説明

βペプチド

ポリペプチドのβペプチド領域は、野生型タンパク質のαヘリックスの構造模倣物として役立ち得る。一つのタンパク質のαヘリックスは、しばしば、生物学的経路において標的タンパク質に結合し得るので、ヘリックス状のβペプチド領域を含有するポリペプチドは、この型のタンパク質−タンパク質結合を妨害するために使用され得る。結果として、ヘリックス状のβペプチド領域を含有するポリペプチドは、この型のタンパク質−タンパク質結合を伴う状態(例えば、ウイルス感染および細胞増殖)を処置するために使用され得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願への相互参照)
本願は、2004年4月21日に出願された米国仮出願第60/564,455号の利益を主張する。参照される出願の教示は、その全体が本明細書において参考として援用される。
【0002】
(資金助成)
本明細書において記載される研究は、完全にまたは部分的に、米国国立保健研究所の助成金GM59843およびGM65453によって資金助成された。合衆国政府は、本発明において一定の権利を有する。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
多数のタンパク質は、核酸、他のタンパク質、または高分子集合体を、部分的に露出したαへリックスを用いて認識する。ネイティブなタンパク質の折りたたみに関しては、このようなαへリックスは、通常、一次配列中でαヘリックスからも互いからも離れて存在し得る残基との広域の三次相互作用によって、安定化される。注目すべき例外(非特許文献1)はあるが、これらの三次相互作用の除去は、このαヘリックスを不安定化し、折りたたみもせず高分子認識において機能もしない分子を生じる(非特許文献2)。低分子に関連してαヘリックスの認識特性を再現(recapitulate)するかまたはおそらく改善さえする能力は、合成模倣物もしくはタンパク質の機能のインヒビターの設計(非特許文献3)またはプロテオミクス研究のための新たなツールに用途を見出すはずである。
【0004】
根本的に異なる二つのアプローチが、さもなくば構造をなさないペプチド配列にαヘリックス構造を与えるために取られてきた。一つのアプローチは、ヘリックス開始(helix initiation:非特許文献4)またはヘリックス伸張(helix propagation)に有利な改変されたアミノ酸または代理物を使用する(非特許文献5;非特許文献6;非特許文献7)。おそらく最大の成功は、長距離のジスフィルド結合を有するペプチドのiの位置とi+7の位置とを連結させて、ヘリックス構造が高温で保持される分子を生成することによって、実現された(非特許文献8)。第二のアプローチ(非特許文献3;非特許文献9)は、所与の認識配列を囲む広範囲の三次構造を短縮して、機能を有し得る最小の分子を生成することである。この戦略は、プロテインAのZドメイン(59個のアミノ酸)および心房性ナトリウム利尿ペプチド(28個のアミノ酸)の最小化されたバージョンを生成した。各々33個のアミノ酸および15個のアミノ酸に最小化されたこれらの二つのタンパク質は、高い生物学的活性を示した(非特許文献10;非特許文献11)。この成功にもかかわらず、一次配列全体に分散した残基によってαヘリックスのエピトープが安定化される多数の場合において、この短縮戦略の簡易で一般的な適用を予想することは困難である。
【非特許文献1】Armstrongら、「J.Mol.Biol.」、1993年、第230巻、p.284−291
【非特許文献2】ZondloおよびSchepartz、「J.Am.Chem.Soc.」、1999年、第121巻、p.6938−6939
【非特許文献3】Cunninghamら、「Curr.Opin.Struct.Biol.」、1997年、第7巻、p.457−462
【非特許文献4】Kempら、「J.Org.Chem.」、1991年、第56巻、p.6683−6697
【非特許文献5】AndrewsおよびTabor、「Tetrahedron」、1999年、第55巻、p.11711−11743
【非特許文献6】BlackwellおよびGrubbs、「Angew.Chem.Int.Ed.Eng.」、1998年、第37巻、p.3281−3284
【非特許文献7】Schafmeisterら、「J.Am.Chem.Soc.」、2000年、第122巻、p.5891−5892
【非特許文献8】Jacksonら、「J.Am.Chem.Soc.」、1991年、第113巻、p.9391−9392
【非特許文献9】Nygren、「Curr.Opin.Struct.Biol.」、1997年、第7巻、p.463−469
【非特許文献10】BraistedおよびWells、「Proc.Natl.Acad.Sci.USA」、1996年、第93巻、p.5688−5692
【非特許文献11】Liら、「Science」、1995年、第270巻、p.1657−1660
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
αヘリックスに対する構造アナログを生成する別のアプローチは、ヘリックス構造を形成するためのβペプチドの使用を伴う。そのようなβペプチドのアミノ酸含有量および環境条件に依存して、βペプチドは、種々の型のヘリックス構造またはシート様構造を形成し得る。ほとんどの場合において、これらのβペプチドは、非水性溶媒(例えば、メタノール)中でのみ、ヘリックスへと集合し、水性条件下で安定なヘリックスを形成しない。水性条件下で安定なヘリックスを形成するβペプチドは、3つのヘリックス面のうちの2つ(すべての可能な配列の位置のおよそ三分の二)で塩橋(salt bridge)を形成し得る側鎖の存在に依存し、それによって、存在し得るβアミノ酸を限定する。この理由によって、水性条件下でヘリックスを形成し、そして成分アミノ酸中でより大きな変異を可能にするβペプチドの必要性が存在する。また、タンパク質の代表的にαヘリックスに結合する領域と相互作用し得る(特に、特異性を有する)βペプチドを見出す必要性も存在する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(発明の要旨)
現在、水性条件下でヘリックス領域を有するβペプチド(ベータ−ペプチド)が調製され得、これはアミノ酸残基の三分の一しか塩橋を形成し得ず、そしてそのようなβペプチドが野生型タンパク質の模倣物として機能することが発見されている。例えば、実施例1は、複数のβペプチドが、水性緩衝液中に溶解される場合に顕著な14ヘリックス構造を有することを示す。実施例2は、βペプチドが、野生型タンパク質中の特定のαヘリックス(アルファ−ヘリックス)に対する模倣物として役立つことを、さらに示す。なぜならば、これらのβペプチドは、標的タンパク質上でαヘリックスと同じ位置に結合し得るからである。
【0007】
一実施形態において、本発明は、βペプチド領域を有するポリペプチドであり、このβペプチド領域は、第二のタンパク質のαヘリックスに結合する標的タンパク質の一部に結合し得るために十分にヘリックス状の構造領域を水溶液中で備え、ここで、このβペプチド領域の十分にヘリックス状の構造領域は、この十分にヘリックス状の構造領域中の三分の一のみの位置で塩橋を形成し得る(形成する)アミノ酸残基を含み、そして少なくとも二つのβアミノ酸残基は、この標的タンパク質と直接的に相互作用する側鎖を有する。
【0008】
別の実施形態において、本発明は、第二のタンパク質のαヘリックスに結合する標的タンパク質の一部に結合し得るために十分にヘリックス状の構造領域を水溶液中で備えるβペプチドであり、そしてここで、この十分にヘリックス状の構造領域は、この十分にヘリックス状の構造領域中の三分の一のみの位置で塩橋を形成し得るアミノ酸残基を含み、そして少なくとも二つのβアミノ酸残基は、この標的タンパク質と直接的に相互作用する側鎖を有する。
【0009】
さらに別の実施形態において、本発明は、水溶液中で14ヘリックスを形成し得るβペプチドであり;この14ヘリックスは、一連のみの塩橋を含み、そして少なくとも二つのアミノ酸残基は、標的タンパク質と直接的に相互作用する側鎖を有する。
【0010】
さらなる実施形態において、本発明は、構造式(I):
【0011】
【化3】

によって表される化合物であるか、またはその薬学的に受容可能な塩であり、ここで:
AおよびBは、存在しないか、または別個に、βアミノ酸であり;
各Cは、別個に、pH7で正に荷電した側鎖を有するβアミノ酸であり;
各DおよびEは、別個に、βアミノ酸であり;
各Fは、別個に、pH7で負に荷電した側鎖を有するβアミノ酸であり;
各Gおよび各Hは、別個に、βアミノ酸であり;
Iは、pH7で正に荷電した側鎖を有するβアミノ酸であるか、または、Lが存在しない場合、Iは存在せず;
JおよびKは、別個に、βアミノ酸であるか、または、Iが存在しない場合、JおよびKは存在せず;
Lは、pH7で負に荷電した側鎖を有するβアミノ酸であるか、またはLは存在せず;
Mは、存在しないかまたはβアミノ酸であり;そして
xは、正の整数であり、
ここで、A〜Mのうちの少なくとも二つは、標的タンパク質と直接的に相互作用する側鎖を有する。
【0012】
本発明はまた、本明細書において開示される化合物を含有する薬学的組成物を含み、ここで、この薬学的組成物は、薬学的に受容可能なキャリアおよび本発明の化合物を含有する。
【0013】
一実施形態において、本発明の化合物(ポリペプチド)は、一連の塩橋中に、β−Ornおよびβ−Glu以外に、少なくとも一個のアミノ酸残基を含有する。
【0014】
本発明は、本明細書において開示される化合物の(例えば、本明細書において開示される疾患または状態の処置のための)医薬における使用を、さらに包含する。加えて、本発明は、本明細書において開示される化合物の、本明細書において開示される疾患または状態の処置のための医薬の製造における使用を包含する。
【0015】
一実施形態において、本発明は、本発明の化合物によって第一のタンパク質と第二のタンパク質との間の相互作用を阻害する方法である。そのような阻害は、インビトロ(例えば、これらのタンパク質、またはこれらのタンパク質を含有する細胞が、本発明の化合物と接触させられる場合)またはインビボ(例えば、本発明の化合物が、これらのタンパク質の間の相互作用を阻害する必要がある被験体に投与される場合)のいずれかで起こり得る。
【0016】
別の実施形態において、本発明は、腫瘍細胞と本発明の化合物とを接触させることによって、または、腫瘍細胞の増殖を阻害する必要がある被験体に本発明の化合物を投与することによって、腫瘍細胞の増殖を阻害する方法である。そのような方法は、癌または別の過剰増殖性の疾患もしくは障害の処置に使用され得る。
【0017】
さらに別の実施形態において、本発明は、細胞と本発明の化合物とを接触させることによって、またはウイルス感染の処置(治療的処置および予防的処置を含む)を必要とする被験体に本発明の化合物を投与することによって、ウイルスによる細胞の感染を阻害する方法である。
【0018】
本発明は、βペプチドであるポリペプチド、またはβペプチド領域を備えるポリペプチドを提供し、これらは、水溶液中でヘリックス構造を保持する多様なアミノ酸残基を用いて調製され得る(例えば、実施例において記載される化合物1〜1065)。これらのポリペプチドは、タンパク質−リガンド相互作用の破壊(特に、タンパク質−タンパク質相互作用)において有用である。これらのポリペプチドの調製における融通性のために、これらのポリペプチドは、多数の相互作用(例えば、細胞の増殖(例えば、細胞の望ましくない増殖)または細胞の感染に関与する相互作用)を妨害するために設計され得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
(詳細な説明)
(定義)
本明細書において使用される場合、用語「結合(binding)」とは、二つの分子種の間の会合(association)または他の相互作用(例えば、特異的会合もしくは特異的相互作用)を指し、例えば、タンパク質−DNA相互作用およびタンパク質−タンパク質相互作用であるが、これらに限定されない。この会合は、例えば、タンパク質とそのDNA標的との間、レセプターとそのリガンドとの間、酵素とその基質との間であり得る。このような会合が、一つの分子がもう一方の分子と直接的に相互作用するように、二つの相互作用する分子種の各々の特異的部位を介して媒介されることが、企図される。結合は、構造的成分および/またはエネルギー性成分によって媒介され、後者は、反対の電荷を有する分子の相互作用からなる。
【0020】
本明細書において使用される場合、用語「結合部位」とは、別の分子との結合に直接的に関係する高分子の反応性の領域またはドメインを指す。例えば、タンパク質または核酸上の結合部位に言及する場合、各々もう一方の分子と相互作用する特異的なアミノ酸または核酸の存在の結果として結合が起き、そして、集合的に、「結合部位」として言及される。
【0021】
本明細書において使用される場合、用語「調節する」とは、二つの分子種の間の会合の変更(例えば、競合的または非競合的な様式で相互作用の特徴を変えることによって、生物学的因子がその標的と相互作用する有効性を変更すること)を指す。
【0022】
本明細書において使用される場合、用語「塩橋(salt bridge)」とは、反対に荷電した分子によって形成される安定化相互作用を指す。ポリペプチドに関して、塩橋は、反対の電荷を有する二つのアミノ酸残基の間で形成される。
【0023】
本発明は、水溶液中でヘリックス構造を保持するβペプチドであるポリペプチドまたはβペプチド領域を備えるポリペプチドを提供し、そして、広範なアミノ酸残基を用いて調製され得るが、水溶液中でヘリックス構造を保持し得る。代表的には、本発明のこれらのβペプチドまたはβペプチド領域は、βアミノ酸残基からなり、より代表的には、β−L−アミノ酸残基からなる。アミノ酸配列が本明細書において示される場合、その残基は、左から右へと読まれる場合、C末端からN末端へと進行する。
【0024】
一実施形態において、本発明のポリペプチドのβペプチド領域(特に、そのヘリックス領域)は、以下の配列を含む:
【0025】
【化4】

ここで、XおよびXは、別個に、正に荷電した側鎖を有するβアミノ酸残基であり、そして、XおよびX10は、別個に、負に荷電した側鎖を有するβアミノ酸残基であり;そして、
、X、X、X、X、およびXは、各々、別個に、βアミノ酸残基である。
【0026】
およびXの代表的な値としては、β−Lys、β−Orn、およびβ−アミノメチルアラニンが挙げられる。
【0027】
およびX10の代表的な値としては、β−Aspおよびβ−Gluが挙げられる。一実施形態において、XおよびXの両方がβ−Ornである場合、XおよびX10の少なくとも一つは、β−Gluではない。
【0028】
特定の実施形態において、X、X、X、X、X、およびXの二つは、標的タンパク質と直接的に相互作用する側鎖を有するβアミノ酸残基である。
【0029】
別の特定の実施形態において、X、X、X、X、X、およびXの少なくとも一つは、α炭素を含有する側鎖を有するβアミノ酸残基であり、ここで、このα炭素は、第二級炭素である。このようなアミノ酸残基の代表例は、β−Ile、β−Val、およびβ−Thrである。
【0030】
さらに別の特定の実施形態において、X、X、およびXの少なくとも二つ、またはX、X、およびXの少なくとも二つは、別個に、水素結合を形成し得る側鎖を有するβアミノ酸残基である。このようなアミノ酸残基の代表例は、β−Serおよびβ−Thrである。
【0031】
さらに特定の実施形態において、X、X、X、X、X、およびXの少なくとも一つは、そのアミノ基およびカルボニル基が6員環から垂れ下がっているβアミノ酸残基である。代表的には、このアミノ酸残基は、トランス−2−アミノシクロヘキサンカルボン酸である。
【0032】
上記のポリペプチドが、βアミノ酸残基に加えてアミノ酸残基(例えば、αアミノ酸残基)を含有する場合、このαアミノ酸残基は、そのポリペプチドにさらなる特性を与えるように選択され得る。一例において、このαアミノ酸残基は、そのポリペプチドを、特定の器官、組織、細胞、タンパク質、または他のリガンドに標的化するのを補助するために使用される領域を備える。別の実施形態において、このαアミノ酸残基は、細胞によるポリペプチドの取り込みを増強するために使用される。細胞による取り込みを増強するのに適したαアミノ酸領域としては、タンパク質伝達ドメイン(例えば、オクタ−α−(L)−アルギニンおよびTat誘導性領域の配列)が挙げられる。
【0033】
代表的には、本発明のポリペプチドは、βアミノ酸残基からなる。βアミノ酸残基からなるこのようなポリペプチド(例えば、αアミノ酸残基を欠くポリペプチド)は、本明細書においてβペプチドとして言及される。このβペプチドは、天然に存在するかまたは非天然に生じる側鎖(例えば、アルギニン、トリプトファンなどの側鎖)を有する、一つのβアミノ酸残基またはβアミノ酸残基の組み合わせを含有し得る。天然に存在する側鎖を有するβアミノ酸残基は、対応する天然に存在するアミノ酸残基の名前を使用して言及される。例えば、アスパラギン酸と同じ側鎖を有するβアミノ酸残基は、βアスパラギン酸、またはβ−Aspとして言及される。これらのβアミノ酸についてのキラル骨格炭素での立体化学的立体配置は、一般的に(S)である。
【0034】
一実施形態において、構造式(I)によって表される化合物:
【0035】
【化5】

の各Cは、別個に、β−Lys、β−Orn、β−Arg、およびβ−アミノメチルアラニンからなる群より選択される。
【0036】
別の実施形態において、各Fは、別個に、β−Gluおよびβ−Aspからなる群より選択される。特定の実施形態において、各Cは、別個に、β−Lys、β−Orn、β−Arg、およびβ−アミノメチルアラニンからなる群より選択され、そして各Fは、別個に、β−Gluおよびβ−Aspからなる群より選択される。別の特定の実施形態において、各Fがβ−Gluである場合、少なくとも一個のCは、β−Ornではない。
【0037】
構造式(I)の化合物について、D、E、G、およびHの少なくとも一つの出現は、有利なことに、α炭素を含有する側鎖を有するβアミノ酸残基であり、ここで、このα炭素は、第二級炭素である。このようなアミノ酸残基の例としては、β−Ile、β−Val、およびβ−Thrが挙げられる。
【0038】
一実施形態において、少なくとも一個の繰り返し単位中または隣接する繰り返し単位中の、DおよびGまたはEおよびHは、別個に、水素結合を形成し得る側鎖を有するβアミノ酸残基であり、例えば、β−Serおよびβ−Thrである。
【0039】
別の実施形態において、D、E、G、およびHの少なくとも一つの出現は、そのアミノ基およびカルボニル基が6員環から垂れ下がっているβアミノ酸残基(特に、トランス−2−アミノシクロヘキサンカルボン酸)である。
【0040】
代表的には、xは1〜5までの整数であり、より代表的には、xは1または2である。
【0041】
代表的には、構造式(I)によって表される化合物についての実施形態の各々において、D、E、G、およびHの少なくとも一つの出現は、標的タンパク質と直接的に相互作用する側鎖を有するβアミノ酸残基である。より代表的には、D、E、G、およびHの少なくとも二つは、標的タンパク質と直接的に相互作用する側鎖を有するβアミノ酸残基である。好ましい実施形態において、DおよびGの少なくとも一つの出現、またはEおよびHの少なくとも一つの出現は、標的タンパク質と直接的に相互作用する側鎖を有するβアミノ酸残基である。より代表的には、D、E、G、およびHは、以下になるように、選択される:1)各Dが正に荷電したβアミノ酸残基である場合、少なくとも一個のGは、中性または正に荷電したβアミノ酸残基である;2)各Dが負に荷電したβアミノ酸残基である場合、少なくとも一個のGは中性または負に荷電したβアミノ酸残基である;3)各Eが正に荷電したβアミノ酸残基である場合、少なくとも一個のHは中性または正に荷電したβアミノ酸残基である;4)各Eが負に荷電したβアミノ酸残基である場合、少なくとも一個のHは中性または負に荷電したβアミノ酸残基である;5)各Gが正に荷電したβアミノ酸残基である場合、少なくとも一個のDは中性または正に荷電したβアミノ酸残基である;6)各Gが負に荷電したβアミノ酸残基である場合、少なくとも一個のDは中性または負に荷電したβアミノ酸残基である;7)各Hが正に荷電したβアミノ酸残基である場合、少なくとも一個のEは中性または正に荷電したβアミノ酸残基である;そして、8)各Hが負に荷電したβアミノ酸残基である場合、少なくとも一個のEは中性または負に荷電したβアミノ酸残基である。
【0042】
D、E、G、およびHの少なくとも一つの出現がタンパク質と直接的に相互作用する場合、これらの値の残りは、上に示される値を一般的に有する(例えば、一つ以上は、第二級炭素であるα炭素を含有する側鎖を有し、水素結合を形成し得る側鎖を有し、および/または、トランス−2−アミノシクロヘキサンカルボン酸である)。タンパク質と直接的に相互作用するD、E、G、およびHは、代表的には、疎水性アルキルまたは芳香族の側鎖を有するアミノ酸残基(例えば、β−Phe、β−Trp、β−Ile、β−Leuなど)である。これらの側鎖はまた、非天然に生じ得る。
【0043】
(タンパク質結合性βペプチド)
本発明は、タンパク質に結合するポリペプチド、およびこれらのポリペプチドを作製するための方法を包含する。これらのポリペプチドの結合は、タンパク質−タンパク質相互作用および/またはタンパク質−リガンド相互作用を調節する。従って、いくつかの実施形態において、この結合は、リガンドとレセプターとの会合(または特異的な結合)を遮断する。このリガンドは、いずれかの別のタンパク質であってもよいが、任意の他の型の分子(例えば、化学的基質)であってもよい。本発明の一実施形態において、本発明のタンパク質結合性ポリペプチドの作製は、標的レセプタータンパク質へのリガンドタンパク質の結合にとって必須であるアミノ酸残基を同定する工程を包含する。いくつかの実施形態において、これらの必須な残基は、結晶学的研究に基づいて、別のタンパク質に結合するか別のタンパク質と相互作用するタンパク質またはタンパク質複合体の三次元モデルを使用して同定されるが、一方、他の実施形態においては、これらの必須な残基は、タンパク質の欠失変異体または置換変異体の研究によって同定される。次いで、タンパク質の結合に関連する残基は、これらの残基がこのポリペプチドの構造を維持するために必要ではない(例えば、塩橋の形成に関与しない残基)という条件下で、このポリペプチドの対応する位置で含められる。
【0044】
別のタンパク質に結合する任意のタンパク質の構造は、本発明のタンパク質結合性ポリペプチドを設計するために使用され得る。例としては、FosとJunとの間(KouzaridesおよびZiff、(1988)Nature 336,646−651);Bcl−2とBakとの間(Sattlerら、(1997)Science 275,983−986);CBP−KIXとCREB−KIDとの間(Radhakrishnanら、(1997)Cell 91,741−752);p53とMDM2(hDM2)(Kussieら、(1996)Science 274,948−953);およびタンパクキナーゼとタンパクキナーゼインヒビター(PKI)との間(Glassら、(1989)J Biol Chem 264,14579−84)のタンパク質−タンパク質相互作用に関与するようなヘリックス構造が挙げられる。いくつかの実施形態において、この結合は、コイルドコイルタンパク質構造および/またはロイシンジッパーを含む。
【0045】
特定の実施形態において、本発明のポリペプチドは、対応する野生型タンパク質の生物学的活性と類似するかまたは同じ生物学的活性を有するフラグメント、機能改変体、および改変された形態を含む。説明すると、本発明のポリペプチドは、標的タンパク質に結合して、その標的タンパク質の機能を調節(例えば、活性化または阻害)する。特定の場合において、このポリペプチドの標的タンパク質は、細胞の増殖または分化において役割を果たすことが知られる。従って、本発明のポリペプチドは、異常な細胞増殖または細胞分化と関連する障害(例えば、炎症、アレルギー、自己免疫疾患、感染性疾患、および腫瘍)を(治療的にまたは予防的に)処置するために使用され得る。特定の場合において、このポリペプチドの標的タンパク質は、ウイルスが細胞(例えば、哺乳動物細胞)への進入を獲得することにおいて役割を果たすことが知られる。従って、本発明のポリペプチドは、ウイルス性疾患(特に、細胞に感染する前に、ウイルスの表面上の標的タンパク質が細胞表面のタンパク質に結合しなければならないウイルス性疾患)を(治療的にまたは予防的に)処置するために使用され得る。本明細書において開示される化合物によって処置され得る疾患の例としては、HIV/AIDS、インフルエンザ、RSウイルス、SARS、エボラ、ヘルペス、B型肝炎、麻疹、水疱性口内炎、およびT細胞白血病が挙げられる。
【0046】
特定の実施形態において、本発明のポリペプチドは、本明細書において記載されるポリペプチドの保存的改変体をさらに含む。本明細書において使用される場合、保存的改変体とは、そのポリペプチドの結合能力または会合能力に実質的にも有害にも影響を及ぼさないアミノ酸配列の変更を含むポリペプチドを指す。置換、挿入、または欠失は、変更された配列が、そのポリペプチドと関連する機能または活性を妨害または破壊する場合、そのポリペプチドに有害効果を及ぼすと言われる。
【0047】
いくつかの実施形態において、これらの改変体は、上で列挙されるアミノ酸配列とわずかに異なるアミノ酸配列を所有するが、なお、化合物1〜1065に記載のポリペプチドと関連する特性と同一または類似の特性を有する。
【0048】
特定の実施形態において、保存的置換改変体は、化合物1〜1065に記載のポリペプチド配列と少なくとも90%(例えば、少なくとも95%、少なくとも98%、または少なくとも99%)のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を有する。そのような配列に関する同一性または相同性のパーセントは、本明細書において、公知のペプチドと同一である、候補の配列中のアミノ酸残基のパーセンテージとして定義される。この工程は、これらの配列をアラインメントして、必要であれば最大の相同性パーセントを達成するためにギャップを挿入した後で行われ、いずれの保存的置換も配列相同性の一部としてみなさない。N末端、C末端、もしくは内部の伸展、欠失、またはペプチド配列中への挿入は、相同性に影響を及ぼすものとして解釈されるべきではない。
【0049】
一実施形態において、本発明の化合物は、hDM2に結合する(例えば、好ましくはhDM2に結合する)。好ましい結合は、本明細書において、本発明の化合物が、列挙される標的タンパク質に対して最大の親和性(例えば、標的タンパク質に対して、別のタンパク質に対する親和性の10倍以上、100倍以上、または1000倍以上の親和性)を有することを意味するように定義される。本出願人らは、理論に縛られることを望まないが、hDM2への結合は、p53とhDM2との間の相互作用を阻害すると考えられている。
【0050】
別の実施形態において、本発明の化合物は、MycとMaxとの間の相互作用が阻害されるように、MycまたはMaxのいずれかに結合する。
【0051】
さらに別の実施形態において、本発明の化合物は、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、インフルエンザウイルス、RSウイルス、コロナウイルス(例えば、重症急性呼吸器症候群(SARS)に関連するコロナウイルス)、エボラウイルス、ヘルペスウイルス、B型肝炎ウイルス、麻疹ウイルス、水疱性口内炎ウイルス、およびT細胞白血病ウイルスと関連するウイルスのエンベロープタンパク質に結合する。例示的なタンパク質は、HIV由来のgp41である。本発明の好ましい化合物は、(特に、好ましくは)gp41に結合する。例えば、この結合は、二つ以上のgp41タンパク質の間の相互作用を阻害し得る。
【0052】
従って、本発明のポリペプチドは、以下を含有する分子を含む:化合物1〜1065のアミノ酸配列;その機能的フラグメント;このような配列のアミノ酸配列改変体であって、ここで、少なくとも一つの(αまたはβ)アミノ酸残基が、開示される配列のN末端またはC末端に挿入されている、アミノ酸配列改変体;別の残基によって置換されている、開示される配列のβアミノ酸配列改変体、または上記に定義されるようなそれらのフラグメント。企図される改変体は、そのタンパク質が、置換、化学物質、酵素、または天然に存在するアミノ酸の側鎖部分以外の側鎖部分(例えば、酵素または放射性同位元素のような検出可能部分)を用いる他の適切な手段によって、共有結合的に改変されている誘導体を、さらに含む。
【0053】
(化合物の合成および特徴づけ)
特定の実施形態において、本発明のポリペプチドは、当該分野において公知の技術(例えば、従来のメリフィールドの固相f−Mocまたはt−Boc化学作用:実施例1を参照のこと)を使用して化学的に合成され得る。あるいは、これらのポリペプチドは、他の化学合成(例えば、自動化された技術)によって生成され得る。
【0054】
特定の実施形態において、本発明の実施形態は、翻訳後修飾に対して類似の修飾をさらに含む。このような修飾としては、アセチル化、カルボキシル化、グリコシル化、リン酸化、脂質付加(lipidation)、およびアシル化が挙げられるが、これらに限定されない。結果として、修飾されたポリペプチドは、非アミノ酸エレメント(例えば、ポリエチレングリコール、脂質、多糖類または単糖類、およびリン酸)を含有し得る。ポリペプチドの機能性に対するこのような非アミノ酸エレメントの効果は、実施例において記載されるような方法によって試験され得る。
【0055】
特定の局面において、上記のポリペプチドの機能改変体または修飾された形態は、そのポリペプチドの少なくとも一部および一つ以上の融合ドメインを有する融合タンパク質を含む。そのような融合ドメインの周知の例としては、ポリヒスチジン、Glu−Glu、グルタチオンSトランスフェラーゼ(GST)、チオレドキシン、プロテインA、プロテインG、免疫グロブリン重鎖定常領域(Fc)、マルトース結合タンパク質(MBP)、またはヒト血清アルブミンが挙げられるが、これらに限定されない。融合ドメインは、望ましい特性を与えるように選択され得る。例えば、数種の融合ドメインは、アフィニティークロマトグラフィーによる融合タンパク質の単離のために、特に有用である。アフィニティー精製の目的のために、アフィニティークロマトグラフィーのための適切なマトリックス(例えば、グルタチオン結合樹脂、アミラーゼ結合樹脂、およびニッケル結合樹脂、またはコバルト結合樹脂)が使用される。このようなマトリックスの多くは、「キット」の形態(例えば、(HIS)融合パートナーに関して有用な、Pharmacia GST purification systemおよびQIAexpressTMsystem(Quiagen))で入手し得る。別の例として、融合ドメインは、上記のポリペプチドの検出を容易にするように選択され得る。このような検出ドメインの例としては、種々の蛍光タンパク質(例えば、GFP)、ならびに「エピトープタグ」(これは、通常は短いペプチド配列でありそれに対する特異的抗体が入手し得る)が挙げられる。特異的モノクローナル抗体が容易に入手し得る周知のエピトープタグとしては、FLAG、インフルエンザウイルス血球凝集素(HA)、およびc−mycタグが挙げられる。いくつかの場合において、融合ドメインは、プロテアーゼ切断部位(例えば、第Xa因子またはトロンビン)を有し、このプロテアーゼ切断部位は、適切なプロテアーゼがこの融合タンパク質を部分的に消化して、それによってその融合タンパク質からポリペプチドを切り離すことを可能にする。切り離されたポリペプチドは、次いで、その後のクロマトグラフィー分離によって、融合ドメインから単離され得る。特定の実施形態において、ポリペプチドは、インビボでこのポリペプチドを安定化させるドメイン(「安定化(stabilizer)」ドメイン)と融合される。「安定化」ドメインは、血清半減期を延長し、この血清半減期の延長は、破壊の減少のためか、肝臓によるクリアランスの低下のためか、または他の薬物動態学的作用のためかに関わらない。免疫グロブリンのFc部分との融合は、広範なタンパク質に望ましい薬物動態学的特性を与えることが知られている。同様に、ヒト血清アルブミンへの融合は、望ましい特性を与え得る。
【0056】
本発明の化合物の14ヘリックスの特徴の程度は、種々の生物物理学的方法を使用して評価され得る。14ヘリックス構造は、残基(i)でのアミドの陽子と残基(i+2)での骨格のカルボニルとの間の水素結合の結果として、3残基離れた側鎖の全てが、そのヘリックスの同じ面上に現れることによって特徴付けられる。顕著な14ヘリックス構造を有する化合物は、211〜215nmで最小楕円率(ellipticity minima)、195〜198nmで最大楕円率(ellipticity maxima)、および200〜202nmで楕円率ゼロ(zero ellipticity)を示す、円偏光二色性(CD)スペクトルによって同定される。14ヘリックス構造のパーセンテージは、211〜215nmでの平均残基楕円率(mean residue ellipticity)に基づいて決定される。代表的には、本発明の化合物は、測定されたCD分光学によると、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、または少なくとも70%のヘリックス構造を有する。あるいは、14ヘリックス構造の存在は、NMR技術(代表的には、2次元NMR技術(COSY、TOCSY、NOESY、ROESY)を使用して測定され得る。これらのNMR技術は、例えば、陽子間のスルースペース相関(through space correlation)およびスルーボンド相関(through bond correlation)を調べる。14ヘリックスの場合、スルースペース相関は、CαH(i)とCβH(i+3)との間、およびCH(i)とCβH(i+3)との間であると予測される。共鳴の重複に起因して、一つのNMRスペクトルで全てのこのような相関を観察することは可能でないかもしれない。一般的に、スルースペース相関が観察され、14ヘリックス構造と一致しない共鳴が観察されない場合に、14ヘリックス構造が存在する。
【0057】
(結合パートナーを同定する方法)
本発明は、本発明のポリペプチドの結合パートナーの単離および同定において使用するための方法を提供する。いくつかの実施形態において、本発明のポリペプチドは、潜在的な結合パートナーと本発明のポリペプチドとの会合を可能にする条件下で、潜在的な結合パートナーまたは細胞の抽出物もしくは画分と混合される。混合の後で、本発明のポリペプチドと会合したペプチド、ポリペプチド、タンパク質、または他の分子は、この混合物から分離される。本発明のポリペプチドと結合した結合パートナーが、次いで、取り除かれてさらに分析され得る。結合パートナーを同定および単離するために、全ポリペプチドが使用され得る。あるいは、上記の結合ドメインを備えるポリペプチドのフラグメントが使用され得る。
【0058】
本明細書において使用される場合、「細胞抽出物」とは、溶解されたかまたは破壊された細胞から作製される調製物または画分を指す。細胞の抽出物を得るために、種々の方法が使用され得る。細胞は、物理学的破壊方法または化学的破壊方法のいずれかを使用して破壊され得る。物理学的破壊方法の例としては、音波粉砕および機械的剪断が挙げられるが、これらに限定されない。化学的溶解方法の例としては、洗剤溶解および酵素溶解が挙げられるが、これらに限定されない。当業者は、本方法における使用のための抽出物を得るために、細胞抽出物を調製するための方法を容易に適合させることができる。
【0059】
一旦細胞の抽出物が調製されると、この抽出物は、本発明のポリペプチドとその結合パートナーとの会合が起こり得る条件下で、本発明のポリペプチドと混合される。種々の条件が使用され得るが、代表的には、ヒト細胞の細胞質中で見出される条件によく似ている条件である。容量オスモル濃度、pH、温度、および使用される細胞抽出物の濃度のような事項は、上記のポリペプチドとその結合パートナーとの会合を最適化するように変更され得る。
【0060】
適切な条件下で混合された後、結合した複合体は、この混合物から分離される。この混合物を分離するために種々の技術が使用され得る。例えば、本発明のポリペプチドに特異的な抗体が、この結合パートナー複合体を免疫沈降させるために使用され得る。あるいは、標準的な化学的分離技術(例えば、クロマトグラフィーおよび密度沈降遠心法(density−sediment centrifugation)が使用され得る。
【0061】
この抽出物中に見出される会合しない細胞成分の除去の後、結合パートナーは、従来の方法を使用して複合体から分離され得る。例えば、分離は、この混合物の塩濃度もしくはpHを変更することによって、または溶媒を変更する(例えば、水と混和性の有機溶媒が挙げられる)ことによって達成され得る。
【0062】
この混合された抽出物からの、会合した結合パートナー対の分離を補助するために、本発明のポリペプチドは、固体支持体に固定され得る。例えば、このポリペプチドは、ニトロセルロースのマトリックスまたはアクリルのビーズに結合され得る。固体支持体へのこのポリペプチドの結合は、この抽出物中で見出される他の成分からの、ペプチドに結合したパートナー対の分離を補助する。同定される結合パートナーは、一本鎖DNA分子またはタンパク質または二つ以上のタンパク質から構成される複合体のいずれかであり得る。あるいは、結合パートナーは、FlanaganおよびVanderhaeghen(1998)Annu.Rev.Neurosci.21,309−345、またはTakahashiら(1999)Cell 99,59−69の手順に従うアルカリホスファターゼ融合アッセイ;Takayamaら(1997)Methods Mol.Biol.69,171−184、またはSauderら、J.Gen.Virol.(1996)77,991−996の手順に従うFar−Westernアッセイを使用して同定され得るか、またはエピトープタグ化タンパク質もしくはGST融合タンパク質の使用を介して同定され得る。
【0063】
(スクリーニング、診断、および治療の用途)
本発明のポリペプチド(それらの改変体を含む)は、このポリペプチドが結合する結合部位と同じ結合部位に結合する因子を同定するための薬物スクリーニングのために、特に有用である。本発明のポリペプチドはまた、本発明のポリペプチドに結合するDNAもしくはタンパク質の存在を同定するため、および/またはそのようなDNAもしくはタンパク質のレベルを検出する診断の目的のために有用である。一つの診断の実施形態において、本発明のポリペプチドは、生物学的サンプル中の特定のDNAまたはタンパク質の存在を検出するために使用されるキットの中に含まれる。本発明のポリペプチドはまた、特定のDNAまたはタンパク質の存在に関連する疾患の処置における治療上の用途を有する。一つの治療の実施形態において、このポリペプチドは、DNAに結合して転写を促進または阻害するために使用され得るが、一方、別の治療の実施形態において、このポリペプチドは、タンパク質に結合して、そのタンパク質の阻害または刺激をもたらす。
【0064】
上記のように、ポリペプチドは、例えば細胞の増殖または分化ならびにウイルスの細胞への融合および感染に関与する標的タンパク質(gp41、Myc、hDM2、CBP、PKA、Bcl2タンパク質、Bcl−Xタンパク質、または前記のいずれかの改変体)に結合する。従って、特定の実施形態において、本発明は、異常な細胞増殖および異常な細胞分化と関連する障害を罹患する個体に治療有効量の上記のようなポリペプチドを投与することによって、その個体において癌を処置する方法を提供する。そのような障害の例としては、炎症、アレルギー、自己免疫疾患、感染性疾患、および腫瘍(癌)が挙げられるが、これらに限定されない。他の特定の実施形態において、本発明は、個体に治療有効量の上記のようなポリペプチドを投与することによって、ウイルス感染の処置を必要とする被験体においてウイルス感染を処置する方法を提供する。
【0065】
他の実施形態において、本発明は、有効量の本発明のポリペプチドを個体に投与することを介して、その個体において異常な細胞増殖および異常な細胞分化と関連する障害もしくはウイルス感染を予防するかまたはそのような障害もしくはウイルス感染の発症を軽減する方法を提供する。これらの方法は、動物(より特定には、ヒト)の治療的処置または予防的処置に特に指向される。用語「阻害」とは、当該分野において了解されており、状態(例えば、癌またはウイルス感染)に関係して使用される場合、当該分野においてよく理解されており、被験体において、その組成物を与えられない被験体と比較して、医学的状態(ここでは、癌)の症状の頻度を低下させること、またはその症状の発症を遅延させること、またはその症状を逆転させることを含む。従って、癌の阻害としては、例えば、統計学的および/または臨床的に有意な量で、例えば、未処置の患者と比較して、予防的処置を受ける患者において検出可能な癌性増殖物の数を減少させること、および/または、未処置のコントロールに対して、ある患者において検出可能な癌性増殖物の出現を遅延させることが挙げられる。感染の阻害としては、例えば、未処置のコントロールに対して、その感染の診断の数を減少させること、および/または、未処置のコントロールに対して、処置される患者においてその感染の症状の発症を遅延させることおよびその感染の症状を逆転させることが挙げられる。
【0066】
このような方法の特定の実施形態において、本発明の一つ以上のポリペプチドは、共に(同時に)投与されても、異なる時点に(連続的に)投与されてもよい。加えて、ポリペプチドは、癌を処置するための別の型の化合物(以下を参照のこと)と投与されてもよい。これらの二つの型の化合物は同時に投与されても、連続的に投与されてもよい。
【0067】
多様な従来の化合物が抗癌活性を有することが示されている。これらの化合物は、充実性腫瘍の縮小、転移およびさらなる増殖の予防、または悪性細胞の数の減少のための化学療法における薬剤として、使用されてきた。化学療法は、種々の型の悪性疾患の処置において有効であったが、多くの抗癌性化合物は、望ましくない副作用を誘発する。多くの場合において、二種以上の異なる処置が組み合わされる場合、これらの処置は、相乗作用的に作用し得、そして処置の各々の投薬量の減少を可能にし得、それによって、高い投薬量での各々の化合物によって惹起される有害な副作用を軽減し得る。他の例において、ある処置が効かない悪性疾患が、二種以上の異なる処置の併用治療に対して応答し得る。
【0068】
従って、主題のポリペプチドは、従来の抗癌化合物と共に投与され得る。従来の抗癌化合物としては、ほんの例示として以下が挙げられる:アミノグルテチミド、アムサクリン(amsacrine)、アナストロゾール、アスパラギナーゼ、bcg、ビカルタミド、ブレオマイシン、ブセレリン、ブスルファン、カンプトテシン、カペシタビン、カルボプラチン、カルムスチン、クロラムブシル、シスプラチン、クラドリビン、クロドロネート(clodronate)、コルヒチン、シクロホスファミド、シプロテロン(cyproterone)、シタラビン、ダカルバジン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ジエネストロール、ジエチルスチルベステロール、ドセタキセル、ドキソルビシン、エピルビシン、エストラジオール、エストラムチン、エトポシド、エキセメスタン、フィルグラスチム、フルダラビン、フルドロコルチゾン、フルオロウラシル、フルオキシメステロン、フルタミド、ゲムシタビン、ゲニステイン(genistein)、ゴセレリン、ヒドロキシ尿素、イダルビシン、イホスファミド、イマチニブ、インターフェロン、イリノテカン、イロノテカン(ironotecan)、レトロゾール(letrozole)、ロイコボリン、ロイプロリド(leuprolide)、レバミゾール(levamizole)、ロムスチン、メクロレサミン(mechlorethamine)、メドロキシプロゲステロン、メゲストロール(megestrol)、メルファラン、メルカプトプリン、メスナ、メトトレキサート、マイトマイシン、ミトーテン、ミトキサントロン、ニルタミド(nilutamide)、ノコダゾール(nocodazole)、オクトレオチド、オキサリプラチン、パクリタキセル、パミドロン酸、ペントスタチン、プリカマイシン(plicamycin)、ポルフィマー、プロカルバジン、ラルチトレキセド(raltitrexed)、リツキシマブ、ストレプトゾシン、スラミン(suramin)、タモキシフェン、テモゾロミド(temozolomide)、テニポシド(teniposide)、テストステロン、チオグアニン、チオテパ、チタノセン二塩化物(titanocene dichloride)、トポテカン、トラスツズマブ、トレチノイン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、およびビノレルビン。
【0069】
別の関連する実施形態において、本発明は、他の抗癌治療(例えば、放射線)と組み合わせる方法の実施を企図する。本明細書において使用される場合、用語「放射線」とは、光子、中性子、電子、または他の型のイオン化放射線による、腫瘍性細胞または被験体の任意の処置を含むことを意図される。そのような放射線としては、X線、γ放射線、または重イオン粒子(例えば、α粒子またはβ粒子)が挙げられるが、これらに限定されない。加えて、この放射線は、放射能性であってもよい。
【0070】
特定の実施形態において、本発明は、被験体におけるウイルス感染を処置する方法を提供する。多数のウイルスは、許容的な細胞へのウイルスの融合および進入の機構に関与している類似のタンパク質/糖タンパク質構造を共有する。本発明は、許容的な細胞へのウイルスの融合および/または進入を阻害するポリペプチドについてのスクリーニングの方法を提供する。例えば、このスクリーニング方法は、細胞表面に発現されるウイルスのエンベロープにおける一種以上の重要な進入中間体の形成を、試験ポリペプチドの存在下において、選択的に引き起こす工程、およびそのような中間体が形成されることまたは形成されないことを証明する工程を包含する。本発明の特定の実施形態は、ウイルスの進入に必要なgp41の構造および立体配座の形成を中断させ従ってHIVの進入を遮断するポリペプチドを生成するための方法に対して指向される。膜貫通タンパク質または膜貫通糖タンパク質が、ウイルスの進入のために必要とされる構造および複合体を形成する場合、本発明の方法は他のウイルスに対しても適用され得ることが理解される。このようなウイルスの一例は、エンベロープを有するウイルス(例えば、HIV)である。ウイルスの他の例としては、インフルエンザウイルス、RSウイルス、コロナウイルス、エボラウイルス、ヘルペスウイルス、B型肝炎ウイルス、麻疹ウイルス、T細胞白血病ウイルス、および水疱性口内炎ウイルスが挙げられるが、これらに限定されない。
【0071】
従って、特定の実施形態において、本発明の化合物はまた、単独で投与されても、または一種以上の抗ウイルス薬もしくはウイルス疾患の症状を軽減する薬剤と組み合わせて投与されてもよい。適切な坑ウイルス薬としては、以下が挙げられる:インターフェロン、プロテアーゼインヒビター、ビダラビン、ガンシクロビル(gancyclovir)、ヌクレオシドアナログの逆トランスクリプターゼインヒビター(例えば、AZT(ジドブジン)、ddI(ジダノシン)、ddC(ザルシタビン)、d4T(スタブジン(stavudine))、および3TC(ラミブジン))、非ヌクレオシド逆トランスクリプターゼインヒビター、ネビラピン、デルビルジン、サキナビル、リトナビル、インジナビル、ネルフィナビル、リマンタジン、ジドブジン、塩酸アマンタジン、リバビリン、およびアシクロビル。
【0072】
(投与および薬学的処方物)
本発明のポリペプチド(それらの改変体を含む)は、当該分野で周知のことであるが、処置されるべき疾患、その患者の年齢、状態、および体重に依存して、種々の形態で投与され得る。本明細書において開示される化合物(ポリペプチド)の有効量とは、部分的にまたは完全に、そして予防的にまたは治療的に、本明細書において開示される疾患または状態を処置する量である。例えば、これらのポリペプチドが経口投与されるべき場合、これらのポリペプチドは、錠剤、カプセル剤、顆粒、散剤、もしくはシロップとして処方され得;あるいは、非経口投与のためには、これらのポリペプチドは、注射物(静脈内、筋肉内、もしくは皮下)、滴下注入調製物、または坐剤として処方され得る。眼粘膜経路による投与のためには、これらのポリペプチドは、点眼剤または眼軟膏として処方され得る。これらの処方物は、従来の手段によって調製され得、さらに、望ましい場合、活性成分は、任意の従来の添加物(例えば、賦形剤、結合剤、崩壊剤、潤沢剤、矯味矯臭薬、可溶化剤、懸濁補助剤(suspention aid)、乳化剤、またはコーティング剤)と混合され得る。これらの投薬量は、患者の症状、年齢、および体重、処置されるかまたは予防されるべき障害の性質または重篤度、投与経路およびその薬物の形態に依存して変化するが、一般に、この化合物の0.01〜2000mgの一日の投薬量が、成人ヒト患者について推奨され、そして、これは、単一用量または分割用量で投与され得る。
【0073】
所与の患者において、処置の効力に関して最も効果的な結果を生じる正確な投与時間および/または薬剤の量は、特定の化合物の活性、薬物動態、およびバイオアベイラビリティ、患者の生理学的条件(年齢、性別、疾患の型および段階、一般的な身体的状態、所与の投薬量に対する応答性、医薬の型を含む)、投与経路などに依存する。しかし、上記のガイドラインが、処置を微調整するための基礎として使用され得る。そのような微調整とは、例えば、最適な投与時間および/または投与量を決定することであり、このことは、被験体をモニタリングして投薬量および/または時間を調整することからなる慣用的な実験しか必要としない。
【0074】
句「薬学的に受容可能なキャリア」とは、本明細書において使用される場合、薬学的に受容可能な材料、組成物、またはビヒクル(例えば、液体または固体の充填剤、希釈剤、賦形剤、溶媒、またはカプセル化材料)を意味する。各々のキャリアは、その処方物の他の成分と適合性であり、そして患者に対して有害ではないという意味で、「受容可能」でなければならない。
【0075】
本発明の方法において有用な処方物としては、経口投与、鼻投与、局所投与(口腔内投与および舌下投与を含む)、直腸投与、膣投与、エアロゾル投与、および/または非経口投与のために適する処方物が挙げられる。これらの処方物は、単位投薬形態において都合よく提示され得、そして調薬の分野において周知の任意の方法によって調製され得る。キャリア材料と組み合わされて単一投薬形態をもたらし得る活性成分の量は、処置されている受容者および投与の特定の様式に依存して変化する。キャリア材料と組み合わされて単一投薬形態をもたらし得る活性成分の量は、一般に、治療効果をもたらす化合物の量である。一般に、100%のうちで、この量は、活性成分の約1%〜約99%(例えば、約5%〜約70%、約10%〜約30%)の範囲である。
【0076】
経口投与のために適した処方物は、カプセル剤、カシェ剤、丸剤、錠剤、トローチ剤(香味付けされた基剤(通常、ショ糖およびアラビアゴムもしくはトラガカント)を使用する)、散剤、顆粒、または水性もしくは非水性の液体中の溶液もしくは懸濁液として、または水中油型もしくは油中水型の液体乳濁液として、またはエリキシル剤もしくはシロップとして、または香錠(不活性な基剤(例えば、ゼラチンおよびグリセリン、またはショ糖およびアラビアゴム)を使用する)として、および/またはうがい薬などの形態であり得、各々は、前もって決定される量の治療薬を、活性成分として含有する。化合物はまた、ボーラス剤、甜剤、パスタ剤として投与され得る。
【0077】
経口投与のための液体投薬形態としては、薬学的に受容可能な乳濁液、マイクロエマルジョン、液剤、懸濁液、シロップ、およびエリキシル剤が挙げられる。活性成分に加えて、液体投薬形態は、当該分野において一般的に使用される以下のような不活性な希釈剤を含有し得る:例えば、水もしくは他の溶剤、可溶化剤、および乳化剤(例えば、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、カルボン酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、油(特に、綿実油、ピーナッツ油、とうもろこし油、胚芽油、オリーブ油、ひまし油、および胡麻油))、グリセロール、テトラヒドロフリルアルコール、ポリエチレングリコール、およびソルビタンの脂肪酸エステル、ならびにこれらの組み合わせ。
【0078】
膣投与のために適した処方物としてはまた、適切であると当該分野において公知であるようなキャリアを含有する、ペッサリー処方物、タンポン処方物、クリーム処方物、ゲル処方物、パスタ剤処方物、発泡体処方物、またはスプレー剤処方物が挙げられる。治療薬の局所投与または経皮投与のための投薬形態としては、粉剤、スプレー剤、軟膏、パスタ剤、クリーム、ローション、ゲル剤、液剤、パッチ、吸入剤が挙げられる。活性成分は、滅菌条件下において、薬学的に受容可能なキャリア、および必要であり得る保存剤、緩衝剤、または噴霧剤と混合され得る。
【0079】
上記の治療薬は、代替的に、エアロゾルによって投与され得る。このことは、上記の化合物を含む、水性のエアロゾル、リポソーム調製物、または固体の粒子を調製することによって達成される。非水性(例えば、フッ化炭素噴霧剤)懸濁液が使用されてもよい。音波ネブライザーが好ましい。なぜならば、音波ネブライザーは、薬剤の剪断への暴露(これは、上記の化合物の分解をもたらし得る)を最小化するからである。通常は、水性エアロゾルは、従来の薬学的に受容可能なキャリアおよび安定剤と組み合わせた、薬剤の水性の溶液または懸濁液を処方することによって作製される。
【0080】
経皮パッチは、身体への治療薬の徐放送達を提供するさらなる利点を有する。このような投薬形態は、適切な溶媒中で、薬剤を溶解または分散させることによって作製され得る。吸収促進剤もまた、皮膚を通る治療薬のフラックスを増大させるために使用され得る。このようなフラックスの速度は、速度を調節する膜を提供することによって、またはポリマーマトリックスもしくはゲル中でペプチド模倣物を分散させることによって調節され得る。
【0081】
非経口投与のために適した本発明の薬学的組成物は、以下と組み合わせた、一種以上のポリペプチドを含有する:一種以上の、薬学的に受容可能な滅菌で等張性の水性もしくは非水性の、溶液、コロイド状溶液、懸濁液、または乳濁液、あるいは、使用の直前に滅菌の注射可能な溶液またはコロイド状溶液に再構成され得る滅菌の粉剤(これは、抗酸化剤、緩衝剤、静菌薬、意図されるレシピエントの血液との等張性をその処方物に与え得る溶質、または懸濁剤もしくは増粘剤を含み得る)。
【0082】
いくつかの場合において、薬物の効果を引き伸ばすために、皮下注射または筋肉内注射からのその薬物の吸収を遅延させることが望ましい。このことは、低い水溶性を有する結晶性または無定形の材料の液体懸濁剤の使用によって、達成され得る。この薬物の吸収速度は、従って、その薬物の溶解速度に依存し、この薬物の溶解速度もまた、結晶の大きさおよび結晶の形態に依存し得る。あるいは、非経口投与される薬物形態の吸収の遅延は、この薬物を、油のビヒクル中で溶解させるかまたは懸濁させることによって、達成され得る。
【0083】
これらのポリペプチドは、任意の他の適切な投与経路によって、治療のためにヒトまたは他の動物に投与され得る。そのような投与形態としては、以下が挙げられる:経口投与、鼻投与(例えば、スプレー剤による投与のような)、直腸投与、膣内投与、非経口投与、槽内投与、および口腔内投与および舌下投与を含む局所投与(例えば、粉末、軟膏、または点滴剤による投与のような)。
【実施例】
【0084】
さらに説明をせずとも、当業者は、前の記載および以下の例示的実施例を用いて、本発明の化合物を作製して利用し、そして請求される方法を実施し得ると考えられる。従って、以下の実施例は、本発明の好ましい実施形態を具体的に指摘し、そして、本開示の残りを限定するものとして決して構築されるべきではない。
【0085】
(実施例1)
(水中でのβペプチドの側鎖構造と14ヘリックスの安定性との間の関係)
(実験の設計およびホストペプチドの開発)14螺旋度(14 helicity)を所望の範囲へ増大させることが予測されたβペプチド1と比較して2つの変化を有する、βペプチド2(図1A)を設計した:αヘリックス状のホストのαペプチドについての一般的な実務に従って、β−ホモグリシン残基を、β−ホモバリン残基で置換し、そしてβ−ホモチロシン残基を、C末端へ移動した。水中でのβペプチド1およびβペプチド2のCDスペクトル(図1B)は、これらの変更の大きな効果を示し、214nmでの平均残基最小楕円率が78%減少した(βペプチド1およびβペプチド2について、各々、Θ214=−7,450および−13,320 deg cm−2dmol−1)。
【0086】
βペプチド2は、いくつかの理由のために、より広範囲のホスト−ゲスト分析のための、優れた基準ペプチドであった。第一に、βペプチド2は、およそ48〜67%の総ヘリックス含有量(これは、純変化量を検出するための感受性が最も高い領域内にある)を所有する。第二に、βペプチド2の位置3、位置6、および位置9のβホモアラニンは、側鎖の置換のための優れた地点を提供する。このメチル側鎖は、置換のために理想的であり、各々の置換の(i+3)隣および/または(i−3)隣は、メチル基に限定され、ゲスト側鎖−ホスト側鎖の相互作用は最小化される。第三に、これらの3つの位置への置換によって、別個に、3つの別個のヘリックス傾向の評価を行うことができる:一つはN末端近傍、一つは中心の位置、そして一つはC末端近傍である。
【0087】
(ホスト−ゲスト分析)βペプチド2を、多様なβアミノ酸の14ヘリックス傾向のホスト−ゲスト分析のための基準ペプチドとして使用した。この分析のために使用した28個のβペプチドは、ホストペプチドと、3つの位置の各々が9個の異なるタンパク質新生性(proteinogenic)側鎖の各々によって置換された27個の改変体とを表す。これらの側鎖は、機能性が広範囲で異なり、荷電性基、脂肪族基、極性基、および芳香族基を含んでいた。以下の考察において、用語「安定化」および「不安定化(destabilising)」を、他に記さない限り、βホモアラニン(ホストペプチド2中に存在する残基)を指して使用し、14螺旋度の変化のパーセントを、214nm付近での最小CDの強度に基づいて、ホストペプチドの14螺旋度の変化のパーセントと相対的に算出する。各々のペプチドを、中性のpHで25℃のPBC緩衝液中でのCDによって、広範囲の濃度にわたって分析した。また、9個のペプチドのサブセットを、分析用超遠心法(AU)によって特徴付け、オリゴマーの状態を決定した。AU分析のために選択された分子は、3つの位置の間で種々の置換を表すが、一方でまた、少し濃度依存的なCDスペクトルを有することが見出されたペプチドを含む。モノマーおよびダイマーの分子量に対するカーブフィッティング(curve fit)は、低分子量化合物の特徴として、同等に有効であったが、物質収支計算は、AUによって試験された全てのペプチドが、80〜400μMの範囲の濃度でモノマー性であったことを示す。
【0088】
(荷電性の側鎖は、位置依存的な方法で14ヘリックスの安定性を調節する)βホモグルタミン酸およびβホモリジンを、βペプチド2内の3つの位置の各々で別個に置換した。ペプチド2−K3、ペプチド2−K6、ペプチド2−K9、ペプチド2−E3、ペプチド2−E6、およびペプチド2−E9(化合物1〜6)についてのCDスペクトルを、図2A〜2Bに示す。予想と一致して、N末端付近(位置3)に位置される場合、βホモリジンは、14ヘリックス構造の程度を20%増大させ、βホモグルタミン酸は、14ヘリックス構造の程度を、31%減少させる。C末端付近(位置9)に位置される場合、βホモリジンは、14ヘリックス構造の程度を13%減少させ、βホモグルタミン酸は、14ヘリックス構造の程度を、21%増大させる。より中心的な位置(位置6)において、βホモリジンは、中程度に安定化性(15%増大)であり、そしてβホモグルタミン酸は、中性〜少し不安定化性である。
【0089】
(脂肪族の側鎖)βペプチド2の14ヘリックスの安定性に対する脂肪族の側鎖の効果を、次に試験した。ホスト−ゲスト研究は、第1の側鎖炭素で分枝した側鎖が14ヘリックス安定化性であるか否かの問題に、直接的に取り組む。イソ−プロピル側鎖(2−V3、2−V6、2−V9、化合物7〜9)、イソ−ブチル側鎖(2−I3、2−I6、2−I9、化合物10〜12)、およびsec−ブチル側鎖(2−L3、2−L6、2−L9、化合物13〜15)を使用して、総14ヘリックスに対する分枝の効果を試験した。
【0090】
2−V3、2−V6、2−V9、2−I3、2−I6、2−I9、2−L3、2−L6、および2−L9のCDスペクトルを、図2C〜2Eに示す。前の観察と一致して、βホモロイシンのsec−ブチル側鎖は、14ヘリックス不安定化性(位置3で12%まで)または中性(位置6および位置9で)のいずれかである。しかし、βホモバリンおよびβホモイソロイシンのイソ−プロピル側鎖およびイソ−ブチル側鎖は、全ての位置で14ヘリックス安定化性である。この効果は、中心の位置およびN末端の位置において最大であり、ここで、βホモバリン残基またはβホモイソロイシン残基は、平均残基最小楕円率を−13,320 deg cm−2dmol−1(ホストのβペプチド2について)から−17,440 deg cm−2dmol−1およびそれ以下(βペプチド2−V6について−19,130 deg cm−2dmol−1まで)へと低下させる。これらの値は、ホストペプチドに対して31〜44%の平均14ヘリックス構造の増加を表す。第1の側鎖炭素で分枝した脂肪族の側鎖の個々の置換について観察される一貫して大きな増加は、これらの残基が特に14ヘリックス促進性であることを直接的に確認する。
【0091】
(極性の側鎖)βアミノ酸の14ヘリックス傾向をさらに調査するために、2つの極性残基を置換のために選択した。βホモセリンのヒドロキシメチル側鎖、およびβホモスレオニンの1−ヒドロキシエチル側鎖が適しているようであり、異なる情況内における第一の側鎖炭素での分枝の効果を試験するさらなる利点を有した。ペプチド2−S3、ペプチド2−S6、ペプチド2−S9、ペプチド2−T3、ペプチド2−T6、およびペプチド2−T9(化合物16〜21)についてのCDスペクトルを、図2F〜2Gに示す。予期せぬことに、βホモセリン置換は、位置6および位置9で安定化性(各々、34%および24%まで)であるが、位置3では中性である。βホモスレオニンは、対照的に、全ての3つの位置で安定化性であり、214nm付近での平均残基最小楕円率を、2−T3について、14ヘリックス構造の41%の増大に対応して、−18,720 deg cm−2dmol−1まで低下する。βホモスレオニンによる置換による変化は、第1の炭素で分枝する他の側鎖について見られる変化と類似であり、このことは、これらの側鎖が特に14ヘリックス促進性であるというさらなる証拠を提供する。しかし、未分枝のヒドロキシメチル側鎖は、分枝した側鎖と同等またはそれ以上の程度まで安定化性であるようであり、この効果が位置依存性であるために、ヒドロキシル基を伴う別の安定化相互作用が存在し得る。
【0092】
(芳香族の側鎖)公知のタンパク質−タンパク質界面の広範囲の分析は、大きな疎水性残基が、より高い頻度で表面認識パッチにおいて生じることを示した。これらの残基はまた、一般に、タンパク質−タンパク質複合体を安定化する重要な一対の相互作用に関与する。従って、大きな疎水性残基を組み込む能力は、ペプチド模倣物およびタンパク質模倣物としてのβペプチドの使用にとって重要である。3つの脂肪族残基をすでに試験したので、大きな芳香族残基の14ヘリックス傾向を試験するために、βホモフェニルアラニンおよびβホモトリプトファンを、βペプチド2(化合物22〜27)中に置換した。芳香族置換を有するこれらのβペプチドについてのCDスペクトルを、図5H〜5Iに示す。ベンジル側鎖(フェニルアラニンの側鎖と類似)は、位置3および位置9で14ヘリックス中性であり、中心の位置で、14ヘリックス構造を10%のみ不安定化した。メチル−インドール側鎖(トリプトファンの側鎖に類似)は、位置3で中性であり、他の位置において、少し(17%まで)不安定化性であった。これらの結果は、大きな芳香族側鎖ですら、適度に安定なβペプチドの14ヘリックスに関連して許容されるという見通しを提供する。
【0093】
(静電気スクリーニング)デバイ−ヒュッケル理論は、イオン−イオンの静電気相互作用のエネルギーは、塩濃度(モル濃度)の平方根に負に比例するはずであることを述べる。前に、静電気相互作用によって安定化された14ヘリックス構造を有するβペプチドが、高濃度の塩の存在下において展開することを示した。このことは、上記の原理と一致した。静電気相互作用が本明細書において研究されたβペプチドの安定性に寄与するというさらなる証拠を提供するために、ペプチド2およびペプチド2−I6の構造に対するNaClの漸増濃度の効果をモニタリングした。その結果は、他の塩橋によって安定化されるβペプチドの結果と類似であり、静電気相互作用のスクリーニングが14ヘリックスを不安定化することを示した。ペプチド2およびペプチド2−I6についての曲線は、ほぼ平行であり、メチルからイソ−ブチルへの置換が14ヘリックスの折りたたみを静電気学とは無関係の様式で安定化すること、および、静電気相互作用がよくスクリーニングされた場合においてすら、イソ−ブチル側鎖は、14ヘリックス構造を安定化し得ることを含意する。従って、塩橋の効果と分枝した側鎖の置換の効果とは、無関係である。この観察は、14ヘリックスの折りたたみが関係せず、その結果このヘリックスの一つの部分の不安定化がそのヘリックスの残りの部分の安定性に影響を及ぼさないモデルと一致する。
【0094】
(βオリゴペプチドの立体配座分析)一般配列:アセチル−(βA)−βX−(βA)−NHCH、(m+n=11であり、ここで、βXは、位置3、位置6、位置9、および位置12で、βA、βL、βI、βV、βS、またはβTのうちの一つであった)を有する25個のβオリゴペプチドは、エネルギーが最小化されていた。これらのβオリゴペプチドの相対的エネルギーを、種々の開始立体配座(starting conformation)を使用して試験した。全ての残基についての3つの骨格二面角(φ、θ、ψ)を、最初に、C6(110゜、60゜、180゜)、C8(−66゜、−45゜、95゜)、βシート(180゜、180゜、180゜)、12ヘリックス(−90゜、90゜、−110゜)、または14ヘリックス(−155゜、60゜、−135゜)の立体配座に対応する値に設定した。これらの開始点を、全て、気相において最小化し、そしてそれらの水中での溶媒和のエネルギーを、Generalized Born/Surface Area(GB/SA)モデルを使用して、(この技術の前の適用は、同じ原理の等価の処方物を使用したが)ネイティブの折りたたみをデコイから区別する様式で算出した。最小化されたβペプチドエネルギーから、14ヘリックスがβオリゴペプチドの最小エネルギーの立体配座であり、12ヘリックスがその次に低いエネルギーの立体配座であるべきことが予測され、このことは、実験の観察と一致する。
【0095】
エネルギー最小化からのこれらの結果から、0Kでの各々のβペプチドの最小エネルギー構造が報告される。これらの結果から、単一βペプチドの立体配座についての相対的エネルギーを予測し得るが、そのエネルギーは、異なるペプチド間および異なる置換の間で真に比較可能ではない。比較のためのより一般的な基礎を得るために、25℃でGB/SA溶媒和モデルを使用するMonte Carlo(MC)刺激を、エネルギー最小化から得られた最小値の各々を開始立体配座として使用して行った。各々の刺激について、平衡期(equilibration period)は800万個の立体配置におよび、その後、データを収集し、さらに200万個の立体配置について平均化した。各々のMC集団の平均エネルギーから、14ヘリックスが、研究された全てのβオリゴペプチドについての最も安定な立体配座であることを確認する。12ヘリックスは、平均して、エネルギーが33kcal・mol−1高いが、なお安定であり、一方、全ての他の開始立体配座(C6、C8、およびβシート)は、他のより密な構造へ折りたたまれた。置換されたβペプチドについてのエネルギーを、刺激されたホスト(アセチル−(βA)12−NHCH)のエネルギーと比較することによって、βS置換およびβT置換が、これらの刺激中の14ヘリックスを最も安定化し、次にβV、次いでβI、βA、そしてβLが14ヘリックスを安定化することを明らかにした。
【0096】
(刺激されたβオリゴペプチドの構造的特性)各々の刺激されたβオリゴペプチドの14ヘリックス含有量は、構造特性(特に、水素結合集団および平均ねじれ角)を定量することによって、MC刺激のデータから直接的に概算し得る。重要なことに、全ての刺激にわたるN末端の水素結合の平均集団は39%のみであるが、一方、C末端の水素結合の平均集団は77%である。このことに基づいて、安定化作用は、N末端付近の位置でより顕著であることが予測される。この予測は、CDの結果と位置し、唯一の例外は、βS残基を含有するβオリゴペプチドである。出願人らはまた、研究されたβオリゴペプチドの各々の中の各置換部位付近の水素結合集団を比較して、位置(i)での置換を囲む(i−2→i)水素結合、(i−1→i+1)水素結合、および(i→i+2)水素結合の平均集団として、200万個の立体配置にわたって算出した。全ての場合において、中間の位置では小さい効果しか存在せず、このことは、おそらく、これらの位置では、全てがβAのペプチドにおいて、水素結合集団がすでに大きいからである。それでも、相対的な水素結合集団を比較することによって、いくつかの傾向が認められ得る。全てがβAペプチド内でのβLの置換は、位置3、位置6、および位置9での水素結合集団に対する効果をほとんどまたはまったく有さず、C末端の位置12での水素結合集団に対する効果を少し低下させた。対照的に、βI、βV、およびβSの単一置換は、N末端での水素結合集団の大きな増加およびC末端での少しの増加を示すが、一方、βTは、両方の末端で水素結合集団を中程度に増加した。これらの観察は、CDのデータと非常によく一致した。
【0097】
上記のMonte Carlo刺激は、完全な14ヘリックス立体配座内で、βSおよびβTの側鎖のヒドロキシル基は、(i+2)カルボニル酸素が利用可能である場合、それに水素結合し得ることを示す。内部の位置6および位置9で置換される場合、βSおよびβTは、各々、サンプルされた立体配置の68%および35%において、側鎖の水素結合を形成した。この観察は、βSが、完全な14ヘリックスに関連して安定化性のH結合をより形成し易いことを含意し、CDによって観察された、βS置換に対する予期せぬ安定化作用を説明し得る。
【0098】
上記の25個のペプチドのMC刺激の間の別の著しい構造的相違は、置換された位置での平均骨格θねじれ(N−C−C−C’)の相違である。βオリゴペプチドに関連して、βLについての平均θねじれ角(48゜)およびβSについての平均θねじれ角(49゜)は、同じ位置におけるβAについての値(52゜)と非常に類似しており、これら3つの値は、エネルギーが最小化されたジペプチドにおいて見出される最適なgaucheねじれ(60゜)から著しくはずれる。βI(60゜)およびβV(59゜)は、ねじれを、最適値の非常に近くまで促進するが、一方、βTは、中程度であるねじれ角(54゜)を有する。歪んだねじれは、螺旋軸の僅かな歪みを犠牲にして、(i)側鎖と(i+3)側鎖とのより好ましい相互作用を可能にするようであり、これは水素結合の距離に影響を及ぼさないようである。全体に、別々に置換されたオリゴ−βホモアラニンの水素結合集団およびねじれの幾何学は、CDのデータにおいて観察される一般的な傾向を説明するために役立つだけでなく、14ヘリックス傾向が残基間の相互作用から生じるらしいことを確認する。
【0099】
(考察)
観察されるCDの強度の広い範囲は、βアミノ酸の間での、14ヘリックス構造に対して正または負の強い熱力学的選択を示す。
【0100】
βホモリジンは、βペプチドの14ヘリックスの中心において、βホモグルタミン酸よりも14ヘリックス安定性である。αヘリックスのモデルにおいて、リジンは一貫してグルタミン酸よりヘリックス安定化性であるが、この差異が静電気学に起因するのか、何か他の本来備わっている側鎖の特性に起因するのかは不明である。
【0101】
非荷電性の側鎖の間で、βアミノ酸の14ヘリックス傾向は、対応するαアミノ酸のαヘリックス傾向に対して明確に対照的である。メチル側鎖(アラニン)は、αヘリックス促進性が最も高いものの一つであるが、本研究において14αヘリックス促進性が最も低い側鎖の一つである。同じことが、sec−ブチル側鎖(ロイシンおよびβホモロイシン)についても真実である。一方、中程度のαヘリックス傾向を有するイソロイシンのイソ−ブチル側鎖、非常に低いαヘリックス傾向を有するバリンのイソ−プロピル側鎖、および、やはり非常に低いαヘリックス傾向を有するスレオニンの1−ヒドロキシエチル側鎖は、全て、メチル側鎖と比較して14ヘリックス安定化性が高い。αヘリックスと14ヘリックスとについての個々の側鎖の傾向の間での広範囲の相違は、これらの二次構造の折りたたみが、非常に異なる生物物理学的力によって支配され得ることを含意し、本来備わっているヘリックス傾向の基礎となる機構を証明する。
【0102】
(第1の炭素で分枝する側鎖の安定化作用)1999年以来の観察は、第1の炭素で分枝するβアミノ酸が14ヘリックス安定化性であることを含意する。本研究は、すでに14ヘリックスである足場に関連する14螺旋度に対するメチル側鎖、イソ−プロピル側鎖、イソ−ブチル側鎖、およびsec−ブチル側鎖の相対的効果を試験し、第1の炭素で分枝する単一側鎖が14螺旋度全体に対して大きな安定化効果を有することを、直接的に実証する。別々に置換されるオリゴ−β−ホモアラニンペプチドの算出によってもこの効果は予測されるが、一方、そのような効果は、モノマーのβアミノ酸の延長された立体配座分析に対しては見られない。
【0103】
(大きな疎水性側鎖は、よく許容される)14ヘリックスに関連して大きな疎水性残基を(i、i+3)の位置に位置づけることは、高い親和性で標的に結合する潜在性を有する延長された連続性の疎水性表面を生成する。βホモバリンおよびβホモイソロイシンは、14ヘリックス促進性であり、そしてβホモロイシン、βホモフェニルアラニン、およびβホモトリプトファンの置換は、これらの大きな疎水性βアミノ酸が、中性であるか、またはβホモアラニンと比較して少しだけ不安定化性であることを明らかにする。この知見は、14ヘリックスのホストペプチドの強さおよび用途の広さを強調し、分子認識のための足場としての14ヘリックスのホストペプチドの適性を支持する。
【0104】
(分子認識のための足場)上記のホスト−ゲスト分析は、全体として、ペプチド2を分子認識のための優れた折りたたまれた足場として認める。ペプチド2は、現在の長さで、4本までの側鎖を直線配列で提示し得る。この足場は、6個の残基の増加(好ましい塩橋(salt−bridging)と電荷−微小双極子の相互作用とを保持するため)において容易に延長され得るか、または、βホモバリンを有する表面上でさらに置換され得、官能基の組み込みのためのさらに大きな表面積を生じ得る。
【0105】
(実験)
(一般)Fmoc保護されたαアミノ酸、PYBOP(登録商標)、HOBt、およびWang樹脂を、Novabiochem(San Diego,CA)から購入した。ジメチルホルムアミド(DMF)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、N−メチルモルホリン(NMM)、トリフルオ酢酸(TFA)、およびピペラジンを、American Bioanalytical(Natick,MA)から購入した。全ての他の試薬を、Sigma−Aldrichから購入した。殆どのFmoc−β−(L)−アミノ酸をアルント−アイシュテルト法15によって鏡像異性的に純粋なαアミノ酸前駆体から合成したが、特定のFmoc−β−(L)−アミノ酸を、Peptech Corp.(Cambridge,MA)から購入した。
【0106】
(βペプチド合成、マニュアルの手順)数種のβペプチドを、上部および底部にフリットされたガラスを有し、試薬の添加のための側手(sidearm)を有するガラス製のペプチド合成容器中(Ace Glass,Vineland,NJ)で、マニュアルで合成した。ペプチドを、30〜50μmoleのスケールで、Wang樹脂およびFmoc保護されたβアミノ酸モノマーを使用して、標準的なFmoc戦略を用いて合成した。Wang樹脂を、記載されるようにロードした26。ペプチドの伸張および切断を、本質的には記載されるように行った26
【0107】
(βペプチド合成、半自動化された手順)数種のβペプチドを、標準的なFmoc戦略を使用して、Symphony/Multiplexの自動ペプチド合成機(Protein Technologies,Tuscon,AZ)で合成した。ペプチドを、25μモルのスケールで、Wang樹脂を記載されるようにロードして26使用して合成した。ペプチド伸張の一サイクルは、以下の工程からなる:樹脂をN−メチル−2−ピロリドン(NMP)で洗浄し(3×30秒間)、20%のピペラジン/DMFで脱保護化(deprotect)し(1×2分間、2×8分間)、NMPで洗浄し(6×30秒間)、3当量の適切なβアミノ酸および3当量のPYBOP(登録商標)、3当量のHOBt、ならびに8当量のDIEAを用いて30分間カップリングし、NMPで1回洗浄し(1×30秒間)、6%(v/v)の無水酢酸、NMP中6%(v/v)のNMMを用いて20分間キャップし、次いで、NMPで洗浄した(2×30秒間)。βアミノ酸(3当量、75μmol)、PYBOP(登録商標)(39.0mg、75μmol)、およびHOBt(11.4mg、75μmol)を先に計量しておき、カップリングの直前に5mLのNMP中に溶解した。この試薬を上記のペプチド合成容器の側手から上記樹脂に加える直前に、ジイソプロピルエチルアミン(DIEA)(8当量、35μL)を添加した。半自動的に合成されたペプチドの切断を以下のように行った:上記樹脂を、NMPで洗浄し(8×30秒間)、塩化メチレンで洗浄し(8×30秒間)、N下で20分間乾燥させ、切断試薬(3%(v/v)の水、TFA中3%(v/v)のトリイソプロピルシラン)で2時間切断し、次いで、切断試薬中で一回洗浄した。切断されたペプチドを収集して、回転蒸発(rotary evaporation)によって濃縮し、HO/CHCN(1:1)中で再構成し、そしてHPLCおよびMALDI−TOF質量分光分析によって純度について分析した。
【0108】
(βペプチドの精製および特徴づけ)ペプチドを、逆相HPLCによって精製した。化合物の正体および純度を、分析的HPLCおよびMALDI−TOF(マトリックス支援式レーザー脱離イオン化飛行時間)質量分光分析によって、Voyager(Applied Biosystems)MALDI−TOF分光分析器で、337nmのレーザーでα−シアノ−4−ヒドロキシシンナミン酸(hydoxycinnaminic acid)マトリックスを使用して、評価した。この装置を、副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)(M+H=2093.1)およびアンギオテンシンI(M+H=1296.7)を使用して、キャリブレーションした。精製の後に、ペプチドを速やかに凍結乾燥し、−20℃で保ち、使用の直前に再構成した。
【0109】
(円偏光二色性)Aviv 202 CD分光分析器を用いて、25℃で2mmのパス長のクオーツセル(Hellma,Plainview,NY)を使用して、195nm〜260nmの間の円偏光二色性(CD)スペクトルを得た。凍結乾燥されたHPLC精製ペプチドをPBC緩衝液(NaOHを用いてpHを7.0に調整した、各1mMのリン酸、ホウ酸、およびクエン酸)中で溶解することによって、サンプルを調製した。このサンプルの濃度を、280nmでの吸光度を測定することによって決定した;この分析は、単一のβホモチロシンを含有するβペプチドの吸光係数が、βペプチド濃度を概算するために前に用いた単一のαチロシンを含有するαペプチドの吸光係数(280nmで1300M−1cm−1)と等価であることを仮定する。ペプチドを、PBC緩衝液中で80μMまで希釈し、次いで、一連の希釈を行って40μM、20μM、および10μMの溶液を生成した。各々のペプチド溶液の三回のスキャンを、2秒間の平均化時間および2nmの帯域幅で行った。これらのスキャンを平均化し、ブランク緩衝液のスペクトルを除算して補正されたスペクトルを得た。正確さおよび再現性を確実にするために、この全ての手順を独立して三回行い、それらの三回のスペクトルを平均化して、各々の濃度での各々のペプチドについての最終スペクトルを得た。いずれの工程においてもデータの平滑化は使用しなかった。CDシグナルを、以下の式を用いて、平均残基楕円率([Θ]、deg cm−2dmol−1)に変換した:
【0110】
【化6】

ここで、Ψは、未処理の楕円率(角度)であり、resは残基の数であり、lはパス長(デシメートル)であり、そしてcはモル濃度である。各々のCDサンプルの濃度を、分析の後で、UV吸光度測定を繰り返すことによって証明した。芳香族側鎖は、局所的な骨格立体配座に著しく依存する様式で、モデルのαヘリックス状ペプチドの遠紫外線のCDに寄与することが知られている。これらの寄与がβペプチドの14ヘリックスに対して相当に大きいか否かは未知であるが、C末端のβホモチロシンについての任意の将来の補正は、小さく、その一連の内で一様であり得る。ゲスト側鎖として使用されるβホモフェニルアラニン残基およびβホモトリプトファン残基からの寄与は、これらの残基を含有するβペプチドに関連する結論により著しく影響を及ぼし得るが、任意の将来の補正は、±5%より大きい規模のものではあり得ない。制約されたペプチドを用いる実験は、完全な14ヘリックス状の短いβペプチドは214nmでわずかΘ214=−20,000 deg cmdmol−1の平均残基最小楕円率を有し得るが、一方、より長いβペプチド(約15残基)はわずか−28,000 deg cmdmol−1の最小値を有し得る(置換された骨格炭素でSキラリティを有するアミノ酸について;Rキラリティはヘリックスの左右像を逆転させ、そして20,000 deg cmdmol−1またはそれより高い最大値が見られる)ことを示した。
【0111】
静電気学的スクリーニングの効果を、0〜2.25MのNaCl濃度での80μMのペプチドのCDスペクトルを得ることによって、モニターした。CDセル内でのペプチドのサンプルへの高塩緩衝液の段階的な添加と、その後の吸引および20分間の平衡化による混合によって、塩濃度を変化させた。25℃で2nmの帯域幅および5秒間の平均化時間を使用してスペクトルを得、結果を、塩濃度の累積変化、ペプチド濃度、および総容積について調整した。
【0112】
(分析用超遠心法)Beckman−Coulter(Fullerton,CA)製のOptima XLI分析用超遠心機を使用して、測定を行った。HPLC精製ペプチドをPBC緩衝液中で溶解して、25℃、50,000RPMで、Beckmanによって供給された6チャンネルの炭素−エポキシ混合のセンターピース中で、平衡状態まで遠心分離することによって、サンプルを調製した。14時間および16時間でのスキャンでの放射状濃度勾配の有意変化の非存在によって、平衡状態を評価した。このデータをIgor−Pro(登録商標)(Wavemetrics,Lake Oswego OR)を使用して単一の理想的な種についての式に当てはめることによって、分析した。その式は以下である:
【0113】
【化7】

ペプチドの偏比容を、簡易化のために、前に研究されたβペプチドについて算出された平均値(0.785cm/gm)と同じであると仮定した。分子量と基線の値との相互相関に起因して、カーブフィッティングは、この値の変動に対して非感受性であった。実際に、モノマーまたはダイマーのいずれかの分子量を仮定することによって、同等に好ましいカーブフィッティングを得ることができた。この曖昧さは、低分子量化合物の濃度プロフィールにおいて示される低い湾曲度の、不可避の結果である。モノマーをより高い程度に凝集した種から優占集合(dominant population)として区別するために、配列から算出された分子量の整数倍を使用して、カーブフィッティングを行った。これは、推定種の分子量を固定し、この推定種の分子量はまた、基線の値(濃度ゼロでの吸光度)を固定する。従って、正味の吸光度プロフィールを統合して、セル中の平均濃度を算出することができる。ここで、分子量をこれらのモノマーの分子量に固定することによって予測される平均濃度は、分子量をダイマーの値に固定することによって予測される平均濃度よりも高く、既知の濃度とより一致する。これは、より高い分子量が、より高い湾曲度(これは、同じデータセットについては、基線の値を増大し従って算出される平均濃度を低下させることによってのみ達成することが出来る)を予測するからである。これは、低分子量化合物と高分子量化合物との結合を研究するために以前に開発された、有用な物質収支基準を表す。計算値の誤差は、セル区画の外側半径の決定の不確定性と、カーブフィッティングアルゴリズムから報告される基線の値から生じる不確定性との合計を表す。
【0114】
(コンピューター分析)全てのジペプチド最小化を、ボンディングリスト(bonding list)が入力Zマトリックスから入手され、原子間の距離に基づいて再計算されるのではないように改変されたBOSS 4.5プログラムを用いて行った。オリゴ−βペプチド全ての計算を、溶媒についてのGB/SA処理を備えるMCPRO 1.68の開発用バージョンを用いて行った。本研究では終始、βペプチドのために高レベルのアブイニシオ計算に基づいて特別に開発された骨格のねじれのパラメーターが増補されたOPLS−AA力場を使用した。全ての場合において、ペプチド結合周囲のねじれ角(ω)を、最初に180°にセットしたが、自由に変化させた。骨格二面角が固定されているジペプチドの三次元ラマチャンドランプロットを例外として、全ての可能な自由度を、全ての計算において変化させた。収束問題(特に、非常に近接した非結合性接触を有する立体配座に関する収束問題)に起因して、ジペプチド最小化を、BFGSアルゴリズム、Fletcher−Powellアルゴリズム、およびPowellアルゴリズムを用いて三重に行い、結果として生じた最小エネルギーを有する配座異性体を使用した。オリゴペプチド最適化を、250段階の最急降下法による最小化で開始し、その後、収束が達成されるまで共役勾配法(conjugate gradient)アルゴリズムに切り替えた。この処理は、5つの場合については十分でなく、これらの場合においては、共役勾配法に切り替える前に5000の最急降下段階を使用して最適化しなければならなかった。全ての最小化について、カットオフは使用せず(すなわち、全ての非結合対を評価し)、そして収束基準を0.1 cal mol−1にセットした。W.C.StillのGB/SA溶媒和モデルを使用して、MC刺激を行った。
【0115】
(結論)本研究は、前例のない総14螺旋度を水中で有するβペプチドを明らかにした。これらのβペプチドを、合成的に入手し易く多様なβアミノ酸から作製した。これらのβペプチドは、折りたたみを達成するために環数の制約を必要としない。生成されたうちで最も14へリックス状のβペプチドである2−V6は、水溶液中で−19,130±340 deg cmdmol−1の214nmでの平均残基最小楕円率(MRE214)を有し、95%までの平均へリックス構造を示す。これは、メタノールまたはミセル中で会合(date)することが観察される最も14へリックス状のβペプチドについて観察される値と匹敵し、環状残基を有するβペプチドについての値にすら匹敵する。本研究において観察されるβアミノ酸の14へリックス傾向は、対応するαアミノ酸のαへリックス傾向と明確に対照的である。このデータは、他の証拠と共に、14へリックスの折りたたみが、αへリックスの折りたたみとは完全に異なる生物物理学的力によって支配されることを示す。最後に、本発明は、制約されないβアミノ酸は高次構造の14へリックスを水中で形成することが出来ないという推定が誤りであることを示し、そして、簡易な置換によって、多様な機能性がこれほど安定なヘリックスへと組み込まれ得ることを示す。
【0116】
(実施例2)
(p53−hDM2相互作用のヘリックス状βペプチドインヒビター)
hDM2は、インビボで、短いαヘリックスによって、ストレスに応答して細胞の運命を制御する転写因子であるp53の活性化ドメイン(p53AD)内で認識される。hDM2は、p53の機能を負に調節し、p53・hDM2相互作用の妨害は、重要なガン治療の目標である。p53ADの一つの面上の3個の残基(F19、W23、およびL26)は、結合エネルギーに対して大きく寄与する機能的エピトープを含む。ヘリックスの安定性および表面相補性を改善する、非天然のαアミノ酸によるp53ADベースのαペプチドの改変は、インビボでアポトーシスを活性化する強力なインヒビターを生じる。しかし、非αペプチド性インヒビターは、はるかに弱い。
【0117】
実験の設計は、初めに、ヘリックス面上の静電気学的なマクロ双極子(macrodipole)安定化と側鎖−側鎖の塩橋とに起因して水溶液中で顕著な14ヘリックス安定性を有するβデカペプチドを用いた。14ヘリックスの方向はαヘリックスの方向と異なるが、F19、W23、およびL26の側鎖が、安定化された14ヘリックス上の3残基離れた連続する位置に提示される場合、p53ADの機能的エピトープが繰り返されることを仮定した。これらの側鎖が2つの利用可能な14ヘリックス面の各々の上の両方の可能な配向において付加される、4種のβペプチドを設計した(β53−1〜β53−4、化合物28〜31、図3)。
【0118】
水性緩衝液中のβ53−1〜β53−4の円偏光二色性(CD)スペクトルを比較して、それらの14ヘリックス含有量(図4A)を概算した。14ヘリックスのCDサイン(signature)は、明らかに顕性であり、214nmでの相対的最小値は、β53−1、β53−3、およびβ53−4について、30%〜50%の間のヘリックス含有量を示唆する。CDOH中での二次元NMR分光法によって、β53−1中の14ヘリックス構造の存在を確認した:ROESYスペクトルは、14ヘリックス立体配座の特徴である7個の可能なCαH(i)→CβH(i+3)ROEのうち4個、および6個の可能なCΝ(i)→Cβ(i+3)ROEのうち2個を示した。さらなるROEは、存在したかもしれないが、共鳴の重複によって不明瞭であった;14ヘリックス構造と矛盾するROEは観察されなかった。分析用超遠心法は、β53−1、β53−3、およびβ53−4は80μM〜400μMの間の濃度でモノマー状であることを明らかにし、これらの14ヘリックスが分子間相互作用によって安定化されることを確認した。
【0119】
競合蛍光分極(competition fluorescence polarization:cFP)アッセイを、hDM21−188(hDM2)および蛍光標識p53AD15−31ペプチド(p53ADFlu)を使用して設計し、p53−1〜p53−4によるp53AD・hDM2錯体形成の阻害をモニターした。直接的な蛍光分極分析によって測定されたp53ADFlu・hDM2のKは、0.34±0.11μMであり、これは、前の研究と一致した。未標識のp53AD15−31は、p53ADFlu・hDM2相互作用を阻害し、IC50は2.47±0.11μMであり、この値は、類似のアッセイにおいて報告された値と一致した。二種のβペプチドであるβ53−1およびβ53−3は、p53ADFlu・hDM2錯体形成を阻害し、IC50値は、各々、94.5±4.4μMおよび1589±104μMであった(図4B)が、ただ、β53−1は、無関係なCREB KID・CBP KIX複合体の形成を阻害することだけは出来なかった;β53−3は、それ以上研究されなかった。
【0120】
次に、一連のβデカペプチドを調製して、hDM2に対するβ53−1の親和性が、p53ADの側鎖であるF19、W23、およびL26からなる機能性エピトープの全てまたは一部を必要とするか否かを評価した。これらの3個の側鎖のうちの2個がβホモアラニンに替えられたβペプチドである、β53−W6、β53−F9、およびβ53−L3(化合物32〜34)は、p53AD・hDM2錯体形成を阻害し、IC50値は、各々、198.1±10.0μM、1701±163μM、および>7000μMであった(図4C)。βホモトリプトファン(βW)を保持したβ53−W6は、β53−1のIC50値より2倍高いIC50値を有する最も強力なインヒビターであったが、一方、βホモフェニルアラニン(βF)を保持したβ53−F9は、中程度に強力であった。重要なことに、βWおよびβFの相対的配置が重要であった:これらの残基の異なる配置を備えるβペプチドであるβ53−2およびβ53−4は、各々、70μMおよび700μMで阻害を示さず、そして、単一のβF残基を有する他のペプチド(β53−F3、β53−F6、化合物35〜36)は、1mMで阻害を示さなかった。加えて、単一のβL残基を有するβペプチド(β53−L3、β53−L6、β53−L9、化合物34、および化合物37〜38)は、20mMほど高い濃度で阻害を示さず、単一のβI残基を有するβペプチド(β53−I3、β53−I6、β53−I9、化合物39〜41)は、1mMほど高い濃度で阻害を示さなかった。これらのデータは、β53−1が、p53ADの機能性エピトープを構成する3個の残基のうちの2個(βWおよびβF)からの特異的な寄与によって、hDM2と相互作用することを示す。β53−1に関するβW、βF、およびβLの相対的な重要性は、p53ADベースのαペプチドについてのデータと一致する。
【0121】
β53−1によるhDM2結合に対するβLの適度の寄与は、出願人らを、βLのhDM2との相互作用を、β53−1のβW鎖およびβF鎖とp53ADのW23およびF19とのの重ね合わせを最大化したモデルにおいて再試験することへと導いた。この分析は、β53−1の残基1〜3が、結合した場合に14ヘリックスの立体配座に接近できないこと、および、N末端が短縮されたβ53−1の改変体が、より好ましいインヒビターであり得ることを示唆した。この仮説を試験するために、各々、β53−1の残基1〜2または残基1〜4(位置3でのβLを含む)を欠失するβ53−5およびβ53−6(化合物42〜43)を合成した(図3)。β53−5は、より好ましくないマクロ双極子安定化および縮小された二次構造(図4A)にも関わらず、β53−1より強力にp53ADFlu・hDM2相互作用を阻害した(IC50=80.8±3.2μM、図4D)。しかし、βヘキサペプチドであるβ53−6は、36.2±2.6μMのIC50でp53ADFlu・hDM2相互作用を阻害し、これは、β53−1およびβ53−5よりも2倍を超えて好ましい。βWを含有する配列と無関係なβテトラペプチド(β53−7)およびβW自体は、弱いインヒビター(IC50>1mM)であった。これらのデータは、β53−1、β53−5、およびβ53−6の中へ組み込まれる構造的エレメントおよび設計エレメントが、p53ADの阻害効力の僅か1/40〜1/15にすぎないそれらの阻害効力を制御することを確認する。
【0122】
(実施例3)
(hDM2に対するβペプチドリガンドの溶液構造)
二次元NMR分光法を、CDOH中で10℃での5mMのβ53−1を使用して行った。前の円偏光二色性実験および分析用超遠心法実験ならびに本明細書において観察されるNMRの線幅は、これらの条件下におけるβ53−1についてのモノマー性の14ヘリックス構造と一致する。β53−1の陽子共鳴を、TOCSYおよび天然存在度のH−13C HSQCスペクトルを使用して、明瞭に割り当てた。次いで、200ミリ秒間、350ミリ秒間、および500ミリ秒間の混合時間を使用して、ROESY実験を行った。観察された一連のNH−CαH ROEによって骨格の「ROE歩行(walk)」が提供されることから、連続的な割り当てを確認した。3つのクラスの中間範囲ROEが、14ヘリックス状の立体配座を特徴づける:HΝ(i)とHβ(i+2)との間、HΝ(i)とHβ(i+3)との間、およびHα(i)とHβ(i+3)との間のROE。このクラスの20個の潜在的な中間範囲相互作用が全て、β53−1のROESYスペクトルにおいて観察された;加えて、位置が3個離れた側鎖間で、27個のさらなる中間範囲ROEもまた観察された。NMRによって観察される多数の中間範囲ROEは、β53−1中の高レベルの14ヘリックス構造についての明確な証拠を提供する。350ミリ秒間の混合時間を使用して定量される499個のROEを、その後、SPARKYを使用して割り当てて統合した。ピーク容積を、151個の上限の距離制約に変換して、DYANAを使用してβ53−1の100個のランダムな開始立体配座での擬似アニーリングねじれ動態(simulated annealing torsional dynamics)を行うのに用いた。結果として生じた20個の最小エネルギー構造の間で、制約違反は報告されなかった。
【0123】
β53−1の算出された構造の集合は、0.17±0.07Åの平均構造からの平均骨格原子RMSDを有する14ヘリックスを示す。個々の構造の骨格のねじれは、末端においてすら平均から殆ど離れず、メタノール中でのβ53−1の14ヘリックスの強さを示す。このヘリックスは、残基1〜6について1残基あたりおよそ1.61Åの立ち上がり(rise)および1回転あたり3.0個の残基数、ならびに、残基7〜10について1残基あたりおよそ1.49Åの立ち上がりまでおよび1回転あたり3.3の残基数までの僅かな巻き戻し(unwinding)によって特徴づけられる。この巻き戻しは、β53−1に特有であると考えられる。なぜならば、この巻き戻しは、側鎖イオン対合を有するかまたは有さない無関係なβペプチドのNMR構造においては観察されないからである。側鎖はまた、0.60±0.10Åの平均からの総平均重原子RMSDを有する最小エネルギー構造の間でよく定義される。
【0124】
β53−1は、ヘリックスを安定化する塩橋の形成に有利であるように一つの14ヘリックス面上に配置される、4個の荷電性側鎖を備える。全ての20個の低エネルギー構造において、βO7の末端の窒素およびβE10の最近接末端の酸素は、5.5±0.6Åの一貫した分離によって特徴づけられる。残りの二つのイオン対の相対的位置は、2つの下位集合へ分類される。17個の構造のうち、βO1の末端の窒素およびβE4の最近接末端の酸素は、βE4およびβO7の等価の原子(6.8±0.9Å)より近い(5.4±0.9Å)。対照的に、残りの3つの構造において、βO7の末端の窒素およびβE4の最近接末端の酸素は、βO1および最近接のβE4の等価の原子(7.7±1.3Å)より近い(3.6±0.4Å)。潜在的なイオン対の間のこの相互作用は、中心の塩橋が末端付近の塩橋より弱いことを示唆し、複数の相互連結したイオン対が、ヘリックス安定化の重要な役割を果たすという仮説を支持する。
【0125】
β53−1の設計に組み込まれた別の特徴は、位置2、位置5、および位置8でのβホモバリン(βV)残基の含有であった。全ての20個の低エネルギー構造は、βホモバリン側鎖の特有の配置を備え、ここで、βV側鎖の一個のメチル基が、別のβV側鎖の二個のメチル基によって形成された開裂の中に収まる。これらの相互作用は、20個の構造のうちの19個においてVDW接触しているβV5の側鎖とβV8の側鎖との間で、特に顕著である。全体的に、3個のβV側鎖の間の相互作用は、155±13Åの疎水性表面積(これらの側鎖の表面の24%)を水から隠す。これらのパッキング相互作用は、これらおよび他の分枝性残基が14ヘリックスを安定化させる理由を説明し得、14ヘリックス束の設計のための新たな手段を示唆する。
【0126】
残りの14ヘリックス面は、hDM2結合エピトープを構成する残基、すなわちβホモロイシン(βL3)、βホモトリプトファン(βW6)、およびβホモフェニルアラニン(βF9)からなる。βF9側鎖は、使用される制約内で二つの特異的な立体配座に接近し得る:別の14ヘリックス構造においてこの可変性が観察されたという事実は、この側鎖が、実際に、14ヘリックス内のこれらの回転異性体を優先的に占めることを暗示する。βW6の側鎖とβL3の側鎖とは、全ての20個の構造内でVDW接触するが、一方、βW6の側鎖とβF9の側鎖とは、βF9の二つの好ましい立体配座(20個の低エネルギー構造のうちの6個において存在する)の一つのみに関してのみ、VDW接触する。全体的に、平均して、βL3、βW6、およびβF9の側鎖は、連続的な、520Åの溶媒に露出された疎水性表面積を備える。この値は、遷移性のホモダイマー性タンパク質とヘテロダイマー性タンパク質との複合体の界面で測定される接触面積に匹敵する。
【0127】
β53−1のC末端付近の予期せぬ巻き戻しの結果として、βF9側鎖は、βL3およびβW6の側鎖と、ヘリックス軸に沿って完全には一列にならない。この微妙な歪みは、βF9の大きな側鎖とβW6の大きな側鎖との間の立体反発を回避し得る。実際に、β53−1に特有であるC末端付近の巻き戻しが、より好ましいイオン対合、より好ましいβVの入れ子(nesting)相互作用、または大きな疎水性残基を備える認識表面上での立体衝突を避ける必要性のいずれに起因するかは不明である。
【0128】
重要なことに、この微妙な歪みは、β53−1の認識表面を含む側鎖がp53ADのαヘリックス上の側鎖をよりよく模倣することを可能にする。理想化された14ヘリックス状立体配座中のβ53−1と、hDM2に結合したp53ADとの間の重ね合わせ23は、二つのリガンドの間の不完全なアラインメントを明らかにし、β53−1のβL3側鎖、βW6側鎖、およびβF9側鎖は、p53AD上の対応する側鎖と重なり合うことが出来るが、14ヘリックスの骨格は、hDM2の結合溝に完全に適合することが出来ないことを明らかにした。β53−1の溶液構造を用いた比較可能な重ね合わせは、このような不一致を示さない。β53−1は、その溶液立体配座において、立体衝突なしにp53ADと同じ結合溝を占有しつつ、hDM2の3個の疎水性ポケットの全てに接近可能である。この適合は、側鎖を揺らす(stagger)β53−1のC末端付近での微妙な巻き戻しを要求し、αヘリックス模倣に独特に適したβペプチドをもたらす。タンパク質−タンパク質相互作用は、殆どのリガンドのクラスに関して、阻害することが困難であることが周知である;β53−1の溶液構造は、βペプチドのオリゴマーが、これらの重要な界面を標的とする一般的なプラットフォームとして使用され得る、広範囲の、可変性が高い表面を提示し得ることを示唆する。
【0129】
(実施例4)
(hDM2に対するヘリックス状βペプチドリガンドに対する立体配座の制限の効果)
トランス−(S,S)−2−アミノシクロヘキサンカルボン酸(ACHC、図5B)の一個以上の残基を含有する、4種のβ53−1改変体を合成した。これらの改変体は、中心のC−C骨格ねじれをシクロヘキサン環内に制約することによって、左旋性の14ヘリックス構造を促進する。βアミノ酸合成およびβペプチド調製を、前に記載されるように行った。β53−1改変体のうちの3種は、単一のβホモバリン残基の代わりに、ACHCを所有し(β53−AC2、β53−AC5、およびβ53−AC8(化合物44〜46)、各々、2の位置、5の位置、および8の位置で置換されている)、そして4番目のβ53−ACtrip(化合物47)は、3個全てのβホモバリン残基の代わりにACHCを所有する(図5C)。
【0130】
これらのACHC含有βペプチドを、CD分光法によって特徴付け、それらの二次構造を試験した。βペプチド内でのACHCの組み込みは、代表的には、14ヘリックスのCDサイン(特に、特徴的な、214nm付近での平均残基最小楕円率)の強度を増大し、このことは、構造の増加を暗示する。β53−1およびその改変体は、例外ではない(図6A)。興味深いことに、単一のACHC残基の組み込みは、位置に依存して、最小値の強度を40〜50%増大する。3個のACHC残基の組み込みは、最小値の強度を、純粋に付加的な様式で増大し、β53−1に対して全体で245%の増大をもたらす。β53−1およびそのACHC含有改変体のCDに基づく熱変性分析(図6B)は、あらゆる温度で他の検出可能な二次構造を有さない、可逆的な14ヘリックスの展開を明らかにした。興味深いことに、98℃ですら、β53−1およびその制約された改変体は、241nmでの最小値が4℃での強度の45〜75%である、特徴的な14ヘリックスのCDサインを示す。この効果は、14ヘリックスを他の手段(例えば、両極端のpHまたは高濃度の塩による安定化性の塩橋の中和)で展開する場合においては見られない。従って、高温での14ヘリックスのサインの持続は、この一連の14ヘリックス内での並はずれた耐熱性を示し得る。CDのデータは、全体として、14ヘリックスの折りたたみが非協同性であり、αヘリックスの折りたたみよりはるかに熱安定性であるというモデルを支持する。このモデルと一致して、β53−1の改変体による水中でのヘリックス形成の全体的な程度が、立体配座が制約された残基の比率に依存し、そのような残基の位置には依存しないことが見出された。
【0131】
次に、ACHC含有βペプチドを、hDM2に対する親和性、およびp53AD・hDM2相互作用を阻害する効力に関して特徴づけた。ACHC含有βペプチドの蛍光色素結合体化バージョンを、種々の濃度のhDM21−188と共にインキュベートし、上記のように、蛍光分極(FP)によってモニターして結合を検出した。種々の濃度の未標識βペプチドをp53AD15−31FluおよびhDM21−188と共にインキュベートするFP競合アッセイを使用して、上記のようにβペプチドの阻害効力を測定した。FPのデータに由来する見かけの平衡解離定数(K)および最大半量阻害濃度(IC50)を、表1に要約する。β53−AC2、β53−AC5、およびβ53−AC8におけるのと同様に、単一のACHC残基の組み込みは、見かけのhDM2親和性を僅かに増大する。この増大の位置依存的な性質、およびβ53−AC2、β53−AC5、およびβ53−AC8の殆ど同一のCDスペクトルは、この効果が、構造の全体の程度の増大に起因し、局所的な幾何学の変化に起因しないことを暗示する。β53−1と比較して、全てのACHC含有改変体は、p53AD・hDM2相互作用のより強力なインヒビターである。しかし、β53−AC5は、他の3種より少々弱いインヒビターであると思われる。このことは(以下に記載するように)、このペプチドの高濃度での可能な自己会合(self−association)に起因し得る。重要なことに、β53−1内でのいくつかの位置のいずれかでのACHCの組み込みが見かけの結合親和性を少し改善するという事実は、β53−1およびその改変体が、14ヘリックス状の立体配座中でhDM2に結合することを暗示する。
【0132】
【表1】

蛍光色素標識されたリガンドとhDM2との間の複合体の見かけの平衡解離定数(K)。hDM21−188に結合したp53AD15−31Fluの一部を50%阻害するために必要とされる未標識リガンドの濃度(IC50)。
【0133】
本研究において最も制約されたβペプチドであるβ53−ACtripは、単一の制限残基を有する改変体と同じ、僅かな見かけの親和性および阻害効力の改善を有する。このことは、非常に堅固な14ヘリックスがp53ADのαヘリックスを完全には模倣しないことを示す。しかし、メタノール中のβ53−1について観察されたような14ヘリックスの骨格の歪みは、側鎖の形状および位置がαヘリックスにより類似する、短い制約されない14ヘリックスを与え得る。ACHCの組み込みは、全体的な14ヘリックスの立体配座を安定化させるはずでありつつ、中心のC−Cねじれを60°に固定し、これは、β53−1のメタノール溶液構造内の位置5および位置8について観察される値から著しくはずれる(位置2、位置5、および位置8でのC−Cねじれ角について、各々、64.8±5.9°、41.9±3.7°、および78.1±4.0°)。従って、ACHCは、β53−1の好ましい溶液構造と比較して、局所的および/または全体的な立体配座の変化を誘導し得る。本発明の結果は、ACHCの組み込みに本来備わっている二律背反性(trade−off)を示すと考えられる:全体的な折りたたみが安定化される一方で、hDM2の認識の原因である局所的立体配座の重要な特徴が変更され得る。
【0134】
分析用超遠心(AU)は、ペプチドおよびタンパク質がオリゴマー形成(oligomerize)するか否かを決定するため、ならびに自己会合平衡状態の性質を推定するために、一般的に使用される。前に、AUは、β53−1が1mMを超える濃度でモノマー性であることを示した。前に記載されるように、ACHC含有β53−1改変体を、全て、AUによって分析した。β53−AC2は、オリゴマー形成の証拠を示さなかったが、一方、β53−AC8は、低いミリモル濃度でのモノマー−ダイマー平衡状態を示し得る、半径距離データの少しの湾曲度を示した。対照的に、β53−AC5およびβ53−ACtripは、別々のより高い次数のオリゴマー(ヘキサマーまたはヘプタマーであり得る)の形成と一致する湾曲度を有する、半径距離データの著しいギャップを示した。両方のデータセットは、100〜500μMの範囲におけるオリゴマー解離についての見かけのKを示唆した。ACHC含有βペプチドによる自己会合は、AUによって、およびNMRによって、前に検出された。今回のデータは、立体配座が制約された残基の存在および配置に対する、14ヘリックスの自己集合の優れた感受性を強調する。
【0135】
本明細書において提示される結果は、立体配座の制限が、βペプチド性タンパク質リガンドの見かけのインビトロでの親和性および阻害効力を僅かに増大し得ることを示す。しかし、これらの結果はまた、14ヘリックス状のαペプチド模倣物の開発のための立体配座の制限の利点に、限界が存在し得ることを示す。加えて、これらの結果は、β53−1およびその改変体が、非協同的および可逆的に展開し、そして14ヘリックス立体配座中でhDM2と結合するという証拠を提供する。これらのデータは、全体として、αヘリックスの3回の連続的な回転の上の残基が、14ヘリックス状のβペプチドによって模倣され得る設計戦略を有効化する。
【0136】
(実施例5)
(βペプチドのライブラリー由来のナノモル濃度の親和性を有するタンパク質リガンド)
先の報告は、ヘキサマーより長いβペプチドオリゴマーの合成の間の著しく減少した収量を裏付けた。この障害を克服するために、カップリングのサイクルの時間を延長し、各々の残基を2回カップリングした。残留Fmoc基を取り除く第二の脱保護化の工程を含めた。非ライブラリー(non−library)合成由来の100〜200個のビーズのプールを樹脂から切断して、分析的HPLCによって試験して純度を評価し、そしてこの方法において試験された合成物のうち、50%を超えるものが少なくとも80%の純度であり、75%を超えるものが少なくとも70%の純度であった。加えて、分割されてプールされた単一のライブラリーのビーズから切断された材料から得られたMALDI質量スペクトルは、時間の95%に渡って、予測された質量の範囲内の単一の主要生成物を示した。この合成品質は、先に報告されたペプトイドおよびオリゴカルバミン酸のライブラリーの合成品質と一致するか、それを超える。
【0137】
厳密な合成プロトコルを使用して、β53−1およびβNEG(図7)を、Tentagelマイクロビーズ(約150μm、約0.4mmol/g)上で、各々、正および負のコントロールとして合成した。標準的な酸性条件下で側鎖の脱保護化を可能にする、4−ヒドロキシメチル安息香酸(HMBA)のハンドル(handle)を使用し、次いで、後で、メタノール中1Mのナトリウムメトキシドを使用して、ペプチドの切断を行った。分析的HPLCによって判断されたように(データは示さず)、これらのβペプチドのビーズ上の純度は、各々、90%および80%であった。Kodadekおよび共同研究者らによって報告されたように(Chembiochem 4(11):1242−1245(2003))、量子ドットは、その巨大なストークスシフトによって、結合タンパク質の簡易な二次検出を提供し、強度ではなく色に基づくヒット(hit)の判別を可能にする。ビオチン化hDM21−188およびストレプトアビジン被覆量子ドットを二段階検出において使用することによって、量子ドットの蛍光(これは、605nmの最大発光によって、橙色に見えた)を、ビーズの自家蛍光(これは、緑色に見えた)から判別する励起波長を使用することが可能になった。ブロッキングおよび洗浄の条件を最適化し、βNEGビーズでは存在しなかったβ53−1ビーズの強いシグナルを得た。特に、ブロッキングのタンパク質、塩、および/または洗剤の濃度を増加させることは、各々、結果として生じるシグナルの強度を弱めた。ビオチン化hDM21−188の代わりに、非ビオチン化hDM21−188、ビオチン化BSA、非ビオチン化BSAが使用されるか、またはタンパク質が使用されないコントロールは、ビーズへの量子ドットの結合を示さなかった。このことは、このアッセイが、ビーズに結合したβペプチドと標的タンパク質であるhDM21−188との間の特異的結合を検出することを示す。
【0138】
このアッセイを試験するために、8個のメンバー(化合物48〜55、図7)からなる小さなライブラリーを評価した。このライブラリーは、重要な位置6のβホモトリプトファンについての8個の異なるβアミノ酸置換を有するβ53−1の改変体からなった。別々の試験のための個々のライブラリーメンバーを得るために、カップリング6の後の再プール化の工程で、各々の個々のライブラリーメンバーの小さいプールを保持し、各々の合成を完了した。これらのプールを別個にアッセイしたとき、位置6における側鎖の大きさおよび疎水性とほぼ見積もられるシグナルが観察された。従って、元のβホモトリプトファン残基またはβホモチロシン残基を位置6で有するプールから、最も明るいシグナルを観察した。このライブラリーを同一条件下でアッセイしたとき、シグナルなしから非常に明るいシグナルまでの種々のシグナル強度が観察され、このことは、別々のライブラリーメンバーについて観察された強度範囲と一致した。
【0139】
次に、模擬スクリーニングを行って、出願人らがヒットを選別し、個々のビーズからβペプチドを切断し、質量分光分析法を使用して切断されたβペプチドを配列決定できるか否かを決定した。高強度のビーズおよび低強度のビーズを、8メンバーのライブラリースクリーニングから試験のために選別した。また、5個のβ53−1ビーズを、βNEGビーズの大きな過剰分(>1000)に加え、このプールを、同様にアッセイした(SIを参照のこと)。このスクリーニングからの明るいビーズも、試験のために選別した。
【0140】
個々のビーズを洗浄し、切断し、そして脱塩した。切断された材料の5%未満を使用して、MALDIスペクトルを得、単一の主要生成物を有するクリーンなスペクトルを得た。MS/MSスペクトルを、残りの生成物の20〜80%を使用して得た。このことは、個々のビーズから切断されたβペプチドから高品質の質量スペクトルのデータを得ることの容易さを強調した。配列決定の結果は、このアッセイの有用性を確認した:8メンバーのライブラリースクリーニングから選別された高強度のビーズは、6番目の位置においてβホモチロシンを有し、8メンバーのライブラリースクリーニングから選別された低強度のビーズは、6番目の位置においてβホモグルタミン酸を有し、そしてβNEGビーズの過剰分から選別された明るいビーズは、β53−1であると同定された。
【0141】
このアッセイをさらに評価するために、1,000個のメンバーを有するより大きなライブラリーを合成した(化合物56〜1055、図7)。このライブラリーは、β53−1中の各々のβホモバリン残基(位置2、位置5、および位置8)を、10個のβアミノ酸のうちの一つで置換した。このライブラリーは、証明された機能がない唯一の面を変化させる。なぜならば、他の二面は、ヘリックス安定化およびhDM2認識を提供するからである。さらに、メタノール中のβ53−1のNMR溶液構造は、14ヘリックスが歪められる場合、βホモバリンが最も好ましく相互作用し、認識面の表現をよりαヘリックスに類似する表現にすることを示す。
【0142】
第一に、このライブラリーを、小さいライブラリーにおける条件と類似の条件を使用してスクリーニングした。このスクリーニングにおいて、25個のビーズを約8,000個から選別した(0.3%のヒット率)。MALDIスペクトルおよびMS/MSスペクトルは、これらのビーズが少なくとも10個の異なる配列を表すことを確認した。ヒットの比率を下げるために、より少ない標的タンパク質およびよりストリンジェントな洗浄工程を用いて、このスクリーニングを再施行した。この第二のスクリーニングは、約16,000個のビーズから35個のヒットを生じ(0.2%のヒット率)、ヒットしなかったビーズの間で、シグナルはより低かった。MALDIスペクトルおよびMS/MSスペクトルは、これらの35個のビーズが、たった3個の異なる配列を表すことを確認した:ヒット1(16個のビーズ)、ヒット2(18個のビーズ)、およびヒット3(1個のビーズ)。重要なことに、これらのヒットの各々は、第一のスクリーニングから選択された25個のヒットの間で複数回同定されており、このことは、洗浄の向上が、ヒットの領域を著しく狭めたことを確認した。
【0143】
3個のヒット(図7における配列)を、上記のように合成して特徴づけた。特に、これらのヒットの全体的な二次構造を、CD分光法によって推定し、hDM2親和性を、hDM2についての蛍光分極(FP)アッセイにおいて蛍光標識された改変体を使用することによって測定し(図8A)、p53AD15−31flu・hDM21−188相互作用の阻害についての効力を、競合FPアッセイにおいて測定した(図8B)。ヒット1およびヒット2が、特に強力であり、各々、55±8nMおよび89±20nMの結合親和性(K)、ならびに各々13±1μMおよび11±1μMの阻害効力(IC50)を有した。
【0144】
要約すると、出願人らは、大きなβペプチドのOBOCライブラリーを合成してスクリーニングするための方法を開発した。合成、スクリーニング、およびデコードのための技術は、全て、蛍光色素に基づくビーズの選別法、ハイ−スループットの質量分光分析法、および新規のペプチド配列決定アルゴリズムの使用を介して、高度に拡張可能である。アッセイのシグナルは、所望のヒット率を達成するために複数の方法で記録され得、このことは、多様な標的タンパク質に対する低親和性リガンドを迅速に発見することだけでなく、その後にこれらのヒットをナノモル濃度の親和性のリガンドへと精緻化することを可能にするはずである。
【0145】
(実施例6)
(βペプチドの14ヘリックス性特徴に対する系統的な塩橋残基置換の効果)
6個のβドデカマーのセットを研究し、水中での14ヘリックスの安定性に対する荷電性側鎖の長さの効果を評価した(図9)。全ての6種の分子は、ヘリックス促進性の脂肪族βホモバリン残基を、位置2、位置5、位置8、および位置11で、推定の14ヘリックスの一面に沿って備え、βホモアラニン残基を、位置3、位置6、および位置9で、第二の面に沿って備え、種々の異なる酸性および塩基性の側鎖を、位置1、位置4、位置7、および位置10で備える。各々の分子はまた、βペプチド濃度の分光光度決定を簡略化するために、単一のβホモチロシン残基を有する。これらのβペプチドを、自動化されたかまたはマニュアルの固相法を使用して合成し、逆相HPLCを使用して精製し、そしてこれらの配列を、MALDI−TOF質量分光分析法を使用して確認した。全ての6種の分子は、分析用超遠心法によって決定されたようにモノマー性である。
【0146】
円偏光二色性(CD)分光法を使用して、80μMで25℃での各々のβペプチド中の14ヘリックス構造の程度を特徴づけた。βペプチドについてのCDのデータは慎重に解釈しなければならないが、一方、特にβペプチドについては、14ヘリックスのサインの強度の変化が、総平均14ヘリックス集合の相対的変化に相関することを仮定することは、妥当である。全ての6種の分子のCDスペクトルは、14ヘリックス構造と一致し、最小楕円率は211〜214nmの間であり、最大楕円率は195〜198nmの間であり、そして負の楕円率および正の楕円率の間の交差は、200〜202nmの間であった(図10A、表2)。CD曲線の全体的な類似性にも関わらず、負の楕円率の最大値は、6種の分子の間で、−11,537 deg・cm・dmol−1の小ささから−19,451 deg・cm・dmol−1の大きさまでの範囲で、劇的に異なった。これらの差異は、40%より大きな変化を表す。全体的に、これらの分子は、全体的な14ヘリックス構造に関して、最大から最小までに整理され得る:2DabD(化合物1056)>2OD(化合物1057)>2DabE(化合物1058)>2KD(化合物1059)>2>2KE(化合物1060)。一般に、βホモアスパラギン酸を含有する以外は同一の分子は、βホモグルタミン酸(β−Glu)を含有する分子より高いレベルの14ヘリックス構造を示す。βアミノメチルアラニンを含有する分子は、βホモオルニチンを含有する以外は同一の分子より高い14ヘリックス状の特徴を有する。βホモオルニチンを含有する分子もまた、β−Gluを含有する同一の分子よりヘリックス状である。これらのデータは、静電気学的成分の僅かな相違が14ヘリックス構造の総量の小さな変化を誘導することを、示唆する。より具体的には、これらの結果は、側鎖の長さが短くなるにつれて、14ヘリックス状の特徴が増大することを示唆する。
【0147】
【表2】

イオン対形成がこれらのβペプチドの間の安定性の差異に寄与したという証拠を提供するために、pH7でのこれらのβペプチドのCDスペクトルを、pH2およびpH12でのCDスペクトルと比較した。各々の場合において、pHを中性から変化させることは、平均残基楕円率(MRE)の211nm〜215nmの間の有意な減少(44%〜97%の間)をもたらした(図10B、C、表2)。一般に、CDによって判断されるようなより低いレベルの14ヘリックス構造を所有するペプチド(2、2KE)において、より高いレベルの14ヘリックス構造を所有するペプチド(2DabD、2OD)についてよりも、大きなpH依存性変化が観察された。興味深いことに、各々の場合において、pHがpH12まで高められた場合に、pHがpH2まで低められた場合よりも、平均残基楕円率の低下が大きかった。これらの結果は、全体的に、塩橋によって安定化されるβペプチドの前の研究(適切な酸性側鎖および塩基性側鎖について予測されるpK値より、各々高いpH値または低いpH値で、平均残基楕円率の急速な低下が観察された)と一致した。全体的に、これらのデータは、安定化の静電気学的機構と一致する。
【0148】
最も14ヘリックス状のβペプチドである2DabDが14ヘリックスを維持する能力を、pH7での溶液中への電解質の滴定によって、さらに試験した。比較のために、より低い初期14ヘリックス含有量を有する2DabEも、塩化ナトリウムの漸増濃度を使用して評価した。結果として生じる曲線は、ほぼS字形(sigmoidal)であり、両方のβペプチドについて、約0.5MのNaClの中点を示した(図10D)。DeGradoらによって前に記載された研究は、C末端のD−Aspキャップを有する2面のβ−Lys/β−Gluの塩橋を備えるβペプチドについて、0.4MのNaClの中点を示した。従って、より短い塩橋残基を1面のみ有するβペプチドは、より高い塩濃度の存在下において、向上した構造的安定性を示した。2DabDは、2DabEより低い最小MREで始まり、このことは、より多い初期14ヘリックス含有量を再強調する。両方の曲線は高い塩濃度で収束するようであるが、どちらの曲線も、βペプチドが完全に展開された状態を達成することを示さない。この観察は、非協同的な折りたたみ様式を支持し、これは、塩橋以外の、14ヘリックス状の特徴に影響を及ぼすこの構造の他の局面を暗示する。
【0149】
CDのデータによって示唆される14ヘリックス構造の増加が、多様な配列のβペプチドに関して重要であるか否かを評価するために、変更した塩橋を、前に特徴づけたβペプチドであるβ53−1に適用した。この実験において、β−Orn/β−Gluの塩橋を、β−Orn/β−Aspで置き換えて、β53−1D(化合物1061)を作製した。2と2ODとを比較するCD実験からの証拠に基づいて、この置換が、β53−1の14ヘリックス構造をさらに安定化することを予測した。2種の化合物の最初のCD比較は、β53−1Dが、β53−1より少々14ヘリックス状であって、各々の平均残基楕円率が、各々、−9564.19 deg・cm・dmol−1 対 −8450.4 deg・cm・dmol−1であることを示した。
【0150】
CDOH中のβ53−1Dの二次元NMR分光法を行い、14ヘリックス構造を確認し、β53−1Dのスペクトルのパターンをβ53−1のスペクトルのパターンと比較した。10℃でのβ53−1DのROESYスペクトルは、14ヘリックス構造の特徴である10個の明白なROEを示した:7個の可能なCαH(i)→CβH(i+3)ROEのうちの5個、および6個の可能なCΝ(i)→Cβ(i+3)ROEのうちの5個。さらなる骨格ROEが存在するかも知れないが、共鳴の重複によって不明瞭である。14ヘリックス構造と矛盾する骨格ROEは観察されなかった。β53−1DについてのROESYスペクトルのパターンは、β53−1のROESYスペクトルのパターンとよく一致し、このことは、β53−1Dが14ヘリックスを形成することを、さらに支持する。
【0151】
興味深いことに、TOCSYスペクトルおよび脂肪族のHSQCスペクトルの両方は、両方のβ−Orn側鎖に沿ったγ位置において隣接する陽子は、β53−1Dについて明らかに分解されるが、β53−1については明らかには分解されないことを示した。このことは、β−Ornがβ−Aspと対になる場合、β−Orn側鎖の立体配座のより堅固なセットが存在するという証拠である。このことを支持して、β−Asp残基と会合するβ−Ornのγ陽子とi+/−3の陽子との間のROEを求めた。特に興味深いものは、β−Asp(残基4)のβ陽子が、残基7に関する2個のROE(β−Ornのγ陽子1およびγ陽子2)を有するらしいことである。全体的に、このNMRのデータは、β−Ornのような側鎖構造が、より短いβ−Asp残基への塩橋を形成することへの要求の僅かな増加を暗示する。
【0152】
次に、タンパク質標的hDM2に対するリガンドの親和性に対する塩橋の変化の効果を評価した。蛍光色素を用いてN末端で標識したFluβ53−1Dを調製し、hDM21−188への直接的な結合を、蛍光分極アッセイによって測定した。N末端で蛍光標識したβ53−1に対する直接的な比較を行った。Fluβ53−1Dは、370±69nMのKでhDM2と結合し、一方、Fluβ53−1は、368±76nMのKでhDM2と結合した。明らかに、塩橋の変化は、標的タンパク質への蛍光標識βペプチドリガンドの結合に影響を及ぼさない。p53に結合するhDM2の活性化ドメインについてのKは、220±8nMと等価であることが示されている。両方のβペプチドリガンドは、天然のp53活性化ドメインより約1.7倍低い結合親和力を有する。増大する構造にもかかわらず、βペプチドリガンドは、hDM2への結合の改善を示さなかった。このことは、前もって構成された(pre−structured)βペプチドの利点と、14ヘリックス状のαペプチドの模倣物のために必要な構造流動性のレベルとの間に、二律背反性(trade−off)が存在することを示し得る。
【0153】
要約すると、これらの結果は、短い荷電性の側鎖を有する残基を使用して塩橋を形成することによって、βペプチド中の14ヘリックス構造を安定化し得るという証拠を提供する。加えて、機能的なβペプチド中でのβ−Orn/β−Aspの塩橋の使用は、その14ヘリックス状の特徴をさらに増大し、そのタンパク質標的に対する親和性への負の結果を有さない。
【0154】
(実施例7)
(βペプチドのフォルダマーによるHIV融合の阻害)
HIVのgp41のC末端由来の直鎖ペプチド(Cペプチド)(例えば、36残基のFuzeonTM)は、強力なHIV融合インヒビターである。これらの分子は、gp41のNペプチド領域に結合して、ウイルスと宿主細胞の膜との融合を駆動(power)する分子間のタンパク質−タンパク質相互作用のドミナントネガティブインヒビターとして作用する。HIVのgp41のNペプチド領域は、他のgp41領域またはHIVの酵素よりも変異しにくい、浅い表面ポケットを備える。このポケットは、融合後の状態において、gp41のC末端付近で見出される3個のαヘリックス状の残基:Trp628、Trp631、およびIle635(図11A)によって占められ;共同して、これらの残基は、WWIの機能的エピトープを構成する。このポケットに結合する、単純な、制約されるαペプチド、芳香族のフォルダマー(foldamer)、ペプチド−低分子結合体、および低分子が、gp41媒介性融合を阻害する。
【0155】
この実験の一つの目的は、短い14ヘリックスの一つの面上でWWIエピトープが提示されるβペプチドのデカマーのセット(βWWI−1〜βWWI−4:図11B、C)を調製することであった。従って、静電気学的マクロ双極子安定化と一つのヘリックス面状の側鎖−側鎖の塩橋とに起因して水性溶液中で顕著な14ヘリックス安定性を有するβデカペプチドの、各々の利用可能な面上の両方の配向でWWIエピトープが提示される、4種のβペプチド(βWWI−1〜βWWI−4、化合物1062〜1065)を合成した。前の研究がgp41親和性とウイルスの感染性とに対する中心のトリプトファンの重大な寄与を裏付けたので、βWAI−1を、コントロールとして調製した。βWWI−1〜βWWI−4およびβWAI−1(これらの全ては50μMの濃度でモノマーとして存在する)の円偏光二色性スペクトルは、214nmで予測された最小値を示した(図12A)。βWWI−1〜βWWI−4のスペクトルはまた、227nmで遷移を示すが、βWAI−1は示さず、このことは、14ヘリックスの歪みから生じ得るか、または非常に近接する2個のトリプトファン残基の存在から生じ得る。
【0156】
各々のβペプチドを、N末端で、Fluorescein−5−EX(Molecular Probes)のスクシンイミジルエステルを使用して標識し、直接的な蛍光分極(FP)実験において使用して、gp41のモデルであるIZN17に対するその親和性を決定した。溶液中で安定なトリマーとして存在するIZN17は、WWIの機能的エピトープに対する浅いレセプターを備えるgp41由来の17個の残基に相当して融合した、よく特徴づけられたイソロイシンジッパーの24個の残基を含有する。全ての4種のβペプチドβWWI−1Flu〜βWWI−4Fluは、IZN17に良く結合し、平衡状態の親和性は、各々、0.75±0.1μM、1.0±0.3μM、2.4±0.7μM、および1.5±0.4μMであった(図12B)。興味深いことに、この場合において、IZN17親和性は、14ヘリックスのマクロ双極子または塩橋面のいずれかに相対的なWWIのエピトープの配向に対して、比較的に非感受性である。gp41の疎水性ポケットに対するβWWI−1〜βWWI−4の親和性は、匹敵する大きさのαペプチドうちの最大の親和性のものの親和性(1.2μMのK)とほぼ同一である。また、βWWI−1は、疎水性分子および/またはヘリックス状分子を認識することが知られる2種の球形タンパク質である、カルボニックアンヒドラーゼII(K≧115μM)またはカルモジュリン(K≧100μM)に結合するよりも著しく高い親和性で、IZN17に結合する。
【0157】
βWWI−1〜βWWI−4の結合様式を調査するために、2つの実験を行った。第一に、競合蛍光分極実験を行い、βWWI−1〜βWWI−4がC14wtFlu(4.1μMの親和性でIZN17に結合する既知のgp41リガンドの蛍光アナログ:suc−MTWMEWDREINNYTCFlu−am)と競合するか否かを評価した。βWWI−1〜βWWI−4は、各々、4.0±0.7μM、4.6±0.4μM、13±4.1μM、および3.3±1.4μMのIC50値でよく競合した(図12C)。WWIエピトープの中心のトリプトファンの代わりにアラニンを含有する、βWWI−1のアナログ(βWAI−1)を合成した。βWAI−1Fluは、βWWI−1より遙かに低い親和性(K≧20μM)でIZN17に結合し、βWAI−1は、IZN17への結合についてC14wtFluと弱く競合した(72.9±5.0μMのIC50)。併せて、これらのデータは、IZN17に対するβWWI−1〜βWWI−4の親和性が、WWIエピトープとの特異的相互作用から生じることを示唆する。
【0158】
βペプチドβWWI−1〜βWWI−4を、次いで、gp41媒介性融合を阻害するそれらの能力について、HIV感染性アッセイにおける阻害効力を正確に予測する、有効性が証明された細胞融合アッセイにおいて評価した。このアッセイは、HIV−1のtatタンパク質の存在下においてCD4+およびβガラクトシダーゼを発現するHeLa−CD4−LTR−β−gal細胞、およびHIV−1のenv、tat、およびrevを発現するCHO−SEC細胞を利用する。インヒビターの非存在下において、これらの細胞は、融合して、βガラクトシダーゼを発現する合抱体(syncitia)を形成し、5−ブロモ−4−クロロ−3−インドール−β−D−ガラクトシドを用いて染色することによって検出され得る。全ての4種のβペプチドβWWI−1〜βWWI−4は、このアッセイにおいて、各々、27±2.5μM、15±1.6μM、13±1.9μM、および5.3±0.5μMのEC50値で、細胞−細胞の融合を阻害した(図12D)。これらのEC50値は、以下を使用して得られるEC50値と少なくとも等価であった:制約されたDペプチドおよび環状Dペプチド(各々、35μMおよび3.6μM)、多環芳香族(polyaromatic)フォルダマー(31μM)、ペプチド−低分子の結合体(0.3μM)、または低分子(7.3μM、10μM、および4.4μM)。FuzeonTM(IC50=0.11nM)よりなお著しく弱いが、これらの第一世代のβペプチド融合インヒビターは、FuzeonTMの三分の一の大きさであり、代謝的に安定であり、そして、新規に開発された組み合わせ方法によって最適化され得る。
【0159】
要約すると、これらの結果は、短いβペプチドの14ヘリックスが、インビボでの分子間のタンパク質−タンパク質相互作用の効果的なインヒビターとして機能し得るという証拠を提供する。βWWI−1〜βWWI−4は、インビトロで有効性が証明されたgp41モデルに選択的に結合し、細胞培養物においてウイルス融合を阻害する。
【0160】
(参考としての援用)
本明細書において言及される全ての刊行物および特許は、各々の個々の刊行物または特許が、具体的におよび別個に参考として援用されることが示されたかのように、本明細書によってそれらの全体が参考として援用される。
【0161】
主題の発明の具体的な実施形態が考察されたが、上の明細書は、例示的であり、限定的ではない。本明細書および以下の特許請求の範囲の精査によって、本発明の多くの改変が、当業者にとって明らかとなる。本発明の完全な範囲は、特許請求の範囲およびそれらの等価物の完全な範囲、ならびに本明細書およびそのような改変への参照によって決定されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0162】
【図1】図1は、(A)βペプチド1およびβペプチド2のヘリックスの網状図(net diagram)(ここで、βXは、共通の一文字のコードXを有する、αアミノ酸と類似の側鎖を有するβアミノ酸を指す)、および(B)PBC(1mMのリン酸ナトリウム/ホウ酸/クエン酸、pH7.0)中、25℃での、各々100μMおよび80μMでの、βペプチド1(赤)およびβペプチド2(黒)の円偏光二色性スペクトルを示す。
【図2】図2は、2のβペプチド改変体の円偏光二色性スペクトルを示し、2のβペプチド改変体は、位置3、位置6、および位置9で以下による置換を含む:(a)βホモリジン(2−K3、2−K6、2−K9)、(b)βホモグルタミン酸(2−E3、2−E6、2−E9)、(c)βホモロイシン(2−L3、2−L6、2−L9)、(d)βホモイソロイシン(2−I3、2−I6、2−I9)、(e)βホモバリン(2−V3、2−V6、2−V9)、(f)βホモセリン(2−S3、2−S6、2−S9)、(g)βホモスレオニン(2−T3、2−T6、2−T9)、(h)βホモフェニルアラニン(2−F3、2−F6、2−F9)、または(i)βホモトリプトファン(2−W3、2−W6、2−W9)。スペクトルは、25℃でのPBC緩衝液中で得られ、βペプチドの濃度は80μMであった。
【図3】図3は、実施例2において研究されたβペプチドのヘリックスの網状図を示す。βXは、βホモアミノ酸を表し、ここで、Xは、対応するαアミノ酸についての一文字のコードである。
【図4】図4は、(A)25℃でのPBC緩衝液(pH7.0)中160μMのペプチド濃度でのβ53−1〜β53−6のCDスペクトル(例外として、β53−2の濃度は22μMである)、ならびに(B)〜(D)p53AD、βペプチド、およびβWによるp53ADFlu・hDM2の錯体形成の阻害を示す。
【図5】図5は、(A)β53−1の化学的構造、(B)トランス−(S,S)−2−シクロヘキサンアミノ酸(すなわちACHC)の化学的構造、および(C)β53−1およびACHC含有改変体のヘリックスの網状図を示す。βXは、一文字の略語Xを有するαアミノ酸の側鎖と同一の側鎖を有するβアミノ酸を表す。6員環は、ACHCを表す。
【図6】図6は、β53−1およびそのACHC含有改変体の円偏光二色性分析を示す。(A)平均残基楕円率(MRE)としてプロットされる、80μMのβペプチドの25℃でのCDスペクトル。(B)4℃から95℃へと直線的に上昇する温度(円)、次いで、95℃から4℃へと直線的に降下する温度(正方形)での、80μMのβペプチドの214nmでのMRE。全てのCD測定は、1mMのリン酸ナトリウム/ホウ酸/クエン酸の緩衝液(pH7.0)中で調製されるサンプルで得られた。
【図7】図7は、実施例5で記載されるような、β53−1、βNEG、小さいライブラリー、大きいライブラリー、およびヒット1〜3のヘリックスの図を示す。
【図8】図8は、(A)種々の濃度のhDM21−188と25nMの色素標識ペプチド:p53AD15−31flu、β53−1flu、Hit1flu、Hit2flu、またはHit3fluとのインキュベーションについての、FP結合データおよびカーブフィッティング;ならびに(B)0.5μMのhDM21−188と25nMのp53AD15−31fluおよび種々の濃度の以下:p53AD15−31、β53−1、Hit1、またはHit2とのインキュベーションについての、FP競合データおよびカーブフィッティングを示す。
【図9】図9は、実施例6において評価されるβペプチドのヘリックスの網状図を示す。
【図10】図10は、(A)pH7.0(B)pH2.0(C)pH12.0での、2、2KE、2OD、2KD、2DabD、および2DabE(100μMのβペプチド、PBC緩衝液、25℃)のCDスペクトル;ならびに(D)NaCl濃度(pH7.0、25℃)の関数としての、100μMの2DabEおよび2DabDのMRE214のプロットを示す。
【図11】図11は、(A)内部のトリマーの表面上の浅溝内に収まるWWIの機能的エピトープを示す、gp41「ヘアピンのトリマー」の拡大図、(B)適切に置換されたβペプチドの14ヘリックスによって、WWIの機能的エピトープの相互作用が繰り返され得る方法を示すモデル、および(C)βペプチドであるβWWI−1〜βWWI−4およびβWAI−1の配列を示す。
【図12】図12は、(A)PBC緩衝液(pH7.0)中37μMのβWWI−1〜βWWI−4およびβWAI−1のCDスペクトル、(B)βWWI−1〜βWWI−4およびβWAI−1によるIZN17の結合の、直接的な蛍光分極分析(示されるデータは、3回の実験の平均±標準誤差を表す)、(C)βWWI−1〜βWWI−4およびβWAI−1による、C14wtFlu・IZN17錯体形成の阻害、ならびに(D)βWWI−1〜βWWI−4およびβWAI−1による、合抱体(syncitia)形成の阻害を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
βペプチド領域を備えるポリペプチドであって、該βペプチド領域は、第二のタンパク質のαへリックスに結合する標的タンパク質の一部に結合し得るのに十分にヘリックス状の構造領域を水溶液中で備え、ここで、該βペプチド領域の十分にヘリックス状の構造領域は、該十分にヘリックス状の構造領域中の三分の一のみの位置で塩橋を形成し得るアミノ酸残基を含み、そしてここで、少なくとも二つのβアミノ酸残基は、該標的タンパク質と直接的に相互作用する側鎖を有する、ポリペプチド。
【請求項2】
前記十分にヘリックス状の領域が、以下の配列:
【化1】

を含む、請求項1に記載のポリペプチドであって、
ここで、XおよびXは、別個に、正に荷電する側鎖を有するβアミノ酸残基であり、そしてXおよびX10は、別個に、負に荷電する側鎖を有するβアミノ酸残基であり;そして、
、X、X、X、X、およびXは、各々が別個に、βアミノ酸残基である、ポリペプチド。
【請求項3】
、X、X、X、X、およびXのうちの二つは、標的タンパク質と直接的に相互作用する側鎖を有するβアミノ酸残基である、請求項2に記載のポリペプチド。
【請求項4】
、X、X、X、X、およびXのうちの少なくとも一つは、α炭素を含有する側鎖を有するβアミノ酸残基であり、ここで、該α炭素は、第二級炭素である、請求項2に記載の改変されたポリペプチド。
【請求項5】
、X、X、X、X、およびXのうちの少なくとも一つは、β−Ile、β−Val、またはβ−Thrである、請求項4に記載のポリペプチド。
【請求項6】
、X、およびXのうちの少なくとも二つ、またはX、X、およびXの少なくとも二つは、別個に、水素結合を形成し得る側鎖を有するβアミノ酸残基である、請求項2に記載のポリペプチド。
【請求項7】
、X、およびXのうちの少なくとも二つ、またはX、X、およびXのうちの少なくとも二つは、別個に、β−Serおよびβ−Thrから選択される、請求項6に記載のポリペプチド。
【請求項8】
、X、X、X、X、およびXのうちの少なくとも一つは、βアミノ酸残基であり、ここで、該アミノ酸残基のアミノ基およびカルボニル基は、6員環から垂れ下がっている、請求項2に記載のポリペプチド。
【請求項9】
、X、X、X、X、およびXのうちの少なくとも一つは、トランス−2−アミノシクロヘキサンカルボン酸である、請求項8に記載の改変されたポリペプチド。
【請求項10】
第二のタンパク質のαへリックスに結合する標的タンパク質の一部に結合し得るのに十分にヘリックス状の構造領域を水溶液中で備えるβペプチドであって、そしてここで、該十分にヘリックス状の構造領域は、該十分にヘリックス状の構造領域中の三分の一のみの位置で塩橋を形成し得るアミノ酸残基を含み、そしてここで、少なくとも二つのアミノ酸残基は、該標的タンパク質と直接的に相互作用する側鎖を有する、βペプチド。
【請求項11】
水溶液中で14ヘリックスを形成し得るβペプチドであって、ここで、該14ヘリックスは、一連のみの塩橋を備え、そしてここで、少なくとも二つのアミノ酸残基は、標的タンパク質と直接的に相互作用する側鎖を有する、βペプチド。
【請求項12】
構造式(I):
【化2】

によって表される化合物、またはその薬学的に受容可能な塩であって、ここで;
AおよびBは、存在しないか、または、別個に、βアミノ酸であり;
各Cは、別個に、pH7で正に荷電する側鎖を有するβアミノ酸であり;
各Dおよび各Eは、別個に、βアミノ酸であり;
各Fは、別個に、pH7で負に荷電する側鎖を有するβアミノ酸であり;
各Gおよび各Hは、別個に、βアミノ酸であり;
Iは、pH7で正に荷電する側鎖を有するβアミノ酸であるか、または、Lが存在しない場合Iは存在せず;
JおよびKは、別個に、βアミノ酸であるか、または、Iが存在しない場合JおよびKは存在せず;
Lは、pH7で負に荷電する側鎖を有するβアミノ酸であるか、または、Lは存在せず;
Mは、存在しないか、またはβアミノ酸であり;そして、
xは正の整数であり、
ここで、A〜Mの少なくとも二つは、標的タンパク質と直接的に相互作用する側鎖を有する、
化合物。
【請求項13】
各Cは、別個に、β−Lys、β−Orn、β−Arg、およびβ−アミノメチルアラニンからなる群より選択される、請求項12に記載の化合物。
【請求項14】
各Fは、別個に、β−Gluおよびβ−Aspからなる群より選択される、請求項12に記載の化合物。
【請求項15】
D、E、G、またはHの少なくとも一回の出現は、標的タンパク質と直接的に相互作用する側鎖を有するβアミノ酸残基である、請求項12に記載の化合物。
【請求項16】
D、E、G、およびHの少なくとも二つは、標的タンパク質と直接的に相互作用する側鎖を有するβアミノ酸残基である、請求項15に記載の化合物。
【請求項17】
D、E、G、およびHの少なくとも一回の出現は、α炭素を含有する側鎖を有するβアミノ酸残基であり、ここで、該α炭素は、第二級炭素である、請求項12に記載の化合物。
【請求項18】
D、E、G、およびHの少なくとも一回の出現は、β−Ile、β−Val、またはβ−Thrである、請求項17に記載の化合物。
【請求項19】
DおよびGの少なくとも一回の出現、またはEおよびHの少なくとも一回の出現は、標的タンパク質と直接的に相互作用する側鎖を有するβアミノ酸残基である、請求項18に記載の化合物。
【請求項20】
少なくとも一個の繰り返し単位中、または隣接する繰り返し単位中の、DおよびG、またはEおよびHは、別個に、水素結合を形成し得る側鎖を有するβアミノ酸残基である、請求項12に記載の化合物。
【請求項21】
少なくとも一個の繰り返し単位中、または隣接する繰り返し単位中の、DおよびG、またはEおよびHは、別個に、β−Serおよびβ−Thrから選択される、請求項20に記載の化合物。
【請求項22】
D、E、G、およびHの少なくとも一回の出現は、βアミノ酸残基であり、ここで、アミノ基およびカルボン酸基は、6員環から垂れ下がっている、請求項12に記載の化合物。
【請求項23】
D、E、G、およびHの少なくとも一回の出現は、トランス−2−アミノシクロヘキサンカルボン酸である、請求項22に記載の化合物。
【請求項24】
xは1〜5の整数である、請求項12に記載の化合物。
【請求項25】
xは1または2である、請求項24に記載の化合物。
【請求項26】
以下:1)各Dが正に荷電したβアミノ酸残基である場合、少なくとも一個のGは中性または正に荷電したβアミノ酸残基である;2)各Dが負に荷電したβアミノ酸残基である場合、少なくとも一個のGは中性または負に荷電したβアミノ酸残基である;3)各Eが正に荷電したβアミノ酸残基である場合、少なくとも一個のHは中性または正に荷電したβアミノ酸残基である;4)各Eが負に荷電したβアミノ酸残基である場合、少なくとも一個のHは中性または負に荷電したβアミノ酸残基である;5)各Gが正に荷電したβアミノ酸残基である場合、少なくとも一個のDは中性または正に荷電したβアミノ酸残基である;6)各Gが負に荷電したβアミノ酸残基である場合、少なくとも一個のDは中性または負に荷電したβアミノ酸残基である;7)各Hが正に荷電したβアミノ酸残基である場合、少なくとも一個のEは中性または正に荷電したβアミノ酸残基である;8)各Hが負に荷電したβアミノ酸残基である場合、少なくとも一個のEは中性または負に荷電したβアミノ酸残基である条件下における、請求項12に記載の化合物。
【請求項27】
hDM2に結合する、請求項12に記載の化合物。
【請求項28】
優先的にhDM2に結合する、請求項27に記載の化合物。
【請求項29】
gp41に結合する、請求項12に記載の化合物。
【請求項30】
優先的にgp41に結合する、請求項29に記載の化合物。
【請求項31】
前記標的タンパク質と前記第二のタンパク質との間の相互作用を阻害する、請求項1に記載のポリペプチド。
【請求項32】
以下:
(a)化合物1〜1065中に記載のアミノ酸配列のいずれかを含む、単離されたβペプチド;
(b)化合物1〜1065のいずれかの少なくとも6個の連続したアミノ酸残基のフラグメントを含む、単離されたβペプチド;
(c)化合物1〜1065に記載のアミノ酸配列のいずれかにおいて一個以上のアミノ酸置換を含む、単離されたβペプチド;および
(d)化合物1〜1065のいずれかと少なくとも95%同一である、単離されたβペプチド
からなる群より選択される、単離されたβペプチド。
【請求項33】
細胞増殖を阻害する方法であって、細胞を、細胞増殖を阻害するために有効な量の請求項1に記載のポリペプチドと接触させる工程を含む、方法。
【請求項34】
前記ポリペプチドは、前記標的タンパク質と前記第二のタンパク質との結合を妨害するような様式において前記細胞と接触させられる、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
腫瘍細胞の増殖を選択的に阻害する、請求項33に記載の方法。
【請求項36】
前記ポリペプチドは、p53とhDM2との間の相互作用を阻害する、請求項33に記載の方法。
【請求項37】
前記改変されたポリペプチドは、MycとMaxとの間の相互作用を阻害する、請求項33に記載の方法。
【請求項38】
前記細胞は、哺乳動物細胞である、請求項33に記載の方法。
【請求項39】
腫瘍増殖の阻害または腫瘍増殖の開始の阻害を必要とする被験体において、腫瘍増殖を阻害するかまたは腫瘍増殖の開始を阻害するための方法であって、腫瘍増殖を阻害するかまたは腫瘍増殖の開始を阻害するために有効な量で、請求項1に記載のポリペプチドを該被験体に投与する工程を包含する、方法。
【請求項40】
前記被験体は、哺乳動物である、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記被験体は、ヒトである、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
ウイルスによる細胞の感染を阻害する方法であって、細胞と、ウイルスによる細胞の感染を阻害するために有効な量の請求項1に記載のポリペプチドとを接触させる工程を包含する、方法。
【請求項43】
前記ウイルスは、エンベロープを有するウイルスである、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記ウイルスは、ヒト免疫欠損ウイルス(HIV)、インフルエンザウイルス、RSウイルス、コロナウイルス、エボラウイルス、ヘルペスウイルス、B型肝炎ウイルス、T細胞白血病ウイルス、麻疹ウイルス、および水疱性口内炎ウイルスからなる群より選択される、請求項42に記載の方法。
【請求項45】
前記ポリペプチドが、前記細胞の膜と前記ウイルスとの融合を阻害する、請求項42に記載の方法。
【請求項46】
前記ポリペプチドが、少なくとも二種のgp41タンパク質の間の相互作用を阻害する、請求項42に記載の方法。
【請求項47】
前記細胞がヒト細胞である、請求項42に記載の方法。
【請求項48】
ウイルス感染の処置を必要とする被験体においてウイルス感染を処置する方法であって、該被験体に、該被験体においてウイルス感染を予防するまたは阻害するために有効な量で、請求項1に記載のポリペプチドを投与する工程を包含する、方法。
【請求項49】
前記ウイルスは、エンベロープを有するウイルスである、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
前記ウイルスは、HIV、インフルエンザウイルス、RSウイルス、コロナウイルス、エボラウイルス、ヘルペスウイルス、B型肝炎ウイルス、麻疹ウイルス、T細胞白血病ウイルス、および水疱性口内炎ウイルスからなる群より選択される、請求項48に記載の方法。
【請求項51】
前記ポリペプチドが、前記細胞の膜と前記ウイルスとの融合を阻害する、請求項48に記載の方法。
【請求項52】
前記改変されたポリペプチドが、少なくとも二種のgp41タンパク質の間の相互作用を阻害する、請求項48に記載の方法。
【請求項53】
前記被験体はヒトである、請求項48に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公表番号】特表2008−509078(P2008−509078A)
【公表日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−509620(P2007−509620)
【出願日】平成17年4月21日(2005.4.21)
【国際出願番号】PCT/US2005/013570
【国際公開番号】WO2006/078274
【国際公開日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【出願人】(392019352)イェール ユニバーシティ (38)
【氏名又は名称原語表記】YALE UNIVERSITY
【Fターム(参考)】