説明

βグルカン組成物、健康補助食品及び健康食品

【課題】βグルカン高含有素材を複数組み合わせて、それらの効果が互いに相殺されることなく、また食味、食感等のよい、免疫増強効果においてそれぞれ単独で使用する場合に比較して優れた相乗効果を有する新規なβグルカン組成物、該βグルカン組成物からなる健康補助食品、及び該βグルカン組成物を配合した健康食品を提供する。
【解決手段】必須の成分として、(A)鹿角霊芝由来のβグルカンと、(B)大麦由来のβ1,3−1,4グルカンと、(C)黒酵母由来のβ1,3−1,6グルカンと、を含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、βグルカン組成物、該βグルカン組成物からなる健康補助食品、及び該βグルカン組成物を配合した健康食品に関するものであり、詳しくは、βグルカンの有する免疫賦活作用を相乗的に向上したβグルカン組成物、該βグルカン組成物からなる健康補助食品、及び該βグルカン組成物を配合した健康食品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
βグルカン類は免疫賦活作用など健康向上に資する効果を持つことが知られており、βグルカンを多く含有する微生物、菌類や植物、あるいはその抽出物等が健康補助食品等として、或いはこのようなβグルカンを含有させた健康食品等として広く利用されている。
【0003】
βグルカンは食事として摂取する場合、ごく微量で効果を奏するというわけではなく、ある程度の摂取量を要するため、健康補助食品や健康食品としてより確実に作用せしめるためには、含有割合の高い素材が好ましい。βグルカン含有量の多い食品素材としては、例えば、茸では鹿角霊芝が知られ、乾燥原体中におよそ50%前後である。
【0004】
鹿角霊芝は茸類の中でも、特にβグルカン含有量が多く、生活習慣病等の改善に効果があるといわれており(特許文献1参照)、漢方薬として重用されてきた。また、その乾燥子実体は固いため、健康食品の原料としては、その粉末やエキス末が用いられる。そのままでは苦味が強いため味の調整を主たる目的として、通常、顆粒状または粉末状の食品とした場合は、その最終形態において全重量の9割以上を添加剤が占めるよう処方されている。
【0005】
また、大麦もβグルカンを含有していることが知られ、大麦βグルカンとして、大麦を粉砕し、温水抽出し、乾燥したものが食品素材や化粧品素材として実用化されている(特許文献2参照)。
【0006】
この大麦抽出生成物は乾燥重量中にβグルカンが濃縮され、そのβグルカンの構成糖の結合様式はβ−1,3結合及びβ−1,4結合が主体である。なお、粉末を単品で口に含むと粘り気が感じられる。大麦に含まれるβグルカンにはコレステロール低下作用、整腸作用、血糖値上昇抑制作用、免疫増強作用などの効果があるといわれている。
【0007】
微生物由来の素材では、たとえば黒酵母(Aureobasidium pullulans)を発酵させて得られた培養液から抽出・乾燥したものがある(特許文献3参照)。構成糖の結合様式はβ−1,3結合及びβ−1,6結合が主体であり、乾燥重量中のβグルカン含有量を70質量%以上としたものが実用化されている。黒酵母由来のβグルカンは免疫増強効果があるといわれている。
【0008】
βグルカンの作用機序については解明されていない部分が多いが、一般的に免疫増強作用に優れていることが知られており、これらのβグルカン類はそれぞれ分枝構造、組成、成分等に違いが認められるため、併用により高い効果が得られることが報告されている(特許文献4参照)。
【特許文献1】特許公開2001−131083号公報
【特許文献2】特許公開2001−323001号公報
【特許文献3】特許公開2004−49013号公報
【特許文献4】特許公開2005−307150号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、特許文献4では各種βグルカンの併用による免疫賦活作用の相乗的向上について確認されておらず、予想の域を出ていない。さらに、このように複数の機能性食品素材を組み合わせた場合には、互いの効果が逆に相殺されてしまうこともあり、具体的に相乗効果を示す組成は知られていなかった。
【0010】
従って、本発明の目的は、βグルカン高含有素材を複数組み合わせて、それらの効果が互いに相殺されることなく、また食味、食感等のよい、免疫増強効果においてそれぞれ単独で使用する場合に比較して優れた相乗効果を有する新規なβグルカン組成物、該βグルカン組成物からなる健康補助食品、及び該βグルカン組成物を配合した健康食品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意研究した結果、特定のβグルカンによる組み合わせ組成物により上記目的を達成し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
即ち、本発明のβグルカン組成物は、必須の成分として、(A)鹿角霊芝由来のβグルカンと、(B)大麦由来のβ1,3−1,4グルカンと、(C)黒酵母由来のβ1,3−1,6グルカンと、を含有することを特徴とするものである。
【0013】
また、本発明の健康補助食品は、上記のβグルカン組成物からなることを特徴とするものである。
【0014】
さらに、本発明の健康食品は、上記のβグルカン組成物を配合したことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、βグルカン高含有素材を複数組み合わせた効果が互いに相殺されることなく、また食味、食感等のよい、免疫増強効果においてそれぞれ単独で使用する場合に比較して優れた効果を有する新規なβグルカン組成物、該βグルカン組成物からなる健康補助食品、及び該βグルカン組成物を配合した健康食品を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明に使用される(A)成分としての鹿角霊芝由来のβグルカンは、特に限定されるものではなく、鹿角霊芝に含有されているβグルカンをそのまま、或いは抽出により濃縮したものを使用することができ、さらに特定のβグルカン類を選択的に抽出もしくは分離したβグルカンであっても差し支えない。
【0017】
(A)成分としての鹿角霊芝由来のβグルカンは、他の(B)成分や(C)成分との配合割合においてこれを特定する場合に基準とし、この場合、鹿角霊芝を由来とする全ての構造のβグルカン(例えば、β1,2グルカン、β1,3グルカン、β1,4グルカン、β1,6グルカン、β1,3−1,4グルカン、β1,3−1,6グルカン、及びこれらを主鎖として末端が修飾された構造のβグルカン等)の総質量を基準とする。
【0018】
(A)成分の由来となる鹿角霊芝としては特に限定されるものではなく、サルノコシカケ科に属する担子菌、霊芝(マンネンタケ)の1種であり、古くから不老不死の妙薬として珍重されてきた、鹿の角のような形状を有する、傘をもたないで枝状に伸びた担子菌であればよい。
【0019】
また、その形態も特に限定されるものではなく、鹿角霊芝原体乾燥粉末(例えば、40〜50質量%程度の総βグルカン含量の鹿角霊芝原体乾燥粉末を使用するのがよい。)を使用することもできるし、ここから熱水でβグルカンを抽出したものも使用することができ、これらに相当する市販品(例えば、「鹿角霊芝 王角 200メッシュ」、「鹿角霊芝 王角 抽出処理粉末」:いずれも株式会社坂本バイオ製、など)も使用することができる。
【0020】
本発明に使用される(B)成分としての大麦由来のβ1,3−1,4グルカンとしては特に限定されるものではなく、大麦(好ましくはβ1,3−1,4グルカン含量の高い大麦種子を含む大麦)を粉砕した大麦粉砕物や、大麦の種子を精麦或いは搗精したときの糠やフスマなど、大麦に含まれるβ1,3−1,4グルカンを含有するものであればどのようなものでも使用することができ、さらにこれらから水やアルカリ性の水溶液などの溶媒にてβ1,3−1,4グルカン抽出したものも使用できる。
【0021】
抽出効率を上げるため酵素を使用してもよい。抽出物を乾燥させ、β1,3−1,4グルカン含有量が50〜80質量%程度の大麦抽出乾燥物を使用するのが好ましい。
【0022】
(B)成分は、好ましくは(A)成分100質量部に対して50〜200質量部、より好ましくは80〜180質量部、更に好ましくは100〜150質量部、の割合で使用することが、本発明のβグルカン組成物における免疫賦活作用を相乗的に向上するうえで好ましいものである。
【0023】
本発明に使用される(C)成分としての黒酵母由来のβ1,3−1,6グルカンとしては特に限定されるものではなく、黒酵母(Aureobasidium pullulans)が菌体外に産生する多糖体であるβ1,3−1,6グルカンを含有するものであればどのようなものでも使用することができるが、培養液をそのまま乾燥、あるいは多糖体を培養液から分離精製し、β1,3−1,6グルカン含有量を60〜95質量%程度とした、β1,3−1,6グルカンを含む培養上清精製乾燥物を用いるのがよい。
【0024】
(C)成分は、好ましくは(A)成分100質量部に対して10〜100質量部、より好ましくは15〜70質量部、更に好ましくは20〜50質量部、の割合で使用することが、本発明のβグルカン組成物における免疫賦活作用を相乗的に向上するうえで好ましいものである。
【0025】
本発明のβグルカン組成物の製造方法は何ら限定されるものではなく、必須の(A)成分である鹿角霊芝由来のβグルカン、(B)成分である大麦由来のβ1,3−1,4グルカン、(C)成分である黒酵母由来のβ1,3−1,6グルカンを常法により混合すればよく、例えば、これら(A)〜(C)成分について粉末化や抽出などの加工を施し、或いは施すと同時に混合し、或いは上記好ましい配合割合となるようにこれらの何れかの工程で各成分の供給源となる原料中の各成分含量を調整して混合し、若しくは各成分の供給源となる原料中の各成分含量を調整して混合した後、粉末化や抽出などの加工を施してもよい。
【0026】
本発明のβグルカン組成物には、上記の必須成分(好ましくは上記割合で含有される必須成分)を含有していればよく、本発明の効果を阻害しない範囲内で所望により通常、食品に用いられ得ることが知られている任意の成分、例えば、ビタミン類、甘味料、調味料、酸味料、保存料、香料、着色料、賦形剤、増量剤、結合剤、増粘剤、安定剤、乳化剤、pH調整剤等を配合することができる。
【0027】
その他、上記必須成分(A)〜(C)の供給源となる原料中に含まれる成分のうちの上記必須成分(A)〜(C)以外の成分(例えば、大麦セルロース(β1,4グルカン)、や、鹿角霊芝のβグルカン以外の成分など)は任意に含有されていて差し支えない。但し、好ましくは上記必須成分が上記割合で含有される範囲内においてである。なお、これら任意の成分は1種でも2種以上を併用しても差し支えない。
【0028】
次に本発明の健康補助食品について説明する。
本発明の健康補助食品は、上記本発明のβグルカン組成物からなるものである。好ましくは上記本発明のβグルカン組成物としての必須成分(A)〜(C)の合計質量として0.1〜100質量%、より好ましくは0.5〜50質量%、更に好ましくは2.0〜20質量%であるとよい。
【0029】
上記本発明のβグルカン組成物としての必須成分(A)〜(C)の合計質量が上記に満たないと、免疫賦活作用を効果的に得る点で不十分となる場合があり、一方、上記を超えてもそれ以上効果の向上が得られず、工業的な適性が低下する。
【0030】
本発明の健康補助食品の形態は何ら限定されるものではなく、例えば、粉末、顆粒、タブレット、ハードカプセルやソフトカプセルのようなカプセル剤、飲料(ドリンク)、飴等の形態とすることができ、これらの形態とする方法は常法によればよい。
【0031】
次に、本発明の健康食品について説明する。
本発明の健康食品は、上記本発明のβグルカン組成物を配合した健康食品である。即ち、上記本発明のβグルカン組成物を食品素材と混合して得ることができるものである。
【0032】
本発明の健康食品は、好ましくは上記本発明のβグルカン組成物としての必須成分(A)〜(C)の合計質量として0.01〜80質量%、より好ましくは0.5〜50質量%、更に好ましくは5〜20質量%となるように配合される。
【0033】
上記本発明のβグルカン組成物としての必須成分(A)〜(C)の合計質量が上記範囲に満たないと、免疫賦活作用を効果的に得る点で不十分となる場合があり、上記を超えてもそれ以上効果の向上が得られず、工業的な適正が低下する。
【0034】
本発明の健康食品は、上記本発明のβグルカン組成物を配合する食品としては特に制限されるものではなく、全ての食品に配合することができるが、例えば、油脂食品、穀類食品、菓子類、蓄肉加工品、水産加工品、乳製品、飲料、調味料・ソース類、スープ類、長期保存食品、粉末食品、薬用食品、離乳食等の育児用食品、流動食等の病人食、老人食、ダイエット食、サプリメント、電子レンジ加熱食品、電子レンジ調理食品、その他、ジャム、ピーナッツバター、ふりかけ等が挙げられる。
【0035】
具体的には、以下に限定されるものではないが、例えば、以下のような食品を例示することができる。
【0036】
油脂食品としては、マーガリン、ショートニング、マヨネーズ、クリーム、サラダオイル、揚油、ホイップクリーム、起泡性乳化脂、ドレッシング、ファットスプレッド、カスタードクリーム、ディップクリーム等が挙げられる。
【0037】
穀類食品としては、小麦粉を主成分とした食品、米類を主成分とした食品、米加工品、小麦加工品、トウモロコシ加工品、大豆加工品等が挙げられ、例えば、食パン、菓子パン、パイ・デニッシュ等のベーカリー製品、ホットケーキ、ドーナッツ、ピザ、天ぷら等、更にそれらのプレミックス、ビスケット、クッキー、スナック等の菓子類、生麺、乾麺、即席麺、カップ麺、うどん、蕎麦、中華麺、ビーフン、パスタ類等の麺類、炊飯米、餅、無菌米飯、レトルト炊飯米、上新粉、餅粉、団子、せんべい、あられ等の米製品が挙げられる。
【0038】
菓子類としては、上記穀類食品としての菓子類のほか、チョコレート、キャンディー・ドロップ、飴、チューインガム、焼き菓子、ケーキ、饅頭等の洋菓子又は和菓子等が挙げられる。
【0039】
畜肉加工品としては、ハム・ソーセージ、ハンバーグ等が挙げられる。
【0040】
水産加工品としては、ちくわ、かまぼこ、さつま揚げ、魚肉ソーセージ等が挙げられる。
【0041】
乳製品としては、バター、チーズ、アイスクリーム、ヨーグルト等が挙げられる。
【0042】
飲料としては、ビール、日本酒、ウイスキー、ブランデー、洋酒、焼酎、蒸留酒、発泡酒、ワイン、果実酒等のアルコール飲料、コーヒー、紅茶、日本茶、ウーロン茶、中国茶、ココア、炭酸飲料、栄養ドリンク、スポーツドリンク、コーヒードリンク、炭酸飲料、乳酸菌飲料、果汁・果実飲料等の飲料が挙げられる。
【0043】
調味料・ソース類としては、スパイス、タレ、焼肉のタレ、ドレッシング、ソース、味噌、醤油、カレー、ハヤシ等のルーが挙げられる。
【0044】
スープ類としては、コーンスープ、ポテトスープ、パンプキンスープ等が挙げられる。
【0045】
長期保存食品としては、水産物、畜肉、果実、野菜、キノコ、コーンビーフ、ジャム、トマト等の缶詰又は瓶詰め、冷凍食品等が挙げられ、また、カレー、シチュー、ミートソース、マーボ豆腐、食肉野菜混合煮、スープ、米飯等のレトルト食品が挙げられる。
【0046】
粉末食品としては、飲料、スープ、味噌汁等の粉末インスタント食品等が挙げられる。
【0047】
更に、本発明の健康食品には、その他にも、生活習慣病、胃腸病、便秘、アレルギー、更年期障害、骨粗鬆症、貧血、疲労、肌の老化などを予防したり、それらの症状を緩和することが知られている食品素材を添加することができる。
【実施例】
【0048】
以下に本発明の実施例を挙げ、本発明を更に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
〔実施例1、比較例1〜9〕
表1に示した配合のβグルカン組成物を調製し、ラットから採取した免疫系細胞に対するTNF−α産生誘導作用を評価した。試験方法は以下の通りである。結果を表1に示す。
【0049】
(試験概要)
ラットの腹腔にプロテオースペプトンを注入し免疫系の細胞を誘導し、腹腔に誘導された免疫系の細胞を採取してin vitro培養後、本発明のβグルカン組成物及び比較のためのβグルカン組成物を用いた被験サンプルを添加し、TNF−α産生誘導能を測定した。
【0050】
(被験サンプル1)
鹿角霊芝乾燥原体粉末(抽出加工品、株式会社坂本バイオ製「鹿角霊芝 王角 抽出処理粉末」:βグルカン総量50質量%、以下「原料A」という)、大麦由来βグルカン粉末(旭電化工業株式会社製「大麦ベータグルカンC60」:β1,3−1,4グルカン量65質量%、以下「原料B」という)及び黒酵母由来βグルカン(旭電化工業株式会社製「発酵ベータグルカン」:β1,3−1,6グルカン量90質量%、以下「原料C」という)をそれぞれ1mg/mlとなるよう5%牛胎児血清含有RPMI1640培地に溶解させた(以下、この原料Aの溶液を「溶液A」、原料Bの溶液を「溶液B」、原料Cの溶液を「溶液C」という)。
【0051】
これらの溶液を溶液A:溶液B:溶液C=5:5:1の容積比で混合した後、原料A、原料B、原料Cの合計量の濃度として100μg/mlとなるよう、同培地で希釈して被験サンプル1とした。
【0052】
被験サンプル1中の(A)成分(鹿角霊芝由来のβグルカン)100質量部に対する(B)成分(大麦由来のβ1,3−1,4グルカン)は130質量部であり、同じく(C)成分(黒酵母由来のβ1,3−1,6グルカン)は36質量部である。
【0053】
(被験サンプル2)
被験サンプル1で使用した溶液Aを、原料Aの濃度として100μg/mlとなるよう、5%牛胎児血清含有RPMI1640培地で希釈して被験サンプル2とした。
【0054】
(被験サンプル3)
被験サンプル1で使用した溶液Bを、原料Bの濃度として100μg/mlとなるよう、5%牛胎児血清含有RPMI1640培地で希釈して被験サンプル3とした。
【0055】
(被験サンプル4)
被験サンプル1で使用した溶液Cを、原料Cの濃度として100μg/mlとなるよう、5%牛胎児血清含有RPMI1640培地で希釈して被験サンプル4とした。
【0056】
(被験サンプル5)
霊芝(傘状形態のマンネンタケ)乾燥原体粉末(株式会社坂本バイオ試験生産品、βグルカン総量20質量%、以下「原料D」という)を1mg/mlとなるよう5%牛胎児血清含有RPMI1640培地に溶解させた(以下、この原料Dの溶液を「溶液D」という)。
【0057】
溶液Dを、原料Dの濃度として100μg/mlとなるよう、5%牛胎児血清含有RPMI1640培地で希釈して被験サンプル5とした。
【0058】
(被験サンプル6)
被験サンプル1で使用した溶液Aと溶液Bを1:1の容積比で混合した後、原料A、原料Bの合計量の濃度として100μg/mlとなるよう、同培地で希釈して被験サンプル6とした。
【0059】
(被験サンプル7)
被験サンプル1で使用した溶液Aと溶液Cを1:1の容積比で混合した後、原料A、原料Cの合計量の濃度として100μg/mlとなるよう、同培地で希釈して被験サンプル7とした。
【0060】
(被験サンプル8)
被験サンプル1で使用した溶液Bと溶液Cを1:1の容積比で混合した後、原料B、原料Cの合計量の濃度として100μg/mlとなるよう、同培地で希釈して被験サンプル8とした。
【0061】
(被験サンプル9)
被験サンプル5で使用した溶液Dと、被験サンプル1で使用した溶液Bと溶液Cを、溶液D:溶液B:溶液C=5:5:1の容積比で混合した後、原料D、原料B、原料Cの合計量の濃度として100μg/mlとなるよう、同培地で希釈して被験サンプル9とした。
【0062】
(試験方法)
(免疫系の細胞の採取)
Wistarラット(8週齢、雄)を固定器に固定し、腹部をアルコールで消毒し、滅菌済みのバクトペプトン(DIFCO社製)10%水溶液を注射針が臓器に刺さらないように注意しながらラットの腹腔に10ml注入した。その後3日間飼育し、免疫系の細胞を誘導した。
【0063】
3日間経過後、ラットをエーテル麻酔により心停止させ、解剖台に固定した後、腹部をアルコールで消毒した。続いて滅菌済み5℃のリン酸緩衝液(日水製薬製、商品名:PBS(−))25mlを注射針が臓器に刺さらないように注意しながら腹腔に注入し、ラットの腹部をよくマッサージした。
【0064】
次に、アルコールで消毒した解剖器具を用いて、腹部を腹腔のリン酸緩衝液が漏れない程度に小さく切開し、パスツールピペットを用いて切開部位から腹腔中にたまった液体を吸い取り、概ね吸い取ったところで腹部を全開し、残った液をさらにできる限り吸い取った。これらの操作時は肝臓等の臓器を傷つけないように行なった。
【0065】
(免疫系の細胞の培養と被験サンプルの添加)
採取した腹腔浸出液に対し1000rpmで5分間の遠心沈降操作を行った。上清を捨て、赤血球除去用塩化アンモニウム溶液(0.017M Tris−HCl pH7.65、に塩化アンモニウムを0.75質量%加え滅菌した溶液)を9ml加え、ピペッティングでペレットをほぐし、室温で7分間放置した。
【0066】
次に、5%牛胎児血清含有RPMI1640培地(以下単に培地と記す)5mlを加え反応を停止させ、1000rpmで5分間遠心沈降操作を行った。このとき溶血が完全に起こり、ペレットが白くなっていることを確認した。
【0067】
上清を捨て、上記同様のリン酸緩衝液を10ml加えてピペッティングして細胞を洗浄した。1000rpmで5分間遠心沈降操作を行い、上清を捨て、この操作をもう一回繰り返した。
【0068】
ペレットに培地2〜5mlを加えて懸濁し、細胞数を計数した。この際、細胞は必ずしも免疫系の細胞だけではないが実験操作上の目安として全細胞数を計数した。計数した細胞を2×106個/mlになるよう培地を用いて調製し、96穴接着細胞培養用プレートに100μlずつ播き、37℃で3時間培養し、免疫系の細胞を接着させた。
【0069】
次に、各ウェル(well)を上記同様のリン酸緩衝液で3回洗浄し非接着細胞を除去した後、上記の被験サンプル1〜9をそれぞれ100μlずつ添加した。対照としては培地のみ100μlを添加した。
【0070】
再び3時間培養を行った後、培養上清を採取し、含まれるTNF−αの濃度をラットTNF−α測定キット(BIOSOURCE社製)を用いて測定した。結果を下記の表1に示す。
【0071】
【表1】

【0072】
表1に示したように、実施例1のβグルカン組成物は、ラットから採取した免疫細胞に対し、TNF−α産生を顕著に誘導し、免疫増強効果に優れるものであった。これに対しいずれの比較例も、免疫増強効果は大きくなく、また、鹿角霊芝を用いる実施例1は、鹿角霊芝ではない傘状の霊芝との違いにおいて、単に鹿角霊芝と傘状の霊芝の差よりも顕著に免疫増強効果があり、本発明のβグルカン組成物は(A)〜(C)の各成分の相乗効果により免疫増強効果に優れたものであることが明らかであった。
【0073】
〔実施例2、比較例10、比較例11〕
本発明の健康補助食品の例として、上記の被験サンプル1で使用した原料A、原料B、原料Cを、原料A:原料B:原料C=5:5:1の質量比で混合して実施例2のβグルカン組成物を得、これをそのまま本発明の健康補助食品1とした。
【0074】
また比較例として原料Aをそのまま比較のための健康補助食品2とし、原料Bをそのまま比較のための健康補助食品3とした。
【0075】
これらの健康補助食品1〜3について官能試験を実施した。
〔官能試験方法〕
上記健康補助食品1〜3それぞれのサンプルについて、10名のパネラーにより、茶さじ1/5程度の量を口に含んだ際に感じられる苦味および粘着感を評価した。
【0076】
10名のパネラーによる評価の分布を下記の表2に示す。尚、苦味および粘着感の評価は以下の評価基準に従って行った。
【0077】
(苦味の強さ)
5 食品としてそのままでは許容しがたい(非常に強い)
4 食品としてかなり強い苦味であり受容できる限度に近い(強い)
3 食品としてはやや強いが、許容できる(普通)
2 若干の苦味を感じるが食品としてまったく問題のない程度である(弱い)
1 ほとんど苦味を感じない(ほとんどない)
【0078】
(粘着性の強さ)
5 非常に強い
4 強い
3 普通
2 弱い
1 ほとんどない
【0079】
表2の結果から、実施例2の組成物は、構成要素が備える食味(苦味)又は食感(粘着感)の難点が改善されており、本発明は健康補助食品としても優れたものであることが明らかであたった。尚、比較例10における粘着性と比較例11における苦味は、それぞれ実施例2と同程度であった。
【0080】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
必須の成分として、
(A)鹿角霊芝由来のβグルカンと、
(B)大麦由来のβ1,3−1,4グルカンと、
(C)黒酵母由来のβ1,3−1,6グルカンと、
を含有することを特徴とするβグルカン組成物。
【請求項2】
前記(A)成分100質量部に対して、前記(B)成分が50〜200質量部、前記(C)成分が10〜100質量部である請求項1に記載のβグルカン組成物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のβグルカン組成物からなることを特徴とする健康補助食品。
【請求項4】
請求項1又は2に記載のβグルカン組成物を配合したことを特徴とする健康食品。

【公開番号】特開2007−254425(P2007−254425A)
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−83929(P2006−83929)
【出願日】平成18年3月24日(2006.3.24)
【出願人】(000000387)株式会社ADEKA (987)
【出願人】(398050261)株式会社坂本バイオ (11)
【出願人】(592156482)大峰堂薬品工業株式会社 (7)
【Fターム(参考)】