説明

α1−アンタゴニストおよびPDE4阻害剤を含む有効成分の新規な組み合わせ

本発明の対象は、アルフゾシンおよびPDE4阻害剤からなる有効成分の新規な組み合わせ、および良性の前立腺肥大症、泌尿器の障害、膀胱機能障害に関連する障害、良性の前立腺肥大症に伴うまたは伴わない下部尿路症状、尿失禁、良性の前立腺肥大症に伴うまたは伴わない膀胱下尿道閉塞、間質性膀胱炎および過活動膀胱を寛解させるおよび/または治療するために、それらを含む医薬組成物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の対象は、α1−アンタゴニストおよびPDE4阻害剤からなる有効成分の新規な組み合わせ;および良性の前立腺肥大症、泌尿器の障害、膀胱機能障害に関連する障害、良性の前立腺肥大症に伴うまたは伴わない下部尿路症状、尿失禁、良性の前立腺肥大症に伴うまたは伴わない膀胱下尿道閉塞、間質性膀胱炎および過活動膀胱を寛解させるおよび/または治療するために、同時に、別々に、または逐次的に使用するための併用製剤として、それらを含む医薬組成物である。
【背景技術】
【0002】
組み合わせを構成する有効成分は、遊離状態でまたはそれらのある塩の形態で存在する。
【0003】
α1−アンタゴニストは、鏡像異性体またはジアステレオ異性体または混合物、特に、ラセミ混合物、またはその塩、特に、アルフゾシン塩酸塩の形態で、特に、ドキサゾシン、タムスロシン、テラゾシンおよびアルフゾシンから選択することができる。これらは、特に、前立腺の良性の肥大を治療することを目的としている。
【0004】
PDE4阻害剤は、環状グアノシン3’,5’−一リン酸特異的ホスホジエステラーゼ4型である。PDE4阻害剤は、ロリプラム、ドロタベリン、ロフルミラスト、シロミラストおよびピクラミラスト、またはその塩から選択することができる。
【0005】
かなり驚くべきことにまた予想外に、本発明のα1−アンタゴニスト−PDE4阻害剤の組み合わせは、良性の前立腺肥大症、泌尿器の障害、膀胱機能障害に関連する障害、良性の前立腺肥大症に伴うまたは伴わない下部尿路症状、尿失禁、良性の前立腺肥大症に伴うまたは伴わない膀胱下尿道閉塞、間質性膀胱炎および過活動膀胱を寛解させるおよび/または治療することにおいて2つの有効成分の相乗活性を備えることが証明されていた。
【0006】
尿失禁という用語には、混合型尿失禁、切迫性尿失禁、緊張性尿失禁、機能性尿失禁および溢流性尿失禁が含まれる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明による組み合わせは、ヒトを含めた哺乳動物への投与のために医薬組成物中に配合することができ、それが本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、α1−アンタゴニストおよびPDE4阻害剤は、塩の形態で投与することができる。
【0009】
これらの塩には、例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸などの鉱酸との塩;メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、酢酸、プロピオン酸、酒石酸、フマル酸、マレイン酸、リンゴ酸、シュウ酸、コハク酸、クエン酸、安息香酸、マンデル酸、ケイ皮酸、乳酸、グリコール酸、グルクロン酸、アスコルビン酸、ニコチン酸、およびサリチル酸などの有機酸との塩;またはアスパラギン酸、およびグルタミン酸などの酸性アミノ酸との塩が含まれる。薬理学的に許容される塩が好ましい。
【0010】
本発明の別の実施形態によれば、組み合わせの有効成分は、アルフゾシンおよびドロタベリンである。
【0011】
本発明のさらなる実施形態は、有効成分がアルフゾシン塩酸塩およびドロタベリン塩酸塩である組み合わせである。
【0012】
本発明のさらなる実施形態は、有効成分がアルフゾシンおよびドロタベリン塩酸塩である組み合わせである。
【0013】
本発明のさらなる実施形態は、有効成分がアルフゾシン塩酸塩およびドロタベリンである組み合わせである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次の本文中、α1−アンタゴニストおよびPDE4阻害剤の量は、塩化されない遊離の形態のα1−アンタゴニストおよびPDE4阻害剤当量として表される。
【0015】
有利なことに、本発明の組み合わせは、0.6対800、好ましくは1対20のモル比(PDE4阻害剤/アルフゾシン)でα1−アンタゴニストおよびPDE4阻害剤を含む。
【0016】
本発明の医薬品の用量および投与回数は、特に限定されず、これらは適切に患者の体重または年齢などの条件、重症度などに応じて選択することができる。一般に、経口投与のための1日量は、1日1回または分割用量で1日数回または数日に1回投与することができる。
【0017】
本発明の組成物がヒトにおいて非経口または経口経路によって投与されるとき、α1−アンタゴニストの1日量は0.5−25mgであり、PDE4阻害剤の1日量は15−250mgであることが好ましい。
【0018】
本発明の組成物がヒト成人において非経口または経口経路によって投与されるとき、ドロタベリンの1日量は15−250mgで変わり得る。好ましくは、ドロタベリンの1日量は120−240mgで変わり得る。より具体的には、ドロタベリン塩酸塩の用量は、40mgを1日1回から6回、または80mgを1日1回から3回となり得る。
【0019】
本発明の組成物がヒト成人において非経口または経口経路によって投与されるとき、アルフゾシンの1日量は2−15mgで変わり得る。好ましくは、アルフゾシンの1日量は、2−10mgで変わり得る。より具体的には、アルフゾシン塩酸塩の用量は、2.5mgを1日1回から3回、または5mgを1日1回から2回、または10mgを1日1回となり得る。
【0020】
本発明の医薬組成物において、有効成分は、一般に、α1−アンタゴニスト0.1−25mg、より具体的には、α1アンタゴニストであるアルフゾシン塩酸塩が単位剤形当たり2−10mgまたは2.5−10mgおよびPDE4阻害剤15−80mg、より具体的には、例えば、PDE4阻害剤であるドトラベリン塩酸塩単位剤形当たり20−80mgを含む投与単位で配合される。
【0021】
本発明の他の目的は、同時使用のための併用製剤としての、α1−アンタゴニストおよびPDE4阻害剤を有効成分として含む医薬組成物である。
【0022】
本発明のさらなる目的は、別々にまたは逐次的に使用するための併用製剤としての、α1−アンタゴニストおよびPDE4阻害剤を有効成分として含む医薬組成物である。
【0023】
これらの組成物は、経口または非経口経路によって投与されるように好ましくは作製される。
【0024】
経口、舌下、皮下、筋肉内、静脈内、皮内、局所もしくは直腸投与のための本発明の医薬組成物において、有効成分は、従来の医薬用担体と混合した投与用の単位形態で、動物およびヒトに投与することができる。例えば、医薬組成物は、例えば、顆粒剤、細粒剤、散剤、硬カプセル剤、軟カプセル剤、シロップ剤、乳剤、懸濁剤、液剤など経口投与のための医薬組成物の形態で、または舌下、口腔投与のための形態で、または静脈内、筋肉内、もしくは皮下投与用の注射、点滴注入、経皮製剤、経粘膜製剤、点鼻剤、吸入剤、坐剤などの非経口投与用の医薬組成物の形態で配合することができる。注射または点滴注入は、凍結乾燥製剤の形態などで粉状製剤として調製することができ、使用直前に生理的食塩水などの適切な水性媒体に溶解することによって使用することができる。ポリマーでコーティングされたものなどの持続放出製剤は、直接脳内に投与することができる。
【0025】
医薬組成物の製造のために用いる医薬品添加物のタイプ、有効成分に対する医薬品添加物の含量比、および医薬組成物を調製するための方法は、当業者によって適切に選択することができる。無機もしくは有機物または固体もしくは液体物質は、医薬品添加物として用いることができる。一般に、医薬品添加物は、有効成分の重量に基づいて1重量%−90重量%の比で組み入れることができる。
【0026】
固形医薬組成物の調製のために用いる添加剤の例には、例えば、乳糖、スクロース、デンプン、タルク、セルロース、デキストリン、カオリン、炭酸カルシウムなどが含まれる。錠剤の形態の固形組成物が調製されるとき、有効成分は添加剤と混合される。錠剤は、スクロースまたは他の適切な物質でコーティングすることができ、あるいは錠剤は、活性を持続させまたは遅延させ、活性を持続させまたは遅延させ、有効成分の予定された量を連続的に遊離するように処理することができる。
【0027】
ゼラチンカプセル剤の形態の調製は、有効成分を賦形剤と混合し、得られた混合物を軟もしくは硬ゼラチンカプセルに注ぐことによって得られる。経口投与のための液体組成物の調製のために、水または植物油などの従来の不活性賦形剤を用いることができる。液体組成物は、不活性賦形剤の他に、湿潤剤、懸濁補助剤、甘味剤、着香剤、着色剤、および保存剤などの助剤を含むことができる。液体組成物は、ゼラチンなどの吸収性物質で作られたカプセルに充填することができる。例えば、注射剤、坐剤などの非経口投与のための組成物の調製のために用いる溶媒または懸濁媒体の例には、水、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ベンジルアルコール、オレイン酸エチル、レシチンなどが含まれる。坐剤のために用いる基剤の例には、例えば、カカオ脂、乳化したカカオ脂、ラウリン脂質、ウィテプゾールが含まれる。
【0028】
本発明によれば、α1−アンタゴニストおよびPDE4阻害剤は、両剤とも経口経路で、または両剤とも非経口経路で投与することができ、一方は経口経路によって投与することができ(好ましくはアルフゾシン)、もう一方は非経口経路によって投与することができる(好ましくはPDE4阻害剤)ことに留意されたい。
【0029】
本発明の目的の別のものによれば、本発明はまた、良性の前立腺肥大症、泌尿器の障害、膀胱機能障害に関連する障害、良性の前立腺肥大症に伴うまたは伴わない下部尿路症状、尿失禁、良性の前立腺肥大症に伴うまたは伴わない膀胱下尿道閉塞、間質性膀胱炎および過活動膀胱の治療または寛解を目的とした医薬品の調製のための、本発明による組み合わせの使用に関する。
【0030】
本発明のさらなる目的は、上記で示した疾患を治療する/寛解させるための方法であり、これは、患者への本発明による組み合わせの有効量の投与を含む。
【0031】
本発明による有効成分の組み合わせは、薬理学的研究の対象である。
【0032】
例えば、本発明による組み合わせのヒトの排尿筋収縮への効果は、European Urology 51巻(2007年)772−781頁に従って試験することができる。
【0033】
以下の実施例は、本発明の例証である。
【実施例】
【0034】
錠剤の形態の本発明による医薬組成物の投与の単位形態は、以下を含むことができる。
【0035】
アルフゾシン塩酸塩 10mg
ドロタベリン塩酸塩 80mg
ナトリウム性クロスカラメロース 0.6mg
トウモロコシデンプン 1.4mg
ヒドロキシプロピル−メチルセルロース 0.25mg
ステアリン酸マグネシウム 0.35mg
【0036】
錠剤の形態の本発明による医薬組成物の投与の単位形態は、以下を含むことができる。
【0037】
アルフゾシン塩酸塩 5mg
ドロタベリン塩酸塩 40mg
ソディッククロスカラメロース 0.6mg
トウモロコシデンプン 1.4mg
ヒドロキシプロピル−メチルセルロース 0.25mg
ステアリン酸マグネシウム 0.35mg

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有効成分がα1−アンタゴニストおよびPDE4阻害剤であり、両方の有効成分が遊離状態でまたは塩の形態で存在する、有効成分の組み合わせを含む医薬組成物。
【請求項2】
α1−アンタゴニストがドキサゾシン、テラゾシン、タムスロシンおよびアルフゾシン、またはその塩から選択される、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
α1−アンタゴニストがアルフゾシン、またはその塩である、請求項1または2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
PDE4阻害剤がロリプラム、ドロタベリン、ロフルミラスト、シロミラストおよびピクラミラスト、またはその塩から選択される、請求項1から3のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項5】
有効成分がアルフゾシンおよびドロタベリンであり、それぞれが遊離状態でおよび/または塩の形態で存在する、請求項1から4のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項6】
有効成分がアルフゾシン塩酸塩およびドロタベリン塩酸塩である、請求項1から5のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項7】
非経口経路または経口経路によって投与することができる形態の、請求項1から6のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項8】
α1−アンタゴニストおよびPDE4阻害剤が0.6対800のモル比であることを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項9】
良性の前立腺肥大症、泌尿器の障害、膀胱機能障害に関連する障害、良性の前立腺肥大症に伴うまたは伴わない下部尿路症状、尿失禁、良性の前立腺肥大症に伴うまたは伴わない膀胱下尿道閉塞、間質性膀胱炎および過活動膀胱を寛解させるおよび/または治療するための、請求項1から8のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項10】
同時使用のためのα1−アンタゴニストおよびPDE4阻害剤の併用製剤としての、請求項1から9のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項11】
別々にまたは逐次的に使用するためのα1−アンタゴニストおよびPDE4阻害剤の併用製剤としての、請求項1から10のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項12】
良性の前立腺肥大症、泌尿器の障害、膀胱機能障害に関連する障害、良性の前立腺肥大症に伴うまたは伴わない下部尿路症状、尿失禁、良性の前立腺肥大症に伴うまたは伴わない膀胱下尿道閉塞、間質性膀胱炎および過活動膀胱の治療または寛解を目的とした医薬品の調製のための、請求項1から11のいずれか一項に記載の組み合わせの使用。
【請求項13】
治療が非経口および/または経口経路によるアルフゾシン1日0.5−15mgおよびPDE4阻害剤1日15−80mgの投与を含む、請求項12に記載の使用。
【請求項14】
PDE4阻害剤がロリプラム、ドロタベリン、ロフルミラスト、シロミラストおよびピクラミラスト、またはその塩から選択される、請求項13に記載の使用。
【請求項15】
PDE4阻害剤がドロタベリン、またはその塩である、請求項13または14に記載の使用。

【公表番号】特表2012−500252(P2012−500252A)
【公表日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−523464(P2011−523464)
【出願日】平成21年8月17日(2009.8.17)
【国際出願番号】PCT/IB2009/006818
【国際公開番号】WO2010/020882
【国際公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【出願人】(504456798)サノフイ (433)
【Fターム(参考)】