説明

β−ラクトンの生成のためのプロセス

本出願は、βラクトン生成物を産生するための方法を提供する。この方法は以下の工程:エポキシド、溶媒とカルボニル化触媒および一酸化炭素とを反応させて、βラクトンを含む反応ストリームを生成する工程と、次に反応ストリーム中のβラクトンの一部をこの溶媒およびカルボニル化触媒から分離して:i)βラクトンを有するβラクトンストリーム;およびii)カルボニル化触媒および高沸点溶媒を含む触媒リサイクルストリームを生成する工程と;この触媒リサイクルストリームをフィードストリームに加える工程と、を包含する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願への相互参照)
本願は、2009年4月8日に出願された米国仮特許出願第61/167,711号、2009年12月15日に出願された米国仮特許出願第61/286,382号、2010年3月3日に出願された米国仮特許出願第61/310,257号への優先権を主張し、この米国仮特許出願の各々は、本明細書中に参考として援用される。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
βラクトンは、アクリル酸およびアクリレートを含めて他の化合物の合成における有用な中間体である。アクリル酸は、広範な種々の化学工業において前駆体として用いられている。アクリル酸は代表的には、それ自体がエチレンおよびガソリン生産の副産物であるプロペンの原料から生成される。経済的および環境的な状況によって、種々の原料からアクリル酸および他のアクリレートを産生する他の方法に関心がもたれている。さらなる原料としてはエポキシドを挙げることができる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
(発明の要旨)
種々の局面では、本発明は、エポキシド、溶媒とカルボニル化触媒および一酸化炭素を含むフィードストリームの内容物を反応させて、βラクトンを含む反応生成物ストリームを生成する工程と、この反応生成物ストリーム中のβラクトンの一部をこの溶媒およびカルボニル化触媒から分離して:i)βラクトンを有するβラクトンストリーム;およびii)カルボニル化触媒を含む触媒リサイクルストリームを生成する工程と;この触媒リサイクルストリームをフィードストリームに加える工程とを包含する方法を提供する。
【0004】
いくつかの実施形態では、この方法は、βラクトンを、アクリル酸;メチルアクリレート;エチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレートからなる群より選択される化合物に変換する条件下で上記βラクトンストリームを処理する工程をさらに包含する。
【0005】
いくつかの実施形態では、上記溶媒は、同じ圧力でβラクトンの沸点より高い沸点を有する。いくつかの実施形態では、この溶媒は、同じ圧力でβラクトンの沸点より低い沸点を有する。
【0006】
いくつかの実施形態では、上記βラクトンストリームは、上記溶媒および/またはカルボニル化触媒の一部を含む。いくつかの実施形態では、このβラクトンストリームは、上記エポキシドの一部を含む。いくつかの実施形態では、上記リサイクルストリームはβラクトンを含む。いくつかの実施形態では、上記反応生成物ストリームはエポキシドの一部を含む。
【0007】
いくつかの実施形態では、上記反応生成物ストリームは、無水物形成を防ぐのに十分なエポキシドを含む。いくつかの実施形態では、この反応生成物ストリームは少なくとも約10%のエポキシド、少なくとも約5%のエポキシド、少なくとも約3%のエポキシドまたは少なくとも約0.1%のエポキシドを含む。
【0008】
いくつかの実施形態では、上記反応生成物ストリームは、約5%未満の無水物、または約1%未満の無水物を含む。いくつかの実施形態では、この反応生成物ストリームは、本質的に無水物を含まない。
【0009】
いくつかの実施形態では、この方法は、未使用の(fresh)カルボニル化触媒を添加する工程、使用済みのカルボニル化触媒を取り除く工程;溶媒を添加する工程;エポキシドを添加する工程、上記βラクトンストリームの一部を添加する工程;およびこれらの2つ以上の任意の組み合わせからなる群より選択される少なくとも1つの工程を行うことによるさらなる工程の前に、上記触媒リサイクルストリームを処理する工程をさらに包含する。
【0010】
いくつかの実施形態では、上記分離工程は、上記反応生成物ストリームからβラクトンの少なくとも一部を揮発させる工程を包含する。いくつかの実施形態では、この分離工程は、上記反応生成物ストリームを低圧に暴露する工程を包含する。いくつかの実施形態では、この低圧は約5Torr〜約500Torrである。いくつかの実施形態では、この低圧は約10Torr〜約100Torrである。いくつかの実施形態では、この低圧は、上記βラクトンの上記沸点を、大気圧でその沸点の約20〜約100℃下まで低下するのに十分である。
【0011】
いくつかの実施形態では、上記分離工程は、上記反応生成物ストリームを高温に暴露する工程を包含する。いくつかの実施形態では、上記高温は、上記βラクトンの沸点より大きいが、上記溶媒の沸点より小さい。
【0012】
いくつかの実施形態では、上記分離工程は、上記反応生成物ストリームを低圧および高温に暴露する工程を包含する。
【0013】
いくつかの実施形態では、上記方法は、上記分離工程由来の上記揮発されたβラクトンを凝縮する工程をさらに包含する。
【0014】
いくつかの実施形態では、上記方法は、上記フィードストリームに対してβラクトンストリームの一部を添加する工程をさらに包含する。いくつかの実施形態では、上記βラクトンストリームは、上記反応生成物ストリーム中のβラクトンの重量パーセントが約10%〜約90%の範囲になるまで上記フィードに加えられ、次いでこのβラクトンストリームの一部を生成物として抜き取って、この反応生成物ストリーム中のβラクトンの重量パーセントを約10%〜約90%の範囲で維持する。いくつかの実施形態では、上記βラクトンストリームは、上記反応生成物ストリーム中のβラクトンの重量パーセントが約30%〜約65%の範囲になるまで上記フィードに加えられ、次いでこのβラクトンストリームの一部を生成物として抜き取って、この反応生成物ストリーム中のβラクトンの重量パーセントを約30%〜約65%の範囲で維持する。いくつかの実施形態では、上記βラクトンストリームは、上記反応生成物ストリーム中のβラクトンの重量パーセントが約43%〜約53%の範囲になるまで上記フィードに加えられ、次いでこのβラクトンストリームの一部を生成物として抜き取って、この反応生成物ストリーム中のβラクトンのこの重量パーセントを約43%〜約53%の範囲で維持する。
【0015】
いくつかの実施形態では、上記方法は、上記βラクトンを変換するための条件下で、上記βラクトンストリームをさらに処理する工程の前にこのβラクトンに対して第二の溶媒を添加する工程をさらに包含する。
【0016】
いくつかの実施形態では、βラクトンを変換するための条件下で、上記βラクトンストリームをさらに処理する上記工程は、気相で行われる。
【0017】
いくつかの実施形態では、上記溶媒の上記沸点は、上記βラクトンの上記沸点よりも少なくとも20℃高い。いくつかの実施形態では、この溶媒の沸点は、このβラクトンの沸点よりも約20℃〜約80℃高い。いくつかの実施形態では、この溶媒の沸点は、このβラクトンの沸点よりも約30℃〜約60℃高い。
【0018】
いくつかの実施形態では、上記エポキシドは式
【0019】
【化1】

を有し、
ここで、RおよびRは各々独立して:−H;必要に応じて置換されているC1−6脂肪族;フェニル;必要に応じて置換されているC1−6ヘテロ脂肪族;必要に応じて置換されている3員〜6員の炭素環;および必要に応じて置換されている3員〜6員の複素環からなる群より選択され、かつ、ここで、RおよびRは必要に応じて、介在原子と一緒になって、1つ以上のヘテロ原子を必要に応じて含む、必要に応じて置換されている環を形成し得る。
【0020】
いくつかの実施形態では、上記エポキシドは:エチレンオキシド;プロピレンオキシド;1,2−ブチレンオキシド;2,3−ブチレンオキシド;エピクロロヒドリン;シクロヘキセンオキシド;シクロペンテンオキシド;3,3,3−トリフルオロ−1,2−エポキシプロパン、スチレンオキシド;グリシジルエーテル;およびグリシジルエステルからなる群より選択される。いくつかの実施形態では、上記エポキシドはエチレンオキシドである。いくつかの実施形態では、上記エポキシドはプロピレンオキシドである。
【0021】
いくつかの実施形態では、βラクトンを変換するための条件下で、上記βラクトンストリームをさらに処理する上記工程は:アルコール、アミンおよびチオールからなる群より選択される化合物の存在下で、それぞれ対応するアクリル酸エステル、アクリルアミド、またはチオアクリレートを生じる条件下で行われる。
【0022】
いくつかの実施形態では、βラクトンを変換するための条件下で、上記βラクトンストリームをさらに処理する上記工程は、式H−Yの化合物の存在下で行われて、式
【0023】
【化2】

を有するアクリレートが得られ、
式中、RおよびRは各々独立して、−H、必要に応じて置換されているC1−6脂肪族、必要に応じて置換されているC1−6ヘテロ脂肪族、必要に応じて置換されている3員〜12員の炭素環、および必要に応じて置換されている3員〜12員の複素環からなる群より選択されるか、またはRおよびRは必要に応じて介在原子と一緒になって、1つ以上のヘテロ原子を必要に応じて含む必要に応じて置換されている環を形成し得る。いくつかの実施形態では、Yは、OR13、NR1112、およびSR13からなる群より選択される。いくつかの実施形態では、R11、R12、およびR13は、独立して:−H;必要に応じて置換されているC1−32脂肪族、必要に応じて置換されているC1−32ヘテロ脂肪族、必要に応じて置換されている3員〜14員の炭素環、および必要に応じて置換されている3員〜14員の複素環からなる群より選択されるか、またはR11およびR12は必要に応じて介在原子と一緒になって、必要に応じて1つ以上のヘテロ原子を含む必要に応じて置換されている環を形成し得る。
【0024】
いくつかの実施形態では、上記フィードストリームは、エチレンオキシドおよび大気圧で少なくとも172℃の沸点を有する高沸点溶媒を含み;かつ上記反応生成物ストリームはプロピオラクトンを含む。
【0025】
いくつかの実施形態では、上記フィードストリームは、プロピレンオキシドおよび大気圧で少なくとも180℃の沸点を有する高沸点溶媒を含み;かつ上記反応生成物ストリームはプロピオラクトンを含む。
【0026】
いくつかの実施形態では、上記溶媒は:スルホラン;N−メチルピロリドン;1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン ジグリム;トリグリム;テトラグリム;エチレンカーボネート;プロピレンカーボネート;二塩基性エステル;THF;C1−32脂肪族で修飾されたTHF;およびこれらの任意の2つ以上の混合物からなる群より選択される。いくつかの実施形態では、上記溶媒はTHFである。いくつかの実施形態では、上記溶媒はスルホランである。いくつかの実施形態では、上記溶媒は、二塩基性エステルである。いくつかの実施形態では、上記溶媒は、スルホランおよびTHFの混合物である。いくつかの実施形態では、上記溶媒は、スルホランおよびC1−32脂肪族で修飾されたTHFの混合物である。いくつかの実施形態では、上記溶媒はさらにジメチルエーテルイソソルビドを含む。
【0027】
いくつかの実施形態では、上記修飾されたTHFは形:
【0028】
【化3】

を有し、
式中、Rは、脂肪族、芳香族、エーテルまたはエステル基であって、そのいずれかが4つより多い炭素原子を含む。
【0029】
いくつかの実施形態では、上記カルボニル化触媒は金属カルボニル化合物を含む。
【0030】
いくつかの実施形態では、上記金属カルボニル化合物は一般式[QM(CO)を有し、ここで:Qは任意の配位子であって、存在する必要はなく;Mは金属原子であり;yは1〜6までの整数(1および6を含む)であり;wは、安定な金属カルボニルを提供するような数であり;かつxは−3〜+3までの整数(−3および+3を含む)である。
【0031】
いくつかの実施形態では、MはTi、Cr、Mn、Fe、Ru、Co、Rh、Ni、Pd、Cu、Zn、Al、GaおよびInからなる群より選択される。いくつかの実施形態では、MはCoである。いくつかの実施形態では、MはCoであり、yは1であり、かつwは4である。
【0032】
いくつかの実施形態では、上記カルボニル化触媒はさらに、ルイス酸共触媒を含む。
【0033】
いくつかの実施形態では、上記金属カルボニル化合物は陰イオン性であり、かつ上記ルイス酸共触媒は陽イオン性である。いくつかの実施形態では、上記金属カルボニル錯体はコバルト酸カルボニルを含み、かつ上記ルイス酸共触媒は金属中心陽イオン性ルイス酸を含む。
【0034】
いくつかの実施形態では、上記金属中心陽イオン性ルイス酸は、式[M’(L)b]c+の金属錯体であり、ここで、M’は金属であり;各々のLは配位子であり;bは1〜6までの整数(1および6を含む)であり;cは、1、2または3であり;かつここで、1つより多いLが存在する場合、各々のLは同じであっても異なってもよい。
【0035】
いくつかの実施形態では、M’は:遷移金属、13族または14族の金属、およびランタニドからなる群より選択される。いくつかの実施形態では、M’は遷移金属または13族の金属である。いくつかの実施形態では、M’はアルミニウム、クロム、インジウムおよびガリウムからなる群より選択される。いくつかの実施形態では、M’はアルミニウムである。いくつかの実施形態では、M’はクロムである。
【0036】
いくつかの実施形態では、上記ルイス酸は、ジアニオン四座配位子を含む。いくつかの実施形態では、上記ジアニオン四座配位子は:ポルフィリン誘導体;サレン誘導体;ジベンゾテトラメチルテトラアザ[14]アヌレン(「TMTAA])誘導体;フタロシアニネート誘導体;およびTrost配位子の誘導体からなる群より選択される。
【0037】
いくつかの実施形態では、上記処理工程は、触媒によって媒介される。いくつかの実施形態では、この処理工程におけるこの触媒は酸触媒である。いくつかの実施形態では、この処理工程におけるこの触媒は塩基性触媒である。
【0038】
いくつかの実施形態では、上記反応工程は、断熱リアクター中で行われる。いくつかの実施形態では、この断熱リアクターは管状リアクター(tubular reactor)である。いくつかの実施形態では、この断熱リアクターは、シェルアンドチューブリアクター(shell and tube reactor)である。
【0039】
いくつかの実施形態では、上記反応工程は、約50psi〜約5000psiの圧力で行われる。いくつかの実施形態では、この反応工程は、約50psi〜約1500psiの圧力で行われる。いくつかの実施形態では、この反応工程は、約200psi〜約800psiの圧力で行われる。いくつかの実施形態では、この反応工程は、約400psiの圧力で行われる。
【0040】
いくつかの実施形態では、上記反応工程は、約0℃〜約125℃の温度で行われる。
【0041】
いくつかの実施形態では、上記反応工程は、約30℃〜約100℃の温度で行われる。いくつかの実施形態では、この反応工程は、約40℃〜約80℃の温度で行われる。
【0042】
いくつかの実施形態では、上記反応工程中の上記一酸化炭素は、一酸化炭素および1つ以上のさらなる気体を含む工業的ガスストリームとして供給される。いくつかの実施形態では、この工業的ガスストリームは合成ガスを含む。いくつかの実施形態では、この反応工程中の一酸化炭素は、実質的に純粋型で供給される。
【0043】
いくつかの実施形態では、上記βラクトンストリームは、残留する未反応のエポキシド、一酸化炭素または溶媒を含む。いくつかの実施形態では、このエポキシド、一酸化炭素または溶媒は上記フィードストリームに戻される。いくつかの実施形態では、上記βラクトンストリームの一部は上記フィードに戻される。
【0044】
種々の局面では、本発明は、エポキシド、溶媒、カルボニル化触媒および一酸化炭素を含むフィードストリームの内容物を反応させて、βラクトンを含む反応生成物ストリームを生成する工程と;この溶媒およびカルボニル触媒由来のこの反応生成物ストリームにおけるβラクトンの少なくとも一部を分離して:i)βラクトンを含むβラクトンストリーム、およびii)カルボニル化触媒を含む触媒リサイクルストリーム、を得る工程と:この触媒リサイクルストリームをこのフィードストリームに加える工程と、を包含する。
【0045】
いくつかの実施形態では、上記分離工程は、第一の分離工程であって、上記反応生成物ストリームを、i)一酸化炭素および上記エポキシドを含む気体ストリーム;ならびにii)βラクトンおよびカルボニル化触媒を含む液体ストリーム、に分ける工程と;第二の分離工程であって、上記溶媒およびカルボニル化触媒からこの液体ストリーム中のβラクトンの少なくとも一部を分離して:i)βラクトンを含むβラクトンストリーム;およびii)カルボニル化触媒を含む触媒リサイクルストリーム、を得る工程と;を包含する。
【0046】
いくつかの実施形態では、上記第一の分離工程は、分離工程であって、上記反応生成物ストリームを、i)一酸化炭素および上記エポキシドの一部を含む気体ストリーム;ならびにii)このエポキシドの残り、βラクトンおよびカルボニル化触媒を含む液体ストリーム、に分ける工程と;分離工程であって、この液体ストリームを、i)残りのエポキシドを含むエポキシドストリーム;ならびにii)βラクトンおよびカルボニル化触媒を含む不揮発性ストリーム、に分ける工程と;を包含する。
【0047】
いくつかの実施形態では、上記触媒リサイクルストリームはさらに溶媒の少なくとも一部を含み、この溶媒が上記βラクトンの上記沸点よりも高い沸点を有する。いくつかの実施形態では、この方法は、気体ストリームをフィードストリームに戻す工程を包含する。いくつかの実施形態では、この方法は、上記βラクトンストリームをこのフィードストリームに戻す工程を包含する。いくつかの実施形態では、この方法は、上記触媒リサイクルストリームをこのフィードストリームに戻す工程を包含する。
【0048】
いくつかの実施形態では、上記気体ストリームはさらに溶媒の一部を含み、ここでこの溶媒は上記βラクトンの上記沸点よりも低い沸点を有する。いくつかの実施形態では、この気体ストリームは上記フィードストリームに戻される。いくつかの実施形態では、この方法は、この気体ストリームおよび上記エポキシドストリームの少なくとも1つをこのフィードストリームに戻す工程を包含する。いくつかの実施形態では、この方法は、上記液体ストリームをフィードストリームに戻す工程を包含する。いくつかの実施形態では、この方法は、上記不揮発性ストリームをこのフィードストリームに戻す工程を包含する。いくつかの実施形態では、このエポキシドストリームはさらに、溶媒の一部を含み、ここでこの溶媒はこのβラクトンの上記沸点よりも低い沸点を有する。いくつかの実施形態では、この気体ストリームはこのフィードストリームに戻される。
【0049】
いくつかの実施形態では、上記フィードストリームはさらにルイス塩基添加物を含む。いくつかの実施形態では、上記ルイス塩基添加物は、修飾THF;2,6−ルチジン;イミダゾール;1−メチルイミダゾール;4−ジメチルアミノピリジン;トリヘキシルアミンおよびトリフェニルホスフィンから選択される。
【0050】
種々の局面では、本発明は、エポキシド、溶媒とカルボニル化触媒および一酸化炭素を含むフィードストリームの内容物を反応させて、βラクトンを含む反応生成物ストリームを生成する工程と;上記反応生成物ストリーム中のβラクトンの重量パーセントが所定の範囲内になるまでこのフィードストリームへこの反応生成物ストリームの全体を戻す工程と;次いでこの溶媒およびカルボニル触媒からこの反応生成物ストリーム中のこのβラクトンの少なくとも一部を分離して:i)βラクトンを含むβラクトンストリーム、ならびにii)このカルボニル化触媒およびこの溶媒を含む触媒リサイクルストリーム、を生じる工程と:この触媒リサイクルストリームをこのフィードストリームに加える工程と;を包含する方法を包含する。
【0051】
いくつかの実施形態では、上記反応生成物ストリームは、この反応生成物ストリーム中のβラクトンの重量パーセントが約10%〜約90%の範囲内になるまでこのフィードへ戻され、次いでこのβラクトンストリームの一部を生成物として抜き取って、この反応生成物ストリーム中のβラクトンのこの重量パーセントを約10%〜約90%の範囲で、約30%〜約65%の範囲で、または約43%〜約53%の範囲で維持する。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】図1は、例示的な反応システムのプロセスフロー図を示す。
【図2】図2は、例示的な反応および工程段階のフローチャートを示す。
【図3】図3は、スルホラン中におけるカルボニル化反応の間にモニターしたプロピオラクトン(propriolactone)(1823cm−1)、エチレンオキシド(867cm−1)、およびアセトアルデヒド(1724cm−1)の吸光度のグラフであり、ここでエチレンオキシドの出発濃度は1.0Mである。
【図4】図4は、スルホラン中におけるカルボニル化反応の間にモニターしたプロピオラクトン(1823cm−1)、エチレンオキシド(867cm−1)、およびアセトアルデヒド(1724cm−1)の吸光度のグラフであり、ここでエチレンオキシドの出発濃度は1.8Mである。
【図5】図5は、二塩基性エステル中におけるカルボニル化反応の間にモニターしたプロピオラクトン(1823cm−1)、エチレンオキシド(867cm−1)、およびアセトアルデヒド(1724cm−1)の吸光度のグラフである。
【図6】図6は、スルホラン中におけるカルボニル化反応の間にモニターしたプロピオラクトン(1823cm−1)、エチレンオキシド(867cm−1)、およびSA(1791cm−1)の吸光度のグラフであり、ここでは反応の間にさらなるプロピオラクトンおよびエチレンオキシドを添加した。
【図7】図7は、種々の濃度のプロピオラクトンリサイクルについてのエチレンオキシドカルボニル化の最初の5分の間のプロピオラクトンの形成を示すグラフである。
【図8】図8は、反応施行に関するプロピオラクトン濃度のグラフであり、ここで第二の触媒注入は13.8%のプロピオラクトンである。
【図9】図9は、90℃の1,4ジオキサン中における200psiでの一連のカルボニル化反応についてのプロピレンオキシド、プロピオラクトンおよびアセトンの濃度のグラフである。
【図10】図10は、30℃の1,4ジオキサン中における200psiでの一連のカルボニル化反応についてのプロピレンオキシド、プロピオラクトンおよびアセトンの濃度のグラフである。
【図11】図11は、DBE−3中のPOのカルボニル化の間のプロピレンオキシド(「PO」)、b−ブチロラクトンおよびメチルコハク酸無水物の濃度のグラフである。反応条件:Parrリアクター、[PO]=1.8M、[PO]:[触媒]=500,60℃(最大77℃まで)、400psi CO。
【図12】図12は、DBE−3中のPOのカルボニル化の間のプロピレンオキシド(「PO」)、βブチロラクトンおよびメチルコハク酸無水物の濃度のグラフである。反応条件:Parrリアクター、[PO]=1.8M、[PO]:[触媒]=500,60℃、400psi CO。第二のPO注入は100分で行った。
【図13】図13は、THF中のPOの一連のカルボニル化反応におけるβブチロラクトンの濃度のグラフである。反応条件:Parrリアクター、[PO]=1.8M,55℃であり、ここで触媒対酸化物の比は種々である。
【図14】図14は、THF中のPOのカルボニル化の間のプロピレンオキシド(「PO」)およびβブチロラクトン(「BBL」)の濃度のグラフである。反応条件:Parrリアクター、[PO]=1.8M、[PO]:[触媒]=1500、55℃、200psiのCO。さらなるPO注入は、3時間および20時間で行った。
【図15】図15は、一連のカルボニル化反応の間のプロピレンオキシド(「PO」)、βブチロラクトンの濃度のグラフであって、ここでβラクトンリサイクルの量は種々である。反応条件:Parrリアクター、[PO]=1.8M、[PO]:[触媒]=250、60℃、400psi、スルホラン。生成物は、最初のサイクル後、完全真空下において90℃で反応混合物から蒸留した。
【図16】図16は、[(Cl−TPP)Al][Co(CO)4]の1H NMRスペクトル(400MHz,DMSO−d6)を示す。
【図17】図17は、(Cl−TPP)AlCl、NaCo(CO)4、および[(Cl−TPP)Al][Co(CO)4]の赤外線スペクトルを示す。
【図18】図18は、DBE−3中のプロピレンオキシドのカルボニル化における反応溶液の赤外線スペクトルのグラフである([Co]=15mM、[PO]=2.86M、[PO]:[Co]=200、30℃、400psiのCO)。
【図19】図19は、種々の反応時間での、スルホラン中のエチレンオキシドのカルボニル化における反応溶液の赤外線スペクトルのグラフである([Co]=3.6mM、[EO]=1.8M、[EO]:[Co]=500、80℃、400psiのCO)。
【図20】図20は、スルホラン中のエチレンオキシドの反応中のインサイチュのIRによる反応進行モニタリングの間の赤外吸光度を示す([Co]=3.6mM、[EO]=1.8M、[EO]:[Co]=500、65℃)。
【図21】図21は、THFおよびスルホラン中のエチレンオキシドの反応中のインサイチュのIRによってモニターした最初の速度を示す([Co]=3.6mM、[EO]=1.8M、600psiのCO)。
【発明を実施するための形態】
【0053】
(発明の種々の実施形態の詳細な説明)
本発明は、エポキシドの原料からのβラクトンの連続産生のための方法を包含する。種々の局面において、本発明は、反応生成物ストリーム200中でβラクトン(例えば、βプロピオラクトン)を生じるためのエポキシド化合物(例えば、エチレンオキシド)のカルボニル化1の方法を包含する。このβラクトンはさらに、反応生成物ストリームの他の成分から分離されるか2、または単離される。このβラクトンはさらに、アクリレート(例えば、アクリル酸)3に変換される。いくつかの実施形態では、このカルボニル化反応1は触媒の存在下である。いくつかの実施形態では、このエポキシドは、一酸化炭素と反応される。いくつかの実施形態では、この触媒は、溶媒中に存在する。下のスキーム1は、本発明の一実施形態における反応順序を図示している。
【0054】
【化4】

(定義)
特定の官能基および化学用語の定義は下にさらに詳細に記載される。本発明の目的に関して、この化学元素は、CASバージョン,Handbook of Chemistry and Physics,第75版,内表紙の元素周期律表に従って特定され、そして特定の官能基は概してそこに記載されるとおり定義される。さらに、有機化学の一般的原理、ならびに特定の官能基および反応性は、Organic Chemistry, Thomas Sorrell,University Science Books,Sausalito,1999;Smith and March March’s Advanced Organic Chemistry,第5版,John Wiley & Sons,Inc.,New York,2001;Larock,Comprehensive Organic Transformations,VCH Publishers,Inc.,New York,1989;Carruthers,Some Modern Methods of Organic Synthesis,第3版,Cambridge University Press,Cambridge,1987(その各々の内容全体が参照によって本明細書に援用される)に記載されている。
【0055】
本明細書に記載されるような特定の化合物は、別段示さない限り、1つ以上の二重結合を有してもよく、Z異性体またはE異性体のいずれで存在してもよい。本発明はさらに、化合物を他の異性体を実質的に含まない個々の異性体として、あるいは種々の異性体の混合物として、例えば、光学異性体のラセミ混合物として包含する。上述の化合物自体に加えて、本発明はまた、1つ以上の化合物を含む組成物を包含する。
【0056】
本明細書において用いる場合、「異性体」という用語は、任意のかつ全ての幾何異性体および立体異性体を包含する。例えば、「異性体」とは、本発明の範囲内におさまる場合、シスおよびトランス異性体、EおよびZ異性体、RおよびS鏡像異性体、ジアステレオマー、(D)異性体、(L)異性体、それらのラセミ混合物、およびそれらの他の混合物を包含する。例えば、化合物は、いくつかの実施形態では、1つ以上の対応する立体異性体を実質的に含まず提供されてもよく、そしてまた「立体化学的に富化された」と言われる場合もある。
【0057】
「ハロ」および「ハロゲン」という用語は本明細書において用いる場合、フッ素(フルオロ、−F)、塩素(クロロ、−Cl)、臭素(ブロモ、−Br)およびヨウ素(ヨード、−I)から選択される原子を指す。本明細書において用いる場合、「ハロゲン化」という用語は、1つ以上のハロゲン原子で置換されている化合物を指す。
【0058】
「脂肪族」または「脂肪族基」という用語は、本明細書において用いる場合、直鎖(すなわち、非分岐)、分岐または環式(縮合、架橋およびスピロ−縮合多環式を含む)であってもよく、かつ完全に飽和されてもよいし、または不飽和の1つ以上の単位を含んでもよく、ただし芳香族ではない炭化水素部分を示す。別段特定しない限り、脂肪族基は、1〜30個の炭素原子を含む。特定の実施形態では、脂肪族基は、1〜12個の炭素原子を含む。特定の実施形態では、脂肪族基は、1〜8個の炭素原子を含む。特定の実施形態では、脂肪族基は、1〜6個の炭素原子を含む。いくつかの実施形態では、脂肪族基は、1〜5個の炭素原子を含み、いくつかの実施形態では、脂肪族基は、1〜4個の炭素原子を含み、さらに他の実施形態では、脂肪族基は、1〜3個の炭素原子を含み、かつさらに他の実施形態では、脂肪族基は、1〜2個の炭素原子を含む。適切な脂肪族基としては限定するものではないが、直鎖または分岐した、アルキル、アルケニル、およびアルキニル基、およびそれらのハイブリッド、例えば(シクロアルキル)アルキル、(シクロアルケニル)アルキルまたは(シクロアルキル)アルケニルが挙げられる。
【0059】
「ヘテロ脂肪族」という用語は本明細書において用いる場合、脂肪族基であって、1つ以上の炭素原子が独立して、酸素、イオウ、窒素、リン、またはホウ素からなる群より選択される1つ以上の原子によって置き換えられている脂肪族基を指す。特定の実施形態では、1個または2個の炭素原子は、独立して酸素、イオウ、窒素、またはリンのうちの1つ以上によって置き換えられている。ヘテロ脂肪族基は、置換であってもまたは非置換であっても、分岐であっても非分岐であっても、環式であっても非環式であってもよく、そして「複素環」、「ヘテロシクリル」、「ヘテロ環式(複素環式)脂肪族」、または「複素環式」基を包含する。
【0060】
「エポキシド」という用語は、本明細書において用いる場合、置換または非置換のオキシランを指す。置換オキシランとしては、一置換オキシラン、二置換オキシラン、三置換オキシラン、および四置換オキシランが挙げられる。このようなエポキシドはさらに、必要に応じて本明細書において規定されるように置換されてもよい。特定の実施形態では、エポキシドは、単一のオキシラン部分を含む。特定の実施形態では、エポキシドは、2つ以上のオキシラン部分を含む。
【0061】
「アクリレート」(単数または複数)という用語は本明細書において用いる場合、アシルカルボニルに隣接するビニル基を有する任意のアシル基を指す。この用語は、一置換、二置換および三置換ビニル基を包含する。アクリレートの例としては限定するものではないが:アクリレート、メタクリレート、エタクリレート(ethacrylate)、桂皮酸エステル(3−フェニルアクリレート)、クロトン酸エステル、チグリン酸塩、およびセネシオエート(senecioate)が挙げられる。シクロプロパン基は、特定の場合には、極めて二重結合に似た挙動をし得ることが公知であるので、シクロプロパンエステルは、本明細書のアクリレートの定義内に特に包含される。
【0062】
「ポリマー」という用語は本明細書において用いる場合、比較的高い分子量の分子であって、その構造が、比較的低分子量の分子から実際にまたは概念的に誘導された単位の多数の反復を含む分子を指す。特定の実施形態では、ポリマーは、唯一のモノマー種(例えば、ポリエチレンオキシド)からなる。特定の実施形態では、本発明のポリマーは、1つ以上のエポキシドのコポリマー、ターポリマー、ヘテロポリマー、ブロックコポリマー、またはテーパー(tapered)ヘテロポリマーである。
【0063】
「不飽和」という用語は本明細書において用いる場合、1つ以上の二重結合または三重結合を有する部分を意味する。
【0064】
「アルキル」という用語は、本明細書において用いる場合、単一の水素原子の除去による1〜6個の炭素原子を含む脂肪族部分由来の飽和した、直鎖または分岐鎖の炭化水素基を指す。別段特定しない限り、アルキル基は、1〜12個の炭素原子を含む。特定の実施形態では、アルキル基は、1〜8個の炭素原子を含む。特定の実施形態では、アルキル基は、1〜6個の炭素原子を含む。いくつかの実施形態では、アルキル基は、1〜5個の炭素原子を含み、いくつかの実施形態では、アルキル基は1〜4個の炭素原子を含み、さらに他の実施形態では、アルキル基は1〜3個の炭素原子を含み、かつさらに他の実施形態では、アルキル基は1〜2個の炭素原子を含む。アルキル基の例としては限定するものではないが、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソ−ブチル、sec−ブチル、sec−ペンチル、イソ−ペンチル、tert−ブチル、n−ペンチル、ネオペンチル、n−ヘキシル、sec−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、n−デシル、n−ウンデシル、ドデシルなどが挙げられる。
【0065】
「炭素環」、または「炭素環式環」という用語は本明細書において用いる場合、環が炭素原子のみを含む単環および多環部分を指す。別段特定しない限り、炭素環は、飽和であっても、部分的に不飽和であっても、または芳香族であってもよく、かつ3〜20個の炭素原子を含む。「炭素環」または「炭素環式」という用語はまた、1つ以上の芳香族または非芳香族環に縮合されている脂肪族環、例えば、デカヒドロナフチルまたはテトラヒドロナフチルを包含し、ここではこの基または結合点はこの脂肪族環の上にある。いくつかの実施形態では、炭素環式基は二環式である。いくつかの実施形態では、炭素環式基は三環式である。いくつかの実施形態では、炭素環式基は多環式である。特定の実施形態では、「3員〜14員の炭素環」および「C3−14炭素環」という用語は、3〜8員の飽和もしくは部分的に不飽和の単環式炭素環式環、または7員〜14員の飽和もしくは部分的に不飽和の多環式炭素環式環を指す。
【0066】
代表的な炭素環としてはシクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、ビシクロ[2,2,1]ヘプタン、ノルボルネン、フェニル、シクロヘキセン、ナフタレン、スピロ[4.5]デカンが挙げられる。
【0067】
単独で、または「アラルキル」、「アラルコキシ」もしくは「アリールオキシアルキル」におけるようなより大きな部分の一部として用いられる「アリール」という用語は、合計で5〜20の環員を有する単環系および多環系をいい、ここでは、この系における少なくとも1つの環は芳香族であり、この系における各々の環は3〜12環員を含む。「アリール」という用語は、「アリール環」という用語と相互交換可能に用いることができる。本発明の特定の実施形態において、「アリール」とは、限定されるものではないが、1以上の置換基を担持し得る、フェニル、ビフェニル、ナフチル、アントラシルなどを含む芳香族環系をいう。また、「アリール」という用語の範囲内に含まれるのは、これが本明細書中で用いられる場合、ベンゾフラニル、インダニル、フタルイミジル、ナフチイミジル、フェナントリイジニルまたはテトラヒドロナフチル等のような、芳香族環が1つ以上のさらなる環に縮合されている基である。特定の実施形態では、「6員〜10員のアリール」および「C6−10アリール」という用語は、フェニルまたは8員〜10員の多環式アリール環を指す。
【0068】
単独で、またはより大きな部分、例えば、「ヘテロアラルキル」もしくは「ヘテロアラルコキシ」の一部として用いられる「ヘテロアリール」および「ヘテロアル−」という用語は、5〜14の環原子、好ましくは、5、6、または9の環原子を有する基;環状アレイ中に共有された6、10、または14の電子を有する基;および炭素原子に加えて、1〜5のヘテロ原子を有する基を指す。「ヘテロ原子」という用語は、窒素、酸素、またはイオウをいい、窒素またはイオウの任意の酸化された形態を含み、かつ塩基性窒素の任意の第四級化形態をいう。ヘテロアリール基としては、限定するものではないが、チエニル、フラニル、ピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、オキサジアゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、チアジアゾリル、ピリジル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル、インドリジニル、プリニル、ナフチリジニル、ベンゾフラニルおよびプテリジニルが挙げられる。「ヘテロアリール」および「ヘテロアル−」という用語はまた、本明細書中で用いる場合、ヘテロ芳香族環が1以上のアリール、シクロ脂肪族、またはヘテロシクリル環に縮合され、ここで、この基または結合点がヘテロ芳香族環上にある基も包含する。非限定的な例としてはインドリル、イソインドリル、ベンゾチエニル、ベンゾフラニル、ジベンゾフラニル、インダゾリル、ベンズイミダゾリル、ベンズチアゾリル、キノリル、イソキノリル、シンノリニル、フタラジニル、キナゾリニル、キノキサリニル、4H−キノリジニル、カルバゾリル、アクリジニル、フェナジニル、フェノチアジニル、フェノキサジニル、テトラヒドロキノリニル、テトラヒドロイソキノリニルおよびピリド[2,3−b]−1,4−オキサジン−3(4H)−オンが挙げられる。ヘテロアリール基は単環式であってもまたは二環式であってもよい。「ヘテロアリール」という用語は、「ヘテロアリール環」、「ヘテロアリール基」、または「ヘテロ芳香族」という用語(各用語は必要に応じて置換される環を包含する)と相互交換可能に用いてもよい。「ヘテロアラルキル」という用語はヘテロアリールによって置換されたアルキル基を指し、ここでは、このアルキル部分およびヘテロアリール部分は独立して必要に応じて置換されている。特定の実施形態では、「5員〜14員のヘテロアリール」という用語は、窒素、酸素もしくはイオウから独立して選択される1〜3個のヘテロ原子を有する5員〜6員のヘテロアリール環、または窒素、酸素もしくはイオウから独立して選択される1〜4個のヘテロ原子を有する8員〜14員の多環式ヘテロアリール環を指す。
【0069】
本明細書中で用いる場合、「複素環」、「ヘテロシクリル」、「複素環基」、および「複素環式環」という用語は、相互交換可能に用いられ、かつ飽和した、部分的に不飽和または芳香族のいずれかであり、かつ炭素原子に加えて、上記で規定されるように、1個以上の、好ましくは1〜4個のヘテロ原子を有する安定な5員〜7員の単環複素環部分または7〜14員の二環複素環部分をいう。複素環の環原子に関連して用いる場合、「窒素」という用語は、置換された窒素を含む。例として、酸素、イオウまたは窒素から選択される0〜3個のヘテロ原子を有する飽和環、または部分的不飽和環において、この窒素はN(3,4−ジヒドロ−2H−ピロリルにおけるように)、NH(ピロリジニルにおけるように)、またはNR(N−置換ピロリジニルにおけるように)であってもよい。いくつかの実施形態では、「3員〜14員の複素環」という用語は、窒素、酸素もしくはイオウから独立して選択される1〜2個のヘテロ原子を有する3員〜8員の飽和もしくは部分的不飽和の単環の複素環式環、または窒素、酸素もしくはイオウから独立して選択される1〜3個のヘテロ原子を有する7員〜14員の飽和もしくは部分的不飽和の多環の複素環式環を指す。
【0070】
複素環式環は、任意のヘテロ原子または炭素原子においてそのペンダント基に結合されてもよく、その結果、安定な構造がもたらされ、かつ任意の環原子が必要に応じて置換されてもよい。このような飽和または部分的不飽和の複素環基の例としては、限定するものではないが、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロチエニル、ピロリジニル、ピロリドニル、ピペリジニル、ピロリニル、テトラヒドロキノリニル、テトラヒドロイソキノリニル、デカヒドロキノリニル、オキサゾリジニル、ピペラジニル、ジオキサニル、ジオキソラニル、ジアゼピニル、オキサゼピニル、チアゼピニル、モルホリニル、およびキヌクリジニルが挙げられる。「複素環」、「ヘテロシクリル」、「ヘテロシクリル環」、「複素環基」、「複素環部分」、および「複素環基」という用語は、本明細書中においては相互交換可能に用いられ、かつヘテロシクリル環が、インドリニル、3H−インドリル、クロマニル、フェナントリジニル、またはテトラヒドロキノリニルなどの、1つ以上のアリール、ヘテロアリール、またはシクロ脂肪族環に縮合している基であって、この基または結合点が、ヘテロシクリル環上にある基も包含する。ヘテロシクリル基は単環式であってもまたは二環式であってもよい。「ヘテロシクリルアルキル」という用語は、ヘテロシクリルによって置換されたアルキル基であって、ここでこのアルキルおよびヘテロシクリル部分が独立して必要に応じて置換されているアルキル基を指す。
【0071】
本明細書において用いる場合、「部分的に不飽和」という用語は、少なくとも1つの二重結合または三重結合を含む環部分をいう。「部分的に不飽和」という用語は、不飽和の多数の部分を有する環を包含することを意図するが、本明細書中に定義されるような、アリールまたはヘテロアリール部分を含むことは意図しない。
【0072】
本明細書中に記載される場合、本発明の化合物は「必要に応じて置換される」部分を含んでもよい。一般に、「置換された」という用語は、「必要に応じて」という用語が先行するか否かにかかわらず、指定された部分の1つ以上の水素が適当な置換基で置換されていることを意味する。別段示さない限り、「必要に応じて置換された」基は、その基の各々の置換可能な位置において適当な置換基を有してもよく、かつ任意の所定の構造における1つより多い位置が特定の基から選択される1つより多い置換基で置換され得る場合、その置換基は各々の位置において同一であってもまたは異なってもよい。本発明によって想定される置換基の組合せは、好ましくは、安定なまたは化学的に可能な化合物の形成をもたらす組み合わせである。「安定している」という用語は、本明細書中で用いる場合、化合物であって、その生産、検出および、ある実施形態においてはその回収、精製、および本明細書中に開示された目的の1つ以上のための使用を可能とする条件に供された場合に実質的に改変されない化合物をいう。
【0073】
「必要に応じて置換される」基の置換可能な炭素原子上の適切な一価置換基は、独立して、ハロゲン;−(CH0−4;−(CH0−4OR;−O−(CH0−4C(O)OR;−(CH0−4CH(OR;−(CH0−4SR;Rで置換されていてもよい−(CH0−4Ph;Rで置換されていてもよい−(CH0−4O(CH0−1Ph;Rで置換されていてもよい−CH=CHPh;
【0074】
【化5】

;−(C1−4直鎖または分岐鎖アルキレン)O−N(R;または−(C1−4直鎖または分岐鎖のアルキレン)C(O)O−N(Rであり、ここで、各々のRは以下に定義したように置換されていてもよく、かつ独立して、水素、C1−8脂肪族、−CHPh、−O(CH0−1Ph、または独立して窒素、酸素、もしくはイオウから選択される0〜4個のヘテロ原子を有する5〜6員の飽和環、部分的不飽和環、もしくはアリール環であるか、あるいは上記定義にかかわらず、Rの2つの独立した出現は、その介在原子(単数または複数)と一緒になって、以下に定義するように置換されていてもよい、独立して窒素、酸素、もしくはイオウから選択される0〜4個のヘテロ原子を有する3〜12員の飽和、部分的不飽和、またはアリールの単環もしくは多環を形成する。
【0075】
上の適切な一価置換基(またはRの2つの独立した出現がその介在原子と一緒になって形成された環)は、独立して、ハロゲン、−(CH0−2、−(ハロR)、−(CH0−2OH、−(CH0−2OR、−(CH0−2CH(OR;−O(ハロR)、−CN、−N、−(CH0−2C(O)R、−(CH0−2C(O)OH、−(CH0−2C(O)OR、−(CH0−4C(O)N(R;−(CH0−2SR、−(CH0−2SH、−(CH0−2NH、−(CH0−2NHR、−(CH0−2NR、−NO、−SiR、−OSiR、−C(O)SR、−(C1−4直鎖または分岐鎖のアルキレン)C(O)OR、または−SSRであり、ここで各々のRは、非置換であるか、あるいは「ハロ」が先行している場合には、1以上のハロゲンのみで置換されており、かつ独立して、C1−4脂肪族、−CHPh、−O(CH0−1Ph、または独立して窒素、酸素、もしくはイオウから選択される0〜4個のヘテロ原子を有する5〜6員の飽和、部分的不飽和、またはアリールの環から選択される。Rの飽和炭素原子上の適切な二価置換基としては=Oおよび=Sを含む。
【0076】
「必要に応じて置換される」基の飽和した炭素原子上の適切な二価置換基としては以下:=O、=S、=NNR、=NNHC(O)R、=NNHC(O)OR、=NNHS(O)、=NR、=NOR、−O(C(R))2−3O−、または−S(C(R))2−3S−が挙げられ、ここで、Rの各々独立した出現は水素、以下に定義されるように置換されていてもよいC1−6脂肪族、または独立して窒素、酸素、もしくはイオウから選択される0〜4個のヘテロ原子を有する非置換の5〜6員の飽和、部分的不飽和もしくはアリールの環から選択される。「必要に応じて置換される」基の隣接置換可能炭素に結合している適切な二価置換基としては、−O(CR2−3O−が挙げられ、ここでRの各々独立した出現は、水素、以下に定義されるように置換されていてもよいC1−6脂肪族、または独立して窒素、酸素、もしくはイオウから選択される0〜4個のヘテロ原子を有する非置換の5〜6員の飽和、部分的不飽和もしくはアリールの環から選択される。
【0077】
の脂肪族基上の適切な置換基としては、ハロゲン、−R、−(ハロR)、−OH、−OR、−O(ハロR)、−CN、−C(O)OH、−C(O)OR、−NH、−NHR、−NR、または−NOが挙げられ、ここで、各々のRは、非置換であるか、または「ハロ」が先行する場合には、1以上のハロゲンのみで置換されており、かつ独立して、C1−4脂肪族、−CHPh、−O(CH0−1Ph、または窒素、酸素、もしくはイオウから独立して選択される0〜4個のヘテロ原子を有する5〜6員の飽和、部分的不飽和もしくはアリールの環である。
【0078】
「必要に応じて置換される」基の置換可能な窒素上の適切な置換基としては−R、−NR、−C(O)R、−C(O)OR、−C(O)C(O)R、−C(O)CHC(O)R、−S(O)、−S(O)NR、−C(S)NR、−C(NH)NR、または−N(R)S(O)が挙げられ;ここで、各々のRは独立して、水素、以下に定義されるように置換されていてもよいC1−6脂肪族、非置換の−OPh、または窒素、酸素、もしくはイオウから独立して選択される0〜4個のヘテロ原子を有する非置換の5〜6員の飽和、部分的不飽和、またはアリールの環であるか、あるいは上記定義にかかわらず、Rの2つの独立した出現が、その介在原子(単数または複数)と一緒になって、窒素、酸素、もしくはイオウから独立して選択される0〜4個のヘテロ原子を有する非置換の3〜12員の飽和、部分的不飽和、またはアリール単環もしくは二環を形成する。
【0079】
の脂肪族基上の適切な置換基は独立してハロゲン、−R、−(ハロR)、−OH、−OR、−O(ハロR)、−CN、−C(O)OH、−C(O)OR、−NH、−NHR、−NR、または−NOであり、ここで各々のRは非置換であるか、または「ハロ」が先行する場合、1つ以上のハロゲンのみで置換されており、かつ独立してC1−4脂肪族、−CHPh、−O(CH0−1Ph、または独立して窒素、酸素もしくはイオウから選択される0〜4個のヘテロ原子を有する5〜6員の飽和、部分的不飽和もしくはアリールの環である。
【0080】
本明細書において用いる場合、「触媒」という用語は、その存在によって化学反応の速度が増大するが、それ自体は消費されることもなく、永続的な化学変化を受けることもない物質を指す。
【0081】
(カルボニル化)
エポキシドおよびカルボニル化触媒を含むフィードストリーム100と一酸化炭素とを接触させて、エポキシドから形成されるカルボニル化生成物を含む反応生成物ストリーム200を得る、カルボニル化工程を行う。
【0082】
(反応物)
最初にカルボニル化反応にとりかかるには、反応物は、種々のエポキシド、例としてはエチレンオキシド、プロピレンオキシドを含んでもよい。
【0083】
特定の実施形態では、エポキシド出発材料は式I
【0084】
【化6】

を有し、
ここで、RおよびRは各々独立して:−H、必要に応じて置換されているC1−6脂肪族;必要に応じて置換されているフェニル;必要に応じて置換されているC1−6ヘテロ脂肪族、必要に応じて置換されている3員〜6員の炭素環、および必要に応じて置換されている3員〜6員の複素環からなる群より選択され、ここでRおよびRは必要に応じて介在原子と一緒になって、1つ以上のヘテロ原子を必要に応じて含む3員〜10員の置換または非置換の環を形成する。
【0085】
いくつかの実施形態では、Rは、水素である。いくつかの実施形態では、Rはフェニルである。いくつかの実施形態では、Rは必要に応じて置換されているC1−6脂肪族である。いくつかの実施形態では、Rはn−ブチルである。いくつかの実施形態では、Rは、n−プロピルである。いくつかの実施形態では、Rは、エチルである。いくつかの実施形態では、Rは、−CFである。いくつかの実施形態では、Rは、−CHClである。他の実施形態では、Rは、メチルである。
【0086】
いくつかの実施形態では、Rは、水素である。いくつかの実施形態では、Rは、必要に応じて置換されているC1−6脂肪族である。いくつかの実施形態では、Rは、メチルである。
【0087】
特定の実施形態では、RおよびRは介在原子と一緒になって、必要に応じて1つ以上のヘテロ原子を含む、3員〜10員の、置換または非置換の環を形成する。いくつかの実施形態では、RおよびRは介在原子と一緒になって、シクロペンチルまたはシクロヘキシル環を形成する。
【0088】
特定の実施形態では、エポキシドは、以下からなる群より選択される:エチレンオキシド、プロピレンオキシド、1,2−ブチレンオキシド、2,3−ブチレンオキシド、エピクロロヒドリン、シクロヘキセンオキシド、シクロペンテンオキシド、3,3,3−トリフルオロ−1,2−エポキシプロパン、スチレンオキシド、グリシジルエーテル、およびグリシジルエステル。
【0089】
特定の実施形態では、このエポキシドは、エチレンオキシドである。
【0090】
特定の実施形態では、このエポキシドは、プロピレンオキシドである。
【0091】
特定の実施形態では、このカルボニル化工程は、スキーム2に示される反応を包含する:
【0092】
【化7】

式中、各々のRおよびRは、上で規定され、かつ本明細書のクラスおよびサブクラスに記載されるとおりである。
【0093】
特定の実施形態では、このカルボニル化工程は、スキーム3に示される反応を包含する:
【0094】
【化8】

式中、Rは、−HおよびC1−6脂肪族からなる群より選択される。
【0095】
特定の実施形態では、カルボニル化工程は、スキーム4:
【0096】
【化9】

に示される反応を包含する。
【0097】
特定の実施形態では、このカルボニル化工程は、スキーム5:
【0098】
【化10】

に示される反応を包含する。
【0099】
さらなる反応物としては、一酸化炭素、または一酸化炭素および別の気体の混合物を挙げることができる。いくつかの実施形態では、一酸化炭素は、水素との混合物で提供される(例えば、Syngas(合成ガス))。一酸化炭素と水素の比は、限定するものではないが1:1、1:2、1:4、1:10、10:1、4:1、または2:1を含む任意の比であってもよい。いくつかの実施形態では、一酸化炭素は、工業プロセスガスとして気体と混合して提供される。一酸化炭素の供給源としては限定するものではないが、とりわけ、木ガス、発生炉ガス、石炭ガス、都市ガス(town gas)、都市ガス(manufactured gas)、ハイガス(hygas)、ドーソン(Dowson)ガスまたは水性ガスが挙げられる。いくつかの実施形態では、一酸化炭素は、大気圧を超える圧力で提供される。一酸化炭素の量は、βラクトンへのエポキシド出発材料の効率的な変換を達成するように供給されなければならない。
【0100】
(触媒)
特定の実施形態では、カルボニル化触媒は、金属カルボニル錯体を含む。いくつかの実施形態では、金属カルボニル錯体は、一般式[QM(CO)を有し、ここで:
Qは、任意の配位子であって、存在する必要はなく;
Mは金属原子であり;
yは1〜6までの整数(1および6を含む)であり;
wは、安定な金属カルボニルを提供するような数であり;かつ
xは−3〜+3までの整数(−3および+3を含む)である。
【0101】
金属カルボニル錯体が式[QM(CO)を有する特定の実施形態では、MはTi、Cr、Mn、Fe、Ru、Co、Rh、Ni、Pd、Cu、Zn、Al、GaおよびInからなる群より選択される。特定の実施形態では、MはCoである。特定の実施形態では、金属カルボニル錯体は、Co(CO)である。
【0102】
特定の実施形態では、カルボニル化触媒はさらに、ルイス酸成分を含む。特定の実施形態では、ルイス酸成分は陽イオン性である。いくつかの実施形態では、カルボニル化触媒は、陰イオン性金属カルボニル錯体(例えば、xが負の整数である)および陽イオン性ルイス酸成分を含む。特定の実施形態では、この金属カルボニル錯体は、コバルト酸カルボニル(carbonyl cobaltate)を含み、このルイス酸成分は、金属中心陽イオン性ルイス酸を含む。
【0103】
特定の実施形態では、金属中心陽イオン性ルイス酸は、式[M’(L)c+の金属錯体であり、ここで:
M’は金属であり;
各々のLは配位子であり;
bは1〜6までの整数(1および6を含む)であり;
cは1、2、または3であり;かつ
ここで1つより多いLが存在する場合、各々のLは同じであっても異なってもよい。
【0104】
いくつかの実施形態では、金属中心ルイス酸が、式[M’(L)c+の金属錯体である場合、M’は:遷移金属、13族または14族の金属およびランタニドからなる群より選択される。特定の実施形態では、M’は、遷移金属または13族の金属である。特定の実施形態では、M’は、アルミニウム,クロム,インジウムおよびガリウムからなる群より選択される。特定の実施形態では、M’はアルミニウムである。特定の実施形態では、M’はクロムである。
【0105】
特定の実施形態では、カルボニル化触媒の金属中心ルイス酸成分は、ジアニオン四座配位子を含む。特定の実施形態では、ジアニオン四座配位子は、以下からなる群より選択される:ポルフィリン誘導体,サレン誘導体、ジベンゾテトラメチルテトラアザ[14]アヌレン(「TMTAA」)誘導体、フタロシアニネート誘導体、およびTrost配位子の誘導体。
【0106】
いくつかの実施形態では、ジアニオン四座配位子は、ClTPP(メソ−テトラ(4−クロロフェニル)ポルフィリン)である。いくつかの実施形態では、ジアニオン四座配位子は、TPP(テトラフェニルポルフィリン)である。いくつかの実施形態では、ジアニオン四座配位子は、サレン(N,N’−エチレンビス(サリチリミン)配位子である。いくつかの実施形態では、ジアニオン四座配位子は、salph(N,N’−ビス(サリチリデン)−o−フェニレンジアミン)配位子である。いくつかの実施形態では、ジアニオン四座配位子は、サリチ(salcy)(N,N’−ビス(3,5−ジ−tert−ブチルサリチリデン)−1,2−ジアミノシクロヘキサン)配位子である。
【0107】
特定の実施形態では、カルボニル化触媒は、ルイス酸成分としてアルミニウムポルフィリン化合物と組み合わせてコバルト酸カルボニルを含む。いくつかの実施形態では、カルボニル化触媒は、[(TPP)Al][Co(CO)]を含む。いくつかの実施形態では、カルボニル化触媒は、[(ClTPP)Al][Co(CO)]を含む。
【0108】
特定の実施形態では、カルボニル化触媒は、ルイス酸成分としてクロムポルフィリン化合物と組み合わせてコバルト酸カルボニルを含む。いくつかの実施形態では、カルボニル化触媒は、[(TPP)Cr][Co(CO)]を含む。いくつかの実施形態では、カルボニル化触媒は、[(ClTPP)Cr][Co(CO)]を含む。
【0109】
特定の実施形態では、カルボニル化触媒は、ルイス酸成分としてクロムサレン(chromium salen)化合物と組み合わせてコバルト酸カルボニルを含む。いくつかの実施形態では、カルボニル化触媒は、[(サリチ)Cr][Co(CO)]を含む。
【0110】
特定の実施形態では、カルボニル化触媒は、ルイス酸成分としてクロムサロフェン(chromium salophen)化合物と組み合わせてコバルト酸カルボニルを含む。いくつかの実施形態では、カルボニル化触媒は、[(salph)Cr][Co(CO)]を含む。
【0111】
特定の実施形態では、カルボニル化触媒は、ルイス酸成分としてアルミニウムサレン(aluminum salen)化合物と組み合わせてコバルト酸カルボニルを含む。特定の実施形態では、カルボニル化触媒は、ルイス酸成分としてアルミニウムサロフェン化合物と組み合わせてコバルト酸カルボニルを含む。いくつかの実施形態では、カルボニル化触媒は、[(salph)Al][Co(CO)]を含む。
【0112】
特定の実施形態では、カルボニル化触媒はさらに、1つ以上の電子供与基を含む。特定の実施形態では、このような電子供与基は、溶媒分子である。いくつかの実施形態では、電子供与性基は、触媒またはその一部が合成された溶媒分子である。特定の実施形態では、電子供与性基はTHFである。
【0113】
(溶媒)
いくつかの実施形態では、カルボニル化触媒が、溶媒中に存在する。この溶媒は、任意の溶媒および溶媒の混合物から選択され得る。さらに、βラクトンは、共溶媒として利用され得る。触媒の溶媒としては限定するものではないが、テトラヒドロフラン(「THF」)、スルホラン、N−メチルピロリドン、1,3ジメチル−2−イミダゾリジノン、ジグリム、トリグリム、テトラグリム、ジエチレングリコール ジブチルエーテル、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、二塩基性エステル、ジエチルエーテル、アセトニトリル、酢酸エチル、ジメトキシエタン、アセトン、ジオキサン、C1−32脂肪族鎖で修飾されたTHFが挙げられる。一般には、非プロトン性溶媒がカルボニル化反応工程に適切である。いくつかの実施形態では、修飾されたTHFは形:
【0114】
【化11】

を有し、
ここで、Rは脂肪族、芳香族、エーテル、またはエステル基であり、そのいずれかが5つ以上の炭素原子を含む。いくつかの実施形態では、この修飾されたTHFは式:
【0115】
【化12】

を有する。
【0116】
いくつかの実施形態では、この溶媒は、触媒安定化剤を含む。種々の触媒安定化剤としては、限定するものではないが、イソソルビドエーテル、例えばイソソルビドジメチルエーテルが挙げられる。
【0117】
いくつかの実施形態では、フィードストリーム100は、ルイス塩基添加物を含む。いくつかの実施形態では、このようなルイス塩基添加物は、触媒を安定化するか、または不活性化を軽減し得る。いくつかの実施形態では、ルイス塩基添加物は、修飾されたTHF;2,6−ルチジン;イミダゾール、1−メチルイミダゾール 4−ジメチルアミノピリジン、トリヘキシルアミンおよびトリフェニルホスフィンである。
【0118】
いくつかの実施形態では、このプロセスに適切な溶媒は、カルボニル化反応によって生じるβラクトンの沸点より高い沸点を有する。例えば、エチレンオキシドのカルボニル化においては、高い沸点の溶媒は、50Torrで約108℃よりも高い沸点を有する。なぜなら、生成されるβラクトン(βプロピオラクトン)は、その圧力で108℃の沸点を有するからである。プロピレンオキシドに関しては、対応するβラクトン(βブチロラクトン)は、50Torrで86〜87℃という沸点を有し、この高い沸点の溶媒は、それより高い沸点を有するべきである。
【0119】
いくつかの実施形態では、この溶媒、または溶媒の混合物は、反応生成物ストリームからβラクトンの分離2を容易にするように選択される。一般にはこの分離は、この溶媒とβラクトンとの間の沸点の相違に基づいて達成される。いくつかの実施形態では、この溶媒の沸点は、同じ圧力で比較した場合、βラクトンの沸点(the boiling of)よりも高い。いくつかの実施形態では、この溶媒の沸点は、同じ圧力で比較した場合、βラクトンの沸点よりも少なくとも約20摂氏温度高い。いくつかの実施形態では、この溶媒の沸点は、同じ圧力で比較した場合、βラクトンの沸点よりも少なくとも約30摂氏温度高い。いくつかの実施形態では、この溶媒の沸点は、同じ圧力で比較した場合、βラクトンの沸点よりも少なくとも約40摂氏温度高い。いくつかの実施形態では、この溶媒の沸点は、同じ圧力で比較した場合、βラクトンの沸点よりも少なくとも約50摂氏温度高い。
【0120】
いくつかの実施形態では、この溶媒は、同じ圧力で比較した場合、βラクトンの沸点よりも低い沸点を有する。特定の実施形態では、この溶媒の沸点は、大気圧で約30℃〜約130℃であるように選択される。特定の実施形態では、この溶媒の沸点は、大気圧で約30℃〜約100℃であるように選択される。いくつかの実施形態では、この溶媒の沸点は、同じ圧力で比較した場合、βラクトンの沸点よりも少なくとも10度低い。いくつかの実施形態では、この溶媒の沸点は、同じ圧力で比較した場合、βラクトンの沸点よりも少なくとも20度低い。いくつかの実施形態では、この溶媒の沸点は、同じ圧力で比較した場合、βラクトンの沸点よりも少なくとも30度低い。いくつかの実施形態では、この溶媒の沸点は、同じ圧力で比較した場合、βラクトンの沸点よりも少なくとも40度低い。いくつかの実施形態では、この溶媒の沸点は、同じ圧力で比較した場合、βラクトンの沸点よりも少なくとも50度低い。いくつかの実施形態では、この溶媒は、溶媒の混合物から構成され、その一つは、βラクトンの沸点よりも高い沸点を有し得、そして他の溶媒は、βラクトンの沸点よりも低い沸点を有し得る。
【0121】
いくつかの実施形態では、この反応物は、この反応条件下において溶媒中で完全に可溶性である。さらに、この触媒は、この反応条件下において溶媒中で完全に可溶性であり得る。いくつかの実施形態では、この反応物または触媒は、この反応条件下において溶媒中でごく部分的に可溶性であるか、または不溶性である。いくつかの実施形態では、触媒のみが溶媒に可溶性である。
【0122】
いくつかの実施形態では、この溶媒は、「新鮮」に提供される。いくつかの実施形態では、この溶媒は、分離工程の後にリサイクルされる。溶媒リサイクルは、リサイクルストリームに対する未使用の溶媒の添加を包含し得る。
【0123】
いくつかの実施形態では、この溶媒はβラクトンを含む。一般には、共溶媒としてのβラクトンの使用によって、存在する場合、非βラクトン溶媒からのβラクトン生成物の最終的な分離が補助される。反応生成物ストリーム200の残りからのβラクトンの分離は、反応生成物ストリーム中のβラクトンの濃度が増大するにつれて容易になる。
【0124】
(カルボニル化反応条件)
カルボニル化反応条件は、エポキシドのβラクトンへの変換を果たすための多数の要因に基づいて選択される。温度、圧力および反応時間が反応速度および効率に影響する。さらに、お互いに対するおよび触媒に対する反応物の比が反応速度および効率に影響する。
【0125】
いくつかの実施形態では、反応温度は、約−20℃〜約600℃にわたってもよい。いくつかの実施形態では、反応温度は約−20℃、約0℃、約20℃、約40℃、約60℃、約80℃、約100℃、約200℃、約300℃、約400℃、約500℃、または約、約600℃である。いくつかの実施形態では、この温度は、約40℃〜約120℃の範囲である。いくつかの実施形態では、この温度は、約40℃〜約80℃の範囲である。いくつかの実施形態では、この温度は、約50℃〜約70℃の範囲である。いくつかの実施形態では、この反応物、触媒および溶媒は、標準温度でリアクターに供給され、次いでリアクター中で加熱される。いくつかの実施形態では、この反応物は、リアクターに入る前に予熱される。
【0126】
いくつかの実施形態では、この反応圧力は、約50psig〜約5000psigにおよんでもよい。いくつかの実施形態では、この反応圧力は、約100psig、約200psig、約300psig、約400psig、約500psig、約600psig、約700psig、約800psig、約900psig、または約1000psigである。いくつかの実施形態では、この圧力は、約50psig〜約2000psigにおよぶ。いくつかの実施形態では、この圧力は、約100psig〜1000psigにおよぶ。いくつかの実施形態では、この圧力は、約200psig〜約800psigにおよぶ。いくつかの実施形態では、この反応圧力は、完全に一酸化炭素によって供給される。例えば、この反応物、触媒および溶媒は、大気圧で、または低圧下でリアクターに充填され、そして一酸化炭素が、圧力を反応圧力まで増大するためにリアクターに添加される。いくつかの実施形態では、全ての反応物、溶媒および触媒が、反応圧力でリアクターに供給される。
【0127】
いくつかの実施形態では、エポキシドに対する触媒の比は、反応が経済的かつ時間的に実現可能な方式で進行するように、他の反応条件に基づいて選択される。いくつかの実施形態では、エポキシドに対する触媒の比は、分子として約1:10000である。いくつかの実施形態では、エポキシドに対する触媒のモル比は、約1:5000であるか、約1:2500であるか、約1:2000であるか、約1:1500であるか、約1:1000であるか、約1:750であるか、約1:500であるか、約1:250であるか、約1:200であるか、約1:150であるか、または約1:100である。いくつかの実施形態では、エポキシドの濃度は、約0.1M〜約5.0Mの範囲内である。いくつかの実施形態では、エポキシドの濃度は、約0.5M〜約3.0Mの範囲である。
【0128】
いくつかの実施形態では、この反応は、βラクトンに対するエポキシドの反応を、反応速度論および/または反応条件にもとづいて完全に、ほぼ完全に、またはできるだけ完全に行うことを可能にするのに十分な期間維持される。いくつかの実施形態では、この反応時間は、約12時間、約8時間、約6時間、約3時間、約2時間または約1時間維持される。いくつかの実施形態では、この反応時間は、リアクター110内の残留時間として確立される。この反応は、リアクターの温度もしくは圧力を下げること、特定の反応物を取り去ること、またはクエンチング化合物を導入することによって停止され得る。この反応は、βラクトンへのエポキシドの変換の任意のポイントまたは任意の割合で停止され得る。例えば、この反応は、エポキシドの50%がβラクトンに変換されるとき、停止され得る。
【0129】
(カルボニル化反応生成物)
本明細書において用いる場合、カルボニル化反応の一次反応生成物は、βラクトンである。さらに、反応生成物ストリーム200は、他の反応副生成物、未反応の反応物、同様に触媒および溶媒を含んでもよい。いくつかの実施形態では、未反応の反応物は、エポキシドまたは一酸化炭素を含む。そのようなものとして、この反応は、完了するまで進行しなくてもよく、部分的反応とみなされてもよい。
【0130】
いくつかの実施形態では、未反応のエポキシドの量は、カルボニル化反応の副生成物である無水コハク酸の形成を妨げるのに十分である。特定の理論によって拘束されることはないが、無水コハク酸へβラクトンを変換する第二の反応は、エポキシドの実質的に全てが消費されない限り、進行しないと推測される。従って、エポキシドの残りの部分は、リアクターに供給し、これが未反応で出て行き、無水コハク酸の形成を妨げると考えられる。いくつかの実施形態では、この反応生成物ストリーム200は、未変換のエポキシドを、少なくとも約5重量%のエポキシド、少なくとも約3重量%のエポキシド、少なくとも約1重量%のエポキシドまたは少なくとも約0.1重量%の量で含む。いくつかの実施形態では、この反応は、連続フロー方式で行われ、エポキシドは、濃度を上記のレベルで維持するのに十分な率で添加される。リアクターの容積に関して反応条件が変化するリアクター中で反応を行う特定の実施形態では、エポキシドのフィードは、リアクター中の最低エポキシド濃度を上記の濃度より上で維持するように選択される。
【0131】
いくつかの実施形態では、副生成物の形成には、以下の式:
【0132】
【化13】

を有する無水物の形成を包含し、
式中、RおよびRは、エポキシド原料中の同じ群に対応する。いくつかの実施形態では、副生成物形成は、以下の化合物のうちの1つ以上の形成を包含する:クロトンアルデヒド、アクリル酸、1,4ジオキサン、アクリル酸二量体および三量体、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2,5ヘキサンジエナール、3−オキサカプロラクトン、ジエチレングリコールモノアクリレート、3−ヒドロキシプロピオン酸、ジエチレングリコールジアクリレート、5−バレロラクトン(valeroactone)および/または2,6−ジメチル−1,3−ジオキサン−4−オール。
【0133】
(反応方式)
いくつかの実施形態では、カルボニル化反応1は、連続操作で行う。反応物は、リアクター110に連続供給される。いくつかの実施形態では、リアクター110は攪拌される。いくつかの実施形態では、リアクター110中では攪拌されず、いくつかの実施形態では、リアクター110は、1つ以上の静的ミキサーを組み込む。いくつかの実施形態では、リアクター110は、ガスエントレインメントインペラー(gas−entrainment impeller)を備える。反応物は、標準の温度および圧力でリアクター110に供給され得、次いで一旦リアクター110中になれば反応条件まで加熱または加圧され得る。リアクター110それ自体は、連続操作に資する任意のリアクターであってもよく、これには限定するものではないが連続攪拌タンク(continuously stirred tank)リアクターまたは管状リアクターが挙げられる。いくつかの実施形態では、リアクター110は断熱リアクター、および/または等温リアクターである。いくつかの実施形態では、このリアクター圧力は、一定である。いくつかの実施形態では、このリアクター圧力は、反応の進行につれて変化する。いくつかの実施形態では、リアクター温度は、反応の進行につれて変化する。いくつかの実施形態では、この反応は、バッチ操作で行われる。当業者は、温度、圧力、触媒比、反応物、触媒および溶媒の濃度、流速が全て、所定の反応結果を達成するために最適化または変化され得ることを理解する。
【0134】
いくつかの実施形態では、上記のとおり、種々の個々の反応生成物、または反応生成物ストリーム200の全体でさえ、カルボニル化リアクター110またはフィードストリーム100にリサイクルとしてリサイクルされ得る。いくつかの実施形態では、この反応生成物は、下記のように、少なくとも2つのストリームに分離される。一般には、少なくとも1つのストリームが、少なくとも溶媒および触媒を含み、他のストリームが少なくともβラクトン生成物を含む。これらのストリームのいずれかまたは両方が、カルボニル化反応の発端にリサイクルされ得る。いくつかの実施形態では、1つのストリームは、溶媒を含み、かつ他のストリームは、反応生成物ストリーム200の残りを含む。
【0135】
いくつかの実施形態では、この触媒および/または溶媒ストリームは、フィードストリームにまたはカルボニル化リアクターにリサイクルされる。いくつかの実施形態では、カルボニル化リアクター110またはフィードストリーム100にリサイクルされる反応生成物ストリーム200由来の溶媒および/または触媒の一部は、約0%〜約100%におよぶ。いくつかの実施形態では、カルボニル化リアクター110またはフィードストリーム100にリサイクルされる反応生成物ストリーム200由来の溶媒および/または触媒の一部は、約100%、約90%、約80%、約70%、約60%、約50%、約40%、約30%、約20%、約10%、または約0%である。いくつかの実施形態では、この溶媒に比較して、種々の割合の触媒がリサイクルされ、すなわち、触媒または溶媒成分のいずれかの割合は等しい必要はない。
【0136】
いくつかの実施形態では、この触媒および/または溶媒の一部は、廃棄物510としてリサイクルストリーム500から抜き取られる。廃棄物510として抜き取られるこの触媒および/または溶媒の一部は、反応生成物ストリーム200中の合計の触媒および/または溶媒に比較して、約0%〜約100%の範囲であり得る。廃棄物510として抜き取られるこの触媒および/または溶媒の一部は、反応生成物ストリーム200中の合計の触媒および/または溶媒に比較して、約100%、約90%、約80%、約70%、約60%、約50%、約40%、約30%、約20%、または約10%であり得る。
【0137】
いくつかの実施形態では、未使用の触媒および/または溶媒600は、カルボニル化反応が継続することを確実にするために、リサイクルストリーム500に、またはフィードストリーム100に供給される。添加される溶媒および/または触媒は、廃棄物510として抜き取られるか、または使いつくされてもはや使えない、反応物中で失われた溶媒および/または触媒について埋め合わせ得る。添加される触媒および/または溶媒の一部は、反応生成物ストリーム中の合計の触媒および/または溶媒に比較して、そのストリームの流速の約0%〜約100%におよんでもよい。添加される触媒および/または溶媒の一部は、反応生成物ストリーム200中の合計の触媒および/または溶媒に比較して、約100%、約90%、約80%、約70%、約60%、約50%、約40%、約30%、約20%、または約10%であってもよい。
【0138】
いくつかの実施形態では、βラクトンは、カルボニル化リアクター110または反応物フィードストリーム100にリサイクルされる。下に考察されるとおり、βラクトン400は一般には、反応生成物ストリーム200から分離される。いくつかの実施形態では、カルボニル化リアクターまたはフィードストリームにリサイクルされた反応生成物ストリーム200由来のβラクトン420の一部は、約0%〜約100%におよぶ。いくつかの実施形態では、カルボニル化リアクターまたはフィードストリームにリサイクルされた反応生成物ストリーム200由来のβラクトンの一部は、約100%、約90%、約80%、約70%、約60%、約50%、約40%、約30%、約20%、約10%、約0%である。いくつかの実施形態では、βラクトンストリーム400の100%が、反応生成物ストリーム200中のβラクトンの割合が特定のレベルに達するまでリアクター110またはフィードストリーム100にリサイクルされる。いくつかの実施形態では、この特定のレベルは、約5%〜約75%におよぶ。いくつかの実施形態では、このレベルは約5%、約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、または約75%である。
【0139】
カルボニル化工程は、反応生成物ストリーム200中になんらβラクトンが存在することなく開始し得る。カルボニル化の開始後、カルボニル化工程から生成されたβラクトンは、反応生成物ストリーム200中で蓄積し得、そしていくつかの実施形態では、βラクトンは、反応生成物ストリーム200中のβラクトンの含量が閾値に達するまで反応生成物ストリーム200から分離されない。特定の実施形態では、この閾値は、約5重量%〜約10重量%である。特定の実施形態では、この閾値は、約10重量%〜約20重量%である。特定の実施形態では、この閾値は、約20重量%〜約30重量%である。特定の実施形態では、この閾値は、約30重量%〜約40重量%である。特定の実施形態では、この閾値は、約40重量%〜約50重量%である。特定の実施形態では、この閾値は、約50重量%〜約60重量%である。
【0140】
(分離)
このプロセスの別の工程は、反応生成物ストリーム200を少なくとも2つの別々のストリームに分ける工程を包含する。最低限、この反応生成物ストリームは、2つの別々のストリームである、βラクトンストリーム400および触媒/溶媒ストリーム500に分けられる。βラクトンストリーム400は、βラクトンを含むが、また生成物反応ストリーム200から持ち越される他の化合物、例としては、エポキシド、一酸化炭素、溶媒、触媒、および反応副生成物も含んでもよい。同様に、触媒/溶媒ストリーム500は、主に触媒および溶媒を含んでもよく、ただし、また反応生成物ストリーム200から持ち越される他の化合物、例としては、エポキシド、一酸化炭素、βラクトンおよび反応副生成物も含んでもよい。
【0141】
いくつかの実施形態では、この分離は、βラクトンと反応生成物ストリーム200の他の成分、主に触媒および溶媒との間で異なる沸点を利用することによって行われる。いくつかの実施形態では、この溶媒の沸点は、βラクトンの沸点よりも高い。いくつかの実施形態では、βラクトンは、反応生成物ストリームから揮発され(例えば、蒸発(エバポレート)され)、反応生成物ストリーム200中の触媒、溶媒および他の化合物の混合物が後に残る。いくつかの実施形態では、これは、反応生成物ストリーム200を低圧に暴露する工程を包含する。いくつかの実施形態では、これは、反応生成物ストリーム200を高温に暴露する工程を包含する。いくつかの実施形態では、これは、反応生成物ストリーム200を低圧および高温の両方に暴露する工程を包含する。
【0142】
いくつかの実施形態では、この圧力は、βラクトンの沸点が大気圧での沸点に比較して約5℃低下されるように選択される。いくつかの実施形態では、この圧力は、βラクトンの沸点が大気圧での沸点に比較して約10℃低下されるように選択される。いくつかの実施形態では、この圧力は、βラクトンの沸点が大気圧での沸点に比較して約20℃低下されるように選択される。いくつかの実施形態では、この圧力は、βラクトンの沸点が大気圧での沸点に比較して約50℃低下されるように選択される。
【0143】
いくつかの実施形態では、この高温は、選択された圧力で、βラクトンの沸点を超えるが、溶媒の沸点よりは低い。いくつかの実施形態では、この温度は、この溶媒の沸点の少なくとも約20℃下である。いくつかの実施形態では、この温度は、この溶媒の沸点の少なくとも約30℃下である。いくつかの実施形態では、この温度は、この溶媒の沸点の少なくとも約50℃下である。
【0144】
いくつかの実施形態では、この低下した圧力は、約1Torr〜約760Torrの範囲である。いくつかの実施形態では、この圧力は、約1Torr〜約400Torrの範囲である。いくつかの実施形態では、この圧力は、約5Torr〜約200Torrの範囲である。いくつかの実施形態では、この圧力は、約10Torr〜約100Torrの範囲である。いくつかの実施形態では、この圧力は、約20Torr〜約50Torrの範囲である。いくつかの実施形態では、この圧力は、約50Torr、約100Torr、約150Torr、約200Torr、約250Torr、約300Torr、約400Torr、約500Torr、約600Torrまたは約700Torrである。
【0145】
いくつかの実施形態では、この分離工程は、約100Torr未満の圧力で、かつ約120℃を超える温度で行われる。いくつかの実施形態では、この分離工程は、約50Torr未満の圧力で、かつ約100℃を超える温度で行われる。いくつかの実施形態では、この分離工程は、約50Torr未満の圧力で、かつ約50℃を超える温度で行われる。いくつかの実施形態では、この分離工程は、約50Torr未満の圧力で、かつ約110℃を超える温度で行われる。いくつかの実施形態では、この分離工程は、約50Torr未満の圧力で、かつ約90℃を超える温度で行われる。いくつかの実施形態では、この分離工程は、約20Torr未満の圧力で、かつ約60℃を超える温度で行われる。いくつかの実施形態では、この分離工程は、約10Torr未満の圧力で、かつ約50℃を超える温度で行われる。
【0146】
いくつかの実施形態では、この分離工程は、各々が独立した温度および圧力で動作する一連の工程で達成され得る。例えば、2つの工程を用いて、βラクトンのより効果的な分離を得てもよいし、またはある別の分離工程を用いて、特定の反応副生成物を単離してもよい。いくつかの実施形態では、溶媒の混合物を用いる場合、特定の溶媒を個々にまたは一群として取り出し、かつβラクトンを効果的に単離するためには多数の分離工程が必要であり得る。
【0147】
特定の実施形態では、反応生成物ストリーム200からのβラクトンの分離は、2段階で行われる。いくつかの実施形態では、このプロセスは、βラクトン生成物の沸点よりも低い沸点を有する、生成物ストリームの1つ以上の成分を除去するための予備的分離工程を包含する。
【0148】
いくつかの実施形態では、この予備的分離工程は、反応生成物ストリーム200を、一酸化炭素および非変換エポキシドを含む気体ストリーム;ならびにβラクトンおよびカルボニル化触媒を含む液体ストリームに分離する工程を包含する。分離の第二の工程では、この液体ストリームはさらに、βラクトンの一部を含むβラクトンストリーム400;ならびに残りのβラクトンおよびカルボニル化触媒を含む触媒リサイクルストリーム500に分けられる。
【0149】
いくつかの実施形態では、βラクトンの沸点よりも低い沸点を有する1つ以上の溶媒が存在する場合、低い方の沸点の溶媒は、予備的分離工程において反応生成物ストリームから揮発(例えば、エバポレート)され得、後に、反応生成物ストリーム200中の触媒、βラクトン、他の溶媒(もしあれば)および他の化合物を含む混合物が残り、これが次にさらに処理されてβラクトンストリームが分離される。
【0150】
分離が2段階で行われる特定の実施形態では、この分離の第一工程は、反応ストリームを軽度の低圧に曝して、気体ストリームおよび液体ストリームを生成する工程を包含する。分離が2段階で行われる特定の実施形態では、この気体ストリームはカルボニル化工程に戻される。
【0151】
特定の実施形態では、反応生成物ストリーム200からのβラクトンの分離は、3段階で行われる。分離の最初の工程では、反応生成物ストリーム200は、一酸化炭素およびエポキシドの一部を含む気体ストリーム;ならびにエポキシドの残り、βラクトン、およびカルボニル化触媒を含む液体ストリームに分けられる。分離の第二工程では、この液体ストリームは、エポキシドの残り、およびもしあれば、βラクトンの沸点より低い沸点を有する任意の溶媒を含むエポキシドストリーム;ならびにβラクトンおよびカルボニル化触媒を含む第二の液体ストリームに分離される。分離の第三工程では、この第二の液体ストリームはさらに、βラクトンの一部を含むβラクトンストリーム400βラクトンストリーム400;ならびにβラクトンの残りおよびカルボニル化触媒を含む触媒リサイクルストリーム500に分けられる。
【0152】
分離が3段階で行われる特定の実施形態では、分離の第一工程は、反応ストリームの大気放出を包含する。分離が3段階で行われる特定の実施形態では、分離の第二工程は、液体ストリームを軽度の低圧に曝露する工程を包含する。分離が3段階で行われる特定の実施形態では、この気体ストリームおよびエポキシドストリームの少なくとも1つは、カルボニル化工程に戻される。特定の実施形態では、この軽度の低圧とは、約100Torr〜500Torrである。特定の実施形態では、この軽度の低下圧とは、約200Torr〜400Torrである。
【0153】
(ルイス塩基添加物)
フィードストリームはさらに、ルイス塩基添加物を含んでもよい。カルボニル化触媒中のルイス酸成分は、1つ以上のルイス塩基添加物に対して配位され得る。このルイス酸成分に対する1つ以上のルイス塩基添加物の配位は、カルボニル化工程および/または分離工程の間、カルボニル化触媒を安定化し得る。
【0154】
いくつかの実施形態では、フィードストリームはさらに、1つ以上のルイス塩基添加物を含む。特定の実施形態では、ルイス塩基添加物は、窒素、リンまたは酸素のルイス塩基から選択される。特定の実施形態では、ルイス塩基添加物は、アミン、ホスフィン、およびエーテルから選択される。特定の実施形態では、ルイス塩基添加物は、以下からなる群より選択される:修飾されたTHF;2,6−ルチジン;イミダゾール;1−メチルイミダゾールおよびトリフェニルホスフィン;4−ジメチルアミノピリジン;トリヘキシルアミン。
【0155】
(溶媒としてのβラクトン)
いくつかの実施形態では、エポキシド由来のカルボニル化生成物と同じ化合物であるβラクトンを、カルボニル化反応1における唯一の溶媒として用いてもよい。特定の実施形態では、βラクトンは共溶媒として用いられ、そして1つ以上のさらなる溶媒が反応1に存在する。特定の実施形態では、存在する他の溶媒の沸点は、βラクトンの沸点よりも高いかまたは低い。いくつかの実施形態では、βラクトンは共溶媒として用いられ、そして1つ以上の低沸点の溶媒がプロセスストリーム中に存在する。
【0156】
いくつかの実施形態では、エポキシドからβラクトンを産生する方法は、カルボニル化工程1およびβラクトン分離工程2を包含する場合、このβラクトンは、共溶媒であり、かつ1つ以上の高沸点溶媒がこのプロセスストリーム中に存在する。このカルボニル化工程は、エポキシド、βラクトン、高沸点溶媒、およびカルボニル化触媒を含むプロセスストリームと一酸化炭素とを接触させて、エポキシド由来のカルボニル化生成物を含む反応生成物ストリーム200を得ることによって行われ、ここでこのカルボニル化生成物は、共溶媒として用いられるβラクトンと同じ化合物である。このβラクトン分離工程2は、反応ストリームを、βラクトンの揮発を生じて、βラクトンの一部を含むβラクトンストリーム400、ならびにカルボニル化触媒、高沸点溶媒および残りのβラクトンを含む触媒リサイクルストリーム500を生じる条件に処理することによって行われる。
【0157】
特定の実施形態では、βラクトンが共溶媒であり、かつ1つ以上の高沸点の溶媒がフィードストリーム100に存在する場合、反応生成物ストリーム200からのβラクトンの分離は、2段階で行われる。分離の最初の工程では、反応生成物ストリーム200を、一酸化炭素、およびエポキシドを含む気体ストリーム;ならびにβラクトン、溶媒、およびカルボニル化触媒を含む液体ストリームに分ける。分離の第二工程では、この液体ストリームはさらに、βラクトンの一部を含むβラクトンストリーム400;ならびに残りのβラクトン、溶媒、およびカルボニル化触媒を含む触媒リサイクルストリーム500に分離される。βラクトンストリーム400および触媒リサイクルストリーム500のうち少なくとも1つが、プロセスの第一工程に戻され、ここでさらなるエポキシドを再充填されて、カルボニル化反応1を再度通過される。
【0158】
特定の実施形態では、βラクトンが共溶媒であり、かつ1つ以上の低沸点溶媒がフィードストリーム100に存在する場合、反応生成物ストリーム200からのβラクトンの分離は、2段階で行われる。分離の第一工程では、反応生成物ストリーム200は、一酸化炭素、エポキシド、および低沸点溶媒を含む気体ストリーム;ならびにβラクトンおよびカルボニル化触媒および高沸点溶媒(もし存在すれば)を含む液体ストリームに分離される。分離の第二工程では、液体ストリームはさらに、βラクトンの一部を含むβラクトンストリーム400;ならびに残りのβラクトン、高沸点溶媒(もし存在すれば)、およびカルボニル化触媒を含む触媒リサイクルストリーム500に分けられる。βラクトンストリーム400および触媒リサイクルストリーム500のうち少なくとも1つが、プロセスの第一工程に戻され、ここでさらなるエポキシドを再充填されて、カルボニル化反応1を再度通過される。
【0159】
特定の実施形態では、βラクトンが共溶媒であり、かつ1つ以上のさらなる溶媒がプロセスストリームに存在する場合、この反応混合物からのβラクトンの分離は、3段階で行われる。分離の第一工程では、反応生成物ストリーム200が、一酸化炭素およびエポキシドの一部を含む気体ストリーム;ならびにエポキシドの残り、βラクトン、この溶媒、およびカルボニル化触媒を含む液体ストリームに分離される。分離の第二工程では、この液体ストリームが、さらなるエポキシドおよび低沸点溶媒(もし存在すれば)を含むエポキシドストリーム;ならびにβラクトン、高沸点溶媒(もし存在すれば)、およびカルボニル化触媒を含む第二の液体ストリームに分離される。分離の第三工程では、この第二の液体ストリームがさらに、βラクトンの一部を含むβラクトンストリーム400;ならびにβラクトンの残り、高沸点溶媒(もし存在すれば)、およびカルボニル化触媒を含む触媒リサイクルストリーム500に分離される。
【0160】
いくつかの実施形態では、この反応生成物ストリームは、分離2が達成される前に処理され得る。さらなる処理21の非限定的な例としては、加熱、冷却、減圧、加圧、希釈、濃縮、脱気、濾過、精製およびこれらの任意の組み合わせが挙げられる。さらに、反応生成物ストリームの気体成分(例えば、一酸化炭素、エポキシド)は、反応生成物ストリーム200から、1つ以上の処理21と組み合わせて排気されてもよい。
【0161】
いくつかの実施形態では、分離ストリーム(例えば、βラクトンストリーム400および触媒溶媒ストリーム500)はさらに、他の操作の前に処理される。さらなる処理41,51の非限定的な例としては、加熱、冷却、減圧、加圧、希釈、濃縮、脱気、濾過、精製、使用済み触媒の除去、反応副生成物の除去、未使用の触媒の添加、1つ以上の触媒成分の添加、溶媒の添加、およびこれらの任意の組み合わせが挙げられる。さらに、βラクトンストリーム400および触媒溶媒ストリーム500の気体成分(例えば、一酸化炭素、エポキシド)は、βラクトンストリーム400および触媒溶媒ストリーム500から、1つ以上の処理41,51と組み合わせて排気されてもよい。
【0162】
上記で記載されるとおり、βラクトンは、カルボニル化リアクター110、またはフィードストリーム100にリサイクルして戻されてもよい。いくつかの実施形態では、βラクトンストリーム420の全てがリサイクルされるのではない。βラクトンストリームのある程度が、抜き取られ430、そしてアクリル化工程3に持ち込まれる。
【0163】
(アクリル化)
いくつかの実施形態では、分離工程2から生じるβラクトンストリーム430は、必要に応じてアクリレート生成工程に持ち込まれる。アクリレート生成工程は、下でさらに詳細に考察される。βラクトンストリーム430は必要に応じて、アクリレート生成工程の前に多数の方法で処理され得る。この処理としては限定するものではないが以下が挙げられ得る:ストリームの加熱、冷却または圧縮;ストリームの液体状態への濃縮、および液体を前に運ぶこと;ストリームに重合化インヒビターを加えること;選択された成分を液体状態に濃縮すること、および残りの気体成分を前に運ぶこと;選択された成分を液体状態に濃縮すること、および液化した成分を前に運ぶこと;ストリームを純化して不純物を除去すること;およびこれらのうち2つ以上の任意の組み合わせ。
【0164】
次にアクリレート生成工程に向かい、上記で考察された単離されたβラクトンストリーム430を、前方へ運んでそこに含まれるβラクトンをアクリル酸またはアクリル酸誘導体に変換する。上で考察されるとおり、いくつかの実施形態では、単離されたβラクトンストリーム430は、分離工程2の間でさらなる処理工程を受けてもよく、かつこのプロセスのアクリレート生成段階に気体としてまたは液体として進入し得る。アクリレート生成工程自体は、気相または液相のいずれで行われてもよく、かつニートで行われても、またはキャリアの気体、溶媒、または他の希釈物の存在下で行われてもよい。
【0165】
特定の実施形態では、アクリレート生成工程は、連続フロー形式で行われる。特定の実施形態では、アクリレート生成工程は、気相中で連続フロー形式で行われる。特定の実施形態では、アクリレート生成工程は、液相中で連続フロー形式で行われる。特定の実施形態では、アクリレート生成工程は、液相中でバッチ形式または半バッチ形式で行われる。
【0166】
アクリレート生成工程は、種々の条件下で行われてもよい。特定の実施形態では、反応は、アクリレート生成物へのβラクトン中間体の変換における1つ以上の工程を容易にする1つ以上の触媒の存在下で行われ得る。当該分野で公知の多くの触媒がこの工程に用いられてもよいし、または適合されてもよい。いくつかの実施形態では、条件としては、米国特許第2,352,641号;同第2,376,704号;同第2,449,995号;同第2,510,423号;同第2,623,067号;同第3,176,042号および英国特許第GB 994,091号(その各々全体が参照によって本明細書に援用される)に記載されるように、脱水剤、例えば、硫酸、リン酸またはそのエステルとの反応が挙げられる。
【0167】
他の実施形態では、ラクトンは、ハロゲン化化合物と反応されて、βハロ酸、βハロエステル、またはβハロ酸ハライドを生じ得、これが次に脱ハロゲン化水素および/または加溶媒分解を受けて、対応するアクリル酸またはアクリル酸エステルを生じ得る。特定の実施形態では、米国特許第2,422,728号(参照によって本明細書に援用される)に開示される条件がこのプロセスに用いられる。
【0168】
他の実施形態では、アクリレート生成は、塩基触媒され得る。例えば、Journal of Organic Chemistry,57(1),389〜91(1992)およびその中の引用文献(その全体が参照によって本明細書に援用される)を参照のこと。
【0169】
特定の実施形態では、このプロセスのアクリレート生成段階は、前に記載の工程から単離されたβラクトンストリーム430とアルコール蒸気とを組み合わせること、および気相中の混合物を固体または固体支持プロモーター(アクリル酸エステルへの変換に影響する)のカラムを通過させることによって行われ得る。特定の実施形態では、このプロセスは、参照によってその全体が本明細書に援用される、米国特許第2,466,501号の方法に従う活性炭を含むプロモーター上で行われる。
【0170】
いくつかの実施形態では、単離されたβラクトンストリーム430中のβラクトンは、重合化することが可能にされ、そしてアクリル酸またはその誘導体は、ポリマーの分解によって得られる。特定の実施形態では、βラクトンは、プロピオラクトンであり、かつポリマーは、ポリ(3−ヒドロキシプロピオン酸)(3−HPA)である。特定の実施形態では、3−HPAは、その各々の全体が参照によって本明細書に援用される米国特許第2,361,036号;同第2,499,988号;同第2,499,990号;同第2,526,554号;同第2,568,635号;同第2,568,636号;同第2,623,070号;および同第3,002,017号に記載される方法を用いて形成され、かつ分解される。
【0171】
特定の実施形態では、βラクトン生成物ストリームは、式Y−Hの求核試薬と反応される。特定の実施形態では、Yは、ハロゲン;−OR13;−NR1112;および−SR13からなる群より選択され、ここでR11、R12、およびR13は独立して、以下からなる群より選択される:−H;必要に応じて置換されているC1−32脂肪族;必要に応じて置換されているC1−32ヘテロ脂肪族;必要に応じて置換されている3員〜14員の炭素環;および必要に応じて置換されている3員〜14員の複素環、そしてここでR11およびR12は必要に応じて介在原子と一緒になって、必要に応じて1つ以上のヘテロ原子を含む必要に応じて置換されている環を形成し得る。
【0172】
特定の実施形態では、βラクトン生成物ストリームは、式Y−Hの求核試薬と反応されて、式II:
【0173】
【化14】

を有するアクリレートが得られる。
【0174】
特定の実施形態では、Y−Hは、式R1112N−Hを有するアミンであり、かつこの生成物は、アクリルアミドである。特定の実施形態では、条件は各々の全体が参照によって本明細書に援用される米国特許第2,548,155号;同第2,649,438号;同第2,749,355号;および同第3,671,305号に記載される。
【0175】
特定の実施形態では、βラクトン生成物ストリームは、式Y−Hの求核試薬と反応されて式III:
【0176】
【化15】

を有する酸が得られる。
【0177】
特定の実施形態では、式IIIの化合物は、各々の全体が参照によって本明細書に援用される米国特許第2,449,992号;同第2,449,989号;同第2,449,991号;同第2,449,992号;および同第2,449,993号に開示される条件を用いて得られる。
【0178】
特定の実施形態では、βラクトン生成物ストリームが、式Y−Hの求核試薬と反応されて式IIIを有する酸が得られ、かつYが−OR13;−NR1112;または−SR13である場合、この酸は脱水されて、式IIのアクリレートが得られる。
【0179】
【化16】

特定の実施形態では、IIIからIIへの変換は、その全体が参照によって本明細書に援用される米国特許第2,376,704号の方法および条件に従って行われる。
【0180】
特定の実施形態では、進行する工程から生じるアクリレート生成物ストリームは、さらなる精製工程を受けてもよい。特定の実施形態では、このストリームは、その全体が参照によって本明細書に援用される米国特許第3,124,609号;同第3,157,693号;同第3,932,500号;同第4,82,652号;同第6,048,122号;同第6,048,128号;同第6,084,128号;および同第6,207,022号に開示される方法に従って精製される。
【実施例】
【0181】
いくつかの頭文字および略号がこの節を通じて用いられる。明確化のために、最も一般的なものをここに示す。エチレンオキシド(「EO」);一酸化炭素(「CO」);プロピレンオキシド(「PO」);遷移周波数(Turnover Frequency)(「TOF」);プロピオラクトンまたはβプロピオラクトン(「PL:);ブチロラクトンまたはβブチロラクトン(「BBL」);濃度は角カッコで示す、例えば、プロピオラクトンの濃度は[PL];凍結脱気解凍(Freeze−Pump−Thaw)(「FPT」)。
【0182】
(実施例1)
(温度および圧力の効果)
EOのカルボニル化に対する温度および圧力の効果を、温度および圧力を変えることによって研究した。
【0183】
表1 THF中の触媒活性に対する温度および圧力の効果
【0184】
【表1】

条件:EO(1.8M;Arc),触媒:[(ClTPP)Al][Co(CO)](60μmol)、EO:触媒=1500:1,総容積:50mL(THF中)、攪拌速度:730rpm、反応時間:3時間、および内部標準:ヘキサメチルベンゼン。
触媒:ヘキサメチルベンゼン(0.5mmol;Alfa Aesar(Ward Hill,MA)、およびTHF(カラムから受ける;FPT2)
触媒:ヘキサメチルベンゼン(1.0mmol;TCI)、およびTHF(4Åのふるい上で乾燥し、グローブボックス中で保管;FPT2)
EO(エチレンオキシド)、Ald.(アセトアルデヒド)、PL(プロピオラクトン)、およびSA(無水コハク酸)
30℃でCOの200psiから600psiへの圧力増大は、プロピオラクトンの収率を二倍にした(表1の29〜39および29〜59を参照のこと)。反応温度が、COの200psiで30℃から60℃まで上昇した場合(29〜39および29〜54を参照のこと)、反応が完全に終了し、プロピオラクトンの収率は3倍より大きくなった。
【0185】
反応手順A;THF中のエチレンオキシドのカルボニル化のための反応手順
300mLのParrのリアクターを減圧下で一晩乾燥した。窒素グローブボックス中で、リアクターを[(ClTPP)Al][Co(CO)4](66mg,60mmol)、ヘキサメチルベンゼン(162mg、1.0mmol)、およびTHF(4Åの分子ふるい上で乾燥し、凍結し、ポンピングし、解凍を3回する)、次いで、閉じてグローブボックスから取り出した。エチレンオキシドをEOレクチャー(lecture)ボトルから運搬容器に真空移動した。Parrのリアクターを−78℃まで冷却し、このリアクターに高真空を与えた。真空をリアクターから外して、運搬容器をParrのリアクターに接続して、EOが運搬容器からリアクターに−78℃で真空移動されることを可能にした。この反応混合物を、周囲温度まで温めて、所望のCO圧力の3/4(例えば、150psi)までCOでこのリアクターを加圧することによってCOで飽和し、次いで所望の温度まで加熱した。反応混合物の温度が所望の温度に達した後、リアクターを所望の圧力まで加圧した(例えば、200psi)。反応混合物を3時間攪拌した。このリアクターを0℃未満まで冷却して排気した。反応混合物の一部をサンプリングして、CDClの中の1H NMRで分析した。
【0186】
(実施例2)
(触媒ローディング)
触媒濃度は、触媒濃度の増大につれて活性が比例して増大するか否かを確認するために二倍にした(表2のNov29〜39および29〜43)。
【0187】
表2 反応時間および触媒ローディング(30℃;200psiのCO)
【0188】
【表2】

条件:EO(1.8M)、触媒:[(ClTPP)Al][Co(CO)](60μmol),EO:触媒=1500:1,総容積:50mL(THF中)、攪拌速度:730rpm、反応時間:3時間,内部標準:ヘキサメチルベンゼン(0.5mmol;Alfa Aesar)、およびTHF(カラムから受容;FPT2)
触媒ローディング以外は手順Aと同じ反応手順を用いた。
【0189】
(実施例3)
(CO供給源としての合成ガスの評価)
合成ガスは、COの費用効率が高い供給源であって、合成ガスの使用は、工業規模のエチレンオキシドカルボニル化の費用を低下し得る。COおよびHの一方から1つの混合物を用いて、エチレンオキシドカルボニル化を試験した(Nov29−72およびNov29−73、表3)。ヒドロホルミル化生成物、3−ヒドロキシプロパンアルデヒドまたは1,3−プロパンジオールは、反応混合物のH NMRスペクトルでは検出されなかった。
【0190】
表3 合成ガス
【0191】
【表3】

条件:EO(1.8M;Arc),触媒:[(ClTPP)Al][Co(CO)](60μmol),EO:触媒=1500:1、総容積:50mL(THF中)、攪拌速度:730rpm、反応時間:3時間、および内部標準:ヘキサメチルベンゼン。
触媒:ヘキサメチルベンゼン(0.5mmol;Alfa Aesar)、およびTHF(カラムから受容;FPT2)
触媒:ヘキサメチルベンゼン(1.0mmol;TCI)、およびTHF(4Åのふるい上で乾燥して、グローブボックス中で貯蔵;FPT2)
CO供給源以外は、手順Aと同じ反応手順を用いた。COおよびHの50:50混合物は、Airgasから購入した(Radnor,PA)(Certified Grade;50% Research Plus Grade COおよび50%のResearch Grade H)。
【0192】
(実施例4)
(高沸点溶媒中のエチレンオキシドのカルボニル化)
高沸点溶媒中でのエチレンオキシドのカルボニル化を研究した。プロピオラクトン生成の連続フロープロセスでは、プロピオラクトンは、反応混合物から蒸留によって単離され、そしてこのプロセスには、高い沸点の溶媒を必要とする。高沸点溶媒に関する上から3つの候補物を、プロピレンオキシドカルボニル化からの結果に基づいて選択した。3つの高沸点溶媒中の反応の触媒活性は、THF中の触媒活性の約5分の1である(表4)。
【0193】
表4 高沸点の溶媒
【0194】
【表4】

条件:EO(1.8M;Arc);触媒:[(ClTPP)Al][Co(CO)](60μmol);EO:触媒=1500:1;反応時間:3時間;THF、DBE、スルホランおよびプロピオカーボネート(propiocarbonate)(4Åのふるい上で乾燥;;FPT2);および内部標準:ヘキサメチルベンゼン(1.0mmol;TCI)。
【0195】
(反応手順B;高沸点溶媒中でのエチレンオキシドのカルボニル化の反応手順)
300mLのParrリアクターを減圧下で一晩乾燥した。窒素グローブボックス中で、リアクターに[(ClTPP)Al][Co(CO)4](66mg、60mmol)、およびヘキサメチルベンゼン(162mg、1.0mmol)を充填し、次いで閉じて、グローブボックスから取り出した。溶媒(DBE、スルホランまたはプロピレンカーボネート;各々の溶媒は4Åの分子ふるい上で乾燥して、脱気した)をN下でシリンジを介して添加した。エチレンオキシドをEOレクチャー(lecture)ボトルから運搬容器に真空移動した。Parrのリアクターを−78℃まで冷却し、このリアクターに高真空を与えた。真空をリアクターから外して、運搬容器をParrのリアクターに接続して、EOが運搬容器からリアクターに−78℃で真空移動されることを可能にした。この反応混合物を、周囲温度まで温めて、所望のCO圧力の3/4(例えば、150psi)までCOでこのリアクターを加圧することによってCOで飽和し、次いで所望の温度まで加熱した。反応混合物の温度が所望の温度に達した後、リアクターを所望の圧力まで加圧した(例えば、200psi)。反応混合物を3時間攪拌した。このリアクターを0℃未満まで冷却して排気した。反応混合物の一部をサンプリングして、CDClの中の1H NMRで分析した。
【0196】
(実施例5)
(DBE中のEOカルボニル化(実験のデザイン))
DOEのゴールは、触媒([(ClTPP)Al(THF)][Co(CO)])の活性に影響する主要な因子を見出すこと、およびDBEにおいてEOカルボニル化を行うための最適反応条件を見出すことであった。DBE(コハク酸ジメチル、グルタル酸ジメチル、およびアジピン酸ジメチルの混合物)を選り抜きの溶媒として選択した。なぜならDBE中の反応は、予備的な高沸点溶媒スクリーニング反応のなかでも最高のβプロピオラクトン(PL)収率を示したからである。統計学的ソフトウェア、JMP(登録商標)8.0,(SAS Software,Cary,NC)を用いて、DOE施行を設計して分析した。実験デザインは、スクリーニングデザインを用いて創出した。6つの連続因子([EO]、温度、CO圧力、攪拌速度、時間、およびEO/触媒比)をDOEについて選択した(表8)。6つの連続因子を有する一部実施要因型のデザインを創出した。このデザインは、6つの要因およびいくつかの2要因相互作用の効果を分析するために16の施行を要した。さらなる3中心点の施行を、DOE施行の変動を測定するために含んだ(表5)。
【0197】
表5 DOEの要因;DBE中のEOのカルボニル化
【0198】
【表5】

条件:EO:Arcから購入、触媒:[(ClTPP)Al][Co(CO)]、総容積:60mL、溶媒:DBE(Aldrichから購入;4Åのふるい上で乾燥;FPT3;そしてグローブボックス中で貯蔵)、内部標準:1,4−ジ−tert−ブチルベンゼン(1mmol)。
【0199】
表6 DOE応答;DBE中のEOカルボニル化
【0200】
【表6】

Ald:アセトアルデヒド収率(アセトアルデヒドおよび内部標準(ジ−tert−ブチルベンゼン)のH NMR組み込みに基づく);YPL:βプロピオラクトン収率;YSA:無水コハク酸収率;YEO:反応混合物に残ったEOの割合;TOFPL=YPL[EO]/(時間[触媒]);およびTOFCO=(YPL[EO]+YSA[EO])/(時間[触媒])。
【0201】
反応手順C;DBE中でのエチレンオキシドのカルボニル化のための反応手順(DOE施行;下の図を参照のこと)
300mLのParrリアクターを減圧下で一晩乾燥した。窒素グローブボックス中で、このリアクターに1,4−ジ−tert−ブチルベンゼン(190mg、1.0mmol)およびDBE(4Åの分子ふるい上で乾燥し、凍結して、ポンピングして3回解凍した)を充填した。このリアクターに接続されたショットタンクを([(ClTPP)Al][Co(CO)])および10mLのDBEで充填した。このリアクターを閉じて、グローブボックスから取り出した。エチレンオキシドをEOレクチャーボトルから運搬容器に真空移動した。Parrのリアクターを−78℃まで冷却し、このリアクターに高真空を与えた。真空をリアクターから外して、運搬容器をParrのリアクターに接続して、EOが運搬容器からリアクターに−78℃で真空移動されることを可能にした。この反応混合物を、周囲温度まで温めて、攪拌装置をオンにした。このリアクターを所望の温度まで加熱した。反応混合物の温度が所望の温度に達した後、ショットタンクを所望のCO圧力の3/4まで加圧した。このショットタンクをリアクターに対して開口して、触媒溶液をリアクターに添加することを可能にした。このリアクターを所望の圧力まで加圧した。反応混合物を示した期間攪拌し、次いでこれを−20℃まで冷却して排気した。反応混合物の一部をサンプリングして、CDClの中のH NMRによって分析した。
【0202】
DOEについての応答(表9)は、アセトアルデヒド収率(%)、PL収率(%)、無水コハク酸(SA)収率(%)、EO(%)、TOFPL((PL収率[EO])/(時間[触媒]))およびTOFCO(1時間あたり触媒あたりのCO挿入)であった。
【0203】
(実施例6)
(80℃でのスルホラン中のEOカルボニル化)
スルホラン中のEOカルボニル化は、80℃でのDBE中のカルボニル化での反応結果と比較するために80℃で行った(表7)。この反応は、DOE施行番号13と同じ反応で施行した。CO挿入速度(TOFCO)はDOE施行番号13の速度よりも遅いように見えるが、高いPL収率およびTOFPLによって、スルホランは、エチレンオキシドカルボニル化にとってさらに良好な溶媒であることが示唆される。
【0204】
表7
【0205】
【表7】

条件:EO:Arcから購入、触媒:[(ClTPP)Al][Co(CO)]、総容積:60mL、溶媒:スルホラン(Aldrichから購入;4Åのふるい上で乾燥;FPT3)、内部標準:1,4−ジ−tert−ブチルベンゼン(1mmol)、DOE施行と同じ反応手順。
【0206】
溶媒について以外は、手順Cと同じ反応手順を用いた。スルホランは、Aldrichから購入し、4Åのふるい上で乾燥、およびFPT3。
【0207】
(実施例7)
(スクリーニング[(salph)M][Co(CO)]触媒)
式IVおよびVに示される構造を有する触媒を、EOカルボニル化のための触媒候補としてスクリーニングした。[(salph)Cr][Co(CO)]は、[(ClTPP)Al][Co(CO)]の2倍を超える活性を示したが、[(salph)Al][Co(CO)]は、[(salph)Cr][Co(CO)]に比較してかなり低い活性を示した(表11)。触媒のNMR分析によって、この触媒バッチは不純物を含むことが示された。
【0208】
(式IVおよびV)
【0209】
【化17】

表8
【0210】
【表8】

ClTPPAl=[(ClTPP)Al][Co(CO)
サルフCr=[(salph)Cr][Co(CO)
サルフAl=[(salph)Al][Co(CO)
条件:EO:Arcから購入、[EO]=1.4M、総容積:60mL,溶媒:DBE(Aldrichから購入;4Åのふるい上で乾燥;FPT3)、内部標準:1,4−ジ−tert−ブチルベンゼン(1mmol)、DOE施行と同じ反応手順。
【0211】
触媒について以外は手順Cと同じ反応手順を用いた。
【0212】
(実施例8)
(DBEおよびスルホラン中のReact−IR実験)
react−IRのプローブを用いてDBEおよびスルホラン中のEOカルボニル化をモニターした。スルホラン中の2つの反応を、react−IR(Nov29−105およびNov29−108;表9)によってモニターした。PL(1823cm−1)、EO(867cm−1)、およびアセトアルデヒド(1724cm−1)の吸光度を反応の間にモニターして、吸光度対時間のプロットを図3および4に示す。
【0213】
表9
【0214】
【表9】

条件:EO:Arcから購入、触媒:[(ClTPP)Al][Co(CO)]総容積:108mL,溶媒:スルホラン(Aldrichから購入;4Åのふるい上で乾燥;FPT3)、内部標準:1,4−ジ−tert−ブチルベンゼン(1mmol)
反応手順D;react−IRによってモニターした、DBE中のエチレンオキシドのカルボニル化についての反応手順
窒素グローブボックス中で、IRセンチネル(sentinel)プローブを装備した300mLのParrリアクターに、1,4−ジ−tert−ブチルベンゼン(190mg、1.0mmol)を充填した。このリアクターを閉じてグローブボックスから取り出した。このIRセンチネルプローブをreactIR(Mettler−Toledo,Columbus,OH)に接続した。スルホラン(4Åの分子ふるい上で乾燥し、脱気した)を、N下でシリンジを介してリアクターに添加した。エチレンオキシドをEOレクチャーボトルから運搬容器に真空移動した。Parrのリアクターを0℃まで冷却し、このリアクターに高真空を与えた。真空をリアクターから外して、運搬容器をParrのリアクターに接続して、EOが運搬容器からリアクターに真空移動されることを可能にした。この反応混合物を、周囲温度まで温めて、攪拌装置をオンにした。ショットタンクをリアクターに接続して、[(ClTPP)Al][Co(CO)]および10mLのスルホランで充填した。このリアクターを所望の温度まで加熱した。反応混合物の温度が所望の温度に達した後、ショットタンクを所望のCO圧力の3/4まで加圧した。このショットタンクをリアクターに対して開口して、触媒溶液をリアクターに添加することを可能にした。このリアクターを所望の圧力まで加圧した。反応物をreact−IRによってモニターした。
【0215】
PL形成がプラトーになった後長時間たっても無水コハク酸(図3;表9)は形成されなかった。
【0216】
DBE中のEOカルボニル化はまた、react−IRを用いてモニターした(表10)。この反応のための反応手順は、アセトアルデヒド形成を回避するためにDOE実験手順とは改変されていた。DBE中の触媒溶液は、Parrリアクター中で40分間にわたって200psiまで加圧した。リアクターを200psiまで加圧しながら、温度を室温から80℃まで上昇させた。EOをショットタンクに添加し、次いでこのショットタンクを600psiまでCOで加圧した。EOを、ショットタンクとParrリアクターとを接続するバルブを開口することによってParrリアクターに添加した。COでの反応混合物の事前飽和にかかわらず、反応後に採取したサンプルのH NMR分析によって、アセトアルデヒドが反応物中で生成されたことが示される。
【0217】
表10
【0218】
【表10】

条件:溶媒:DBE(Aldrichから購入;4Åのふるい上で乾燥;FPT3)、EO:Arcから購入、触媒:[(ClTPP)Al][Co(CO)]、総容積:100mL,内部標準:1,4−ビス(トリメチルシリル)ベンゼン(1.11mmol)。
【0219】
溶媒について以外は手順Dと同じ反応手順を用いた。
【0220】
PL(1823cm−1)、EO(867cm−1)、およびSA(1791cm−1)の吸光度を、時間の関数としてプロットして、図5に示す。アセトアルデヒド(1724cm−1)のピークは、DBEピークと重複しており、モニターできなかった。このプロットによって、DBE中の2回目のカルボニル化(PLからSAへの変換)は、1回目のカルボニル化(EOからPLへ)よりもかなり速く受けることが示される。
【0221】
(実施例9)
(βプロピオラクトン(PL)の初回添加の効果)
反応の開始前の反応混合物へのPLの外部からの添加を、react−IRを用いて試験した。溶媒または共溶媒としてPLを用いることは、EOカルボニル化の商業的規模のプロセスでは魅力的なアイデアである。なぜなら、それによってPLの分離が容易になり得るからである。しかし、PL自体は、COと反応してSAを生じることができる。触媒を含むスルホラン中の1.0MのPL溶液を200psiのCOを用いて40分間、事前に飽和し、次いでEOをこの触媒溶液に、400psiのCOとともに添加した。
【0222】
表11
【0223】
【表11】

条件:EO:Arcから購入、触媒:[(ClTPP)Al][Co(CO)]、総容積:100mL、溶媒:スルホラン(Aldrichから購入;4Åのふるい上で乾燥;脱気した)、PL(Aldrichから購入;4Åのふるい上で乾燥;脱気した)、内部標準:1,4−ビス(トリメチルシリル)ベンゼン(1.11mmol)。
【0224】
反応手順E;PLおよびスルホランにおけるエチレンオキシドのカルボニル化のための反応手順はreact−IRによってモニターした
窒素グローブボックス中で、IRセンチネルプローブを装備した300mLのParrリアクターに、1,4−ビス(トリメチルシリル)ベンゼン(1.11mmol)および[(ClTPP)Al][Co(CO)](0.36mmol)を充填した。このリアクターを閉じて、グローブボックスから取り出した。IRセンチネルプローブをreactIRに接続した。スルホラン(4Å分子ふるい上で乾燥し、脱気した)およびPL(Aldrichから購入;4Åのふるい上で乾燥;FPT3)を、N下でシリンジを介してこのリアクターに添加した。攪拌装置をオンにして、反応混合物を所望の温度まで加熱した。ショットタンクをリアクターに接続して、エチレンオキシドを充填した。反応混合物の温度が所望の温度に達した後、そのショットタンクを所望のCO圧力の3/4まで加圧した。このショットタンクをリアクターに対して開口して、EOをリアクターに添加することを可能にした。このリアクターを所望の圧力まで加圧した。反応物をreact−IRによってモニターした。
【0225】
SAの形成はH NMR中で観察されず、このことはPLが事前飽和工程の間および反応の間、触媒の存在下でCOと反応しなかったことを意味する(温度は、事前飽和工程の間、40分間にわたって室温から80℃まで上昇させた)。
【0226】
PL、EO、およびアセトアルデヒドの吸光度を反応の間モニターした(図6)。COでの事前飽和後でさえ、アセトアルデヒドの吸光度は、EOが加えられた場合、急速に上昇し、次いで最初の勾配が増大した後は、緩徐に増大した。
【0227】
(実施例10)
(触媒活性に対するβプロピオラクトン濃度の効果)
高PL含量中で触媒がどのように挙動するかを理解するために、本発明者らは、触媒活性に対する[PL]の効果を研究した。
【0228】
(A.スルホラン中の触媒活性に対するβプロピオラクトン濃度の効果)
Aldrichから購入し、4Åの分子ふるいおよびFPT上で3回乾燥したPLを、共溶媒として用いて、スルホラン中の触媒活性に対するPL濃度の影響を研究した(表12)。触媒活性は、react−IRによって測定した。
【0229】
表12
【0230】
【表12】

条件:EO:Arcから購入 1.8M、触媒:[(ClTPP)Al][Co(CO)]0.36mmol、溶媒:スルホラン(Aldrichから購入;4Åのふるい上で乾燥;脱気した)、攪拌500rpm、総容積100mL;温度65℃;CO圧力400psi
手順:EOを、65℃で触媒、スルホランおよびPLを含有している反応混合物に対してCOの400psiで添加した。
初期速度:最初の5分間のPL形成の速度。
【0231】
PLの量以外は手順Eと同じ反応手順を用いた。
【0232】
EOカルボニル化の最初の5分の間のPLの形成を時間の関数としてプロットして(図7)、PL形成速度は、線の勾配から計算した。PLの吸光度は、[PL]およびIR吸光度の線形二乗法(linear square fitting)由来の以下の式を用いることによって濃度に変換した。
【0233】
[PL]=2.4367 AU−0.081(AU=吸光度単位)
表15に示すとおり、触媒活性は、[PL]が高ければ低下し、極めて[PL]依存性である。
【0234】
(実施例11)
(THF中の触媒活性に対するβプロピオラクトン濃度の効果)
反応前にPLを添加する代わりに、PLをEOから変換して特定のレベルまで蓄積した。[PL]が特定のレベルに達したとき、触媒の第二バッチをEOカルボニル化の真ん中で添加した。そのポイントでのPL形成速度は、react−IRによって測定した。また、THFを溶媒として用いて、活性を増大し、標的のPL形成速度を満たした。
【0235】
触媒活性を算出するために行った反応からの反応プロフィールの1つ(29−135)を図8に示す。その反応は、65℃で触媒およびTHFの混合物に600psiのCOでEOを添加することによって開始した(図8のポイントA)。この反応は、react−IRによってモニターして、PL含量が13.8重量%に達したとき、触媒の第二のバッチ(0.18mmol)を、600psiのCOで反応混合物に添加した(図8のポイントB)。
【0236】
ポイントBの直後のPL形成速度からポイントBの直前のPL形成速度を差引きすることによって、PL(1.76M)の13.8重量%での触媒活性を得た。同様の実験手順および計算方法を用いて、24.5重量%での触媒活性も得た(表16)。
【0237】
表13 PL形成速度(触媒1.8mM;65℃;600psiのCO)
【0238】
【表13】

1832cm−1でのPLピーク由来の吸光度単位を、下に示す等式を用いて濃度に変換した。[PL]対IR吸光度単位のプロットによって、[PL]が3Mに近くなるにつれて、IR吸光度と[PL]との間の関係は、直線性から逸脱することが示された。従って、多項最良適合を用いてこの変換式を得た。
【0239】
[PL]=0.5075AU−0.0573AU+2.0525AU+0.0028 (AU=吸光度単位)。
【0240】
(実施例12)
(プロピレンオキシドのカルボニル化)
プロピレンオキシドのカルボニル化を、温度、CO圧力および溶媒を変化することによって研究した。プロピレンオキシドは、[(ClTPP)Al][Co(CO)]、ヘキサメチルベンゼン(内部標準)、および溶媒を含む300mLのParrリアクター中で一酸化炭素と反応させた。
【0241】
表14
【0242】
【表14】

条件:[プロピレンオキシド]=90mmol(1.8M)、[(ClTPP)Al][Co(CO)]=0.06mmol(1.2mM)、3時間
これらの反応で無水コハク酸は観察されなかった。
収率は、PO、βブチロラクトン、アセトンおよび内部標準(ヘキサメチルベンゼン)のH NMR組み込みに基づいた。
反応混合物は、PO添加の前にCOで事前飽和されることはなかった。
【0243】
上の表に示すとおり、より高い収率のβブチロラクトンが、1,4−ジオキサン中の収率に比較してTHF中で得られ、そして最高収率は、200psiのCO下で55℃でTHF中での反応から得た。
【0244】
90℃および30℃での200psiのCO圧下での1,4−ジオキサン中の2つの反応を、反応混合物をサンプリングすることによって3時間の間、毎時間モニターした。図9および図10に示されるとおり、90℃での反応混合物中のプロピオラクトンの割合は、1時間後に増大しなかったが、30℃での反応混合物中のプロピオラクトンの割合は、経時的に一貫して増大し、このことは、この触媒が反応の最初の1時間の間90℃で不活性化されることを示唆する。
【0245】
(プロピレンオキシドのカルボニル化のための代表的な反応手順)
300mLのParrリアクターを、減圧下で一晩乾燥した。窒素グローブボックス中で、このリアクターに[(ClTPP)Al][Co(CO)](66mg、60μmol)およびヘキサメチルベンゼン(81mg、0.50mmol)を充填し、次いで閉じて、グローブボックスから取り出した。溶媒をN下でシリンジを介して添加した。この反応混合物を、このリアクターをCOで約15psiまで加圧することによってCOで飽和した。プロピレンオキシド(6.3mL、90mmol)を、シリンジを介してこのリアクターに添加した。このリアクターを、所望のCO圧力の3/4までCOで加圧し(例えば、150psi)、次いで所望の温度まで加熱した。反応混合物の温度が所望の温度に達した後、このリアクターを所望の圧力まで加圧した(例えば、200psi)。その反応混合物を3時間撹拌した。そのリアクターを0℃未満まで冷却して、排気した。反応混合物の一部をサンプリングして、CDCl中でH NMRによって分析した。
【0246】
(実施例13)
(高沸点溶媒−溶媒スクリーニング)
溶媒は、主に沸点に基づいてスクリーニングプロセスのために選択した。プロピオラクトン(b.p.=160℃)からの効率的な分離のために、30度の沸点相違を探求した。最初のスクリーニングには、二塩基性エステル(DBE)、N−メチルピロリジノン(NMP)、トリグリム、プロピレンカーボネート、およびスルホランを含んだ。プロピレンオキシドを、使用の容易さに起因して、エチレンオキシドについてのモデルとして用いた。
【0247】
溶媒パラメーター、例えば、誘電率、双極子モーメント、供与体数、およびCO溶解度を集めて、示した活性と比較した(Endeavorリアクター中で試験した、表15)。
【0248】
表15 高沸点溶媒のスクリーニング
【0249】
【表15】

供与体数は陽イオンを溶媒和する能力の指標である。これは、CCl中の希溶液中のルイス塩基とSbClとの間の1:1付加物形成について負のエンタルピー値である。
反応条件:Parrリアクター、[PO]=1.0M、[触媒]:[PO]=500,40℃、850psiのCO。
反応条件:Endeavor、[PO]=1.8M、[触媒]:[PO]=500,40℃、200psiのCO。
報告された値は、酢酸エチルについてである。
【0250】
(溶媒選択および最適化)
プロピレンオキシドのカルボニル化についてスクリーニングした溶媒の全てのうち、二塩基性エステルおよびスルホランを選択してさらなる研究を探求した。反応温度および圧力に対する簡易な調節を行って、両方の場合に活性を改善した(表21)。触媒は、一般にスルホラン中で低い活性を示すが、温度およびCO圧力における増大は活性を有意に改善する。さらに、THFおよびスルホランの混合物中のカルボニル化(エントリー5)もまた、活性の改善を示す。全ての場合に、スルホラン中のカルボニル化は、極めて選択性であり、メチルコハク酸無水物などの観察可能な副生成物はない。
【0251】
表16 高沸点溶媒中のPOのカルボニル化
【0252】
【表16】

反応条件:Endeavorリアクター,[PO]=1.8M、5mLの溶液容積。
【0253】
DBE中のカルボニル化速度はまた、温度およびCO圧力を増大することによって改善される。しかし、DBE中の選択性は、スルホラン中ほど高くない。かなりの量のメチルコハク酸無水物が、特に高温で形成される(図11)。この反応の開始における温度管理は困難であり、最初の45分で77℃程度の高さまで達することに注意すべきである。ラクトンおよび無水物形成は順次的であって同時ではないと思われる。この実験の再現(図12)では良好な温度管理によって、無水物形成が緩徐であることを含めて、全体的な反応が緩徐になる。プロピレンオキシドのさらなる注入を行うとき、少量の無水物が形成された。この時点でのラクトン形成は、同じ速度で進行すると考えられるが、無水物濃度は一定のままで残り、これによって無水物が大量のエポキシドが消費された後にのみ形成されるという理論がさらに支持される。この挙動によって、正しい条件では、無水物の蓄積が最小でありながらDBE中において高収率でラクトンを合成することが可能になることが示される。
【0254】
スキーム6 プロピレンオキシドのカルボニル化
【0255】
【化18】

(実施例14)
(触媒寿命)
(予備的スクリーニング)
触媒が活性を維持できる時間の長さを分析するために、極めて低い触媒ローディング([PO]:[触媒]=10,000)での簡易な実験を行った(表23、エントリー1)。この反応は、25時間内に完了して、反応物中の末期のサンプルによって、経時的な変換の直線的な速度が示唆される(図13)。より高い触媒負荷下でのPOのカルボニル化では代表的には、約500TO/hという遷移周波数(TOF)が生じ、低い触媒負荷でさえ400TO/hというTOFが得られた。
【0256】
表17 低触媒ローディングでのTHF中のPOのカルボニル化
【0257】
【表17】

反応条件:Parrリアクター、[PO]=1.8M、55℃、THF。
【0258】
線型変換からの有意な偏差(逸脱)は、[PO]:[触媒]=20,000−35,000で記される。この偏差の可能性のある原因としては、溶媒または基質中の不純物が挙げられ、これは低触媒ローディングでの反応結果に関してさらに影響が大きい場合もある。生成物ラクトンが、触媒に対するアクセスについてエポキシドと競合することによってカルボニル化反応を阻害し得ることも可能である。そして最終的には、CO溶解度は、エポキシド中よりもラクトン中でかなり低く、そのため反応が進行するにつれて、COの濃度は減る場合がある。
【0259】
(逐次的なモノマー添加)
サイクルプロセスおよび/または連続プロセスを評価するために、一連のモノマー添加による実験を行った。この反応は完了するまで進行することが可能にされ(3時間)、この時点で基質の別のアリコートを添加した(図14)。これは再度、一晩、完了するまで進行し、この時点で基質のさらに別のサンプルが添加された。この三番目のサンプルは約50%変換にしか達しなかった。この活性損失の理由は、上記で列挙されるものと同様であり得る:モノマーの連続的添加を通じて蓄積した不純物、競合的な生成物阻害、ならびに触媒およびCOの濃度変化。
【0260】
(実施例15)
(触媒熱安定性)
(熱重量分析(「TGA」)実験)
可能性のある蒸留条件に対する触媒の安定性を評価するために、本発明者らは、最初に、触媒自体の熱分解の研究を開始した。TGAを用いて[(ClTPP)Al][Co(CO)]の分解を研究し、そして約24%の質量損失を生じる分解が約150℃で開始し、約210℃までに終了する。
【0261】
(分解の研究)
この熱分解挙動は、2日間200℃で、Schlenk管中で材料を加熱することによって確認された。この分解化合物の元素分析は、最初の化合物または理論的に算出された値よりも低い炭素含量および水素含量、ならびに高い窒素およびアルミニウム含量を示した(表24)。H NMRスペクトルは、公知の触媒および新規なピークに対応するピークの混合を示す。さらに、加熱された材料は、触媒活性において98%の損失を示した。
【0262】
表18 熱分解触媒でのTHF中のPOのカルボニル化
【0263】
【表18】

反応条件:Endeavorリアクター、[PO]=1.8M、[PO]:[触媒]=500,40℃、400psi、THF。
【0264】
(予備的加熱サイクル)
熱分解研究をさらに行って、本発明者らは、所定の溶媒中で触媒溶液を調製し、その溶液を90℃まで予備加熱した(減圧蒸留のために便利な温度)。次いでこの溶液を冷却し、プロピレンオキシドを添加し、カルボニル化を通常どおり行った。THFおよびスルホランの両方の場合、活性は、予備加熱期間の後、非加熱反応に匹敵した。
【0265】
表19 予備加熱サイクルでのPOのカルボニル化
【0266】
【表19】

反応条件:Parrリアクター、[PO]=1.8M。予備加熱サイクルのために、触媒および溶媒をN下で加熱した。
【0267】
(リサイクル)
Parrリアクターから直接ラクトン生成物を蒸留するための装置を構築した。
【0268】
ラクトンと二塩基性エステル溶媒との間に30℃を超える沸点の相違がある場合でも、この簡易な装置は、清浄な蒸留を生じなかった。実際には、リアクター中の溶媒の半分より多くがラクトン生成物とともに蒸留された。この理由のせいで、スルホラン(bp=296℃)を、最初の触媒リサイクル研究のための溶媒として選択した(表26)。カルボニル化条件は、60℃および400psiのCOで一定に保持されたが、反応後の蒸留温度は各々のサイクル後に着実に上昇された。触媒活性は、90℃および100℃での蒸留後維持されると思われたが、110℃での蒸留後は顕著に損なわれた。
【0269】
表20 リサイクルによるスルホラン中でのPOのカルボニル化
【0270】
【表20】

反応条件:Parrリアクター、[PO]=1.8M、[PO]:[触媒]=250、60℃、400psi、スルホラン。
【0271】
反応の間のサンプリングを伴うスルホラン中の第二リサイクルの実験を下の図15に示す。活性は、35分間、90℃での蒸留後、2回目のサイクルの間いくらか少ないように思われ、かつ完全な変換は得られなかった。しかし、NMRによるスルホラン溶液の分析は、本発明者らの代表的な内部標準がスルホランに不溶性であり、スルホランのピークが副生成物ピークと同時に生じると予想されるという事実のせいで、かなり複雑である。
【0272】
(実施例16)
(NMR分光法)
NMR分光法は、しばらくの間、分析の標準的な方法であった(図16)。しかし、大部分の場合、このスペクトルから生じる唯一の有用な情報は、触媒中のTHFの量だけである。2つのTHF分子がA1中心に結合し、さらなる分子(代表的には0.2〜1.0)が不完全な乾燥から生じ得る。
【0273】
(実施例17)
(赤外線分光学)
触媒のCo(CO)成分は、1888cm−1で強力な吸光度を有する。NaCo(CO)4出発材料は、これからシフトされるピークを有する。図17は、触媒生成物および2つの出発材料の重複を示す。約465cm−1のピークが、(Cl−TPP)AlCl出発材料中のAl−Cl結合について予想されるが、600cm−1未満のデータは、カットオフされる。
【0274】
(実施例18)
(触媒安定性)
プロピオラクトンを形成するためのエチレンオキシドのカルボニル化のための連続プロセスのデザインには、かなりの時間にわたって活性を維持する触媒が必要である。触媒の長期間の安定性に影響し得る多数の要因があり、これには温度、溶媒、不純物および材料の適合性が挙げられる。
【0275】
カルボニル化:カルボニル化反応を下のスキーム8に示す。ルイス酸Al中心へのエポキシドの配位、その後の[Co(CO)陰イオンによるエポキシド上の求核攻撃によって、エポキシドの開環がもたらされる(2)。CO挿入は代表的には、THF中の触媒の静止状態である、Co−アシル3を形成するように即時的である。ラクトンの閉環は、THFにおける律速段階であり、その後にラクトンの損失およびイオン対1を再形成するための別の溶媒分子の配位が続く。しかし、高温および低CO濃度では、2は、β水素排除を受けてケトン分子を形成し得、これは、高速かつ発熱の反応である。特定の溶媒では、ラクトンは、無水分子へ引き続くカルボニル化を受けてもよい。これは代表的には、高温でかつエポキシドの濃度が極めて低くなる場合に生じる。無水物の形成はまた、溶媒依存性であって、DBE中で極めて速く、そしてTHFおよびスルホラン中にほとんど存在しない。
【0276】
(スキーム8 [(ClTPP)Al][Co(CO)でのエポキシドのカルボニル化)
【0277】
【化19】

【0278】
(触媒の熱安定性)触媒の熱安定性を評価するために、触媒をN下でシュレンク管中で加熱して、得られた材料を、Endeavorリアクター中でPOカルボニル化活性について試験して(表29)、触媒活性に対する温度および時間の両方の重要性を決定した。研究の条件下では、ほとんどの触媒残渣がその活性を維持していた(エントリー2〜5、表29)。長期間高温に曝された触媒のみ(エントリー6および7)は、低活性の材料を生じた。触媒は、5時間未満であれば、高温に抵抗できると考えられる。エントリー6由来の材料のH NMR分光法によって、出発触媒(エントリー1)がNMRによって式[(ClTPP)Al][Co(CO)](THF)2.5を有する場合、広範な芳香族ピーク、および[(ClTPP)Al][Co(CO)](THF)の式であるとみられるものが示された。不幸にもエントリー7で生じた材料は、不溶性であったので、NMR分析は不可能であった。
【0279】
表21 予備加熱した触媒を用いるPOのカルボニル化
【0280】
【表21】

所定の温度で所定の時間N下で加熱した触媒。POカルボニル化条件:Endeavorリアクター、[PO]=1.8M、[PO]:[触媒]=500、THF40℃、200psi、2時間。反応時間=3時間。
【0281】
(実施例19)
(React−IRモニタリング)
プロピレンオキシドおよびエチレンオキシドのカルボニル化における代表的なスペクトルをそれぞれ図18および図19に示す。生成物ラクトンの形成(BBLについては1827cm−1およびPLについては1836cm−1)、ならびにケトンおよび無水副生成物の形成をモニターし得る。触媒1に対応する1887cm−1のピーク、およびCoアシル3に対応する1715cm−1のピークを用いて触媒形成を追跡することも可能である。DBEでは1についてのピークは、エポキシドの添加の際に急速に(15秒未満)消失し、3の出現は観察が困難である。なぜなら3の出現は、ケトンおよびDBE中のエステル群のピークと同時に生じるからである。スルホランでは、1887cm−1のピークは観察できないが、1570〜1700cm−1領域の多数の他のピークが注目されており、ただしまだ特定はされていない。
【0282】
(実施例20)
(溶媒安定性)
DBE−3中の触媒安定性は、N下で18時間溶液のIRスペクトルをモニタリングすることによって評価した。[Co(CO)に対応する1887cm−1でのピークは、その時間間隔の間、一定のままで残った。POおよびCOを触媒溶液に添加し、カルボニル化は、2.5時間内に完了した。このサイクルの終わりに、[Co(CO)ピークはそのもとの値の79%に戻った(POの添加に起因する濃度補正は、計上されている)。蒸留の間、このピークは衰えると思われたが、POの引き続く添加によって、カルボニル化活性の劣化が生じた。
【0283】
(実施例21)
(圧力の効果)
DBEにおけるEOのカルボニル化の実験の以前のDOEセットでは、圧力の影響は観察されず、そのためほとんどの部分に関して、本発明者らは、400psiを用いて、潜在的な圧力の影響をほとんど無視した。しかし、少なくともスルホランでは、本発明者らは、初期速度は同様であったが、600psiでの経時的な反応は、400psiでの反応よりかなりよかったということを確認した(図20)。
【0284】
(実施例22)
(温度)
反応温度の比較を行って、触媒試験単位についての最適条件を決定した。この試験の結果を下の図21に示す。50℃および65℃では、反応はEOの二重の注入(両方とも1.8M)で行った。65℃での速度は、50℃での速度の2倍より大きい。図21は、条件および得られた反応速度の比較を図示する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程:
エポキシド、溶媒、カルボニル化触媒および一酸化炭素を含むフィードストリームの内容物を反応させて、βラクトンを含む反応生成物ストリームを生成する工程と;
該反応生成物ストリーム中の該βラクトンの少なくとも一部を該溶媒およびカルボニル化触媒から分離して:
i)βラクトンを含むβラクトンストリーム;および
ii)カルボニル化触媒および溶媒を含む触媒リサイクルストリーム
を生成する工程と;
該触媒リサイクルストリームを該フィードストリームに加える工程と、を包含する、方法。
【請求項2】
前記βラクトンを、アクリル酸;アクリレート;アクリルアミド;およびポリアクリレートからなる群より選択される化合物に変換する条件下で前記βラクトンストリームを処理する工程をさらに包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記βラクトンを、アクリル酸、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレートからなる群より選択される化合物に変換する条件下で前記βラクトンストリームを処理する工程をさらに包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記βラクトンをアクリル酸に変換する条件下で前記βラクトンストリームを処理する工程をさらに包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記βラクトンをメチルアクリレートに変換する条件下で前記βラクトンストリームを処理する工程をさらに包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記βラクトンをエチルアクリレートに変換する条件下で前記βラクトンストリームを処理する工程をさらに包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記βラクトンをn−ブチルアクリレートに変換する条件下で前記βラクトンストリームを処理する工程をさらに包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記βラクトンをイソブチルアクリレートに変換する条件下で前記βラクトンストリームを処理する工程をさらに包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記βラクトンを2−エチルヘキシルアクリレートに変換する条件下で前記βラクトンストリームを処理する工程をさらに包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記溶媒が同じ圧力で前記βラクトンの沸点より高い沸点を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記溶媒の少なくとも一部が同じ圧力で前記βラクトンの沸点より低い沸点を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記βラクトンストリームが前記溶媒の一部を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記βラクトンストリームが前記エポキシドの一部を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記触媒リサイクルストリームがβラクトンを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記反応生成物ストリームが前記エポキシドの一部を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記反応生成物ストリームが無水物形成を防ぐのに十分なエポキシドを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記反応生成物ストリームが少なくとも約5%のエポキシドを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記反応生成物ストリームが少なくとも約3%のエポキシドを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
前記反応生成物ストリームが少なくとも約0.1%のエポキシドを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項20】
前記反応生成物ストリームが約5%未満の無水物を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
前記反応生成物ストリームが約1%未満の無水物を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
請求項1に記載の方法であって、未使用のカルボニル化触媒を添加する工程、使用済みのカルボニル化触媒を取り除く工程;溶媒を添加する工程;エポキシドを添加する工程、前記βラクトンストリームの一部を添加する工程;およびこれらの2つ以上の任意の組み合わせからなる群より選択される少なくとも1つの工程を行うことによる添加の工程の前に、前記触媒リサイクルストリームを処理する工程をさらに包含する、方法。
【請求項23】
前記分離工程が前記反応生成物ストリームから前記βラクトンの少なくとも一部を揮発させる工程を包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項24】
前記分離工程が、前記反応生成物ストリームを低圧に暴露する工程を包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項25】
前記低圧が約5Torrと約500Torrとの間である、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記低圧が約10Torrと約100Torrとの間である、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
前記低圧が、前記βラクトンの前記沸点を、大気圧でその沸点の約20〜約100℃下まで低下するのに十分である、請求項24に記載の方法。
【請求項28】
前記分離工程が、前記反応生成物ストリームを高温に暴露する工程を包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項29】
前記高温が前記βラクトンの沸点より大きいが、前記溶媒の沸点より小さい、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記分離工程が、前記反応生成物ストリームを低圧および高温に暴露する工程を包含する、請求項23に記載の方法。
【請求項31】
前記分離工程由来の前記揮発されたβラクトンを凝縮する工程をさらに包含する、請求項23に記載の方法。
【請求項32】
前記フィードストリームにβラクトンを添加する工程をさらに包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項33】
前記フィードストリームに添加された前記βラクトンが前記βラクトンストリームの一部を含む、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記βラクトンストリームが、前記反応生成物ストリーム中のβラクトンの重量パーセントが約10%〜約90%の範囲になるまで前記フィードに加えられ、次いで該βラクトンストリームの一部を生成物として抜き取って、該反応生成物ストリーム中のβラクトンの該重量パーセントを約10%〜約90%の範囲で維持する、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記βラクトンストリームが、前記反応生成物ストリーム中のβラクトンの重量パーセントが約30%〜約65%の範囲になるまで前記フィードに加えられ、次いで該βラクトンストリームの一部を生成物として抜き取って、該反応生成物ストリーム中のβラクトンの該重量パーセントを約30%〜約65%の範囲で維持する、請求項33に記載の方法。
【請求項36】
前記βラクトンストリームが、前記反応生成物ストリーム中のβラクトンの重量パーセントが約43%〜約53%の範囲になるまで前記フィードに加えられ、次いで該βラクトンストリームの一部を生成物として抜き取って、該反応生成物ストリーム中のβラクトンの該重量パーセントを約43%〜約53%の範囲で維持する、請求項33に記載の方法。
【請求項37】
前記処理工程の前に前記βラクトンに第二の溶媒を添加する工程をさらに包含する、請求項2に記載の方法。
【請求項38】
前記処理工程が気相中で行われる、請求項2に記載の方法。
【請求項39】
前記溶媒の前記沸点が、前記βラクトンの前記沸点よりも少なくとも20℃高い、請求項1に記載の方法。
【請求項40】
前記溶媒の前記沸点が、前記βラクトンの前記沸点よりも約20℃と約80℃との間高い、請求項1に記載の方法。
【請求項41】
前記溶媒の前記沸点が、前記βラクトンの前記沸点よりも約30℃から約60℃高い、請求項1に記載の方法。
【請求項42】
請求項1に記載の方法であって、前記エポキシドが式
【化20】

を有し、
ここで、RおよびRが各々独立して:−H;必要に応じて置換されているC1−6脂肪族;必要に応じて置換されているフェニル;必要に応じて置換されているC1−6ヘテロ脂肪族;必要に応じて置換されている3員から6員の炭素環;および必要に応じて置換されている3員から6員の複素環からなる群より選択され、
ここで、RおよびRは必要に応じて、介在原子と一緒になって、1つ以上のヘテロ原子を必要に応じて含む、3員から6員の、置換または非置換の環を形成する、方法。
【請求項43】
前記エポキシドが、エチレンオキシド;プロピレンオキシド;1,2−ブチレンオキシド;2,3−ブチレンオキシド;エピクロロヒドリン;シクロヘキセンオキシド;シクロペンテンオキシド;3,3,3−トリフルオロ−1,2−エポキシプロパン、スチレンオキシド;グリシジルエーテル;およびグリシジルエステルからなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項44】
前記エポキシドがエチレンオキシドを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項45】
前記エポキシドがプロピレンオキシドを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項46】
前記処理工程が、アルコール、アミンおよびチオールからなる群より選択される化合物の存在下で、それぞれ対応するアクリル酸エステル、アクリルアミド、またはチオアクリレートを生成する条件下で行われる、請求項2に記載の方法。
【請求項47】
請求項2に記載の方法であって、ここで前記処理工程が、式H−Yの化合物の存在下で行われて、式
【化21】

を有するアクリレートが得られ、
式中、RおよびRが各々独立して、−H、必要に応じて置換されているC1−6脂肪族、必要に応じて置換されているC1−6ヘテロ脂肪族、必要に応じて置換されている3員〜12員の炭素環、および必要に応じて置換されている3員〜12員の複素環からなる群より選択されるか、またはRおよびRが必要に応じて介在原子と一緒になって、1つ以上のヘテロ原子を必要に応じて含む必要に応じて置換されている環を形成し得;
式中、Yが、OR13、NR1112、およびSR13からなる群より選択され;
式中、R11、R12、およびR13が、独立して:−H;必要に応じて置換されているC1−32脂肪族、必要に応じて置換されているC1−32ヘテロ脂肪族、必要に応じて置換されている3員〜14員の炭素環、および必要に応じて置換されている3員〜14員の複素環からなる群より選択されるか、またはR11およびR12が必要に応じて介在原子と一緒になって、必要に応じて1つ以上のヘテロ原子を含む必要に応じて置換されている環を形成し得る、方法。
【請求項48】
前記フィードストリームが、エチレンオキシドおよび大気圧で少なくとも172℃の沸点を有する高沸点溶媒を含み;かつ前記反応生成物ストリームがβプロピオラクトンを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項49】
前記フィードストリームが、プロピレンオキシドおよび大気圧で少なくとも180℃の沸点を有する高沸点溶媒を含み;かつ前記反応生成物ストリームがβブチロラクトンを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項50】
前記溶媒が:エステル;エーテル;スルホラン;環状カーボネート;イミダゾリジノン;およびピロリドンからなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項51】
前記溶媒が:スルホラン;N−メチルピロリドン;1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン;ジグリム;トリグリム;テトラグリム;エチレンカーボネート;プロピレンカーボネート;二塩基性エステル;THF;C1−32脂肪族で修飾されたTHF;およびこれらの任意の2つ以上の混合物からなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項52】
前記溶媒がTHFを含む、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
前記溶媒がスルホランを含む、請求項51に記載の方法。
【請求項54】
前記溶媒が二塩基性エステルを含む、請求項51に記載の方法。
【請求項55】
前記溶媒がスルホランおよびTHFの混合物を含む、請求項51に記載の方法。
【請求項56】
前記溶媒がスルホランおよびC1−32脂肪族で修飾されたTHFの混合物を含む、請求項51に記載の方法。
【請求項57】
請求項51に記載の方法であって、前記修飾されたTHFが形:
【化22】

を有し、
ここで、Rが、必要に応じて置換されている脂肪族;必要に応じて置換されているアシル、必要に応じて置換されている芳香族、およびポリエーテルからなる群より選択される、方法。
【請求項58】
前記溶媒がさらにイソソルビドジメチルエーテルを含む、請求項51に記載の方法。
【請求項59】
前記フィードストリームがスルホランを含む、請求項48または49のいずれかに記載の方法。
【請求項60】
前記フィードストリームがTHF、およびC1−32脂肪族で修飾されたTHFのうちの1つを含む、請求項48または49のいずれかに記載の方法。
【請求項61】
前記フィードストリームが、二塩基性エステルを含む、請求項48または49のいずれかに記載の方法。
【請求項62】
前記カルボニル化触媒が金属カルボニル化合物を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項63】
請求項62に記載の方法であって、前記金属カルボニル化合物が一般式
[QM(CO)を有し、
ここで:Qは任意の配位子であって、存在する必要はなく;
Mが金属原子であり;
yが、1および6も含めて、1〜6までの整数であり;
wが、安定な金属カルボニルを提供するような数であり;かつ
xが、−3および+3も含めて、−3〜+3までの整数である、方法。
【請求項64】
前記MがTi、Cr、Mn、Fe、Ru、Co、Rh、Ni、Pd、Cu、Zn、Al、GaおよびInからなる群より選択される、請求項63に記載の方法。
【請求項65】
前記MがCoである、請求項63に記載の方法。
【請求項66】
前記MがCoであり、yが1であり、かつwが4である、請求項63に記載の方法。
【請求項67】
前記カルボニル化触媒がさらに、ルイス酸共触媒を含む、請求項63に記載の方法。
【請求項68】
前記金属カルボニル化合物が陰イオン性であり、かつ前記ルイス酸共触媒が陽イオン性である、請求項67に記載の方法。
【請求項69】
前記金属カルボニル錯体がコバルト酸カルボニルを含み、かつ前記ルイス酸共触媒が金属中心陽イオン性ルイス酸を含む、請求項68に記載の方法。
【請求項70】
請求項69に記載の方法であって、前記金属中心陽イオン性ルイス酸が、式[M’(L)b]c+の金属錯体であり、
ここで、M’が金属であり;
各々のLが配位子であり;
bが、1および6も含めて、1〜6までの整数であり;
cが、1、2または3であり;かつ
ここで、1つより多いLが存在する場合、各々のLは同じであっても異なってもよい、方法。
【請求項71】
M’が、遷移金属、13族または14族の金属、およびランタニドからなる群より選択される、請求項70に記載の方法。
【請求項72】
M’が遷移金属または13族の金属である、請求項70に記載の方法。
【請求項73】
M’がアルミニウム、クロム、インジウムおよびガリウムからなる群より選択される、請求項70に記載の方法。
【請求項74】
M’がアルミニウムである、請求項70に記載の方法。
【請求項75】
M’がクロムである、請求項70に記載の方法。
【請求項76】
前記ルイス酸が、ジアニオン四座配位子を含む、請求項70に記載の方法。
【請求項77】
前記ジアニオン四座配位子が:ポルフィリン誘導体;サレン誘導体;ジベンゾテトラメチルテトラアザ[14]アヌレン(tmtaa)誘導体;フタロシアニネート誘導体;およびTrost配位子の誘導体からなる群より選択される、請求項76に記載の方法。
【請求項78】
前記処理工程が触媒によって媒介される、請求項2に記載の方法。
【請求項79】
前記処理工程における前記触媒が酸触媒である、請求項78に記載の方法。
【請求項80】
前記処理工程における前記触媒が塩基触媒である、請求項78に記載の方法。
【請求項81】
前記反応工程が断熱リアクター中で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項82】
前記断熱リアクターが管状リアクターである、請求項81に記載の方法。
【請求項83】
前記断熱リアクターが、シェルアンドチューブリアクターである、請求項81に記載の方法。
【請求項84】
前記反応工程が、約50psi〜約5000psiの圧力で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項85】
前記反応工程が、約50psi〜約2000psiの圧力で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項86】
前記反応工程が、約200psi〜約1000psiの圧力で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項87】
前記反応工程が、約200psi〜約600psiの圧力で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項88】
前記反応工程が、約0℃〜約125℃の温度で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項89】
前記反応工程が、約30℃〜約100℃の温度で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項90】
前記反応工程が、約40℃〜約80℃の温度で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項91】
前記反応工程中の前記一酸化炭素が、一酸化炭素および1つ以上のさらなる気体を含む工業的ガスストリームとして供給される、請求項1に記載の方法。
【請求項92】
前記工業的ガスストリームが合成ガスを含む、請求項91に記載の方法。
【請求項93】
前記反応工程中の前記一酸化炭素が、実質的に純粋型で供給される、請求項1に記載の方法。
【請求項94】
前記βラクトンストリームが未反応のエポキシドを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項95】
前記βラクトンストリームが一酸化炭素を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項96】
前記βラクトンストリームが溶媒を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項97】
前記エポキシド、一酸化炭素または溶媒が前記フィードストリームに戻される、請求項94〜96のいずれかに記載の方法。
【請求項98】
前記βラクトンストリームの一部が前記フィードに戻される、請求項97に記載の方法。
【請求項99】
以下の工程:
エポキシド、溶媒、カルボニル化触媒および一酸化炭素を含むフィードストリームの内容物を反応させて、βラクトンを含む反応生成物ストリームを生成する工程と;
該カルボニル触媒から該反応生成物ストリームにおけるβラクトンの少なくとも一部を分離して:
i)βラクトンを含むβラクトンストリーム、および
ii)該カルボニル化触媒を含む触媒リサイクルストリーム、
を生成する工程と:
該触媒リサイクルストリームを該フィードストリームに加える工程と、
を包含する、方法。
【請求項100】
請求項99に記載の方法であって、前記分離工程が以下の工程:
前記反応生成物ストリームを
i)一酸化炭素および前記エポキシドを含む揮発性ストリーム;ならびに
ii)βラクトンおよびカルボニル化触媒を含む不揮発性ストリーム、
に分離する、第一の分離工程と;
前記溶媒およびカルボニル化触媒から該不揮発性ストリーム中の該βラクトンの少なくとも一部を分離して:
i)βラクトンを含むβラクトンストリーム;および
ii)該カルボニル化触媒を含む触媒リサイクルストリーム、
を生成する、第二の分離工程と、
を包含する、方法。
【請求項101】
請求項100に記載の方法であって、前記第一の分離工程が、以下の工程:
前記反応生成物ストリームを
i)一酸化炭素および前記エポキシドの一部を含む気体ストリーム;ならびに
ii)該エポキシドの残り、前記βラクトンおよび前記カルボニル化触媒を含む液体ストリーム、
に分離する工程と;
該液体ストリームを
i)さらなるエポキシドを含むエポキシドストリーム;ならびに
ii)該βラクトンおよび該カルボニル化触媒を含む不揮発性ストリーム、
に分離する工程と、
を包含する、方法。
【請求項102】
前記触媒リサイクルストリームがさらに溶媒を含み、該溶媒の少なくとも一部が前記βラクトンの前記沸点よりも高い沸点を有する、請求項99に記載の方法。
【請求項103】
前記揮発性ストリームを前記フィードストリームに戻す工程をさらに包含する、請求項100に記載の方法。
【請求項104】
前記揮発性ストリームがさらに溶媒を含み、ここで該溶媒の少なくとも一部が前記βラクトンの前記沸点よりも低い沸点を有する、請求項101に記載の方法。
【請求項105】
前記エポキシドストリームがさらに溶媒を含み、ここで該溶媒の少なくとも一部が前記βラクトンの前記沸点よりも低い沸点を有する、請求項101に記載の方法。
【請求項106】
前記気体ストリームおよび前記エポキシドストリームのうちの少なくとも1つを前記フィードストリームに戻す工程をさらに包含する、請求項101に記載の方法。
【請求項107】
前記フィードストリームがさらにルイス塩基添加物を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項108】
前記ルイス塩基添加物が、ルイス塩基の窒素原子、リン原子または酸素原子を有する化合物からなる群より選択される、請求項107に記載の方法。
【請求項109】
前記ルイス塩基添加物が、ホスフィン、アミンおよびエーテルからなる群より選択される、請求項108に記載の方法。
【請求項110】
前記ルイス塩基添加物が、修飾THF;2,6−ルチジン;イミダゾール;1−メチルイミダゾール;4−ジメチルアミノピリジン;トリヘキシルアミンおよびトリフェニルホスフィンから選択される、請求項107に記載の方法。
【請求項111】
以下の工程:
エポキシド、溶媒、カルボニル化触媒および一酸化炭素を含むフィードストリームの内容物を反応させて、βラクトンを含む反応生成物ストリームを生成する工程と;
該反応生成物ストリーム中のβラクトンの重量パーセントが所定の範囲内になるまで該フィードストリームへ該反応生成物ストリームの全体を戻す工程;次いで該溶媒およびカルボニル触媒から該反応生成物ストリーム中の該βラクトンの少なくとも一部を分離して:
i)βラクトンを含むβラクトンストリーム、および
ii)該カルボニル化触媒および該溶媒を含む触媒リサイクルストリーム、
を生成する工程と:
該触媒リサイクルストリームを該フィードストリームに加える工程と、
を包含する、方法。
【請求項112】
請求項111に記載の方法であって、前記反応生成物ストリームが、該反応生成物ストリーム中のβラクトンの重量パーセントが約10%〜約90%の範囲内になるまで前記フィードへ戻され、次いで該βラクトンストリームの一部を生成物として抜き取って、該反応生成物ストリーム中のβラクトンの該重量パーセントを約10%〜約90%の範囲で維持する、方法。
【請求項113】
請求項111に記載の方法であって、前記反応生成物ストリームが、該反応生成物ストリーム中のβラクトンの重量パーセントが約30%〜約65%の範囲内になるまで前記フィードへ戻され、次いで該βラクトンストリームの一部を生成物として抜き取って、該反応生成物ストリーム中のβラクトンの該重量パーセントを約30%〜約65%の範囲で維持する、方法。
【請求項114】
請求項111に記載の方法であって、前記反応生成物ストリームが、該反応生成物ストリーム中のβラクトンの重量パーセントが約43%〜約53%の範囲内になるまで前記フィードへ戻され、次いで該βラクトンストリームの一部を生成物として抜き取って、該反応生成物ストリーム中のβラクトンの該重量パーセントを約43%〜約53%の範囲で維持する、方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図19】
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【図20】
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【図7】
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【図18】
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【図21】
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【公表番号】特表2012−523421(P2012−523421A)
【公表日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−504822(P2012−504822)
【出願日】平成22年4月7日(2010.4.7)
【国際出願番号】PCT/US2010/030230
【国際公開番号】WO2010/118128
【国際公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【出願人】(511046391)ノボマー, インコーポレイテッド (8)
【Fターム(参考)】