説明

おから醗酵菌及びその肥料及びその肥料を用いた土壌改良方法

【課題】おからを用いたおから発酵菌と、その肥料と、その肥料を用いた土壌改良方法を提供するものである。
【解決手段】おからにEM菌資材、木酢液、麹菌を混合し、醗酵させてなることを特徴とするおから発酵菌であり、米ぬかに前記のおから醗酵菌を混合したことを特徴とするおから醗酵肥料であり、また、栽培土壌の表面に散水し、次に前記のおから醗酵肥料を薄く散布して施肥し、土壌の表面に細かい網シートをかけて一定期間、醗酵させることを特徴とする土壌改良方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、おから醗酵菌及びその肥料及び、その肥料を用いた土壌改良方法に関する。
【背景技術】
【0002】
日本の伝統的な加工食品の一つである豆腐を製造する製造工場において、豆乳を絞った後に残る「おから」が生産されている。
【0003】
このおからは、様々な料理の食材として用いられているが、近年の食生活の変化によって、おからの消費量は年々減少し、家畜の飼料に用いられたり、或いは産業廃棄物として認定され、焼却や埋立て処分をするケースも増えてきている。
【0004】
そこで、有機質を豊富に含む有用な資源であるおからを、産業廃棄物として廃棄せずに有効に活用するために、微生物による発酵作用を利用して堆肥などの有益な物質に転換し、再利用することが行われている。
【0005】
例えば、特開2006−110440号公報では、80℃〜100℃付近で活性化する微生物とおからを回転ドラム式の醗酵処理装置に入れ、加熱バーナーで温度調節して肥料を製造する装置が開示されている。
【0006】
この醗酵処理装置によると、耐熱性のある土着菌であるNB菌を用いて、高温でおからを醗酵処理することで、水分の多いおからに対して雑菌の繁殖を防止し、効果的に乾燥処理しようとするものである。
【特許文献1】特開2006−110440号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記の特許2006−110440号公報では、醗酵させて乾燥させることが重要となっており、このために高温で処理することが求められている。
【0008】
これはおからの水分が多い状態において、雑菌の繁殖による、悪臭を放つことに対する対策を重視するためである。
【0009】
悪臭対策は、雑菌菌の繁殖を防止できるば可能であり、高温での処理の他にも、微生物の処理で悪臭を放たないように処理することは可能である。
【0010】
本発明は、おからを用いた発酵菌とその効果的な肥料と、その醗酵肥料を用いた土壌改良方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上記の課題を解決するために、請求項1の発明では、おからにEM菌資材と木酢液と麹菌を混合し、醗酵させてなることを特徴とするおから発酵菌である。
【0012】
おからは、豆乳を絞った後に残る残渣物であり、豆腐店などで廃棄処理されているものなどが使用できる。取り扱い上、水分は50%以下のものが好ましく、遠心分離処理などで、水分調整したものでも良い。
【0013】
EM菌資材は、肥料の添加物として市販されている各種のEM菌資材を使用できる。例えば、サンコー産業社のEM菌資材「EM1号」などが使用できる。
【0014】
EM菌資材の混合割合は、おからの状態により異なるが、おからに対して重量比で1%〜30%程度が好ましい。さらに好ましくは、3%〜20%程度が良く、もっとも好ましいのは5%〜10%程度である。
【0015】
醗酵温度は、35〜70℃程度が好ましい。醗酵期間は、3〜10日程度が好ましく、5〜8日程度が良い。
【0016】
木酢液は、市販されている木酢液を使用できる。例えば、南部川村森林組合製の木酢液などでも良い。
【0017】
配合割合は、おからに対して、0.5%〜5%程度が好ましく、さらに好ましくは、1%〜2%程度である。
【0018】
木酢液は、菌資材と併用すると、菌を殺してしまう恐れがあり、良好な効果が期待できないとされていたが、本願発明では、EM菌や麹菌に悪影響は無く、雑菌抑制(腐敗防止)効果、害虫忌避効果が発揮されるものである。
【0019】
麹菌は、醗酵を促進するものであればいずれでも良く、市販されている麹菌資材などが使用できる。
【0020】
麹菌の接種量は、任意であるが、麹菌が自然発酵で繁殖できる程度であればいずれでも良く、おからに対して、0.01%〜1%程度が好ましく、さらに好ましくは、0.1%から0.5%程度が良い。自然醗酵温度は、40〜60℃程度が好ましい。自然醗酵期間は、3〜10日程度が好ましく、5〜8日程度が良い。
【0021】
請求項2の発明は、米ぬかに、前記のおから醗酵菌を混合したことを特徴とする肥料である。
【0022】
米ぬかは、市販されている米ぬかが使用でき、例えば、沖縄食糧(株)製の米ぬかなどを使用することができる。
【0023】
配合割合は、米ぬかに対して、おから醗酵菌を重量比で3%〜50%程度が好ましい。さらに好ましくは、3%〜20%程度が良く、もっとも好ましいのは5%〜10%程度である。
【0024】
米ぬかにおから醗酵菌を混合後は、十分に攪拌・混合することにより、菌が安定するまで醗酵させる必要は無く、直ちに、肥料として使用することができる。
【0025】
請求項3の発明は、栽培土壌の表面に散水し、次に前記の請求項2に記載のおから醗酵肥料を散布して施肥し、土壌の表面に水分を保持するための細かい網製シートをかけて一定期間、土壌を醗酵させることを特徴とする土壌改良方法である。
【0026】
最初に、栽培土壌の表面に適度な水分を保持させるために、水を散水する。水道水をジョロやシャワー、噴霧機などで散水しても良い。土壌表面が濡れる程度で良い。
【0027】
次に、上記のおから醗酵肥料を栽培土壌の表面に、薄く散布する。栽培土壌1m2に対して、0.1〜1kg程度が好ましく、さらに好ましくは、0.5〜0.8kg程度である。
【0028】
該シートは、一定程度土壌表面の水分を保持でき、かつ若干の通気性を確保できるものであればいずれでも良く、網目の細かい樹脂網製のシートなどが好ましい。市販されている樹脂製の防虫シートなどを使用することができる。
【0029】
シートを敷設後の土壌醗酵期間は、5日〜14日程度が好ましく、さらに好ましくは、5〜10日程度が良い。
【0030】
醗酵により、土壌表面に菌糸が発生し、この菌糸の発生で土壌表面全体が白くなる程度まで醗酵させることが好ましい。その後、シートをとり、表面を軽く攪拌することにより、土壌改良が完成する。
【発明の効果】
【0031】
本発明では、以下に示すような効果がある。
【0032】
1)おからを有効活用ができる。
【0033】
2)肥料に有効活用できるおからの醗酵菌を提供できる。
【0034】
3)おからの有機成分を肥料として有効活用できる。
【0035】
4)麹菌とおからによる、新たな醗酵肥料を提供できる。
【0036】
5)おからを用いた土壌改良方法を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
以下に、本発明による実施の形態を図面を用いて説明する。
【0038】
図1は、本発明によるおから醗酵肥料の製造方法を示すフロー図である。
【0039】
S−1)おから
おからは、豆乳を絞った後に残る残渣物であり、豆腐店で廃棄処理されるものを引き取り、30kgを使用した。
【0040】
おからは、豆乳を絞った後にできる絞りカスのことであるが、カスとはいっても、低カロリーでたんぱく質・カルシウム・食物繊維を豊富に含んでいる。
【0041】
S−2)EM菌
EM菌は、市販されている、サンコー産業の「EM1号」(2リットル)を使用した。養分の保肥力を高め、微生物の住処の機能があり、有用微生物を定着させることが期待できる。
【0042】
S−3)木酢液
木酢液は、南部川村森林組合製の木酢液を200ml使用した。
【0043】
S−4)麹菌
麹菌は、市販の麹菌粉体40gを使用した。
【0044】
麹菌は、酵母やキノコの仲間で「真菌」と言われる微生物に属する糸状菌(カビ)の仲間です。世界最大級のタンパク質生産能を持つ微生物で、菌糸が枝分かれしながら放射状に成長し、乾燥や熱、光に強い分生子(胞子)を作ります。本実施例では、市販されている種麹菌の粉体を使用した。
【0045】
S−5)混合・攪拌
前記のおから30kgに対して、EM菌資材(EM1号)、2リットルと、木酢液200mlと、麹菌粉体40gを混合し、十分に攪拌した。
【0046】
S−6)醗酵処理
前記の十分に混合した、EM菌資材とおからを開放された容器に入れ、温度を35℃〜45℃程度にて自然醗酵処理する。自然醗酵時間は、7日間とした。
【0047】
S−7)おから醗酵肥料
醗酵処理を十分に行うことで、おから醗酵肥料の完成である。醗酵期間は、3日〜2週間程度が好ましい。さらに好ましくは、5日〜7日程度が最も好ましい。
【0048】
図2は、本発明によるおから醗酵肥料の製造方法を示すフロー図である。
【0049】
F−1)米ぬか
米ぬかは、市販の米ぬかを使用した。沖縄食糧(株)製の米ぬかを15kg使用した。
【0050】
F−2)おから醗酵菌
上記(図1)のおから醗酵菌を1kg使用した。
【0051】
F−3)混合・攪拌
上記の米ぬかに、おから醗酵菌を混合し、十分に攪拌する。米ぬか15Kgに対しておから醗酵菌が1kgとした。
【0052】
F−6)おから醗酵肥料
上記の十分な混合によりおから醗酵肥料が完成した。このおから醗酵肥料は、混合完了後、直ちに肥料として使用することができる。菌の醗酵処理は必ずしも必要ではない。
【0053】
また、おから醗酵菌をそのまま土壌に使用することは、菌の作用が強すぎるため、植物の育成には好ましくない。
【0054】
図3は、本発明によるおから醗酵肥料を用いた土壌改良方法のフロー図である。
【0055】
G−1)土壌表面散水
栽培土壌の表面に水道水を散水する。土壌の表面が濡れる程度でよい。
【0056】
G−2)おから醗酵肥料
前記の(図2)おから醗酵肥料を使用する。
【0057】
G−3)施肥
おから醗酵肥料を土壌表面に均等に薄く散布して施肥する。1m2当たり、600gを施肥した。
【0058】
G−4)シート敷設
施肥後、防虫用の樹脂製の細目網シートを土壌の全面に敷設した。
【0059】
G−5)自然醗酵処理
網シートを敷設した状態で7日間、保持し、醗酵させた。自然醗酵により、土壌の表面に白色の菌糸が発生し、土壌表面全体が図4に示すように白色となった。
【0060】
G−6)表土攪拌
菌糸が十分に発達しており、良好な土壌状態となっている。この状態で菌糸が発生し白色となっている土壌表面を軽くかき混ぜる。
G−7)改良土壌
表土攪拌後、改良土壌が完成した。
【0061】
図5は、本土壌改良前後の土壌の状態を示す図である。図の奥側A部が土壌条改良前の土壌であり、手前側B部が土壌改良後の土壌の状態を示す。図から明らかなように、土壌改良により、土壌の団粒化が促進されている。
【0062】
本発明による土壌改良後、パパイヤを作付けした。
【0063】
発芽が早く、害虫がつきにくい土壌となり、収穫においては、従来の土壌と比較すると、収穫量は1、5倍となった。
【0064】
図6は土壌改良前後の土壌を用いたパパイアやの比較栽培の状況を示す図である。
【0065】
土壌改良後の土壌を用いたパパイヤ1は、土壌改良前の土壌を用いたパパイヤ2に比べて明らかに生育状態の違いがあった。
【0066】
パパイヤ育成後、1ヶ月の状態おいて、土壌改良前のパパイヤ2は、背丈が15cm〜30cm程度に対して、土壌改良後のパパイヤ1は、50cm〜120cm程度にもなり、既につぼみができていた。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明によるおから醗酵菌の製造方法を示すフロー図である。
【図2】本発明によるおから醗酵肥料の製造方法を示すフロー図である。
【図3】本発明によるおから醗酵肥料を用いた土壌改良方法のフロー図である。
【図4】本発明によるおから醗酵肥料を用いた土壌改良後の土壌表面の菌糸の状態を示す外観図である。
【図5】本発明によるおから醗酵肥料を用いた土壌改良前後の土壌の状態を示す外観図である。
【図6】本発明によるおから醗酵肥料を用いたパパイヤの栽培状況を示す外観図である。
【符号の説明】
【0068】
S−1 おから
S−2 EM菌
S−3 木酢液
S−4 麹菌
S−5 混合・攪拌
S−6 醗酵処理
S−7 おから醗酵菌
F−1 米ぬか
F−2 おから醗酵菌
F−3 混合・攪拌
F−4 おから醗酵肥料
G−1 土壌表面散水
G−2 おから醗酵肥料
G−3 施 肥
G−4 シート敷設
G−5 醗酵処理
G−6 表土攪拌
G−7 改良土壌
A 土壌改良前の土壌
B 土壌改良後の土壌
1 土壌改良前の土壌を用いたパパイヤ
2 土壌改良後の土壌を用いたパパイヤ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
おからにEM菌資材と木酢液と麹菌を混合し、醗酵させてなることを特徴とするおから発酵菌。
【請求項2】
米ぬかに、前記の請求項1に記載のおから醗酵菌を混合したことを特徴とする肥料。
【請求項3】
栽培土壌の表面に散水し、次に前記の請求項2に記載のおから醗酵肥料を散布して施肥し、土壌の表面に水分を保持するための細かい網製シートをかけて一定期間、土壌を醗酵させることを特徴とする土壌改良方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−110226(P2010−110226A)
【公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−283049(P2008−283049)
【出願日】平成20年11月4日(2008.11.4)
【出願人】(308030341)
【Fターム(参考)】