説明

ω−3脂肪酸を用いた、痴呆、脳血管性痴呆、パーキンソン痴呆、アルツハイマー病及び/又は軽度認知障害の治療により利益を得ると考えられる患者を同定し、治療する方法

【課題】痴呆、脳血管性痴呆、パーキンソン痴呆、アルツハイマー病及び/又はMCIを治療若しくは予防する、又はこれらの疾患又は症状の進行を減速させるための方法及び組成物の提供。また、上記疾病に対するω−3脂肪酸治療が有効であると考えられる患者を同定する方法及び組成物の提供。
【解決手段】患者の脳に対するベースラインスキャンを行い、異常な脳活性を有する患者を同定するステップと、前記同定するステップで同定された患者にω−3脂肪酸の第1の投与計画を実施するステップと、次に前記患者の脳に対する評価スキャンを行うステップと、評価スキャンと、ベースラインスキャンとを比較して、前記患者の脳活性の改善を解析するステップと、脳活性の改良を示す患者を選択し、痴呆、脳血管性痴呆、パーキンソン痴呆、アルツハイマー病及び/又は軽度認知障害の治療又は予防に対するω−3脂肪酸治療を受ける対象者とするステップを含んでなる方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本特許出願は、2006年2月16日に出願の米国仮特許出願第60/773920号から優先権を主張する。この優先権を主張した特許出願の全開示内容を、本願明細書に援用する。
【0002】
本発明は、治療的有効量のω−3脂肪酸を用いた療法により利益を得ると考えられる患者を同定し、痴呆、脳血管性痴呆、パーキンソン痴呆、アルツハイマー病及び/又は軽度認知障害(MCI)による治療又は予防するための方法の提供に関する。本発明はまた、ω−3脂肪酸療法から利益を得ると考えられる患者を、治療的有効量のω−3脂肪酸を含有する1つ以上の活性薬剤を用いて処置し、アルツハイマー病、痴呆及び/又はMCIを治療又は予防するための方法の提供に関する。本発明はまた、ω−3脂肪酸療法から利益を得ると考えられる患者を同定するための診断試験方法の提供に関する。
【背景技術】
【0003】
アルツハイマー病及び他の痴呆の診断は、伝統的に神経病理学的な方法により行われるが、かかる方法では誤診の可能性があることが、近年報告されつつある。アルツハイマー病患者では、脳内のアミロイド濃度の増加を示す傾向があることが知られているが、アルツハイマー病患者と痴呆の臨床所見がない通常の老人患者との間で、脳のアミロイド量の広い範囲におけるオーバーラップが存在することも知られている。更に、アミロイドをプロセシングする遺伝子を欠損する患者が少ない比率で存在し、彼らは老人性痴呆症において典型的な年齢(例えば65歳以下)より低い年齢で明確な痴呆症状を示すことも知られているが、多くの証拠から、組織切片に見られる完全に凝集したアミロイド生成物よりもむしろ、アミロイドの可溶性オリゴマーが当該疾患において神経毒的な影響の原因となるという知見が、現在コンセンサスとして得られている。更に、特に高齢化社会においては、通常痴呆は純粋なタイプとしては発症せず、むしろ複合パターン、多くの場合アルツハイマー病及び脳血管疾患との組合せとして発症することがほとんどである。それ故、しばしば言われる「臨床的に正確な」アルツハイマー病の診断には通常エラーが含まれており、大多数の痴呆患者は実際には複合痴呆に罹患している。
【0004】
脳血管性痴呆は伝統的に、脳卒中に罹患する患者において診断されることが多い。大血管梗塞の結果、脳の相当な部分が損傷を受け、それに続いて記憶喪失及び/又は部分的な不随が生じる。イメージング技術の発達により、それまで脳血管症状と関係していなかった、以下のような痴呆の形態が同定されるようになった:
(1)微小脳卒中による小規模な空隙梗塞のサイン。通常そのようには認識されない。
(2)微小な脳血管のアテローム性動脈硬化症の発達による脳の部分の段階的な酸素飢餓。
広範囲な脳室周囲白質病変として観察されうる。これらの形の痴呆は、イメージング技術のみにより診断できる。
【0005】
患者の脳異常が機能不全(例えば、アルツハイマー病、痴呆及び/又はMCIの形のいずれか)の臨床徴候に関して現れる範囲は、最初に、例えば略式精神状態試験スコア(AMTS)及び小規模精神状態検査(MMSE)などの試験を使用して評価できる。これらの試験のうちの1つ上の患者のスコアが特定のレベル以下(典型的には、AMTS1で6以下、又はMMSEで24以下)にある場合、更なる評価が必要であると考えられる。この更なる評価では、治療可能な症状(例えばビタミン欠乏症)を除外するための血液検査、並びに神経イメージングを実施する。異常な患者を分類する神経イメージング方法としては、限定されないが、皮質放射性脳取り込み(CRBU)、脳局所相関活性(COBRA)、陽電子放射断層撮影(PET)、単一光子排出コンピュータ断層撮影(SPECT)、コンピュータ断層撮影(CT)、磁気共鳴イメージング(MRI)及び誘発音響放射(SAE)などが挙げられる。特にSPECT及びPETは、85%以上の正確性を有することが公知である。脳のSPECTは更に信頼性が高く、基礎代謝時のイメージを、同時に、又は1つ以上の疾患の顕著な変化の通常の過程と比較し比較的短い(数週間〜数ヶ月)期間の間隔で順次得た、潅流誘発時のイメージと比較する場合に信頼性が高い。SPECT又はPETによる三次元イメージの他の実際的な効果としては、通常痴呆患者で見られる複合症状のいずれか一方の徴候を示す別々の脳領域、例えば、代謝によってではなく十分な潅流誘発を特徴とする神経変性疾患を示す幾つかの領域(典型的には若年性アルツハイマー病における、海馬及び頭頂後頭野の両側面)、及び潅流誘発によってではなく十分な代謝を特徴とする脳血管疾患を示す幾つかの領域における解像度が挙げられる。
【0006】
神経イメージング基準によって、脳異常を診断することによる更なる利点としては、例えば脳皮質代謝インデックス(CMi)及び脳潅流インデックス(CPi)などの基準の定量の容易性、並びに、標準的な神経心理学的試験で測定される脳機能との良好な相関、並びに、かかる定量化及び機能的な相関を使用して、薬剤又は他の痴呆療法の効果を評価する能力が挙げられる。
【0007】
かかる方法は、痴呆において示される異常な状態をイメージングする感度が高く、また症状を示さないか又は最小の軽微な症状(すなわち多くの場合MCIと呼ばれるステージ)のみを示す患者における、痴呆の初期徴候の確認に使用できることが明らかである。共通して言えることは、疾患の初期段階で治療を受けた患者では、疾患の後の段階において治療を受けた患者より、強い、継続的なレスポンスを示す傾向があるということである。
【0008】
痴呆、脳血管性痴呆、パーキンソン痴呆、アルツハイマー病及び/又はMCIに罹患する患者に対する幾つかの治療手段(例えば中枢コリンエステラーゼ阻害剤、例えばドネペジル、ARICEPT(登録商標)、非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)、及び抗パーキンソン薬)が存在するにもかかわらず、ほとんど全ての公知の治療手段は、ごく限られた効果しか示さない。これらの治療手段は、疾患進行速度を低下させる効果を示すように見えるが、疾患症状の実際の改善(特に患者集団における統計学的に有意なサイズ変化)は稀である。したがって、痴呆、脳血管性痴呆、パーキンソン痴呆、アルツハイマー病及び/又はMCIを治療及び/又は予防するための方法及び組成物、並びにこれらの症状の進行を減速させる方法及び組成物に対するニーズが未だ存在する。更に、痴呆、脳血管性痴呆、パーキンソン痴呆、アルツハイマー病及び/又はMCIの治療方法で良好に治療されると考えられる患者を同定する方法に対するニーズが存在する。
【0009】
ω−3脂肪酸は、脳の発達にとり重要であることが知られている。2つのω−3脂肪酸(エイコサペンタエン酸(EPA)及びドコサヘキサエン酸(DHA)が特に重要であることがわかっている。海産物由来の油(例えば魚油)がEPA及びDHAの良好な供給源であり、それが脂質代謝を調整することがわかっている。ω−3脂肪酸は、いかなるシビアな副作用も引き起こさず、生体に許容されうる。
【0010】
ω−3脂肪酸の1つの形態は、魚油を原料とし、DHA及びEPAを含有する、ω−3の、長鎖の高度不飽和脂肪酸の濃縮物であり、商品名Omacor(登録商標)として市販されている。かかるω−3脂肪酸の形態は、例えば特許文献1から3(それらの開示内容を本願明細書に援用する)に記載されている。
【0011】
特許文献4は膜流動性に関連する障害、又は膜流動性に関連する障害の素因を診断する方法を開示しており、当該方法は、磁気共鳴映像法(MRI)において、患者の脳の選択された部位における第1の陽子緩和の測定データを得るステップと、患者に対して、患者の脳細胞の膜における物理的又は化学的性質を変化させる刺激を付与するステップと、当該刺激の後、MRIにおいて、脳の選択された当該部位における第2の陽子緩和の測定データを得るステップと、当該第1の陽子緩和の測定データと、当該第2の陽子緩和の測定データの全ての相違を検出するステップを含んでなり、当該相違は膜流動性に関連する障害を示す。上記膜流動性に関連する障害の例としては、双極性障害、アルコール中毒、アルツハイマー病、大うつ病及び精神分裂症が挙げられる。上記刺激としては、有効な時間における、患者へのω−3脂肪酸、S−アデノシルメチオニン、スタチン又はシチジン化合物などの化合物を有効量投与することなどが挙げられる。しかしながら、当該文献では脳血管に対する効果に関する記載が存在せず、更に、最初の診断の際に有効量の化合物(特にω−3脂肪酸)による刺激が行われた後における、膜流動性に関連する障害の様々なサブタイプを区別するための手段又は方法に関する記載も存在しない。
【0012】
特許文献5は、アミロイド関連の疾患(例えばアルツハイマー病)の治療及び/又は予防のための、並びに認識機能不全の治療及び/又は予防のための、DHA若しくはその誘導体並びにEPA若しくはその誘導体を含有する脂肪酸組成物の使用に関して開示している。当該発明は、脳のアミロイド線維/プラークの形成を防止及び/又は遅延させることを目的とするものである。
【0013】
Rapoportは、ヒトの脳内への放射性同位元素識別された脂肪酸の取り込みを観察するPETスキャンの使用について開示しており、それを用いることにより、リチウムなどの、リン脂質代謝に影響を及ぼす物質の標的を同定することが可能となる(非特許文献1)。
【0014】
Nagaoは、アルツハイマー病における脳の血流分布を定量化するための、複数の等輪郭カットオフによるHMPAO SPECTイメージの三次元フラクタル分析の使用に関して開示している。その結果は、機能的アセスメント(MMSE及びADアセスメントスケール)(P<0.0001)との相関を示し、また通常の患者とアルツハイマー病患者の結果との良好な分離(P<0.001)を示していた(非特許文献2)。
【0015】
Okamotoは、酸素15標識したO及びCOを用いた定常状態法により実施されるPETスキャンを用いて、脳血管性痴呆の脳循環及び代謝を解析し、また、無症候性脳梗塞及び慢性脳循環機能不全における脳循環代謝を解析している。知的機能の改善を生じさせることから、治療法へのDHAサプリメントの使用が今後の研究課題であることが示唆されている(非特許文献3)。
【0016】
Yoshikawaは、脳の血流の異質性を評価するための、HMPAO SPECTにおけるフラクタル分析法の使用を開示している。35〜50%までの等高線カットオフ値を用いて線形回帰式を得、またカットオフ値を上回る放射能を有するボクセル数を自然対数に変換し、これらを用いて、得られた回帰直線の傾斜から、フラクタルサイズを算出している。得られた結果は機能的アセスメント(MMSE)と相関しており、また脳血管性痴呆群とコントロールとの分離も有意であった(P<0.0001)(非特許文献4)。
【0017】
Puriは、エイコサペンタエン酸で精神分裂症、うつ病及びハンチントン舞踏病を治療したときに生ずる変化(例えば脳萎縮の反転及び心室サイズの減少)を評価するためのイメージング技術の使用に関して開示している(非特許文献5)。
【0018】
Sfyroerasらは、テクネチウムTc99mヘキサメチルプロピレンアミンオキシムによる脳単一光子排出コンピュータ断層撮影((99m)Tc−HMPAO SPECT)によって、片側の頸動脈血管形成術及び高度の頭蓋外頸動脈狭窄患者の脳潅流非対称上のステント術(CAS)の効果を評価し、非対称インデックスを決定している。すなわち、非対称インデックス(AI)(潅流時の大脳半球間非対称の程度)を、[(頸動脈狭窄を有する半球における、「健康な」半球のカウントにおけるカウント)/「健康な」半球におけるカウント]×100]として算出している。これは、初期〜中期の脳血管疾患における1つの基準であり、最初は非対称であるのが典型的である(非特許文献6)。
【0019】
Leeらは、統計的パラメータマッピング(SPM)及び統計見込みベースの解剖学的マッピング(SPAM)を使用して、中程度の脳動脈(MCA)狭窄に離間する患者のベースの/アセタゾラミドTc−99m ECD脳潅流SPECTイメージに適用し、MCAの血管内ステント術の有効性を評価している。潅流誘発されたSPECTの使用に関して記載されており、著者は、誘発されない静止潅流SPECTよりも良好な、脈管損傷の検出が可能になると結論づけている。この研究では、ベースの/アセタゾラミド脳潅流SPECTのボクセルベースの分析法がMCAステント配置の後に有用であり、またベースの/アセタゾラミドTc−99mの脳SPECTのSPM及びSPAM分析を用いることにより、MCAステント配置による短期血行動態的な有効性を評価できると結論づけている(非特許文献7)。
【0020】
しかしながら、これらの文献のいずれも、痴呆、脳血管性痴呆、パーキンソン痴呆、アルツハイマー病及び/又はMCIの治療又は予防において、ω−3脂肪酸治療により利益を得ると考えられる患者を同定する方法に関しては開示していない。また、上記の同定された患者を、ω−3脂肪酸を含有する1つ以上の活性薬剤を治療的有効量で投与することにより治療する方法に関しても開示していない。
【特許文献1】米国特許第5502077号公報
【特許文献2】米国特許第5656667号公報
【特許文献3】米国特許第5698594号公報
【特許文献4】国際公開第02/45583号パンフレット
【特許文献5】米国特許出願公開第2006/0166935号公報
【非特許文献1】“In Vivo Fatty Acid Incorporation into Brain Phospholipids in Relation to Signal Transduction and Membrane Remodeling,”Neurochemical Research 24(11):1403−15(1999)
【非特許文献2】“Fractal analysis of cerebral blood flow distribution in Alzheimer’s disease,”J.Nucl.Med.42(10):1446−50(2001)
【非特許文献3】”Treatment of Vascular Dementia,”Ann.N.Y.Acad.Sci 977:507−512(2002)
【非特許文献4】”Quantification of the heterogeneity of cerebral blood flow in vascular dementia,”J.Neurol.250(2):194−200(2003)
【非特許文献5】”Monomodal rigid−body registration and applications to the investigation of the effects of eicosapentaenoic acfd intervention in neuropsychiatry disorders,”Prostaglandins,Leukotrienes and Essential Fatty Acids 71:177−9(2004)
【非特許文献6】”Interhemispheric asymmetry in brain perfusion before and after carotid stenting:a 99mTc−HMPAO SPECT study,”J.Endovasc.Ther.13(6):729−37(December 2006)
【非特許文献7】”Statistical parametric mapping and statistical probabilistic anatomical mapping analyses of basal/acetazolamide Tc−99m ECD brain SPECT for efficacy assessment of endovascular stent placement for middle cerebral artery stenosis.”Neuroradiology(Electronically published January 3,2007).
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
痴呆、脳血管性痴呆、パーキンソン痴呆、アルツハイマー病及び/又はMCIを治療若しくは予防する、又はこれらの疾患又は症状の進行を減速させるための方法及び組成物に対するニーズが存在する。また、アルツハイマー病、痴呆及び/又はMCIに対するω−3脂肪酸治療が有効であると考えられる患者を同定する方法及び組成物に対するニーズも存在する。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明は、痴呆、脳血管性痴呆、パーキンソン痴呆、アルツハイマー病及び/又は軽度認知障害に対するω−3脂肪酸療法により利益を得ると考えられる患者を同定する方法の提供に関し、当該方法は、前記患者の脳に対する1回以上のベースラインスキャンを行い、異常な脳活性を有する患者を同定するステップと、前記同定するステップで同定された患者にω−3脂肪酸の第1の投与計画を実施するステップと、次に前記患者の脳に対する1回以上の評価スキャンを行うステップと、前記1回以上の評価スキャンと、前記1回以上のベースラインスキャンとを比較して、前記患者の脳活性の改善を解析するステップと、脳活性の改良を示す患者を選択し、痴呆、脳血管性痴呆、パーキンソン痴呆、アルツハイマー病及び/又は軽度認知障害の治療又は予防に対するω−3脂肪酸治療を受ける対象者とするステップを含んでなる。
【0023】
本発明は更に、脳障害に対するω−3脂肪酸療法から利益を得ると考えられる患者を同定する方法の提供に関し、当該方法は、患者の脳の基礎代謝スキャンを行うステップと、次に前記患者に、潅流誘発に十分な量のω−3脂肪酸を投与するステップと、次に前記患者の脳に対する潅流誘発スキャンを行うステップと、前記基礎代謝スキャンと、潅流誘発スキャンとを比較して、ω−3脂肪酸による治療が可能である脳障害をディファレンシャルに診断するステップを含んでなる。前記方法は更に、ω−3脂肪酸による治療が可能である脳障害と診断される患者を選択し、脳障害の治療又は防止に対するω−3脂肪酸治療を受ける対象者とするステップを含んでなる。
【0024】
本発明はまた、患者の痴呆、脳血管性痴呆、パーキンソン痴呆、アルツハイマー病及び/又は軽度認知障害を治療又は予防する方法の提供に関し、当該方法は、患者の脳に対して1回以上のベースラインスキャンを行って異常な脳活性を有する患者を同定するステップと、次に前記同定するステップで同定された前記患者にω−3脂肪酸の第1の投与計画を実施するステップと、次に前記患者の脳に対して1回以上の評価スキャンを行うステップと、前記1回以上の評価スキャンと、前記1回以上のベースラインスキャンとを比較して、前記患者の脳活性の改善を解析するステップと、脳活性の改善を有する患者を選択し、痴呆、脳血管性痴呆、パーキンソン痴呆、アルツハイマー病及び/又は軽度認知障害の治療又は予防に対するω−3脂肪酸治療を受ける対象者とするステップと、前記選択ステップで選択された患者に、治療的有効量のω−3脂肪酸を含有する1つ以上の活性薬剤を投与するステップと、痴呆、脳血管性痴呆、パーキンソン痴呆、アルツハイマー病及び/又は軽度認知障害を治療又は予防するステップを含んでなる。
【0025】
更なる本発明は、患者の脳障害を治療又は予防する方法の提供に関し、当該方法は、患者の脳の基礎代謝スキャンを行うステップと、次に前記患者に潅流誘発に十分な量のω−3脂肪酸を投与するステップと、次に上記患者の脳に対する潅流誘発スキャンを行うステップと、上記基礎代謝スキャンと、潅流誘発スキャンとを比較して、ω−3脂肪酸による治療が可能である脳障害をディファレンシャルに診断するステップと、ω−3脂肪酸による治療が可能である脳障害と診断される患者を選択し、脳障害の治療又は防止に対するω−3脂肪酸治療を受ける対象者とするステップと、前記選択ステップで選択された患者に、治療的有効量のω−3脂肪酸を含有する1つ以上の活性薬剤を投与し、上記脳障害を治療又は予防するステップを含んでなる。
【0026】
本発明はまた、患者が痴呆、脳血管性痴呆、パーキンソン痴呆、アルツハイマー病及び/又は軽度認知障害の治療又は予防に対する、ω−3脂肪酸治療に応答するか否かを判定するための診断試験方法の提供に関し、当該方法は、患者の脳に対して1回以上のベースラインスキャンを行い、異常な脳活性を有する患者を同定するステップと、上記同定するステップで同定された患者に、ω−3脂肪酸による第1の投与計画を実施するステップと、次に上記患者の脳に対して1回以上の評価スキャンを行うステップと、上記1回以上の評価スキャンと、上記1回以上のベースラインスキャンとを比較し、上記患者の脳活性の改善を解析するステップと、患者が痴呆、脳血管性痴呆、パーキンソン痴呆、アルツハイマー病及び/又は軽度認知障害の治療又は予防に対する、ω−3脂肪酸治療に応答するか否かを判定するステップを含んでなる。
【0027】
本発明は更に、患者が脳障害に対する、ω−3脂肪酸治療に応答するか否かを判定するための診断試験方法の提供に関し、当該方法は、患者の脳に対して基礎代謝スキャンを行うステップと、次に上記患者に潅流誘発に十分な量のω−3脂肪酸を投与するステップと、次に上記患者の脳に対して潅流誘発スキャンを行うステップと、上記基礎代謝スキャンと、上記潅流走査とを比較することにより、脳障害をディファレンシャルに診断するステップと、それにより上記患者が脳障害の治療又は予防に対する、ω−3脂肪酸治療に応答するか否かを判定するステップを含んでなる。
【0028】
本発明はまた、異常な代謝インデックスではないが血液潅流異常を伴う障害のディファレンシャルな診断方法の提供に関する。かかる異常は、本発明では「脳血管性痴呆」と称される。血液潅流異常及び異常な代謝インデックスと関連した障害は、本発明では「アルツハイマー痴呆のサブタイプ」と称される。
【0029】
本発明はまた、痴呆、脳血管性痴呆、パーキンソン痴呆、アルツハイマー病及び/又は軽度認知障害の治療又は予防のための薬剤を、単独で用いるか、又は、同時若しくは付随治療としての、又は、一定の剤形としての併用療法において用いる、治療計画の提供に関する。
【0030】
更なる実施形態では、ω−3脂肪酸は、痴呆、脳血管性痴呆、パーキンソン痴呆、アルツハイマー病及び/又は軽度認知障害の治療又は予防に適する1つ以上の更なる薬剤との組み合わせで投与される。他の実施形態では、上記1つ以上の更なる薬剤は、コリンエステラーゼ阻害剤、アスピリン、非ステロイド系抗炎症剤(NSAID)、クロピドグレル、メマンチン、高血圧治療薬、異脂肪血症薬及び抗パーキンソン病薬からなる群から各々独立に選択される。上記の組合せは、痴呆、脳血管性痴呆、パーキンソン痴呆、アルツハイマー病及び/又は軽度認知障害の治療又は予防用の、ω−3脂肪酸及び1つ以上の更なる薬剤のユニットドーズ形態として提供するのが好適である。
【0031】
好ましい実施形態では、当該ω−3脂肪酸はOmacor(登録商標)ω−3脂肪酸(米国特許第5502077号、第5656667号及び第5698594号に記載)を含んでなる。他の好ましい実施形態では、かかる1つ以上の医薬剤組成物は、当該組成物の総脂肪酸含有量に対して、少なくとも40重量%の濃度でω−3脂肪酸を含有する。
【0032】
更に他の好ましい実施形態では、当該ω−3脂肪酸は、組成物中の総脂肪酸含有量に対して、EPA及びDHAを少なくとも50重量%で含んでなり、またこのEPA及びDHAは、EPA:DHAの重量比=99:1〜1:99、好ましくは1:2〜2:1で存在する。
【0033】
本発明の他の新規な特徴及び効果は、以下の明細書の検討、又は本発明の実施によって習得され、また当業者にとり自明となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
本発明の「痴呆」とは、身体的及び/又は精神的な機能の障害及び/又は損失を生じさせる、脳及び/又は脳への供給を司る循環系におけるあらゆる障害のことを指す。痴呆の診断に最も一般的に用いられる基準は、DSM−IV(精神障害のための診断・統計マニュアル(アメリカ精神医学会により発表))である。痴呆の診断特徴としては例えば、記憶障害、及び以下うちの少なくとも1つ(失語症、失行症、失認及び機能障害)である。通常、認識障害は、社会的及び職業的機能における障害を引き起こすのに十分な程シビアなものであり、それ以前の高い機能レベルからの低下を表すものである。数種類の痴呆又はそれと密接に関連する障害が存在し、それらは別々の病因及び症状を示す。痴呆の例としては、限定されないが、変性疾患に伴う痴呆(例えばアルツハイマー病、ピック病及びパーキンソン病)、空隙多発梗塞性微小血管疾患、多血管性皮質若しくは皮質下の梗塞、大血管内皮又は皮質下梗塞、Binswager疾患又は白質病変と関連する脳血管性痴呆、空隙多発梗塞性微小血管疾患、多血管性皮質若しくは皮質下の梗塞、大血管内皮又は皮質下梗塞、Binswager疾患又は白質病変と関連する脈管認識障害、心停止によって生じる無酸素性痴呆、外傷性痴呆(例えば拳闘家痴呆)、エイズ又はクロイツフェルト‐ヤーコプ病に伴う伝染性痴呆、中毒性痴呆(例えばアルコール性痴呆)などが挙げられる。本発明の幾つかの実施形態では、最も広義の意味で「痴呆」が用いられ、他の実施形態では、痴呆の個々の種類、又は上記リスト中に含まれる障害と密接に関連する1つ以上のものが包含される。
【0035】
「軽度認知障害」又は「MCI」とは、通常の老化時の認識変化と、痴呆時のより深刻な症状との間の移行段階を意味する。MCIは、認識の多くの領域(例えば言語、注意、推理、判断、読み書き及び記憶)に影響を及ぼしうる。MCIは、以下の2つのサブタイプに大別できる:健忘MCI(著しく記憶に影響を及ぼす)、及び非健忘MCI(記憶に影響を及ぼさない)。MCIのいずれのサブタイプにおいても他の機能が減弱しうる。健忘MCIはアルツハイマー病と関連し、一方、非健忘MCIは他のタイプの症候群(例えば前頭側頭骨痴呆、初発進行失語症又はLewy小体型痴呆)を生じさせる。しかしながら、MCIに罹患する全ての患者が痴呆を示すわけではない。これらの患者は通常の状態のままでいるか、又は健常状態に回復することもある。本発明の幾つかの実施形態では、最も広義の意味で「MCI」が用いられ、他の実施形態では、MCIの個々のタイプ、又は上記リスト中に含まれる症候群と関連する1つ以上のものが包含される。
【0036】
「脳血管性痴呆」とは、伝統的に、多くの種類の脳卒中のうちの1つ、又は複数の脳卒中に罹患する患者において診断される痴呆のことを指す。大血管梗塞の場合、脳の相当な部分が損傷を受け、その結果、記憶喪失及び/又は部分的な不随をもたらす。イメージング技術の発達により、それまで脳の脈管症状と関係しなかった脳血管性痴呆(脳血管性痴呆又は脈管認識障害の定義の範囲に包含される)の形態を容易に同定することが可能となった。これらのイメージングされるタイプの病態としては、小脳卒中による小規模な空隙梗塞のサイン(通常そのようには認識されない)、小脳血管のアテローム性動脈硬化症の発達による脳の部分の段階的な酸素飢餓(広範囲な脳室周囲白質病変として観察されうる)、皮質下超強度などが挙げられる。脳血管性痴呆及び脈管認識障害のこれらの形は、イメージング技術によってのみ診断されうる。
【0037】
脳血管性痴呆及び/又は脈管認識障害患者で示される更なる症状としては実行機能の低下が挙げられ、限定されないが、ブリーフエグゼクティブアセスメント(BEA)などの様々な精神検査により検出できる。BEAなどの個々の試験は、FAS流暢性試験、digit symbol、Trail making試験(B−A)及びdigit span(逆唱)になどが挙げられるが、これらに限定されない。実行機能の障害を評価する際に有用な更なる試験方法は、主張及び応答の持続及び/又は構築能力の測定である。
【0038】
実行機能障害の臨床症状は、限定されないが手段的日常生活動作(IADL)などの総合評価尺度を使用して評価できる。その1つの形態では、IADLは、実施するためには実行機能が完全であることを必要とする、日常生活における8つの作業リストから構成される。IADLの一部とすることができる作業としては、電話の使用、洗濯、ショッピング、食事の用意、自身へ投薬に対する責任、家事及び家計の処理を行う能力が挙げられるがこれらに限られない。
【0039】
アルツハイマー病は最も一般的な痴呆であり、国立衛生研究所によると、成人の死因の第4位を占めるといわれている。本発明の「アルツハイマー病」とは、異常な脳構造(例えばアミロイド斑及び神経原線維錯綜)を特徴とする神経障害のことを指す。それは、脳細胞の段階的な損失及び/又は機能低下を伴い、遅行性の、進行性の記憶喪失に至る。アルツハイマー病は認識能力に顕著な影響を及ぼし、その結果、当該影響を受けた個人は無能力となる。痴呆の最初の症状は、わずかに観察される記憶喪失である。その後、記憶喪失が次第にシビアになり、最終的には無能力に至る。混乱、単語を正しくつなげる能力の低下及び幻覚などの他の症状が発生することもある。当該疾患の初期にはまた、感情的な諸問題(例えば動揺しやすくなる、判断能力が低下する、及び虚脱感)が通常観察される。治療又は介護を行わなければ、通常、栄養失調症又は肺炎により死に至る。疾患の進行は最初の症状から最高25年持続することもあるが、典型的には、当該持続期間は8〜10年の期間である。
【0040】
本願明細書の用語「脳障害」とは、上記の様々な症状(すなわち痴呆、脳血管性痴呆、パーキンソン痴呆、アルツハイマー病及び軽度認知障害(MCI))のいずれか、並びに他の関連症状のことを指す。
【0041】
本発明の「治療すること」又は「治療」とは、疾患又は症状を引き起こす損傷を緩和すること、及び/又は、疾患又は症状の進行を減速することを指す。
【0042】
脳皮質代謝インデックス(CMi)及び脳潅流インデックス(CPi)本発明の好ましい実施形態では、患者は、ICMi及びICPi脳スキャンのいずれか又は両方に基づき、脳障害に対するω−3脂肪酸による治療に応答すると考えられる患者として同定される。本発明の「ICMi」とは、等高線脳皮質代謝インデックスを指す。本発明の「ICPi」とは、等高線脳皮質潅流インデックスを指す。
【0043】
ICMi及びICPiは、主に白質及び灰質(又は大脳皮質)(高い脳機能(例えば思考及び知的機能)に関与する脳領域)を含む脳部位における、脳活性の60%等高線と、全脳活性の30%の等高線との間の比率を得ることによって導出される。
【0044】
ICMi及びICPiを得るために用いる脳のセグメントは、脳の長軸に対してほぼ水平方向であり、脳の最後部後頭骨域から最前正面部分へのラインの付近であり、耳の外側開口から目の端まで伸びる外部眼角道線にかなり近く、脳の頂点又は上部からの、小脳又は脳の底部の領域のとの間の約3分の1の距離の位置に存在する。本発明のために、この部分は、興味がある領域と呼ばれる。
【0045】
ICMiはラジオトレーサのみを使用して得られる。ICPiは潅流薬剤を用いて得られ、最も好適な潅流剤としてはω−3である。ピーク活性は放射能の総量を表し、それはラジオトレーサ(例えばTc99)の投与後に、標準的な機器(例えば多重チャネルアナライザ)で検出することにより測定される。
【0046】
60%の等高線とは、目的の領域中でピーク活性の60%〜100%の放射能を示すものとして定量されたフラクションのことを意味し、この領域内の主に白質及び灰質中の神経単位の代表的な機能を示し、それは、限定されないが思案、実行機能及び計画などの高い脳プロセスによるものと考えられる。30%の等高線とは、目的の領域中でピーク活性の30%〜100%の放射能を示すものとして定量されたフラクションのことを意味し、この領域内の全ての細胞機能を示し、当該領域とは、皮質下領域(例えば白質及び灰質)以外にも基底神経節を包含する領域のことを指す。
【0047】
ICMi及びICPiは局所インデックス(例えばrICMi及びrICPi)として表してもよく、それは目的の特定の脳領域内の活性として定義され、更にそれを、60%の等高線領域 対 当該特定の領域の比率で乗算することによって標準化する(すなわち当該特定の領域の活性が60%の等高線の全領域に存在すると仮定する)。これを更に、最初のICMi/ICPiレベルで、同じ全脳活性で除算し、当該特定の領域における局所的なICMi/ICPiを得る。これらの操作上の不確定性は標準的な数理に従い、また元のパラメータ空間の強度により、数学的及び統計的な許容限界が生じる。例えば、非常に小さい領域が選択された場合、非常に微弱な活性しか示されず、それは不正確な測定結果をもたらす。これらの局所インデックスを用いる1つの利点としては、当該局所領域がパラメータの統計処理上適切なサイズである場合において、それらが実質的にICMi及びICPiと同様の正常範囲を有し、また統計的不確定性がわずかに高いという点が挙げられる。rICMi/rICPiの正常範囲は心臓心室駆出率と同様となるように選択され、この場合、約50%〜72%のインデックスが正常であるとみなされる。
【0048】
本発明で使用する脳スキャンは、当業者に公知のいかなるスキャン技術を使用して実施してもよい。実施可能な脳のスキャン技術の非限定的な例としては、皮質放射性脳取り込み(CRBU)、脳局所相関活性(COBRA)、陽電子放射断層撮影(PET)、単一光子排出コンピュータ断層撮影(SPECT)、コンピュータ断層撮影(CT)、磁気共鳴イメージング(MRI)及び誘発音響放射(SAE)などが挙げられる。本発明ではSPECT及びPETスキャンが好ましい。
【0049】
等高線脳皮質代謝インデックス(ICMi)又は等高線脳皮質潅流インデックス(ICPi)が適用できるスキャンを使用するときは、異常時の脳のベースラインスキャンの基準としては、(1)異常ICMi<50%、(2)異常ICPi<52%、及び/又は(3)1つ以上の領域の異常局所ICMi、が挙げられる。異常な脳活性を決定する基準はスキャン技術でそれぞれ異なるが、全ての基準は当業者には公知であり、本発明の範囲内でもある。
【0050】
好ましくは、脳のベースラインスキャンは基礎代謝スキャン又は潅流誘発スキャンであり、好ましくは少なくとも潅流誘発スキャンを含んでなる。
【0051】
本発明の一実施形態では、ICMi及びICPiは、基礎代謝スキャン及び潅流誘発スキャンを実施することによって得られる。例えば、脳障害に対するω−3脂肪酸治療により利益を得ると考えられる患者を同定する方法は、(例えばICMiを得ることによって)患者の脳の基礎代謝スキャンを行うステップと、次に上記患者に潅流誘発に十分な量のω−3脂肪酸を投与するステップと、(例えばICPiを得ることによって)患者の脳の潅流誘発スキャンを行うステップと、次に、基礎代謝スキャンと潅流誘発スキャンとを比較し、ω−3脂肪酸により治療可能な脳障害をディファレンシャルに診断するステップを含んでなるのが好ましい。
【0052】
好ましい一実施形態では、ベースラインの基礎代謝スキャン及びベースラインの潅流誘発スキャンを使用してディファレンシャルに診断される脳障害は、脳血管性痴呆の形態である。特定の好ましい実施形態では、ICMiより低いICPi(典型的に異常であるとみなされる範囲内、又は範囲外でもよい)を有する患者は、脳血管性痴呆の形態を有する患者であるとみなされ、ω−3脂肪酸治療を使用した治療の対象者として選択される。
【0053】
したがって、脳障害がディファレンシャルに診断された患者に対して、治療計画を実施するのが好ましく、当該治療計画は、ω−3脂肪酸、並びに、任意に、痴呆、脳血管性痴呆、パーキンソン痴呆、アルツハイマー病及び/又はMCIの治療又は予防に適する1つ以上の更なる薬剤の投与を含んでなる。治療に関する本発明の実施形態では、ω−3脂肪酸は、痴呆、脳血管性痴呆、パーキンソン痴呆、アルツハイマー病及び/又はMCIに対するω−3脂肪酸治療に応答性を示すとして同定された患者に対して投与することが好ましく、当該投与は約0.5〜約8g/日、好ましくは約2〜約6g/日、最も好ましくは約3〜約4g/日の量で実施する。
【0054】
本発明の他の実施形態では、痴呆、脳血管性痴呆、パーキンソン痴呆、アルツハイマー病及び/又はMCIに対する、本発明に係るω−3脂肪酸治療の最適な候補患者は、異常な脳のベースラインスキャンを示す(いずれかの適当な基準に対する)患者であり、当該患者はまた、認識障害及び/又は少なくとも1つの軽微な脳卒中(例えば一過性脳虚血発作(TIA))の臨床症状を任意に示す場合もある。当該臨床症状は、公知のいずれかの精神評価試験で測定できる。一実施形態では、当該臨床症状はMMSE<28を特徴とする。
【0055】
スキャンの間、脳の視覚化に用いるイメージング材料は、いかなる公知のイメージング材料でもあってもよく、例えばTc−99m−HMPAO又はフッ化デオキシグルコース(FDG)などが挙げられる。潅流誘発スキャンを行うとき、潅流誘発剤はいかなる公知の潅流誘発剤(例えばアセタゾラミド、ニトログリセリン、飽和脂肪及びω−3脂肪酸)から選択できる。本発明において好適な潅流誘発剤はω−3脂肪酸を含んでなる。本発明において好適な、潅流誘発にとり十分なω−3脂肪酸の量は、約5〜約15g、好ましくは約8〜約10gである。
【0056】
痴呆、脳血管性痴呆、パーキンソン痴呆、アルツハイマー病及び/又はMCIに係る何らかの臨床症状を示すか否かに関係なく、適当な基準を使用したとき異常なベースラインスキャンの結果を示す患者は、本発明の同定ステップに従う更なる検査対象者として選択されうる。幾つかの実施形態では、当該患者は症状を示さない。なお、約40〜50%のICMi及び/又は42〜52%のICPiを有する患者は、いかなる臨床症状も示さず、したがって、痴呆、脳血管性痴呆、パーキンソン痴呆、アルツハイマー病及び/又はMCIの疾患進行の初期の段階でその危険を有するとして同定して、治療を成功させるのが好ましいことに留意する必要がある。
【0057】
本発明の一実施形態では、上記患者は、異常なベースラインの脳スキャン、並びに、任意に1つ以上の臨床症状に基づいて、更なる検査の対象者として同定されうる。かかる患者は更にω−3脂肪酸による第1の投与計画を実施される。上記第1の投与計画を行うことにより、ω−3脂肪酸が長期的若しくは慢性的に脳潅流誘発するが、それはω−3脂肪酸が本発明の若干の実施形態に従って実施されるICPiイメージングのための潅流剤として投与された場合に生じる短期的若しくは急性の潅流に匹敵するものである。
【0058】
第1の投与計画は、痴呆、脳血管性痴呆、パーキンソン痴呆、アルツハイマー病及び/又はMCIに対するω−3脂肪酸治療に応答できる患者における、脳スキャンの改善をもたらしうる態様の投与であれば特に限定されない。好適な実施形態では、上記第1の投与計画における投与量は、約0.5〜約8g/日、好ましくは約2〜約6g/日、最も好ましくは約3〜約4g/日である。上記患者が痴呆、脳血管性痴呆、パーキンソン痴呆、アルツハイマー病及び/又はMCIのためのω−3脂肪酸治療に応答できる場合、上記第1の投与計画の期間は、患者が脳スキャンによって顕著な反応を示すことができるのに十分ないかなる期間であってもよい。好適な実施形態では、当該期間は約1〜約12ヵ月、好ましくは約3〜約9ヵ月、最も好ましくは6ヵ月である。
【0059】
第1の投与計画の後に第2の脳スキャンを実施し、第1の投与計画の効果を評価する。この第2の評価スキャンは、同じ若しくは異なる許容できる脳スキャン技術を使用して、上記で列挙したいずれかの薬剤を使用して実施できる。上記の脳の第2の評価スキャンは好ましくは、基礎代謝スキャン、潅流誘発スキャン、又は基礎代謝スキャン及び潅流誘発スキャンの両方を含んでなる。第2の評価スキャンが少なくとも潅流誘発スキャンを含むのがより好適である。
【0060】
好適な実施形態では、スキャン間の比較を容易にするため、ベースラインの脳スキャンにおいて使用されたのと同じスキャン技術、イメージング剤及び潅流剤を使用して第2の評価スキャンを実施するこが好適である。
【0061】
上記患者が、ω−3脂肪酸による第1の投与計画に対する正の応答者であるか否か、すなわち、痴呆、脳血管性痴呆、パーキンソン痴呆、アルツハイマー病及び/又はMCIの治療又は予防に対する、ω−3脂肪酸治療から利益を得ると考えられるか、あるいはω−3脂肪酸治療から利益を得るとは考えられない第1の投与計画に対する非応答者であるかを判定するため、ベースラインスキャンの結果と評価スキャンの結果との比較を行う。薬物治療に対する適切な臨床効果データが適用できる場合には、その判定を容易にするために任意に使用してもよい。
【0062】
本発明の本態様では、第1の投与計画に対する「正の応答」とは、適当な患者集団における、第1のベースラインスキャンと第2の評価スキャンとの間の脳活性の有意な変化(p=0.05)のことを指す。臨床症状の改良(臨床症状が最初に存在した場合)は更に、正の応答であると判定する際の基準として使用できる。
【0063】
幾つかの実施形態では、上記「正の応答」には、グローバルな結果の顕著な変化、ICMiの顕著な変化、ICPiの顕著な変化、異常な局所ICMiにおける顕著な変化及び/又はICMiとICPiとの関係の顕著な変化が包含される。
【0064】
臨床症状の改良は、
(1)精神診断試験(例えばAMTS及び/又はMMSE、MDRS、ADAS−COG、BEA)のスコアの安定化又は向上、及び/又は、
(2)個人及び/又は家族及び/又は医師の印象の向上(例えばIADL、CIBIC、CIBIC−PLUSにおける)に基づいて評価できる。
【0065】
第1のベースラインスキャン、第2の評価スキャン、及び任意のあらゆる利用できる臨床所見を比較した後、患者が、本願明細書に記載される1つ以上の基準及び/又は付加的な適当な基準の第1の投与計画を使用した結果、「正の応答」を示すとして判定された場合、当該患者は、痴呆、脳血管性痴呆、パーキンソン痴呆、アルツハイマー病及び/又はMCIに対するω−3脂肪酸治療により利益を得ると考えられる患者であると同定され、かかる治療を受ける対象者として選択されうる。
【0066】
したがって、「正の応答」を示す患者に対して、ω−3脂肪酸、並びに痴呆、脳血管性痴呆、パーキンソン痴呆、アルツハイマー病及び/又はMCIの治療又は予防に適している1つ以上の更なる任意の薬剤の投与を含んでなる治療計画を実施することができる。治療に係る本発明の実施形態では、ω−3脂肪酸は、痴呆、脳血管性痴呆、パーキンソン痴呆、アルツハイマー病及び/又はMCIに対するω−3脂肪酸治療に応答すると考えられるとして同定された患者に投与するのが好適であり、その投与量は、約0.5〜約8g/日、好ましくは約2〜約6g/日、最も好ましくは約3〜約4g/日の量である。
【0067】
本発明はまた、脳血管性痴呆とアルツハイマー病痴呆サブタイプとの間の鑑別診断方法の提供に関する。ICMi及びICPiが用いられる実施形態では、通常の患者におけるこれらの個々のインデックス、及びそれら相互の関係の理解に基づき、鑑別診断を実施できる。すなわち、アルツハイマー病は典型的には、試験される脳領域のICMiが比較的低く、ICPiが比較的通常に近いことを特徴とする。一方、脳血管性痴呆では典型的にその逆のパターンを特徴とし、試験される脳領域におけるICMiが比較的通常に近く、ICPiが比較的低い。後期の脳血管性痴呆(又は他の痴呆)は典型的には大きな領域梗塞(例えば脳卒中)を特徴とし、ICMi及びICPiのレベルが比較的低い。すなわち、このような知見を応用することにより、鑑別診断を容易に実施できる。
【0068】
本発明の用語「ω−3脂肪酸」には、天然若しくは合成のω−3脂肪酸又はその薬理学的に許容できるエステル、誘導体、コンジュゲート(Zalogaら、米国特許出願公開第2004/0254357号、Horrobinら、米国特許第6245811号(それらの開示内容を本願明細書に援用する))、前駆体又は塩、並びにそれらの混合物が包含される。ω−3脂肪酸油の例としては、限定されないが、ω−3、高度不飽和、長鎖脂肪酸(例えばエイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)及びα−リノレン酸)、ω−3脂肪酸のグリセロールエステル(例えばモノ−、ジ−及びトリグリセリド)、ω−3脂肪酸と、第1級、第2級、第3級アルコールのエステル(例えば脂肪酸メチルエステル及び脂肪酸エチルエステル)などが挙げられる。好適なω−3脂肪酸油は、EPA又はDHAなどの長鎖脂肪酸、そのトリグリセリド、そのエチルエステル、並びにそれらの混合物である。ω−3脂肪酸又はそれらのエステル、誘導体、コンジュゲート、前駆体、塩、並びにそれらの混合物は、それらの純粋形態において用いてもよく、又は魚油、海洋生物を原料とする、好ましくは精製された油脂濃縮物(例えば魚油又はオキアミ油など)中の成分として含まれている形態で用いてもよい。本発明での使用に適する市販のω−3脂肪酸の例としては、Incromega F2250、F2628、E2251、F2573、TG2162、TG2779、TG2928、TG3525及びE5015(Croda International PLC, Yorkshire, England)及びEPAX6000FA、EPAX5000TG、EPAX4510TG、EPAX2050TG、K85TG、K85EE、K80EE及びEPAX7010EE(Pronova Biocare a.s.,1327 Lysaker,Norway)などが挙げられる。
【0069】
好適な組成物としては、米国特許第5502077号、第5656667号及び第5698694号に記載のω−3脂肪酸が挙げられ、それらの全開示内容を本願明細書に援用する。
【0070】
他の好適な組成物は、少なくとも40重量%、好ましくは少なくとも50重量%、好ましくは少なくとも60重量%、より好ましくは少なくとも70重量%、最も好ましくは少なくとも80重量%又は少なくとも90重量%の濃度でω−3脂肪酸を含んでなる。好ましくは、上記ω−3脂肪酸は、少なくとも50重量%、好ましくは少なくとも60重量%、好ましくは少なくとも70重量%、最も好ましくは少なくとも80%(例えば約84重量%)の濃度でEPA及びDHAを含んでなる。好ましくは、上記ω−3脂肪酸は、約5〜約100重量%、好ましくは25〜約75重量%、より好ましくは40〜約55重量%、最も好ましくは46重量%のEPAを含んでなる。好ましくは、ω−3脂肪酸は、約5〜約100重量%、好ましくは約25〜約75重量%、より好ましくは30〜約60重量%、最も好ましくは38重量%のDHAを含んでなる。特に明記しない限り、上記の全てのパーセンテージは組成物中の総脂肪酸含有量に対する重量を意味する。上記重量%はフリーの酸又はエステルに基づく数値であってもよいが、エステル以外の形態を本発明で利用する場合であっても、それはω−3脂肪酸のエチルエステルに基づく数値であるのが好ましい。
【0071】
EPA:DHA比率は、99:1〜1:99、好ましくは4:1〜1:4、より好ましくは3:1〜1:3、最も好ましくは2:1〜1:2であってもよい。上記ω−3脂肪酸は、純粋なEPA又は純粋なDHAを含んでなるのが好適である。
【0072】
ω−3脂肪酸は、約350mg〜約10g、好ましくは500mg〜約6g、最も好ましくは約750mg〜約4gの量で存在してもよい。この量を、1つ以上の剤形中に、好ましくは単回投与剤形中に添加する。ω−3脂肪酸組成物は任意に、酸化防止剤(αトコフェロール)、油(例えば大豆油及び部分的に水素化された植物油など)、潤滑剤(例えばフラクション分画されたココナッツオイル)、レシチン及びそれらの混合物を含有してもよい。
【0073】
最も好ましい形態のω−3脂肪酸は、Omacor(登録商標)ω−3脂肪酸(K85EE、Pronova Biocare A.S.,Lysaker、ノルウェー)であり、好ましくは以下の特徴(ドーズ当たり)を有する:
【0074】
【表1】

【0075】
痴呆、脳血管性痴呆、パーキンソン痴呆、アルツハイマー病及び/又はMCIの治療又は予防に適する1つ以上の更なる薬剤と、ω−3脂肪酸との共同投与も本発明の範囲内である。かかる更なる薬剤としては、限定されないが、コリンエステラーゼ阻害剤、アスピリン、非ステロイド系抗炎症剤(NSAID)、クロピドグレル、メマンチン、抗高血圧症薬、異脂肪血症薬及び抗パーキンソン病薬などが挙げられる。
【0076】
痴呆、脳血管性痴呆、パーキンソン痴呆、アルツハイマー病及び/又はMCIの治療又は予防に適する、ω−3脂肪酸の1日あたりの投与回数は、1つ以上の更なる薬剤の有無にかかわらず、好ましくは1〜10回/日、好ましくは1〜4回/日、最も好ましくは1〜2回/日である。併用療法においては、ω−3脂肪酸は1つ以上の更なる活性薬剤と同時に投与してもよく、例えば単一の剤形としての医薬剤組成物として投与してもよく、又は、別々の組成物としてそれらを同時に投与してもよい。併用療法の他の実施形態では、ω−3脂肪酸は、1つ以上の更なる活性薬剤の投与とは別個に、但し付随的に投与してもよい。例えば、ω−3脂肪酸を1日2回投与して、1つ以上の更なる薬剤を1日1回投与することができる。本発明の開示から利益を得る当業者であれば、ω−3脂肪酸及び1つ以上の更なる活性薬剤の正確な投与量及び投与計画が、多くの要因(例えば投与ルート及び症状の重篤度)に応じて変化しうると理解するであろう。
【0077】
幾つかの実施形態では、共同投与のための成分を、簡便なユニットドーズ形態として提供してもよい。投与ルートは好ましくは経口投与であるが、他の投与経路を採用してもよい。
【0078】
共同投与する場合、併用療法により、薬剤の各々の単独による効果から予想される複合的若しくは付加的作用以上の、より大きな効果が期待できる。更に、低い投与量及び賦形剤(例えば界面活性剤)の減少の結果、望ましくない副作用も減少すると考えられる。
【0079】
本発明の活性成分は、1つ以上の非活性の公知の製薬用成分(本願明細書では「賦形剤」と称する)との組合せで投与してもよい。上記非活性の成分を用いることにより、活性成分が、例えば可溶化、懸濁、増粘、希釈、乳化、安定化、保存、保護、着色、着香及び修飾され、それにより、安全、簡便及びさもなければ使用可能な調製物が得られる。
【0080】
上記の賦形剤としては、界面活性剤(例えばモノカプリル酸プロピレングリコール、グリセロールと長鎖脂肪酸のポリエチレングリコールエステルの混合物、ポリエトキシル化ヒマシ油、グリセロールエステル、オレオイルマクロゴールグリセリド、モノラウリン酸プロピレングリコール、ジカプリル酸/ジカプリン酸プロピレングリコール、ポリエチレン−ポリプロピレングリコール共重合体及びポリオキシエチレンソルビットのモノオレイン酸エステル)、共溶媒(例えばエタノール、グリセロール、ポリエチレングリコール及びプロピレングリコール)、油脂(例えばココナッツ、オリーブ又はサフラワー油)などが挙げられる。界面活性剤、共溶媒、油脂又はそれらの組み合わせの使用は製薬技術において一般に公知であり、いかなる適切な界面活性剤も、本発明及びその実施形態と組み合わせて使用できることは当業者にとり自明である。
【0081】
痴呆、脳血管性痴呆、パーキンソン痴呆、アルツハイマー病及び/又はMCIは進行する性質を有するため、本発明では、ω−3脂肪酸及び任意に1つ以上の更なる薬剤を使用した治療を長期間にわたって継続するのが好適である。好ましくは、当該治療は、少なくとも3ヵ月、好ましくは少なくとも6ヵ月、最も好ましくは少なくとも1年間の期間にわたって実施する。好ましい実施形態では、患者の認識機能を維持し、保護するために、当該治療を少なくとも5年間継続させる。
【0082】
ω−3脂肪酸治療に応答すると考えられる患者として同定された患者(ベースラインのICMiとICPiのスキャン結果の比較に基づいて同定されたか、又は、第1のベースラインスキャンの結果と、ω−3脂肪酸の投与が行われた第1のトライアル期間の後に行われた第2の評価スキャンの結果との比較に基づいて同定されたかに関係なく)は、治療的有効量のω−3脂肪酸を(任意に1つ以上の更なる薬剤と組み合わせて)投与された際にモニターされるのが好適である。当該モニタリングは、フォローアップとしての精神評価や、当該患者の臨床症状に関する家族、介護者及び/又は主治医からの報告のレビューや、及び/又は更なる脳のスキャンを伴ってもよい。モニタリングの結果に基づいて、患者に投与するω−3脂肪酸(又は1つ以上の更なる薬剤を含んでもよい)の量を調整することは有益であり、それにより、痴呆、脳血管性痴呆、パーキンソン痴呆、アルツハイマー病及び/又はMCIの治療又は予防を最適化し、又はこれらの症状の進行を遅延させ続けることが可能となる。
【実施例】
【0083】
本発明の特に好ましい実施形態を、以下の患者データ中に提供される情報を参照しながら記載する。
【0084】
表1:ICPi<ICMi
【表2】

グループ1:ω−3脂肪酸を投与され、症状の改善が見られた患者の例。
グループ2:ベースライン:第1の投与計画:評価を行った例。これらの患者は良好な治療対象候補者である。
グループ3:ベースラインICPi<ICMiの例。ほとんどの患者が脳血管性痴呆に罹患すると考えられる。
グループ4:ICMi及びICPi両方が正常範囲にある例。
【0085】
表2:ICPi>ICMi
【表3】

グループ1:低いICMi及び/又はICPi。
グループ2:中程度のICMi及びICPi。
グループ3:ICMi及びICPi両方が正常範囲内。
【0086】
表3:ICPi≒ICMi
【表4】

グループ1:低いICMi及びICPi。
グループ2:中程度のICMi及びICPi。
グループ3:ICMi及びICPi両方が正常範囲内。
【0087】
当然ながら前記説明は飽くまで例示であり、本発明の範囲内において、細部における様々な変更を実施できることは自明である。
【0088】
本特許出願全体にわたって、様々な特許文献及び刊行物を引用した。これらの特許文献及び刊行物の全開示内容を本願明細書に援用することにより、本発明が属する技術分野の技術水準が完全に記載されたと考えられる。
【0089】
本発明では、形態及び機能に関して、多くの修飾、変更及び均等態様を実施することが可能であり、この開示から利益を得る当業者であればそれらを容易に想到するであろう。本願明細書における全ての引例に関して、それらの全開示内容を本願明細書に援用する。
【0090】
好ましい実施形態と考えられるものを本明細書に記載したが、本発明はこれらの態様に限定されるものではない。むしろ本発明は、上記の詳細な説明の範囲内に含まれる、様々な均等若しくは変更態様を包含するものであることを理解すべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
痴呆、脳血管性痴呆、パーキンソン痴呆、アルツハイマー病及び/又は軽度認知障害に対する、ω−3脂肪酸療法により利益を得ると考えられる患者を同定する方法であって、前記患者の脳に対する1回以上のベースラインスキャンを行い、異常な脳活性を有する患者を同定するステップと、前記同定するステップで同定された患者にω−3脂肪酸の第1の投与計画を実施するステップと、次に前記患者の脳に対する1回以上の評価スキャンを行うステップと、前記1回以上の評価スキャンと、前記1回以上のベースラインスキャンとを比較して、前記患者の脳活性の改善を解析するステップと、脳活性の改良を示す患者を選択し、痴呆、脳血管性痴呆、パーキンソン痴呆、アルツハイマー病及び/又は軽度認知障害の治療又は予防に対するω−3脂肪酸治療を受ける対象者とするステップを含んでなる方法。
【請求項2】
前記患者が、痴呆、脳血管性痴呆、パーキンソン痴呆、アルツハイマー病及び/又は軽度認知障害の見かけの症状を示さない、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記1回以上のベースラインスキャンが、基礎代謝スキャン及び潅流誘発スキャンのいずれか一方又は両方から選択される、請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記1回以上の評価スキャンが、基礎代謝スキャン及び潅流誘発スキャンのいずれか一方又は両方から選択される、請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記1回以上のベースラインスキャンが潅流誘発スキャンを含んでなる、請求項1記載の方法。
【請求項6】
前記1回以上の評価スキャンが潅流誘発スキャンを含んでなる、請求項1記載の方法。
【請求項7】
前記1回以上のベースラインスキャン及び前記1回以上の評価スキャンが、各々、陽電子放射断層撮影(PET)及び単一光子排出コンピュータ断層撮影(SPECT)からなる群から選択されるスキャン技術を使用して行われる、請求項1記載の方法。
【請求項8】
脳障害に対するω−3脂肪酸療法から利益を得ると考えられる患者を同定する方法であって、患者の脳の基礎代謝スキャンを行うステップと、次に前記患者に、潅流誘発に十分な量のω−3脂肪酸を投与するステップと、次に前記患者の脳に対する潅流誘発スキャンを行うステップと、前記基礎代謝スキャンと、潅流誘発スキャンとを比較して、ω−3脂肪酸による治療が可能である脳障害をディファレンシャルに診断するステップと、ω−3脂肪酸による治療が可能である脳障害と診断される患者を選択し、脳障害の治療又は防止に対するω−3脂肪酸治療を受ける対象者とするステップを含んでなる方法。
【請求項9】
前記患者が痴呆、脳血管性痴呆、パーキンソン痴呆、アルツハイマー病及び/又は軽度認知障害の見かけの症状を示さない、請求項8記載の方法。
【請求項10】
前記ω−3脂肪酸が治療的有効量において投与される、請求項8記載の方法。
【請求項11】
前記ω−3脂肪酸が、痴呆、脳血管性痴呆、パーキンソン痴呆、アルツハイマー病及び/又は軽度認知障害の治療又は予防に適する1つ以上の更なる薬剤とともに投与される、請求項10記載の方法。
【請求項12】
前記1つ以上の更なる薬剤が、コリンエステラーゼ阻害剤、アスピリン、非ステロイド系抗炎症剤(NSAID)、クロピドグレル、メマンチン、高血圧治療薬、異脂肪血症薬及び抗パーキンソン病薬からなる群から各々独立に選択される、請求項11記載の方法。
【請求項13】
前記ω−3脂肪酸及び前記1つ以上の更なる薬剤が、ユニットドーズとして提供される、請求項12記載の方法。
【請求項14】
アルツハイマー病と脳血管性痴呆との間の前記鑑別診断が、基礎代謝スキャンと潅流誘発スキャンとの比較に基づいて行われる、請求項8記載の方法。
【請求項15】
基礎代謝スキャンが1つ以上の領域において異常である場合に、アルツハイマー病のための鑑別診断が行われる、請求項14記載の方法。
【請求項16】
患者の痴呆、脳血管性痴呆、パーキンソン痴呆、アルツハイマー病及び/又は軽度認知障害を治療又は予防する方法であって、患者の脳に対して1回以上のベースラインスキャンを行って異常な脳活性を有する患者を同定するステップと、次に前記同定するステップで同定された前記患者にω−3脂肪酸の第1の投与計画を実施するステップと、次に前記患者の脳に対して1回以上の評価スキャンを行うステップと、前記1回以上の評価スキャンと、前記1回以上のベースラインスキャンとを比較して、前記患者の脳活性の改善を解析するステップと、脳活性の改善を有する患者を選択し、痴呆、脳血管性痴呆、パーキンソン痴呆、アルツハイマー病及び/又は軽度認知障害の治療又は予防に対するω−3脂肪酸治療を受ける対象者とするステップと、前記選択ステップで選択された患者に、治療的有効量のω−3脂肪酸を含有する1つ以上の活性薬剤を投与するステップと、痴呆、脳血管性痴呆、パーキンソン痴呆、アルツハイマー病及び/又は軽度認知障害を治療又は予防するステップを含んでなる方法。
【請求項17】
前記患者が、痴呆、脳血管性痴呆、パーキンソン痴呆、アルツハイマー病及び/又は軽度認知障害の見かけの症状を示さない、請求項16記載の方法。
【請求項18】
前記治療的有効量の活性薬剤が、更に、痴呆、脳血管性痴呆、パーキンソン痴呆、アルツハイマー病及び/又は軽度認知障害の治療又は予防に適する1つ以上の更なる薬剤を含んでなる、請求項16記載の方法。
【請求項19】
前記1つ以上の更なる薬剤が、コリンエステラーゼ阻害剤、アスピリン、非ステロイド系抗炎症剤(NSAID)、クロピドグレル、メマンチン、高血圧治療薬、異脂肪血症薬及び抗パーキンソン病薬からなる群から各々独立に選択される、請求項16記載の方法。
【請求項20】
前記ω−3脂肪酸及び1つ以上の添加された薬剤が、ユニットドーズとして提供される、請求項18記載の方法。
【請求項21】
前記1回以上のベースラインスキャンが、基礎代謝スキャン及び潅流誘発スキャンのうちの少なくとも1つを含んでなる、請求項16記載の方法。
【請求項22】
前記1回以上の評価スキャンが、基礎代謝スキャン及び潅流誘発スキャンのうちの少なくとも1つを含んでなる、請求項16記載の方法。
【請求項23】
前記1回以上のベースラインスキャンが、潅流誘発スキャンを含んでなる、請求項16記載の方法。
【請求項24】
前記1回以上の評価スキャンが、潅流誘発スキャンを含んでなる、請求項16記載の方法。
【請求項25】
前記1回以上のベースラインスキャン及び前記1回以上の評価スキャンが、各々、陽電子放射断層撮影(PET)及び単一光子排出コンピュータ断層撮影(SPECT)からなる群から選択されるスキャン技術を使用して行われる、請求項16記載の方法。
【請求項26】
患者の脳障害を治療又は予防する方法であって、患者の脳の基礎代謝スキャンを行うステップと、次に前記患者に潅流誘発に十分な量のω−3脂肪酸を投与するステップと、次に上記患者の脳に対する潅流誘発スキャンを行うステップと、上記基礎代謝スキャンと、潅流誘発スキャンとを比較して、ω−3脂肪酸による治療が可能である脳障害をディファレンシャルに診断するステップと、ω−3脂肪酸による治療が可能である脳障害と診断される患者を選択し、脳障害の治療又は防止に対するω−3脂肪酸治療を受ける対象者とするステップと、前記選択ステップで選択された患者に、治療的有効量のω−3脂肪酸を含有する1つ以上の活性薬剤を投与し、上記脳障害を治療又は予防するステップを含んでなる方法。
【請求項27】
前記患者が、痴呆、脳血管性痴呆、パーキンソン痴呆、アルツハイマー病及び/又は軽度認知障害の見かけの症状を示さない、請求項26記載の方法。
【請求項28】
前記ω−3脂肪酸が治療的有効量において投与される、請求項26記載の方法。
【請求項29】
前記ω−3脂肪酸が、痴呆、脳血管性痴呆、パーキンソン痴呆、アルツハイマー病及び/又は軽度認知障害の治療又は予防に適する1つ以上の更なる薬剤とともに投与される、請求項28記載の方法。
【請求項30】
前記1つ以上の更なる薬剤が、コリンエステラーゼ阻害剤、アスピリン、非ステロイド系抗炎症剤(NSAID)、クロピドグレル、メマンチン、高血圧治療薬、異脂肪血症薬及び抗パーキンソン病薬からなる群から各々独立に選択される、請求項29記載の方法。
【請求項31】
前記ω−3脂肪酸及び前記1つ以上の更なる薬剤が、ユニットドーズとして提供される、請求項29記載の方法。
【請求項32】
アルツハイマー病と脳血管性痴呆との間の前記鑑別診断が、基礎代謝スキャンと潅流誘発スキャンとの比較に基づいて行われる、請求項26記載の方法。
【請求項33】
基礎代謝スキャンが1つ以上の領域において異常である場合に、アルツハイマー病のための鑑別診断が行われる、請求項32記載の方法。
【請求項34】
患者が痴呆、脳血管性痴呆、パーキンソン痴呆、アルツハイマー病及び/又は軽度認知障害の治療又は予防に対する、ω−3脂肪酸治療に応答するか否かを判定するための診断試験方法であって、患者の脳に対して1回以上のベースラインスキャンを行い、異常な脳活性を有する患者を同定するステップと、上記同定するステップで同定された患者に、ω−3脂肪酸による第1の投与計画を実施するステップと、次に上記患者の脳に対して1回以上の評価スキャンを行うステップと、上記1回以上の評価スキャンと、上記1回以上のベースラインスキャンとを比較し、上記患者の脳活性の改善を解析するステップと、患者が痴呆、脳血管性痴呆、パーキンソン痴呆、アルツハイマー病及び/又は軽度認知障害の治療又は予防に対する、ω−3脂肪酸治療に応答するか否かを判定するステップを含んでなる方法。
【請求項35】
前記患者が、痴呆、脳血管性痴呆、パーキンソン痴呆、アルツハイマー病及び/又は軽度認知障害の見かけの症状を示さない、請求項34記載の診断試験方法。
【請求項36】
前記1回以上のベースラインスキャンが、基礎代謝スキャン及び潅流誘発スキャンのうちの少なくとも1つを含んでなる、請求項34記載の診断試験方法。
【請求項37】
前記1回以上の評価スキャンが、基礎代謝スキャン及び潅流誘発スキャンのうちの少なくとも1つを含んでなる、請求項34記載の診断試験方法。
【請求項38】
前記1回以上のベースラインスキャンが、潅流誘発スキャンを含んでなる、請求項34記載の診断試験方法。
【請求項39】
前記1回以上の評価スキャンが、潅流誘発スキャンを含んでなる、請求項34記載の診断試験方法。
【請求項40】
前記1回以上のベースラインスキャン及び前記1回以上の評価スキャンが、各々、陽電子放射断層撮影(PET)及び単一光子排出コンピュータ断層撮影(SPECT)からなる群から選択されるスキャン技術を使用して行われる、請求項34記載の診断試験方法。
【請求項41】
アルツハイマー病と脳血管性痴呆との間の前記鑑別診断が、基礎代謝スキャンと潅流誘発スキャンとの比較に基づいて行われる、請求項34記載の診断試験方法。
【請求項42】
基礎代謝スキャンが1つ以上の領域において異常である場合に、アルツハイマー病のための鑑別診断が行われる、請求項41記載の診断試験方法。
【請求項43】
本発明は更に、患者が脳障害に対する、ω−3脂肪酸治療に応答するか否かを判定するための診断試験方法の提供に関し、当該方法は、患者の脳に対して基礎代謝スキャンを行うステップと、次に上記患者に潅流誘発に十分な量のω−3脂肪酸を投与するステップと、次に上記患者の脳に対して潅流誘発スキャンを行うステップと、上記基礎代謝スキャンと、上記潅流走査とを比較することにより、脳障害をディファレンシャルに診断するステップと、それにより上記患者が脳障害の治療又は予防に対する、ω−3脂肪酸治療に応答するか否かを判定するステップを含んでなる方法。
【請求項44】
前記患者が、痴呆、脳血管性痴呆、パーキンソン痴呆、アルツハイマー病及び/又は軽度認知障害の見かけの症状を示さない、請求項43記載の診断試験方法。
【請求項45】
アルツハイマー病と脳血管性痴呆との間の前記鑑別診断が、基礎代謝スキャンと潅流誘発スキャンとの比較に基づいて行われる、請求項43記載の診断試験方法。
【請求項46】
基礎代謝スキャンが1つ以上の領域において異常である場合に、アルツハイマー病のための鑑別診断が行われる、請求項45記載の診断試験。

【公表番号】特表2009−532663(P2009−532663A)
【公表日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−555367(P2008−555367)
【出願日】平成19年2月16日(2007.2.16)
【国際出願番号】PCT/US2007/004072
【国際公開番号】WO2007/098020
【国際公開日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【出願人】(507185428)レリアント ファーマスーティカルズ インコーポレイテッド (9)
【Fターム(参考)】