説明

うつ病に関するバイオマーカー

晩発性うつ病を罹患した被験体の脳では、核酸が差別的に発現されることが実証された。本発明は、晩発性うつ病の判定において有用な方法を提供する。本発明はまた、晩発性うつ病の治療、予防又は診断用の化合物を同定するためのスクリーニング方法も提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
うつ病でない被験体からの脳組織試料に比べ、晩発性うつ病に罹患した被験体からの脳組織試料においてアップレギュレート又はダウンレギュレートされるバイオマーカーが同定された。本発明によれば、晩発性うつ病の治療、予防及び診断において有用な化合物を同定するためのスクリーニング方法が提供される。本発明はまた、晩発性うつ病の治療、予防及び診断において有用な方法も提供する。
【背景技術】
【0002】
米国人口の15%が人生のいずれかの時点でうつ病にかかっており、いかなる所定の日にも1億の人々が罹患している。発症年齢はかなり一様に分散しており、突然に数日で現れることもあれば、数年かけて発生することもある。大うつ病(major depression)を経験する人々の半分以上は、ただ1つのエピソードのみを有する。しかし、続いてエピソードが出現する場合、次のエピソードが躁病であって、診断を双極性障害に変更するリスクが15%存在する。最終的に、大うつ病にかかった者の約15〜20%が慢性的なうつ病になり、大うつ病患者の約15%が自殺することがある(男性は女性の2倍の頻度で自殺する)。
【0003】
現時点では、うつ病に関係する神経生物学についての理解は限られているが、この病気は多面性を有しており、協力的又は独立に作用して気分の変化をもたらす無数の要素が関与し得ることが次第に明らかになりつつある。うつ病は複合的な疾患であり、治療、診断及びスクリーニングの目的のためにマーカーとして使用できる単一の病態によって支配されてはいない。いくつかの神経伝達物質系が関与していて、複数の標的が広範に研究され、一定範囲の治療法オプションをもたらしてきた。現在利用可能な治療法には、モノアミンオキシダーゼ阻害剤(MAOI)、三環系抗うつ剤(TCA)、選択的セロトニン再取込み阻害剤(SSRI)、ノルアドレナリン再取込み阻害剤(NRI)、セロトニン・ノルアドレナリン再取込み阻害剤(SNRI)及びノルアドレナリン・ドーパミン再取込み阻害剤(NDRI)がある。しかし、現行の抗うつ薬は多くの副作用を有すると共に、治療すべき患者の履歴及び正確な状態に応じて効力が変化するので不満足である。
【0004】
いくつかの従来の研究では、うつ病の病理学に関連する組織中の遺伝子の発現プロファイルが分析されてきた。
【0005】
米国特許出願公開第2005/0209181号には、統合失調症に関与する経路又は回路である10の脳領域、即ち前部帯状回皮質、側背前前頭皮質、扁桃、小脳皮質、内側嗅皮質、上側頭回、壁皮質、側坐核、腹側視床、内側視床及び/又は海馬における遺伝子の発現のDNAマイクロアレイ分析が開示されている。この特許出願にはまた、差別的に発現する遺伝子がうつ病にも関係し得ることが教示されている。米国特許出願公開第2005/0209181号で同定された遺伝子の例は、GenBank ID番号NM_007274、NM_004068、AL120173、AL581768、AF151034、BE677131、D63412、BC004443、NM_003458、NM_006317、NM_014962、U73304、BC004271、AL120332、AL022718、NM_006429、NM_000729、NM_001819、NM_024709、AL522296、AL134612、AI879661、AI141670、NM_017594、NM_004411、NM_014210、AI868167、AI826799、NM_021952、AW269335、NM_001975、NM_001978、NM_001958、NM_018315、AU145019、NM_002006、NM_022003、NM_000810、NM_000817、NM_000818、AL567302、NM_002045、BE670563、BC002666、AF200715、NM_005346、AI218219、AI810712、AL136591、BE617588、NM_138339、AI634532、NM_000194、BF346014、AL566367、AL136636、NM_021219、AB028968、AA736604、AA284075、NM_007054、NM_001290、NM_002347、NM_002415、N22468、U89330、W37431、AI693178、NM_006178、R38624、NM_016588、AF251061、NM_005382、AL537457、R38389、AF397394、BG285881、AB033605、NM_002796、NM_002849、AB037734、NM_002590、BF112006、NM_006695、AI888503、AB014560、BC000314、NM_006054、N95026、NM_014575、NM_003469、NM_003026、AK000478、NM_005563、NM_007029、NM_030795、NM_001047、AL359592、AW139618、AV723167、BG260394、NM_003182、NM_017714、NM_014765、AB017269、AL565074、AF141349、AL565749、BF338045、NM_003366、NM_006876、AK023015、U73304によって表される。
【0006】
国際公開第2008/020435号には、うつ病の治療のために有用な、いわゆる「うつ病関連」遺伝子の阻害剤が開示されている。国際公開第2008/020435号のうつ病関連遺伝子の例は、GenBank ID番号NM_000436、NM_001677、NM_004734、NM_004438、NM_000806、NM_000810、NM_000817、NM_000828、NM_006159、NM_002522、NM_002816、NM_002796、NM_002849、NM_021007、NM_020309、NM_004209、NM_002228によって同定される。
【0007】
国際公開第00/58473号には、核酸及びポリペプチドが一定範囲の病態(その1つがうつ病である)に関連することが教示されている。国際公開第00/58473号に記載されたGenBank ID番号の例は、AB002384、AB020690(国際公開第2007/136797号にも)、AC004010(米国特許出願公開第2003/0220489号、同第2007/0172830号、国際公開第02/16387号、同第01/34769号、同第01/34628号、同第01/32910号にも)。
【0008】
米国特許出願公開第2007/0172830号には、その発現がうつ病に関連することが判明した遺伝子がいくつか開示されている。これらの例は、GenBank ID番号AF035321、AC004010、AD001527によって同定される。米国特許出願公開第2007/0172830号は明確にうつ病に関係するものではないが、同された遺伝子がうつ病を含む多種多様の病態の治療に使用できることを教示している。
【0009】
国際公開第2004/047727号では、DNAマイクロアレイを用いて、うつ病と診断された患者からのヒト剖検脳の発現プロファイルが研究された。この研究は、3つの脳領域、即ち前部帯状回皮質、側背前前頭皮質及び小脳に焦点を合わせている。これらのマーカーの例は、GenBank ID番号M95585、U35139、AL049650、AL022718によって同定される。
【0010】
これらの遺伝子発現研究はいずれも、晩発性うつ病との関連を明確に教示してはいない。晩発性うつ病を罹患した患者の約1/3は初期抗うつ剤療法に応答せず、応答する患者も再発、慢性化及び痴呆のリスクが非常に高いままに留まる(Cole et al,American Journal of Psychiatry 156,1182−1189(1999))。その結果、晩発性うつ病は、罹患率及び生存率並びに健康上及び社会的ケア上の負担の点から見て多大のコストを伴う。高齢者において、うつ病は痴呆に次いで2番目に多い精神医学的障害であって、65歳以上の人々の約3%が罹患しており、さらに12%が軽症ではあるがやはり衰弱性のうつ病にかかっている(Beekman et al,British Journal of Psychiatry 174,307−311(1999))。晩発性うつ病の神経生物学的基礎はほとんど探求されないままであり、有効な治療法の開発を妨げている。晩発性うつ病の臨床的管理は、若年被験体におけるうつ病に比べ、なお一層その特異的な病態生理学的プロファイルに合わせて設計すべきであることが提唱されている(Thomas et al,American Journal of Psychiatry 157,1682−1684(2000);Thomas et al,British Journal of Psychiatry 181,129−134(2002))。
【0011】
したがって、晩発性うつ病の治療及び診断に特定して適用される臨床的戦略に対するニーズが存在している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
米国特許出願公開第2006/051786号明細書
【発明の概要】
【0013】
このたび、うつ病でない被験体に比べて晩発性うつ病を罹患した被験体の脳では、一定範囲の遺伝子が差別的に発現することが実証された。晩発性うつ病の治療、予防又は診断用の化合物を同定するためのスクリーニング方法が提供される。また、晩発性うつ病の治療、予防又は診断において有用な方法も提供される。本発明は、晩発性うつ病の病態生理学と特異的に関係するバイオマーカーを提供するという利点を有している。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、脳梁の前部境界における成人ヒト前脳の冠状断面を示している。(黒色の)四角で囲んだ領域は膝下前部帯状回皮質を区画している。
【図2】図2は、線条の前部境界における成人ヒト前脳の模式冠状断面を示している。(黒色の)四角で囲んだ領域は側坐核を区画している。
【発明を実施するための形態】
【0015】
インビボイメージング方法
本発明は、被験体が晩発性うつ病を有するか又は晩発性うつ病への素因があるか否かを判定するのに使用するためのインビボイメージング方法であって、
(i)前記被験体にインビボイメージング剤を投与する段階であって、前記インビボイメージング剤がポリヌクレオチド又はポリペプチドと選択的に会合する化合物を含み、前記ポリヌクレオチド又はポリペプチドが本明細書中の表2又は表5に記載されたものから選択される遺伝子によってエンコードされ、前記化合物がインビボイメージング成分で標識されている段階、
(ii)前記インビボイメージング剤を前記被験体の組織中で発現される前記ポリヌクレオチド及び/又はポリペプチドと選択的に会合させる段階、
(iii)前記インビボイメージング成分によって放出される信号をインビボイメージング方法によって検出する段階、並びに
(iv)前記信号の位置及び/又は量を表す画像を生成する段階
を含んでなる方法を提供する。
【0016】
本明細書中で使用する「インビボイメージング」という用語は、インビボイメージング剤の投与後に被験体の内部構造の全部又は一部の画像を生成する非侵襲的技法をいう。
【0017】
本発明の「被験体」は、好ましくは哺乳動物、最も好ましくは完全な哺乳動物生体である。特に好ましい実施形態では、被験体はヒトであり、とりわけ晩発性うつ病を有するか又は晩発性うつ病への素因があることが疑われるヒトである。「素因がある」という用語は、純粋に遺伝的に要因(俗な表現では「育ち(nurture)」でなく「氏(nature)」)に基づいて被験体が病態を発症しやすいことをいう。
【0018】
晩発性うつ病」とは、60歳以上の人々において初めて現れる大うつ病性障害をいう。「大うつ病性障害」という用語は、以下の症状、即ち持続的な悲哀、不安又は「空虚」の気分、絶望感又は厭世観、罪悪感、無価値感又は無力感、かつて楽しんだ趣味や活動(セックスを含む)に対する関心又は楽しみの喪失、精力減退、疲労、「緩慢化」、集中、記憶又は決断の困難、早朝の目覚め又は寝過ごし、食欲減退及び/又は体重減少或いは過食及び体重増加、死又は自殺の考え或いは自殺の試み、落着きなさ又は怒りっぽさ、或いは治療に応答しない持続的な身体症状(例えば、頭痛、消化障害及び慢性の痛み)のいずれかを含む気分障害をいう。
【0019】
インビボイメージング剤の「投与」は、好ましくは非経口的に実施され、最も好ましくは静脈内に実施される。静脈内経路は、前記被験体の身体全体にインビボイメージング剤を送達するための最も効率的な方法である。本発明のインビボイメージング剤は、好ましくはインビボイメージング剤を生体適合性キャリヤーと共に含む医薬組成物として投与される。「生体適合性キャリヤー」とは、組成物が生理学的に許容され得るようにして(即ち、毒性又は過度の不快感なしに哺乳動物体に投与できるようにして)インビボイメージング剤を懸濁又は溶解するための流体(特に液体)である。生体適合性キャリヤー媒質は、好適には、無菌のパイロジェンフリー注射用水、(有利には注射用の最終生成物が等張性又は非低張性になるように平衡させ得る)食塩水のような水溶液、或いは或いは1種以上の張度調整物質(例えば、血漿陽イオンと生体適合性対イオンとの塩)、糖(例えば、グルコース又はスクロース)、糖アルコール(例えば、ソルビトール又はマンニトール)、グリコール(例えば、グリセロール)又は他の非イオン性ポリオール物質(例えば、ポリエチレングリコール、プロピレングリコールなど)の水溶液のような注射可能なキャリヤー液体である。生体適合性キャリヤー媒質はまた、エタノールのような生体適合性有機溶媒を含んでいてもよい。かかる有機溶媒は、親油性の高い化合物又は配合物を可溶化するために有用である。好ましくは、生体適合性キャリヤー媒質はパイロジェンフリー注射用水、等張食塩水又はエタノール水溶液である。静脈内注射用生体適合性キャリヤー媒質のpHは好適には4.0〜10.5の範囲内にある。
【0020】
インビボイメージング剤中に含まれる「化合物」は、生体分子、小分子、アプタマー、アンチセンスmRNA、小干渉RNA又は抗体であり得る。「生体分子」という用語は、例えば、脂質、ヌクレオチド、ポリヌクレオチド、アミノ酸、ぺプチド、ポリペプチド、タンパク質、炭水化物及び無機分子のような分子を含む。「小分子」という用語は、100〜1000ダルトンの分子量を有する有機化合物をいう。「抗体」という用語は、免疫系の細胞によって生成されるタンパク質又は抗原に結合するそれのフラグメントをいう。「アンチセンスmRNA」という用語は、普通にmRNAにプロセシングされて翻訳されるストランドに対して相補的であるか、又はそれの領域に対して相補的なRNA分子をいう。「アプタマー」という用語は、人工的な核酸結合剤をいう(例えば、Ellington and Szostak(1990)Nature 346:818−822を参照されたい)。「小干渉RNA」という用語は、配列特異的転写後遺伝子サイレンシングを誘発する二本鎖RNAをいう(例えば、Elbashir et al.(2001)Genes Dev.15:188−200を参照されたい)。好ましくは、インビボイメージング剤中に含まれる化合物は小分子又は生体分子であり、最も好ましくは小分子である。脳組織のイメージングのために適するインビボイメージング剤の詳細な特徴は、下記に一層詳しく論議される。
【0021】
選択的に会合する」という用語は、本発明の方法による非標的組織からの標的組織の識別を容易にするため、インビボイメージング剤が他の組織に優先して検査対象の標的(即ち、本明細書中に記載される遺伝子によってエンコードされるポリヌクレオチド又はポリペプチド)と結合することをいう。検査対象の標的に対するインビボイメージング剤の結合は、本発明のスクリーニング方法に関連して下記に記載されるもののような結合アッセイを用いて測定できる。
【0022】
ポリヌクレオチド」という用語は、デオキシリボヌクレオチド又はリボヌクレオチド及び一本鎖又は二本鎖形態のそのポリマーをいう。特定の核酸配列はまた、明示された配列ばかりでなくそれの保存的に修飾された変異体(例えば、縮重コドン置換、対立遺伝子、オルソログ、単一ヌクレオチド多形及び相補配列)も暗黙のうちに包含する。詳しくは、縮重コドン置換は、1以上の選択されたコドン(又はすべてのコドン)の第3の位置が混合塩基残基及び/又はデオキシイノシン残基で置換された配列を生成することで達成できる(Batzer et al.,Nucleic Acid Res.19:5081(1991);Ohtsuka et al.,J.Biol.Chem.260:2605−2608(1985);Rossolini et al.,Mol.Cell.Probes 8:91−98(1994))。「核酸」という用語は、遺伝子、相補デオキシリボ核酸(cDNA)、及び遺伝子によってエンコードされるメッセンジャーリボ核酸(mRNA)を表すために使用されることがある。
【0023】
ポリペプチド」という用語は、アミノ酸残基のポリマーをいう。この用語は、天然のアミノ酸ポリマー及び非天然のアミノ酸ポリマーばかりでなく、1以上のアミノ酸残基が対応する天然アミノ酸の人工化学模倣体であるアミノ酸ポリマーにも適用される。本明細書中で使用する場合、この用語は、アミノ酸残基が共有ペプチド結合によって結合された(全長タンパク質を含め)任意の長さのアミノ酸鎖を包含する。「アミノ酸」という用語は、天然アミノ酸及び合成アミノ酸、並びに天然アミノ酸と同様に機能するアミノ酸類似体及びアミノ酸模倣体をいう。天然アミノ酸は、遺伝暗号によってエンコードされるもの、並びに後に修飾されたアミノ酸(例えば、ヒドロキシプロリン、γ−カルボキシグルタミン酸及びO−ホスホセリン)である。アミノ酸類似体とは、天然アミノ酸と同じ基本化学構造(即ち、α−炭素が水素、カルボキシル基、アミノ基及びR基に結合した構造)を有する化合物、例えばホモセリン、ノルロイシン、メチオニンスルホキシド、メチオニンメチルスルホニウムをいう。かかる類似体は修飾されたR基(例えば、ノルロイシン)又は修飾されたペプチド主鎖を有するが、天然アミノ酸と同じ基本化学構造を保有している。アミノ酸は、本明細書中では、一般に知られている三文字記号又はIUPAC−IUB生化学命名委員会によって推奨される一文字記号で表示されることがある。
【0024】
ポリヌクレオチドが遺伝子によって「エンコードされる」場合、これは遺伝子が(i)複製によってデオキシリボ核酸(DNA)の相補ストランドを得るため又は(ii)転写によってmRNAを得るために必要な情報を含むことを意味する。mRNAから逆転写cDNAも包含される。ポリペプチドが遺伝子によって「エンコードされる」場合、これは遺伝子が(i)転写によってmRNAを得るため及び(ii)翻訳によって前記mRNAから前記ポリペプチドを得るために必要な情報を含むことを意味する。「複製」、「転写」及び「翻訳」という用語は、本発明の分野において認められている意味を有する。即ち、複製はDNAがDNAにコピーされる過程であり、転写はDNAがmRNAにコピーされる過程であり、翻訳はmRNA中の情報がタンパク質合成のための鋳型として使用される場合である。
【0025】
遺伝子」という用語はポリペプチド鎖の生成に関与するDNAのセグメントを意味し、それはコード領域に先行する領域(リーダー)及びそれに後続する領域(トレーラー)並びに個別のコードセグメント(エキソン)間の介在配列(イントロン)を含む。わずかな例外はあるが、体内のあらゆる細胞はフルセットの染色体及び同一遺伝子を含んでいる。しかし、ターンオンされるのはこれらの遺伝子のほんの一部にすぎず、それは「発現」されて各細胞タイプに特有の性質を付与するサブセットである。「遺伝子発現」は、遺伝情報の貯蔵所であるDNA中に含まれる情報をメッセンジャーRNA(mRNA)分子に転写し、次いでこれから細胞の重要機能の大部分を果たすタンパク質に翻訳することを記述するために使用される用語である。細胞によって生成されるmRNAの種類及び量は、いかなる遺伝子が発現されるかを反映しており、ひいては細胞がそれの変化するニーズにいかに応答するかの洞察を可能にする。遺伝子発現は、細胞が環境刺激及びそれ自体の変化するニーズの両方に対して動的に応答することを可能にする、極めて複雑で厳格に調節された過程である。この機構は、細胞中のいずれの遺伝子を発現させるかを制御するためのオン/オフスイッチとして作用すると共に、特定の遺伝子の発現レベルを必要に応じて増減させるボリューム調節器としても作用する。
【0026】
インビボイメージング成分」は、前記被験体に投与した後に前記被験体の体外で検出できる任意の物質である。インビボイメージング成分の存在は、イメージングすべき組織中におけるポリペプチド又はポリヌクレオチドの量を表す尺度を提供する。「インビボイメージング成分で標識された」という用語は、インビボイメージング成分が化合物の構成部分であってもよいし、或いは化合物にコンジュゲートされる独立の化学的実在物であってもよいことを意味している。インビボイメージング成分が化合物にコンジュゲートされる場合には、任意のリンカー成分がベクター及びインビボイメージング成分をひとつに結合する。
【0027】
投与段階後かつ検出段階前に、インビボイメージング剤を前記ポリヌクレオチド及び/又は前記ポリペプチドと選択的に会合させる。例えば、被験体が完全な哺乳動物体である場合、インビボイメージング剤は哺乳動物体内を動的に移動し、体内の各種組織に接触する。インビボイメージング剤が前記ポリヌクレオチド及び/又は前記ポリペプチドを発現する組織に接触すれば、特異的な相互作用が起こる結果、前記組織からのインビボイメージング剤のクリアランスは他の組織よりも長い時間がかかり、かくして特異的に会合したインビボイメージング剤を表す画像を生成することができる。
【0028】
組織」という用語は、特定の生物学的機能を果たすため互いに関連した細胞の集合体を記述するために使用される。本発明の被験体における組織の基本タイプは、上皮組織、神経組織、結合組織、筋組織及び脈管組織である。本発明のインビボイメージング方法に関して好ましい組織は脳組織である。
【0029】
前記被験体において前記ポリヌクレオチド又はポリペプチドと選択的に会合したインビボイメージング剤のレベルを「検出」する段階は、前記インビボイメージング成分の存在によって可能となる。好適なインビボイメージング技法は、前記インビボイメージング成分によって放出される信号を検出し、前記被験体の前記組織中に存在するインビボイメージング成分の位置及び/又は量を表すデータを生成できるものである。例えば、インビボイメージング成分がγ線を放出する場合、検出技法としてSPECTを使用することができる。
【0030】
本発明のインビボイメージング方法に関して好ましい脳の領域は、前部帯状回(anterior cingulate)及び側坐核(nucleus accumbens)である。これらの脳の領域はいずれもうつ病の臨床症状に関係しており、晩発性うつ病における遺伝子の発現の変化に関連することが本発明で実証されている。イメージングすべき脳の領域が前部帯状回である場合、好ましい遺伝子は表3に記載されたものから選択される遺伝子である。イメージングすべき脳の領域が側坐核である場合、好ましい遺伝子は表6に記載されたものから選択される遺伝子である。
【0031】
インビボイメージング剤が脳組織のイメージングに適するためには、特定の要件が適用される。脳では、身体の残部より内皮細胞が「密着結合」によって互いに緊密に充填されている。これは隣接する内皮細胞間にシールを形成する多機能性複合体であって、内皮シートの一方の側から他方の側にほとんどの溶解分子が通過することを防止する。このいわゆる血液脳関門(BBB)は、脂溶性によって細胞膜を横切るもの(例えば、酸素、二酸化炭素、エタノール及びステロイドホルモン)並びに特異的輸送系によって導入されるもの(例えば、糖及び若干のアミノ酸)を除き、すべての分子の移動を阻止する。500ダルトンを超える分子量を有する物質は一般に受動拡散によってBBBを横切ることはできないが、それより小さい分子はできることが多い。内皮細胞間の輸送を防止するように作用する密着結合に加えて、受動拡散を防止するための2つの機構が存在する。脳中の毛細血管を取り巻くグリア細胞が親水性分子に対する二次的な障害をもたらし、また脳中における低濃度の間質性タンパク質も親水性分子によるアクセスを防止する。
【0032】
脂溶性は一般にオクタノール−水分配係数(P)を測定することで評価されるが、これは通例log10値として表される(本明細書中では「logP」として示す)。オクタノール−水分配係数は、有機相と水性層との間における物質の分配を表す。logPは、化合物の親油性又は親水性を判定するための簡単な方法を提供する。
【0033】
この比は次の式で定義される。
【0034】
分配比=[オクタノール中に存在する化合物]/[水中に存在する化合物]
この式は次のように表すことができる。
【0035】
Log(分配比)=log10[オクタノール中に存在する化合物]/[水中に存在す る化合物]
簡単に述べれば、logPの計算値において正の数が大きくなるほど、化合物の親油性は高くなる。logPの計算値は通例は可能性のある新しい医薬化合物に関して求められるが、これはかかる化合物が投与後に体内でいかに区分されるかについての洞察を可能にするからである。
【0036】
本発明で使用するのに適したインビボイメージング剤のlogPは、1.0〜4.5、好ましくは1.0〜3.5、最も好ましくは2.0〜3.5の範囲内にある。インビトロ及びインビボでの評価に先立ち、例えばDS MedChem Explorerソフトウェア(Accelerys社)を用いてlogPの推定値(AlogP98)を得ることができる。CNS透過のために有利であることに加えて、この範囲内の親油性はインビボイメージングに関して迅速なクリアランスを可能にするが、これは放射性ハロゲンが18Fのような比較的短寿命の放射性同位体である場合に特に重要である。
【0037】
特定のインビボイメージング剤のBBB透過性は、Accelerys DS MedChem Explorerソフトウェアを用いて文献中のインビボ脳透過データと比較することでイン・シリコ(in silico)で推定できる。「logBbR」は、[脳内濃度]/[血中濃度]のlog10である。本発明の方法で使用されるインビボイメージング剤のlogBbRは、好適には0.0〜1.0の範囲内にあり、好ましくは0.3〜1.0の範囲内にあり、最も好ましくは0.5〜0.7の範囲内にある。
【0038】
本発明のインビボイメージング方法で使用するための好ましいインビボイメージング成分は、以下のものから選択される。
(i)放射性金属イオン、
(ii)常磁性金属イオン、
(iii)γ線放出型放射性ハロゲン、
(iv)陽電子放出型放射性非金属、及び
(v)過分極NMR活性核。
【0039】
インビボイメージング成分が放射性金属イオン(即ち、放射性金属)である場合、好適な放射性金属は、64Cu、48V、52Fe、55Co、94mTc又は68Gaのような陽電子放射体、或いは99mTc、111In、113mIn又は67Gaのようなγ放射体であり得る。好ましい放射性金属は99mTc、64Cu、68Ga及び111Inである。最も好ましい放射性金属はγ放射体、特に99mTcである。
【0040】
インビボイメージング成分が常磁性金属イオンである場合、好適なかかる金属イオンには、Gd(III)、Mn(II)、Cu(II)、Cr(III)、Fe(III)、Co(II)、Er(II)、Ni(II)、Eu(III)及びDy(III)がある。好ましい常磁性金属イオンはGd(III)、Mn(II)及びFe(III)であり、Gd(III)が特に好ましい。
【0041】
インビボイメージング成分がγ線放出型放射性ハロゲンである場合、放射性ハロゲンは好適には123I、131I及び77Brから選択される。本明細書中に記載されるインビトロスクリーニング方法で検出可能な標識として使用するのに適した125Iは、インビボイメージング成分として使用するのには適さない。好ましいγ線放出型放射性ハロゲンは123Iである。
【0042】
インビボイメージング成分が陽電子放出型放射性非金属である場合、好適なかかる陽電子放射体には、11C、13N、15O、17F、18F、75Br、76Br及び124Iがある。好ましい陽電子放出型放射性非金属は11C、13N、18F及び124Iであり、特に好ましくは11C及び18Fであり、最も好ましくは18Fである。
【0043】
インビボイメージング成分が過分極NMR活性核である場合、かかるNMR活性核は非ゼロ核スピンを有し、13C、15N、19F、29Si及び31Pを包含する。これらのうち、13Cが好ましい。「過分極」という用語は、NMR活性核の分極度がそれの平衡分極を超えて増強されていることを意味する。(12Cに対する)13Cの天然存在度は約1%であり、好適な13C−標識化合物は過分極前に好適には5%以上、好ましくは50%以上、最も好ましくは90%以上の存在度に富化される。本発明のインビボイメージング剤の1以上の炭素原子は好適には13Cで富化され、続いてこれが過分極される。
【0044】
本発明にとって好ましいインビボイメージング成分は、インビボ投与後、例えばSPECT、PET及びMRIによる非侵襲的方法で外部から検出できるものである。インビボイメージング用の最も好ましいインビボイメージング成分は、放射性のもの、特に放射性金属イオン、γ線放出型放射性ハロゲン及び陽電子放出型放射性非金属であり、とりわけSPECT又はPETを用いるイメージングに適するものである。
【0045】
本発明の好ましいインビボイメージング剤はインビボで容易に代謝を受けず、したがって最も好ましくはヒトにおいて60〜240分のインビボ半減期を示す。かかるインビボイメージング剤は、好ましくは腎臓経由で排泄される(即ち、尿中排泄を示す)。かかるインビボイメージング剤は、好ましくは病巣で1.5以上、最も好ましくは5以上の信号/バックグラウンド比を示し、10以上が特に好ましい。インビボイメージング剤が放射性同位体を含む場合、非特異的に結合しているか又はインビボで遊離しているインビボイメージング剤のピークレベルの1/2のクリアランスは、好ましくはインビボイメージング成分の放射性同位体の放射性崩壊半減期以下の時間で起こる。
【0046】
さらに、かかるインビボイメージング剤の分子量は好適には5000ダルトン以下である。好ましくは、分子量は100〜3000ダルトン、最も好ましくは200〜1000ダルトンの範囲内にある。さらに、上述の通り、インビボイメージング剤が脳組織のイメージングに適するためには、インビボイメージング剤は500ダルトン未満の分子量を有することが望ましい。したがって、インビボイメージング剤にとって特に好ましい分子量は200〜500ダルトンの範囲内にある。
【0047】
インビボイメージング剤がポリペプチド及びインビボイメージング成分を含む場合、インビボイメージング成分はポリペプチドのN末端又はC末端を介して或いはアミノ酸側鎖のいずれかを介してコンジュゲートされる。好ましくは、インビボイメージング成分は、任意にはポリエチレングリコールリンカーのようなリンカーを媒介として、N末端又はC末端を介してポリペプチドにコンジュゲートされる。
【0048】
別法として、インビボイメージング剤の官能基がインビボイメージング成分を含むこともできる。官能基がインビボイメージング成分からなる場合、これはインビボイメージング成分がインビボイメージング剤の化学構造の一部をなすことを意味する。例えば、インビボイメージング成分は、該同位体の天然存在度レベルより実質的に高いレベルで存在する放射性同位体であり得る。かかる同位体の上昇レベル又は富化レベルは、好適には問題の同位体の天然存在度レベルの5倍以上、好ましくは10倍以上、最も好ましくは20倍以上である。理想的には、問題の同位体の天然存在度レベルの50倍以上であるか、或いは問題の同位体の富化レベルが90〜100%であるようなレベルで存在する。かかる官能基の例には、123Iの上昇レベルを有するヨードフェニル基、11Cの上昇レベルを有するCH3基、及び18Fの上昇レベルを有するフルオロアルキル基がある。これらの場合、イメージング成分は化学構造中に同位体標識された11C又は18F原子である。
【0049】
本明細書中で定義された遺伝子によってエンコードされるポリヌクレオチド又はポリペプチドと選択的に会合する化合物は、下記に一層詳しく記載される本発明のスクリーニング方法を用いて同定しかつ得ることができる。前記スクリーニング方法が結合アッセイである場合、化合物はナノモルの力価をもって(即ち、0.01〜100nM、好ましくは0.01〜10nM、最も好ましくは0.01〜1.0nMの範囲内の解離定数(Kd)をもって)検査対象の標的に結合することが望ましい。インビボイメージング剤を得るためのかかる化合物の標識は、前駆体化合物と所望のインビボイメージング成分の適当な供給源との反応によって簡便に実施できる。「前駆体化合物」は、好都合な化学形態のインビボイメージング成分との化学反応が部位特異的に起こり、最小数の段階(理想的にはただ1つの段階)で反応を実施でき、かつ格別の精製の必要なしに(理想的にはいかなる追加の精製も必要なしに)所望のインビボイメージング剤が得られるように設計された、イメージング剤の非標識誘導体からなる。かかる前駆体化合物は合成品であり、良好な化学純度で簡便に得ることができる。前駆体化合物は、任意には前駆体化合物のある種の官能基に対する保護基を含むことができる。
【0050】
保護基」という用語は、望ましくない化学反応を阻止又は抑制するが、分子の残部を変質させない十分に温和な条件下で問題の官能基から脱離させ得るのに十分な反応性を有するように設計された基を意味する。脱保護後には所望のインビボイメージング剤が得られる。保護基は当業者にとって公知であり、アミン基に関してはBoc(ここでBocはtert−ブチルオキシカルボニルである。)、Fmoc(ここでFmocはフルオレニルメトキシカルボニルである。)、トリフルオロアセチル、アリルオキシカルボニル、Dde[即ち、1−(4,4−ジメチル−2,6−ジオキソシクロヘキシリデン)エチル]及びNpys(即ち、3−ニトロ−2−ピリジンスルフェニル)から適宜に選択され、カルボキシル基に関してはメチルエステル、tert−ブチルエステル及びベンジルエステルから適宜に選択される。ヒドロキシル基に関しては、好適な保護基は、メチル、エチル又はtert−ブチル、アルコキシメチル又はアルコキシエチル、ベンジル、アセチル、ベンゾイル、トリチル(Trt)、又はテトラブチルジメチルシリルのようなトリアルキルシリルである。チオール基に関しては、好適な保護基はトリチル及び4−メトキシベンジルである。さらに他の保護基の使用は、‘Protective Groups in Organic Synthesis’,Theorodora W.Greene and Peter G.M.Wuts(Third Edition,John Wiley & Sons,1999)に記載されている。
【0051】
インビボイメージング成分が金属イオン(例えば、SPECT用の99mTc又はMRI用のGd(III))である場合、インビボイメージング剤は好ましくは放射性金属イオンと合成リガンドとの金属錯体を含む。「金属錯体」という用語は、金属イオンと1以上のリガンドとの配位錯体を意味する。金属錯体は、「キレート交換に耐える」こと(即ち、金属配位座に関して他の潜在的に競合するリガンドとのリガンド交換を受けにくいこと)が極めて好ましい。潜在的に競合するリガンドには、インビトロでは製剤中の他の賦形剤(例えば、製剤中に使用される放射線防護剤又は抗菌防腐剤)があり、インビボでは内因性化合物(例えば、グルタチオン、トランスフェリン又は血漿タンパク質)がある。「合成」という用語はそれの通常の意味を有し、即ち、天然の供給源(例えば、哺乳動物体)から単離されるものではなく人造のものを意味する。かかる化合物は、それの製造及び不純物プロフィルを完全に制御できるという利点を有している。
【0052】
キレート交換に耐える金属錯体を形成するために本発明で使用するのに適したリガンドには、2〜6(好ましくは2〜4)の金属ドナー原子が(金属ドナー原子を結合する炭素原子又は非配位ヘテロ原子の非配位主鎖を有することで)五員又は六員のキレート環を生じるように配列されたキレート剤、或いは金属イオンと強く結合するドナー原子を含む単座リガンド(例えば、イソニトリル、ホスフィン又はジアゼニド)がある。キレート剤の一部として金属とよく結合するドナー原子種の例は、アミン、チオール、アミド、オキシム及びホスフィンである。ホスフィンは非常に強い金属錯体を形成するので、単座又は二座のホスフィンでも好適な金属錯体を形成する。イソニトリル及びジアゼニドの直線形状はキレート剤中に組み込みにくいものであり、したがって通例は単座リガンドとして使用される。好適なイソニトリルの例には、tert−ブチルイソニトリルのような単純アルキルイソニトリル、及びMIBI(即ち、1−イソシアノ−2−メトキシ−2−メチルプロパン)のようなエーテル置換イソニトリルがある。好適なホスフィンの例には、テトロフォスミン(Tetrofosmin)、及びトリス(3−メトキシプロピル)ホスフィンのような単座ホスフィンがある。好適なジアゼニドの例には、HYNIC系列のリガンド(即ち、ヒドラジン置換ピリジン又はニコチンアミド)がある。
【0053】
上述のリガンドはテクネチウム(例えば、94mTc又は99mTc)を錯体化するために特に適しており、Jurisson et al[Chem.Rev.,99,2205−2218(1999)]によって一層詳しく記載されている。かかるリガンドは、銅(64Cu又は67Cu)、バナジウム(例えば、48V)、鉄(例えば、52Fe)或いはコバルト(例えば、55Co)のような他の金属に対しても有用である。
【0054】
他の好適なリガンドはSandozの国際公開第91/01144号に記載されており、その中にはインジウム、イットリウム及びガドリニウムに対して特に好適なリガンド(特に大環状アミノカルボキシレート及びアミノホスホン酸リガンド)が含まれる。ガドリニウムの非イオン性(即ち、中性)金属錯体を形成するリガンドが知られており、米国特許第4,885,363号に記載されている。ガドリニウムに対して特に好ましいのは、DTPA、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、トリエチレンテトラアミン六酢酸(TTHA)、1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,4,7,10−四酢酸(DOTA)、10−(2−ヒドロキシプロピル)−1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,4,7−三酢酸(DO3A)及びこれらの誘導体をはじめとするキレートである。
【0055】
インビボイメージング成分が放射性ハロゲンである場合、好ましい前駆体化合物は、求電子又は求核ハロゲン化を受ける誘導体或いは標識アルデヒド又はケトンとの縮合を受ける誘導体を含むものである。第1のカテゴリーの例は下記の(a)〜(c)である。
(a)トリアルキルスタンナン(例えば、トリメチルスタンニル又はトリブチルスタンニル)、トリアルキルシラン(例えば、トリメチルシリル)或いは有機ホウ素化合物(例えば、ボロネートエステル又はオルガノトリフルオロボレート)のような有機金属誘導体。
(b)ハロゲン交換用の非放射性アルキルブロミド、或いは求核ヨウ素化用のアルキルトシレート、メシレート又はトリフレート。
(c)求核ヨウ素化に向けて活性化された芳香環(例えば、アリールヨードニウム塩、アリールジアゾニウム塩、アリールトリアルキルアンモニウム塩又はニトロアリール誘導体)。
【0056】
前駆体は、好ましくは(放射性ヨウ素交換を可能にするための)アリールヨージド又はブロミドのような非放射性ハロゲン原子、有機金属前駆体化合物(例えば、トリアルキルスズ、トリアルキルシリル又は有機ホウ素化合物)、或いはトリアゼンのような有機前駆体又は求核置換のための良好な脱離基(例えば、ヨードニウム塩)からなる。放射性ヨウ素化のために好ましくは、前駆体は有機金属前駆体化合物からなり、最も好ましくはトリアルキルスズからなる。
【0057】
有機分子中に放射性ヨウ素を導入するための前駆体及び方法は、Bolton[J.Lab.Comp.Radiopharm.,45,485−528(2002)]によって記載されている。好適なボロネートエステル有機ホウ素化合物及びその製法は、Kabalka et al[Nucl.Med.Biol.,29,841−843(2002)及び30,369−373(2003)]によって記載されている。好適なオルガノトリフルオロボレート及びその製法は、Kabalka et al[Nucl.Med.Biol.,31,935−938(2004)]によって記載されている。
【0058】
放射性フッ素化は、18F−フッ化物と良好な脱離基を有する前駆体(例えば、アルキルブロミド、アルキルメシレート又はアルキルトシレート)中の適当な化学基との反応を用いる直接標識によって実施できる。18Fはまた、18F(CH2)3OH反応体でN−ハロアセチル基をアルキル化して−NH(CO)CH2O(CH2)318F誘導体を得ることによっても導入できる。アリール系に関しては、アリールジアゾニウム塩、アリールニトロ化合物又はアリール第四級アンモニウム塩からの18F−フッ化物求核置換が、アリール−18F誘導体への好適な経路である。
【0059】
18F標識インビボイメージング剤は、18F−フルオロジアルキルアミンを生成させ、次いで18F−フルオロジアルキルアミンを(例えば)塩素、P(O)Ph3又は活性化エステルを含む前駆体と反応させた場合のアミド生成によって得ることができる。ペプチドの放射性ヨウ素化のために特に適したさらに別の放射性ヨウ素化アプローチとしては、チオールカップリングを使用するものが国際公開第03/080544号に記載されており、アミノキシカップリングを使用するものが国際公開第04/080492号に記載されている。18F標識誘導体への合成経路に関するさらなる詳細は、Bolton,J.Lab.Comp.Radiopharm.,45,485−528(2002)に記載されている。
【0060】
本発明の方法のインビボイメージング剤は、キットによって容易に得ることができる。かかるキットは、好ましくは無菌でパイロジェンフリーの形態にある適当な前駆体化合物であって、インビボイメージング成分の無菌供給源との反応により最小数の操作で所望のインビボイメージング剤が得られるような前駆体化合物を含んでいる。かかる考慮事項は、放射性インビボイメージング剤(特に、放射性同位体が比較的短い半減期を有する放射性インビボイメージング剤)の場合において、取扱いを容易にし、したがって放射線薬剤師に対する放射線量を低減させるために特に重要である。
【0061】
かかるキットの再構成用の反応媒質は好ましくは本明細書中において前記に定義したような生体適合性キャリヤーであり、かくして前記インビボイメージング剤を含む医薬組成物が得られる。
【0062】
本発明のインビボイメージング方法では、検出段階に続いて、インビボイメージング成分によって放出される信号を表す画像を生成する段階が含まれる。本発明方法のこの生成段階は、取得された信号データに再構築アルゴリズムを適用してデータセットを生み出すコンピューターによって実施される。次いで、このデータセットを操作することで、被験体中の検査対象領域を示す画像を生成する。これらの画像は、晩発性うつ病の診断方法で有用な情報を提供する。
【0063】
診断方法
別の態様では、本発明は、晩発性うつ病の診断方法で使用するためのインビボイメージング方法に関連して上述のようなインビボイメージング剤を提供する。
【0064】
さらに本発明は、晩発性うつ病の診断方法であって、
(a)上述のインビボイメージング方法、及び
(b)段階(a)で生成された画像を、前記インビボイメージング方法をうつ病でない被験体で実施した場合における前記インビボイメージング剤の取込みパターンを表すインビボ画像と比較する段階
を含んでなる方法を提供する。
【0065】
診断方法の組織及び被験体の好適で好ましい実施形態は、インビボイメージング方法に関して上記に記載した通りである。
【0066】
本明細書中に記載されるポリペプチド又はポリヌクレオチドの、うつ病でない被験体を表す画像からの(アップ又はダウンの)変化は、被験体が晩発性うつ病にかかっているか、又は晩発性うつ病の少なくとも若干の態様を発症するリスクを有することを表す。
【0067】
前記インビボイメージング方法をうつ病でない被験体で実施した場合における前記インビボイメージング剤の取込みを表す画像は、上述のインビボイメージング方法を適当に組み合わされたうつ病でない被験体のコホートに関して実施し、得られたすべての画像の平均を表す画像を生成することで得られる。
【0068】
治療方法
表3又は表6に記載されたものから選択される遺伝子によってエンコードされる受容体の活性を変調する化合物は、晩発性うつ病の治療のため被験体に投与することができる。したがって本発明は、晩発性うつ病を罹患する被験体の治療方法であって、当該方法が医薬組成物の投与を含んでなり、前記医薬組成物が
(a)表3又は表6に記載されたものから選択される遺伝子によってエンコードされるポリヌクレオチド又はポリペプチドと選択的に会合する化合物の薬学的に有効な量、並びに
(b)生体適合性キャリヤー
を含む方法を提供する。
【0069】
生体適合性キャリヤーは、一般的には本明細書中において既に定義した通りである。選択される特定の生体適合性キャリヤーは、一部では投与すべき特定の医薬組成物によって、また一部では組成物を投与するために使用する特定の方法によって決定される。したがって、医薬組成物には多種多様の好適な製剤が存在する(例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences,17th ed.1985を参照されたい)。投与のために適する製剤には、水溶液及び非水溶液、等張性無菌溶液(これは酸化防止剤、緩衝剤、静菌剤、及び製剤を等張性にする溶質を含み得る)、並びに水性及び非水性無菌懸濁液(これは懸濁化剤、可溶化剤、増粘剤、安定剤及び防腐剤を含み得る)がある。
【0070】
治療のための投与は、医薬化合物を導入して処置すべき組織に接触させるために通常使用される任意の経路によって行われ、当業者には公知である。特定の組成物を投与するためには2以上の経路が使用できるが、特定の経路が別の経路より即時かつ有効な反応を可能にすることが多い。本発明の実施に際しては、医薬組成物は例えば経口、点鼻、局所、静脈内、腹腔内又は鞘内の経路で投与できる。医薬組成物は、アンプル及びバイアルのような容器に単位用量又は複数用量を封入した形態で供給できる。溶液及び懸濁液は、前述した種類の無菌粉末、顆粒及び錠剤から調製できる。医薬組成物はまた、加工食品又は調合薬剤の一部として投与することもできる。化合物の「薬学的に有効な量」とは、時間の経過に伴って被験体に有益な応答をもたらすのに十分な用量である。任意の患者に関する最適用量レベルは、使用する特定のモジュレーターの効力や患者の年齢、体重、身体活動及び食事を含む各種の因子、他の薬剤との併用の可能性、及び精神障害の重篤度に依存する。用量のサイズはまた、特定の被験体に対する特定の医薬組成物の投与に伴う有害な副作用の存在、性質及び程度によっても決定される。
【0071】
投与すべき医薬組成物の有効量を決定する際には、医師は医薬組成物の循環血漿レベル、医薬組成物の毒性、及び抗医薬組成物抗体の産生を評価することがある。一般に、化合物の用量当量は、典型的な被験体に関しては約1ng/kg乃至10mg/kgである。投与に関しては、医薬組成物は、化合物のLD−50並びに被験体の質量および全体的な健康に適用されるような様々な濃度での化合物の副作用によって決定される速度で投与できる。
【0072】
さらに、本発明のインビボイメージング方法に関して上記に記載されたインビボイメージング剤は、上述した治療方法を実行すべきか否かを判断するための方法での使用に適用できる。前記判断方法は、
(a)本明細書中に記載されたインビボイメージング方法、及び
(b)段階(a)のインビボイメージング方法で生成された画像を評価して、前記治療方法を実行すべきか否かを判断する段階
を含んでいる。
【0073】
スクリーニング方法
別の態様では、本発明は、ポリヌクレオチド又はポリペプチドと選択的に会合する化合物を同定するためのスクリーニング方法であって、
(i)前記化合物を、表2又は表5に記載されたものから選択される遺伝子によってエンコードされるポリペプチド又はポリヌクレオチドに接触させる段階、及び
(ii)前記ポリペプチド又は前記ポリヌクレオチドに対する前記化合物の効果を測定する段階
を含んでなる方法を提供する。
【0074】
本発明のスクリーニング方法における「化合物」の好適で好ましい実施形態は、本発明のインビボイメージング方法に関して上記に記載した通りである。
【0075】
最も広い意味では、前記化合物をポリペプチド又はポリヌクレオチドに「接触」させる段階は、前記化合物及び前記ポリペプチド又はポリヌクレオチドを互いに物理的に接触させることを意味する。これは、下記に一層詳しく記載されるようにしてインビトロ又はインビボで実施できる。
【0076】
化合物の効果」は、化合物とポリペプチド又はポリヌクレオチドとの間における任意の特異的な相互作用である。かかる特異的な相互作用は化合物とポリヌクレオチド又はポリペプチドとの特異的結合を包含し、化合物によって誘発されるポリヌクレオチド又はポリペプチドの発現レベル又は活性の任意の変化を含む。
【0077】
化合物の効果を「測定」する段階は、当技術分野で公知の方法によって実施できる。かかる公知スクリーニング方法の一例は、測定段階で測定される効果が前記ポリペプチド又はポリヌクレオチドに対する前記化合物の結合であるようなものである。かかる結合アッセイは、好ましくは、本明細書中に記載される単離ポリペプチド又はポリヌクレオチドを1種以上の化合物に接触させ、ポリペプチド又はポリヌクレオチドと化合物とが結合複合体を形成するのに十分な時間を置くことを含んでいる。「単離」という用語は他の細胞成分からの分離を意味し、合成ポリヌクレオチド及びポリペプチドも含み得る。形成された何らかの結合複合体は、いくつかの確立された分析技法のいずれかを用いて検出できる。タンパク質結合アッセイには、特に限定されないが、共沈殿、非変性SDS−ポリアクリルアミドゲル上での共移動、及びウェスタンブロット上での共移動を測定する方法がある。(例えば、Neurotransmitter Receptor Binding(Yamamura,H.I.,et al.,eds.,pp.61−89)中のBennet and Yamamura,(1985)“Neurotransmitter,Hormone or Drug Receptor Binding Methods”を参照されたい)。かかるアッセイで使用するタンパク質は、天然に発現されたもの、クローン化されたもの、又は合成されたものであり得る。結合アッセイはまた、例えば、 ポリペプチドと相互作用する内因性タンパク質を同定するためにも有用である。例えば、ポリペプチドと結合する抗体、受容体又は他の分子を結合アッセイで同定することができる。多くの場合、結合アッセイにおける反応体の少なくとも1つは検出可能な標識からなる。これに関連した「反応体」という用語は、化合物、ポリペプチド、ポリヌクレオチド、及びこれらを特異的に検出するために使用される任意の抗体を含む。「検出可能な標識」は、検出可能な物理的又は化学的性質を有する任意の物質であり得る。したがって、検出可能な標識の存在は、結合した反応体の量を表す尺度を与える。使用する特定の検出可能な標識に応じ、適当な検出技法を使用することで、選択的に結合した検出可能な標識の量が測定される。本発明のスクリーニング方法で使用するのに適した検出可能な標識には、分光手段、光化学的手段、生化学的手段、免疫化学的手段、電気的手段、光学的手段又は化学的手段によって検出できるものがある。かかる手段には以下のものが含まれる。
(i)磁気ビーズ(例えば、Dynabeads(商標))、
(ii)蛍光色素(例えば、フルオレセインイソチオシアネート、テキサスレッド、ローダミンなど)、
(iii)放射性標識(例えば、3H、125I、35S、14C又は32P)、
(iv)酵素(例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ及びELISAで常用される他の酵素)、並びに
(v)コロイド金或いは着色ガラス又はプラスチック(例えば、ポリスチレン、ポリプロピレン、ラテックスなど)ビーズのような熱量測定標識。
【0078】
これらの検出可能な標識を検出する手段は、当業者にとって公知である。即ち、例えば検出可能な標識が放射性標識である場合、検出手段にはシンチレーションカウンター又はオートラジオグラフィー用の写真フィルムがある。検出可能な標識が蛍光標識である場合、それを検出するには、フルオロクロム(fluorochrome)を適当な波長の光で励起し、生じた蛍光を検出すればよい。蛍光は、目視、写真フィルムの使用、電荷結合素子(CCD)又は光電子増倍管のような電子検出器の使用などによって検出できる。同様に、酵素性の検出可能な標識を検出するには、酵素用の適当な基質を供給し、生じた反応生成物を検出すればよい。
【0079】
本発明のスクリーニング方法はまた、好ましくはインビトロでも実施できる。この場合には、前記ポリペプチド又はポリヌクレオチドを細胞中で発現させ、この細胞を化合物に接触させる。かかる方法は、一般に、本明細書中に記載したポリペプチド又はポリヌクレオチドを発現する1以上の細胞に化合物を接触させる細胞ベースアッセイを実施し、次いで転写物、翻訳生成物又は触媒生成物の発現の増減を検出することを含んでいる。細胞中における本明細書中に記載したポリヌクレオチドの発現レベルは、前記ポリヌクレオチドの転写物(又は相補核酸)と特異的にハイブリダイズする化合物を用いて細胞中に発現されたmRNAを測定することで決定できる。測定は、細胞を溶解してノーザンブロットを実施するか、或いは細胞を溶解せずにインサイチュハイブリダイゼーション技法を使用することで実施できる。
【0080】
ポリペプチドは、前記ポリペプチドと特異的に結合する抗体である化合物を用いて細胞溶解物を探索する免疫学的方法を用いて検出できる。
【0081】
ポリペプチドの酵素活性は、酵素生成物の産生を測定するか、或いは基質の消費を測定することで決定できる。活性とは、触媒反応の速度或いは基質と結合し(Km)又は触媒生成物を遊離させる(Kd)ポリペプチドの能力をいう。
【0082】
ポリペプチドの活性の分析は、一般的な生化学分析に従って実施できる。かかるアッセイには、細胞ベースアッセイ並びに精製又は部分精製ポリペプチド或いは粗細胞溶解物に関するインビトロアッセイがある。かかるアッセイは、一般に、既知量の基質を供給し、生成物を時間の関数として定量することを含んでいる。
【0083】
スクリーニング方法はまた、前記接触段階が晩発性うつ病の動物モデルに前記化合物を投与することを含む場合にも実施できる。使用する動物モデルは、一般に任意の種類の哺乳動物である。好ましい動物の具体例には、特に限定されないが、霊長類、マウス及びラットがある。一実施形態では、ストレスに暴露したうつ病(慢性及び急性)のラットモデルがスクリーニングのために使用される。一実施形態では、本明細書中に開示されたヒト遺伝子のショウジョウバエ(Drosophila)オルソログのモジュレーターをスクリーニングするため、ショウジョウバエモデルのような無脊椎動物モデルが使用できる。別の実施形態では、遺伝子ノックアウト技術を含むトランスジェニック動物技術は、例えば適当な遺伝子標的化ベクターとの相同的組換え又は遺伝子の過剰発現の結果として、ポリヌクレオチド又はポリペプチドの不存在、発現減少又は発現増加をもたらす。かかる方法によって生み出されるトランスジェニック動物は、精神障害の動物モデルとしての用途を有し、精神障害のモジュレーターのスクリーニングのために有用である。
【0084】
ノックアウト細胞及びトランスジェニックマウスは、マーカー遺伝子又は他の異種遺伝子を相同的組換えによってマウスゲノムの内因性遺伝子部位に挿入することで作製できる。かかるマウスはまた、内因性ポリヌクレオチドを該ポリヌクレオチドの突然変異バージョンで置換するか、或いは例えば発癌物質への暴露によって内因性ポリヌクレオチドを突然変異させることによっても作製できる。
【0085】
好ましい実施形態では、上記実施形態のいずれかに記載されたスクリーニング方法は、前記化合物を前記ポリペプチドに接触させ、前記ポリペプチドに対する前記化合物の効果を測定することに関する。
【0086】
本発明で使用される方法
晩発性うつ病を有する被験体の脳組織において特異的かつ差別的に発現される遺伝子の発現パターンを調べる研究が本明細書中に記載される。うつ病に関連する広範囲の症状が、これらの被験体における複雑な遺伝的基礎及び複雑な遺伝子発現パターンを反映している。さらに、精神障害の発症及び診断を理解するためには、脳の経路又は回路並びに細胞レベル下経路が重要である。評価された選択脳領域(前部帯状回(AC)及び側坐核(NA))は、うつ病の臨床症状に関係している。脳領域における細胞構築の変化、脳領域における主要神経伝達物質又は関連分子の発現、並びに脳領域における細胞レベル下経路のすべてが、うつ病の発症に寄与する。
【0087】
本発明の基礎となるデータは、マイクロアレイ発現分析によって得られた。この種の分析で使用されるアレイは「発現チップ」といわれる。固定化DNAは既知遺伝子のmRNAから逆転写されたcDNAである。さらにもう一度、少なくとも若干の実験では、チップにハイブリダイズされる対照DNA及び試料DNAはそれぞれ正常組織及び罹患組織のmRNAから逆転写されたcDNAである。ある種の病態で遺伝子が過剰発現されるならば、対照cDNAに比べて多くの試料cDNAが、その発現遺伝子を表すスポットにハイブリダイズするであろう。研究者が多くの疾患に関与する様々な遺伝子の発現パターンを特徴づけた後には、任意の個体の罹患組織から導かれたcDNAをハイブリダイズさせることで、該個体からの遺伝子の発現パターンが既知疾患の発現パターンに合致するか否かを判定することができる。その通りであれば、その疾患に適した治療を開始することができる。
【0088】
Nature Genetics January 1999の付録中には、マイクロアレイ方法論に関する有用な総説を見出すことができる。本発明に対して最も関連があるのは、25〜32頁のBotwellの論文であって、これはマイクロアレイ技術を用いて発現データを得る方法を記載している。次に、この技術の概説を示す。
【0089】
DNA「マイクロアレイ」は、数千種の遺伝子からの配列を一定の位置に固定化又は結合した小さな固体支持体である。支持体自体は通常は顕微鏡スライドガラスであるが、シリコンチップ又はナイロン膜であってもよい。DNAは、支持体上にプリントされるか、スポットされるか、或いは実際に直接合成される。マイクロアレイ中の遺伝子配列は規則正しいやり方又は一定のやり方で支持体に結合されることが重要である。これは、アレイ中の各スポットの位置を用いて特定の遺伝子配列が同定されるからである。スポット自体は、DNA、cDNA又はオリゴヌクレオチドであり得る。マイクロアレイは、例えばコスト、タイミング及び利用可能な人的リソースの問題に応じ、研究者が作製することもできるし、或いは商業的供給源から得ることもできる。Genechip(登録商標)アレイは、フォトリソグラフィー及び組合せ化学を組み合わせた技術を用いて製造された商業的に入手可能なアレイである()。各アレイ上には、最大130万種のオリゴヌクレオチドプローブが合成される。各オリゴヌクレオチドは、プローブセルといわれるアレイ上の特定領域内に位置している。各プローブセルは、所定オリゴヌクレオチドの数十万乃至数百万のコピーを含んでいる。
【0090】
mRNAからcDNAを得るためには、逆転写酵素として知られるDNAポリメラーゼ酵素が一本鎖リボ核酸(RNA)を二本鎖DNAに転写する過程である逆転写が使用される。mRNAはポリA(アデノシン)テールを有するので、この反応では通例ポリT(チミジン)プライマーがプライマーとして使用される。
【0091】
マイクロアレイ分析に適したcDNAを得るためには、投入mRNAの品質が決定的である。剖検サンプリング時におけるRNA完全性は、生前及び死後のイベント、並びに発現レベルとドナーの死亡年齢、生前の低酸素症、苦痛イベントや苦痛段階の持続期間、脳のpH、サンプリング前の剖検期間及びRNAの完全性のような混乱因子との相互関係によって左右され得る(Stan et al 2006;Brain Research;1123(1):1−11)。したがって、RNA試料をスクリーニングすることで、マイクロアレイ分析のために適するものを選択することが重要である。RNAの品質の評価に先立って、試料に関し、苦痛状態の指標として単純なpH測定を行うことができる。その後、各種の方法を用いてRNAの品質を測定することができるが(Copois et al 2007 J Biotechnol;127(4):549−59)、その1つがRNA完全性番号(RIN、Agilent Technologies社)である。ミクロ加工チップ上での電気泳動分離を使用することで、RNA試料が分離され、レーザー誘起蛍光の検出によって検出される。バイオアナライザーソフトウェアが電気泳動図及びゲル様画像を生成し、試料濃度及びいわゆるリボソーム比(18S/28Sリボソームバンド比)のような結果を表示する。RNA完全性データの標準化された解釈がRINソフトウェアアルゴリズムを用いて実施され、これによって1〜10のナンバリングシステム(1は最も分解されたプロファイルであり、10は最もインタクトなプロファイルである)に基づくリボ真核性全RNAの分類が可能となる。
【0092】
DNAマイクロアレイ技術は、DNA配列情報の同定及び分類並びにこれらの新しい遺伝子への機能の割当てを容易にする。マイクロアレイは、所定のmRNA分子がそれの起源であるDNA鋳型に対して特異的に結合又はハイブリダイズする能力を利用することで働く。「ハイブリダイズ」という用語は、相補的な一本鎖核酸を合体(又はアニーリング)して単一の二本鎖分子にする過程をいう。多くのDNA試料を含むアレイを使用すれば、アレイ上の各部位に結合したmRNAの量を測定することで、細胞中の数百又は数千の遺伝子の発現レベルを1回の実験で決定することが可能である。コンピューターを用いれば、マイクロアレイ上のスポットに結合したmRNAの量が正確に測定され、細胞中の遺伝子発現プロファイルが生成される。
【0093】
核酸のハイブリダイゼーションに関する広範な指針が、Tijssen,Techniques in Biochemistry and Molecular Biology − Hybridization with Nucleic Probes,“Overview of principles of hybridization and the strategy of nucleic acid assays”(1993)中に見出される。一般に、規定のイオン強度及びpHにおける特定の配列の熱融解点(Tm)より約5〜10℃低くなるようにストリンジェントな条件が選択される。Tmは、標的に対して相補的なプローブの50%が平衡状態で標的配列にハイブリダイズする(規定のイオン強度、pH及び核酸濃度下での)温度である(標的配列は過剰に存在するので、Tmでは、平衡状態で50%のプローブが占拠される)。「ストリンジェントな」条件とは、塩濃度がpH7.0〜8.3で約1.0M未満のナトリウムイオン濃度(又は他の10種の塩濃度)であり、通例は約0.01〜約1.0Mのナトリウムイオン濃度であり、かつ温度が短プローブ(例えば、10〜50ヌクレオチドのもの)については約30℃以上であり、長プローブ(例えば、50ヌクレオチドを超えるもの)については約60℃以上であるものである。
【0094】
ストリンジェントな条件はまた、ホルムアミドのような不安定化剤の添加によっても達成できる。選択的又は特異的なハイブリダイゼーションのためには、陽性信号はバックグラウンドハイブリダイゼーションの2倍以上であり、任意には10倍である。例示的なストリンジェントハイブリダイゼーション条件は次のようなものであり得る。50%ホルムアミド、5×SSC及び1%SDS中において42℃でインキュベートするか、又は5×SSC及び1%SDS中において65℃でインキュベートし、0.2×SSC及び0.1%SDS中において65℃で洗浄する。かかる洗浄は、5分、15分、30分、60分、120分又はそれ以上の時間で実施できる。
【0095】
ストリンジェントな条件下で互いにハイブリダイズしない核酸も、これらがエンコードするポリペプチドが実質的に同一であればやはり実質的に同一である。これは、例えば、遺伝暗号によって許される最大のコドン縮重を用いて核酸のコピーが生み出される場合に起こる。かかる場合には、核酸は中程度にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズするのが通例である。例示的な「中程度にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件」は、40%ホルムアミド、1M NaCl及び1%SDSの緩衝液中において37℃でハイブリダイゼーションを行い、45℃の1×SSCで洗浄することを含む。かかる洗浄は、5分、15分、30分、60分、120分又はそれ以上の時間で実施できる。陽性のハイブリダイゼーションはバックグラウンドの2倍以上である。当業者には容易に理解される通り、代わりのハイブリダイゼーション及び洗浄条件を用いて同様なストリンジェンシーを得ることもできる。
【0096】
ハイブリダイゼーション段階の完了後、マイクロアレイは、若干のレーザー、特殊な顕微鏡及びカメラからなる「リーダー」又は「スキャナー」内に配置される。その例には、Packard社のBioChip Imager、Molecular Dynamics社のAvalanche及びGenetic Microsystems社のGMS 418 Array Scannerがある。蛍光標識がレーザーによって励起され、顕微鏡及びカメラが共働してアレイのディジタル画像を生み出す。典型的なマイクロアレイ実験は数千のデータ点を生成するが、これはデータを保存及び処理するための高度に複雑な技法が必要であることを意味する。使用されるツールは、リーダーからのデータの画像分析を実行するためのソフトウェア、情報を保存及びリンクするためのデータベース、並びに個々のクローンからのデータをウェブデータベース(例えば、GenBank)にリンクするソフトウェアを含み得る。GenBank配列データベースは、すべての公共に利用可能なヌクレオチド配列及びそのタンパク質翻訳物のオープンアクセスの注釈付きコレクションである()。このデータベースは、国際ヌクレオチド配列データベースコラボレーション又はINSDCの一部として米国バイオテクノロジー情報センター(NCBI)で作成されている。
【0097】
このたび、マイクロアレイを用いて、晩発性うつ病を有する被験体の剖検脳から採取した試料のmRNA発現プロファイルを分析した。分析のためには前部帯状回及び側坐核を選択したが、それは脳のこれらの領域がうつ病の病態生理学に関連することが知られているからである。正常な個体に比べてうつ病と診断された患者の選択された脳領域のmRNAレベルでは、いくつかの遺伝子(表2及び表5、好ましくは表3及び表6)の発現の変化が示された。以下、本発明の基礎となるデータを得るために使用した特定のプロトコルを詳細に記載する。
【実施例】
【0098】
実施例の簡単な説明
実施例1には、うつ病の被験体及びうつ病でない被験体からの前部帯状回試料に関するトランスクリプトミクス分析を実施する際に使用した方法が記載される。
【0099】
実施例2には、うつ病の被験体及びうつ病でない被験体からの側坐核試料に関するトランスクリプトミクス分析を実施する際に使用した方法が記載される。
【0100】
実施例1:前部帯状回のトランスクリプトミクス
実施例1(i) 試料の選択
晩発性うつ病を有する10名の被験体の前頭皮質から(−80℃で貯蔵された)凍結脳組織を得、年齢、性別、剖検期間及び苦痛状態を考慮して10名の精神医学的に健常な対照被験体と組み合わせた。すべての被験体は突然に死亡し、苦痛状態の平均持続期間は7時間であった(Li et al,Hum Mol Genet 13,609−616(2004))。これらの数は、マイクロアレイ上での通常の有意性レベル(>±2SD)で、或いはDIGEに基づくプロテオミック分析を使用してグループ差を検出するのに十分なものとして選択された。うつ病の被験体はすべてがDSM−IVの大うつ病を有しており、ケースノートの再調査によってこれが確認されたと共に、これらの被験体がいかなる他の精神疾患も有していないことも確認された。対照に関するケースノートをスクリーニングすることで、これらの被験体がいかなる精神医学的障害も有していないことが保証された。すべての被験体は剖検及び神経病理学的検査を受け、誰も痴呆に一致する変化を示さなかった。
【0101】
苦痛状態のマーカーとしてpHを評価することで、組織をその使用適性に関してスクリーニングした。−80℃での貯蔵から試料を得、部分解剖し、融解し、UltraTurraxホモジナイザーを用いて全速で10秒間ホモジナイズすることで10%ホモジネート(例えば、1グラムの組織+9mlの水)を調製した。水性標準で校正した塩化銀電極を用いて試料のpHを測定した。
【0102】
実施例1(ii) マイクロアレイ分析
評価後、限られた試料セットが分析のために利用可能であった(下記表1参照)。この試料セットから、膝下前部帯状回皮質(図1参照)を選択し、−20℃で顕微解剖した。これらの試料を−80℃で凍結貯蔵し、次いでRNA分析のためにプロセシングした。RNAの調製のためには、試料を融解し、Ultra Turraxホモジナイザーを用いて全速で10秒間ホモジナイズすることで10%ホモジネートを調製した。試料pHを測定し、グアニジンベースの抽出(TriZOL)を用いてRNAを抽出し、カラム(RNEasy、Qiagen社)上での単離後精製によって低分子量RNAを除去した。Agilent Bioanalyzerを使用することで、透明な18/26Sリボソームバンドに基づいてRNAの品質を測定した。
【0103】
【表1】

【0104】
Agilent 2100バイオアナライザーを用いた一次分析に試料を供してRNA完全性番号(RIN)を得ることで、全RNA試料の完全性を推定した。Agilent 2100ソフトウェアは、分解生成物の存在又は不存在を示すため、試料の電気泳動トレースに基づいて真核性全RNA試料に完全性番号を自動的に割り当てた。一次分析(表1参照)に基づき、2回の増幅ラウンドを通して試料を採取し、Affymetrix Plus 2.0マイクロアレイ上に配置した。
【0105】
初期データスクリーンは、4つのケース(試料AC17、AC19及びAC21)が低い3’/5’比及び平均未満の%プレゼントコールのためさらなる分析に適さないかもしれないことを示した。いずれかの試料がアウトライヤーであるかどうかを判定するために統計的分析を行った。スピアマン・ランク相関(Spearmann Rank Correlation)アプローチを用いたところ、3つの試料(試料AC17、AC19及びAC21)は主グループの外部にある遺伝子チップ結果を与え、したがってやはり主グループの外部にあるかもしれない1つのケース(試料AC26)と共に潜在的な混乱因子であった。外れた試料を除外することで、試料AC17、AC19及びAC21は可能なアウトライヤーであるが、試料AC26は保留し得る可能性があることが実証された。
【0106】
全データセット並びに試料AC17、AC19及びAC21を除外したデータセットの両方を使用しながら、ストリンジェントなアプローチ及びそれほどストリンジェントでないアプローチを用いて統計的分析を行ったところ、最大664の有意に変化した遺伝子が同定された。表2は晩発性うつ病で変化することが判明した遺伝子を示しており、表3は表2から選択された、晩発性うつ病で有意に変化することが判明した遺伝子を示している。
【0107】
【表2】

【0108】
【表3】

【0109】
【表4】

【0110】
【表5】

【0111】
【表6】

【0112】
実施例2:側坐核のトランスクリプトミクス
実施例2(i) 試料の選択
苦痛状態のマーカーとしてpHを評価することで、晩発性うつ病を有する個体及び既知の神経精神医学的履歴をもたない個体からの剖検脳組織をその使用適性に関してスクリーニングした。−80℃での貯蔵から前頭皮質(BA45)の試料を得、部分解剖し、融解し、UltraTurraxホモジナイザーを用いて全速で10秒間ホモジナイズすることで10%ホモジネート(1グラムの組織+9mlの水)を調製した。水性標準で校正した塩化銀電極を用いて試料のpHを測定した。
【0113】
実施例2(ii) マイクロアレイ分析
試料の選択後、限られた試料セットが分析のために利用可能であった(下記表4参照)。この試料セットから、側坐核(図2参照)を選択し、−20℃で顕微解剖した。これらの試料を−80℃で凍結貯蔵し、次いでRNA単離及びマイクロアレイ分析のためにプロセシングした。
【0114】
【表7】

【0115】
Agilent 2100バイオアナライザーを用いた一次分析に試料を供し、これ(表4参照)に基づいて試料NA2、NA10、NA18及びNA25はさらなる分析のためにプロセシングしなかった。他の試料は2回の増幅ラウンドを通して採取し、Affymetrix Plus 2.0マイクロアレイ上に配置した。
【0116】
クラスター分析の結果、試料NA20及びNA26は他の試料と著しく異なる発現パターンを有している。これらの試料はまた、主成分分析(PCA)の結果にも含まれている。したがって、試料NA20及びNA26を除外し、データを階層クラスタリング及びPCAによって再分析した。
【0117】
試料NA20及びNA26を除外したデータセットを使用しながら、ストリンジェントなアプローチ及びそれほどストリンジェントでないアプローチを用いて統計的分析を行ったところ、121の遺伝子がうつ病でない被験体に比べてうつ病の被験体で有意に異なる発現を示した。表5は晩発性うつ病で変化することが判明した遺伝子を示しており、表6は表2から選択された、晩発性うつ病で有意に変化することが判明した遺伝子を示している。
【0118】
【表8】

【0119】
【表9】

【0120】
【表10】

【0121】
【表11】

【0122】
【表12】

【0123】
【表13】

【0124】
【表14】

【0125】
【表15】

【0126】
【表16】

【0127】
【表17】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験体が晩発性うつ病を有するか又は晩発性うつ病への素因があるか否かを判定するのに使用するためのインビボイメージング方法であって、
(i)前記被験体にインビボイメージング剤を投与する段階であって、前記インビボイメージング剤がポリヌクレオチド又はポリペプチドと選択的に会合する化合物を含み、前記ポリヌクレオチド又はポリペプチドが表2又は表5に記載されたものから選択される遺伝子によってエンコードされ、前記化合物がインビボイメージング成分で標識されている段階、
(ii)前記インビボイメージング剤を前記被験体の組織中で発現される前記ポリヌクレオチド及び/又はポリペプチドと選択的に会合させる段階、
(iii)前記インビボイメージング成分によって放出される信号をインビボイメージング方法によって検出する段階、並びに
(iv)前記信号の位置及び/又は量を表す画像を生成する段階
を含んでなる方法。
【請求項2】
前記遺伝子が表3又は表6に記載されたものから選択される、請求項1記載のインビボイメージング方法。
【請求項3】
前記被験体がインタクトな哺乳動物生体である、請求項1又は請求項2記載のインビボイメージング方法。
【請求項4】
前記組織が脳組織である、請求項1乃至請求項3のいずれか1項記載のインビボイメージング方法。
【請求項5】
前記脳組織が前部帯状回中にある、請求項4記載のインビボイメージング方法。
【請求項6】
前記遺伝子が表2に記載されたものから選択される、請求項5記載のインビボイメージング方法。
【請求項7】
前記遺伝子が表3に記載されたものから選択される、請求項5記載のインビボイメージング方法。
【請求項8】
前記脳組織が側坐核中にある、請求項4記載のインビボイメージング方法。
【請求項9】
前記遺伝子が表5に記載されたものから選択される、請求項8記載のインビボイメージング方法。
【請求項10】
前記遺伝子が表6に記載されたものから選択される、請求項8記載のインビボイメージング方法。
【請求項11】
前記インビボイメージング成分が以下のものから選択される、請求項1乃至請求項10のいずれか1項記載のインビボイメージング方法。
(i)放射性金属イオン、
(ii)常磁性金属イオン、
(iii)γ線放出型放射性ハロゲン、
(iv)陽電子放出型放射性非金属、及び
(v)過分極NMR活性核。
【請求項12】
前記インビボイメージング成分が(i)、(iii)及び(iv)の1者である、請求項11記載のインビボイメージング方法。
【請求項13】
晩発性うつ病の診断方法であって、
(a)請求項1乃至請求項12のいずれか1項記載のインビボイメージング方法、及び
(b)段階(a)で生成された画像を、前記インビボイメージング方法をうつ病でない被験体で実施した場合における前記インビボイメージング剤の取込みパターンを表すインビボ画像と比較する段階
を含んでなる方法。
【請求項14】
晩発性うつ病を罹患する被験体の治療方法であって、当該方法が医薬組成物の投与を含んでなり、前記医薬組成物が
(a)請求項2、請求項6、請求項7、請求項9及び請求項10のいずれか1項記載の方法で定義されるような遺伝子によってエンコードされるポリヌクレオチド又はポリペプチドと選択的に会合することで受容体の活性を変調する化合物の薬学的に有効な量、並びに
(b)生体適合性キャリヤー
を含む、方法。
【請求項15】
請求項13記載の診断方法で使用するための、請求項1、請求項2、請求項6、請求項7及び請求項9乃至請求項12のいずれか1項記載の方法で定義されるようなインビボイメージング剤。
【請求項16】
請求項14記載の治療方法を実行すべきか否かを判断するための方法で使用するための、請求項1、請求項2、請求項6、請求項7及び請求項9乃至請求項12のいずれか1項記載の方法で定義されるようなインビボイメージング剤であって、前記判断方法が
(a)請求項1乃至請求項12のいずれか1項記載のインビボイメージング方法、及び
(b)段階(a)のインビボイメージング方法で生成された画像を評価して、前記治療方法を実行すべきか否かを判断する段階
を含む、インビボイメージング剤。
【請求項17】
ポリヌクレオチド又はポリペプチドと選択的に会合する化合物を同定するためのスクリーニング方法であって、
(i)前記化合物を、表2又は表5に記載されたものから選択される遺伝子によってエンコードされるポリペプチド又はポリヌクレオチドに接触させる段階、及び
(ii)前記ポリペプチド又は前記ポリヌクレオチドに対する前記化合物の効果を測定する段階
を含んでなる方法。
【請求項18】
前記効果が前記ポリペプチド又は前記ポリヌクレオチドに対する前記化合物の結合である、請求項17記載のスクリーニング方法。
【請求項19】
前記ポリペプチド又はポリヌクレオチドが単離される、請求項17又は請求項18記載のスクリーニング方法。
【請求項20】
前記ポリペプチド又はポリヌクレオチドがインビトロの細胞中で発現される、請求項17又は請求項18記載のスクリーニング方法。
【請求項21】
前記接触段階が前記化合物を晩発性うつ病の動物モデルに投与することを含み、前記ポリペプチド又は前記ポリヌクレオチドが前記動物モデルの組織中で発現される、請求項17又は請求項18記載のスクリーニング方法。
【請求項22】
晩発性うつ病の前記動物モデルが晩発性うつ病の霊長類、マウス又はラットモデルである、請求項21記載のスクリーニング方法。
【請求項23】
前記化合物を前記ポリペプチドに接触させる、請求項17乃至請求項22のいずれか1項記載のスクリーニング方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2011−523636(P2011−523636A)
【公表日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−508937(P2011−508937)
【出願日】平成21年5月15日(2009.5.15)
【国際出願番号】PCT/EP2009/055943
【国際公開番号】WO2009/138499
【国際公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【出願人】(305040710)ジーイー・ヘルスケア・リミテッド (99)
【Fターム(参考)】