説明

α放射性ヒドロキシアパタイト粒子

本発明はα放出放射性核種またはα放出放射性核種のためのin vivoジェネレー
タを含むヒドロキシアパタイト(HA)を提供する。さらに、本発明はこのようなHAの生成のための方法、HAを含む医薬組成物およびHAまたはその組成物を投与することを含む癌疾患または非癌疾患の医学治療の方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は放射性核種をin vivo送達するのに好適な組成物に関する。特に、本発明はα
放射性核種またはα放射性核種のためのジェネレータを含む粒状組成物に関する。本発明の組成物は癌疾患および非癌疾患の両方の治療における使用に適している。
【背景技術】
【0002】
新規な治療方法の導入は、全分野の医薬研究、特に癌研究において重要である。この研究の一つの分野は治療目的のための放射性核種の使用に関する。長年にわたりβ粒子放射体が癌治療における使用について研究され、β粒子放射体で標識されたコロイドが転移性卵巣癌を含む空洞内疾患を治療するのに提案されていた。
【0003】
近年、抗腫瘍剤にα放射体を利用しようとする努力がなされている。α放射体はβ放射体とは区別されるいくつかの特徴(組織中で高エネルギーおよび一層短い飛程)を有する。生理的環境における代表的なα粒子放射体の照射範囲は、通常100マイクロメートル未
満であり、これと等しい直径を有する細胞は僅かしかない。このことよりかかる線源は、放射されたエネルギーが標的の細胞を通り越すことはほとんどなく、それゆえ周囲の健康な組織に与える損傷が最少になるために、微小転移を含む腫瘍の治療に好適となる。これとは対照的に、β粒子は水中で1mm以上の飛程を有する。
【0004】
α粒子の放射線エネルギーは、またβ粒子、γ線およびX線と比べて高く、典型的には5〜8 MeVであり、あるいはβ粒子のそれの5〜10倍、そしてγ線のエネルギーの20倍以上である。こうして、α線照射は極めて短い距離に多量のエネルギーを沈積するために、γ放射線またはβ放射線と比べた場合に、著しく高い線エネルギー転移(LET)を与える。こ
のことがα放射性核種の格別の細胞傷害を説明するとともに、許容できない副作用を回避するために必要な放射性核種分布の制御および研究のレベルにも厳しい要求を課する。
【0005】
α放射体は体内放射性核種治療方法のために粒状物およびコロイドに結合されたまま使用されるべきと示唆されていた(Bloomerら, Int. J. Radiat. Oncol. Biol. Phys. 10 (3) 341-348 (1984); Rotmenschら, Int. J. Radiat. Oncol. Biol. Phys. 34, 609-616 (1996); US 970062, US 5030441, US 5085848;およびVergoteら, Gynecol Oncol. 47(3): 366-372 (1992)およびGynecol Oncol 47(3): 358-65 (1992)を参照のこと)。
【0006】
既に使用されてきたこれらの粒状物およびコロイドキャリヤーの一つの問題は、使用されるキャリヤー材料が生体適合性ではなく、また生分解性ではないことである。結果として、キャリヤーが特に体腔に繰り返して投与された場合には、蓄積し得るであろう。したがって生体適合性ではない材料のこのような蓄積が炎症などを生じ得る。
【0007】
別の問題は、具体的には例えば従来技術のアスタチン-211コロイドおよび鉛-212コロイドについて遊離の放射性核種の漏出である。何とならば、アスタチン-211およびビスマス-212(鉛-212から生成される)はアスタチンについて甲状腺および胃に、そしてビスマスでは腎臓のような正常な組織中に蓄積することが示されていたからである。
【0008】
使用される多くの放射性核種についての第三の問題は、それらが調製し難く、わずか少量でしか利用できないこと、あるいはそれらがそれらを治療製剤中の使用を不適にするほど、短い半減期を有することである。
【0009】
α粒子の著しく高いエネルギーは、そのかなりの質量と組み合わさって、かなりの運動
量が核崩壊とともに放出された粒子に付与されることをもたらす。結果として、等しいが反対方向の運動量が“核反跳”の形態で、残りの“娘”核に付与される。この反跳はほとんどの化学結合を分解し、新たに生成された娘核種をキレート化から追い出すのに充分に強力である。このことは娘核それ自体がα放射性である場合に極めて重大である。何とならばこの娘核は、親核が投与された粒子またはキレート錯体によりもはや閉じ込められないからであろう。結果として、α放射性薬品を投与するための従来方法における重大な問題は、α放射性娘核種の生体分布をコントロールすることであった。このことはα放射体の選択を、α放射性娘核を含まないものに限定し、あるいは健康な組織の暴露を減少せしめるように用量を制限させるかもしれない。
【0010】
娘核の生体分布のコントロールが維持し得る場合、さらなるα放射性娘の系列を有するα放射体で放射性医薬品を製造するのにかなりの利点がある。この方法により、投与中に健康な組織により受け取られる用量が最小にでき、理想的にはいくつかのα崩壊が疾患領域で起こり得る。しかしながら、娘核の運命を制御することが確立し得ない場合には、それらがα放射体である場合に問題となる。なぜならばそれらがその後に健全な組織中に蓄積して、望ましくない副作用を生じ得るからである。
【0011】
α放射性娘核の制御を維持するための一つの方法が、WO 01/60417に提案された。この
方法はα放射体を収容し、核反跳が娘核を溶液中に推進することを防止するためにキレート剤を含むリポソームを使用する。しかしながら、リポソームは必ずしも投与方法にとり理想的ではなく、ある場合には望ましくないクリアランス速度および経路を示すかもしれない。
【0012】
かくしてα放射性核種の安定なラベリングを示し、放射性娘核の他の組織への漏出がたとえあったとしてもわずかでしかない、改良された放射性治療組成物についてのかなりの要望がある。さらに、生体適合性かつ生分解性の成分を有する放射性治療組成物についての要望がある。さらに、放射性核種が調製するのに充分に容易であり、医薬製剤の利用に充分に多量で使用し得る放射性治療組成物についての要望がある。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0013】
今、本発明者らは、驚くことにヒドロキシアパタイト(HA)粒子がα放射性核種で放射能標識され得て、その放射性核種をかなりの期間にわたって安定的に保持することを実証したのである。さらに本発明者らは、α放射体で放射能標識されたHAが、予期せぬほど高い程度に、親核種の崩壊後に娘核種を保持することも実証した。これは高度に予期しない知見であった。何とならばα崩壊により生じた反跳は、通常、化学結合を破断して娘生成物の放出をもたらすからである。
【0014】
それゆえ第一の局面において、本発明はα放出放射性核種またはα放出放射性核種のためのin vivoジェネレータである放射性核種を取り込んでいるヒドロキシアパタイト(HA)
を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明のヒドロキシアパタイトは、放射性核種がHA内に安定的に捕捉されており、生理的条件下で溶液またはその他の組織に有意に漏出しないという意味で安定であることが好ましい。さらに、HAは娘核種もまたHAキャリヤーにより捕捉され、生理的条件下で溶液またはその他の組織に実質的に漏出しないという意味で安定であることが好ましい。
【0016】
本発明のヒドロキシアパタイトおよびそれらから調製された組成物は、娘核についての制御を維持しながら従来技術のβ放射性核種に代えて治療上より強力なα放出放射性核種
を使用するという利点を有する。さらに、崩壊してさらなるα放射の系列を与えるα放射体が好ましく使用されることが望ましいかもしれない。なぜならば本発明のヒドロキシアパタイトはそのような娘核の運命についての制御を与えるからである。キャリヤーとしてのヒドロキシアパタイト粒状物の唯一知られている従来の使用は、Unniら(Nucl Med Biol 29, 199-209 (2002)およびBrodackら(WO 97/01304)による放射線滑膜切除(radiosynovectomy; 即ち、関節炎による痛みの治療)におけるβ線放出放射性核種についてであった。以前、使用されたβ放射体は、すべて用量分布に関係なく安定核種に崩壊した(即ち、崩壊に際して実質的に反跳がなく、娘生成物が非放射性であり、それゆえその分布が何ら重要ではなかった)。
【0017】
本発明のヒドロキシアパタイトおよびそれらから調製された組成物は、癌疾患および非癌疾患の治療における使用に高度に適している。このことは本発明のヒドロキシアパタイトを用いて直接に投与され、あるいはin vivo生成された、治療活性のあるα放射体が特
に高い細胞傷害を与え、β放射体と比べて正常組織の深部領域および周辺領域に損傷を生じにくいからである。これは本発明のHAが、特に局所的な、局部的な、またはターゲッティングされた投与方法において、例えば空洞内の方法、ターゲッティングされた全身の方法、または腫瘍内の方法において使用される場合に当てはまり、α放射線のより短い飛程から生じる。
【0018】
それゆえ第二の局面において、本発明は有効量のα放出放射性核種またはα放射性核種のためのin vivoジェネレータである放射性核種を含むヒドロキシアパタイト(HA)の投与
またはこのようなHAから調製された組成物の投与による、ヒトの患者または動物対象、特に哺乳類(特に治療を要する哺乳類)の治療方法を提供する。
【0019】
さらなる局面において、本発明は本発明のヒドロキシアパタイトとともに少なくとも一種の生理学的に許容されるキャリヤーを含む医薬組成物を提供する。
さらに別の局面において、本発明は治療における使用のためのα放出放射性核種またはα放出放射性核種のためのin vivoジェネレータである放射性核種を含むヒドロキシアパ
タイト(HA)を提供する。さらに他の局面において本発明は、癌疾患または非癌疾患(例えば、本明細書で以下に示される疾患のいずれか)の治療のための薬剤(特に注射可能な、注入可能な、または局所適用可能な薬剤)の製造における、α放出放射性核種またはα放出放射性核種のためのin vivoジェネレータである放射性核種を含むヒドロキシアパタイ
ト(HA)の使用方法を提供する。
【0020】
さらに別の局面において、本発明はα放出放射性核種またはα放出放射性核種のin vivoジェネレータを含むヒドロキシアパタイト(HA)を含む医薬組成物および装置、例えば医
薬製剤で前もって装填されたシリンジに関する。
【0021】
さらに、本発明は
(a) α放出放射性核種またはα放出放射性核種のin vivoジェネレータの溶液を、ヒド
ロキシアパタイト粒状物と接触させる工程、および
(b) 必要により工程(a)で調製された標識粒状物のヒドロキシアパタイト被覆物を結晶
化させ、それにより前記放射性核種または前記in vivoジェネレータを粒状物中に封入す
る工程
を含む、α放出放射性核種またはα放出放射性核種のin vivoジェネレータを含むヒドロ
キシアパタイト(HA)の調製方法に関する。
【0022】
前記方法は
(a) α放出放射性核種またはα放出放射性核種のin vivoジェネレータの溶液を、好ま
しくは約3〜12の範囲のpHで、ヒドロキシアパタイト粒状物に吸収させ、そして
(b) 必要により工程(a)で調製された標識粒状物のヒドロキシアパタイト被覆物を結晶
化させ、それにより前記放射性核種を粒状物中に封入することを含むことが好ましい。
【0023】
ヒドロキシアパタイトという用語は、種々の関連リン酸化化合物、特に式〔Ca10(PO4)6(OH)2〕を有するカルシウムヒドロキシアパタイトを示すために当業界で使用される。カ
ルシウムヒドロキシアパタイトはすべての脊椎動物における健康な骨の基質成分である。それは人工肢、特に“無セメント(cementless)”骨インサートの材料として現在使用されている。ヒドロキシアパタイトについてのさらなる利用は、カラム中の選択的陽イオン交換体としての例である。ヒドロキシアパタイトは生体適合性かつ生分解性の物質であり、それゆえ、それはin vivo適用には特に有益である。これに関連してさらなる利点は、
それが熱処理またはオートクレーブ処理し得ることである。こうして本発明は通常の条件下でオートクレーブ処理に対し安定である製品および組成物もまた提供する。
【0024】
本明細書および特許請求の範囲に使用される、ヒドロキシアパタイト(HA)という用語は、あらゆるヒドロキシアパタイトおよび生体適合性または生分解性であるそのあらゆる誘導体または類似体を示すのに使用される。これらは意図される使用について不利な作用を示さないことが好ましい。
【0025】
例えば、本明細書に使用される、ヒドロキシアパタイトまたはHAという用語はカルシウムヒドロキシアパタイトだけでなく、カルシウムイオン、Ca2+がその他の(好ましくは生体寛容性の)陽イオン、例えば、Sr2+、Ba2+、Bi3+もしくはAc3+、またはこれら陽イオンの一種以上の組み合わせにより置換されているあらゆる化合物を含む。一つの実施態様において、カルシウムヒドロキシアパタイトを含むヒドロキシアパタイトが好ましい。HAは低溶解性を有するその他のミネラル、特に低溶解性Ca塩でさらに共沈(co-sediment)ま
たは共結晶化されてもよい。
【0026】
本発明に使用でき、本明細書中でヒドロキシアパタイトまたはHAと言及されるHAは、その他の置換基または基、例えば、フッ素、ビスホスホネートおよびテトラホスホネートを含むホスホネート(phosphonates)、タンパク質、アミノ酸、ペプチドおよび磁性物質を担持するようにさらに表面修飾されてもよい。
【0027】
表面修飾によって、別の諸性質、例えば、分解に対する一層高い抵抗性が粒状HAに付与され得る。表面修飾の別の使用は、標的となる生物的構造、特に腫瘍関連受容体に対するターゲッティングリガンドとして作用し得る受容体結合分子を含めることである。
【0028】
本明細書に使用されるヒドロキシアパタイトもしくはHAは、複合材料も包含する。例えば、他の材料、例えば、金属、酸化物、タンパク質、アミノ酸、炭水化物、ビスホスホネートを含むホスホネート、有機化合物、例えば、ポリラクチド、ポリエチレンケトン、ガラス-セラミック、チタニア、アルミナ、ジルコニア、シリカ、ポリエチレン、エポキシ
、ポリエチレングリコール、ポリヒドロキシブチレート、ゼラチン、コラーゲン、キトサン、ホスファゼン(phosphazene)、鉄、鉄酸化物および/または磁性鉄と合わされ、ま
たは共沈されたあらゆるヒドロキシアパタイト化合物を含む。このような組み合わせは、最終HA粒状物に付加的な望ましい性質、例えば、磁性(磁性鉄)またはゲル化能力(ゼラチン、コラーゲン、キトサン)を与えるのに有益である。さらに、上記グループのいくつかは、当業者に公知であるように、HAをより親油性にし、これは本発明に使用されるいずれのHA誘導体または類似体について有利な性質であると考えられる。
【0029】
本発明において使用に適しているヒドロキシアパタイトは、あらゆる固体の形態を有することができる。これらのものは本明細書および特許請求の範囲では、一般に“粒状物”と呼び、それらを放射性粒子、例えば、α粒子(ヘリウム原子核)またはβ粒子(電子)
から区別する。該HA粒状物は、例えば、結晶、微小球体またはコロイドであってもよい。粒状物の形状、サイズ、多孔度および密度は意図される使用に適合するように選択されるであろう。
【0030】
HA粒状物のサイズは一般に約10nmから約100μmまでの範囲であってもよいが、コロイ
ドおよびその他の小さい粒状物(1nm程度に微小な粒状物を含む)が使用されてもよい。
一実施態様において、前記粒状物はそれらが沈降しないで懸濁液中にとどまることができるサイズのものであることが好ましい。この文脈における沈降は、“沈降物”が懸濁液の下部ではなく上部に生成する場合の、浮遊を含むと解される。特に、該粒状物はそれらが医薬上寛容される(特に水性の)溶液の如き液体中に懸濁された場合に少なくとも1時間、好ましくは少なくとも6時間、最も好ましくは少なくとも1ヶ月の期間にわたって貯蔵される場合に沈降しないようなサイズのものであることが好ましい。好適な粒状物のサイズは、こうしてルーチンの沈降実験によりあらゆる特別なHA型について容易に測定できるであろう。
【0031】
本発明のHA粒状物について、ある特に好ましい一般のサイズ範囲は1μmから20μmまで、特に1μmから5μmまでであろう。
実質的に一様なサイズ分布を有する粒状物を使用することが好ましい。異なるサイズ範囲も好ましく、意図される使用に応じて選ばれるであろう。
【0032】
小さいサイズの粒状物は立体障害がある領域に良好に分布するかもしれない。同様に、それらは本発明の組成物が静脈内に(例えば、癌治療のため全身的に)、または局所的な送達のために(例えば、肝臓などの癌に冒された器官)投与される場合に利点を有するかもしれない。かくして特に静脈内投与のための、一つの好ましい小さいサイズの範囲は、約1nmから約2μmまでであり、さらに好ましい範囲は約8nmから40nmまでである。
【0033】
一つの実施態様において、極めて小さい粒状物が腫瘍細胞を選択的に標的とするために投与される。特に腫瘍の毛細血管は、(例えば、それらの有窓のために)健全組織中の毛細血管よりも漏出しやすいかもしれない。本発明の著しく小さい“ナノ粒状”HA粒状物(例えば、1〜50nm、好ましくは2〜10nm、さらに好ましくは3〜5nm)は、それゆえ腫瘍内の毛細血管から選択的に漏出し、こうしてそれらに取り込まれた放射性核種を腫瘍部位に有効にターゲッティングし得る。このような粒状物は、またこのターゲッティング作用を増大するようにターゲッティング部分(例えば、抗体または受容体結合分子−上記を参照のこと)に結合されてもよい。
【0034】
一方で、一層大きいサイズの粒状物は、例えば体腔中の投与された部位内に良く保持されるかもしれない。このようなより大きい粒状物の第二の利点は、それらがマクロファージにより容易に呑み込まれたりまたは分解されずに、こうして放射性核種をin vivoで良
く保持すると予想されることである。
【0035】
こうして、特に体腔への投与のための、さらに好ましいサイズ範囲は、約100nm〜100μmであり、さらに好ましい範囲は約500nmから20μmまでである。
本明細書に使用される、粒状物の“サイズ”は、粒状物の最大寸法の平均(モード)サイズを表す。該粒状物は球体、板状体、針状体、ロッドなどを含むあらゆる形状または形状の混合物を有してもよいが、一般に最長寸法が最短寸法の20倍以下、好ましくは5倍以下であろう。粒状物が(特に静脈内または動脈内への)注射または注入のために製剤化される場合、それは一般には粒状物が8μm、好ましくは5μmよりも大きい寸法を有する部分が検出できない粒状体の場合となる。例えば、体腔への、腫瘍内への、皮下または筋肉内への、局所または局部的な感染はこの制限を必要としないかもしれない。
【0036】
多孔度(Porosity)は、意図される使用または粒状物に標識すべき放射性核種と合致するように選ばれるかもしれないHA粒状物の第二の性質である。特に多孔度は粒状物の密度に密接に関係しており、たとえあるとしても極めて遅い沈降を得るために水と同様の密度を与える多孔度を有するHA粒状物を選択することが、適用の中には有利となることもあろう。
【0037】
HAを標識して本発明の組成物を得るのに適したあらゆる放射性核種が本発明に使用されてもよい。これは少なくとも一つのα放射性核を有するか、あるいは(例えば、少なくとも一つのβ崩壊により)生成する同位元素であろう。α放出放射性核種のためのin vivo
ジェネレータという用語は、それ自体が崩壊し、そうする際に放射性の娘核種を与え、こうして放射性崩壊系列を与える“親”放射性核種を意味し、系列中の核の少なくとも一つがα放射により崩壊する。一般に親核種はβ放射により崩壊するであろう。また崩壊系列中の原子核は、治療上有意義な量のα放射が生体内で種々の核が存在している間に生じるような半減期を典型的には有するであろう。
【0038】
本発明の組成物中に製剤化される同位元素がα放射体である場合、それは好ましくは1時間〜1年、さらに好ましくは5時間〜90日の半減期を有するであろう。
好ましい核の一つのグループには、下記のグループのα放射性核が挙げられる:211At
212Bi、223Ra、224Ra、225Ac、227Th、およびこれらのあらゆる組み合わせ。
【0039】
放射性核種の別のグループは、それらの崩壊系列中に少なくとも一つのα放射性娘核を有するβ放射体である。これらには、例えば、211Pb(これはα放射性の211Biの線源として作用する)、213Bi(これはα放射性213Poに崩壊する)、および225Ra(これはβ崩壊
して225Acを与え、続いて四つのα放射および二つのβ放射により崩壊して最後に安定な209Biを生じる)を含む。一つの特に好ましい例は212Pbであり、これはそのα放射性娘212Biを経て崩壊する。
【0040】
本発明の一つの好ましい実施態様において、本発明のHAにおける使用に好適な212Pb/212Biは、
i) 224Raを調製し(例えば、陰イオン交換クロマトグラフィーにより228トリウム源から)、
ii) 該224Raをf-ブロック特異的バインダー(例えば、特にカラムの形態での、アクチニ
ド/ランタニド特異的樹脂)と接触させることにより精製し、
iii)該212Pbの内部増殖(ingrowth)を可能にし(例えば、224Raを6〜24時間静置するこ
とにより)、そして
iv) 得られる212Pbを鉛特異的バインダー(例えば、特にカラムの形態での、Pb特異的樹
脂)との接触により精製すること
を含む方法により調製してもよい。
【0041】
上記方法における精製工程i)、ii)および/またはiv)のいずれかは、特異的バインダーの同一または異なるサンプルを用いて少なくとも1回繰り返されてもよい。好適なf-ブロック元素特異的バインダー(f-block element specific binder)として、メタンビス-ホスホン酸誘導体、例えば、P,P'ジ-オクチルメタンビス-ホスホン酸(例えば、DIPEX(RTM))が挙げられる。好適なPb特異的バインダーとして、クラウンエーテル、特に18-クラウ
ン-6誘導体、具体的にはジ-t-ブチル-シクロヘキサノ-18-クラウン-6(例えば、エイクロムPb特異的樹脂(Eichrom Pb specific resin)を含むPb-B25-Sカートリッジ)が挙げら
れる。放射性核種が使用される場合、シリカの如き非不安定性担体上で特異的バインダーを使用することが好ましいが、樹脂との接触が短い精製については、有機樹脂担体が使用されてもよい。この方法は本明細書で言及される放射性核種を含むHAを生成するためのあらゆる方法と組み合わせてもよい。これらの方法により生成され、また生成できる212Pb
、および212Pbを含むHAは、本発明のさらなる局面を形成する。
【0042】
上記に示された212Pbの調製方法は、簡単かつ容易に実施される操作を与え、そしてま
た従来得られていたよりも大きい放射性核種純度の212Pbを与えるという利点を有する。
本発明の組成物はHA粒状物からの充填放射性核種の損失に対して安定である。組成物は、37℃で少なくとも20分間にわたる溶液中でのインキュベーション後に、充填された放射性核種からの活性の少なくとも80%が溶液中よりもむしろHA粒状物中に検出できる場合には安定と考えられるかもしれない。この比率は好ましくは少なくとも85%、さらに好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは95%以上であるべきである。
【0043】
前記組成物はまた、充填された放射性核種またはその崩壊産物の一つの崩壊(例えば、α崩壊)から生成された娘核種の損失に対しても安定である。これに関して組成物は、好適な期間にわたるインキュベーション後に、その期間中に生成された娘放射性核種に起因する活性が、少なくとも70%がHA粒状物と結合したまま分布する場合に安定と考えられるかもしれない。この比率は好ましくは少なくとも75%、さらに好ましくは少なくとも80%、最も好ましくは少なくとも90%である。
【0044】
放射性核種によるヒドロキシアパタイトのラベリングは、例えば、下記のプロセス工程:
(a) α放出放射性核種の溶液またはα放出放射性核種のin vivoジェネレータの溶液を
、好ましくは約3〜12の範囲のpH、さらに好ましくは5〜10のpHで、ヒドロキシアパタイト粒状物に吸収させ、そして
(b) 必要により工程(a)で調製された標識粒状物のヒドロキシアパタイト被覆物を結晶
化させて前記放射性核種をHA粒状物中に封入することにより実施し得る。
【0045】
その方法はまた、
(c) 工程(a)または工程(b)からのHA粒状物を70〜150℃、好ましくは80〜130℃、さらに好ましくは100〜120℃の温度に加熱する工程を含むことが好ましい。
【0046】
(a)または(b)に従って標識されたHA粒状物は、必要とされる、または望ましい賦形剤および/または添加剤と一緒に、注射可能または注入可能な懸濁液または分散液を調製するために、生体適合性の、または生理学的に許容される液体キャリヤー(好ましくは水性のキャリヤー)に添加し得る。添加剤として、癌の治療および放射線滑膜切除における使用のための生理学上許容される製剤を調製し、安定化するのに適したアジュバントが挙げられる。典型的にはこれらの付加的な成分は、存在させる場合には、任意の工程(c)の前に
添加されるであろう。
【0047】
医薬上寛容されるキャリヤーおよび賦形剤は当業者に公知であり、例えば、塩、糖およびその他の浸透圧調節剤、緩衝剤、酸、塩基およびその他のpH調節剤、粘度改良剤、着色剤などを含んでもよい。
【0048】
あるいは、(a)、続いて任意の工程(b)および/または(c)に従って標識されたHA粒状物
は、あらゆる必要とされる、または望ましい賦形剤および/または添加剤と一緒に、医薬ゲル組成物中に含め得る。好適な添加剤は当業者に公知であり、先に示されたもの、および公知のゲル化剤、例えば、天然および/または合成のポリマーゲルを含んでもよい。ゲル形態の組成物は徐放性を有することが好ましい。
【0049】
α放出放射性核種またはα放出放射性核種のためのin vivoジェネレータでもって標識
されたHA粒状物から出発して調製し得るあらゆる他の好適な医薬製剤(注射または注入のための液体、ゲル、クリーム、ペースト、ドロップ、パッチ、ワイプ、スプレー、含浸さ
れた膜およびシートなどを含む)が、本発明のさらなる実施態様を形成する。
【0050】
本発明に係る組成物のうち、最も好ましい医薬製剤は一般に液体で、生理学的に許容され、注射可能または注入可能な懸濁液または分散液である。そのような医薬組成物を調製するために、本発明の組成物が生理学的に許容される液体キャリヤーに添加される。等張性の食塩水またはリン酸塩緩衝液が特に好ましいが、生理学的に許容され、かつ本発明の化合物と適合し得る、あらゆるその他の液体キャリヤーまたはキャリヤー混合物も使用し得る。多くのこのような液体キャリヤーまたはキャリヤー系がin vivo注射および/また
は注入のための医薬製剤を調製する当業者により知られている。
【0051】
本発明の組成物は、それらおよび/またはそれらからつくられた医薬製剤が、例えば、滅菌目的のために熱処理してもよいという点でさらなる利点を与える。本発明の組成物は、典型的には70℃を超える、好ましくは80℃を超えるまで、さらに好ましくは少なくとも100℃までの熱処理に対して安定であろう。これは濾過により容易に滅菌されない一層大
きい粒状物について特に重要なことである。
【0052】
懸濁液の状態である場合にHA粒状物の凝集を避けるために、当業界で公知であるような、好適な改質剤またはアジュバント、例えば、分散剤が本発明の液体医薬製剤に添加されてもよい。このような改良剤の例は、炭水化物またはタンパク質であってもよい。
【0053】
治療を要する患者に投与されるべき有効な用量はいくつかの因子、例えば、本発明の組成物中に含まれる放射性核種の半減期および崩壊系列;投与経路;患者の医学的な状態および彼/彼女の年齢および体重だけでなく、治療すべき病気に依存するであろう。このような有効用量は、本発明組成物の一つの単一用量としての1回の投与、または1週以上もしくは1ヶ月以上にわたって少なくとも一つの個々の日または毎週少なくとも1日という治療期間について、毎日少なくとも1回の単一用量(典型的には毎日1回、2回または3回)により得られる。そうした治療は、熟練の臨床医により必要もしくは適当とされれば、少なくとも1回は繰り返されてもよい。
【0054】
短い半減期を有する放射性核種が使用される場合、それはより長い半減期を有する放射性核種と比べて、一般に単一投与当りより高い活性用量を生じる。
典型的な用量はそれぞれの単一投与当り10キロBqから10ギガBqまでの範囲にあり、さらに好ましい範囲はそれぞれの単一投与当り1メガBqから1ギガBqまでであろう。
【0055】
本発明の組成物は液体またはゲル化状態で癌疾患および非癌疾患の治療のために医薬組成物、特に製剤または装置において有益である。
先に示されたように、本発明は、種々の局面において癌疾患または非癌疾患の治療のための方法、そのような方法において使用される組成物、ならびにこのような治療方法において使用される薬剤製造のための組成物の使用を提供する。本発明のこうした局面に特に適用可能な疾患として、転移性癌疾患および非転移性癌疾患、例えば、小細胞肺癌および非小細胞肺癌、悪性メラノーマ、卵巣癌、乳癌、骨癌、結腸癌、膀胱癌、子宮頚管癌、肉腫、リンパ腫、白血病および前立腺腫瘍が挙げられる。本発明のこれら局面の適用に特に適用可能である他の疾患として、非癌の、特に増殖性疾患および関節炎を含む疾患(特に骨の疾患)における痛みの軽減のためが挙げられる。
【0056】
こうしてこれらの局面の一態様は、腫瘍の局所的治療の方法に関する。このような治療は、治療有効量の本発明組成物をかかる治療を要する対象(一般にヒト患者)に腫瘍内の注射または注入により適用されることが好ましいかもしれない。このような方法は腫瘍組織の局所的照射を与える。α放出放射性核種はこの実施態様において著しく有効である。なぜならそれらの飛程が短く、周囲の健康な組織への損傷が最小にされるからである。本
発明のこの実施態様から特に利益を受け得る疾患の例は、充実性腫瘍を生じる疾患、例えば、非小細胞肺癌、悪性メラノーマ、卵巣癌、結腸癌、肉腫、および前立腺腫瘍である。
【0057】
本発明のさらなる実施態様は、局所播種性癌(disseminated cancer)、例えば肝臓腫
瘍、あるいは腹腔内もしくは頭蓋内に限局された疾患を治療するための方法に関する。かかる治療は、治療有効量である本発明組成物をこのような治療を要する対象へ、ロコ-リ
ージョナル(loco-regional)注射または注入により適用されることが特に好ましいかも
しれない。
【0058】
本発明のさらに別の実施態様は、このような治療を要する患者、特に冒された領域または器官への前記患者の血液供給、例えば、肝臓腫瘍の場合には肝臓への血液供給に、本発明の放射能標識されたHAを含む液体製剤の治療有効量を投与することによる、肝臓腫瘍のような局所播種性癌治療のための方法である。これは腫瘍への該組成物の輸送を促進するかもしれない。
【0059】
本発明のさらなる実施態様は、本発明の放射能標識されたHAを含む医薬製剤の治療有効量を、このような治療を要する対象へ静脈内の注射もしくは注入、またはその他の全身投与による全身播種性癌治療のための方法に関する。
【0060】
本発明のさらなる実施態様は、空洞内腫瘍(intracavitary tumors)治療のための方法に関するものである。その方法において本発明組成物の形態での放射性核種が、腫瘍で冒された空洞への注射または注入により、このような治療を要する患者に治療有効量で投与され、空洞表面への照射を得るためにそこに保持される。このような空洞として、頭蓋腔、腹腔並びに心膜滲出(pericadial effusion)および中皮腫により生じた空洞が挙げら
れ、投与は癌、例えば、頭蓋内の癌、腹腔内の癌または心膜滲出および中皮腫により生じた空洞内に位置する癌に適している。
【0061】
本発明のさらなる実施態様は組み合わせ療法のための方法に関するものであり、その方法は本発明の活性な放射能標識HAを、このような治療を必要とする対象に対して治療有効量の投与すること、ならびに外科手術、化学療法および放射線療法(特に外部からのビーム照射療法)からなる群より選ばれた一種以上の追加的な治療を含む。
【0062】
組み合わせ療法は本発明の特に好ましい実施態様であり、同時に、逐次にもしくは交互の方式、またはこれらのあらゆる組み合わせで実施されてもよい。かくして組み合わせ治療は、一つのタイプの治療、続いて施される一種以上の他タイプの治療を含んでもよく、それぞれのタイプの治療が1回以上繰り返されてもよい。同時の組み合わせ療法の一例は、同じ時点において本発明組成物の投与と組み合わされた化学療法である(同じ投与の方法または異なる方法による)。このような組み合わせ治療は、例えば腫瘍が外科手術により除去された後に、同時的に治療を開始することにより逐次の療法と組み合わされてもよい。組み合わせ療法は患者の症状に基づき必要に応じて1回以上繰り返されてもよい。
【0063】
交互の組み合わせ療法の例は、本発明の医薬組成物の投与とともに異なる日もしくは週で交互に一つ以上の治療期間の化学療法、あるいは例えば、外科手術、続いて本発明の放射能標識されたHAによる治療の一つ以上の期間であってもよい。
【0064】
本発明の高度に好ましい実施態様は、手術が患者の癌物質を除去するために行なわれた後に、治療に有効な量で本発明の組成物または装置を外科手術中に適用することにより治療する方法に関する。本発明の組成物は、腫瘍床または周囲の組織に適用されてもよい。このような適用は腫瘍床および適用可能な場合には空洞の位置またはその周囲で滅菌効果を得るために実施されてもよい。これは腫瘍破裂が生じる事態(例えば、外科手術中)に
は特に有益であるかもしれない。このような治療はその位置および/その近傍で残存している腫瘍細胞に対する抗腫瘍効果をさらにまた、または別途に奏し得るかも知れない。この実施態様は活性化合物の懸濁液(例えば、スプレーまたはワイプとして製剤化される)を使用することにより達成し得るであろう。あるいはこの治療の方法に関する場合、本発明の組成物がペースト、パッチ、含浸されたシート(特に吸収性のパッチもしくはシート)、クリームまたはゲルであることが好ましく、そして特に放射性治療薬の徐放性を与える製剤(例えば、ゲル)の形態であることが好ましいかも知れない。
【0065】
本発明のさらに別の実施態様は、滑膜除去のための方法、即ち関節および/または骨の痛み、例えば、関節炎から生じる痛みを患っている対象を治療するための方法に関する。
本明細書で使用される“対象(患者)”という用語は、一般にはヒト患者を示すが、非ヒト哺乳類の対象、特にイヌまたはネコの哺乳類対象をまた示し得る。
【0066】
以下の節に、本発明はヒドロキシアパタイト粒状物がα放出放射性核種およびβ放出放射性核種でそれぞれ標識し得る方法を示すために例示される。これらの実施例は本発明の限定と考えられるべきではない。本発明はまた添付図面により説明される。
一般的な材料および方法
使用したヒドロキシアパタイト粒状物は、緩衝化された水性懸濁液のヒドロキシアパタイト、型1(シグマ、セントルイス、MO、USA)またはマクロ-プレプ(Macro-Prep)セラミック ヒドロキシアパタイト 型1、20μm(バイオ・ラド・ラボラトリィズ、ハーキュレス、CA、USA)であった。
【0067】
カウンターおよび検出器:ガンマ線スペクトロスコピーはEG&GオーテクGEM15-Pゲルマ
ニウム検出器で行なった。一般の放射能カウンティングをマルチウェルNaI検出器(パッ
カード・クリスタルII、パッカード・インストルメント社、ダウナーズ・グルーブ、IL、USA)で行なった。
【0068】
粒状物ラベリングおよび精製:反応混合物を1分間にわたってワールミキサー(whirlmixer)(MS1ミニシェーカー、IKA、ドイツ)で強力に混合し、次いで30分間にわたってシェーカー上でインキュベートし、その後に3回遠心分離し(5分間、9000rpm、ミニスピン
遠心分離機、エッペンドルフ、ドイツ)、そして0.1Mクエン酸塩溶液1mlでペレットを2
回洗浄した。
【実施例1】
【0069】
ラジウム-223で標識された粒状物の調製
DIPEX-2カラムに固定された227Ac/227Th源から223Raを1M HClで溶離することによりラ
ジウム-223を調製した。そのHCl溶離液にpHが5よりも上になるまで0.1M クエン酸Naを添加した。2ml容エッペンドルフ管に40mg/mlのヒドロキシアパタイト分散液250μlおよび前記223Ra/クエン酸塩溶液50μlを添加した。そしてラベリングおよび精製を「材料および
方法」の節に記載したように行なった。ペレットに結合した活性は、平行して行なわれた3回反復実験のすべての三つについて、96%を越えていた。
【実施例2】
【0070】
223Ra標識されたHA粒状物のin vitro安定性試験
実施例1に記載された223Ra-HA粒状物を、0.1Mクエン酸ナトリウムまたはウシ血清アルブミン500μlに添加した。その分散液を37℃で一晩インキュベートし、溶液を実施例1に従って遠心分離した。ペレットに結合した活性は20分後に測定したところ、96%を越えていた。2時間後に行なった再測定は、カウント率に有意差を示さず、娘核種の分布が223Raのそれと良く合致することを示していた。
【0071】
セラミックHA粒状物を使用するさらなる実験で、セラミックHA, 10mgに取り込まれた223Ra(1MBq)を、室温で2週間にわたってウシ胎児血清中でインキュベートし、その後に93.2%がペレットに結合されていた。
【実施例3】
【0072】
212Pbおよび212Biで標識されたHA粒状物の調製
228Thおよび224Raを実質的に含まない鉛-212を調製した。
出発物質として蒸発、乾燥された228Thを用いて、8M HNO3 0.5mlを添加し、その溶液を予備平衡化させた陰イオン交換体(AG1-X8)を含むカラムに移した。ラジウム-224および娘核を8M HNO3 3ml中に抽出した。続いて、その224Ra抽出液を蒸発、乾燥させ、1M HCl 0.5mlに溶解して224RaをDIPEXカラム(AC-樹脂、エイクロム社、ダリエン、IL、USA)で精製した。即ち224Raを1M HCl 700マイクロリットル中で溶離することにより、トリウム-228を含まない生成物を得た。
【0073】
翌日(212Pbの内部増殖後)、前記224Ra溶離液を蒸発乾固させ、その後に1M HNO3 0.5mlに溶解し、Pb-特異的樹脂(PB-B25-S、エイクロム)を含むカラムに移した。ラジウム-224を1M HNO3 2mlおよび蒸留H2O 2mlで溶離した。0.1Mシュウ酸アンモニウム溶液650マイ
クロリットルを使用して、鉛-212をPb-樹脂から抽出した。
【0074】
最終の212Pb溶液をヒドロキシアパタイトと直接に化合せしめ、実施例1で223Raについて記載されたように反応させた。
【実施例4】
【0075】
212Pbおよび212Bi標識されたHA粒状物の安定性試験
鉛-212で標識されたHAをウシ胎児血清中で一晩インキュベートし、その後に上記のように遠心分離した。ペレットおよび上澄みに結合した放射能を測定した。93%を越える212Pbおよび212Biの両方がペレットと結合していることがわかった。ペレットに結合した活性フラクションは、セラミック粒状物でわずかに高いようであった。
【実施例5】
【0076】
212Pb標識されたHAの生体分布
212Pb標識されたHA(20μm、セラミック)を上記のように調製し、3回、洗浄と遠心
分離し、pH7.4の等張食塩水溶液中の0.01Mクエン酸ナトリウム/クエン酸に溶解した。21〜25gの体重を有する雌性balbCマウス、7匹にHA1.0mgに結合された0.4 MBq 212Pbを含
む懸濁液0.5mlを腹腔内に投与した。これらの動物を1時間(n=3)および24時間(n=4)の時
点で犠死させ、切開した。
結果:生体分布データ(表1)は、放射活性がi.p.空洞ならびにこの空洞内の器官および組織にほぼ定量的に見出されることを示しており、該空洞からの漏出は、極めて僅かであることを示す。遊離212Biと関係する分布パターン、即ち高い腎臓蓄積は、有意な程度に
検出されなかった。
セラミックヒドロキシアパタイト粒状物に標識された212Pbの腹腔内注射の1時間後およ
び24時間後における組織分布
【0077】
【表1】

【0078】
括弧中の数字:動物を犠死させた約1時間後に測定された組織
太字印刷中の数字:動物を犠死させた1日後、即ち、娘核種が212Pb母核種と平衡である
ようにする時間後に測定された組織。
括弧中の数字が相当する太字の数字より低い場合には、それは犠死時点での組織中の212Bi娘核種vs. 212Pbの減少を示す(その反対は犠死時点の212Bi vs. 212Pbの濃縮を意味す
るであろう)
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】図1は、212Pbを投与して1時間後および24時間後における種々の組織中での212Biの保持を示す。平衡レベルがまた示され、212Biレベルが平衡に近いことを表す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
α放出放射性核種またはα放出放射性核種のためのin vivoジェネレータを含むことを
特徴とするヒドロキシアパタイト(HA)。
【請求項2】
211At、212Bi、223Ra、224Ra、225Ac、227Thのグループから選ばれたα放出放射性核種を含む請求項1記載のヒドロキシアパタイト。
【請求項3】
α放射性娘核を経て崩壊する、β放射性核種を含む請求項1記載のヒドロキシアパタイト。
【請求項4】
前記β放射性核種が212Pb、211Pb、213Biまたは225Raである請求項3記載のヒドロキシアパタイト。
【請求項5】
HAが、2価もしくは3価であるカチオンまたはこのようなカチオン混合物を含む請求項1から4のいずれか1項記載のヒドロキシアパタイト。
【請求項6】
前記カチオンがカルシウム、ストロンチウム、バリウム、ビスマス、イットリウム、ランタン、鉛またはこれらの混合物からなる群より選ばれる請求項5記載のヒドロキシアパタイト。
【請求項7】
前記HAが粒状であり、1nmから100μmまでの範囲のサイズを有する、請求項1から6のいずれか1項記載のヒドロキシアパタイト。
【請求項8】
前記HAが1μmから20μmまでの範囲のサイズを有する請求項7記載のヒドロキシアパタイト。
【請求項9】
前記HAがアミノ酸、ペプチド、タンパク質、抗体、炭水化物、ホスホネート、フッ素、磁性物質、葉酸塩類またはこれらの組み合わせで表面修飾される、請求項1から8のいずれか1項記載のヒドロキシアパタイト。
【請求項10】
前記HAが下記のグループ:金属、酸化物、タンパク質、アミノ酸、炭水化物、ビスホスホネートを含むホスホネートまたは有機化合物から選ばれた物質と結合され、または共沈される、請求項1から9のいずれか1項記載のヒドロキシアパタイト。
【請求項11】
前記HAがポリラクチド、ポリエチレンケトン、ガラス-セラミック、チタニア、アルミ
ナ、ジルコニア、シリカ、ポリエチレン、エポキシ、ポリエチレングリコール、ポリヒドロキシブチレート、ゼラチン、コラーゲン、キトサン、ホスファゼン、鉄、鉄酸化物、磁性鉄またはこれらの混合物から選ばれた物質と結合され、または共沈される、請求項1から9のいずれか1項記載のヒドロキシアパタイト。
【請求項12】
放射性核種標識ヒドロキシアパタイト粒状物の調製方法であって、その方法が
(a) α放出放射性核種またはα放出放射性核種のin vivoジェネレータの溶液をヒドロ
キシアパタイト粒状物と接触させ、そして
(b) 必要により工程(a)で調製された標識粒状物のヒドロキシアパタイト被覆物を結晶
化させ、それにより該放射性核種または該in vivoジェネレータを粒状物中に封入するこ
とを含むことを特徴とする調製方法。
【請求項13】
工程(a)を3〜12の範囲のpHで行なう請求項12記載の方法。
【請求項14】
α放出放射性核種の前記in vivoジェネレータが212Pbであり、前記方法が工程a)およびb)の前に、
i) 224Raを調製し、
ii) f-ブロック特異的バインダーとの接触により224Raを精製し、
iii) 212Pbの内部増殖を可能にし、そして
iv) 得られる212Pbを鉛特異的バインダーとの接触により精製すること
をさらに含む、請求項12または13記載の方法。
【請求項15】
請求項1から11のいずれか1項記載のヒドロキシアパタイトおよび生理学的に許容されるキャリヤーを含むことを特徴とする医薬組成物。
【請求項16】
液体の、注射可能な形態の請求項15記載の医薬組成物。
【請求項17】
ゲル形態の請求項15記載の医薬組成物。
【請求項18】
癌疾患または非癌疾患の治療に使用される医薬製剤の製造における、ヒドロキシアパタイト(HA)ならびにα放出放射性核種またはα放出放射性核種のためのin vivoジェネレー
タである放射性核種の使用。
【請求項19】
前記医薬製剤が注射可能、注入可能または局所適用可能な医薬製剤である請求項18記載の使用。
【請求項20】
前記治療が放射線滑膜切除を含む請求項18または19記載の使用。
【請求項21】
前記治療が腫瘍内療法を含む請求項18または19記載の使用。
【請求項22】
前記治療が癌性の器官に対する血液供給への投与を含む請求項18または19記載の使用。
【請求項23】
α放出放射性核種またはα放出放射性核種のためのin vivoジェネレータを含むヒドロ
キシアパタイトを含むことを特徴とする装置。
【請求項24】
治療を要するヒトまたは非ヒト動物対象の放射化学的治療の方法であって、その方法が前記対象に有効量の請求項1から11のいずれか1項記載のヒドロキシアパタイトまたは請求項15から17のいずれか1項記載の組成物を投与することを特徴とする放射化学的治療の方法。
【請求項25】
空洞内の原発性または転移性腫瘍の治療のための請求項24記載の方法。
【請求項26】
放射線滑膜切除のための請求項24記載の方法。
【請求項27】
腫瘍内療法のための請求項24記載の方法。
【請求項28】
抗癌療法のための請求項24記載の方法。
【請求項29】
前記投与が腫瘍の少なくとも一部の手術除去後に行なわれる、腫瘍床および必要により空洞(空洞内腫瘍の場合)の抗癌治療および/または滅菌のための請求項24記載の方法。

【図1】
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【公表番号】特表2007−528373(P2007−528373A)
【公表日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−553676(P2006−553676)
【出願日】平成17年2月18日(2005.2.18)
【国際出願番号】PCT/GB2005/000616
【国際公開番号】WO2005/079867
【国際公開日】平成17年9月1日(2005.9.1)
【出願人】(506283651)
【Fターム(参考)】