いがぐり状ベーマイト及びその製造方法
【課題】針状でありながら充填された被充填物の加工性が良く、充填性に優れかつ被充填物に3次元的に配向するいがぐり状の形状を有する新規なベーマイトを提供する。いがぐり状ベーマイトの製造方法を提供する。フィラーにより付与される物性が高められる樹脂組成物を提供する。
【解決手段】多数の針状片が結束し、いがぐり状の形状をなすいがぐり状ベーマイト。水酸化アルミニウムと、第一添加剤の硫酸マグネシウムと、第二添加剤の水酸化ナトリウムと水酸化カリウムと水酸化カルシウムと水酸化マグネシウムとから選ばれるいずれか1種以上とを含み、硫酸マグネシウムの配合量は水酸化アルミニウム1モルに対するモル比で0.1〜0.5であり、第二添加剤の配合量は硫酸マグネシウム1モルに対するモル比で0.5〜1.2である原料を、水の存在下、200℃〜250℃で水熱反応させるいがぐり状ベーマイトの製造方法。
【解決手段】多数の針状片が結束し、いがぐり状の形状をなすいがぐり状ベーマイト。水酸化アルミニウムと、第一添加剤の硫酸マグネシウムと、第二添加剤の水酸化ナトリウムと水酸化カリウムと水酸化カルシウムと水酸化マグネシウムとから選ばれるいずれか1種以上とを含み、硫酸マグネシウムの配合量は水酸化アルミニウム1モルに対するモル比で0.1〜0.5であり、第二添加剤の配合量は硫酸マグネシウム1モルに対するモル比で0.5〜1.2である原料を、水の存在下、200℃〜250℃で水熱反応させるいがぐり状ベーマイトの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な形状のベーマイト及びその製造方法に関し、詳細には、多数の針状片が結束していがぐり状の形状をなすベーマイト及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ベーマイトは、AlO(OH)又はAl2O3・H2Oの化学組成で示され、一般的にアルミナ3水和物を水熱処理することにより製造される化学的に安定なアルミナ1水和物であり、電子基板をはじめとするプラスチック製品、ゴム、接着剤、塗料等の難燃用フィラー、補強用フィラー、膨張率抑制用フィラー、熱伝導用フィラーとして使用されている。また、塗料や化粧品の光輝用フィラー、触媒担体、アルミナの原料、製紙用塗工内填フィラー等様々な用途で使用されている。ベーマイトは、水熱処理の製造条件を調整することにより板状、針状、立方体状等の種々の形状に制御できる。アスペクト比の高い板状ベーマイトや針状ベーマイトは、被充填物の引張り強度、曲げ強度、弾性率等の機械的強度を増大させることができる。とりわけ、従来の針状ベーマイト(特許文献1、特許文献2参照)は、アスペクト比が高いだけでなく、比表面積が大きいため上記の効果に優れている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−54941号公報
【特許文献2】特開2008−37741号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の針状ベーマイトは、被充填物に充填した場合、被充填物の粘度を上昇させ、流動性を低下させるため、被充填物の加工性が悪くなることや所望の充填量を得られないという問題があった。また、被充填物と針状ベーマイトを複合するために押出成形が一般的に広く用いられるが、これらの成形において針状ベーマイトが特定の方向(押出し方向、樹脂の流れる方向)のみに配向する特徴を有し、1次元的(直線的)に配向するため、2次元的(平面的)、3次元的(立体的)な補強等の効果が期待できないという問題があった。さらに、ベーマイトの安全性は確立されているものの、針状ベーマイトは個々が針状をなすため、吸入した際に体内に刺さる可能性があり、針状ベーマイトを含め針状の形状を有するフィラーは一般に使用が敬遠される傾向にあった。
【0005】
本発明は、上記の事情に鑑みなされたもので、針状でありながら被充填物の加工性が良く、充填性に優れ、また被充填物に3次元的に配向するいがぐり状の形状の新規なベーマイトを提供することを課題とする。また、針状でありながら、吸入した際に体内に刺さる可能性を低減させる新規ないがぐり状の形状のベーマイトを提供することを課題とする。
さらに、いがぐり状の形状のベーマイトの製造方法を提供することを課題とする。また、フィラーにより付与される物性が高められる樹脂組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するため、本発明者等は鋭意検討を重ね本発明に想到した。
すなわち、請求項1に記載の発明は、多数の針状片が結束し、いがぐり状の形状をなすことを特徴とするいがぐり状ベーマイトを要旨とする。
【0007】
請求項2に記載の発明は、水酸化アルミニウムと、第一添加剤の硫酸マグネシウムと、第二添加剤の水酸化ナトリウムと水酸化カリウムと水酸化カルシウムと水酸化マグネシウムとから選ばれるいずれか1種以上とを含み、硫酸マグネシウムの配合量は水酸化アルミニウム1モルに対するモル比で0.1〜0.5であり、第二添加剤の配合量は硫酸マグネシウム1モルに対するモル比で0.5〜1.2である原料を、水の存在下、200℃〜250℃で水熱反応させることを特徴とする上記のいがぐり状ベーマイトの製造方法を要旨とする。
【0008】
請求項3に記載の発明は、上記のいがぐり状ベーマイトが充填されてなることを特徴とする樹脂組成物を要旨とする。
【発明の効果】
【0009】
上記のように構成される本発明によれば、以下のような効果を奏する。本発明のいがぐり状ベーマイトによれば、針状であるので従来の針状ベーマイトの有する効果を奏する。
本発明のいがぐり状ベーマイトによれば、従来の針状ベーマイトに比べ、被充填物の流動性が高いので被充填物の加工性に優れ、ひいては製品の生産性を高めることができる。
本発明のいがぐり状ベーマイトによれば、従来の針状ベーマイトに比べ、被充填物の流動性が高いので充填性に優れ、被充填物に付与される補強性、熱伝導性等の効果を高めることができ、ひいては被充填物の物性を高めることができる。本発明のいがぐり状ベーマイトによれば、被充填物に3次元的に配向するので、被充填物に付与される補強性、熱伝導性等の効果を高めることができ、ひいては被充填物の物性を高めることができる。本発明のいがぐり状ベーマイトによれば、多数の針状片が結束し、いがぐり状の形状をなすので、従来の針状ベーマイトの吸入した際に体内に刺さるという可能性を低減でき、ひいては安全性が高められる。本発明のいがぐり状ベーマイトの製造方法によれば、いがぐり状ベーマイトを効率的かつ確実に製造できる。本発明の樹脂組成物によれば、補強性、熱伝導性等のフィラーにより付与される物性が高められる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施例2のベーマイトの電子顕微鏡写真像である。
【図2】実施例4のベーマイトの電子顕微鏡写真像である。
【図3】実施例7のベーマイトの電子顕微鏡写真像である。
【図4】実施例13のベーマイトの電子顕微鏡写真像である。
【図5】実施例15のベーマイトの電子顕微鏡写真像である。
【図6】実施例16のベーマイトの電子顕微鏡写真像である。
【図7】比較例3のベーマイトの電子顕微鏡写真像である。
【図8】比較例5のベーマイトの電子顕微鏡写真像である。
【図9】いがぐり状ベーマイトが充填された樹脂の破断面の電子顕微鏡写真像である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明のいがぐり状ベーマイトは、針状で多数の針状片が結束しいがぐり状の形状を有する。したがって、従来の針状ベーマイトに比べ、被充填物の流動性が高く、また、被充填物に3次元的に配向する。
【0012】
本発明のいがぐり状ベーマイトは、水酸化アルミニウムと、第一添加剤の硫酸マグネシウムと、第二添加剤の水酸化ナトリウムと水酸化カリウムと水酸化カルシウムと水酸化マグネシウムとから選ばれるいずれか1種以上とを、水の存在下、水熱反応させることにより製造できる。使用する水酸化アルミニウムの平均粒径は、75μm以下が好ましく、1μm〜75μmがより好ましい。水酸化アルミニウムの平均粒径が1μm未満では、針状片が結束しにくくなり、75μmを超えると複数のいがぐり状ベーマイトの結晶が結合し大きな塊になりやすく、また、反応時間が長くなりいがぐり状ベーマイトが得られなくなることがある。水酸化アルミニウムは、市販のものを用いることができる。
【0013】
第一添加剤は硫酸マグネシウムを用いる。硫酸マグネシウムは無水物でも、7水和物に代表される水和物でもよいが、経済面及び溶解性の点から7水和物が好ましい。第一添加剤はいがぐり状ベーマイトの針状片を長く延ばすことができる。硫酸マグネシウムは、市販のものを用いることができる。硫酸マグネシウムの配合量は、水酸化アルミニウム1モルに対するモル比で0.1〜0.5が好ましい。硫酸マグネシウムのモル比が0.1未満では、板状や立方体状のベーマイトが生成しやすく、いがぐり状ベーマイトが得られないことがあり、0.5を超えても特に格別な効果がなく、不経済である。
【0014】
第二添加剤は、第1属元素又は第2属元素の水酸化物であれば良いが、比較的安価な水酸化ナトリウムと水酸化カリウムと水酸化カルシウムと水酸化マグネシウムとから選ばれるいずれか1種以上が好ましい。第二添加剤は、硫酸マグネシウムと共存することで、ベーマイトの形状をいがぐり状にするとともに、原料のスラリーを調整する際の沈降を防ぎ、生産性を高めることができる。第二添加剤は、いずれも市販のものを用いることができる。第二添加剤の配合量は硫酸マグネシウム1モルに対するモル比で0.5〜1.2が好ましい。第二添加剤のモル比が0.5未満では、反応時間が長くなる他、多数の針状片が結束せず、ばらけた従来の針状ベーマイトになることがある。また、モル比が1.2を超えると板状ベーマイトが混在し、いがぐり状ベーマイトを得ることができなくなることがある。
【0015】
いがぐり状ベーマイトは、水の存在下、上記の原料を水熱反応させることにより製造できる。加えられる水の量は、原料をスラリーに調整できる限り特に限定されない。また、水熱反応はオートクレーブ等の圧力装置内で加圧下、200℃〜250℃で行うことが好ましい。反応温度が200℃未満では、反応時間が長くなったり、あるいはいがぐり状ベーマイトが得られないことがある。250℃を超えても良いが、高価な高圧の設備が必要となり、またエネルギー面でも不経済である。反応に際しスラリーを撹拌しても撹拌しなくてもよい。反応時間は、3時間〜24時間の範囲が好ましい。3時間未満では、いがぐり状ベーマイトが得られないことがある。また、24時間を超えても特に格別な効果がなく、エネルギー面でも不経済である。
【実施例】
【0016】
以下、本発明を実施例を挙げて説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
【0017】
〔ベーマイトの製造〕
水酸化アルミニウム(実施例1〜実施例9、実施例12〜実施例17、比較例9を除く比較例(日本軽金属社製、B303、平均粒径:30μm)、実施例10、11、比較例9(日本軽金属社製、B53、平均粒径:50μm)、実施例18(日本軽金属社製、BF−013、平均粒径:1μm)、実施例19(住友化学社製、C−301、平均粒径:1μm)、実施例20(住友化学社製、C−303、平均粒径:3μm)、実施例21(日本軽金属社製、BF−083、平均粒径:8μm)、実施例22(日本軽金属社製、B153、平均粒径:15μm))と下記の表1、表2に示す第一添加剤の硫酸マグネシウム・7水和物(関東化学社製)と下記の表1、表2に示す第二添加剤(水酸化ナトリウム(関東化学社製)、水酸化カリウム(関東化学社製)、水酸化カルシウム(関東化学社製)、水酸化マグネシウム(関東化学社製)、硫酸ナトリウム(関東化学社製)、塩化ナトリウム(関東化学社製)、炭酸ナトリウム(関東化学社製))とをそれぞれ所定の割合で配合した原料に水を500mlを加え、300Lオートクレーブを用い、205℃(昇温時間:2時間)で12時間水熱反応を行った。反応終了後(降圧時間:2時間)、反応生成物をろ過、水洗及び粉砕し、所定のベーマイトを得た。得られたベーマイトを電子顕微鏡を用いその形状の観察を行った。図1〜図8に実施例と比較例の電子顕微鏡写真像を示した。なお、表2において、硫酸ナトリウム、塩化ナトリウム及び炭酸ナトリウムを便宜上第二添加剤に含めて示した。
【0018】
【表1】
【0019】
【表2】
【0020】
表1及び図1〜図6に示すように、実施例ではいずれもいがぐり状ベーマイトを得ることができた。表中、△はいがぐり状ベーマイトに若干の板状ベーマイトが混在するが、いがぐり状ベーマイトとして使用に供することに支障がないものである。一方、表2及び図7、図8に示すように、比較例ではいがぐり状ベーマイトが得られなかった。▲は板状ベーマイトに若干のいがぐり状ベーマイトが混在するが、いがぐり状ベーマイトとして使用に供することに支障があるものである。
【0021】
〔樹脂練り込み試験〕
実施例6のいがぐり状ベーマイトと針状ベーマイト(河合石灰工業社製、BMI)をそれぞれ用い、エポキシ樹脂(ダウケミカルカンパニー社製、DER*331J)への樹脂練り込み試験を行った。ビーカーにエポキシ樹脂50gと硬化剤の2−エチル−4−メチルイミダゾール(和光純薬工業社製)1gを入れ、ホットスターラーで70℃に保ちながらよく撹拌した。そこへいがぐり状ベーマイト21gを徐々に添加し、スターラーが撹拌できなくなる点を終点とした。同様の方法で針状ベーマイト9gを徐々に添加し、スターラーが撹拌できなる点を終点とした。混合後、型にエポキシ樹脂を流し込み、よく脱泡した後、175℃の乾燥機で2時間加熱して硬化させた。
【0022】
試験の結果、いがぐり状ベーマイトはエポキシ樹脂に対して42重量部を充填できた。
一方、針状ベーマイトはエポキシ樹脂に対して18重量部を充填できた。このことより、いがぐり状ベーマイトは、針状ベーマイトに比べ、充填性の高いことが判明した。また、図9に示すように、いがぐり状ベーマイトが充填された樹脂の破断面を電子顕微鏡で観察した結果、いがぐり状ベーマイトが樹脂に3次元的に配向していた。
【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明は、ベーマイトがフィラーとして用いられる合成樹脂、ゴム、接着剤、塗料等の分野に適用できる。
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な形状のベーマイト及びその製造方法に関し、詳細には、多数の針状片が結束していがぐり状の形状をなすベーマイト及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ベーマイトは、AlO(OH)又はAl2O3・H2Oの化学組成で示され、一般的にアルミナ3水和物を水熱処理することにより製造される化学的に安定なアルミナ1水和物であり、電子基板をはじめとするプラスチック製品、ゴム、接着剤、塗料等の難燃用フィラー、補強用フィラー、膨張率抑制用フィラー、熱伝導用フィラーとして使用されている。また、塗料や化粧品の光輝用フィラー、触媒担体、アルミナの原料、製紙用塗工内填フィラー等様々な用途で使用されている。ベーマイトは、水熱処理の製造条件を調整することにより板状、針状、立方体状等の種々の形状に制御できる。アスペクト比の高い板状ベーマイトや針状ベーマイトは、被充填物の引張り強度、曲げ強度、弾性率等の機械的強度を増大させることができる。とりわけ、従来の針状ベーマイト(特許文献1、特許文献2参照)は、アスペクト比が高いだけでなく、比表面積が大きいため上記の効果に優れている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−54941号公報
【特許文献2】特開2008−37741号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の針状ベーマイトは、被充填物に充填した場合、被充填物の粘度を上昇させ、流動性を低下させるため、被充填物の加工性が悪くなることや所望の充填量を得られないという問題があった。また、被充填物と針状ベーマイトを複合するために押出成形が一般的に広く用いられるが、これらの成形において針状ベーマイトが特定の方向(押出し方向、樹脂の流れる方向)のみに配向する特徴を有し、1次元的(直線的)に配向するため、2次元的(平面的)、3次元的(立体的)な補強等の効果が期待できないという問題があった。さらに、ベーマイトの安全性は確立されているものの、針状ベーマイトは個々が針状をなすため、吸入した際に体内に刺さる可能性があり、針状ベーマイトを含め針状の形状を有するフィラーは一般に使用が敬遠される傾向にあった。
【0005】
本発明は、上記の事情に鑑みなされたもので、針状でありながら被充填物の加工性が良く、充填性に優れ、また被充填物に3次元的に配向するいがぐり状の形状の新規なベーマイトを提供することを課題とする。また、針状でありながら、吸入した際に体内に刺さる可能性を低減させる新規ないがぐり状の形状のベーマイトを提供することを課題とする。
さらに、いがぐり状の形状のベーマイトの製造方法を提供することを課題とする。また、フィラーにより付与される物性が高められる樹脂組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するため、本発明者等は鋭意検討を重ね本発明に想到した。
すなわち、請求項1に記載の発明は、多数の針状片が結束し、いがぐり状の形状をなすことを特徴とするいがぐり状ベーマイトを要旨とする。
【0007】
請求項2に記載の発明は、水酸化アルミニウムと、第一添加剤の硫酸マグネシウムと、第二添加剤の水酸化ナトリウムと水酸化カリウムと水酸化カルシウムと水酸化マグネシウムとから選ばれるいずれか1種以上とを含み、硫酸マグネシウムの配合量は水酸化アルミニウム1モルに対するモル比で0.1〜0.5であり、第二添加剤の配合量は硫酸マグネシウム1モルに対するモル比で0.5〜1.2である原料を、水の存在下、200℃〜250℃で水熱反応させることを特徴とする上記のいがぐり状ベーマイトの製造方法を要旨とする。
【0008】
請求項3に記載の発明は、上記のいがぐり状ベーマイトが充填されてなることを特徴とする樹脂組成物を要旨とする。
【発明の効果】
【0009】
上記のように構成される本発明によれば、以下のような効果を奏する。本発明のいがぐり状ベーマイトによれば、針状であるので従来の針状ベーマイトの有する効果を奏する。
本発明のいがぐり状ベーマイトによれば、従来の針状ベーマイトに比べ、被充填物の流動性が高いので被充填物の加工性に優れ、ひいては製品の生産性を高めることができる。
本発明のいがぐり状ベーマイトによれば、従来の針状ベーマイトに比べ、被充填物の流動性が高いので充填性に優れ、被充填物に付与される補強性、熱伝導性等の効果を高めることができ、ひいては被充填物の物性を高めることができる。本発明のいがぐり状ベーマイトによれば、被充填物に3次元的に配向するので、被充填物に付与される補強性、熱伝導性等の効果を高めることができ、ひいては被充填物の物性を高めることができる。本発明のいがぐり状ベーマイトによれば、多数の針状片が結束し、いがぐり状の形状をなすので、従来の針状ベーマイトの吸入した際に体内に刺さるという可能性を低減でき、ひいては安全性が高められる。本発明のいがぐり状ベーマイトの製造方法によれば、いがぐり状ベーマイトを効率的かつ確実に製造できる。本発明の樹脂組成物によれば、補強性、熱伝導性等のフィラーにより付与される物性が高められる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施例2のベーマイトの電子顕微鏡写真像である。
【図2】実施例4のベーマイトの電子顕微鏡写真像である。
【図3】実施例7のベーマイトの電子顕微鏡写真像である。
【図4】実施例13のベーマイトの電子顕微鏡写真像である。
【図5】実施例15のベーマイトの電子顕微鏡写真像である。
【図6】実施例16のベーマイトの電子顕微鏡写真像である。
【図7】比較例3のベーマイトの電子顕微鏡写真像である。
【図8】比較例5のベーマイトの電子顕微鏡写真像である。
【図9】いがぐり状ベーマイトが充填された樹脂の破断面の電子顕微鏡写真像である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明のいがぐり状ベーマイトは、針状で多数の針状片が結束しいがぐり状の形状を有する。したがって、従来の針状ベーマイトに比べ、被充填物の流動性が高く、また、被充填物に3次元的に配向する。
【0012】
本発明のいがぐり状ベーマイトは、水酸化アルミニウムと、第一添加剤の硫酸マグネシウムと、第二添加剤の水酸化ナトリウムと水酸化カリウムと水酸化カルシウムと水酸化マグネシウムとから選ばれるいずれか1種以上とを、水の存在下、水熱反応させることにより製造できる。使用する水酸化アルミニウムの平均粒径は、75μm以下が好ましく、1μm〜75μmがより好ましい。水酸化アルミニウムの平均粒径が1μm未満では、針状片が結束しにくくなり、75μmを超えると複数のいがぐり状ベーマイトの結晶が結合し大きな塊になりやすく、また、反応時間が長くなりいがぐり状ベーマイトが得られなくなることがある。水酸化アルミニウムは、市販のものを用いることができる。
【0013】
第一添加剤は硫酸マグネシウムを用いる。硫酸マグネシウムは無水物でも、7水和物に代表される水和物でもよいが、経済面及び溶解性の点から7水和物が好ましい。第一添加剤はいがぐり状ベーマイトの針状片を長く延ばすことができる。硫酸マグネシウムは、市販のものを用いることができる。硫酸マグネシウムの配合量は、水酸化アルミニウム1モルに対するモル比で0.1〜0.5が好ましい。硫酸マグネシウムのモル比が0.1未満では、板状や立方体状のベーマイトが生成しやすく、いがぐり状ベーマイトが得られないことがあり、0.5を超えても特に格別な効果がなく、不経済である。
【0014】
第二添加剤は、第1属元素又は第2属元素の水酸化物であれば良いが、比較的安価な水酸化ナトリウムと水酸化カリウムと水酸化カルシウムと水酸化マグネシウムとから選ばれるいずれか1種以上が好ましい。第二添加剤は、硫酸マグネシウムと共存することで、ベーマイトの形状をいがぐり状にするとともに、原料のスラリーを調整する際の沈降を防ぎ、生産性を高めることができる。第二添加剤は、いずれも市販のものを用いることができる。第二添加剤の配合量は硫酸マグネシウム1モルに対するモル比で0.5〜1.2が好ましい。第二添加剤のモル比が0.5未満では、反応時間が長くなる他、多数の針状片が結束せず、ばらけた従来の針状ベーマイトになることがある。また、モル比が1.2を超えると板状ベーマイトが混在し、いがぐり状ベーマイトを得ることができなくなることがある。
【0015】
いがぐり状ベーマイトは、水の存在下、上記の原料を水熱反応させることにより製造できる。加えられる水の量は、原料をスラリーに調整できる限り特に限定されない。また、水熱反応はオートクレーブ等の圧力装置内で加圧下、200℃〜250℃で行うことが好ましい。反応温度が200℃未満では、反応時間が長くなったり、あるいはいがぐり状ベーマイトが得られないことがある。250℃を超えても良いが、高価な高圧の設備が必要となり、またエネルギー面でも不経済である。反応に際しスラリーを撹拌しても撹拌しなくてもよい。反応時間は、3時間〜24時間の範囲が好ましい。3時間未満では、いがぐり状ベーマイトが得られないことがある。また、24時間を超えても特に格別な効果がなく、エネルギー面でも不経済である。
【実施例】
【0016】
以下、本発明を実施例を挙げて説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
【0017】
〔ベーマイトの製造〕
水酸化アルミニウム(実施例1〜実施例9、実施例12〜実施例17、比較例9を除く比較例(日本軽金属社製、B303、平均粒径:30μm)、実施例10、11、比較例9(日本軽金属社製、B53、平均粒径:50μm)、実施例18(日本軽金属社製、BF−013、平均粒径:1μm)、実施例19(住友化学社製、C−301、平均粒径:1μm)、実施例20(住友化学社製、C−303、平均粒径:3μm)、実施例21(日本軽金属社製、BF−083、平均粒径:8μm)、実施例22(日本軽金属社製、B153、平均粒径:15μm))と下記の表1、表2に示す第一添加剤の硫酸マグネシウム・7水和物(関東化学社製)と下記の表1、表2に示す第二添加剤(水酸化ナトリウム(関東化学社製)、水酸化カリウム(関東化学社製)、水酸化カルシウム(関東化学社製)、水酸化マグネシウム(関東化学社製)、硫酸ナトリウム(関東化学社製)、塩化ナトリウム(関東化学社製)、炭酸ナトリウム(関東化学社製))とをそれぞれ所定の割合で配合した原料に水を500mlを加え、300Lオートクレーブを用い、205℃(昇温時間:2時間)で12時間水熱反応を行った。反応終了後(降圧時間:2時間)、反応生成物をろ過、水洗及び粉砕し、所定のベーマイトを得た。得られたベーマイトを電子顕微鏡を用いその形状の観察を行った。図1〜図8に実施例と比較例の電子顕微鏡写真像を示した。なお、表2において、硫酸ナトリウム、塩化ナトリウム及び炭酸ナトリウムを便宜上第二添加剤に含めて示した。
【0018】
【表1】
【0019】
【表2】
【0020】
表1及び図1〜図6に示すように、実施例ではいずれもいがぐり状ベーマイトを得ることができた。表中、△はいがぐり状ベーマイトに若干の板状ベーマイトが混在するが、いがぐり状ベーマイトとして使用に供することに支障がないものである。一方、表2及び図7、図8に示すように、比較例ではいがぐり状ベーマイトが得られなかった。▲は板状ベーマイトに若干のいがぐり状ベーマイトが混在するが、いがぐり状ベーマイトとして使用に供することに支障があるものである。
【0021】
〔樹脂練り込み試験〕
実施例6のいがぐり状ベーマイトと針状ベーマイト(河合石灰工業社製、BMI)をそれぞれ用い、エポキシ樹脂(ダウケミカルカンパニー社製、DER*331J)への樹脂練り込み試験を行った。ビーカーにエポキシ樹脂50gと硬化剤の2−エチル−4−メチルイミダゾール(和光純薬工業社製)1gを入れ、ホットスターラーで70℃に保ちながらよく撹拌した。そこへいがぐり状ベーマイト21gを徐々に添加し、スターラーが撹拌できなくなる点を終点とした。同様の方法で針状ベーマイト9gを徐々に添加し、スターラーが撹拌できなる点を終点とした。混合後、型にエポキシ樹脂を流し込み、よく脱泡した後、175℃の乾燥機で2時間加熱して硬化させた。
【0022】
試験の結果、いがぐり状ベーマイトはエポキシ樹脂に対して42重量部を充填できた。
一方、針状ベーマイトはエポキシ樹脂に対して18重量部を充填できた。このことより、いがぐり状ベーマイトは、針状ベーマイトに比べ、充填性の高いことが判明した。また、図9に示すように、いがぐり状ベーマイトが充填された樹脂の破断面を電子顕微鏡で観察した結果、いがぐり状ベーマイトが樹脂に3次元的に配向していた。
【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明は、ベーマイトがフィラーとして用いられる合成樹脂、ゴム、接着剤、塗料等の分野に適用できる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多数の針状片が結束し、いがぐり状の形状をなすことを特徴とするいがぐり状ベーマイト。
【請求項2】
水酸化アルミニウムと、第一添加剤の硫酸マグネシウムと、第二添加剤の水酸化ナトリウムと水酸化カリウムと水酸化カルシウムと水酸化マグネシウムとから選ばれるいずれか1種以上とを含み、硫酸マグネシウムの配合量は水酸化アルミニウム1モルに対するモル比で0.1〜0.5であり、第二添加剤の配合量は硫酸マグネシウム1モルに対するモル比で0.5〜1.2である原料を、水の存在下、200℃〜250℃で水熱反応させることを特徴とする請求項1に記載のいがぐり状ベーマイトの製造方法。
【請求項3】
請求項1に記載のいがぐり状ベーマイトが充填されてなることを特徴とする樹脂組成物。
【請求項1】
多数の針状片が結束し、いがぐり状の形状をなすことを特徴とするいがぐり状ベーマイト。
【請求項2】
水酸化アルミニウムと、第一添加剤の硫酸マグネシウムと、第二添加剤の水酸化ナトリウムと水酸化カリウムと水酸化カルシウムと水酸化マグネシウムとから選ばれるいずれか1種以上とを含み、硫酸マグネシウムの配合量は水酸化アルミニウム1モルに対するモル比で0.1〜0.5であり、第二添加剤の配合量は硫酸マグネシウム1モルに対するモル比で0.5〜1.2である原料を、水の存在下、200℃〜250℃で水熱反応させることを特徴とする請求項1に記載のいがぐり状ベーマイトの製造方法。
【請求項3】
請求項1に記載のいがぐり状ベーマイトが充填されてなることを特徴とする樹脂組成物。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【公開番号】特開2012−121773(P2012−121773A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−274847(P2010−274847)
【出願日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【出願人】(591051335)河合石灰工業株式会社 (11)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【出願人】(591051335)河合石灰工業株式会社 (11)
【Fターム(参考)】
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