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γ‐アミノ酪酸が富化した植物スプラウトの製造方法
説明

γ‐アミノ酪酸が富化した植物スプラウトの製造方法

【課題】GABAを高濃度、安全、安価かつ簡便に富化でき、さまざまな食品に幅広く利用可能で、実用性に秀でた技術を提供することを課題とする。
【解決手段】GABAを富化した植物スプラウトを生産するにあたり、植物中のGABAが最も多量に蓄積される植物の生育時期、生育温度について検討した。その結果、植物の種子を特定条件下で栽培すると、GABAを富化した植物スプラウトを作製することが可能となった。この方法を用いることにより植物体そのもののGABAを効率よく且つ多量に増加させた天然物由来の食品を提供することが可能となった。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、γ‐アミノ酪酸が富化した植物スプラウトの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
戦後わずか60年あまりの間に日本人の食生活は、いわば飢餓といわれた状況から飽食と称されるような極端な変化を経験することになった。この間、平均寿命の延長に伴い諸外国では例をみない急速な人口の高齢化を迎える一方で、疾病構造も急性伝染病をはじめとする感染性疾患から、生活習慣病をはじめとする慢性疾患へと大きく変化してきた。このような日々の生活習慣により発症する疾病はストレスと密接に関係しており、ストレスが過剰になると飲酒や喫煙あるいは食事などによってストレスを発散しようとするため飲酒量や喫煙回数が過剰傾向になる。またストレスを蓄積すると、心身が不活発な状態になり運動量が減少し、神経失調、機能失調、心身症など身体の病気として発現し、生活や仕事、学業に支障をきたすことがある。このため近年では、食生活をはじめとする日々の生活習慣の改善に向けた施策や取り組みが強化され、 同時にこのような疾病に有効な食品の第三次機能解明の観点から食品の持つ生理機能に強い関心が集まり、数多くの研究がなされている。特に最近では、ストレス解消・心身のリラックスなどを目的としたヒーリング(癒し)機能を持つ成分としてγ‐アミノ酪酸(γ-Aminobutyric acid:GABA)が注目されるようになり、ここ数年の自然志向への傾向からGABAを有する食品との活用が活発になり、消費者の間でも広く認知されるようになってきた。
【0003】
GABAは、動植物など自然界に幅広く存在する非タンパク質構成アミノ酸の一種であり、生体内においては脳や脊髄に広く分布し、中枢神経系の抑制伝達物質として働いている。 GABAは1950年Robertsらによって哺乳動物の脳に高濃度に存在することが報告されて以来、生化学的・生理学的研究によりさまざまな生理作用が明らかにされている。 その作用として、神経機能(脳機能改善作用、脳の代謝促進作用、精神安定作用、ストレス軽減作用、学習記憶能の向上)(非特許文献1および2)、血液に関わる機能(血圧調節機能、血中コレステロール低下作用)(非特許文献3から5)や免疫機能(アレルギー予防)、動脈硬化の予防、アルコール代謝促進作用、抗がん作用、消臭作用、皮膚の老化防止などに効果のある機能性食品成分として多岐に渡る報告がなされている。
【0004】
最近ではGABAを高含有する商品として、タブレット、チョコレート、ゼリー、清涼飲料、キャンディなどが続々と開発され市場に流通している。GABAの市場規模は現在、約60億円に成長しており近い将来100億円を越す勢いにある。一方でこれらの活発な商品展開を支えるGABAの原料メーカーも独自の研究を重ね、競争が激化しつつある。原料としてのGABA製品には大きく2つのタイプに分かれている。1つは植物または発酵食品由来のGABAで、製品中にはGABA以外に原料由来の有効成分も含まれており、それらの成分とGABAが相乗的に生理効果をもたらすことが特長である。もう一方は、微生物発酵により生産されたもので、限りなく100%の GABAに近く、有する生理作用はGABAそのものであることが特長である。この両者の違いは大きく、今後は二極化が進むものと予想される。GABAを食品に応用するために、これを天然物に求めようとする試みは多くの例がある。特に植物または微生物由来のGABAを富化させる方法として、米糠や胚芽を浸漬し富化する方法(非特許文献6)、グルタミン酸やピリドキサルリン酸を玄米や酵母、クロレラに添加する方法(特許文献1および2)、茶葉に嫌気処理と好気処理を繰り返して処理し、富化する方法(特許文献3)、乳酸菌や麹菌を利用して生産する方法(特許文献4および5)、大豆から生産する方法(特許文献6)、玄米を高圧処理する方法(非特許文献7)等が報告されている。
【0005】
特に日本人の主食であるコメではGABAを豊富に含む発芽玄米が注目されている。発芽玄米は、玄米を水に浸漬して発芽させることによってGABAを自然に富化させるものであるが、白米に比べると高価であり、さらに食味、食感がやや劣るために白米食に馴染んでいる人々には常食化しにくいといった欠点がある。このため最近は、その消費量が伸び悩みの傾向にあり、今後多くの人に受け入れられる為には、食事に取り入れやすく且つ、GABAおよび種々の機能性成分を含有する発芽玄米の開発が切望されている。また効率よく大量にGABAを富化させる目的で、玄米にGABA生合成反応の補酵素であるピリドキサルリン酸を添加した方法は、ピリドキサルリン酸が食品添加物に認可されておらず、食品としての利用が不可能である。
【0006】
なお、以下に本発明に関連する先行技術文献を示す。
【非特許文献1】茅原 紘,杉浦友美,近年のGABAの生理機能研究−脳機能改善作用、高血圧作用を中心に−,食品と開発,36,4-6(2001)
【非特許文献2】岡田忠司,杉下朋子,村上太郎,村井弘道,三枝貴代,堀野俊郎,小野田明彦,梶本修身,高橋 励,高橋丈夫,γ−アミノ酪酸蓄積脱脂コメ胚芽の経口投与における更年期障害及び初老期精神障害に対する効果,日本食品科学工学会誌,47,596-603(2000)
【非特許文献3】大森正司,矢野とし子,岡本順子,津志田藤ニ郎,村井敏信,樋口満,嫌気処理緑茶による高血圧自然発症ラットの血圧上昇抑制作用,日本農芸化学会誌,61,1449-1451(1987)
【非特許文献4】辻啓介,市川富夫,田辺伸和,阿部士朗,樽井庄一,中川靖枝,紅麹抽出物とγ−アミノ酪酸の高血圧自然発症ラットにおける血圧降下作用,栄養学雑誌 50,285-291(1992)
【非特許文献5】中村寿雄,松林恒夫,蒲池加寿子,長谷川 節,安藤洋太郎,大森正司,γ−アミノ酪酸(GABA)富化クロレラは高血圧自然発症ラット(SHR)の血圧上昇を抑制する,日本農芸化学会誌,74,39-41(2000)
【非特許文献6】Saikusa, T., Horino, T., Mori Y.,Distribution of free amino acids in the rice kernel and kernel fractions and the effect of water soaking on the distribution, J. Agric. Food Chem., 42, 1122-1125 (1994)
【非特許文献7】杵淵美倭子,関谷美由紀,山▲崎▼ 彬,山元皓二,高圧処理を利用した玄米中へのγ−アミノ酪酸(GABA)の蓄積,日本食品科学工学会誌,46,323-328(1999)
【特許文献1】特許公開平9-238650号
【特許文献2】特許第3299726号
【特許文献3】特許第3038373号
【特許文献4】特許公開H7-227245
【特許文献5】特許公開H11-103825
【特許文献6】特許公開H11-151072
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、GABAを高濃度、安全、安価かつ簡便に富化でき、さまざまな食品に幅広く利用可能で、実用性に秀でた技術を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
GABAを富化した植物スプラウトを生産するにあたり、植物中のGABAが最も多量に蓄積される植物の生育時期、生育温度について検討した。その結果、植物の種子を特定条件下で栽培すると、GABAを富化した植物スプラウトを作製することが可能となった。この方法を用いることにより植物体そのもののGABAを効率よく且つ多量に増加させた天然物由来の食品を提供することが可能となった。
【0009】
即ち本発明は、以下〔1〕〜〔20〕を提供するものである。
〔1〕以下の(a)から(c)の工程を含む、γ‐アミノ酪酸を含む植物スプラウトを製造する方法;
(a)植物の種子を次亜塩素酸塩で処理する工程
(b)次亜塩素酸塩で処理された植物の種子を5℃から50℃未満で栽培する工程、
(c)栽培開始後1日から14日までの間に、植物の種子の栽培を停止する工程。
〔2〕以下の(a)から(c)の工程を含む、γ‐アミノ酪酸を含む植物スプラウトを製造する方法;
(a)植物の種子を次亜塩素酸塩で処理する工程
(b)次亜塩素酸塩で処理された植物の種子を5℃から50℃未満で栽培する工程、
(c)葉齢0.1から葉齢4.9までの間に、植物の種子の栽培を停止する工程。
〔3〕以下の(a)および(b)の工程を含む、γ‐アミノ酪酸を含む植物スプラウトを製造する方法;
(a)植物の種子を5℃から50℃未満で栽培する工程、
(b)栽培開始後3日から14日までの間に、植物の種子の栽培を停止する工程。
〔4〕以下の(a)および(b)の工程を含む、γ‐アミノ酪酸を含む植物スプラウトを製造する方法;
(a)植物の種子を5℃から50℃未満で栽培する工程、
(b)葉齢1.0から葉齢4.9までの間に、植物の種子の栽培を停止する工程。
〔5〕植物が単子葉植物である、〔1〕から〔4〕のいずれかに記載の方法。
〔6〕単子葉植物がイネ科植物である、〔5〕に記載の方法。
〔7〕イネ科植物がイネ、コムギ、オオムギ、ライムギ、エンバク(オーツムギ、カラスムギ)、ヒエ、アワ、キビ、トウモロコシ、シコクビエ、ソルガム(モロコシ)、ハトムギ、タケ、マコモ、またはサトウキビである、〔6〕に記載の方法。
〔8〕以下の(a)から(c)の工程を含む、γ‐アミノ酪酸を含む粉末であって、乾燥された植物スプラウトの粉末の製造方法;
(a)〔1〕から〔4〕のいずれかに記載の方法で、γ‐アミノ酪酸を含む植物スプラウトを製造する工程、
(b)工程(a)で製造された植物スプラウトを乾燥する工程、
(c)工程(b)で乾燥された植物スプラウトを粉砕する工程。
〔9〕以下の(a)および(b)の工程を含む、γ‐アミノ酪酸の製造方法;
(a)〔1〕から〔4〕のいずれかに記載の方法で、γ‐アミノ酪酸を含む植物スプラウトを製造する工程、
(b)工程(a)で製造された植物スプラウト、または乾燥された該植物スプラウトの粉末からγ‐アミノ酪酸を抽出する工程。
〔10〕以下の(a)および(b)の工程を含む、植物スプラウト、乾燥された該植物スプラウトの粉末、または、それらから抽出されたγ‐アミノ酪酸を含む食品組成物の製造方法;
(a)〔1〕から〔4〕のいずれかに記載の方法で、γ‐アミノ酪酸を含む植物スプラウトを製造する工程、
(b)工程(a)で製造された植物スプラウト、乾燥された該植物スプラウトの粉末、または、それらから抽出されたγ‐アミノ酪酸、および、飲食品として許容される担体を混合する工程。
〔11〕以下の(a)および(b)の工程を含む、植物スプラウト、乾燥された該植物スプラウトの粉末、または、それらから抽出されたγ‐アミノ酪酸を含む医薬組成物の製造方法;
(a)〔1〕から〔4〕のいずれかに記載の方法で、γ‐アミノ酪酸を含む植物スプラウトを製造する工程、
(b)工程(a)で製造された植物スプラウト、乾燥された該植物スプラウトの粉末、または、それらから抽出されたγ‐アミノ酪酸、および、医薬的に許容される担体を混合する工程。
〔12〕γ‐アミノ酪酸を含む植物スプラウトであって、該植物スプラウトにおけるγ‐アミノ酪酸の蓄積量は、水分含量が0.5重量%以下まで植物スプラウトを乾燥させた後に粉砕することにより得られる粉末において測定した場合、その粉末1g当たり0.5mg以上であることを特徴とする植物スプラウト。
〔13〕植物が単子葉植物である、〔12〕に記載のスプラウト。
〔14〕単子葉植物がイネ科植物である、〔13〕に記載のスプラウト。
〔15〕イネ科植物がイネ、コムギ、オオムギ、ライムギ、エンバク(オーツムギ、カラスムギ)、ヒエ、アワ、キビ、トウモロコシ、シコクビエ、ソルガム(モロコシ)、ハトムギ、タケ、マコモ、またはサトウキビである、〔14〕に記載のスプラウト。
〔16〕乾燥された植物スプラウトの粉末であって、該粉末1g当たりのγ‐アミノ酪酸の蓄積量が0.5mg以上であることを特徴とする粉末。
〔17〕〔12〕に記載の植物スプラウト、〔16〕に記載の粉末、または、それらから抽出されたγ‐アミノ酪酸、および、飲食品として許容される担体を含む食品組成物。
〔18〕〔12〕に記載の植物スプラウト、〔16〕に記載の粉末、または、それらから抽出されたγ‐アミノ酪酸、および、医薬的に許容される担体を含む医薬組成物。
〔19〕植物スプラウトにおいて、γ‐アミノ酪酸の蓄積量が最も高くなる時期を早期化する方法であって、植物の種子を光照射条件下で栽培する工程を含む方法。
〔20〕植物スプラウトにおいて、γ‐アミノ酪酸の蓄積量が最も高くなる時期を早期化する方法であって、植物の種子を次亜塩素酸塩で処理する工程、及び、次亜塩素酸塩で処理された植物の種子を光照射条件下で栽培する工程を含む方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明を使用することによって、高濃度のGABAが富化されたイネスプラウトを乾燥・粉末化することにより、優れた加工特性を生かした食品(麺、米菓子、パン、ライスペーパー、清涼飲料、清酒)やサプリメントにも応用可能である。また、浸漬前の殺菌処理を用いることにより、微生物の繁殖を抑え、コメ本来の香味を維持した安全性が高く且つ単体でも美味しいイネ粉末を提供できる。また本方法は、イネスプラウトに限ったことでなく、イネ以外の穀類、具体的にはイネ科として、麦類(オオムギ、コムギ、ライムギ、ハトムギ、エンバク)、ヒエ、アワ、キビ、トウモロコシ、そのほかの穀物として、ダイズ、緑豆、ソバ、アズキ、野菜類としてダイコン、ブロッコリー、アルファルファ、レッドキャベツ、マスタード、クレスなどを用いた場合でも本法の利用が可能である。
〔発明の実施の形態〕
【0011】
本発明は、γ‐アミノ酪酸(γ-Aminobutyric acid:GABA)を含む植物スプラウトを製造する方法を提供する。
スプラウトとは、一般的に、発芽から幼苗期までの植物であって、種子に含まれる養分だけで生育が可能な時期の植物を指す。本発明において、スプラウトは、幼植物、幼苗、新芽などと表現することもできる。
本発明における植物は、好ましくは単子葉植物である。単子葉類としては、イネ科、アナナス科、サトイモ科、ショウガ科、ヤマイモ科、ユリ科が例示できるが、これらに限定されない。またイネ科としては、イネ、コムギ、オオムギ、ライムギ、エンバク(オーツムギ、カラスムギ)、ヒエ、アワ、キビ、トウモロコシ、シコクビエ、ソルガム(モロコシ)、ハトムギ、タケ、マコモ、サトウキビ、アナナス科としては、パイナップル、サトイモ科としては、コンニャク、ショウガ科としては、ウコン、ヤマイモ科としては、ヤマイモ、ユリ科としては、ネギ、アロエ、カタクリが例示できるが、これらに限定されない。
【0012】
本発明者らは、植物の種子を特定条件下で栽培し、栽培開始から一定期間で栽培を停止すると、GABAが多量に蓄積した植物スプラウトを製造できることを見出した。本発明者らは、この知見に基づき、以下の(a)および(b)の工程を含む、GABAを含む植物スプラウトを製造する方法を提供する。
(a)植物の種子を5℃から50℃未満で栽培する工程、
(b)栽培開始から一定期間で、植物の種子の栽培を停止する工程。
【0013】
本発明の方法では、まず、植物の種子を栽培(培養)する。栽培温度は、5℃から50℃未満であれば、特に制限はないが、栽培対象となる植物の種子の発芽や生育に最適な温度が挙げられる。栽培方法としては、実施例に記載のように、培養用プレートを用いて養分を含まない水のみで水耕栽培する方法が例示できるが、これに制限されず、例えば培養液を使用した水耕栽培方法が挙げられる。また工業的に生産する方法として、カイワレダイコンのような縦型容器に播種し生産する方法、回転ドラム方式でスプラウトを生産する方法が挙げられる。
【0014】
本発明の方法では、次いで、植物の種子の栽培時間、植物スプラウトの草型、または植物スプラウトの葉齢などを指標に、栽培開始から一定期間で、生育した植物スプラウトを採取し、植物の種子の栽培を停止する。例えば、「栽培開始後3日から14日までの間に」、「第1葉の展開から第4葉の展開までの間に」、または「葉齢1.0から4.9までの間に」に、生育した植物スプラウトを採取し、植物の種子の栽培を停止する。採取した植物スプラウトは乾燥保存することができる。
【0015】
「栽培開始後3日から14日までの間に」は、「栽培開始後X日からY日までの間に(X<Y であって、Xは3から13までの整数、及びYは4から14までの整数)」と表現することもできる。この期間内であれば、栽培日数や栽培時間に制限はない。
また、「第1葉の展開から第4葉の展開までの間に」は、「第X葉の展開から第Y葉の展開までの間に(X<Y であって、Xは1から3までの整数、及びYは2から4までの整数)」と表現することもできる。「第1葉の展開から第4葉の展開までの間」の草型としては、例えば、第1葉が展開している状態(ただし、第2葉以降の葉は展開していない状態)、第2葉が展開している状態(ただし、第3葉以降の葉は展開していない状態)、第3葉が展開している状態(ただし、第4葉以降の葉は展開していない状態)、第4葉が展開している状態(ただし、第5葉以降の葉は展開していない状態)が例示できるが、これらに制限されるものではない。
また、「葉齢1.0から4.9までの間に」は、「X.Y齢である時に(Xは1から4の整数、Yは0から9の整数)」と表現することもできる。
【0016】
なお、葉鞘の展開後から第1葉の展開までの葉齢は0.1から0.9である。第1葉の展開後から第2葉の展開までの葉齢は1.0から1.9である。第2葉の展開後から第3葉の展開までの葉齢は2.0から2.9である。第3葉の展開後から第4葉の展開までの葉齢は3.0から3.9である。第4葉の展開後から第5葉の展開までの葉齢は4.0から4.9である。小数点以下は、「これから展開に向かって生長する若い葉の長さ」を「既に展開した直前の葉の長さ×1.2」で割ったものである(角田公正、星川清親:作物入門、p68、69 実教出版(1998))。よって、例えば、第3葉の展開後の葉齢は、「第4葉の長さ」/「第3葉の長さ×1.2」+3、第4葉の展開後の葉齢は、「第5葉の長さ」/「第4葉の長さ×1.2」+4で求めることができる(角田公正、星川清親:作物入門、p68、69 実教出版(1998))。
【0017】
葉齢から葉の展開の状態を特定することができる。例えば、葉齢3.0とは、第3葉が展開している状態で、かつ、第4葉目は出現していない状態である。葉齢3.5とは、第3葉が展開している状態で、かつ、第4葉目が出現し伸びて(生長して)いるが、展開はしていない状態である。
【0018】
さらに、本発明者らは、次亜塩素酸塩で処理された植物の種子を特定条件下で栽培し、栽培開始から一定期間で栽培を停止すると、GABAが多量に蓄積した植物スプラウトを製造できることを見出した。また、この方法は、次亜塩素酸塩で処理されていない植物の種子を用いる方法と比較して、より多量のGABAが蓄積した植物スプラウトが製造できることを見出した。本発明者らは、この知見に基づき、以下の(a)から(c)の工程を含む、GABAを含む植物スプラウトを製造する方法を提供する。
(a)植物の種子を次亜塩素酸塩で処理する工程
(b)次亜塩素酸塩で処理された植物の種子を5℃から50℃未満で栽培する工程、
(c)栽培開始から一定期間で、植物の種子の栽培を停止する工程。
【0019】
本発明の方法では、まず次亜塩素酸塩を含む水溶液と植物の種子を混合することにより、植物の種子を殺菌処理する。本発明における次亜塩素酸塩としては、次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸カルシウムが例示できる。次亜塩素酸ナトリウムとしては、0.001%〜0.01%の次亜塩素酸ナトリウムが例示できる。例えば種子1g当たり0.001〜0.01%の次亜塩素酸ナトリウム10 mlで種子を処理するが、より高濃度の処理条件でもよい。また、次亜塩素酸カルシウムとしては0.001%〜0.01%の次亜塩素酸カルシウムが例示できる。例えば種子1g当たり0.001%〜0.01%の次亜塩素酸カルシウム10 mlで種子を処理するが、より高濃度の処理条件でもよい。
【0020】
本発明の方法では、次いで、殺菌処理された植物の種子を洗浄する。洗浄条件として、実施例に記載の洗浄条件が例示できるが、これに制限されるものではない。
本発明の方法では、次いで、洗浄された植物の種子を栽培(培養)する。栽培温度は、5℃から50℃未満であれば、特に制限はないが、栽培対象となる植物の種子の発芽や生育に最適な温度が挙げられる。栽培方法としては、実施例に記載のように、培養用プレートを用いて養分を含まない水のみで水耕栽培する方法が例示できるが、これに制限されず、例えば培養液を使用した水耕栽培方法が挙げられる。
【0021】
本発明の方法では、次いで、植物の種子の栽培時間、植物スプラウトの草型、または植物スプラウトの葉齢などを指標に、栽培開始から一定期間で、生育した植物スプラウトを採取し、植物の種子の栽培を停止する。例えば、「栽培開始後1日から14日までの間に」、「発芽から第4葉の展開までの間に」、または「葉齢0.1から4.9までの間に」に、生育した植物スプラウトを採取し、植物の種子の栽培を停止する。採取した植物スプラウトは乾燥保存することができる。
【0022】
「栽培開始後1日から14日までの間に」は、「栽培開始後X日からY日までの間に(X<Y であって、Xは1から13までの整数、及びYは2から14までの整数)」と表現することもできる。この期間内であれば、栽培日数や栽培時間に制限はない。
【0023】
また、「発芽から第4葉の展開までの間」には、「発芽から葉鞘の展開までの間」、「発芽から第X葉の展開までの間に(Xは1から4までの整数)」、「葉鞘の展開から第X葉の展開までの間に(Xは1から4までの整数)」、「第X葉の展開から第Y葉の展開までの間(X<Y であって、Xは1から3までの整数、及びYは2から4までの整数)」が含まれる。「発芽から第4葉の展開までの間に」の草型としては、例えば、発芽している状態、葉鞘が展開している状態(ただし、第1葉以降の葉は展開していない状態)、第1葉が展開している状態(ただし、第2葉以降の葉は展開していない状態)、第2葉が展開している状態(ただし、第3葉以降の葉は展開していない状態)、第3葉が展開している状態(ただし、第4葉以降の葉は展開していない状態)、第4葉が展開している状態(ただし、第5葉以降の葉は展開していない状態)が例示できるが、これらに制限されるものではない。
また、「葉齢0.1から4.9までの間に」は、「X.Y齢である時に(Xは0から4の整数、Yは0から9の整数)」と表現することもできる。
【0024】
本発明の方法を用いれば、GABA蓄積量を上昇できる(GABAを富化できる)。よって、本発明は、GABA蓄積量を上昇させる方法(GABAを富化する方法)、および、GABAの蓄積量が高い植物スプラウト(GABAが富化した植物スプラウト)を製造する方法もまた提供する。
本発明の植物スプラウトにおけるGABA蓄積量としては、水分含量が0.5重量%以下まで植物スプラウトを乾燥させた後に粉砕することにより得られる粉末において測定した場合、その粉末1g当たりX.Ymg以上(ただし、0mgは含まない)(XとYは、それぞれ独立に、0から9までの整数)が例示できるが、これに制限されるものではない。
【0025】
例えば、麗江新団黒谷に対して、光照射条件下で本発明の方法を適用する場合、栽培開始後1日から19日までの間に、発芽から第4葉の展開までの間に、あるいは、葉齢0.1から4.9までの間に、栽培を停止することができる(図5A参照)。また、栽培開始後2日から15日までに栽培を停止することで、1mg/g以上(水分含量が0.5重量%以下までスプラウトを乾燥させた後に粉砕することにより得られる粉末において測定した場合、その粉末1g当たり1mg以上を意味する。以下同様である。)のGABAを含む麗江新団黒谷のスプラウトを製造することができる。また、栽培開始後5日から10日までに栽培を停止することで、2mg/g以上のGABAを含む麗江新団黒谷のスプラウトを製造することができる。また、約0.5 mg/gから約3.2 mg/gのGABAを含む麗江新団黒谷のスプラウトを得ることができる。
【0026】
また、麗江新団黒谷に対して、暗黒条件下(光非照射条件下)で本発明の方法を適用する場合、栽培開始後1日から19日までの間に、発芽から第4葉の展開までの間に、あるいは、葉齢0.1から4.9までの間に、栽培を停止することができる(図5B参照)。また、栽培開始後4日から15日までに栽培を停止することで、1mg/g以上のGABAを含む麗江新団黒谷のスプラウトを製造することができる。また、栽培開始後8日から13日までに栽培を停止することで、2mg/g以上のGABAを含む麗江新団黒谷のスプラウトを製造することができる。また、約0.1 mg/gから約3.3 mg/gのGABAを含む麗江新団黒谷のスプラウトを得ることができる。
【0027】
また、麗江新団黒谷に対して、暗黒条件下で本発明の方法を適用する場合、栽培開始後1日から14日までの間に、発芽から第3葉の展開までの間に、あるいは、葉齢0.1から3.9までの間に、栽培を停止することができる(図2A参照)。また、栽培開始後6日から13日までに栽培を停止することで、1mg/g以上のGABAを含む麗江新団黒谷のスプラウトを製造することができる。また、約0.1 mg/gから約2.1 mg/gのGABAを含む麗江新団黒谷のスプラウトを得ることができる。
【0028】
また、コシヒカリに対して、暗黒条件下で本発明の方法を適用する場合、栽培開始後1日から14日までの間に、発芽後葉鞘の展開から第3葉の展開までの間に、あるいは、葉齢0.1から3.9までの間に、栽培を停止することができる(図3B参照)。また、栽培開始後5日から14日までに栽培を停止することで、1mg/g以上のGABAを含むコシヒカリのスプラウトを製造することができる。また、栽培開始後8日から13日までに栽培を停止することで、2mg/g以上のGABAを含むコシヒカリのスプラウトを製造することができる。また、栽培開始後9日から12日までに栽培を停止することで、3mg/g以上のGABAを含むコシヒカリのスプラウトを製造することができる。また、約0.1 mg/gから約4.7 mg/gのGABAを含むコシヒカリのスプラウトを得ることができる。
【0029】
また、プリンセスサリーに対して、暗黒条件下で本発明の方法を適用する場合、栽培開始後1日から14日までの間に、発芽後葉鞘の展開から第3葉の展開までの間に、あるいは、葉齢0.1から3.9までの間に、栽培を停止することができる(図3C参照)。また、栽培開始後5日から11日までに栽培を停止することで、1mg/g以上のGABAを含むプリンセスサリーのスプラウトを製造することができる。また、約0.1 mg/gから約2.6 mg/gのGABAを含むプリンセスサリーのスプラウトを得ることができる。
【0030】
また、ベニロマンに対して、暗黒条件下で本発明の方法を適用する場合、栽培開始後1日から14日までの間に、発芽後葉鞘の展開から第3葉の展開までの間に、あるいは、葉齢0.1から3.9までの間に、栽培を停止することができる(図3D参照)。また、栽培開始後5日から14日までに栽培を停止することで、1mg/g以上のGABAを含むベニロマンのスプラウトを製造することができる。また、栽培開始後7日から13日までに栽培を停止することで、2mg/g以上のGABAを含むベニロマンのスプラウトを製造することができる。また、約0.1 mg/gから約3.5 mg/gのGABAを含むベニロマンのスプラウトを得ることができる。
【0031】
また、黒米に対して、暗黒条件下で本発明の方法を適用する場合、栽培開始後1日から14日までの間に、発芽後葉鞘の展開から第3葉の展開までの間に、あるいは、葉齢0.1から3.9までの間に、栽培を停止することができる(図3E参照)。また、栽培開始後4日から14日までに栽培を停止することで、1mg/g以上のGABAを含む黒米のスプラウトを製造することができる。また、栽培開始後6日から14日までに栽培を停止することで、2mg/g以上のGABAを含む黒米のスプラウトを製造することができる。また、栽培開始後9日から14日までに栽培を停止することで、3mg/g以上のGABAを含む黒米のスプラウトを製造することができる。また、栽培開始後11日であれば、4mg/g以上のGABAを含む黒米のスプラウトを製造することができる。また、約0.1 mg/gから約4.7 mg/gのGABAを含む黒米のスプラウトを得ることができる。
【0032】
また、朝紫に対して、暗黒条件下で本発明の方法を適用する場合、栽培開始後1日から14日までの間に、発芽後葉鞘の展開から第3葉の展開までの間に、あるいは、葉齢0.1から3.9までの間に、栽培を停止することができる(図3F参照)。また、栽培開始後4日から12日までに栽培を停止することで、1mg/g以上のGABAを含む朝紫のスプラウトを製造することができる。また、栽培開始後6日から10日までに栽培を停止することで、2mg/g以上のGABAを含む朝紫のスプラウトを製造することができる。また、約0.2 mg/gから約3.3 mg/gのGABAを含む朝紫のスプラウトを得ることができる。
【0033】
また、二条オオムギに対して、暗黒条件下で本発明の方法を適用する場合、栽培開始後2日から14日までの間に、発芽から第1葉の展開までの間に、あるいは、葉齢0.1から1.9までの間に、栽培を停止することができる(図9A未処理参照)。また、栽培開始後6日から12日までに栽培を停止することで、0.5mg/g以上のGABAを含む二条オオムギのスプラウトを製造することができる。また、約0.2 mg/gから約0.8 mg/gのGABAを含む二条オオムギのスプラウトを得ることができる。
【0034】
また、二条オオムギに対して、暗黒条件下で本発明の方法を適用する場合、栽培開始後2日から14日までの間に、発芽後葉鞘の展開から第1葉の展開までの間に、あるいは、葉齢0.1から1.9までの間に、栽培を停止することができる(図9A次亜塩素酸ナトリウム処理参照)。また、栽培開始後6日から14日までに栽培を停止することで、0.5mg/g以上のGABAを含む二条オオムギのスプラウトを製造することができる。また、約0.2 mg/gから約1.2 mg/gのGABAを含む二条オオムギのスプラウトを得ることができる。
【0035】
また、ライムギに対して、暗黒条件下で本発明の方法を適用する場合、栽培開始後2
日から14日までの間に、発芽後葉鞘の展開から第1葉の展開までの間に、あるいは、葉齢0.1から1.9までの間に、栽培を停止することができる(図9B未処理参照)。また、栽培開始後6日から14日までに栽培を停止することで、0.5mg/g以上のGABAを含むライムギのスプラウトを製造することができる。また、約0.2 mg/gから約1.0 mg/gのGABAを含むライムギのスプラウトを得ることができる。
【0036】
また、ライムギに対して、暗黒条件下で本発明の方法を適用する場合、栽培開始後2日から14日までの間に、発芽後葉鞘の展開から第1葉の展開までの間に、あるいは、葉齢0.1から1.9までの間に、栽培を停止することができる(図9B次亜塩素酸ナトリウム処理参照)。また、栽培開始後4日から14日までに栽培を停止することで、0.5mg/g以上のGABAを含むライムギのスプラウトを製造することができる。また、約0.2 mg/gから約1.1 mg/gのGABAを含むライムギのスプラウトを得ることができる。
【0037】
また、エンバクに対して、暗黒条件下で本発明の方法を適用する場合、栽培開始後2日から14日までの間に、発芽後葉鞘の展開から第1葉の展開までの間に、あるいは、葉齢0.1から1.9までの間に、栽培を停止することができる(図9C未処理参照)。また、栽培開始後8日から14日までに栽培を停止することで、0.5mg/g以上のGABAを含むエンバクのスプラウトを製造することができる。また、約0.1 mg/gから約1.1 mg/gのGABAを含むエンバクのスプラウトを得ることができる。
【0038】
また、エンバクに対して、暗黒条件下で本発明の方法を適用する場合、栽培開始後2
日から14日までの間に、発芽後葉鞘の展開から第1葉の展開までの間に、あるいは、葉齢0.1から1.9までの間に、栽培を停止することができる(図9C次亜塩素酸ナトリウム処理参照)。また、栽培開始後8日から14日までに栽培を停止することで、0.5mg/g以上のGABAを含むエンバクのスプラウトを製造することができる。また、約0.2 mg/gから約1.2 mg/gのGABAを含むエンバクのスプラウトを得ることができる。
【0039】
本発明における暗黒条件とは、照度0 luxである条件を意味する。この条件におけるGABA蓄積量と同様のGABA蓄積量が得られる限り、短時間の光照射条件が含まれる条件であっても、その条件は本発明の暗黒条件に含まれる。
また、本発明における光照射条件とは、照度1 lux以上の条件を意味する。この条件におけるGABA蓄積量と同様のGABA蓄積量が得られる限り、短時間の暗黒条件が含まれる条件であっても、その条件は本発明の光照射条件に含まれる。
また、本発明における光照射条件において、光強度に制限はないが、例えば100 lux以上の光強度が挙げられる。また、光の種類に制限はなく、通常のタングステン電球、蛍光灯、水銀灯などの人工光や日光などの自然光などが利用できる。人工光に関し、例えば光波長600 nmから800 nmの成分を含むような植物生育用の蛍光灯が挙げられる。
【0040】
また、本発明は、以下の(a)から(c)の工程を含む、GABAを含む粉末であって、乾燥された植物スプラウトの粉末の製造方法を提供する。
(a)上述の方法で、GABAを含む植物スプラウトを製造する工程、
(b)工程(a)で製造された植物スプラウトを乾燥する工程、
(c)工程(b)で乾燥された植物スプラウトを粉砕する工程。
植物スプラウトの乾燥方法は、植物の乾燥方法として当業者に周知の方法であれば特に制限はないが、例えば、実施例に記載の凍結乾燥法以外に、操作圧力(常圧乾燥、真空乾燥)、乾燥機の機構(静置、攪拌、塗り付け、輸送)、熱源伝達方法(加熱空気、減湿空気、燃焼ガス、伝熱、マイクロ波、赤外線)等を単独または適宜組み合わせて使用する方法が挙げられる(例えば露木英男、越後多嘉志、鴨居郁三、菅野長右エ門、竹中哲夫:食品製造科学、p110〜118 建白社(1994))。
【0041】
また乾燥した植物スプラウトを粉砕する方法としては、当業者に周知の方法であれば特に制限はない。実施例に記載の方法に限定されず、粉砕機(作用力として圧縮式、衝撃式、せん断式、衝撃せん断式、圧縮せん断式等)、粒度(粗砕、中砕、微粉砕、超微粉砕等)、操作方式(乾式粉砕方式、湿式粉砕方式、循環による方式(回分粉砕方式、開回分粉砕方式、閉回分粉砕方式)、通風方式、冷却方式)等を単独または適宜組み合わせて使用する方法が挙げられる(例えば露木英男、越後多嘉志、鴨居郁三、菅野長右エ門、竹中哲夫:食品製造科学、p99、100 建白社(1994))。
【0042】
また、本発明は、以下の(a)および(b)の工程を含む、GABAの製造方法を提供する。
(a)上述の方法で、GABAを含む植物スプラウトを製造する工程、
(b)工程(a)で製造された植物スプラウト、または乾燥された該植物スプラウトの粉末からGABAを抽出する工程。
植物スプラウト、または乾燥された該植物スプラウトの粉末からのGABAの抽出方法としては、実施例に記載の方法が例示できるが、この方法に制限されるものではない。例えば、スプラウトもしくはその粉末を、必要に応じてn−ヘキサン等で脱脂した後、含水アルコール(メタノール、エタノール、2−プロパノール等)、水(脱イオン水、蒸留水、軟水等)または酸(ギ酸、酢酸、塩酸等)で、pH調製した弱酸性水等を添加し、20〜90℃で20〜60分間還流抽出または室温抽出を行った後、遠心分離またはろ過処理を行い、上清を回収する方法がある。同様の工程を3回程度繰り返した後、すべての上清を回収し、ロータリーエバポレータや水流ポンプ等を用い40℃で濃縮乾固する。得られた抽出物は、必要に応じて、除タンパク、糖類の除去、脱脂等の前処理を行った後、各種クロマトグラフィーまたは再結晶等を施すことにより、高純度のGABAを単離できる。また、GABAを酸性条件で抽出したのちイオン交換クロマトグラフィーで精製する方法(特開平8−280394)も使用できる。
【0043】
本発明は、(1)上記の方法で製造される植物スプラウト、(2)上記の方法で製造される植物スプラウトの粉末、および(3)上記の方法で製造されるGABAもまた提供するものである。
例えば、本発明は、GABAを含む植物スプラウトであって、乾燥された該植物スプラウトの粉末1g当たりのGABAの蓄積量がX.Ymg以上(ただし、0mgは含まない)(XとYは、それぞれ独立に、0から9までの整数)であることを特徴とする植物スプラウトを提供する。また、乾燥された植物スプラウトの粉末であって、該粉末1g当たりのGABAの蓄積量がX.Ymg以上(ただし、0mgは含まない)(XとYは、それぞれ独立に、0から9までの整数)であることを特徴とする粉末を提供する。
【0044】
さらに、本発明は、上記(1)から(3)より選択される少なくとも1つを含む組成物とその製造方法を提供する。該組成物は、神経機能(脳機能改善作用、脳の代謝促進作用、精神安定作用、ストレス軽減作用、学習記憶能の向上)(茅原ら, 食品と開発,36,4-6(2001)、および、岡田ら, 日本食品科学工学会誌,47,596-603(2000))、血液に関わる機能(血圧調節機能、血中コレステロール低下作用)(大森ら, 日本農芸化学会誌,61,1449-1451(1987)、辻ら,栄養学雑誌 50,285-291(1992)、および、中村ら,日本農芸化学会誌,74,907-909(1987))や免疫機能(アレルギー予防)、動脈硬化の予防、アルコール代謝促進作用、抗がん作用、消臭作用、皮膚の老化防止などの効能を有する。よって、本発明の組成物は、食品組成物、および医薬組成物として使用できる。
また、上記(1)および(2)より選択される少なくとも1つを含む組成物は、GABA以外に食物繊維が含まれている。よって、本発明の組成物は、高コレステロール血症の予防(斎藤ら,日本栄養・食糧学会誌,53(2),87-94(2000))、血糖値上昇抑制作用(Sekiら, Biol. Pharm. Bull.., 8(8), 1539-1541(2005)、およびHagiwaraら, Biosci. Biotech. Biochem., 68(2), 44-447(2004))、腸管細胞増殖作用(佐々木ら,腸内細菌学雑誌,19(1),1-8(2005))、便秘解消等の効能を有する。よって、本発明の組成物は、食品組成物、および医薬組成物として使用できる。
【0045】
本発明の食品組成物は、上記(1)から(3)より選択される少なくとも1つを必須成分とし、更に必要に応じて飲食品として許容される各種の添加剤などの飲食品として許容される担体を配合することができる。該添加剤としては、例えば乳化剤、アミノ酸、ビタミン類、香料、有機酸、浸透圧調整剤、炭酸、甘味料、カルニチン、着色料、光沢剤、香辛料抽出物、調味料、苦味料、増粘剤、安定剤、ゲル化剤、糊料、栄養強化剤、保存料、酸化防止剤、小麦粉、米粉、澱粉、コーンスターチ、大豆類等を挙げることができ、これらを必要に応じて単独で又は適宜組み合せて使用することができる。
より具体的には、乳化剤としては、レシチン等のリン脂質、ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル等を例示できる。また、アミノ酸としては、全てのアミノ酸を使用できる。また、ビタミン類としては、ビタミンC、ビタミンB群、ビタミンE、ビタミンA等を例示できる。また、有機酸としては、クエン酸、リンゴ酸、 フマル酸、マロン酸、コハク酸、酒石酸、乳酸、カプリン酸、カプリル酸、パルミチン酸、パルミトオイレン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸等を例示できる。
【0046】
また、香料としてはバニラ、コーヒー、ライム、レモン等のエッセンス、かんきつ系フレーバーとしてオレンジ、グレープフルーツ、レモンライム、ゆず等、フルーツ系フレーバーとしてアップル、ストロベリー、メロン、グレープ、バナナ、パイナップル、ピーチ、チェリー、グァバ、マンゴー、パッションフルーツ、パパイヤ、ブラックカーラント、ブルベリー等、ミルク系フレーバーとしてミルク、クリーム、バター、チーズ、ヨーグルト等、ココア、チョコレート系フレーバーとして、ココア、チョコレート等、茶系フレーバーとして紅茶、緑茶、ウーロン茶等、ミント系フレーバーとしてペパーミント、スペアミント等、スパイス系フレーバーとしてガーリック、ジンジャー、ペッパー、シナモン、クローブ、ナツメグ、わさび等、ナッツ系フレーバーとしてピーナッツ、アーモンド、マロン、ウォルナッツ等、ミート・魚介系フレーバーとしてビーフ、ポーク、チキン、かに、えび、うに等、野菜系フレーバーとしてオニオン、トマト、コーン、キャロット等、洋酒系フレーバーとしてウイスキー、ブランデー、ワイン、ラム、マラスキーノ等、シーズニング系フレーバーとしてしょうゆ、ソース、すきやき、バーベキュー、やきそば等、その他のフレーバーとしてハネー、メープル、うめぼし、あん等を例示できる。
【0047】
また、浸透圧調整剤としては、グリセリン等を例示できる。また、甘味料としては、「アスパルテーム」(味の素(株)製)、低甘味度甘味料としてD−キシロース、キシリトール、高甘味度甘味料としてアセスルファムカリウム、カンゾウ抽出物、サッカリンナトリウム、スクラロース、ステビア抽出物、タウマチン等を例示できる。
【0048】
また、嗜好性及び品質の向上に必要な該添加物として、例えば着色料が例示できる。具体的には、色調として紫赤色系(食用赤色106号、ムラサキイモ色素、クチナシ色素)、赤色系(食用赤色2号およびそのアルミニウムレーキ、食用赤色3号およびそのアルミニウムレーキ、食用赤色40号およびそのアルミニウムレーキ、食用赤色102号、食用赤色104号、食用赤色105号、エルダーベリー色素、シソ色素、ムラサキトウモロコシ色素、ブドウ果汁色素、ビートレッド、コチニール色素(中性)、ラック色素(中性)、ベニバナ赤色素)、橙赤色系(ベニコウジ色素、ボイセンベリー色素)、橙色系(食用黄色5号およびそのアルミニウムレーキ、アナトー色素、水溶性アナトー、コチニール色素(酸性)、ラック色素(酸性)、トウガラシ色素)、黄色系(食用黄色4号およびそのアルミニウムレーキ、ウコン色素、オレンジ色素、クチナシ黄色色素、トウモロコシ色素、ニンジンカロテン、β−カロテン、ベニバナ黄色素)、緑色系(食用緑色3号およびそのアルミニウムレーキ、クロロフィリン、クロロフィル、銅クロロフィリンナトリウム、鉄クロロフィリンナトリウム)、青色系(食用青色1号およびそのアルミニウムレーキ、クチナシ青色素、スピルリナ色素)、藍色系(食用青色2号およびそのアルミニウムレーキ、)、茶色系(カカオ色素、タマネギ色素、カラメルI〜IV、コウリャン色素、タマリンド色素、三二酸化鉄)、白色系(二酸化チタン)、黒色系(植物炭末色素)、発色剤(亜硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、硝酸ナトリウム)を例示できる。
【0049】
錠剤の製造時に使用する光沢剤として、ワックスとしてカルナウバロウ(植物性)、ミツロウ(動物性)、マイクロクリスタリンワックス(鉱物性)、樹脂としてシェラックを例示できる。光沢剤は、例えば、錠剤の製造時に使用する。
【0050】
また香辛料抽出物として、アニス、ウイキョウ、ウコン、オールスパイス、オレガノ、カッシア、カラシナ、カルダモン、キャラウェー、クミン、クローブ、コショウ、コリアンダー、サフラン、サボリー、サルビア、サンショウ、シソ、シナモン、ショウガ、スターアニス、セロリー、タイム、タラゴン、ディル、トウガラシ、ナツメグ、ニンニク、バジル、パセリ、パプリカ、マジョラム、ローズマリー、ローレル、ワサビ等を例示できる。香辛料抽出物は、例えば調味料として使用する。
【0051】
その他の調味料として、アミノ酸としてL−グルタミン酸ナトリウム、L−アスパラギン酸ナトリウム、グリシン、DL−アラニン、核酸として5’−イノシン酸二ナトリウム、5’−グアニル酸二ナトリウム、5’−リボヌクレオチド二ナトリウム、有機酸およびその塩類としてクエン酸三ナトリウム、コハク酸、コハク酸二ナトリウム、無機塩として塩化カリウム、ホエイソルトを例示できる。
【0052】
また苦味料として、テルペン類としてイソアルファ苦味酸、アルカロイドとしてカフェイン(抽出物)、テオブロミン、フラバノン配糖体としてナリンジン、テルペン配糖体としてゲンチアナ抽出物を例示できる。
【0053】
また増粘剤、安定剤、ゲル化剤、糊料として、海藻多糖類としてカラギナン、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールエステル、種子多糖類としてグァーガム、カロブビーンガム、タマリンドシードガム、樹脂多糖類としてアラビアガム、トラガントガム、カラヤガム、果皮多糖類としてペクチン、発酵多糖類としてキサンタンガム、ジェランガム、カードラン、プルラン、セルロースおよびその誘導体としてカルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、でん粉誘導体としてデンプングリコール酸ナトリウム、甲殻抽出物としてキチン、キトサンを例示できる。増粘剤、安定剤、ゲル化剤、糊料は、例えば、アイスクリームの製造において使用できる。
【0054】
また栄養価の補充、強化に必要な該添加物として、栄養強化剤が例示できる。具体的には、ビタミン類として水溶性ビタミン類(L−アスコルビン酸(ビタミンC)、L−アスコルビン酸ナトリウム(ビタミンC)、チアミン塩酸塩(ビタミンB1)、ジベンゾイルチアミン塩酸塩(ビタミンB1)、チアミン硝酸塩(ビタミンB1)、チアミンラウリル硫酸塩(ビタミンB1)、リボフラビン(ビタミンB2)、ニコチン酸アミド(ナイアシン))、脂溶性ビタミン類としてレチノール脂肪酸エステル(ビタミンA脂肪酸エステル)、β−カロテン、コレカルシフェロール(ビタミンD3)、抽出トコフェロール(抽出ビタミンE)、ミネラル類としてカルシウム類(炭酸カルシウム、乳酸カルシウム、クエン酸カルシウム、焼成カルシウム)、鉄類(クエン酸第一鉄ナトリウム、ピロリン酸第二鉄、ヘム鉄)亜鉛・銅塩類(グルコン酸亜鉛、グルコン酸銅)、アミノ酸類として必須アミノ酸(L−リジン塩酸塩、L−メチオニン、L−システイン)、他のアミノ酸(L−アスパラギン酸ナトリウム、L−アルギニン)等が例示できる。栄養強化剤は、例えば、栄養補強商品の製造において使用できる。
【0055】
保存性の向上に必要な該添加物として、保存料や酸化防止剤が例示できる。保存料としては、有機酸およびその塩類として安息香酸ナトリウム、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、プロピオン酸、プロピオン酸ナトリウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、有機エステル類としてパラオキシ安息香酸ブチル、パラオキシ安息香酸イソブチル、パラオキシ安息香酸プロピル、無機塩類として亜硫酸ナトリウム、次亜硫酸ナトリウム、ピロ亜硫酸カリウム、ピロ亜硫酸ナトリウム、二酸化硫黄、植物成分抽出物および分解物としてツヤプリシン抽出物、エゴノキ抽出物、ペクチン分解物、タンパク質類としてしらこたん白抽出物、ε−ポリリシンが例示できる。また、酸化防止剤としては、水溶性酸化防止剤としてアスコルビン酸類(L−アスコルビン酸、L−アスコルビン酸ナトリウム)、エリソルビン酸類(エリソルビン酸、エリソルビン酸ナトリウム)、亜硫酸塩類(亜硫酸ナトリウム、ピロ亜硫酸カリウム)、その他(エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム、カテキン)、油溶性酸化防止剤としてトコフェロール類(ミックストコフェロール、DL−α−トコフェロール)、BHT類(ジブチルヒドロキシトルエン;BHT、ブチルヒドロキシアニソール;BHA)、アスコルビン酸エステル類(L−アスコルビン酸パルミチン酸エステル)、香辛料抽出物(ローズマリー抽出物、ペパー抽出物、クローブ抽出物)、その他(没食子酸プロピル、ゴマ油不けん化物、コメヌカ油抽出物)が例示できる。
【0056】
添加剤を使用する場合の使用量は、特に限定されず、常法通り適宜配合すれば良い。
本発明の食品組成物は、飲料及び食品に適した各種の形態に調製される。その調製方法は、通常の飲料及び食品の調製方法とは別段異なることはない。例えば、飲料は本発明必須成分及び必要に応じて各種添加剤の所定量を適当な希釈剤、通常水に溶解し、必要ならば更に超音波処理等により乳化を行なう。この際、必要に応じ、乳化後に添加剤を加えることもできる。上記飲料は、好ましくは浸透圧が300〜400mOsm/kgの範囲に調整されるのが望ましく、この浸透圧調整は、前記浸透圧 調整剤の添加等により行なわれる。本発明組成物である飲料は、また炭酸飲料等の形態に調製することもできる。
【0057】
食品形態としては、例えばアメ、ドロップ、ガム、キャンディー、グミ、錠菓、クッキー、ケーキ、チョコレート、アイスクリーム、ゼリー、ムース、プリン、ビスケット、コーンフレーク、チュアブルタブレット、ウエハース、餅、オブラート、米菓、ドーナツ、ようかん、タフィー、キャラメル、フォンダン、掛物、クラッカー、うどん類、そば、手延べそうめん、中華めん、即席揚げめん、マカロニ類、はるさめ、ビーフン、豆腐、豆乳、油揚、醤油(本醸造醤油、新式醸造醤油、アミノ酸醤油等)、味噌(米味噌、麦味噌、豆味噌等)、ビールおよびビール類似飲料(黒ビール、スタウト、発泡酒、ノンアルコールビール等)、果実酒(ワイン、ブドウ酒、リンゴ酒等)、蒸留酒(ウイスキー、焼酎、ウオッカ、ブランデー、ジン等)、混成酒(合成清酒、リキュール等)食酢(米酢、酒粕酢、麦芽酢、アルコール酢、果実酢、チョコレート飲料、ジャム類(ジャム、ゼリー、マーマレード、プレザーブ等)、漬物(塩漬、粕漬、酢漬、麹漬、醤油漬、味噌漬、からし漬等)、植物油、マーガリン、ショートニングオイル、粉末油脂、クリーム、バター、チーズ、発酵乳(ヨーグルト等)、乳酸菌飲料、練乳、粉乳、ソーセージ類、菓子類(煎餅等)、飲料類(炭酸飲料、清涼飲料、乳飲料、コーヒー飲料、紅茶飲料、果汁入り清涼飲料、栄養飲料、アルコール飲料、ミネラルウォーター等)、粉末飲料(粉末ジュース、粉末スープ等)、バランス栄養食、サプリメント(粉末、カプセル、錠剤等の形態を有するサプリメント)、調味料(ドレッシング、ソース等)、パン類、麺類、かまぼこ等の練り製品、ふりかけ、酒類(清酒等)、ライスペーパー等の各種形態を任意に採用できる。これら形態への調製は、常法に従い必須成分及び必要に応じた添加剤を適当な担体を用いるか用いることなく適宜の形態に賦形することにより実施できる。上記のように調製される各種形態の本発明の食品組成物は、常法に従い適宜減菌等の処理を施され製品とされる。
【0058】
本発明の食品組成物としては、例えば、健康食品、栄養補助食品(バランス栄養食、サプリメント等)、栄養機能食品、特定保健用食品等があげられる。
【0059】
本発明の医薬組成物は、常法に従って製剤化することができ(例えば、Remington's Pharmaceutical Science, latest edition, Mark Publishing Company, Easton, U.S.A)、医薬的に許容される添加物などの医薬的に許容される担体を共に含むものであってもよい。例えば界面活性剤、賦形剤、着色料、着香料、保存料、安定剤、緩衝剤、懸濁剤、等張化剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、流動性促進剤、矯味剤等が挙げられるが、これらに制限されず、その他常用の担体が適宜使用できる。具体的には、軽質無水ケイ酸、乳糖、結晶セルロース、マンニトール、デンプン、カルメロースカルシウム、カルメロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート、ポリビニルピロリドン、ゼラチン、中鎖脂肪酸トリグリセライド、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60、白糖、カルボキシメチルセルロース、コーンスターチ、無機塩類等を挙げることができる。
【0060】
本発明の医薬組成物の投与方法は、経口によって実施できる。投与量としては、例えば、一回の投与につき体重1 kgあたり0.0001mgから1000mgの範囲で投与量が選択できる。あるいは、例えば、患者あたり0.001から100000mg/bodyの範囲で投与量が選択できる。しかしながら、本発明の医薬組成物はこれらの投与量に制限されるものではない。
【0061】
さらに、本発明者らは、植物の種子を光照射下で栽培すると、植物スプラウトにおけるGABAが蓄積するピーク時期を早期化することが可能であることを見出した。この知見に基づき、本発明は、植物スプラウトにおいて、GABAの蓄積量が最も高くなる時期を早期化する方法であって、植物の種子を光照射条件下で栽培する工程を含む方法、または、植物スプラウトにおいて、GABAの蓄積量が最も高くなる時期を早期化する方法であって、植物の種子を次亜塩素酸塩で処理する工程、及び、次亜塩素酸塩で処理された植物の種子を光照射条件下で栽培する工程を含む方法を提供する。
これら方法によってGABAが蓄積するピーク時期を早期化できるため、短期間でGABAを含む植物スプラウトの製造が可能となる。また、光未照射時に比べクロロフィル量の増加することや、各種ビタミン類レベルなどのレベルの変化が生じるため、植物スプラウトの利用幅が広がり、また、有用成分を豊富に含む植物スプラウトが製造できる。
【実施例】
【0062】
−試料−
イネ種子は、平成17年度に収穫した耐冷性に優れた品種「麗江新団黒谷」、香り米「プリンセスサリー」、赤米「ベニロマン」、紫黒米「黒米」「朝紫」および日本で最も需要の高い良食味品種「コシヒカリ」を用いた。玄米の前処理は収穫後25℃で通風乾燥を行い、水分含量15%前後に乾燥後、脱穀、籾摺りを行った。その後網目1.6〜1.9 mmの篩にかけ、未熟粒、不稔粒などを取り除いた。得られた精玄米を本発明用の試料として以降の実験に供した。
イネ以外の穀類の種子は、二条オオムギ「ハヤドリ」(カネコ種苗)、ライムギ「ハルミドリ」(カネコ種苗)およびエンバク「ニューオーツ」(カネコ種苗)を用いた。
【0063】
〔実施例1〕殺菌条件がイネスプラウト中のGABA蓄積量に与える影響
−殺菌処理およびイネスプラウトの育成−
殺菌料は、塩素系殺菌料として食品添加物で認可されている次亜塩素酸ナトリウムを用いた。使用基準は「最終食品の完成前に除去しなければならない」とされており、次亜塩素酸ナトリウムにおいては「ゴマに使用してはならない」とされている。次亜塩素酸を主成分とする水溶液は「次亜塩素酸水」として成分規格が定められているため、これらに準じた有効塩素濃度で評価した。
【0064】
麗江新団黒谷の玄米約10gに対し、0.001%、0.005%、0.010%に滅菌水で希釈した殺菌溶液100 mlを加え、30分間、25℃で浸とうさせながら殺菌処理を行った。殺菌処理後、滅菌水に入れ換えて30分振とうする操作を2回繰り返し、玄米の洗浄を行った。コントロールは、滅菌水で同様に処理したものを未処理として用いた。洗浄後、水をよく切り、それぞれの濃度で殺菌した玄米を培養用プレート(Nunc社製、型番166508)に移し、60 mlの滅菌水を加え蓋をした後、30℃、暗所のインキュベータ(SANYO GROWTH CABINET、三洋電機(株)製)内で10日間生育させた。生育中は、24時間毎に滅菌水の入れ換えを行った。生育後、イネスプラウトを採取し、直ちに凍結乾燥した。凍結乾燥は東京理化機械株式会社製のFDU-2200型を用い、真空度:4.0Pa(0.03Torr)、トラップ温度:-80℃で48時間凍結乾燥を行った。このときのサンプルの水分含量は5%以下であった。
【0065】
−イネスプラウトからGABAの抽出−
凍結乾燥したイネスプラウトを乳鉢で液体窒素を加えながら乳棒で粉砕し、イネスプラウト粉末を作製した。イネスプラウト粉末100 mgを50 ml容量の遠沈管(IWAKI製)に量りとり、0.1% ギ酸、50% アセトニトリル溶液を20 ml加え、130回転/分で1時間、25℃で振とうしながら抽出した。その後、5000 rpmで30 分間遠心分離を行い、上清2 mlを2 mlチューブ(Eppendorf社製)に移し、再度、15000 rpmで10 分間遠心分離した。上清を、0.2 μm Millex(登録商標)Syringe Filter Unit(MILLIPORE製)でろ過し、ろ液を分析用の試料として用いた。なお、各サンプルからの抽出は、1試料につき3回ずつ行った。
【0066】
−イネスプラウト中のGABA蓄積量の分析−
GABAの測定は、液体クロマトグラフ−タンデム型質量分析計(Liquid chromatograph/mass spectrometry/ mass spectrometry:LC/MS/MS)を用いた。LC部は、LC-10A series(デガッサー:DGU-14AM、ポンプ:LC-10AD、オートサンプラ:SIL-HTC、カラムオーブン:CTO-10A、UV-Vis検出器:SPD-10AV、島津製作所製)を用いた。HPLCカラムには、Unison UK-Silica(粒径3 μm、2 mm i.d.×50 mm、インタクト(株)製)を用い、カラム温度40℃、流速0.2 ml/minとした。移動相はアセトニトリル/0.1%酢酸アンモニウム(60/40、v/v)のアイソクラティック分析を用いた。MS部は、トリプル四重極型API 2000TM LC/MS/MSシステム(Applied Biosystems社製)、インテグレーターとしてAnalyst(登録商標)ソフトウェア(Applied Biosystems社製)を用いた。装置に供給する窒素ガス、純空気は、エアーテック製のN2 & Pure Gas Generatorで調整した。MS/MS測定は、エレクトロスプレーイオン化(Electrospray ionization:ESI)法、ポジティブイオンモードで行った。イオンスプレー電圧4.5 kV、イオン源温度500℃とした。測定モードは、Multiple reaction monitoring (MRM)で行った。 GABAのMRM測定質量数は、m/z 104(プレカーサーイオン)、m/z 87(プロダクトイオン) とし、コリジョンエネルギー15 Vで測定した。
【0067】
上記で調製した抽出液は、移動相溶媒で10倍希釈した後、10 μLをLC/MS/MSに注入し、保持時間1.0〜2.0 min付近に検出されたピーク面積の平均値からGABA含量を求めた。検量線作成には、γ-アミノ酪酸(和光純薬工業製)を蒸留水で1000 ppmに希釈したものを準備し、移動相溶媒にて0.01 ppm、0.05 ppm、0.10 ppm、0.20 ppm、0.40 ppm、0.60 ppm、0.80 ppm、1.00 ppm、2.00 ppmになるよう段階希釈し、各濃度10 μLをLC/MS/MSに注入した。得られたピーク面積を算出し、検量線を作成した。なお、各分析は3回ずつ行った。
【0068】
−結果−
それぞれの殺菌処理濃度における乾燥重量あたりの平均GABA蓄積量±標準偏差(SD)は、未処理では1.71±0.20 mg/g、0.001%次亜塩素酸ナトリウム処理では2.15±0.13 mg/g、0.005%では2.42±0.16 mg/g、0.01%では3.00±0.18 mg/gであった(図1)。以上の結果から、発芽前の玄米種子に次亜塩素酸ナトリウムで殺菌処理すると、スプラウトに含まれるGABA量が未処理に比べ処理濃度依存的に増加することが明らかになった。
【0069】
〔実施例2〕殺菌未処理時のGABA蓄積量の経時変化
−イネスプラウトの育成−
麗江新団黒谷の玄米50 gに対し、500 mlの滅菌水を添加し90分間振とうした。30分ごとに滅菌水を入れ替えた。その後、水をよく切った玄米を培養用プレートに移し、300 mlの滅菌水を加え蓋をした後、30℃、暗所のインキュベータ内で一定期間生育させ、イネスプラウトを作製した。生育中は、24時間毎に滅菌水の入れ換えを行った。サンプルは採取後直ちに実施例1に記載した方法で凍結乾燥した。
【0070】
−イネスプラウトからGABAの抽出・調製−
GABAの抽出・調製は、実施例1に記載した、−イネスプラウトからGABAの抽出・調製−と同様の方法を用いた。
【0071】
−イネスプラウト中のGABA蓄積量の分析−
GABAの分析は、実施例1に記載した−イネスプラウト中のGABA蓄積量の分析−に従った。
【0072】
−結果−
殺菌処理を行っていない麗江新団黒谷の種子を播種後、発芽から幼苗期における麗江新団黒谷のGABA蓄積量の経時変化を測定した。乾燥重量あたりの平均GABA蓄積量±標準偏差(SD)は、0日目は0.03 ±0.01 mg/g、1日目は0.07 ±0.02 mg/g、2日目は0.28±0.13 mg/g、3日目は0.41±0.18 mg/g、4日目は0.63±0.15 mg/g、5日目は0.78±0.06 mg/g、6日目は1.14±0.32 mg/g、7日目は1.55±0.07 mg/g、8日目は1.68±0.02 mg/g、9日目は1.78±0.37 mg/g、10日目は1.79±0.29 mg/g、11日目は1.82±0.18 mg/g、12日目は1.61±0.01 mg/g、13日目は1.34±0.00 mg/g、14日目は0.96±0.09 mg/gであった(図2A)。
それぞれの日数における葉齢は、0日目は葉齢0.0、1日目は葉齢0.0〜0.9、2日目は葉齢0.0〜1.9、3日目は葉齢0.0〜1.9、4日目は葉齢0.0〜1.9、5日目は葉齢1.0〜2.9、6日目は葉齢1.0〜2.9、7日目は葉齢1.0〜2.9、8日目は葉齢2.0〜3.9、9日目は葉齢2.0〜3.9、10日目は葉齢2.0〜3.9、11日目は葉齢2.0〜3.9、12日目は葉齢2.0〜3.9、13日目は葉齢2.0〜3.9、14日目は葉齢2.0〜3.9であった。麗江新団黒谷では9〜11日目に第3葉が展開し、その時の植物体の高さは約70 mmであった(図2B)。
【0073】
〔実施例3〕様々なイネ品種におけるGABA蓄積量の経時変化
−イネスプラウトの育成−
麗江新団黒谷、コシヒカリ、プリンセスサリー、ベニロマン、黒米および朝紫の玄米50 gに対し、500 mlの0.01%次亜塩素酸ナトリウムをそれぞれ添加し、30分間25℃で浸とうさせながら殺菌処理を行った。殺菌処理後、滅菌水に入れ換えて30分振とうする操作を2回繰り返し、玄米の洗浄を行った。洗浄後、水をよく切り、それぞれの濃度で殺菌した玄米を培養用プレートに移し、300 mlの滅菌水を加え蓋をした後、30℃、暗所のインキュベータ内で一定期間生育させ、イネスプラウトを作製した。生育中は、24時間毎に採取、滅菌水の入れ換えを行い、採取後直ちに実施例1に記載した方法で凍結乾燥した。
【0074】
−イネスプラウトからGABAの抽出・調製−
GABAの抽出・調製は、実施例1に記載した、−イネスプラウトからGABAの抽出・調製−と同様の方法を用いた。
【0075】
−イネスプラウト中のGABA蓄積量の分析−
GABAの分析は、実施例1に記載した−イネスプラウト中のGABA蓄積量の分析−に従った。
【0076】
−結果−
様々なイネ品種の種子を0.01%次亜塩素酸ナトリウムで処理後、発芽から幼苗期におけるGABA蓄積量の経時変化を測定した。乾燥重量あたりの平均GABA蓄積量±標準偏差(SD)は、麗江新団黒谷では、0日目は0.06 ±0.02 mg/g、1日目は0.14 ±0.09 mg/g、2日目は0.35±0.17 mg/g、3日目は0.61±0.13 mg/g、4日目は1.05±0.26 mg/g、5日目は1.38±0.33 mg/g、6日目は1.62±0.40 mg/g、7日目は1.97±0.37 mg/g、8日目は2.17±0.45 mg/g、9日目は2.54±0.43 mg/g、10日目は2.84±0.50 mg/g、11日目は2.88±0.44 mg/g、12日目は2.61±0.50 mg/g、13日目は2.41±0.51 mg/g、14日目は1.93±0.44 mg/gであった(図3A)。
【0077】
コシヒカリでは、0日目は0.12±0.02 mg/g、1日目は0.14±0.01 mg/g、2日目は0.27±0.05 mg/g、3日目は0.48±0.02 mg/g、4日目は0.89±0.07 mg/g、5日目は1.21±0.14 mg/g、6日目は1.67±0.14 mg/g、7日目は1.99±0.28 mg/g、8日目は2.64±0.25 mg/g、9日目は3.33±0.66 mg/g、10日目は3.48±0.62 mg/g、11日目は3.74±0.93 mg/g、12日目は3.18±0.88 mg/g、13日目は2.35±0.69 mg/g、14日目は1.77±0.54 mg/gであった(図3B)。
プリンセスサリーでは、0日目は0.02±0.00 mg/g、1日目は0.27±0.13 mg/g、2日目は0.53±0.15 mg/g、3日目は0.80±0.17 mg/g、4日目は0.98±0.27 mg/g、5日目は1.17±0.32 mg/g、6日目は1.52±0.31 mg/g、7日目は2.18±0.44 mg/g、8日目は1.65±0.15 mg/g、9日目は1.36±0.23 mg/g、10日目は1.16±0.19 mg/g、11日目は1.10±0.29 mg/g、12日目は0.85±0.18 mg/g、13日目は0.59±0.14 mg/g、14日目は0.53±0.10 mg/gであった(図3C)。
ベニロマンでは、0日目は0.16±0.08 mg/g、1日目は0.26±0.13 mg/g、2日目は0.57±0.16 mg/g、3日目は0.59±0.15 mg/g、4日目は0.79±0.24 mg/g、5日目は1.21±0.49 mg/g、6日目は1.64±0.37 mg/g、7日目は2.34±0.56 mg/g、8日目は2.77±0.75 mg/g、9日目は2.58±0.51 mg/g、10日目は2.62±0.63 mg/g、11日目は2.58±0.41 mg/g、12日目は2.40±0.43 mg/g、13日目は2.05±0.34 mg/g、14日目は1.63±0.36 mg/gであった(図3D)。
黒米では、0日目は0.10±0.04 mg/g、1日目は0.27±0.15 mg/g、2日目は0.45±0.14 mg/g、3日目は0.62±0.17 mg/g、4日目は1.02±0.47 mg/g、5日目は1.58±0.49 mg/g、6日目は2.14±0.35 mg/g、7日目は2.52±0.45 mg/g、8日目は2.92±0.31 mg/g、9日目は3.33±0.70 mg/g、10日目は3.89±0.76 mg/g、11日目は4.05±0.57 mg/g、12日目は3.75±0.63 mg/g、13日目は3.51±0.61 mg/g、14日目は3.16±0.34 mg/gであった(図3E)。
朝紫では、0日目は0.07±0.05 mg/g、1日目は0.27±0.08 mg/g、2日目は0.65±0.22 mg/g、3日目は0.78±0.26 mg/g、4日目は1.02±0.30 mg/g、5日目は1.44±0.33 mg/g、6日目は2.06±0.50 mg/g、7日目は2.82±0.49 mg/g、8日目は2.42±0.46 mg/g、9日目は2.32±0.37 mg/g、10日目は2.17±0.25 mg/g、11日目は1.64±0.36 mg/g、12日目は1.05±0.28 mg/g、13日目は0.71±0.14 mg/g、14日目は0.37±0.14 mg/gであった(図3F)。
【0078】
それぞれの日数における葉齢は、麗江新団黒谷では、0日目は葉齢0.0、1日目は葉齢0.0〜0.9、2日目は葉齢0.0〜1.9、3日目は葉齢0.0〜1.9、4日目は葉齢0.0〜1.9、5日目は葉齢1.0〜2.9、6日目は葉齢1.0〜2.9、7日目は葉齢1.0〜2.9、8日目は葉齢2.0〜3.9、9日目は葉齢2.0〜3.9、10日目は葉齢2.0〜3.9、11日目は葉齢2.0〜3.9、12日目は葉齢2.0〜3.9、13日目は葉齢2.0〜3.9、14日目は葉齢2.0〜3.9であった。
コシヒカリでは、0日目は葉齢0.0、1日目は葉齢0.0〜0.9、2日目は葉齢0.0〜1.9、3日目は葉齢0.0〜1.9、4日目は葉齢0.0〜1.9、5日目は葉齢0.0〜1.9、6日目は葉齢1.0〜2.9、7日目は葉齢1.0〜2.9、8日目は葉齢1.0〜2.9、9日目は葉齢2.0〜3.9、10日目は葉齢2.0〜3.9、11日目は葉齢2.0〜3.9、12日目は葉齢2.0〜3.9、13日目は葉齢2.0〜3.9、14日目は葉齢2.0〜3.9であった。
プリンセスサリーでは、0日目は葉齢0.0、1日目は葉齢0.0〜0.9、2日目は葉齢0.0〜1.9、3日目は葉齢0.0〜1.9、4日目は葉齢0.0〜1.9、5日目は葉齢1.0〜2.9、6日目は葉齢1.0〜2.9、7日目は葉齢1.0〜2.9、8日目は葉齢1.0〜2.9、9日目は葉齢1.0〜2.9、10日目は葉齢2.0〜3.9、11日目は葉齢2.0〜3.9、12日目は葉齢2.0〜3.9、13日目は葉齢2.0〜3.9、14日目は葉齢2.0〜3.9であった。
ベニロマンでは、0日目は葉齢0.0、1日目は葉齢0.0〜0.9、2日目は葉齢0.0〜1.9、3日目は葉齢0.0〜1.9、4日目は葉齢0.0〜1.9、5日目は葉齢1.0〜2.9、6日目は葉齢1.0〜2.9、7日目は葉齢1.0〜2.9、8日目は葉齢2.0〜3.9、9日目は葉齢2.0〜3.9、10日目は葉齢2.0〜3.9、11日目は葉齢2.0〜3.9、12日目は葉齢2.0〜3.9、13日目は葉齢2.0〜3.9、14日目は葉齢2.0〜3.9であった。
黒米では、0日目は葉齢0.0、1日目は葉齢0.0〜0.9、2日目は葉齢0.0〜1.9、3日目は葉齢0.0〜1.9、4日目は葉齢0.0〜1.9、5日目は葉齢1.0〜2.9、6日目は葉齢1.0〜2.9、7日目は葉齢1.0〜2.9、8日目は葉齢1.0〜2.9、9日目は葉齢1.0〜2.9、10日目は葉齢2.0〜3.9、11日目は葉齢2.0〜3.9、12日目は葉齢2.0〜3.9、13日目は葉齢2.0〜3.9、14日目は葉齢2.0〜3.9であった。
朝紫では、0日目は葉齢0.0、1日目は葉齢0.0〜0.9、2日目は葉齢0.0〜1.9、3日目は葉齢0.0〜1.9、4日目は葉齢0.0〜1.9、5日目は葉齢1.0〜2.9、6日目は葉齢1.0〜2.9、7日目は葉齢1.0〜2.9、8日目は葉齢1.0〜2.9、9日目は葉齢1.0〜2.9、10日目は葉齢2.0〜3.9、11日目は葉齢2.0〜3.9、12日目は葉齢2.0〜3.9、13日目は葉齢2.0〜3.9、14日目は葉齢2.0〜3.9であった。
【0079】
麗江新団黒谷、コシヒカリ、ベニロマンおよび黒米の4品種では、0〜7日目までGABA蓄積量の直線的な増加が認められ、8〜12日目の間に蓄積量のピークを迎え、その後は穏やかに減少していく傾向が認められた。一方、プリンセスサリーおよび朝紫のGABA蓄積量は、0〜6日目まで直線的な増加が認められ、7日目にピークを迎えた後、減少していく傾向が認められた。このように、GABA蓄積量が一過的に増加する傾向が認められた。
【0080】
品種ごとのピーク時期の生育状況について観察したところ、麗江新団黒谷では8〜10日目に第3葉が展開し、植物体の高さは約100 mmであった(図4A)。同様に、コシヒカリでは、9〜11日目に第3葉が展開し、植物体の高さは約90 mmであった(図4B)。プリンセスサリーでは6〜9日目に第2葉が展開し、植物体の高さは約30 mmであった(図4C)。ベニロマンでは8〜10日目に第3葉が展開し、植物体の高さは約80 mmであった(図4D)。黒米では、10〜12日目に第3葉が展開し、植物体の高さは約70 mmであった(図4E)。朝紫では6〜9日目に第2葉が展開し、植物体の高さは約40 mmであった(図4F)。
この結果から、GABA蓄積量のピークを迎える時期はイネ品種ごとに異なることが明らかになった。各品種のピーク時期におけるGABA蓄積量を比較すると、コシヒカリおよび黒米で最も高く、それぞれ、3.74±0.93 mg/gおよび4.05±0.57 mg/gであった。以上より、より豊富なGABAを含むイネスプラウトを作製するには、コシヒカリであれば栽培開始後9日から12日のスプラウト、黒米であれば栽培開始後9日から14日のスプラウトを利用すればよいことが明らかとなった。さらに、イネ品種によらず、栽培開始後5日から11日までにスプラウトを採取することで、1mg/g以上のGABAを含むスプラウトを作製することができ、また、栽培開始後7日にスプラウトを採取することで、2mg/g以上のGABAを含むスプラウトを作製することができることが判明した。
【0081】
〔実施例4〕光照射がGABA蓄積量に与える影響
−イネスプラウトの育成条件−
麗江新団黒谷の精玄米約50 gに対し500 mlの0.01%次亜塩素酸ナトリウムを添加し、30分間、25℃で浸とうさせながら殺菌処理を行った。殺菌処理後、滅菌水に入れ換えて30分振とうする操作を2回繰り返し、玄米の洗浄を行った。洗浄後、水をよく切り、それぞれの濃度で殺菌した玄米を培養用プレートに移し、300 mlの滅菌水を加え蓋をした後、光強度7000 luxの白色光を連続照射しながら30℃のインキュベータ内で19日間育成し、イネスプラウトを作製した。比較対照として殺菌処理した玄米の栽培を開始した後、暗黒下、30℃で生育させたものを用いた。生育中は、24時間毎に滅菌水の入れ換えを行い、採取後直ちに実施例1に記載した方法で凍結乾燥した。
【0082】
−イネスプラウトからGABAの抽出・調製−
GABAの抽出・調製は、実施例1に記載した、−イネスプラウトからGABAの抽出・調製−と同様の方法を用いた。
【0083】
−イネスプラウト中のGABA蓄積量の分析−
GABAの分析は、実施例1に記載した−イネスプラウト中のGABA蓄積量の分析−に従った。
【0084】
−結果−
0.01%次亜塩素酸ナトリウムで処理後、光照射および暗黒条件下におけるGABA蓄積量の経時変化を測定した。乾燥重量あたりの平均GABA蓄積量±標準偏差(SD)は、光照射条件下では、0日目は0.11±0.03 mg/g、1日目は0.53±0.04 mg/g、2日目は1.01±0.02 mg/g、3日目は1.55±0.13 mg/g、4日目は1.84±0.23 mg/g、5日目は2.19±0.36 mg/g、6日目は2.61±0.43 mg/g、7日目は2.71±0.38 mg/g、8日目は2.82±0.42 mg/g、9日目は2.49±0.35 mg/g、10日目は2.04±0.30 mg/g、11日目は1.77±0.28 mg/g、12日目は1.62±0.38 mg/g、13日目は1.28±0.20 mg/g、15日目は1.10±0.06 mg/g、19日目は0.76±0.15 mg/gであった(図5A)。
暗黒条件下では、0日目は0.06±0.02 mg/g、1日目は0.14±0.09 mg/g、2日目は0.35±0.17 mg/g、3日目は0.61±0.13 mg/g、4日目は1.05±0.26 mg/g、5日目は1.38±0.33 mg/g、6日目は1.62±0.40 mg/g、7日目は1.97±0.37 mg/g、8日目は2.17±0.45 mg/g、9日目は2.54±0.43 mg/g、10日目は2.84±0.50 mg/g、11日目は2.88±0.44 mg/g、12日目は2.61±0.50 mg/g、13日目は2.41±0.51 mg/g、15日目は1.17±0.31 mg/g、19日目は0.25±0.04 mg/gであった(図5B)。
それぞれの日数における葉齢は、光照射条件下では、0日目は葉齢0.0、1日目は葉齢0〜0.9、2日目は葉齢0.0〜1.9、3日目は葉齢0.0〜1.9、4日目は葉齢1.0〜2.9、5日目は葉齢1.0〜2.9、6日目は葉齢2.0〜3.9、7日目は葉齢2.0〜3.9、8日目は葉齢2.0〜3.9、9日目は葉齢2.0〜3.9、10日目は葉齢2.0〜3.9、11日目は葉齢2.0〜3.9、12日目は葉齢3.0〜4.9、13日目は葉齢3.0〜4.9、14日目は葉齢3.0〜4.9、15日目は葉齢3.0〜4.9、19日目は葉齢3.0〜4.9であった。
暗黒条件下では、0日目は葉齢0.0、1日目は葉齢0.0〜0.9、2日目は葉齢0.0〜1.9、3日目は葉齢0.0〜1.9、4日目は葉齢0.0〜1.9、5日目は葉齢1.0〜2.9、6日目は葉齢1.0〜2.9、7日目は葉齢1.0〜2.9、8日目は葉齢2.0〜3.9、9日目は葉齢2.0〜3.9、10日目は葉齢2.0〜3.9、11日目は葉齢2.0〜3.9、12日目は葉齢2.0〜3.9、13日目は葉齢2.0〜3.9、14日目は葉齢2.0〜3.9、15日目は葉齢2.0〜3.9、19日目は葉齢2.0〜3.9であった。
【0085】
光照射および暗黒条件下におけるGABAの最大蓄積量は、それぞれほぼ同様の値を示したが、光照射条件下では、殺菌処理した玄米の栽培を開始した後6〜8日目の間に最大蓄積量に達したのに対し、暗黒条件下では、栽培開始後、9〜12日目の間であった。さらに光照射条件下では、GABA蓄積量のピークを経過した後の減少挙動も暗黒条件下よりも緩やかであった。
【0086】
これらの生育状況について観察したところ、光照射条件下では、栽培開始後6〜8日目に第3葉が展開し、植物体の高さは約70 mmであった(図6A)。一方、暗黒条件下では、9〜11日目で第3葉が展開し、植物体の高さは約100 mmであった(図6B)。以上の結果より、光照射条件下ではGABA蓄積量のピークを迎える時期が暗黒条件下よりも早くなることが明らかになった。光照射したイネスプラウトは、暗黒と比べると地上部が緑化しており、粉末化すると抹茶のような色を呈しているため、加工食品の原材料として多様な用途が期待できる。
【0087】
〔実施例5〕生育温度がGABA蓄積量に与える影響
−イネスプラウトの育成条件−
麗江新団黒谷の玄米約400 gに対し、4 Lの0.01%次亜塩素酸ナトリウムを添加し、30分間、25℃で浸とうさせながら殺菌処理を行った。殺菌処理後、滅菌水に入れ換えて30分振とうする操作を2回繰り返し、玄米の洗浄を行った。洗浄後、水をよく切り、玄米をそれぞれ50 gずつ培養用プレートに移し、300 mlの滅菌水を加え、それぞれの温度(5、15、25、30、35、40、50℃)に調節した暗所のインキュベータ内で10日間育成させ、イネスプラウトを作製した。生育中は、24時間毎に滅菌水の入れ換えを行い、採取後直ちに実施例1に記載した方法で凍結乾燥した。
【0088】
−イネスプラウトからGABAの抽出・調製−
GABAの抽出・調製は、実施例1に記載した−イネスプラウトからGABAの抽出・調製−と同様の方法を用いた。
【0089】
−イネスプラウト中のGABA蓄積量の分析−
GABAの分析は、実施例1に記載した−イネスプラウト中のGABA蓄積量の分析−に従った。
【0090】
−結果−
各生育温度におけるイネスプラウトの乾燥重量あたりの平均GABA蓄積量±標準偏差(SD)は、5℃では0.04±0.00 mg/g、15℃では0.89±0.19 mg/g、25℃では2.49±0.44 mg/g、30℃では2.84±0.50 mg/g、35℃では1.33±0.25 mg/g、40℃では0.05±0.00 mg/g、50℃では定量限界以下であった(図7)。低温条件下(5℃)や高温条件下(50℃)においては蓄積が認められなかったのに対し、一般的なイネ発芽可能温度範囲内(10〜40℃)では、生育温度によってGABA蓄積量が顕著に異なることが明らかとなった。各生育温度におけるGABA蓄積量を比較すると、イネの発芽に最適な温度とされる30℃において最も高い蓄積量を示した。以上より、豊富なGABAを含むイネスプラウトを作製するには、30℃で育成すればよいことが明らかとなった。
【0091】
〔実施例6〕他の塩素系殺菌料がGABA蓄積量に与える影響
−殺菌処理およびイネスプラウトの育成−
殺菌料は、次亜塩素酸ナトリウム以外の塩素系殺菌料として食品添加物で認可されている高度さらし粉(次亜塩素酸カルシウム)を用いた。コシヒカリの玄米約10gに対し、0.001%、0.005%、0.010%の各殺菌溶液100 mlを加え、30分間、25℃で浸とうさせながら殺菌処理を行った。殺菌処理後、滅菌水に入れ換えて30分振とうする操作を2回繰り返し、玄米の洗浄を行った。コントロールは、滅菌水で同様に処理したものを未処理として用いた。洗浄後、水をよく切り、それぞれの濃度で殺菌した玄米を培養用プレートに移し蓋をした後、100 mlの滅菌水を加え、30℃、暗所のインキュベータ内で10日間生育させた。生育後、イネスプラウトを採取し、直ちに、実施例1に記載した方法で凍結乾燥した。生育中は、24時間毎に滅菌水の入れ換えを行った。
【0092】
−イネスプラウトからGABAの抽出−
GABAの抽出・調製は、実施例1に記載した−イネスプラウトからGABAの抽出・調製−と同様の方法を用いた。
【0093】
−イネスプラウト中のGABA蓄積量の分析−
GABAの分析は、実施例1に記載した−イネスプラウト中のGABA蓄積量の分析−に従った。
【0094】
−結果−
それぞれの殺菌処理濃度における乾燥重量あたりの平均GABA蓄積量±標準偏差(SD)は、コントロールでは1.66±0.23 mg/gであったのに対し、高度さらし粉0.001%では1.90±0.12 mg/g、0.005%では2.24±0.23 mg/g、0.010%では2.52±0.23 mg/gであった(図8)。以上の結果から、発芽前の玄米種子に、次亜塩素酸ナトリウム以外の塩素系殺菌料である高度さらし粉を処理した場合でも、イネスプラウトに含まれるGABA量は処理濃度依存的に増加することが明らかになった。
【0095】
〔実施例7〕イネ以外の穀類におけるGABA蓄積量の経時変化
−スプラウトの育成−
二条オオムギ、ライムギ、エンバクおよび麗江新団黒谷の種子50 gに対し、500 mlの0.01%次亜塩素酸ナトリウムをそれぞれ添加し、30分間25℃で浸とうさせながら殺菌処理を行った。殺菌処理後、滅菌水に入れ換えて30分振とうする操作を2回繰り返し、種子の洗浄を行った。コントロールは、滅菌水で同様に処理したものを未処理として用いた。洗浄後、水をよく切り、それぞれの種子を脱脂綿を敷いたプレートに移し、300 mlの滅菌水を加え、20℃、暗所のインキュベータ内で14日間生育させ、穀類のスプラウトを作製した。生育中は、24時間毎に滅菌水の入れ換えを行った。48時間毎に採取後、直ちに、実施例1に記載した方法で凍結乾燥した。
【0096】
−スプラウトからGABAの抽出・調製−
GABAの抽出・調製は、実施例1に記載した−イネスプラウトからGABAの抽出・調製−と同様の方法を用いた。
【0097】
−スプラウト中のGABA蓄積量の分析−
GABAの分析は、実施例1に記載した−イネスプラウト中のGABA蓄積量の分析−に従った。
【0098】
−結果−
様々な穀類の種子を滅菌水または0.01%次亜塩素酸ナトリウムで処理後、発芽から幼苗期におけるGABA蓄積量の経時変化を測定した。各穀類における未処理および0.01%次亜塩素酸ナトリウム処理における乾燥重量あたりの平均GABA蓄積量±標準偏差(SD)は、二条オオムギでは、それぞれ、0日目は0.20±0.05 mg/g、0.20±0.03 mg/g、2日目は0.24±0.05 mg/g、0.24±0.07 mg/g、4日目は0.39±0.11 mg/g、0.47±0.09 mg/g、6日目は0.69±0.14 mg/g、0.95±0.21 mg/g、8日目は0.68±0.09 mg/g、0.90±0.33 mg/g、10日目は0.71±0.11 mg/g、0.86±0.27 mg/g、12日目は0.68±0.16 mg/g、0.78±0.24 mg/g、14日目は0.45±0.09 mg/g、0.65±0.13 mg/gであった(図9A)。
ライムギでは、0日目は0.05±0.02 mg/g、0.06±0.02 mg/g、2日目は0.25±0.05 mg/g、0.29±0.07 mg/g、4日目は0.41±0.11 mg/g、0.63±0.11 mg/g、6日目は0.81±0.18 mg/g、0.98±0.15 mg/g、8日目は0.70±0.08 mg/g、0.77±0.13 mg/g、10日目は0.70±0.10 mg/g、0.72±0.14 mg/g、12日目は0.58±0.12 mg/g、0.69±0.12 mg/g、14日目は0.57±0.15 mg/g、0.65±0.10 mg/gであった(図9B)。
エンバクでは、0日目は0.06±0.02 mg/g、0.07±0.02 mg/g、2日目は0.17±0.03 mg/g、0.20±0.03 mg/g、4日目は0.33±0.07 mg/g、0.34±0.06 mg/g、6日目は0.41±0.07 mg/g、0.48±0.10 mg/g、8日目は0.50±0.09 mg/g、0.58±0.10 mg/g、10日目は0.75±0.09 mg/g、0.93±0.15 mg/g、12日目は0.99±0.10 mg/g、1.10±0.10 mg/g、14日目は0.81±0.10 mg/g、0.99±0.10 mg/gであった(図9C)。
麗江新団黒谷では、0日目は0.07±0.02 mg/g、0.06±0.02 mg/g、2日目は0.22±0.03 mg/g、0.23±0.04 mg/g、4日目は0.37±0.09 mg/g、0.49±0.11 mg/g、6日目は0.73±0.09 mg/g、0.86±0.21 mg/g、8日目は0.91±0.18 mg/g、1.11±0.24 mg/g、10日目は1.37±0.23 mg/g、1.79±0.25 mg/g、12日目は1.57±0.28 mg/g、2.05±0.30 mg/g、14日目は2.00±0.26 mg/g、2.57±0.31 mg/gであった(図9D)。
【0099】
各穀類における未処理および0.01%次亜塩素酸ナトリウム処理における葉齢は、二条オオムギでは、それぞれ0日目は葉齢0.0、葉齢0.0、2日目は葉齢0.0〜0.9、葉齢0.0〜0.9、4日目は葉齢0.0〜1.9、葉齢0.0〜1.9、6日目は葉齢0.0〜1.9、葉齢0.0〜1.9、8日目は葉齢0.0〜1.9、葉齢0.0〜1.9、10日目は葉齢0.0〜1.9、葉齢0.0〜1.9、12日目は葉齢0.0〜1.9、葉齢0.0〜1.9、14日目は葉齢0.0〜1.9、葉齢0.0〜1.9であった。
ライムギでは、それぞれ0日目は葉齢0.0、葉齢0.0、2日目は葉齢0.0〜0.9、葉齢0.0〜0.9、4日目は葉齢0.0〜1.9、葉齢0.0〜1.9、6日目は葉齢0.0〜1.9、葉齢0.0〜1.9、8日目は葉齢0.0〜1.9、葉齢0.0〜1.9、10日目は葉齢0.0〜1.9、葉齢0.0〜1.9、12日目は葉齢0.0〜1.9、葉齢0.0〜1.9、14日目は葉齢0.0〜1.9、葉齢0.0〜1.9であった。
エンバクでは、それぞれ0日目は葉齢0.0、葉齢0.0、2日目は葉齢0.0〜0.9、葉齢0.0〜0.9、4日目は葉齢0.0〜0.9、葉齢0.0〜0.9、6日目は葉齢0.0〜1.9、葉齢0.0〜1.9、8日目は葉齢0.0〜1.9、葉齢0.0〜1.9、10日目は葉齢0.0〜1.9、葉齢0.0〜1.9、12日目は葉齢0.0〜1.9、葉齢0.0〜1.9、14日目は葉齢0.0〜1.9、葉齢0.0〜1.9であった。
麗江新団黒谷では、それぞれ0日目は葉齢0.0、葉齢0.0、2日目は葉齢0.0〜0.9、葉齢0.0〜0.9、4日目は葉齢0.0〜0.9、葉齢0.0〜0.9、6日目は葉齢0.0〜1.9、葉齢0.0〜1.9、8日目は葉齢0.0〜1.9、葉齢0.0〜1.9、10日目は葉齢0.0〜1.9、葉齢0.0〜1.9、12日目は葉齢0.0〜1.9、葉齢0.0〜1.9、14日目は葉齢0.0〜1.9、葉齢0.0〜1.9であった。
【0100】
二条オオムギ、ライムギでは、0〜6日目までGABA蓄積量の直線的な増加が認められ、その後は穏やかに減少していく傾向が認められた。エンバクでは、0〜12日目まで直線的な増加が認められ、12日目以降に減少していく傾向が認められた。一方、麗江新団黒谷では、1〜14日目まで直線的な増加傾向を示した。各穀類のピーク時期の生育状況について観察したところ、二条オオムギでは6日目で、植物体の高さは未処理では約70 mm、0.01%次亜塩素酸ナトリウム処理では約90 mmであった(図10A)。ライムギでは6日目で、植物体の高さは未処理では約80 mm、0.01%次亜塩素酸ナトリウム処理では約100 mmであった(図10B)。エンバクでは12日目で、植物体の高さは未処理では約150 mm、0.01%次亜塩素酸ナトリウム処理では約170 mmであった(図10C)。麗江新団黒谷では14日目で、植物体の高さは未処理では約80 mm、0.01%次亜塩素酸ナトリウム処理では約90 mmであった(図10D)。
【0101】
この結果から、品種によってGABAの蓄積量やその挙動は異なるが、イネ以外の単子葉植物においても次亜塩素酸ナトリウムで殺菌処理することによってGABAが増加することが判明した。また、同処理を施すと植物体の高さが未処理よりも促進される傾向を示していたため、植物体の生長にも影響することが推察された。またこの傾向は、双子葉植物のダイコンやブロッコリーでも同様に認められたが、次亜塩素酸処理によるGABA蓄積の増加や幼苗期におけるGABA量の変動は認められなかった。以上より、イネ以外の他の穀類においても次亜塩素酸ナトリウムで種子を殺菌することにより、イネと同様にスプラウトに含まれるGABA量が増加することが明らかとなった。
【図面の簡単な説明】
【0102】
【図1】各濃度の次亜塩素酸ナトリウムで殺菌処理したときの10日目のGABA蓄積量を示すグラフである。グラフ中に示されたアルファベットが異なるデータはそれらの間に有意な差(P<0.05)があることを示す。
【図2A】麗江新団黒谷におけるGABA蓄積量の経時変化を示すグラフである。グラフ中に示されたアルファベットが異なるデータはそれらの間に有意な差(P<0.05)があることを示す。
【図2B】麗江新団黒谷における栽培開始後の生育状況を経時的に撮影した写真である。
【図3A】麗江新団黒谷におけるGABA蓄積量の経時変化を示すグラフである。グラフ中に示されたアルファベットが異なるデータはそれらの間に有意な差(P<0.05)があることを示す。
【図3B】コシヒカリにおけるGABA蓄積量の経時変化を示すグラフである。グラフ中に示されたアルファベットが異なるデータはそれらの間に有意な差(P<0.05)があることを示す。
【図3C】プリンセスサリーにおけるGABA蓄積量の経時変化を示すグラフである。グラフ中に示されたアルファベットが異なるデータはそれらの間に有意な差(P<0.05)があることを示す。
【図3D】ベニロマンにおけるGABA蓄積量の経時変化を示すグラフである。グラフ中に示されたアルファベットが異なるデータはそれらの間に有意な差(P<0.05)があることを示す。
【図3E】黒米におけるGABA蓄積量の経時変化を示すグラフである。グラフ中に示されたアルファベットが異なるデータはそれらの間に有意な差(P<0.05)があることを示す。
【図3F】朝紫におけるGABA蓄積量の経時変化を示すグラフである。グラフ中に示されたアルファベットが異なるデータはそれらの間に有意な差(P<0.05)があることを示す。
【図4AB】Aは麗江新団黒谷、Bはコシヒカリにおける栽培開始後の生育状況を経時的に撮影した写真である。
【図4CD】Cはプリンセスサリー、Dはベニロマンにおける栽培開始後の生育状況を経時的に撮影した写真である。
【図4EF】Eは黒米、Fは朝紫における栽培開始後の生育状況を経時的に撮影した写真である。
【図5】Aは光照射条件下でのGABA蓄積量、Bは暗黒条件下でのGABA蓄積量の経時変化を示すグラフである。グラフ中に示されたアルファベットが異なるデータはそれらの間に有意な差(P<0.05)があることを示す。
【図6】Aは光照射条件下、Bは暗黒条件下で栽培後、6-10日目の生育状況を撮影した写真である。
【図7】各温度で育成したときの10日目におけるGABA蓄積量を示すグラフである。グラフ中に示されたアルファベットが異なるデータは、それらの間に有意な差があることを示す(P<0.05)。N.D.はGABAが検出されなかったことを示す。
【図8】各濃度の高度さらし粉で殺菌処理したときの10日目におけるGABA蓄積量を示すグラフである。グラフ中に示されたアルファベットが異なるデータは、それらの間に有意な差があることを示す(P<0.05)。
【図9A】未処理または0.01%次亜塩素酸ナトリウムで殺菌処理した二条オオムギの種子を栽培開始後、それぞれの栽培日数におけるGABA蓄積量を比較したグラフである。グラフ中に示されたアルファベットが異なるデータは、それらの間に有意な差があることを示す(P<0.05)。
【図9B】未処理または0.01%次亜塩素酸ナトリウムで殺菌処理したライムギの種子を栽培開始後、それぞれの栽培日数におけるGABA蓄積量を比較したグラフである。グラフ中に示されたアルファベットが異なるデータは、それらの間に有意な差があることを示す(P<0.05)。
【図9C】未処理または0.01%次亜塩素酸ナトリウムで殺菌処理したエンバクの種子を栽培開始後、それぞれの栽培日数におけるGABA蓄積量を比較したグラフである。グラフ中に示されたアルファベットが異なるデータは、それらの間に有意な差があることを示す(P<0.05)。
【図9D】未処理または0.01%次亜塩素酸ナトリウムで殺菌処理した麗江新団黒谷の種子を栽培開始後、それぞれの栽培日数におけるGABA蓄積量を比較したグラフである。グラフ中に示されたアルファベットが異なるデータは、それらの間に有意な差があることを示す(P<0.05)。
【図10A】未処理または0.01%次亜塩素酸ナトリウムで殺菌処理した二条オオムギの種子における栽培開始後の生育状況を経時的に撮影した写真である。
【図10B】未処理または0.01%次亜塩素酸ナトリウムで殺菌処理したライムギの種子における栽培開始後の生育状況を経時的に撮影した写真である。
【図10C】未処理または0.01%次亜塩素酸ナトリウムで殺菌処理したエンバクの種子における栽培開始後の生育状況を経時的に撮影した写真である。
【図10D】未処理または0.01%次亜塩素酸ナトリウムで殺菌処理した麗江新団黒谷の種子における栽培開始後の生育状況を経時的に撮影した写真である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の(a)から(c)の工程を含む、γ‐アミノ酪酸を含む植物スプラウトを製造する方法;
(a)植物の種子を次亜塩素酸塩で処理する工程
(b)次亜塩素酸塩で処理された植物の種子を5℃から50℃未満で栽培する工程、
(c)栽培開始後1日から14日までの間に、植物の種子の栽培を停止する工程。
【請求項2】
以下の(a)から(c)の工程を含む、γ‐アミノ酪酸を含む植物スプラウトを製造する方法;
(a)植物の種子を次亜塩素酸塩で処理する工程
(b)次亜塩素酸塩で処理された植物の種子を5℃から50℃未満で栽培する工程、
(c)葉齢0.1から葉齢4.9までの間に、植物の種子の栽培を停止する工程。
【請求項3】
以下の(a)および(b)の工程を含む、γ‐アミノ酪酸を含む植物スプラウトを製造する方法;
(a)植物の種子を5℃から50℃未満で栽培する工程、
(b)栽培開始後3日から14日までの間に、植物の種子の栽培を停止する工程。
【請求項4】
以下の(a)および(b)の工程を含む、γ‐アミノ酪酸を含む植物スプラウトを製造する方法;
(a)植物の種子を5℃から50℃未満で栽培する工程、
(b)葉齢1.0から葉齢4.9までの間に、植物の種子の栽培を停止する工程。
【請求項5】
植物が単子葉植物である、請求項1から4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
単子葉植物がイネ科植物である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
イネ科植物がイネ、コムギ、オオムギ、ライムギ、エンバク(オーツムギ、カラスムギ)、ヒエ、アワ、キビ、トウモロコシ、シコクビエ、ソルガム(モロコシ)、ハトムギ、タケ、マコモ、またはサトウキビである、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
以下の(a)から(c)の工程を含む、γ‐アミノ酪酸を含む粉末であって、乾燥された植物スプラウトの粉末の製造方法;
(a)請求項1から4のいずれかに記載の方法で、γ‐アミノ酪酸を含む植物スプラウトを製造する工程、
(b)工程(a)で製造された植物スプラウトを乾燥する工程、
(c)工程(b)で乾燥された植物スプラウトを粉砕する工程。
【請求項9】
以下の(a)および(b)の工程を含む、γ‐アミノ酪酸の製造方法;
(a)請求項1から4のいずれかに記載の方法で、γ‐アミノ酪酸を含む植物スプラウトを製造する工程、
(b)工程(a)で製造された植物スプラウト、または乾燥された該植物スプラウトの粉末からγ‐アミノ酪酸を抽出する工程。
【請求項10】
以下の(a)および(b)の工程を含む、植物スプラウト、乾燥された該植物スプラウトの粉末、または、それらから抽出されたγ‐アミノ酪酸を含む食品組成物の製造方法;
(a)請求項1から4のいずれかに記載の方法で、γ‐アミノ酪酸を含む植物スプラウトを製造する工程、
(b)工程(a)で製造された植物スプラウト、乾燥された該植物スプラウトの粉末、または、それらから抽出されたγ‐アミノ酪酸、および、飲食品として許容される担体を混合する工程。
【請求項11】
以下の(a)および(b)の工程を含む、植物スプラウト、乾燥された該植物スプラウトの粉末、または、それらから抽出されたγ‐アミノ酪酸を含む医薬組成物の製造方法;
(a)請求項1から4のいずれかに記載の方法で、γ‐アミノ酪酸を含む植物スプラウトを製造する工程、
(b)工程(a)で製造された植物スプラウト、乾燥された該植物スプラウトの粉末、または、それらから抽出されたγ‐アミノ酪酸、および、医薬的に許容される担体を混合する工程。
【請求項12】
γ‐アミノ酪酸を含む植物スプラウトであって、該植物スプラウトにおけるγ‐アミノ酪酸の蓄積量は、水分含量が0.5重量%以下まで植物スプラウトを乾燥させた後に粉砕することにより得られる粉末において測定した場合、その粉末1g当たり0.5mg以上であることを特徴とする植物スプラウト。
【請求項13】
植物が単子葉植物である、請求項12に記載のスプラウト。
【請求項14】
単子葉植物がイネ科植物である、請求項13に記載のスプラウト。
【請求項15】
イネ科植物がイネ、コムギ、オオムギ、ライムギ、エンバク(オーツムギ、カラスムギ)、ヒエ、アワ、キビ、トウモロコシ、シコクビエ、ソルガム(モロコシ)、ハトムギ、タケ、マコモ、またはサトウキビである、請求項14に記載のスプラウト。
【請求項16】
乾燥された植物スプラウトの粉末であって、該粉末1g当たりのγ‐アミノ酪酸の蓄積量が0.5mg以上であることを特徴とする粉末。
【請求項17】
請求項12に記載の植物スプラウト、請求項16に記載の粉末、または、それらから抽出されたγ‐アミノ酪酸、および、飲食品として許容される担体を含む食品組成物。
【請求項18】
請求項12に記載の植物スプラウト、請求項16に記載の粉末、または、それらから抽出されたγ‐アミノ酪酸、および、医薬的に許容される担体を含む医薬組成物。
【請求項19】
植物スプラウトにおいて、γ‐アミノ酪酸の蓄積量が最も高くなる時期を早期化する方法であって、植物の種子を光照射条件下で栽培する工程を含む方法。
【請求項20】
植物スプラウトにおいて、γ‐アミノ酪酸の蓄積量が最も高くなる時期を早期化する方法であって、植物の種子を次亜塩素酸塩で処理する工程、及び、次亜塩素酸塩で処理された植物の種子を光照射条件下で栽培する工程を含む方法。

【図1】
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【図2A】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図3D】
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【図3E】
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【図3F】
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【図5】
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【図7】
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【図8】
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【図9A】
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【図9B】
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【図9C】
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【図9D】
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【図2B】
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【図4AB】
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【図4CD】
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【図4EF】
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【図6】
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【図10A】
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【図10B】
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【図10C】
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【図10D】
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【公開番号】特開2009−39087(P2009−39087A)
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−210703(P2007−210703)
【出願日】平成19年8月13日(2007.8.13)
【出願人】(500301371)株式会社植物ゲノムセンター (16)
【Fターム(参考)】