説明

β−セクレターゼ阻害剤の同定のためのアッセイ法およびスクリーニング法

【課題】本発明は、β-セクレターゼ阻害剤の同定のためのアッセイ法およびスクリーニング法を提供することを課題とする。
【解決手段】本発明は、β-セクレターゼタンパク質を固体支持体上に固定化する段階、タグ化β-セクレターゼ阻害剤の存在下でそれを被検化合物と接触させる段階、および被検化合物がβ-セクレターゼ阻害剤であるか否かを評価するため、被検化合物の存在下と非存在下でのタグ化β-セクレターゼ阻害剤の結合の程度を比較する段階を含む、β-セクレターゼ阻害剤を同定するためのアッセイ法を提供する。さらに本発明は、β-セクレターゼ阻害剤のスクリーニング法、新規なβ-セクレターゼ阻害剤、および、β-セクレターゼ阻害剤の同定のためのタグ化β-セクレターゼ阻害剤としてのそれらの使用、β-セクレターゼ阻害剤を同定するためのキット、ならびにアルツハイマー病およびその他の脳血管アミロイドーシスの治療において使用するための新規なβ-セクレターゼ阻害剤を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、β-セクレターゼタンパク質を固体支持体上に固定化する段階、タグ化β-セクレターゼ阻害剤の存在下でそれを被検化合物と接触させる段階、および被検化合物がβ-セクレターゼ阻害剤であるか否かを評価するため、被検化合物の存在下と非存在下でのタグ化β-セクレターゼ阻害剤の結合の程度を比較する段階を含む、β-セクレターゼ阻害剤を同定するためのアッセイ法に関する。さらに本発明は、β-セクレターゼ阻害剤のスクリーニング法、新規なβ-セクレターゼ阻害剤、およびβ-セクレターゼ阻害剤の同定のためのタグ化β-セクレターゼ阻害剤としてのそれらの使用、β-セクレターゼ阻害剤を同定するためのキット、ならびにアルツハイマー病およびその他の脳血管アミロイドーシスの治療において使用するための新規なβ-セクレターゼ阻害剤に関する。
【背景技術】
【0002】
アルツハイマー病(AD)は、記憶、時間的および空間的な見当識、認知、推理、判断、ならびに情緒安定性の進行性の喪失を臨床的な特徴とする変性性(degenerative)脳障害である。ADは、ヒトにおける進行性痴呆の一般的な原因であり、米国における主要な死因の一つとなっている。ADは、世界中の全ての人種および民族に観察されており、現在のおよび将来的な、主要な健康問題である。効果的にADを防止するか、又は臨床的症状および根底にある病態生理を回復させる、有効な治療法は、現在存在しない(概説については、非特許文献1を参照のこと)。
【0003】
影響を受けた個体における剖検又は神経外科的検体に由来する脳組織の組織病理学的検査によって、そのような患者の脳皮質にはアミロイド斑および神経原繊維錯綜が発生していることが明らかとなった。類似の変化が、トリソミー21(ダウン症候群)、およびオランダ型(Dutch-type)アミロイドーシスを伴う遺伝性脳出血の患者において観察された。
【0004】
神経原繊維錯綜とは、膜と結合していない異常タンパク質性フィラメントの束であり、生化学的研究および免疫化学的研究により、それらの主要タンパク質サブユニットは、変化したリン酸化型タウタンパク質であることが結論付けられている(概説については非特許文献2を参照のこと)。
【0005】
生化学的研究および免疫化学的研究により、アミロイド斑の主要タンパク質性成分が、約39アミノ酸〜43アミノ酸からなる、およそ4.2キロダルトン(kD)のタンパク質であることが明らかとなった。このタンパク質は、A-β-アミロイドペプチドと名付けられており、β/A4と呼ばれることもあるが、本明細書においてはA-βと呼ぶ。アミロイド斑におけるA-βの沈着に加え、A-βは、髄膜および実質の細動脈、小動脈、毛細血管の壁にも見出され、細静脈壁に見出される場合もある。A-βは1984年に最初に精製され、部分アミノ酸が報告された(非特許文献3を参照のこと)。最初の28アミノ酸の単離および配列データは、特許文献1に記載されている。
【0006】
過去十年間に蓄積された説得力のある証拠より、A-βが、βアミロイド前駆タンパク質(APP)と呼ばれる1型膜内在性タンパク質に由来する内部ポリペプチドであることが明らかとなった。APPは、通常、様々な動物およびヒトに由来する多くの細胞によって、インビボにおいておよび培養細胞中の両方で産生される。A-βは、集合的にセクレターゼと呼ばれる(1つ又は複数の)酵素(プロテアーゼ)系によるAPPの切断に由来する。
【0007】
少なくとも4つのタンパク質分解活性の存在が推定されている。それらには、A-βのN末端を生成する(1つ又は複数の)β-セクレターゼ、A-βの16位/17位のペプチド結合付近を切断する(1つ又は複数の)α-セクレターゼ、ならびに38位、39位、40位、42位、および43位で終止するC末端A-β断片を生成するか、又は前記ポリペプチドへと後に短縮されるC末端伸長前駆体を生成するγ-セクレターゼが含まれる。
【0008】
証拠のいくつかの道筋によって、A-βの異常な蓄積が、ADの病原性において中心的な役割を果たしていることが示唆されている。第一に、A-βは、アミロイド斑において見出される主要なタンパク質である。第二に、A-βは、神経毒性であり、AD患者において観察されるニューロン死との因果関係を有する(causally related)可能性がある。第三に、遺伝学的に決定される型(家族性)のADを有するいくつかの家系において、罹患したメンバーには、APPの770アイソフォームの717位におけるミスセンスDNA変異が見出されうるが、罹患していないメンバーには見出されていない。さらに、いくつかのその他のAPP変異が、家族性ADにおいて記載されている。第四に、類似の神経病理学的変化が、変異型ヒトAPPを過剰発現しているトランスジェニック動物において観察されている。第五に、ダウン症候群の個体ではAPP遺伝子量が増加しており、早発性ADを発症する。
【0009】
総合すると、これらの観察から、A-β沈着がADとの因果関係を有することが強く示唆される。
【0010】
A-βの産生の阻害は、アミロイド斑の形成の調節、神経毒性の減少、および一般的には、A-β産生関連病原性の媒介により、神経学的変性を予防しかつ減少させるであろうという仮説がある。従って、一つの治療法は、インビボでA-β形成を阻害する薬物に基づくと考えられる。
【0011】
治療法は、APPのタンパク質分解プロセシングに関与する酵素を介したA-βの形成を標的としうる。直接的又は間接的にβ-セクレターゼ又はγ-セクレターゼの活性を阻害する化合物は、A-βの産生を調節しうる。
【0012】
β-セクレターゼは、特許文献2、特許文献3、特許文献4、特許文献5、特許文献6および特許文献7を含むいくつかの刊行物に記載されている。
【0013】
BACE(別名はAsp-2、メマプシン(Memapsin)-2である)およびBASE-2(別名はAsp-1、メマプシン-1である)の2つの遺伝子は、膜貫通型アスパラギン酸プロテアーゼファミリーに属するβ-セクレターゼをコードしている。それらは、AD患者の脳内アミロイド沈着の原因であるA-βペプチド産生へと至るAPP分解カスケードにおける最初の酵素であると考えられている。概念的には、β-セクレターゼの阻害は、APP分解のアミロイド生成経路を、APPのα-セクレターゼ切断を介した非アミロイド生成経路へと転向させることにより、ADを防止するであろう。
【0014】
BACEは、大部分の組織で広範に発現しており、脳および膵臓で高レベルに発現しているにも関わらず、BACE-/-マウスは生存可能であることが見出された(非特許文献4を参照のこと)。マウスにおけるBACE欠損と関連した明らかな有害効果が存在しないという所見から、ヒトにおけるBACEの阻害が、生命維持に必要なNotchシグナル伝達を調節するγ-セクレターゼに関して活発に討論されている問題である、機構に基づく毒性を有していないことが示唆される。
【0015】
A-β産生の阻害剤の細胞スクリーニング法、A-β産生のインビボ抑制の試験法、およびセクレターゼ活性の検出のための膜又は細胞抽出物を用いたアッセイ法は、当技術分野において既知であり、特許文献8、特許文献9、および特許文献10(全て、参照として本明細書に組み込まれる)を含む多数の刊行物に開示されている。
【0016】
β-セクレターゼに関する標準的なアッセイ法は、蛍光体(fluorophore)およびクエンサー(quencer)を保持しているペプチド基質の切断に基づく蛍光アッセイ法である。化合物が自己蛍光を示す、もしくは強く着色しているために、又は溶液から酵素および沈殿物を吸収するために、スクリーニング目的で使用される場合、このアッセイ法は「偽陽性ヒット(false positive hit)」を与える傾向がある。従って、阻害剤スクリーニングのための代替的なアッセイ法は、極めて有益である。
【0017】
驚くべきことに、十分に高い放射能でβ-セクレターゼの遷移状態模倣物(mimetics)を標識することにより、それらが、β-セクレターゼと結合する活性部位に対する直接的なプローブとして使用されうることが見出された。
【0018】
【特許文献1】米国特許第4666829号明細書
【特許文献2】欧州特許出願公開第0855444号明細書
【特許文献3】国際公開第00/17369号パンフレット
【特許文献4】国際公開第00/58479号パンフレット
【特許文献5】国際公開第00/47618号パンフレット
【特許文献6】国際公開第01/00663号パンフレット
【特許文献7】国際公開第01/00665号パンフレット
【特許文献8】国際公開第98/22493号パンフレット
【特許文献9】米国特許第5703129号明細書
【特許文献10】米国特許第5593846号明細書
【非特許文献1】「Annu Rev Cell Biol.」、1994年、第10巻、p.373-403
【非特許文献2】「Annu Rev Neurosci.」、1994年、第17巻、p.489-517
【非特許文献3】「Biochem.Biophys.Res.Commun.」、1984年、第120巻、p.885-890
【非特許文献4】「Nature Neurosci.」、2001年、第4巻、p.231-232
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
本発明は、β-セクレターゼ阻害剤の同定のためのアッセイ法およびスクリーニング法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明は、β-セクレターゼタンパク質を固体支持体上に固定化する段階、タグ化β-セクレターゼ阻害剤の存在下でそれを被検化合物と接触させる段階、および被検化合物がβ-セクレターゼ阻害剤であるか否かを評価するため、被検化合物の存在下と非存在下でのタグ化β-セクレターゼ阻害剤の結合の程度を比較する段階を含む、β-セクレターゼ阻害剤を同定するためのアッセイ法に関する。さらに本発明は、β-セクレターゼ阻害剤のスクリーニング法、新規なβ-セクレターゼ阻害剤、およびβ-セクレターゼ阻害剤の同定のためのタグ化β-セクレターゼ阻害剤としてのそれらの使用、β-セクレターゼ阻害剤を同定するためのキット、ならびにアルツハイマー病およびその他の脳血管アミロイドーシスの治療において使用するための新規なβ-セクレターゼ阻害剤に関する。
【0021】
本発明に係るβ-セクレターゼ阻害剤においては、(1)下記式Iのβ-セクレターゼ阻害剤、およびそれらの任意の組み合わせであることを特徴とする:
Y-P4-P3-P2-P1-P1'-P2'-P3'-P4'-W
式中、
P1はロイスタチン(Leustatin)、チャスタチン(Chastatin)、又はチルスタチン(Tyrstatin)と定義され、
P2はAsnと定義され、
P3はVal、Cpe、Che、又はChaと定義され、
P4はGluと定義され、
P1'はValと定義され、
P2'はAlaと定義され、
P3'はGluと定義され、
P4'はTyr、Cha、Phe(I)、又はTyr(I2)と定義され、
Yは0個、1個、又は複数のアミノ酸残基と定義され、かつ
Wは0個、1個、又は複数のアミノ酸残基と定義される。
【0022】
また、本発明に係るβ-セクレターゼ阻害剤においては、(2)タグ化(tagged)β-セクレターゼ阻害剤の調製のための上記(1)記載のβ-セクレターゼ阻害剤であることを特徴とする。
【0023】
また、本発明に係るβ-セクレターゼ阻害剤においては、(3)タグ化されている上記(1)記載のβ-セクレターゼ阻害剤であることを特徴とする。
【0024】
また、本発明に係るβ-セクレターゼ阻害剤においては、(4)P3位、P1位、又はP4'位のうちの1つ又は複数で放射性タグ化されている上記(3)記載のβ-セクレターゼ阻害剤であることを特徴とする。
【0025】
また、本発明に係る使用においては、(5)β-セクレターゼ阻害化合物の同定のための上記(3)または(4)記載のタグ化β-セクレターゼ阻害剤の使用であることを特徴とする。
【0026】
また、本発明に係る使用においては、(6)タグ化β-セクレターゼ阻害剤がトリチウムタグ化β-セクレターゼ阻害剤である、上記(5)記載の使用であることを特徴とする。
【0027】
また、本発明に係る方法においては、(7)(a)β-セクレターゼタンパク質を固定化する段階;
(b)被検化合物を添加し、続いてタグ化β-セクレターゼ阻害剤を添加する段階;
(c)アッセイ成分をインキュベートする段階;および
(d)結合したタグ化β-セクレターゼ阻害剤を測定する段階
を含む、β-セクレターゼ阻害剤を同定するためのアッセイ法であることを特徴とする。
【0028】
また、本発明に係る方法においては、(8)β-セクレターゼが単離されかつ実質的に精製されたβ-セクレターゼである、上記(7)記載のアッセイ法であることを特徴とする。
【0029】
また、本発明に係る方法においては、(9)β-セクレターゼが組換え的に作製されかつ精製されている、上記(7)記載のアッセイ法であることを特徴とする。
【0030】
また、本発明に係る方法においては、(10)β-セクレターゼが全長β-セクレターゼである、上記(7)から(9)記載のアッセイ法であることを特徴とする。
【0031】
また、本発明に係る方法においては、(11)β-セクレターゼがBACEおよびBACE-2からなる群より選択される、上記(7)から(10)記載のアッセイ法であることを特徴とする。
【0032】
また、本発明に係る方法においては、(12)タグ化β-セクレターゼ阻害剤が放射性タグで標識されたβ-セクレターゼ阻害剤である、上記(7)から(11)記載のアッセイ法であることを特徴とする。
【0033】
また、本発明に係る方法においては、(13)放射性タグがトリチウムである、上記(12)記載のアッセイ法であることを特徴とする。
【0034】
また、本発明に係る方法においては、(14)タグ化β-セクレターゼ阻害剤が上記(3)記載のタグ化β-セクレターゼ阻害剤である、上記(7)から(13)記載のアッセイ法であることを特徴とする。
【0035】
また、本発明に係る方法においては、(15)タグ化β-セクレターゼ阻害剤が約1μM以下の阻害濃度を有する、上記(7)から(14)記載のアッセイ法であることを特徴とする。
【0036】
また、本発明に係る方法においては、(16)アッセイ成分が選択的にBSAを含む結合緩衝液中でインキュベートされる、上記(7)から(15)記載のアッセイ法であることを特徴とする。
【0037】
また、本発明に係る方法においては、(17)アッセイ成分が選択的に非イオン性界面活性剤を含む結合緩衝液中でインキュベートされる、上記(7)から(16)記載のアッセイ法であることを特徴とする。
【0038】
また、本発明に係る方法においては、(18)非イオン性界面活性剤がTween-20である、上記(17)記載のアッセイ法であることを特徴とする。
【0039】
また、本発明に係る方法においては、(19)アッセイ成分が選択的にイオン性界面活性剤を含む結合緩衝液中でインキュベートされる、上記(7)から(16)記載のアッセイ法であることを特徴とする。
【0040】
また、本発明に係る方法においては、(20)イオン性界面活性剤が、コール酸およびデオキシコール酸を含む群より選択される、上記(19)記載のアッセイ法であることを特徴とする。
【0041】
また、本発明に係るβ-セクレターゼ阻害剤においては、(21)上記(7)から(20)記載のアッセイ法において使用するための、上記(3)記載のタグ化β-セクレターゼ阻害剤であることを特徴とする。
【0042】
また、本発明に係る方法においては、(22)被検化合物の存在下でのタグ化β-セクレターゼ阻害剤とβ-セクレターゼとの結合を測定する段階;および
被検化合物が活性部位結合に関してタグ化β-セクレターゼ阻害剤と競合できるか否かを判定する段階
を含む、β-セクレターゼ活性を阻害することができる化合物をスクリーニングする方法であることを特徴とする。
【0043】
また、本発明に係る方法においては、(23)β-セクレターゼが単離されかつ実質的に精製されたβ-セクレターゼである、上記(22)記載の方法であることを特徴とする。
【0044】
また、本発明に係る方法においては、(24)β-セクレターゼが組換え的に作製されかつ精製されている、上記(22)記載の方法であることを特徴とする。
【0045】
また、本発明に係る方法においては、(25)β-セクレターゼが全長β-セクレターゼである、上記(22)から(24)記載の方法であることを特徴とする。
【0046】
また、本発明に係る方法においては、(26)β-セクレターゼがBACEおよびBACE-2からなる群より選択される、上記(22)から(25)記載の方法であることを特徴とする。
【0047】
また、本発明に係る方法においては、(27)タグ化β-セクレターゼ阻害剤が、放射性タグで標識されたβ-セクレターゼ阻害剤である、上記(22)から(26)記載の方法であることを特徴とする。
【0048】
また、本発明に係る方法においては、(28)放射性タグがトリチウムである、上記(27)記載の方法であることを特徴とする。
【0049】
また、本発明に係る方法においては、(29)タグ化β-セクレターゼ阻害剤が上記(3)記載のβ-セクレターゼ阻害剤である、上記(22)から(28)記載の方法であることを特徴とする。
【0050】
また、本発明に係るβ-セクレターゼ阻害剤においては、(30)上記(22)から(29)記載の方法において使用するためのタグ化β-セクレターゼ阻害剤であることを特徴とする。
【0051】
また、本発明に係るキットにおいては、(31)天然の又は組換え的に作製されたβ-セクレターゼポリペプチド、およびタグ化β-セクレターゼ阻害剤を含む、β-セクレターゼ阻害剤を同定するためのキットであることを特徴とする。
【0052】
また、本発明に係るキットにおいては、(32)タグ化β-セクレターゼ阻害剤が放射性タグを保持している、上記(31)記載のキットであることを特徴とする。
【0053】
また、本発明に係るキットにおいては、(33)タグ化β-セクレターゼ阻害剤がトリチウムタグを保持している、上記(32)記載のキットであることを特徴とする。
【0054】
また、本発明に係るキットにおいては、(34)上記(7)から(20)記載のアッセイ法又は上記(22)から(29)記載の方法を実施するために必要な成分を含むキットであることを特徴とする。
【0055】
また、本発明に係るβ-セクレターゼ阻害剤においては、(35)上記(7)から(20)記載のアッセイ法又は上記(22)から(29)記載の方法によって同定されたβ-セクレターゼ阻害剤であることを特徴とする。
【0056】
また、本発明に係るβ-セクレターゼ阻害剤においては、(36)薬学的に許容される担体、および治療的有効量の上記(35)記載のβ-セクレターゼ阻害剤を含む薬学的組成物であることを特徴とする。
【0057】
また、本発明に係る使用においては、(37)アルツハイマー病又はその他の脳血管アミロイドーシスの治療用の医薬品の調製のための、上記(7)から(20)記載のアッセイ法又は上記(22)から(29)記載の方法によって同定されたβ-セクレターゼ阻害剤の使用であることを特徴とする。
【0058】
また、本発明に係る方法においては、(38)上記(7)から(20)記載のアッセイ法又は上記(22)から(29)記載の方法によって同定されたβ-セクレターゼを阻害するのに効果的な薬学的有効量の化合物を患者へ投与する段階を含む、アルツハイマー病又はその他の脳血管アミロイドーシスに罹患しているか、又はその素因を有する患者を治療する方法であることを特徴とする。
【0059】
また、本発明に係る方法においては、(39)添付の実施例に関して具体的に記載された方法と実質的に同様の方法であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0060】
本発明により、β-セクレターゼタンパク質を固体支持体上に固定化する段階、タグ化β-セクレターゼ阻害剤の存在下でそれを被検化合物と接触させる段階、および被検化合物がβ-セクレターゼ阻害剤であるか否かを評価するため、被検化合物の存在下と非存在下でのタグ化β-セクレターゼ阻害剤の結合の程度を比較する段階を含む、β-セクレターゼ阻害剤を同定するためのアッセイ法が提供された。さらに本発明により、β-セクレターゼ阻害剤のスクリーニング法、新規なβ-セクレターゼ阻害剤、および、β-セクレターゼ阻害剤の同定のためのタグ化β-セクレターゼ阻害剤としてのそれらの使用、β-セクレターゼ阻害剤を同定するためのキット、ならびにアルツハイマー病およびその他の脳血管アミロイドーシスの治療において使用するための新規なβ-セクレターゼ阻害剤が提供された。
【0061】
[発明の実施の形態]
本発明は、β-セクレターゼタンパク質を固体支持体上に固定化する段階、被検化合物を添加し、続いてタグ化β-セクレターゼ阻害剤を添加する段階、平衡結合のためアッセイ成分をインキュベートする段階、および結合したタグ化β-セクレターゼ阻害剤を測定する段階を含む、β-セクレターゼ阻害剤を同定するためのアッセイ法を提供する。
【0062】
本明細書において使用される「β-セクレターゼ」とは、A-βのN末端を生成するアスパルチル(aspartyl)プロテアーゼと定義される。好ましいβ-セクレターゼは、ヒトのBACEおよびBACE-2である。最も好ましいのは、それぞれ配列番号:1および配列番号:2に開示されたヌクレオチド配列によりコードされるヒトのBACEおよびBACE-2である。β-セクレターゼは、全長β-セクレターゼ、又は少なくとも活性部位を示す短縮型β-セクレターゼでありうる。好ましくは、β-セクレターゼは全長β-セクレターゼである。β-セクレターゼは、β-セクレターゼ活性を一般的に変化させないものであれば、アミノ酸置換を含んでもよい。生物活性を本質的に変化させないタンパク質およびポリペプチドにおけるアミノ酸置換は、当技術分野において既知であり、H.ノイラート(Neurath)およびR.L.ヒル(Hill)により、「タンパク質(The Proteins)」、アカデミックプレス(Academic Press)、ニューヨーク(New York)(1979)に記載されている。前記のように分類されたアミノ酸側鎖の6つの一般的なクラスには、クラスI(Cys);クラスII(Ser、Thr、Pro、Ala、Gly);クラスIII(Asn、Asp、Gln、Glu);クラスIV(His、Arg、Lys);クラスV(Ile、Leu、Val、Met);およびクラスVI(Phe、Tyr、Trp)が含まれる。β-セクレターゼは、「リンカー」配列によりコードされるいくつかのアミノ酸の配列をさらに含んでもよい。これらの配列は、β-セクレターゼの組換え発現のために使用される発現ベクターに、結果として起因する。本発明のβ-セクレターゼはまた、好ましくはアフィニティ担体材料と結合する、N末端又はC末端に接着した特異的配列を含有してもよい。そのような配列の例は、少なくとも2個の隣接するヒスチジン残基を含有する配列である(欧州特許第282042号参照)。そのような配列は、ニトリロ三酢酸ニッケルキレート樹脂と選択的に結合する。従って、そのような特異的配列を含有するβ-セクレターゼは、残りのポリペプチドから選択的に分離されるか、又は固定化のための固体支持体に接着されうる。6個のC末端His残基をコードするβ-セクレターゼBACEのcDNA配列は、配列番号:1に示されている。
【0063】
天然の、又は組換え的に作製されたβ-セクレターゼが、本アッセイ法において使用されうる。「組換えタンパク質」とは、宿主細胞においてタンパク質を発現させるように操作された組換え発現ベクターにより一過的又は安定的に形質導入又はトランスフェクトされた異種細胞における特徴的発現によって、単離、精製、又は同定されたタンパク質である。組換えβ-セクレターゼは、例えば大腸菌などの原核細胞、例えばS.ポンベ(pombe)などの酵母、又は、例えばHEK293、Sf9昆虫細胞などの真核細胞において作製されてもよい。好ましくは、Sf9昆虫細胞が、組換えβ-セクレターゼの高発現のため使用される。アッセイ法において使用されるβ-セクレターゼは、精製されてもよい。本明細書において使用される「精製された」という用語は、天然環境又は組換え作製起源から除去、単離、又は分離され、かつ例えば膜およびミクロソームなどそれらが天然に会合しているその他の成分を少なくとも60%、より好ましくは少なくとも80%含まないポリペプチドを指すにも関わらず、そのような記述により、同一又はさもなくば同種の試料中に存在するスプライス変異体又はその他のタンパク質変異体(グリコシル化変異体)が同一試料中に存在することを除外しない。
【0064】
タンパク質又はポリペプチドは一般的に、それを含有する試料が、クーマシー染色アクリルアミド電気泳動ゲル上に主要なタンパク質バンドを示す場合に、「実質的に精製されている」と見なされる。
【0065】
本明細書において使用される「固定化」という用語は、固体支持体へのβ-セクレターゼの直接的な固定化、又は、接着リンカーを介した、もしくは付加的なリンカーの使用による、β-セクレターゼの間接的な固定化でありうる。接着リンカーはヒスチジン残基であってよく、又はリンカーは、ストレプトアビジン、もしくは抗体、好ましくはβ-セクレターゼ指向性抗体であってよい。固体支持体は、マイクロプレート又はビーズであってよい。好ましくは、本アッセイ法において使用されるマイクロプレートは、白色又は黒色でありうるが、白色Optiplate(Optiplate Packard)が好ましい。コーティング反応は、1μg/ml〜50μg/ml、好ましくは10μg/mlのタンパク質濃度で実施される。コーティング反応のため、緩衝液は、pH3〜pH8の範囲に、好ましくはpH5〜pH6の範囲に調整されて使用される。pH5.5に調整されたクエン酸緩衝液が最も好ましい。
【0066】
結合アッセイ法が実施される結合緩衝液は、pH2.5〜pH6の範囲に調整される緩衝液であってよい。好ましくは、緩衝液は、pH3.5〜pH4.5に調整されたクエン酸緩衝液又は酢酸緩衝液である。最も好ましいのは、pH4.1のクエン酸緩衝液である。結合緩衝液は、それが存在することによって非特異的結合が防止される、高分子量タンパク質を含んでもよい。好ましくは、そのタンパク質はBSAである(図6Aおよび図6B)。最も好ましくは、結合緩衝液中のBSAの濃度は0.1%w/vである。また結合緩衝液は、非イオン性界面活性剤又はイオン性界面活性剤を含んでもよい。好ましくは、非イオン性界面活性剤はTween-20である。好ましくは、イオン性界面活性剤は、コール酸又はデオキシコール酸である。より好ましくは、イオン性界面活性剤は、コール酸である。最も好ましくは、結合緩衝液中の非イオン性界面活性剤又はイオン性界面活性剤の濃度は0.02%である。結合緩衝液中のコール酸の存在は、被検物質のIC-50値を、Tween-20の存在下と比較して3〜4倍さらに低下させうる(図7)。アッセイ成分は、室温又は4℃で10分間から24時間、平衡結合が調整されるまでインキュベートされる。好ましくは、アッセイ化合物は室温で1.5時間インキュベートされる。
【0067】
本明細書において使用される「β-セクレターゼ阻害剤」とは、β-セクレターゼの活性部位と特異的に結合し、それにより天然のβ-セクレターゼ基質、例えばAPPの切断を阻害する任意の化合物を意味することが意図される。本発明は、β-セクレターゼ活性部位に特異的な阻害剤のスクリーニングのための競合結合試験に関する。本発明の競合アッセイ法およびFRETアッセイ法において被検化合物を用いて得られた結果(図5Aおよび図5B)を比較すると、タグ化β-セクレターゼとβ-セクレターゼとの結合を阻害する被検化合物は、広い範囲のIC-50値で、A-βの産生をもたらすβ-セクレターゼのタンパク質分解活性もまた阻害することが示されうる。従って、タグ化β-セクレターゼ阻害剤の、単離されたβ-セクレターゼとの結合は、競合結合アッセイ法によるA-β産生の阻害剤の同定において有用である。さらに、標識されたβ-セクレターゼ阻害剤を用いた競合結合アッセイ法は、他のアッセイ形式において偽陽性と以前に判定された、強く着色された化合物(コンゴレッド)又は「粘着性化合物(sticky compounds)」に対する傾向を有していないことが示されうる(図3)。
【0068】
また本発明は、切断不可能な遷移状態模倣物に基づくペプチド模倣物(peptidomimetic)化合物である新規なβ-セクレターゼ阻害剤にも関する。本発明のβ-セクレターゼ阻害剤は、式(I)のペプチド模倣物、およびそれらの任意の組み合わせである:
Y-P4-P3-P2-P1-P1'-P2'-P3'-P4'-W
式中、
P1はロイスタチン、チャスタチン、又はチルスタチンと定義され、
P2はAsnと定義され、
P3はVal、Cpe、Che、又はChaと定義され、
P4はGluと定義され、
P1'はValと定義され、
P2'はAlaと定義され、
P3'はGluと定義され、
P4'はTyr、Cha、Phe(I)、又はTyr(I2)と定義され、
Yは0個、1個、又は複数のアミノ酸残基と定義され、かつ
Wは0個、1個、又は複数のアミノ酸残基と定義される。好ましくは、Yは0個のアミノ酸である。好ましくは、Wは0個のアミノ酸である。ロイスタチン、チャスタチン、チルスタチン、Cpe、Che、およびChaの式は、図1で定義されている。
【0069】
本発明のアッセイ法において使用されるβ-セクレターゼ阻害剤を、以下の表に示す。式(I)の具体例は、表の下部に示された化合物A、B、C、およびDである。
【0070】
【表1】

【0071】
ペプチド内の遷移状態類似体は、互いに上下に配置されている。Oとは、Science、290、2000、150-153に定義されている通りである。Hypはヒドロキシプロリンと定義され、Avaはδ-アミノ吉草酸と定義され、Abuはγ-アミノ酪酸と定義され、Aproはβ-アミノプロピオン酸と定義され、Cmpはカルボキシメチルピペリジンと定義され、TyrOBzstaはチロシル-O-ベンジルスタチンと定義される。
【0072】
ペプチド模倣物β-セクレターゼ阻害剤は、当技術分野において既知の標準的な方法、好ましくはメリフィールド(Merrifield)の方法(J Am.Chem.Soc.、1963、85、2149-2154)、およびアサートン(Atherton)およびシェパード(Sheppard)、「固相ペプチド合成:実践アプローチ(Solid Phase Peptide Synthesis:A Practical Approach)」(IRL Press Oxford 1989)の方法のような固相法を使用して、化学合成されうる。
【0073】
また本発明は、タグ化β-セクレターゼ阻害剤の調製のための式(I)のβ-セクレターゼ阻害剤、およびタグ化された式(I)のβ-セクレターゼ阻害剤にも関する。
【0074】
本明細書において使用される「タグ化β-セクレターゼ阻害剤」とは、タグ化された「β-セクレターゼ阻害」化合物を意味することが意図される。「タグ化された」又は「タグ化β-セクレターゼ阻害剤」とは、当該阻害化合物が、アッセイ系における、又は哺乳動物への投与の際の、検出に適したタグを含有することを意味する。適切なタグは当業者に既知であり、例えば放射性同位体、蛍光基、ビオチン(ストレプトアビジン複合体化と併用)、および光親和性基を含む。適切な放射性同位体は当業者に既知であり、例えば(塩素、フッ素、臭素、およびヨウ素のような)ハロゲンの同位体ならびに、テクネチウムおよびインジウムを含む金属を含む。好ましい放射性同位体には、3H、11C、18F、32P、33P、35S、123I、125I、および131Iが含まれる。最も好ましいのは、3H、125I、および131Iである。本発明の放射標識された化合物は、当業者に周知の標準的な放射標識法を使用して調製されうる。適切な合成方法論は、以下に詳細に記載される。本発明のβ-セクレターゼ阻害剤は、直接的に(即ち、化合物へ直接的に放射標識を組み込むことにより)、又は間接的に(即ち、化合物に組み込まれているキレート剤によって放射標識を化合物へ組み込むことにより)、放射標識されうる。また、放射標識は、同位体的又は非同位体的でありうる。同位体的放射標識では、本発明の化合物中の既存の1個の原子又は原子群が、放射性同位体と置換(交換)される。
【0075】
非同位体的放射標識では、放射性同位体が既存の基と置換(交換)されることなく、化合物へ付加される。直接的および間接的に放射標識された化合物、ならびに同位体的又は非同位体的に放射標識された化合物が、本発明に関して使用される「放射標識されたβ-セクレターゼ阻害剤」という用語に含まれる。
【0076】
そのような放射標識はまた、当技術分野において認識されている標準を適用して、化学的にかつ代謝的に合理的な安定性を有するべきである。また、本発明の化合物は多様な種々の放射性同位体により多様な様式で標識されうるが、当業者が認識すると考えられるとおり、そのような放射標識は、標識されていない、又はタグ化されていないβ-セクレターゼ阻害剤のβ-セクレターゼへの高い結合親和性および特異性が有意に影響を受けないような様式で実施されるべきである。有意に影響を受けないとは、結合親和性および特異性が、約3対数単位を上回って影響されない、好ましくは約2対数単位を上回って影響されない、より好ましくは約1対数単位を上回って影響されない、さらにより好ましくは約500%を上回って影響されない、およびよりさらに好ましくは約250%を上回って影響されないことを意味し、最も好ましくは結合親和性および特異性が全く影響を受けないことを意味する。
【0077】
放射標識されたβ-セクレターゼ阻害剤に関して、標識はβ-セクレターゼ阻害剤上の任意の位置に存在することができ、その構造中に1個、2個、又はそれ以上の放射性同位体が取り込まれていてもよい。本発明の好ましい放射標識された化合物は、トリチウムで放射標識されたβ-セクレターゼ阻害剤である。より好ましい本発明の放射標識された化合物は放射標識された式(I)の化合物であり、ここでその構造中に1個、2個、又はそれ以上の放射性同位体が組み込まれており、放射標識が、P1、P3、および/又はP4'に位置する。最も好ましいのは、P1、P3、および/又はP4'に存在する放射標識が3H、又は123I、125I、もしくは131Iである、式(I)のβ-セクレターゼ阻害剤である。図2は、P1位、P3位、およびP4'位に組み込まれうるトリチウム化された式(I)の構築ブロックを示す。
【0078】
実施例4に記載されるように、ヨウ素はパラジウム還元により3Hに交換されうるため、P4'位にジヨードチロシンを有する式(I)のβ-セクレターゼ阻害剤(化合物A)が、放射標識に関して選択されうる。還元により、化学的には化合物Aと区別不可能な化合物が得られる。
【0079】
放射標識されたβ-セクレターゼ阻害剤は、500mCi/mmol〜60Ci/mmolの範囲内の比活性を有しうる。好ましくは、それは、55Ci/mmolという比活性を有する。結合した放射標識されたβ-セクレターゼ阻害剤は、シンチレーターの添加によって測定されうる。好ましくは、シンチレーターはMicroScint20又はMicroScint40(Packard)である。
【0080】
又は、シンチレーション近接アッセイ法(Scintillation proximity assay;SPA)が本発明の放射性リガンド競合結合アッセイ法において利用されうることは周知である。例えば、精製されたタンパク質をSPA支持体上に固定化し、その後、被検化合物の存在下で支持体をタグ化β-セクレターゼ阻害剤と共にインキュベートする。SPA支持体は、その構造的性質のため、結合した放射性化合物の放射性シンチレーションシグナルを増幅するが、溶液中に遊離している放射活性化合物の放射性シグナルは増幅しない。従って、遊離のタグ化β-セクレターゼ阻害剤の存在下でのシンチレーション計数により、結合したタグ化β-セクレターゼ阻害剤が検出され定量される。
【0081】
結合したタグ化β-セクレターゼ阻害剤を遊離のタグ化β-セクレターゼ阻害剤から分離する方法は、多数の方法で実施されうることが理解される。例えば、分離の方法には、これらに限定されないが、洗浄、濾過、又は遠心分離が含まれる。分離法は、結合したタグ化β-セクレターゼ阻害剤の定量化を容易にすることを意図している。従って、分離法はまた、インサイチューの遊離のタグ化β-セクレターゼ阻害剤が、結合したタグ化β-セクレターゼ阻害剤から分離されない、例えばSPAなどの均一技術も包含することを意図している。
【0082】
本発明において、前記の放射標識された化合物が、β-セクレターゼ阻害剤として有用であること、かつ従って、本発明の放射標識された化合物が、治療目的、ならびに放射性画像化(radioimaging)(Q J Nucl.Med.、1997、41(2)、163-169)およびPET画像化(imaging)(Clin.Geriatr.Med.、2001、17(2)、255-279)の目的のためにも利用されうることが発見された。
【0083】
本明細書において使用される「被検化合物」とは、本明細書に記載された本発明のアッセイ法を使用して、タグ化β-セクレターゼ阻害剤とβ-セクレターゼとの結合の阻害、および従ってA-βの産生の阻害に関してスクリーニングされる任意の化合物を意味することが意図される。化合物がタグ化されると、本発明のアッセイ法においてBACEへの結合の阻害に関する活性を有する「被検化合物」が、続いて、前記で定義された「タグ化β-セクレターゼ阻害剤」として本発明のアッセイ法において使用されうることが理解される。本発明のアッセイ法においてBACEへの結合の阻害に関する活性を有する「被検化合物」は、続いて、A-β産生を含む変性性神経学的障害の治療、好ましくはADの治療のための薬学的組成物において使用されうることも理解される。
【0084】
本明細書において使用される「結合したタグ化β-セクレターゼ阻害剤」とは、特異的結合および非特異的結合を含むタグ化β-セクレターゼ阻害剤の全ての結合を意味することが意図される。非特異的結合は、飽和濃度のもう一つの既知のβ-セクレターゼ阻害剤による競合によって査定される。次いで、タグ化β-セクレターゼ阻害剤の全ての結合から非特異的結合を差し引くことにより、タグ化β-セクレターゼ阻害剤の特異的結合が決定される。
【0085】
本明細書において使用される「阻害濃度」とは、本発明のアッセイ法においてスクリーニングされた「可能性のあるβ-セクレターゼ阻害剤」化合物によって、タグ化阻害剤の50%が置換される濃度を意味することが意図される。「阻害濃度」値の例は、IC-50からIC-90の範囲であり、好ましくは、それぞれタグ化阻害剤の50%、60%、70%、80%、90%の置換を表すIC-50、IC-60、IC-70、IC-80、又はIC-90である。より好ましくは、「阻害濃度」はIC-50値として測定される。IC-50の意味は最大の半分を阻害する濃度であることが理解される。本発明のアッセイ法および方法において使用されるタグ化β-セクレターゼ阻害剤のIC-50は≦5μMでありうる。より好ましくは、IC-50は≦1μMである。最も好ましくは、IC-50は≦0.25μMである。
【0086】
また本発明は、タグ化β-セクレターゼ阻害剤が式(I)を有する、前記記載のアッセイ法にも関する。
【0087】
本発明のさらなる態様は、前記記載の本発明のアッセイ法において使用するための、式(I)のタグ化β-セクレターゼ阻害剤である。
【0088】
さらに本発明は、β-セクレターゼの阻害化合物の同定のためのタグ化β-セクレターゼ阻害剤の使用に関する。この使用に関して、タグ化β-セクレターゼ阻害剤は式(I)を有していてもよく、放射性タグ、より具体的にはトリチウムタグを含みうる。
【0089】
本発明は、さらに、被検化合物の存在下でタグ化β-セクレターゼ阻害剤とβ-セクレターゼとの結合を測定する段階、および被検化合物が活性部位結合に関してタグ化β-セクレターゼ阻害剤と競合しうるか否かを判定する段階を含む、β-セクレターゼ活性を阻害できる化合物のスクリーニング法に関する。
【0090】
また本発明は、タグ化β-セクレターゼ阻害剤が式(I)を有する、前記記載の方法にも関する。
【0091】
さらに本発明は、前記記載の本発明の方法において使用するための、タグ化β-セクレターゼ阻害剤に関する。
【0092】
さらなる態様において、本発明は、天然の又は組換え的に作製されたβ-セクレターゼポリペプチドおよびタグ化β-セクレターゼ阻害剤を含む、β-セクレターゼ阻害剤を同定するためのキットに関する。
【0093】
さらなる態様において、本発明は、β-セクレターゼタンパク質を固体化するための固体支持体、β-セクレターゼタンパク質、コーティング緩衝液、タグ化β-セクレターゼ阻害剤、および結合緩衝液の群より選択される、本発明のアッセイ法又は方法を実施するために必要な成分を含むキットに関する。
【0094】
さらに本発明は、本発明のアッセイ法又は方法により同定された新規なβ-セクレターゼ阻害剤に関する。これらは、次いで、新規なβ-セクレターゼ阻害剤を同定するために使用されうる。
【0095】
本発明はさらに、薬学的に許容される担体および、本発明のアッセイ法又は方法により同定された治療的有効量のβ-セクレターゼ阻害剤、ならびに薬学的に許容されるそれらの塩を含む薬学的組成物を提供する。
【0096】
「薬学的に許容される」という用語は、正常な医学的判断の範囲内で、合理的な利益/リスク比を有し、過度の毒性、刺激、アレルギー応答、又はその他の問題もしくは合併症を示すことのない、ヒトおよび動物の組織と接触させて使用するのに適した、化合物、材料、組成物、および/又は剤形を指すために、本明細書において利用される。
【0097】
本明細書において使用される「薬学的に許容される塩」とは、親化合物が、その酸性塩又は塩基性塩を作成することにより修飾されている、開示された化合物の誘導体を指す。薬学的に許容される塩の例には、これらに限定されないが、アミンのような塩基性残基の無機酸塩又は有機酸塩;カルボン酸のような酸性残基のアルカリ塩又は有機塩等が含まれる。薬学的に許容される塩には、例えば非毒性の無機酸又は有機酸から形成された親化合物の従来の非毒性の塩又は第四級アンモニウム塩が含まれる。例えば、そのような従来の非毒性の塩には、塩酸、臭化水素酸、硫酸、スルファミン酸、リン酸、硝酸等のような無機酸に由来するもの;ならびに酢酸、プロピオン酸、コハク酸、グリコール酸、ステアリン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、アスコルビン酸、パモ(pamoic)酸、マレイン酸、ヒドロキシマレイン酸、フェニル酢酸、グルタミン酸、安息香酸、サリチル酸、スルファニル酸、2-アセトキシ安息香酸、フマル酸、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、エタンジスルホン酸、シュウ酸、イセチオン酸等のような有機酸より調製された塩が含まれる。
【0098】
本発明の薬学的に許容される塩は、従来の化学的方法により、塩基性又は酸性の官能基を含有する親化合物から合成されうる。一般的に、そのような塩は、水中もしくは有機溶媒中、又はこの二つ混合物の中で、遊離の酸性型又は塩基性型のこれらの化合物を、化学量論的な量の適切な塩基又は酸と反応させることにより調製されうる。一般的には、エーテル、酢酸エチル、エタノール、イソプロパノール、又はアセトニトリルのような非水性の媒体が好ましい。適切な塩の一覧は、「レミントン薬科学(Remington's Pharmaceutical Sciences)」、第17版、マック出版社(Mack Publishing Company)、イーストン(Easton)、PA、1985、1418頁(この開示は参照により本明細書に組み込まれる)に見出される。
【0099】
「安定な化合物」および「安定な構造」とは、反応混合物からの有用な純度への単離、および効率的な治療剤への製剤化に耐えるために十分に丈夫な化合物を示すものである。
【0100】
さらに本発明は、アルツハイマー病又はその他の脳血管アミロイドーシスの治療用の医薬品の調製のための、本発明のアッセイ法又は方法によって同定されたβ-セクレターゼ阻害化合物の使用に関する。本発明の競合結合アッセイ法によって同定されたβ-セクレターゼ阻害剤は、神経学的障害、ならびに、A-β、APP、および/又はA-β/APP会合巨大分子、ならびにBACE結合の活性中心と会合したその他の巨大分子が関与している、その他の障害の治療のため有用であり得る。
【0101】
本発明は、さらに、本発明のアッセイ法又は方法によって同定された、β-セクレターゼを阻害するのに効果的な薬学的有効量の化合物を、患者へ投与する段階を含む、アルツハイマー病又はその他の脳血管アミロイドーシスに罹患しているか又はそれらの素因を有する患者を治療する方法に関する。
【0102】
以上、本発明を概略的に記載したが、それらは、添付の図面と合わせて、特記しない限り、例示のためだけに本明細書に含まれており、制限を意図したものではない、具体的な実施例を参照することにより、よりよく理解されると考えられる。
【実施例】
【0103】
実施例において言及された市販の試薬は、特記しない限り、製造業者の指示に従い使用された。
【0104】
実施例1.BACEのクローニングおよび発現
PCRにより、ヒトアスパルチルプロテアーゼであるBACEおよびBACE-2をコードするcDNAの5'非コード領域を、コザック(Kozack)配列によりリボソーム認識を最適化し、GCに富むコドンの交換によりクローニング効率を最適化するため修飾し、3'末端を、組換えタンパク質の迅速な精製を可能にするため6×His残基をコードする配列を付加することにより修飾した(それぞれ、配列番号:1および配列番号:2)。開始ATGは、配列番号:1および配列番号:2の16位で見出される。組換えバキュロウイルスによるSf9昆虫細胞(Glycoconj.J、1999、16(2)、109-123)における発現によって、大腸菌、S.ポンベ(pombe)、又はHEK293細胞における発現よりも高い収率が得られた。従って、cDNAを、昆虫細胞における発現のためBamHI×XbaI断片としてpFASTBAC1ベクター(Life Technologies,Inc)へとクローニングし、PCR産物を配列決定により確認した。バキュロウイルスゲノムへの組換えの後、精製されたウイルスDNAを昆虫細胞へと形質転換した。Sf9細胞を、5%(v/v)ウシ胎仔血清を含むTC100培地(BioWhittaker)中、27℃で培養した。1.5×109pfu/mlの力価を有するウイルスストックを生成させた。BACEおよびBACE-2の大規模産生のため、24Lの発酵槽中のSf9細胞を、MOI 1で感染させた。
【0105】
実施例2.全長BACEの精製
Sf9細胞50g(湿重量)を、750mlのPBS、2%Triton X-100に懸濁し、手持ちガラスホモジナイザーでホモジナイズした。ホモジネートを氷上で30分間攪拌し、次いで100,000×gで20分間遠心分離した。上清をpH8.0に調整し、50mMリン酸ナトリウム、10mM Tris、100mM NaCl、0.1%Triton X-100(pH8.0)で予め平衡化した2.6×2.5cmのNi2+NTA-セファロースカラム(Qiagen、Germany)にロードした。続いて、カラムをこの緩衝液で洗浄し、次いで50mMリン酸ナトリウム(pH7.4)、100mM NaCl、0.1%Triton X-100で洗浄した。その後、カラムを、50mMリン酸ナトリウム(pH7.4)、100mM NaCl、200mMイミダゾール、0.1%Triton X-100(10カラム容量)で溶出させた。全長BACEを含む画分をプールし、5mlのHiTrap Qカラム(Pharmacia、Switzerland)に通し、未結合の材料を回収した。次いで、この材料を、50mM TrisHCl(pH7.4)、10mM NaCl、0.1%Tritonで10倍希釈し、50mM TrisHCl(pH7.4)、10mM NaCl、0.1%Triton X-100で予め平衡化した第二の5mlのHiTrap Qカラムに再びロードした。カラムをこの緩衝液で洗浄し、50mM TrisHCl(pH7.4)、1M NaCl、0.1%Triton X-100(20カラム容量)の勾配により溶出させた。BACEを含む画分をプールし、50mM TrisHCl(pH8.0)、0.1%Triton X-100に対して透析し、Mono S HR5/5カラム(Pharmacia、Switzerland)にロードした。BACEを含む未結合の材料をプールし、4℃で保存した。
【0106】
実施例3.ペプチド化合物Aの合成
アサートン(Atherton)およびシェパード(Sheppard)、「固相ペプチド合成:実践アプローチ(Solid Phase Peptide Synthesis:A Practical Approach)」(IRL Press Oxford 1989)により記載された方法に従い、Tenta Gel S RAM樹脂(0.25mmol/g(Rapp Polymere GmbH、Tubingen、Germany)から出発する、Pioneer(商標)ペプチド合成システム(Peptide Synthesis System)で、連続流固相合成を実施した。塩基に対して不安定なFmoc基を、α-アミノ保護に使用した。側鎖を、保護基である-Asn(Trt)およびGlu(OtBu)で保護した。市販のFmoc-スタチン(Neosystem)およびFmoc-3,5-ジヨード-L-チロシン(Fluka)を、合成において使用した。Fmoc-アミノ酸(2.5当量)を、当量のO-(1,2-ジヒドロ-2-オキゾピリド-1-イル)-N,N,N',N'-テトラメチルウロニウムテトラフルオロボレート(O-(1,2-dihydro-2-oxopyrid-1-yl)-N,N,N',N'-tetramethyluronium tetrafluoroborate;TPTU)およびN,N-ジイソプロピルエチルアミン(Hunig's base)で活性化した。Fmoc脱保護(deprotection)を、20%ピペリジンを含むDMFを用いて達成した。Glu(OBut)-Val-Asn(Trt)-スタチン-Val-Ala-Glu(OtBu)-Tyr(I2)-アミドTenta Gel S樹脂(0.200g)を、95%TFA、2.5%H2O、2.5%トリイソプロピルシランの混合物(5ml)で5時間処理した。反応混合物を濃縮し、ジエチルエーテルに注入し、沈殿物を濾過により水から収集し、凍結乾燥させた。粗ペプチドを、調製用RP-HPLCにより精製した。均一なGlu-Val-Asn-スタチン-Val-Ala-Glu-Tyr(I2)-NH2(化合物A;12mg、MH+=1231.3)が得られた。その他のβ-セクレターゼ阻害剤が類似の方法で合成された。
【0107】
実施例4.化合物Aのトリチウム化
【化1】

9.3mg(0.0069mmol)の化合物Aを、1mlのメタノール(Merck#1.06009.1000)および6滴の水に溶解させた。7μlのトリエチルアミン(Fluka puriss#90335)および4mgの10%パラジウムを有する木炭(10% palladium on charcoal)(Degussa Typ101ND)の添加後、懸濁液をトリチウムガス雰囲気下で1時間攪拌した。RCトリテック(Tritec)AG製のトリチウム化装置である9053 Teufenを使用した(Helv.Chim.Acta、1985、68、1880)。揮発性トリチウム成分の除去後、残渣をメタノール-水(9:1)に懸濁した。短時間の超音波処理の後、懸濁液をMillex-HV 0.45μm(カタログ番号SL HV013 NL)で濾過した。濾液を100mlメタノール-水(9:1)に希釈した。全3H活性は108.54mCiであり、放射化学的純度は、HPLC(カラムVydac 5μ 4.6×250mm、流速1ml/分、溶媒A:95%水-5%アセトニトリル-1%TFA;溶媒B:10mM TFA水溶液-アセトニトリル3/1;勾配B:0%〜40%で30分間、保持時間:23.27分;λ=254nm)によると84%であった。質量分析により決定された比活性は、55Ci/mmolであった。Millex-HVフィルターを水-メタノール(9:1)で数回洗浄し、66mCiのペプチドのもう一つのバッチを得た。このバッチをHPLCにより精製したところ、HPLCによると100%の純度を有する43.4mCiのトリチウム化化合物Aが得られた。3H-NMRにより7ppm付近に単一ピークが示されたため、任意の不安定なトリチウムの存在は排除された。
【0108】
実施例5.新規なβ-セクレターゼ阻害剤の特徴決定のためのFRETアッセイ法
全ての酵素アッセイ法を、96穴マイクロタイタープレート(DYNEX Microfluor 2、Chantilly、VA、USA)を使用して、FLUOstar(BMG Lab Technologies、D-77656 Offenburg)上で20℃で実施した。アッセイ容量は100μlであった。典型的には、ジメチルスルホキシドに溶解させた阻害剤を、種々の濃度でウェルに添加し、続いて緩衝液および酵素を添加した。ジメチルスルホキシドの濃度を4%未満に維持した。基質を添加することにより、酵素反応を開始させた。実験を実施する際のpHおよび緩衝液の条件は、図および表の説明に示されている。励起波長(λexcitztion)=430nmでの蛍光励起により、放射波長(λemission)=520nmで蛍光増加の進行を測定した。様々な基質濃度で30分間定期的に反応動力学(kinetic)を追跡した。検出されたシグナルを、1秒間に加水分解された基質のモル数へと変換した。動力学データを、ラインウィーバーバーク(Lineweaver-Burke)プロットからグラフ的に決定した。基質濃度を変動させることにより得られたデータは、本明細書で使用された全てのFRET基質に典型的である過剰な消光能の効果に関して補正されなければならない。
【0109】
生成物形成の直線的な進行が保証される酵素濃度で、アッセイ法を実施した。
【0110】
実施例6.競合的放射性リガンド結合アッセイ法(RLBA)
pH5.5に調整された30mMクエン酸ナトリウム緩衝液中1μg/mlの濃度を使用して、96穴マイクロプレート(Optiplate Packard)を、精製BACEタンパク質でコーティングする。コーティングは、4℃で1日間〜3日間、100μl/ウェルをインキュベートすることにより達成される。次いで、プレートを300μl/ウェルの10mMクエン酸(pH4.1)で2回洗浄する。各ウェルに、100μlの結合緩衝液(30mMクエン酸、100mM NaCl、0.1%BSA(pH4.1))を分注する。DMSOストック溶液又は適切な希釈液5μlに被検化合物(図4Aおよび図4BにおけるペプチドH-4848)を添加する。これに、10μCi/mlストック溶液を含む結合緩衝液から、10μl/ウェルのトレーサー(トリチウム化化合物A)を添加する。室温で湿潤チャンバー内で1.5時間〜2時間インキュベートした後、300μl/ウェルの水でプレートを2回洗浄し、ドライタオル上に裏返す。50μl/ウェルのMicroScint20(Packard)の添加後、プレートを密封し、5秒間振とうする。結合した放射能をTopcount(Packard)で計数する。全結合は、BACEタンパク質の純度および濃度に主に依存して、典型的には、2000cpm/ウェル〜10000cpm/ウェルである。>1μMペプチドH-4848(Bachem#H-4848)を用いた競合により査定される非特異的結合は、典型的には30cpm/ウェル〜300cpm/ウェルである。IC-50値はマイクロソフトエクセル(Microsoft Excel)FITにより計算される。
【図面の簡単な説明】
【0111】
【図1】式(I)の構築ブロックの式を示す図である。
【図2】トリチウムがTとして示されている、トリチウム化された式(I)の構築ブロックの式を示す図である。
【図3】公開されているペプチド模倣物阻害剤(Nature、1999、402、537に記載されたペプチドH-4848(Bachem)およびJ.Am.Chem.Soc.、2000、122、3522に記載されたペプチドH-5108(Bachem))およびその他の活性部位指向性阻害剤により作製された阻害曲線を示すグラフである。アッセイ法が、FRETアッセイ法において偽陽性と判定された強く着色している化合物(コンゴレッド)又は「粘着化合物」に対する傾向を有さないこともまた示される。
【図4A】実施例6に記載されたトリチウム化化合物Aの精製BACEへの平衡結合を示す図である。
【図4B】スキャッチャード分析により、単一結合部位の等温線およびペプチドH-4848による競合阻害を示す図である。
【図5A】広い範囲のIC-50値における、本発明のアッセイ法における、β-セクレターゼ阻害剤としてのペプチド模倣化合物の評価を示す図である。
【図5B】FRETアッセイ法および競合的放射性リガンド結合アッセイ法により得られた19個のペプチド模倣物BACE阻害剤に関するIC-50値の相関を示す図である。
【図6A】分散プロットにおいて図示された結合阻害に対するBSAの効果(カクテルプレートをプールしているプレート(P)およびカラム(C)の対照dpmに対する割合(%)(3200データポイント))を示す図である。結果は、結合緩衝液中にBSAが存在しない場合に観察された結合阻害の不均一性を図示している。理想的には、1個のドットで表される各化合物は、カラムプールおよびプレートプールにおいて同一の阻害を与え、かつ対角線に沿って分散されなければならない。
【図6B】分散プロットにおいて示されたBSA非存在下での結合阻害(カクテルプレートをプールしているプレート(P)およびカラム(C)の対照dpmに対する割合(%)(3200データポイント))を示す図である。この結果は、結合緩衝液中にBSAが存在する場合に観察された結合阻害の均一性を示す。
【図7】0.02%コール酸(黒丸)、0.02%Tween20(白丸)、および0.1%ウシ血清アルブミン(BSA、黒三角)の影響下での化合物H-4848(Bachem、Nature、1999、402、537に記載)による放射性リガンド結合の用量依存的阻害を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式Iのβ-セクレターゼ阻害剤、およびそれらの任意の組み合わせ:
Y-P4-P3-P2-P1-P1'-P2'-P3'-P4'-W
式中、
P1はロイスタチン(Leustatin)、チャスタチン(Chastatin)、又はチルスタチン(Tyrstatin)と定義され、
P2はAsnと定義され、
P3はVal、Cpe、Che、又はChaと定義され、
P4はGluと定義され、
P1'はValと定義され、
P2'はAlaと定義され、
P3'はGluと定義され、
P4'はTyr、Cha、Phe(I)、又はTyr(I2)と定義され、
Yは0個、1個、又は複数のアミノ酸残基と定義され、かつ
Wは0個、1個、又は複数のアミノ酸残基と定義される。
【請求項2】
タグ化(tagged)β-セクレターゼ阻害剤の調製のための、請求項1記載のβ-セクレターゼ阻害剤。
【請求項3】
タグ化されている、請求項1記載のβ-セクレターゼ阻害剤。
【請求項4】
P3位、P1位、又はP4'位のうちの1つ又は複数で放射性タグ化されている、請求項3記載のβ-セクレターゼ阻害剤。
【請求項5】
β-セクレターゼ阻害化合物の同定のための、請求項3または4記載のタグ化β-セクレターゼ阻害剤の使用。
【請求項6】
タグ化β-セクレターゼ阻害剤がトリチウムタグ化β-セクレターゼ阻害剤である、請求項5記載の使用。
【請求項7】
(a)β-セクレターゼタンパク質を固定化する段階;
(b)被検化合物を添加し、続いてタグ化β-セクレターゼ阻害剤を添加する段階;
(c)アッセイ成分をインキュベートする段階;および
(d)結合したタグ化β-セクレターゼ阻害剤を測定する段階
を含む、β-セクレターゼ阻害剤を同定するためのアッセイ法。
【請求項8】
β-セクレターゼが単離されかつ実質的に精製されたβ-セクレターゼである、請求項7記載のアッセイ法。
【請求項9】
β-セクレターゼが組換え的に作製されかつ精製されている、請求項7記載のアッセイ法。
【請求項10】
β-セクレターゼが全長β-セクレターゼである、請求項7から9記載のアッセイ法。
【請求項11】
β-セクレターゼがBACEおよびBACE-2からなる群より選択される、請求項7から10記載のアッセイ法。
【請求項12】
タグ化β-セクレターゼ阻害剤が、放射性タグで標識されたβ-セクレターゼ阻害剤である、請求項7から11記載のアッセイ法。
【請求項13】
放射性タグがトリチウムである、請求項12記載のアッセイ法。
【請求項14】
タグ化β-セクレターゼ阻害剤が、請求項3記載のタグ化β-セクレターゼ阻害剤である、請求項7から13記載のアッセイ法。
【請求項15】
タグ化β-セクレターゼ阻害剤が、約1μM以下の阻害濃度を有する、請求項7から14記載のアッセイ法。
【請求項16】
アッセイ成分が選択的にBSAを含む結合緩衝液中でインキュベートされる、請求項7から15記載のアッセイ法。
【請求項17】
アッセイ成分が選択的に非イオン性界面活性剤を含む結合緩衝液中でインキュベートされる、請求項7から16記載のアッセイ法。
【請求項18】
非イオン性界面活性剤がTween-20である、請求項17記載のアッセイ法。
【請求項19】
アッセイ成分が選択的にイオン性界面活性剤を含む結合緩衝液中でインキュベートされる、請求項7から16記載のアッセイ法。
【請求項20】
イオン性界面活性剤がコール酸およびデオキシコール酸を含む群より選択される、請求項19記載のアッセイ法。
【請求項21】
請求項7から20記載のアッセイ法において使用するための、請求項3記載のタグ化β-セクレターゼ阻害剤。
【請求項22】
被検化合物の存在下でのタグ化β-セクレターゼ阻害剤とβ-セクレターゼとの結合を測定する段階;および
被検化合物が活性部位結合に関してタグ化β-セクレターゼ阻害剤と競合できるか否かを判定する段階
を含む、β-セクレターゼ活性を阻害することができる化合物をスクリーニングする方法。
【請求項23】
β-セクレターゼが単離されかつ実質的に精製されたβ-セクレターゼである、請求項22記載の方法。
【請求項24】
β-セクレターゼが組換え的に作製されかつ精製されている、請求項22記載の方法。
【請求項25】
β-セクレターゼが全長β-セクレターゼである、請求項22から24記載の方法。
【請求項26】
β-セクレターゼがBACEおよびBACE-2からなる群より選択される、請求項22から25記載の方法。
【請求項27】
タグ化β-セクレターゼ阻害剤が、放射性タグで標識されたβ-セクレターゼ阻害剤である、請求項22から26記載の方法。
【請求項28】
放射性タグがトリチウムである、請求項27記載の方法。
【請求項29】
タグ化β-セクレターゼ阻害剤が、請求項3記載のβ-セクレターゼ阻害剤である、請求項22から28記載の方法。
【請求項30】
請求項22から29記載の方法において使用するためのタグ化β-セクレターゼ阻害剤。
【請求項31】
天然の又は組換え的に作製されたβ-セクレターゼポリペプチド、およびタグ化β-セクレターゼ阻害剤を含む、β-セクレターゼ阻害剤を同定するためのキット。
【請求項32】
タグ化β-セクレターゼ阻害剤が放射性タグを保持している、請求項31記載のキット。
【請求項33】
タグ化β-セクレターゼ阻害剤がトリチウムタグを保持している、請求項32記載のキット。
【請求項34】
請求項7から20記載のアッセイ法又は請求項22から29記載の方法を実施するために必要な成分を含むキット。
【請求項35】
請求項7から20記載のアッセイ法又は請求項22から29記載の方法によって同定されたβ-セクレターゼ阻害剤。
【請求項36】
薬学的に許容される担体、および治療的有効量の請求項35記載のβ-セクレターゼ阻害剤を含む薬学的組成物。
【請求項37】
アルツハイマー病又はその他の脳血管アミロイドーシスの治療用の医薬品の調製のための、請求項7から20記載のアッセイ法又は請求項22から29記載の方法によって同定されたβ-セクレターゼ阻害剤の使用。
【請求項38】
請求項7から20記載のアッセイ法又は請求項22から29記載の方法によって同定されたβ-セクレターゼを阻害するのに効果的な薬学的有効量の化合物を患者へ投与する段階を含む、アルツハイマー病又はその他の脳血管アミロイドーシスに罹患しているか、又はその素因を有する患者を治療する方法。
【請求項39】
添付の実施例に関して具体的に記載された方法と実質的に同様の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−125021(P2007−125021A)
【公開日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−307401(P2006−307401)
【出願日】平成18年11月14日(2006.11.14)
【分割の表示】特願2002−369209(P2002−369209)の分割
【原出願日】平成14年12月20日(2002.12.20)
【出願人】(591003013)エフ.ホフマン−ラ ロシュ アーゲー (1,754)
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN−LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
【Fターム(参考)】