説明

「黒色腫阻害活性(MIA)」を阻害するアンチセンスオリゴヌクレオチド

配列5'- TTG CAT AAA CCC AAG GAG - 3'およびその修飾、配列5'- TTG CAT AAA CCC AAG GAG - 3'の少なくとも8ヌクレオチドを有する断片およびその修飾の群から選択されるアンチセンスオリゴヌクレオチド。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、「黒色腫阻害活性(MIA)」の発現および/または機能的活性の阻害のためのアンチセンスオリゴヌクレオチドまたはその修飾、該オリゴヌクレオチドまたはその修飾を含む医薬組成物、ならびに腫瘍、感染症および/または免疫抑制疾患の予防または治療のためのその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
黒色腫阻害活性物質(Melanoma lnhibitory Activity、MIA)ポリペプチドは1989年に黒色腫腫瘍細胞の成長を阻害する因子として発見された。黒色腫阻害活性(MIA)タンパク質は、ヒト黒色腫細胞株HTZ-19の組織培養上清から精製された成長阻害活性物質の中に見出された(ボグダーン(Bogdahn)ら, Cancer Res. 49: 5358- 5363,1989)。ワイルバッハ(Weilbach)らはさらに、MIAがS期を延長することおよび細胞をG2コンパートメントで停止させることによって細胞増殖を阻害することを実証した(Cancer Res. 50; 6981-86.1990)。MIAの抗増殖作用はまた、他の腫瘍細胞および末梢血単核球(PBMC)においても実証され、PBMCでは組み換えヒトrMIAはIL-2-またはPHA-誘導性PBMC増殖を用量依存的に阻害した。さらに、自家性または同種異系LAK細胞毒性もまた、MIAによって阻害された(ジャキムツァク(Jachimczak)ら, Proceeding of AACR, 41: 115,2000)。
【0003】
ブレシュ(Blesch)らはMIAを、プロセシングさせて107アミノ酸の成熟タンパク質となる131アミノ酸の前駆体として同定した。この発表は、MIAが悪性黒色腫細胞に対して強力な腫瘍細胞増殖因子として作用することを確認し、およびさらに、この観察を他の神経外胚葉性腫瘍に拡張した。彼らは、「MIAは未来の抗がん治療物質として魅力的でありうる」と結論した(Cancer Res. 54; 5695-5701,1994)。
【0004】
しかし、別の研究は腫瘍抑制因子と一致しない発現パターンを明らかにした。対照的に、ヴァン・グロニンゲン(van Groningen)らは、非転移性細胞株におけるMIA mRNA発現、および黒色腫転移病変における色素沈着とMIA mRNA発現の逆相関を見出したが、特に、高転移性細胞株では発現が存在しないことが見出された(Cancer Res. 55; 6237-6243,1995)。
【0005】
より近年では、ボッセルホフ(Bosserhoff)らは、MIAは黒色腫細胞のフィブロネクチンおよびラミニンへの接着を特異的に阻害し、それによってこれらの細胞外マトリクス成分へのインテグリンの結合部位をマスキングし、およびin vivoの浸潤および転移を促進することを観察した(ボッセルホフら, Hautarzt 49,762-769, 1998 ;ストール(Stoll)ら, EMBO J 20,340-349, 2001)。したがってin vitroの成長阻害活性は、ブレシュ(Blesch)ら(Cancer Res. 54; 5695-5701,1994)によって観察された細胞の培養シャーレ表面への接着にMIAが干渉する能力を反映しうる。
【0006】
グバ(Guba)らによって行われたハムスターでの別の実験(Brit. J. Cancer 83, 1216-1222, 2000)は、黒色腫転移中のMIAのin vivoでの役割を分析した。MIAをトランスフェクションしたA-mel3ハムスター黒色腫細胞におけるMIAの発現の実行は、対照をトランスフェクションした細胞と比較して転移能を有意に増大させた。加えて、MIAを過剰発現している細胞は、腫瘍細胞浸潤および血管外遊出の両方のより高い率を示した。ボッセルホフ(Bosserhoff)らは、これらの結果を、安定にMIAをトランスフェクションしたB16マウス黒色腫細胞の使用によって確認した(ボッセルホフら, Melanoma Res. 11; 417-421,2001)。これらの細胞が同系C57B16マウスにおいて肺転移を形成する能力は、マウスでのMIA分泌のレベルと厳密に相関した。
【0007】
MIA発現の黒色腫進行との臨床的相関はボッセルホフ(Bosserhoff)ら(Cancer Res. 57; 3149-53; 1997)によって発見され、および他者によって確認された(スターレッカー(Stahlecker)ら, Antiがん Res. 19; 2691-3,2000)。ステージIIIにある転移悪性黒色腫を有する患者に由来する血清の81%およびステージIVの患者に由来する血清の97%もがMIA値の上昇を示した。疾患ステージIまたはIIの患者は、それぞれ13および23%の、わずかに上昇しただけのMIAレベルを有した(ボッセルホフら, Cancer Res. 57; 3149-53 ; 1997)。加えて、非常に悪い予後診断の進行胃腸がんの患者の一部についても血清反応陽性が報告されたため、MIAは他の種類の悪性腫瘍においてマーカーとして有用でありうるという証拠がある(ワグナー(Wagner)ら, Med. Oncol. 1735-38,2000)。近年、脊椎脊髄疾患患者由来の脳脊髄液検体でMIAレベルが測定された(ナツメ(Natsume)ら, Spine 26 (2): 157-60,2001)。
【0008】
頸髄障害、腰部脊柱管狭窄症、および腰椎椎間板ヘルニアにおけるMIAの濃度は対照群より有意に高かった。興味深いことに、MIAは生理的条件下で中枢神経系では発現されない。
【0009】
さらに、in situハイブリダイゼーション実験および免疫組織化学法が、MIAを骨格系の成長域内の発生胚に局在し、およびMIAは軟骨細胞の周辺で発現し、分泌され、および蓄積する。加えて、MIAは軟骨肉腫で病的に発現される(ボッセルホフ(Bosserhoff)ら, Dev Dyn 208 (4): 516-525,1997)。
【0010】
高レベルのMIAが軟骨細胞に見出されたため、MIAはまた慢性関節リウマチおよび軟骨損傷についての潜在的マーカーとして調べられた。ミュラー−ラドナー(Muller-Ladner)らは、関節破壊を伴うリウマチ性疾患、変形性関節炎、HLA-27随伴少数関節炎、乾癬性関節炎および慢性関節リウマチの患者においてMIA血清濃度の上昇を見出し、MIAの最も有意な上昇は慢性関節リウマチで見出された(ミュラー−ラドナーら, Rheumatology 38; 148- 154,1999)。
【0011】
しかし、腫瘍の場合には、MIAは調べた悪性黒色腫のすべてによって発現され血清中へ分泌されるが、基底細胞がんおよび扁平上皮細胞がんを含む他の皮膚腫瘍でも、正常なメラニン細胞およびケラチン生成細胞でもされないことが見出された(ボッセルホフ(Bosserhoff)ら, J Pathol 187 (4): 446-454,1999)。 加えて、MIA発現はさらに、分析したすべての進行乳がんおよび転移に見出され、悪性上皮腫瘍における以前に血清試験で測定されたよりもずっと広範囲の発現を示唆した(ボッセルホフら, J Pathol 187 (4): 446-454, 1999)。
【0012】
[従来技術]
MIAの発現および/または機能活性の阻害のための分子は、国際公開第01/68122号パンフレットで公表されている。阻害は、少なくとも一つの核酸分子、ペプチド、タンパク質または低分子物質を用いることによって達成され、核酸分子はオリゴまたはポリヌクレオチド分子、特にアンチセンス分子および/またはリボザイムである。上記の特許出願は、MIAの発現および/または機能を阻害することができおよびそれによって免疫抑制を覆す、オリゴヌクレオチドを含む分子に関する(国際公開第01/68122号パンフレット)。
【0013】
より高い効力を有するMIAアンチセンスオリゴヌクレオチドを開発することが本発明の目的であった。
【0014】
本発明は、下記の配列5'-TTG CAT AAA CCC AAG GAG-3'を有するアンチセンスオリゴヌクレオチド、その修飾、少なくとも8ヌクレオチドを有する該アンチセンスオリゴヌクレオチドの一部および/またはその修飾に関する。それらは、従来技術のアンチセンスオリゴヌクレオチドよりも、「黒色腫阻害活性(MIA)」の発現および/または機能の驚くほどずっと効果的な阻害を示し、それによって、より効果的な腫瘍浸潤の阻害および/または転移の阻害、および免疫細胞および/または免疫系のより効果的な刺激を導く。本発明はまた、少なくとも一つのアンチセンスオリゴヌクレオチドまたはその修飾を含む医薬組成物に、および腫瘍、感染症および/または免疫抑制疾患の予防または治療のためのその使用に関する。
【0015】
いくつかのオリゴヌクレオチドがこれまでにすでに試験されているが(国際公開第01/68122号パンフレットを参照)、配列5'-TTG CAT AAA CCC AAG GAG-3'を有するアンチセンスオリゴヌクレオチドは、驚くべきことに、国際出願公開第01/68122号パンフレットの配列番号1〜8のアンチセンスオリゴヌクレオチドと比較してMIAの最も強い阻害を示した。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の一実施形態では、配列5'-TTG CAT AAA CCC AAG GAGまたはその修飾を有するアンチセンスオリゴヌクレオチドは、MIAをコードする遺伝子領域とハイブリダイズできおよびそれによってMIAの発現を減少および/または阻害する、DNA型またはRNA型構造を有する。また、少なくとも8ヌクレオチドを有する上記の所定のアンチセンスオリゴヌクレオチドの部分配列またはその修飾を持つ断片は、MIAの産生が減少または阻害される限りは本発明に従って作用することが当業者に理解される。
【0017】
下記で、配列5'-TTG CAT AAA CCC AAG GAGを有するアンチセンスオリゴヌクレオチドおよび少なくとも8ヌクレオチドを有するこの配列の一部に相当するアンチセンスオリゴヌクレオチドは、アンチセンスオリゴヌクレオチドと呼ばれる。
【0018】
別の一実施形態では、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、糖部分、塩基および/またはヌクレオチド間結合およびリン酸塩部分の一つ以上で修飾されている。たとえば、オリゴヌクレオチドの修飾は、ホスホロチオエート(S-ODN)ヌクレオチド間結合、メチルホスホナートヌクレオチド間結合、ホスホロアミダート結合、ペプチド結合、糖の2'-O-アルキル修飾、特にメチル、エチル、プロピル、ブチルなど、糖の2'-メトキシエトキシ修飾および/または塩基の修飾といった修飾を含む。さまざまな修飾は、一個のオリゴヌクレオチドにおいて組み合わされうる。
【0019】
一実施形態では、修飾オリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチド中のヌクレオチドのリボース基の環構造は、環構造中の酸素がN-H、N-R、Sおよび/またはメチレンで置換されている。
【0020】
別の実施形態では、骨格修飾は2'-O-メチルリボヌクレオシド(2'-O-Me)を含む。これらの種類の置換は文献に広汎に記載されており、および特に免疫刺激特性についてチャオ(Zhao)ら, Bioorganic and Medicinal Chemistry Letters, 1999,9 : 24: 3453に記載されている。チャオらは核酸への2-O-Me 修飾を調製する方法を記載し、参照により本開示に含まれる。
【0021】
さらに別の実施形態では、2'-置換オリゴヌクレオチドおよびポリヌクレオチドのエキソヌクレアーゼ耐性を高めるために、オリゴリボヌクレオチド配列の3'および/または5'末端が好ましくはエキソヌクレアーゼ阻害基と結合されている。
【0022】
阻害基の一覧の一部は、逆塩基、2'-または3'-O-アリールヌクレオチド(好ましくはアリールはメチル、エチルまたはプロピルである)、ジデオキシヌクレオチド、メチルリン酸、アルキル基、アリール基、コルジセピン、シトシンアラビノシド、ホスホロアミダート、ペプチド結合、ジニトロフェニル基、フルオレセイン、コレステロール、ビオチン、ビオチン類縁物質、アビジン、アビジン類縁物質、ストレプトアビジン、アクリジン、ローダミン、ソラレン、グリセリル、メチルホスホナート、ブタノール、ブチル、ヘキサノ、および3'-O-アルキルを含む。
【0023】
好ましい一実施形態では、少なくとも一つの阻害基はビオチン、ビオチン類縁物質、アビジン、またはアビジン類縁物質である。これらの分子は、1)オリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドの分解を阻害および2)固相担体への修飾核酸の高親和性結合のための手段を提供する両方の能力を有する。本発明の試薬を調製するために用いることができるアビジンおよびビオチン誘導体は、ストレプトアビジン、スクシニル化アビジン、単量体アビジン、ビオシチン(ビオチン-ε-N-リジン)、ビオシチンヒドラジド、2-イミノビオチンのアミンまたはスルフヒドリル誘導体およびビオチニル-ε-アミノカプロン酸ヒドラジドを含む。他のビオチン誘導体、たとえばビオチン-N-ヒドロキシスクシンイミドエステル、ビオチニル-ε-アミノカプロン酸-N-ヒドロキシスクシンイミドエステル、スルホ-スクシンイミジル6-(ビオチンアミド)ヘキサノアート、N-ヒドロキシスクシンイミドイミノビオチン、ビオチンブロモアセチルヒドラジド、p-ジアゾベンゾイルビオシチンおよび3-(N-マレイミドプロピオニル)ビオシチンもまた、本発明のポリヌクレオチド上で末端阻害基として用いることができる。
【0024】
好ましい一実施形態では、オリゴヌクレオチド上の少なくとも一つの末端阻害基は、ビオチン、ビオチン類縁物質、アビジン、またはアビジン類縁物質である。これらの分子は、1)オリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドの分解を阻害および2)固相担体への修飾核酸の高親和性結合のための手段を提供する両方の能力を有する。本発明の試薬を調製するために用いることができるアビジンおよびビオチン誘導体は、ストレプトアビジン、スクシニル化アビジン、単量体アビジン、ビオシチン(ビオチン-ε-N-リジン)、ビオシチンヒドラジド、2-イミノビオチンのアミンまたはスルフヒドリル誘導体およびビオチニル-ε-アミノカプロン酸ヒドラジドを含む。他のビオチン誘導体、たとえばビオチン-N-ヒドロキシスクシンイミドエステル、ビオチニル-ε-アミノカプロン酸-N-ヒドロキシスクシンイミドエステル、スルホスクシンイミジル6-(ビオチンアミド)ヘキサノアート、N-ヒドロキシスクシンイミドイミノビオチン、ビオチンブロモアセチルヒドラジド、p-ジアゾベンゾイルビオシチンおよび3-(N-マレイミドプロピオニル)ビオシチンもまた、本発明のポリヌクレオチド上で末端阻害基として用いることができる。
【0025】
好ましい一実施形態では、アンチセンスオリゴヌクレオチドまたはその効果的な修飾は、ホスホロチオエート-オリゴデオキシヌクレオチドである。
【0026】
本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドを合成するための方法は当業者に公知である。一つの可能な合成法の原理は、ヌクレオチド鎖を3'->5'方向へ伸長させることによる亜リン酸トリエステル化学を用いる固相合成を使用し、および下記に説明される:
各ヌクレオチドは第一のヌクレオシドと結合され、第一のヌクレオシドは固相と共有結合され、下記の段階を含む
a)前のヌクレオチドの5'DMT保護基を切断
b)鎖伸長のための各ヌクレオチドを添加
c)亜リン酸基を修飾し、および続いて未反応の5'-水酸基を保護
d)完全長オリゴヌクレオチドのためのa)〜c)のサイクルの反復
e)オリゴヌクレオチドを固相担体から切断
f)続いて合成産物を作製する。
【0027】
アリール-およびアルキルホスホナートは、たとえば、米国特許第4,469,863号明細書に記載の通りに作製でき;およびアルキルホスホトリエステル(荷電酸素部分が米国特許第.5,023,243号明細書および欧州特許第092,574号明細書に記載の通りにアルキル化される)は自動化固相合成によって市販の試薬を用いて調製できる。
【0028】
他のDNA骨格修飾および置換を行うための方法が記載されている(ウールマン(Uhlmann),E.およびペイマン(Peyman), A. , Chem. Rev. 90: 544,1990 ; グッドチャイルド(Goodchild), J., Bioconjugate Chem. 1: 165,1990)。
【0029】
オリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドポリマーをヌクレアーゼ耐性にする他の方法は、プリンまたはピリミジン塩基を共有結合によって修飾することを含むがそれに限定されない。たとえば、オリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドが実質的に酸およびヌクレアーゼ耐性となるように、塩基はメチル化、ヒドロキシメチル化、または他の置換をされうる(たとえば、グリコシル化)。
【0030】
他の代表的な複素環式塩基は、メリガン(Merigan)らに発行された米国特許第3,687,808号明細書に開示されている。「プリン」または「ピリミジン」または「塩基」の語はここでは、天然に存在するかまたは合成のプリン、ピリミジンまたは塩基の両方を言うのに用いられる。
【0031】
オリゴヌクレオチドおよびその修飾の化学構造が図2に示される。そのオリゴヌクレオチド鎖は、より長いヌクレオチド鎖からの詳細と理解すべきである。
【0032】
図2aでは、記号Bは塩基オリゴデオキシリボヌクレオチド中のアデニン(A)、グアニン(G)、シトシン(C)またはチミン(T)(図2bに示す)といった有機塩基、およびオリゴリボヌクレオチド中の塩基であるアデニン(A)、グアニン(G)、シトシン(C)、ウラシル(U)(図2cに示す)を意味する。塩基は、塩基AおよびGの場合には窒素N9、または塩基C、TおよびUの場合には窒素N1を介して、デオキシリボースまたはリボースとそれぞれ結合している。塩基の配列は、遺伝標的配列MIAの相補鎖である。
【0033】
図2aのオリゴデオキシリボヌクレオチドおよびオリゴリボヌクレオチドの修飾は下記の通りであり、それについてオリゴデオキシリボヌクレオチドおよびオリゴリボヌクレオチドの両方がオリゴヌクレオチドと呼ばれる:
1. すべてのR1
1.1 R1=O-M+、ここですべてのM+はNa+またはH+である
1.2 R1=S-M+、ここですべてのM+はNa+またはH+である
1.3 R1=CH3
1.4 R1=C2H5
1.5 R1=OCH3または
1.6 R1=OC2H5
であるオリゴヌクレオチド
【0034】
2. R1が1つのオリゴヌクレオチド内のヌクレオチド間リン酸塩で異なるオリゴヌクレオチド。下記の式では、図2a)のR1をR1aまたはR1bと呼ぶ。
【化1】

ここで
B=オリゴデオキシリボヌクレオチド中の塩基A、C、GまたはT、または同様にオリゴリボヌクレオチド中の塩基A、C、GまたはUのうちの1つ
p=ヌクレオチド間リン酸塩
(B-p-)n= n=1〜12、好ましくは2〜11であるオリゴデオキシリボヌクレオチドまたはオリゴリボヌクレオチド鎖
R1a、R1bは下記の群から選択される
2.1
R1a=S-M+、ここですべてのM+はNa+またはH+である
R1b=O-M+、ここですべてのM+はNa+またはH+である
2.2
R1a=CH3
R1b=O-M+、ここですべてのM+はNa+またはH+である
2.3
R1a=S-M+、ここですべてのM+はNa+またはH+である
R1b=CH3
2.4
R1a=CH3
R1b=S-M+、ここですべてのM+はNa+またはH+である
【0035】
3. R1が1つのオリゴヌクレオチド内のヌクレオチド間リン酸塩で交替されるオリゴデオキシリボヌクレオチド。下記の式では、図2a)のR1をR1aまたはR1bと呼ぶ。
【化2】

ここで
B=遺伝子配列に応じて、オリゴデオキシリボヌクレオチドに含まれる塩基A、C、GまたはT、または同様にオリゴリボヌクレオチドに含まれる塩基A、C、GまたはUのうちの1つ
p=ヌクレオチド間リン酸塩
(B-p-B-p)n= n=2〜8、好ましくは3〜7であるオリゴデオキシリボヌクレオチドまたはオリゴリボヌクレオチド鎖
R1a、R1bは下記の群から選択される
3.1
R1a=S-M+、ここですべてのM+はNa+またはH+である
R1b=O-M+、ここですべてのM+はNa+またはH+である
3.2
R1a=CH3
R1b=O-M+、ここですべてのM+はNa+またはH+である
3.3
R1a=S-M+、ここですべてのM+はNa+またはH+である
R1b=CH3
【0036】
4.R2がHまたは共有結合したコレステロール、ポリ-(L)リジンまたはトランスフェリンであるオリゴヌクレオチドまたはその修飾。
5.R3がHまたは共有結合したコレステロール、ポリ-(L)リジンまたはトランスフェリンであるオリゴヌクレオチドまたはその修飾。
6.すべてのR4が下記から成る群から選択される、1.1〜1.6;2.1〜2.4;3.1〜3.3;4、5に記載された修飾のうち任意のもの:
6.1 R4=H
6.2 R4=F
6.3 R4=CH3
6.4 R4=C2H5
6.5 R4=OH
6.6 R4=OCH3
6.7 R4=OC2H5
【0037】
アンチセンスオリゴヌクレオチドの修飾は、使用される際に内因性因子によって、これが天然に存在するヌクレオチド配列について有効であるほどには早く破壊されないため、有利である。しかし、開示された配列のうち一つを有する天然に存在するオリゴヌクレオチドもまた本発明に従って用いることができることが当業者に理解される。非常に好ましい一実施形態では、修飾はホスホロチオエート修飾である。
【0038】
オリゴデオキシヌクレオチドのための当業者に公知であるいくつかの合成法の中で、一つの可能な方法が一例として下記により詳細に説明される。
【0039】
オリゴデオキシヌクレオチドは、亜リン酸トリエステル化学を用いて保護ヌクレオチドの5'付加によって段階的に合成される。ヌクレオチドAは5'-ジメトキシトリチル-デオキシアデノシン(N4-ベンゾイル)-N,N'-ジイソプロピル-2-シアノエチルホスホロアミダイトとして導入され;ヌクレオチドCは5'-ジメトキシトリチル-デオキシシチジン(N4-ベンゾイル)-N,N'-ジイソプロピル-2-シアノエチルホスホロアミダイトによって導入され;ヌクレオチドGは5'-ジメトキシトリチル-デオキシグアノシン(N8-イソブチリル)-N,N'-ジイソプロピル-2-シアノエチルホスホロアミダイトとして導入され、およびヌクレオチドTは5'-ジメトキシトリチル-デオキシチミジン-N,N'-ジイソプロピル-2-シアノエチルホスホロアミダイトとして導入される。ヌクレオチドは好ましくは、アセトニトリルに溶解して濃度0.1Mで使用される。
【0040】
合成はたとえば、3'ヌクレオシドが長鎖アルキルアミンリンカーを介して共有結合した、直径約150mm(孔径500Å)の孔径制御ガラス粒子上で実施できる(平均負荷30μmol/g固相合成担体)。
【0041】
固相合成担体は円筒形の合成カラムに負荷され、両端がフィルターでキャップされ、試薬の適当な流量を可能にするが固相合成担体は保持される。試薬は不活性ガスの陽圧を用いて合成カラムへ送られおよびカラムから除かれる。ヌクレオチドは3'->5'方向へ伸長するオリゴヌクレオチド鎖へ加えられる。各ヌクレオチドは下記の合成サイクルの1回を用いて結合される:
前のヌクレオチドの5'DMT(ジメトキシトリチル)保護基の切断は3-クロロ酢酸含有ジクロロメタンを用いて実施され、次いでカラムを無水アセトニトリルで洗浄する。その後、塩基の一つを配列に応じて保護誘導体の形で、テトラゾール含有アセトニトリルと共に加える。反応後、反応混合物を回収し、および亜リン酸を、硫黄(S8)を含む二硫化炭素/ピリジン/トリエチルアミンの混合物を用いて酸化する。酸化後、反応混合物を回収し、およびカラムをアセトニトリルで洗浄する。未反応の5'-水酸基は、1-メチルイミダゾールおよび無水酢酸/ルチジン/テトラヒドロフランの同時添加によって保護される。その後、合成カラムをアセトニトリルで洗浄し、および次のサイクルを開始する。
【0042】
合成産物の作製手順および精製は下記の通り実施しうる:
最後のヌクレオチドの付加後、アンモニウム溶液中でのインキュベートによってデオキシヌクレオチドを固相担体から切断する。環外塩基保護基はアンモニア中でのさらなるインキュベートによって除去される。その後、アンモニアを減圧下で蒸発させる。5'DMT保護基をまだ持っている完全長合成産物を、逆相C18固定相での逆相高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いて、より短い失敗夾雑物から分離する。産物ピークからの溶離液を回収し、減圧下で乾燥し、および5'-DMT保護基を酢酸中でのインキュベートによって切断し、酢酸はその後に減圧下で蒸発させる。合成産物を脱イオン水に溶解し、およびジエチルエーテルで三回抽出する。次いで産物を減圧下で乾燥する。別のHPLC-AX(HPLC-陰イオン交換)クロマトグラフィーを実施し、および産物ピークからの溶離液を、過剰のトリス緩衝液に対して透析し、および2回目の透析を脱イオン水に対して行う。最終産物は凍結乾燥し、および乾燥して保存する。
【0043】
これはホスホロチオエート-オリゴデオキシヌクレオチドの合成のための一つの可能な方法であることが理解される。ここに与えられた説明への改善および改変は当業者が考えることができ、およびなお本発明の範囲内にあることが明らかである。
【0044】
オリゴリボヌクレオチドの合成のための方法は当業者に公知である。2'-ACE RNA化学を用いる一つの可能な方法がスカリンジ(Scaringe), S. A.によって記載されている:『5'-シリル-2'-オルトエステル化学によるRNAオリゴヌクレオチド合成』("RNA Oligonucleotide Synthesis via 5'-Silyl-2'-Orthoester Chemistry"), 方法 23,206-217, 2001)。
【0045】
これはオリゴリボヌクレオチドの合成のための一つの可能な方法であることが理解される。ここに与えられた説明への改善および改変を当業者が考えることができることが明らかである。
【0046】
一実施形態では、アンチセンスオリゴヌクレオチドまたはその修飾は、「黒色腫阻害活性(MIA)」の発現および/または機能活性を阻害することによる免疫系の刺激に用いることができる。
【0047】
別の一実施形態では、アンチセンスオリゴヌクレオチドまたはその修飾は、a)〜mに列記される分子、ウイルス、ペプチドおよび/または細胞抽出物のうち少なくとも一つと組み合わせて用いられる:
a)リンフォタクチンおよび/または免疫細胞誘引因子を含むケモカインから成る群から選択される分子;
b)アデノウイルス、パピローマウイルス、エプスタイン−バー−ウイルス、ニューカッスル病ウイルス、牛痘ウイルスを含む非病原性ウイルス、を含むウイルスおよび/またはウイルスの一部;
c)自家および/または異種MHC分子;
d)抗原処理に関与する分子;
e)抗原提示に関与する分子;
f)免疫−細胞作用の媒介に関与する分子;
g)免疫細胞の細胞毒性作用の媒介に関与する分子;
h)抗原輸送に関与する分子;
i)同時刺激分子;
j)免疫細胞による認識および/または免疫細胞の細胞毒性作用を増大するペプチド;
k)黒色腫細胞および/またはメラニン細胞および/または乳房細胞および/または乳がん細胞に特異的な抗原を含むがそれに限定されない、標的細胞中のタンパク質と生物内のそれ以外の細胞とで異なる一つ以上のアミノ酸を含むペプチド;本発明によるとMIAの合成および/または機能の阻害は群l)の分子を用いることによって達成される:
l)下記から成る群から選択された分子
・Rasタンパク質アミノ、p53タンパク質、EGF受容体タンパク質、融合ペプチドおよび/または融合タンパク質、網膜芽細胞腫タンパク質の一つ以上の突然変異および/またはアミノ酸置換を含むペプチド、遺伝子再配列および/または遺伝子転座によって生じた一つ以上の突然変異および/またはアミノ酸置換および/またはアミノ酸置換を含むペプチド、がん遺伝子および/または前がん遺伝子にコードされるタンパク質の一つ以上の突然変異および/またはアミノ酸置換を含むペプチド、抗がん遺伝子および/または腫瘍抑制因子遺伝子にコードされるタンパク質;
・同一の生物中の別の細胞に発現されるタンパク質とは1またはアミノ酸が標的細胞では異なるタンパク質に由来するペプチド、
・ウイルス抗原に由来および/またはウイルス核酸にコードされるペプチド
・正常細胞と比較して標的細胞で過剰発現されているタンパク質に由来するペプチド
・およびその組み合わせ
m)腫瘍細胞抽出物および/または腫瘍細胞溶解物および/またはアジュバント。
【0048】
a)〜m)に列記された少なくとも一つのアンチセンスオリゴヌクレオチド、ウイルス、ペプチドおよび/または細胞抽出物を含む分子は、下記の方法によって用いることができ、適用はこれらの方法に限られない:
・a)〜m)に列記された分子の全部または一部をコードするDNAおよび/またはRNA、および/またはa)〜m)に列記された分子に含まれるポリペプチドを人体に接種することによる
・a)〜m)に列記された分子をコードする遺伝子を用いて、人体のトランスフェクションおよび/または標的細胞および/または標的病原体をトランスフェクションすることによる
・静脈内、動脈内、皮下、腹腔内、または筋肉内注射または輸液によって非経口的に、および/または経口、表皮または経皮投与によって局所的に。
【0049】
別の一実施形態では、アンチセンスオリゴヌクレオチドまたはその修飾は、サイトカイン、および/またはインターロイキン-10および/または形質転換増殖因子ベータ(TGF-β)および/またはプロスタグランジンB2の発現および/または機能の阻害因子、および/またはプロスタグランジンE2の受容体および/またはVEGFの阻害因子から成る群から選択される免疫刺激剤と組み合わせることができる。
【0050】
別の一実施形態では、アンチセンスオリゴヌクレオチドまたはその修飾は、下記の分子、方法、ペプチドおよび/または細胞抽出物のうち少なくとも一つと組み合わせることができる:
・疾患細胞または病原体に対する免疫応答を増大する分子
・標的細胞および/または標的病原体の免疫原性を増大する方法および/または分子
・IL-1、IL-2、IL-4、IL-12、IL-18といったインターロイキンを含むサイトカインを含む免疫刺激分子
・発現を刺激することによって、および/またはこれらのサイトカインを発現できる標的細胞または標的病原体へ発現系をトランスフェクションすることによって、標的細胞または病原体におけるサイトカインの発現を増大させるための方法、および/または
・リンフォタクチンを含む、免疫細胞を誘引するケモカイン
・発現を刺激することによって、および/またはこれらのケモカインを発現できる標的細胞または標的病原体へ発現系をトランスフェクションすることによって、標的細胞または病原体におけるケモカインの発現を増大させるための方法
・腫瘍細胞および/または病原体に見出されるが正常細胞には見られない、ペプチドおよび/またはDNAおよび/またはRNA分子およびまたは他の抗原
・腫瘍細胞および/または病原体に見出されるが正常細胞には見られない、ペプチドおよび/または抗原の発現を増大させるための方法
・腫瘍細胞抽出物および/または腫瘍細胞溶解物および/またはアジュバント。
【0051】
少なくとも一つのアンチセンスオリゴヌクレオチド、ペプチドおよび/または細胞抽出物を含むこれらの分子は、静脈内、動脈内、腹腔内、皮下または筋肉内注射または輸液によって非経口的に、および/または経口、表皮または経皮投与によって局所的に投与されうる。適用のために好ましい対象は哺乳類であり、非常に好ましい対象はヒトである。
【0052】
別の一実施形態では、アンチセンスオリゴヌクレオチドのコード配列は、ウイルスおよび/または非ウイルスベクターと共に陰イオン性脂質、陽イオン性脂質、非イオン性脂質およびその混合物を含む、DNAデリバリーシステムに組み込まれている。
【0053】
アンチセンスオリゴヌクレオチドはしたがって、隣接配列および/またはベクター配列および/または核酸分子の発現および/またはトランスフェクションを促進する配列を含みうる。
【0054】
本発明の好ましい一実施形態では、アンチセンスオリゴヌクレオチドのコード配列は、一つ以上のベクターおよび/またはウイルス配列および/またはウイルスベクターの一部である。
【0055】
本発明の別の実施形態では、アンチセンスオリゴヌクレオチドまたはその修飾は、葉酸、ホルモン、エストロゲン、プロゲステロン、副腎皮質ステロイド、鉱質コルチコイドといったステロイドホルモン、ペプチド、プロテオグリカン、糖脂質、リン脂質およびその誘導体と結合しているかまたは混合している。
【0056】
さらに別の一実施形態では、アンチセンスオリゴヌクレオチドまたはその修飾は、薬剤の調製に用いることができる。
【0057】
より好ましい一実施形態では、アンチセンスオリゴヌクレオチドは薬剤の調製のために前述の免疫刺激剤の一つ以上と組み合わされ、その薬剤は局所的または全身的に腫瘍または他の病変部または器官へ投与されうる。
【0058】
別の一実施形態では、薬剤は、黒色腫、胃腸がん、乳がん、膵臓がん、卵巣がん、軟骨肉腫、脊椎脊髄疾患、頸髄障害、腰部脊柱管狭窄症、腰椎椎間板ヘルニア、慢性関節リウマチ、変形性関節炎、HLA-27-随伴少数関節炎、乾癬性関節炎およびリウマチ性関節炎、軟骨損傷および/または関節破壊から成る群から選択される腫瘍および疾患の予防または治療のために用いられる。
【0059】
用いられるオリゴヌクレオチドの有効量は、医薬組成物が単回用量または複数用量のどちらで用いられるか、および一つの医薬組成物中にアンチセンスオリゴヌクレオチドが一つだけまたは数種類のどちらであるかに応じて変化する。
【0060】
本文書で与えられる用量は成人用である。これらの用量は、そのヒトが小児、他の疾患または他の環境によってストレスを受けた人である場合には調整しなければならないことが当業者には非常に明らかである。
【0061】
有効用量はまた、投与の方法および手段にも依存する。
【0062】
投与経路は、エレクトロコーポレーション、表皮、皮膚圧痕、動脈内、関節内、頬内、頭蓋内、皮内、病変内、筋肉内、鼻内、眼内、腹腔内、前立腺内、肺内、脊柱内、くも膜下、気管内、腫瘍内、静脈内、膀胱内、体腔内への配置、経鼻吸入、経口、肺吸入(たとえば、ネブライザーによるのを含む、粉剤またはエアロゾルの吸入または吸入による)、皮下、皮下、局所(眼、および膣および直腸デリバリーを含む粘膜へを含む)および経皮を含むがそれらに限定されない。
【0063】
一実施形態では、ここに記載のオリゴヌクレオチドの対象用量は典型的には、投与当たり約0.05μg/kgから約500mg/kg、好ましくは約1μg/kgから約100mg/kg、およびより好ましくは約100μg/kgから約50mg/kgの範囲であり、投与形態に応じて毎時間、毎日、毎週、または毎月およびその間の任意の他の期間に投与することができる。
【0064】
一部の実施形態では、しかし、用量は、上記の典型的な用量よりも2ないし100倍高いまたは低い範囲で用いることができる。たとえば経口投与については上記に示す用量の上限は、最大1mg/kgまたは最大約5mg/kgでさえありうる。
【0065】
一実施形態では、オリゴヌクレオチドを含む溶液の適用が連続輸液で示され、さらに別の一実施形態ではその溶液のいくつかのボーラス注射または短期輸液が用いられる。輸液によって投与されるオリゴヌクレオチドの用量は典型的には約0.05μg/kg/日 ないし約100mg/kg/日 、より好ましくは約1μg/kg/日 ないし約50mg/kg/日 、およびより好ましくは約100μg/kg/日 ないし約30mg/kg/日 の範囲である。一部の実施形態では、輸液またはボーラス注射は、約1ないし100回またはさらに多く、より好ましくは約3ないし約30回、およびさらにより好ましくは5ないし約10回反復される。
【0066】
この用途に関連して短期輸液とは、約0.1時間ないし約4時間、より好ましくは約0.5時間ないし約3時間、および非常に好ましくは約1時間ないし約2時間の輸液を意味する。
【0067】
この用途に関連して連続輸液とは、約5時間ないし最大約24時間、数日、数週間、または数ヶ月もの輸液を意味する。
【0068】
特定の実施形態での連続輸液は、約1から100回およびさらに多数反復され、別の実施形態では約3から約30回、およびさらに別の実施形態では約5から約10回反復される。
【0069】
一部の実施形態では、オリゴヌクレオチド溶液が用いられない期間には、標準輸液溶液、たとえば0.9%塩化ナトリウム溶液、乳酸加リンゲル液、デキストランなどといった等張液が用いられる。
【0070】
アンチセンス療法に用いられる用量のさらなる詳細は、たとえば参照により本開示に含まれるFlaherty Current Opinion in Oncology 2001,13 : 499-505に総説がある。
【0071】
本発明のオリゴヌクレオチドは、純粋に、または医薬品として許容されるキャリヤー中で用いられる。本発明に関連して医薬品として許容されるキャリヤーとは、オリゴヌクレオチドの投与に適した任意の医薬組成物または処方を意味する。
【0072】
一部の実施形態では、経口投与用の組成物および処方は、粉末または顆粒、懸濁液、または水または非水系溶媒中の溶液、カプセル、サック、または錠剤を含む。
【0073】
別の実施形態では、非経口投与用の組成物および処方は、オリゴヌクレオチドは無菌水溶液に溶解され、無菌水溶液はまた緩衝剤、希釈剤および他の適当な添加物、たとえばキャリヤー化合物、他の医薬品として許容されるキャリヤーまたは添加物を含みうる。
【0074】
さらに別の実施形態では、局所投与用の組成物および処方は、経皮パッチ、軟膏、ローション、滴下剤、クリーム、ゲル、スプレー、液剤および粉末を含む。
【0075】
別の実施形態では、直腸投与用の組成物および処方は、坐剤および液剤を含む。
【0076】
さらに別の実施形態では、経鼻投与用の組成物および処方は、軟膏、クリーム、ゲル、滴家財、スプレー、液剤および粉末を含む。
【0077】
肺投与のための実施形態では、医薬組成物および処方はスプレーおよび粉末を含む。
【0078】
上記の医薬組成物および処方について、医薬キャリヤー、浸透促進剤、水溶性、粉末または油性基材、増粘剤、香料、希釈剤、乳化剤、分散剤、結合剤および他の添加物を加えることができる。一実施例では経口投与用の組成物および処方は腸溶コーティングされている。
【0079】
治療用途の他に、本発明のアンチセンス化合物はまた研究および診断に有用であり、それはこれらの化合物がMIAをコードする核酸とハイブリダイズして、この事実を利用してサンドイッチおよび他の検定法を容易に構築することを可能にするためである。MIAをコードする核酸との、本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドのハイブリダイゼーションは、本分野で公知である方法によって検出可能である。そのような手段は、オリゴヌクレオチドへの酵素の結合、オリゴヌクレオチドの放射性標識化、または任意の他の適当な検出法を含みうる。試料中のMIAのレベルを検出するための、そのような検出法を用いるキットもまた作製することができる。
【実施例】
【0080】
実施例1
MIA分泌のアンチセンスオリゴヌクレオチドによる阻害
本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドのMIA阻害に対する効力を、国際公開第01/68122号パンフレットに記載された配列番号1〜8の最先端のアンチセンスオリゴヌクレオチドと比較した。したがって、黒色腫細胞がオリゴヌクレオチドを用いてトランスフェクションされ、およびその細胞の細胞培養上清中のMIA発現を酵素結合免疫吸着検定法によって測定した。
【0081】
0日目に、75.000細胞を、12ウェル組織培養プレート中の1mlの培地(DMEM/10%FCS)へ播種した。1日目および2日目に、細胞を200nMのアンチセンスオリゴヌクレオチドでリポフェクチン(ギブコ(Gibco)BRL、ドイツ、エッゲンシュタイン(Eggenstein))を用いて取扱説明書に従ってトランスフェクションした。各アンチセンスオリゴヌクレオチドは三連でトランスフェクションされた。2日目に2回目のトランスフェクションの終わりに、細胞を5μMの各アンチセンスオリゴヌクレオチドを含むDMEM/10%FCS中でさらに三日間培養した。上清を採取し、およびMIAタンパク質の定量まで-20℃にて保存した。
【0082】
上清中のMIA濃度を、ELISAを用いて取扱説明書に従って測定した(ロシュ・ベーリンガー・マンハイム(Roche, Boehringer Mannheim)、ドイツ)。
【0083】
結果:未処理対照細胞と比較して、上清中のMIA発現の最も強い阻害は、本発明の「新」アンチセンスオリゴヌクレオチドを用いて達成され、MIA発現の阻害が48%〜66%の間で変動した国際公開第01/68122号パンフレットの配列番号1〜8の最先端のアンチセンスオリゴヌクレオチドと比較してMIA発現を84%阻害することができた。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】図1はHTZ-19黒色腫細胞における異なるオリゴヌクレオチドによるMIA発現の阻害を開示する。棒グラフは、未処理培地対照(培地)またはリポフェクチン処理細胞(リポフェクチン)と比較した、アンチセンスオリゴヌクレオチド処理の残存MIA発現を示す。番号1〜8は、配列番号1〜8を有する国際出願公開第01/68122号パンフレットの最先端のアンチセンスオリゴヌクレオチドに、または配列5-TTG CAT AAA CCC AAG GAG- 3'を有し「新」と呼ばれる本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドに対応する。最も強い阻害は、「新」アンチセンスオリゴヌクレオチドを用いて達成され、MIA発現の阻害が48%〜65%の間で変動した最先端のアンチセンスオリゴヌクレオチド1〜8(国際出願公開第01/68122号パンフレットの配列番号1〜8に対応)と比較してMIA発現を84%阻害することができた。
【図2】図2a〜cはオリゴヌクレオチドの構造を開示する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
・配列5'-TTG CAT AAA CCC AAG GAG-3'およびその修飾
・配列5'-TTG CAT AAA CCC AAG GAG-3'の少なくとも8ヌクレオチドを有する断片およびその修飾
の群から選択されるアンチセンスオリゴヌクレオチド。
【請求項2】
修飾が、一つ以上の糖部分、塩基および/またはヌクレオチド間結合、および/または取り込みおよび/または阻害活性の促進因子とのオリゴヌクレオチドの結合に関する、請求項1に記載のアンチセンスオリゴヌクレオチド。
【請求項3】
アンチセンスオリゴヌクレオチドがホスホロチオエートオリゴデオキシヌクレオチドである、請求項2に記載のアンチセンスオリゴヌクレオチド。
【請求項4】
【化1】

式中
・B=オリゴデオキシリボヌクレオチド中の塩基A、C、GまたはT、または同様にオリゴリボヌクレオチド中の塩基A、C、GまたはU
・R1=O-M+(M+=Na+またはH+)、S-M+(M+=Na+またはH+)、CH3、C2H5、OCH3、OC2H5
・R2および/またはR3は共有結合したコレステロール、ポリ-(L)リジン、トランスフェリンまたはHである
・R4=H、F、CH3、C2H5、OH、OCH3、OC2H5
:の各構造を有し、およびその構造はより長いヌクレオチド鎖からの詳細と理解すべきである、請求項1〜3に記載のアンチセンスオリゴヌクレオチド。
【請求項5】
【化2】

式中
B=オリゴデオキシリボヌクレオチド中の塩基A、C、GまたはT、または同様にオリゴリボヌクレオチド中の塩基A、C、GまたはU
p=ヌクレオチド間リン酸塩
(B-p-)n= n =1〜12、好ましくは1〜11であるオリゴデオキシリボヌクレオチドまたはオリゴリボヌクレオチド鎖
およびR1aまたはR1bと呼ぶR1は1つのオリゴヌクレオチド内のヌクレオチド間リン酸塩で異なる:
R1a=S-M+、ここですべてのM+はNa+またはH+である、およびR1b=O-M+、ここですべてのM+はNa+またはH+である
または
R1a=CH3およびR1b=O-M+、ここですべてのM+はNa+またはH+である
または
R1a=S-M+、ここですべてのM+はNa+またはH+ Sである、およびR1b=CH3
または
R1a=CH3およびR1b=S-M+、ここですべてのM+はNa+またはH+である
:という式を有する、請求項1〜4の一つに記載のアンチセンスオリゴヌクレオチド。
【請求項6】
【化3】

式中
B=遺伝子配列に応じて、オリゴデオキシリボヌクレオチドに含まれる塩基A、C、GまたはT、または同様にオリゴリボヌクレオチドに含まれる塩基A、C、GまたはUのうちの1つ
p=ヌクレオチド間リン酸塩
(B-p-B-p)n= n=2〜8、好ましくは3〜7であるオリゴデオキシリボヌクレオチドまたはオリゴリボヌクレオチド鎖
およびR1が1つのオリゴヌクレオチド内のヌクレオチド間リン酸塩で交替される:
R1a=S-M+、ここですべてのM+はNa+またはH+である、およびR1b=O-M+、ここですべてのM+はNa+またはH+である
または
R1a=CH3およびR1b=O-M+、ここですべてのM+はNa+またはH+である
または
R1a=S-M+、ここですべてのM+はNa+またはH+ Sである、およびR1b=CH3
:という式を有する、請求項1〜5の一つに記載のアンチセンスオリゴヌクレオチド。
【請求項7】
MIAの発現および/または機能活性の阻害、および/または浸潤および/または転移の低減、および/または免疫細胞および/または免疫系の刺激のための、請求項1〜6に記載のアンチセンスオリゴヌクレオチドの使用。
【請求項8】
請求項1〜7の一つに記載のアンチセンスオリゴヌクレオチドを含む医薬組成物。
【請求項9】
アンチセンスオリゴヌクレオチドが、ウイルスおよび/または非ウイルスベクターと共に、陰イオン性脂質、陽イオン性脂質、非陽イオン性脂質およびその混合物の群から選択される脂肪酸またはその誘導体を含む、DNAデリバリーシステムに組み込まれている、請求項8に記載の医薬組成物。
【請求項10】
追加で免疫刺激剤を含む、請求項8または9に記載の医薬組成物。
【請求項11】
追加の免疫刺激剤が、サイトカイン、および/またはインターロイキン-10および/または形質転換増殖因子ベータ(TGF-β)および/またはプロスタグランジンB2の発現および/または機能の阻害因子、および/またはプロスタグランジンE2の受容体および/またはVEGFの阻害因子の群から選択される、請求項10に記載の医薬組成物。
【請求項12】
腫瘍、感染症および/または免疫抑制疾患の予防および/または治療のための薬剤の調製のための、請求項8〜11の一つに記載の医薬組成物の使用。
【請求項13】
MIAの異常発現が関与する疾患、腫瘍、感染症および/または免疫抑制疾患の予防および/または治療のための薬剤の調製のための、請求項8〜11の一つに記載の医薬組成物の使用。
【請求項14】
黒色腫、胃腸がん、乳がん、膵臓がん、卵巣がん、軟骨肉腫、脊椎脊髄疾患、頸髄障害、腰部脊柱管狭窄症、腰椎椎間板ヘルニア、慢性関節リウマチ、変形性関節炎、HLA-27-随伴少数関節炎、乾癬性関節炎およびリウマチ性関節炎、軟骨損傷または関節破壊の群から選択される腫瘍および/または疾患の予防または治療のための薬剤の調製のための、請求項8〜11の一つに記載の医薬組成物の使用。
【請求項15】
請求項1〜7の一つに記載のアンチセンスオリゴヌクレオチドを含む診断組成物。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2007−501621(P2007−501621A)
【公表日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−522977(P2006−522977)
【出願日】平成16年8月11日(2004.8.11)
【国際出願番号】PCT/EP2004/008986
【国際公開番号】WO2005/014812
【国際公開日】平成17年2月17日(2005.2.17)
【出願人】(504282740)アンティセンス ファルマ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (8)
【Fターム(参考)】