説明

β−アミノ酸含有電解質および金属層の堆積方法

【課題】本発明は、基板上に金属層を無電解にて堆積させるための電解質に関する。
【解決手段】電解質は、重金属安定剤、シアニド、セレン化合物および−2〜+5の酸化状態における硫黄を含む硫黄化合物を含まず、その代わりにβ−アミノ酸が安定剤として用いられる。特に、発明に係る電解質は、3−アミノプロピオン酸、3−アミノブタン酸、3−アミノ−4−メチル吉草酸、並びに2−アミノエタンスルホン酸を含み得る。さらに、本発明は金属層の無電解堆積の方法に関係し、本発明に係る電解質を利用し、一般的に金属層の無電解堆積のための電解質における安定剤としてβ−アミノ酸類の使用も関係する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電解質および金属、特にニッケル、銅、コバルト、ホウ素または金の層、合金金属として前記の少なくとも一つからなる合金層の無電解堆積方法に関する。さらに、本発明は無電解堆積のための電解質において、安定剤としてのβ−アミノ酸の使用に関する。
【0002】
本発明は、さらに、無電解質めっき法に供される有機安定剤、および堆積される金属のための金属イオン源、還元剤、錯化剤、安定剤、好ましくは促進剤からなる、基板の金属層の無電解質堆積のための電解質、並びに本発明による電解質から表面上に金属層の無電解堆積をする方法に関する。
さらに、本発明は少なくとも1つのカルボン酸、および/または少なくとも1つのカルボン酸塩の使用に関する。
【背景技術】
【0003】
金属層で基板のめっきをする電解方法のうち、無電解めっき法は公知技術において長い間知られている。化学めっきとしてまた知られる無電解めっきによって、殆どすべての金属、巨大な数の非電導性基材表面の被覆が可能である。無電解堆積の金属層は、直流堆積の金属層、すなわち外部電流の使用によって堆積された金属層と、物理的および機械的観点において異なる。例えばコバルト/リン、ニッケル/リン、または炭化ホウ素層のような非金属成分を伴なう合金層は、しばしば無電解堆積法によって堆積される。この点において、無電解堆積層は多くの場合、直流堆積層と化学的性質においても異なる。
【0004】
無電解堆積層の主な利点は、基板の配置から独立した堆積層の層厚の概略正確性にあり、その特徴は、ここでは特に貫通孔接続、ビアおよびトレンチの金属化のための、印刷回路板(PCB)製造の分野において、無電解法を第一の選択枝とする。
【0005】
多くの場合、無電解法はまた、例えばプラスチック基板のような非導電性基板の被覆のために使用され、そのような基板表面を導電性にし、および/または美的観点における基板外観を変化させる。さらに、堆積層によって、被覆基板の材料性質は改善または変更される。特に、腐食防止性、または表面硬度および/または基板の耐摩耗性が向上し得る。
【0006】
無電解めっき法は、自動触媒法に基づき、その方法において、電解質中に備わる金属イオンは、このレドックス反応中に酸化された還元剤によって、成分金属へ還元される。
【0007】
基板表面の金属の無電解堆積の分野において通常用いられる還元剤は、次亜リン酸ソーダである。しかし乍、堆積させる金属に依存して他の還元剤も用いられる。
【0008】
米国特許番号6,146,702には、無電解ニッケル、コバルト、リン組成物およびめっき方法を開示する。当該方法は、基板上にニッケル、コバルト、リンの合金コーティングを、無電解めっき浴を用いて堆積することによってアルミニウムその他の材料の耐摩耗性を促進するために提供され、少なくとも約20重量%のコバルト含量および%Co/%Pの重量比が少なくとも約5のめっきされた合金を提供する。
【0009】
欧州特許出願EP 1 413 646 A2は、例えば、内部圧縮応力を有するニッケル層の無電解堆積のための電解質を開示する。本出願に開示された電解質は、堆積金属の金属塩、還元剤、錯化剤、促進剤および安定剤からなる。
【0010】
ここで、促進剤は、基板表面に金属の堆積速度を上げるために用いられる。
【0011】
公知の電気めっき浴に、電解質のコントロールされないプレートアウト(乱れた堆積)、すなわち基板表面上の無秩序な乱れた堆積を防止するために、安定剤が用いられる。これまでに公知技術において、鉛、ビスマス、亜鉛、または錫のような重金属が安定剤として用いられてきた。一般の環境規制、ROHS(毒性物質の使用に関する規制)、WEEE(廃棄電気および電子装置)、ELV(使用済み車両)によれば、消費された電解質の廃棄、および重金属の共堆積に先立ち、そのような重金属は適当な処理工程において電解質として用いられた水溶液から回収しなければならない。重金属が電解質にほんの少量含まれている場合でも、そのような処理は廃棄のために追加の費用を必要とする。したがって、金属層の堆積のための電解質における重金属の使用は避けなければならない。幾つかのその他のタイプの電解質においても、例えば銅の無電解堆積用の電解質のように、シアニドが安定剤として用いられる。重金属イオンのように、シアニドは環境規制に関連する。安定剤として一般的に使用されるセレン化合物も同様である。
【0012】
さらに、金属メッキの分野において、−2〜+5の間の酸化状態における硫黄からなる硫黄化合物を避ける利益があり、何故ならばこれら化合物は環境規制に関係するからである。しかし乍、今まで、良いめっき結果を得るためにそのような化合物は電解質において頻繁に必要とされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
したがって、本発明の目的は、堆積金属のコントロールされないプレートアウトに対して安定化される無電解めっきのための処方を提供することにある。
【0014】
種々の好ましい態様のもっと特有の目的は、重金属含有安定剤、シアニド、セレン化合物、および/または−2〜+5の間の酸化状態の硫黄を含む硫黄化合物を含まない、無電解堆積のための電解質を提供することにある。
【0015】
この目的は、堆積金属の金属イオン源、還元剤、錯化剤、促進剤、並びに電解質が安定剤としてβ−アミノ酸を含むことを特徴とする安定剤を含む、基板上の金属層の無電解堆積のための水溶性電解質によって達成される。
【0016】
本発明のさらなる目的は、無電解めっき法のための改善された安定剤、新規の電解質、並びに向上した性質を有する金属層の無電解堆積のための方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、基板上の金属層の無電解堆積に有用な処方を殊に対象とし、その処法は、堆積される金属のカチオンソース、還元剤、錯化剤、およびβ−アミノ酸、β−アミノ酸誘導体、およびそれらの組合せからなる群から選ばれる安定剤を含む。前記還元剤のモル濃度に対する当量のβ−アミノ酸の濃度の比は、0.07当量/モルを超えない。
【0018】
本発明は、基板上の金属層の無電解堆積において有用な処方をさらに対象とし、前記処方は、堆積金属のカチオンソース、還元剤、錯化剤、およびβ−アミノ酸、β−アミノ酸誘導体、およびそれらの組合せからなる群から選ばれる安定剤、並びにカルボン酸及びその塩からなる少なくとも1つの追加のカルボキシル化合物を含む。当該処方の総当量のカルボキシル濃度および総当量のβ−アミノ酸濃度の差に対する総当量のβ−アミノ酸濃度の比は、約0.028以下である。
【0019】
さらなる観点において、本発明は、約0.05〜約0.2モル/リットルの基板上に堆積される無電解的に堆積された金属のカチオン、約0.05〜約1.25モル/リットルの還元剤、約0.1〜約2モル/リットルの錯化剤、約0.002〜約0.25モル/リットルの促進剤、並びに約0.0005〜約0.015モル/リットル総当量のβ−アミノ酸を含む水溶性無電解めっき浴を対象とする。
【0020】
更にさらなる観点において、本発明は、基板上に無電解で堆積された金属、還元剤、錯化剤、およびβ−アミノ酸のアミドを含む水溶性無電解めっき浴を対象とする。
【0021】
本発明は、また、無電解メッキ溶液の調製方法を対象とする。当該方法に従って、β−アミノ酸またはβ−アミノ酸誘導体が水溶性媒体のカルボキシル成分と接触させて予備混合物を形成する。予備混合物は、堆積される金属のカチオンのソースを含む水溶液と合わされる。
【0022】
もう一つの観点において、本発明は無電解めっき溶液の調製方法を対象とする。当該方法によれば、第1の金属カチオンを含む第1溶液はカチオン交換樹脂を含む透析膜の第1面を通過させる。第1の金属カチオンは、無電解めっき浴から堆積される金属を含む。β−アミノ酸またはβ−アミノ酸誘導体および別のカチオンを含む第2の溶液は、第1の面と対向する前記膜の面を通過させる。第1の溶液の第1の金属カチオンは、第2の溶液の前記別の金属カチオンと交換され、それによって、前記第2の溶液を無電解めっきに有用な処方へ転換させる。
【0023】
本発明は、また基板上に金属層を無電解にて堆積させる方法に関し、その方法は、めっきされる基板を本発明に係るおよび/または本発明の方法に従って調製されためっき処方に接触させることからなる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
驚いたことに、β−アミノ酸は、金属層の無電解堆積のための電解質全てにおける、−2〜+5の間の酸化状態において、重金属安定剤、シアニド、セレン化合物、硫黄を含む硫黄化合物を置換する能力がある。
【0025】
本理論に拘束されないが、出願人は、β−アミノ酸がその間接的に隣接するアミノ基およびカルボキシル基のために少なくとも暫定的に、コントロールされない堆積を担う基板表面上の活性中心を塞ぐ能力があると推測する。そのように、当該金属の乱れた堆積を回避し得る。このように、乱れた堆積を担う電解質に含まれる異質なイオンもまた、当該β−アミノ酸によって不活性化されるのである。
【0026】
発明に係る電解質およびβ−アミノ酸の発明に係る使用のさらなる利益は、エッジ弱点として知られる影響が回避し得ることである。電解質の高い対流時の安定剤として重金属を含む金属層の無電解堆積のための電解質を使用するとき、基板の端部で金属の堆積不足が発生する。これは、これらの領域で安定剤として使用される重金属イオンの増加した集積に関連すると見做される。この影響は、めっきの概略の正確性を悪化させる。驚いたことに、無電解めっき法の安定剤としてのβ−アミノ酸の使用によって、このエッジ弱体化効果が回避され、特に大きな基板をめっきするときにめっきの全体的な概略の正確性が著しく増大する。
【0027】
特に、pKa値が4〜8、好ましくは5〜7のβ−アミノ酸がこの点で適するように思われる。特に、3−アミノプロピオン酸(β−アラニン)、3−アミノブチル酸、3−アミノ−4−メチル吉草酸および2−アミノエタン−スルホン酸(タウリン)が使用できる。
【0028】
β−アミノ酸は、発明に係る電解質中に1mg/l〜2g/l、好ましくは100mg/l〜1g/l、さらに好ましくは200mg/l〜400mg/l含まれる。
【0029】
本発明に係る電解質における還元剤として、次亜リン酸、ホルムアルデヒド、ジメチルアミノボラン、アミノボラン、またはその他の有機ボランを含み得る。
【0030】
本発明に係る電解質の金属イオンソースとして、有利なことには金属塩化物、金属硫酸塩、酢酸金属塩、窒化金属、プロピオン酸金属塩、蟻酸金属塩、シュウ酸金属塩、クエン酸金属塩、およびアスコルビン酸金属塩からなる群の金属化合物が使用され、すなわち、堆積される金属のカチオンソースは、そのような塩の如何なる対アニオンを含み得る。ここで、特に、例えば酢酸金属塩、窒化金属、プロピオン酸金属塩、および蟻酸金属塩の如き揮発性イオンを有する金属化合物が好ましく、それは、当該アニオンの揮発性のために、アニオンは電解質中のアニオン量を減少させ得るガス状で電解質から洩れだすからである。このことは普通の条件下では限定されるに過ぎない電解質の寿命を著しく伸ばす。例えば、揮発性アニオンの使用によって、内部圧縮応力を有する金属層が、22金属ターン・オーバー速度で、堆積し得る。
【0031】
錯化剤として、発明に係る電解質は、2−ヒドロキシプロピオン酸、プロパンジカルボン酸(マロン酸)、EDTA、およびアミノ酢酸からなる群から選らばれる化合物を含む。
【0032】
好ましくは、発明に係る電解質は、好ましくはサッカリン、ヒダントイン、ローダミンまたはカルバミド、およびその誘導体からなる群から選ばれる促進剤を含む。
【0033】
堆積される金属として、本発明に係る電解質は、ニッケル、銅、コバルト、ホウ素および金からなる群から選ばれた金属を含む。堆積金属の適当な選択によって、例えばニッケル/コバルト合金、ニッケル/リン合金、コバルト/リン合金、ホウ素/リン合金等が堆積され得る。また、ニッケル/PTFE層または炭化ホウ素/グラファイト層の分散浴からの堆積も本発明に係る電解質によって可能である。
【0034】
本発明に係る電解質は、pH3〜pH12、好ましくはpH3,9〜pH6の範囲内のpH値を示す。
【0035】
当該電解質が堆積のために使用される温度は、室温と100℃の間で変化し得る。
【0036】
本発明に係る電解質は、基板上に金属層の無電解堆積する方法も同様に以下に実施例に関し説明されるが、それらはこれらの態様のみに限定されない。
【0037】
好ましい態様において、本発明の処方はβ−アミノ酸のカルボキシル基以外のカルボン酸成分を含む。例えば、当該処方は分離して、モノカルボン酸、ジカルボン酸、トリカルボン酸の有機酸を含む。成分は、アリールカルボン酸、脂肪族カルボン酸、複素環カルボン酸を含有し得る。適切な脂肪族カルボン酸の中で、脂肪酸、特にC〜Cのα−ヒドロキシジカルボン酸を含むα−ヒドロキシカルボン酸、特にC〜Cのα,β−不飽和カルボン酸が好ましい。
【0038】
最も好ましくは、本発明の処方は、少なくとも1つのβ−アミノ酸および少なくとも1つのカルボン酸成分の縮合物(アダクト)である有機分子を含む無電解めっき法のための有機安定剤からなり、そのカルボン酸は、例えば遊離のカルボン酸またはその塩として、水溶性媒体中に導入される。
【0039】
β−アミノ酸(例えばβ−アラニン)およびカルボン酸またはその塩から誘導されるカルボキシル機能基の縮合物は、β−アミドである。当該縮合物は、モノマー、オリゴマーおよび/またはおポリマーの形態、すなわちβ−アミノ酸モノマー、ダイマー、トリマー、オリゴペプチドおよびポリペプチドのN−末端アミドとして存在する。
【0040】
非晶性の金属(メタリックガラス/ガラス様金属)は、着色された原子スケール構造を有する金属材料である。非晶性金属は非結晶性で、粒界がないために腐食および摩耗防止性を有し、それらは金属の単一分類である。
【0041】
本発明に係る安定剤を含む、単一の金属クラスを有する電解質浴は、非晶性金属のような性質を有する堆積金属層に導く。これらの性質は、例えば層がエッジの弱体化効果がなく、不動態で、耐腐食性、耐摩耗性、圧縮応力性に優れる。
【0042】
本発明による安定剤の更なる利益は、金属を含まず、硝酸に対する優れた耐性を含む著しく良い耐腐食性を有する被覆を提供し、環境に優しく(無毒性)、与件されたpHレベルにおいて高いリン濃度を示し、同じめっき速度およびリン組成を達成するのに用いられ得ることである。
【0043】
好ましくは、β−アミノ酸は3−アミノプロピオン酸(β−アラニン)、3−アミノブチル酸、3−アミノ−4−メチル吉草酸および2−アミノエタンスルホン酸(タウリン)からなる群から選ばれる化合物である。
【0044】
例えばβ−アラニンの如きアミノ酸は安定剤として効果的に働く一方で、初期に当該溶液に添加されたときに安定剤として直接に作用しないか、この目的に要求されたようには効果的に作用しない。安定剤の改善は、ある時間後に達成される。しかし乍、β−アラニンが乳酸(またはグリシン、リンゴ酸)と予備混合されるとき、それは直ちに安定剤として働く。カルボン酸はβ−アラニンと反応してアミド構造を形成する。この構造要素は、より効果的な安定剤として作用する。
【0045】
本発明の好ましい態様において、カルボン酸は、アクリル酸、芳香族カルボン酸、脂肪酸、脂肪族カルボン酸、ケト酸、ジカルボン酸、トリカルボン酸、直鎖状カルボン酸、複素環式カルボン酸、飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸およびα−ヒドロキシカルボン酸からなる群から選ばれた化合物である。カルボキシ機能基を有するその他の有機化合物を使用することも、また可能である。特に、カルボン酸の塩(カルボキシレート・アニオン − RCO)が使用できる。
【0046】
本発明のもう一つの目的は、基板上の金属層の無電解堆積のための処方(電解質)であり、その電解質は、堆積される金属のための金属イオンソース、還元剤、錯化剤、促進剤、及び安定剤を含み、その内安定剤はβ−アミノ酸で、電解質は少なくとも1つの付加的カルボン酸および/または少なくとも1つのカルボン酸塩である。
【0047】
公知の電解質溶液とは対照的に、本発明の電解質は自己安定性を有する。したがって、色々の安定剤および/または大量の安定剤を要しない。本発明に従う電解質を用いれば、安定剤の過処方は殆ど不可能であることが本発明の特徴である。
【0048】
少なくとも1つの追加のカルボン酸および/または少なくとも1つのカルボン酸塩をふくむ本発明に係る処方(電解質)は、種々の長所を示す。例えば、本発明による電解質を用いて堆積した金属層は、改善された腐食防止性を発揮する。これまでに、公知技術において、25μm150時間による酸性酸塩スプレイ(AASS)試験が知られている。本発明の電解質を用いて、AASS試験において1000時間以上耐える金属層が基板表面に堆積され得る。
【0049】
電解質が少なくとも1つのカルボン酸および/または少なくとも1つのカルボン酸塩を含んでいれば、エッジ弱体化効果が観察され得る。
【0050】
β−アミノ酸が、重金属安定剤、シアニド、セレン化合物、金属層の無電解堆積のための電解質において−2〜+5の酸化状態にある硫黄を含む硫黄化合物をもまた全部代替する能力があることが見出された。
【0051】
β−アミノ酸の使用は、例えばカルボン酸に関連して<0.5g/Lの範囲でβ−アミドを導く。これらの化合物は、ポリマー形体またはオリゴマー形体、それらの混合形体で存在する。本発明に係る電解質を含む浴は、たいへん安定で改善された性質の金属層を産生する。
【0052】
還元剤として、本発明の電解質は好ましくは次亜リン酸ソーダ、ホルムアルデヒド、ジメチルアミノボラン、アミノボラン、またはその他の有機ボランからなる群から選ばれる還元剤を含有し得る。
【0053】
還元剤は、還元過程で消費される。こうして、消費された還元剤の再添加が必要になる。本発明の電解質を用いれば、還元剤の損失を半分に減らすことが可能である。したがって、次亜リン酸ソーダとして15%少ない還元剤を使用することが可能となる。
【0054】
好ましくは、電解質は10〜25g/L濃度、より好ましくは12〜18g/L濃度の次亜リン酸ソーダを含む。
【0055】
本発明の電解質におけるカルボキシル成分および/またはβ−アミノ酸のアミドを含む金属イオンソースとして、同じ金属化合物が上記のように有利に使用され得、すなわち、金属塩化物、金属硫酸塩、酢酸金属塩、金属窒化物、プロピオン酸金属塩、蟻酸金属塩、シュウ酸金属塩、クエン酸金属塩およびアスコルビン酸金属塩からなる群から選ばれた金属化合物が用いられる。ここで、特に、酢酸金属塩、硝酸金属塩、プロピオン酸金属塩、および蟻酸金属塩の如き揮発性イオンを有する金属化合物が好ましく、それはアニオンの揮発性のためにそれらのアニオンが電解質中のアニオン量を減らし得るガス状で電解質から洩れ出すからである。このことは、普通の状態では限定されるだけの電解質の寿命を著しく引き伸ばす。例えば、揮発性アニオンの使用によって金属ターン・オーバー22、すなわち110 G Ni/Lにおいて、内部圧縮応力を有する金属層が堆積される。
【0056】
カルボキシル成分および/またはβ−アミノ酸のアミドを含む無電解めっき処方において、アミノ酸の好ましいpKa値、アミノ酸の選択、β−アミノ酸の総当量濃度、電解質(処方)のpH値、電解質が堆積に使用される温度、錯化剤の性質と選択、促進剤の性質と選択、およびその他の電解質の特徴、およびその無電解めっきにおける使用は、上記の通りである。
【0057】
本発明の好ましい態様において、本発明に従う電解質は以下からなる:
13.03g/L 硫酸ニッケル
1.925mg/L 沃化カリウム
17.27g/L 乳酸
5.94g/L リンゴ酸
40.2g/L 次亜リン酸ソーダ
9.81g/L 水酸化ナトリウム
0.35g/L β−アラニン
ここで、pHは4〜7の範囲。
【0058】
更に本発明の目的は、本発明に従う電解質から基板上に金属層を無電解で堆積させる方法によって解決され、次亜リン酸ソーダが還元剤として使用される。
【0059】
好ましくは、次亜リン酸ソーダ還元剤は5〜100g/Lの濃度、より好ましくは20〜60g/Lの濃度で存在し、還元剤として使用される。
【0060】
本発明のもう一つの目的は、本発明に従う方法によって堆積された基板表面上の金属層であり、金属層のリン組成は2−6%、6−10%、または>10.5%である。リンの量は金属層の性質に顕著な効果を与える。金属層の高いリン組成は、改善された性質、例えば改善された耐腐食性、低いリン組成は例えば金属層の改善された硬さに繋がる。
【0061】
本発明による金属層の更なる性質は、非常に不動態的であることである。
【0062】
本発明による金属層の更なる利点は、良好な残留圧縮応力である。
【0063】
本発明のさらなる目的は、本発明による安定剤の使用および/または基板表面上の金属層の無電解堆積のための本発明の方法である。
【0064】
基板上の金属層の無電解堆積のための本発明の電解質および発明に係る方法は、以下の実施例に関して説明されるが、一方で当該電解質および方法はそれらの態様のみに限定されない。
【0065】
本発明による安定剤は、ニッケル層の堆積のために特に適する。殊に、無電解ニッケルめっき法において、この高い性能安定剤は、種々の利点を示す。金属安定剤は不要で、アミド安定化浴は良好な耐腐食性を示し、硫酸ニッケルおよび/または酢酸ニッケルを含む、所謂ハイブリッドの系に適合され得る。
【0066】
安定剤に金属は添加しないが、安定剤に痕跡量のコバルトを含む可能性はある。
【0067】
安定剤は、pH2〜12の範囲で働く。
【0068】
本発明による安定剤の使用に際し、種々のリン組成の金属層を産出することが可能で、低いリン組成は3−5%(結晶性);中程度のリン組成は5−7(9)%(部分結晶性);高いリン組成>10%(非晶性)である。
【0069】
本発明に従ってさらに、β−アミノ酸は公知技術で通常用いられた安定剤の濃度より実質的に低いめっき浴中の相対濃度における安定剤として効果的であることが発見された。これは、カチオンの反応性を制限する安定剤の過剰添加を防ぎ、電解質処方が無電解堆積に用いられる方法の生産性を譲歩するものである。しかし乍、過剰添加、すなわち必要な安定剤濃度より高い濃度を使用することの反対効果はないか僅かであることが見出された。その場合、安定剤は十分な濃度のカルボキシル成分を含み、特にβ−アミノ酸が当該浴のカルボキシル成分のアミドに転換される。
【0070】
β−アミノ酸は、還元剤モル濃度に対するβ−アミノ酸の総当量濃度の比が約0.002当量/モル程度に低い場合、乱れた堆積に対して効果的であることが見出された。一般的に、還元剤に対する総当量β−アミノ酸濃度の好ましい比は、約0.002〜0.10、または約0.02〜約0.10、より好ましくは、約0.003〜約0.08または0.03〜0.08当量/モルである。過剰添加に対して保証するために、還元剤モル濃度に対するβ−アミノ酸の総当量濃度の比は、約0.07以下、例えば約0.002〜約0.07が好ましく、より好ましくは約0.05、例えば約0.003〜約0.05、さらに好ましくは約0.03以下である。
【0071】
しかし乍、β−アミノ酸がアミドの形で結合している場合は、当量β−アミノ酸の高い総濃度は例えば約0.002〜約0.2の総当量β−アミノ酸/モルの範囲に許容される。この範囲内で、当該比は0.10当量/モル以下、約0.05当量/モル以下、0.03当量/モル以下の順に好ましく、最小濃度は少なくとも約0.003当量/モルである。
【0072】
β−アミノ酸、β−アミノ酸オリゴマー、β−アミノ酸ポリマーおよび/またはモノマー。オリゴマー或いはポリマーの塩の相当するアミドへの比較的高い転化率を確実に遂行するために、総等価β−アミノ酸含有量の総等価カルボキシル成分の比は好ましくは比較的低く、すなわちカルボキシル成分は実質的に過剰であり、それはカルボン酸、カルボキシル化アニオン、カルボン酸とカルボキシル化アニオンの混合物、並びに処方中のアミンまたはアルコールとカルボン酸の縮合から得られるアミドおよびエステルを含む。β−アミノ酸はそれ自身カルボキシル成分であるから、β−アミノ酸残基とカルボキシル残基の関係は通常、総等価のβ−アミノ酸濃度の、総等価のカルボキシル成分濃度および総等価のβ−アミノ酸濃度の間の違いに対する総等価のβ−アミノ酸濃度の比として表現される。この関係の分母を構成する違いは、時として「カルボキシル差」として参照される。
【0073】
用語「総等価のβ−アミノ酸濃度」は、処法中のβ−アミノ酸残基の総濃度を参照するように理解され、アミノ酸の形体においてアミノ酸塩、β−アミノ酸とカルボキシル基部との反応によって形成されるアミド、アミドの塩、オリゴマー、オリゴマーの塩、ポリマー、ポリマーの塩、オリゴマーまたはポリマーのN−末端アミド等である。同様に、用語「総等価のカルボキシル濃度」は、カルボン酸、カルボン酸塩、アミド、またはオリゴマーかポリマーアミド塩として存在する処方中のカルボキシル残基の総濃度として参照される。「カルボキシル成分」はカルボキシル部分の全てのこれら種々のソース、または潜在的ソースの組合せである。
【0074】
カルボキシル差に対する総等価のβ−アミノ酸の好ましい比は、アミド形成反応のための平衡定数によって左右され、pH値や処方のその他のパラメータに今度は依存するパラメータである。一般に、カルボキシル差に対する総等価のβ−アミノ酸濃度の比は、約0.001〜0.5の範囲である。その範囲内で、当該比は好ましくは約0.4より大きくなく、より好ましくは約0.3より大きくなく、更により好ましくは約0.2または0.1以下である。β−アミノ酸の相当する酸への転化を促進し、転化が完全に行かないときには過剰添加を防ぐ両方の目的のために、カルボキシル差に対する総等価のβ−アミノ酸濃度の比は、0.07,0.05または0.03以下が好ましく、特に0.028以下、より好ましくは0.025以下、最も好ましくは0.020以下である。好ましくは当該比は少なくとも約0.002または0.003であり、約0.002〜約0.10、または約0.003〜約0.3の如くである。
【0075】
高いアミド組成を維持するために、処法(電解質)のpHは約4〜約6である。カルボン酸とアミンのアミドへの平衡定数は通常、このpH領域で好まれる。
【0076】
本発明の処方における比較的低い当量のβ−アミノ酸濃度は、無電解めっき浴から堆積される金属のカチオン濃度の総和に対する総当量β−アミノ酸濃度の比を参照して更に定義される。この比は一般的に約0.01〜約0.2当量/モルまたは約0.02〜約0.2当量/モルであるのが好ましい。これらの範囲内で、カチオン濃度の総和に対する総当量β−アミノ酸濃度の比が好ましくは約0.15以下、より好ましくは約0.10以下、最も好ましくは約0.08当量/モル以下である。
【0077】
本発明は、上記の還元剤に対する総当量アミノ酸比、当量カルボキシル差に対する比の総当量アミノ酸比、および還元性金属カチオン濃度の総和に対する総当量アミノ酸比、特に促進剤を含む好ましい処方におけるそれの上記比の組合せまで網羅する。
【0078】
めっき浴中のβ−アミノ酸の総当量濃度は、約1.2g/l以下、例えば約0.05〜約1.2g/lの範囲が更に一般的には好ましい。その範囲内で、総当量β−アミノ酸濃度は、約0.5g/l以下が好ましい。そのような処方において、還元剤の濃度は、好ましくは約0.05〜1.25モル/lで、例えば約5〜約100g/l次亜リン酸ソーダである。より好ましくは、還元剤の組成は約0.20〜0.70モル/lおよび約20〜約60g/lの次亜リン酸ソーダである。
【0079】
こうして、更なる例として、好ましいめっき組成物は、約0.05〜0.2モル/lの基板上に無電解的に堆積されるべき金属カチオン、約0.05〜約1.25モル/lの還元剤、約0.1〜約2モル/lの錯化剤、約0.002〜約0.25モル/lの促進剤、および約0.0005〜約0.015モル/lの総当量β−アミノ酸を含む。
【0080】
本発明の処方は、乳酸の如きα−ヒドロキシ酸を含むのが特に好ましい。本発明の電解質処方において、α−ヒドロキシモノカルボン酸およびα−ヒドロキシジカルボン酸の組合せ、例えば、乳酸とリンゴ酸の組合せを含むことが有利であることが更に見出された。その他の一般的α−ヒドロキシモノカルボン酸は、グリコール酸、ヒドロキシメチルグリコール酸、ヒドロキシブタンまたはヒドロキシペンタングルクロン酸、および−グルコン酸を含む。その他の一般的なα−ヒドロキシジカルボン酸は、タルトロン酸、タルタル酸、α−ヒドロキシグルタル酸およびα−ヒドロキシアジピン酸を含む。
【0081】
望ましい耐食性の金属リン合金は、無電解めっきの条件下、前記処方と接触する表面上に還元剤によってめっき溶液から還元され得る単一金属イオンのみ含む処法から堆積されることが更に見出された。こうして、本発明のある好ましい態様において、前記処方は単一の還元性カチオンだけの材料濃度を含む。
【0082】
本発明は更に、無電解めっき処方の調製のための新規で有利な方法を対象とする。その方法にしたがって、β−アミノ酸が、カルボキシル基およびアミノ酸のアミノ基との縮合により相当するアミドを形成する水溶性媒体中で実質的に過剰のカルボン酸またはその塩と最初に接触される。当該水溶性媒体中のカルボキシル成分に対する当量β−アミノ酸の好ましい比は、上記の本発明のめっき処方におけるカルボキシル差に対する総当量β−アミノ酸濃度の好ましい比について上述したのと本質的に同じである。好ましくは、1種またはそれ以上のカルボン酸が約3.5〜約10当量カルボキシル/lの比率で水溶性媒体に供給され、約0.01〜約0.1モル/lの比率でβ−アミノ酸が追随する。縮合反応は、β−アミノ酸のアミノ基とカルボン酸のカルボキシル部分間で進行し、それによって相当するアミドを形成する。
【0083】
予備混合物はまた、例えば還元剤、促進剤、および錯化剤を含む、無電解めっき溶液のその他の成分を含むことができる。予備混合物が調製されたあとで、β−アミノ酸とカルボキシル基が反応してアミドを生成し、無電解めっき処方が予備混合物を堆積される金属のカチオンを含む金属塩溶液と組合せて調製される。めっき溶液がこの方法で一旦調製されると、それは無電化めっきにおいて直接用いられる。
【0084】
本発明のある好ましい態様において、金属イオンがドナン透析法によってめっき溶液に導入された。ドナン透析法は、二工程法に特に適していて、予備混合物が、β−アミノ酸をカルボン酸、または水溶性媒体中のその他のカルボン酸源と混合して調製され、還元剤、錯化剤、促進剤もまた含まれ得る。この操作において、第1の溶液は堆積される金属のカチオンを含み、例えばカチオンが引き寄せられるスルホン酸基含有樹脂の如きカチオン交換樹脂を含む透析膜の一方の側に沿って接線方向に通される。その他のカチオン、例えば苛性ソーダ溶液の如き第2溶液は、めっきされる金属を含む溶液の流れ方向と好ましくは逆向する膜に平行な方向に反対の膜面に沿って接線方向に通される。好ましくは、第2溶液は還元剤、錯化剤、促進剤、および安定剤を含む。特に有利な態様において、第2溶液はβ−アミノ酸をカルボン酸またはカルボン酸誘導体と接触させて調製されるアミドを含む予備混合物からなる。
【0085】
透析は、温度、圧力の環境条件下で都合よく行なわれる。膜を通過する溶液の流速は一般に約0.25〜約4l/m2−分である。
【0086】
膜を介するイオン交換は、透析ユニットにおいて第2溶液のカチオンで進行し、例えばNaのようなアルカリ金属イオンであり、第1溶液に移動され引き続いて無電解めっき操作において堆積される金属、例えばNi+2またはCu+2が第2溶液に移動される。第1溶液から第2溶液へめっきされる金属の移動は、無電解めっきに直接有用な処方に第2溶液を移送することになる。それが第1溶液が通される側から反対の膜側に透析ユニットを離れるから、第2溶液は、必要に応じて濃縮、希釈、または追加的添加剤の導入を条件として、無電解めっきに直接有用な組成物を獲得する。
【0087】
第1溶液は、比較的希釈された苛性溶液、例えば10wt% NaOHとして透析ユニットを離れる。ドナン透析は、ここに明確に引用文献として加えられる米国公開特許出願2005/0194256に記載され方法に従って行われ得る。
【0088】
ドナン透析は、本発明の処方を堆積される金属の塩から調製されることを許容し、その塩は、幾つかの場合に所望されない塩の対イオンの添加なしに水溶性媒体に易溶である。ドナン透析においては、カチオンのみが膜を通過し、カチオンが運搬される溶液は、堆積される金属の溶解性塩の対イオンよりもめっき処方において受容される対イオンを主に含み、例えば、カチオン交換膜の一方へ届けられる可溶性塩が硫酸塩であり得て、それに対してカチオンが移動される側の対イオンは好ましくは水酸化物である。幾つかの場合に、堆積される金属のイオン対および受容されるアニオンからなる化合物は、水溶性媒体中で溶解性が限定される。しかし、そのカチオンが透析によって所望のカチオンを含む受け溶液へ移動される場合、受け溶液中の錯化剤の存在は、所望されないイオン対の沈殿、例えば金属水酸化物を防止する。
【実施例1】
【0089】
80℃〜94℃において、基板(鋼板)を以下からなる電解質に接触させる:
12.5g/l〜25.5g/lの酢酸ニッケル4水和物
30g/l〜50g/lの次亜リン酸ソーダ
32g/l〜55g/lの乳酸
0.5g/l〜10g/lのマロン酸
2.5g/l〜22g/lのサッカリンソーダ
0.1g/l〜2g/lの沃化カリ
200mg/l〜400mg/lのβ−アラニン
【0090】
pH4〜pH5の範囲のpHにおいて、この電解質から8μm/時間〜12μm/時間のめっき速度で基板表面に半光沢のニッケル層が堆積された。
【実施例2】
【0091】
80℃〜94℃において、基板(鋼板)を以下からなる電解質に接触させる:
12.5g/l〜25.5g/lの酢酸ニッケル4水和物
30g/l〜70g/lの次亜リン酸ソーダ
10g/l〜30g/lのグリシン
10g/l〜40g/lの25重量%アンモニア水
0.2g/l〜0.8g/lの沃化カリ
200mg/l〜400mg/lのβ−アラニン
【0092】
pH5〜pH7の範囲のpHにおいて、この電解質から電解質の温度に依存して、15μm/時間〜40μm/時間のめっき速度で基板表面に半光沢のニッケル層が堆積された。
【実施例3】
【0093】
ABS製のプラスチック試料をクロム硫酸でエッチングし、Pd−活性化剤システムで活性化し、以下の電解質に接触させた:
10g/l 硫酸銅
8g/l 苛性ソーダ
10g/l ホルムアルデヒド(37wt%水溶液として)
26g/l クアドロール(BASF AGより入手可)
200mg/l β−アラニン
【0094】
上記の電解質から、40℃、20分間以内で基板上に0.4〜0.6μmの厚さの銅層がめっきされた。めっきの結果はEnthone社のEnplate CU872(重金属を含む)として商業的に入手可能の電解質からABSプラスチック基板に同じ条件で堆積させたときに達成されためっき結果と全く同等であった。
【0095】
加えて、上述の実施例において、硫酸銅は等モル量で塩化銅と置換し得る。得られた電解質は−2〜+5の酸化状態の硫黄化合物を含まず、硫黄も全く含まない。
【実施例4】
【0096】
真鍮試料をアルカリ脱脂液で脱脂して10硫酸中で活性化し、洗浄し、以下の電解質に接触させた:
5g/l 硫酸銅
4g/l 苛性ソーダ
10g/l ホルムアルデヒド(37wt%水溶液として)
400mg/l β−アラニン
11g/l クアドロール
【0097】
80℃でこの電解質から20分以内に0.5μmの厚さを有する銅層が真鍮表面に堆積された。
【0098】
比較例において、電解質中のクアドロール(N,N,N,N−テトラキス(2−ヒドロキシプロピル)エチレンジアミン)を15〜20g/lのエチレンジアミン四酢酸四ソーダ(Na4EDTA)に代替したところ、めっきの状態はクアドロ−ルを使用した場合と殆ど同じ結果が得られた。
【実施例5】
【0099】
85℃において、pH4〜5において、鋼板を以下の電解質に接触させた:
10g/l〜28g/l 硫酸ニッケル6水和物
30g/l〜50g/l 次亜リン酸ソーダ
32g/l〜55g/l 乳酸
0.5g/l〜10g/l マロン酸
2.5g/l〜22g/l サッカリンソーダ
0.1g/l〜2g/l 沃化カリウム
200mg/l〜400mg/l β−アラニン
【0100】
めっき速度約9μm/時間で、半光沢のニッケル層が鋼板上に堆積された。
【実施例6】
【0101】
40℃において、銅基板をpH値約10の以下の電解質に接触させた:
25g/l 酢酸ニッケル4水和物
30g/l クエン酸
30g/l 次亜リン酸ソーダ
1g/l ジメチルアミノボラン
7g/l グリシン
200mg/l β−アラニン
【0102】
この電解質から光沢のあるニッケル層が2.5μm/時間のめっき速度で、自発的に堆積された。めっき不良は起こらなかった。電解質は長期間に渡って安定であった。
【0103】
同じ電解質を真鍮基板にニッケル層堆積のために用いたが、銅基板めっきと同じ結果が得られた。
【実施例7】
【0104】
6.7g/l 塩化銅(II)二水和物
23g/l クアドロール
8.9g/l ホルムアルデヒド(37重量%水溶液として)
8.2g/l 苛性ソーダ
200mg/l β−アラニン
【0105】
上記の電解質から40℃において、20分以内に基板上に0.4〜0.6μmの銅層がめっきされた。めっきの結果は、Enthone社のEnplate CU872(重金属を含む)として商業的に入手可能の電解質からABSプラスチック基板に同じ条件で堆積させたときに達成されためっき結果と全く同等であった。
【実施例8】
【0106】
硫酸クロムでエッチングされ、およびパラジウム活性剤システムによって活性化されたABSから作られたプラスチック試料を以下からなる電解質に接触させた:
10g/l 苛性ソーダ
10ml/l ホルムアルヒド(37重量%水溶液として)
23g/l クアドロ−ル(N,N,N,N−テトラキス(2−ヒドロキシプロピル)エチレンジアミン
200〜400mg/l β−アラニン
【0107】
銅の添加
ABS試料をドナン透析によってアルカリ安定カチオン選択性イオン交換膜を介して電解質に接触させる前に、銅をこの電解質に添加した。銅源として硫酸銅溶液が用いられた。めっき溶液および硫酸銅溶液は透析システムを介して向流させた。めっき液中のナトリウムイオンは、硫酸銅溶液からの銅イオンと、対の(水酸化物及び硫酸塩)イオンを引張込んだり出したりせずに置換された。流速は銅濃度が浴中で2.5g/lに達するまで、イオン交換膜表面を接線方向に横切って1l/m2・分であった。その後、銅濃度が2.3g/lを下回れば透析がスイッチオンにされた。
【0108】
無電解銅電解質の維持−水酸化物の部分的補充めっき中の塩負担の増加を止めるために、追加的にドナン透析が行われた。この追加透析に使用される透析システムは、アルカリ安定アニオン交換膜からなる。ホルミエートおよびCO2−イオン(望まれない副産物)は、無電解銅堆積反応に使用される水酸化物によって選択的に置換された。
【0109】
めっき溶液と苛性ソーダ溶液(20g/l)は向流された。流速は、めっき溶液が1−2l/m2・時間であり、苛性ソーダ溶液が0.5−1l/m2・時間であった。交換速度は7−15g(NaOH)/m2・時間であった(浴中のホルミエートおよびカーボネートに対し)。
【0110】
透析の助けによって、高塩負担のドリフト(傾向)が止まった。
【0111】
めっきの結果、プラスチック基板上に40℃で25分以内に0.4μmの厚みを持つ銅層が堆積された。
【実施例9】
【0112】
1.錯化剤、次亜リン酸および/または安定剤の生成を含む促進剤の予備混合物(B部)
200−400g/L 次亜リン酸ソーダ;
100−500g/L 苛性ソーダ;
200−500g/L 乳酸;
100−200g/L リンゴ酸;および
2−5g/L β−アラニン
2.還元剤成分および安定剤の予備混合物(C部)
500−800g/L 次亜リン酸ソーダ;
25−250g/L 苛性ソーダ;
25−100g/L 乳酸;
10−80g/L リンゴ酸;および
5−15g/L β−アラニン
3.ニッケル塩の予備混合物(A部)
300−550g/L NiSO4*6H2O;および
50−445g/L Ni(OOCCH3)2*4H2O
【0113】
予備混合物1および2が少なくとも15分間、酸とβ−アラニンを完全反応させアミドを生成するために調製、混合された。そうして、100−150g/LのB部、および30−100ml/LのA部を混合し、70−95℃に加熱した。
【0114】
C部およびA部は補充に用いられた。通常1:1の比である。
【0115】
比の許容変化および発明の要素の代替:めっき電解質組成物:3−6g/L Ni2+;25−40g/L 次亜リン酸ソーダ;pH4−9;400−1200mg/L 安定剤
【実施例10】
【0116】
基板上のニッケル層の無電解堆積のための電解質組成物は以下を含む:
13.03g/L 硫酸ニッケル;
1.925g/L 沃化カリウム;
17.27g/L 乳酸;
5.94g/L リンゴ酸;
40.2g/L 次亜リン酸ソーダ;
9.81g/l 苛性ソーダ;
0.35g/L β−アラニン;
ここで、pHは、pH4〜pH7の範囲である。
【0117】
本発明による電解質の使用は、リン素含有量が>10.5%の金属層をもたらす。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
堆積される金属のための金属イオン源、還元剤、錯化剤、促進剤、並びに安定剤を含む基板上に金属層を無電解で堆積するための電解質であって、当該電解質は安定剤としてβ−アミノ酸を含むことを特徴とする。
【請求項2】
前記β−アミノ酸が4〜8、好ましくは5〜7のpKa値を有することを特徴とする請求項1による電解質。
【請求項3】
前記β−アミノ酸が、3−アミノプロピオン酸、3−アミノブタン酸、3−アミノ−4−メチル吉草酸、および2−アミノエタンスルホン酸からなる群から選ばれた酸である、請求項1または2による電解質。
【請求項4】
還元剤として次亜リン酸ソーダ、ホルムアルデヒド、ジメチルアミノボラン、アミノボラン、およびその他の有機ボランからなる群から選ばれた化合物が含まれる、請求項1〜3の何れかによる電解質。
【請求項5】
金属イオン源としての前記電解質が、金属塩化物、金属硫酸塩、金属酢酸塩、金属窒化物、金属プロピオン酸塩、金属ホルミエート、金属シュウ酸塩、金属クエン酸塩、および金属アスコルビン酸塩からなる群から選ばれた金属化合物を含む、請求項1〜4の何れかによる電解質。
【請求項6】
前記電解質が、錯化剤として、2−ヒドロキシプロピオン酸、プロパン二酸(マロン酸)、EDTA、およびアミノ酢酸からなる群から選ばれた化合物を含む、請求項1〜5の何れかによる電解質。
【請求項7】
前記電解質が、促進剤としてサッカリン、ヒダントイン、ローダミン、カルバミド、およびカルバミド誘導体からなる群から選ばれた化合物を含む、請求項1〜6の何れかによる電解質。
【請求項8】
前記電解質が、無機安定剤、特に鉛、ビスマス、アンチモン、亜鉛、および/またはスズを含まない、請求項1〜7の何れかによる電解質。
【請求項9】
堆積される金属がニッケル、銅、コバルト、ホウ素、金、またはこれらの金属の1つを少なくとも含む合金からなる群から選ばれた金属である請求項1〜8の何れかによる電解質。
【請求項10】
前記電解質がシアニド、セレン化合物、−2〜+5の酸化状態における硫黄を含む硫黄化合物を含まない、請求項1〜9の何れかによる電解質。
【請求項11】
めっきされる基板が、安定剤としてβ−アミノ酸を含む電解質と接触するようにされる、基板上の金属層の無電解堆積の方法。
【請求項12】
金属表面上に金属を無電解で堆積させるための電解質における安定剤としてのβ−アミノ酸の使用。
【請求項13】
少なくとも1つのβ−アミノ酸、少なくとも1つのカルボン酸、および/または少なくとも1つのカルボン酸塩の縮合生成物である有機分子からなる無電解めっき法に用いる有機安定剤。
【請求項14】
β−アミノ酸が、3−アミノプロピオン酸、3−アミノブチル酸、3−アミノ−4−メチル吉草酸、および2−アミノエタンスルホン酸からなる群から選ばれた化合物であることを特徴とする請求項13による安定剤。
【請求項15】
前記カルボン酸が、アクリル酸、芳香族カルボン酸、脂肪酸、脂肪族カルボン酸、ケト酸、二カルボン酸、三カルボン酸、直鎖状カルボン酸、複素環式カルボン酸、飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸、およびα−ヒドロキシ酸からなる群から選ばれた化合物であることを特徴とする請求項13または14による安定剤。
【請求項16】
堆積される金属のための金属イオンソース、還元剤、錯化剤、促進剤、安定剤を含む基板上の金属層の無電解堆積のための電解質であって、前記安定剤がβ−アミノ酸であり、前記電解質が少なくとも1つの追加のカルボン酸および/または少なくとも1つのカルボン酸塩を含むことを特徴とする。
【請求項17】
前記カルボン酸が、アクリル酸、芳香族カルボン酸、脂肪酸、脂肪族カルボン酸、ケト酸、二カルボン酸、三カルボン酸、直鎖状カルボン酸、複素環式カルボン酸、飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸、およびα−ヒドロキシ酸からなる群から選ばれた化合物であることを特徴とする請求項16による電解質。
【請求項18】
β−アミノ酸が、3−アミノプロピオン酸、3−アミノブチル酸、3−アミノ−4−メチル吉草酸、および2−アミノエタンスルホン酸からなる群から選ばれた化合物である、請求項16または17による電解質。
【請求項19】
前記電解質が0.5g/L未満のβ−アミノ酸を含むことを特徴とする請求項16〜18の何れかによる電解質。
【請求項20】
前記電解質が5〜100g/Lの濃度の次亜リン酸ソーダを含むことを特徴とする請求項16〜19の何れかによる電解質。
【請求項21】
前記電解質が20〜60g/Lの濃度の次亜リン酸ソーダを含むことを特徴とする請求項16〜20の何れかによる電解質。
【請求項22】
以下からなる請求項1〜21の何れかによる電解質:
13.03g/L 硫酸ニッケル;
1.925g/L 沃化カリウム;
17.27g/L 乳酸;
5.94g/L リンゴ酸;
40.2g/L 次亜リン酸;
9.81g/L 苛性ソーダ;
0.35g/L β―アラニン;
ここで、pHは、pH4〜7の範囲である。
【請求項23】
次亜リン酸ソーダが還元剤に用いられることを特徴とする、請求項1〜22の何れかによる基板の上の金属層の無電解堆積のための方法。
【請求項24】
5〜100g/Lの濃度の次亜リン酸ソーダが還元剤として用いられることを特徴とする請求項23による電解質。
【請求項25】
次亜リン酸ソーダが20〜60g/L濃度で還元剤として用いられることを特徴とする請求項23による電解質。
【請求項26】
前記金属層のリン含有量が2〜6%、6〜10%、または10.5%超であることを特徴とする請求項23〜25の何れかによる方法によって堆積された基板表面上の金属層。
【請求項27】
基板表面上の金属層の無電解堆積のための、請求項13による安定剤の使用および/または請求項23〜25の何れかによる方法の使用。
【請求項28】
基板上の金属層の無電解堆積のために有用な処方であって、前記処方は堆積される金属のカチオンソース、還元剤、錯化剤、およびβ−アミノ酸、β−アミノ酸の誘導体、およびそれらの組合せからなる群から選ばれた安定剤を含み、β−アミノ酸の総当量濃度の前記還元剤の濃度の比が約0.07当量/モル以下である。
【請求項29】
β−アミノ酸の誘導体がβ−アミノ酸塩、β−アミノ酸アミド、β−アミノ酸アミドの塩、前記酸及び塩のオリゴマー、前記酸及び塩のポリマー、およびそれらの組合せからなる群から選ばれることを特徴とする請求項28による処方。
【請求項30】
前記β−アミノ酸が約4〜約8のpKa値を有する請求項28または29の何れかによる処方。
【請求項31】
前記β−アミノ酸が約5〜約7のpKa値を有する請求項30による処方。
【請求項32】
前記処方のpH値が約4〜約6である請求項28〜31の何れかによる処方。
【請求項33】
前記安定剤が3−アミノプロピオン酸、3−アミノブチル酸、3−アミノ−4−メチル吉草酸、および2−アミノエタンスルホン酸、3−アミノプロピオン酸、3−アミノブチル酸、3−アミノ−4−メチル吉草酸、および2−アミノエタンスルホン酸の誘導体、およびそれらの組合せからなる群から選ばれた、β−アミノ酸をふくむ請求項29〜32の何れかによる処方。
【請求項34】
前記還元剤が、次亜リン酸アルカリ金属塩、ホルムアルデヒド、ジメチルアミノボラン、アミノボラン、ホルメート、シュウ酸塩、クエン酸塩、およびアスコルビン酸塩からなる群から選ばれた請求項28から33の何れかによる処方。
【請求項35】
前記の金属カチオン源が、塩化物、硫酸塩、酢酸塩、硝酸塩、プロピオン酸塩、ホルメート、シュウ酸塩、クエン酸塩、アスコルビン酸塩からなる群から選ばれた対イオンを含む請求項28〜34の何れかによる処方。
【請求項36】
前記錯化剤が、2−ヒドロキシプロピオン酸、プロパン二酸、エチレンジアミン四酢酸、アミノ酢酸、およびそれらの塩からなる群から選ばれた請求項28〜35の何れかによる処方。
【請求項37】
更に促進剤を含む請求項28〜36の何れかによる処方。
【請求項38】
前記促進剤が、サッカリン、ヒダントイン、ローダミン、カルバミド、カルバミド誘導体からなる群から選ばれた請求項37による処方。
【請求項39】
鉛、ビスマス、アンチモン、亜鉛、および錫の濃度の和が約0.01重量%以下である請求項28〜38の何れかによる処方。
【請求項40】
鉛の含有量が5ppm未満、ビスマスの含有量が5ppm未満、亜鉛の含有量が、100ppm未満である請求項39による処方。
【請求項41】
前記処方が実質的に鉛、ビスマス、アンチモン、亜鉛、および錫を含まない請求項39による処方。
【請求項42】
前記還元剤モル濃度に対する総当量β−アミノ酸濃度の比が約0.05当量/モル以下である請求項28〜41の何れかによる処方。
【請求項43】
前記還元剤モル濃度に対する総当量β−アミノ酸濃度の比が0.03:1当量/モル以下である請求項42による処方。
【請求項44】
前記還元剤モル濃度に対する総当量β−アミノ酸濃度の比が0.02:1当量/モル以下である請求項42による処方。
【請求項45】
前記還元剤モル濃度に対する総当量β−アミノ酸濃度の比が少なくとも約0.002当量/モルである請求項28〜44による処方。
【請求項46】
前記還元剤モル濃度に対する総当量β−アミノ酸濃度の比が少なくとも約0.003当量/モルである請求項42による処方。
【請求項47】
基板上の金属層の無電解堆積に有用な処方であって、前記処方が堆積される金属のカチオン源、還元剤、錯化剤、β−アミノ酸、β−アミノ酸の誘導体、およびそれらの組合せからなる群から選ばれた安定剤、およびカルボン酸及びそれらの塩からなる群から選ばれた少なくとも1つの追加のカルボキシル化合物を含み、総当量β−アミノ酸濃度の処方中の総当量カルボキシル濃度と前記総当量β−アミノ酸濃度の間の差に対する比が約0.028以下である。
【請求項48】
前記β−アミノ酸誘導体が、β−アミノ酸塩、β−アミノ酸アミド、β−アミノ酸アミドの塩、前記酸及び塩のオリゴマー、前記酸及び塩のポリマー、およびそれらの組合せからなる群から選ばれることを特徴とする請求項47による処方。
【請求項49】
モノカルボン酸、ジカルボン酸、トリカルボン酸、またはそれらの組合せの酸、それらの塩、前記酸及び塩の組合せからなる群から選ばれたカルボキシル成分を含む請求項47または48の処方。
【請求項50】
前記カルボキシル成分が、芳香族カルボン酸、飽和脂肪族カルボン酸、不飽和脂肪族カルボン酸、複素環式カルボン酸、それらの塩、および前記酸と塩の組合せを含む請求項49による処方。
【請求項51】
前記カルボキシル成分が、脂肪酸、C〜Cのα−ヒドロキシル酸、C〜Cのα,β−不飽和カルボン酸、それらの塩、前記酸と塩の組合せから選ばれた脂肪酸を含む請求項49による処方。
【請求項52】
アクリル酸、その塩、前記酸と塩の混合物からなる請求項51による処方。
【請求項53】
β−アミノ酸とカルボン酸またはカルボキシレート・アニオンの縮合品を含むアミドを含む請求項48〜56の何れかによる処方。
【請求項54】
前記β−アミノ酸が約4〜約8のpKaを有する請求項48〜53の何れかによる処方。
【請求項55】
前記β−アミノ酸が約5〜約7のpKa値を有する請求項54による処方。
【請求項56】
前記処方のpHが、約4〜約6である請求項48〜55の何れかによる処方。
【請求項57】
前記安定剤が3−アミノプロピオン酸、3−アミノブチル酸、3−アミノ−4−メチル吉草酸、および2−アミノエタンスルホン酸、3−アミノプロピオン酸、3−アミノブチル酸、3−アミノ−4−メチル吉草酸、および2−アミノエタンスルホン酸の誘導体およびそれらの組合せからなる群から選ばれるβ−アミノ酸を含む請求項49〜55の何れかによる処方。
【請求項58】
前記還元剤が、次亜リン酸ソーダ、ホルムアルデヒド、ジメチルアミノボラン、アミノボラン、およびその他の有機ボランからなる群から選ばれる請求項48〜57の何れかによる処方。
【請求項59】
前記金属カチオン源が、塩化物、硫酸塩、酢酸塩、硝酸塩、プロピオン酸塩、ホルメート、シュウ酸塩、クエン酸塩、およびアスコルビン酸塩から選ばれてなる対イオンを含んでなる請求項48〜58の何れかによる処方。
【請求項60】
前記錯化剤が、2−ヒドロキシプロピオン酸、プロパン二酸、エチレンジアミン四酢酸、アミノ酢酸、およびそれらの塩からなる群から選ばれてなる請求項48〜59の何れかによる処方。
【請求項61】
さらに促進剤を含んでなる請求項48〜60の何れかによる処方。
【請求項62】
前記促進剤が、サッカリン、ヒダントイン、ローダミン、カルバミド、カルバミド誘導体からなる群から選ばれてなる請求項61による処方。
【請求項63】
鉛、ビスマス、アンチモン、亜鉛、および錫の濃度の和が約0.01重量%以下である請求項48〜60の何れかによる処方。
【請求項64】
鉛の含有量が5ppm未満、ビスマスの含有量が5ppm未満、亜鉛の含有量が、100ppm未満である請求項63による処方。
【請求項65】
前記処方が実質的に鉛、ビスマス、アンチモン、亜鉛、および錫を含まない請求項64による処方。
【請求項66】
前記還元剤モル濃度に対する総当量β−アミノ酸濃度の比が約0.05:1当量/モル以下である請求項48〜65の何れかによる処方。
【請求項67】
総当量β−アミノ酸濃度の、処方中の総当量カルボキシル濃度と前記総当量β−アミノ酸濃度の間の差に対する比が約0.025以下である請求項48〜66の何れかによる処方。
【請求項68】
総当量β−アミノ酸濃度の、処方中の総当量カルボキシル濃度と前記総当量β−アミノ酸濃度の間の差に対する比が約0.020以下である請求項67による処方。
【請求項69】
総当量β−アミノ酸濃度の、処方中の総当量カルボキシル濃度と前記総当量β−アミノ酸濃度の間の差に対する比が約0.015以下である請求項68による処方。
【請求項70】
総当量β−アミノ酸濃度の、処方中の総当量カルボキシル濃度と前記総当量β−アミノ酸濃度の間の差に対する比が約0.010以下である請求項68による処方。
【請求項71】
総当量β−アミノ酸濃度の、処方中の総当量カルボキシル濃度と前記総当量β−アミノ酸濃度の間の差に対する比が少なくとも約0.002以下である請求項48〜70の何れかによる処方。
【請求項72】
総当量β−アミノ酸濃度の、処方中の総当量カルボキシル濃度と前記総当量β−アミノ酸濃度の間の差に対する比が少なくとも約0.003である請求項48〜70による処方。
【請求項73】
基板上に無電解で堆積される金属のカチオンが約0.05〜約0.2モル/リットル、還元剤が約0.05〜約1.25モル/リットル、錯化剤が約0.1〜約2モル/リットル、促進剤が約0.002〜0.25モル/リットル、総当量β−アミノ酸が約0.0005〜0.015モル/リットルを含む水溶性無電解めっき浴。
【請求項74】
基板上に無電解で堆積される金属のカチオンが約0.08〜約0.15モル/リットル、還元剤が約0.07〜約1.0モル/リットル、錯化剤が約0.3〜約1.5モル/リットル、促進剤が約0.005〜0.15モル/リットル、総当量β−アミノ酸が約0.002〜0.010モル/リットルを含む請求項73による水溶性無電解めっき浴。
【請求項75】
基板に無電解堆積される金属、還元剤、錯化剤、β−アミノ酸アミドを含んでなる水溶性無電解めっき浴。
【請求項76】
さらに、モノカルボン酸、ジカルボン酸、トリカルボン酸、またはそれら酸の組合せ、それらの塩、前記酸と塩の組合せからなる群から選ばれたカルボキシル成分を含んでなる請求項75によるめっき浴。
【請求項77】
前記カルボキシル成分が、芳香族カルボン酸、飽和脂肪族カルボン酸、不飽和脂肪族カルボン酸、複素環式カルボン酸、それらの塩、前記酸と塩の組合せから選ばれたカルボン酸を含んでなる請求項73〜76の何れかによるめっき浴。
【請求項78】
前記カルボキシル成分が、脂肪酸、C〜Cのα−ヒドロキシル酸、C〜Cのα,β−不飽和カルボン酸、それらの塩、前記酸と塩の組合せから選ばれた脂肪酸を含んでなる請求項77によるめっき浴。
【請求項79】
アクリル酸、その塩、または前記酸と塩の混合物を含む請求項78による処方。
【請求項80】
さらに促進剤を含む請求項75〜79の何れかによる処方。
【請求項81】
前記促進剤が、サッカリン、ヒダントイン、ローダミン、カルバミド、カルバミド誘導体からなる群から選ばれた請求項80による処方。
【請求項82】
前記還元剤モル濃度に対する総当量β−アミノ酸濃度の比が約0.20当量/モル以下である請求項47〜81の何れかによる処方。
【請求項83】
前記還元剤モル濃度に対する総当量β−アミノ酸濃度の比が約0.15当量/モル以下である請求項82による処方。
【請求項84】
前記還元剤モル濃度に対する総当量β−アミノ酸濃度の比が約0.10当量/モル以下である請求項82による処方。
【請求項85】
前記還元剤モル濃度に対する総当量β−アミノ酸濃度の比が約0.07当量/モル以下である請求項82よる処方。
【請求項86】
前記還元剤モル濃度に対する総当量β−アミノ酸濃度の比が約0.05当量/モル以下である請求項82による処方。
【請求項87】
前記還元剤モル濃度に対する総当量β−アミノ酸濃度の比が約0.03当量/モル以下である請求項82による処方。
【請求項88】
前記還元剤モル濃度に対する総当量β−アミノ酸濃度の比が約0.02当量/モル以下である請求項82による処方。
【請求項89】
前記還元剤モル濃度に対する総当量β−アミノ酸濃度の比が少なくとも約0.002当量/モルである請求項82〜88の何れかによる処方。
【請求項90】
前記還元剤モル濃度に対する総当量β−アミノ酸濃度の比が少なくとも約0.003当量/モルである請求項82〜88の何れかによる処方。
【請求項91】
前記還元剤モル濃度に対する総当量β−アミノ酸濃度の比が約0.02〜0.10当量/モルである請求項82〜88の何れかによる処方。
【請求項92】
前記還元剤モル濃度に対する総当量β−アミノ酸濃度の比が約0.03〜0.08当量/モルである請求項82〜88の何れかによる処方。
【請求項93】
総当量β−アミノ酸濃度の、処方中の総当量カルボキシル濃度と前記総当量β−アミノ酸濃度の間の差に対する比が約0.5以下である、請求項1〜46および請求項82〜92が請求項47〜72に従属する場合を除いて請求項73〜92による処方。
【請求項94】
総当量β−アミノ酸濃度の、処方中の総当量カルボキシル濃度と前記総当量β−アミノ酸濃度の間の差に対する比が約0.3以下である請求項93による処方。
【請求項95】
総当量β−アミノ酸濃度の、処方中の総当量カルボキシル濃度と前記総当量β−アミノ酸濃度の間の差に対する比が約0.2以下である請求項93による処方。
【請求項96】
総当量β−アミノ酸濃度の、処方中の総当量カルボキシル濃度と前記総当量β−アミノ酸濃度の間の差に対する比が約0.1以下である請求項93による処方。
【請求項97】
総当量β−アミノ酸濃度の、処方中の総当量カルボキシル濃度と前記総当量β−アミノ酸濃度の間の差に対する比が約0.07以下である請求項93による処方。
【請求項98】
総当量β−アミノ酸濃度の、処方中の総当量カルボキシル濃度と前記総当量β−アミノ酸濃度の間の差に対する比が約0.05以下である請求項93による処方。
【請求項99】
総当量β−アミノ酸濃度の、処方中の総当量カルボキシル濃度と前記総当量β−アミノ酸濃度の間の差に対する比が約0.03以下である請求項93による処方。
【請求項100】
総当量β−アミノ酸濃度の、処方中の総当量カルボキシル濃度と前記総当量β−アミノ酸濃度の間の差に対する比が約0.02以下である請求項93による処方。
【請求項101】
総当量β−アミノ酸濃度の、処方中の総当量カルボキシル濃度と前記総当量β−アミノ酸濃度の間の差に対する比が約0.02〜約0.10である請求項93による処方。
【請求項102】
総当量β−アミノ酸濃度の、処方中の総当量カルボキシル濃度と前記総当量β−アミノ酸濃度の間の差に対する比が約0.03〜約0.08である請求項93による処方。
【請求項103】
総当量β−アミノ酸濃度の、処方中の総当量カルボキシル濃度と前記総当量β−アミノ酸濃度の間の差に対する比が少なくとも約0.002である請求項93〜99の何れかによる処方。
【請求項104】
総当量β−アミノ酸濃度の、処方中の総当量カルボキシル濃度と前記総当量β−アミノ酸濃度の間の差に対する比が少なくとも約0.003である請求項93〜99の何れかによる処方。
【請求項105】
堆積される全ての金属のカチオンモル濃度の和に対する総当量β−アミノ酸濃度の比が約0.20:1当量/モル以下である、請求項28〜104の何れかによる処方。
【請求項106】
堆積される前記金属カチオンモル濃度の和に対する総当量β−アミノ酸濃度の比が約0.15当量/モル以下である、請求項105による処方。
【請求項107】
堆積される前記金属カチオンモル濃度の和に対する総当量β−アミノ酸濃度の比が約0.10当量/モル以下である、請求項105による処方。
【請求項108】
堆積される前記金属カチオンモル濃度の和に対する総当量β−アミノ酸濃度の比が約0.08当量/モル以下である、請求項105による処方。
【請求項109】
堆積される前記金属カチオンモル濃度の和に対する総当量β−アミノ酸濃度の比が少なくとも約0.01当量/モルである、請求項105による処方。
【請求項110】
堆積される前記金属カチオンモル濃度の和に対する総当量β−アミノ酸濃度の比が少なくとも約0.02当量/モルである、請求項105による処方。
【請求項111】
総当量β−アミノ酸含有量が約1.2g/l以下を含んでなる請求項28〜110の何れかによる処方。
【請求項112】
総当量β−アミノ酸含有量が約0.05〜1.2g/l含んでなる請求項111による処方。
【請求項113】
総当量β−アミノ酸含有量が約0.5g/l含んでなる請求項112による処方。
【請求項114】
還元剤の総濃度が0.05〜約1.25モル/lである請求項28〜113の何れかによる処方。
【請求項115】
次亜リン酸ソーダを約5〜約100g/l含有する請求項114による処方。
【請求項116】
還元剤の総濃度が約0.20〜約0.70である請求項114による処方。
【請求項117】
次亜リン酸ソーダを約20〜約60g/l含有する請求項115による処方。
【請求項118】
α−ヒドロキシカルボン酸を含む請求項28〜117の何れかによる処方。
【請求項119】
乳酸を含む請求項118による処方。
【請求項120】
α−ヒドロキシモノカルボン酸およびα−ヒドロキシジカルボン酸を含む請求項119による処方。
【請求項121】
乳酸およびリンゴ酸を含む請求項120による処方。
【請求項122】
前記処方から還元剤によって、処方と接触して表面に還元できる単一カチオンのみを含んでなる請求項28〜121の何れかによる処方。
【請求項123】
硫黄が−2〜+5のバランスを含む硫黄化合物を実質的に含まない請求項28〜122の何れかによる処方。
【請求項124】
以下からなる無電解めっき溶液を調製する工程:
β−アミノ酸またはβ−アミノ酸誘導体を予備混合物を生成するために水性媒体中でカルボキシル成分と接触させ;
前記予備混合物を、堆積される金属カチオン源を含んでなる水溶液と組合せる。
【請求項125】
前記予備混合物がまた還元剤を含む請求項124による工程。
【請求項126】
前記予備混合物がまた錯化剤および促進剤を含む請求項125による工程。
【請求項127】
前記β−アミノ酸誘導体が、β−アミノ酸塩、β−アミノ酸アミド、β−アミノ酸アミドの塩、前記酸及び塩のオリゴマー、前記酸及び塩のポリマー、およびそれらの組合せからなる群から選ばれることを特徴とする請求項124〜126の何れかによる工程。
【請求項128】
前記カルボキシル成分が、モノカルボン酸、ジカルボン酸、トリカルボン酸、またはそれら酸の組合せ、それらの塩、前記酸及び塩の組合せからなる群から選ばれた請求項124〜127の何れかによる工程。
【請求項129】
前記カルボキシル成分が、芳香族カルボン酸、飽和脂肪族カルボン酸、不飽和脂肪族カルボン酸、複素環式カルボン酸、それらの塩、および前記酸及び塩の組合せからなる群から選ばれた請求項128による工程。
【請求項130】
前記カルボキシル成分が、脂肪酸、C〜Cα−ヒドロキシル酸、C〜Cα,β−不飽和カルボン酸、それらの塩、および前記酸及び塩の組合せからなる群から選ばれた脂肪族酸を含んでなる請求項129による工程。
【請求項131】
アクリル酸、その塩、または前記酸及び塩の混合物からなる群から選ばれた化合物を少なくとも1つを含んでなる請求項130による工程。
【請求項132】
前記カルボン酸がα−ヒドロキシカルボン酸を含んでなる請求項128による工程。
【請求項133】
前記カルボキシル成分が乳酸を含んでなる請求項132による工程。
【請求項134】
前記カルボキシル成分がα−ヒドロキシモノカルボン酸およびα−ヒドロキシジカルボン酸を含んでなる請求項132による工程。
【請求項135】
前記カルボキシル成分が乳酸およびリンゴ酸を含んでなる請求項134による工程。
【請求項136】
前記β−アミノ酸および前記カルボン酸が前記予備混合物中で反応し、それらのアミドを生成する請求項124〜129の何れかによる工程。
【請求項137】
以下からなる無電解めっき溶液を調製する工程:
第1の金属カチオンからなる第1の溶液をカチオン交換樹脂からなる透析膜を介して通過させ、前記第1金属カチオンは無電解めっき浴から堆積される金属を含み;
β−アミノ酸またはβ−アミノ酸誘導体、および別のカチオンからなる第2溶液を前記第1面に対向する前記膜の面を介して通過させ;
前記第1の溶液の前記第1の金属カチオンを前記第2の溶液の別の金属カチオンで交換し、それによって、前記第2の溶液を無電解めっきに有用な処方に転換する。
【請求項138】
前記第1の溶液と前記第2の溶液が、前記膜の反対側へおよび当該反対側に交差して接線方向に向流的に通過させる、請求項137による工程。
【請求項139】
前記第1の溶液が前記β−アミノ酸および前記カルボン酸のアミドを含んでなる請求項137または138による工程。
【請求項140】
前記溶液の各々の前記膜を接線方向に交差して通過する速度は、約0.25〜4l/m−分である、請求項137〜139の何れかによる工程。
【請求項141】
堆積される基板を請求項1〜123の何れかによるめっき処方に接触させることからなる、および/または請求項124〜140の何れかの工程によって調製されたように、基板上の金属層を無電解堆積する方法。
【請求項142】
前記基板を前記処方に接触させて、前記処方に含まれる金属カチオンの還元によって作られた金属の合金を含んでなる堆積物の基板上の無電解形成させる請求項141による方法。
【請求項143】
前記合金がさらにリン元素を含んでなる請求項142による方法。
【請求項144】
前記堆積物が前記めっき処方から還元された単一金属のみを含む請求項143による方法。

【公表番号】特表2013−508538(P2013−508538A)
【公表日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−518625(P2012−518625)
【出願日】平成22年7月6日(2010.7.6)
【国際出願番号】PCT/US2010/041077
【国際公開番号】WO2011/003116
【国際公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【出願人】(501407311)エンソン インコーポレイテッド (36)
【Fターム(参考)】