β−D−グルコピラノシルアミン誘導体組成物からなる中空繊維状有機ナノチューブの外径制御製造方法及び該方法で得られる外径が制御された中空繊維状有機ナノチューブ
【課題】中空繊維状有機ナノチューブの構成単位として、非イオン性脂質分子であるβ−D−グルコピラノシルアミン誘導体組成物を用いた場合に、形成する中空繊維状有機ナノチューブの外径制御方法を提供する。
【解決手段】混合した組成物を高速液体クロマトグラフィーの210nmの吸収波長で測定して得られるチャート上の相対面積比で、オレオイル−β−D−グルコピラノシルアミン、ラウロイル−β−D−グルコピラノシルアミン、ミリストイル−β−D−グルコピラノシルアミン並びにその他のβ−D−グルコピラノシルアミン脂肪酸誘導体の総和を100%とした場合、ラウロイル−β−D−グルコピラノシルアミン及びミリストイル−β−D−グルコピラノシルアミンの一方もしくは両方が80%以上含有される条件で混合することにより、得られる有機ナノチューブ外径分布を制御する。
【解決手段】混合した組成物を高速液体クロマトグラフィーの210nmの吸収波長で測定して得られるチャート上の相対面積比で、オレオイル−β−D−グルコピラノシルアミン、ラウロイル−β−D−グルコピラノシルアミン、ミリストイル−β−D−グルコピラノシルアミン並びにその他のβ−D−グルコピラノシルアミン脂肪酸誘導体の総和を100%とした場合、ラウロイル−β−D−グルコピラノシルアミン及びミリストイル−β−D−グルコピラノシルアミンの一方もしくは両方が80%以上含有される条件で混合することにより、得られる有機ナノチューブ外径分布を制御する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬、農薬、化粧品、機能性材料等の分野で重要な役割を果たす中空繊維状有機ナノチューブ材料の外径制御製造方法、及び該方法で得られる外径が制御された中空繊維状有機ナノチューブに関する。
【背景技術】
【0002】
β−D−グルコピラノシルアミンのアミノ基に長鎖不飽和脂肪酸をアミド結合させた誘導体は、中空繊維状有機ナノチューブの構成単位として用いることが出来る(特許文献1、2)。中空繊維状有機ナノチューブは、医薬、農薬、化粧品、機能性材料等の分野で新たな市場を開拓すると期待されている重要な材料である。また、中空繊維状有機ナノチューブは、その構成単位である脂質分子の構造により、その外径が異なることが知られている(非特許文献1)。さらに、イオン性脂質分子を用いて中空繊維状有機ナノチューブを形成する場合には、溶液のイオン強度や水素イオン濃度、対アニオンの種類によって外径を制御できることが報告されている(非特許文献2、3)。
しかしながら、溶液のイオン強度や水素イオン濃度にその形成を影響されないβ−D−グルコピラノシルアミン誘導体組成物をはじめとする非イオン性脂質分子を用いた場合の中空繊維状有機ナノチューブの外径制御に関する研究例は報告されていない。
【0003】
一方、中空繊維状有機ナノチューブを医薬、農薬、化粧品、機能性材料等の分野で利用しようとした場合、中空繊維状有機ナノチューブの物質に対する包接能力や、包接した物質に対する放出能力、媒体中への分散性、媒体中での配向性、等、の性質が重要な因子となってくる。これらの包接、放出、分散、配向を決定する1つの要因は、中空繊維状有機ナノチューブの外径とそれに依存する内径の大きさである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3664401号公報
【特許文献2】特開2008−30185号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Chemical Reviews, 105,1401-1443 (2005)
【非特許文献2】Chemistry and Physics ofLipids, 62, 193-204 (1992)
【非特許文献3】Langmuir, 20, 5969-5977(2004)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、中空繊維状有機ナノチューブの構成単位として、非イオン性脂質分子であるβ−D−グルコピラノシルアミン誘導体組成物を用いた場合に、形成する中空繊維状有機ナノチューブの外径制御方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明者らは、中空繊維状有機ナノチューブの外径制御技術に関して鋭意検討した結果、β−D−グルコピラノシルアミンのオレイン酸誘導体とラウリン酸誘導体またはミリスチン酸誘導体を特定の比率で使用することにより、中空繊維状有機ナノチューブの外径を制御出来ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、少なくとも、下記式(1)で示されるオレオイル−β−D−グルコピラノシルアミンと、下記式(2)で示されるラウロイル−β−D−グルコピラノシルアミン及び下記式(3)で示されるミリストイル−β−D−グルコピラノシルアミンの一方もしくは両方を含む、β−D−グルコピラノシルアミン脂肪酸誘導体混合物を自己集合化処理して中空繊維状有機ナノチューブを製造する方法であって、混合した組成物を高速液体クロマトグラフィーの210nmの吸収波長で測定して得られるチャート上の相対面積比で、前記式(1)、前記式(2)、前記式(3)並びにその他のβ−D−グルコピラノシルアミン脂肪酸誘導体の総和を100%とした場合、前記式(2)で示されるラウロイル−β−D−グルコピラノシルアミン及び前記式(3)で示されるミリストイル−β−D−グルコピラノシルアミンの一方もしくは両方が80%以上含有される条件で混合することにより、得られる有機ナノチューブ外径分布を50nm刻みで集計した場合の最大本数である外径分布を、200nm〜750nmの範囲で制御することを特徴とする中空繊維状有機ナノチューブの製造方法である。
【0009】
【化1】
【化2】
【化3】
【0010】
また、本発明は、少なくとも、下記式(1)で示されるオレオイル−β−D−グルコピラノシルアミンと、下記式(2)で示されるラウロイル−β−D−グルコピラノシルアミン及び下記式(3)で示されるミリストイル−β−D−グルコピラノシルアミンの一方もしくは両方を含む、β−D−グルコピラノシルアミン脂肪酸誘導体混合物を自己集合化処理することにより得られる中空繊維状有機ナノチューブであって、混合した組成物を高速液体クロマトグラフィーの210nmの吸収波長で測定して得られるチャート上の相対面積比で、前記式(1)、前記式(2)、前記式(3)並びにその他のβ−D−グルコピラノシルアミン脂肪酸誘導体の総和を100%とした場合、前記式(2)で示されるラウロイル−β−D−グルコピラノシルアミン及び前記式(3)で示されるミリストイル−β−D−グルコピラノシルアミンの一方もしくは両方が80%以上含有される条件で混合することにより、得られる有機ナノチューブ外径分布を50nm刻みで集計した場合の最大本数である外径分布が、200nm〜750nmの範囲で制御されていることを特徴とする中空繊維状有機ナノチューブである。
【0011】
【化1】
【化2】
【化3】
【発明の効果】
【0012】
本発明の中空繊維状有機ナノチューブは、その外径を簡便安価な方法で制御可能であるため、物質に対する包接能力や、包接した物質に対する放出能力、媒体中への分散性、媒体中での配向性、等、の性質を制御可能であり、医薬、農薬、化粧品、機能性材料等の分野での利用に大きく貢献することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】オレオイル−β−D−グルコピラノシルアミン基準物質のHPLC測定結果を示す図
【図2】ラウロイル−β−D−グルコピラノシルアミン基準物質のHPLC測定結果を示す図
【図3】ミリストイル−β−D−グルコピラノシルアミン基準物質のHPLC測定結果を示す図
【図4】実施例1のサンプルNo.1〜15の電子顕微鏡写真の一部を示す図
【図5(1)】実施例1のサンプルNo.1〜3で得られた有機ナノチューブの外径分布を示す図
【図5(2)】実施例1のサンプルNo.4〜6で得られた有機ナノチューブの外径分布を示す図
【図5(3)】実施例1のサンプルNo.7〜9で得られた有機ナノチューブの外径分布を示す図
【図5(4)】実施例1のサンプルNo.10〜12で得られた有機ナノチューブの外径分布を示す図
【図5(5)】実施例1のサンプルNo.13〜15で得られた有機ナノチューブの外径分布を示す図
【図6】ラウリン酸/(オレイン酸+ラウリン酸)のHPLC面積比換算結果と有機ナノチューブ外径の関係を示す図
【図7】ラウリン酸誘導体及びオレイン酸誘導体の混合比と、有機ナノチューブの最多域の外径の関係を表わした図
【図8】実施例2のサンプルNo.1〜16の電子顕微鏡写真の一部を示す図
【図9(1)】実施例2のサンプルNo.1〜3で得られた有機ナノチューブの外径分布を示す図
【図9(2)】実施例2のサンプルNo.4〜6で得られた有機ナノチューブの外径分布を示す図
【図9(3)】実施例2のサンプルNo.7〜9で得られた有機ナノチューブの外径分布を示す図
【図9(4)】実施例2のサンプルNo.10〜12で得られた有機ナノチューブの外径分布を示す図
【図9(5)】実施例2のサンプルNo.13〜15で得られた有機ナノチューブの外径分布を示す図
【図9(6)】実施例2のサンプルNo.16で得られた有機ナノチューブの外径分布を示す図
【図10】ミリスチン酸/(オレイン酸+ミリスチン酸)のHPLC面積比換算結果と有機ナノチューブ外径の関係を示す図
【図11】ミリスチン酸誘導体及びオレイン酸誘導体の混合比と、有機ナノチューブの最多域の外径の関係を表わした図
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、前記式(1)で示されるオレオイル−β−D−グルコピラノシルアミンを、前記式(2)で示されるラウロイル−β−D−グルコピラノシルアミンおよび前記式(3)で示されるミリストイル−β−D−グルコピラノシルアミンの片方もしくは両方と混合した組成物を、アルコールに加熱溶解した後、一昼夜以上静置する自己集合化処理により得ることが出来る中空繊維状有機ナノチューブである。また、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)の210nmの吸収波長で測定されるチャート上の相対面積比で、前記式(1)、前記式(2)、前記式(3)並びにその他のβ−D−グルコピラノシルアミン脂肪酸誘導体の総和を100%とした場合、前記式(2)で示されるラウロイル−β−D−グルコピラノシルアミンもしくは前記式(3)で示されるミリストイル−β−D−グルコピラノシルアミンが、80%以上含有される条件で、有機ナノチューブ外径分布を50nm刻みで集計した場合に最大本数である外径分布が、200nm〜750nmの範囲で制御可能であることを特徴とする中空繊維状有機ナノチューブの製造方法である。
【0015】
β−D−グルコピラノシルアミン誘導体組成物の自己集合化処理に使用するのは、炭素数4以下のアルコール類であり、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールを使用することが好ましく、メタノールを使用することがより好ましい。これらアルコール類は単独で用いても、2つ以上を組み合わせて用いても良い。
【0016】
β−D−グルコピラノシルアミン誘導体組成物を、アルコールに加熱溶解する際の温度に限定はなく、好ましくは40℃以上90℃以下であり、さらに好ましくは50℃以上80℃以下である。β−D−グルコピラノシルアミン誘導体組成物溶解の際には、超音波処理により均一に分散溶解することが好ましい。
【0017】
アルコール溶液を静置し、β−D−グルコピラノシルアミン誘導体組成物の自己集合化をさせるときには、溶媒を冷却することで自己集合化を迅速に終了させることが可能であるが、一昼夜以上室温で静置し時間をかけて自己組織化させることが好ましい。
【0018】
自己集合化によって形成した中空繊維状有機ナノチューブは、ろ過によって回収し、少量のメタノールで洗浄し、減圧乾燥することで白色乾燥粉末として得ることが出来る。
【0019】
前記のようにして得られた中空繊維状有機ナノチューブは、HPLC分析によってβ−D−グルコピラノシルアミン誘導体に含まれる前記式(1)で示されるオレオイル−β−D−グルコピラノシルアミンを、前記式(2)で示されるラウロイル−β−D−グルコピラノシルアミンおよび前記式(3)で示されるミリストイル−β−D−グルコピラノシルアミンそれぞれの組成比を決定した。
【0020】
前記のようにして得られた中空繊維状有機ナノチューブは、走査電子顕微鏡で観察することにより、外径を測定することが出来る。
【実施例】
【0021】
以下、実施例を挙げて本発明を一層明らかにするが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(HPLC条件)
β−D−グルコピラノシルアミン誘導体組成物をメタノールに溶解し、次のHPLC測定条件で分析した。
ポンプ:島津LC-20AD
検出器:島津SPD-M20A
データ処理機:島津CBM-20A
カラム:Phenomenex ODS C18(2) 5μm
溶出溶媒:メタノール/12.5mM リン酸二水素ナトリウム水溶液(V/V)=80/20
カラム温度:40℃
検出波長:210nm
流速:0.9ml/min.
測定時間:0-40min.
【0022】
(オレオイル−β−D−グルコピラノシルアミン基準物質)
市販のオレイン酸クロリドは、天然油脂由来の製品であるため、その純度は50%〜70%とまちまちである。そこで本発明では、同一バッチで製造したオレオイル−β−D−グルコピラノシルアミンをオレオイル−β−D−グルコピラノシルアミン基準物質として、全ての操作に使用した。
本発明で使用したオレオイル−β−D−グルコピラノシルアミン基準物質の組成は、上記HPLC測定結果による相対面積比において、それぞれオレイン酸誘導体は57.6%、ラウリン酸誘導体は0.1%、ミリスチン酸誘導体は1.8%、リノール酸誘導体は12.4%、パルミチン酸誘導体は4.0%、ステアリン酸誘導体は1.3%である。
図1は、オレオイル−β−D−グルコピラノシルアミン基準物質のHPLC測定結果を示す図である。
【0023】
(ラウロイル−β−D−グルコピラノシルアミン基準物質)
本発明で使用したラウロイル−β−D−グルコピラノシルアミン基準物質の組成は、上記HPLC測定結果による相対面積比において、ラウリン酸誘導体は86.3%、またミリスチン酸誘導体は4.7%、オレイン酸、リノール酸、パルミチン酸、ステアリン酸の各誘導体はN.D.である。
図2は、ラウロイル−β−D−グルコピラノシルアミン基準物質のHPLC測定結果を示す図である。
【0024】
(ミリストイル−β−D−グルコピラノシルアミン基準物質)
本発明で使用したミリストイル−β−D−グルコピラノシルアミン基準物質の組成は、上記HPLC測定結果による相対面積比において、ミリスチン酸誘導体は77.4%、またラウリン酸誘導体は0.2%、リノール酸誘導体は10.2%、パルミチン酸、オレイン酸、ステアリン酸の各誘導体はN.D.である。
図3は、ミリストイル−β−D−グルコピラノシルアミン基準物質のHPLC測定結果を示す図である。
【0025】
(実施例1)
【表1】
【0026】
サンプルNo.1〜15を、上記の表1に示す製造条件で、以下のようにして作成した。
オレオイル−β−D−グルコピラノシルアミンとラウロイル−β−D−グルコピラノシルアミンの総量が0.35gになるように適宜とり、メタノールを7-8ml加え、ドライバスで液温を60℃に保ちながら、プローブ型の超音波(BRANSON Advanced-Digital SONIFIER、14-21W、pulse=0.5/0.5)、で60sec.処理した。次にバス型超音波(BRANSONIC,
ULTRASONIC CLEANER)を30sec.かけ、再度プローブ型超音波で60sec.処理を行った。一定時間そのままの温度で放置した後、加温を止め、一昼夜以上室温静置して得られた結晶を吸引ろ過(ろ紙No.5C)した。少量のメタノールで洗浄し、白色固体を回収し、減圧乾燥後、重量を測定した。この得られた結晶について、1g/mlになるようにメタノールで溶解し、前述のHPLC測定条件で組成を分析した。結果を以下の表2に示す。
【0027】
更に、この固体0.1-0.2mgに500μlの超純水を加えてバス型超音波30sec.処理することにより水分散溶液とし、溶液1滴を試料台上の雲母板にのせ、減圧乾燥後、オスミウムまたは白金でコーティングし、走査電子顕微鏡にて観察を行った。図4に、電子顕微鏡写真の一部を示す。
測定倍率10,000倍、または5,000倍の画面上で有機チューブ1本ごとにチューブ長方向に垂直となる補助線上での外径を読み取り、写真画面上のスケールの長さに基づいて換算した。なお、このときサンプルごとに50本以上の有機ナノチューブの外径を測定した。
【0028】
図5(1)〜図5(5)は、それぞれ、サンプルNo.1〜15の有機ナノチューブ外径の分布を示すものであり、50nm刻みで集計した結果を示している。
図6は、これらの図を基にして、全サンプルにおける、ラウリン酸/(オレイン酸+ラウリン酸)のHPLC面積比換算結果と有機ナノチューブ外径の関係を示すものである。
【0029】
また、図5(1)〜図5(5)から得られた、各サンプルにおける最多域**(各図において、最多であった範囲)の外径を下記の表2に示す。
なお、同表中に記載した、ラウリン酸誘導体及びオレイン酸誘導体の含有率(%)*は、HPLC面積の総和に対しての各酸誘導体のHPLC面積を百分率(%)であらわしたものである。
更に、図7は、表2に示す結果に基づいて、HPLC面積比換算における、ラウリン酸誘導体及びオレイン酸誘導体の混合比と、有機ナノチューブの最多域の外径の関係を表わしたものである。
【0030】
【表2】
【0031】
図7に示す結果から、HPLC面積で換算して、ラウリン酸誘導体及びオレイン酸誘導体の総和に対して、ラウリン酸誘導体が80%以上含有される条件下では、有機ナノチューブ外径分布を50nm刻みで集計した場合の最大本数である外径分布を、200nm〜750nmの範囲で制御可能であることが分かる。
【0032】
(実施例2)
【表3】
【0033】
サンプルNo.1〜16を、上記の表3に示す製造条件で、以下のようにして作成した。
オレオイル−β−D−グルコピラノシルアミンとミリストイル−β−D−グルコピラノシルアミンの総量が0.35-0.4gになるように適宜とり、メタノールを6-10ml加え、ドライバスで液温を60℃に保ちながら、プローブ型の超音波(BRANSON Advanced-Digital SONIFIER、14-21W、pulse=0.5/0.5、30-90sec.)で処理した。60sec.処理後も目視で不溶粉末が確認されるときは、さらにバス型超音波(BRANSONIC、ULTRASONIC
CLEANER)を30sec.かけた後、再度プローブ型超音波で30-60sec.処理を行った。一定時間放置した後、加温を止め、一昼夜以上静置して得られた白色固体を吸引ろ過(ろ紙No.5C)した。少量のメタノールで洗浄し、白色固体を回収し、減圧乾燥後、重量を測定した。この得られた白色固体は、1g/mlになるようにメタノールで溶解し、前述のHPLC測定条件で組成を分析した。結果を以下の表4に示す。
【0034】
更に、この固体0.1-0.2mgに500μlの超純水を加えて水分散し(バス型超音波30sec.)、水分散溶液1滴を試料台上の雲母板にのせ、減圧乾燥後、オスミウムまたは白金でコーティングし、走査電子顕微鏡にて観察した。図8に、電子顕微鏡写真の一部を示す。測定倍率10,000倍、または5,000倍の画面上で有機チューブ1本ごとにチューブ長方向に垂直となる補助線上での外径を読み取り、写真画面上のスケールの長さに基づいて換算した。なお、このときサンプルごとに50本以上の有機ナノチューブの外径を測定した。なお、このときサンプルごとに50本以上の有機ナノチューブの外径を測定した。
【0035】
図9(1)〜図9(6)は、それぞれ、サンプルNo.1〜16の有機ナノチューブ外径の分布を示すものであり、50nm刻みで集計した結果を示している。
図10は、これらの図を基にして、全サンプルにおける、ミリスチン酸/(オレイン酸+ミリスチン酸)のHPLC面積比換算結果と有機ナノチューブ外径の関係を示すものである。
【0036】
また、図9(1)〜図9(6)から得られた、各サンプルにおける最多域**(各図において、最多であった範囲)の外径を下記の表4に示す。
なお、同表中に記載した、ミリスチン酸誘導体及びオレイン酸誘導体の含有率(%)*は、HPLC面積の総和に対しての各酸誘導体のHPLC面積を百分率(%)であらわしたものである。
更に、図11は、表4に示す結果に基づいて、HPLC面積比換算における、ミリスチン酸誘導体及びオレイン酸誘導体の混合比と、有機ナノチューブの最多域の外径の関係を表わしたものである。
【0037】
【表4】
【0038】
図11に示す結果から、HPLC面積で換算して、ミリスチン酸誘導体及びオレイン酸誘導体の総和に対して、ミリスチン酸誘導体が80%以上含有される条件下では、有機ナノチューブ外径分布を50nm刻みで集計した場合の最大本数である外径分布を、200nm〜750nmの範囲で制御可能であることが分かる。
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬、農薬、化粧品、機能性材料等の分野で重要な役割を果たす中空繊維状有機ナノチューブ材料の外径制御製造方法、及び該方法で得られる外径が制御された中空繊維状有機ナノチューブに関する。
【背景技術】
【0002】
β−D−グルコピラノシルアミンのアミノ基に長鎖不飽和脂肪酸をアミド結合させた誘導体は、中空繊維状有機ナノチューブの構成単位として用いることが出来る(特許文献1、2)。中空繊維状有機ナノチューブは、医薬、農薬、化粧品、機能性材料等の分野で新たな市場を開拓すると期待されている重要な材料である。また、中空繊維状有機ナノチューブは、その構成単位である脂質分子の構造により、その外径が異なることが知られている(非特許文献1)。さらに、イオン性脂質分子を用いて中空繊維状有機ナノチューブを形成する場合には、溶液のイオン強度や水素イオン濃度、対アニオンの種類によって外径を制御できることが報告されている(非特許文献2、3)。
しかしながら、溶液のイオン強度や水素イオン濃度にその形成を影響されないβ−D−グルコピラノシルアミン誘導体組成物をはじめとする非イオン性脂質分子を用いた場合の中空繊維状有機ナノチューブの外径制御に関する研究例は報告されていない。
【0003】
一方、中空繊維状有機ナノチューブを医薬、農薬、化粧品、機能性材料等の分野で利用しようとした場合、中空繊維状有機ナノチューブの物質に対する包接能力や、包接した物質に対する放出能力、媒体中への分散性、媒体中での配向性、等、の性質が重要な因子となってくる。これらの包接、放出、分散、配向を決定する1つの要因は、中空繊維状有機ナノチューブの外径とそれに依存する内径の大きさである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3664401号公報
【特許文献2】特開2008−30185号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Chemical Reviews, 105,1401-1443 (2005)
【非特許文献2】Chemistry and Physics ofLipids, 62, 193-204 (1992)
【非特許文献3】Langmuir, 20, 5969-5977(2004)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、中空繊維状有機ナノチューブの構成単位として、非イオン性脂質分子であるβ−D−グルコピラノシルアミン誘導体組成物を用いた場合に、形成する中空繊維状有機ナノチューブの外径制御方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明者らは、中空繊維状有機ナノチューブの外径制御技術に関して鋭意検討した結果、β−D−グルコピラノシルアミンのオレイン酸誘導体とラウリン酸誘導体またはミリスチン酸誘導体を特定の比率で使用することにより、中空繊維状有機ナノチューブの外径を制御出来ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、少なくとも、下記式(1)で示されるオレオイル−β−D−グルコピラノシルアミンと、下記式(2)で示されるラウロイル−β−D−グルコピラノシルアミン及び下記式(3)で示されるミリストイル−β−D−グルコピラノシルアミンの一方もしくは両方を含む、β−D−グルコピラノシルアミン脂肪酸誘導体混合物を自己集合化処理して中空繊維状有機ナノチューブを製造する方法であって、混合した組成物を高速液体クロマトグラフィーの210nmの吸収波長で測定して得られるチャート上の相対面積比で、前記式(1)、前記式(2)、前記式(3)並びにその他のβ−D−グルコピラノシルアミン脂肪酸誘導体の総和を100%とした場合、前記式(2)で示されるラウロイル−β−D−グルコピラノシルアミン及び前記式(3)で示されるミリストイル−β−D−グルコピラノシルアミンの一方もしくは両方が80%以上含有される条件で混合することにより、得られる有機ナノチューブ外径分布を50nm刻みで集計した場合の最大本数である外径分布を、200nm〜750nmの範囲で制御することを特徴とする中空繊維状有機ナノチューブの製造方法である。
【0009】
【化1】
【化2】
【化3】
【0010】
また、本発明は、少なくとも、下記式(1)で示されるオレオイル−β−D−グルコピラノシルアミンと、下記式(2)で示されるラウロイル−β−D−グルコピラノシルアミン及び下記式(3)で示されるミリストイル−β−D−グルコピラノシルアミンの一方もしくは両方を含む、β−D−グルコピラノシルアミン脂肪酸誘導体混合物を自己集合化処理することにより得られる中空繊維状有機ナノチューブであって、混合した組成物を高速液体クロマトグラフィーの210nmの吸収波長で測定して得られるチャート上の相対面積比で、前記式(1)、前記式(2)、前記式(3)並びにその他のβ−D−グルコピラノシルアミン脂肪酸誘導体の総和を100%とした場合、前記式(2)で示されるラウロイル−β−D−グルコピラノシルアミン及び前記式(3)で示されるミリストイル−β−D−グルコピラノシルアミンの一方もしくは両方が80%以上含有される条件で混合することにより、得られる有機ナノチューブ外径分布を50nm刻みで集計した場合の最大本数である外径分布が、200nm〜750nmの範囲で制御されていることを特徴とする中空繊維状有機ナノチューブである。
【0011】
【化1】
【化2】
【化3】
【発明の効果】
【0012】
本発明の中空繊維状有機ナノチューブは、その外径を簡便安価な方法で制御可能であるため、物質に対する包接能力や、包接した物質に対する放出能力、媒体中への分散性、媒体中での配向性、等、の性質を制御可能であり、医薬、農薬、化粧品、機能性材料等の分野での利用に大きく貢献することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】オレオイル−β−D−グルコピラノシルアミン基準物質のHPLC測定結果を示す図
【図2】ラウロイル−β−D−グルコピラノシルアミン基準物質のHPLC測定結果を示す図
【図3】ミリストイル−β−D−グルコピラノシルアミン基準物質のHPLC測定結果を示す図
【図4】実施例1のサンプルNo.1〜15の電子顕微鏡写真の一部を示す図
【図5(1)】実施例1のサンプルNo.1〜3で得られた有機ナノチューブの外径分布を示す図
【図5(2)】実施例1のサンプルNo.4〜6で得られた有機ナノチューブの外径分布を示す図
【図5(3)】実施例1のサンプルNo.7〜9で得られた有機ナノチューブの外径分布を示す図
【図5(4)】実施例1のサンプルNo.10〜12で得られた有機ナノチューブの外径分布を示す図
【図5(5)】実施例1のサンプルNo.13〜15で得られた有機ナノチューブの外径分布を示す図
【図6】ラウリン酸/(オレイン酸+ラウリン酸)のHPLC面積比換算結果と有機ナノチューブ外径の関係を示す図
【図7】ラウリン酸誘導体及びオレイン酸誘導体の混合比と、有機ナノチューブの最多域の外径の関係を表わした図
【図8】実施例2のサンプルNo.1〜16の電子顕微鏡写真の一部を示す図
【図9(1)】実施例2のサンプルNo.1〜3で得られた有機ナノチューブの外径分布を示す図
【図9(2)】実施例2のサンプルNo.4〜6で得られた有機ナノチューブの外径分布を示す図
【図9(3)】実施例2のサンプルNo.7〜9で得られた有機ナノチューブの外径分布を示す図
【図9(4)】実施例2のサンプルNo.10〜12で得られた有機ナノチューブの外径分布を示す図
【図9(5)】実施例2のサンプルNo.13〜15で得られた有機ナノチューブの外径分布を示す図
【図9(6)】実施例2のサンプルNo.16で得られた有機ナノチューブの外径分布を示す図
【図10】ミリスチン酸/(オレイン酸+ミリスチン酸)のHPLC面積比換算結果と有機ナノチューブ外径の関係を示す図
【図11】ミリスチン酸誘導体及びオレイン酸誘導体の混合比と、有機ナノチューブの最多域の外径の関係を表わした図
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、前記式(1)で示されるオレオイル−β−D−グルコピラノシルアミンを、前記式(2)で示されるラウロイル−β−D−グルコピラノシルアミンおよび前記式(3)で示されるミリストイル−β−D−グルコピラノシルアミンの片方もしくは両方と混合した組成物を、アルコールに加熱溶解した後、一昼夜以上静置する自己集合化処理により得ることが出来る中空繊維状有機ナノチューブである。また、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)の210nmの吸収波長で測定されるチャート上の相対面積比で、前記式(1)、前記式(2)、前記式(3)並びにその他のβ−D−グルコピラノシルアミン脂肪酸誘導体の総和を100%とした場合、前記式(2)で示されるラウロイル−β−D−グルコピラノシルアミンもしくは前記式(3)で示されるミリストイル−β−D−グルコピラノシルアミンが、80%以上含有される条件で、有機ナノチューブ外径分布を50nm刻みで集計した場合に最大本数である外径分布が、200nm〜750nmの範囲で制御可能であることを特徴とする中空繊維状有機ナノチューブの製造方法である。
【0015】
β−D−グルコピラノシルアミン誘導体組成物の自己集合化処理に使用するのは、炭素数4以下のアルコール類であり、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールを使用することが好ましく、メタノールを使用することがより好ましい。これらアルコール類は単独で用いても、2つ以上を組み合わせて用いても良い。
【0016】
β−D−グルコピラノシルアミン誘導体組成物を、アルコールに加熱溶解する際の温度に限定はなく、好ましくは40℃以上90℃以下であり、さらに好ましくは50℃以上80℃以下である。β−D−グルコピラノシルアミン誘導体組成物溶解の際には、超音波処理により均一に分散溶解することが好ましい。
【0017】
アルコール溶液を静置し、β−D−グルコピラノシルアミン誘導体組成物の自己集合化をさせるときには、溶媒を冷却することで自己集合化を迅速に終了させることが可能であるが、一昼夜以上室温で静置し時間をかけて自己組織化させることが好ましい。
【0018】
自己集合化によって形成した中空繊維状有機ナノチューブは、ろ過によって回収し、少量のメタノールで洗浄し、減圧乾燥することで白色乾燥粉末として得ることが出来る。
【0019】
前記のようにして得られた中空繊維状有機ナノチューブは、HPLC分析によってβ−D−グルコピラノシルアミン誘導体に含まれる前記式(1)で示されるオレオイル−β−D−グルコピラノシルアミンを、前記式(2)で示されるラウロイル−β−D−グルコピラノシルアミンおよび前記式(3)で示されるミリストイル−β−D−グルコピラノシルアミンそれぞれの組成比を決定した。
【0020】
前記のようにして得られた中空繊維状有機ナノチューブは、走査電子顕微鏡で観察することにより、外径を測定することが出来る。
【実施例】
【0021】
以下、実施例を挙げて本発明を一層明らかにするが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(HPLC条件)
β−D−グルコピラノシルアミン誘導体組成物をメタノールに溶解し、次のHPLC測定条件で分析した。
ポンプ:島津LC-20AD
検出器:島津SPD-M20A
データ処理機:島津CBM-20A
カラム:Phenomenex ODS C18(2) 5μm
溶出溶媒:メタノール/12.5mM リン酸二水素ナトリウム水溶液(V/V)=80/20
カラム温度:40℃
検出波長:210nm
流速:0.9ml/min.
測定時間:0-40min.
【0022】
(オレオイル−β−D−グルコピラノシルアミン基準物質)
市販のオレイン酸クロリドは、天然油脂由来の製品であるため、その純度は50%〜70%とまちまちである。そこで本発明では、同一バッチで製造したオレオイル−β−D−グルコピラノシルアミンをオレオイル−β−D−グルコピラノシルアミン基準物質として、全ての操作に使用した。
本発明で使用したオレオイル−β−D−グルコピラノシルアミン基準物質の組成は、上記HPLC測定結果による相対面積比において、それぞれオレイン酸誘導体は57.6%、ラウリン酸誘導体は0.1%、ミリスチン酸誘導体は1.8%、リノール酸誘導体は12.4%、パルミチン酸誘導体は4.0%、ステアリン酸誘導体は1.3%である。
図1は、オレオイル−β−D−グルコピラノシルアミン基準物質のHPLC測定結果を示す図である。
【0023】
(ラウロイル−β−D−グルコピラノシルアミン基準物質)
本発明で使用したラウロイル−β−D−グルコピラノシルアミン基準物質の組成は、上記HPLC測定結果による相対面積比において、ラウリン酸誘導体は86.3%、またミリスチン酸誘導体は4.7%、オレイン酸、リノール酸、パルミチン酸、ステアリン酸の各誘導体はN.D.である。
図2は、ラウロイル−β−D−グルコピラノシルアミン基準物質のHPLC測定結果を示す図である。
【0024】
(ミリストイル−β−D−グルコピラノシルアミン基準物質)
本発明で使用したミリストイル−β−D−グルコピラノシルアミン基準物質の組成は、上記HPLC測定結果による相対面積比において、ミリスチン酸誘導体は77.4%、またラウリン酸誘導体は0.2%、リノール酸誘導体は10.2%、パルミチン酸、オレイン酸、ステアリン酸の各誘導体はN.D.である。
図3は、ミリストイル−β−D−グルコピラノシルアミン基準物質のHPLC測定結果を示す図である。
【0025】
(実施例1)
【表1】
【0026】
サンプルNo.1〜15を、上記の表1に示す製造条件で、以下のようにして作成した。
オレオイル−β−D−グルコピラノシルアミンとラウロイル−β−D−グルコピラノシルアミンの総量が0.35gになるように適宜とり、メタノールを7-8ml加え、ドライバスで液温を60℃に保ちながら、プローブ型の超音波(BRANSON Advanced-Digital SONIFIER、14-21W、pulse=0.5/0.5)、で60sec.処理した。次にバス型超音波(BRANSONIC,
ULTRASONIC CLEANER)を30sec.かけ、再度プローブ型超音波で60sec.処理を行った。一定時間そのままの温度で放置した後、加温を止め、一昼夜以上室温静置して得られた結晶を吸引ろ過(ろ紙No.5C)した。少量のメタノールで洗浄し、白色固体を回収し、減圧乾燥後、重量を測定した。この得られた結晶について、1g/mlになるようにメタノールで溶解し、前述のHPLC測定条件で組成を分析した。結果を以下の表2に示す。
【0027】
更に、この固体0.1-0.2mgに500μlの超純水を加えてバス型超音波30sec.処理することにより水分散溶液とし、溶液1滴を試料台上の雲母板にのせ、減圧乾燥後、オスミウムまたは白金でコーティングし、走査電子顕微鏡にて観察を行った。図4に、電子顕微鏡写真の一部を示す。
測定倍率10,000倍、または5,000倍の画面上で有機チューブ1本ごとにチューブ長方向に垂直となる補助線上での外径を読み取り、写真画面上のスケールの長さに基づいて換算した。なお、このときサンプルごとに50本以上の有機ナノチューブの外径を測定した。
【0028】
図5(1)〜図5(5)は、それぞれ、サンプルNo.1〜15の有機ナノチューブ外径の分布を示すものであり、50nm刻みで集計した結果を示している。
図6は、これらの図を基にして、全サンプルにおける、ラウリン酸/(オレイン酸+ラウリン酸)のHPLC面積比換算結果と有機ナノチューブ外径の関係を示すものである。
【0029】
また、図5(1)〜図5(5)から得られた、各サンプルにおける最多域**(各図において、最多であった範囲)の外径を下記の表2に示す。
なお、同表中に記載した、ラウリン酸誘導体及びオレイン酸誘導体の含有率(%)*は、HPLC面積の総和に対しての各酸誘導体のHPLC面積を百分率(%)であらわしたものである。
更に、図7は、表2に示す結果に基づいて、HPLC面積比換算における、ラウリン酸誘導体及びオレイン酸誘導体の混合比と、有機ナノチューブの最多域の外径の関係を表わしたものである。
【0030】
【表2】
【0031】
図7に示す結果から、HPLC面積で換算して、ラウリン酸誘導体及びオレイン酸誘導体の総和に対して、ラウリン酸誘導体が80%以上含有される条件下では、有機ナノチューブ外径分布を50nm刻みで集計した場合の最大本数である外径分布を、200nm〜750nmの範囲で制御可能であることが分かる。
【0032】
(実施例2)
【表3】
【0033】
サンプルNo.1〜16を、上記の表3に示す製造条件で、以下のようにして作成した。
オレオイル−β−D−グルコピラノシルアミンとミリストイル−β−D−グルコピラノシルアミンの総量が0.35-0.4gになるように適宜とり、メタノールを6-10ml加え、ドライバスで液温を60℃に保ちながら、プローブ型の超音波(BRANSON Advanced-Digital SONIFIER、14-21W、pulse=0.5/0.5、30-90sec.)で処理した。60sec.処理後も目視で不溶粉末が確認されるときは、さらにバス型超音波(BRANSONIC、ULTRASONIC
CLEANER)を30sec.かけた後、再度プローブ型超音波で30-60sec.処理を行った。一定時間放置した後、加温を止め、一昼夜以上静置して得られた白色固体を吸引ろ過(ろ紙No.5C)した。少量のメタノールで洗浄し、白色固体を回収し、減圧乾燥後、重量を測定した。この得られた白色固体は、1g/mlになるようにメタノールで溶解し、前述のHPLC測定条件で組成を分析した。結果を以下の表4に示す。
【0034】
更に、この固体0.1-0.2mgに500μlの超純水を加えて水分散し(バス型超音波30sec.)、水分散溶液1滴を試料台上の雲母板にのせ、減圧乾燥後、オスミウムまたは白金でコーティングし、走査電子顕微鏡にて観察した。図8に、電子顕微鏡写真の一部を示す。測定倍率10,000倍、または5,000倍の画面上で有機チューブ1本ごとにチューブ長方向に垂直となる補助線上での外径を読み取り、写真画面上のスケールの長さに基づいて換算した。なお、このときサンプルごとに50本以上の有機ナノチューブの外径を測定した。なお、このときサンプルごとに50本以上の有機ナノチューブの外径を測定した。
【0035】
図9(1)〜図9(6)は、それぞれ、サンプルNo.1〜16の有機ナノチューブ外径の分布を示すものであり、50nm刻みで集計した結果を示している。
図10は、これらの図を基にして、全サンプルにおける、ミリスチン酸/(オレイン酸+ミリスチン酸)のHPLC面積比換算結果と有機ナノチューブ外径の関係を示すものである。
【0036】
また、図9(1)〜図9(6)から得られた、各サンプルにおける最多域**(各図において、最多であった範囲)の外径を下記の表4に示す。
なお、同表中に記載した、ミリスチン酸誘導体及びオレイン酸誘導体の含有率(%)*は、HPLC面積の総和に対しての各酸誘導体のHPLC面積を百分率(%)であらわしたものである。
更に、図11は、表4に示す結果に基づいて、HPLC面積比換算における、ミリスチン酸誘導体及びオレイン酸誘導体の混合比と、有機ナノチューブの最多域の外径の関係を表わしたものである。
【0037】
【表4】
【0038】
図11に示す結果から、HPLC面積で換算して、ミリスチン酸誘導体及びオレイン酸誘導体の総和に対して、ミリスチン酸誘導体が80%以上含有される条件下では、有機ナノチューブ外径分布を50nm刻みで集計した場合の最大本数である外径分布を、200nm〜750nmの範囲で制御可能であることが分かる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、下記式(1)で示されるオレオイル−β−D−グルコピラノシルアミンと、下記式(2)で示されるラウロイル−β−D−グルコピラノシルアミン及び下記式(3)で示されるミリストイル−β−D−グルコピラノシルアミンの一方もしくは両方を含む、β−D−グルコピラノシルアミン脂肪酸誘導体混合物を自己集合化処理して中空繊維状有機ナノチューブを製造する方法であって、混合した組成物を高速液体クロマトグラフィーの210nmの吸収波長で測定して得られるチャート上の相対面積比で、前記式(1)、前記式(2)、前記式(3)並びにその他のβ−D−グルコピラノシルアミン脂肪酸誘導体の総和を100%とした場合、前記式(2)で示されるラウロイル−β−D−グルコピラノシルアミン及び前記式(3)で示されるミリストイル−β−D−グルコピラノシルアミンの一方もしくは両方が80%以上含有される条件で混合することにより、得られる有機ナノチューブ外径分布を50nm刻みで集計した場合の最大本数である外径分布を、200nm〜750nmの範囲で制御することを特徴とする中空繊維状有機ナノチューブの製造方法。
【化1】
【化2】
【化3】
【請求項2】
少なくとも、下記式(1)で示されるオレオイル−β−D−グルコピラノシルアミンと、下記式(2)で示されるラウロイル−β−D−グルコピラノシルアミン及び下記式(3)で示されるミリストイル−β−D−グルコピラノシルアミンの一方もしくは両方を含む、β−D−グルコピラノシルアミン脂肪酸誘導体混合物を用いて製造された中空繊維状有機ナノチューブであって、混合した組成物を高速液体クロマトグラフィーの210nmの吸収波長で測定して得られるチャート上の相対面積比で、前記式(1)、前記式(2)、前記式(3)並びにその他のβ−D−グルコピラノシルアミン脂肪酸誘導体の総和を100%とした場合、前記式(2)で示されるラウロイル−β−D−グルコピラノシルアミン及び前記式(3)で示されるミリストイル−β−D−グルコピラノシルアミンの一方もしくは両方が80%以上含有される条件で混合することにより、得られる有機ナノチューブ外径分布を50nm刻みで集計した場合の最大本数である外径分布が、200nm〜750nmの範囲で制御されていることを特徴とする中空繊維状有機ナノチューブ。
【化1】
【化2】
【化3】
【請求項1】
少なくとも、下記式(1)で示されるオレオイル−β−D−グルコピラノシルアミンと、下記式(2)で示されるラウロイル−β−D−グルコピラノシルアミン及び下記式(3)で示されるミリストイル−β−D−グルコピラノシルアミンの一方もしくは両方を含む、β−D−グルコピラノシルアミン脂肪酸誘導体混合物を自己集合化処理して中空繊維状有機ナノチューブを製造する方法であって、混合した組成物を高速液体クロマトグラフィーの210nmの吸収波長で測定して得られるチャート上の相対面積比で、前記式(1)、前記式(2)、前記式(3)並びにその他のβ−D−グルコピラノシルアミン脂肪酸誘導体の総和を100%とした場合、前記式(2)で示されるラウロイル−β−D−グルコピラノシルアミン及び前記式(3)で示されるミリストイル−β−D−グルコピラノシルアミンの一方もしくは両方が80%以上含有される条件で混合することにより、得られる有機ナノチューブ外径分布を50nm刻みで集計した場合の最大本数である外径分布を、200nm〜750nmの範囲で制御することを特徴とする中空繊維状有機ナノチューブの製造方法。
【化1】
【化2】
【化3】
【請求項2】
少なくとも、下記式(1)で示されるオレオイル−β−D−グルコピラノシルアミンと、下記式(2)で示されるラウロイル−β−D−グルコピラノシルアミン及び下記式(3)で示されるミリストイル−β−D−グルコピラノシルアミンの一方もしくは両方を含む、β−D−グルコピラノシルアミン脂肪酸誘導体混合物を用いて製造された中空繊維状有機ナノチューブであって、混合した組成物を高速液体クロマトグラフィーの210nmの吸収波長で測定して得られるチャート上の相対面積比で、前記式(1)、前記式(2)、前記式(3)並びにその他のβ−D−グルコピラノシルアミン脂肪酸誘導体の総和を100%とした場合、前記式(2)で示されるラウロイル−β−D−グルコピラノシルアミン及び前記式(3)で示されるミリストイル−β−D−グルコピラノシルアミンの一方もしくは両方が80%以上含有される条件で混合することにより、得られる有機ナノチューブ外径分布を50nm刻みで集計した場合の最大本数である外径分布が、200nm〜750nmの範囲で制御されていることを特徴とする中空繊維状有機ナノチューブ。
【化1】
【化2】
【化3】
【図6】
【図7】
【図10】
【図11】
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5(1)】
【図5(2)】
【図5(3)】
【図5(4)】
【図5(5)】
【図8】
【図9(1)】
【図9(2)】
【図9(3)】
【図9(4)】
【図9(5)】
【図9(6)】
【図7】
【図10】
【図11】
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5(1)】
【図5(2)】
【図5(3)】
【図5(4)】
【図5(5)】
【図8】
【図9(1)】
【図9(2)】
【図9(3)】
【図9(4)】
【図9(5)】
【図9(6)】
【公開番号】特開2012−17303(P2012−17303A)
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−156279(P2010−156279)
【出願日】平成22年7月9日(2010.7.9)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【出願人】(000003034)東亞合成株式会社 (548)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年7月9日(2010.7.9)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【出願人】(000003034)東亞合成株式会社 (548)
【Fターム(参考)】
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