説明

γ1およびγ3抗ヒトCD23モノクローナル抗体ならびに治療薬としてのその使用

【課題】CD23に特異的な新規のリガンド(抗体)を製造する。
【解決手段】
IgEに対する低親和性受容体であるヒトCD23(FceRII/CD23)と特異的に結合し、ヒトγ1またはヒトγ3のいずれかの定常ドメインを含むモノクローナル抗体を開示する。本抗体は誘導性IgE発現を調節または抑制するのに有用である。したがって、それらは誘導性IgE産生の抑制が治療的に望ましい疾病状態、例えばアレルギー症状、自己免疫疾患および炎症性疾患の治療または予防に有用性を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、IgEに対する低親和性受容体であるヒトCD23(FceRII/CD23)と特異的に結合し、そしてヒトγ1またはヒトγ3のいずれかの定常ドメインを含むモノクローナル抗体、ならびに治療薬としてのそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
IgEは、喘息、食物アレルギー、1型過敏症およびありふれた副鼻腔炎症であるアレルギー性鼻炎および結膜炎のようなアレルギー反応に介在し、その結果、一般の人々全体に広範な苦痛を引き起こすイムノグロブリンファミリーの一員である。IgEは、B細胞により分泌され、その表面に発現される。B細胞により合成されるIgEは、成熟IgE配列に連結した短い膜貫通ドメインによりB細胞膜につなぎ留められる。膜および分泌型のIgEは、IgE RNA転写物のディファレンシャルスプライシングにより同一細胞で形成される。
【0003】
IgEは、低親和性IgE受容体(FceRII、以下「FCEL」と呼ぶ)に対するそのFc領域を介してB細胞(そしてT細胞、単核球、ランゲルハンス細胞、濾胞樹状細胞、ナチュラルキラー細胞、好酸球および血小板)と、ならびに高親和性IgE受容体(FceRI、以下「FCEH」)に対するそのFc領域を介してマスト細胞および好塩基球と結合し得る。低親和性IgE受容体は一般的に、文献中ではCD23と呼ばれる。
【0004】
哺乳類がアレルゲンに曝されると、抗原提示細胞は、ヘルパーT細胞に提示するために抗原を処理する。これらのヘルパーT細胞は、B細胞がクローン増幅を受け、そしてより多くのアレルゲン特異的IgEを分泌するのを補助する、IL−4のようなサイトカインを分泌する。この新たに合成されたIgEは、次いで、それがそれらの細胞表面の高親和性受容体を介してマスト細胞および好塩基球と結合する循環中に放出される。それにより、このようなマスト細胞および好塩基球は特異的アレルゲンに対して感作される。同一アレルゲンに次に曝露されると、マスト細胞および好塩基球の表面上の特異的IgEへの結合が生じ、それによりこれらの細胞上のFceRIが架橋され、そして臨床的過敏症およびアナフィラキシーに関与するヒスタミンおよびその他の因子の放出が活性化される。
【0005】
当技術分野では、FCEL(CD23)結合IgEと結合し得るが、しかしFCEHと結合したIgEとは結合し得ない抗体が報告されている(例えば、WO89/00138および米国特許第4,940,782号参照)。これらの抗体は、低親和性受容体(FCEL)に結合したIgEまたは循環IgEと結合するが、しかし高親和性受容体(FCEH)に結合したIgEとは結合しないために、臨床的に有益であることが開示されている。したがって、これらの抗体は、マスト細胞または好塩基球を活性化しない。
【0006】
さらに、抗CD23抗体は、例えばアレルギー性疾患、炎症性疾患および自己免疫疾患の治療のための治療薬としての可能性を有すると報告されている。例えば、Bonnefoyら(特許文献1)は、CD23に結合するリガンド、例えばモノクローナル抗体は、炎症性、自己免疫およびアレルギー性疾患の治療または予防に有用である、と報告する。
【0007】
IgE作動薬および拮抗薬の両方としての、CD23に対するモノクローナル抗体の使用が報告されている。IgE拮抗薬は、IgE抑制が治療的に望ましい症状または疾病、例えば、アレルギー性鼻炎および結膜炎などのアレルギー性症状、アトピー性皮膚炎ならびに喘息の治療への使用の可能性を有することが報告されている。例えば、Bonnefoyら(
WO8707302(1987))は、ヒトCD23に対するモノクローナル抗体を報告し、これは細胞型におけるIgE受容体の存在をアッセイするのに、そしてIgEの調節が治療的に望ましい疾患の治療薬として有用であると主張している。
【0008】
治療薬および診断薬としての可能性のために、多くのグループがCD23に対するモノクローナル抗体の生成を報告している(例えば、Rector et al., Immunol., 55:481-488(1985); Suemura et al., J. Immunol., 137:1214-1220(1986); Noro et al., J. Immunol., 137:1258-1263(1986); Bonnefoy et al., J. Immunol., 138:2970-2978(1987); Flores-Romo et al., Science, 261:1038-1046(1993); Sherr et al., J. Immunol., 142:481-489(1989)およびPene et al., Proc. Natl. Acad. Sci., USA, 85:6880-6884(1988)参照)。さらに、前記のように、IgE合成がサイトカイン(IL−4)誘導性である系におけるIgE産生を特異的に抑制するためのこのような抗体の使用も報告されている(Flores-Romo et al.,(同上); Sherr et al.,(同上); Bonnefoy et al.,(WO 8707302); Bonnefoy et al.,(特許文献1); 非特許文献1; Sarfati et al., J. Immunol 141:2195-2199(1988)およびWakai et al., Hybridoma 12:25-43(1993))。さらに、Flores-Romoら(同上)は、抗CD23抗体から調製されたFabがラットにおける抗原特異的誘導性IgE応答をin vivoで抑制することを開示する。しかしながら、報告された事にかかわらず、抗CD23抗体がIgE発現を調節するメカニズム、特にそれらがIL−4誘導性IgE産生を抑制する方法は、依然として不明である。
【0009】
抗CD23抗体は、IgE分泌B細胞の表面に存在するCD23を介してシグナルを送ることによりIgE産生を抑制する、ということが示唆されている。IgE分泌B細胞でアップレギュレーションされるCD23の機能はIgE産生のフィードバック抑制である、ということが提案されている(Yu, et al., Nature 369, 753-756(1994))。これは、CD23遺伝子が除去されたマウスは対照に比してIgE産生が増大し、またIgE産生が維持されることにより理論付けされている(Yuら)。さらに、IgE複合体によるまたは抗CD23に対するモノクローナル抗体によるCD23への結合は、IgEを構成的に分泌するリンパ芽球様細胞株による進行中のIgE合成を抑制する、ということが報告されている(Sherrら。同上)。これは、この細胞中の分泌IgEのH鎖のメッセンジャーRNAのダウンレギュレーションによる、と思われる(Saxon et al., J. Immunol., 147:4000-4006(1991))。しかしながら、IgE発現が抑制される正確なメカニズムは、IgE分泌がIL−4誘導性であるシステムにおいては未だ解明されていない。
【0010】
FcγRIIとB細胞上の表面Ig(B細胞受容体)との架橋がIg発現のダウンレギュレーションをもたらす、ということも報告されている(D’Ambrosia et al., Science,
268:293-297(1995))。同様のメカニズムは、同じく細胞表面CD23およびFcγRIIを有する、IgEを分泌するB細胞に関しても提案され得る。抗原(CD23)により細胞に結合され、またFc相互作用を介してFcγRIIに結合される抗ヒトCD23抗体は、シグナルを伝達してFcγRIIを介してIgE分泌を抑制し得る。
【0011】
膜CD23とIgEとの間の相互作用以外の相互作用の阻止を含めた、抗CD23抗体によるIgE抑制に関与するメカニズムが提案されている。これに関連して、C型レクチンファミリーの一員であるCD23は、T細胞および単球を含めた種々の細胞型に存在するCD21、CD11bおよびCD11cのようないくつかのその他のリガンドと相互作用することが示されている。この情況において、CD23は、細胞接着分子と考えられ得る。
【0012】
したがって、CD21−CD23相互作用は抗原提示とその後のIgE産生に関与し得る、ということが提案されている。モデルにより、B細胞上のCD21がアトピーの個体に主に存在する活性化T細胞上のCD23と結合後にIgE産生のための活性化シグナル
を送ることが示唆される(Lecoanet et al., Immunol., 88: 35-39 (1996);およびBonnefoy et al., Int. Amer. Allergy Immunol., 107:40-42(1995))。抗CD23とのこの相互作用の阻止は、IgE産生誘導を阻止し得た(Aubry et al., Nature 358:505-507(1992)およびImmunol., 5:944-949(1993); Grosjean et al., Curr. Opin. Eur. J. Immunol., 24:2982-2988(1994); Henchoz-Lecoanet et al., Immunol., 88:35-39(1996); Nambu et al., Immunol. Lett., 44:163-167(1995); Bonnefoy et al., Int. Amer. Allergy Immunol., 107:40-42(1995))。抗原提示が、T細胞上のCD21に結合している抗原提示B細胞上のCD23によりアップレギュレーションされる、という可能性もある。
【0013】
IgE産生に及ぼすCD23の効力を説明し得る可能性のある、さらに別のメカニズムは、可溶性形態のCD23を必要とする。CD23は、細胞表面から切り離され、いくつかの異なる形態の可溶性CD23またはIgE結合因子を放出するということが報告されている(Sarfati et al., Immunol., 53:197-205(1984))。可溶性CD23は、サイトカインで、その報告された活性の1つは、B細胞からのIL−4誘導性IgE産生の増大である(Pene et al., J. Cell Biochem., 39:253-269(1989); Pene et al., Eur. J. Immunol., 18:929-935(1988); Sarfati et al., J. Immunol., 141:2195-2197(1988); Sarfati et al.,(1984)(同上); Saxon et al., J. Clin. Immunol. Allergy, 86(3 pt 1)333-344(1990))。また、ある形態の可溶性CD23がIgE産生を抑制することも報告されている(Sarfati et al., Immunol., 76:662-667(1992))。したがって、抗CD23抗体は、1)可溶性CD23のIgE増大作用を抑制し、および/または2)細胞表面からの可溶性CD23のタンパク質分解的放出を阻止することにより、IgE産生を阻止する可能性がある。
【0014】
したがって、前記に基づいて、より特異的なCD23の機能およびIgE産生に及ぼす効力に関して、そしてさらにそれに特異的なリガンドがIgE産生に影響を及ぼす手段に関して、当技術分野ではかなりの複雑さおよび不確かさが存在する、ということは明らかである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】WO96/12741
【非特許文献】
【0016】
【非特許文献1】Bonnefoy et al., Eur. J. Immunol 20:139-144(1990)
【発明の概要】
【0017】
したがって、CD23に特異的な新規のリガンド(抗体)を製造すること、そしてこのような抗体を用いて抗CD23抗体がIgE発現を調節するメカニズムを明らかにすることが本発明の目的である。
【0018】
誘導性IgE発現を抑制する能力の改善された、CD23、特にヒトCD23に結合する新規のリガンド(抗体)を製造することが、本発明の別の目的である。
【0019】
ヒトγ1またはヒトγ3定常ドメインを含む抗ヒトCD23抗体を製造することは、本発明のより具体的な目的である。
【0020】
CD23およびFc受容体を架橋する能力の増強によってより有効であり得る多価抗ヒトCD23抗体を製造することは、本発明の別の目的である。
【0021】
誘導性IgE産生を抑制し得る、ヒトγ1またはγ3定常ドメインを含む抗ヒトCD23モノクローナル抗体を含む医薬組成物を提供することは、本発明の別の目的である。
【0022】
誘導性IgE産生の抑制が治療的に望ましい疾病症状の治療または予防のためにヒトγ1またはヒトγ3定常ドメインを含む抗ヒトCD23モノクローナル抗体を使用することは、本発明の別の目的である。
【0023】
具体的には、ヒトγ1またはヒトγ3定常ドメインを含む抗ヒトCD23モノクローナル抗体を用いてアレルギー性症状、自己免疫疾患および炎症性疾患を治療または予防することは本発明の一目的である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】マウス抗ヒトCD23モノクローナル抗体(MHM6)のin vitroのIgE抑制活性を、5種類の霊長類抗ヒトCD23モノクローナル抗体(5E8、6G5、2C8、B3B11および3G12)と比較する。
【図2】霊長類モノクローナル抗体5E8および6G5が、市販のマウス抗ヒトCD23モノクローナル抗体MHM6とは異なるヒトCD23上のエピトープと結合し(図2の中段パネル)、そして互いに競合する(図2の下段パネル)ことを示す。霊長類抗ヒトCD23モノクローナル抗体2C8およびB3B11は、MHM6と競合する(図2の上段パネル)。
【図3】特定の霊長類抗ヒトCD23モノクローナル抗体5E8のin vitroのIgE抑制活性を、前記の霊長類モノクローナル抗体の4つの異なるPRIMATIZED(登録商標)バージョンと比較する。それらの配列を以下に説明する。 p5E8G4P − このPRIMATIZED(登録商標)抗体は、ヒトκL鎖定常領域およびP変異を含有するヒトγ4定常領域(Angal et al., Mol. Immunol., 30:105-108(1993))の配列を含有する。 p5E8G4PN − このPRIMATIZED(登録商標)抗体は、ヒトκL鎖定常領域およびP変異を有するヒトγ4定常領域(Angal et al., Mol. Immunol., 30:105-108(1993))を含有する。この抗体は、アスパラギン残基(炭水化物結合可能部位)をリジンに変えるH鎖可変領域中の変異も含有する。 p5E8G1 − このPRIMATIZED(登録商標)抗体は、ヒトκL鎖定常領域およびヒトγ1定常領域を含有する。 p5E8G1N − このPRIMATIZED(登録商標)抗体は、ヒトκL鎖定常領域およびヒトγ1定常領域を含有する。この抗体は、アスパラギン残基(炭水化物結合部位)をリジンに変えるH鎖可変領域中の変異も含有する。
【図4】図3に示された抗体の見かけのKd(nM)を比較し、それらのIgE抑制活性をまとめた表を示す。
【図5】特定の霊長類抗ヒトCD23モノクローナル抗体6G5のin vitroのIgE抑制活性を、下記の6G5の2つの異なるPRIMATIZED(登録商標)バージョンと比較する。 p6G5G1 このPRIMATIZED(登録商標)抗体は、ヒトλL鎖定常領域およびヒトγ1定常領域を含有する。 p6G5G4P このPRIMATIZED(登録商標)抗体はヒトλL鎖定常領域およびP変異を有するヒトγ4定常領域(Angal et al., Mol. Immunol., 30:105-108(1993))を含有する。
【図6】霊長類抗ヒトCD23モノクローナル抗体2C8のin vitroのIgE抑制活性を、2C8に由来するF(ab’)2と比較する。
【図7】2C8に由来するF(ab’)2が霊長類抗ヒトCD23モノクローナル抗体2C8のin vitroのIgE活性の抑制に拮抗する、ということを示す。
【図8】SCID動物モデルにおける特定の霊長類抗ヒトCD23モノクローナル抗体5E8のin vivoのIgE抑制活性を示す。
【図9】霊長類抗ヒト6G5およびそのPRIMATIZED(登録商標)バージョンp6G5G4Pのin vivoの抑制活性を比較する。
【図10】霊長類抗ヒトCD23モノクローナル抗体6G5およびそのPRIMATIZED(登録商標)バージョンp6G5G1のin vivoのIgE抑制活性を示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本出願中に用いられる用語の定義
キメラ抗体:
2つの異なる抗体、通常は異なる種の抗体、最も典型的には齧歯類可変配列とヒト定常ドメイン配列とからの領域を含有する組換え抗体。
【0026】
抗ヒトCD23γ1抗体:
誘導性IgE産生を抑制するヒトγ1定常領域または断片あるいはその修飾体を含有するヒトCD23に特異的に結合する抗体。この例としては、特に、齧歯類または霊長類可変ドメインまたは抗原結合部分を含有する抗体、ヒト化、PRIMATIZED(登録商標)およびヒト抗ヒトCD23モノクローナル抗体が挙げられ、これらは、誘導性IgE産生をin vitroで抑制するヒトγ1定常ドメイン、断片またはその修飾体を包含する。
【0027】
抗ヒトCD23γ3抗体:
誘導性IgE産生を抑制するヒトγ3定常領域または断片あるいはその修飾体を含有するヒトCD23に特異的に結合する抗体。この例としては、特に、齧歯類または霊長類可変ドメインまたは抗原結合部分を含有する抗体、ヒト化、PRIMATIZED(登録商標)およびヒト抗ヒトCD23モノクローナル抗体が挙げられ、これらは、誘導性IgE産生をin vitroで抑制するヒトγ3定常ドメイン、断片またはその修飾体を包含する。
【0028】
抗体定常ドメインの修飾:
定常領域により媒介される基本的エフェクター機能を変えることなく、効率性のレベル、即ちFcR結合の所望の変化を作り出し得る定常領域の変異、置換または欠失を有する本発明の抗体。
【0029】
PRIMATIZED(登録商標)抗体:
霊長類可変配列または抗原結合部分と、ヒト定常ドメイン配列を含有する組換え抗体。
【0030】
ヒト化抗体:
ヒト抗体可変領域をよりそっくり模倣するように改変され、そしてそれによりヒトに投与された場合に免疫グロブリンの特異性または親和性を犠牲にせずに、潜在的免疫原性を排除するかまたは最小限にする、非ヒト可変領域または抗原結合部分を含有する組換え抗体。表面残基の選択修飾を含む「張り合わせ」、フレームワーク置換(CDRグラフティング)および分子モデリングを含めたヒト化のいくつかの既知の方法がある。
【0031】
γ1定常ドメイン:
抗体に特異的エフェクター活性を付与する特定の型の定常ドメイン配列。本出願では、γ1定常ドメインは、抗CD23可変ドメイン配列または抗原結合部分と組合わされてγ1エフェクター機能を保持する、ヒトγ1定常ドメイン、断片またはその修飾体を指す。修飾体は、1つ以上のアミノ酸残基の欠失、置換または付加を含むヒトγ1定常ドメインを含む。このエフェクター機能は、誘導性IgE産生を抑制するこのような定常ドメインを含有する抗体の能力により表出される。
【0032】
γ3定常ドメイン:
抗体に特異的エフェクター活性を付与する特定の型の定常ドメイン配列。本出願では、γ3定常ドメインは、抗CD23可変ドメイン配列または抗原結合部分と組合わさせてγ3エフェクター機能を保持する、ヒトγ3定常ドメイン、断片またはその修飾体を指す。修飾体は、1つ以上のアミノ酸残基の欠失、置換または付加を含むヒトγ3定常ドメインを含む。このエフェクター機能は、誘導性IgE産生を抑制するこのような定常ドメインを含有する抗体の能力により表出される。
【0033】
CD23:
これは、IgEに対する低親和性受容体FceRII/CD23を指す。
【0034】
抗CD23抗体:
CD23、好ましくはヒトCD23と特異的に結合する抗体。
【0035】
発明の詳細な説明
前記のように、多くのグループが抗CD23抗体の産生、ならびにIgE産生を調節するための拮抗薬および作動薬としてのその使用をこれまでに報告しているが、しかしIL−4がIgE産生を誘導する系においてこのような抗体がIgE発現を調節する正確なメカニズムは依然として明らかでない。したがって、このような抗体がIgE発現を調節する手段が明らかにされるか、あるいは少なくともより良好に説明されるとすれば、このような情報は、IgE産生の調節が治療的に望まれる疾患の治療のための治療薬を設計するのに有用である可能性があるので、有益であろう。特に、誘導性IgE産生を抑制する能力の改良されたCD23に特異的な改良型抗体が得られるとすれば、IgEレベルの増大は多数の疾患過程、例えばアレルギー性症状、炎症症状および自己免疫性疾患に関与すると考えられるので、有益であろう。このような疾患としては、例えばアトピー性皮膚炎、湿疹、アレルギー性鼻炎および結膜炎、ジョブ症候群、ならびに喘息が挙げられる。
【0036】
これに関して、本発明者らは、ヒトγ1定常ドメインを含有する抗ヒトCD23モノクローナル抗体が、他のエフェクター型、例えばヒトγ4定常ドメインを含むもの、あるいはエフェクター機能を全く欠いたCD23モノクローナル抗体または抗体断片より有意に良好に、IL−4によりIgE産生が誘導される系においてIgE産生を抑制する、ということを意外にも発見した。ヒトγ3定常ドメインはヒトγ1と同一のエフェクター機能を媒介することが示されているため、ヒトγ3定常ドメインを含有する抗ヒトCD23モノクローナル抗体も含まれる。
【0037】
IgG(γ)クラスの抗体に関しては、一般に5つの明確にされたエフェクター機能が存在する。これらの機能のうちの2つ、即ち補体活性化およびFcγRN相互作用は本発明に記載したin vitroアッセイでは見出されず、したがって、分子メカニズムに関与しないと思われる。IgGクラスの抗体と相互作用する他の3つのFcγR受容体が同定された。すなわち、FcγRI、FcγRII(これらには少なくとも6つの異なるタンパク質が存在する)およびFcγRIII(これには少なくとも2つの異なるタンパク質が存在する)である。これら3つの受容体はすべて、IgG1およびIgG3と相互作用する。
【0038】
FcγRIは、3つのうち唯一、IgGに対する明らかな親和性を有する。それは単量体γ1およびγ3の両方と結合し、Kaは約5×108-1である。しかしながら、ヒトγ4に対するその親和性は約10分の1であり、それはヒトγ2とは全く結合しない(Fries et al., 1982, J. Immunol. 129:1041-1049; Kurlander and Batker, 1982, J. Clin. Invest. 69:1-8; Woof, 1984, G. Mol. Immunol. 21:523-527;そしてBurton and Woof,
1992, Human Antibody Effector Function, Adv. Immunol. 51:1-84も参照)。
【0039】
ヒトIgGに対するヒトFcγRIIおよびFcγRIIIの親和性は一般に非常に低い(Ka<107-1)が、しかしヒトIgG1およびヒトIgG3に対する親和性は、それらが抗原に結合した場合に、有意に増大する(Ka=約2〜5×107-1)(Karas et
al., 1982, Blood 60:1277-1282)。抗原と結合したヒトIgG2に対するヒトFcγRIIの親和性は、相反する結果を生じた。ヒトFcγRIIIは、ヒトIgG2と結合しない。ヒトFcγRIIおよびヒトFcγRIIIは、ヒトIgG4と結合しない(Van de Winkel and Anderson, 1991, J. Leuk. Biol. 49:511-524; Huizinga et al., 1989, J. Immunol. 142:2359-2364)。
【0040】
Fc介在性エフェクター機能は抗体の治療活性にとって時として重要である一方、抗CD23抗体のIgE抑制活性におけるエフェクター機能の役割が従来報告されていなかったために、この発見は抗CD23抗体の場合には意外であった。実際、過去の証拠は、誘導性IgE産生を抑制する抗CD23抗体の能力に対して抗体エフェクター機能は重要でない、ということを示唆していた。例えば、Flores-Romoら(Science, 261:1038-1041(1993))は、ポリクローナル抗CD23抗体から調製されたFabはin vivoでの誘導性IgE抗原特異的応答を抑制する、と報告した。
【0041】
抗CD23抗体の定常領域を介して媒介されるエフェクター機能が明らかに関与するという発見は、本発明者らが、抗IgE抑制活性を有するCD23に特異的な種々の霊長類抗体を単離し、in vitroおよびin vivoでのIL−4誘導性IgE産生を抑制するそれらの能力に関して、これらの抗体をPRIMATIZED(登録商標)バージョンと比較した後になされた。ヒトγ4定常領域を用いて構築された抗体はin vitroでのIgE抗原特異的応答を抑制しなかったが、一方、ヒトγ1定常領域を含有する抗体は良く抑制した。
【0042】
3つの種類のFcγR受容体、即ちFcγRI、 FcγRIIまたはFcγRIIIのうちの1つ(以上)はγ1ドメインにより媒介される特異的エフェクター機能に関与すると考えられるため、そしてこれらの種類の受容体はγ3ドメインを含有する抗体とも結合するために、γ3ドメインを含有する抗CD23抗体もin vitroでIgE抗原特異的応答を良く抑制する、ということは論理的である。
【0043】
特に、そして以下にさらに詳細に記載するように、細胞性および可溶性CD23の両方と特異的に結合した5種類の霊長類モノクローナル抗体が、同一譲受人の出願第08/379,072号(米国特許第5,658,570号)(この記載内容はすべて、参照により本明細書中に含まれる)に開示された方法により、旧世界サル(マカーク)から単離された。この出願は、旧世界サルにおいて、所望の抗原、即ち望ましいヒト抗原に対するモノクローナル抗体を産生するための手段、そして治療薬としての他の種の抗体に関連したそれらの利点、例えば、ヒトと旧世界サルの系統発生的近縁性による、ヒトにおける免疫原性の低減または潜在的欠如を詳細に記載した。実際、これらの種の系統発生的近縁性のために、旧世界サルの免疫グロブリンとヒトの免疫グロブリンを配列の比較から区別することは困難である。
【0044】
これら5つの霊長類モノクローナル抗ヒトCD23抗体のうち4つは、以下に詳述されるin vitroでのB細胞アッセイにおけるIL−4誘導性IgE産生を抑制することができることが実証され、最も効力のあるものはSCIDマウス動物モデルにおける(これも以下に詳述)IL−4誘導性IgEを抑制することも示された。このIgE抑制活性、そして予想されるヒトでの低免疫原性に基づいて、このような抗体はIgE産生の抑制が治療的に望まれる疾患の治療のための治療薬として適している可能性がある。
【0045】
しかし、さらに免疫原性を低下させるために、米国特許出願第08/379,072号(米国特許第5,658,570号)(参照により本明細書中に含まれる)にも記載される方法に
よる2つの霊長類モノクローナル抗体(抗体のキメラ化のタイプ)のPRIMATIZE(登録商標)(霊長類化)が選ばれた。PRIMATIZATION(登録商標)(霊長類化)は、霊長類可変領域およびヒト定常領域を含む、IDEC Pharmaceuticals Corporationにより開発された、組換え抗体の産生を基本的に指す。強いIgE抑制活性を有する二つの霊長類抗ヒトCD23モノクローナル抗体(5E8及び6G5)のPRIMATIZATION(登録商標)は、ヒトにおける霊長類定常ドメインによるあらゆる可能な免疫原性を排除するために行われる。
【0046】
また、Fcエフェクター機能は誘導性IgE抑制には必要でないという発表済文献からの本発明者らの初期の予測のために、これらの特定の抗体のヒトγ4バージョンが、初期に産生された。しかしながら、全く意外なことに、これらの霊長類モノクローナル抗体の両方から産生されるγ4バージョンは有効でない、即ちそれらは、in vitroでのアッセイにおいてIL−4誘導性IgE産生を抑制するためには霊長類抗体より有意に高い濃度のPRIMATIZED(登録商標)γ4抗体を必要とする、ということが判明した。
【0047】
さらに、同じ2つの霊長類抗体がその後(霊長類定常ドメインをヒトγ1定常ドメインで置換することにより)ヒトγ1バージョンに変換された場合、これらのγ1抗体はin vitroでの誘導性IgE産生を非常に有効に抑制した、という発見はさらに意外であった。したがって、我々の結果は、Fcエフェクター機能が、誘導性IgE産生を抑制する抗ヒトCD23抗体の能力に明らかに重要である、ということを示唆した。この仮説は、in vitroでIgE産生を抑制することが本発明者らにより示された第3の霊長類抗ヒトCD23モノクローナル、即ち2C8抗体がF(ab’)2に変換されたとき、in vitroで誘導性IgE産生を実質的に抑制できないことが判明したことによって確認された。実際、このF(ab’)2は、霊長類抗ヒトCD23モノクローナル抗体2C8の誘導性IgE阻止活性における抑制効果と拮抗することが判明した。
【0048】
さらに、抗体の1つ(5E8)のH鎖可変領域のグリコシル化部位の欠失は、抗体のCD23との結合に(得られたKd値により立証される)、または誘導性IgE抑制に全く影響を及ぼさない、ということが判明した。したがって、IgE抑制の差は、明らかにグリコシル化の相違に関係しないことが示された。
【0049】
霊長類6G5のPRIMATIZED(登録商標)γ1バージョンはSCIDマウスにおける誘導性IgE発現を抑制する一方、同一濃度の霊長類6G5またはPRIMATIZED(登録商標)p6G5G4pは誘導性IgE発現を抑制しない、ということが判明した。したがって、ヒトγ1定常ドメインを含有する抗体は、霊長類モノクローナル抗体よりもin vivoの動物モデルにおいてより有効でさえあることが判明した。さらに、γ1およびγ3定常ドメインは同一クラスのFc受容体に対する親和性を有するため、ヒトγ3定常ドメインを含有する抗CD23抗体はγ1定常ドメインを有するものと全く同様に有効であると、本発明者らは予測する。
【0050】
したがって、これらの結果に基づいて、活性Fc領域、特にヒトγ1またはヒトγ3の活性Fc領域は、抗ヒトCD23モノクローナル抗体によるIL−4誘導性IgE抑制のメカニズムに有意に関与する、ということが意外にも発見された。この発見は、特に、ポリクローナル抗CD23抗体由来のFabが誘導性IgE産生を抑制し得るという初期の報告に基づいて、そしてCD23が誘導性IgE発現に影響を及ぼす方法に関する種々の説に基づいては全く予期されない。
【0051】
したがって、本発明はヒトγ1またはγ3定常ドメインを含有する抗ヒトCD23抗体に関し、そしてIgE発現を有効に抑制するそれらの能力に基づく治療薬としてのそれらの使用に関する。
【0052】
当業者は、キメラ抗体の製造に関して当技術分野で周知の方法により、ヒトγ1またはγ3定常ドメインのいずれかを含有する抗ヒトCD23抗体を調製し得る。本質的には、このような方法は、所望の宿主中でまたはin vitroで抗ヒトCD23抗体を産生し、望ましい特徴、例えば適切なCD23結合親和性を示す抗ヒトCD23モノクローナル抗体を産生するハイブリドーマまたは細胞株をクローニングし、例えば、適切なプライマーを用いたポリメラーゼ連鎖反応により、前記ハイブリドーマまたは細胞株からこのような抗体をコードする核酸配列をクローニングし、そこに含まれる可変ドメインを単離し、このような可変ドメインをヒトγ1またはγ3定常ドメインおよび適切なヒトL鎖定常ドメインと組換え、そしてその結果生じるキメラ抗ヒトCD23γ1またはγ3免疫グロブリンをコードする核酸配列を適切な発現系で発現させる工程から成る。好ましくは、本発明の抗ヒトCD23抗体は、0.1nM〜1000nMの範囲の、さらに好ましくは少なくとも50nM、最も好ましくは少なくとも5nMの見かけのCD23結合親和性を有する。
【0053】
組換え免疫グロブリンの発現に適した宿主細胞は、当技術分野では周知である。例えば、組換え抗体は、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、DG44またはDUXB11;あるいはCHO細胞CHO K−1;マウス骨髄腫細胞SP2/0またはX63−Ag8.653またはNSO;ラット骨髄腫細胞YB2/0;ハムスター乳仔腎細胞BHK;ヒト胚腎臓株293;サル腎細胞CV1;ヒト肺繊維芽細胞WI38;ヒト頸部癌細胞HELA;昆虫細胞、植物細胞、酵母菌または細菌中で発現され得る。さらに、免疫グロブリンの発現に適したベクターも当技術分野では周知であり、市販されている。
【0054】
特に好ましいベクター系は、米国特許出願第08/147,696号(米国特許第5,648,267号)に開示された翻訳的損傷ベクター系で、これは、所望の異種DNAが挿入されるイントロンを含有する翻訳的に損傷された主要な選択可能マーカー(neo)を含む。このベクター系は、非常に高収率の組換えタンパク質、例えば免疫グロブリンを提供することが判明している。しかしながら、目的の抗CD23抗体は、機能性免疫グロブリンの発現に適したあらゆるベクター系で産生され得る。
【0055】
本発明は、ヒトCD23に特異的なγ1またはγ3型のヒトモノクローナル抗体も含む。ヒトモノクローナル抗体の単離方法も当技術分野では周知であって、その例としては、in vitroによる方法、例えば組織培養でのヒトB細胞のin vitro免疫感作、そしてin vivoによる方法、例えばSCIDマウスにおけるヒトモノクローナル抗体の合成が挙げられる。その後SCIDマウス中に導入されるヒト脾臓細胞のin vitroの初回免疫を組合せるSCIDマウス中でヒトモノクローナル抗体を産生する好ましい手段は、米国特許出願第08/488,376号(米国特許第5,811,524号)(この記載内容はすべて、参照により本明細書中に含まれる)に開示されている。この方法は、所望の抗原、例えばヒト抗原に対して高親和性を有するモノクローナル抗体の再現性のある回収を提供するので、有利である。
【0056】
本発明は、CD23との結合に関して霊長類抗ヒトCD23モノクローナル抗体5E8および6G5と競合するヒトモノクローナル抗体も含む。
【実施例】
【0057】
実施例1
霊長類抗CD23抗体の産生
CD23に特異的な5つの霊長類モノクローナル抗体を、実質的に米国出願第08/379,072号(この記載内容は、参照により本明細書中に含まれる)に開示された方法によって、マカーク(macaque)から単離した。用いた正確な技法を、以下に詳細に説明する。
【0058】
抗ヒトCD23モノクローナル抗体の単離および特性評価のための方法
8866細胞からの免疫原sCD23の精製
精製中、捕捉体としてマウス抗CD23抗体(Binding Site; カタログ番号MC112)を用いた3段階ELISAにより、可溶性CD23(sCD23)を定量した。37℃で、10%ウシ胎仔血清(JRH Biosciences)および4mMグルタミン(JRH Biosciences;カタログ番号90114)を補足したRPMI 1640(JRH Biosciences;カタログ番号56−509)を用いて、懸濁液バイオリアクター中に維持された8866細胞の培養物から、抗原を部分精製した。二酸化炭素を用いて、pHを7.1に保持した。0.45μm濾過による細胞の除去後、フェニルメチルスルホニルフルオリド(最終濃度0.2mM、Sigma Chemical Co.; カタログ番号P−7626)およびエチレンジアミン四酢酸(最終濃度3mM、Sigma Chemical Co.;カタログ番号EDS)を上清に加え、溶液を2〜8℃で保存した。周囲温度で、中空繊維限外濾過カートリッジ(A/T Technology;
カタログ番号UFP−10−C−9A;10,000d MWCO)または接線流動限外濾過カートリッジ(Filtron Corporation; 10,000d MWCO )を用いて、細胞除去上清を、約15〜20倍に濃縮した。濃縮上清を濾過滅菌し、−70℃で保存した。解凍した濃縮物を、5g/LでSM-2 BioBeads(BioRad Industries; カタログ番号152−3920)を添加し、2〜8℃で一夜攪拌することにより、脱脂質化した。濾過により樹脂を除去し、溶液を2〜8℃で保存した。sCD23のいくつかの調製物に関しては、脱脂質化の前又は後に、硫酸アンモニウム(35〜70%(w/v);Fisher;カタログ番号A702−3)を用いて濃縮物を分画した。
【0059】
2〜8℃でアフィニティークロマトグラフィーを用いて、脱脂質化溶液をその後精製した。CNBr−活性化セファロース4B(Sigma Chemical Co.; カタログ番号C−9142)を用いて、マウス抗CD23モノクローナル抗体(BU38)をセファロースに共有結合させることにより、アフィニティーマトリックスを調製した。プロテインAクロマトグラフィーを用いて、腹水から、>90%の均質性にBU38抗体(Binding Site;カタログ番号CUS830)を精製した。脱脂質化溶液を、1×PBS(Gibco BRL;カタログ番号70013−0.32),pH7.2で平衡化したアフィニティーカラム(1.5×5cm)にアプライし、カラムを、0.05%NP40(Sigma Chemical Co.)を含有する1×PBS,pH7.2で洗浄して、非結合タンパク質を除去した。3.5M MgCl2(Fisher;カタログ番号M33−500)を用いて可溶性CD23を溶出した。sCD23を含有する画分を併合し、2〜8℃で、1×PBS,pH7.2に対して透析した(Baxter Spectra/Por;カタログ番号D1615−1)。透析後、タンパク質溶液をCentriprep 10スピンフィルター(Amicon Corporation; MWCO10,000d)を用いて遠心分離により濃縮し、調製物を−70℃で保存した。SDS−PAGE分析(4〜20%プレキャストゲル、Novex Corporation)およびクーマシー染色を用いて、sCD23の純度を>70%と評価した。
【0060】
霊長類の免疫感作および免疫細胞の単離
カニクイザル(White Sands Research Center, Alamogordo, New Mexico)を、ヒトRPMI 8866細胞(B細胞リンパ腫、Hassner and Saxon, J. Immunol., 132:2844(1984))の上清から精製された可溶性CD23で免疫感作した。各々のサルを、三週目毎に、167μlのテムリタイド(Temuritide)(アジュバントペプチド)(Sigma, St. Louis, MO、カタログ番号A−9519)および333μlの3× PROVAX(登録商標)(IDEC Pharmaceuticals Corporation)と混合した500μlのPBS中の200μgの可溶性CD23で免疫感作した。免疫感作は、皮内、腹腔内、筋肉内および皮下的に実行した。サルの血清中の抗CD23抗体の力価を8866細胞に関してELISAにより測定し、同一サルからの予備採血と比較した。
【0061】
50,000の血清力価を有するサルPRO978を屠殺し、脾臓およびリンパ節を外科的に切除して、氷詰めにしてIDEC Pharmaceuticalsに運搬し、10%ウシ胎仔血清、2mM L−グルタミン、2mM ピルビン酸ナトリウムおよび50μg/mlのゲンタマイシンを補足した滅菌RPMI−1640(Gibco BRL, Gaithersburg, MD、カタログ番号21870−050)中に沈めた。到着後すぐに、ガラス乳棒により金属メッシュを通して脾臓をつぶしてホモジナイズした。赤血球は、塩化アンモニウムベースの低張緩衝液中で溶解させ、残ったリンパ球を収集して、RPMI−1640中で少なくとも3回洗浄した。リンパ節は、同様にホモジナイズして単一細胞懸濁液とし、収集して、 RPMI−1640中で少なくとも3回洗浄した。
【0062】
ハイブリドーマの作製
最終洗浄後、細胞を計数し、前記で得られた霊長類細胞を、標準的技法(Boerner et al., J. Immunol., 147:86(1991))を用いて、マウス−ヒトヘテロハイブリドーマ細胞株H6K6/B5(Carroll et al., J. Immunol. Methods, 89:61(1986))に体細胞融合させ、ウエル当たり細胞300,000個の割合で、96ウエル皿(脾臓:175皿または14,700ウエル。リンパ節:17皿または1386ウエル)中にプレーティングした。
【0063】
この手法は、リンパ球と前記の融合パートナーとの2:1の割合で混合し、細胞を50%PEG1500(Sigma,カタログ番号P5402)中に1分間、徐々に再懸濁させることを含む。これらの細胞を次に1分間静置した後、さらに、過剰量のRPMI−1640中に徐々に再懸濁させた。その後、再び細胞を15分間静置した後、250×gで軽く遠心した。次に細胞を、20%ウシ胎仔血清、2mMのL−グルタミン、ピルビン酸ナトリウム、非必須アミノ酸および50μg/mlのゲンタマイシンを補足した、100μMヒポキサンチン、16μMチミジン(BoehringerMannheim, Germany、番号623091)および5.8μMのアザセリンAzaserine(Sigma、カタログ番号A1164)(HTA)を含有するRMPI−1640増殖培地中に再懸濁した。HTAは、融合された細胞(ヘテロハイブリドーマ融合パートナーと融合した霊長類リンパ球)を残存させる選択剤である。
【0064】
約65%のウエルが増殖を示した(10,500ウエル)。次に、3段階細胞ELISAにより、抗ヒトCD23抗体の存在に関して、これらのウエルをスクリーニングした。
【0065】
ELISA法
ELISAの第一段階は、ウエル当たり105の8866細胞(CD23陽性細胞株)で予めコーティングされた96ウエルプレートの各ウエルへ50μlの上清を移すことを含んでいた。これらのプレートは、先ず、20μg/mlのポリL−リジン(Sigmaカタログ番号P1399、分子量150,000〜300,000)を含有する水性溶液50μlで、室温で30分間、プレートをコーティングすることにより作製された。残りの溶液を除去し(「振り落とし」)、プレートを放置して乾燥させた。乾燥したら、PBS中の8866細胞50μlを移して、600gで5分間回転させた。リン酸緩衝化生理食塩水(PBS)中の0.5%グルタルアルデヒド(Sigmaカタログ番号G6257)50μlを15分間添加することにより、8866細胞をプレートに共有結合させた。グルタルアルデヒドを除去し(振り落とし)、プレートを0.1%BSA−PBS中の100mMのグリシン(Sigmaカタログ番号G−2879)150μlでブロッキングした。上清添加後、プレートを37℃で1〜2時間インキュベートし、水道水で7〜9回洗浄し、ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRPO)に結合されたヤギ抗ヒトIgG抗体(Southern Biotech, Birmingham, Alabama、カタログ番号2040−05)を、PBS−0.05%Tween20(Sigma,カタログ番号P1379)中の1%ドライスキムミルク(Vons)中で1:2000に希釈した希釈液を添加した。プレートを37℃で45分間イン
キュベートし、再び水道水で7〜9回洗浄した。HRPOの存在は、100μl/ウエルのTMB試薬(Kirkegaard & Perry, Gaithersburg, MD、カタログ番号50−76−02および50−65−02)の添加後の発色により検出された。25μlの4N H2SO4を添加することにより、反応を停止させた。分光光度計(Titertek Multiscan)で470nmで、光学密度(OD)を測定した。バックグラウンドの2倍より大きいOD値を陽性と評価した。
【0066】
ELISAの第二段階は、第一ELISAで陽性と評価された上清がCD23と反応し、いくつかの無関係な抗原とは反応しないということを確認するために、実行された。これは、同一ELISA手法を用いて、CD23陰性ヒト細胞株であるSupT1細胞(ERC BioServices Corporation, Rockville, MD、カタログ番号100)に関して上清を試験することにより実行された。両試験で同様に評価された上清は、廃棄した。これらの結果により、増殖を伴う10,500ウエルのうちの56が、異なる時点での2つの別々のスクリーニングにおいて8866細胞と結合するがSupT1細胞とは結合しない霊長類モノクローナル抗体の存在を示したということが示された。
【0067】
最初の2つのELISA段階により特定された上清が可溶性CD23と反応するか否かを確定するために、ELISAの第三工程を実行した。この第三ELISAでは、96ウエルプレートを、50mM重炭酸緩衝液、pH9.3中、2μg/mlの、可溶性CD23と結合するが、CD23−IgE結合を抑制しないマウスモノクローナル抗体であるBG−6(Biosource International, Camarillo, CA、カタログ番号CT−CD23−CF)で、4℃で一夜コーティングした。コーティング緩衝液を除去後、PBS中に所定希釈度にした半精製可溶性CD23の50μlをプレートに添加し、室温で2時間インキュベートした。プレートを水道水で7〜9回洗浄後、選択されたウエルからの上清50μlを添加した。プレートを水道水で7〜9回洗浄後、50μlの、ウサギ抗ヒトIgG(マウス吸着)−HRPO(Southern Biotech, カタログ番号6145−05)を0.05%Tween20を含有するPBS中の1%ドライスキムミルクで1:4000に希釈した希釈液を添加し、37℃で2時間インキュベートして、水道水で7〜9回洗浄し、前記のようにTMBで発色させた。バックグラウンドの2倍より大きいOD値を有するウエルをここでも陽性と評価した。
【0068】
8866細胞との結合を示した56ウエルのうちの21が、ELISAにおいてsCD23とも結合した。これらのウエルを、1細胞/3ウエルの割合で細胞をプレートすることにより、少なくとも2倍に拡大し、サブクローニングした。約3ヶ月後、CD23に対する霊長類モノクローナル抗体を産生する5つの安定したハイブリドーマを得た。
【0069】
プロテインA法による抗体精製
本質的に、抗体は、細胞および細胞片を除去するために培養上清を遠心分離することにより、精製される。その結果生じる遠心分離した試料を、次に、0.2μmフィルターを通して濾過する。その後、プロテインAセファロースファストフローカラムを準備し、PBS(pH7.4)で平衡化させた。次に、上清を適切な流速(2ml/分)でカラムに負荷する。負荷後、洗浄カラムを10カラム容量のPBS(pH7.4)で洗浄する。次に1ml/分の流速で溶離緩衝液(0.2M酢酸、0.1Mグリシン,pH3.5)を用いて抗体をカラムから溶離する。次に、100μlのTrisを含む試験管(2.0MTris−HCl、pH10.0)当たり分画1mlを回収する。その後、280nmで、分光光度計を読み取る。その結果得られる、280nmで高吸光度を有し、抗体を含有する分画を次に回収し、PBSに対して一夜透析する。次に、生成物を0.22μmの膜を通して濾過することにより滅菌し、−20℃で保存する。
【0070】
これら5つの霊長類抗ヒトCD23モノクローナル抗体(B3B11、2C8、5E8
および6G5)のうちの4つは、IL4−ヒドロコルチゾン誘導性末梢血単核球細胞(PBMC)培養によりIgE産生を測定するin vitroアッセイにおけるIgE産生を抑制することが実証された。これらの結果を、図1に示す。アッセイ条件は以下に示す。5番目の霊長類モノクローナル抗ヒトCD23抗体3G12は、本アッセイでは不活性であった。
【0071】
末梢血単核球細胞によるIL−4刺激性IgE産生
前記のように、目的の霊長類抗体およびそのPRIMATIZED(登録商標)(霊長類化)形態を、IL−4で刺激された末梢血単核球細胞によるIgE産生に及ぼすこのような抗体の効果を測定するin vitroアッセイにおいてIgE産生を抑制する能力に関して評価した。
【0072】
in vitroでのIL−4 IgEアッセイのための材料
48ウエル平底クラスタープレート(Costarカタログ番号3548)(1.5百万PBMC/ml/ウエル(48ウエルプレート))
ヒト組換えIL−4(Genzymeカタログ番号2181−01;10μg(2.5×107)ユニット)
抗CD23Mab:
マウスMab(MHM6;DAKO. カタログ番号M763)
霊長類Mab(防腐剤非含有)
PRIMATIZED(登録商標)(防腐剤非含有)
HB101基礎培地:(Irvine Scientificカタログ番号T000)
HB101サプリメント:(Irvine Scientificカタログ番号T151)
ウシ胎仔血清:(FBS;Bio-Whittakerカタログ番号14−501F)
ジメチルスルホキシド:(DMSO;Fisher Scientificカタログ番号D128−500)
ヒドロコルチゾン:(Sigmaカタログ番号H−0888)
ピューロマイシン:(Sigmaカタログ番号P−7255)
シクロヘキサミド:(Sigmaカタログ番号C−7698)
ヒストパク(Histopaque)(登録商標)(Sigmaカタログ番号H−8889)
ハンクス緩衝化食塩溶液:(HBSS; Irvine Scientificカタログ番号9232)
1%FBS添加HBSS
濃縮ダルベッコリン酸緩衝化生理食塩水(10×DPBS;Bio-Whittaker、 カタログ番号17−517Q)
バスクリア殺菌剤(Fisher、カタログ番号13−641−334)添加DPBS
溶液:
ピューロマイシン溶液:HB101増殖培地中に40μg/ml
シクロヘキサミド溶液:HB101増殖培地中に200μg/ml
ヒドロコルチゾン溶液:DMSOで0.1M溶液とした。
抗CD23マウスMabを十分に透析して、防腐剤を除去した。
HB101増殖培地
HB101基礎培地 500ml
10ml濾過滅菌蒸留水に溶解したHB101サプリメント 5ml
FBS 10ml
ヒドロコルチゾン溶液(最終濃度5μM) 0.25ml
【0073】
in vitroアッセイ手法
バフィーコート細胞1:4を室温でHBSSを用いて希釈する。これらの細胞は、全血から、血漿成分、凝固血小板およびフィブリン、ならびにバフィーコート細胞を分割し、分離するために、室温で一夜インキュベーション後に、得られる。
【0074】
次に、30μlの希釈バフィーコートを、50ml円錐試験管中の15μlのヒストパク上に載せる。これらの試験管を、次に、ブレーキをかけずに、室温において1700rpmで20分間、遠心分離する(IEC216スウィングバケットローター)。次に、滅菌ピペットを用いて、他の層を乱さないように注意しながら、白色PBMC層を回収する。PBMC(末梢血単核球細胞)は、部分的に、ヒストパクHISTOPAQUE(登録商標)密度勾配による遠心分離によって沈降され、はっきり見える白色細胞層を形成するバフィーコート細胞である。これらの細胞をピペットで回収し、HBSSで洗浄し、次に血球計を用いて計数する。典型的には、300〜600×106PBMCが、単一の450mlバフィーコートパッケージから回収され得る。
【0075】
次に回収したPBMCを1%FBS/HBSS中で3回洗浄する。洗浄した細胞を、7℃において1300rpmで7分間の遠心分離により回収する。
【0076】
回収された細胞の数を、次に、血球計を用いて決定する。細胞濃度を、HB101増殖培地1ml当たり約3百万の細胞に調整する。
【0077】
約1.5百万の細胞(0.5ml)を次に48ウエルプレートの各ウエルに添加する。概して、各実験に関しては、5つの並行試験試料を調製する。各プレートの辺部のウエルは、細胞試料には用いられない。したがって、これらのウエルには、例えば0.5mlの0.05%バスクリア/DPBSが充填される。
【0078】
所望量のIL−4およびMabを含有するHB101増殖培地0.5mlを、次にウエルに添加する。用いられるIL−4は、組換えDNA由来ヒトインターロイキン4である。アッセイに用いられるMabは、マウス、霊長類またはPRIMATIZED(登録商標)抗体である。典型的には、IL−4は100U/mlの最終濃度で添加され、そしてMabは0.01〜3μg/mlの最終濃度で付加される。
次に、5%CO2に設定された高湿度インキュベーター中で37℃で9〜11日間、細胞をインキュベートする。インキュベーション後、上清流体を回収し、IgE含量を測定する。
【0079】
IgE ELISA
以下にIgE ELISAで用いた物質および溶液を列挙する。
IgE ELISAに必要な物質および溶液
硫酸、4M
コーティング緩衝液: 10mM重炭酸ナトリウム緩衝液、pH9.6
濃縮リン酸緩衝化生理食塩水(10×PBS)ストック溶液:
NaH2PO4 26.6gm
Na2HPO4 289gm
NaCl 1064gm
蒸留水 10 L
ブロッキング緩衝液: 10%FBS/PBS
希釈緩衝液: 1%BSA/0.05%Tween20/PBS
洗浄緩衝液: 0.05%Tween20/PBS
ヤギ抗ヒトIgE(ε鎖特異的)、非標識化:(Tagoカタログ番号4104)
ヒトIgE標準:(The Binding Site カタログ番号BP094)
ヤギ抗ヒトIgE、HRP−標識化:(Tagoカタログ番号AHI0504)
TMBペルオキシダーゼ基質:(KPLカタログ番号50−76−02)
ペルオキシダーゼ溶液B:(KPLカタログ番号50−65−02)
作用基質溶液:1:1の割合で基質および溶液Bを混合
イムロン(Immulon)IIマイクロタイタープレート(Dynatech Labsカタログ番号011−010−3455)
【0080】
IgE ELISA手法
マイクロタイタープレートの各ウエルを、2μg/mlのヤギ抗ヒトIgEを含有するコーティング緩衝液100μlを用いてコーティングする。
次にコーティングプレートを4℃で一夜、インキュベートする。
インキュベーション後、プレート中の各ウエルをTween20/PBS 200μlで3回洗浄する。洗浄後、非特異的結合部位をブロッキング緩衝液200μl/ウエルで37℃で1時間ブロッキングする。
次に100μlの試料または標準を各ウエルに添加し、次にウエルを4℃で一夜インキュベートする。インキュベーション後、希釈して、または希釈せずに、試料を試験する。0.1〜50ng/mlの範囲のIgEのいくつかの希釈液を用いて、各プレートについての標準濃度曲線を作成する。
一夜インキュベーション後、各プレートをTween20/PBSで5回洗浄する。
ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)標識化ヤギ抗ヒトIgEを希釈緩衝液中で1:10,000に希釈した希釈液100μlを、ドレインしたウエルの各々に添加する。次に、プレートを37℃で4時間インキュベートする。
プレートを次にTween20/PBSで5回、水で3回洗浄する。
次に、3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン作用基質溶液100μlを各ウエルに添加する。その後、室温において暗所で25分間、プレートをインキュベートする。インキュベーション後、4M硫酸50μlを添加することにより、進行中の反応を停止させる。
次に450および540nmで同時に吸光度を読み取る。540nm吸光度値は、バックグラウンドとして差し引かれる。
【0081】
霊長類モノクローナル抗ヒトCD23抗体のKd測定値に関するアッセイ
スキャッチャード分析手法
【0082】
1.放射能標識法
2ビーズ当たり緩衝液1mLを用いて、IODO−BEADSを100mNリン酸緩衝液、pH7.4で2回洗浄する。次にビーズを濾紙上で乾燥させる。
次に2つのビーズを、約1mCiのIを含有する125I溶液100μlに添加し、200μlのリン酸緩衝液で希釈して、室温で5分間放置する。
抗体(50μg)を、プレロードしたビーズに添加する。放射能の最大取込みの反応時間は、6分である。
反応容器から放射能標識抗体を除去することにより、反応を停止させる。
次にゲル濾過を行い、放射能標識化抗体溶液から過剰の125Iまたは非取込み125Iを除去する。これは、1.5mLのセファデックス−G25、1.5mLのDEAEセファデックス−A25および0.5mLのアンバーライトからなるカラムに放射能標識化抗体を通すことにより行われる。放射能標識化抗体を、約10μg/mLの濃度で、総容量5mL中に溶離する(溶離緩衝液:10%ゼラチン、2%アジ化ナトリウムおよび1%BSAを含有する1×PBS)。
【0083】
2.最適化アッセイ(直接結合試験)
1μlの試料を採取し、ガンマカウンターに掛けて、10μg/mL放射能標識化溶液の比活性を測定する。
【0084】
例:
・ 1×105cpm/μl × 1000μl/10μg抗体
1×05cpm/μg抗体
1×04cpm/ng抗体
・ 抗体の分子量 = 75,000ng/nmole
・ 比活性:
1×04cpm/ng × 75,000ng/nmole
=7.5×08cpm/nmole
【0085】
抗原をコートしたプレート(例えば、mB7.1−CHOを用いて、非特異的結合を排除するために)、及び、バックグラウンドプレート(即ち、非トランスフェクト化CHO)を、200μl/ウエルのブロッキング緩衝液(ブロッキング緩衝液:10%ゼラチン、2%アジ化ナトリウム、1%BSAおよび10%FBSを含有する1×PBS)を用いて、室温で1時間ブロッキングする。
次にプレートを、典型的には水道水を用いて手で10回、洗浄する。
10μg/mLの放射能標識化抗体(50μl)を次に、マルチチャンネルピペットを用いてプレートを通して、2倍連続希釈により力価測定する。室温で1時間インキュベートする。
200μl/ウエルの洗浄緩衝液(洗浄緩衝液:10%ゼラチンおよび2%アジ化ナトリウムを含有する1×PBS)を用いて約6〜7回、プレートを再び洗浄する。
次にウエルをガンマカウンターに掛けて、各ウエル中の放射能計数を測定する。
最適放射能標識化抗体濃度は、比計数とバックグラウンド計数との差が最大となる濃度である。
【0086】
3. 競合アッセイのスキャッチャード分析
10μg/mL放射能標識化溶液を、「直接結合実験」で確定された最適濃度に希釈する。
抗原をコートしたプレートおよびバックグラウンドプレートを、200μl/ウエルのブロッキング緩衝液を用いて、室温で1時間、ブロッキングする。
次にプレートを、例えば水道水を用いて手で約10回、洗浄する。
別々のU底マイクロタイタープレート中で、2倍希釈により、「コールド」(放射能標識なし)抗体を次に力価測定する。「コールド」抗体の出発濃度は、最適放射能標識化抗体濃度の少なくとも100倍より高い必要がある。
【0087】
例:
・ 最適放射能標識化濃度: 0.5μg/mL
・ 「コールド」抗体濃度: 100μg/mL(注:最初のウエルでの1:2タイターは、「コールド」抗体濃度を50μg/mLに調整する)。
【0088】
50μl/ウエルの最適放射能標識化抗体を次に、「コールド」抗体を含有するウエルに添加する。
次に、100μl/ウエルの混合溶液を、抗原をコートしたプレートの対応するウエルに移し、室温で1時間インキュベートする。
また、以下の対照を実施するのも望ましい。
a)放射能標識化抗体の、抗原をコートしたプレートとの直接結合(5ウエル)、
b)放射能標識化抗体のバックグラウンドプレートとの直接結合(5ウエル)。
【0089】
インキュベーション後、プレートを、例えば約6〜7回、200μl/ウエルの洗浄緩衝液を用いて洗浄する。
次に、ウエルをガンマカウンターに掛けて、各ウエル中の放射能を測定する。
抗原をコートしたプレートに結合した計数からバックグラウンド計数を差し引いて、各ウエル中の特異的計数を算出することにより、これらの計算が求められる。
【0090】
4. スキャッチャード分析のための計算
結合抗体[B]のモル濃度は、以下のように求められる。
【0091】
例:50μg/mLの「コールド抗体」
結合した特異的計数: 4382cpm
50μg/mLの「コールド」抗体の存在下で結合した計数: 215cpm
差: 4382cpm−215cpm=4167cpm
比活性(放射能標識化抗体):5.54×cpm/nmole
4167cpm÷5.54×109cpm/nmole
=7.52×10-7nmole
7.53×10-7nmole÷0.05mL(試料容量)
=1.50×10-5nmole/mL
=1.50×10-8μmole/mL
[B]=1.50×10-11mole/mL(M)
【0092】
総モル濃度[T]は、以下のように求められる。
50μg/mL×1μmole/75,000μg
=6.67×10-4μmole/mL
=6.67×10-7mmole/mL(M)
[T]=66667×10-11mmole/mL(M)
遊離抗体[F]は、以下のようにして求められる。
遊離モル濃度 = 総計 − 結合
[F] = (66667×10-11)−(1.50×10-11
= 66665.5×10-11 mmole/mL(M)
B/Fを算出
Cricket GraphソフトウエアでB対B/Fをプロット
【0093】
本発明の抗ヒトCD23抗体の活性および親和性
5つの単離霊長類抗ヒトCD23モノクローナル抗体のうちの4つ(B3B11、2C8、5E8および6G5)は、IL−4ヒドロコルチゾン誘導性末梢血単核球細胞(PBMC)培養によりIgE産生を測定する前記のin vitroアッセイにおけるIgE産生を抑制することが判明した。これらの結果を、図1に示す。5番目の霊長類モノクローナル抗ヒトCD23抗体3G12は、このアッセイでは不活性であった。
【0094】
このin vitroアッセイで活性であることがわかった4つの霊長類モノクローナル抗ヒトCD23抗体のうちの2つ(B3B11および2C8)は、市販のマウス抗ヒトCD23抗体MHM6(CAKO A/S, Glostrup, Denmarkカタログ番号M763)と競合することが判明した(図2、上段パネル)。しかしながら、繰り返したアッセイでは、これらの抗体は、MHM6ほど有効なIgE抑制剤ではなかった(データは示されていない)。対照的に、他の霊長類抗CD23モノクローナル抗体(5E8および6G5)は互いに競合することが判明したが、MHM6とは競合しなかった(図2、中および下段パネル)。さらに、霊長類抗ヒトCD23モノクローナル抗体5E8は、in vitroアッセイにおけるIL−4誘導性IgEの有効な抑制剤であることが判明した(図1および3参照)。
【0095】
ヒトIgE合成のための改変Hu−SCID−マウスモデルおよびin vivoでの抗CD23抗体によるIL−4誘導性IgE産生の抑制の測定
in vivoでの誘導性ヒトIgE産生に及ぼす目的の抗体の作用を検出するために、改変hu−PBMC−SCIDマウスモデルも開発された。2つのドナーから得られたPBMCをin vitroでIL−4とともに2日間培養した。PBMCをプールし、抗体を伴って、
または伴わずにC.B.−17SCIDマウスの群を再構築するために用いた。マウスから14、21、28および35日目に採血し、血清IgGおよびIgEレベルをELISAにより測定した。このin vivoモデルを用いて、IgEの産生を抑制する能力に関して、CD23に対する霊長類抗体ならびにPRIMATIZED(登録商標)抗体の2つの異なるバージョンをアッセイした。
【0096】
改変SCIDマウスモデルは、ヒト末梢血単核球細胞(hu−PBMC−SCID)を用いて再構築された重症複合型免疫欠損scid/scid(SCID)マウス C.B.−17(Bosma et al., Nature, 301:527(1983))が有意量のヒト免疫グロブリン(Ig)を産生し得る(Mosier et al., Nature, 335:256(1988); Moiser et al., J. Clin. Immunol., 10:185(1990); Abedi et al., J. Immunol., 22:823(1992); およびMazingue et al., Eur. J. Immunol, 21:1763(1991))ということが既知であるために、用いられた。hu−PBMC−SCIDマウスで産生されるヒト免疫グロブリン(Ig)の優勢なアイソタイプは、IgGである。一般に、IgM、IgAおよびIgEアイソタイプは、PBMCが、ある種の自己免疫またはアレルギー性疾患症状を有するドナーから得られる場合を除いて、非常に低いレベルでまたは非検出可能レベルで見出される。ある種のサイトカインを用いてhu−PBMC SCIDマウスモデルを操作すると、IgEを含めた非IgGアイソタイプの有意レベルの生成が提供される、ということも報告されている(Kilchherr et al., Cellular Immunology, 151:241(1993);Spiegelberg et al., J. Clin. Investigation, 93:711(1994);およびCarballido et al., J. Immunol., 155:4162(1995))。hu−PBMC−SCIDは抗原特異的Igを生成するためにも用いられているが、但し、ドナーはin vivoでその抗原に対してプライミングされる。
【0097】
したがって、本発明者らの目的は、目的の抗CD23抗体を含めた、IgE関連疾患、例えばアレルギー性疾患の治療のための治療薬の効力を試験するために用い得る適切なヒトIgE産生hu−PBMC−SCIDマウスモデルを確立することに集中される。
【0098】
材料および方法
下記のhu−PBMC−SCIDマウスモデルにおいて、以下の物質および方法を用いた。
【0099】
SCIDマウス:C.B.−17 scid/scid免疫欠損マウスをTaconicから入手し(C.B.−17/IcrTac-scidfDF)、IDEC Pharmaceuticals動物施設で維持した。滅菌床敷付き滅菌ミクロバリアユニット中にマウスを収容した。動物試験は、Committee on Care of Laboratory Animal Resources Commission on Life Science-National Research Councilにより定められた「実験室動物の管理および使用のための指針(Guide for
the Care and Use of Laboratory Animals)」に従って実施した(Guide for the Care and Use of Laboratory Animals, DHHS Publ. No.(NIH)86-23, Bethesda, MD, NIH, 1985)。
【0100】
ヒトPBMC:メーカー推奨のFicoll-Hypaque(Histopaque-1077)(Sigma Diagnosticsカタログ番号1077−1)を用いた遠心分離により、血液銀行から入手したバフィーコートから、PBMCを単離した。勾配界面のリンパ球調製物を回収し、ハンクスの平衡塩溶液(HBSS)(Bio-Whittakerカタログ番号10−527F)中で3回洗浄した。各実験のために、PBMCを2つの別個のドナーから得て、in vitroで別々に培養した。5%FCS+1000IU/mlのIL−4(Genzyme, Inc. カタログ番号2181−01)を含有するHB−基本培地+1%HB101凍結乾燥サプリメント(Irvine Scientificカタログ番号T000&T151)中に、1〜3×106細胞/mlの濃度で、PBMCを再懸濁し、5%CO2とともに37℃で48時間インキュベートした。インキュベーション後、異なるバフィーコートからの細胞を回収し、プールして、SCIDマウスを再
構築するために用いた。
【0101】
in vivoアッセイ条件
0日目に、マウスのグループ(4〜5匹/グループ)に200〜300μl容量のHBSS中の50〜60×106リンパ球を腹腔内(i.p.)注射した。抗CD23抗体を投与した群に関しては、0日目に、i.p.注射の前にPBMCを抗CD23抗体(200〜400μg/マウス)と混合し、7日目に二回目の注射を施した。全マウスが、0日目〜5日目に、5000 IU/マウスのIL−4を腹腔内(i.p.)投与された。抗体を注射されなかった群は、対照群として用いた。マウスの眼窩後静脈から採血し、血清をIgGおよびIgEに関して、14、21、28および35日目にELISAにより分析した。
【0102】
図8は、霊長類抗ヒトCD23モノクローナル抗体5E8が、SCIDマウスモデルにおけるin vivoのIL−4誘導性IgE産生の抑制に有効であることを示す。
【0103】
PRIMATIZED(登録商標)抗ヒトCD23モノクローナル抗体のクローニングおよび発現
霊長類免疫グロブリン可変ドメインをクローニングするために、メーカーが記載した方法に従って、Micro-FastTrack mRNA単離キット(Invitrogenカタログ番号K1520−02)を用いることにより、抗ヒトCD23モノクローナル抗体6G5および5E8を分泌する霊長類ヘテロハイブリドーマの約2×106細胞から、ポリA+ RNAを別々に単離した。
【0104】
従来の方法により、cDNAサイクルキット(Invitrogenカタログ番号L1310−01)を用いて、cDNAの第一鎖をポリA+ RNAから合成した。
次に、6G5および5E8のLおよびH鎖可変領域を、ヒト免疫グロブリンの異なるコンセンサスファミリーに基づいて選択されたPCRプライマーを用いて、cDNAからPCRにより単離した。LおよびH可変領域のリーダー配列の開始部に対応する5’プライマーが選択され、そしてJ領域に対応する3’プライマーが選択された(6G5のλL鎖可変ドメイン、5E8のκL鎖可変ドメイン、ならびに6G5および5E8のH鎖可変ドメインをPCR増幅するために用いられる特異的プライマーは、第1表〜第3表に記載されている)。標準的方法にしたがって、PCRを実行した(ホットスタート100試験管(Gibco BRLカタログ番号10332−013)中で94℃で1分、54℃で1.5分、72℃で2分を30回)。鋳型としての80μlのcDNA(2×106細胞から)からの5μl、5nM dNTP 2μl、Taq ポリメラーゼ1μl、 Taqポリメラーゼ緩衝液 5μl、5’プライマー(25pmole/μl)2μl、3’プライマー(25pmole/μl)2μlおよび水36μlを含有する50μlの反応液中で、PCRを開始させた(Taqポリメラーゼおよび緩衝液はStratageneカタログ番号600131から、dNTPはBoehringer Mannheim カタログ番号1581295から得た)。
【0105】
A)プラスミドN5LG1+6G5およびN5LG4P+6G5の構築
1)PCRによる霊長類モノクローナル抗ヒトCD23抗体6G5のL鎖可変ドメインのクローニング
霊長類モノクローナル抗体6G5のcDNAからのL鎖可変領域の第1のPCR増幅は、λL鎖可変領域とin situで一致するバンドを示した。これらのバンドは、3つの異なる初期リーダー配列プライマーを用いたすべての反応において現れた(第1表〜第3表参照)。しかしながら、プライマー745(ファミリー2)を用いて得られるPCR産物は、PCR産物バンドの強度が比較的高いために、より特異的であると考えられた。
【0106】
Qiaquickゲル抽出キット(Qiagenカタログ番号28704)を用いて、このPCR産物
を単離した。精製したPCR断片をBglIIおよびAvrII制限エンドヌクレアーゼで消化し、同一の制限エンドヌクレアーゼで消化した哺乳類発現ベクターN5LG1にライゲーションした。150μlのPCR反応液からの精製PCR産物、100mgのN5LG1ベクター、2μlの10×ライゲーション緩衝液(NEBカタログ番号202S)および2μlのT4リガーゼ(NEBカタログ番号202S)を含むライゲーション混合物20μlを次に、14℃で一夜インキュベートした。
【0107】
哺乳類発現ベクターN5LG1は、哺乳類細胞中で4つの別々のタンパク質の発現を提供する遺伝子配列(例えば、調節配列、コード配列)を含有する。それらは、
(i)ヒトλL鎖定常領域、および、L鎖可変ドメインを挿入するためのユニークな制限エンドヌクレアーゼ部位を有する部分免疫グロブリンL鎖と、
(ii)ヒトγ1鎖定常領域コード配列、および、H鎖可変ドメインを挿入するためのユニークな制限エンドヌクレアーゼ部位を有する部分免疫グロブリンH鎖と、
(iii)プラスミドを取り込み、抗生物質ゲネチシン(Geneticin)(Gibco BRLカタログ番号10131−1209)に耐性である細胞を選択するために用いられるネオマイシンホスホトランスフェラーゼ遺伝子と、
(iv)メトトレキセート(MTX, Sigmaカタログ番号A−6770)の存在下で細胞が培養される場合に、選択およびゲノム増幅を提供するマウスジヒドロホレートレダクターゼ遺伝子(DHFR)(Reff et al., Blood, 83:433-445(1994))
である。
【0108】
ライゲーション後、親N5LG1プラスミドを消化するが、しかし6G5のL可変ドメインとライゲーションしたN5LG1プラスミドを消化しないPmeI制限エンドヌクレアーゼを用いて混合物を消化した。消化後、以下のように、混合物でEpicurian coli(登録商標) XL1-Blueコンピテント細胞(Stratageneカタログ番号200249)を形質転換した。
【0109】
100μlのコンピテント細胞を10μlの前記ライゲーション混合物と混合し、氷上に30分間置いた後、45℃で30秒間加熱した。この混合物を氷上に2分間置いて、予め室温に温めておいたSOC900μlを添加した(SOCは、LBブロス(Gibco BRLカタログ番号10855−013)+0.02M MgCl2、0.02M MgSO4および0.02M D−グルコースである)。37℃で1時間インキュベーション後、混合物を4000gで1分間遠心分離してから、800μlの上清を捨てた。残りの混合物を、50μg/mlのアンピシリン(Amp、Gibco BRLカタログ番号13075−015)を含有するLB寒天(Gibco BRLカタログ番号12945−044)皿上にプレートした。Wizard(登録商標) MiniprepDNA精製システム(Promegaカタログ番号A7510)を用いて、Ampプレート上で増殖した大腸菌の個々のコロニーから、プラスミドDNAを単離した。
【0110】
単離したプラスミドDNAを次に、BglIIおよびAvrIIを用いて消化し、その後アガロースゲル電気泳動して、特性評価した。400bpのエチジウム染色DNAバンドは、L鎖可変ドメインがうまくクローニングされた可能性を示した。
【0111】
これが免疫グロブリンL鎖可変ドメインであることを確認するために、Sequenase7−Deaza−dGTP DNAシーケンシングキット(USBカタログ番号70990)をシーケンシングプライマー607およびGE108とともに用いて、シーケンシングを実施した(第4表のシーケンシングプライマー参照)。
【0112】
λL鎖ファミリー2の5’プライマー初期リーダー配列(プライマー745)および3’J領域プライマー926を用いて、霊長類モノクローナル抗体6G5のcDNAからの
L鎖の第2の独立のPCR増幅を実行した(第1表〜第3表の6G5のλL鎖可変ドメインのPCRのためのプライマー参照)。オリジナルTAクローニングキット(Invitrogenカタログ番号K2000−01)を用いて、単離したPCR産物(前記技法参照)をTAベクター中にクローニングした。EcoRI制限エンドヌクレアーゼで消化後、アガロースゲル電気泳動下で、単離miniprep DNA(前記技法参照)を調べた。TAベクターに含まれる、生じたPCR産物を次に、Sp6およびM13(−40)フォワードプライマー(第4表のシーケンシングプライマー参照)を用いて、シーケンシングした(前記と同様に)。その結果得られたL鎖配列は、第1のPCRからのL鎖のものと同一であった。霊長類モノクローナル抗ヒトCD23抗体6G5のL鎖可変ドメインのこの全配列を以下に示す。
【0113】
【表1−1】

【0114】
【表1−2】

【0115】
【表1−3】

【0116】
2)PCRによる霊長類モノクローナル抗ヒトCD23抗体6G5のH鎖可変ドメインのクローニング
前記の初期リーダー配列プライマーおよび3’J領域プライマーGE244の組を用いて、霊長類モノクローナル抗体6G5のcDNAからのH鎖可変ドメインの第1のPCR増幅を行った。これらのプライマーは、以下の第1表〜第3表中に示す。この反応は、350塩基PCR産物をもたらした。第1のPCR増幅では、この350塩基生成物(前記のようにして精製される)をNheIおよびSalIで消化し、N5LG1にライゲーションし、同一エンドヌクレアーゼで消化した。その結果生じたライゲーション混合物で、L鎖をクローニングするのと同一の技法を用いて宿主細胞を形質転換した。次に、350塩基PCR産物を含有するプラスミドN5LG1を単離し、シーケンシングした(シーケンシングプライマー266および268を用いて)(これらのシーケンシングプライマーを、第4表に示す)。
【0117】
シーケンシングにより、PCR産物はH可変ドメインの一部だけを含有し、そしてそのアミノ末端に欠失を含む(配列は、フレームワーク2、コドン36で始まる)ということが示された。
【0118】
ファミリー1(MB1503)のための5’初期リーダー配列プライマーおよび3’J領域プライマーGE244を用いて、第2の独立のPCR反応を行い、霊長類モノクローナル抗体6G5のH鎖可変ドメインを増幅し、単離した(これらのプライマーも第1表〜第3表に含まれている)。その結果得られたPCR産物を次に、前記と同じ技法を用いてN5LG1中にクローニングした。その配列は、第1のPCR産物と同一であることが判明した。
【0119】
したがって、欠けている5’末端を含めた6G5の全H可変ドメインをクローニングするために、6G5 H可変鎖のCDR3およびフレームワーク4領域を含む新規の長い3’プライマー(MB1533)を次に、ファミリー1 5’プライマー(MB1503)とともに第3の独立のPCR反応に用いた(これらのプライマーも、第1表〜第3表に含まれる)。
【0120】
PCR後、より大きい420塩基PCR産物が、アガロースゲル上に観察された。このPCR産物を前記と同様に単離し、そしてTAベクター中にクローニングした。TAベクター中に含有されるその結果生じたPCR産物を次にシーケンシングした。シーケンシングにより、このDNAは全H可変ドメインを含有することを、そして3’部は、最初の2回のPCR反応からの先にクローニングされた部分H鎖可変ドメインのものと同一である
、ということが示された。
【0121】
第3のPCR増幅と同一のプライマーを用いて、第4の独立のPCRを行った。これにより、前記と同様に単離され、TAベクター中にクローニングされたPCR産物が得られた。第4の独立のPCR産物の配列は、第3のPCR増幅で得られたものと同一であることが判明した。霊長類モノクローナル抗ヒトCD23抗体6G5のH鎖可変ドメインを含むこの配列を以下に示す。
【0122】
【表2−1】

【0123】
【表2−2】

【0124】
【表2−3】

【0125】
3) 哺乳類発現ベクターの構築
6G5のクローニングしたH鎖可変ドメインを哺乳類発現ベクター中に挿入するために、TAベクター中のH鎖可変ドメイン(第3の独立のPCRで得られる)をNheIおよびSalIで消化し、これを同一制限酵素で消化した、すでにL鎖可変ドメインを含有しているN5LG1ベクター中にクローニングした。その結果生じた哺乳類発現ベクターをN5LG1+6G5と命名した。
【0126】
N5LG4P+6G5ベクターを構築するために、それぞれBglIIとAvrII、およびNheIとSalIの消化により、LおよびH鎖可変ドメインの両方をN5LG1+6G5から単離した。哺乳類発現ベクターN5LG4Pベクターは、免疫グロブリンの安定性を増大し、in vivoの薬物動態を改良するために、ヒトγ1を、ヒンジ部におけるセリンのプロリンへの変異(「P」変異)を含有するヒトγ4定常領域に置き換えた以外は、前記のN5LG1ベクターと同一である。L鎖可変ドメインを先ずプラスミド中にクローニングし、H鎖可変ドメインを、前記の技法を用いてL鎖可変ドメインを含有するベクター中にクローニングした。この哺乳類発現ベクターは、N5LG4P+6G5と命名された。
【0127】
B.プラスミドN5KG4P+5E8、N5KG1+5E8、N5KG4P+5E8N−およびN5KG1+5E8N−の構築
1.PCRによる霊長類モノクローナル抗ヒトCD23抗体5E8のL鎖可変ドメインのクローニング
κ初期リーダー配列プライマーおよび3’J領域プライマーGE204の組を用いて、5E8cDNAからのL鎖可変ドメインの第1のPCR反応を行った(第1表〜第3表の5E8のκL鎖可変ドメインのPCRのためのプライマー参照)。420塩基PCR産物を得た。単離420塩基PCR産物をBglIIおよびBsiWI制限エンドヌクレアーゼで消化し、哺乳類発現ベクターN5KG4P中にクローニングして、GE108および377プライマー(これらは第4表に含まれている)を用いてシーケンシングした。哺乳類発現ベクターN5KG4Pは、ヒトλL鎖定常領域の代わりにヒトκL鎖定常領域を含有することを除いてベクターN5LG4Pと同一である。この420ポリヌクレオチドDNAのシーケンシングにより、それが全κL鎖可変ドメインを含有することが示された。
【0128】
5’ファミリー1プライマーGE201および3’プライマーGE204を用いて、L鎖可変領域の第2の独立のPCRを実施した(第1表〜第3表の5E8のκL鎖可変ドメインのPCRのためのプライマー参照)。単離PCR産物を(前記の方法を用いて)TAベクター中にクローニングし、Sp6およびT7プロモータープライマーを用いてシーケンシングした。シーケンシングにより、このPCR産物は第1のPCRから得られたものと同一であることが示された。霊長類モノクローナル抗ヒトCD23抗体5E8のL鎖可変ドメインの全配列を以下に示す。
【0129】
【表3−1】

【0130】
【表3−2】

【0131】
2)PCRによる霊長類モノクローナル抗ヒトCD23抗体5E8のH鎖可変ドメインのクローニング
5’初期リーダーH鎖配列プライマーおよび3’プライマーGE210の組を用いて、5E8のH鎖可変ドメインの第1のPCRを行った(第1表の6G5および5E8のH鎖可変ドメインのPCRのためのプライマー参照)。420塩基PCR産物は、ファミリー3プライマー反応で現れた。PCR産物を精製し、次にNheIおよびSalIで消化して、哺乳類発現ベクターN5KG4Pベクター中にクローニングした(前記と同様に)。268および928プライマーを用いて、PCR産物をシーケンシングした(第4表のシーケンシングプライマー参照)。
【0132】
ファミリー3 5’プライマーGE207および3’プライマーGE210を用いて、5E8のH鎖可変ドメインの第2の独立のPCR反応を行った(第1表〜第3表の6G5および5E8のH鎖可変ドメインのPCRのためのプライマー参照)。単離PCR産物を前記と同じ技法を用いてTAベクター中にクローニングし、Sp6およびT7プライマーを用いてシーケンシングした。シーケンシングにより、コドン91のTACがTGCに変えられていたことが示された。
【0133】
91位での適切なコドンを決定するために、第2のPCRと同じプライマーを用いて、第3の独立のPCRを実施した(前記参照)。PCR産物をTAベクター中に再びクローニングし、Sp6およびT7プライマーを用いてシーケンシングした。配列は、第1のPCRで得られたH鎖可変配列と同一であることが判明した。したがって、第2の独立のPCR産物中の位置91のTGCは、明らかにPCRの間に導入されたエラーの結果である。霊長類モノクローナル抗ヒトCD23抗体5E8のH鎖可変ドメインのこの全配列を以下に示す。
【0134】
【表4−1】

【0135】
【表4−2】

【0136】
【表4−3】

【0137】
3)哺乳類発現ベクターの構築
N5KG4P中のH鎖可変ドメインをNheIおよびSalIで消化し、精製して、5E8のL鎖可変ドメインを含有するN5KG4P中にクローニングした。次にこのプラスミドを前記と同様に制限エンドヌクレアーゼで消化した。これにより、5E8のL鎖およびH鎖可変ドメインの両方を含有するベクターが生じた。このベクターをN5KG4P+5E8と命名した。 N5KG4P+5E8のHおよびL可変ドメインの両方を次に、哺乳類発現ベクターN5KG1に挿入して、 N5KG1+5E8ベクターを作製した。
【0138】
4)部位特異的変異誘発による霊長類モノクローナル抗体5E8のH鎖可変領域におけるアミノ酸の変化および哺乳類発現ベクターの構築
5E8 H可変ドメインの配列によれば、アスパラギンコドン75に免疫グロブリンの潜在的グリコシル化部位が存在する。この潜在的グリコシル化部位は、(Asn)−(プロリン以外のあらゆるアミノ酸)−(セリンまたはトレオニン)のトリペプチド配列を有する保存アスパラギン結合グリコシル化モチーフに対応する。したがって、このグリコシル化モチーフの改変のために、この位置でグリコシル化され得ない5E8のグリコシル化変異体は、アスパラギンコドン75をリジンに置換することにより生成された(この位置で多数のヒト免疫グロブリンに見出される)。部位特異的変異誘発は、以下の方法により行った。
【0139】
鋳型としてのN5KG4P+5E8ならびに3’プライマー(コドン71〜79に対応する)で、コドン75に変異(AACがAAGに変化)を含有するプライマーMB1654およびリーダー配列の始まりの5’プライマー(プライマーMB1650)を用いて、第1のPCRをいった(第5表に記載のH鎖可変領域5E8のグリコシル化変異体の生成のために用いられるPCRプライマー参照)。
【0140】
同一変異を含有する5’プライマー(コドン71〜79に対応)(プライマーMB1653)およびフレームワーク4の末端からの3’プライマー(プライマーMB1651)を用いることにより、同一鋳型で、第2のPCRをいった(第5表の5E8のH鎖可変領域のグリコシル化変異体の生成のために用いられるPCRプライマー参照)。
【0141】
これら2つのPCR産物を単離し、等モル比で混合した。次に、第1のPCRで用いられた5’プライマー(MB1650)と第2のPCRで用いられた3’プライマー(MB1651)とともに、鋳型として第1および第2のPCR産物の混合物を用いることにより、第3の独立のPCRをいった(第5表のH鎖可変領域のグリコシル化変異体の生成のために用いられるPCRプライマー参照)。第3のPCRで得られたPCR産物は、アスパラギン75がリジンに変化している5E8のH可変ドメインコード領域を含有すること
が判明した。
【0142】
第3のPCR産物を精製し、制限エンドヌクレアーゼSalIおよびNheIで消化し、そしてL鎖可変ドメインのみを含有するN5KG4P中にクローニングした。PCR産物をシーケンシングして、それが変異H可変ドメインを含むことを確認した。この哺乳類発現プラスミドは、N5KG4P+5E8N−と命名された。
【0143】
N5KG1+5E8N−を構築するために、N5KG4P−5E8N−からのLおよびH可変ドメインの両方をそれぞれBglIIとBsiWIおよびNheIとSalIで消化した。L可変ドメインを先ずクローニングし、次にH可変ドメインを哺乳類発現プラスミドN5KG1に挿入して、プラスミドN5KG1+5E8N−を作製した。
【0144】
【表5】

【0145】
【表6】

【0146】
【表7】

【0147】
【表8】

【0148】
【表9】

【0149】
C)γ3ベクターの構築
マウス抗体を、HおよびL鎖定常領域がヒトバージョンで置換されたか、あるいはCDR(相補性決定領域)以外はすべてそれらのヒト等価物で置換されたキメラに変換するためには多数の方法がある(King et al., Biochem. J. 281:317, 1992; Queen et al., Proc. Nat. Acad. Sci. USA 86(24):10029-33, 1989; Love et al., Methods Enzymol. 178:515-27, 1989; Hutzell et al., Cancer Res. 51:181, 1991; Chiang et al., Biotechniques 7(4):360-6, 1989; Heinrich et al., J. Immunol. 143:3589, 1989; Hardman et al., Int. J. Cancer 44:424, 1989; Orlandi et al., Proc. Nat. Acad. Sci. USA 86(10):3833-6, 1989参照)。
【0150】
さらに、先の記載は特に、PRIMATIZED(登録商標)γ1およびγ4抗体の発現のためのベクターの構築が、PCRを用いてLおよびH鎖可変領域をコードするDNAを増幅し、そしてこれらの領域を、適切なヒト定常領域ドメインをコードする発現ベクター中にクローニングすることにより達成され得る、ということを実証する。したがって、霊長類抗体からの増幅可変領域DNAの挿入を可能にするクローニング部位も含有する適切な哺乳類発現ベクターが用いられる限り、他のヒト定常領域ドメインをコードする同様の構築物が作製され得る、ということは明らかであろう。
【0151】
可変領域DNAを増幅するために用いられるPCRプライマーは、用いられるベクターによって種々の制限クローニング部位を含むように設計され得る、ということも明らかである。
【0152】
ヒトIgG3からの定常領域ドメインをコードするベクターは当技術分野で利用可能であり、本発明のPRIMATIZED(登録商標)抗体を構築するために用い得る。例えば、Coらは、キメラおよびヒト化抗体を構築するためのヒトLおよびH鎖定常領域を発現する別々のベクターを使用し、そしてヒトγ1およびγ3の両方のためのH鎖ベクターを提供する。目的の抗体の可変ドメイン領域をこれらのベクター中にクローニングするために、XbaI制限部位が、LおよびH鎖に関してそれぞれ、JK4およびJH3イントロンセグメントの定常領域の直前に位置することが便利である(Co et al., 1996, Cancer Res. 56:1118-1125; Co et al., 1992, J. Immunol. 148:1149-1154)。
【0153】
したがって、XbaI制限部位、またはXbaI制限酵素と同じ一本鎖オーバーハング
(即ち、NheI、SpeI)を作成する部位を組み込むPCRプライマーを設計することにより、霊長類抗体からの可変領域は、Coらが記載したベクターを用いてヒトγ3定常領域ドメインと会合し得る。あるいは、リンカーまたはアダプターを用いてクローニングを助長し得る。
【0154】
DNA合成法を用いてヒトγ3定常領域のcDNAバージョンを構築し、本明細書に記載したN5KG1ベクター中に、NheIとBamHI部位との間のヒトγ1定常領域の代わりに、それを挿入することもできる。いずれの制限部位が目的の特定の可変領域をクローニングするのに最も便利であるかによって、当技術分野で報告された他のγ3ベクターもあり、これらのいずれかを用いて、本発明のγ3抗体を構築し、発現させるのに使用し得る(例えば、Parren et al., 1992, J. Immunol. 148(3):695-701; Steplewski et
al., 1988, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85: 4852-4856; および米国特許第4,975,369号参照)(これらは、参照により本明細書中に含まれる)。
【0155】
D)PRIMATIZED(登録商標)抗体の変異
本発明は、定常領域の変異、置換または欠失を含有するPRIMATIZED(登録商標)抗体も含む。このような変異は、当業者には周知の技法である、グリコシル化変異体に関して前述したような部位指定的変異誘発法を用いて構築され得る。
【0156】
本発明の変異化抗体は、治療的効率のレベルの、即ちFcR結合の所望の変化をもたらす目的で設計される。しかしながら、抗体の定常領域のあらゆる変異は、γ1またはγ3定常領域ドメインにより媒介されるような基本的エフェクター機能を変えないはずであることが理解されるべきである。それらがγ1またはγ3ドメインを含有する抗体と同様のエフェクター機能を有するように、変異誘発により他のサブクラスのγ抗体を変えることもできる。このような抗体も、本発明に包含される。
【0157】
例えば、FcR結合およびC1q補体成分との相互作用に関与するIgG定常領域の領域が特性評価されており、そして結合親和性を増大するか、あるいは低減する変異が同定されている。米国特許第5,648,260号(これは、参照により本明細書中に含まれる)に開示されているように、ヒトIgG3定常領域のLeu235をGluに変えると、ヒトFcγR1受容体に対する変異体の相互作用が壊される。さらに、ヒンジ結合領域中の隣接または近傍部位の変異(即ち、残基234、235、236または237をAlaに置換)は、残基234、235、236および237の変化が、少なくともFcγR1受容体に対する親和性に影響を及ぼす、ということを示す。
【0158】
同様に、米国特許第5,348,876号(これも参照により本明細書中に含まれる)では、ヒトIgG3定常領域のヒンジ領域の長さを減少させ、そしてこの領域のアミノ酸配列を変えることにより、Clq結合、したがって補体媒介性細胞溶解がさらに改良される、ということが示された。実際、変異体は、野生型IgG3よりも、そしてIgG1よりさらに多くClqと結合した。
【0159】
したがって、おそらくはより軽症の医学的症状の治療のために、変異を用いて、ヒトFc受容体に対して低親和性を有する治療的抗体を作製し得る、ということが当技術分野から明らかである。さらに、エフェクター機能活性を増大し、それにより治療的用途のためのより強力なバージョンをもたらす変異が同定され得る。遺伝子配列を操作して、薬剤効率を変化させることが予見されるとともに、それらが十分に本発明の精神および範囲内にあることが認識されるべきである。
【0160】
E)チャイニーズハムスター卵巣細胞におけるPRIMATIZED(登録商標)抗体の発現
PRIMATIZED(登録商標)抗体を単離するために、以下のプロトコルを用いて、チャイニーズハムスター卵巣細胞中で、抗体をコードするベクターを発現させた。
【0161】
WIZARD(登録商標) MaxiprepsDNA精製システム(Promegaカタログ番号A7421)を用いて、ラージスケールでプラスミドDNAを精製した。精製したDNAをSspIおよびBspLU11Iで消化し、エタノールを用いて一旦沈殿させて、滅菌TE中に再懸濁させた。
【0162】
精製したエンドヌクレアーゼ制限プラスミドDNAを、次に、電気穿孔を用いて、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)ジヒドロフォレートレダクターゼマイナスDG44細胞中に導入した。使用した電気穿孔技法を、以下に説明する。
【0163】
約1.6×108CHO細胞を、適切なサイズの滅菌Corning管中で、1000rpmで1分間、回転させた。培地を除去し、細胞を15mlの滅菌氷冷SBS(滅菌スクロース緩衝化溶液は、272mMのスクロース、7mMのリン酸ナトリウム、pH7.4、1mMのMgCl2である)中で洗浄し、1000rpmで5分間回転させた。SBSを除去し、1×107細胞/mlの細胞濃度で新鮮な氷冷滅菌SBSを用いて細胞を懸濁させて、氷上に15分間放置した。BTX600エレクトロポレーターのスイッチを入れ、予め230ボルトに設定し、最大電圧つまみは500ボルト/キャパシタンス&抵抗に設定した。キャパシタンスは400マイクロファラデーに、抵抗は13オームに設定された(設定R1)。
【0164】
プラスミドDNA(4μgのDNAまたは2μgのDNA)および0.4mlの細胞(4×106細胞)を次に、BTX0.4mlキュベット(BTXカタログ番号620)中に入れた。キュベットをBTX600スタンド中に入れることにより細胞に衝撃を与え、自動荷電&パルスボタンを押した。各哺乳類発現プラスミドを用いて、別々に約20回の電気穿孔を実施した。
【0165】
衝撃後、キュベットを周囲温度で15分間放置した。各キュベットからの細胞およびDNAを、HTサプリメント(100×サプリメントは10mMヒポキサンチンナトリウム、1.6mMチミジンGibco BRLカタログ番号11067−014である)を添加した、ヒポキサンチンまたはチミジンを含有しない20mlのCHO−SSFMII(Gibco BRLカタログ番号31033−012)中に再懸濁した。単一電気穿孔処理キュベットからの細胞を次に96ウエルプレート(200μl/ウエル)にプレートし、37℃のCO2インキュベーター中に入れた。培地を400mg/mlのGeneticin(登録商標)(G418, Gibco BRLカタログ番号10131−019)を添加した前記の培地に変えることにより、2〜3日後に選択が開始された。細胞を37℃で増殖させ、細胞培地を3〜5日毎に取り換えた。16日後、G418耐性クローンがウエル中に出現し、ELISAにより上清を抗体発現に関してアッセイした。次に、最高発現クローンを個別にエキスパンドさせた。モノクローナル抗体を後述するように精製した。
【0166】
免疫グロブリンELISA
プレート(Immulon 2, Dynatech Laboratories, Inc. カタログ番号011−010−3455)を4℃で一夜、100μl/ウエルで200ngの非標識化ヤギ抗ヒトIgG抗体でコーティングした。これは、プレート当たり20mlの非標識化ヤギ抗ヒトIgG/10mlのコーティング緩衝液(Boehringer Mannheim Ab カタログ番号605 400)(約1mg/mlストックの1:500希釈液)を用いて実施する。次に、コーティング緩衝液をプレートから除去し、紙タオルを用いて乾燥させる。ウエル当たり100μlの希釈緩衝液を次に付加する。
【0167】
抗体溶液および標準液(100ng/ml〜2.5ng/ml)を次に、デュプリケートで100μl/ウエルで希釈緩衝液100mlに直接添加する。抗体溶液および標準液は、希釈緩衝液中に含有される。その結果生じる溶液を次に、37℃で少なくとも1時間インキュベートする。
【0168】
インキュベーション後、各プレートの内容物を除き、プレートを水道水で5回洗浄する。次にプレートを紙タオル上で乾燥させる。
【0169】
プレート乾燥後に、二次抗体を100μl/ウエルで添加する。この二次抗体は、1/10,000希釈液で、または1μlのAb/10mlの希釈緩衝液/プレートで添加されるヤギ抗ヒトκ−HRPO(Southern Biotechnology Associates, Inc.から入手。カタログ番号2060−05)であるか、あるいは1/20,000希釈液で、または1μlのAb/20mlの希釈緩衝液/2プレートで用いられるヤギ抗ヒトλ−HRPO(Southern Biotechnology Associates, Inc.から入手。カタログ番号2070−05)である。
【0170】
抗体とプレートの内容物とを37℃で1時間インキュベートさせる。インキュベーション後、各プレートの内容物を除く。プレートを再び水道水で5回洗浄し、洗浄したプレートを乾燥させる。次に乾燥したプレートに、HRPO基質(TMB Microwell−2成分)を100μl/ウエルの量で添加する(5mlのTMBペルオキシダーゼ基質+5mlのペルオキシダーゼ溶液B/プレート(Kirdgaard and Perry Labs, TMB Microwell2成分試薬、カタログ番号50−76−00))。
【0171】
最も弱い標準液(2.5ng/ml)がバックグラウンド上に目に見えるようになった時に、100μlの2M H2SO4を各ウエルに添加することにより、反応を停止させる。次にプレートのウエルの光学密度を、波長を設定した(OD450およびOPT2(OD540))プレートリーダー、例えばMolecular Devices Emax精密マイクロプレートリーダーを用いて読み取る。
【0172】
ELISA緩衝液
コーティング緩衝液
炭酸ナトリウム 0.8 g/l
重炭酸ナトリウム 1.55g/l
約1mlの1N HClでpHを9.5に調整
希釈緩衝液
0.5%無脂肪乾燥ミルク(5mg/L)のPBS溶液+0.01% Thimerosal(100mg/L)
【0173】
前記のアッセイを用いて得られるELISA値の例を以下に記載する。
【0174】
標準液 OD450 OD450 平均
100ng/ml 0.805 0.876 0.841
50ng/ml 0.395 0.472 0.434
25ng/ml 0.213 0.252 0.233
10ng/ml 0.089 0.105 0.097
5ng/ml 0.054 0.055 0.055
2.5ng/ml 0.031 0.035 0.033
0ng/ml 0.004 0.006 0.005
【0175】
希釈緩衝液中の標準液
1mg/mlとするためのストックAB(通常生理食塩水中で滅菌濾過。ODによりタンパク質測定)の適切な希釈
【0176】
例:
キメラサル/ヒト抗CD4(CE9.1)は4.18mg/ml
76μlの希釈緩衝液に上記24μlを加えると、1mg/ml
450μlの希釈緩衝液(D.B.)に50μlのストックAb(1mg/ml)を加えると100μg/ml
450μlのD.B.に上記の混合物50μlを加えると10μg/ml
1.8mlのD.B.に上記の混合物200μlを加えると1μg/ml
9mlのD.B.に上記の混合物1mlを加えると100ng/ml*
5mlのD.B.に上記の混合物5mlを加えると50ng/ml*
5mlのD.B.に上記の混合物5mlを加えると25ng/ml*
6mlのD.B.に上記の混合物4mlを加えると10ng/ml*
5mlのD.B.に上記の混合物5mlを加えると5ng/ml*
5mlのD.B.に上記の混合物5mlを加えると2.5ng/ml*
* ELISAに用いられる標準液
【0177】
プロテインAによる抗体精製
手法
培養上清を遠心分離して、細胞および細胞片を取り除く。次に遠心分離物を0.2μmフィルターに通して濾過する。その後、プロテインAセファロースファストフローカラム(組換えプロテインAセファロースファストフロー)(Pharmacia Biotechカタログ番号71−5000−09)を調製し、PBS(pH7.4)を用いて平衡化させる。
【0178】
上清を適切な流速(例えば、2ml/分)でカラムに負荷する。負荷後、カラムを10カラム容量のPBS(pH7.4)で洗浄する。1ml/分の流速で溶離緩衝液(0.2M酢酸、0.1Mグリシン、pH3.5)を用いて、抗体をカラムから溶離する。100μlのTrisを含有する試験管当たり1mlの分画を回収する。その後、280nmで分光光度計吸光度読み取りを実施する。次に抗体画分を回収し、PBS(pH7.9)に対して一夜透析する。透析物を次に、0.22μmの膜を通して濾過して滅菌し、−20℃で保存する。
【0179】
アッセイ結果
前記のPRIMATIZED(登録商標)ヒトγ4抗ヒトCD23抗体を精製し、in vitroでの誘導性IgE抑制活性に関してアッセイした。これらの結果は、図3および5に含まれる。これは、前記のin vitroIL−4 IgEアッセイを用いて行った。
【0180】
これらのアッセイ結果は意外にも、両方のヒトγ4抗ヒトCD23抗体は、対応する霊長類抗ヒトCD23抗体ほど活性ではない、即ち、それらはin vitroでの誘導性IgE産生を有意に抑制しなかった、ということを示した。
【0181】
しかしながら、霊長類5E8およびp5E8G4PはH鎖可変領域に潜在的アスパラギン結合グリコシル化部位を有するため、この部位でのグリコシル化の効果を調べた(これらの抗体はともに、この部位にN−結合オリゴ糖を含有する、ということが判明した(データは示されていない))。したがって、グリコシル化を抑制するために、グリコシル化部位のアスパラギンをリジンに変えて、炭水化物付加を排除した。この変異化抗体を、p5E8G4PN−と命名した。アッセイ結果は、この抗体がIL−4 IgEアッセイにおいてp5E8G4Pと同一にふるまい(図3参照)、そしてヒトCD23に対して同一の見かけの親和性Kdを示す(図4参照)、ということを実証した。したがって、これら
の結果は、5E8γ4PRIMATIZED(登録商標)抗体から観察されたIgE抑制の、霊長類5E8抗体と比較した場合の差はグリコシル化の差によるものではない、ということを示した。
【0182】
次に、3つの霊長類抗体(p5E8G4P、p5E8G4PN−およびp6G5G4P)を、実質的に同一の方法を用いて、ヒトγ1バージョンとして発現させた。それぞれp5E8G1、p5E8G1N−およびp6G5G1と命名した3つのヒトγ1抗ヒトCD23抗体はすべて、in vitroでのIL−4/IgEアッセイにおいて活性であることが判明した(図3および5)。
【0183】
p5E8G1は、0.3μg/ml(P[T,t]片側+0.0055)および3μg/ml(p[T<t]片側+0.0019)の濃度で、p5E8G4Pよりも統計学的に抑制的である、ということが判明した。さらに、 p5E8G1N−は、0.3μg/ml(P[T<t]片側+0.0392)および3μg/ml(p[T<t]片側+0.0310)の両濃度で、p5E8G4PN−より統計学的に抑制的である(図3)。
【0184】
同様に、p6G5G1は3mg/mlで誘導性IgE産生を完全に抑制し、一方p6G5G4Pは抑制しなかった(これらの結果を図5に示す)。
【0185】
したがって、これらの結果は、活性Fc領域、特にヒトγ1のものが、抗ヒトCD23抗体による誘導性IgE抑制に関して重要である、ということを示唆した。これらの結果はまた、γ3定常領域はγ1が結合するのと同じFcγR受容体と結合し、そして同一結果を媒介すると考えられるため、ヒトγ3定常領域を含有するヒト抗CD23抗体が誘導性IgE抑制に重要である、ということも示唆した。
【0186】
実施例2
抗ヒトCD23抗体のIgE抑制におけるFcエフェクター部分の関与に関して我々の仮説を確証するために、2C8と命名された、in vitroでIgEを抑制することも示されている第三の霊長類抗体を、F(ab’)2に変換した。前記と同じIL−4/IgEアッセイを用いて、IgE抑制活性を測定した。
【0187】
材料
本実施例では、以下の材料を用いた。
ImmunoPure F(ab’)2調製キット(Pierceカタログ番号44888)
消化緩衝液: 20mM酢酸ナトリウム緩衝液,pH4.5
0.1Mクエン酸、pH3.0(NaOHでpHを調整)
0.1%アジ化ナトリウム水溶液
透析チューブ:50,000MWカットオフ(Spectra Porカタログ番号132 128)
37℃を保持し得る振盪水浴
ポリスチレン培養試験管、17×100mm(Fisherカタログ番号14−956−6B)
BCAタンパク質アッセイ(Pierceカタログ番号23224)
Centricon-50濃縮機(Amiconカタログ番号4225)。
【0188】
固定化ペプシンの平衡化
固定化ペプシンの50%スラリー0.25mlを、17×100mm試験管に添加する(0.125mlのゲル)。次に4mlの消化緩衝液を添加する。その後、血清分離器を用いて、ペプシンを緩衝液から分離する。次に緩衝液を捨て、別の4mlの緩衝液を用いて洗浄工程を繰り返す。次に、固定化ペプシンを0.5mlの消化緩衝液中に再懸濁する

【0189】
固定化プロテインAカラムの調製
プロテインA AffinityPak(登録商標)カラムおよびImmunoPure結合および溶離緩衝液を室温にする。
【0190】
2C8 F(ab’)2断片の調製
抗体の技術分野で周知の方法により、2C8 F(ab’)2断片を調製する。本発明者らは、メーカーのプロトコールを用いて、市販のキット ImmunoPure F(ab’)2調製キット(Pierceカタログ番号44888)を使用することを選択した。
【0191】
10mgの凍結乾燥2C8抗体を1mlの消化緩衝液(20mM酢酸ナトリウム緩衝液、pH4.5)に溶解した。1mlの抗体含有試料を次に、固定化ペプシンを含む試験管に添加した。
【0192】
次に抗体および固定化ペプシンを37℃で高速振盪水浴中(高速で)で4時間、インキュベート中は混合を一定に保持するよう注意しながら、インキュベートした。
【0193】
その結果生じた可溶化F(ab’)2およびFc断片、ならびに未消化IgGをその後、血清分離器を用いて固定化ペプシンゲルから回収した。次に粗消化物を清浄な試験管に注ぎ移す。
【0194】
F(ab’)2断片の回収を増大するために、次に固定化ペプシンを望ましくは1.5mlのImmunoPureIgG結合緩衝液で洗浄する。次に、洗浄液を粗消化物に添加する。
【0195】
その後、プロテインAカラムを用いて抗体断片を回収した。これは、固定化プロテインAカラムを開いて行う。気泡がゲル中に入らないよう注意する。保存溶液(0.02%アジ化ナトリウムを含有)を捨てる。
【0196】
次に、12mlの結合緩衝液(ImmunoPure調製キット中に含まれる)を用いて、固定化プロテインAカラムを平衡化させた。次に、キット中に含まれる17×100mm試験管にカラムを移して(標識化「F(ab’)2」)、溶離液を回収した。
【0197】
3mlの粗消化物を次にカラムにアプライし、ゲル中に完全に流した。AffinityPak カラムの使用は、これらのカラムが、そのレベルがトップフリットに達すると自動的に流動を停止するので、望ましい。
【0198】
次に6mlの結合緩衝液を用いてカラムを洗浄する。 F(ab’)2断片を含有する溶離液を次に回収する。この溶離液は、プロテインAとは結合し得ない(プロテインAカラムに結合されない)小Fc断片も含有する。しかしながら、その実質的部分は、透析により排除された。
【0199】
透析は、 F(ab’)2含有溶離液をとり、小Fc断片夾雑物を排除するために50,000の分子量カットオフを有する透析チューブ(Spectra Pur. カタログ番号132 128)を用いて、pH7.4のリン酸緩衝化生理食塩水に対して溶離液を透析することにより行った。
【0200】
これにより、0.707の280nmの光学密度を有するF(ab’)2断片が生じた(6ml)。透析、およびCentricon-50濃縮機(Amiconカタログ番号4225)による濃縮後、BCAタンパク質アッセイ(Pierceカタログ番号23224)を用いて、タンパク
質含量に関して2C8 F(ab’)2生成物をアッセイした。タンパク質含量は、3.76mg/mlであることが判明した。
【0201】
2C8 F(ab’)2をIgE抑制活性に関してアッセイし、前記と同じin vitroでのアッセイではIgE産生の抑制は実質的に不可能である、ということが判明した。これらの結果は、図6に含まれる。実際、 F(ab’)2は、モノクローナル抗体2C8による誘導性IgEの抑制効果と拮抗する、ということが判明した。これらの結果を図7に示す。
【0202】
実施例3
霊長類モノクローナル6G5のPRIMATIZED(登録商標)γ1およびγ4Pバージョンをともに、前記のSCIDマウスモデルにおけるin vivoでの誘導性IgE産生の抑制に及ぼす効果に関して評価した。p5E8G1N−は、誘導性IgEの抑制において霊長類5E8と同様に有効であることが判明した(図8および9参照)。霊長類6G5も霊長類化p6G5G4Pもin vivoでの誘導性IgEの抑制では有効でなかったが、一方、霊長類化p6G5G1は誘導性IgE産生を抑制した(図9および10参照)。これらの結果は、活性Fc領域が、誘導性IgE産生を有効に抑制する抗ヒトCD23抗体の能力において重要である、という本発明者らの結論をさらに実証する。
【0203】
提案されるメカニズム
本発明の結果は、活性Fc領域が誘導性IgE産生を有効に抑制する抗ヒトCD23抗体の能力において重要であることを決定的に実証するが、しかし分子メカニズムは明らかにされていない。しかしながら、いくつかの仮説が考えられ得る。
【0204】
第一は、本発明の抗CD23抗体は、B細胞受容体を抗BCRγ1抗体で架橋することにより外見上誘導されるのと同様にシグナル伝達経路を誘導するように機能するというものであろう。この場合の抗原受容体シグナリングのダウンレギュレーションは、同一B細胞上のFcγRIIと表面Ig(B細胞受容体)のコライゲーションに起因して、Ig発現のダウンレギュレーションを生じると仮定されている(D’Ambrosia et al., 1995, Science, 268:293-297; Ono et al., 1997, Cell 90:293-301)。実際、CD23はIgE発現B細胞の表面でアップレギュレーションされ、したがって、γ1定常領域を介してのCD23とFcγRII−B受容体のコライゲーションは同様のシグナル伝達経路を生じることが可能となる。
【0205】
あるいは、誘導性IgE発現の抑制が、別の細胞型、即ちキラーT細胞上でFc領域が適切なFcγR受容体と相互作用するのと同時に、B細胞上での表面IgEの架橋により起きていて、これは次に、B細胞がアポトーシスを受けるよう「指示」するか、または何らかの他の方法(即ち食作用)で細胞死をもたらすのかもしれない。例えば、米国特許第5,543,144号(この記載内容は、参照により本明細書中に含まれる)は、抗IgE抗体によるIgE発現B細胞の抑制に関する同様のメカニズムを提案する。そこに考察されているように、あるIgGのサブクラスの抗体、例えばマウスIgG2aならびにヒトIgG1およびIgG3は、ある種のFc受容体保有食細胞性白血球により実行されるADCC(抗体依存性細胞性細胞傷害)を媒介し得る。例えば、ヒトT細胞表面抗原に特異的なマウスIgG2aモノクローナル抗体であるOKT3(これは治療薬としての販売に関してFDAに認可された最初のモノクローナル抗体製品であった)は、血液中のT細胞の迅速な涸渇を提供するために、そして免疫抑制状態を誘導するために(腎移植のために)、患者に用いられる(Russell, P.S. et al., Transpl. Proc. 17:39-41(1985))。OKT3は、5mg/日/被験者の用量で、循環T細胞を完全に涸渇させ得る。米国特許第5,543,144号に記載されたモノクローナル抗体は、特にマウスγ2a抗体あるいはヒトγ1またはγ3鎖を保有するヒトまたはヒト化抗体の形態では、同様の方法で
ADCCメカニズムによりIgE発現B細胞を涸渇させることが提案される。
【0206】
しかし抗CD23抗体を用いてIgE発現を抑制するための実際の分子メカニズムが何であれ、抗CD23抗体のFc領域、したがってエフェクター機能が重要な要件であるということは明らかである。前記のように、補体は本発明のin vitroアッセイ中には存在しないため、その現象は1つ以上のFcγR受容体を必要とすると考えられる。関連分子成分が同定されれば、そしてシグナル伝達経路に関与する分子が細胞に対して内部に含まれれば、誘導性IgE発現を抑制するために用い得る他の治療薬を設計することも可能である。
【0207】
有用性
IgE産生を有効に抑制するそれらの能力のために、ヒトγ1定常ドメインを含む本発明抗ヒトCD23抗体、そしてγ3を含有して構築され得るものは、IgE産生の抑制が治療的に望ましいあらゆる疾患の治療に有効である。このような疾患としては、例えば、アレルギー性疾患、自己免疫疾患および炎症性疾患が挙げられる。
【0208】
本発明抗CD23ヒトγ1/γ3定常ドメイン含有抗体の投与により潜在的に治療可能な特定の症状としては、以下のものが挙げられる。
【0209】
アレルギー性気管支肺アスペルギルス症;アレルギー性鼻炎および結膜炎自己免疫溶血性貧血;黒色表皮肥厚症;アレルギー性接触皮膚炎;アジソン病;アトピー性皮膚炎;円形脱毛症;全身性脱毛症;アミロイドーシス;アナフィラキシー様紫斑病;アナフィラキシー様反応;再生不良性貧血;血管性水腫(遺伝性);血管性水腫(特発性);強直性脊椎炎;動脈炎(頭蓋);動脈炎(巨細胞性);動脈炎(高安);動脈炎(側頭);喘息;毛細血管拡張性運動失調;自己免疫卵巣炎;自己免疫精巣炎;自己免疫多発性内分泌腺不全;ベーチェット病;ベルガー病;バージャー病;気管支炎;水疱性天疱瘡;カンジダ症;慢性粘膜皮膚;キャプラン症候群;心筋梗塞後症候群;心嚢切開後症候群;心臓炎;セリアックスプルー;シャーガス病;チェディアック−東症候群;チャーグ−ストラウス病;コーガン症候群;寒冷凝集素病;CREST症候群;クローン病;クリオグロブリン血症;原因不明の繊維化肺胞炎;疱疹状皮膚炎;皮膚筋炎;真性糖尿病;ダイアモンド−ブラックファン症候群;ディ・ジョージ症候群;円板状エリテマトーデス;好酸球性筋膜炎;上強膜炎;持久性隆起性紅斑;有縁性紅斑;多形性紅斑;結節性紅斑;家族性地中海熱;フェルティ症候群;肺繊維症;糸球体腎炎(アナフィラキシー様);糸球体腎炎(自己免疫);糸球体腎炎(連鎖球菌後);糸球体腎炎(移植後);糸球体症(膜性);グッドパスチャー症候群;対宿主性移植片病;顆粒球減少症(免疫媒介性);環状肉芽腫;肉芽腫症(アレルギー性);肉芽腫性筋炎;グレーブズ病;橋本甲状腺炎;新生児溶血性疾患;ヘモクロマトーシス(特発性);ヘーノホ−シェーンライン紫斑病;肝炎(慢性活動性および慢性進行性);原因不明性組織球増殖症;好酸球増多症候群;特発性血小板減少性紫斑病;ヨブ症候群;若年性皮膚筋炎;若年性慢性関節リウマチ(若年性慢性関節炎);川崎病;角膜炎;乾性角結膜炎;ランドリー−ギラン−バレー−ストロール症候群;らい病(らい腫);レフラー症候群;狼瘡;ライエル症候群;ライム病;リンパ腫様肉芽腫症;肥満細胞症(全身性);混合型結合組織病;多発性単神経炎;マックル−ウェルズ症候群;皮膚粘膜リンパ節症候群;皮膚粘膜リンパ節症候群;多中心性細網組織球症;多発性硬化症;重症筋無力症;菌状息肉腫;壊死性脈管炎(全身性);ネフローゼ症候群;オーバーラップ症候群;皮下脂肪組織炎;発作性寒冷血色素尿症;発作性夜間血色素尿症;類天疱瘡;天疱瘡;紅斑性天疱瘡;落葉状天疱瘡;尋常性天疱瘡;鳩飼育者病;肺炎(過敏性);結節性多発性動脈炎;リウマチ性多発性筋痛;多発性筋炎;多発性神経炎(特発性);ポルトガル家族性多発性ニューロパシー;子癇前症/子癇;原発性胆汁性肝硬変;進行性全身性硬化症(強皮症);乾癬;乾癬性関節炎;肺胞タンパク質症;肺繊維症(レイノー現象/症候群);リーデル甲状腺炎;ライター症候群、再発性多発性軟骨炎;リウマ
チ熱;慢性関節リウマチ;サルコイドーシス;強膜炎;硬化性胆管炎;血清病;セザリー症候群;シェーグレン症候群;スティーブンズ−ジョンソン症候群;スティル病;亜急性硬化性汎脳炎;交感性眼炎;全身性紅斑性狼瘡;移植片拒否反応;潰瘍性結腸炎;未分化結合組織病;じんま疹(慢性);じんま疹(寒冷);ブドウ膜炎;白斑;ウェーバー−クリスチャン病;ヴェーゲナー肉芽腫症;ヴィスコット−オールドリッチ症候群。
【0210】
これらのうち、抗CD23抗体の投与により治療可能なまたは予防可能な好ましい適応症としては、アレルギー性鼻炎および結膜炎、アトピー性皮膚炎;湿疹;ヨブ症候群、喘息;アレルギー症状;ならびに慢性炎症性疾患および症状、例えばCLL慢性リンパ性白血病が挙げられ、これらは典型的には高レベルの膜CD23および高循環レベルのsCD23を特徴とする(Sarfati et al., Blood 71:94-98(1988))。
【0211】
治療効果を生じるのに有用な抗体の量は、当業者に周知の標準技法により決定し得る。抗体は、一般的には製薬上許容可能な緩衝液内で標準技法により提供され、あらゆる所望の経路により投与され得る。現在特許請求されている抗体の効能およびそれらのヒトによる寛容性のために、ヒトの種々の疾患または疾病状態に対抗するために、これらの抗体を反復的に投与することができる。
【0212】
当業者は、ルーチン的な実験により、アレルギー性疾患および炎症性症状に効果を及ぼすために有効な抗体の非毒性量を決定し得る。しかしながら、一般に、有効用量は約0.05〜100mg/体重1kg/日の範囲であろう。
【0213】
本発明の抗体は、治療的または予防的な程度にこのような効果を生じるのに十分な量で前記の治療方法にしたがってヒトまたは他の動物に投与し得る。本発明のこのような抗体は、既知の技術により本発明の抗体を従来の製薬上許容可能な担体または希釈剤と組合せることによって調製される従来の投与形態で、このようなヒトまたは他の動物に投与し得る。製薬上許容可能な担体または希釈剤の形態および特性は、組み合わされる有効成分の量、投与経路およびその他の周知の可変要因により決定される、と当業者には認識されるであろう。
【0214】
本発明の抗体の投与経路は、経口、非経口、吸入あるいは局所的であってもよい。非経口という用語は、本明細書中で用いる場合、静脈内、筋肉内、皮下、直腸、膣または腹腔内投与を含む。静脈内形態の非経口投与が、一般に好ましい。
【0215】
予防的または治療的に免疫抑制を誘導するために本発明の化合物を用いるための毎日の非経口および経口用量レジメンは、一般的に、約0.05〜100、好ましくは約0.5〜10mg/体重1kg/日の範囲である。
【0216】
本発明の抗体は、吸入によっても投与され得る。「吸入」とは、鼻腔内または経口吸入投与を意味する。このような投与のための適切な投与形態、例えばエアロゾル処方物または計量用量吸入器は、従来の技術により調製され得る。用いられる本発明の化合物の好ましい投与量は、一般に、約10〜100mgの範囲内である。
【0217】
本発明の抗体は、局所的にも投与し得る。局所投与とは非全身性投与を意味し、その例としては、表皮への外部的な、口腔への本発明の抗体(またはその断片)化合物の適用、そして耳、眼および鼻へのこのような抗体の滴注が含まれるが、これらの場合、本発明の抗体は血流中に有意に流入しない。全身性投与とは、経口、静脈内、腹腔内および筋肉内投与を意味する。治療的または予防的効果に必要な抗体の量は、もちろん、選択される抗体、治療される症状の性質および重症度、ならびに治療を受ける動物によって変わり、最終的には医師の裁量である。本発明の抗体の適切な局所用量は、一般に、約1〜100m
g/体重1kg/日の範囲である。
【0218】
組成物
抗体又はその断片は単独で投与され得るが、しかし製剤組成物として与えるのが好ましい。有効成分は、局所投与に関しては、組成物の0.001%〜10%w/w、例えば1〜2重量%を構成し得る。組成物の10%w/w程度であってもよいが、好ましくは5%w/wを超えない量、さらに好ましくは0.1%〜1%w/wを構成し得る。
【0219】
本発明の局所組成物は有効成分を、そのための1つ以上の担体および任意のあらゆるその他の治療的成分と一緒に含む。担体は、組成物の他の成分と相溶性であり、その受容者に有害であってはならないという意味で「許容可能」でなければならない。
【0220】
局所投与に適した組成物としては、皮膚を通して治療が必要な部位に浸透するのに適した液体または半液体調製物、例えばリニメント剤、ローション、クリーム、軟膏またはペースト、そして眼、耳または鼻に投与するのに適した点滴剤が挙げられる。
【0221】
本発明の点滴剤は、滅菌水性または油性の溶液または懸濁液を含み、殺細菌および/または殺真菌剤、および/またはあらゆるその他の適切な防腐剤の、そして好ましくは界面活性剤を含有する適切な水性溶液中に有効成分を溶解することにより調製し得る。その結果生じた溶液を、次に濾過して透明にして、適切な容器に移し、次にこれを密封して、オートクレーブ処理、または90℃〜100℃での30分間の保持により滅菌する。あるいは、溶液を濾過により滅菌し、無菌的技法により容器に移すこともできる。点滴剤中に含めるのに適した殺細菌剤および殺真菌剤の例は、硝酸または酢酸フェニル水銀(0.002%)、塩化ベンザルコニウム(0.01%)および酢酸クロルヘキシジン(0.01%)である。油性溶液の調製に適した溶媒としては、グリセロール、希釈アルコールおよびプロピレングリコールが挙げられる。
【0222】
本発明のローションとしては、皮膚または眼に適用するのに適したものが挙げられる。眼用ローションは、任意に殺細菌剤を含有する滅菌水性溶液を含み、点滴剤の調製の場合と同様の方法により調製し得る。皮膚に適用するためのローションまたはリニメント剤は、乾燥を促進し、皮膚を冷却するための薬剤、例えばアルコールまたはアセトン、および/またはモイスチャライザー、例えばグリセロール、あるいは油、例えばヒマシ油または落花生油も含む。
【0223】
本発明のクリーム、軟膏またはペーストは、外用のための有効成分の半固体組成物である。それらは、適切な機械の助けを借りて、微細または粉末化形態で、単独で、あるいは水性または非水性流体中の溶液または懸濁液で、有効成分を油脂性または非油脂性基剤と混合することにより製造し得る。基剤は、炭化水素、例えば硬質、軟質または液体パラフィン、グリセロール、蜜蝋、金属石鹸;粘漿剤;天然起源の油、例えばアーモンド油、トウモロコシ油、落花生油、ヒマシ油またはオリーブ油;羊毛脂またはその誘導体、あるいは脂肪酸、例えばステアリン酸またはオレイン酸を、アルコール、例えばプロピレングリコールまたはマクロゲルと一緒に含み得る。組成物は、あらゆる適切な界面活性剤、例えば、陰イオン性、陽イオン性または非イオン性界面活性剤、例えばソルビタンエステルまたはそのポリオキシエチレン誘導体を混入し得る。懸濁剤、例えば天然ゴム、セルロース誘導体または無機物質、例えば石英シリカ、およびその他の成分、例えばラノリンも含まれ得る。
【0224】
本発明の抗体又はその断片の個々の投与の最適量および間隔は、治療される症状の性質および程度、投与の形態、経路および部位、そして治療される特定の動物によって決定され、このような最適条件は従来の技法により決定され得ると、当業者には認識されるであ
ろう。治療の最適経過、即ち定められた日数の間の1日当たりに投与される本発明の抗体またはその断片の投与回数は、治療測定試験の慣用的経過を用いて当業者に確認され得ることも、当業者には理解されるであろう。
【0225】
これ以上記述することなく、当業者は、前記の説明を用いて、その最高に十分な程度に本発明を利用し得ると考えられる。したがって、以下に本発明を説明するための実施例を示すが、それらはいかなる点でも本発明の範囲を限定するもではない。
【0226】
カプセル組成物
粉末化形態の50mgの本発明の抗体又はその断片、100mgのラクトース、32mgのタルクおよび8mgのステアリン酸マグネシウムを標準的な2片硬質ゼラチンカプセルに充填することにより、カプセル形態の本発明の医薬組成物を調製する。
【0227】
注射用非経口組成物
10kの容量のプロピレングリコールおよび水の中で1.5kの重量の本発明の抗体又はその断片を攪拌することにより、注射により投与されるのに適した形態の本発明の医薬組成物を調製する。この溶液は濾過により滅菌される。
【0228】
軟膏組成物
本発明の抗体又はその断片 10g
白色軟質パラフィンで全量を100.0gにする。
【0229】
本発明の抗体又はその断片を小容量のビヒクル中に分散させて、平滑、均質な物質を生成する。次に折り畳み可能な金属チューブに分散物を充填する。
【0230】
局所クリーム組成物
本発明の抗体又はその断片 1.0g
ポラワックス(Polawax)GP200 20.0g
無水ラノリン 2.0g
白色蜜蝋 2.5g
メチルヒドロキシベンゾエート 0.1g
蒸留水 全量を100.0gにする量
【0231】
ポラワックス、蜜蝋およびラノリンを一緒に60℃に加熱する。メチルヒドロキシベンゾエートの溶液を添加し、高速攪拌により均質化する。次に温度をSOOCに下げる。本発明の抗体またはその断片を次に添加し、全体に分散させて、ゆっくり攪拌しながら組成物を冷却させる。
【0232】
局所ローション組成物
本発明の抗体又はその断片 1.0g
ソルビタンモノラウレート 0.6g
ポリソルベート20 0.6g
セトステアリルアルコール 1.2g
グリセリン 6.0g
メチルヒドロキシベンゾエート 0.2g
精製水B.P. 全量を100.00mlとする量
(B.P.= 英国薬局方)
【0233】
メチルヒドロキシベンゾエートおよびグリセリンを75℃で水70mlに溶解する。ソルビタンモノラウレート、ポリソルベート20およびセトステアリルアルコールを75℃
で一緒に溶融させて、水性溶液に添加する。その結果生じるエマルジョンを均質化し、連続攪拌しながら冷却させて、本発明の抗体又はその断片を、残りの水中に入れた懸濁液として添加する。全懸濁液を均質化するまで攪拌する。
【0234】
点眼剤組成物
本発明の抗体又はその断片 0.5g
メチルヒドロキシベンゾエート 0.01g
プロピルヒドロキシベンゾエート 0.04g
精製水B.P. 全量を100.00mlとする量
【0235】
メチルおよびプロピルヒドロキシベンゾエートを75℃で精製水70mlに溶解し、その結果生じる溶液を冷却させる。本発明の抗体又はその断片を次に添加し、膜フィルター(孔サイズ0.022Am)を通して濾過により溶液を滅菌し、適切な滅菌容器に無菌的に充填する。
【0236】
吸入による投与のための組成物
容量15〜20mlのエアロゾル容器用には、本発明の抗体又はその断片10mgを0.2〜0.5kの滑剤、例えばポリソルベート85またはオレイン酸と混合し、このような混合物を噴射剤、例えばフレオン中に、好ましくは(1,2ジクロロテトラフルオロエタン)およびジフルオロクロロメタンの組合せ中に分散し、鼻腔内または口腔吸入投与に適合する適切なエアロゾル容器中に入れる。容量15〜20mlのエアロゾル容器用の吸入投与組成物については、エタノール(6〜8ml)中に本発明の抗体又はその断片10mgを溶解し、0.1〜0.2kの滑剤、例えばポリソルベート85またはオレイン酸を添加し、これを噴射剤、例えばフレオン中に、好ましくは(1,2ジクロロテトラフルオロエタン)およびジフルオロクロロメタンの組合せ中に分散し、鼻腔内または口腔吸入投与に適合する適切なエアロゾル容器中に入れる。
【0237】
非経口投与可能な抗体組成物
本発明の抗体および医薬組成物は、非経口投与、即ち皮下、筋肉内または静脈内投与に特に有用である。非経口投与用組成物は一般に、許容可能な担体、好ましくは水性担体中に溶解された本発明の抗体又はその混合物の溶液を含む。種々の水性担体、例えば水、緩衝化水、0.4k食塩水(通常生理食塩水)、0.3%グリシンなどが用いられる。通常の生理食塩水の使用が好ましい。これらの溶液は滅菌され、一般に粒状物質を含有しない。これらの溶液は、従来の周知の滅菌法により滅菌し得る。組成物は、pH調整剤および緩衝剤等のような生理学的条件に近づけるのに必要とされるような製薬上許容可能な補助物質を含有し得る。このような医薬組成物中の本発明の抗体又はその断片の濃度は、広範に変わり得る。このような濃度は、選択される特定の投与様式によって、主に、流体容積、粘度などを基礎にして選択される。一般に、適切な静脈内用濃度は、約1〜100mg/mlの範囲である。
【0238】
したがって、静注用の本発明の医薬組成物は、40〜50mgの本発明の抗ヒトCD23抗体を含有する通常の生理食塩水10mLを含む。非経口投与用組成物の製造方法は周知であり、当業者には明らかであって、例えば、Remington’s Pharmaceutical Science,
15th ed., Mack Publishing Company, Easton, Pennsylvania(この記載内容は、参照により本明細書中に含まれる)にさらに詳細に記載されている。
【0239】
本発明の抗体は、保存のために凍結乾燥し、使用前に適切な担体中で再構成し得る。この技術は従来の免疫グロブリンで有効であることが示されており、当技術分野で既知の凍結乾燥および再構成技術を用い得る。
【0240】
意図される結果によって、本発明の医薬組成物は、予防的および/または治療的処置のために投与され得る。治療的適用では、組成物はすでに病気に罹患している患者に、疾病およびその合併症を治癒するかまたは少なくとも部分的に抑制するのに十分な量で投与され得る。予防的適用では、本発明の抗体又はその混合物を含有する組成物は、未だ疾病状態にない患者に患者の耐性を増強するために投与される。
【0241】
治療する医師によって選択される投与レベルおよびパターンを用いて医薬組成物は1回または多数回投与される。あらゆる場合に、本発明の医薬組成物は、患者を有効に治療するのに十分な量の本発明の抗CD23抗体を提供すべきである。
【0242】
本発明の抗体は、抗体と同一の治療に有用であると思われるペプチドまたは非ペプチド化合物(模倣物)のいずれかの設計および合成のために用い得る、ということも留意すべきである(例えば、Saragovi et al., Science, 253:792-795(1991)参照)。
【0243】
本発明の特定の実施態様を説明のためにここに記載してきたが、前記から、本発明の範囲を逸脱しない限りは、種々の修正が成され得る、と理解されるであろう。したがって、本発明は添付の請求の範囲に限定されない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトFcγ受容体と結合し、IgE産生を抑制する定常領域を含む抗ヒトCD23抗体。
【請求項2】
霊長類の抗原結合部分を含む、請求項1に記載の抗ヒトCD23抗体。
【請求項3】
齧歯類の抗原結合部分を含む、請求項1に記載の抗ヒトCD23抗体。
【請求項4】
キメラ抗体、ヒト化抗体または霊長類可変領域及びヒト定常領域を含む抗体である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の抗ヒトCD23抗体。
【請求項5】
張り合わせ(veneering)、フレームワーク置換、CDRグラフティング、または分子モデリングにより調製された、請求項4に記載の抗ヒトCD23抗体。
【請求項6】
可変領域が5E8または6G5に由来する、請求項1に記載の抗ヒトCD23抗体。
【請求項7】
抗ヒトCD23抗体5E8のCD23との結合を抑制し得る、請求項6に記載の抗ヒトCD23抗体。
【請求項8】
抗ヒトCD23抗体5E8または6G5のCD23との結合を抑制し得る、請求項1に記載の抗ヒトCD23抗体。
【請求項9】
(a)配列番号2のヌクレオチド58〜423によりコードされる6G5重鎖可変領域または配列番号4のヌクレオチド58〜411によりコードされる5E8重鎖可変領域に由来する重鎖可変領域と、
(b)配列番号1のヌクレオチド58〜390によりコードされる6G5軽鎖可変領域または配列番号3のヌクレオチド67〜387によりコードされる5E8軽鎖可変領域に由来する軽鎖可変領域と、
(c)ヒトFcγ受容体に結合する定常領域と
を含有する抗体のCD23への結合を阻害できる抗ヒトCD23抗体であって、ヒトCD23に特異的に結合し、IgE産生を抑制する抗ヒトCD23抗体。
【請求項10】
(a)配列番号2のヌクレオチド58〜423によりコードされる重鎖可変領域と、
(b)配列番号1のヌクレオチド58〜390によりコードされる軽鎖可変領域と
を含有する、請求項9に記載の抗ヒトCD23抗体。
【請求項11】
(a)配列番号4のヌクレオチド58〜411によりコードされる重鎖可変領域と配列番号3のヌクレオチド67〜387によりコードされる軽鎖可変領域とを含有する、または、
(b)配列番号4のヌクレオチド289〜291によりコードされるアスパラギン残基がリジン残基により置換されている、配列番号4のヌクレオチド58〜411によりコードされる重鎖可変領域と、配列番号3のヌクレオチド67〜387によりコードされる軽鎖可変領域とを含有する、
請求項9に記載の抗ヒトCD23抗体。
【請求項12】
(a)配列番号2のヌクレオチド148〜165、208〜258及び355〜390によりそれぞれコードされる6G5抗体の相補性決定領域CDR1、CDR2及びCDR3を含有する重鎖可変領域と、
(b)配列番号1のヌクレオチド124〜165、211〜231及び328〜357によりそれぞれコードされる6G5抗体の相補性決定領域CDR1、CDR2及びCDR3を含有する軽鎖可変領域と、
(c)ヒトFcγ受容体に結合する定常領域と
を含有する抗体のCD23への結合を阻害できる抗ヒトCD23抗体であって、ヒトCD23に特異的に結合し、IgE産生を抑制する抗ヒトCD23抗体。
【請求項13】
(a)配列番号4のヌクレオチド148〜168、211〜261及び358〜378によりそれぞれコードされる5E8抗体の相補性決定領域CDR1、CDR2及びCDR3を含有する重鎖可変領域と、
(b)配列番号3のヌクレオチド136〜168、214〜234及び331〜357によりそれぞれコードされる5E8抗体の相補性決定領域CDR1、CDR2及びCDR3
を含有する軽鎖可変領域と、
(c)ヒトFcγ受容体に結合する定常領域と
を含有する抗体のCD23への結合を阻害できる抗ヒトCD23抗体であって、ヒトCD23に特異的に結合し、IgE産生を抑制する抗ヒトCD23抗体。
【請求項14】
ヒトγ1またはヒトγ3モノクローナル抗体のいずれかである、請求項1〜13のいずれか一項に記載の抗ヒトCD23抗体。
【請求項15】
ヒトγ1抗体である、請求項14に記載の抗ヒトCD23抗体。
【請求項16】
ヒトγ3抗体である、請求項14に記載の抗ヒトCD23抗体。
【請求項17】
IgE産生をin vitroで抑制する、請求項1〜16のいずれか一項に記載の抗ヒトCD23抗体。
【請求項18】
B細胞によるIL−4誘導性IgE産生をin vitroで抑制する、請求項17に記載の抗ヒトCD23抗体。
【請求項19】
IL−4誘導性IgE産生をin vivoで抑制する、請求項1〜16のいずれか一項に記載の抗ヒトCD23抗体。
【請求項20】
0.01nM〜1000nMの範囲の結合親和性を有する、請求項1〜19のいずれか一項に記載の抗ヒトCD23抗体。
【請求項21】
少なくとも5nMのCD23結合親和性を有する、請求項1〜19のいずれか一項に記載の抗ヒトCD23抗体。
【請求項22】
少なくとも100nMのCD23結合親和性を有する、請求項21に記載の抗ヒトCD23抗体。
【請求項23】
ヒトγ1定常領域を欠いた抗ヒトCD23抗体より強く、B細胞によるIL−4誘導性IgE産生をin vitroで抑制し、ヒトγ1定常領域を含有する、請求項18に記載の抗ヒトCD23抗体。
【請求項24】
請求項1〜23のいずれか一項に記載の抗ヒトCD23抗体を含有する、患者におけるIgE産生を抑制するための医薬組成物。
【請求項25】
請求項1〜23のいずれか一項に記載の抗ヒトCD23抗体を含有する、アレルギー性疾患の患者におけるIgE産生を抑制するための医薬組成物。
【請求項26】
請求項1〜23のいずれか一項に記載の抗ヒトCD23抗体を含有する、自己免疫疾患の患者におけるIgE産生を抑制するための医薬組成物。
【請求項27】
請求項1〜23のいずれか一項に記載の抗ヒトCD23抗体を含有する、炎症性疾患の患者におけるIgE産生を抑制するための医薬組成物。
【請求項28】
IgEの抑制が治療的または予防的に有益である疾病状態の治療または予防剤であって、請求項1〜23のいずれか一項に記載の抗ヒトCD23抗体を含む前記剤。
【請求項29】
疾病状態がアレルギー性疾患である、請求項28に記載の剤。
【請求項30】
疾病状態が自己免疫疾患である、請求項28に記載の剤。
【請求項31】
疾病状態が炎症性疾患である、請求項28に記載の剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−95526(P2010−95526A)
【公開日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−276687(P2009−276687)
【出願日】平成21年12月4日(2009.12.4)
【分割の表示】特願平10−536675の分割
【原出願日】平成10年2月17日(1998.2.17)
【出願人】(592221528)バイオジェン・アイデック・エムエイ・インコーポレイテッド (224)
【Fターム(参考)】