αヒドロキシ酸のポリマーにより結合されたヒアルロン酸
本発明は、αヒドロキシ酸のポリマー、好ましくはポリ(乳酸)のポリマーにより、部分的に又は完全に結合されるか又は架橋されている、ヒアルロン酸又はその塩を含んで成る生成物に関する。本発明はまた、前記生成物の製造、衛生及び手術製品の調製のための生分解性プラスチック材料の分野、医薬及び化粧品分野への本発明の生成物の使用;及びそのような分野においてそれらにより製造された種々の製品にも関する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野:
本発明は、αヒドロキシ酸のポリマー、好ましくはポリ(乳酸)のポリマーにより、部分的に又は完全に結合されるか又は架橋されている、ヒアルロン酸又はその塩を含んで成る生成物に関する。本発明はまた、前記生成物の製造、衛生及び手術製品の調製のための生分解性プラスチック材料の分野、医薬及び化粧品分野への本発明の生成物の使用;及びそのような分野においてそれらにより製造された種々の製品にも関する。
【背景技術】
【0002】
背景:
身体中の最も豊富なヘテロ多糖は、グリコサミノグリカンである。グリコサミノグリカンは、反復する二糖単位からなる枝なしの炭水化物ポリマーである(ケラタン硫酸のみが炭水化物のコアー領域において枝分かれされている)。二糖単位は一般的に、第1のサッカリド単位として、2種の変性された糖、すなわちN−アセチルガラクトサミン(GalNAc)又はN−アセチルグルコサミン(GlcNAc)の1つを含んで成る。第2の単位は通常、ウロン酸、例えばグルクロン酸(GlcUA)又はイズロネートである。
【0003】
グリコサミノグリカンは負に荷電された分子であり、そして溶液において高い粘度を付与する拡張されたコンホメーションを有する。グリコサミノグリカンは、細胞の表面上に又は細胞外マトリックスに位置する。グリコサミノグリカンはまた、溶液において低い圧縮性を有し、そして結果として、生理学的潤滑液、例えば関節として理想的である。グリコサミノグリカンの剛性が、細胞に構造的に結合性を付与し、そして細胞間に通路を提供し、細胞移動可能にする。最高の生理学的に重要なグリコサミノグリカンは、ヒアルロナン、コンドロイチン硫酸、ヘパリン、ヘパラン硫酸、デルマタン硫酸及びケラタン硫酸である。ほとんどのグリコサミノグリカンは、特定のオリゴ糖構造を通してプロテオグリカンコアータンパク質に共有結合する。ヒアルロナンは、一定のプロテオグリカンと大きな凝集体を形成するが、しかし遊離炭水化物鎖がプロテオグリカンと非共有複合体を形成する場合、例外である。
【0004】
身体中でのヒアルロナンの多くの役割は同定されている(Laurent T. C. and Fraser J. R. E. , 1992, FASEB J. 6: 2397-2404; 及び Toole B. P. , 1991, "Proteoglycans and hyaluronan in morphogenesis and differentiation."In : Cell Biology of the Extracellular Matrix, pp. 305-341, Hay E. D. , ed., Plenum, New Yorkを参照のこと)。ヒアルロナンは、硝子軟骨、滑膜関節液及び皮膚組織(真皮及び表皮の両者)に存在する。ヒアルロナンはまた、多くの生理学的機能、例えば付着、成長、細胞運動性、癌、脈管形成及び創傷治癒における役割を有すると思われる。ヒアルロナンのユニークな物理的及び生理学的性質のために、それは眼及び関節の手術に使用され、そして他の医学的方法においても評価される。
【0005】
用語“ヒアルロン酸”とは、細胞表面、脊椎贓物の結合組織の塩基性細胞外物質、関節の滑液、眼の眼内流体、ヒト臍帯組織及び鶏冠において天然において存在する、D−グルクロン酸及びN−アセチル−D−グルコサミン酸の残基により構成される、異なった分子量を有する酸性多糖類を意味するために文献において使用される。
【0006】
用語“ヒアルロン酸”とは、種々の分子量を有するD−グルクロン酸及びN−アセチル−D−グルコサミン酸の交互の残基、又はその分解された画分を有する一連の多糖類を意味するものとして実際使用され、そして従って、“ヒアルロン酸”の複数用語を用いることが、より正しいと思われる。しかしながら、単一用語は、この記載においてすべて同じに使用され;さらに、略語“HA”は時折、この集合的な用語の代わりに使用されるであろう。
【0007】
HAは、多くの組織、例えば皮膚、腱、筋肉及び軟骨の細胞のための機械的な支持体として、生物において重要な役割を演じ、すなわちそれは、細胞内マトリックスの主成分である。HAはまた、生物学的工程、例えば組織の保湿及び湿潤において他の重要な部分を演じている。
【0008】
HAは、上記天然の組織から抽出され得るが、但し今日、感染剤の移行の可能性ある危険性を低め、そして生成物の均等性、品質及び利用性を高めるために、微生物学的方法により、それを調製することが好ましい(WO03/0175902号、Novozymes)。
HA及びその種々の分子サイズ画分、及びそれらのそれぞれの塩は、特に関節症の処理における薬剤として、特に眼科学及び美容外科における天然の器官及び組織のための助剤及び/又は置換剤として、及び化粧製品における剤として使用されて来た。ヒアルロナンの生成物はまた、整形外科、リウマチ学及び皮膚学への使用のためにも開発されて来た。
【0009】
HAはまた、衛生及び手術製品のために使用される種々のポリマー材料、例えばポリウレタン、ポリエステル、等のための、それらの材料を生物適合性にする効果を有する添加剤としても使用され得る。
多官能エポキシ化合物によりHAを架橋することにより調製される、架橋されたHA又はその塩の調製は、EP0161887B1に開示されている。脂肪族アルコールによるHAの全体的又は部分的架橋のエステル、及び無機又は有機塩基によるその部分的エステルの塩が、アメリカ特許第4,957,744号に開示される。
【0010】
US6673919B2(Chisso Corp. 公開日06/01/2004)は、ヒアルロン酸又はその塩、及びカチオン性化合物の溶液から成る複合体のO−アセチル化、アルコキシル化又は架橋により、ヒアルロン酸又はその塩を化学的に修飾するための方法に関する。
FR2707653号(Vetoquinol)は、生物適合性及び生分解性ポリマーと、分子、特に移動水素を含む生物学的活性分子との間の接合体;その調製方法;及びこの接合体を含む医薬生成物に関する。
【0011】
本発明は、αヒドロキシ酸の反復単位から製造される合成ポリマー及びオリゴマー、例えばポリ(乳酸)(ポリラクチドとも呼ばれる)、及びいずれかの乳酸基剤のポリマー、立体ポリマー及びコポリマー、特にグリコール酸によるそれら、また、他のポリマー、例えばε−カプロラクトン、グルコン酸及び化学的に変性されたグルコン酸、リンゴ酸を通してのヒドロキシカプロン酸によるコポリマー、水溶性であり、そして腎臓濾過を通して排除され得る分解副産物を導く低分子量セグメントを有するコポリマー、例えば低分子ポリ(エチレングリコール)(但し、それらは、鎖端で1又は2つのカルボキシル基を担持し、そしてそれらは単酸の場合、疎水性を提供する)を用いての、ヒアルロン酸(HA)に対する化学的グラフト技法に関する。重要なことには、前記方法は、グラフト又は架橋によりHAを誘導体化するために開発され得、そして生成物は技術、生物医学及び医薬用途のために使用され得る。グラフトされたHAは、生分解性で、生物適合性で且つ生物再吸収性である。
【発明の開示】
【0012】
発明の要約:
ポリαヒドロキシ酸、例えば乳酸又はグリコール酸のオリゴマーによるHAの誘導体化が、HA自体よりも疎水性である、グラフトされたHA構造体を調製するために使用される。得られる両親媒性質は、化粧品適用、例えばエマルジョン安定化、皮膚モイスチュライゼーション及び強化、及びフィルム形成において所望される。そのようなグラフトされた材料からのヒドロゲル又は超微小コロイド状分散体はまた、組織増強、付着防止、変形性関節炎及び眼科学のためにも使用され得る。
【0013】
生分解性代謝物のみが、グラフトされた材料の生分解に基づいて開放されるであろう。分解副生成物、例えば乳酸又はグリコール酸は、身体により代謝され、そして完全に排除され、従ってグラフトされた生成物を身体において完全に生物再吸収性にする。
乳酸は化粧配合物に広く使用され、そしてポリ(乳酸)(PLA)は組織工学のための生医学用途、及びまた、例えばPLA微小球体及び超微粒子を用いての薬物供給のための医薬用途に広く使用される。
【0014】
ポリ(乳酸)(酸塩化物形)は、HA(テトラ(n−ブチル)アンモニウム又はセチルトリメチルアンモニウム塩形)に対してグラフとされる。得られる生成物は、ゲル又は超微小コロイド状分散体として得られ、そしてナトリウムEDTA又はリン酸緩衝液−DMSO、及び次に水及びエタノールに対する透析により精製される。アンモニウムイオンを除去するいずれの透析システムでもたぶん効果的である。PLA−誘導体化されたHAの凍結緩衝はスポンジ様物を生成した。
PLA−HAは水溶性ではなかった(但し、ミセルの形成が生じ得る)。しかしながら、それは、DMSO:水の1:1混合物に溶解性であった。
【0015】
第1の観点においては、本発明は、ヒアルロン酸又はその塩を含んで成る生成物に関し、ここで前記ヒアルロン酸又はその塩は、αヒドロキシ酸のポリマー、好ましくはポリラクチドとも呼ばれるポリ(乳酸)のポリマー、及びいずれかの乳酸基剤のポリマー、立体ポリマー及びコポリマー、特にグリコール酸によるそれら、また、他のポリマー、例えばε−カプロラクトン、グルコン酸及び化学的に変性されたグルコン酸、リンゴ酸を通してのヒドロキシカプロン酸によるコポリマー、水溶性であり、そして腎臓濾過を通して排除され得る分解副産物を導く低分子量セグメントを有するコポリマー、例えば低分子ポリ(エチレングリコール)(但し、それらは、鎖端で1又は2つのカルボキシル基を担持し、そしてそれらは単酸の場合、疎水性を提供する)により、一部又は完全に結合されるか、又は架橋される。
【0016】
第2の観点においては、本発明は、第1の観点において定義されるような生成物及び活性成分、好ましくは薬理学的活性成分を含んで成る組成物に関する。
第3の観点は、有効量の第1の観点において定義されるような生成物、及び医薬的に許容できるキャリヤー、賦形剤又は希釈剤を含んで成る医薬組成物に関する。
第4の観点は、ビークルとしての有効量の第1の観点において定義されるような生成物、及び薬理学的活性剤を含んで成る医薬組成物に関する。
【0017】
第5の観点は、有効量の第1の観点において定義されるような生成物を活性成分として含んで成る化粧製品に関する。
第6の観点においては、本発明は、第1の観点において定義されるような生成物を含んで成る、衛生、医学又は手術製品、好ましくは手術用スポンジ、創傷治癒スポンジ、又はバンドエイド又は他の創傷包帯材料に関する。
重要な観点は、第1の観点に定義されるような生成物を含んで成る医薬カプセル又はマイクロカプセルに関する。
【0018】
本発明のもう1つの重要な観点は、
a)ヒアルロン酸又はその塩と、αヒドロキシ酸のポリマーのモノ−アシル塩化物又はジ−アシル塩化物とを、有機溶媒、好ましくはDMSOにおいて反応せしめる段階を含んで成る、ヒアルロン酸又はその塩を含んで成る生成物の生成方法に関し、ここで前記ヒアルロン酸又はその塩は、αヒドロキシ酸のポリマー、好ましくはポリラクチドとも呼ばれるポリ(乳酸)のポリマー、及びいずれかの乳酸基剤のポリマー、立体ポリマー及びコポリマー、特にグリコール酸によるそれら、また、他のポリマー、例えばε−カプロラクトン、グルコン酸及び化学的に変性されたグルコン酸、リンゴ酸を通してのヒドロキシカプロン酸によるコポリマー、水溶性であり、そして腎臓濾過を通して排除され得る分解副産物を導く低分子量セグメントを有するコポリマー、例えば低分子ポリ(エチレングリコール)(但し、それらは、鎖端で1又は2つのカルボキシル基を担持し、そしてそれらは単酸の場合、疎水性を提供する)により、一部又は完全に結合されるか、又は架橋される。
【0019】
本発明の最終観点は、眼科学的処理、変形性関節炎又は眼の処理、創傷の処理、又は薬理学的活性剤の皮膚又は経皮投与又は化粧品の皮膚投与の実施方法に関し、ここで前記方法は、第1の観点において定義されるような生成物、又は第2、第3又は第4の観点のいずれかに定義されるような組成物の使用を包含する。
多くの観点は、変形性関節炎、癌の処理のための薬剤の製造、創傷の処理のための薬剤の製造、又はモイスチャライザーの製造のための、第1の観点において定義されるような生成物又は前記観点のいずれかに定義されるような組成物の使用に関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
定義:
核酸構造体:
“核酸構造体”は、本明細書においては、天然に存在する遺伝子から単離され、又は他方では、天然に存在しない態様で組み合わされ、そして並置される、核酸のセグメントを含むように修飾されている、一本鎖又は二本鎖核酸分子として定義される。用語、核酸構造体は、核酸構造体がコード配列の発現のために必要とされるすべての制御配列を含む場合、用語“発現カセット”と同じ意味である。用語“コード配列”とは、本明細書において定義される場合、mRNAに転写され、そして下記に言及される制御配列の制御下に配置される場合、興味ある酵素に翻訳される配列である。コード配列の境界は、一般的に、mRNAの5’末端で読み取り枠のすぐ上流に位置するリボソーム結合部位、及びmRNAの3’末端で読み取り枠のすぐ下流に位置する転写ターミネーター配列により決定される。コード配列は、DNA、cDNA,及び組換え核酸配列を包含するが、但しそれらだけには限定されない。
【0021】
ポリペプチドをコードする核酸配列を単離し、又はクローン化するために使用される技法は、当業界において良く知られており、そしてゲノムDNAからの単離、cDNAからの調製、又はそれらの組み合わせを包含する。そのようなゲノムDNAからの本発明の核酸配列のクローニングは、例えば良く知られているポリメラーゼ鎖反応(PCR)、又は共有する構造特徴を有するクローン化されたDNAフラグメントを検出するために発現ライブラリーの抗体スクリーニングを用いることによってもたらされ得る。
【0022】
例えば、Innisなど., 1990, PCR: A Guide to Methods and Application; Academic Press, New York を参照のこと。他の核酸増幅方法、例えばリガーゼ鎖反応、連結された活性化転写及び核酸配列に基づく増幅が使用され得る。クローニング方法は、ポリペプチドをコードする核酸配列を含んで成る所望する核酸フラグメントの切除及び単離、ベクター分子中への前記フラグメントの挿入、及び核酸配列のクローンが複製されるであろうバシラス細胞中への組換えベクターの組み込みを包含することができる。核酸配列は、ゲノム、cDNA, RNA, 半合成、合成起原、又はそれらのいずれかの組み合わせのものであり得る。
【0023】
酵素をコードする単離された核酸配列は、酵素の発現を提供するために種々の手段で操作され得る。構造体又はベクター中へのその挿入の前、核酸配列の操作は、発現ベクター又はバシラス宿主細胞に依存して、所望されるか又は必要とされる。クローニング方法を用いて核酸配列を修飾するための技法は、当業界において良く知られている。核酸配列がまた、当業界において良く知られている方法を用いて宿主細胞においてインビボで操作され得ることは理解されるであろう。
【0024】
多くの酵素が、ヒアルロン酸の生合成に関与する。それらの酵素は、ヒアルロナンシンターゼ、UDP−グルコース6−デヒドロゲナーゼ、UDP−グルコースピロホスホリラーゼ、UDP−N−アセチルグルコサミンピロホスホリラーゼ、グルコース−6−リン酸イソメラーゼヘキソキナーゼ、ホスホグルコムターゼ、アミドトランスフェラーゼ、ムターゼ及びアセチルトランスフェラーゼを包含する。ヒアルロナンシンターゼは、ヒアルロン酸の生成における主要酵素である。
【0025】
“ヒアルロナンシンターゼ”とは、GluUA及びGlcNAc糖前駆体の付加によりヒアルロナン鎖の延長を触媒するシンターゼとして、本明細書においては定義される。ストレプトコーカスヒアルロナンシンターゼ、脊椎動物ヒアルロナンシンターゼ及びウィルスヒアルロナンシンターゼのアミノ酸配列は、パステウレラヒアルロナンシンターゼとは異なり、そしてグループI及びグループIIヒアルロナンシンターゼとしての分類のために提案されており、ここで前記グループIヒアルロナンシンターゼはストレプトコーカスヒアルロナンシンターゼを包含する(DeAngelis, 1999)。バシラス宿主細胞におけるヒアルロナンの生成に関しては、真核生物起源のヒアルロナンシンターゼ、例えば哺乳類ヒアルロナンシンターゼはほとんど好ましいものではない。
【0026】
ヒアルロナンシンターゼコード配列は、バシラス宿主細胞において発現され得るいずれかの核酸配列であり得る。前記核酸配列はいずれの起源のものでもあり得る。好ましいヒアルロナンシンターゼ遺伝子は、グループI又はグループIIのいずれか、例えばストレプトコーカス・エクイシミリス、ストレプトコーカス・ピオゲネス、ストレプトコーカス・ウベリス又はストレプトコーカス・エクイ亜種ズーエピデミカスからのグループIヒアルロナンシンターゼ遺伝子、又はパスツレラ・ムルトシダのグループIIヒアルロナンシンターゼ遺伝子を包含する。
【0027】
ヒアルロナンの前駆体糖が宿主細胞、すなわち培養培地に供給されるか、又は内因性遺伝子により、非内因性遺伝子により、又はバシラス宿主細胞における内因性及び非内因性遺伝子の組み合わせによりコードされる構造体が、本発明のHAの生成において好ましい。前記前駆体糖は、D−グルクロン酸又はN−アセチル−グルコサミンであり得る。
【0028】
本発明の方法においては、核酸構造体はさらに、ヒアルロナンの前駆体糖の生合成における酵素をコードする1又は複数の遺伝子を含んで成ることができる。他方では、バシラス宿主細胞は、さらに、前駆体糖の生合成における酵素をコードする1又は複数の遺伝子を含んで成る1又は複数の第2核酸構造体を含んで成ることができる。ヒアルロナン生成は、ヒアルロナンの前駆体糖の合成路における段階を指図する1つの遺伝子又は複数の遺伝子をコードする核酸配列を有する構造体の使用により改良される。“ヒアルロナンの前駆体糖の合成路における段階を指図する”とは、前記遺伝子の発現されたタンパク質がN−アセチル−グルコサミン又はD−グルクロン酸、又はN−アセチル−グルコサミン及びD−グルクロン酸のいずれかの前駆体である糖の形成において活性的であることを意味する。
【0029】
前駆体糖を供給するための好ましい方法においては、ヒアルロナンの前駆体糖の合成路における段階を指図する遺伝子をコードする核酸配列に操作可能的に結合される異種プロモーター領域を有する組換え構造体を有する宿主細胞を培養することによって、ヒアルロナンシンターゼを有する宿主細胞におけるヒアルロナン生成を改良するための構造体が提供される好ましい方法においては、宿主細胞はまた、N−アセチル−グルコサミンの生合成に関与するシンターゼに対して、前記核酸配列と同じか又は異なったプロモーターを使用することができる、ヒアルロナンシンターゼに操作可能的に結合されるプロモーターを使用することができる、ヒアルロナンシンターゼに操作可能的に結合されるプロモーター領域を有する組換え操作体を含んで成る。さらなる好ましい態様においては、宿主細胞は、ヒアルロナンの前駆体糖の合成に関与する第2遺伝子をコードする異なった核酸配列に操作可能的に結合されるプロモーター領域を有する組換え構造体を有することができる。
【0030】
従って、本発明はまた、ヒアルロナンの前駆体糖の合成路における段階を指図する遺伝子をコードする核酸配列を有する構造体の使用により、ヒアルロナン生成を改良するための構造体にも関する。核酸配列は、ヒアルロナンシンターゼをコードする核酸配列と同じか又は異なったプロモーターから前駆体糖に発現され得る。
【0031】
ヒアルロン酸の生成のための前駆体糖の生合成に関与する遺伝子は、UDP−グルコース6−デヒドロゲナーゼ遺伝子、UDP−グルコースピロホスホリラーゼ遺伝子、UDP−N−アセチルグルコサミンピロホスホリラーゼ遺伝子、グルコース−6−リン酸イソメラーゼ遺伝子、ヘキソキナーゼ遺伝子、ホスホグルコムターゼ遺伝子、アミドトランスフェラーゼ遺伝子、ムターゼ遺伝子及びアセチルトランスフェラーゼ遺伝子を包含する。
【0032】
ヒアルロナンシンターゼを含む細胞においては、hasB, hasC及びhasD又はそれらの相同体、例えばバシラス・サブチリスtuaD, gtaB及びgcaDのいずれか1つ又は組合せが、ヒアルロナンシンターゼに利用できる前駆体糖のプールを高めるために発現され得る。バシラスゲノムは、Kunst, など., Nature 390,249-256,"The complete genome sequence of the Gram-positive bacterium Bacillus subtilis" (20 November 1997)記載される。いくつかの場合、例えば宿主細胞が生来のヒアルロナンシンターゼ活性を有さない場合、構造体はhasA遺伝子を含むことができる。
【0033】
生合成酵素をコードする核酸配列は、宿主細胞に対して生来のものであり得るが、ところが他の場合、異種配列が使用され得る。複数の遺伝子が発現される場合、それらは、生来のオペロンにおいてお互い関連する遺伝子、例えばhasA, hasB, hasC及びhasDを含んで成る、ストレプトコーカス・エクイシミリスのHASオペロンの遺伝子であり得る。他の場合、前駆体遺伝子配列のいくつかの組合せの使用が所望されるが、オペロン中の個々の要素は包含されない。宿主細胞に対して生来のいくつかの遺伝子、及び外因性である他の遺伝子の使用がまた、他の場合、好ましい。選択は、所定の宿主細胞における利用できる糖のプール、宿主細胞の他の機能を妨げないで、過剰生成に対する細胞の適合能力、及び細胞が外因性遺伝子とは異なってその生来の遺伝子からの発現を調節するかどうかに依存するであろう。
【0034】
1つの例として、細胞の代謝必要条件及び増殖条件、及び利用できる前駆体糖プールに依存して、UDP-N−アセチルグルコサミンピロホスホリラーゼをコードする核酸配列、例えばhasD遺伝子、バシラスgcaD遺伝子及びそれらの相同体の発現によりN−アセチル−グルコサミンの生成を高めることが所望される。他方では、前駆体糖はD−グルクロン酸であり得る。1つのそのような態様においては、核酸配列は、UDP−グルコース6−デヒドロナーゼをコードする。そのような核酸配列は、バシラスtuaD遺伝子、ストレプトコーカスのhasB遺伝子、及びそれらの相同体を包含する。核酸配列はまた、UDP−グルコースピロホスホリラーゼ、例えばバシラスgtaB遺伝子、ストレプトコーカスのhasC遺伝子及びそれらの相同体をコードすることができる。本発明の方法においては、UDP−グルコース6−デヒドロゲナーゼ遺伝子は、hasB遺伝子又はtuaD遺伝子;又はそれらの相同体であり得る。
【0035】
本発明の方法においては、ヒアルロナンシンターゼ遺伝子、及び前駆体糖をコードする1又は複数の遺伝子は、同じプロモーターの制御下にある。他方では、前駆体糖をコードする1又は複数の遺伝子は、同じプロモーターであるが、しかしヒアルロナンシンターゼ遺伝子を駆動する異なったプロモーターの制御下にある。さらなる態様においては、ヒアルロナンシンターゼ遺伝子、及び前駆体糖をコードする遺伝子の個々は、異なったプロモーターの制御下にある。好ましい態様においては、ヒアルロナンシンターゼ遺伝子、及び前駆体糖をコードする1又は複数の遺伝子は同じプロモーターの制御下にある。
【0036】
本発明はまた、ヒアルロナンシンターゼ遺伝子及びUDP−グルコース6−デヒドロゲナーゼ遺伝子、及び任意には、UDP−グルコースピロホスホリラーゼ遺伝子、UDP−N−アセチルグルコサミンピロホスホリラーゼ遺伝子及びグルコース−6−リン酸イソメラーゼ遺伝子から成る群から選択された1又は複数の遺伝子を含んで成るヒアルロナンシンターゼオペロンをコードする単離された核酸配列を含んで成る核酸構造体に関する。
【0037】
いくつかの場合、宿主細胞は、組換え構造体からのヒアルロナンシンターゼの発現に関係する、ヒアルロナンの前駆体糖の合成路における段階を指図する遺伝子をコードする核酸分子に操作可能的に結合される異種プロモーター領域を有する組換え構造体を有するであろう。ヒアルロナンシンターゼは、前駆体の生合成に関与する酵素をコードする核酸配列と同じか又は異なったプロモーター領域から発現され得る。もう1つの好ましい態様においては、宿主細胞は、ヒアルロナン前駆体糖の合成に関与する第2遺伝子をコードする異なった核酸配列に操作可能的に結合されるプロモーター領域を有する組換え構造体を有することができる。
【0038】
前駆体糖の生合成に関与する酵素コードする核酸配列は、ヒアルロナンシンターゼをコードする核酸配列と同じか又は異なったプロモーターから発現され得る。前者においては、個々のhasH, hasB, hasC及びhasD、又はそれらの相同体を有することにおいて、スタフィロコーカス・エクイシミリスのオペロンを模倣することができるか、又は他方では、ストレプトコーカス・エクイシミリスオペロンに存在する十分な補体を決して利用できない“人口オペロン”が構成される。“人工オペロン”はまた、グルコース−6−リン酸イソメラーゼ遺伝子(hasE)、及びヘキソキナーゼ遺伝子、ホスホグルコムターゼ遺伝子、アミドトランスフェラーゼ遺伝子、ムターゼ遺伝子及びアセチルトランスフェラーゼ遺伝子から成る群から選択された1又は複数の遺伝子を含んで成ることができる。人工オペロンにおいては、要素の少なくとも1つは、他の1つの要素、例えばコード配列に対して異種であるプロモーター領域に対して異種である。
【0039】
好ましい態様においては、核酸構造体は、hasA, tueD及びgtaBを含んで成る。もう1つの好ましい態様においては、核酸構造体は、hasA, tauD, gtaB及びgcaDを含んで成る。もう1つの好ましい態様においては、核酸構造体は、hasA及びtuaDを含んで成る。もう1つの好ましい態様においては、核酸構造体はhasAを含んで成る。もう1つの好ましい態様においては、核酸構造体は、hasA, tuaD, gtaB, gcaD及びhasEを含んで成る。もう1つの好ましい態様においては、核酸構造体は、hasA, hasB, hasC, hasD及びhasEを含んで成る。上記の好ましい態様に基づけば、示される遺伝子は、その相同体により置換され得る。
【0040】
本発明の方法においては、核酸構造体は、ヒアルロナンシンターゼコード配列に対して外来性のプロモーター配列に操作可能的に結合されるヒアルロナンシンターゼコード配列を含んで成る。前記プロモーター配列は、例えば単一のプロモーター又はタンデムプロモーターであり得る。
【0041】
“プロモーター”とは、1つの遺伝子の転写を開始するためにRNAポリメラーゼの結合に関与する核酸配列として本明細書において定義される。“タンデムプロモーター”とは、複数のプロモーター配列として本明細書においては定義され、これらの個々は、コード配列に操作可能的に結合され、そしてmRNAへのコード配列の転写を仲介する。“操作可能的に結合される”とは、制御配列、例えばプロモーター配列が、制御配列がコード配列によりコードされるポリペプチドの生成を指図するよう、コード配列に関する位置で適切に置換される配置として本明細書において定義される。
【0042】
前述のように、“コード配列”とは、適切な制御配列の制御下に置かれる場合、mRNAに転写され、そしてポリペプチドに翻訳される核酸配列として本明細書において定義される。コード配列の境界は一般的に、mRNAの5’末端での読み取り枠のすぐ上流に位置するリボソーム結合部位、及びmRNAの3’末端での読み取り枠のすぐ下流に位置する転写ターミネーター配列により決定される。コード配列は、DNA、cDNA、半合成、合成及び組換え核酸配列を含むことができるが、但しそれらだけには限定されない。
【0043】
好ましい態様においては、プロモーター配列は、細菌源から得られる。より好ましくは態様においては、プロモーター配列は、グラム陽性細菌、例えばバシラス株、例えばバシラス・アガラドヘレンス(Bacillus agaradherens)、バシラス・アルカロフィラス(Bacillus alkalophilus)、バシラス・アミロリケファシエンス(Bacillus amyloliquefaciens)、バシラス・ブレビス(Bacillus brevis)、バシラス・サーキュランス(Bacillus circulans)、バシラス・クラウジ(Bacillus clausii)、バシラス・コアギュランス(Bacillus coagulans)、バシラス・ファーマス(Bacillus firmus)、バシラス・ラウタス(Bacillus lautus)、バシラス・レンタス(Bacillus lentus)、バシラス・リケニホルミス(Bacillus licheniformis)、バシラス・メガテリウス(Bacillus megaterium)、バシラス・プミラス(Bacillus pumilus)、バシラス・ステアロサーモフィラス(Bacillus stearothermophilus)、バシラス・サブチリス(Bacillus subtilis)及びバシラス・スリンジエンシス(Bacillus thuringiensis);又はストレプトミセス株、例えばストレプトミセス・リビダンス(Streptomyces lividans)又はストレプトミセス・ムリナス(Streptomyces murinus);又はグラム陰性細菌、例えばE. コリ又はシュードモナス種から得られる。
【0044】
本発明の方法に置ける核酸配列の転写を指図するための適切なプロモーターの例は、E. コリlacオペロン、ストレプトミセス・コエリコロルアガラーゼ遺伝子(dagA)、バシラス・レンタス又はバシラス・クラウジアルカリプロテアーゼ遺伝子(aprH)、バシラス・リケニホルミスアルカリプロテアーゼ遺伝子(サブチリシンCarlsberg遺伝子)、バシラス・サブチリスレバンスクラーゼ遺伝子(sacB)、バシラス・サブチリスα−アミラーゼ遺伝子(amyE)、バシラス・リケニホルミスα−アミラーゼ遺伝子(amyL)、バシラス・ステアロサーモフィラスマルトゲンアミラーゼ遺伝子(amyM)、バシラス・アミロリケファシエンスα−アミラーゼ遺伝子(amyQ)、バシラス・リケニホルミスペニシリナーゼ遺伝子(penP)、バシラス・サブチリスxylA及びxylB遺伝子、バシラス・ツリンギエンシス亜種テネブリオニスCryIII A遺伝子(cryIII A)、又はそれらの一部、又は原核生物β−ラクタマーゼ遺伝子から得られたプロモーターである(Villa- Kamaroffなど., 1978, Proceedings of the National Academy of Sciences USA 75: 3727- 3731)。
【0045】
他の例は、spo1細菌ファージプロモーター及びtacプロモーターである((DeBoer など., 1983, Proceedings of the National Academy of Sciences USA 80: 21-25)。さらなるプロモーターは、"Useful proteins from recombinant bacteria"in Scientific American, 1980,242 : 74-94;及び Sambrook, Fritsch, and Maniatus, 1989, Molecular Cloning, A Laboratory Manual, 2d edition, Cold Spring Harbor, New Yorkに記載される。
【0046】
プロモーターはまた、“-35”領域のための配列TTGACA及び“-10”領域のためのTATAATを有する“コンセンサス”プロモーターであり得る。コンセンサスプロモーターは、バシラス宿主細胞において機能することができるいずれかのプロモーターから得られる。“コンセンサス”プロモーターの構成は、バシラス・サブチリスのための増殖性“シグマA−型”プロモーターの“-10”及び“-35”領域のための確立されたコンセンサス配列に対してより完全に適合するプロモーターを創造するために、特定の部位の突然変異誘発により達成され得る(Voskuil など., 1995, Molecular Microbiology 17: 271-279)。
【0047】
好ましい態様においては、“コンセンサス”プロモーターは、E. コリlacオペロン、ストレプトミセス・コエリコロルアガラーゼ遺伝子(dagA)、バシラス・レンタス又はバシラス・クラウジアルカリプロテアーゼ遺伝子(aprH)、バシラス・リケニホルミスアルカリプロテアーゼ遺伝子(サブチリシンCarlsberg遺伝子)、バシラス・サブチリスレバンスクラーゼ遺伝子(sacB)、バシラス・サブチリスα−アミラーゼ遺伝子(amyE)、バシラス・リケニホルミスα−アミラーゼ遺伝子(amyL)、バシラス・ステアロサーモフィラスマルトゲンアミラーゼ遺伝子(amyM)、バシラス・アミロリケファシエンスα−アミラーゼ遺伝子(amyQ)、バシラス・リケニホルミスペニシリナーゼ遺伝子(penP)、バシラス・サブチリスxylA及びxylB遺伝子、バシラス・ツリンギエンシス亜種テネブリオニスCryIII A遺伝子(cryIII A)、又はそれらの一部、又は原核生物β−ラクタマーゼ遺伝子spo1細菌ファージプロモーターから得られたプロモーターから得られる。より好ましい態様においては、“コンセンサス”プロモーターは、バシラス・アミロリケファシエンスα−アミラーゼ遺伝子(amyQ)から得られる。
【0048】
Widner, など., アメリカ特許第6,255,076号及び第5,955,310号は、短いコンセンサスamyQプロモーター(また、scBANとも呼ばれる)を包含する、バシラス細胞における発現への使用のためのタンデムプロモーター及び構造体、及び方法を記載する。バシラスにおける改良された生成のためへの、cryIII Aスタビライザー配列の使用及び前記配列を用いての構造体がまた記載される。
【0049】
タンデムプロモーター中の個々のプロモーター配列は、変異、切断された及びハイブリッドプロモーターを包含する、選択のバシラス細胞における転写活性を示すいずれかの核酸配列であり得、そしてバシラス細胞に対して相同の又は異種の細胞外又は細胞内ポリペプチドをコードする遺伝子から得られる。個々のプロモーター配列は、前記ポリペプチドをコードする核酸配列に対して生来のものであるか又は外来のものであり得、そしてバシラス細胞に対して生来のものであるか又は外来のものであり得る。プロモーター配列は、同じプロモーター配列か又は異なったプロモーター配列であり得る。
【0050】
タンデムプロモーター中の複数のプロモーター配列は、核酸配列の転写を同時に促進することができる。他方では、タンデムプロモーター中の1又は複数のプロモーター配列は、バシラス細胞の増殖の異なった段階で核酸配列の転写促進することができる。
【0051】
好ましい態様においては、タンデムプロモーターは、バシラス・アミロリケファシエンスα−アミラーゼ遺伝子の少なくともamyQプロモーターを含む。もう1つの好ましい態様においては、タンデムプロモーターは、少なくとも、“-35”領域のための配列TTGACA及び“-10”領域のためのTATAATを有する“コンセンサス”プロモーターを含む。もう1つの好ましい態様においては、タンデムプロモーターは少なくとも、バシラス・リケニホルミスα−アミラーゼ遺伝子のamyLプロモーターを含む。もう1つの好ましい態様においては、タンデムプロモーターは、少なくともcryIII Aプロモーター又はその一部を含む(Agaisse and Lereclus, 1994, Molecular Microbiology 13: 97-107)。
【0052】
より好ましい態様においては、タンデムプロモーターは、少なくともamyLプロモーター及びcryIII Aプロモーターを含む。もう1つのさらなる好ましい態様においては、タンデムプロモーターは少なくともamyQプロモーター及びcryIII Aプロモーターを含む。さらにもう1つの好ましい態様においては、Aタンデムプロモーターは、少なくとも、“-35”領域のための配列TTGACA及び“-10”領域のためのTATAATを有する“コンセンサス”プロモーター、及びcryIII Aプロモーターを含む。さらにもう1つの好ましい態様においては、少なくともamyLプロモーターの2つのコピーを含む。さらにもう1つの好ましい態様においては、タンデムプロモーターは、少なくともamyQプロモーターの2つのコピーを含む。さらにもう1つの好ましい態様においては、タンデムプロモーターは、“-35”領域のための配列TTGACA及び“-10”領域のためのTATAATを有する“コンセンサス”プロモーターの少なくとも2つのコピーを含む。さらにもう1つの好ましい態様においては、タンデムプロモーターは、cryIII Aプロモーターの少なくとも2つのコピーを含む。
【0053】
“mRNAプロセッシング/安定化配列”とは、1又は複数のプロモーター配列の下流に位置し、そして前記1又は複数のプロモーター配列の個々が、その個々のプロモーター配列から合成されるすべてのmRNAが転写体の5’末端でスタビライザー配列を有するmRNA転写体を生成するためにプロセッシングされ得るよう操作可能的に結合されるコード配列の上流に位置する配列として、本明細書において定義される。
【0054】
mRNA転写体の5’末端でのそのようなスタビライザー配列の存在は、それらの半減期を高める(Agaisse and Lereclus, 1994, 前記, Hueなど, 1995, Journal of Bacteriology 177: 3465-3471)。mRNAプロセッシング/安定化配列は、細菌16SリボソームRNAの3’末端に対して相補的である。好ましい態様においては、mRNAプロセッシング/安定化配列は、鋳型の5’末端で安定化配列を有する実質的に単一サイズの転写体を生成する。mRNAプロセッシング/安定化配列は好ましくは、細菌16SリボソームRNAの3’末端に対する相補的である配列である。アメリカ特許第6,255,076号及び第5,955,310号を参照のこと。
【0055】
より好ましい態様においては、mRNAプロセッシング/安定化配列は、WO94/25612号及びAgaisse and Lereclus, 1994前記に開示されるバシラス・スリンジエンシスcryIII A mRNAプロセッシング/安定化配列、又はmRNAプロセッシング/安定化機能を保持するその一部である。さらにもう1つの好ましい態様においては、mRNAプロセッシング/安定化配列は、Hueなど., 1995, 前記に開示されるバシラス・サブチリスSP82 mRNAプロセッシング/安定化配列、又はmRNAプロセッシング/安定化機能を保持するその一部である。
【0056】
cryIII Aプロモーター及びそのmRNAプロセッシング/安定化配列が本発明の方法に使用される場合、WO94/25612号及びAgaisse and Lereclus, 1994, 前記に開示される配列、又はプロモーター及びmRNAプロセッシング/安定化機能を保持するその一部を含むDNAフラグメントが使用され得る。さらに、cryIII Aプロモーターのみ、又はcryIII A mRNAプロセッシング/安定化配列のみを含むDNAフラグメントは、種々のタンデムプロモーター及びmRNAプロセッシング/安定化配列の組合せを構成するために、当業界において良く知られている方法を用いて調製され得る。この態様においては、cryIII Aプロモータ及びそのmRNAプロセッシング/安定化配列が好ましくは、タンデムプロモーターを構成する他のプロモーター配列の下流及び興味ある遺伝子コード配列の上流に配置される。
【0057】
ヒアルロン酸生成に関与する所望する酵素をコードする単離された核酸配列がさらに、核酸配列の発現を改良するために操作され得る。発現は、ポリペプチドの生成に関与するいずれかの段階、たとえば転写、後−転写修飾、翻訳、後−翻訳修飾及び分泌を包含することが理解されているが、但しそれだけには限定されない。クローニング方法を用いての核酸配列を修飾するための技法は、当業界において良く知られている。
酵素をコードする核酸配列を含んで成る核酸構造体は、制御配列と適合できる条件下でバシラス細胞におけるコード配列の発現を指図できる1又は複数の制御配列に操作可能的に結合され得る。
【0058】
用語“制御配列”とは、核酸配列のコード配列の発現のために必要であるか、又はそのために好都合であるすべての成分を包含するよう定義される。個々の制御配列は、酵素をコードする核酸配列に対して生来であっても又は外来性であっても良い。上記プロモーター配列の他に、そのような制御配列は、リーダー、シグナル配列、及び転写ターミネーターを包含するが、但しそれらだけには限定されない。最少で、制御配列は、プロモーター、及び転写及び翻訳停止シグナルを包含する。制御配列は、異種ポリペプチドをコードする核酸配列のコード領域と制御配列との連結を促進する特定の制限部位を導入するためにリンカーを提供され得る。
【0059】
制御配列はまた、適切な転写ターミネーター配列、すなわち転写を終結するようバシラス細胞により認識される配列でもあり得る。ターミネーター配列は、酵素又はオペロンの最後の酵素をコードする核酸配列の3’側末端に操作可能的に連結される。選択のバシラス細胞において機能的であるいずれかのターミネーターが、本発明において使用され得る。
【0060】
制御配列はまた、適切なリーダー配列、すなわち、バシラス細胞による翻訳のために重要であるmRNAの非翻訳領域でもあり得る。リーダー配列は、酵素をコードする核酸配列の5’側末端に操作可能的に連結される。選択のバシラス細胞において機能的であるいずれかのリーダー配列が、本発明に使用され得る。
【0061】
制御配列はまた、発現されたポリペプチドを細胞の分泌路中に方向づけるポリペプチドのアミノ末端に連結されるアミノ酸配列をコードするシグナルペプチドコード領域でもあり得る。そのシグナルペプチドコード領域は、ポリペプチドに対して生来のものであり得るか、又は外来性源から得られ得る。核酸配列のコード配列の5’側末端は、本来、分泌されたポロペプチドをコードするコード領域のセグメントと翻訳読み取り枠を整合して、天然において連結されるシグナルペプチドコード領域を含むことができる。他方では、コード配列の5’側末端は、分泌されたポリペプチドをコードするコード配列のその部分に対して外来性であるシグナルペプチドコード領域を含むことができる。
【0062】
通常、そのコード配列がシグナルペプチドコード領域を含まない外来性シグナルペプチドコード領域が必要とされる。他方では、外来性シグナルペプチドコード領域は、コード配列と通常関連しない天然のシグナルペプチドコード領域に対して、ポリペプチドの増強された分泌を得るために、天然のシグナルペプチドコード領域を単純に置換することができる。シグナルペプチドコード領域は、アミラーゼ、又はバシラス種からのプロテアーゼ遺伝子から得られる。しかしながら、選択のバシラス細胞の分泌路中に発現されたポリペプチドを方向づけるいずれかのシグナルペプチドコード領域が、本発明に使用され得る。
【0063】
バシラス細胞のための効果的なシグナルペプチドコード領域は、バシラスNCIB11837からのマルトゲン性アミラーゼ遺伝子、バシラス・ステアロサーモフィラスα−アミラーゼ遺伝子、バシラス・リケニホルミススブチリシン遺伝子、バシラス・リケニホルミスβ−ラクタマーゼ遺伝子、バシラス・アステロサーモフィラス中性プロテアーゼ遺伝子(nprT, nprS, nprM)、及びバシラス・スブチリスprsA遺伝子から得られるシグナルペプチド領域である。追加のシグナルペプチドは、Sinomen and Palva, 1993, Microbiological Reviews 57: 109-137 により記載される。
【0064】
制御配列はまた、ポリペプチドのアミノ末端で位置するアミノ酸配列をコードするプロペプチドコード領域であり得る。得られるポリペプチドは、プロ酵素又はプロポリペプチド(又は多くの場合、チモーゲン)として知られている。プロポリペプチドは一般的に不活性であり、そしてプロポリペプチドからプロペプチドの触媒又は自己触媒分解により成熟した活性ポリペプチドに転換され得る。プロペプチドコード領域は、バシラス・サブチリスアルカリプロテアーゼ(aprE)、及びバシラス・サブチリス中性プロテアーゼ(nprT)。
【0065】
シグナルペプチド及びプロペプチド領域の両者がポリペプチドのアミノ末端に存在する場合、そのプロペプチド領域は、ポリペプチドのアミノ末端の次に位置し、そしてシグナルペプチド領域は、プロペプチド領域のアミノ末端の次に位置する。
宿主細胞の増殖に関して、ポリペプチドの発現の調節を可能にする調節配列を付加することがまた所望される。調節システムの例は、調節化合物の存在を包含する、化学的又は物理的刺激に応答して、遺伝子の発現の開始又は停止を引き起こすそれらのシステムである。原核生物系における調節システムは、lac, tac及びtrpオペレーターシステムを包含する。
【0066】
生成:
本発明の生成方法においては、宿主細胞は、当業界において知られている方法を用いて、ヒアルロン酸の生成のために適切な栄養培地において培養される。例えば、細胞は、ポリペプチドの発現及び/又は単離を可能にする、適切な培地において、及びヒアルロン酸合成に関与する酵素の発現及びヒアルロン酸の単離を可能にする条件下で行われる実験室用又は産業用発酵器において、振盪フラスコ培養、小規模又は大規模発酵(連続、バッチ、供給バッチ、又は団体状態発酵を包含する)により培養され得る。培養は、炭素及び窒素源及び無機塩を含んで成る適切な栄養培地において、当業界において知られている方法を用いて行われる。適切な培地は、市販されているか、又は公開されている組成(例えば、American Type Culture Collection のカタログにおける)に従って調製され得る。分泌されたヒアルロン酸は、培地に直接的に回収され得る。
【0067】
得られるヒアルロン酸は、当業界において知られている方法により単離され得る。例えば、ヒアルロン酸は、便利な方法、例えば遠心分離、濾過、抽出、噴霧乾燥、蒸発又は沈殿(但し、それらだけには限定されない)により、栄養培地から単離され得る。次に単離されたヒアルロン酸は、当業界において知られている種々の方法、例えばクロマトグラフィー(例えば、イオン交換、親和性、疎水性、クロマトフォーカシング及びサイズ排除)、電気泳動方法(例えば、分離用等電点電気泳動)、示差溶解性(例えば、硫酸アンモニウム沈殿)、又は抽出(例えば、Protein Purification, J. -C. Janson and Lars Ryden, editors, VCH Publishers, New York, 1989を参照のこと)(但し、それらだけには限定されない)により、さらに精製され得る。
【0068】
発明の特定の記載:
“ヒアルロン酸”は、β−1,4及びβ−1,3グリコシド結合を変えることによって一緒に結合される、N−アセチルグルコサミン(GlcNAc)及びグルクロン酸(GlcUA)の反復二糖単位から構成される、硫酸化されていないグリコサミノグリカンとして、本明細書においては定義される。ヒアルロン酸はまた、ヒアルロナン、ヒアルロネート又はHAとして知られている。用語、ヒアルロナン及びヒアルロン酸は、本明細書においては、交換可能的に使用される。
【0069】
雄鶏の鶏冠は、ヒアルロナンのための有意な商業的源である。微生物は他の源である。アメリカ特許第4,801,539号は、1L当たり約3.6gのヒアルロン酸の報告される収率を伴って、ストレプトコーカス・ズーエピデシカス(Streptococcus zooepidemicus)の株を包含するヒアルロン酸の調製のための発酵方法を開示する。ヨーロッパ特許第0694616号は、1L当たり約3.5gのヒアルロン酸の報告される収率を伴って、ストレプトコーカス・ズーエピデシカスの改良された株を用いての発酵方法を開示する。引用により本明細書に組み込まれるWO03/054163号(Novozymes)に開示されるように、ヒアルロン酸又はその塩は、グラム陽性バシラス宿主において組換え的に生成され得る。
【0070】
ヒアルロナンシンターゼは、脊椎動物, 細菌病原体,及び藻類ウィルス (DeAngelis, P. L., 1999, Cell. Mol. Life Sci, 56: 670-682)から記載されている。WO99/23227号は、ストレプトコーカス・エクイシミリスからのグループIヒアルロン酸シンターゼを開示する。WO99/51265号及びWO00/27437号は、パステウレラ・マルトシダからのグループIIヒアルロン酸シンターゼを記載する。Ferrettiなどは、それぞれヒアルロン酸シンターゼ、UDPグルコースデヒドロゲナーゼ及びUDP−グルコースピロホスホリラーゼをコードする3種の遺伝子、hasA, hasB及びhasCから構成される、ストレプトコーカス・ピロゲネスのヒアルロナンシンターゼオペロンを開示する(Proc. Natl. Acad. Sci. USA. 98, 4658-4663,2001)。WO99/51265号は、ストレプトコーカス・エクイシミリスヒアルロナンシンターゼのためのコード領域を有する核酸セグメントを記載する。
【0071】
組換えバチルス細胞のヒアルロナンは、培養培地に直接的に発現されるので、単純な方法が、培養培地からヒアルロナンを単離するために使用され得る。第1に、バチルス細胞及び細胞残骸が培養培地から物理的に除去される。最初に、培養培地が、所望により、希釈され、培地の粘度が低められる。培養培地から細胞を除去するための多くの方法、例えば遠心分離又はマイクロフィルトレーションは、当業者に知られている。所望には、次に残る上清液が、例えば限外濾過により濾過され、濃縮され、そしてヒアルロナンから小さな分子汚染物が除去される。
【0072】
細胞及び細胞残骸の除去に続いて、培地からのヒアルロナンの単純な沈殿が既知機構により行われる。塩、アルコール、又は塩及びアルコールの組合せが、濾液からヒアルロナンを沈殿するために使用され得る。沈殿物に減じられると、ヒアルロナンは物理的手段により、溶液から容易に単離され得る。ヒアルロナンは、当業界において知られている蒸発技法、例えば凍結乾燥又は噴霧乾燥により、濾液溶液から乾燥されるか又は濃縮され得る。
【0073】
本発明の第1の観点は、ヒアルロン酸又はその塩を含んで成る生成物に関し、ここで前記ヒアルロン酸は、αヒドロキシ酸のポリマー、好ましくはポリラクチドとも呼ばれるポリ(乳酸)のポリマー、及びいずれかの乳酸基剤のポリマー、立体ポリマー及びコポリマー、特にグリコール酸によるそれら、また、他のポリマー、例えばε−カプロラクトン、グルコン酸及び化学的に変性されたグルコン酸、リンゴ酸を通してのヒドロキシカプロン酸によるコポリマー、水溶性であり、そして腎臓濾過を通して排除され得る分解副産物を導く低分子量セグメントを有するコポリマー、例えば低分子ポリ(エチレングリコール)(但し、それらは、鎖端で1又は2つのカルボキシル基を担持し、そしてそれらは単酸の場合、疎水性を提供する)により、一部又は完全に結合されるか、又は架橋されている。
【0074】
宿主細胞:
好ましい態様は、第1の観点の生成物に関し、ここでヒアルフロン酸又はその塩は、好ましくはグラム陽性細菌又は宿主細胞、より好ましくはバシラス属の細菌により、組換え的に生成される。
【0075】
宿主細胞は、ヒアルロン酸の組換え生成のために適切ないずれかのバチルス細胞であり得る。バチルス宿主細胞は、野生型バチルス細胞又はその変異体であり得る。本発明の実施において有用なバチルス細胞は、次のものを包含するが、但しそれらだけには限定されない:バチルス・アガラドヘレンス、バチルス・アルカロフィラス、バチルス・アミロリケファシエンス、バチルス・ブレビス、バチルス・サーキュランス、バチルス・クラウジ、バチルス・コアギュランス、バチルス・ファーマス、バチルス・ラウタス、バチルス・レンタス、バチルス・リケニホルミス、バチルス・メガテリウス、バチルス・プミラス、バチルス・ステアロサーモフィラス、バチルス・サブチリス及びバチルス・スリンジエンシス細胞。変異体バチルス・サブチリス細胞は、WO98/22598号に記載されるように、組換え発現のために特に適合される。非被包性バチルス細胞は、本発明において特に有用である。
【0076】
好ましい態様においては、バチルス宿主細胞は、バチルス・アミロリケファシエンス、バチルス・クラウジ、バチルス・レンタス、バチルス・リケニホルミス、バチルス・ステアロサーモフィラス又はバチルス・サブチリス細胞である。より好ましい態様においては、バチルス宿主細胞は、バチルス・アミロリケファシエンス細胞である。もう1つのより好ましい態様においては、バチルス宿主細胞は、バチルス・クラウジ細胞である。もう1つのより好ましい態様においては、バチルス宿主細胞は、バチルス・レンタス細胞である。もう1つのより好ましい態様においては、バチルス宿主細胞は、バチルス・リケニホルミス細胞である。もう1つのより好ましい態様においては、バチルス宿主細胞は、バチルス・サブチリス細胞である。最も好ましい態様においては、バチルス宿主細胞は、バチルス・サブチリスA164Δ5(アメリカ特許第5,891,701号を参照のこと)、又はバチルス・サブチリス168Δ4である。
【0077】
本発明の核酸構造体によるバチルス宿主細胞の形質転換は、プロトプラスト形質転換(例えば、Chang and Cohen, 1979, Molecular General Genetics 168: 111-115を参照のこと)により、コンピテント細胞の使用(Young and Spizizen, 1961, Journal of Bacteriology 81 : 823- 829, 又は Dubnau and Davidoff-Abelson, 1971, Journal of Molecular Biology 56 : 209-221を参照のこと)により、エレクトロポレーション(Shigekawa and Dower, 1988, Biotechniques 6: 742-751を参照のこと)により、又は接合(Koehler and Thorne, 1987, Journal of Bacteriology 169: 5271-5278を参照のこと)により行われ得る。
【0078】
分子量:
ヒアルロン酸のレベルは、改良されたカルバゾール方法(Bitter and Muir, 1962, Anal Biochem. 4: 330-334)に従って決定され得る。さらに、ヒアルロン酸の平均分子量は、当業界における標準の方法、例えばUeno など., 1988, Chem. Pharm. Bull. 36, 4971-4975; Wyatt, 1993, Anal. Chim. Acta 272: 1-40; 及び Wyatt Technologies, 1999, "Light Scattering University DAWN Course Manual" and "DAWN EOS Manual" Wyatt Technology Corporation, Santa Barbara, Californiaにより記載されるそれらの方法を用いて決定され得る。
【0079】
好ましい態様においては、本発明の方法により得られるヒアルロン酸は、約10,000〜約10,000,000Daの分子量を有する。より好ましい態様においては、本発明の方法により得られるヒアルロン酸は、約25,000〜約5,000,000Daの分子量を有する。最も好ましい態様においては、本発明の方法により得られるヒアルロン酸は、約50,000〜約3,000,000Daの分子量を有する。
【0080】
好ましい態様は、第1の観点の生成物に関し、ここで前記ヒアルロン酸又はその塩は、300,000〜3,000,000の範囲;好ましくは400,000〜2,500,000の範囲;より好ましくは500,000〜2,000,000の範囲;及び最も好ましくは600,000〜1,800,000の範囲の分子量を有する。
【0081】
塩及び架橋されたHA:
好ましい態様は、ヒアルロン酸の無機塩、好ましくはヒアルロン酸ナトリウム、ヒアルロン酸カリウム、ヒアルロン酸アンモニウム、ヒアルロン酸カルシウム、ヒアルロン酸マグネシウム、ヒアルロン酸亜鉛、又はヒアルロン酸コバルトを含んで成る、第1の観点の生成物に関する。
【0082】
下記例においては、ヒアルロン酸ナトリウムとポリ(乳酸)モノ又はジ−アシル塩化物との反応が、未処理のHA又はPLAの標準スペクトルに比較して、結合されたHA−PLA生成物における新しく形成されたポリ乳酸エステルの存在に対応する、IRスペクトル上での1736cm-1での強められたピークを示す、結合された又は架橋されたHA−PLA又はHA−PLA−HA生成物をもたらしたことが見出された。
【0083】
従って、好ましい態様は、第1の観点の生成物に関し、ここで架橋されたヒアルロン酸又はその塩は、αヒドロキシ酸のポリマー、好ましくはポリラクチドとも呼ばれるポリ(乳酸)のポリマー、及びいずれかの乳酸基剤のポリマー、立体ポリマー及びコポリマー、特にグリコール酸によるそれら、また、他のポリマー、例えばε−カプロラクトン、グルコン酸及び化学的に変性されたグルコン酸、リンゴ酸を通してのヒドロキシカプロン酸によるコポリマー、水溶性であり、そして腎臓濾過を通して排除され得る分解副産物を導く低分子量セグメントを有するコポリマー、例えば低分子ポリ(エチレングリコール)(但し、それらは、鎖端で1又は2つのカルボキシル基を担持し、そしてそれらは単酸の場合、疎水性を提供する)のエステルを含んで成る。
【0084】
湿分の決定:
本発明の乾燥された生成物粉末の湿分は、102℃±2℃で粉末を一定重量に乾燥した後、%として表される重量の低下である。グラウンド蓋を有する空のガラス計量皿を、オーブンにおいて乾燥し、次に冷却し、そして少なくとも0.1mgの感度を有する分析天秤上で計量した。約3gの乾燥された生成物粉末を、前記皿に配置し、そして計量した。粉末を有する皿を蓋をしないでオーブンに配置し、そして102℃±2℃の温度で2時間、乾燥し、次にそれを乾燥器に配置し、そして室温に冷却し、その後、再び計量した。粉末を有する皿を、蓋をしないでオーブンに配置し、1時間以上、乾燥し、そして次に、すでに記載したようにして、冷却し、そして計量し;これを、重量が一定に存在するまで、すなわち2回の連続した計量が0.5mg以上、異ならなくなるまで、反復する。
【0085】
次に、湿分率を、次の通りに計算する:(W2-W3)/(W2-W1)×100;ここでW1は空の皿の重量であり、W2は粉末を有する皿の重量であり、そしてW3は乾燥された粉末を有する皿の重量である。結果は、小数点2まで計算し、そしてこの方法の再現性は約±0.1%である。
好ましい態様においては、第1観点の生成物が乾燥され、そして本明細書において決定される場合、5%以下の湿分、好ましくは2%以下の湿分及び最も好ましくは1%以下の湿分を包含する。
【0086】
他の成分:
好ましい態様においては、本発明の生成物はまた、他の成分、好ましくは1又は複数の活性成分、好ましくは1又は複数の薬理学的活性物質、及びまた好ましくは、水溶性賦形剤、例えばラクトースを含んで成ることができる。
【0087】
本発明においては使用され得る活性成分又は薬理学的活性物質の非制限的例は、タンパク質及び/又はペプチド薬剤、例えばヒト成長ホルモン、ウシ成長ホルモン、ブタ成長ホルモン、成長ホルモン放出ホルモン/ペプチド、顆粒球コロニー刺激因子、顆粒球マクロファージ−コロニー刺激因子、マクロファージ−コロニー刺激−因子、エリスロポイエチン、骨形態発生性タンパク質、インターフェロン又はその誘導体、インシュリン又はその誘導体、アトリオペプチン−III、モノクロナール抗体、腫瘍壊死因子、マクロファージ活性化因子、インターロイキン、腫瘍分解因子、インスリン様成長因子、表皮成長因子、組織プラスミノゲン活性化因子、第IIV因子、第IIIV因子、及びウロキナーゼを包含する。
【0088】
水溶性賦形剤は、活性成分を安定化するために包含され得、そのような賦形剤は、タンパク質、例えばアルブミン又はゼラチン;アミノ酸、例えばグリシン、アラニン、グルタミン酸、アルギニン、リシン及びその塩;炭水化物、例えばグルコース、ラクトース、キシロース、ガラクトース、フルクトース、マルトース、サッカロース、デキストラン、マンニトール、ソルビトール、トレハロース及びコンドロイチンスルフェート;無機塩、例えばホスフェート;界面活性剤、例えばTWEEN(商標)(ICI)、ポリエチレングリコール及びその混合物を包含することができる。賦形剤又は安定剤は、生成物の0.001〜99重量%の範囲の量で使用され得る。
【0089】
本発明のいくつかの観点は、他の構成成分の中で、有効量の第1の観点において定義されるような生成物、及び活性成分、好ましくは薬理学的活性剤;医薬的に許容できるキャリヤー、賦形剤又は希釈剤、好ましくは水溶性賦形剤、及び最も好ましくはラクトースを含んで成る種々の医薬組成物に関する。
【0090】
さらに、本発明の観点は、第1の観点において定義されるような生成物又は上記観点及び態様において定義されるような組成物を含んで成る製品、例えば化粧品、衛生製品、医学又は手術製品に関する。最終観点においては、本発明は、第1の観点において定義されるような生成物、又は本発明の他の観点及び態様において定義されるような組成物を含んで成る薬剤カプセル又はマイクロカプセルに関する。
【0091】
生成方法:
もう1つの観点において、本発明は、
a)ヒアルロン酸又はその塩と、αヒドロキシ酸のポリマーのモノ−アシル塩化物又はジ−アシル塩化物とを、有機溶媒、好ましくはDMSOにおいて反応せしめる段階を含んで成る、ヒアルロン酸又はその塩を含んで成る生成物の生成方法を提供し、ここで前記ヒアルロン酸又はその塩は、αヒドロキシ酸のポリマー、好ましくはポリラクチドとも呼ばれるポリ(乳酸)のポリマー、及びいずれかの乳酸基剤のポリマー、立体ポリマー及びコポリマー、特にグリコール酸によるそれら、また、他のポリマー、例えばε−カプロラクトン、グルコン酸及び化学的に変性されたグルコン酸、リンゴ酸を通してのヒドロキシカプロン酸によるコポリマー、水溶性であり、そして腎臓濾過を通して排除され得る分解副産物を導く低分子量セグメントを有するコポリマー、例えば低分子ポリ(エチレングリコール)(但し、それらは、鎖端で1又は2つのカルボキシル基を担持し、そしてそれらは単酸の場合、疎水性を提供する)により、一部又は完全に結合されるか、又は架橋される。
【0092】
生成物又は組成物の使用方法:
本発明の種々の観点は、第1の観点の生成物又は本発明の組成物を用いて、例えば医学分野における処理工程を実施するための方法に関する。
1つの観点は、第1の観点において定義されるような生成物、又は本発明の組成物の使用を包含する、眼科学的処置を実施するための方法に関する。
もう1つの観点は、第1の観点において定義されるような生成物、又は本発明の組成物の使用を包含する、変形性関節炎の処置を実施するための方法に関する。
【0093】
さらにもう1つの観点は、第1の観点において定義されるような生成物、又は本発明の組成物の使用を包含する、癌の処置を実施するための方法に関する。
1つの観点は、第1の観点において定義されるような生成物、又は本発明の組成物の使用を包含する、薬理学的活性剤の経皮投与を実施するための方法に関する。
もう1つの観点は、本発明の生成物、又は組成物の使用を包含する、化粧品の皮膚投与を実施するための方法に関する。
【実施例】
【0094】
多くの次のような化学的略語が図1における構造式により示される:例えば、テトラブチルアンモニウム(TBA)、セチルトリメチルアンモニウム(CTA)、ヒアルロン酸(HA)及びポリ(乳酸)(PLA)。
例1:DMSO及びSOCl2蒸留:
DMSO蒸留:
1.5LのDMSOを、2000mlの丸底フラスコ中に導入し、そして磁気撹拌下で、少量のP2O5をDMSOに添加し、水を除去した。次に、蒸留を中断しないでそれぞれの収集を可能にする、1つの100ml、及び2個の1000mlのフラスコを有する回転できる複数−受け器アダプターに固定された冷却器により、前記フラスコを真空蒸留のために構成した。
【0095】
フラスコを、約75℃まで、真空下で加熱し、蒸留した。第1の小画分を、100mlの丸底フラスコに集め、そして後に破棄した。蒸留されたDMSOを最終的に集めた。カラムの上部での温度は42℃であり、そして真空は2mバールであった。Ultrapureから市販されているDMSOを、蒸留しないで使用することができる。
【0096】
SOCl2蒸留:
300mlの塩化チオニルSOCl2を、500mlの丸底フラスコに導入し、そして磁気撹拌下で、50mlのトリフェニルホスフィットを滴下し、塩素及び硫黄を閉じも込めた。非常に発熱性であるので、温度を制御することが重要である。
【0097】
すべてのトリフェニルホスフィットが添加された後、蒸留を中断しないでそれぞれの収集を可能にする、50ml、100ml及び250mlのフラスコを有する回転できる複数−受け器アダプターに固定された冷却器により、前記フラスコを蒸留のために構成した。全構成物を、アルミシートにより包装し、蒸留されたSOCl2を光から保護した。塩化カルシウムトラップをまた、蒸留構成物に固定し、水から保護した。次に、フラスコを、105℃まで加熱し、生成物を蒸留し;カラムの上部での温度は72℃であった。
【0098】
例2:PLAアシル−塩化物の調製:
反応スキームは図2に示される。2,4454gのPLAを、新しく蒸留されたSOCl2に溶解し、そして磁気撹拌下で250mlの丸底をフラスコに導入し、次に還流のために構成し、そしてCaCl2トラップにより水から保護した。フラスコを、3時間、加熱還流(約80℃)した。
反応が終結した場合、過剰のSOCl2を真空下で60℃で蒸留した。すべてのSOCl2を除去するために、残る生成物をトルエンに溶解し、そしてその溶液を真空下で80℃で再び蒸留し、溶媒を除去した。この段階を3度、反復した。
【0099】
例3:HA-PLA合成:
CTA塩形でのヒアルロン酸(HA-CTA)及びポリ(乳酸)モノ−アシル塩化物(PLA-COCl)を、2:1のPLA−COCl:HA-CTAのモル比で反応せしめた。
50mlのDMSOに溶解された2.03gのPLA−COClを、70mlのDMSO中0.512gのHA-CTAの溶液に滴下した。回転蒸発器を用いて、DMSOを除去し、溶液を、固体生成物が得られるまで、濃縮した。生成物を、エタノール及びアセトンにより連続的に洗浄した。最終生成物は、水に不溶性であるが、しかしDMSOにおいては膨潤された。
【0100】
最終生成物(KBrディスク)のIRスペクトルが図5に示されている。それは、HA−Hのスペクトル(図4に示される)のように見えるが、但し、C=O結合に対応する1735cm-1でのピークを除く。しかしながら、このピークの強さは大きく、そしてポリ(乳酸)に割り当てることができる。PLAのIRスペクトルは、図3に示されている。
【0101】
13C NMRは、HAの13C NMRにおけるすべてのピークは明確に次の通りに同定されるので、最終生成物の特徴化のためのより効果的な方法であるように思え;D−グルクロン酸の炭素原子は、“U”でラベルされ、そしてN−アセチル−D−グルコサミン酸のそれらは“N”によりラベルされる。
【0102】
【表1】
【0103】
最終生成物の13C NMRスペクトル(図6)は、HA、PLA(16.57及び170ppm)、及びセチルアンモニウム(CTA)カウンターイオン(13, 29, 52ppm)のすべてのピークを示す。
生成物を固化するためのDMSOの蒸発はPLA及びHAを空間的に徐々に接近せしめ、次にカップリング反応に誘導することができる。HA及びPLAの鎖長の差異が反応における置換比に影響を及ぼすことができる。
【0104】
例4:HA−PLA−HA合成:
DMSO中、PLAジ−アシル塩化物を、上記のようにして、室温で一晩、HA(TBA又はCTA形)と共に混合した。次に前記溶液を濃縮し、そして生成物をエタノールにおける沈殿により精製し、そして最終的に、アセトンにより洗浄した。最終生成物は水に不溶性である。
【0105】
それらの2種の溶媒から除かれた生成物を、図8及び9に示されるように、IRスペクトルにより分析した。2種のスペクトルは、PLA及びHAの両者の特徴であるピークを示す。洗浄がHAに結合されるいくらかのPLAを排除すると思われる。
HA−CTA及びHA−TBAからの最終生成物のIRスペクトル(図10及び11)はまた、HA−Hのスペクトルのように見えるが、但しPLAのC=O結合に対応する、1736cm-1でのピークを除く。
【0106】
例5:HA-CTA合成:
セチルトリメチルアンモニウム臭化物の温溶液(40℃)を、0.155gのHA−Naの温溶液(40℃)に滴下する。白色沈殿物を濾過し、温水により洗浄し、NaBr及び過剰のセチルアンモニウム臭化物を除去し、そして凍結乾燥する。
DMSOに溶解性である最終生成物のIRスペクトル(図12)は、CTAの存在を示す。
【0107】
例6:1:1のモル比でのHA−PLA合成:
典型的には、0.64gの活性化された乳酸オリゴマーを、DMSOにおいて1gのHA−CTAと共に室温で一晩、混合した。DMSOを除去し、そして沈殿物を、エーテルにより2度、エタノールにより3度、及びアセトンにより2度、洗浄した。回収された生成物を、最終的に、真空下で一晩、乾燥した。最終生成物の1H NMR(図13)は、残存CTAの存在を示す。
【0108】
例7:HA−PLA透析:
残存CTAを有するHA−PLAを、2/1の体積比でDMSOと共に混合されたリン酸緩衝溶液(pH7.4及び濃度=0.5M)に溶解した。この溶液を、水、DMSO、エタノール及び水に対して連続的に透析した(カットオフ=6000−8000)。この処理の後、溶液を凍結乾燥し、そして最終化合物を、NMRにより分析した(図14)。
【0109】
例8:HA−PLAブランク試験:
ブランク試験を、SOCl2によるオリゴマーのいずれの従来の活性化も伴わないで、HA及びPLAを反応することにより、行った。20mlのDMSO中、271mgのOLAを含む溶液を、40mlのDMSO中、211mgのHAの溶液に滴下した。この溶液を室温で3時間、撹拌し、そしてDMSOを蒸発により除いた。淡黄色の固形物を得た。この固形物をDMSOに一晩、溶解した。沈殿物が出現した。不溶性部分を溶液から分離し、そしてアセトンにより洗浄した。得られる白色固形物を乾燥し、そしてNMRにより分析した。
【0110】
アセトンを、残留溶液にゆっくり添加し、新規沈殿物を生成した。この沈殿物を集め、乾燥し、そしてまた、NMRによる分析した。PLAのピークは、NMRスペクトル上では明らかでなかった。
これは、PLAが、塩化チオニルによるPLAの活性化が使用される場合、HAに化学的に結合されることを確かめる。
【図面の簡単な説明】
【0111】
【図1】図1は、本明細書において使用される種々の化合物の構造式を示す。
【図2】図2は、PLAアシル−塩化物を形成するために塩化チオニルによるポリ(乳酸)の反応スキームを示す。
【図3】図3は、ポリ(乳酸)のIRスペクトルを示す。
【図4】図4は、ヒアルロン酸(陽子形)のIRスペクトルを示す。
【図5】図5は、例3における最終合成生成物HA−PLAのIRスペクトルを示す。
【図6】図6は、例3における最終合成生成物HA−PLAの13Cスペクトルを示す。
【図7】図7は、例4において概略されるようにHA−PLA−HAを形成するためにPLAジ−アシル−塩化物によるHA−TBAの反応スキームを示す。
【図8】図8は、存在する有望なHA−PLA−HAを伴って、例4におけるエタノール−洗浄物のIRスペクトルを示す。
【図9】図9は、存在する有望なHA−PLA−HAを伴って、例4におけるアセトン−洗浄物のIRスペクトルを示す。
【0112】
【図10】図10は、例4におけるHA−CTAからの最終生成物、HA−PLA−HAのIRスペクトルを示す。
【図11】図11は、例4におけるHA−TBAからの最終生成物、HA−PLA−HAのIRスペクトルを示す。
【図12】図12は、例5において合成されたHA−CTAのIRスペクトルを示す。
【図13】図13は、例6の最終HA−PLA生成物の1H NMRを示し、スペクトルは残存CTAの存在を示す。
【図14】図14は、例7の透析の後、例6の最終HA−PLA生成物の1H NMRを示す。
【技術分野】
【0001】
発明の分野:
本発明は、αヒドロキシ酸のポリマー、好ましくはポリ(乳酸)のポリマーにより、部分的に又は完全に結合されるか又は架橋されている、ヒアルロン酸又はその塩を含んで成る生成物に関する。本発明はまた、前記生成物の製造、衛生及び手術製品の調製のための生分解性プラスチック材料の分野、医薬及び化粧品分野への本発明の生成物の使用;及びそのような分野においてそれらにより製造された種々の製品にも関する。
【背景技術】
【0002】
背景:
身体中の最も豊富なヘテロ多糖は、グリコサミノグリカンである。グリコサミノグリカンは、反復する二糖単位からなる枝なしの炭水化物ポリマーである(ケラタン硫酸のみが炭水化物のコアー領域において枝分かれされている)。二糖単位は一般的に、第1のサッカリド単位として、2種の変性された糖、すなわちN−アセチルガラクトサミン(GalNAc)又はN−アセチルグルコサミン(GlcNAc)の1つを含んで成る。第2の単位は通常、ウロン酸、例えばグルクロン酸(GlcUA)又はイズロネートである。
【0003】
グリコサミノグリカンは負に荷電された分子であり、そして溶液において高い粘度を付与する拡張されたコンホメーションを有する。グリコサミノグリカンは、細胞の表面上に又は細胞外マトリックスに位置する。グリコサミノグリカンはまた、溶液において低い圧縮性を有し、そして結果として、生理学的潤滑液、例えば関節として理想的である。グリコサミノグリカンの剛性が、細胞に構造的に結合性を付与し、そして細胞間に通路を提供し、細胞移動可能にする。最高の生理学的に重要なグリコサミノグリカンは、ヒアルロナン、コンドロイチン硫酸、ヘパリン、ヘパラン硫酸、デルマタン硫酸及びケラタン硫酸である。ほとんどのグリコサミノグリカンは、特定のオリゴ糖構造を通してプロテオグリカンコアータンパク質に共有結合する。ヒアルロナンは、一定のプロテオグリカンと大きな凝集体を形成するが、しかし遊離炭水化物鎖がプロテオグリカンと非共有複合体を形成する場合、例外である。
【0004】
身体中でのヒアルロナンの多くの役割は同定されている(Laurent T. C. and Fraser J. R. E. , 1992, FASEB J. 6: 2397-2404; 及び Toole B. P. , 1991, "Proteoglycans and hyaluronan in morphogenesis and differentiation."In : Cell Biology of the Extracellular Matrix, pp. 305-341, Hay E. D. , ed., Plenum, New Yorkを参照のこと)。ヒアルロナンは、硝子軟骨、滑膜関節液及び皮膚組織(真皮及び表皮の両者)に存在する。ヒアルロナンはまた、多くの生理学的機能、例えば付着、成長、細胞運動性、癌、脈管形成及び創傷治癒における役割を有すると思われる。ヒアルロナンのユニークな物理的及び生理学的性質のために、それは眼及び関節の手術に使用され、そして他の医学的方法においても評価される。
【0005】
用語“ヒアルロン酸”とは、細胞表面、脊椎贓物の結合組織の塩基性細胞外物質、関節の滑液、眼の眼内流体、ヒト臍帯組織及び鶏冠において天然において存在する、D−グルクロン酸及びN−アセチル−D−グルコサミン酸の残基により構成される、異なった分子量を有する酸性多糖類を意味するために文献において使用される。
【0006】
用語“ヒアルロン酸”とは、種々の分子量を有するD−グルクロン酸及びN−アセチル−D−グルコサミン酸の交互の残基、又はその分解された画分を有する一連の多糖類を意味するものとして実際使用され、そして従って、“ヒアルロン酸”の複数用語を用いることが、より正しいと思われる。しかしながら、単一用語は、この記載においてすべて同じに使用され;さらに、略語“HA”は時折、この集合的な用語の代わりに使用されるであろう。
【0007】
HAは、多くの組織、例えば皮膚、腱、筋肉及び軟骨の細胞のための機械的な支持体として、生物において重要な役割を演じ、すなわちそれは、細胞内マトリックスの主成分である。HAはまた、生物学的工程、例えば組織の保湿及び湿潤において他の重要な部分を演じている。
【0008】
HAは、上記天然の組織から抽出され得るが、但し今日、感染剤の移行の可能性ある危険性を低め、そして生成物の均等性、品質及び利用性を高めるために、微生物学的方法により、それを調製することが好ましい(WO03/0175902号、Novozymes)。
HA及びその種々の分子サイズ画分、及びそれらのそれぞれの塩は、特に関節症の処理における薬剤として、特に眼科学及び美容外科における天然の器官及び組織のための助剤及び/又は置換剤として、及び化粧製品における剤として使用されて来た。ヒアルロナンの生成物はまた、整形外科、リウマチ学及び皮膚学への使用のためにも開発されて来た。
【0009】
HAはまた、衛生及び手術製品のために使用される種々のポリマー材料、例えばポリウレタン、ポリエステル、等のための、それらの材料を生物適合性にする効果を有する添加剤としても使用され得る。
多官能エポキシ化合物によりHAを架橋することにより調製される、架橋されたHA又はその塩の調製は、EP0161887B1に開示されている。脂肪族アルコールによるHAの全体的又は部分的架橋のエステル、及び無機又は有機塩基によるその部分的エステルの塩が、アメリカ特許第4,957,744号に開示される。
【0010】
US6673919B2(Chisso Corp. 公開日06/01/2004)は、ヒアルロン酸又はその塩、及びカチオン性化合物の溶液から成る複合体のO−アセチル化、アルコキシル化又は架橋により、ヒアルロン酸又はその塩を化学的に修飾するための方法に関する。
FR2707653号(Vetoquinol)は、生物適合性及び生分解性ポリマーと、分子、特に移動水素を含む生物学的活性分子との間の接合体;その調製方法;及びこの接合体を含む医薬生成物に関する。
【0011】
本発明は、αヒドロキシ酸の反復単位から製造される合成ポリマー及びオリゴマー、例えばポリ(乳酸)(ポリラクチドとも呼ばれる)、及びいずれかの乳酸基剤のポリマー、立体ポリマー及びコポリマー、特にグリコール酸によるそれら、また、他のポリマー、例えばε−カプロラクトン、グルコン酸及び化学的に変性されたグルコン酸、リンゴ酸を通してのヒドロキシカプロン酸によるコポリマー、水溶性であり、そして腎臓濾過を通して排除され得る分解副産物を導く低分子量セグメントを有するコポリマー、例えば低分子ポリ(エチレングリコール)(但し、それらは、鎖端で1又は2つのカルボキシル基を担持し、そしてそれらは単酸の場合、疎水性を提供する)を用いての、ヒアルロン酸(HA)に対する化学的グラフト技法に関する。重要なことには、前記方法は、グラフト又は架橋によりHAを誘導体化するために開発され得、そして生成物は技術、生物医学及び医薬用途のために使用され得る。グラフトされたHAは、生分解性で、生物適合性で且つ生物再吸収性である。
【発明の開示】
【0012】
発明の要約:
ポリαヒドロキシ酸、例えば乳酸又はグリコール酸のオリゴマーによるHAの誘導体化が、HA自体よりも疎水性である、グラフトされたHA構造体を調製するために使用される。得られる両親媒性質は、化粧品適用、例えばエマルジョン安定化、皮膚モイスチュライゼーション及び強化、及びフィルム形成において所望される。そのようなグラフトされた材料からのヒドロゲル又は超微小コロイド状分散体はまた、組織増強、付着防止、変形性関節炎及び眼科学のためにも使用され得る。
【0013】
生分解性代謝物のみが、グラフトされた材料の生分解に基づいて開放されるであろう。分解副生成物、例えば乳酸又はグリコール酸は、身体により代謝され、そして完全に排除され、従ってグラフトされた生成物を身体において完全に生物再吸収性にする。
乳酸は化粧配合物に広く使用され、そしてポリ(乳酸)(PLA)は組織工学のための生医学用途、及びまた、例えばPLA微小球体及び超微粒子を用いての薬物供給のための医薬用途に広く使用される。
【0014】
ポリ(乳酸)(酸塩化物形)は、HA(テトラ(n−ブチル)アンモニウム又はセチルトリメチルアンモニウム塩形)に対してグラフとされる。得られる生成物は、ゲル又は超微小コロイド状分散体として得られ、そしてナトリウムEDTA又はリン酸緩衝液−DMSO、及び次に水及びエタノールに対する透析により精製される。アンモニウムイオンを除去するいずれの透析システムでもたぶん効果的である。PLA−誘導体化されたHAの凍結緩衝はスポンジ様物を生成した。
PLA−HAは水溶性ではなかった(但し、ミセルの形成が生じ得る)。しかしながら、それは、DMSO:水の1:1混合物に溶解性であった。
【0015】
第1の観点においては、本発明は、ヒアルロン酸又はその塩を含んで成る生成物に関し、ここで前記ヒアルロン酸又はその塩は、αヒドロキシ酸のポリマー、好ましくはポリラクチドとも呼ばれるポリ(乳酸)のポリマー、及びいずれかの乳酸基剤のポリマー、立体ポリマー及びコポリマー、特にグリコール酸によるそれら、また、他のポリマー、例えばε−カプロラクトン、グルコン酸及び化学的に変性されたグルコン酸、リンゴ酸を通してのヒドロキシカプロン酸によるコポリマー、水溶性であり、そして腎臓濾過を通して排除され得る分解副産物を導く低分子量セグメントを有するコポリマー、例えば低分子ポリ(エチレングリコール)(但し、それらは、鎖端で1又は2つのカルボキシル基を担持し、そしてそれらは単酸の場合、疎水性を提供する)により、一部又は完全に結合されるか、又は架橋される。
【0016】
第2の観点においては、本発明は、第1の観点において定義されるような生成物及び活性成分、好ましくは薬理学的活性成分を含んで成る組成物に関する。
第3の観点は、有効量の第1の観点において定義されるような生成物、及び医薬的に許容できるキャリヤー、賦形剤又は希釈剤を含んで成る医薬組成物に関する。
第4の観点は、ビークルとしての有効量の第1の観点において定義されるような生成物、及び薬理学的活性剤を含んで成る医薬組成物に関する。
【0017】
第5の観点は、有効量の第1の観点において定義されるような生成物を活性成分として含んで成る化粧製品に関する。
第6の観点においては、本発明は、第1の観点において定義されるような生成物を含んで成る、衛生、医学又は手術製品、好ましくは手術用スポンジ、創傷治癒スポンジ、又はバンドエイド又は他の創傷包帯材料に関する。
重要な観点は、第1の観点に定義されるような生成物を含んで成る医薬カプセル又はマイクロカプセルに関する。
【0018】
本発明のもう1つの重要な観点は、
a)ヒアルロン酸又はその塩と、αヒドロキシ酸のポリマーのモノ−アシル塩化物又はジ−アシル塩化物とを、有機溶媒、好ましくはDMSOにおいて反応せしめる段階を含んで成る、ヒアルロン酸又はその塩を含んで成る生成物の生成方法に関し、ここで前記ヒアルロン酸又はその塩は、αヒドロキシ酸のポリマー、好ましくはポリラクチドとも呼ばれるポリ(乳酸)のポリマー、及びいずれかの乳酸基剤のポリマー、立体ポリマー及びコポリマー、特にグリコール酸によるそれら、また、他のポリマー、例えばε−カプロラクトン、グルコン酸及び化学的に変性されたグルコン酸、リンゴ酸を通してのヒドロキシカプロン酸によるコポリマー、水溶性であり、そして腎臓濾過を通して排除され得る分解副産物を導く低分子量セグメントを有するコポリマー、例えば低分子ポリ(エチレングリコール)(但し、それらは、鎖端で1又は2つのカルボキシル基を担持し、そしてそれらは単酸の場合、疎水性を提供する)により、一部又は完全に結合されるか、又は架橋される。
【0019】
本発明の最終観点は、眼科学的処理、変形性関節炎又は眼の処理、創傷の処理、又は薬理学的活性剤の皮膚又は経皮投与又は化粧品の皮膚投与の実施方法に関し、ここで前記方法は、第1の観点において定義されるような生成物、又は第2、第3又は第4の観点のいずれかに定義されるような組成物の使用を包含する。
多くの観点は、変形性関節炎、癌の処理のための薬剤の製造、創傷の処理のための薬剤の製造、又はモイスチャライザーの製造のための、第1の観点において定義されるような生成物又は前記観点のいずれかに定義されるような組成物の使用に関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
定義:
核酸構造体:
“核酸構造体”は、本明細書においては、天然に存在する遺伝子から単離され、又は他方では、天然に存在しない態様で組み合わされ、そして並置される、核酸のセグメントを含むように修飾されている、一本鎖又は二本鎖核酸分子として定義される。用語、核酸構造体は、核酸構造体がコード配列の発現のために必要とされるすべての制御配列を含む場合、用語“発現カセット”と同じ意味である。用語“コード配列”とは、本明細書において定義される場合、mRNAに転写され、そして下記に言及される制御配列の制御下に配置される場合、興味ある酵素に翻訳される配列である。コード配列の境界は、一般的に、mRNAの5’末端で読み取り枠のすぐ上流に位置するリボソーム結合部位、及びmRNAの3’末端で読み取り枠のすぐ下流に位置する転写ターミネーター配列により決定される。コード配列は、DNA、cDNA,及び組換え核酸配列を包含するが、但しそれらだけには限定されない。
【0021】
ポリペプチドをコードする核酸配列を単離し、又はクローン化するために使用される技法は、当業界において良く知られており、そしてゲノムDNAからの単離、cDNAからの調製、又はそれらの組み合わせを包含する。そのようなゲノムDNAからの本発明の核酸配列のクローニングは、例えば良く知られているポリメラーゼ鎖反応(PCR)、又は共有する構造特徴を有するクローン化されたDNAフラグメントを検出するために発現ライブラリーの抗体スクリーニングを用いることによってもたらされ得る。
【0022】
例えば、Innisなど., 1990, PCR: A Guide to Methods and Application; Academic Press, New York を参照のこと。他の核酸増幅方法、例えばリガーゼ鎖反応、連結された活性化転写及び核酸配列に基づく増幅が使用され得る。クローニング方法は、ポリペプチドをコードする核酸配列を含んで成る所望する核酸フラグメントの切除及び単離、ベクター分子中への前記フラグメントの挿入、及び核酸配列のクローンが複製されるであろうバシラス細胞中への組換えベクターの組み込みを包含することができる。核酸配列は、ゲノム、cDNA, RNA, 半合成、合成起原、又はそれらのいずれかの組み合わせのものであり得る。
【0023】
酵素をコードする単離された核酸配列は、酵素の発現を提供するために種々の手段で操作され得る。構造体又はベクター中へのその挿入の前、核酸配列の操作は、発現ベクター又はバシラス宿主細胞に依存して、所望されるか又は必要とされる。クローニング方法を用いて核酸配列を修飾するための技法は、当業界において良く知られている。核酸配列がまた、当業界において良く知られている方法を用いて宿主細胞においてインビボで操作され得ることは理解されるであろう。
【0024】
多くの酵素が、ヒアルロン酸の生合成に関与する。それらの酵素は、ヒアルロナンシンターゼ、UDP−グルコース6−デヒドロゲナーゼ、UDP−グルコースピロホスホリラーゼ、UDP−N−アセチルグルコサミンピロホスホリラーゼ、グルコース−6−リン酸イソメラーゼヘキソキナーゼ、ホスホグルコムターゼ、アミドトランスフェラーゼ、ムターゼ及びアセチルトランスフェラーゼを包含する。ヒアルロナンシンターゼは、ヒアルロン酸の生成における主要酵素である。
【0025】
“ヒアルロナンシンターゼ”とは、GluUA及びGlcNAc糖前駆体の付加によりヒアルロナン鎖の延長を触媒するシンターゼとして、本明細書においては定義される。ストレプトコーカスヒアルロナンシンターゼ、脊椎動物ヒアルロナンシンターゼ及びウィルスヒアルロナンシンターゼのアミノ酸配列は、パステウレラヒアルロナンシンターゼとは異なり、そしてグループI及びグループIIヒアルロナンシンターゼとしての分類のために提案されており、ここで前記グループIヒアルロナンシンターゼはストレプトコーカスヒアルロナンシンターゼを包含する(DeAngelis, 1999)。バシラス宿主細胞におけるヒアルロナンの生成に関しては、真核生物起源のヒアルロナンシンターゼ、例えば哺乳類ヒアルロナンシンターゼはほとんど好ましいものではない。
【0026】
ヒアルロナンシンターゼコード配列は、バシラス宿主細胞において発現され得るいずれかの核酸配列であり得る。前記核酸配列はいずれの起源のものでもあり得る。好ましいヒアルロナンシンターゼ遺伝子は、グループI又はグループIIのいずれか、例えばストレプトコーカス・エクイシミリス、ストレプトコーカス・ピオゲネス、ストレプトコーカス・ウベリス又はストレプトコーカス・エクイ亜種ズーエピデミカスからのグループIヒアルロナンシンターゼ遺伝子、又はパスツレラ・ムルトシダのグループIIヒアルロナンシンターゼ遺伝子を包含する。
【0027】
ヒアルロナンの前駆体糖が宿主細胞、すなわち培養培地に供給されるか、又は内因性遺伝子により、非内因性遺伝子により、又はバシラス宿主細胞における内因性及び非内因性遺伝子の組み合わせによりコードされる構造体が、本発明のHAの生成において好ましい。前記前駆体糖は、D−グルクロン酸又はN−アセチル−グルコサミンであり得る。
【0028】
本発明の方法においては、核酸構造体はさらに、ヒアルロナンの前駆体糖の生合成における酵素をコードする1又は複数の遺伝子を含んで成ることができる。他方では、バシラス宿主細胞は、さらに、前駆体糖の生合成における酵素をコードする1又は複数の遺伝子を含んで成る1又は複数の第2核酸構造体を含んで成ることができる。ヒアルロナン生成は、ヒアルロナンの前駆体糖の合成路における段階を指図する1つの遺伝子又は複数の遺伝子をコードする核酸配列を有する構造体の使用により改良される。“ヒアルロナンの前駆体糖の合成路における段階を指図する”とは、前記遺伝子の発現されたタンパク質がN−アセチル−グルコサミン又はD−グルクロン酸、又はN−アセチル−グルコサミン及びD−グルクロン酸のいずれかの前駆体である糖の形成において活性的であることを意味する。
【0029】
前駆体糖を供給するための好ましい方法においては、ヒアルロナンの前駆体糖の合成路における段階を指図する遺伝子をコードする核酸配列に操作可能的に結合される異種プロモーター領域を有する組換え構造体を有する宿主細胞を培養することによって、ヒアルロナンシンターゼを有する宿主細胞におけるヒアルロナン生成を改良するための構造体が提供される好ましい方法においては、宿主細胞はまた、N−アセチル−グルコサミンの生合成に関与するシンターゼに対して、前記核酸配列と同じか又は異なったプロモーターを使用することができる、ヒアルロナンシンターゼに操作可能的に結合されるプロモーターを使用することができる、ヒアルロナンシンターゼに操作可能的に結合されるプロモーター領域を有する組換え操作体を含んで成る。さらなる好ましい態様においては、宿主細胞は、ヒアルロナンの前駆体糖の合成に関与する第2遺伝子をコードする異なった核酸配列に操作可能的に結合されるプロモーター領域を有する組換え構造体を有することができる。
【0030】
従って、本発明はまた、ヒアルロナンの前駆体糖の合成路における段階を指図する遺伝子をコードする核酸配列を有する構造体の使用により、ヒアルロナン生成を改良するための構造体にも関する。核酸配列は、ヒアルロナンシンターゼをコードする核酸配列と同じか又は異なったプロモーターから前駆体糖に発現され得る。
【0031】
ヒアルロン酸の生成のための前駆体糖の生合成に関与する遺伝子は、UDP−グルコース6−デヒドロゲナーゼ遺伝子、UDP−グルコースピロホスホリラーゼ遺伝子、UDP−N−アセチルグルコサミンピロホスホリラーゼ遺伝子、グルコース−6−リン酸イソメラーゼ遺伝子、ヘキソキナーゼ遺伝子、ホスホグルコムターゼ遺伝子、アミドトランスフェラーゼ遺伝子、ムターゼ遺伝子及びアセチルトランスフェラーゼ遺伝子を包含する。
【0032】
ヒアルロナンシンターゼを含む細胞においては、hasB, hasC及びhasD又はそれらの相同体、例えばバシラス・サブチリスtuaD, gtaB及びgcaDのいずれか1つ又は組合せが、ヒアルロナンシンターゼに利用できる前駆体糖のプールを高めるために発現され得る。バシラスゲノムは、Kunst, など., Nature 390,249-256,"The complete genome sequence of the Gram-positive bacterium Bacillus subtilis" (20 November 1997)記載される。いくつかの場合、例えば宿主細胞が生来のヒアルロナンシンターゼ活性を有さない場合、構造体はhasA遺伝子を含むことができる。
【0033】
生合成酵素をコードする核酸配列は、宿主細胞に対して生来のものであり得るが、ところが他の場合、異種配列が使用され得る。複数の遺伝子が発現される場合、それらは、生来のオペロンにおいてお互い関連する遺伝子、例えばhasA, hasB, hasC及びhasDを含んで成る、ストレプトコーカス・エクイシミリスのHASオペロンの遺伝子であり得る。他の場合、前駆体遺伝子配列のいくつかの組合せの使用が所望されるが、オペロン中の個々の要素は包含されない。宿主細胞に対して生来のいくつかの遺伝子、及び外因性である他の遺伝子の使用がまた、他の場合、好ましい。選択は、所定の宿主細胞における利用できる糖のプール、宿主細胞の他の機能を妨げないで、過剰生成に対する細胞の適合能力、及び細胞が外因性遺伝子とは異なってその生来の遺伝子からの発現を調節するかどうかに依存するであろう。
【0034】
1つの例として、細胞の代謝必要条件及び増殖条件、及び利用できる前駆体糖プールに依存して、UDP-N−アセチルグルコサミンピロホスホリラーゼをコードする核酸配列、例えばhasD遺伝子、バシラスgcaD遺伝子及びそれらの相同体の発現によりN−アセチル−グルコサミンの生成を高めることが所望される。他方では、前駆体糖はD−グルクロン酸であり得る。1つのそのような態様においては、核酸配列は、UDP−グルコース6−デヒドロナーゼをコードする。そのような核酸配列は、バシラスtuaD遺伝子、ストレプトコーカスのhasB遺伝子、及びそれらの相同体を包含する。核酸配列はまた、UDP−グルコースピロホスホリラーゼ、例えばバシラスgtaB遺伝子、ストレプトコーカスのhasC遺伝子及びそれらの相同体をコードすることができる。本発明の方法においては、UDP−グルコース6−デヒドロゲナーゼ遺伝子は、hasB遺伝子又はtuaD遺伝子;又はそれらの相同体であり得る。
【0035】
本発明の方法においては、ヒアルロナンシンターゼ遺伝子、及び前駆体糖をコードする1又は複数の遺伝子は、同じプロモーターの制御下にある。他方では、前駆体糖をコードする1又は複数の遺伝子は、同じプロモーターであるが、しかしヒアルロナンシンターゼ遺伝子を駆動する異なったプロモーターの制御下にある。さらなる態様においては、ヒアルロナンシンターゼ遺伝子、及び前駆体糖をコードする遺伝子の個々は、異なったプロモーターの制御下にある。好ましい態様においては、ヒアルロナンシンターゼ遺伝子、及び前駆体糖をコードする1又は複数の遺伝子は同じプロモーターの制御下にある。
【0036】
本発明はまた、ヒアルロナンシンターゼ遺伝子及びUDP−グルコース6−デヒドロゲナーゼ遺伝子、及び任意には、UDP−グルコースピロホスホリラーゼ遺伝子、UDP−N−アセチルグルコサミンピロホスホリラーゼ遺伝子及びグルコース−6−リン酸イソメラーゼ遺伝子から成る群から選択された1又は複数の遺伝子を含んで成るヒアルロナンシンターゼオペロンをコードする単離された核酸配列を含んで成る核酸構造体に関する。
【0037】
いくつかの場合、宿主細胞は、組換え構造体からのヒアルロナンシンターゼの発現に関係する、ヒアルロナンの前駆体糖の合成路における段階を指図する遺伝子をコードする核酸分子に操作可能的に結合される異種プロモーター領域を有する組換え構造体を有するであろう。ヒアルロナンシンターゼは、前駆体の生合成に関与する酵素をコードする核酸配列と同じか又は異なったプロモーター領域から発現され得る。もう1つの好ましい態様においては、宿主細胞は、ヒアルロナン前駆体糖の合成に関与する第2遺伝子をコードする異なった核酸配列に操作可能的に結合されるプロモーター領域を有する組換え構造体を有することができる。
【0038】
前駆体糖の生合成に関与する酵素コードする核酸配列は、ヒアルロナンシンターゼをコードする核酸配列と同じか又は異なったプロモーターから発現され得る。前者においては、個々のhasH, hasB, hasC及びhasD、又はそれらの相同体を有することにおいて、スタフィロコーカス・エクイシミリスのオペロンを模倣することができるか、又は他方では、ストレプトコーカス・エクイシミリスオペロンに存在する十分な補体を決して利用できない“人口オペロン”が構成される。“人工オペロン”はまた、グルコース−6−リン酸イソメラーゼ遺伝子(hasE)、及びヘキソキナーゼ遺伝子、ホスホグルコムターゼ遺伝子、アミドトランスフェラーゼ遺伝子、ムターゼ遺伝子及びアセチルトランスフェラーゼ遺伝子から成る群から選択された1又は複数の遺伝子を含んで成ることができる。人工オペロンにおいては、要素の少なくとも1つは、他の1つの要素、例えばコード配列に対して異種であるプロモーター領域に対して異種である。
【0039】
好ましい態様においては、核酸構造体は、hasA, tueD及びgtaBを含んで成る。もう1つの好ましい態様においては、核酸構造体は、hasA, tauD, gtaB及びgcaDを含んで成る。もう1つの好ましい態様においては、核酸構造体は、hasA及びtuaDを含んで成る。もう1つの好ましい態様においては、核酸構造体はhasAを含んで成る。もう1つの好ましい態様においては、核酸構造体は、hasA, tuaD, gtaB, gcaD及びhasEを含んで成る。もう1つの好ましい態様においては、核酸構造体は、hasA, hasB, hasC, hasD及びhasEを含んで成る。上記の好ましい態様に基づけば、示される遺伝子は、その相同体により置換され得る。
【0040】
本発明の方法においては、核酸構造体は、ヒアルロナンシンターゼコード配列に対して外来性のプロモーター配列に操作可能的に結合されるヒアルロナンシンターゼコード配列を含んで成る。前記プロモーター配列は、例えば単一のプロモーター又はタンデムプロモーターであり得る。
【0041】
“プロモーター”とは、1つの遺伝子の転写を開始するためにRNAポリメラーゼの結合に関与する核酸配列として本明細書において定義される。“タンデムプロモーター”とは、複数のプロモーター配列として本明細書においては定義され、これらの個々は、コード配列に操作可能的に結合され、そしてmRNAへのコード配列の転写を仲介する。“操作可能的に結合される”とは、制御配列、例えばプロモーター配列が、制御配列がコード配列によりコードされるポリペプチドの生成を指図するよう、コード配列に関する位置で適切に置換される配置として本明細書において定義される。
【0042】
前述のように、“コード配列”とは、適切な制御配列の制御下に置かれる場合、mRNAに転写され、そしてポリペプチドに翻訳される核酸配列として本明細書において定義される。コード配列の境界は一般的に、mRNAの5’末端での読み取り枠のすぐ上流に位置するリボソーム結合部位、及びmRNAの3’末端での読み取り枠のすぐ下流に位置する転写ターミネーター配列により決定される。コード配列は、DNA、cDNA、半合成、合成及び組換え核酸配列を含むことができるが、但しそれらだけには限定されない。
【0043】
好ましい態様においては、プロモーター配列は、細菌源から得られる。より好ましくは態様においては、プロモーター配列は、グラム陽性細菌、例えばバシラス株、例えばバシラス・アガラドヘレンス(Bacillus agaradherens)、バシラス・アルカロフィラス(Bacillus alkalophilus)、バシラス・アミロリケファシエンス(Bacillus amyloliquefaciens)、バシラス・ブレビス(Bacillus brevis)、バシラス・サーキュランス(Bacillus circulans)、バシラス・クラウジ(Bacillus clausii)、バシラス・コアギュランス(Bacillus coagulans)、バシラス・ファーマス(Bacillus firmus)、バシラス・ラウタス(Bacillus lautus)、バシラス・レンタス(Bacillus lentus)、バシラス・リケニホルミス(Bacillus licheniformis)、バシラス・メガテリウス(Bacillus megaterium)、バシラス・プミラス(Bacillus pumilus)、バシラス・ステアロサーモフィラス(Bacillus stearothermophilus)、バシラス・サブチリス(Bacillus subtilis)及びバシラス・スリンジエンシス(Bacillus thuringiensis);又はストレプトミセス株、例えばストレプトミセス・リビダンス(Streptomyces lividans)又はストレプトミセス・ムリナス(Streptomyces murinus);又はグラム陰性細菌、例えばE. コリ又はシュードモナス種から得られる。
【0044】
本発明の方法に置ける核酸配列の転写を指図するための適切なプロモーターの例は、E. コリlacオペロン、ストレプトミセス・コエリコロルアガラーゼ遺伝子(dagA)、バシラス・レンタス又はバシラス・クラウジアルカリプロテアーゼ遺伝子(aprH)、バシラス・リケニホルミスアルカリプロテアーゼ遺伝子(サブチリシンCarlsberg遺伝子)、バシラス・サブチリスレバンスクラーゼ遺伝子(sacB)、バシラス・サブチリスα−アミラーゼ遺伝子(amyE)、バシラス・リケニホルミスα−アミラーゼ遺伝子(amyL)、バシラス・ステアロサーモフィラスマルトゲンアミラーゼ遺伝子(amyM)、バシラス・アミロリケファシエンスα−アミラーゼ遺伝子(amyQ)、バシラス・リケニホルミスペニシリナーゼ遺伝子(penP)、バシラス・サブチリスxylA及びxylB遺伝子、バシラス・ツリンギエンシス亜種テネブリオニスCryIII A遺伝子(cryIII A)、又はそれらの一部、又は原核生物β−ラクタマーゼ遺伝子から得られたプロモーターである(Villa- Kamaroffなど., 1978, Proceedings of the National Academy of Sciences USA 75: 3727- 3731)。
【0045】
他の例は、spo1細菌ファージプロモーター及びtacプロモーターである((DeBoer など., 1983, Proceedings of the National Academy of Sciences USA 80: 21-25)。さらなるプロモーターは、"Useful proteins from recombinant bacteria"in Scientific American, 1980,242 : 74-94;及び Sambrook, Fritsch, and Maniatus, 1989, Molecular Cloning, A Laboratory Manual, 2d edition, Cold Spring Harbor, New Yorkに記載される。
【0046】
プロモーターはまた、“-35”領域のための配列TTGACA及び“-10”領域のためのTATAATを有する“コンセンサス”プロモーターであり得る。コンセンサスプロモーターは、バシラス宿主細胞において機能することができるいずれかのプロモーターから得られる。“コンセンサス”プロモーターの構成は、バシラス・サブチリスのための増殖性“シグマA−型”プロモーターの“-10”及び“-35”領域のための確立されたコンセンサス配列に対してより完全に適合するプロモーターを創造するために、特定の部位の突然変異誘発により達成され得る(Voskuil など., 1995, Molecular Microbiology 17: 271-279)。
【0047】
好ましい態様においては、“コンセンサス”プロモーターは、E. コリlacオペロン、ストレプトミセス・コエリコロルアガラーゼ遺伝子(dagA)、バシラス・レンタス又はバシラス・クラウジアルカリプロテアーゼ遺伝子(aprH)、バシラス・リケニホルミスアルカリプロテアーゼ遺伝子(サブチリシンCarlsberg遺伝子)、バシラス・サブチリスレバンスクラーゼ遺伝子(sacB)、バシラス・サブチリスα−アミラーゼ遺伝子(amyE)、バシラス・リケニホルミスα−アミラーゼ遺伝子(amyL)、バシラス・ステアロサーモフィラスマルトゲンアミラーゼ遺伝子(amyM)、バシラス・アミロリケファシエンスα−アミラーゼ遺伝子(amyQ)、バシラス・リケニホルミスペニシリナーゼ遺伝子(penP)、バシラス・サブチリスxylA及びxylB遺伝子、バシラス・ツリンギエンシス亜種テネブリオニスCryIII A遺伝子(cryIII A)、又はそれらの一部、又は原核生物β−ラクタマーゼ遺伝子spo1細菌ファージプロモーターから得られたプロモーターから得られる。より好ましい態様においては、“コンセンサス”プロモーターは、バシラス・アミロリケファシエンスα−アミラーゼ遺伝子(amyQ)から得られる。
【0048】
Widner, など., アメリカ特許第6,255,076号及び第5,955,310号は、短いコンセンサスamyQプロモーター(また、scBANとも呼ばれる)を包含する、バシラス細胞における発現への使用のためのタンデムプロモーター及び構造体、及び方法を記載する。バシラスにおける改良された生成のためへの、cryIII Aスタビライザー配列の使用及び前記配列を用いての構造体がまた記載される。
【0049】
タンデムプロモーター中の個々のプロモーター配列は、変異、切断された及びハイブリッドプロモーターを包含する、選択のバシラス細胞における転写活性を示すいずれかの核酸配列であり得、そしてバシラス細胞に対して相同の又は異種の細胞外又は細胞内ポリペプチドをコードする遺伝子から得られる。個々のプロモーター配列は、前記ポリペプチドをコードする核酸配列に対して生来のものであるか又は外来のものであり得、そしてバシラス細胞に対して生来のものであるか又は外来のものであり得る。プロモーター配列は、同じプロモーター配列か又は異なったプロモーター配列であり得る。
【0050】
タンデムプロモーター中の複数のプロモーター配列は、核酸配列の転写を同時に促進することができる。他方では、タンデムプロモーター中の1又は複数のプロモーター配列は、バシラス細胞の増殖の異なった段階で核酸配列の転写促進することができる。
【0051】
好ましい態様においては、タンデムプロモーターは、バシラス・アミロリケファシエンスα−アミラーゼ遺伝子の少なくともamyQプロモーターを含む。もう1つの好ましい態様においては、タンデムプロモーターは、少なくとも、“-35”領域のための配列TTGACA及び“-10”領域のためのTATAATを有する“コンセンサス”プロモーターを含む。もう1つの好ましい態様においては、タンデムプロモーターは少なくとも、バシラス・リケニホルミスα−アミラーゼ遺伝子のamyLプロモーターを含む。もう1つの好ましい態様においては、タンデムプロモーターは、少なくともcryIII Aプロモーター又はその一部を含む(Agaisse and Lereclus, 1994, Molecular Microbiology 13: 97-107)。
【0052】
より好ましい態様においては、タンデムプロモーターは、少なくともamyLプロモーター及びcryIII Aプロモーターを含む。もう1つのさらなる好ましい態様においては、タンデムプロモーターは少なくともamyQプロモーター及びcryIII Aプロモーターを含む。さらにもう1つの好ましい態様においては、Aタンデムプロモーターは、少なくとも、“-35”領域のための配列TTGACA及び“-10”領域のためのTATAATを有する“コンセンサス”プロモーター、及びcryIII Aプロモーターを含む。さらにもう1つの好ましい態様においては、少なくともamyLプロモーターの2つのコピーを含む。さらにもう1つの好ましい態様においては、タンデムプロモーターは、少なくともamyQプロモーターの2つのコピーを含む。さらにもう1つの好ましい態様においては、タンデムプロモーターは、“-35”領域のための配列TTGACA及び“-10”領域のためのTATAATを有する“コンセンサス”プロモーターの少なくとも2つのコピーを含む。さらにもう1つの好ましい態様においては、タンデムプロモーターは、cryIII Aプロモーターの少なくとも2つのコピーを含む。
【0053】
“mRNAプロセッシング/安定化配列”とは、1又は複数のプロモーター配列の下流に位置し、そして前記1又は複数のプロモーター配列の個々が、その個々のプロモーター配列から合成されるすべてのmRNAが転写体の5’末端でスタビライザー配列を有するmRNA転写体を生成するためにプロセッシングされ得るよう操作可能的に結合されるコード配列の上流に位置する配列として、本明細書において定義される。
【0054】
mRNA転写体の5’末端でのそのようなスタビライザー配列の存在は、それらの半減期を高める(Agaisse and Lereclus, 1994, 前記, Hueなど, 1995, Journal of Bacteriology 177: 3465-3471)。mRNAプロセッシング/安定化配列は、細菌16SリボソームRNAの3’末端に対して相補的である。好ましい態様においては、mRNAプロセッシング/安定化配列は、鋳型の5’末端で安定化配列を有する実質的に単一サイズの転写体を生成する。mRNAプロセッシング/安定化配列は好ましくは、細菌16SリボソームRNAの3’末端に対する相補的である配列である。アメリカ特許第6,255,076号及び第5,955,310号を参照のこと。
【0055】
より好ましい態様においては、mRNAプロセッシング/安定化配列は、WO94/25612号及びAgaisse and Lereclus, 1994前記に開示されるバシラス・スリンジエンシスcryIII A mRNAプロセッシング/安定化配列、又はmRNAプロセッシング/安定化機能を保持するその一部である。さらにもう1つの好ましい態様においては、mRNAプロセッシング/安定化配列は、Hueなど., 1995, 前記に開示されるバシラス・サブチリスSP82 mRNAプロセッシング/安定化配列、又はmRNAプロセッシング/安定化機能を保持するその一部である。
【0056】
cryIII Aプロモーター及びそのmRNAプロセッシング/安定化配列が本発明の方法に使用される場合、WO94/25612号及びAgaisse and Lereclus, 1994, 前記に開示される配列、又はプロモーター及びmRNAプロセッシング/安定化機能を保持するその一部を含むDNAフラグメントが使用され得る。さらに、cryIII Aプロモーターのみ、又はcryIII A mRNAプロセッシング/安定化配列のみを含むDNAフラグメントは、種々のタンデムプロモーター及びmRNAプロセッシング/安定化配列の組合せを構成するために、当業界において良く知られている方法を用いて調製され得る。この態様においては、cryIII Aプロモータ及びそのmRNAプロセッシング/安定化配列が好ましくは、タンデムプロモーターを構成する他のプロモーター配列の下流及び興味ある遺伝子コード配列の上流に配置される。
【0057】
ヒアルロン酸生成に関与する所望する酵素をコードする単離された核酸配列がさらに、核酸配列の発現を改良するために操作され得る。発現は、ポリペプチドの生成に関与するいずれかの段階、たとえば転写、後−転写修飾、翻訳、後−翻訳修飾及び分泌を包含することが理解されているが、但しそれだけには限定されない。クローニング方法を用いての核酸配列を修飾するための技法は、当業界において良く知られている。
酵素をコードする核酸配列を含んで成る核酸構造体は、制御配列と適合できる条件下でバシラス細胞におけるコード配列の発現を指図できる1又は複数の制御配列に操作可能的に結合され得る。
【0058】
用語“制御配列”とは、核酸配列のコード配列の発現のために必要であるか、又はそのために好都合であるすべての成分を包含するよう定義される。個々の制御配列は、酵素をコードする核酸配列に対して生来であっても又は外来性であっても良い。上記プロモーター配列の他に、そのような制御配列は、リーダー、シグナル配列、及び転写ターミネーターを包含するが、但しそれらだけには限定されない。最少で、制御配列は、プロモーター、及び転写及び翻訳停止シグナルを包含する。制御配列は、異種ポリペプチドをコードする核酸配列のコード領域と制御配列との連結を促進する特定の制限部位を導入するためにリンカーを提供され得る。
【0059】
制御配列はまた、適切な転写ターミネーター配列、すなわち転写を終結するようバシラス細胞により認識される配列でもあり得る。ターミネーター配列は、酵素又はオペロンの最後の酵素をコードする核酸配列の3’側末端に操作可能的に連結される。選択のバシラス細胞において機能的であるいずれかのターミネーターが、本発明において使用され得る。
【0060】
制御配列はまた、適切なリーダー配列、すなわち、バシラス細胞による翻訳のために重要であるmRNAの非翻訳領域でもあり得る。リーダー配列は、酵素をコードする核酸配列の5’側末端に操作可能的に連結される。選択のバシラス細胞において機能的であるいずれかのリーダー配列が、本発明に使用され得る。
【0061】
制御配列はまた、発現されたポリペプチドを細胞の分泌路中に方向づけるポリペプチドのアミノ末端に連結されるアミノ酸配列をコードするシグナルペプチドコード領域でもあり得る。そのシグナルペプチドコード領域は、ポリペプチドに対して生来のものであり得るか、又は外来性源から得られ得る。核酸配列のコード配列の5’側末端は、本来、分泌されたポロペプチドをコードするコード領域のセグメントと翻訳読み取り枠を整合して、天然において連結されるシグナルペプチドコード領域を含むことができる。他方では、コード配列の5’側末端は、分泌されたポリペプチドをコードするコード配列のその部分に対して外来性であるシグナルペプチドコード領域を含むことができる。
【0062】
通常、そのコード配列がシグナルペプチドコード領域を含まない外来性シグナルペプチドコード領域が必要とされる。他方では、外来性シグナルペプチドコード領域は、コード配列と通常関連しない天然のシグナルペプチドコード領域に対して、ポリペプチドの増強された分泌を得るために、天然のシグナルペプチドコード領域を単純に置換することができる。シグナルペプチドコード領域は、アミラーゼ、又はバシラス種からのプロテアーゼ遺伝子から得られる。しかしながら、選択のバシラス細胞の分泌路中に発現されたポリペプチドを方向づけるいずれかのシグナルペプチドコード領域が、本発明に使用され得る。
【0063】
バシラス細胞のための効果的なシグナルペプチドコード領域は、バシラスNCIB11837からのマルトゲン性アミラーゼ遺伝子、バシラス・ステアロサーモフィラスα−アミラーゼ遺伝子、バシラス・リケニホルミススブチリシン遺伝子、バシラス・リケニホルミスβ−ラクタマーゼ遺伝子、バシラス・アステロサーモフィラス中性プロテアーゼ遺伝子(nprT, nprS, nprM)、及びバシラス・スブチリスprsA遺伝子から得られるシグナルペプチド領域である。追加のシグナルペプチドは、Sinomen and Palva, 1993, Microbiological Reviews 57: 109-137 により記載される。
【0064】
制御配列はまた、ポリペプチドのアミノ末端で位置するアミノ酸配列をコードするプロペプチドコード領域であり得る。得られるポリペプチドは、プロ酵素又はプロポリペプチド(又は多くの場合、チモーゲン)として知られている。プロポリペプチドは一般的に不活性であり、そしてプロポリペプチドからプロペプチドの触媒又は自己触媒分解により成熟した活性ポリペプチドに転換され得る。プロペプチドコード領域は、バシラス・サブチリスアルカリプロテアーゼ(aprE)、及びバシラス・サブチリス中性プロテアーゼ(nprT)。
【0065】
シグナルペプチド及びプロペプチド領域の両者がポリペプチドのアミノ末端に存在する場合、そのプロペプチド領域は、ポリペプチドのアミノ末端の次に位置し、そしてシグナルペプチド領域は、プロペプチド領域のアミノ末端の次に位置する。
宿主細胞の増殖に関して、ポリペプチドの発現の調節を可能にする調節配列を付加することがまた所望される。調節システムの例は、調節化合物の存在を包含する、化学的又は物理的刺激に応答して、遺伝子の発現の開始又は停止を引き起こすそれらのシステムである。原核生物系における調節システムは、lac, tac及びtrpオペレーターシステムを包含する。
【0066】
生成:
本発明の生成方法においては、宿主細胞は、当業界において知られている方法を用いて、ヒアルロン酸の生成のために適切な栄養培地において培養される。例えば、細胞は、ポリペプチドの発現及び/又は単離を可能にする、適切な培地において、及びヒアルロン酸合成に関与する酵素の発現及びヒアルロン酸の単離を可能にする条件下で行われる実験室用又は産業用発酵器において、振盪フラスコ培養、小規模又は大規模発酵(連続、バッチ、供給バッチ、又は団体状態発酵を包含する)により培養され得る。培養は、炭素及び窒素源及び無機塩を含んで成る適切な栄養培地において、当業界において知られている方法を用いて行われる。適切な培地は、市販されているか、又は公開されている組成(例えば、American Type Culture Collection のカタログにおける)に従って調製され得る。分泌されたヒアルロン酸は、培地に直接的に回収され得る。
【0067】
得られるヒアルロン酸は、当業界において知られている方法により単離され得る。例えば、ヒアルロン酸は、便利な方法、例えば遠心分離、濾過、抽出、噴霧乾燥、蒸発又は沈殿(但し、それらだけには限定されない)により、栄養培地から単離され得る。次に単離されたヒアルロン酸は、当業界において知られている種々の方法、例えばクロマトグラフィー(例えば、イオン交換、親和性、疎水性、クロマトフォーカシング及びサイズ排除)、電気泳動方法(例えば、分離用等電点電気泳動)、示差溶解性(例えば、硫酸アンモニウム沈殿)、又は抽出(例えば、Protein Purification, J. -C. Janson and Lars Ryden, editors, VCH Publishers, New York, 1989を参照のこと)(但し、それらだけには限定されない)により、さらに精製され得る。
【0068】
発明の特定の記載:
“ヒアルロン酸”は、β−1,4及びβ−1,3グリコシド結合を変えることによって一緒に結合される、N−アセチルグルコサミン(GlcNAc)及びグルクロン酸(GlcUA)の反復二糖単位から構成される、硫酸化されていないグリコサミノグリカンとして、本明細書においては定義される。ヒアルロン酸はまた、ヒアルロナン、ヒアルロネート又はHAとして知られている。用語、ヒアルロナン及びヒアルロン酸は、本明細書においては、交換可能的に使用される。
【0069】
雄鶏の鶏冠は、ヒアルロナンのための有意な商業的源である。微生物は他の源である。アメリカ特許第4,801,539号は、1L当たり約3.6gのヒアルロン酸の報告される収率を伴って、ストレプトコーカス・ズーエピデシカス(Streptococcus zooepidemicus)の株を包含するヒアルロン酸の調製のための発酵方法を開示する。ヨーロッパ特許第0694616号は、1L当たり約3.5gのヒアルロン酸の報告される収率を伴って、ストレプトコーカス・ズーエピデシカスの改良された株を用いての発酵方法を開示する。引用により本明細書に組み込まれるWO03/054163号(Novozymes)に開示されるように、ヒアルロン酸又はその塩は、グラム陽性バシラス宿主において組換え的に生成され得る。
【0070】
ヒアルロナンシンターゼは、脊椎動物, 細菌病原体,及び藻類ウィルス (DeAngelis, P. L., 1999, Cell. Mol. Life Sci, 56: 670-682)から記載されている。WO99/23227号は、ストレプトコーカス・エクイシミリスからのグループIヒアルロン酸シンターゼを開示する。WO99/51265号及びWO00/27437号は、パステウレラ・マルトシダからのグループIIヒアルロン酸シンターゼを記載する。Ferrettiなどは、それぞれヒアルロン酸シンターゼ、UDPグルコースデヒドロゲナーゼ及びUDP−グルコースピロホスホリラーゼをコードする3種の遺伝子、hasA, hasB及びhasCから構成される、ストレプトコーカス・ピロゲネスのヒアルロナンシンターゼオペロンを開示する(Proc. Natl. Acad. Sci. USA. 98, 4658-4663,2001)。WO99/51265号は、ストレプトコーカス・エクイシミリスヒアルロナンシンターゼのためのコード領域を有する核酸セグメントを記載する。
【0071】
組換えバチルス細胞のヒアルロナンは、培養培地に直接的に発現されるので、単純な方法が、培養培地からヒアルロナンを単離するために使用され得る。第1に、バチルス細胞及び細胞残骸が培養培地から物理的に除去される。最初に、培養培地が、所望により、希釈され、培地の粘度が低められる。培養培地から細胞を除去するための多くの方法、例えば遠心分離又はマイクロフィルトレーションは、当業者に知られている。所望には、次に残る上清液が、例えば限外濾過により濾過され、濃縮され、そしてヒアルロナンから小さな分子汚染物が除去される。
【0072】
細胞及び細胞残骸の除去に続いて、培地からのヒアルロナンの単純な沈殿が既知機構により行われる。塩、アルコール、又は塩及びアルコールの組合せが、濾液からヒアルロナンを沈殿するために使用され得る。沈殿物に減じられると、ヒアルロナンは物理的手段により、溶液から容易に単離され得る。ヒアルロナンは、当業界において知られている蒸発技法、例えば凍結乾燥又は噴霧乾燥により、濾液溶液から乾燥されるか又は濃縮され得る。
【0073】
本発明の第1の観点は、ヒアルロン酸又はその塩を含んで成る生成物に関し、ここで前記ヒアルロン酸は、αヒドロキシ酸のポリマー、好ましくはポリラクチドとも呼ばれるポリ(乳酸)のポリマー、及びいずれかの乳酸基剤のポリマー、立体ポリマー及びコポリマー、特にグリコール酸によるそれら、また、他のポリマー、例えばε−カプロラクトン、グルコン酸及び化学的に変性されたグルコン酸、リンゴ酸を通してのヒドロキシカプロン酸によるコポリマー、水溶性であり、そして腎臓濾過を通して排除され得る分解副産物を導く低分子量セグメントを有するコポリマー、例えば低分子ポリ(エチレングリコール)(但し、それらは、鎖端で1又は2つのカルボキシル基を担持し、そしてそれらは単酸の場合、疎水性を提供する)により、一部又は完全に結合されるか、又は架橋されている。
【0074】
宿主細胞:
好ましい態様は、第1の観点の生成物に関し、ここでヒアルフロン酸又はその塩は、好ましくはグラム陽性細菌又は宿主細胞、より好ましくはバシラス属の細菌により、組換え的に生成される。
【0075】
宿主細胞は、ヒアルロン酸の組換え生成のために適切ないずれかのバチルス細胞であり得る。バチルス宿主細胞は、野生型バチルス細胞又はその変異体であり得る。本発明の実施において有用なバチルス細胞は、次のものを包含するが、但しそれらだけには限定されない:バチルス・アガラドヘレンス、バチルス・アルカロフィラス、バチルス・アミロリケファシエンス、バチルス・ブレビス、バチルス・サーキュランス、バチルス・クラウジ、バチルス・コアギュランス、バチルス・ファーマス、バチルス・ラウタス、バチルス・レンタス、バチルス・リケニホルミス、バチルス・メガテリウス、バチルス・プミラス、バチルス・ステアロサーモフィラス、バチルス・サブチリス及びバチルス・スリンジエンシス細胞。変異体バチルス・サブチリス細胞は、WO98/22598号に記載されるように、組換え発現のために特に適合される。非被包性バチルス細胞は、本発明において特に有用である。
【0076】
好ましい態様においては、バチルス宿主細胞は、バチルス・アミロリケファシエンス、バチルス・クラウジ、バチルス・レンタス、バチルス・リケニホルミス、バチルス・ステアロサーモフィラス又はバチルス・サブチリス細胞である。より好ましい態様においては、バチルス宿主細胞は、バチルス・アミロリケファシエンス細胞である。もう1つのより好ましい態様においては、バチルス宿主細胞は、バチルス・クラウジ細胞である。もう1つのより好ましい態様においては、バチルス宿主細胞は、バチルス・レンタス細胞である。もう1つのより好ましい態様においては、バチルス宿主細胞は、バチルス・リケニホルミス細胞である。もう1つのより好ましい態様においては、バチルス宿主細胞は、バチルス・サブチリス細胞である。最も好ましい態様においては、バチルス宿主細胞は、バチルス・サブチリスA164Δ5(アメリカ特許第5,891,701号を参照のこと)、又はバチルス・サブチリス168Δ4である。
【0077】
本発明の核酸構造体によるバチルス宿主細胞の形質転換は、プロトプラスト形質転換(例えば、Chang and Cohen, 1979, Molecular General Genetics 168: 111-115を参照のこと)により、コンピテント細胞の使用(Young and Spizizen, 1961, Journal of Bacteriology 81 : 823- 829, 又は Dubnau and Davidoff-Abelson, 1971, Journal of Molecular Biology 56 : 209-221を参照のこと)により、エレクトロポレーション(Shigekawa and Dower, 1988, Biotechniques 6: 742-751を参照のこと)により、又は接合(Koehler and Thorne, 1987, Journal of Bacteriology 169: 5271-5278を参照のこと)により行われ得る。
【0078】
分子量:
ヒアルロン酸のレベルは、改良されたカルバゾール方法(Bitter and Muir, 1962, Anal Biochem. 4: 330-334)に従って決定され得る。さらに、ヒアルロン酸の平均分子量は、当業界における標準の方法、例えばUeno など., 1988, Chem. Pharm. Bull. 36, 4971-4975; Wyatt, 1993, Anal. Chim. Acta 272: 1-40; 及び Wyatt Technologies, 1999, "Light Scattering University DAWN Course Manual" and "DAWN EOS Manual" Wyatt Technology Corporation, Santa Barbara, Californiaにより記載されるそれらの方法を用いて決定され得る。
【0079】
好ましい態様においては、本発明の方法により得られるヒアルロン酸は、約10,000〜約10,000,000Daの分子量を有する。より好ましい態様においては、本発明の方法により得られるヒアルロン酸は、約25,000〜約5,000,000Daの分子量を有する。最も好ましい態様においては、本発明の方法により得られるヒアルロン酸は、約50,000〜約3,000,000Daの分子量を有する。
【0080】
好ましい態様は、第1の観点の生成物に関し、ここで前記ヒアルロン酸又はその塩は、300,000〜3,000,000の範囲;好ましくは400,000〜2,500,000の範囲;より好ましくは500,000〜2,000,000の範囲;及び最も好ましくは600,000〜1,800,000の範囲の分子量を有する。
【0081】
塩及び架橋されたHA:
好ましい態様は、ヒアルロン酸の無機塩、好ましくはヒアルロン酸ナトリウム、ヒアルロン酸カリウム、ヒアルロン酸アンモニウム、ヒアルロン酸カルシウム、ヒアルロン酸マグネシウム、ヒアルロン酸亜鉛、又はヒアルロン酸コバルトを含んで成る、第1の観点の生成物に関する。
【0082】
下記例においては、ヒアルロン酸ナトリウムとポリ(乳酸)モノ又はジ−アシル塩化物との反応が、未処理のHA又はPLAの標準スペクトルに比較して、結合されたHA−PLA生成物における新しく形成されたポリ乳酸エステルの存在に対応する、IRスペクトル上での1736cm-1での強められたピークを示す、結合された又は架橋されたHA−PLA又はHA−PLA−HA生成物をもたらしたことが見出された。
【0083】
従って、好ましい態様は、第1の観点の生成物に関し、ここで架橋されたヒアルロン酸又はその塩は、αヒドロキシ酸のポリマー、好ましくはポリラクチドとも呼ばれるポリ(乳酸)のポリマー、及びいずれかの乳酸基剤のポリマー、立体ポリマー及びコポリマー、特にグリコール酸によるそれら、また、他のポリマー、例えばε−カプロラクトン、グルコン酸及び化学的に変性されたグルコン酸、リンゴ酸を通してのヒドロキシカプロン酸によるコポリマー、水溶性であり、そして腎臓濾過を通して排除され得る分解副産物を導く低分子量セグメントを有するコポリマー、例えば低分子ポリ(エチレングリコール)(但し、それらは、鎖端で1又は2つのカルボキシル基を担持し、そしてそれらは単酸の場合、疎水性を提供する)のエステルを含んで成る。
【0084】
湿分の決定:
本発明の乾燥された生成物粉末の湿分は、102℃±2℃で粉末を一定重量に乾燥した後、%として表される重量の低下である。グラウンド蓋を有する空のガラス計量皿を、オーブンにおいて乾燥し、次に冷却し、そして少なくとも0.1mgの感度を有する分析天秤上で計量した。約3gの乾燥された生成物粉末を、前記皿に配置し、そして計量した。粉末を有する皿を蓋をしないでオーブンに配置し、そして102℃±2℃の温度で2時間、乾燥し、次にそれを乾燥器に配置し、そして室温に冷却し、その後、再び計量した。粉末を有する皿を、蓋をしないでオーブンに配置し、1時間以上、乾燥し、そして次に、すでに記載したようにして、冷却し、そして計量し;これを、重量が一定に存在するまで、すなわち2回の連続した計量が0.5mg以上、異ならなくなるまで、反復する。
【0085】
次に、湿分率を、次の通りに計算する:(W2-W3)/(W2-W1)×100;ここでW1は空の皿の重量であり、W2は粉末を有する皿の重量であり、そしてW3は乾燥された粉末を有する皿の重量である。結果は、小数点2まで計算し、そしてこの方法の再現性は約±0.1%である。
好ましい態様においては、第1観点の生成物が乾燥され、そして本明細書において決定される場合、5%以下の湿分、好ましくは2%以下の湿分及び最も好ましくは1%以下の湿分を包含する。
【0086】
他の成分:
好ましい態様においては、本発明の生成物はまた、他の成分、好ましくは1又は複数の活性成分、好ましくは1又は複数の薬理学的活性物質、及びまた好ましくは、水溶性賦形剤、例えばラクトースを含んで成ることができる。
【0087】
本発明においては使用され得る活性成分又は薬理学的活性物質の非制限的例は、タンパク質及び/又はペプチド薬剤、例えばヒト成長ホルモン、ウシ成長ホルモン、ブタ成長ホルモン、成長ホルモン放出ホルモン/ペプチド、顆粒球コロニー刺激因子、顆粒球マクロファージ−コロニー刺激因子、マクロファージ−コロニー刺激−因子、エリスロポイエチン、骨形態発生性タンパク質、インターフェロン又はその誘導体、インシュリン又はその誘導体、アトリオペプチン−III、モノクロナール抗体、腫瘍壊死因子、マクロファージ活性化因子、インターロイキン、腫瘍分解因子、インスリン様成長因子、表皮成長因子、組織プラスミノゲン活性化因子、第IIV因子、第IIIV因子、及びウロキナーゼを包含する。
【0088】
水溶性賦形剤は、活性成分を安定化するために包含され得、そのような賦形剤は、タンパク質、例えばアルブミン又はゼラチン;アミノ酸、例えばグリシン、アラニン、グルタミン酸、アルギニン、リシン及びその塩;炭水化物、例えばグルコース、ラクトース、キシロース、ガラクトース、フルクトース、マルトース、サッカロース、デキストラン、マンニトール、ソルビトール、トレハロース及びコンドロイチンスルフェート;無機塩、例えばホスフェート;界面活性剤、例えばTWEEN(商標)(ICI)、ポリエチレングリコール及びその混合物を包含することができる。賦形剤又は安定剤は、生成物の0.001〜99重量%の範囲の量で使用され得る。
【0089】
本発明のいくつかの観点は、他の構成成分の中で、有効量の第1の観点において定義されるような生成物、及び活性成分、好ましくは薬理学的活性剤;医薬的に許容できるキャリヤー、賦形剤又は希釈剤、好ましくは水溶性賦形剤、及び最も好ましくはラクトースを含んで成る種々の医薬組成物に関する。
【0090】
さらに、本発明の観点は、第1の観点において定義されるような生成物又は上記観点及び態様において定義されるような組成物を含んで成る製品、例えば化粧品、衛生製品、医学又は手術製品に関する。最終観点においては、本発明は、第1の観点において定義されるような生成物、又は本発明の他の観点及び態様において定義されるような組成物を含んで成る薬剤カプセル又はマイクロカプセルに関する。
【0091】
生成方法:
もう1つの観点において、本発明は、
a)ヒアルロン酸又はその塩と、αヒドロキシ酸のポリマーのモノ−アシル塩化物又はジ−アシル塩化物とを、有機溶媒、好ましくはDMSOにおいて反応せしめる段階を含んで成る、ヒアルロン酸又はその塩を含んで成る生成物の生成方法を提供し、ここで前記ヒアルロン酸又はその塩は、αヒドロキシ酸のポリマー、好ましくはポリラクチドとも呼ばれるポリ(乳酸)のポリマー、及びいずれかの乳酸基剤のポリマー、立体ポリマー及びコポリマー、特にグリコール酸によるそれら、また、他のポリマー、例えばε−カプロラクトン、グルコン酸及び化学的に変性されたグルコン酸、リンゴ酸を通してのヒドロキシカプロン酸によるコポリマー、水溶性であり、そして腎臓濾過を通して排除され得る分解副産物を導く低分子量セグメントを有するコポリマー、例えば低分子ポリ(エチレングリコール)(但し、それらは、鎖端で1又は2つのカルボキシル基を担持し、そしてそれらは単酸の場合、疎水性を提供する)により、一部又は完全に結合されるか、又は架橋される。
【0092】
生成物又は組成物の使用方法:
本発明の種々の観点は、第1の観点の生成物又は本発明の組成物を用いて、例えば医学分野における処理工程を実施するための方法に関する。
1つの観点は、第1の観点において定義されるような生成物、又は本発明の組成物の使用を包含する、眼科学的処置を実施するための方法に関する。
もう1つの観点は、第1の観点において定義されるような生成物、又は本発明の組成物の使用を包含する、変形性関節炎の処置を実施するための方法に関する。
【0093】
さらにもう1つの観点は、第1の観点において定義されるような生成物、又は本発明の組成物の使用を包含する、癌の処置を実施するための方法に関する。
1つの観点は、第1の観点において定義されるような生成物、又は本発明の組成物の使用を包含する、薬理学的活性剤の経皮投与を実施するための方法に関する。
もう1つの観点は、本発明の生成物、又は組成物の使用を包含する、化粧品の皮膚投与を実施するための方法に関する。
【実施例】
【0094】
多くの次のような化学的略語が図1における構造式により示される:例えば、テトラブチルアンモニウム(TBA)、セチルトリメチルアンモニウム(CTA)、ヒアルロン酸(HA)及びポリ(乳酸)(PLA)。
例1:DMSO及びSOCl2蒸留:
DMSO蒸留:
1.5LのDMSOを、2000mlの丸底フラスコ中に導入し、そして磁気撹拌下で、少量のP2O5をDMSOに添加し、水を除去した。次に、蒸留を中断しないでそれぞれの収集を可能にする、1つの100ml、及び2個の1000mlのフラスコを有する回転できる複数−受け器アダプターに固定された冷却器により、前記フラスコを真空蒸留のために構成した。
【0095】
フラスコを、約75℃まで、真空下で加熱し、蒸留した。第1の小画分を、100mlの丸底フラスコに集め、そして後に破棄した。蒸留されたDMSOを最終的に集めた。カラムの上部での温度は42℃であり、そして真空は2mバールであった。Ultrapureから市販されているDMSOを、蒸留しないで使用することができる。
【0096】
SOCl2蒸留:
300mlの塩化チオニルSOCl2を、500mlの丸底フラスコに導入し、そして磁気撹拌下で、50mlのトリフェニルホスフィットを滴下し、塩素及び硫黄を閉じも込めた。非常に発熱性であるので、温度を制御することが重要である。
【0097】
すべてのトリフェニルホスフィットが添加された後、蒸留を中断しないでそれぞれの収集を可能にする、50ml、100ml及び250mlのフラスコを有する回転できる複数−受け器アダプターに固定された冷却器により、前記フラスコを蒸留のために構成した。全構成物を、アルミシートにより包装し、蒸留されたSOCl2を光から保護した。塩化カルシウムトラップをまた、蒸留構成物に固定し、水から保護した。次に、フラスコを、105℃まで加熱し、生成物を蒸留し;カラムの上部での温度は72℃であった。
【0098】
例2:PLAアシル−塩化物の調製:
反応スキームは図2に示される。2,4454gのPLAを、新しく蒸留されたSOCl2に溶解し、そして磁気撹拌下で250mlの丸底をフラスコに導入し、次に還流のために構成し、そしてCaCl2トラップにより水から保護した。フラスコを、3時間、加熱還流(約80℃)した。
反応が終結した場合、過剰のSOCl2を真空下で60℃で蒸留した。すべてのSOCl2を除去するために、残る生成物をトルエンに溶解し、そしてその溶液を真空下で80℃で再び蒸留し、溶媒を除去した。この段階を3度、反復した。
【0099】
例3:HA-PLA合成:
CTA塩形でのヒアルロン酸(HA-CTA)及びポリ(乳酸)モノ−アシル塩化物(PLA-COCl)を、2:1のPLA−COCl:HA-CTAのモル比で反応せしめた。
50mlのDMSOに溶解された2.03gのPLA−COClを、70mlのDMSO中0.512gのHA-CTAの溶液に滴下した。回転蒸発器を用いて、DMSOを除去し、溶液を、固体生成物が得られるまで、濃縮した。生成物を、エタノール及びアセトンにより連続的に洗浄した。最終生成物は、水に不溶性であるが、しかしDMSOにおいては膨潤された。
【0100】
最終生成物(KBrディスク)のIRスペクトルが図5に示されている。それは、HA−Hのスペクトル(図4に示される)のように見えるが、但し、C=O結合に対応する1735cm-1でのピークを除く。しかしながら、このピークの強さは大きく、そしてポリ(乳酸)に割り当てることができる。PLAのIRスペクトルは、図3に示されている。
【0101】
13C NMRは、HAの13C NMRにおけるすべてのピークは明確に次の通りに同定されるので、最終生成物の特徴化のためのより効果的な方法であるように思え;D−グルクロン酸の炭素原子は、“U”でラベルされ、そしてN−アセチル−D−グルコサミン酸のそれらは“N”によりラベルされる。
【0102】
【表1】
【0103】
最終生成物の13C NMRスペクトル(図6)は、HA、PLA(16.57及び170ppm)、及びセチルアンモニウム(CTA)カウンターイオン(13, 29, 52ppm)のすべてのピークを示す。
生成物を固化するためのDMSOの蒸発はPLA及びHAを空間的に徐々に接近せしめ、次にカップリング反応に誘導することができる。HA及びPLAの鎖長の差異が反応における置換比に影響を及ぼすことができる。
【0104】
例4:HA−PLA−HA合成:
DMSO中、PLAジ−アシル塩化物を、上記のようにして、室温で一晩、HA(TBA又はCTA形)と共に混合した。次に前記溶液を濃縮し、そして生成物をエタノールにおける沈殿により精製し、そして最終的に、アセトンにより洗浄した。最終生成物は水に不溶性である。
【0105】
それらの2種の溶媒から除かれた生成物を、図8及び9に示されるように、IRスペクトルにより分析した。2種のスペクトルは、PLA及びHAの両者の特徴であるピークを示す。洗浄がHAに結合されるいくらかのPLAを排除すると思われる。
HA−CTA及びHA−TBAからの最終生成物のIRスペクトル(図10及び11)はまた、HA−Hのスペクトルのように見えるが、但しPLAのC=O結合に対応する、1736cm-1でのピークを除く。
【0106】
例5:HA-CTA合成:
セチルトリメチルアンモニウム臭化物の温溶液(40℃)を、0.155gのHA−Naの温溶液(40℃)に滴下する。白色沈殿物を濾過し、温水により洗浄し、NaBr及び過剰のセチルアンモニウム臭化物を除去し、そして凍結乾燥する。
DMSOに溶解性である最終生成物のIRスペクトル(図12)は、CTAの存在を示す。
【0107】
例6:1:1のモル比でのHA−PLA合成:
典型的には、0.64gの活性化された乳酸オリゴマーを、DMSOにおいて1gのHA−CTAと共に室温で一晩、混合した。DMSOを除去し、そして沈殿物を、エーテルにより2度、エタノールにより3度、及びアセトンにより2度、洗浄した。回収された生成物を、最終的に、真空下で一晩、乾燥した。最終生成物の1H NMR(図13)は、残存CTAの存在を示す。
【0108】
例7:HA−PLA透析:
残存CTAを有するHA−PLAを、2/1の体積比でDMSOと共に混合されたリン酸緩衝溶液(pH7.4及び濃度=0.5M)に溶解した。この溶液を、水、DMSO、エタノール及び水に対して連続的に透析した(カットオフ=6000−8000)。この処理の後、溶液を凍結乾燥し、そして最終化合物を、NMRにより分析した(図14)。
【0109】
例8:HA−PLAブランク試験:
ブランク試験を、SOCl2によるオリゴマーのいずれの従来の活性化も伴わないで、HA及びPLAを反応することにより、行った。20mlのDMSO中、271mgのOLAを含む溶液を、40mlのDMSO中、211mgのHAの溶液に滴下した。この溶液を室温で3時間、撹拌し、そしてDMSOを蒸発により除いた。淡黄色の固形物を得た。この固形物をDMSOに一晩、溶解した。沈殿物が出現した。不溶性部分を溶液から分離し、そしてアセトンにより洗浄した。得られる白色固形物を乾燥し、そしてNMRにより分析した。
【0110】
アセトンを、残留溶液にゆっくり添加し、新規沈殿物を生成した。この沈殿物を集め、乾燥し、そしてまた、NMRによる分析した。PLAのピークは、NMRスペクトル上では明らかでなかった。
これは、PLAが、塩化チオニルによるPLAの活性化が使用される場合、HAに化学的に結合されることを確かめる。
【図面の簡単な説明】
【0111】
【図1】図1は、本明細書において使用される種々の化合物の構造式を示す。
【図2】図2は、PLAアシル−塩化物を形成するために塩化チオニルによるポリ(乳酸)の反応スキームを示す。
【図3】図3は、ポリ(乳酸)のIRスペクトルを示す。
【図4】図4は、ヒアルロン酸(陽子形)のIRスペクトルを示す。
【図5】図5は、例3における最終合成生成物HA−PLAのIRスペクトルを示す。
【図6】図6は、例3における最終合成生成物HA−PLAの13Cスペクトルを示す。
【図7】図7は、例4において概略されるようにHA−PLA−HAを形成するためにPLAジ−アシル−塩化物によるHA−TBAの反応スキームを示す。
【図8】図8は、存在する有望なHA−PLA−HAを伴って、例4におけるエタノール−洗浄物のIRスペクトルを示す。
【図9】図9は、存在する有望なHA−PLA−HAを伴って、例4におけるアセトン−洗浄物のIRスペクトルを示す。
【0112】
【図10】図10は、例4におけるHA−CTAからの最終生成物、HA−PLA−HAのIRスペクトルを示す。
【図11】図11は、例4におけるHA−TBAからの最終生成物、HA−PLA−HAのIRスペクトルを示す。
【図12】図12は、例5において合成されたHA−CTAのIRスペクトルを示す。
【図13】図13は、例6の最終HA−PLA生成物の1H NMRを示し、スペクトルは残存CTAの存在を示す。
【図14】図14は、例7の透析の後、例6の最終HA−PLA生成物の1H NMRを示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
αヒドロキシ酸のポリマー、好ましくはポリ(乳酸)のポリマーにより、部分的に又は完全に結合されるか又は架橋される、ヒアルロン酸又はその塩を含んで成る生成物。
【請求項2】
前記ヒアルロン酸又はその塩が、好ましくはグラム陽性細菌、より好ましくはバシラス属の細菌より、組換え的に生成される請求項1記載の生成物。
【請求項3】
前記ヒアルロン酸又はその塩が、300,000〜3,000,000の範囲;好ましくは400,000〜2,500,000の範囲;より好ましくは500,000〜2,000,000の範囲;及び最も好ましくは600,000〜1,800,000の範囲の分子量を有する請求項1又は2記載の生成物。
【請求項4】
ヒアルロン酸の無機塩、好ましくはヒアルロン酸ナトリウム、ヒアルロン酸カリウム、ヒアルロン酸アンモニウム、ヒアルロン酸カルシウム、ヒアルロン酸マグネシウム、ヒアルロン酸亜鉛、又はヒアルロン酸コバルトを含んで成る請求項1〜3のいずれか1項記載の生成物。
【請求項5】
前記結合されるか又は架橋されたヒアルロン酸又はその塩が、ポリマー性αヒドロキシ酸のエステル、好ましくはポリ(乳酸)のエステルを含んで成る請求項1〜4のいずれか1項記載の生成物。
【請求項6】
乾燥され、そして本明細書において決定される場合、5%以下の湿分、好ましくは2%以下の湿分、及び最も好ましくは1%以下の湿分を含んで成る請求項1〜5のいずれか1項記載の生成物。
【請求項7】
活性成分をまた含んで成る請求項1〜6のいずれか1項記載の生成物。
【請求項8】
前記活性成分が、薬理学的活性物質である請求項7記載の生成物。
【請求項9】
水溶性賦形剤、好ましくはラクトースをまた含んで成る請求項1〜8のいずれか1項記載の生成物。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項記載の生成物及び活性成分、好ましくは薬理学的活性成分を含んで成る組成物。
【請求項11】
水溶性賦形剤、好ましくはラクトースをまた含んで成る請求項10記載の生成物。
【請求項12】
有効量の請求項1〜9のいずれか1項記載の生成物、及び医薬的に許容できるキャリヤー、賦形剤又は希釈剤を含んで成る医薬組成物。
【請求項13】
ビークルとしての有効量の請求項1〜9のいずれか1項記載の生成物、及び薬理学的活性剤を含んで成る医薬組成物。
【請求項14】
有効量の請求項1〜9のいずれか1項記載の生成物を活性成分として含んで成る化粧製品。
【請求項15】
請求項1〜9のいずれか1項記載の生成物を含んで成る、衛生、医学又は手術製品、好ましくは手術用スポンジ、創傷治癒スポンジ、又はバンドエイド又は他の創傷包帯材料。
【請求項16】
請求項1〜9のいずれか1項記載の生成物を含んで成る、医薬カプセル、又はマイクロカプセル。
【請求項17】
αヒドロキシ酸のポリマー、好ましくはポリ(乳酸)のポリマーにより、部分的に又は完全に結合されるか又は架橋される、ヒアルロン酸又はその塩を含んで成る生成物の生成方法であって、
a)ヒアルロン酸又はその塩と、αヒドロキシ酸のポリマーのモノ−アシル塩化物又はジ−アシル塩化物とを、有機溶媒、好ましくはDMSOにおいて反応せしめる段階を含んで成る方法。
【請求項18】
前記ヒアルロン酸又はその塩が、好ましくはグラム陽性細菌、より好ましくはバシラス属の細菌より、組換え的に生成される請求項17記載の方法。
【請求項19】
前記ヒアルロン酸又はその塩が、300,000〜3,000,000の範囲;好ましくは400,000〜2,500,000の範囲;より好ましくは500,000〜2,000,000の範囲;及び最も好ましくは600,000〜1,800,000の範囲の分子量を有する請求項17又は18記載の方法。
【請求項20】
ヒアルロン酸の無機塩、好ましくはヒアルロン酸ナトリウム、ヒアルロン酸カリウム、ヒアルロン酸アンモニウム、ヒアルロン酸カルシウム、ヒアルロン酸マグネシウム、ヒアルロン酸亜鉛、又はヒアルロン酸コバルトを含んで成る請求項17〜19のいずれか1項記載の方法。
【請求項21】
前記結合されるか又は架橋されたヒアルロン酸又はその塩が、ポリマー性αヒドロキシ酸のエステル、好ましくはポリ(乳酸)のエステルを含んで成る請求項17〜20のいずれか1項記載の方法。
【請求項22】
請求項1〜9のいずれか1項記載の生成物、又は請求項10〜13のいずれか1項記載の組成物の使用を包含する、眼科学的処置を実施するための方法。
【請求項23】
請求項1〜9のいずれか1項記載の生成物、又は請求項10〜13のいずれか1項記載の組成物の使用を包含する、変形性関節炎の処理工程を実施するための方法。
【請求項24】
請求項1〜9のいずれか1項記載の生成物、又は請求項10〜13のいずれか1項記載の組成物の使用を包含する、癌の処理工程を実施するための方法。
【請求項25】
請求項1〜9のいずれか1項記載の生成物、又は請求項10〜13のいずれか1項記載の組成物の使用を包含する、薬理学的活性剤の経皮投与を実施するための方法。
【請求項26】
請求項1〜9のいずれか1項記載の生成物、又は請求項10〜13のいずれか1項記載の組成物の使用を包含する、薬理学的活性剤の皮膚投与を実施するための方法。
【請求項27】
請求項1〜9のいずれか1項記載の生成物、又は請求項10〜13のいずれか1項記載の組成物の使用を包含する、化粧品の皮膚投与を実施するための方法。
【請求項28】
請求項1〜9のいずれか1項記載の生成物、又は請求項10〜13のいずれか1項記載の組成物の眼科学的使用方法。
【請求項29】
有効量の請求項1〜9のいずれか1項記載の生成物、又は請求項10〜13のいずれか1項記載の組成物を哺乳類に、皮膚、経皮、経口又は注射投与することを含んで成る、変形性関節炎の処理方法。
【請求項30】
有効量の請求項1〜9のいずれか1項記載の生成物、又は請求項10〜13のいずれか1項記載の組成物を哺乳類に投与することを含んで成る創傷の処理方法。
【請求項31】
変形性関節炎の処理のための薬剤の製造のための、請求項1〜9のいずれか1項記載の生成物、又は請求項10〜13のいずれか1項記載の組成物の使用。
【請求項32】
眼科学的処理のための薬剤の製造のための、請求項1〜9のいずれか1項記載の生成物、又は請求項10〜13のいずれか1項記載の組成物の使用。
【請求項33】
癌の処理のための薬剤の製造のための、請求項1〜9のいずれか1項記載の生成物、又は請求項10〜13のいずれか1項記載の組成物の使用。
【請求項34】
創傷の処理のための薬剤の製造のための、請求項1〜9のいずれか1項記載の生成物、又は請求項10〜13のいずれか1項記載の組成物の使用。
【請求項35】
脈管形成のための薬剤の製造のための、請求項1〜9のいずれか1項記載の生成物、又は請求項10〜13のいずれか1項記載の組成物の使用。
【請求項36】
モイスチュライザーの製造のための、請求項1〜9のいずれか1項記載の生成物、又は請求項10〜13のいずれか1項記載の組成物の使用。
【請求項1】
αヒドロキシ酸のポリマー、好ましくはポリ(乳酸)のポリマーにより、部分的に又は完全に結合されるか又は架橋される、ヒアルロン酸又はその塩を含んで成る生成物。
【請求項2】
前記ヒアルロン酸又はその塩が、好ましくはグラム陽性細菌、より好ましくはバシラス属の細菌より、組換え的に生成される請求項1記載の生成物。
【請求項3】
前記ヒアルロン酸又はその塩が、300,000〜3,000,000の範囲;好ましくは400,000〜2,500,000の範囲;より好ましくは500,000〜2,000,000の範囲;及び最も好ましくは600,000〜1,800,000の範囲の分子量を有する請求項1又は2記載の生成物。
【請求項4】
ヒアルロン酸の無機塩、好ましくはヒアルロン酸ナトリウム、ヒアルロン酸カリウム、ヒアルロン酸アンモニウム、ヒアルロン酸カルシウム、ヒアルロン酸マグネシウム、ヒアルロン酸亜鉛、又はヒアルロン酸コバルトを含んで成る請求項1〜3のいずれか1項記載の生成物。
【請求項5】
前記結合されるか又は架橋されたヒアルロン酸又はその塩が、ポリマー性αヒドロキシ酸のエステル、好ましくはポリ(乳酸)のエステルを含んで成る請求項1〜4のいずれか1項記載の生成物。
【請求項6】
乾燥され、そして本明細書において決定される場合、5%以下の湿分、好ましくは2%以下の湿分、及び最も好ましくは1%以下の湿分を含んで成る請求項1〜5のいずれか1項記載の生成物。
【請求項7】
活性成分をまた含んで成る請求項1〜6のいずれか1項記載の生成物。
【請求項8】
前記活性成分が、薬理学的活性物質である請求項7記載の生成物。
【請求項9】
水溶性賦形剤、好ましくはラクトースをまた含んで成る請求項1〜8のいずれか1項記載の生成物。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項記載の生成物及び活性成分、好ましくは薬理学的活性成分を含んで成る組成物。
【請求項11】
水溶性賦形剤、好ましくはラクトースをまた含んで成る請求項10記載の生成物。
【請求項12】
有効量の請求項1〜9のいずれか1項記載の生成物、及び医薬的に許容できるキャリヤー、賦形剤又は希釈剤を含んで成る医薬組成物。
【請求項13】
ビークルとしての有効量の請求項1〜9のいずれか1項記載の生成物、及び薬理学的活性剤を含んで成る医薬組成物。
【請求項14】
有効量の請求項1〜9のいずれか1項記載の生成物を活性成分として含んで成る化粧製品。
【請求項15】
請求項1〜9のいずれか1項記載の生成物を含んで成る、衛生、医学又は手術製品、好ましくは手術用スポンジ、創傷治癒スポンジ、又はバンドエイド又は他の創傷包帯材料。
【請求項16】
請求項1〜9のいずれか1項記載の生成物を含んで成る、医薬カプセル、又はマイクロカプセル。
【請求項17】
αヒドロキシ酸のポリマー、好ましくはポリ(乳酸)のポリマーにより、部分的に又は完全に結合されるか又は架橋される、ヒアルロン酸又はその塩を含んで成る生成物の生成方法であって、
a)ヒアルロン酸又はその塩と、αヒドロキシ酸のポリマーのモノ−アシル塩化物又はジ−アシル塩化物とを、有機溶媒、好ましくはDMSOにおいて反応せしめる段階を含んで成る方法。
【請求項18】
前記ヒアルロン酸又はその塩が、好ましくはグラム陽性細菌、より好ましくはバシラス属の細菌より、組換え的に生成される請求項17記載の方法。
【請求項19】
前記ヒアルロン酸又はその塩が、300,000〜3,000,000の範囲;好ましくは400,000〜2,500,000の範囲;より好ましくは500,000〜2,000,000の範囲;及び最も好ましくは600,000〜1,800,000の範囲の分子量を有する請求項17又は18記載の方法。
【請求項20】
ヒアルロン酸の無機塩、好ましくはヒアルロン酸ナトリウム、ヒアルロン酸カリウム、ヒアルロン酸アンモニウム、ヒアルロン酸カルシウム、ヒアルロン酸マグネシウム、ヒアルロン酸亜鉛、又はヒアルロン酸コバルトを含んで成る請求項17〜19のいずれか1項記載の方法。
【請求項21】
前記結合されるか又は架橋されたヒアルロン酸又はその塩が、ポリマー性αヒドロキシ酸のエステル、好ましくはポリ(乳酸)のエステルを含んで成る請求項17〜20のいずれか1項記載の方法。
【請求項22】
請求項1〜9のいずれか1項記載の生成物、又は請求項10〜13のいずれか1項記載の組成物の使用を包含する、眼科学的処置を実施するための方法。
【請求項23】
請求項1〜9のいずれか1項記載の生成物、又は請求項10〜13のいずれか1項記載の組成物の使用を包含する、変形性関節炎の処理工程を実施するための方法。
【請求項24】
請求項1〜9のいずれか1項記載の生成物、又は請求項10〜13のいずれか1項記載の組成物の使用を包含する、癌の処理工程を実施するための方法。
【請求項25】
請求項1〜9のいずれか1項記載の生成物、又は請求項10〜13のいずれか1項記載の組成物の使用を包含する、薬理学的活性剤の経皮投与を実施するための方法。
【請求項26】
請求項1〜9のいずれか1項記載の生成物、又は請求項10〜13のいずれか1項記載の組成物の使用を包含する、薬理学的活性剤の皮膚投与を実施するための方法。
【請求項27】
請求項1〜9のいずれか1項記載の生成物、又は請求項10〜13のいずれか1項記載の組成物の使用を包含する、化粧品の皮膚投与を実施するための方法。
【請求項28】
請求項1〜9のいずれか1項記載の生成物、又は請求項10〜13のいずれか1項記載の組成物の眼科学的使用方法。
【請求項29】
有効量の請求項1〜9のいずれか1項記載の生成物、又は請求項10〜13のいずれか1項記載の組成物を哺乳類に、皮膚、経皮、経口又は注射投与することを含んで成る、変形性関節炎の処理方法。
【請求項30】
有効量の請求項1〜9のいずれか1項記載の生成物、又は請求項10〜13のいずれか1項記載の組成物を哺乳類に投与することを含んで成る創傷の処理方法。
【請求項31】
変形性関節炎の処理のための薬剤の製造のための、請求項1〜9のいずれか1項記載の生成物、又は請求項10〜13のいずれか1項記載の組成物の使用。
【請求項32】
眼科学的処理のための薬剤の製造のための、請求項1〜9のいずれか1項記載の生成物、又は請求項10〜13のいずれか1項記載の組成物の使用。
【請求項33】
癌の処理のための薬剤の製造のための、請求項1〜9のいずれか1項記載の生成物、又は請求項10〜13のいずれか1項記載の組成物の使用。
【請求項34】
創傷の処理のための薬剤の製造のための、請求項1〜9のいずれか1項記載の生成物、又は請求項10〜13のいずれか1項記載の組成物の使用。
【請求項35】
脈管形成のための薬剤の製造のための、請求項1〜9のいずれか1項記載の生成物、又は請求項10〜13のいずれか1項記載の組成物の使用。
【請求項36】
モイスチュライザーの製造のための、請求項1〜9のいずれか1項記載の生成物、又は請求項10〜13のいずれか1項記載の組成物の使用。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公表番号】特表2008−527056(P2008−527056A)
【公表日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−548694(P2007−548694)
【出願日】平成17年12月23日(2005.12.23)
【国際出願番号】PCT/DK2005/000826
【国際公開番号】WO2006/069578
【国際公開日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【出願人】(504235872)ノボザイムス バイオポリマー アクティーゼルスカブ (12)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年12月23日(2005.12.23)
【国際出願番号】PCT/DK2005/000826
【国際公開番号】WO2006/069578
【国際公開日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【出願人】(504235872)ノボザイムス バイオポリマー アクティーゼルスカブ (12)
【Fターム(参考)】
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