説明

α7ニコチン性モジュレーターとしてのサリチルアミド誘導体

本出願は、式(I)の化合物[式中、Q、Q、R、R、R、及びnは本明細書中に記載されるように定義される]を開示する。また、医薬組成物、対象化合物の使用方法及び製造方法が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、ニコチン性アセチルコリン受容体(nAChR)、及び特にα7nAChRサブタイプに対する正のアロステリックモジュレーター、並びにこのような化合物の製造方法及び使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
ニコチン性アセチルコリン受容体(nAChR)は、リガンド依存性イオンチャネルファミリーのメンバーである。活性化されると、ニコチン性イオンチャネルを通るイオンのコンダクタンスが上昇する。ニコチン性α7受容体(α7nAChR)は、カルシウムカチオンに対して極めて透過性であるホモ五量体チャネルをインビトロで形成する。各α7nAChRは、M1、M2、M3、及びM4として知られている4個の膜貫通ドメインを有する。M2ドメインは、チャネルを裏打ちする壁を形成することが示唆されている。配列アラインメントにより、α7nAChRが進化中に高度に保存されていることが分かる。チャネルを裏打ちするM2ドメインは、ニワトリからヒトまでタンパク質配列が同一である。α7nAChRは、Revah et al. (1991), Nature, 353, 846-849; Galzi et al. (1992), Nature 359, 500-505; Fucile et al. (2000), PNAS 97(7), 3643-3648; Briggs et al. (1999), Eur. J. Pharmacol. 366 (2-3), 301-308;及びGopalakrishnan et al. (1995), Eur. J. Pharmacol. 290(3), 237-246に報告されている。
【0003】
α7nAChRチャネルは、脳の様々な領域で発現されており、中枢神経系(CNS)の多くの重要な生物学的過程(学習、記憶及び注意を包含する)に関与すると考えられている(Levin et al., Psychopharmacology (1998), 138, 217-230)。α7nAChRは、シナプス前終末とシナプス後終末の両方に局在化しており、シナプス伝達の調節に関与することが示唆されている。α7nAChRのアゴニストは、アルツハイマー病及び注意欠陥障害の注意及び認知を改善することが証明されている(Wilens et al., Am. J. Psychiatry (1999), 156(12), 1931-1937)。
【0004】
ニコチンの鎮痛作用は昔から知られている。α7nAChR受容体のアゴニストは、インターロイキン類(IL)、腫瘍壊死因子(TNF)α、及び高移動度グループボックス(HMGB−1)を包含する、炎症促進性サイトカイン類の産生を調節し、そしてCNSでの炎症性シグナル伝達を阻害することが証明されている(de Jonge et al., Br. J. Pharmacol. (2007), 1-15)。α7nAChR受容体は、CNSの痛覚伝達の調節においてある役割を果たし、そしてα7nAChRアゴニストは、急性疼痛モデルにおいて抗侵害受容作用を示している(Damaj et al., Neuropharmacol. (2000) 39, 2785-2791)。
【0005】
アセチルコリン(ACh)は、α7nAChRの内因性アゴニストであるため、AChと同じ部位で作用するアゴニストは、脱感作及び競合的遮断プロセスにより受容体活性を刺激及び場合により遮断することができ(Forman et al., Biophysical J. (1988), 54(1), 149-158))、そして長期の受容体不活化を引き起こしうる(Buisson et al., J. Neurosci. (2001), 21(6), 1819-1829)。脱感作は、アゴニスト適用中にイオンチャネルが活性化されたままの期間を制限する。よって、このようなアゴニストにより提供されるα7nAChR活性の増強はまた、AChとの競合も増大させるであろうし、したがって、薬剤としてのアゴニストの有用性を制限する。
【0006】
ニコチン性α7受容体チャネルの正のアロステリックモジュレーターは、AChや他のニコチン性α7受容体アゴニストの活性を増強する。中枢神経系に充分なAChが存在するときは、正のアロステリックモジュレーターは、α7nAChRを活性化する。よってα7nAChRの正のアロステリックモジュレーターは、CNS、疼痛及び炎症性疾患又は症状の治療に有用であり、認知、学習、気分、感情及び注意のようなCNS機能を制御するのに、そして疼痛や炎症症状に伴う炎症促進性サイトカインの産生を制御するのに有用である。したがってニコチン性α7受容体チャネルの新しい正のアロステリックモジュレーターに対するニーズは存在している。
【0007】
発明の要約
本出願は、式(I):
【0008】
【化1】


[式中、
は、[CHであり;
qは、0、1、又は2であり;
は、[CHであり;
rは、1又は2であり;
は、R1’又はR1”であり;
1’は、場合によりハロゲンで置換されたフェニルであり;
1”は、場合によりアルキニルで置換されたシクロアルキルであり;
は、R2’又はR2”であり;
2’は、場合により低級アルコキシで置換されたフェニルであり;
2”は、シクロアルキルであり;
は、低級アルコキシ又は低級アルキルであり;そして
nは、0、1、又は2である]で示される化合物を提供する。
【0009】
式(I)の1つの実施態様において、Qはメチレンである。
式(I)の1つの実施態様において、RはR1”である。
式(I)の1つの実施態様において、Qはメチレンであり、そしてRはR1”である。
式(I)の1つの実施態様において、R1”はシクロプロピルである。
式(I)の1つの実施態様において、R1”はシクロプロピルであり、そしてQはメチレンである。
式(I)の1つの実施態様において、Qはメチレンである。
式(I)の1つの実施態様において、Rはフェニルである。
式(I)の1つの実施態様において、Rはフェニルであり、そしてQはメチレンである。
式(I)の1つの実施態様において、Rは4−メトキシ−フェニルである。
式(I)の1つの実施態様において、qは0である。
式(I)の1つの実施態様において、Rはシクロペンチルである。
式(I)の1つの実施態様において、qは0であり、そしてRはシクロペンチルである。
式(I)の1つの実施態様において、Qはエチレンである。
式(I)の1つの実施態様において、Rはフェニルである。
式(I)の1つの実施態様において、Rはフェニルであり、そしてQはエチレンである。
式(I)の1つの実施態様において、nは2である。
式(I)の1つの実施態様において、各Rは、独立にメチル又はメトキシである。
式(I)の1つの実施態様において、nは2であり、そして各Rは、独立にメチル又はメトキシである。
式(I)の1つの実施態様において、Qはエチレンである。
式(I)の1つの実施態様において、RはR1’である。
式(I)の1つの実施態様において、Qはエチレンであり、そしてRはR1’である。
式(I)の1つの実施態様において、R1’は2−フルオロ−フェニルである。
式(I)の1つの実施態様において、Qはエチレンであり、そしてR1’は2−フルオロ−フェニルである。
式(I)の1つの実施態様において、Qはメチレンである。
式(I)の1つの実施態様において、RはR2’である。
式(I)の1つの実施態様において、Qはメチレンであり、そしてRはR2’である。
式(I)の1つの実施態様において、RはR2”である。
式(I)の1つの実施態様において、Qはメチレンであり、そしてRはR2”である。
式(I)の1つの実施態様において、nは1である。
式(I)の1つの実施態様において、Rはメトキシである。
式(I)の1つの実施態様において、nは1であり、そしてRはメトキシである。
式(I)の1つの実施態様において、nは2である。
式(I)の1つの実施態様において、各Rは、独立にメチル又はメトキシである。
式(I)の1つの実施態様において、nは2であり、そして各Rは、独立にメチル又はメトキシである。
式(I)の1つの実施態様において、RはR2”であり、nは2であり、そして各Rは、独立にメチル又はメトキシである。
式(I)の1つの実施態様において、Qはメチレンであり、nは2であり、そして各Rは、独立にメチル又はメトキシである。
式(I)の1つの実施態様において、RはR2”であり、Qはメチレンであり、nは2であり、そして各Rは、独立にメチル又はメトキシである。
式(I)の1つの実施態様において、qは0である。
式(I)の1つの実施態様において、RはR1”である。
式(I)の1つの実施態様において、qは0であり、そしてRはR1”である。
式(I)の1つの実施態様において、R1”は1−エチニル−シクロヘキシルである。
式(I)の1つの実施態様において、qは0であり、そしてR1”は1−エチニル−シクロヘキシルである。
式(I)の1つの実施態様において、Qはメチレンである。
式(I)の1つの実施態様において、Rはシクロプロピルである。
式(I)の1つの実施態様において、Qはメチレンであり、そしてRはシクロプロピルである。
式(I)の1つの実施態様において、Rはシクロプロピルであり、nは2であり、そして各Rは、独立にメチル又はメトキシである。
式(I)の1つの実施態様において、Qはメチレンであり、Rはシクロプロピルであり、nは2であり、そして各Rは、独立にメチル又はメトキシである。
【0010】
本出願はまた、
4−ベンジルオキシ−2’−メトキシ−ビフェニル−3−カルボン酸シクロプロピルメチル−アミド;
4−ベンジルオキシ−2’−メトキシ−ビフェニル−3−カルボン酸[2−(2−フルオロ−フェニル)−エチル]−アミド;
4’−メトキシ−2’−メチル−4−フェネチルオキシ−ビフェニル−3−カルボン酸シクロペンチルアミド;
4’−メトキシ−2’−メチル−4−フェネチルオキシ−ビフェニル−3−カルボン酸[2−(2−フルオロ−フェニル)−エチル]−アミド;
4’−メトキシ−4−(4−メトキシ−ベンジルオキシ)−2’−メチル−ビフェニル−3−カルボン酸シクロプロピルメチル−アミド;
4−シクロプロピルメトキシ−4’−メトキシ−2’−メチル−ビフェニル−3−カルボン酸(1−エチニル−シクロヘキシル)−アミド;及び
4−シクロプロピルメトキシ−4’−メトキシ−2’−メチル−ビフェニル−3−カルボン酸[2−(2−フルオロ−フェニル)−エチル]−アミド
よりなる群から選択される、式(I)の化合物を提供する。
【0011】
本出願はまた、必要とする被験体における認知を増強する方法であって、有効量の式(I)の化合物を投与することを含む、方法を提供する。
【0012】
本出願はまた、前記被験体がアルツハイマー病を有する、上記方法を提供する。
【0013】
本出願はまた、式(I)の化合物を、少なくとも1種の薬学的に許容しうる担体、希釈剤、又は賦形剤との混合物として含む医薬組成物を提供する。
【0014】
発明の詳細な説明
本出願は、式(I):
【0015】
【化2】


[式中、
、Q、R、R、R、及びnは、本明細書中と同義である]で示される化合物を提供する。また、医薬組成物、本化合物の使用方法、及び製造方法が提供される。
【0016】
定義
特に断りない限り、本出願(明細書及び特許請求の範囲を包含する)において使用される以下の用語は、後述の定義を有する。本明細書及び添付の特許請求の範囲において使用されるとき、単数形の「a」、「an」、及び「the」は、文脈に特に明記しない限り、複数形も包含することに留意しなければならない。
【0017】
「アゴニスト」とは、別の化合物又は受容体部位の活性を増強する化合物のことをいう。
【0018】
「アルキル」は、専ら炭素及び水素原子からなり、1〜12個の炭素原子を有する、一価の直鎖又は分岐の飽和炭化水素残基を意味する。「低級アルキル」とは、1〜6個の炭素原子のアルキル基、即ち、C−Cアルキルのことをいう。アルキル基の例は、特に限定されないが、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、n−ヘキシル、オクチル、ドデシルなどを包含する。「分岐アルキル」は、イソプロピル、イソブチル、tert−ブチルを意味する。
【0019】
「アルキレン」又は「アルキレニル」は、1〜6個の炭素原子の直鎖の飽和二価炭化水素ラジカル、又は3〜6個の炭素原子の分岐の飽和二価炭化水素ラジカル、例えば、メチレン、エチレン、2,2−ジメチルエチレン、プロピレン、2−メチルプロピレン、ブチレン、ペンチレンなどを意味する。
【0020】
「アルコキシ」は、式:−OR(ここで、Rは、本明細書中と同義のアルキル残基である)の残基を意味する。アルコキシ残基の例は、特に限定されないが、メトキシ、エトキシ、イソプロポキシ、tert−ブトキシなどを包含する。「低級アルコキシ」は、式:−OR(ここで、Rは、本明細書中と同義の低級アルキル残基である)の残基を意味する。低級アルコキシ残基の例は、特に限定されないが、メトキシ、エトキシ、イソプロポキシ、tert−ブトキシなどを包含する。
【0021】
「アルキニル」は、単独又は他の基との組合せで、三重結合及び最大12個、好ましくは最大6個の炭素原子を含む直鎖又は分岐の炭化水素残基、例えば、エチニル又は2−プロピニルなどを表す。
【0022】
「アミノ」は、式:−NRR’(ここで、R及びR’は、それぞれ独立に水素又は本明細書中と同義のアルキルである)の残基である。
【0023】
「アンタゴニスト」とは、別の化合物又は受容体部位の作用を低下させるか又は妨害する化合物のことをいう。
【0024】
「アリール」は、単環式、二環式、三環式芳香環からなる一価の環状芳香族炭化水素残基を意味する。アリール基は、場合により本明細書に定義されるように置換することができる。アリール残基の例は、特に限定されないが、フェニル、ナフチル、フェナントリル、フルオレニル、インデニル、ペンタレニル、アズレニル、オキシジフェニル、ビフェニル、メチレンジフェニル、アミノジフェニル、ジフェニルスルフィジル、ジフェニルスルホニル、ジフェニルイソプロピリデニル、ベンゾジオキサニル、ベンゾフラニル、ベンゾジオキシリル、ベンゾピラニル、ベンゾオキサジニル、ベンゾオキサジノニル、ベゾピペリジニル、ベンゾピペラジニル、ベンゾピロリジニル、ベンゾモルホリニル、メチレンジオキシフェニル、エチレンジオキシフェニルなど(これらの部分水素化誘導体を包含する)を包含し、そしてこれらのそれぞれは、場合により置換されている。好ましいアリールは、場合により置換されたフェニル及び場合により置換されたナフチルを包含する。好ましいアリールは、場合により置換されたフェニルである。
【0025】
互換的に使用することができる「アリールアルキル」及び「アラルキル」は、ラジカル:−R(ここで、Rはアルキレン基であり、そしてRはアリール基(本明細書中と同義)である)を意味し;例えば、ベンジル、フェニルエチル、3−(3−クロロフェニル)−2−メチルフェニルなどのようなフェニルアルキル類は、アリールアルキルの例である。
【0026】
「シクロアルキル」は、単環式又は二環式の環からなる一価の飽和炭素環残基を意味する。シクロアルキルは、場合により1個以上の置換基で置換することができるが、ここで各置換基は、特に明記しない限り、独立にヒドロキシ、アルキル、アルコキシ、ハロ、ハロアルキル、アミノ、モノアルキルアミノ、又はジアルキルアミノである。シクロアルキル残基の例は、特に限定されないが、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチルなど(これらの部分不飽和誘導体を包含する)を包含する。
【0027】
「シクロアルキルアルキル」は、式:−R’−R”(ここで、R’はアルキレンであり、そしてR”はシクロアルキル(本明細書中と同義)である)の残基を意味する。
【0028】
「ヘテロアルキル」は、分岐のC−C−アルキルを包含する、本明細書中と同義のアルキルラジカルであって、1、2、又は3個の水素原子が、−OR、−NR、及び−S(O)(ここで、nは0〜2の整数である)よりなる群から独立に選択される置換基で置換されているラジカルを意味する(このヘテロアルキルラジカルの結合点は炭素原子を介するという了解の下で)が、ここで、Rは、水素、アシル、アルキル、シクロアルキル、又はシクロアルキルアルキルであり;R及びRは、相互に独立に、水素、アシル、アルキル、シクロアルキル、又はシクロアルキルアルキルであり;nが0であるとき、Rは、水素、アルキル、シクロアルキル、又はシクロアルキルアルキルであり、そしてnが、1又は2であるとき、Rは、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アミノ、アシルアミノ、モノアルキルアミノ、又はジアルキルアミノである。代表例は、特に限定されないが、2−ヒドロキシエチル、3−ヒドロキシプロピル、2−ヒドロキシ−1−ヒドロキシメチルエチル、2,3−ジヒドロキシプロピル、1−ヒドロキシメチルエチル、3−ヒドロキシブチル、2,3−ジヒドロキシブチル、2−ヒドロキシ−1−メチルプロピル、2−アミノエチル、3−アミノプロピル、2−メチルスルホニルエチル、アミノスルホニルメチル、アミノスルホニルエチル、アミノスルホニルプロピル、メチルアミノスルホニルメチル、メチルアミノスルホニルエチル、メチルアミノスルホニルプロピルなどを包含する。
【0029】
「ヘテロアリール」は、N、O、又はSから選択される1、2、又は3個の環ヘテロ原子を含有し、残りの環原子がCである、少なくとも1個の芳香環を有する、5〜12個の環原子の単環式、二環式、又は三環式ラジカルを意味する(このヘテロアリールラジカルの結合点は芳香環上にあるという了解の下で)。このヘテロアリール環は、場合により本明細書に定義されるように置換されていてもよい。ヘテロアリール残基の例は、特に限定されないが、イミダゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、オキサジアゾリル、チアジアゾリル、ピラジニル、チエニル、チオフェニル、フラニル、ピラニル、ピリジニル、ピロリル、ピラゾリル、ピリミジニル、キノリニル、イソキノリニル、ベンゾフリル、ベンゾフラニル、ベンゾチオフェニル、ベンゾチオピラニル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾオキサジアゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾチアジアゾリル、ベンゾピラニル、インドリル、イソインドリル、トリアゾリル、トリアジニル、キノキサリニル、プリニル、キナゾリニル、キノリジニル、ナフチリジニル、プテリジニル、カルバゾリル、アゼピニル、ジアゼピニル、アクリジニルなど(これらの部分水素化誘導体を包含する)を包含し、そしてそのそれぞれは場合により置換されていてもよい。好ましいヘテロアリールは、インドリル、ピリジニル、ピリミジニル、チエニル、フラニル、ピロリル、イミダゾリル及びピラゾリルを包含し、そしてそのそれぞれは、場合により置換されていてもよい。
【0030】
互換的に使用することができる「ヘテロアリールアルキル」及び「ヘテロアラルキル」は、−Rラジカル(ここで、Rはアルキレン基であり、そしてRはヘテロアリール基(本明細書中と同義)である)を意味する。
【0031】
互換的に使用することができる「ハロ」及び「ハロゲン」という用語は、置換基のフルオロ、クロロ、ブロモ、又はヨードのことをいう。
【0032】
「ハロアルキル」は、1個以上の水素が同じか又は異なるハロゲンで置換されている、本明細書中と同義のアルキルを意味する。典型的なハロアルキルは、−CHCl、−CHCF、−CHCCl、ペルフルオロアルキル(例えば、−CF)などを包含する。
【0033】
「ヘテロシクリル」又は「ヘテロシクロアルキル」は、1、2、3、又は4個のヘテロ原子(窒素、酸素、又は硫黄から選択される)を含む、1〜3個の環からなる一価の飽和残基を意味する。ヘテロシクリル環は、場合により本明細書に定義されるように置換されていてもよい。ヘテロシクリル残基の例は、特に限定されないが、場合により置換されたピペリジニル、ピペラジニル、ホモピペラジニル、アゼピニル、ピロリジニル、ピラゾリジニル、イミダゾリニル、イミダゾリジニル、ピリジニル、ピリダジニル、ピリミジニル、オキサゾリジニル、イソオキサゾリジニル、モルホリニル、チアゾリジニル、イソチアゾリジニル、キヌクリジニル、キノリニル、イソキノリニル、ベンゾイミダゾリル、チアジアゾリリジニル(thiadiazolylidinyl)、ベンゾチアゾリジニル、ベンゾアゾリリジニル(benzoazolylidinyl)、ジヒドロフリル、テトラヒドロフリル、ジヒドロピラニル、テトラヒドロピラニル、チアモルホリニル、チアモルホリニルスルホキシド、チアモルホリニルスルホン、ジヒドロキノリニル、ジヒドロイソキノリニル、テトラヒドロキノリニル、テトラヒドロイソキノリニルなどを包含する。
【0034】
「場合により置換された」は、「アリール」、「フェニル」、「ヘテロアリール」(インドリル、例えば、インドール−1−イル、インドール−2−イル及びインドール−3−イル、2,3−ジヒドロインドリル、例えば、2,3−ジヒドロインドール−1−イル、2,3−ジヒドロインドール−2−イル及び2,3−ジヒドロインドール−3−イル、インダゾリル、例えば、インダゾール−1−イル、インダゾール−2−イル及びインダゾール−3−イル、ベンゾイミダゾリル、例えば、ベンゾイミダゾール−1−イル及びベンゾイミダゾール−2−イル、ベンゾフラニル、例えば、ベンゾフラン−2−イル及びベンゾフラン−3−イル、ベンゾチオフェニル、例えば、ベンゾチオフェン−2−イル及びベンゾチオフェン−3−イル、ベンゾオキサゾール−2−イル、ベンゾチアゾール−2−イル、チエニル、フラニル、ピリジニル、ピリミジニル、ピリダジニル、ピラジニル、オキサゾリル、チアゾリル、イソオキサゾリル、イソチアゾリル、イミダゾリル、ピラゾリル及びキノリニルを包含する)又は「ヘテロシクリル」と共に使用されるとき、アルキル、シクロアルキル、アルコキシ、ハロ、ハロアルキル、ハロアルコキシ、シアノ、ニトロ、ヘテロアルキル、アミノ、モノ−アルキルアミノ、ジ−アルキルアミノ、ヒドロキシアルキル、アルコキシアルキル、アルキルスルホニル、アルキルスルホンアミド、ベンジルオキシ、シクロアルキルアルキル、シクロアルコキシ、シクロアルキルアルコキシ、アルキルスルホニルオキシ、場合により置換されたチエニル、場合により置換されたピラゾリル、場合により置換されたピリジニル、モルホリノカルボニル、−(CH−S(O);−(CH−NR;−(CH−C(=O)−NR;−(CH−C(=O)−C(=O)−NR;−(CH−SO−NR;−(CH−N(R)−C(=O)−R;−(CH−C(=O)−R;又は−(CH−N(R)−SO−R[ここで、qは、0又は1であり、rは、0〜2であり、R、R、及びRは、それぞれ独立に、水素又はアルキルであり、そして各Rは、独立に水素、アルキル、ヒドロキシ、又はアルコキシである]から選択される1〜4個の置換基、好ましくは1又は2個の置換基で場合により置換されたアリール、フェニル、ヘテロアリール又はヘテロシクリルを意味する。「アリール」、「フェニル」、「ヘテロアリール」又は「ヘテロシクリル」の幾つかの好ましいオプションの置換基は、アルキル、ハロ、ハロアルキル、アルコキシ、シアノ、アミノ、アミノスルホニル、及びアルキルスルホニルを包含する。更に好ましい置換基は、メチル、フルオロ、クロロ、トリフルオロメチル、メトキシ、アミノ、アミノスルホニル及びメタンスルホニルである。
【0035】
「脱離基」は、有機合成化学で通常それに関連付けられる意味を持つ基(即ち、置換反応条件下で置き換えることのできる原子又は基)を意味する。脱離基の例は、特に限定されないが、ハロゲン、アルカン−又はアリーレンスルホニルオキシ(メタンスルホニルオキシ、エタンスルホニルオキシ、チオメチル、ベンゼンスルホニルオキシ、トシルオキシ、及びチエニルオキシなど)、ジハロホスフィノイルオキシ、場合により置換されたベンジルオキシ、イソプロピルオキシ、アシルオキシなどを包含する。
【0036】
「モジュレーター」は、標的と相互作用する分子を意味する。この相互作用は、特に限定されないが、本明細書に定義される、アゴニスト、アンタゴニストなどを包含する。
【0037】
「オプションの」又は「場合により」は、続いて記載される事象又は状況が必ずしも起こらないこと、並びにその記述が、その事象又は状況が起こる場合と起こらない場合を包含することを意味する。
【0038】
「疾患」及び「病状」は、任意の疾患、症状、症候、障害又は適応症を意味する。
【0039】
「不活性有機溶媒」又は「不活性溶媒」は、この溶媒が、これらと共に記載される反応の条件下で不活性であることを意味し、例えば、ベンゼン、トルエン、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、N,N−ジメチルホルムアミド、クロロホルム、塩化メチレン又はジクロロメタン、ジクロロエタン、ジエチルエーテル、酢酸エチル、アセトン、メチルエチルケトン、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、tert−ブタノール、ジオキサン、ピリジンなどを包含する。特に断りない限り、本発明の反応に使用される溶媒は、不活性溶媒である。
【0040】
「薬学的に許容しうる」は、一般に安全で非毒性であり、かつ生物学的にも他の意味でも不適切でない医薬組成物を製造するのに有用であることを意味し、そして獣医学的使用並びにヒトでの薬学的使用に許容しうるものを包含する。
【0041】
化合物の「薬学的に許容しうる塩」は、本明細書に定義されるように、薬学的に許容しうる塩であって、親化合物の所望の薬理活性を有する塩を意味する。そのような塩には以下がある:塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸などのような無機酸と形成される酸付加塩;又は酢酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、カンフルスルホン酸、クエン酸、エタンスルホン酸、フマル酸、グルコヘプトン酸、グルコン酸、グルタミン酸、グリコール酸、ヒドロキシナフトエ酸、2−ヒドロキシエタンスルホン酸、乳酸、マレイン酸、リンゴ酸、マロン酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、ムコン酸、2−ナフタレンスルホン酸、プロピオン酸、サリチル酸、コハク酸、酒石酸、p−トルエンスルホン酸、トリメチル酢酸などのような有機酸と形成される酸付加塩;あるいは親化合物中に存在する酸性プロトンが、金属イオン、例えば、アルカリ金属イオン、アルカリ土類イオン、若しくはアルミニウムイオンにより置換されるとき;又は有機若しくは無機塩基と配位するときのいずれかに形成される塩。許容しうる有機塩基は、ジエタノールアミン、エタノールアミン、N−メチルグルカミン、トリエタノールアミン、トロメタミンなどを包含する。許容しうる無機塩基は、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム及び水酸化ナトリウムを包含する。好ましい薬学的に許容しうる塩は、酢酸、塩酸、硫酸、メタンスルホン酸、マレイン酸、リン酸、酒石酸、クエン酸、ナトリウム、カリウム、カルシウム、亜鉛、及びマグネシウムから形成される塩である。薬学的に許容しうる塩への全ての言及は、本明細書に定義されるように、同じ酸付加塩の溶媒付加形(溶媒和物)又は結晶形(多形)を包含することは理解されるべきである。
【0042】
「保護基(protective group)」又は「保護する基(protecting group)」は、合成化学で通常それに関連付けられている意味において、別の保護されていない反応性部位で化学反応を選択的に行うことができるように、多官能化合物中の1個の反応部位を選択的にブロックする基を意味する。本発明のあるプロセスは、反応物中に存在する反応性窒素原子及び/又は酸素原子をブロックするために保護基に頼っている。例えば、「アミノ保護基」及び「窒素保護基」という用語は、本明細書において互換的に使用され、そして合成法における不適切な反応に対して窒素原子を保護することを目的とする有機基のことをいう。窒素保護基の例は、特に限定されないが、トリフルオロアセチル、アセトアミド、ベンジル(Bn)、ベンジルオキシカルボニル(カルボベンジルオキシ、CBZ)、p−メトキシベンジルオキシカルボニル、p−ニトロベンジルオキシカルボニル、tert−ブトキシカルボニル(BOC)などを包含する。当業者であれば、脱離が容易で、続く反応に耐えられる基の選択方法を知っているであろう。
【0043】
「溶媒和物」は、化学量論量又は非化学量論量のいずれかの溶媒を含有する溶媒付加形を意味する。一部の化合物は、固体結晶状態で一定のモル比の溶媒分子を捕捉する傾向を有するため、溶媒和物を形成する。溶媒が水ならば、形成される溶媒和物は水和物であり、溶媒がアルコールであるとき、形成される溶媒和物はアルコラートである。水和物は、1個以上の水分子と1個の物質との組合せ(ここで、水はHOとしてその分子状態を保持する)により形成されるが、このような組合せは1種以上の水和物を形成することができる。
【0044】
「被験体」は、哺乳動物及び非哺乳動物を意味する。哺乳動物は、哺乳動物綱の任意のメンバーであり、特に限定されないが、ヒト;非ヒト霊長類、例えば、チンパンジー及び他の類人猿並びにサル種;農場動物、例えば、ウシ、ウマ、ヒツジ、ヤギ、及びブタ;家畜動物、例えば、ウサギ、イヌ、及びネコ;実験動物(ラット、マウス、及びモルモットのような齧歯類を包含する)などを包含する。非哺乳動物の例は、特に限定されないが、鳥類などを包含する。「被験体」という用語は、特定の年齢又は性を意味するものではない。
【0045】
本明細書において使用されるとき、「疼痛」及び疼痛症状(状態)は、多種多様な原因のいずれかが関連する疼痛[特に限定されないが、炎症性疼痛、術後疼痛、内臓痛、歯痛、月経前疼痛、中心性疼痛、火傷による疼痛、片頭痛又は群発頭痛、神経損傷、神経炎、神経痛、中毒、虚血性傷害、間質性膀胱炎、癌疼痛、ウイルス感染、寄生虫感染又は細菌感染、外傷後損傷(骨折及びスポーツ傷害を包含する)、及び機能的腸疾患(過敏性腸症候群など)に伴う疼痛を包含する]を意味する。
【0046】
「炎症」は、細胞学的反応、化学反応又は他の原因により生じる組織の傷害又は破壊を特徴とする任意の病理過程を意味する。炎症は、疼痛、発熱、発赤、腫脹、及び機能喪失の兆候により現れる。炎症適応症は、特に限定されないが、細菌感染、真菌感染又はウイルス感染、慢性関節リウマチ、変形性関節症、手術、膀胱感染又は特発性膀胱炎、過度の使用、高齢、又は栄養不足、前立腺炎及び結膜炎を包含する。
【0047】
「認知」は、知識を獲得及び保持することに関連する任意の精神過程を意味する。「認知障害」は、思考、推理、判断及び記憶に関連する精神過程に対する任意の撹乱を意味する。認知障害は、パーキンソン病、ハンチントン病、不安、鬱病、躁鬱病、精神病、てんかん、強迫性障害、気分障害、片頭痛、アルツハイマー病、睡眠障害、摂食障害(食欲不振、大食症、及び肥満など)、パニック発作、静座不能、注意欠陥多動障害(ADHD)、注意欠陥障害(ADD)、薬物乱用(コカイン、エタノール、ニコチン及びベンゾジアゼピン類など)からの離脱、統合失調症、更には脊椎外傷及び/又は頭部損傷(水頭症など)に関連する障害に起因するか、さもなければ関連している。
【0048】
「治療有効量」は、病状を治療するために被験体に投与される時、そのような病状の治療を行うのに充分である化合物の量を意味する。「治療有効量」は、その化合物、治療される病状、治療される疾患の重篤度、被験体の年齢及び相対的健康度、投与の経路及び方法、担当医師又は獣医師の判断、並びに他の要因に応じて変化するであろう。
【0049】
ある可変物について言及するとき、「上記に定義されるもの」及び「本明細書に定義されるもの」という用語は、その可変物の広い定義、更にはもしあれば、好ましい、更に好ましい、及び最も好ましい定義を参照により取り込む。
【0050】
病状を「治療すること」又はその「治療」は以下:
(i)病状を予防すること、即ち、その病状に曝露されているか又は罹りやすい素因を有するかもしれないが、その病状にまだ罹患していないか又は病状の症状を示していない被験体において、その病状の臨床症状が現れないようにすること、
(ii)病状を抑制すること、即ち、病状又は臨床症状の発現を止めること、あるいは
(iii)病状を緩和すること、即ち、病状又はその臨床症状の一時的又は永続的退縮を引き起こすこと
を包含する。
【0051】
化学反応について言及するとき、「処理すること」、「接触させること」、及び「反応させること」という用語は、指示の及び/又は目的の生成物を製造するために、適切な条件下で2種以上の試薬を足し合わせること又は混合することを意味する。当然のことながら、指示の及び/又は目的の生成物を製造する反応は、必ずしも最初に加えた2種の試薬の組合せから直接生じるものでなくともよい、即ち、混合物として製造される1種以上の中間体が存在してもよく、そしてこれが最終的に指示の及び/又は目的の生成物の生成に至る。
【0052】
命名法及び構造
一般に、本出願に使用される命名法は、IUPAC系統的命名法の生成のためのBeilstein Instituteのコンピュータ化システムであるAUTONOM(登録商標)v.4.0に基づく。本明細書に示す化学構造は、ISIS(登録商標)バージョン2.2を使用して作成した。本明細書の構造中の炭素原子、酸素原子、硫黄原子又は窒素原子上に出現する空結合価は、水素原子の存在を示す。
【0053】
化学構造中にキラル炭素が存在する場合は常に、そのキラル炭素に関連する全ての立体異性体が、その構造に包含されるものとする。
【0054】
本明細書に特定される全ての特許及び刊行物は、その全体を参照により本明細書に組み込まれる。
【0055】
本発明の方法による代表的化合物を表1に示す。
【0056】
【表1】



【0057】
合成法
本発明の化合物は、以下に示され説明される合成反応スキームの例に描かれている種々の方法により製造することができる。
【0058】
これらの化合物を調製するのに使用される出発物質及び試薬は、一般に供給業者(Aldrich Chemical Co.など)から入手できるか、又はFieser and Fieser's Reagents for Organic Synthesis; Wiley & Sons: New York, 1991, Volumes 1-15; Rodd's Chemistry of Carbon Compounds, Elsevier Science Publishers, 1989, Volumes 1-5 and Supplementals;及びOrganic Reactions, Wiley & Sons: New York, 1991, Volumes 1-40のような文献に記載される方法にしたがって当業者には既知の方法により調製されるかのいずれかである。以下の合成反応スキームは、単に本発明の化合物を合成できる幾つかの方法を例示するだけであり、本出願に含まれる開示を参照した当業者は、これらの合成反応スキームに種々の修飾を加えることができ、かつこのような修飾が示唆されるであろう。
【0059】
合成反応スキームの出発物質及び中間体は、所望であれば常法(特に限定されないが、濾過、蒸留、結晶化、クロマトグラフィーなどを包含する)を用いて、単離及び精製することができる。このような物質は、物理定数及びスペクトルデータを包含する通常の手段を使用して性状解析することができる。
【0060】
特に断りない限り、本明細書に記載の反応は、好ましくは不活性雰囲気下で大気圧下で、約−78℃〜約150℃、更に好ましくは約0℃〜約125℃の反応温度範囲で、そして最も好ましくかつ便利には大体室温(又は周囲温度)、例えば、約20℃で行われる。
【0061】
有用性
本発明の化合物は、ニコチン性α7(α7nAChR)受容体に関連する疾患又は症状[精神病、神経変性疾患、及び認知障害(コリン作動系の機能不全を伴う)を包含する]の治療、並びに記憶及び/又は認知障害の症状[例えば、統合失調症、不安、躁病、鬱病、躁鬱病、トゥーレット症候群、パーキンソン病、ハンチントン病、認知障害(アルツハイマー病、レビー小体認知症、筋萎縮性側索硬化症、記憶障害、記憶喪失、認知欠損、注意欠陥、注意欠陥多動障害など)]の治療、更には他の用途[ニコチン嗜癖の治療、禁煙の誘導、疼痛の治療(即ち、鎮痛剤用途)、神経保護の提供、及び時差ボケの治療など]に有効である。本発明の化合物は、アルツハイマー病の患者、及び統合失調症、不安、躁病、鬱病、躁鬱病、トゥーレット症候群、パーキンソン病、ハンチントン病、レビー小体認知症、筋萎縮性側索硬化症、記憶障害、記憶喪失、認知欠損、注意欠陥又は注意欠陥多動障害に伴う認知障害又は認知疾患を有する患者の認知力を増強するのに有用である。
【0062】
即ち、本発明は、精神病、コリン作動系の機能不全を伴う神経変性疾患、並びに記憶及び/又は認知障害の症状[例えば、統合失調症、不安、躁病、鬱病、躁鬱病[精神病の例]、トゥーレット症候群、パーキンソン病、ハンチントン病[神経変性疾患の例]、及び/又は認知障害(アルツハイマー病、レビー小体認知症、筋萎縮性側索硬化症、記憶障害、記憶喪失、認知欠損、注意欠陥、注意欠陥多動障害など)を包含する]を患う患者又は被験体、特に哺乳動物、そして特にヒトを治療する方法であって、その患者に有効量の本発明の化合物を投与することを含む方法を提供する。
【0063】
神経変性疾患は、特に限定されないが、アルツハイマー病、ピック病、びまん性レビー小体病、進行性核上性麻痺(スティール・リチャードソン症候群)、多系統変性症(シャイ・ドレーガー症候群)、運動ニューロン疾患(筋萎縮性側索硬化症を包含する)、退行性運動失調、大脳皮質基底核変性症、グアム島のALS−パーキンソン病−認知症複合疾患、亜急性硬化性全脳炎、ハンチントン病、パーキンソン病、シヌクレイン病、原発性進行性失語症、線条体黒質変性症、マシャド・ジョセフ病/脊髄小脳失調症3型、オリーブ橋小脳変性症、ジル・ド・ラ・トゥーレット病、球麻痺、仮性球麻痺、脊髄性筋萎縮症、球脊髄性筋萎縮症(ケネディ病)、原発性側索硬化症、家族性痙性対麻痺、ウェルドニッヒ・ホフマン病、クーゲルベルグ・ヴェランダー病、テイ・サックス病、サンドホフ病、家族性痙性疾患、ヴォールファルト・クーゲルベルグ・ヴェランダー病、けいれん性の不全対麻痺、進行性多巣性白質脳症、プリオン病(クロイツフェルト・ヤコブ病、ゲルストマン・ストロイスラー・シャインカー病、クールー及び致死性家族性不眠症など)、並びに以下に起因する神経変性疾患[塞栓及び血栓性閉塞を包含する脳虚血又は梗塞、更には任意の型の頭蓋内出血(特に限定されないが、硬膜外、硬膜下、くも膜下及び脳内を包含する)、並びに頭蓋内及び脊椎内病変(特に限定されないが、挫傷、貫通、せん断、圧迫及び裂傷を包含する)]を包含する。
【0064】
更に、本発明の化合物は、加齢による認知症、並びに記憶喪失(加齢による記憶喪失を包含する)を伴う他の認知症及び症状、老衰、血管性認知症、びまん性白質疾患(ビンスワンガー病)、内分泌又は代謝起源の認知症、頭部外傷及びびまん性脳損傷の認知症、拳闘家認知症並びに前頭葉認知症を治療するのに使用することができる。よって本発明は、加齢による認知症、並びに記憶喪失を伴う他の認知症及び症状を治療する方法、更にはアルツハイマー病患者の認知記憶を増強する方法であって、その患者に有効量の本発明の化合物を投与することを含む方法を提供する。
【0065】
本発明は、例えば、アルツハイマー病、加齢による軽度認知機能障害、統合失調症、パーキンソン病、ハンチントン病、ピック病、クロイツフェルト・ヤコブ病、鬱病、加齢、頭部外傷、脳卒中、CNS低酸素症、脳の老化、多発梗塞性認知症及び他の神経症状、更にはHIV及び心血管疾患に起因する記憶障害に罹っている被験体を処置する方法であって、その患者に有効量の本発明の化合物を投与することを含む方法を提供する。
【0066】
アミロイド前駆体タンパク質(APP)及びそこから誘導されるAβペプチド(例えば、Aβ1−40、Aβ1−42、及び他の断片)は、アルツハイマー病の病理に関与することが知られている。Aβ1−42ペプチドは、神経毒性に関与するだけでなく、コリン作動性伝達物質機能を阻害することも知られている。更に、Aβペプチドがα7nACh受容体に結合することが突き止められている。よってAβペプチドのα7nAChRへの結合を遮断する物質は、神経変性疾患を治療するのに有用である。また、α7nACh受容体の刺激は、Aβペプチドに伴う細胞毒性に対してニューロンを保護することができる。よって本発明は、アルツハイマー病患者の認知症を治療及び/又は予防する方法であって、アミロイドβペプチド(好ましくは、Aβ1−42)とnACh受容体、好ましくはα7nACh受容体、最も好ましくはヒトα7nACh受容体との結合を阻害するために、治療有効量の式(I)の化合物を被験体に投与することを含む方法(更には、特に限定されないが、認知欠損及び言語障害、失行症、鬱病、妄想並びに他の神経精神症状及び兆候、並びに運動及び歩行異常を包含する、アルツハイマー病の他の臨床症状を治療及び/又は予防する方法)を提供する。
【0067】
本発明はまた、他のアミロイドーシス疾患、例えば、遺伝性脳血管症、非神経障害性遺伝性アミロイドーシス、ダウン症候群、マクログロブリン血症、続発性家族性地中海熱、マックル・ウェルズ症候群、多発性骨髄腫、膵臓及び心臓関連アミロイドーシス、慢性血液透析関節症、並びにフィンランド型及びアイオワ型アミロイドーシスを治療する方法を提供する。
【0068】
ニコチン性受容体は、アルコール摂取に対する体の応答においてある役割を果たすことに関係があるとされており、そして本発明の化合物は、アルコール離脱の治療及び抗中毒治療において有用である。
【0069】
α7nACh受容体サブタイプのアゴニストはまた、脳卒中及び虚血に伴う損傷、並びにグルタミン酸誘導興奮毒性に対する神経保護のために使用することができ、よって本発明は、脳卒中及び虚血に伴う損傷、並びにグルタミン酸誘導興奮毒性に対する神経保護を提供するための患者の処置方法であって、有効量の本発明の化合物をその患者に投与することを含む方法を提供する。
【0070】
α7nACh受容体サブタイプのアゴニストはまた、ニコチン嗜癖の治療、禁煙の誘導、疼痛の治療、並びに時差ボケ、肥満、糖尿病、及び炎症の治療に使用することができ、よって本発明は、ニコチン嗜癖、疼痛、時差ボケ、肥満、糖尿病、及び/又は炎症に罹っている患者を処置する方法、あるいは患者の禁煙を誘導する方法であって、有効量の本発明の化合物をその患者に投与することを含む方法を提供する。
【0071】
炎症反射は、炎症シグナルに対する自律神経系の反応である。炎症刺激を感知すると、自律神経系は、アセチルコリンを放出し、マクロファージ上のニコチン性α7受容体を活性化することにより、迷走神経を介して反応する。次にこれらのマクロファージはサイトカインを放出する。この経路の機能不全は、ヒトの炎症性疾患(慢性関節リウマチ、糖尿病及び敗血症を包含する)に関係付けられている。マクロファージはニコチン性α7受容体を発現するが、この受容体は、恐らくコリン作動性抗炎症反応を仲介する。したがって、本発明の化合物は、炎症性疾患又は障害(特に限定されないが、慢性関節リウマチ、糖尿病又は敗血症など)に罹っている患者(例えば、ヒトのような哺乳動物)を処置するのに有用である。
【0072】
本発明の化合物は、多種多様な原因による疼痛[特に限定されないが、炎症性疼痛、術後疼痛、内臓痛、歯痛、月経前疼痛、中心性疼痛、火傷による疼痛、片頭痛又は群発頭痛、神経損傷、神経炎、神経痛、中毒、虚血性傷害、間質性膀胱炎、癌疼痛、ウイルス感染、寄生虫感染又は細菌感染、外傷後損傷(骨折及びスポーツ傷害を包含する)、及び機能的腸疾患(過敏性腸症候群など)に伴う疼痛を包含する]を伴う疾患及び症状の治療において鎮痛剤としての有用性が期待される。
【0073】
更に、本発明の化合物は、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、喘息、気管支痙攣などを包含する呼吸器疾患を治療するのに有用である。
【0074】
更には、α7nACh受容体への親和性により、式(I)の化合物の標識誘導体(例えば、C11又はF18標識誘導体)は、例えば、脳内の受容体の神経イメージングに使用することができる。即ち、このような標識試薬を使用して、例えば、PETイメージングを使用して、受容体の生体内イメージングを行うことができる。
【0075】
本発明はまた、軽度認知障害(MCI)、血管性認知症(VaD)、加齢に伴う認知低下(AACD)、開胸手術、心停止、及び/又は全身麻酔に伴う健忘、麻酔薬の早期曝露による記憶欠損、睡眠不足誘導性認知障害、慢性疲労症候群、ナルコレプシー、AIDS関連認知症、てんかん関連認知障害、ダウン症候群、アルコール依存症関連認知症、薬物/物質誘導性記憶障害、拳闘家認知症(ボクサー症候群)に罹っている患者、及び動物の認知症(例えば、イヌ、ネコ、ウマなど)を治療する方法であって、本発明の化合物の有効量をその患者に投与することを含む方法を提供する。
【0076】
本発明は更に、治療活性物質として使用するための、特にニコチン性α7(α7nACh)受容体に関連する疾患の治療及び/又は予防用の治療活性物質として使用するための化合物に関する。
【0077】
本発明はまた、ニコチン性α7(α7nACh)受容体に関連する疾患の治療的及び/又は予防的処置用の医薬の製造のための、特に認知増強用医薬の製造のための、上記と同義の化合物の使用に関する。
【0078】
投与及び医薬組成物
本発明は、少なくとも1種の本発明の化合物、又は個々の異性体、異性体のラセミ若しくは非ラセミ混合物、あるいはその医薬的に許容しうる塩又は溶媒和物を、少なくとも1種の薬学的に許容しうる担体と共に、そして場合により他の治療成分及び/又は予防成分と共に含む医薬組成物を包含する。
【0079】
一般に本発明の化合物は、同様の有用性を示す薬剤の任意の認められた投与様式により、治療有効量が投与されよう。適切な用量範囲は、治療される疾患の重篤度、被験体の年齢及び相対的健康度、使用される化合物の効力、投与経路及び投与方法、投与の対象となる適応症、並びに担当医の優先傾向及び経験に応じて、典型的には1〜500mg/日、好ましくは1〜100mg/日、そして最も好ましくは1〜30mg/日である。このような疾患を治療する分野の当業者であれば、過度の実験をすることなく、かつ個人的知識及び本出願の開示を頼みに、所定の疾患に対する本発明の化合物の治療有効量を突き止めることができよう。
【0080】
本発明の化合物は、経口(口腔及び舌下を包含する)、直腸内、鼻内、局所、肺内、膣内、又は非経口(筋肉内、動脈内、髄腔内、皮下及び静脈内を包含する)投与に適した製剤、あるいは吸入又は吹送による投与に適した剤形を包含する医薬製剤として投与することができる。好ましい投与法は、一般に、疾患の程度に応じて調整できる便利な1日の用法用量を用いる経口法である。
【0081】
本発明の化合物は、1種以上の通常の補助剤、担体、又は希釈剤と一緒に、医薬組成物及び単位投与剤形にすることができる。この医薬組成物及び単位投与剤形は、通常の比率の通常成分からなり、追加の活性化合物又は成分を含むか又は含まず、そしてこの単位投与剤形は、使用すべき所望の1日用量範囲に相応の適切な有効量の活性成分を含有することができる。この医薬組成物は、経口使用には、固体(錠剤又は充填カプセル剤など)として、半固体として、粉剤として、持続放出製剤として、若しくは液体(液剤、懸濁剤、乳剤、エリキシル剤、又は充填カプセル剤)として;又は直腸内若しくは膣内投与には坐剤の形で;又は非経口使用には無菌注射液の形で使用することができる。したがって1錠当たり約1ミリグラムの活性成分、又はより広くは約0.01〜約100ミリグラムを含有する製剤が、適切な代表的単位投与剤形である。
【0082】
本発明の化合物は、多種多様な経口投与剤形に製剤化することができる。この医薬組成物及び剤形は、本発明の化合物又はその薬学的に許容しうる塩を活性成分として含むことができる。薬学的に許容しうる担体は、固体又は液体のいずれかであってよい。固体製剤は、粉剤、錠剤、丸剤、カプセル剤、カシェ剤、坐剤、及び分散顆粒剤を包含する。固体担体は、希釈剤、着香剤、可溶化剤、滑沢剤、懸濁剤、結合剤、保存料、錠剤崩壊剤、又は封入材としても作用する1種以上の物質であってよい。粉剤では、担体は一般に、微粉化活性成分との混合物である微粉化固体である。錠剤では、活性成分は一般に、必要な結合能力を有する担体と適切な比率で混合して、所望の形状及びサイズに打錠する。粉剤及び錠剤は、好ましくは約1〜約70パーセントの活性化合物を含有する。適切な担体は、特に限定されないが、炭酸マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム、タルク、糖類、乳糖、ペクチン、デキストリン、デンプン、ゼラチン、トラガントゴム、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、低融点ロウ、カカオ脂などを包含する。「医薬品製剤(preparation)」という用語は、活性化合物と担体としての封入材との製剤を包含するものであり、こうして担体を含むか又は含まない活性成分が、担体により囲まれたカプセル剤を与えるが、このカプセル剤は医薬品製剤に関係している。同様に、カシェ剤及びトローチ剤が包含される。錠剤、粉剤、カプセル剤、丸剤、カシェ剤、及びトローチ剤は、固体剤形として経口投与に適していよう。
【0083】
経口投与に適した他の剤形は、乳剤、シロップ剤、エリキシル剤、水性液剤、水性懸濁剤、又は使用の直前に液体製剤に変換することを意図する固体製剤を包含する。乳剤は、溶液として、例えば、プロピレングリコール水溶液として調製してもよく、又は乳化剤、例えば、レシチン、モノオレイン酸ソルビタン、又はアラビアゴムなどを含有してもよい。水性液剤は、活性成分を水に溶解して、適切な着色料、香味料、安定化剤、及び増粘剤を加えることにより調製できる。水性懸濁剤は、微粉化活性成分を粘性物質(天然又は合成ゴム、樹脂、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、及び他の周知の懸濁化剤など)と共に水に分散させることにより調製できる。固体製剤は、液剤、懸濁剤、及び乳剤を包含し、そして活性成分以外に、着色料、香味料、安定化剤、緩衝剤、人工及び天然甘味料、分散剤、増粘剤、可溶化剤などを含有してもよい。
【0084】
本発明の化合物は、非経口投与(例えば、注射、例えば、ボーラス注入又は持続点滴による)用に処方してもよく、そして単位投与剤形として、アンプル、プレフィルドシリンジ、小容量輸液、又は保存料を添加した多回投与容器で提供してもよい。本組成物は、油性又は水性ビヒクル中の懸濁液、溶液、又は乳濁液、例えば、水性ポリエチレングリコール中の溶液のような形状をとってよい。油性又は非水性担体、希釈剤、溶媒又はビヒクルの例は、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、植物油(例えば、オリーブ油)、及び注射用有機エステル類(例えば、オレイン酸エチル)を包含し、そして保存剤、湿潤剤、乳化剤若しくは懸濁化剤、安定化剤及び/又は分散剤のような配合剤を含有してもよい。あるいは活性成分は、無菌固体の無菌的単離によるか、又は適切なビヒクル(例えば、無菌の発熱性物質を含まない水)で使用前に復元するための、溶液から凍結乾燥により得られる粉末形状であってもよい。
【0085】
本発明の化合物は、軟膏剤、クリーム剤若しくはローション剤として、又は経皮パッチとして表皮に局所投与するために処方することができる。軟膏剤及びクリーム剤は、例えば、水性又は油性基剤に、適切な増粘剤及び/又はゲル化剤を加えて製剤化することができる。ローション剤は、水性又は油性基剤を用いて製剤化することができ、また一般に、1種以上の乳化剤、安定化剤、分散剤、懸濁剤、増粘剤、又は着色剤を含有するだろう。口内の局所投与に適した製剤は、着香基剤(通常、ショ糖及びアラビアゴム若しくはトラガントゴム)中に活性剤を含むトローチ剤;不活性基剤(ゼラチンとグリセリン又はショ糖とアラビアゴムなど)中に活性成分を含む香錠;及び適切な液体担体中に活性成分を含む口内洗浄液を包含する。
【0086】
本発明の化合物は、坐剤として投与するために処方することができる。低融点ロウ(脂肪酸グリセリドの混合物又はカカオ脂など)を先ず溶融して、活性成分を、例えば、撹拌により均一に分散させる。次に溶融した均一混合物を、便利なサイズの鋳型に流し込み、冷却させて、凝固させる。
【0087】
本発明の化合物は、膣内投与用に処方することができる。活性成分以外に、当該分野で適切であることが知られている担体を含有する、ペッサリー、タンポン、クリーム剤、ゲル剤、ペースト剤、泡状剤又は噴霧剤。
【0088】
対象の化合物は、鼻内投与用に処方することができる。液剤又は懸濁剤は、通常の手段、例えば、スポイト、ピペット又はスプレーにより、鼻腔に直接適用される。本製剤は、単回投与又は多回投与剤形で提供することができる。スポイト又はピペットの後者の場合、これは、患者が適切な所定容量の液剤又は懸濁剤を投与することにより達成することができる。スプレーの場合には、これは、例えば、計量噴霧スプレーポンプを用いて達成することができる。
【0089】
本発明の化合物は、特に気道への、及び鼻内投与を包含する、エアゾール投与用に処方することができる。化合物は一般に、例えば、5ミクロン以下程度の小粒度を有する。このような粒度は、当該分野で知られている手段、例えば、微粉化により得られよう。活性成分は、クロロフルオロカーボン(CFC)(例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、又はジクロロテトラフルオロエタン)、又は二酸化炭素若しくは他の適切な気体のような適切な噴射剤による加圧パックとして提供される。エアゾール剤は、便利にはまた、レシチンのような界面活性剤を含有してもよい。薬剤の用量は、計量バルブにより調節することができる。あるいは活性成分は、乾燥粉末、例えば、適切な粉末基剤(乳糖、デンプン、デンプン誘導体(ヒドロキシプロピルメチルセルロースなど)及びポリビニルピロリドン(PVP)など)中の化合物の粉末混合物の剤形で提供してもよい。粉末担体は、鼻腔中でゲルを形成する。粉末組成物は、そこから粉末を吸入器を用いて投与できる、例えば、ゼラチンのカプセル若しくはカートリッジ、又はブリスターパックに入れた単位投与剤形として提供することができる。
【0090】
所望であれば製剤は、活性成分の持続放出又は制御放出投与に適合させた腸溶性コーティングをして調製することができる。例えば、本発明の化合物は、経皮又は皮下薬剤送達器具として処方することができる。これらの送達システムは、化合物の持続放出が必要なとき、及び用法用量の患者コンプライアンスが決定的に重要であるときに有利である。経皮送達システム中の化合物は、しばしば皮膚接着性固体支持体に付けられる。目的の化合物はまた、浸透促進剤、例えば、Azone(1−ドデシルアザシクロヘプタン−2−オン)と組合せることができる。持続放出送達システムは、手術又は注射により皮下層に挿入される。皮下インプラントは、脂溶性膜(例えば、シリコーンゴム)、又は生分解性ポリマー(例えば、ポリ乳酸)中に化合物を封入する。
【0091】
本医薬品製剤は、好ましくは単位投与剤形にされる。このような剤形では、本医薬品は、適量の活性成分を含有する単位用量に細分される。単位投与剤形は、パッケージが離散量の医薬品を含有する包装医薬品(パック入り錠剤、カプセル剤、及びバイアル又はアンプル入りの粉剤)であってもよい。また、単位投与剤形は、カプセル剤、錠剤、カシェ剤、又はトローチ剤自体であっても、あるいは包装した形の適切な数のこれらのいずれかであってもよい。
【0092】
他の適切な薬剤担体及びこれらの製剤は、Remington: The Science and Practice of Pharmacy 1995, edited by E.W. Martin, Mack Publishing Company, 19th edition, Easton, Pennsylvaniaに記載されている。本発明の化合物を含有する代表的な医薬製剤は、後述される。
【0093】
実施例
以下の調製法及び実施例は、当業者が本発明をより明瞭に理解し、かつ実施できるようにするために与えられる。これらは、本発明の範囲を限定するものではなく、本発明を単に例示し代表するものと考えるべきである。以下の略語が実施例において使用されうる。
【0094】
略語
CDI 1,1−カルボニル−ジイミダゾール
DCM ジクロロメタン/塩化メチレン
DMF N,N−ジメチルホルムアミド
DMAP 4−ジメチルアミノピリジン
EDCI 1−エチル−3−(3’−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド
EtOAc 酢酸エチル
EtOH エタノール
tBuOH tert−ブタノール
gc ガスクロマトグラフィー
HMPA ヘキサメチルホスホルアミド
HOAc 酢酸
HOBt N−ヒドロキシベンゾトリアゾール
hplc 高速液体クロマトグラフィー
mCPBA m−クロロ過安息香酸
MeCN アセトニトリル
MeOH メタノール
NMP N−メチルピロリジノン
TEA トリエチルアミン
TFA トリフルオロ酢酸
THF テトラヒドロフラン
LDA リチウムジイソプロピルアミン
LHMDS リチウムビス(トリメチルシリル)アミド
TBAF フッ化テトラブチルアンモニウム
TLC 薄層クロマトグラフィー
【0095】
概括すると、本新規アミドの調製は、4つの合成工程で完了した。これらは、スキーム1、2、及び3に取り上げる。5−ヨードサリチル酸メチル((2)、TCI)を、カルビノールの存在下でミツノブ条件(トルエン中のトリフェニルホスフィン−アゾジカルボン酸ジイソプロピル)に付した。次にペンダントエーテルを有するヨウ化アリールを、パラジウム触媒作用下でビフェニルに変換した。親ビフェニル酸は、パラジウム触媒反応条件から少量生じたが、また標準的けん化条件下でも生成した。アミドは、所望の相手のアミンの存在下で、2種の異なる試薬:[カルボニルジイミダゾール又はアザベンゾトリアゾール−1−イル)ウロニウム塩(それぞれ、実施例2又は3)]を使用して調製した。
【0096】
【化3】

【0097】
実施例1
5−ヨードサリチル酸メチル(TCI、4.9g、17.5mmol)、シクロプロパンカルビノール(Aldrich、1.15g、16mmol)及びトリフェニルホスフィン(Aldrich、5.45g、21mmol)を無水トルエン(50mL)に溶解して、0℃に冷却した。この溶液にアゾジカルボン酸ジイソプロピル(Aldrich、4.1mL、21mmolを20mLのトルエンに溶解)を、15分以上かけて滴下して加えた。周囲温度で3日間撹拌後、この混合物をヘキサンで希釈して、シリカパッドに直接のせた。所望のエーテル((3)、4.63g、油状物)が、ヘキサン中酢酸エチル5〜20%勾配で溶出して、目的物質に一致する分光学的性質を示した。
【0098】
エーテル(3)(3.0g、9.0mmol)、4−メトキシ−2−メチルフェニルボロン酸(Combi-Blocks、1.65g、9.9mmol)、炭酸セシウム(Aldrich、7.3g、22.5mmol)、エタノール(5mL)、水(25mL)及びトルエン(70mL)を、加熱しながら窒素で真空パージした。テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(Strem、1.04g、0.9mmol)を加えて、この混合物を16時間激しく撹拌しながら加熱還流した。周囲温度まで冷却後、相を分離して、水層を酢酸エチルで抽出した。合わせた有機層を無水硫酸ナトリウム上で保存した。揮発物の除去後、目的のビフェニル((5)、2.23g、油状物)をシリカゲルクロマトグラフィー(溶離液5〜60%酢酸エチル−ヘキサン)により単離したが、これは、候補構造に一致する分光学的性質を示した。
【0099】
実施例1にしたがい(工程1でシクロプロパンカルビノールの代わりにベンジルアルコールを使用し、次に工程2で4−メトキシ−2−メチルフェニルボロン酸の代わりに2−メトキシフェニルボロン酸を使用して)、次に実施例2のけん化により;4−ベンジルオキシ−2’−メトキシ−ビフェニル−3−カルボン酸((9)、820mg、1.77mmol)を調製した。
【0100】
【化4】

【0101】
酸(9)(255mg、0.55mmol)をN−メチル−2−ピロリジノン(5mL)に溶解して、カルボニルジイミダゾール(90mg、0.55mmol、一度に加える)で処理した。この溶液を周囲温度で10分間激しく撹拌した。アミノメチルシクロプロパン(0.12mL、1.4mmol)を急速に加え、生じた金色の溶液を一晩撹拌した。この混合物を水(20mL)とヘキサン:酢酸エチル(1:1、4×25mL)とに分液し、新鮮な水、食塩水で洗浄して、無水硫酸ナトリウム上で保存した。目的のアミド((10)、86mg、油状物、親イオンM+1のMS m/z 388)をシリカゲルクロマトグラフィー(溶離液:10〜80%酢酸エチル/ヘキサン)により単離したが、分光学的性質は記載の構造に一致した。
【0102】
実施例1にしたがい、アミノメチルシクロプロパンの代わりに2−フルオロ−β−フェネチルアミンを使用して、4−ベンジルオキシ−2’−メトキシ−ビフェニル−3−カルボン酸[2−(2−フルオロ−フェニル)−エチル]アミド((I−2)、241mg、油状物、親イオンM+1のMS m/z 456)を調製した。
【0103】
【化5】

【0104】
実施例2
エステル(6)(実施例1にしたがい調製、1.6g、4.1mmol)を、テトラヒドロフラン(60mL)及びメタノール(5mL)に溶解した。この溶液を氷浴に入れて、水酸化リチウム[(400mg、約10mmol)を水(20mL)に溶解]で処理し、周囲温度で一晩撹拌した。この混合物から揮発物を除去し、残渣を水(50mL)とエチルエーテル(2×30mL)とに分液した。水層を10%酢酸水溶液でクエンチして、酢酸エチル(3×60mL)で抽出し、次に無水硫酸ナトリウム上で保存した。濾過及び揮発物の除去後、目的の酸((7)、1.4g、融点125〜126℃、親イオンM−1のMS m/z 377)を得たが、これは候補構造に一致する分光学的性質を示した。この酸(255mg、0.67mmol)をN−メチル−2−ピロリジノン(4mL)に溶解して、カルボニルジイミダゾール(108mg、0.67mmol、一度に加える)で処理した。この溶液を周囲温度で10分間激しく撹拌した。アミノメチルシクロプロパン(0.12mL、1.4mmol)を急速に加え、生じた金色の溶液を一晩撹拌した。この混合物を水(20mL)とヘキサン:酢酸エチル(1:1、4×25mL)とに分液し、新鮮な水、食塩水で洗浄して、無水硫酸ナトリウム上で保存した。目的のアミド((8)、185mg、融点115.6〜116.5℃、親イオンM+1のMS m/z 432)をシリカゲルクロマトグラフィー(溶離液:10〜80%酢酸エチル/ヘキサン)により単離したが、分光学的性質は記載の構造に一致した。
【0105】
実施例1にしたがい、シクロプロパンカルビノールの代わりに2−フェネチルアルコールを使用して、実施例2のアミノメチルシクロプロパンの代わりにシクロペンチルアミンを使用することにより、4’−メトキシ−2’−メチル−4−フェネチルオキシ−ビフェニル−3−カルボン酸シクロペンチルアミド((I−3)、55mg、油状物、親イオンM+1のMS m/z 430)を調製した。
【0106】
実施例1にしたがい、シクロプロパンカルビノールの代わりに2−フェネチルアルコールを使用し、実施例2のアミノメチルシクロプロパンの代わりに2−フルオロ−β−フェネチルアミンを使用することにより、4’−メトキシ−2’−メチル−4−フェネチルオキシ−ビフェニル−3−カルボン酸[2−(2−フルオロ−フェニル)−エチル]アミド((I−4)、54mg、融点83〜85℃、親イオンM+1のMS m/z 484)を調製した。
【0107】
【化6】

【0108】
実施例3
エステル(5)(2.23g、6.8mmol)を、テトラヒドロフラン(60mL)及びメタノール(5mL)に溶解した。この溶液を氷浴に入れて、水酸化リチウム[(860mg、約20mmol)を予め水(20mL)に溶解]で処理して、周囲温度で一晩撹拌した。混合物から揮発物を除去して、残渣を水(50mL)とエチルエーテル(2×30mL)とに分液した。水層を10%酢酸水溶液でクエンチして、酢酸エチル(3×60mL)で抽出し、次に無水硫酸ナトリウム上で保存した。濾過及び揮発物の除去後、目的の酸((11)、1.66g、融点139〜140.5℃、親イオンM+1のMS m/z 313)を得たが、これは候補構造に一致する分光学的性質を示した。この酸(314mg、1.0mmol)をN−メチル−2−ピロリジノン(4mL)に溶解して、O−(7−アザベンゾトリアゾール−1−イル)ウロニウム ヘキサフルオロホスフェート(4210mg、1.1mmol)によりN下で処理した。この溶液を直ちにトリエチルアミン(0.28mL、2.0mmol)及び1−エチニルシクロヘキシルアミン(0.28mL、2.1mmol)で処理し、周囲温度で16時間撹拌させておいた。次にこれを0.2M硫酸水素カリウム(15mL)及びヘキサン:酢酸エチル(1:1、3×40mL)に分液した。合わせた有機層を、新鮮な水、次に食塩水で洗浄して、無水硫酸ナトリウム上で保存した。抽出物の容量を減少させて残渣にし、これをシリカゲルクロマトグラフィーに付した。目的のアミド((12)、235mg、油状物、親イオンM+1のMS m/z 418)は、候補構造に一致する分光学的性質を示した。
【0109】
【化7】

【0110】
実施例3にしたがい、1−エチニルシクロヘキシルアミンを2−フルオロ−β−フェネチルアミンで置き換えて、アミド(13)(155mg、油状物、親イオンM+1のMS m/z 434)を調製した。
【0111】
製剤
種々の経路による送達のための医薬品製剤は、下記の表に示されるように処方する。表中に使用される「活性成分」又は「活性化合物」は、1種以上の式(I)の化合物を意味する。
【0112】
【表2】

【0113】
成分を混合して、カプセル(それぞれ約100mgを収容できる)に入れる;1個のカプセルが、ほぼ総1日用量となるだろう。
【0114】
【表3】

【0115】
成分を合わせて、メタノールのような溶媒を使用して造粒する。次にこの製剤を乾燥させて、適切な打錠機により錠剤(それぞれ約20mgの活性化合物を含有する)にする。
【0116】
【表4】

【0117】
成分を混合することにより、経口投与用の懸濁剤を生成する。
【0118】
【表5】

【0119】
活性成分を注射用水の一部に溶解する。次に充分量の塩化ナトリウムを撹拌しながら加えることにより、溶液を等張性にする。溶液は、残りの注射用水で重量を調整し、0.2ミクロンの膜フィルターで濾過して、無菌条件下で包装する。
【0120】
【表6】

【0121】
成分を一緒に溶融して、蒸気浴で混合し、そして総重量2.5gを収容できる鋳型に注ぎ入れる。
【0122】
【表7】

【0123】
水を除く全ての成分を合わせて、撹拌しながら約60℃に加熱する。次に約60℃の充分量の水を激しく撹拌しながら加えることにより成分を乳化し、次いで水を約100gまで充分な量加える。
【0124】
鼻腔用スプレー製剤
約0.025〜0.5パーセントの活性化合物を含有する幾つかの水性懸濁液を、鼻腔用スプレー製剤として調製する。本製剤は、場合により、例えば、微結晶性セルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ブドウ糖などのような不活性成分を含有する。塩酸を加えることによりpHを調整してもよい。この鼻腔用スプレー製剤は、典型的には一回の作動で約50〜100マイクロリットルの製剤を送達する鼻腔用スプレー計量ポンプを介して送達することができる。典型的な投与スケジュールは、4〜12時間毎に2〜4回のスプレーである。
【0125】
実施例4
ニコチン性α7調節アッセイ
細胞培養
細胞培養増殖培地:F10培地(Invitrogen)、2.5%ウシ胎仔血清(FBS、Summit Biotechnology)、15%熱不活化ドナー・ウマ血清(Invitrogen)、250μg/mlヒグロマイシンB(Invitrogen);及び100nMメチルリカコナイト(Methyllicaconite)(MLA、Sigma)を、HO中で5μMに調製したストック溶液を50倍希釈して、それぞれ新しい培養液に加える。
【0126】
ヒトニコチン性α7WT受容体(RPAクローン#34.7)を安定に発現するGH細胞(ラット下垂体由来細胞株)は、細胞培養増殖培地(上記)中で37℃で、4% COを含有する加湿雰囲気中で培養する。新鮮細胞ストック培養は、1個のT225フラスコ当たり0.1〜0.2×10個/mlの細胞、50ml培地で開始して、2又は3日間増殖させてから、FLIPRアッセイに使用する。ストックフラスコ開始の2日後に採取した細胞は、典型的には約25×10個/T225フラスコに上り、そしてストックフラスコ開始の3日後には、典型的には約40×10個/T225フラスコに増える。
【0127】
アッセイの1日前に、100nMの新鮮なMLAを補足した新鮮な細胞培養増殖培地に細胞を入れる。培地交換を行うために、培養液の浮遊細胞を取り出し、多数の細胞が表面に付着しているうちに、45mlの新鮮な細胞培養増殖培地(100nMの新鮮なMLAを含有する)を直ちにストックフラスコに加える。次に浮遊細胞を遠心分離により集め、5mlの新鮮な細胞培養増殖培地に再懸濁して、元々の培養フラスコに戻す。
【0128】
緩衝液
アッセイに使用する緩衝液は、HBSS FLIPR緩衝液(Invitrogen)、2mM CaCl(Sigma)、10mMヘペス(Invitrogen)、2.5mMプロベネシド(Sigma)、及び0.1% BSA(Sigma)である。
【0129】
FLIPRアッセイ
α7nAChRアッセイは、ニコチン性受容体チャネルを直接活性化するか、かつ/又は本来のアゴニストのアセチルコリン(ACh、Sigma)による活性化を調節する試験化合物の作用を測定するように設計された、細胞に基づく機能の読み出し情報である。
【0130】
アッセイの1日目に、付着した細胞を1×濃度のVersene(Gibco、カタログ番号15040)を使用して引き上げ、浮遊細胞と合わせて、遠心分離(5分、162×g)により集める。この細胞ペレットを0.5×10個/mlでFLIPR緩衝液に再懸濁し、ポリ−d−リシンを被覆した96ウェルの黒/透明プレート(Becton Dickinson)の試料ウェルに、1ウェル当たり0.5×10個の細胞で分注する。次に試料ウェルに、FLIPR緩衝液中のFLUO−3AM色素(TefLabs、10% Pluronic酸を含有する無水DMSO中2.5mMで調製したストック溶液)を、1μMの最終アッセイ濃度(FAC)で補足する。4% COを含有する加湿雰囲気中で37℃で1時間、プレートをインキュベートすることにより、細胞の色素負荷が起こる。細胞外の色素を除去するために、FLIPRプレートをBiotek EL405プレートウォッシャーを使用して洗浄して、1試料ウェル当たり残存容量0.1mlのFLIPR緩衝液を残す。
【0131】
α7ニコチン性受容体チャネルの活性化に及ぼす試験化合物の作用のアッセイは、2種の追加の実験計画及びFLIPR(商標)(Molecular Devices)を使用して、FLUO−3蛍光の上昇により報告される、細胞質[Ca2+]上昇の測定によって行う。30秒間のベースラインの記録後、試験化合物をオンラインで加え(後述の希釈スキーム)、細胞応答を更に5分間記録する。2回目のACh(30μM、FAC)添加後、更に4分間プレートを読みとる。
【0132】
試験化合物の調製
複数濃度の試験化合物を、それぞれ96ウェルアッセイプレートで並行して調べる。試験化合物の最高FACを100μM(1.00E−4 M)にするために、10mM試験化合物ストック溶液(100% DMSO)24μlを、576μlのFLIPR緩衝液に直接加える(即ち、最高[試験化合物]濃度=0.4mM=4倍FAC)。0.4mMの試験化合物試料から開始して、試験化合物をFLIPR緩衝液で連続希釈(Biomek2000を使用)することにより、以下の試験化合物FACを得る:ビヒクル、1.00E−4 M、3.16E−5、1.00E−5 M、3.16E−6、1.00E−6 M、3.16E−7、1.00E−7 M。DMSOの最大FAC=試験化合物の最高FACの100μMに曝露した試料ウェル中1%。陰性対照は、ビヒクル添加と、これに続くACh添加により作成した。陽性対照は、1μM PNU-120596添加と、これに続くACh添加により作成した。
【0133】
化合物の活性
α7nAChRのIC50/EC50値、内因性アゴニスト活性、及び正のアロステリック調節を、ACTIVITYBASE(商標)データ解析ソフトウェアを使用して測定した。用量反応データについては、曲線の近似中点(変曲点)又は曲線が活性閾値と交差する点(典型的には対照の50%)のいずれかを使用してIC50/EC50を求めることができる。
【0134】
上記アッセイを使用して、本発明の化合物が、α7nAChRの正のアロステリックモジュレーターであることを確定した。例えば、化合物4−シクロプロピルメトキシ−4’−メトキシ−2’−メチル−ビフェニル−3−カルボン酸(1−エチニル−シクロヘキシル)−アミドは、EC50が220nMであり、そして正のアロステリック調節が255%を示した。以下のデータが得られた:
【0135】

【0136】
実施例5
ホルマリン疼痛アッセイ
オスのSprague Dawleyラット(180〜220g)を、個別のプレキシガラスのシリンダーに入れ、試験環境に30分間馴化させる。ビヒクル、薬剤、又は陽性対照(モルヒネ2mg/kg)を、5ml/kgで皮下投与する。投与の15分後、右の後肢の足底面に、26ゲージ針を使用してホルマリン(50μl中5%)を注射する。直ちにラットを観察チャンバーに戻す。チャンバーの周りに置いた鏡により、ホルマリン注射した足が妨害されずに観察できる。各ラットの侵害防御的行動の持続時間は、自動の行動タイマーを使用して、盲検観察者が記録する。後肢の嘗め、及び震え/足上げを5分のビン幅で別々に記録し、合計60分間とする。0〜5分の時間に嘗め又は震えに費やした時間(秒)の合計は、初期相と見なし、一方で後期相は、15〜40分の間に嘗め又は震えに費やした時間(秒)の合計をとる。血漿試料を採取する。
【0137】
実施例6
認知の増強
本発明の化合物の認知増強性は、動物認知モデル(新規な対象認知タスクモデル)で見ることができる。4ヶ月齢のオスのWistarラット(Charles River, The Netherlands)を使用した。化合物を毎日調製して、生理食塩水に溶解し、そして3用量で試験した。投与は常に、T1の60分前に腹腔内投与した(注射容量1ml/kg)。化合物注射の30分後に、スコポラミン臭化水素酸塩を注射した。24匹のラットの2つの同等の試験群を作成して、2つの実験により試験した。用量の試験順序はランダムに決定した。実験は、二重盲検プロトコールを使用して行った。全てのラットを各用量条件で一度試験した。対象認知試験は、Ennaceur, A., Delacour, J., 1988, A new one-trial test for neurobiological studies of memory in rats. 1: Behavioral data. Behav. Brain Res. 31, 47-59に記載されるように行った。
【0138】
本発明は、その具体例を参照して説明したが、当業者であれば、本発明の本質及び範囲を逸することなく、種々の変更を加えることができ、均等物に代替できることは、当然のことながら理解されるべきである。更に、特定の状況、材料、組成物、製造法、製造法の工程を、本発明の本質及び範囲に適合させるために、多くの修飾を加えることができる。このような全ての修飾は、本明細書に添付の特許請求の範囲に含まれるものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化8】


[式中、
は、[CHであり;
qは、0、1、又は2であり;
は、[CHであり;
rは、1又は2であり;
は、R1’又はR1”であり;
1’は、場合によりハロゲンで置換されたフェニルであり;
1”は、場合によりアルキニルで置換されたシクロアルキルであり;
は、R2’又はR2”であり;
2’は、場合により低級アルコキシで置換されたフェニルであり;
2”は、シクロアルキルであり;
は、低級アルコキシ又は低級アルキルであり;そして
nは、0、1、又は2である]で示される化合物。
【請求項2】
が、メチレンである、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
が、R1”である、請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
1”が、シクロプロピルである、請求項3に記載の化合物。
【請求項5】
が、メチレンである、請求項4に記載の化合物。
【請求項6】
が、フェニルである、請求項5に記載の化合物。
【請求項7】
が、4−メトキシ−フェニルである、請求項5に記載の化合物。
【請求項8】
qが、0である、請求項1に記載の化合物。
【請求項9】
が、シクロペンチルである、請求項8に記載の化合物。
【請求項10】
が、エチレンである、請求項9に記載の化合物。
【請求項11】
が、フェニルである、請求項10に記載の化合物。
【請求項12】
nが、2である、請求項11に記載の化合物。
【請求項13】
各Rが、独立にメチル又はメトキシである、請求項12に記載の化合物。
【請求項14】
が、エチレンである、請求項1に記載の化合物。
【請求項15】
が、R1’である、請求項14に記載の化合物。
【請求項16】
1’が、2−フルオロ−フェニルである、請求項15に記載の化合物。
【請求項17】
が、メチレンである、請求項16に記載の化合物。
【請求項18】
が、R2’である、請求項17に記載の化合物。
【請求項19】
が、R2”である、請求項18に記載の化合物。
【請求項20】
nが、1であり、そしてRが、メトキシである、請求項18に記載の化合物。
【請求項21】
nが、2であり、そして各Rが、独立にメチル又はメトキシである、請求項19に記載の化合物。
【請求項22】
qが、0であり、そしてRが、R1”である、請求項1に記載の化合物。
【請求項23】
1”が、1−エチニル−シクロヘキシルである、請求項22に記載の化合物。
【請求項24】
が、メチレンであり、そしてRが、シクロプロピルである、請求項23に記載の化合物。
【請求項25】
nが、2であり、そして各Rが、独立にメチル又はメトキシである、請求項24に記載の化合物。
【請求項26】
4−ベンジルオキシ−2’−メトキシ−ビフェニル−3−カルボン酸シクロプロピルメチル−アミド;
4−ベンジルオキシ−2’−メトキシ−ビフェニル−3−カルボン酸[2−(2−フルオロ−フェニル)−エチル]−アミド;
4’−メトキシ−2’−メチル−4−フェネチルオキシ−ビフェニル−3−カルボン酸シクロペンチルアミド;
4’−メトキシ−2’−メチル−4−フェネチルオキシ−ビフェニル−3−カルボン酸[2−(2−フルオロ−フェニル)−エチル]−アミド;
4’−メトキシ−4−(4−メトキシ−ベンジルオキシ)−2’−メチル−ビフェニル−3−カルボン酸シクロプロピルメチル−アミド;
4−シクロプロピルメトキシ−4’−メトキシ−2’−メチル−ビフェニル−3−カルボン酸(1−エチニル−シクロヘキシル)−アミド;及び
4−シクロプロピルメトキシ−4’−メトキシ−2’−メチル−ビフェニル−3−カルボン酸[2−(2−フルオロ−フェニル)−エチル]−アミド
よりなる群から選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項27】
必要とする被験体における認知を増強する方法であって、有効量の請求項1に記載の化合物を前記被験体に投与することを含む、方法。
【請求項28】
前記被験体が、アルツハイマー病を有する、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
請求項1に記載の化合物を、少なくとも1種の薬学的に許容しうる担体、希釈剤、又は賦形剤との混合物として含む医薬組成物。
【請求項30】
治療活性物質として使用するための、請求項1〜26のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項31】
ニコチン性α7(α7nACh)受容体に関連する疾患の治療及び/又は予防用の治療活性物質として使用するための、請求項1〜26のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項32】
ニコチン性α7(α7nACh)受容体に関連する疾患の治療的及び/又は予防的処置用の医薬の製造のための、請求項1〜26のいずれか1項に記載の化合物の使用。
【請求項33】
認知増強用の医薬の製造のための、請求項1〜26のいずれか1項に記載の化合物の使用。
【請求項34】
本明細書に定義される発明。

【公表番号】特表2011−530560(P2011−530560A)
【公表日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−522477(P2011−522477)
【出願日】平成21年8月3日(2009.8.3)
【国際出願番号】PCT/EP2009/060016
【国際公開番号】WO2010/018095
【国際公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【出願人】(591003013)エフ.ホフマン−ラ ロシュ アーゲー (1,754)
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN−LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
【Fターム(参考)】