説明

γ−セクレターゼの阻害のための環状スルファミド

式I:
【化40】


を有する化合物はγ−セクレターゼによるAPPのプロセシングを阻害し、よってアルツハイマー病の治療または予防のために有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な化合物、その塩、前記化合物を含む医薬組成物、前記化合物の製造方法及びヒト身体の治療における前記化合物の使用に関する。特に、本発明は、γ−セクレターゼによるAPPのプロセシングを調節し、よってアルツハイマー病の治療または予防において有用な新規スルファミド誘導体に関する。
【背景技術】
【0002】
アルツハイマー病(AD)は最も一般的な痴呆症である。ADは主に65才以上の人口の10%までが患っている高齢者の病気であるが、遺伝的素因を有する若年患者も多数いる。ADは、臨床的には記憶及び認識機能の段階的喪失により特徴づけられ、病理的には患者の皮質及び関連脳領域における細胞外タンパク質様斑の沈着により特徴づけられる神経変性疾患である。前記斑は主にβ−アミロイドペプチド(Aβ)の原繊維集合体からなる。Aβを形成するためのアミロイド前駆体タンパク質(APP)のプロセシングにおける推定上のγ−セクレターゼを含めたセクレターゼの役割は文献に記載されており、例えば国際特許出願公開第01/70677号中で検討されている。
【0003】
文献には細胞ベースアッセイで測定してγ−セクレターゼに対して阻害活性を有する化合物に関するレポートが比較的少ない。国際特許出願公開第01/70677号において検討されている。関連化合物の多くはペプチドまたはペプチド誘導体である。
【0004】
国際特許出願公開第01/70677号及び同第02/36555号は、それぞれアルツハイマー病の治療において有用であると考えられるスルホンアミド−及びスルファミド−置換架橋ビシクロアルキル誘導体を開示しているが、本発明の化合物は開示も示唆もされていない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、推定上のγ−セクレターゼによるAPPのプロセシングの特に強い抑制を示し、よってADの治療または予防において有用である新規な架橋ビシクロアルキルスルファミド誘導体を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、式I:
【0007】
【化6】

(式中、ピラゾール基は星印で示す位置の1つで結合しており、Xはそれに隣接する位置で結合しており;
XはH、OH、C1−4アルコキシ、ClまたはFを表し;
Arはハロゲン、CF、CHF、CHF、NO、CN、OCF、C1−6アルキル及びC1−6アルコキシから独立して選択される0〜3個の置換基を有するフェニルまたは6員ヘテロアリールを表し;
は場合により最高3個のハロゲン原子で置換されていてもよいC1−5炭化水素基を表し;
はHまたは場合により最高7個のハロゲン原子で置換されていてもよいC1−10炭化水素基を表し、ただしXがHのときRは2,2,2−トリフルオロエチルを表さない)
を有する化合物またはその医薬的に許容され得る塩が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
式Iを有する化合物の亜群において、RはH、または場合により最高3個のハロゲン原子で置換されていてもよいC1−10炭化水素基を表す。
【0009】
当業者には自明のように、式Iを有する各化合物は星印で示すピラゾール環が結合している環の位置に応じて2つのエナンチオマー形態で存在し得る。よって、式Iは式IIa及びIIb:
【0010】
【化7】

(式中、X、Ar、R及びRは上記と同義である)
のエナンチオマー、並びに式IIIa及びIIIb:
【0011】
【化8】

(式中、X、Ar、R及びRは上記と同義である)
のエナンチオマーを包含する。
【0012】
XがHのとき、式IIaは式IIIaと同一であり、式IIbは式IIIbと同一であることも明白である。
【0013】
式Iを有する各化合物に関して、本発明はホモキラル化合物または任意の比率のエナンチオマーの混合物としての両エナンチオマー形態を包含することが強調される。
【0014】
本発明の好ましい実施態様において、式Iを有する化合物は式IIaまたはIIIaを有するホモキラル化合物またはその医薬的に許容され得る塩である。
【0015】
式Iまたはその置換基中に可変部分が2回以上現れるとき、各可変部分は特記しない限り毎回相互に独立である。
【0016】
本明細書中、「炭化水素基」は炭素原子及び水素原子のみから構成される基を指す。炭化水素基は指定の最大炭素数に一致する直鎖、分枝鎖または環状構造またはその組合せからなり得、飽和でも不飽和でもよく、指定の最大炭素数に適合するならば芳香族も含まれる。
【0017】
本明細書中、「C1−xアルキル」(ここで、xは1を超える整数である)は炭素数が1〜xの範囲の直鎖及び分枝鎖アルキル基を指す。特定のアルキル基はメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル及びt−ブチルである。“C2−6アルケニル”、“ヒドロキシC1−6アルキル”、“ヘテロアリールC1−6アルキル”、“C2−6アルキニル”及び“C1−6アルコキシ”のような誘導表現も同様に解釈されるべきである。最も適当には、前記基の炭素数は最高6である。
【0018】
本明細書中、「C3−6シクロアルキル」は3〜6個の環原子を含む非芳香族の単環式炭化水素環系を指す。その例にはシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル及びシクロヘキセニルが含まれる。
【0019】
本明細書中、「シクロアルキルアルキル」にはシクロプロピルメチル、シクロブチルメチル、シクロペンチルメチル及びシクロヘキシルメチルのような基が含まれる。
【0020】
本明細書中、「ハロゲン」にはフッ素、塩素、臭素及びヨウ素が含まれ、このうちフッ素及び塩素が好ましい。
【0021】
医薬品中に使用するとき、式Iを有する化合物は医薬的に許容され得る塩の形態でも存在し得る。しかしながら、式Iを有する化合物またはその医薬的に許容され得る塩を製造する際には他の塩も使用し得る。本発明の化合物の適当な医薬的に許容され得る塩には、例えば本発明の化合物の溶液を医薬的に許容され得る酸(例えば、塩酸、硫酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、酢酸、安息香酸、シュウ酸、クエン酸、酒石酸、炭酸またはリン酸)の溶液と混合することにより形成され得る酸付加塩が含まれる。或いは、本発明の化合物が酸性部分を含んでいるときには、医薬的に許容され得る塩は前記酸性部分を適当な塩基で中和することにより形成され得る。こうして形成される医薬的に許容され得る塩の例にはアルカリ金属塩(例えば、ナトリウム塩またはカリウム塩)、アンモニウム塩、アルカリ土類金属塩(例えば、カルシウム塩またはマグネシウム塩)及び適当な有機塩基で形成される塩(例えば、ピリジニウム塩を含めたアミン塩及び第4級アンモニウム塩)が含まれる。
【0022】
本発明の化合物が少なくとも1個の不斉中心を有しているときには、本発明の化合物はエナンチオマーとして存在し得る。本発明の化合物が2個以上の不斉中心を有しているときには、本発明の化合物は更にジアステレオマーとして存在し得る。上記したすべての異性体及び任意の比率のその混合物が本発明の範囲に包含されると理解されたい。
【0023】
式Iを有する化合物中、Xは好ましくはH、OHまたはF、より好ましくはHまたはFを表す。1つの特定実施態様において、XはHである。別の特定実施態様において、XはFである。
【0024】
Arは、ハロゲン、CF、CHF、CHF、NO、CN、OCF、C1−6アルキル及びC1−6アルコキシから独立して選択される0〜3個の置換基を有するフェニルまたは6員ヘテロアリールを表す。Arで表される適当な6員ヘテロアリール基の例にはピリジル、ピラジニル、ピリミジニル、ピリダジニル及びトリアジニルが含まれ、ピリジルが好ましい例である。フェニルまたはヘテロアリール環が0〜2個の置換基を有していることが好ましい。好ましい置換基にはハロゲン(特に、塩素及びフッ素)、CN、C1−6アルキル(特に、メチル)、C1−6アルコキシ(特に、メトキシ)、OCF及びCFが含まれる。置換基が2個以上存在するとき、そのうちの多くて1個がハロゲンまたはアルキル以外のものであることが好ましい。Arで表される基の例にはフェニル、モノハロフェニル、ジハロフェニル、トリハロフェニル、シアノフェニル、メチルフェニル、メトキシフェニル、トリフルオロメチルフェニル、トリフルオロメトキシフェニル、ピリジル、モノハロピリジル及びトリフルオロメチルピリジルが含まれ、ここで“ハロ”はフルオロまたはクロロを指す。Arの適当な具体例には2−フルオロフェニル、2−クロロフェニル、3−フルオロフェニル、4−フルオロフェニル、4−クロロフェニル、2,4−ジフルオロフェニル、2,4−ジクロロフェニル、3,4−ジフルオロフェニル、3,4−ジクロロフェニル、3−クロロ−4−フルオロフェニル、3,4,5−トリフルオロフェニル、4−シアノフェニル、4−メチルフェニル、4−メトキシフェニル、2−(トリフルオロメチル)フェニル、4−(トリフルオロメチル)フェニル、4−(トリフルオロメトキシ)フェニル、ピリジン−2−イル、ピリジン−3−イル、ピリジン−4−イル、ピラジン−2−イル、5−メチルピリジン−2−イル、5−フルオロピリジン−2−イル、5−クロロピリジン−2−イル、5−(トリフルオロメチル)ピリジン−2−イル及び6−(トリフルオロメチル)ピリジン−3−イルが含まれる。好ましい例には2−フルオロフェニル、2−クロロフェニル、3−フルオロフェニル、4−フルオロフェニル、4−クロロフェニル、2,4−ジフルオロフェニル、2,4−ジクロロフェニル、3,4−ジフルオロフェニル、3,4−ジクロロフェニル、3−クロロ−4−フルオロフェニル、4−(トリフルオロメチル)フェニル、ピリジン−2−イル、ピリジン−3−イル及びピリジン−4−イルが含まれる。
【0025】
特に好ましい実施態様において、Arは4−フルオロフェニルを表す。
【0026】
は、場合により最高3個のハロゲン原子で置換されていてもよいC1−5炭化水素基を表し、よって全部で最高5個の炭素原子を含む飽和もしくは不飽和の環式または非環式炭化水素残基またはその組合せからなり得る。Rで表される炭化水素基は未置換であるかまたは最高3個のフッ素原子で置換されていることが好ましい。その例にはメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、t−ブチル、フルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、2,2,2−トリフルオロエチル、シクロプロピル、シクロプロピルメチル及びアリルが含まれる。好ましい例にはメチル、エチル及び2,2,2−トリフルオロエチルが含まれる。最も好ましくは、Rはメチルを表す。
【0027】
はH、または場合により最高7個のハロゲン原子で置換されていてもよいC1−10炭化水素基を表し、ただしXがHのときRは2,2,2−トリフルオロエチルを表さない。Rで表される適当な炭化水素基には、場合により最高7個、好ましくは最高5個、最も好ましくは最高3個のハロゲン置換基を有していてもよいアルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アルケニル、及びベンジル基が含まれ、好ましいハロゲン置換基はフッ素または塩素であり、特にフッ素である。前記アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル及びアルケニル基は通常最高6個の炭素原子を含む。Rで表される基の例にはH、ベンジル、n−プロピル、2,2−ジメチルプロピル、n−ブチル、イソプロピル、t−ブチル、2,2,2−トリフルオロエチル、2,2−ジフルオロエチル、2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピル、3,3,3−トリフルオロプロピル、アリル、シクロプロピル、シクロブチル及びシクロプロピルメチルが含まれる。
【0028】
本発明の化合物の例には、式IIaまたは式IIIa(式中、Arは4−フルオロフェニルであり、Rはメチルであり、X及びRは下表に示す通りである)を有する化合物が含まれる。
【0029】
【表1】

【0030】
本発明の化合物は、γ−セクレターゼの阻害剤としての活性を有する。
【0031】
本発明は、1つ以上の本発明の化合物及び医薬的に許容され得る担体を含む医薬組成物をも提供する。前記組成物が経口、非経口、経鼻、舌下または直腸投与するためまたは吸入または通気による投与のために錠剤、ピル剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤、滅菌非経口溶液または懸濁液、定量エアゾールまたは液体スプレー、滴剤、アンプル、経皮パッチ、自動注入デバイスまたは坐剤のような1回量投与剤形であることが好ましい。通常、主要活性成分は薬用担体、例えば慣用されている錠剤化成分(例:コーンスターチ、ラクトース、スクロース、ソルビトール、タルク、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、リン酸ジカリウム)、ガム、分散剤、懸濁剤または界面活性剤(例:ソルビタンモノオレエート及びポリエチレングリコール)及び他の薬用希釈剤(例:水)と混合されて、本発明の化合物またはその医薬的に許容され得る塩を含む均質な処方前組成物(preformulation composition)を形成する。処方前組成物が均質であるとは、組成物が錠剤、ピル剤やカプセル剤のような等しく有効な1回量投与剤形に容易に細分割され得るように活性成分が組成物中に均一に分散していることを意味する。その後、この処方前組成物は0.1〜約500mgの本発明の活性成分を含有する上記したタイプの1回量投与剤形に細分割される。典型的な1回量投与剤形は1〜100mg、例えば1、2、5、10、25、50または100mgの活性成分を含む。長時間作用の効果を与える剤形を提供するように新規組成物の錠剤またはピル剤にコーティングを施しても、またはコンパウンディングしてもよい。例えば、錠剤またはピル剤は内側投与成分及び外側投与成分を含み得、後者は前者に対するエンベロープの形態である。2つの成分は、胃での分解を妨げるように作用し、内側成分が十二指腸まで無傷のまま達するかまたは放出を遅らすことができる腸溶層により分離され得る。腸溶層またはコーティングのために各種材料が使用され得るが、この材料には多数のポリマー酸、及びポリマー酸とシェラック、セチルアルコールや酢酸セルロースのような物質の混合物が含まれる。
【0032】
本発明の新規組成物が経口投与または注射のために配合され得る液体剤形には、水溶液、液体−またはゲル充填カプセル、適当に着香したシロップ、水性または油性懸濁液、食用油(例えば、綿実油,ゴマ油またはヤシ油)を含む着香エマルション、エリキシル及び類似の薬用ビヒクルが含まれる。水性懸濁液用に適当な分散剤または懸濁剤には合成及び天然ガム、例えばトラガカント、アカシア、アルギネート、デキストラン、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(ビニルピロリドン)またはゼラチンが含まれる。
【0033】
また、本発明は、ヒト身体の治療方法で使用するための本発明の化合物またはその医薬的に許容され得る塩を提供する。好ましくは、前記治療はβ−アミロイドの沈着を伴う状態に対して実施される。好ましくは、前記状態はアルツハイマー病のようなβ−アミロイド沈着を伴う神経病である。
【0034】
更に、本発明は、本発明の化合物またはその医薬的に許容され得る塩のアルツハイマー病の治療薬または予防薬の製造における使用を提供する。
【0035】
アルツハイマー病を患っているかまたはアルツハイマー病にかかりやすい患者に対して有効量の本発明の化合物またはその医薬的に許容され得る塩を投与することを含む前記患者の治療方法も開示されている。
【0036】
アルツハイマー病を治療または予防するための適当な1日用量は約0.01〜250mg/kg体重、好ましくは約0.01〜100mg/kg体重、より好ましくは約0.05〜50mg/kg体重であり、最も好ましい化合物の場合約0.1〜10mg/kg体重である。本発明の化合物は1日1〜4回投与され得る。しかしながら、場合により上記範囲を超える用量を使用してもよい。
【0037】
式I(式中、RはH以外である)を有する化合物はアジリジン誘導体(1):
【0038】
【化9】

(式中、ピラゾール基は星印で示す位置の1つで結合しており、Xはそれに隣接する位置で結合しており;X、Ar、R及びRは上記と同義である)
をR2aNH(式中、R2aはH以外のRである)と反応させることにより製造され得る。この反応は密封管において試薬をDMSO中100℃で16時間加熱することにより実施され得る。
【0039】
がHである対応化合物は、上記した方法でアジリジン(1)をp−メトキシベンジルアミンと反応させ、生成物を周囲温度でトリフルオロ酢酸で処理してp−メトキシベンジル基を除去することにより製造され得る。
【0040】
アジリジン(1)は、イミン(2):
【0041】
【化10】

(式中、X、Ar及びRは上記と同義である)
を水素化ナトリウムの存在下でヨウ化トリメチルスルホキソニウムと反応させることにより製造され得る。この反応はDMSO中、周囲温度で起こる。
【0042】
イミン(2)は、ケトン(3):
【0043】
【化11】

(式中、X、Ar及びRは上記と同義である)
をMeNSONHと縮合させることにより製造され得る。この反応は、試薬をTHF中チタン(IV)エトキシドの存在下で16時間還流することにより実施され得る。
【0044】
ケトン(3)は、ボロネート(4)をピラゾール誘導体(5):
【0045】
【化12】

(式中、RはHまたはC1−6アルキルを表すかまたは2個のOR基がピナコレートのような環状ボロネートエステルを形成し、Lはトリフレート、ブロミドまたはイオダイドのような離脱基、好ましくはトリフレートを表し、X、Ar及びRは上記と同義である)
とカップリングすることにより製造され得る。このカップリングはPd触媒(例えば、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0))の存在下、典型的には無機塩基(例えば、酢酸カリウムまたは炭酸カリウム)の存在下DMF中100℃で起こる。
【0046】
ボロルート(4)は、トリフレート(6):
【0047】
【化13】

(式中、Tfはトリフルオロメタンスルホニルを表し、Xは上記と同義である)
を適当なボロン試薬(例えば、ビス(ピナコラト)ジボロン)と反応させることにより製造され得る。この反応は、(4)と(5)のカップリングと同様の条件下で起こるが、好ましい触媒は[1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]ジクロロパラジウム(II)である。
【0048】
トリフレート(6)は、フェノール(7):
【0049】
【化14】

(式中、Xは上記と同義である)
から無水トリフルオロメタンスルホン酸と反応させることにより製造される。この反応はジクロロメタン溶液中、塩基(例えば、ピリジン)の存在下、0℃で起こる。
【0050】
フェノール(7)(式中、XはHである)は文献(J.Org.Chem.,47:4329(1982))に記載されており、式(7)の他の化合物は同様に、または(7)(式中、X=H)の化合物を適当に処理する(例えば、ハロゲン化する)ことにより製造され得る。
【0051】
ピラゾール(5)(式中、Lはトリフレートである)は、アルキン:
【0052】
【化15】

をRNHNHと反応させ、生じたピラゾロンを無水トリフルオロメタンスルホン酸で処理することにより得られ得る。ピラゾール(5)(式中、LはBrである)は、ノナフレート(8):
【0053】
【化16】

(式中、Nfはノナフルオロブタンスルホニルを表し、Ar及びRは上記と同義である)
をArZnBrと反応させることにより得られ得る。
【0054】
式Iを有する化合物を得る別のルートでは、トリフレート(9a)をピラゾールスタンナン(10):
【0055】
【化17】

(式中、X、Ar、R、R、R及びTfは上記と同義である)
とカップリングさせる。このカップリングはPd触媒(例えば、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0))の存在下、リチウムクロリドの存在下ジオキサン中100℃で起こる。
【0056】
トリフレート(9a)は、(7)のケトン基を上記した方法により環状スルファミド部分に変換した後、フェノール生成物を無水トリフルオロメタンスルホン酸で処理することにより製造され得る。スタンナン誘導体(10)は本明細書の実施例の中間体Dについて記載したように製造され得る。
【0057】
或いは、トリフレート(9a)をボロネート(9b)に変換し、ピラゾール(5)とカップリングさせてもよい。
【0058】
トリフレート(9a)(式中、XはHである)のフェノール前駆体を化学的処理(例えば、フッ素化)にかけると、対応の化合物(式中、XはH以外である)が得られる。また、前記フェノールをヨウ素化すると、対応のo−ヨードフェノールが得られ得る。これをボロネート(9b)(X=OH)に変換し、ピラゾール(5)とカップリングすると、式I(式中、X=OH)の化合物が得られ得る。
【0059】
反応から2つ以上の異性体が得られたときには生じた異性体混合物は慣用の手段により分離され得ることは自明である。
【0060】
上記した本発明の化合物の製造方法により立体異性体混合物が生じたならば、前記異性体は分取クロマトグラフィーのような一般的方法により分離され得る。新規な化合物はラセミ形態で製造され得るか、または各エナンチオマーはエナンチオマー特異的合成または分割により製造され得る。新規化合物は、例えば分取HPLCのような一般的方法により各エナンチオマーに分割しても、または(−)−ジ−p−トルオイル−d−酒石酸及び/または(+)−ジ−p−トルオイル−l−酒石酸のような光学活性酸を用いて塩形成してジアステレオマー対を形成した後分別結晶し、遊離塩基を再生してもよい。新規化合物は、ジアステレオマーエステルまたはアミドを形成した後クロマトグラフィー分離し、キラル助剤を除去することによっても分割され得る。或いは、上記方法は興味ある化合物のラセミ合成前駆体に対して実施され得る。
【0061】
式Iを有するエナンチオマー的に純粋な化合物を製造するための好ましいルートでは、ラセミ中間体(7)を分取キラルHPLCにかけて対応のホモキラル中間体を得、この中間体を上記したルートにより式Iを有するホモキラル化合物に変換する。
【0062】
上記合成スキームで使用される出発物質及び試薬は市販されていないが、慣用の手段により製造され得る。
【0063】
上記合成シーケンス中、関係する分子上の感受性または反応性基の保護が必要及び/または所望されることがある。これは、J.F.W.McOmie編,「有機化学における保護基(Protective Groups in Organic Chemistry)」,Plenum Press(1973年)発行及びT.W.Greene及びP.G.M.Wuts,「有機合成における保護基(Protective Groups in Organic Synthesis)」,John Wiley & Sons(1991年)発行に記載されているような慣用の保護基を用いて実施され得る。保護基は当業界で公知の方法を用いて適切な後続段階で除去され得る。
【0064】
本発明の化合物の活性レベルを測定するために使用され得るアッセイは国際特許出願公開第01/70677号に記載されている。前記活性を測定するための好ましいアッセイは以下の通りである:
1) βAPP C末端断片SPA4CTを安定的に過剰発現するSH−SY5Y細胞を50〜70%の集密度で培養する。平板培養の4時間前に10mM 酪酸ナトリウムを添加する;
2) 細胞を96ウェルプレートにおいて35,000細胞/ウェル/100μlでダルベッコ最小必須培地(DMEM)(フェノールレッド非含有)+10% ウシ胎仔血清(FBS),50mM HEPES緩衝液(pH7.3),1% グルタミン中で平板培養する;
3) 化合物プレートの希釈物を作成する。ストック溶液18.2×を5.5% DMSO及び11× 最終化合物濃度に希釈する。化合物を激しく混合し、使用するまで4℃で保存する;
4) 1ウェルあたり10μlの化合物を添加し、穏やかに混合し、37℃,5% COで18時間放置する;
5) アミロイドペプチドレベルを例えば均一時間分解蛍光(HTRF)アッセイにより測定するために必要な試薬を調製する;
6) ブラック96ウェルHTRFプレートの各ウェルに160μlアリコートのHTRF試薬混合物を入れる;
7) 細胞プレートからの状態調節上清40μlをHTRFプレートに移す。混合し、4℃で18時間保存する;
8) 化合物が化合物投与後細胞毒性であるかを調べるために、細胞生存度をレドックス染料還元を用いて評価する。典型例はレドックス染料MTS(Promega)と電子カップリング試薬PESの組合せである。この混合物は製造業者の指示に従って作成し、室温で放置する;
9) 細胞に10μl/ウェルのMTS/PES溶液を添加し、混合し、37℃で放置する;
10)吸光度値が約0.4〜0.8のときにプレートを観察する(観察前に還元ホルマザン生成物を分散させるために軽く混合する);
11)HTRFプレートリーダーを用いてアミロイドβ40ペプチドを定量する。
【0065】
別のアッセイはBiochemistry,39(30):8698−8704(2000)に記載されている。J.Neuroscience Methods,102:61−68(2000)も参照されたい。
【0066】
本発明の化合物は上記アッセイで測定して予想外に高いアフィニティーを示す。下記実施例はいずれも上記アッセイの少なくとも1つで100nM未満、通常10nM未満、多くの場合1nM未満のED50を有していた。通常、本発明の化合物は良好な口腔バイオアベイラビリティ及び/または脳浸透をも発揮する。
【0067】
下記実施例により本発明を説明する。
【実施例】
【0068】
中間体A
【0069】
【化18】

メチル4−(フルオロフェニル)プロピノエート(J.Org.Chem.,52(16):3662−8(1987))(13g,73ミリモル)をメタノール(60ml)中に含む溶液に水(60ml)及びメチルヒドラジン(4ml,77ミリモル)を順次添加し、混合物を60℃で6時間撹拌し、次いで一晩放置した。固体を濾過し、水及び最小容量のメタノールで順次洗浄し、一晩乾燥すると、5−(4−フルオロフェニル)−1−メチル−1,2−ジヒドロピラゾル−3−オン(7.7g,55%)を得た。δ(H,500MHz,CDCl) 3.68(3H,s)、5.68(1H,s)、7.13−7.17(2H,m)、7.37−7.40(2H,m)。
【0070】
上記ピラゾロン(15.5g,81ミリモル)を乾燥ピリジン(100ml)中に含む懸濁液を冷却し、ここに温度を5℃以下に維持しながら無水トリフルオロメタンスルホン酸(24g,85ミリモル)を3回に分けて添加した。次いで、冷却浴を外し、反応物を2時間撹拌した後、2M 塩酸に注ぎ、酢酸エチルで抽出した。有機層をブライン及び飽和炭酸水素ナトリウムで洗浄し、乾燥(硫酸ナトリウム)し、濾過し、蒸発させると、残渣が生じた。この残渣をトルエン中に溶解し、蒸発させた後イソヘキサン中に溶解し、シリカプラグを介して濾過し、ジクロロメタンで溶離させた。溶媒を蒸発させて、生成物を無色油状物として得た(23.4g,89%)。δ(H,500MHz,CDCl) 3.80(3H,s)、6.14(1H,s)、7.15−7.19(2H,m)、7.38−7.42(2H,m)。
【0071】
中間体B
【0072】
【化19】

ステップ1:
【0073】
【化20】

ラセミ2−ヒドロキシ−5,6,7,8,9,10−ヘキサヒドロ−6,9−メタノベンゾ[a][8]アヌレン−11−オン(J.Org.Chem.,47:4329(1982))をBerger SFC半分取器具(キラルパックAS(25×2cm,20um);15% MeOH/CO@50ml/分;35℃;100バール)を用いて分割し、2番目に溶離したエナンチオマーを保持した。
【0074】
窒素下0℃においてホモキラルフェノール(6.83g,34ミリモル)を乾燥DCM(40ml)中に含む溶液を撹拌し、ここにピリジン(3.8ml,47ミリモル)及び無水トリフルオロメタンスルホン酸(8.0ml,47ミリモル)を順次添加した。反応物を0℃で2時間撹拌し、水(40ml)を添加し、層を分離し、水性層をDCMで2回抽出した。合わせた抽出物をブラインで1回洗浄し、乾燥し(MgSO)、濾過し、蒸発させた。残渣を10〜15% EtOAc/ヘキサンを溶離液とするシリカクロマトグラフィーにより精製して、トリフレート(9.64g,85%)を得た。δ(H,400MHz,CDCl) 1.28(2H,m)、1.92(2H,m)、2.64(2H,m)、2.85−3.05(4H,m)、7.13(2H,m)、7.29(1H,m)。
【0075】
ステップ2:
【0076】
【化21】

【0077】
ステップ1からのトリフレート(9.64g,29ミリモル)、1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン(1.60g,2.8ミリモル)、ビス(ピナコラト)ジボロン(8.05g,32ミリモル)及びKOAc(8.49g,86ミリモル)を乾燥DMF(200ml)中に含む溶液に窒素を20分間通気することにより前記溶液を脱酸素化した。[1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]パラジウム(II)クロリド(2.354g,2.9ミリモル)を添加し、脱酸素化を更に10分間継続した。反応物を100℃で4時間加熱した後、放冷し、水(400ml)で希釈した。触媒をHyflo(登録商標)を介して濾過することにより除去し、濾液をEtOAcで3回抽出した。合わせた抽出物を水及びブラインで順次洗浄し、乾燥し(MgSO)、濾過し、蒸発させた。残渣を10〜20% EtOAc/ヘキサンを溶離液とするシリカクロマトグラフィーにより精製して、生成物(7.39g,82%)を得た。δ(H,360MHz,CDCl) 1.29(2H,m)、1.35(12H,s)、1.85(2H,m)、2.59(2H,m)、2.84−3.01(4H,m)、7.21(1H,m)、7.63(2H,m)。
【0078】
ステップ3:
【0079】
【化22】

ステップ2からのボロネート(2.06g,6.6ミリモル)、中間体A(1.95g,6.0ミリモル)及び炭酸ナトリウム(0.70g,6.6ミリモル)を乾燥DMF(30ml)中に含む溶液に窒素を30分間通気することにより前記溶液を脱酸素化した。テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(0.52g,0.45ミリモル)を添加し、脱酸素化を更に10分間継続した。反応物を100℃で16時間加熱した後、放冷し、水(40ml)で希釈した。触媒をHyflo(登録商標)を介して濾過することにより除去し、濾液をEtOAcで3回抽出した。合わせた抽出物を水及びブラインで順次洗浄し、乾燥し(MgSO)、濾過し、蒸発させた。残渣を10〜40% EtOAc/ヘキサンを溶離液とするシリカクロマトグラフィーにより精製して、生成物(1.52g,64%)を得た。δ(H,400MHz,CDCl) 1.37(2H,m)、1.87(2H,m)、2.61(2H,m)、2.89−3.09(4H,m)、3.91(3H,s)、6.58(1H,s)、7.15−7.26(3H,m)、7.44(2H,m)、7.61(1H,m)、7.71(1H,m)。MS(ES+) 361,MH
【0080】
ステップ4:
【0081】
【化23】

ステップ3からのケトン(0.360g,1.0ミリモル)、N,N−ジメチルスルファミド(0.620g,5.0ミリモル)及び工業用チタン(IV)エトキシド(0.63ml,3.0ミリモル)を乾燥THF(5ml)中に含む溶液を窒素雰囲気下で撹拌しながら16時間還流加熱した。反応物を室温まで放冷し、迅速撹拌しているブライン(60ml)に注ぎ、1時間撹拌した後、Hyflo(登録商標)を介して濾過し、EtOAcで洗浄した。濾液の層を分離し、水性層をEtOAcで抽出した。合わせた有機抽出物をブラインで洗浄し、乾燥し(MgSO)、濾過し、蒸発させた。残渣を5〜20% EtOAc/DCMを溶離液とするシリカクロマトグラフィーにより精製して、イミン(0.383g,82%)を得た。MS(ES+) 467,MH
【0082】
ステップ5:
【0083】
【化24】

ヨウ化トリメチルスルホキソニウム(1.261g,5.7ミリモル)を乾燥DMSO(10ml)中に含む懸濁液を窒素雰囲気下、室温において撹拌し、ここに水素化ナトリウム
(油中60%分散液,0.223g,5.7ミリモル)を少しずつ添加した。室温で1時間後、ステップ4からのイミン(1.783g,3.8ミリモル)を乾燥DMSO(15ml)中に含む溶液を内部温度が30℃以下に維持されるように添加した。混合物を室温で2時間撹拌した後、水(40ml)でクエンチした。反応物をEtOAcで抽出し、合わせた有機抽出物を水及びブラインで順次洗浄し、乾燥し(MgSO)、濾過し、蒸発させた。残渣を20〜50% EtOAc/ヘキサンを溶離液とするシリカクロマトグラフィーにより精製して、アジリジン(1.554g,84%)を得た。δ(H,360MHz,CDCl) 1.30(2H,m)、1.73(2H,m)、2.24(2H,m)、2.44(2H,m)、2.80(2H,m)、2.97(6H,s)、3.59(2H,m)、3.90(3H,s)、6.56(1H,s)、7.15(3H,m)、7.43(2H,m)、7.52(1H,m)、7.58(1H,m)。MS(ES+) 481,MH
【0084】
中間体C
【0085】
【化25】

上記中間体Bの製造のステップ1に記載されているように得たホモキラル2−ヒドロキシ−5,6,7,8,9,10−ヘキサヒドロ−6,9−メタノベンゾ[a][8]アヌレン−11−オンを出発物質として、国際特許出願公開第02/36555号の実施例83に記載されているように製造した。
【0086】
中間体D
【0087】
【化26】

ステップ1:
【0088】
【化27】

0℃において(±)−ブロモ(4−フルオロフェニル)酢酸(1.5g,6.4ミリモル)をメタノール(4ml)中に含む溶液を撹拌し、ここにメチルアミン(メタノール中2M,6ml,12ミリモル)を添加した。冷却浴を外し、反応物を室温で3時間撹拌した。反応混合物を蒸発させ、残渣をメタノール/水から結晶化して、アミノ酸(2つのバッチで795mg,67%)を無色固体として得た。δ(H,400MHz,DO) 2.61(3H,s)、4.62(1H,s)、7.24(2H,t,J=8.8Hz)、7.46−7.49(2H,m)。
【0089】
ステップ2:
【0090】
【化28】

0℃においてステップ1からのアミノ酸(325mg,1.8ミリモル)を水(1ml)及び濃塩酸(0.3ml)中に含む懸濁液を撹拌し、ここに亜硝酸ナトリウム(250mg,3.6ミリモル)を少しずつ添加した。1時間後、ジエチルエーテル(1ml)を添加し、更に0℃で5時間後、水(5ml)を添加し、混合物をジクロロメタンで4回抽出した。合わせた抽出物を乾燥し(NaSO)、濾過し、蒸発させて、(±)−(4−フルオロフェニル)(1−メチル−2−オキソヒドラジノ)酢酸(320mg,84%)を油状物として得た。δ(H,400MHz,CDCl,異性体の1.5:1混合物) 2.95(1.8H,s)、3.59(1.2H,s)、6.20(0.4H,s)、6.71(0.6H,s)、7.12−7.17(2H,m)、7.28−7.31(0.9H,m)、7.37−7.40(1.1H,m)、8.3(1H,brs)。
【0091】
ステップ3:
4−(4−フルオロフェニル)−3−メチル−1,2,3−オキサジアゾル−3−イウム−5−オレート
【0092】
【化29】

ステップ2の生成物(320mg,1.5ミリモル)を乾燥ジエチルエーテル(15ml)中に含む溶液を窒素下、0℃で撹拌し、ここに無水トリフルオロ酢酸(225μl,1.6ミリモル)を添加した。3時間後、沈殿を濾過により集めて、標記化合物(124mg,43%)を無色固体として得た。濾液を蒸発させ、残渣を1:1 酢酸エチル/ヘキサンを溶離液とするシリカクロマトグラフィーにより精製することにより更なるサンブル(50mg,17%)を得た。δ(H,360MHz,CDCl) 4.12(3H,s)、7.20(2H,t,J=8.6Hz)、7.55−7.59(2H,m)。
【0093】
ステップ4:
5−(4−フルオロフェニル)−1−メチル−3−(トリブチルスタンニル)−1H−ピラゾール
【0094】
【化30】

ステップ3からの生成物(120mg,0.62ミリモル)及びエチニルトリブチル錫(360μl,1.2ミリモル)をm−キシレン(750μl)中に含む溶液を窒素下、140℃で36時間加熱した。反応混合物をトルエンで希釈し、直接シリカカラムにかけた。5〜8% 酢酸エチル/ヘキサンで溶離して、標記化合物(63mg,22%)を油状物として得た。δ(H,400MHz,CDCl) 0.90(9H,t,J=7.3Hz)、1.08−1.12(6H,m)、1.30−1.39(6H,m)、1.56−1.61(6H,m)、3.90(3H,s)、6.33(1H,s)、7.11−7.15(2H,m)、7.36−7.40(2H,m)。
【0095】
(実施例1)
【0096】
【化31】

中間体B(96mg,0.2ミリモル)及びアリルアミン(114mg,2.0ミリモル)をDMSO(2ml)中に含む溶液を密封管において撹拌しながら100℃で16時間加熱した。冷却後、水(10ml)を添加し、反応物をEtOAcで抽出し、合わせた有機抽出物をブラインで洗浄し、乾燥し(MgSO)、濾過し、蒸発させた。残渣を20〜30% EtOAc/ヘキサンを溶離液とするシリカクロマトグラフィーにより精製して、標記化合物(82mg,84%)を得た。δ(H,360MHz,CDCl) 1.35(2H,m)、1.68(2H,m)、2.42(2H,m)、2.74(2H,m)、3.19(4H,m)、3.69(2H,d,J=6.4Hz)、3.90(3H,s)、4.68(1H,s)、5.28(1H,d,J=10.3Hz)、5.34(1H,d,J=16.6Hz)、5.90(1H,m)、6.56(1H,s)、7.15(3H,m)、7.44(2H,m)、7.52(1H,m)、7.59(1H,m)。MS(ES+) 493,MH
【0097】
(実施例2〜13)
表1の化合物は、中間体Bからアリルアミンの代わりに適切なアミンを用いて実施例1の方法により製造した。
【0098】
【表2】


【0099】
(実施例14)
【0100】
【化32】

アリルアミンの代わりにp−メトキシベンジルアミンを用いて実施例1の手順を繰り返した。
【0101】
生じたスルファミド(78mg,0.2ミリモル)をTFA(2ml)中に含む溶液を室温で3時間撹拌した。反応物を真空中で濃縮し、飽和炭酸水素ナトリウム(10ml)を添加した。混合物をDCMで抽出し、合わせた有機抽出物をブラインで洗浄し、乾燥し(MgSO)、濾過し、蒸発させた。残渣を40〜60% EtOAc/ヘキサンを溶離液とするシリカクロマトグラフィーにより精製して、所望生成物(49mg,80%)を得た。δ(H,360MHz,CDCl) 1.37(2H,m)、1.68(2H,m)、2.42(2H,m)、2.79(2H,m)、3.24(2H,m)、3.38(2H,d,J=7.4Hz)、3.90(3H,s)、4.56(1H,t,J=7.2Hz)、4.60(1H,s)、6.56(1H,s)、7.16(3H,m)、7.44(2H,m)、7.53(1H,m)、7.60(1H,m)。MS(ES+) 453,MH
【0102】
(実施例15)
【0103】
【化33】

及び(実施例16)
【0104】
【化34】

ステップ1:
【0105】
【化35】

中間体C(500mg,1.3ミリモル)及びN−フルオロピリジニウムトリフレート(500mg,2.0ミリモル)を1,2−ジクロロエタン(8ml)中に含む混合物を16時間還流加熱した後、室温に冷却し、真空中で濃縮した。残渣を水(30ml)で希釈し、ジクロロメタン(3×20ml)で抽出した。有機物を乾燥し(MgSO)、真空中で蒸発させて、赤色泡状物(495mg)を得た。この泡状物を1% 酢酸エチル/ジクロロメタンを溶離液とするSiOクロマトグラフィーにより精製して、フルオロフェノールを位置異性体混合物(272mg,53%)として得た。M/Z ES (393)(M−1)
【0106】
異性体フルオロフェノール(202mg,0.51ミリモル)をピリジン(5ml)中に含む溶液を窒素雰囲気下、0℃において無水トリフルオロメタンスルホン酸(170μl,1.0ミリモル)で処理し、混合物を0℃で2時間撹拌した。反応物を1N 塩酸(30ml)で希釈し、酢酸エチル(2×40ml)で抽出した。有機物をブラインで洗浄し、乾燥し(MgSO)、真空中で蒸発させて、ガム状泡状物(254mg)を得た。この泡状物を15% 酢酸エチル/イソヘキサンを溶離液とするSiOクロマトグラフィーにより精製して、トリフレートを位置異性体混合物(173mg,65%)として得た。M/Z ES (527)(MH)
【0107】
ステップ2:
ステップ1からのトリフレート(97mg,0.18ミリモル)、中間体D(86mg,0.18ミリモル)及び塩化リチウム(23mg,0.54ミリモル)をジオキサン(2ml)中に含む混合物に窒素を10分間流して脱ガスした。テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(23mg,0.02ミリモル)を添加し、更に10分間脱ガスした後、反応物を100℃で2.5時間撹拌した。室温に冷却した後、更にテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(23mg,0.02ミリモル)を添加し、反応物を10分間脱ガスした後、100℃で16時間加熱した。反応物を飽和炭酸水素ナトリウム(15ml)及び酢酸エチル(20ml)で希釈し、混合物をHyflo(登録商標)床を介して濾過した。相を分離し、水性相を酢酸エチル(20ml)で抽出した。有機物をブラインで洗浄し、乾燥し(MgSO)、真空中で蒸発させると、橙褐色泡状物が生じた。この泡状物を1:2 酢酸エチル/イソヘキサンを溶離液とするSiOクロマトグラフィーにより精製して、SiO上で極性のより弱い実施例12を白色泡状物(23mg,23%,M/Z ES+ (553)(MH))として、又、SiO上で極性のより強い実施例13を白色泡状物(52mg,52%,M/Z ES+ (553)(MH))として得た。
【0108】
(実施例17)
【0109】
【化36】

ステップ1:
【0110】
【化37】

中間体Cのエナンチオマーは、中間体Bの製造のステップ1に記載の分割から得た最初に溶離したエナンチオマーを出発物質として中間体Cと同一の方法により製造した。
【0111】
中間体Cのエナンチオマー(5.0mg,13.3ミリモル)、ヨウ化ナトリウム(2.0g,13.3ミリモル)及び水酸化ナトリウム(532mg,13.3ミリモル)をメタノール(200ml)中に含む冷(0℃)溶液に4%水性次亜塩素酸ナトリウム(25g)を滴下した。混合物を0℃で2時間撹拌した後、10%(w/v)チオ硫酸ナトリウム(200ml)で処理し、1N HClで中和し、真空中で濃縮した。残渣を酢酸エチル(4×200ml)で抽出し、有機物をブラインで洗浄し、乾燥し(MgSO)、真空中で蒸発させると、黄色固体(7.25g)が生じた。この固体を5%酢酸エチル/ジクロロメタンを溶離液とするSiOクロマトグラフィーにより精製して、所望のヨウ化物を白色泡状物(5.4g,81%)として得た。M/Z ES (501)(M−H)
【0112】
ステップ2:
【0113】
【化38】

ステップ1からのヨードフェノール(502mg,1ミリモル)、ピナコルボラン(540μl,3.7ミリモル)及びトリエチルアミン(0.45ml,3.2ミリモル)をジオキサン中に含む混合物に窒素を流して脱ガスし、[1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]−ジクロロパラジウム(II)ジクロロメタン付加物(27mg,0.04ミリモル)を添加し、更に脱ガスした後、反応物を80℃で16時間加熱した。更にトリエチルアミン(0.45ml,3.2ミリモル)、ピナコルボラン(540Tl,3.7ミリモル)及びPd触媒(27mg,0.04ミリモル)を添加し、脱ガスした後、反応物を80℃で24時間加熱した。反応物を室温に冷却し、酢酸エチル(30ml)で希釈し、1N HCl(3×15ml)で洗浄した。有機物をブラインで洗浄し、乾燥し(MgSO)、真空中で蒸発させると、褐色ガム(640mg)が生じた。このガムをシリカプラグを介して濾過し、熱ヘキサンでトリチュレーションすることにより精製して、褐色固体(345mg,69%)を得た。M/Z ES (501)(M−1)
【0114】
ステップ3:
【0115】
【化39】

ステップ2からのボロネート(50mg,0.1ミリモル)、中間体A(32mg,0.1ミリモル)及びリン酸カリウム(46mg,0.2ミリモル)をDMF中に含む混合物を窒素流を用いて脱ガスした。テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(6mg,5.2ミリモル)を添加し、更に脱ガスした後、反応物をマイクロ波を照射しながら100℃で10分間加熱した。反応物を1N HCl(10ml)で希釈し、ジエチルエーテル(2×30ml)で抽出した。有機物を水(2×30ml)及びブラインで洗浄し、乾燥し(MgSO)、真空中で蒸発させると、褐色ガム(84mg)が生じた。このガムを2%酢酸エチル/ジクロロメタンを溶離液とするシリカカラムクロマトグラフィーにより精製して、白色固体(2.6mg,5%)を得た。M/Z ES (551)(M−1)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I:
【化1】

(式中、ピラゾール基は星印で示す位置の1つで結合しており、Xはそれに隣接する位置で結合しており;
XはH、OH、C1−4アルコキシ、ClまたはFを表し;
Arはハロゲン、CF、CHF、CHF、NO、CN、OCF、C1−6アルキル及びC1−6アルコキシから独立して選択される0〜3個の置換基を有するフェニルまたは6員ヘテロアリールを表し;
は場合により最高3個のハロゲン原子で置換されていてもよいC1−5炭化水素基を表し;
はH、または場合により最高7個のハロゲン原子で置換されていてもよいC1−10炭化水素基を表し、ただしXがHのときRは2,2,2−トリフルオロエチルを表さない)
を有する化合物またはその医薬的に許容され得る塩。
【請求項2】
式IIa:
【化2】

または式IIIa:
【化3】

を有する請求項1に記載の化合物またはその医薬的に許容され得る塩。
【請求項3】
Arがフェニル、モノハロフェニル、ジハロフェニル、トリハロフェニル、シアノフェニル、メチルフェニル、メトキシフェニル、トリフルオロメチルフェニル、トリフルオロメトキシフェニル、ピリジル、モノハロピリジル及びトリフルオロメチルピリジル(ここで、ハロはフルオロまたはクロロを指す)を表す請求項1または2に記載の化合物。
【請求項4】
がH、ベンジル、または最高6個の炭素原子を含むアルキル、アルケニル、シクロアルキルもしくはシクロアルキルアルキル、またはベンジルを表し、場合により最高5個のフッ素置換基を有していてもよい請求項1〜3のいずれかに記載の化合物。
【請求項5】
XがHであり、Rがメチルであり、Arが4−フルオロフェニルであり、RがH、ベンジル、n−プロピル、2,2−ジメチルプロピル、n−ブチル、イソプロピル、t−ブチル、2,2,2−トリフルオロエチル、2,2−ジフルオロエチル、2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピル、3,3,3−トリフルオロプロピル、アリル、シクロプロピル、シクロブチル及びシクロプロピルメチルから選択される請求項2に記載の化合物。
【請求項6】
式:
【化4】

を有する化合物またはその医薬的に許容され得る塩。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の化合物及び医薬的に許容され得る担体を含む医薬組成物。
【請求項8】
治療に使用するための請求項1〜6のいずれかに記載の化合物。
【請求項9】
アルツハイマー病の治療薬または予防薬を製造するための請求項1〜6のいずれかに記載の化合物の使用。
【請求項10】
アルツハイマー病を患っているかまたはアルツハイマー病にかかりやすい患者に対して有効量の請求項1〜6のいずれかに記載の化合物を投与することを含む前記患者の治療方法。
【請求項11】
式(1):
【化5】

を有する化合物をR2aNH
(式中、ピラゾール基は星印で示す位置の1つで結合しており、Xはそれに隣接する位置で結合しており;R2aはH以外のRであり;X、Ar、R及びRは請求項1に記載の通りである)
と反応させることを含むRがH以外である請求項1に記載の化合物の製造方法。

【公表番号】特表2006−508092(P2006−508092A)
【公表日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−547819(P2004−547819)
【出願日】平成15年10月31日(2003.10.31)
【国際出願番号】PCT/GB2003/004728
【国際公開番号】WO2004/039800
【国際公開日】平成16年5月13日(2004.5.13)
【出願人】(390035482)メルク シャープ エンド ドーム リミテッド (81)
【Fターム(参考)】