説明

「終末糖化産物受容体」への結合のためのポリペプチド、さらにはそれを含む組成物及び方法

本発明は、「終末糖化産物受容体」(RAGE)への特異的結合を可能にするよう配置された2つのアミノ酸配列を少なくとも含むポリペプチド又はポリペプチド複合体、該ポリペプチド又はポリペプチド複合体をコードする1つ又はそれ以上の核酸、RAGEに対する抗体を産生する細胞、場合によりRAGE関連疾患又は障害を処置するための、上で定義される少なくとも1つのポリペプチド又は核酸を含む医薬組成物、及びRAGE関連疾患又は障害を診断する方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、「終末糖化産物受容体」(RAGE)への特異的結合を可能にするよう配置された2つのアミノ酸配列を少なくとも含むポリペプチド又はポリペプチド複合体、該ポリペプチド又はポリペプチド複合体をコードする1つ又はそれ以上の核酸、RAGEに対する抗体を産生する細胞、場合によりRAGE関連疾患又は障害を処置するための、上で定義される少なくとも1つのポリペプチド又は核酸(nucleic)を含む医薬組成物、及びRAGE関連疾患又は障害を診断する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
終末糖化産物受容体(RAGE)は、免疫グロブリンスーパーファミリーの35kDの膜貫通受容体であり、これは最初に1992年にNeeperらにより特徴付けされた(非特許文献1)。これは免疫グロブリンスーパーファミリーのマルチリガンド細胞表面メンバーである。RAGEは細胞外ドメイン、単一膜貫通ドメイン、及びサイトゾル側末端からなる。この受容体の細胞外ドメインは、1つのV型免疫グロブリンドメイン、続いて2つのC型免疫グロブリンドメインからなる。サイトゾルドメインはシグナル伝達に関与し、そして膜貫通ドメインは受容体を細胞膜に固定する。可変ドメインはRAGEリガンドに結合する。RAGEはまた可溶型(sRAGE)で存在する。
【0003】
RAGEの名称は、長期の高血糖状態で形成する、非酵素的に変更されたタンパク質の不均質な群である終末糖化産物(AGE)に結合するその能力に由来する。しかし、AGEは偶発的な病原性リガンドであるだけかもしれない。AGEに加えて、RAGEは他のリガンドにも結合することができ、それ故しばしばパターン認識受容体と呼ばれる。しかし、RAGEは独特なパターン認識受容体であり、いくつかの異なるクラスの内在性分子に結合して、サイトカイン分泌、増加した細胞の酸化ストレス、神経突起伸長及び細胞遊走を含む種々の細胞応答をもたらす。RAGEの公知のリガンドとしては、S100/カルグラニュリン、血清アミロイド(SAA)(線維状形態)、β−アミロイドタンパク質(Aβ)、及び高移動度box−1染色体タンパク質1(HMGB1、アンフォテリン(amphotehn)としても知られる)を含む、アミロイド沈着の特徴であるβ−シート線維を有するタンパク質及び炎症促進性メディエータが挙げられる。HMGB−1はマウス敗血症の2つのモデルにおいて致死性の後期メディエーターであることが示されており、そしてRAGEとHMGB1のようなリガンドとの相互作用は、敗血症及び他の炎症性疾患の病理発生において重要な役割を果たすと考えられる。
【0004】
RAGEは、多くの細胞型、例えば内皮細胞及び平滑筋細胞、マクロファージ及びリンパ球により、多くの異なる組織(肺、心臓、腎臓、骨格筋及び脳を含む)において発現される。発現は関節リウマチ及び糖尿病性腎症のような慢性炎症性状態において増加する。
【0005】
多数の重大なヒトの障害は、RAGEリガンドの増加した産生、又はRAGE自体の増加した産生と関連する。糖尿病又は他の慢性障害におけるRAGEリガンドの増大したレベルに起因して、この受容体は糖尿病合併症、アルツハイマー病及びさらにいくつかの腫瘍のような様々な範囲の炎症性疾患において原因となる効果を有すると仮定されている。
【0006】
さらに、RAGEはいくつかの慢性疾患と関連付けられており、これは血管損傷の結果と考えられている。病因はリガンド結合を含むと仮定されており、このリガンド結合の際にRAGEは核因子カッパB(NF−κB)の活性化のシグナルを生じる。NF−κBは炎症に関与するいくつかの遺伝子を制御する。興味深いことに、RAGE自体もNF−κBにより上方調節される。条件を考慮すると、大量のRAGEリガンドが存在する場合(例えば糖尿病におけるAGE又はアルツハイマー病におけるアミロイド−β−タンパク質)、これにより正のフィードバックサイクルが確立され、これが慢性の炎症をもたらす。その後この慢性状態が器官損傷又は器官不全にも至る致死的な様式で微小血管及び大血管を変化させると考えられている。RAGEと関連付けられてきた疾患は多くの慢性炎症性疾患であり、これには関節リウマチ及び乾癬性関節炎並びに腸(intestinal bowel)疾患、がん、糖尿病及び糖尿病性腎症、アミロイドーシス、心血管疾患、敗血症、アテローム性硬化症、末梢血管疾患、心筋梗塞、うっ血性心不全、糖尿病性網膜症、糖尿病性神経障害、糖尿病性腎症並びにアルツハイマー病が含まれる。
【0007】
一貫して効果的な治療はこれらの障害の多くについて利用可能ではない。このようなRAGE関連障害のための安全で有効な処置があれば有益だろう。1つのアプローチとしては、RAGEに結合するポリペプチド、例えば抗体の使用が挙げられる。
【0008】
驚くべきことに、多数のモノクローナル抗体(mAB)が現在同定されており、これらは有利な特性を提供する。特に、抗RAGEモノクローナル抗体は、結合定数、交差反応性、ドメインマッピング及びインビトロ機能的データ(競合ELISA)を含む一連の実験データに基づいて同定されている。上記データに基づいて、以下の基準を満たす23mAbを選択した:
結合定数KD≦1.0x10-9M及びkoff≦2.0x10-3s-1
【0009】
当業者に知られているように、抗体の結合特性は可変ドメインによりもたらされる。抗原への結合のために、重鎖からの適切な可変ドメイン及び軽鎖からの共同作用する(co−acting)可変ドメインが存在し、かつ共同作用を可能にするように配置されていることが必須である。可変ドメインはFV領域とも呼ばれ、これは抗原への結合のために最も重要な領域である。より詳細には、それぞれ軽鎖(VL)及び重鎖(VH)上の3つの可変ループが抗原への結合に関与する。これらのループは相補性決定領域(CDR)と呼ばれる。3つのループはVLについてL1、L2及びL3と呼ばれ、そしてVHについてH1、H2及びH3と呼ばれる。しかし、重鎖からの可変ドメイン及び軽鎖からの共同作用する可変ドメインの様々な異なる配置が当該分野で知られている。従って、重鎖からの適切な可変ドメイン及び軽鎖からの共同作用する可変ドメインの同定は本発明に必須である。従って、それらの配列は上記の23の抗体について同定された。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Neeper et al.,1992,J.Biol.Chem.267:14998−15004
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
従って、第一の局面において、本発明は2つのアミノ酸配列又はその機能的に活性な変異体を少なくとも含むポリペプチド又はポリペプチド複合体に関し、ここで最少の2つのアミノ酸配列は、
- 配列番号1及び配列番号24、
- 配列番号2及び配列番号25、
- 配列番号3及び配列番号26、
- 配列番号4及び配列番号27、
- 配列番号5及び配列番号28、
- 配列番号6及び配列番号29、
- 配列番号7及び配列番号30、
- 配列番号8及び配列番号31、
- 配列番号9及び配列番号32、
- 配列番号10及び配列番号33、
- 配列番号11及び配列番号34、
- 配列番号12及び配列番号35、
- 配列番号13及び配列番号36、
- 配列番号14及び配列番号37、
- 配列番号15及び配列番号38、
- 配列番号16及び配列番号39、
- 配列番号17及び配列番号40、
- 配列番号18及び配列番号41、
- 配列番号19及び配列番号42、
- 配列番号20及び配列番号43、
- 配列番号21及び配列番号44、
- 配列番号22及び配列番号45、並びに/又は
- 配列番号23及び配列番号46であり、
ここでこれらの配列は「終末糖化産物受容体」(RAGE)への特異的結合を可能にするように配置されている。
【0012】
本発明によれば、ポリペプチド又はポリペプチド複合体は上で定義される2つのアミノ酸配列又はその機能的に活性な変異体を少なくとも含む。配列番号1〜23の配列は、同定された(配列解析により決定された)抗体の軽鎖の可変ドメインであり、そして配列番号24〜46の配列は重鎖の可変ドメインである。軽鎖の一般的な(prevailing)可変ドメインに対応する重鎖の可変ドメインの配列番号は、軽鎖の上記可変ドメインの配列番号に23を加えることにより決定され得る。例えば、配列番号5の軽鎖の可変ドメインに対応する重鎖の可変ドメインの配列番号は配列番号28(5+23)である。
【0013】
上で定義したように、ポリペプチド又はポリペプチド複合体が2つの共同作用するアミノ酸配列又はその機能的に活性な変異体を含むことが本発明に必須である。それらが適切な様式で配置されている場合、その配置がRAGEへの特異的結合を可能にする。様々な異なる抗体形式がこれまでに開発されるか又は同定されている。形式又は配置がRAGEへの特異的結合を可能にするものである限り、これらのうちのいずれか又はいずれかの他の適切な配置が本発明のポリペプチド又はポリペプチド複合体に使用され得る。
【0014】
上記の配列番号により定義される2つの配列又はその変異体は、1つのポリペプチド中、又はペプチド複合体中に配置され得る。それらが1つのポリペプチド中に配置される場合、2つの配列はリンカー配列、好ましくはペプチドリンカーにより、例えば融合タンパク質として接続され得る。それらがポリペプチド複合体中に配置される場合、2つ又はそれ以上のポリペプチドが、水素結合、イオン結合、ファン・デル・ワールス力、及び疎水性相互作用を含む非共有結合により互いに結合される。上記の配列又はその機能的に活性な変異体は、ポリペプチド若しくはポリペプチド複合体を構成していても、その部分であってもよい。
【0015】
ポリペプチド(タンパク質としても知られる)は、線状の鎖に配置されたα−アミノ酸から形成された有機化合物である。ポリマー鎖においてアミノ酸は隣接するアミノ酸残基のカルボキシル基とアミノ基との間のペプチド結合により一緒に結合されている。一般に、遺伝暗号は20の標準的アミノ酸を規定する。合成後、又は合成の間でさえ、タンパク質中の残基は翻訳後修飾により化学修飾され得、これは物理的及び化学的特性、折り畳み、安定性、活性を変更し、最終的にタンパク質の機能を変更する。
【0016】
本明細書において定義されるポリペプチド又はその複合体は、RAGEを選択的に認識し、そして特異的に結合する。本明細書中における用語「選択的」又は「特異的」の使用は、開示されたポリペプチド又はその複合体が、ポリペプチド/複合体がさらなる異なる特異性をRAGE特異的結合部分に付与するように補足されている(例えば分子が2つの機能に結合するか又は2つの機能をもたらすように設計されている(それらのうち少なくとも1つはRAGEに特異的に結合するためのものである)二重特異性(bispecific)又は二機能性分子におけるような)場合のような特定の例を除いて、RAGE以外への有意な結合を示さないということを指す。特的の実施態様において、RAGE特異的ポリペプチド又はその複合体は、1.2x10-6又はそれ以下のKDでヒトRAGEに結合する。特定の実施態様において、RAGE特異的ポリペプチド又はその複合体は、5x10-7若しくはそれ以下、2x10-7若しくはそれ以下、又は1x10-7若しくはそれ以下のKDでヒトRAGEに結合する。さらなる実施態様において、RAGE特異的ポリペプチド又はその複合体は、1x10-8又はそれ以下のKDでヒトRAGEに結合する。他の実施態様において、RAGE特異的ポリペプチド又はその複合体は、5x10-9若しくはそれ以下、又は1x10-9若しくはそれ以下のKDでヒトRAGEに結合する。さらなる実施態様において、RAGE特異的ポリペプチド又はその複合体は、1x10-10若しくはそれ以下のKD、1x10-11若しくはそれ以下のKD、又は1x10-12若しくはそれ以下のKDでヒトRAGEに結合する。特定の実施態様において、RAGE特異的ポリペプチド又はその複合体は、上記のKDで他のタンパク質に結合しない。
【0017】
KDは、ka(特定の結合分子を対象にしたタンパク質相互作用の会合速度;konとも呼ばれる)に対するkd(特定の結合分子を対象にしたタンパク質相互作用の解離速度;koffとも呼ばれる)の比、又はモル濃度(M)で表されるkd/kaから得られた解離定数を指す。KD値は当該分野で十分確立された方法を使用して決定され得る。結合分子のKDを決定するために好ましい方法は、表面プラズモン共鳴、例えばBiacore(TM)(GE Healthcare Life Sciences)システムのようなバイオセンサーシステムを使用することによる(実施例5及び表2を参照のこと)。別の方法を図2及び実施例2に示す。
【0018】
RAGE特異的ポリペプチド又はその複合体は、用量依存的にRAGE/リガンド相互作用を阻害することが示されている(図4、実施例3及び4並びに表1を参照のこと)。従って、RAGE特異的ポリペプチド又はその複合体は、RAGEへのリガンド結合に対抗するそれらの能力により特徴付けられ得る。任意のRAGE特異的ポリペプチド又はその複合体の阻害の程度は、コントロールとの統計比較で、又は当該分野で利用可能ないずれかの代替の方法により定量的に測定され得る。特定の実施態様において、阻害は少なくとも約10%の阻害である。他の実施態様において、阻害は少なくとも20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、又は95%である。
【0019】
ポリペプチド又はその複合体は上記の配列の機能的に活性な変異体も含み得る。本発明の機能的に活性な変異体は、完全なタンパク質により示される活性と同様の生物学的活性(RAGEに結合する能力、及び場合によりRAGEを阻害する能力を含む)により特徴づけられる。変異体の活性(例えば場合によりKDとして表される結合活性)が、配列変更のないペプチド/複合体の活性の少なくとも10%、好ましくは少なくとも25%、より好ましくは少なくとも50%、なおより好ましくは少なくとも70%、さらにより好ましくは少なくとも80%、とりわけ少なくとも90%、特に少なくとも95%、最も好ましくは少なくとも99%に達する場合に、変異体は本発明の文脈において機能的に活性である。RAGEに対する結合活性を決定するために適した方法は実施例に示される。機能的に活性な変異体は、限定された数のアミノ酸置換、欠失及び/又は挿入により得られ得る。
【0020】
本発明の好ましい実施態様において、配列番号1〜23のいずれか配列の機能的に活性な変異体は、配列番号1〜23のそれぞれの配列の相補性決定領域L3(CDR L3)、好ましくはCDR L1、CDR L2及びCDR L3を含み;かつ/又は配列番号24〜46の配列のいずれかの機能的に活性な変異体は、配列番号24〜46のそれぞれの配列の相補性決定領域H3(CDR H3)、好ましくはCDR H1、CDR H2及びCDR H3を含む。最も好ましい実施態様において、配列番号1〜23の配列のいずれかの機能的に活性な変異体は、配列番号1〜23のそれぞれの配列のCDR L1、CDR L2及びCDR L3を含み;かつ配列番号24〜46の配列のいずれかの機能的に活性な変異体は、配列番号24〜46のそれぞれの配列のCDR H1、CDR H2及びCDR H3を含む。あるいは、これらの配列の1つは、いずれの配列変更も含まない配列番号1〜46であってもよく、そしてその他は本明細書で定義される変異体であってもよい。
【0021】
可変領域の配列においてCDRを同定する異なる方法が記載されている。さらに、一連のソフトウェアプログラムが公知であり、これはこの目的のために使用され得る。しかし、以下の一連の規則が配列番号1〜46の配列においてCDRを同定するためにこれらの配列に適用された(www.bioinf.org.uk;MacCallum et al.、1996、J. Mol. Biol. 262 (5):732−745;Antibody Engineering Lab Manual、Chapter 「Protein Sequence and Structure Analysis of Antibody Variable Domains」、Ed.:Duebel、S. and Kontermann、R.、Springer−Verlag、Heidelbergも参照のこと)。示されたCDRと共に配列を図1に示す。
【0022】
CDR−L1
開始 およそ残基24
前の残基 常にCys
後の残基 常にTrp。典型的にはTrp−Tyr−GlnであるがTrp−Leu−Gln、Trp−Phe−Gln、Trp−Tyr−Leuもある。
長さ 10〜17残基
CDR−L2
開始 常にL1の終点の後16残基
前の残基 通常はIle−Tyrであるが、Val−Tyr、Ile−Lys、Ile−Pheもある。
長さ 常に7残基
CDR−L3
開始 常にL2の終点の後33残基
前の残基 常にCys
後の残基 常にPhe−Gly−XXX−Gly (配列番号47)
長さ 7〜11残基
CDR−H1
開始 およそ26残基(常にCysの4つ後)
前の残基 常にCys−XXX−XXX−XXX (配列番号48)
後の残基 常にTrp。典型的にはTrp−Valであるが、Trp−Ile、Trp−Alaもある。
長さ 10〜12残基
CDR−H2
開始 常にCDR−H1の終点の後15残基
前の残基 典型的にはLeu−Glu−Trp−Ile−Gly (配列番号49)
しかし多数の変動
後の残基 Lys/Arg−Leu/Ile/Val/Phe/Thr/Ala−Thr/Ser/Ile/Ala
長さ 9〜12残基
CDR−H3
開始 常にCDR−H2の終点の後33残基(常にCysの2つ後)
前の残基 常にCys−XXX−XXX(典型的にはCys−Ala−Arg)
後の残基 常にTrp−Gly−XXX−Gly (配列番号50)
長さ 3〜25残基
【0023】
上で詳述したように、VH及びVL内には抗体によって最も多くの配列多様性を示す超可変領域、及びより多様性が少ないフレームワーク領域が存在する。折り畳みにより、超可変領域は抗原結合ポケットを共に形成する。抗体と抗原との間で最も緊密に接触したこれらの部位は、抗体の特異性を媒介する抗体のCDRである。従って、これらは抗原結合にとって特に重要である。機能的に活性な変異体が3つのCDR全てを含むことが好ましいが、いくつかの抗体についてはCDR−L3及びCDR−H3が特性をもたらすために十分であるということが見出されている。従って、一実施態様において、CDR−L3及びCDR−H3の存在のみが必須である。いずれの場合も、CDRは抗原(ここではRAGE)への特異的結合を可能にするように配置されていなければならない。
【0024】
本発明の好ましい実施態様において、CDR(CDR−L3及び−H3;又はCDR−L1、−L2、−L3、−H1、−H2及び−H3)は、一般的な可変ドメインのフレームワーク内に配置され、すなわちL1、L2及びL3はVLのフレームワーク内に配置され、そしてH1、H2及びH3はVHのフレームワーク内に配置される。このことは、任意の適切な方法により同定されるか又は図1に示されるCDRが示される近隣部位(neighborhood)から取り除かれて別の(第二の)可変ドメインに移されて、それにより第二の可変ドメインのCDRを置換し得るということを意味する。説明のために、配列番号1及び24のCDRは配列番号2及び27のCDRを置き換えるために使用され得る。さらに、図1に示されていない可変ドメインのフレームワークを使用してもよい。様々な可変ドメイン又は抗体配列が当該分野で公知であり、この目的のために使用され得る。例えば、目的のCDRが挿入された可変ドメインは、いずれかの生殖系又は再配列されたヒト可変ドメインから得られ得る。可変ドメインは合成的にも製造され得る。組み換えDNA技術を使用してCDR領域をそれぞれの可変ドメインに導入することができる。これを達成することができる1つの手段はMarks et al.、1992、Bio/Technology 10:779−783に記載される。可変重ドメインは、可変軽ドメインと対を形成して抗原結合部位を生じ得る。さらに、独立領域(例えば、可変重ドメインだけ)を抗原に結合させるために使用してもよい。
【0025】
最後に、別の実施態様において、CDRは、近隣部位がRAGEへの特異的結合を可能にするようにCDRを配置している限り、非可変ドメイン近隣部位に移され得る。
【0026】
本発明のポリペプチド又はポリペプチド複合体の好ましい実施態様において、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22及び/若しくは配列番号23のアミノ酸配列又はその機能的に活性な変異体は軽鎖の可変ドメイン(VL)である。
【0027】
あるいは又はさらに、配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号28、配列番号29、配列番号30、配列番号31、配列番号32、配列番号33、配列番号34、配列番号35、配列番号36、配列番号37、配列番号38、配列番号39、配列番号40、配列番号41、配列番号42、配列番号43、配列番号44、配列番号45及び/若しくは配列番号46のアミノ酸配列又はその機能的に活性な変異体は、重鎖の可変ドメイン(VH)である。
【0028】
本発明の好ましい実施態様において、ポリペプチド又はポリペプチド複合体は抗体である。
【0029】
天然に存在する抗体は、基本的な構造が共通している、免疫グロブリンとも呼ばれる球状血漿タンパク質(約150kDa)である。それらはアミノ酸残基に付加された糖鎖を有するので糖タンパク質である。各抗体の基本的な機能単位は免疫グロブリン(Ig)モノマー(Ig単位を1つだけ含む)であり;分泌された抗体は、IgAのように2つのIg単位を有するダイマーであっても、硬骨魚IgMのような4つのIg単位を有するテトラマーであっても、哺乳動物IgMのような5つのIg単位を有するペンタマーであってもよい。本発明において、適切な形式の例には、IgA、IgD、IgE、IgG及びIgMとして知られる抗体アイソタイプを含む天然に存在する抗体の形式が含まれる。
【0030】
Igモノマーは4つのポリペプチド鎖からなる「Y」字型の分子である;システイン残基間のジスルフィド結合により接続された2つの同一の重鎖及び2つの同一の軽鎖。各重鎖は約440アミノ酸長であり;各軽鎖は約220アミノ酸長である。重鎖及び軽鎖はそれぞれ、それらの折り畳みを安定化する鎖間ジスルフィド結合を含む。各鎖はIgドメインと呼ばれる構造ドメインから構成される。これらのドメインは約70〜110アミノ酸を含み、そしてそれらのサイズ及び機能にしたがって異なるカテゴリー(例えば、可変又はV、及び定常又はC)に分類される。それらは特徴的な免疫グロブリンフォールドを有し、ここでは2つのベータシートが保存的システイン及び他の荷電アミノ酸の間の相互作用により結びつけられて「サンドウィッチ」形状を生じる。
【0031】
α、δ、ε、γ、及びμで示される5つの型の哺乳動物Ig重鎖が存在する。現在の重鎖の型は抗体のアイソタイプを定義しており;これらの鎖はそれぞれIgA、IgD、IgE、IgG、及びIgM抗体で見られる。
【0032】
異なる重鎖はサイズ及び組成が異なる;α及びγは約450個のアミノ酸を含み、そしてδは約500個のアミノ酸を含むが、μ及びεは約550個のアミノ酸を含む。各重鎖は定常領域(CH)及び可変領域(VH)の2つの領域を有する。ある種では定常領域が同じアイソタイプの全ての抗体において同一であるが、異なるアイソタイプの抗体では異なる。重鎖γ、α及びδは3つのタンデムIgドメイン、及び追加の柔軟性のためのヒンジ領域から構成される定常領域を有し;重鎖μ及びεは4つの免疫グロブリンドメインから構成される定常領域を有する。重鎖の可変領域は異なるB細胞により産生された抗体において異なるが、単一のB細胞又はB細胞クローンにより産生された全ての抗体について同じである。各重鎖の可変領域は約110アミノ酸長であり、そして単一のIgドメインから構成される。
【0033】
哺乳動物では、λ及びκで示される2つの型の免疫グロブリン軽鎖が存在する。軽鎖は2つの連続したドメインを有する:1つの定常ドメイン(CL)及び1つの可変ドメイン(VL)。軽鎖のおよその長さは211〜217アミノ酸である。各抗体は常に同一である2つの軽鎖を含む;哺乳動物において抗体1つにつき軽鎖の1つの型のみ、κ又はλが存在する。軽鎖の他の型(例えばι鎖)が軟骨魚類(Chondrichthyes)及び硬骨魚類(Teleostei)のような下等脊椎動物において見られる。
【0034】
天然に存在する抗体に加えて、抗体フラグメントを含む人工の抗体形式が開発されている。それらのいくつかが以下に記載される。しかし、上記のポリペプチド(単数又は複数)を含むか上記のポリペプチド(単数又は複数)からなり、かつRAGEへの特異的結合を可能にするいずれの他の抗体形式も本発明に包含される。
【0035】
全ての抗体の一般的構造は非常に類似しているが、所定の抗体の独特の特性は、上で詳述したように、可変(V)領域により決定される。より詳細には、可変ループ、それぞれ軽鎖(VL)の3つ及び重鎖(VH)上の3つが、抗原への結合、すなわちその抗原特異性に関与する。これらのループは相補性決定領域(CDR)と呼ばれる。VH及びVLドメインの両方からのCDRが抗原結合部位に寄与するので、最終的な抗原特異性を決定するのはいずれか単独ではなく重鎖及び軽鎖の組み合わせである。
【0036】
従って、本明細書で使用される用語「抗体」は、天然に存在する抗体と構造的類似性を有し、かつRAGEに特異的に結合することができるいずれかのポリペプチドを意味し、ここで結合特異性は、例えば図1に示されるように、配列番号1〜46におけるCDRにより決定される。それ故、「抗体」は、限定されないが、全長抗体若しくは全抗体、抗原結合フラグメント(抗体構造から物理的又は概念的に誘導されたフラグメント)、前述のいずれかの誘導体、キメラ分子、前述のいずれかと別のポリペプチドとの融合、又はRAGEに選択的に結合し、そして場合によりRAGEの機能を阻害する代替の構造/組成物を含む、RAGEに特異的に結合する免疫グロブリン由来構造に関することを意図される。抗体は少なくとも1つの抗原結合フラグメントを含むポリペプチドであってもよい。抗原結合フラグメントは少なくとも、両方のドメインが共に特定の抗原に結合することができる様式で配置された、重鎖の可変ドメイン及び軽鎖の可変ドメインからなる。
【0037】
「全長」又は「完全」抗体は、(1)重鎖に関して、可変領域並びに3つのドメインCH1、CH2及びCH3を含む重鎖定常領域;並びに(2)軽鎖に関して、軽鎖可変領域及び1つのドメインCLを含む軽鎖定常領域を含む、ジスルフィド結合により相互接続された2つの重鎖(H)及び2つの軽鎖(L)を含むタンパク質を指す。用語「完全抗体」に関しては、各ドメインは突然変異、欠失又は挿入のようなさらなる修飾を含み得るが全体のドメイン構造を変化しない、天然に存在する抗体の典型的な全体のドメイン構造を有する(すなわち、3つ又は4つの定常ドメインの重鎖及び1つの定常ドメインの軽鎖、さらにはそれぞれの可変ドメインを含む)抗体を意味する。
【0038】
「抗体フラグメント」もまた、上で定義されたような少なくとも1つの抗原結合フラグメントを含み、かつそのフラグメントが誘導された完全抗体と本質的に同じ機能及び特異性を示す。パパインを用いた限定タンパク質分解はIgプロトタイプを3つのフラグメントに切断する。2つの同一のアミノ末端フラグメント(それぞれ1つのL鎖全体及びH鎖のおよそ半分を含む)は抗原結合フラグメント(Fab)である。サイズは似ているがそれらの鎖間ジスルフィド結合と共に両方の重鎖のカルボキシル末端の半分を含有する第三のフラグメントは、結晶性フラグメント(Fc)である。Fcは炭水化物、補体結合部位、及びFcR結合部位を含む。限定ペプシン消化により、両方のFab要素部分及びヒンジ領域(H−H鎖間ジスルフィド結合を含む)を含む単一のF(ab')2フラグメントが得られる。F(ab')2は抗原結合に関して二価である。F(ab')2のジスルフィド結合はFab'を得るために切断され得る。さらに、重鎖及び軽鎖の可変領域は一緒に融合されて単鎖可変フラグメント(scFv)を形成し得る。
【0039】
フルサイズの抗体の第一世代はいくつかの問題を示したので、第二世代の抗体の多くは抗体のフラグメントのみを含んでいた。可変ドメイン(Fv)は、1つのVL及び1つのVHからなるインタクトな抗原結合ドメインを有する最小のフラグメントである。結合ドメインのみを含むこのようなフラグメントは、酵素的アプローチ又は例えば細菌細胞及び真核細胞における関連遺伝子フラグメントの発現により生成され得る。異なるアプローチを使用することができる。例えばFvフラグメント単独、又はFv及び第一の定常ドメインを含む「Y」次の上腕の一方を含む「Fab」フラグメントのいずれか。これらのフラグメントは通常、2つの鎖の間にポリペプチド連結を導入して単鎖Fv(scFv)が生じることにより安定化される。あるいは、ジスルフィド結合Fv(dsFv)フラグメントを使用してもよい。フラグメントの結合ドメインは、全長抗体を生じるためにいずれかの定常ドメインと組み合わされても、他のタンパク質及びポリペプチドと融合されてもよい。
【0040】
組み換え抗体フラグメントは単鎖Fv(scFv)フラグメントである。一般に、これはその抗原に対して高い親和性を有し、そして様々な宿主において発現され得る。これら及び他の特性がscFvフラグメントを医薬において適用可能なだけでなく、バイオテクノロジー適用に可能性のあるものにしている。上で詳述したように、scFvフラグメントにおいてVH及びVLドメインは親水性で柔軟性のペプチドリンカーで連結されており、これにより発現及び折り畳み効率が改善される。通常は、約15個のアミノ酸のリンカーが使用され、それらのうち(Gly4Ser)3リンカーが最も頻繁に使用されてきた。scFv分子は使用されるリンカーに依存して、タンパク質分解で容易に分解され得る。遺伝子工学技術の発展と共に、これらの制限は機能及び安定性の改善に集中した研究により事実上克服することができた。例はVH−VLダイマーが鎖間ジスルフィド結合により安定化される場合のジスルフィド安定化(又はジスルフィド結合)Fvフラグメントの生成である。システインはVL及びVHドメインの間の連結部分に導入されてジスルフィド架橋を形成し、これが2つのドメインをまとめている。
【0041】
scFvの解離はモノマーscFvを生じ、これがダイマー(二特異性抗体(diabodies))、トリマー(三特異性抗体(triabodies))又はより大きな凝集体、例えばTandAbs及びフレキシボディ(Flexibodies)に複合体化し得る。
【0042】
2つの結合ドメインを有する抗体は、2つのscFvの単純なポリペプチド連結により((scFv)2)又は2つのモノマーの二量体化(二特異性抗体)により生成され得る。最も単純な設計は、同じであっても、類似であっても(二価二特異性抗体)、又は異なる抗原に対する特異性を有していてもよい(二重特異性二特異性抗体(bispecific diabodies))いずれかの、2つの機能的抗原結合ドメインを有する二特異性抗体である。これらの二重特異性抗体は、例えば標的細胞に新しいエフェクター機能を入れること(例えば細胞傷害性T細胞)を可能にし、これによりこれらは医薬における適用に非常に有用なものとなっている。
【0043】
近年、重鎖の4つの可変ドメイン及び軽鎖の4つの可変ドメインを含む抗体形式が開発された。これらの例としては四価二重特異性抗体(TandAb及びフレキシボディ、Affimed Therapeutics AG、Heidelberg. Germany)が挙げられる。二重特異性二特異性抗体と対照的に、二重特異性TandAbは1つのポリペプチドのみからなるホモダイマーである。2つの異なる鎖のために、二特異性抗体は3つの異なるダイマーを構築し得、これらのうち1つだけが機能性である。従って、この均一な生成物を製造して精製することがより単純でかつより安価である。さらに、TandAbは通常、より良好な結合特性(2倍の数の結合部位を有する)及びインビボでの増加した安定性を示す。フレキシボディは、scFvと二特異性抗体マルチマーモチーフとの組み合わせであり、細胞表面上で互いからかなり離れている2つの分子を結合するための高度な柔軟性を有する多価分子を生じる。2つより多くの機能的抗原結合ドメインが存在し、かつ異なる抗原に対する特異性を有する場合、抗体は多重特異性である。
【0044】
まとめると、特定の開示される配列が挿入されていても、別の方法でその必須の部分を形成していてもよい特定の免疫グロブリンとしては、限定されないが、本発明の特定の実施態様を形成する以下の抗体分子が挙げられる:Fab(可変軽(VL)、可変重(VH)、定常軽(CL)及び定常重1(CHl)ドメインを含む一価フラグメント)、F(ab')2(ジスルフィド架橋により連結されるかまたあるいはヒンジ領域における2つのFabフラグメントを含む二価フラグメント)、Fv(VL及びVHドメイン)、scFv(VL及びVHがリンカー、例えばペプチドリンカーで結合されている単鎖Fv)、二重特異性抗体分子(その抗体とは異なる結合特異性を有する第二の機能的部分(限定されないが、別のペプチド又はタンパク質、例えば抗体又は受容体リガンド)に連結された本明細書に開示されるポリペプチドを含む抗体分子)、二重特異性単鎖Fvダイマー、二特異性抗体、三特異性抗体、四特異性、ミニ抗体(CH3に結合されたscFv)。
【0045】
Fv、scFv、二特異性抗体分子又はドメイン抗体(Domantis)を含むがこれらに限定されない特定の抗体分子は、ジスルフィド架橋を組み込んでVH及びVLドメインを一列に並べることにより安定化され得る。二重特異性抗体は従来の技術を使用して製造され得、その具体的な方法はとしては、化学的又はハイブリッドハイブリドーマからの製造、並びにBiTETM技術(ペプチドリンカーを用いて異なる特異性の抗原結合領域を有する分子)及び knobs−into−holes技術を含むがこれらに限定されない他の技術が挙げられる。
【0046】
従って、抗体はFab、Fab'、F(ab')2、Fv、ジスルフィド結合Fv、scFv、(scFv)2、二価抗体、二重特異性抗体、多特異性抗体、二特異性抗体、三特異性抗体、四特異性抗体又はミニ抗体であり得る。
【0047】
別の好ましい実施態様において、抗体はモノクローナル抗体、キメラ抗体又はヒト化抗体である。モノクローナル抗体は、単一の親細胞の全てのクローンである1つの型の免疫細胞により産生されるために同一である一特異性抗体である。キメラ抗体は、1つの種の免疫グロブリンの少なくとも1つの領域が、その免疫原性(immunogenecity)を低減するために遺伝子工学により別の種の免疫グロブリンの別の領域に融合された抗体である。例えばマウスVL及びVH領域はヒト免疫グロブリンの残りの部分に融合され得る。特定の型のキメラ抗体はヒト化抗体である。ヒト化抗体は、非ヒト抗体のCDRをコードするDNAをヒト抗体を産生するDNAと統合することにより製造される。次いで得られたDNA構築物を、単にCDRが非ヒトであるため通常は非ヒト親抗体又はキメラ抗体ほど免疫原性でない抗体を発現及び産生するために使用することができる。
【0048】
本発明の好ましい実施態様において、ポリペプチド又はポリペプチド複合体は、ヒトIgM定常ドメイン、ヒトIgGl定常ドメイン、ヒトIgG2定常ドメイン、ヒトIgG3定常ドメイン、ドメイン、ヒトIgG4定常ドメイン、ヒトIgE定常ドメイン、及びヒトIgA定常ドメインからなる群より選択される重鎖免疫グロブリン定常ドメインを含む。
【0049】
本発明の抗体を含む文脈において上で詳述したように、天然に存在する抗体の各重鎖は2つの領域、定常領域及び可変領域を有する。5つの型の哺乳動物免疫グロブリン重鎖が存在する:γ、δ、α、μ及びε、これらはそれぞれ免疫グロブリンIgM、IgD、IgG、IgA及びIgEのクラスを定義する。
【0050】
血清中のそれらの存在量の順で(IgG1が最も豊富である)名付けられた、ヒトにおける4つのIgGサブクラス(IgG1、2、3及び4)が存在する(There are here are)。IgGサブクラスのそれらのFc領域間には約95%の類似性が存在するが、ヒンジ領域の構造は比較的異なる。Fabアーム(抗原結合フラグメント)と両方の重鎖の2つのカルボキシ末端ドメインCH2及びCH3との間のこの領域は、分子の柔軟性を決定する。上方のヒンジセグメント(アミノ末端に向かって)は、Fabアームの間の角度の可変性(Fab−Fab柔軟性)、さらには各個々のFabの回転柔軟性を可能にする。下方ヒンジ領域(カルボキシ末端に向かって)の柔軟性は、Fc領域に対するFabアームの位置(Fab−Fc柔軟性)を直接的に決定する。ヒンジ依存性Fab−Fab及びFab−Fc柔軟性は、補体活性化及びFc受容体結合のようなさらなるエフェクター機能を誘発する際に重要であり得る。従って、ヒンジ領域の構造は、4つのIgGクラスの各々にそれらの独特な生物学的プロフィールを与える。
【0051】
ヒンジ領域の長さ及び柔軟性はIgGサブクラスによって異なる。IgG1のヒンジ領域はアミノ酸216−231を含み、そしてそれは自由な柔軟性があるので、Fabフラグメントはそれらの対称軸の周りで回転することができ、そして2つの重鎖間ジスルフィド架橋の最初の方を中心にした球内で移動することができる。IgG2は、12個のアミノ酸残基と4つのジスルフィド架橋を含む、IgG1より短いヒンジを有する。IgG2のヒンジ領域にはグリシン残基がなく、比較的短く、そして追加の重鎖間ジスルフィド架橋により安定化された堅いポリプロリン二重らせんを含む。これらの特性はIgG2分子の柔軟性を制限する。IgG3は、62個のアミノ酸を含み(21個のプロリン及び11個のシステインを含む)、柔軟性のないポリプロリン二重らせんを形成する、その独特な伸長したヒンジ領域により他のサブクラスと異なる。IgG3において、FabフラグメントはFcフラグメントと比較的離れており、分子をより柔軟性にしている。IgG3における長いヒンジは他のサブクラスと比較してより高いその分子量の原因でもある。IgG4のヒンジ領域はIgG1のヒンジ領域より短く、そしてその柔軟性はIgG1とIgG2との中間である。
【0052】
本発明の好ましい実施態様において、配列番号(SEQ OID NO:)1〜46の上記の配列のいずれかの機能的に活性な変異体を、示される配列の代わりに使用してもよい。例えば、変異体は、変異体が
a) 配列番号1〜46のいずれかのアミノ酸配列の、少なくとも60%、好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%、さらにより好ましくは少なくとも90%、なおより好ましくは少なくとも95%、最も好ましくは99%からなる機能的に活性なフラグメントであること;
b) 配列番号1〜46のいずれかのアミノ酸配列に対して少なくとも60%、好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%、さらにより好ましくは少なくとも90%、なおより好ましくは少なくとも95%、最も好ましくは99%の配列同一性を有する機能的に活性な変異体であること;又は
c) 配列番号1〜46のいずれかのアミノ酸配列、並びに1〜50個の追加のアミノ酸残基、好ましくは1〜40個、より好ましくは1〜30個、なおより好ましくは多くとも1〜25個、さらにより好ましくは多くとも1〜10個、最も好ましくは1、2、3、4又は5個の追加のアミノ酸残基からなること
で定義され得る。
【0053】
a)で定義されるフラグメントは、配列番号1〜46の配列のいずれかから1つ又はそれ以上の欠失により誘導されることを特徴とする。欠失はC末端、N末端かつ/又は内部であってよい。好ましくはフラグメントは、1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10、より好ましくは1、2、3、4又は5、なおより好ましくは1、2又は3、さらにより好ましくは1又は2、最も好ましくは1つの欠失により得られる。本発明の機能的に活性なフラグメントは、RAGEに結合する能力、及び場合によりRAGEを阻害する能力を含む、完全タンパク質により示される活性と類似した生物学的活性を有することにより特徴づけられる。抗原のフラグメントは、フラグメントの活性が配列変更のない抗原の活性の少なくとも10%、好ましくは少なくとも25%、より好ましくは少なくとも50%、なおより好ましくは少なくとも70%、さらにより好ましくは少なくとも80%、特に少なくとも90%、とりわけ少なくとも95%、最も好ましくは少なくとも99%に達する場合に、本発明の文脈において機能的に活性である。RAGEに対する結合活性を決定するための適切な方法を実施例に示す。
【0054】
b)で定義される変異体は、配列番号1〜46の配列のいずれかから、欠失、付加及び/又は置換を含む1つ又はそれ以上のアミノ酸修飾により誘導されることを特徴とする。修飾はC末端、N末端及び/又は内部であり得る。好ましくはフラグメントは、1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10、より好ましくは1、2、3、4又は5、なおより好ましくは1、2又は3、さらにより好ましくは1又は2、最も好ましくは1つの修飾により得られる。本発明の機能的に活性な変異体は、RAGEに結合する能力、及び場合によりRAGEを阻害する能力を含む、完全タンパク質により示される活性に類似した生物学的活性を有することにより特徴づけられる。抗原のフラグメントは、フラグメントの活性が配列変更のない抗原の活性の少なくとも10%、好ましくは少なくとも25%、より好ましくは少なくとも50%、なおより好ましくは少なくとも70%、さらにより好ましくは少なくとも80%、特に少なくとも90%、とりわけ少なくとも95%、最も好ましくは少なくとも99%に達する場合に本発明の文脈において機能的に活性である。
【0055】
c)で定義される変異体は、配列番号1〜46のいずれかのアミノ酸配列及び1〜50個の追加のアミノ酸残基からなることを特徴とする。付加はC末端、N末端及び/又は内部であり得る。好ましくは変異体は、1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10、より好ましくは1、2、3、4又は5、なおより好ましくは1、2又は3、さらにより好ましくは1又は2、最も好ましくは1つの付加により得られる。機能的に活性な変異体は上記のようにさらに定義される(b)の変異体を参照のこと)。
【0056】
(b)及び/又は(c)の追加のアミノ酸残基は、L−及び/又はD−アミノ酸、天然に存在するアミノ酸ならびにその他のもののいずれでもよい、いずれかのアミノ酸であり得る。好ましくは、アミノ酸はいずれかの天然に存在するアミノ酸、例えばアラニン、システイン、アスパラギン酸、グルタミン酸、フェニルアラニン、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、リジン、ロイシン、メチオニン、アスパラギン、プロリン、グルタミン、アルギニン、セリン、トレオニン、バリン、トリプトファン又はチロシンである。
【0057】
しかし、アミノ酸は修飾アミノ酸でも異常アミノ酸でもよい。これらの例は、2−アミノアジピン酸、3−アミノアジピン酸、ベータ−アラニン、2−アミノ酪酸、4−アミノ酪酸、6−アミノカプロン酸、2−アミノヘプタン酸、2−アミノイソ酪酸、3−アミノイソ酪酸、2−アミノピメリン酸、2,4−ジアミノ酪酸、デスモシン、2,2’−ジアミノピメリン酸、2,3−ジアミノプロピオン酸、N−エチルグリシン(ethylglycinem) N−エチルアスパラギン、ヒドロキシリジン、アロ−ヒドロキシリジン、3−ヒドロキシプロリン(hydroxyproloine)、4−ヒドロキシプロリン(hydroxyproloine)、イソデスモシン、アロ−イソロイシン、N−メチルグリシン、N−メチルイソロイシン、6−N−メチルリジン、N−メチルバリン、ノルバリン、ノルロイシン又はオルニチンである。さらに、アミノ酸は翻訳後修飾のような修飾をうけるかもしれない。修飾の例としては、アセチル化、アミド化、ブロッキング、ホルミル化、 −カルボキシグルタミン酸ヒドロキシル化、グリコシル化、メチル化、リン酸化及び硫酸化(sulfatation)が挙げられる。1つより多くの付加又は異種アミノ酸残基がペプチド中に存在する場合、それらのアミノ酸残基は互いに同じであっても異なってもよい。
【0058】
配列同一性のパーセントは例えば配列アラインメントにより決定することができる。比較のための配列のアラインメントの方法は当該分野で周知である。様々なプログラム及びアラインメントアルゴリズムが例えばSmith and Waterman、Adv. Appl.Math.2:482、1981又はPearson and Lipman、Proc.Natl.Acad.Sci.US.A.85:2444、1988に記載されている。
【0059】
NCBI Basic Local Alignment Search Tool (BLAST)(Altschul et al.、J. Mol. Biol. 215:403−410、1990)は、National Center for Biotechnology Information (NCBI、Bethesda、MD)を含むいくつかの供給業者から及びインターネット上で、配列解析プログラムblastp、blastn、blastx、tblastn及びtblastxと関連した使用のために入手可能である。配列番号1〜46の配列のいずれかの変異体は、典型的にはNCBI Blast 2.0、デフォルトパラメータに設定されたギャップblastpを使用して特徴付けされる。少なくとも30個のアミノ酸のアミノ酸配列の比較のために、デフォルトパラメーター(ギャップ存在コスト(gap existence cost)11、及び残基あたりのギャップコスト(per residue gap cost)1)に設定されたデフォルトBLOSUM62マトリックスを使用してBlast 2 sequences機能を使用する。短いペプチド(約30アミノ酸より少ない)を整列させる場合、アラインメントはBlast 2 sequences機能を使用して、デフォルトパラメーター(開始ギャップ9、伸長ギャップ1ペナルティー)に設定されたPAM30マトリックスを使用して行われる。15アミノ酸又はそれ以下のような短い領域に対して配列同一性を決定するための方法は、National Center for Biotechnology Information(Bethesda、Maryland)により維持されるウェブサイトに記載されている。
【0060】
より好ましい実施態様において、上で定義される機能的に活性な変異体は、配列番号1〜46のいずれかのアミノ酸配列から、配列番号1〜46の1つ又はそれ以上の保存的アミノ酸置換により誘導される。
【0061】
当業者には理解されるように、保存的アミノ酸置換は、アミン酸残基を類似か又は(意図された目的のために)より良好な機能及び/又は化学的特徴を付与するアミノ酸残基で置き換える置換である。例えば、保存的アミノ酸置換はしばしば、アミノ酸残基が類似した側鎖を有するアミノ酸残基と置き換えられる置換である。類似した側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーは当該分野で規定されている。これらのファミリーとしては、塩基性側鎖を有するアミノ酸(例えば、リジン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖を有するアミノ酸(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、非荷電極性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、トレオニン、チロシン、システイン、トリプトファン)、非極性側鎖を有するアミノ酸(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン)、ベータ−分枝側鎖を有するアミノ酸(例えば、トレオニン、バリン、イソロイシン)及び芳香族側鎖を有するアミノ酸(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)が挙げられる。このような修飾は、結合又は機能的阻害特性を改善し得るが、ポリペプチド(複合体)のそのような特性を有意に低減も変更もしないように設計される。置換を作製する目的は重要ではなく、これらには、決して限定されないが、分子の構造、分子の電荷若しくは疎水性、又は分子の大きさをよりよく維持又は増強できる残基と置き換えることが含まれ得る。例えば、単にあまり望ましくない残基を同じ極性又は電荷の残基と置換することが望まれるかもしれない。このような修飾は、当該分野で公知の標準的な技術、例えば部位特異的変異誘発及びPCR媒介変異誘発により導入することができる。それにより当業者が保存的アミノ酸置換を達成する1つの特定の手段はアラニンスキャニング変異誘発である。次いで変更されたポリペプチドを、当該分野で利用可能であるか又は実施例に記載される機能的アッセイを使用して保持されているかまたはより良好な機能について試験する。本発明のより好ましい実施態様において、配列番号1〜46の配列のいずれかにおける保存的置換の数は、多くとも20、19、18、27、26、15、14、13、12又は11、好ましくは多くとも10、9、8、7又は6、特に多くとも5、4、3、とりわけ2又は1である。
【0062】
本発明の別の局面は、本発明に従うポリペプチド又はポリペプチド複合体をコードする1つ又はそれ以上の核酸に関する。本発明の核酸分子は、例えばクローニングにより得られたか、又は化学的合成技術により、又はそれらの組み合わせにより製造された、RNAの形態、例えばmRNA若しくはcRNA、又は例えばcDNA及びゲノムDNAを含むDNAの形態であり得る。DNAは三本鎖でも、二本鎖でも、一本鎖でもよい。一本鎖DNAはセンス鎖としても知られるコード鎖であってもよいし、アンチセンス鎖とも呼ばれる非コード鎖であってもよい。本明細書で使用される核酸分子はまた、とりわけ一本鎖及び二本鎖DNA、一本鎖及び二本鎖RNAの混合物であるDNA、並びに一本鎖及び二本鎖領域の混合物であるRNA、一本鎖であっても、より典型的には二本鎖であっても、三本鎖でもあっても、又は一本鎖及び二本鎖領域の混合物であってもよいDNA及びRNAを含むハイブリッド分子も指す。さらに、本明細書で使用される核酸分子は、RNA又はDNA又はRNA及びDNAの両方を含む三本鎖領域を指す。
【0063】
核酸はまた、遺伝暗号の縮重の結果である配列も含む。20の天然アミノ酸が存在し、これらの大部分は1つより多くのコドンにより指定される。従って、上で定義されるペプチドを生じる全てのヌクレオチド配列は本発明に含まれる。
【0064】
さらに、核酸は1つ又はそれ以上のの修飾塩基を含み得る。このような核酸はまた、例えばリボース−リン酸骨格において、生理環境におけるこのような分子の安定性及び半減期を増大させる修飾を含んでいてもよい。従って、安定性又は他の理由のために修飾された骨格を有するDNA又はRNAは、その特徴が本明細書において意図されるものであるので「核酸分子」である。さらに、二例だけを挙げると、イノシンのような異常塩基又はトリチル化塩基のような修飾塩基を含むDNA又はRNAは、本発明の文脈内において核酸分子である。当然のことながら、当業者に公知の多くの有用な目的に役立つ多種多様な修飾がDNA及びRNAに行われてきた。本明細書で使用される用語核酸分子はそのままで、このような化学的、酵素的又は代謝的に修飾された形態の核酸分子、さらにはとりわけウイルス及び細胞(単純な細胞及び複雑な細胞を含む)に特徴的なDNA及びRNAの化学的形態を包含する。例えば、核酸によりコードされるポリペプチドに影響を与えないヌクレオチド置換を作製することができ、従って上で定義される抗原又はそのフラグメント若しくは機能的に活性な変異体をコードするいずれの核酸分子も本発明に包含される。
【0065】
さらに、本発明の1つ又はそれ以上のポリペプチド(そのフラグメント又は機能的に活性な変異体を含む)をコードする核酸分子のいずれかを、標準的なクローニング技術のような標準的な技術を使用して、いずれかの望ましい調節配列、リーダー配列、異種マーカー配列又は異種コード配列に機能的に連結して融合タンパク質を作製することができる。
【0066】
本発明の核酸は、もともとはインビトロで又は培養で細胞において形成され得、一般には、エンドヌクレアーゼ及び/若しくはエキソヌクレアーゼ及び/若しくはポリメラーゼ及び/若しくはリガーゼ及び/若しくはリコンビナーゼによる核酸の操作により、又は核酸を製造するための当業者に公知の他の方法により形成され得る。
【0067】
好ましい実施態様において、核酸(単数又は複数)はベクター中に位置する。ベクターは、宿主細胞においてその複製を可能にする核酸配列、例えば複製起点、1つ又はそれ以上の治療的遺伝子及び/又は選択可能マーカー遺伝子並びにコードされたタンパク質の転写、翻訳及び/又は分泌を方向づける調節エレメントのような当該分野で公知の他の遺伝因子をさらに含み得る。ベクターは、細胞を形質導入、形質転換又は感染させて、それによりその細胞に天然のもの以外の核酸及び/又はタンパク質をその細胞に発現させるために使用され得る。ベクターは場合により、核酸の細胞への進入を達成する際に補助するための材料、例えばウイルス粒子、リポソーム、タンパク質被覆などを含む。標準的な分子生物学技術によるタンパク質発現のための多数の型の適切な発現ベクターが当該分野で公知である。このようなベクターは、昆虫、例えばバキュロウイルス発現、又は酵母、真菌、細菌若しくはウイルス発現系を含む従来のベクター型の中から選択される。他の適切な発現ベクター(それらのうち多数の型が当該分野で公知である)もこの目的のために使用され得る。このような発現ベクターを得るための方法は周知である(例えばSambrook et al、Molecular Cloning. A Laboratory Manual、2d edition、Cold Spring Harbor Laboratory、New York(1989)を参照のこと)。一実施態様においてベクターはウイルスベクターである。ウイルスベクターとしては、限定されないが、レトロウイルスベクター及びアデノウイルスベクターが挙げられる。
【0068】
この方法によるトランスフェクションに適した宿主細胞又は細胞株としては細菌細胞が挙げられる。例えばE.coliの種々の系統がバイオテクノロジーの分野において宿主細胞として周知である。枯草菌(B.subtilis)、シュードモナス属(Pseudomonas)、ストレプトミセス属(Streptomyces)、及び他の桿菌などの種々の系統もこの方法において使用され得る。当業者に公知の酵母細胞の多くの系統もまた本発明のペプチドの発現のための宿主細胞として利用可能である。他の真菌細胞又は昆虫細胞、例えばヨトウガ(Spodoptera frugipedera)(Sf9)細胞もまた発現系として使用され得る。あるいは、哺乳動物細胞、例えばヒト293細胞、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)、サルCOS−1細胞株又はSwiss、BALB/c又はNIHマウス由来のマウス3T3細胞が使用され得る。さらに他の適切な宿主細胞、さらにはトランスフェクション、培養、増幅、スクリーニング、産生及び精製のための方法は当該分野で公知である。
【0069】
本発明のポリペプチド又はポリペプチド複合体は、本発明の核酸を適切な宿主細胞において発現させることにより製造され得る。宿主細胞は、例えば従来の手段、例えば本発明の核酸を含む少なくとも1つの発現ベクター用いて転写調節配列の制御下でエレクトロポレーションによりトランスフェクトされ得る。次いでトランスフェクト又は形質転換された宿主細胞を、タンパク質の発現を可能にする条件下で培養する。発現されたタンパク質を回収し、単離し、そして場合により細胞から(又は細胞外で発現された場合は培地から)当業者に公知の適切な手段により精製する。例えば、タンパク質は細胞溶解後に可溶形態で単離されるか、又は公知の技術を使用して、例えば塩化グアニジンで抽出される。必要に応じて、本発明のポリペプチドは融合タンパク質として製造される。このような融合タンパク質は上で記載されるものである。あるいは、例えば、選択された宿主細胞でのタンパク質の発現を増強するため、又は精製を改善するために、融合タンパク質を製造することが望ましいかもしれない。本発明のポリペプチドを含む分子は、様々な従来の方法のいずれかを使用してさらに精製され得、これらの方法としては、限定されないが:HPLC、FPLCなどを使用する、順相又は逆相のような液体クロマトグラフィー;アフィニティークロマトグラフィー(例えば無機リガンド又はモノクローナル抗体を用いる);サイズ排除クロマトグラフィー;固定化金属キレートクロマトグラフィー;ゲル電気泳動などが挙げられる。当業者は、本発明の範囲から逸脱することなく最も適切な単離及び精製技術を選択し得る。このような精製により、微生物の他のタンパク質性及び非タンパク質性の物質を実質的に含まない形態で抗原が得られる。
【0070】
本発明の別の局面は、本発明に従う抗体を産生する細胞に関する。
【0071】
他のタンパク質のように、本発明のポリペプチドはインビトロで一連の細胞発現系において産生され得る。これらとしては、CHO細胞(チャイニーズハムスター卵巣由来)、酵母(サッカロミセス(Saccharomyces)又はピキア(Pichia))、糸状菌、トランスジェニック植物、及びE.coliが挙げられ得る。
【0072】
当初は、E.coli発現系の使用は主に抗体フラグメントの産生に限定されていた。これらのフラグメントは首尾よく発現され、そしてE.coliで分泌された。Fabは、診断的適用、治療、及び全長モノクローナル抗体中への再取り込みを予定される可変領域の試験において頻繁に使用される。E.coli産生での別の成功した適用は、機能的タンパク質とFabとの融合である。抗原標的化特異的Fab領域は機能的タンパク質配列に融合される。増強された細胞死滅を伴う標的化治療薬の作製はこのアプローチの1つの応用である。抗体フラグメントを含む他のストラテジーとしては、受容体フラグメントのような標的特異的タンパク質ドメインをFc(受容体結合フラグメント)領域に融合させることが挙げられる。抗体のFcフラグメントは、免疫系の活性化と共に長い血清半減期の原因である。Fc融合の適用は、融合パートナーの結合活性とFc領域の活性化を組み合わせることに依存する。しかし、E.coliにおけるFc領域の産生は、細菌においてFcフラグメントを効率的に発現させることの困難さに起因して問題があり得る。このことは、E.coliにおける全長モノクローナル抗体の産生もまたとらえどころのない目標のままであるということの理由を説明するかもしれない。以下に記載されるように、E.coliにおいてフラグメント及び全長モノクローナル抗体の両方を発現させるための改善された方法が開発された。哺乳動物細胞機構はグリコシル化のような抗体産生特性に重要であるが、効果的なE.coli抗体産生系には多くの有利な条件がある。翻訳工学(Translation Engineering)はE.coliにおける抗体及び抗体フラグメントの効率的な発現のために遺伝子を最適化するために使用されてきた。翻訳工学は、業界の標準的な技術、例えば希少コドンの除去、RNA二次構造の平坦化、抗体mRNAを翻訳しながらリボソームの段階的な動力学をもたらす翻訳休止シグナルの同定及び操作を含む。目的の抗体をコードする遺伝子の操作後に、再設計された遺伝子構築物を、重鎖及び軽鎖成分を両方含み得る適切なベクター中に入れる。
【0073】
別の実施態様において、細胞は、周知の従来の技術により生成される所望のモノクローナル抗体を発現するハイブリドーマ細胞株である。本発明の文脈において、ハイブリドーマ細胞はRAGEに特異的に結合する抗体を産生することができる。ハイブリドーマ細胞は、通常の活性化された抗体産生B細胞を骨髄腫細胞と融合させることにより生成され得る。特に、ハイブリドーマ細胞は以下のように生成され得る:B細胞を、関連抗原でチャレンジされた動物の脾臓から取り出す。次いでこれらのB細胞を、培養で無限に増殖し得る骨髄腫腫瘍細胞と融合させる。この融合は細胞膜をより透過性にすることにより行われる。がん細胞である融合されたハイブリッド細胞(ハイブリドーマと呼ばれる)は、急速かつ無限に増殖し、そして大量の所望の抗体を産生するだろう。それらは選択され、続いて限界希釈によりクローンされるべきである。インターロイキン−6を含有する添加培地(例えばbriclone)がこの工程に通常必須である。選択培地(具体的には、1x濃度のHATを含有する培地)で新たに融合された初代ハイブリドーマ細胞をおよそ10〜14日間培養することにより選択が起こる。HATを使用した後、HT含有培地を使用することがしばしば望ましい。ポジティブな初代ハイブリドーマ細胞の同定の後にクローニングが起こる。
【0074】
本発明の別の局面は、RAGEに結合することができ、かつ本発明に従うポリペプチド又はポリペプチド複合体を含む結合分子に関する。本発明のポリペプチド(又はその複合体)及び抗体は、医薬、治療、診断や、科学及び研究も(例えば検出、精製、標識などのため)を含む様々な適用において使用され得る。
【0075】
従って、本発明のポリペプチド(複合体)にさらなる構成要素を加えることが必要となるかもしれない。特に、分子の検出のためにその分子にマーカーを加えることが望ましいかもしれない。適切なマーカーとしては、限定することなく、タグ(例えば6His(又はHexaHis)タグ、Strep tag、HAタグ、c−mycタグ又はグルタチオンS−トランスフェラーゼ(GST)タグ)、蛍光マーカー(例えばFITC、フルオレセイン、ローダミン、Cy色素又はAlexa)、酵素標識(例えばペニシリナーゼ、西洋ワサビペルオキシダーゼ及びアルカリホスファターゼ)、放射標識(例えば3H、32P、35S、125I又は14C)が挙げられる。さらに、ポリペプチド(複合体)は、支持体、特にアレイ、ビーズ(例えばガラス又は磁気)のような固体支持体、繊維、フィルムなどに付加されてもよい。当業者は、適切なさらなる構成要素を選択することにより、本発明のポリペプチド又はポリペプチド複合体を含む結合分子及びさらなる構成要素を意図された用途に適合させることができる。
【0076】
本発明の別の局面は医薬としての使用のための組成物に関し、この組成物は、少なくとも1つの本発明のポリペプチド及び/又は少なくとも1つの本発明の核酸を含む。
【0077】
本発明の医薬組成物は、薬学的に許容しうる担体及び/又は添加物をさらに含み得る。本発明において有用な薬学的に許容しうる担体及び/又は添加物は従来のものであり、これらとしては緩衝剤、安定剤、希釈剤、保存料、及び可溶化剤が挙げられる。E.W.MartinによるRemington’s Pharmaceutical Sciences、Mack Publishing Co.、Easton、PA、15th Edition(1975)は、本明細書に開示されるポリペプチド/核酸の医薬送達に適した組成物及び処方を記載する。医薬組成物中の活性成分(ポリペプチド又は核酸)の含有量は、それが処置又は予防のために有用である限り制限されないが、好ましくは全組成あたり0.0000001〜10質量%を含有する。
【0078】
一般に、担体又は添加物の性質は、使用される特定の投与様式に依存する。例えば、非経口製剤は、薬学的かつ生理学的に許容しうる液体、例えば水、生理食塩水、平衡塩類溶液、水性デキストロース、グリセロールなどをビヒクルとして含む注射液を通常含む。固形組成物(例えば、散剤、丸剤、錠剤又はカプセル形態)については、従来の非毒性固形担体として、例えば医薬品グレードのマンニトール、ラクトース、デンプン、又はステアリン酸マグネシウムを挙げることができる。生物学的に中性の担体に加えて、投与しようとする医薬組成物は、少量の非毒性補助物質、例えば湿潤剤又は乳化剤、保存料、及びpH緩衝化剤など、例えば酢酸ナトリウム若しくはソルビタンモノラウレートを含有し得る。
【0079】
一般に、適切な量の薬学的に許容しうる塩が、製剤を等張性にするために担体中で使用される。担体の例としては、限定されないが、生理食塩水、リンゲル液及びデキストロース溶液が挙げられる。好ましくは、許容しうる添加剤、担体、又は安定剤は、使用される投薬量及び濃度で好ましくは非毒性であり、これらとしてはクエン酸塩、リン酸塩、及び他の有機酸のような緩衝剤;塩を形成する対イオン、例えばナトリウム及びカリウム;低分子量(>10アミノ酸残基)ポリペプチド;タンパク質、例えば血清アルブミン、若しくはゼラチン;親水性ポリマー、例えばポリビニルピロリドン;アミノ酸、例えばヒスチジン、グルタミン、リジン、アスパラギン、アルギニン、若しくはグリシン;グルコース、マンノース若しくはデキストリンを含む炭水化物;単糖類;二糖類;他の糖、例えばスクロース、マンニトール、トレハロース若しくはソルビトール;キレート剤、例えばEDTA;非イオン性界面活性剤、例えばTween、プルロニック若しくはポリエチレングリコール;メチオニン、アスコルビン酸及びトコフェロールを含む抗酸化剤;並びに/又は保存料、例えばオクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド;塩化ヘキサメトニウム;塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム;フェノール、ブチル若しくはベンジルアルコール;アルキルパラベン類、例えばメチル若しくはプロピルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3−ペンタノール;及びm−クレゾール)が挙げられる。
【0080】
好ましい実施態様において、医薬組成物はアジュバントのような免疫賦活性物質をさらに含む。アジュバントは投与方法に基づいて選択され得、これらとしては、鉱油ベースのアジュバント、例えばフロイント完全アジュバント及びフロイント不完全アジュバント、モンタナイド(Montanide)不完全Seppicアジュバント(例えばISA)、水中油エマルションアジュバント、例えばRibiアジュバント系、ムラミルジペプチドを含有するシンタックス(syntax)アジュバント製剤、又はアルミニウム塩アジュバントが挙げられ得る。好ましくは、アジュバントは鉱油ベースのアジュバントであり、最も好ましくはISA206(SEPPIC、Paris、France)である。より好ましい実施態様において、免疫賦活性物質は、ポリカチオン性ポリマー、特にポリカチオン性ペプチド、例えばポリアルギニン、免疫賦活性デオキシヌクレオチド(ODN)、少なくとも2つのLysLeuLysモチーフ、特にKLKLLLLLKLK(配列番号51)を含むペプチド、向神経活性化合物、特にヒト成長ホルモン、ミョウバン(alumn)、アジュバント又はそれらの組み合わせを含む群より選択される。好ましくはこの組み合わせは、ポリカチオン性ポリマーと免疫賦活性デオキシヌクレオチド、又は少なくとも2つのLysLeuLysモチーフを含むペプチドと免疫賦活性デオキシヌクレオチドとのいずれかである。なおより好ましい実施態様において、ポリカチオン性ポリマーはポリカチオン性ペプチドである。本発明のさらにより好ましい実施態様において、免疫賦活性物質は少なくとも1つの免疫賦活性核酸である。免疫賦活性核酸は、例えば中性又は人工のCpG含有核酸、無脊椎動物由来の核酸の短い配列又は確定された塩基の状況での非メチル化シトシン−グアニンジヌクレオチド(CpG)を含有する短いオリゴヌクレオチド(ODN)の形態である(例えばWO96/02555に記載されるような)。あるいはまた、例えばWO01/93903に記載されるようなイノシン及びシチジンに基づく核酸、又はデオキシ−イノシン及び/若しくはデオキシウリジン残基を含有するデオキシ核酸(deoxynucleic acids)(WO01/93905及びWO02/095027に記載される)は、本発明において免疫賦活性核酸として好ましく使用され得る。好ましくは、異なる免疫賦活性核酸の混合物を本発明において使用する。さらに、上述のポリカチオン性化合物を上述の免疫賦活性核酸のいずれかと組み合わせてもよい。好ましくは、このような組み合わせはWO01/93905、WO02/32451、WO01/54720、WO01/93903、WO02/13857及びWO02/095027並びに豪州特許出願第A1924/2001号に記載されるものに従う。
【0081】
医薬組成物は少なくとも1つの本発明のポリペプチド又は核酸を含むが;本発明の異なるポリペプチド及び/又は核酸を含有するカクテル(すなわち単純な混合物)を含んでいてもよい。本発明のポリペプチドは、薬学的に許容しうる塩の形態で使用されてもよい。本発明のペプチドと塩を形成することができる適切な酸及び塩基は当業者に周知であり、これには無機及び有機の酸及び塩基が含まれる。
【0082】
本発明の好ましい実施態様において、本組成物は、好ましくは敗血症、敗血症性ショック、リステリア症、炎症性疾患(関節リウマチ及び乾癬性関節炎を含む)、及び腸疾患(intestinal bowel disease)、がん、関節炎、クローン病、慢性急性炎症性(chronic acute inflammatory)疾患、心血管疾患、勃起不全、糖尿病、糖尿病の合併症、脈管炎、腎症、網膜症、神経障害、アミロイドーシス、アテローム性硬化症、末梢血管疾患、心筋梗塞、うっ血性心不全、糖尿病性網膜症、糖尿病性神経障害、糖尿病性腎症、及びアルツハイマー病、特に糖尿病及び/又は炎症性疾患からなる群より選択される、当業者に公知であるか又は本明細書において定義されるRAGE関連疾患又は障害を処置することを意図されるか又はこれらのRAGE関連疾患又は障害を処置するために使用される。
【0083】
本発明の別の局面は、上で定義されるRAGE関連疾患又は障害を診断する方法に関し、該方法は:
(a) 被験体から得られたサンプルを、本発明に従うポリペプチドもしくはポリペプチド複合体又は結合分子と接触させる工程;及び
(b) RAGEの量を検出する工程
を含み、ここでコントロールと比較して変化した量のRAGE受容体はRAGE関連疾患又は障害の指標となる。
【0084】
本発明はまた、本発明のポリペプチド又は結合を用いて細胞及び組織又は体液中のRAGE又はRAGEレベルを検出するための定量的診断アッセイ(正常及び異常レベルの決定を含む)のような診断アッセイに関する。宿主由来のサンプルにおいて、ポリペプチド又は抗体のレベルを決定するために使用することができるアッセイ技術は当業者に周知である。このようなアッセイ方法としては、ラジオイムノアッセイ、競合結合アッセイ、ウェスタンブロット分析及びELISAアッセイが挙げられる。これらのうち、ELISAが頻繁に好まれる。ELISAアッセイは、ポリペプチド、特にRAGEに特異的な抗体、好ましくはモノクローナル抗体を用意することを最初に含む。さらに、モノクローナル抗体に結合するレポーター抗体が一般的に用意される。レポーター抗体は、放射性、蛍光性又は酵素試薬(例えば西洋ワサビペルオキシダーゼ酵素)のような検出可能な試薬に結合される。
【0085】
本発明は、変更され得るので、本明細書中に記載される特定の方法論、プロトコル及び試薬に限定されない。さらに、本明細書において使用される用語は、特定の実施態様を説明する目的のためのみであり、本発明の範囲を限定することは意図されない。本明細書及び添付の特許請求の範囲において使用される、単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈がそうではないと明確に指示していなければ複数形の言及も含む。同様に、語「含む(comprise)」、「含有する(contain)」及び「包含する(encompass)」は排他的ではなく包括的に解釈されるべきである。
【0086】
別の定義がなければ、本明細書において使用される全ての技術的及び科学的用語並びに任意の頭字語は、本発明の分野の当業者により一般的に理解される意味と同じ意味を有する。本明細書に記載される方法及び材料と類似しているか又は等価な方法及び材料はいずれも本発明の実施において使用され得るが、好ましい方法、及び材料は本明細書中に記載される。
【0087】
本発明はさらに以下の実施例により説明されるが、当然のことながら、実施例は単に説明のために含まれるのであり、そうではないと具体的に示されていなければ、本発明の範囲を限定することは意図されない。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1A】CDRを含む軽鎖の可変領域を示す図である。
【図1B】CDRを含む軽鎖の可変領域を示す図である。
【図1C】CDRを含む重鎖の可変領域を示す図である。
【図1D】CDRを含む重鎖の可変領域を示す図である。
【図2】LP08062(Rage)を用いて15nMで試験された抗Rageハイブリドーマのka/kdを示すグラフである。
【図3A】選択された抗RAGEモノクローナル抗体のKd範囲を示すグラフである。
【図3B】選択された抗RAGEモノクローナル抗体のKd範囲を示すグラフである。
【図4】RAGE S100A6相互作用の阻害を示すグラフである。
【図5】RAGE 513_LP08062(上)及び501−4 RAGE−1 050908 bのBiacore分析の結果を示すグラフである。
【実施例】
【0089】
実施例1:抗体の生成及び同定
抗体の生成及び同定は、当業者に周知の方法にしたがって達成された(benn achieved)。このような方法は、例えば(i) Handbook of therapeutic antibodiesWiley-VCH、Weinheim;ISBN-10:3-527-31453-9;ISBN-13:978-3-527-31453-9-;及び/又は(ii) Therapeutic monoclonal antibodies:from bench to clinic;ISBN:978-0-470-11791-0;及び/又は(iii) Current protocols in Immunology;John Wiley and Sons、Inc.;(最終更新2009年10月1日)に開示される。
【0090】
実施例2:有利な抗体の選択
入手可能な抗体のうち、「トップ23」の抗体を、
- 結合定数(KD≦1.0E-9M及びkoff≦2.0E-3 s-1)及び
- ラット、マウス、及びサル(Cyno)のsRAGEとの異種間交差反応性
に基づいて同定及び選択した。
【0091】
抗rageモノクローナル抗体の可変領域について以下のアミノ酸配列を決定した:
タンパク質56 RAGE-1
VL 56:軽鎖の可変領域;分子全体の長さ:107アミノ酸;配列番号1
1 divmtqsqkf mstsvgdrvs vtckasqnvg invawyqqkp gqspkaliys
51 asyrysgvpd rftgsgsgtd ftliisnvqs edlaeyfcqq ynnyprtfgg
101 gtkleik
VH 56:重鎖の可変領域;分子全体の長さ:115アミノ酸;配列番号24
1 qvqlqqsgpe lvkpgasvri sckasgytft syfihwvkqr pgqglewigw
51 iypgnvntky nekfkdkatl tadkssstay mqlsnltsed savyfcvrgq
101 lgdywgqgit ltvss
タンパク質95 RAGE-1
VL 95:軽鎖の可変領域;分子全体の長さ:109アミノ酸;配列番号2
1 qavvtqesal ttspgetvtl tcrsstgavt tsnyanwvqe kpdhlftglt
51 ggtnnrapgv parfsgslig dkaaltitga qtedeaiyfc alwysnhwvf
101 gggtkltvl
VH 95:重鎖の可変領域;分子全体の長さ:115アミノ酸;配列番号25
1 qvqlqqpgae lvkpgasvkl sckasgytft sywmhwvkqr pgqglewige
51 snpsngrtny nekfknkatl tvdkssstay mqlssltsed savyycarap
101 yygfdywgqg ttltvss
タンパク質130 RAGE-1
VL 130:軽鎖の可変領域;分子全体の長さ:106アミノ酸;配列番号3
1 qivltqspai msaspgekvt mtcsasssvs ymhwyqqksg tspkrwisdt
51 sklasgvpar fsgsgsgtsy sltissmeae daatyycqqw ssnpptfggg
101 tkleik
VH 130:重鎖の可変領域;分子全体の長さ:119アミノ酸;配列番号26
1 evqlvesggg lvkpggslkl scaasgftfs syvmswvrqs pekrlewvae
51 issggsytyy pdtvtgrfti srdndkntly lemsslrsed tamyycarpp
101 ygkdamdywg qgtsvtvss
タンパク質140 RAGE-1
VL 140:軽鎖の可変領域;分子全体の長さ:108アミノ酸;配列番号4
1 qivltqspai msaspgekvt iscsasssvs ymywyqqkpg sspkpwiyrt
51 snlasgvpar fsgsgsgtsy sltissmeae daatyycqqy hsyppmytfg
101 ggtkleik
VH 140:重鎖の可変領域;分子全体の長さ:121アミノ酸;配列番号27
1 qvqlqqpgae lvkpgasvrl sckasgytft sywmhwvkqr pgqglewige
51 inpsngrtny nekfkskatl tvdkssstay mqlssltsed savyycardg
101 lgyrpiamdy wgqgtsvtvs s
【0092】
タンパク質152 RAGE-1
VL 152:軽鎖の可変領域;分子全体の長さ:110アミノ酸;配列番号5
1 divltqspas lavslgqrat iscrasksvg tsdssymhwy qqkpgqppkl
51 liylasnles gvparfsgsg sgtdftlnih pveeedaaty ycqhsrelyt
101 fgggtkleik
VH 152:重鎖の可変領域;分子全体の長さ:115アミノ酸;配列番号28
1 dvqlqesgpd lvkpsqslsl tctvtgysit sgyswhwirq fpgnklewmg
51 yihysgstny npslksrisi trdtsknqff lqlnsvtted tatyycargg
101 dfaywgqgtl vtvsa
タンパク質158 RAGE-1
VL 158:軽鎖の可変領域;分子全体の長さ:113アミノ酸;配列番号6
1 sdvvltqtpl slpvnigdqa sisckstksl lnsdgftyld wylqkpgqsp
51 qlliylvsnr fsgvpdrfsg sgsgtdftlk isrveaedlg vyycfqsnyl
101 pltfgggtkv eik
VH 158:重鎖の可変領域;分子全体の長さ:119アミノ酸;配列番号29
1 qiqlvqsgpe lkkpgetvki sckasgytft dysmhwvkqa pgkglkwmgw
51 intetgepty addfkgrfaf sletsastay llinnlkted tatyfcardy
101 lyyyamdywg qgtsvtvss
タンパク質164 RAGE-1
VL 164:軽鎖の可変領域;分子全体の長さ:107アミノ酸;配列番号7
1 nivmtqspks msmsvgervt lsckasenvg tyvswyqqkp eqspklliyg
51 asnrytgvpd rftgsgsatd ftltissvqa edladyhcgq sytypytfgg
101 gtkleik
VH 164:重鎖の可変領域;分子全体の長さ:116アミノ酸;配列番号30
1 qvqlqqpgse lvrpgasvkl sckasgytft nywmhwvkqr pgqglewign
51 iypgsgstny dekfkskatl tvdtssstay mqlssltsed savyyctrlr
101 rgiaywgqgt lvtvsa
タンパク質166 RAGE-1
VL 166:軽鎖の可変領域;分子全体の長さ:112アミノ酸;配列番号8
1 nimmtqspss lavsagekvt msckssqsvl yssnqknyla wyqqkpgqsp
51 klliywastr esgvpdrftg sgsgtdftlt issvqaedla vyychqylss
101 ytfgggtkle ik
VH 166:重鎖の可変領域;分子全体の長さ:119アミノ酸;配列番号31
1 qvqlqqsgpe lvkpgtsvri sckasgytft syyihwvkqr pgqglewigw
51 iypgnvitny hekfkgkasl tadkssstay mqlssltsed savyfcared
101 pfaywgqgtl vtvsa
タンパク質173 RAGE-1
VL 173:軽鎖の可変領域;分子全体の長さ:107アミノ酸;配列番号9
1 divmtqsqkf mstsvgdrvs vtckasqnvg tnvawyqqkp gqspkaliys
51 asyrysgvpd rftgsgsgtd ftltisnvqs edlaeyfcqq ynsypltfga
101 gtklelk
VH 173:重鎖の可変領域;分子全体の長さ:120アミノ酸;配列番号32
1 evkleesggg lvqpggsmkl scvasgftfs nywmnwvrqs pekglewvae
51 irlksnnyat hyaesvkgrf tisrddskss vylqmndlra edpgiyycir
101 dygnyamdhw gqgtsvtvss
【0093】
タンパク質183 RAGE-1
VL 183:軽鎖の可変領域;分子全体の長さ:107アミノ酸;配列番号10
1 nivmtqspks msmsvgervt lsckasenvg tyvswyqqkp eqspklliyg
51 asnrytgvpd rftgsgsatd ftltissvqa edladyhcgq sysypytfgg
101 gtkleik
VH 183:重鎖の可変領域;分子全体の長さ:116アミノ酸;配列番号33
1 evqlqqsgtv larpgasvkm sckasgysft sywmhwvkqr pgqglewiga
51 ifpgnsdtty nqkfkgkakl tavtsastay melssltned savyyctglr
101 rgfpywgqgt lvtvsv
タンパク質184 RAGE-1
VL 184:軽鎖の可変領域;分子全体の長さ:111アミノ酸;配列番号11
1 divltqspas lavslgqrat iscrasksvs tsgysymhwy qqkpgqppkl
51 liylashles gvparfsgsg sgtdfslnih pveeedaaty ycqhsrelpw
101 tfgggtklei k
VH 184:重鎖の可変領域;分子全体の長さ:120アミノ酸;配列番号34
1 qvqlqqsgae lvrpgtsvkv sckasgyaft nyliewvkqr pgqglewigm
51 inpgsggtny nekfkgkatl tadkssstay mqlssltsdd savyfcargr
101 gghyryfdvw gagttvtvss
タンパク質210 RAGE-1
VL 210:軽鎖の可変領域;分子全体の長さ:110アミノ酸;配列番号12
1 qavvtqesal ttspgetvtl tcrsstgavt tsnyanwvqe kpdhlftgli
51 ggtnnrapgv parfsgslig dkaaltitga qtedeaiyfc alwysnhfwv
101 fgggtkltvl
VH 210:重鎖の可変領域;分子全体の長さ:119アミノ酸;配列番号35
1 hseiqlqqtg pelvkpgasv kisckasgys ftdyimvwvk qshgkslewi
51 gtinpyygst synlkfkgka tltvdkssst anmqlnslts edsavyycar
101 lrlyamdywg qgtsvtvss
タンパク質240 RAGE-1
VL 240:軽鎖の可変領域;分子全体の長さ:113アミノ酸;配列番号13
1 sdvvltqtpl slpvsigdqa sisckstksl lnsdgftyld wylqkpgqsp
51 qlliylvsnr fsgvpdsfsg sgsgtdftlk isrveaedlg vyycfqsnyf
101 pltfgggttl eik
VH 240:重鎖の可変領域;分子全体の長さ:119アミノ酸;配列番号36
1 qiqlvqsgpe lkkpgetvki sckasgytft dysmhwvkqa pgkglkwmgw
51 intetgepty addfkgrfaf sletsastay lqinnlkned tatyfcardy
101 lyyyamdywg qgtsvtvss
【0094】
タンパク質250 RAGE-1
VL 250:軽鎖の可変領域;分子全体の長さ:107アミノ酸;配列番号14
1 divmtqsqkf mstsvgdrvs vtckasqnvg tnvawyqqkp gqspkaliys
51 asyrysgvpd rftgsgsgtd ftltisnvqs edlaeffcqq ynsypltfga
101 gtklelk
VH 250:重鎖の可変領域;分子全体の長さ:120アミノ酸;配列番号37
1 evkleesggg lvqpggsmkl scvasgftfs nywmnwvrqs pekglewvae
51 irlksnnyat hyaesvkgrf tisrddskss vylqmnnlra edtgiyfcir
101 dygnyamdyw gqgtsvtvss
タンパク質253 RAGE-1
VL 253:軽鎖の可変領域;分子全体の長さ:113アミノ酸;配列番号15
1 divmsqspss lavsvgekvt msckssqtll yssnqknyla wyqqkpgqsl
51 klliywastr esgvpdrfag sgsgtdftlt issvkaedla vyycqqyfgy
101 pytfgggtkl eik
VH 253:重鎖の可変領域;分子全体の長さ:118アミノ酸;配列番号38
1 qvqlqqsgpe lvkpgasvri sckasgytft dyyihwvkqr pgqglewigw
51 iypgnvitky nekfkgkatl tadkssstay mqlssltsed savyfcaryd
101 ydyamdywgq gtsvtvss
タンパク質259 RAGE -1
VL 259:軽鎖の可変領域;分子全体の長さ:109アミノ酸;配列番号16
1 qavvtqesal ttspgetvtl tcrsstgavt tsnyanwvqe kpdhlftgli
51 ggtnnrapgv parfsgslig dkaaltitga qtedeaiyfc alwysnhwvf
101 gggtkltvl
VH 259:重鎖の可変領域;分子全体の長さ:117アミノ酸;配列番号39
1 qvqlqqsgae lvrpgtsvkv sckasgyaft nylidwvnqr pgqglewigv
51 inpgsggtny nekftgkatl tadkssstay mqlssltsdd savyfcarrr
101 vdtmdywgqg tsvtvss
タンパク質283 RAGE-1
VL 283:軽鎖の可変領域;分子全体の長さ:109アミノ酸;配列番号17
1 qavvtqesal ttspgetvtl tcrsstgavt tsnyanwvqe kpdhlftgli
51 rgtnnrapgv parfsgslig dkaaltitga qtedeaiyfc alwysnhwvf
101 gggtkltvl
VH 283:重鎖の可変領域;分子全体の長さ:118アミノ酸;配列番号40
1 qvqlqqsgae lvrpgtsvkv sckasgyaft nyliewvkqr pgqglewigv
51 inpgsggtny serfkgkatl tadkssstay mqlssltsdd savyfcasyr
101 ydggmdywgq gtsvtvss
タンパク質316 RAGE-1
VL 316:軽鎖の可変領域;分子全体の長さ:111アミノ酸;配列番号18
1 divltqspas lavslgqrat iscrasksvs isgysylhwn qqkpgqspkl
51 liylasnles gvparfsgsg sgtdftlnih pveeedaaty ycqhsrelpy
101 tfgggtklei k
VH 316:重鎖の可変領域;分子全体の長さ:118アミノ酸;配列番号41
1 qvqlqqsgpe lvrpgasvkm sckasgytft sywmhwvkqr pgqglewigm
51 idpsnsetrl nqkfkdkatl nvdkssntay mqlssltsed savyycarnf
101 ygsslrvwga gttvtvss
【0095】
タンパク質326 RAGE-1
VL 326:軽鎖の可変領域;分子全体の長さ:108アミノ酸;配列番号19
1 divmtqsqkf mstsvgdrvs itckasqnvg tavawyqqkp gqspklliys
51 asnrytgvpd rftgsgsgtd ftltisnmqs edladyfcqq yssyplltfg
101 agtklelk
VH 326:重鎖の可変領域;分子全体の長さ:119アミノ酸;配列番号42
1 evklvesggg lvkpggslkl scaasgfafs sydmswvrqt pekrlewvat
51 issggsytsy pdsvqgrfti srdnarntly lqmsslrsed talyycassq
101 lppyamdywg qgtsvtvss
タンパク質347 RAGE-1
VL 347:軽鎖の可変領域;分子全体の長さ:107アミノ酸;配列番号20
1 diqmtqsssy lsvslggrvt itckasdrin ywlawyqqkp gnaprllisg
51 attletgvps rfsgsgsgkd ytlsitslqt edvatyycqq ywstpytfgg
101 gtklelk
VH 347:重鎖の可変領域;分子全体の長さ:118アミノ酸;配列番号43
1 qvqlqqsgae lakpgasvkm scrasgytft dywmhwvkqr pgqglewigf
51 inpstvytey ipkfkdkatl tadkssstay mqlssltsed savyycarsd
101 ggwyfdvwga gttvtvss
タンパク質499 RAGE-1
VL 499:軽鎖の可変領域;分子全体の長さ:107アミノ酸;配列番号21
1 divmtqshkf mstsvgdrvs itckasqdvs tavawyqqkp gqspklliys
51 asyrytgvpd rftgsgsgtd ftftissvqa edlavyycqq hyntprtfgg
101 gtkleik
VH 499:重鎖の可変領域;分子全体の長さ:113アミノ酸;配列番号44
1 evqlqqsgtv larpgasvkm sckasgytft sywmhwvkqr pgqglewiga
51 iypgdsdtyy nqkfkgkakl tavtststay melssltned savyyctrnw
101 dywgqgttlt vss
タンパク質501-4 RAGE-1
VL 501-4:軽鎖の可変領域;分子全体の長さ:109アミノ酸;配列番号22
1 qavvtqesal ttspgetvtl tcrsstgavt tsnyanwvqe kpdhlftgli
51 ggtnnrapdv parfsgslig dkaaltitga qtedeaiyfc alwysnhwvf
101 gggtkltvl
VH 501-4:重鎖の可変領域;分子全体の長さ:120アミノ酸;配列番号45
1 evmlvdsggg lvkpggslkl scaasgftfr syamswvrqt pekrlewvat
51 issggsytyy pdsvrgrftt srdngkntly lqmsslrsed tamyycarhg
101 gnysawftyw gqgtlvtvsa
タンパク質529 RAGE-1
VL 529:軽鎖の可変領域;分子全体の長さ:109アミノ酸;配列番号23
1 qavvtqesal ttspgetvtl tcrsstgavt tsnyanwvqe kpdhlftgli
51 ggtnnrspgv parfsgslig dkaaltitga qtedeaiyfc alwysnhlvf
101 gggtkltvl
VH 529:重鎖の可変領域;分子全体の長さ:119アミノ酸;配列番号46
1 hseiqlqqtg pelvkpgasv kisckasgys ftdyimlwvk qshgkslewi
51 gninpyygst fynlkfkgka tltvdkssst aymqlnslts edsavyycar
101 sdywyfdvwg agttvtvss
【0096】
実施例3: S100A12及びS100A6との競合ELISAにおいて選択されたmAbの特徴付け
S100A12については競合ELISAアッセイウェルを0.5μg/ウェルでS100A12でコーティングした。その後、10μg/mLのRAGE−Fc及び競合するmAbを10μg/mLで室温にて30分間プレインキュベートした。この混合物を、S100A12をコーティングしたプレートに移し、そして撹拌下で室温にて2時間インキュベートした。結合したRAGE−Fcを抗hIgG Fc特異的PODを用いてTMB(3,3',5,5'−テトラメチルベンジジン)を使用して450nmで検出した。試験した27の抗体はどれもRAGE−Fc/S100A12相互作用に対してアンタゴニスト活性を示さなかった。
【0097】
S100A6については、競合ELISAアッセイウェルを0.5μg/ウェルでS100A6でコーティングした。その後、10μg/mLのRAGE−Fc及び競合するmAbを10μg/mLで室温にて30分間プレインキュベートした。この混合物を、S100A6をコーティングしたプレートに移し、そして撹拌下で室温にて2時間インキュベートした。結合したRAGE−Fcを抗hIgG Fc特異的PODを用いてTMB(3,3',5,5'−テトラメチルベンジジン)を使用して450nmで検出した。27の抗体のうち7つがRAGE−Fc/S100A6相互作用を妨害することができる(15〜35%阻害)ということが示された。
【0098】
5つのmAb(>20%の阻害効果を示す;LP08103;LP08104;LP08105;LP08108及びLP08122D)について、RAGE−S100A6結合の阻害(IC50)の用量依存性を試験した。このために、S100A6でのコーティングを上で詳述したように行った。RAGE−Fcを10μg/mLで競合mAbと共に(100μg/mlで開始する2倍段階希釈)室温で2時間インキュベートした。抗IgG Fc特異的抗体ペルオキシダーゼ複合体により(by by)TMB1コンポーネントHRPを使用して450nmで結合を検出した。
【0099】
以下のIC50値を試験した抗体について得た(図4も参照のこと):
56 RAGE−1(LP08103):IC50=1.16[0.47;2.80]μg/mL(7.73nM)
240 RAGE−1(LP08108):IC50=6.66[4.33;10.20]μg/mL(44.4nM)
166 RAGE−1(LP08122):IC50=8.33[6.20;11.20]μg/mL(55.5nM)
158 RAGE−1(LP08105):IC50=6.79[5.01;9.21]μg/mL(45.3nM)
コントロールXT−M4(LP08130):IC50=5.20[3.18;8.53]μg/mL(34.6nM)
用量効果は152 RAGE−1(LP08104)で得られなかった。
【0100】
まとめると、4つのmAbはhRAGE−S100A6相互作用を最大50%の阻害効果で妨害した。
【0101】
実施例4: 競合アッセイにおいて同定されたmAbの特徴付け
競合アッセイを、当業者に周知の操作手順に従って行った。このような操作手順は実施例1に列挙される手引き書内に含まれる。競合アッセイの結果を表1にまとめる。
【0102】
【表1】

【0103】
競合ELISAアッセイは以下のことを示した
- 5つのmAbはhRAGE−S100B相互作用を強力にブロックする、すなわち
158 RAGE−1(LP08105)、IC50=0.109[0.071;
0.166]μg/mL(0.72nM)
240 RAGE−1(LP08108)、IC50=0.123[0.073;0.204]μg/mL(0.82nM)
166 RAGE−1(LP08122)、IC50=0.128[0.093;0.176]μg/mL(0.85nM)
253 RAGE−1(LP08127)、IC50=0.108[0.082;0.131]μg/mL(0.72nM)
326 RAGE−1(LP08137)、IC50=0.097[0.064;0.148]μg/mL(0.64nM)
XT−M4 (LP08130)、IC50=0.208[0.117;0.368]μg/mL(1.37nM)
- 2つのmAbはhRAGE−HMGB1相互作用をブロックする、すなわち
158 RAGE−1(LP08105)、IC50=0.290[0.189;0.447]μg/mL (1.39nM)
240 RAGE−1(LP08108)、IC50=0.310[0.270;0.463]μg/mL (2.06nM)
XT−M4(LP08130)、IC50=0.272[0.168;0,439]μg/mL(1.79nM)
- 4つのmAbはhRAGE−S100A6相互作用を妨害する、すなわち
56 RAGE−1(LP08103):IC50=1.16[0.47;2.80]μg/mL(7.73nM)
240 RAGE−1(LP08108)、IC50=6.66[4.33;10.20]μg/mL(44.4nM)
166 RAGE−1(LP08122)、IC50=8.33[6.20;11.20]μg/mL(55.5nM)
158 RAGE−1(LP08105)、IC50=6.79[5.01;9.21]μg/mL(45.3nM)
XT−M4(LP08130)、IC50=5.20[3.18;8.53]μg/mL(34.6nM)。
【0104】
実施例5: BiacoreアッセイにおけるmAbの特徴付け
このアッセイは、CM5チップ上に固定化された抗マウスFc IgGを使用する捕捉アッセイに基づく。抗Fc抗体の固定化のために、HBS−EPをランニングバッファとして使用した。CM5チップへの標準的なアミンカップリングを11分の接触時間及び流量10μl/分で行った。10mM酢酸ナトリウムpH 5.0を固定化バッファとして使用した。タンパク質濃度(抗マウスFc、Biacore BR−1008−38)は100μg/mLであった。
【0105】
結合分析のために、ランニングバッファ中1/10(流量5μl/分)で希釈されたSN抗RAGE mAb及びランニングバッファ中15nM(流量50μl/分)で希釈されたsRAGE (V−C1−C2) ロットLP08062をそれぞれ検体及びリガンドとして使用した(ランニングバッファ:HBS−P+BSA 12mg/mL+CM デキストラン 12mg/mL及び再生溶液:10mMグリシンpH1.7)。Langmuir 1:1解析をフィッティングモデルとして使用した。結果を表2にまとめる。
【0106】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つのアミノ酸配列又はその機能的に活性な変異体を少なくとも含むポリペプチド又はポリペプチド複合体であって、ここで最少の2つのアミノ酸配列は、
- 配列番号1及び配列番号24、
- 配列番号2及び配列番号25、
- 配列番号3及び配列番号26、
- 配列番号4及び配列番号27、
- 配列番号5及び配列番号28、
- 配列番号6及び配列番号29、
- 配列番号7及び配列番号30、
- 配列番号8及び配列番号31、
- 配列番号9及び配列番号32、
- 配列番号10及び配列番号33、
- 配列番号11及び配列番号34、
- 配列番号12及び配列番号35、
- 配列番号13及び配列番号36、
- 配列番号14及び配列番号37、
- 配列番号15及び配列番号38、
- 配列番号16及び配列番号39、
- 配列番号17及び配列番号40、
- 配列番号18及び配列番号41、
- 配列番号19及び配列番号42、
- 配列番号20及び配列番号43、
- 配列番号21及び配列番号44、
- 配列番号22及び配列番号45、並びに/又は
- 配列番号23及び配列番号46であり、
ここでこれらの配列は「終末糖化産物受容体」(RAGE)への特異的結合を可能にするように配置されている、上記ポリペプチド又はポリペプチド複合体。
【請求項2】
配列番号1〜23の配列のいずれかの機能的に活性な変異体が、配列番号1〜23の各配列の相補性決定領域L3(CDRL3)、好ましくはCDR L1、CDR L2及びCDR L3を含み;かつ/又は
配列番号24〜46の配列のいずれかの機能的に活性な変異体が配列番号24〜46の各配列の相補性決定領域H3(CDR H3)、好ましくはCDR H1、CDR H2及びCDR H3を含む、請求項1に記載のポリペプチド又はポリペプチド複合体。
【請求項3】
i) 配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22及び/若しくは配列番号23又はその機能的に活性な変異体のアミノ酸配列が、軽鎖の可変ドメイン(VL)であり;かつ/又はii) 配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号28、配列番号29、配列番号30、配列番号31、配列番号32、配列番号33、配列番号34、配列番号35、配列番号36、配列番号37、配列番号38、配列番号39、配列番号40、配列番号41、配列番号42、配列番号43、配列番号44、配列番号45及び/若しくは配列番号46又はその機能的に活性な変異体のアミノ酸配列が重鎖の可変ドメイン(VH)である、
請求項1又は2に記載のポリペプチド又はポリペプチド複合体。
【請求項4】
抗体である、請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリペプチド又はポリペプチド複合体。
【請求項5】
抗体が、モノクローナル抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、Fab、Fab'、F(ab')2、Fv、ジスルフィド結合Fv、scFv、(scFv)2、二価抗体、二重特異性抗体、多特異性抗体、二特異性抗体、三特異性抗体、四特異性抗体及び/又はミニ抗体である、請求項4に記載のポリペプチド又はポリペプチド複合体。
【請求項6】
ポリペプチド又はポリペプチド複合体が、ヒトIgM定常ドメイン、ヒトIgGl定常ドメイン、ヒトIgG2定常ドメイン、ヒトIgG3定常ドメイン、ドメイン、ヒトIgG4定常ドメイン、ヒトIgE定常ドメイン、及びヒトIgA定常ドメインからなる群より選択される重鎖免疫グロブリン定常ドメインを含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載のポリペプチド又はポリペプチド複合体。
【請求項7】
機能的に活性な変異体が、
a) 配列番号1〜46のいずれかのアミノ酸配列の、少なくとも60%、好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%、なおより好ましくは少なくとも90%、さらにより好ましくは少なくとも95%、最も好ましくは99%からなる機能的に活性なフラグメントであるか;
b) 配列番号1〜46のいずれかのアミノ酸配列と、少なくとも60%、好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%、なおより好ましくは少なくとも90%、さらにより好ましくは少なくとも95%、最も好ましくは99%の配列同一性を有する機能的に活性な変異体であるか;又は
c) 配列番号1〜46のいずれかのアミノ酸配列、及び1〜50個の追加のアミノ酸残基、好ましくは1〜40個、より好ましくは1〜30個、さらにより好ましくは多くて1〜25個、なおより好ましくは多くて1〜10、最も好ましくは1、2、3、4又は5個の追加のアミノ酸残基からなる、
請求項1〜6のいずれか1項に記載のポリペプチド又はポリペプチド複合体。
【請求項8】
機能的に活性な変異体が、配列番号1〜46のいずれかのアミノ酸配列から1つ又はそれ以上の保存的アミノ酸置換により誘導される、請求項7に記載のポリペプチド又はポリペプチド複合体。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載のポリペプチド又はポリペプチド複合体をコードする1つ又はそれ以上の核酸。
【請求項10】
核酸がベクター中に位置している、請求項9に記載の核酸。
【請求項11】
請求項4〜8のいずれか1項に記載の抗体を産生する細胞。
【請求項12】
RAGEに結合することができ、かつ請求項1〜8のいずれか1項に記載のポリペプチド又はポリペプチド複合体を含む結合分子。
【請求項13】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の少なくとも1つのポリペプチド及び/又は請求項9に記載の少なくとも1つの核酸を含む、医薬として使用するための組成物。
【請求項14】
RAGE関連疾患又は障害、好ましくは敗血症、敗血症性ショック、リステリア症、炎症性疾患(関節リウマチ及び乾癬性関節炎を含む)、及び腸疾患、がん、関節炎、クローン病、慢性急性炎症性疾患、心血管疾患、勃起不全、糖尿病、糖尿病の合併症、脈管炎、腎症、網膜症、神経障害、アミロイドーシス、アテローム性硬化症、末梢血管疾患、心筋梗塞、うっ血性心不全、糖尿病性網膜症、糖尿病性神経障害、糖尿病性腎症、及びアルツハイマー病、特に糖尿病及び/又は炎症性疾患からなる群より選択される疾患又は障害を処置するための、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
請求項13において定義されるRAGE関連疾患又は障害を診断する方法であって:
(a) 対象から得られたサンプルを請求項1〜7のいずれか1項に記載のポリペプチドもしくはポリペプチド複合体又は請求項12に記載の結合分子と接触させる工程;及び
(b) RAGEの量を検出する工程
を含み、ここでコントロールと比較してRAGE受容体の変化した量が、RAGE関連疾患又は障害の指標となる、上記方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図1D】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2013−507115(P2013−507115A)
【公表日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−532622(P2012−532622)
【出願日】平成22年10月8日(2010.10.8)
【国際出願番号】PCT/EP2010/065124
【国際公開番号】WO2011/042548
【国際公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【出願人】(504456798)サノフイ (433)
【Fターム(参考)】