説明

「ラチェット式ベルトクランプ」と補正する。

【目的】 小さな力で強く且つ適正な締結力を確保することができ、またワンタッチで解除することができるクランプを提供する。
【構成】 戻り止爪部材6の基端部をベース金具2の固定板に架設したピン軸5に軸設し、係止端7が固定板3面と常時圧接する方向に弾性付勢する。送り把手18の基端部をピン軸5に軸設して把手端12を揺動する構成し、把手端12が収納する方向に弾性付勢する。また送り爪部材13の一端を送り把手10の中腹部に軸設し、送り端18がベース金具2の固定板3面と常時圧接する方向に弾性付勢してクランプ1を構成する。多数の係止歯32,32…を並設してなるラックベルト部33を形成したラック状ベルト30を、クランプ1のベース金具2の固定板3前面に沿って戻り止爪部材6と送り把手10の下に挿入して係止し、把手端12の揺動操作によって緊締調節することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、締付が簡単で解除がワンタッチでできるラチェット式ベルトクランプであり、殊にスキー用ブーツまたはスノーボード用ビンディングの締結ベルトとして有用なラチェット式ベルトクランプに関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来より、スキー用ブーツまたはスノーボード用ビンディングの締結ベルト用クランプとして図4R>4に示すような構造のものが使用されている。この種のクランプ50は、ベース金具51に横架設したピン軸52に係止部材53の中腹部を揺動自在に軸着するとともに、該ピン軸52にコイルスプリング54を外挿し、上記係止部材53の係止端53aがベース金具51の面に圧接する方向に弾性付勢してなる。
【0003】そして、ベルト方向に多数の係止歯55を並設したラック状ベルト54を上記クランプ50に挿入(矢印A)し、係止部材53の係止端53aを係止歯55の一つと係合するものであり、ラック状ベルト54の締結は該ベルト自体の押し込み力によって行い、解除するときは、係止部材53の解除端53bを矢印B方向に押圧して行う。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかし上記従来のクランプでは、ベルトの締結力はラック状ベルト54自体の押し込み力によって決まることから、満足できる適正な締結力が確保できないといった致命的な問題を有していた。
【0005】本発明は上記問題に鑑みてなされたものであり、小さな力で強く且つ適正な締結力を確保することができると共に、ワンタッチで解除することができる新規構造のラチェット式ベルトクランプを提供することを目的とするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明に係るラチェット式ベルトクランプは、固定板に立上げた側壁間にピン軸を横架設すると共に、固定板の一部に固定手段を構成してなるベース金具と、前記ピン軸に基端部を回動自在に軸設し、ピン軸に外挿したコイルスプリングを介して、係止端が前記ベース金具の固定板面と常時圧接する方向に弾性付勢してなる戻り止爪部材と、前記ピン軸に基端部を回動自在に軸設し、把手端が所定の範囲で揺動する構成にすると共に、コイルスプリングを介して該把手端を収納する方向に弾性付勢してなる送り把手と、前記送り把手中腹部に架設したピン軸に両脚端を回動自在に軸設してなり、上記ピン軸に外挿したコイルスプリングを介して、送り端が上記ベース金具の固定板面と常時圧接する方向に弾性付勢した平面形状が「コ」字状になる送り爪部材とからなるクランプであり、ベルト方向に傾斜山形断面をもった多数の係止歯を並設したラックベルト部を形成した帯状体のラック状ベルトを、前記クランプ1に対してベース金具の固定板の前面に沿って戻り止爪部材と送り把手の下に挿入して係止することを要旨とするものである。
【0007】
【作用】上記構成によれば、クランプ1にラック状ベルトを挿入して連結するもので、ラックベルト部をベース金具の固定板の前面に沿って進入させると、戻り止爪部材の係止端が係止歯の溝と係合してラックベルト部の戻りを阻止する。
【0008】ラックベルト部を戻り止爪部材下を及び送り把手の送り端下に進入させた後、ラック状ベルトを更に緊張調節する場合は、送り把手の把手端を繰り返し引き上げまたは戻して行う。送り把手の把手端を引き上げることにより、送り爪部材の送り端がラックベルト部の係止歯の一つと係合して前方に移動変位し、ラック状ベルトを引き込んで緊締する方向に移動させるように作動する。
【0009】
【実施例】以下、本発明に係るラチェット式ベルトクランプの一実施例を図1乃至図3に従って説明する。符号1は本発明のクランプ、符号30は該クランプ1と所望の位置で係止するラック状ベルトである。
【0010】上記クランプ1は、ベース金具2の固定板3の両側に直立折上げした側壁4,4間にピン軸5を横架設すると共に、該ピン軸5に戻り止爪部材6の基端部を回動自在に軸設してなる。該戻り止爪部材6は、ピン軸5に外挿し、後述する送り把手10と該戻り止爪部材6間に弾挿したコイルスプリング8を介して、係止端7が上記ベース金具2の固定板3面と常時圧接する方向(矢印C)に弾性付勢してなるもので、解除用指掛リブ9が突設してある。
【0011】また上記ピン軸5には、送り把手10の揺動基端11も回動自在に軸設してあり、矢印Dの範囲で把手端12が揺動すると共に、該送り把手10と上記戻り止爪部材6間に弾挿したコイルスプリング8を介して、把手端12が収納される方向(矢印E)に弾性付勢してなる。
【0012】符号13は、上記送り把手10の中腹部に横架設したピン軸14に両脚端15,15を軸設した平面形状が「コ」字状になる送り爪部材である。該送り爪部材13は、側壁16,16がベース金具2の両側壁4,4の外側に、クランプ1を覆うような形態で配置されており、「コ」字状の切欠17から前記戻り止爪部材6の解除用指掛リブ9が挿出している。
【0013】また、該送り爪部材13は、ピン軸14に外挿し、送り把手10と該送り爪部材13間に弾挿したコイルスプリング19を介して、送り端18が上記ベース金具2の固定板3面と常時圧接する方向(矢印F)に弾性付勢してなるもので、送り把手10の揺動動作(矢印D)により該送り端18が矢印Sの範囲で変位するようになる。
【0014】尚、符号20は、ベース金具2の固定板3の一端に穿設した固定用皿孔であり、取付ビス21などを使用して固定するための目的物に対する固定構造を構成するものである。従って、該固定構造は、固定手段によって種々設計変更され、またベース金具2の固定板3も取付面に沿って彎曲させることもできる。
【0015】またラック状ベルト30は、半硬質合成樹脂によって成形され、適宜長さの帯状を呈すると共に、その一端に、ベルト35を連結するためのベルト連結端31を一体的に構成してなる。ベルト本体部は、傾斜山形断面をもった多数の係止歯32,32…を並設したラックベルト部33を構成し、前記クランプ1に対してベース金具2の固定板3の前面に沿って矢印Gから挿入する構造になる。
【0016】尚、上記構成のベルト連結端31は、取付ビスなどを挿通する取付孔を穿設した取付構造にすることもできる。
【0017】上記構成になるラチェット式ベルトクランプは、矢印Gに沿ってクランプ1にラック状ベルト30を挿入して連結する。ラックベルト部33がベース金具2の固定板3の前面に沿って進入すると、戻り止爪部材6の係止端7がコイルスプリング8の弾性に抗して係止歯32,32…を乗り越える状態で下を移動する。そして、各係止歯32を乗り越える如に該係止端7が前の係止歯32の溝と係合してラックベルト部33の戻りを阻止してなる。(図2参照)
【0018】予めラックベルト部33を戻り止爪部材6下を越え、更に送り把手10の送り端18下に進入させた後、ラック状ベルト30を更に緊張させる場合は、送り把手10の把手端12を矢印Dの範囲で引き上げまたは戻しを繰り返して行う。
【0019】把手端12を引き上げると、図3(a)に示すように、該送り把手10がピン軸5を回転中心として回動変位するため、該送り把手10の中腹部に架設したピン軸14に一端を軸設してなる送り爪部材13の送り端18は、コイルスプリング19の弾性付勢(矢印F)と相俟って、矢印Sの範囲で前方に移動変位する。
【0020】このとき、該送り端18は、ラックベルト部33の係止歯32の一つと係合しているため、ラック状ベルト30を引き込み緊締する方向に移動させる。また、ラック状ベルト10の移動位置では、ラックベルト部33の別の係止歯32が戻り止爪部材6の係止端7と係合した状態になっており、送り把手10を戻すと係止端18がラックベルト部33の各係止歯32を滑って元の位置に移動し、該位置で係止歯32の一つと係合する。
【0021】ラック状ベルト30をクランプ1から釈放する場合は、図3(b)に示すように、戻り止爪部材6の解除用指掛リブ8を矢印H方向に引き上げて行う。解除用指掛リブ8を矢印H方向に引き上げ、ピン軸5を回転中心として戻り止爪部材6を揺動変位させると、該係止端7がラックベルト部33の係止歯32の一つから後退して外れる。更にH方向に引き上げると係止端7の背面が、送り爪部材13の送り端18側を跳ね上げ、該送り端18がラックベルト部33の係止歯33の一つから後退して外れ、ラックベルト部33の係止作用は全て解除される。
【0022】尚、前記下実施例の説明は、スキー用ブーツのベルト式締結構造またはスノーボード用ビンディングに使用される足指や足甲の締結ベルトを想定して、固定用皿孔20やベルト連結端31等の取付構造を構成したものを示したが、該部の取付構造は、使用の目的や使用場所によってそれぞれ対応して設計変更することができることはいうまでもない。
【0023】
【発明の効果】以上述べたように、本発明に係るラチェット式ベルトクランプは、予めラック状ベルトをクランプに係合した状態から送り把手を揺動することにより、ラチェット式にラック状ベルトを送り込む構造になるため、小さな力で強く締結することができる。
【0024】従って、締結力を微妙に調節することができ、適正な締結力を確保することが可能になる。また釈放する場合でも、ラチェット式になる係止部を外すことにより、簡単に而もワンタッチで解除することができる等の優れた特徴を有するものであり、本発明実施後の効果は極めて大きい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明一実施例を示すラチェット式ベルトクランプの一部切欠した透視図である。
【図2】ラック状ベルトを同クランプに係止した状態の縦断面図である。
【図3】(a)及び(b)は、同クランプの作用を示す説明図である。
【図4】従来のクランプの構造を示す縦断面図である。
【符号の説明】
1 クランプ
2 ベース金具
5 ピン軸
6 戻り止爪部材
7 係止端
8 コイルスプリング
9 解除用指掛リブ
10 送り把手
13 送り爪部材
14 ピン軸
18 送り端
19 コイルスプリング
20 固定用皿孔
30 ラック状ベルト
31 ベルト連結端
32 係止歯
33 ラックベルト部
35 ベルト

【特許請求の範囲】
【請求項1】 固定板3に立上げた側壁4,4間にピン軸5を横架設すると共に、固定板3の一部に固定手段を構成してなるベース金具2と、前記ピン軸5に基端部を回動自在に軸設し、ピン軸5に外挿したコイルスプリング8を介して、係止端7が前記ベース金具2の固定板3面と常時圧接する方向に弾性付勢してなる戻り止爪部材6と、前記ピン軸5に基端部を回動自在に軸設し、把手端12が所定の範囲で揺動する構成にすると共に、コイルスプリング8を介して該把手端12を収納する方向に弾性付勢してなる送り把手10と、前記送り把手10の中腹部に架設したピン軸14に両脚端15,15を回動自在に軸設してなり、上記ピン軸14に外挿したコイルスプリング19を介して、送り端18が上記ベース金具2の固定板3面と常時圧接する方向に弾性付勢した平面形状が「コ」字状になる送り爪部材13、とからなるクランプ1であり、ベルト方向に傾斜山形断面をもった多数の係止歯32,32…を並設したラックベルト部33を形成した帯状体のラック状ベルト30を、前記クランプ1に対してベース金具2の固定板3の前面に沿って戻り止爪部材6と送り把手10の下に挿入して係止することを特徴とするラチェット式ベルトクランプ。

【図1】
image rotate


【図2】
image rotate


【図4】
image rotate


【図3】
image rotate


【公開番号】特開平9−94317
【公開日】平成9年(1997)4月8日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平7−198031
【出願日】平成7年(1995)7月11日
【出願人】(595111675)有限会社クレール・ユー (1)