりクエンチした。AMC基質を用いるアッセイを、1ナノモル基質(100μM)、50mMリン酸ナトリウムまたは0.25Mグリシン(pH5.5または7.0)、および0.05〜0.1μg酵素を含む、反応体積10μlにて行った。反応を、26℃または37℃にてインキュベートし、そして0分、15分、30分、および60分の時点でHPTLCにて分析した。タンパク質定量を、クーマシーブルー染色SDS−PAGE分析を使用し秤量BSAを比較物として使用する半定量によって、実施した。
【0116】
E.coliに発現されたα−N−アセチルガラクトサミニダーゼの微細な基質特異性の分析により、このE.coliに発現されたN−アセチルガラクトサミニダーゼが、ニワトリ肝α−N−アセチルガラクトサミニダーゼと同様に、等しく効率的な血液型Aおよび反復A構造を使用したことが明らかになった(表IX)。
【0117】
末端αGalNAc残基を備える一群の非フコシル化オリゴサッカライド構造を用いるさらなる分析により、この酵素が、A群分枝型基質と比較してこれらの基質とほぼ等しい効率を有することが示された(表X)。
【0118】
(表X:E.coli発現α−N−アセチルガラクトサミニダーゼの基質特異性)
【0119】
【表10】
【0120】
1アッセイを、1〜4ナノモルの基質(100〜400μM)、50mMのクエン酸ナトリウム(pH6.0)、および0.125μgの酵素を含む10μlの反応混合物において実施した。反応物を、31℃でインキュベートし、そして0分、30分、60分、および120分の時点で、HPTLCにより分析した。
【0121】
E.coli発現α−N−アセチルガラクトサミニダーゼは、図10の単糖基質およびオリゴ糖基質の両方についてpH6.0〜7.0を含む広範な至適pHを示した。5.5を下回る酸性のpHにおいて、この活性は、迅速に減少し、そしてpH4.4以下では、活性は、ほとんど検出不可能である。これは、赤血球変換に特徴的な好ましい中性の至適pHと共に同定された最初のα−N−アセチルガラクトサミニダーゼである。
【0122】
α−N−アセチルガラクトサミニダーゼ活性は、以下の緩衝液の型にほとんど影響されなかった:50〜250mMグリシン、0.1Mグリシルグリシン、20〜50mMリン酸ナトリウム、12.5〜25.0mMクエン酸ナトリウム、12.5〜25.0mMクエン酸ナトリウムおよび5.0〜10.0mMリン酸ナトリウム、McIlvineナトリウムpH5.5、PBS、MES。この酵素はまた、NaCl(0〜150mM)、グルタチオンおよびn−オクチル−β−D−グルコピラノシドにより影響されなかった。
【0123】
最後に、単糖誘導体についての速度定数Kmの評価により、この酵素が、実施例1(表IV)に記載されるニワトリ肝臓のα−N−アセチルガラクトサミニダーゼまたはα−ガラクトシダーゼと比較して有意に低い見かけのKmを有すること(表XI)が明らかになった。
【0124】
(表XI:E.coli発現α−N−アセチルガラクトサミニダーゼの、単糖誘導体との見かけのKmおよびVmax)
【0125】
【表11】
【0126】
1アッセイ条件は、以下の通りであった:p−ニトロフェニルを用いるアッセイを、3.9〜50ナノモル(1.5〜100μM)、50mMリン酸ナトリウム(pH5.5またはpH7.0)、および0.5μgの酵素を含む0.5mlの反応物容量で行った。反応物を、37℃で10分間、インキュベートし、そして等容量の20mMホウ酸ナトリウム緩衝液(pH9.8)を添加することによってクエンチした。遊離p−ニトロフェノールの量を、405nmでの吸光度で測定し、p−ニトロフェノールの標準曲線と比較することによって決定した。ミカエリス−メンテン定数KmおよびVmaxを、ラインウェーバー−バークプロットから決定した。
【0127】
3Zhuら、(1996)Protein Exp and Purification 8:456−462。
【0128】
さらに、予備実験の結果は、血液型Aのオリゴ糖基質についてのKmが、同様に約20μMであることを示す。この決定のために用いられるアッセイは、四糖(テトラサッカリド)AMC基質(GalNAcα1−3(Fucα1−2)Galβ1−4GalNAc−AMC)を用いる基質/生成物比の濃度測定走査を包含した。このアッセイは、低濃度では信頼性がなく、従って、Kmは、20μMより低くさえあることがあり得る。
【0129】
要するに、E.coli発現α−N−アセチルガラクトサミニダーゼは、血液型Aの基質について相対的に高い選択性を示し、中性pHで血液型A基質と最大の活性を示し、そして低いKmにより規定される有利な速度論的特性を示す。
【0130】
(実施例5:従来の型決定プロトコルにより評価される、E.coli発現α−N−アセチルガラクトサミニダーゼを用いる、A1赤血球およびA2赤血球からO表現型細胞への酵素的変換)
ヒトA型赤血球上の免疫優性Aエピトープの完全な除去は、以前に、上で詳述されるように報告されていた。弱い(weak)サブグループA2のA型血球の酵素的変換が、酸性のpHでニワトリ肝臓α−N−アセチルガラクトサミニダーゼを用いて報告されているが、変換の結果は、標準的な血液型決定手順において用いられる感度の高い型決定試薬および型決定方法により実証されなかった。以下の表XIIにおいて詳述されるように、種々の反応条件を用いるニワトリ肝臓α−N−アセチルガラクトサミニダーゼの能力を改善するための最初の試みは、完全に変換された細胞を産生することに失敗した。Dako由来のモノクローナル抗A抗体との反応性は、A2細胞について破壊され得たが、一方で、より感度の高い試薬を用いる型決定は、A型エピトープの酵素的分解が不完全であったことを明白に、明らかにした。
【0131】
(表XII.組換えニワトリ肝臓α−N−アセチルガラクトサミニダーゼを用いるA1赤血球およびA2赤血球の変換1)
【0132】
【表12】
【0133】
1ニワトリα−N−アセチルガラクトサミニダーゼを用いる変換について用いたプロトコル:
3つの変換プロトコルを、組換えニワトリ肝臓α−N−アセチルガラクトサミニダーゼを用いるA1赤血球およびA2赤血球について評価した。
【0134】
(変換プロトコル−A)
EDTAチューブに吸引しそして7日間まで4℃で保存した、A2赤血球(Beth Israel Deaconess Medical Center、Boston、MA)を、PBS(リン酸緩衝化生理食塩水、pH7.4)中で3回洗浄し、そしてPBSおよび7.5%PEGの溶液(pH7.4)中に10%まで再懸濁した。細胞を、組換えニワトリ肝臓α−N−アセチルガラクトサミニダーゼ(100U/ml)を用いて、振盪しながら、30℃で、180分間、処理した。細胞を、0.9%生理食塩水中で3回洗浄し、そして型決定のために生理食塩水中に3〜5%まで再懸濁した。
【0135】
(変換プロトコル−B)
EDTAチューブに吸引したA1赤血球(Beth Israel Deaconess Medical Center、Boston、MA)および白血球を減少させたA2赤血球(American Red Cross、New England Region、Dedham、MA)を、AABB Technical Manual、13版、Method6.6に従い、Glycerolyte57(Baxter Healthcare Corporation、Fenwal Division:Deerfield、IL)中で凍結し、そして−70℃で保存した。酵素処理の前に、細胞を、9.0%の生理食塩水、2.5%生理食塩水、および0.9%生理食塩水を用いて脱グリセロールし(American Red CrossによるImmunohematology MethodsのMethod 125に従った)、PBSおよび7.5%PEGの溶液(pH7.4)中に50%のヘマトクリットまで再懸濁し、そして組換えニワトリ肝臓α−N−アセチルガラクトサミニダーゼ(200U/ml)を添加した。反応物を、4時間にわたり撹拌しながら37℃でインキュベートし、引き続き、0.9%生理食塩水で3回洗浄し、そして型決定のために生理食塩水中に3〜5%まで最終的に懸濁した。
【0136】
(変換プロトコル−C)
細胞の起源および保存は、プロトコルBに記載したのと同様である。脱グリセロールした赤血球を、150mM NaClを有するPCI(pH5.5)中で2回洗浄し、そして150mM NaClを含むPCI中に50%ヘマトクリットまで再懸濁した。細胞を、4時間にわたり撹拌しながら37℃で組換えニワトリ肝臓α−N−アセチルガラクトサミニダーゼ(200U/ml)で処理し、引き続き0.9%生理食塩水で3回洗浄し、そして型決定のために生理食塩水中に3〜5%まで最終的に懸濁した。
【0137】
表XIIのデータから、A抗原の見かけ上の除去が、血液型決定手順(DAKO)について認可されていない1つの特定の抗血液型A特異的モノクローナル抗体によって定義される場合、に達成されることが明らかである。多くのこのような抗体が存在し、そしてこれらの特異性および低い親和性結合に起因して、これらは、血清学的な型決定目的のために不適切である。従来使用されるポリクローナル抗体試薬に代わるABOの常用の型決定用のモノクローナルカクテルの開発は、1990年代の血液バンク産業にとって主要な成果であった。これらの高感度かつ認められた常用の型決定試薬によるA抗原の除去の分析は、DAKOとは対照的に、凝集素価によって定義されるような、ごくわずかな変換しか生じない抗体を示した。この実施例において使用される型決定アッセイの詳細は、以下のとおりである:
赤血球凝集アッセイにおいて使用される認可された型決定試薬は、マウスモノクローナル抗体およびOrtho Clinical Diagnostics,Raritan,NJ;Gammma Biologicals/Immucor,Norcross,GAから入手される植物レクチンであった。非認可試薬としては、Dako製のマウスモノクローナル抗A抗体およびH.Clausenによって製造される血液型A改変体(Clausenら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA82(4):1199−203,1985、Clausenら、J.Biol.Chem.261(3):1380−7,1986、Clausenら、Biochemistry25(22):7075−85、1986、Clausenら、J.Biol.Chem.262(29):14228−34,1987)に対するモノクローナル抗体のパネルが挙げられる。型決定試薬は、製造業者の推奨および滴定によって決定されるような他のモノクローナル抗体に従って使用された。
【0138】
赤血球凝集アッセイ(室温)
1.等張性血液バンク生理食塩水中の、3〜5%の洗浄された赤血球の懸濁液を調製した。
2.抗体/レクチン試薬を一滴(約50μl)加えた。
3.赤血球懸濁液を一滴(約50μl)加えた。
4.チューブを混合し、3500rpmで15秒間遠心分離した。
5.細胞を穏やかな攪拌で再懸濁し、そして凝集について顕微試験した。
6.この凝集を、AABB 技術マニュアル(Technical Manual)第13版の方法1.8に従って、等級付けした。
【0139】
同様の結果を、精製したacremonium sp.(Calbiochem)製の真菌α−N−アセチルガラクトサミニダーゼで得た(示さず)。
【0140】
前述の実施例に記載するように、赤血球由来の血液型AまたはBのエピトープを除去するのに使用するための好ましい酵素は、オリゴ糖基質が血液型AまたはBの抗原と似ている、特に良好な力学的特性を有しているようである。このような好ましい力学的特性は、血液型AまたはBのオリゴ糖についての好ましい基質特性または排他的な基質特性、および単糖−pNP基質のような単純な単糖誘導体に対して低い活性を有するかまたは活性を有さないことで表され得る。好ましい力学的特性はまた、関連する基質に対する特に低いKmによって表され得る。さらに好ましい力学的特性は、関連する血液型活性基質に対する反応、および赤血球の品質および機能に適合する他の反応条件の中性の至適pHからなる。酵素の他の好ましい特性(例えば、サイズ、電荷、溶解度、および他の物理化学的特性)はまた、赤血球の酵素変換における性能に関する。
【0141】
改良された力学的特性を有する新規のα−ガラクトシダーゼおよびα−N−アセチルガラクトサミニダーゼは、実施例2、3、および4に記載されるように、本発明の種々の細菌株から同定された。実施例4に記載されるα−N−アセチルガラクトサミニダーゼ(New England Biolabs)は、α−N−アセチルガラクトサミニダーゼのような一例を示し、そして、上述の好ましい特性を有する酵素は、赤血球変換における優れた性能を示すという本発明者らの仮定を試験するために、十分に精製された組換え形態で利用可能であった。
【0142】
中性pHでの赤血球変換における、このα−N−アセチルガラクトサミニダーゼの性能は、表XIIIに示される。このα−N−アセチルガラクトサミニダーゼは、常用の血液バンク型決定プロトコルによってOとして規定される細胞型に、A1およびA2赤血球の両方を完全に変換し得た。
【0143】
【表13】
【0144】
プロトコル:白血球が減少した(leuko−reduced)赤血球(Oklahoma Blood Institute)またはボランティアから回収される赤血球(ACD)は、0.9%の生理食塩水中で一旦洗浄され、そして30%のヘマトクリットまで変換緩衝液中に再懸濁された。細胞を10〜20mU/ml(1単位(unit)は、他に記載される標準的な反応条件を使用して、1分間で1μmolの四糖AMCを加水分解する量の酵素として定義される)α−N−アセチルガラクトサミニダーゼ(New England Biolabs)で処理し、そして混合しながら25℃にて60分間インキュベートした。処理した細胞を0.9%の生理食塩水で1度洗浄し、生理食塩水中に3〜5%で再懸濁し、上記のとおりに型決定した。
【0145】
中性pHで、10〜20mUのα−N−アセチルガラクトサミニダーゼで処理したA1サブタイプおよびA2サブタイプの両方の赤血球は、直接的な凝集アッセイにおいて抗A型試薬に対して全体的に未反応性であった。酵素処理されたA細胞が、レクチンUlex
Europaeusに対して、コントロールのO細胞と等しく反応性になるかわりに、一般的に、抗H試薬として使用される。抗A1試薬として一般的に使用されるDolichus Biflorusに対する反応性は、処理の始めの数分間で破壊された(示さず)。
【0146】
表XIVに示されるα−N−アセチルガラクトサミニダーゼ処理された細胞の交差試験分析によって、両方のA1およびA2酵素が、Oコントロール細胞として振舞ったことが確認された。
【0147】
(表XIV.NEBα-N−アセチルガラクトサミニダーゼを用いた、変換されたA1
赤血球およびA2赤血球の交差一致分析(cross match analysis)(IS,即時スピン(immediate spin)))
【0148】
【表14】
【0149】
この結果は、O型の個体とB型の個体(彼らは、A型赤血球の血液型A抗原に対する抗体の種々の力価を有する)が、免疫優勢なαGalNAc残基が十分に取り除かれる場合、これら細胞を認識しないことを示す。「発明の背景」の節に記載し、そしてさらに表Iに示されるように、この結果は、実施例4における本発明者らの分析に合致する反復性の血液型A型構造を含有する、より少量の糖スフィンゴ脂質がH関連A型構造に完全に変換されることを示す(表I、構造21)。さらに、このH関連A型構造が免疫系によって正常なH抗原として認識されることを示す。このことは、マウスにおけるこの糖脂質抗原の免疫原性についての本発明者らの以前の研究と、合致する。(Clausenら、J.Biol Chem.261(3)1380−7、1986;Clausenら、J.Biol.Chem.261(3):1388−92、1989)α−N−アセチルガラクトサミニダーゼ酵素単独での酵素的消化が、抗A型決定試薬ならびにO型個体およびB型個体の血漿に対して、A1赤血球およびA2赤血球を無反応性にさせるという知見は、新規であり、そして普遍的に受容可能な酵素で変換されたO型細胞を提供するための、商業的に実施可能な技術の開発における、重要な進歩である。酵素変換されたB細胞は、化学的に、O型細胞と同一であることが予測される一方、酵素変換されたA細胞は、O型としての表現型をとる(phenotype)が、2つの異なる型のH抗原を有する。これら2つの大部分が、O型細胞上で見出される存在する2型H構造(表I、構造18)であるが、また、マスクされたA型の三糖からなる内部構造を有する、少量のH糖脂質が存在する(表I、構造21)。従って、α−N−アセチルガラクトサミニダーゼ酵素単独で変換されたA型細胞は、前もって調製され、そして輸血薬中で使用された、O型細胞および任意の赤血球とは異なるが、これらは、O型細胞と同一に機能することが予測される。
【0150】
E.coliで発現されたα−N−アセチルガラクトサミニダーゼ酵素を用いた、赤血球細胞の酵素変換のパラメーターについての詳細な研究を、最適化のために実施した。pHは、A型四糖AMC基質に対する酵素活性の活性に影響を与えたが、試験し、そして以下に記載したパラメーターのいずれも、この活性には有意には影響しなかった。
【0151】
(緩衝系)
図11に示されるように、最適な緩衝系は、250mM グリシンであるようである。NaP緩衝液およびPCI緩衝液(これらは、一般的にB細胞の酵素的変換のために使用される)における反応は、有意な変換を生成しなかった。
【0152】
(グリシン緩衝液のpH)
E.coliで発現されたα−N−アセチルガラクトサミニダーゼは、実施例4で、中性pHの辺りで、幅広い至適pHを有することが見出された。A1細胞およびA2細胞の酵素的変換における至適pHの分析は、pH7により規定された至適を明らかにした(図12)。弱いA2細胞の変換は、7.5mU/mlの酵素を用いて、pH6〜8のより幅広い範囲で達成したが、より少ない酵素を使用した場合は、至適はpH7にあった(示さず)。
【0153】
(グリシン緩衝液のモル濃度)
グリシンの濃度は、E.coliで発現されたα−N−アセチルガラクトサミニダーゼを用いた、A型細胞の酵素変換のための重要なパラメーターであることが見出された(図13)。最適な変換は、250mM〜300mMで達成された。
【0154】
(酵素濃度)
図14は、A1細胞およびA2細胞を用いた、5〜50mU/mlの、E.coliで発現されたα−N−アセチルガラクトサミニダーゼの滴定を図示する。A1がA2よりも多くのA抗原性のエピトープを有することと一致して、A1細胞を変換するためにより多くの酵素を必要とする。1〜10mUの、A2細胞についての酵素の滴定は、使用された条件を用いて完全に変換するのに、3mU/mlを必要とすることを明らかにした(示さず)。
【0155】
(処理の間の細胞濃度(ヘマトクリット)の影響)
一定量の酵素(20mU)を用いた、20%〜90%の濃度でのA1細胞の処理は、細胞濃度の増加に伴い変換効率が減少することを示した(図15)。より高濃度の酵素では変換はより速やかに生じたが、50%より高い細胞濃度での変換効率は、比例して向上せず、最適な変換条件が20%〜50%であることを示唆する。
【0156】
(処理時間の影響)
図16は、変換が酵素量および時間に比例することを示す。
【0157】
(温度の影響)
温度20℃〜40℃の間での、E.coliで発現されたα−N−アセチルガラクトサミニダーゼのサッカリド誘導体に対する活性は、同等であることが見出され、そして図17に示される、A型細胞の変換における酵素の能力は、このことを確認した。
【0158】
これらの結果は、本発明において規定される好ましい特有の速度論的特性を有するこの実施例において使用されるE.coli発現α−N−アセチルガラクトサミニダーゼにより例示される、1つのα−N−アセチルガラクトサミニダーゼが、A型細胞の酵素的変換における改善された性能を示すことを、明確に示す。A1型細胞の変換(これは以前に達成されていない)を、中性のpHで、かつA2細胞およびB細胞を変換させるのに以前に使用された濃度より、かなり低い酵素タンパク質濃度で、好ましい酵素を用いて達成した。細胞の30%懸濁物(ヘマトクリット)の変換のために使用された酵素量(10〜20mU/ml(これは30〜60μg/mlに等価))は、A赤血球およびB赤血球を酵素的に変換する先行技術において報告されている、いかなる酵素量よりも低い。
【0159】
本実施例において使用されるE.coli発現α−N−アセチルガラクトサミニダーゼとしてのエキソ−N−アセチルガラクトサミニダーゼ(これは、全てのA型血液構造体からのGalNAcを開裂することが可能である)により処理されるA1細胞およびA2細胞は、血液O型細胞上に見出されるような古典的なH2型鎖抗原(構造体18、表1)を露出するが、これはまた、A関連H構造体(構造体21、表1)を有する、少量の糖脂質を残す。H2型(BE2)およびH3型(HH14、MBr−1)に対して特異的に反応するモノクローナル抗体についての研究(Clausenら、J Biol Chem.261(3):1380〜7、1986年を参照のこと)は、予想されるように、エキソ−N−アセチルガラクトサミニダーゼ処理したA細胞が、BE2と強く反応し、そしてHH14およびMBr−1とはより弱く反応したことを明らかにした(図示せず)。通常の血液型決定に使用される抗体を含む抗A抗体は、処理細胞とは何ら反応しなかったので(表13)、A関連H糖脂質構造体は、A抗原として認識されない。このことは、交差適合分析によりさらに確実となった(表14)。H3型鎖抗体は、上記糖脂質と、H−GloboおよびムチンH型と称される構造体(それぞれ構造体22および21、表1)との間を、区別不能であるという事実に一致する(Clausenら、J Biol Chem.261(3):1380〜7、1986年)。従って、エキソ−N−アセチルガラクトサミニダーゼ処理したA細胞は、表現型的にO細胞として振る舞うが、それらは、より少ない量の特有H糖脂質抗原を有することにより、O細胞とは構造的に異なる。従って、O型として型決定する、A型酵素で変換された細胞は、万能の輸血可能な血液型として非常に有用である新規な実体を構築する。
【0160】
実施例3において規定される新規なStreptomyces酵素は、本実施例において使用されるα−N−アセチルガラクトサミニダーゼと比較して30倍以上の特性を有し、Streptomyces酵素および類似の特性を有する他の酵素は、酵素的赤血球変換において、同様により良く機能すると予想される。
【0161】
(等価物)
当業者は、本明細書で記載される特定の手順に対する多くの等価物を認識するか、または通常の実験以上のものを使用せずに、確認し得る。このような等価物は、本発明の範囲内にあると考えられ、そして、添付の特許請求の範囲によって包含される。種々の置換、変更、および改変が、添付の特許請求の範囲により規定されるように、本発明の精神および範囲から逸脱することなく本発明に対してなされ得る。他の局面、利点、および改変は、本発明の範囲内にある。本出願の全体を通じて引用される、全ての引用文献、URL、発行された特許、および公開された特許出願の内容は、本明細書で参考として援用される。これらの特許、出願および他の文献の適切な構成要素、プロセス、および方法が、本発明および本発明の実施形態のために選択され得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載の発明。
【請求項1】
明細書に記載の発明。
【図9】
【図9B】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図5b】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9B】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図5b】
【図6】
【図7】
【図8】
【公開番号】特開2009−153525(P2009−153525A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−89619(P2009−89619)
【出願日】平成21年4月1日(2009.4.1)
【分割の表示】特願2003−530817(P2003−530817)の分割
【原出願日】平成14年9月25日(2002.9.25)
【出願人】(502152621)ザイムクエスト, インコーポレイテッド (6)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年4月1日(2009.4.1)
【分割の表示】特願2003−530817(P2003−530817)の分割
【原出願日】平成14年9月25日(2002.9.25)
【出願人】(502152621)ザイムクエスト, インコーポレイテッド (6)
【Fターム(参考)】
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