説明

おむつ濡れの検知装置

【課題】装着者の皮膚に優しく、人体に安全で且つ簡単で効率的に非接触でおむつ濡れの検知が行えるおむつ濡れの検知装置を提供する。
【解決手段】少なくとも2本の導電性糸X,Xを長手方向に配置した織布からなるセンサ部13と、コイルとコンデンサとからなり、その共振回路に2本の導電性糸を接続可能とした共振回路部14と、共振回路部の共振周波数の発振器と、受信器と、駆動電源とを備え、共振回路部における共振状態からセンサ部に付着した排泄物の有無を検知する検知部15と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性糸を用いたおむつ濡れセンサに係り、特におむつ濡れを非接触で簡単に検知できるおむつ濡れの検知装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、介護を必要とする人が増加する傾向にあり、おむつ装着者も増加する傾向にある。おむつ装着者は失禁等によりおむつが排泄物(小便あるいは大便)により濡れた状態となると不快であるので、介護者がこれをなるべく早く検知する必要があるため、各種のおむつ濡れセンサが開発されている(特許文献1−6参照)。
【0003】
金属製の板バネや金属板及び水を吸収して体積が収縮する部材によって構成されたおむつ濡れセンサは、吸収時に板バネと金属板が接触することで作動するスイッチを用いている。しかしながら、複雑な構造のスイッチの為に、大型化すると共に高価になってしまうという問題がある。また、金属材等の硬質な材料を用いていることも、身に付けるおむつへの使用は不快感や怪我の原因となりうるという問題がある。
【0004】
また、硫化銅微粒子を用いて導電性を付与した糸と銅イオンを含浸させたPVA系繊維からなるおむつ濡れセンサでは、おむつが濡れた際のセンサの導電性の変化を検知の基準としているものである。硫化銅や銅イオンを含浸させた導電性糸を用いたセンサは柔軟で衣類と同じ感覚であるものの、銅イオン等の人体への悪影響等が懸念されるという問題がある。
【0005】
また、紙おむつ上にラミネート処理又は蒸着処理により金属層を形成し、電極として用いるおむつ濡れセンサが提案されている。金属箔を用いたセンサの場合には、柔軟性は確保されるが、通気性の低下に伴う蒸れが起き易く、不快感の原因となりうる。また、装着時や装着後の移動等による屈曲により断線することが懸念され、確実な動作が得られない場合があるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3376769号公報
【特許文献2】特許第3717068号公報
【特許文献3】特開平11−347058号公報
【特許文献4】特開2000−139983号公報
【特許文献5】特開2007−240470号公報
【特許文献6】実用新案登録第3147110号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上述の事情に基づいてなされたもので、装着者の皮膚に優しく、人体に安全で、且つ簡単で効率的に非接触でおむつ濡れの検知が行えるおむつ濡れの検知装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のおむつ濡れの検知装置は、少なくとも2本の導電性糸を長手方向に配置した織布からなるセンサ部と、コイルとコンデンサとからなり、その共振回路に前記2本の導電性糸を接続可能とした共振回路部と、前記共振回路部の共振周波数の発振器と、受信器と、駆動電源とを備え、前記共振回路部における共振状態から前記センサ部に付着した排泄物の有無を検知する検知部と、を備えたことを特徴とする。
【0009】
共振回路部のコイルL又はコンデンサCのどちらかの両端にセンサ部の2本の導電性糸を接続することで、2本の導電性糸間の織布が乾燥状態であれば、共振回路の共振周波数には影響が無く、検知部からの共振周波数の電磁波に対して共振する。2本の導電性糸間の織布が尿などの電解液によって濡れた場合、2本の導電性糸間のインピーダンスが著しく低減し、導通状態に近い状態となる。これによって共振回路部のコイルL又はコンデンサCに並列に低インピーダンス(特にリアクタンス成分が顕著に低減)を接続した状態となり、検知部からの共振周波数の電磁波に対して共振しなくなり、おむつ本体に非接触でおむつ濡れの検知が簡単且つ効率的に行なえる。
【0010】
センサ部は少なくとも2本の導電性糸を長手方向に配置した異方性導電織布からなるので、装着者の皮膚に優しく、またおむつ本体に取り付けた共振回路部の共振の有無をおむつ本体に非接触で検知できるので、人体に安全で且つ簡単で効率的におむつ濡れの検知が行える。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施例1のおむつ濡れ検知装置の斜視図である。
【図2】共振回路部にセンサ部の2本の導電性糸を接続した状態の平面図である。
【図3】異方性導電織布の縦糸と横糸の織り込み状態を模式的に示す斜視図である。
【図4】(a)はセンサ部端部の2本の導電性糸の端子を示し、(b)は共振回路部の接続用の端子を示す平面図であり、(c)はセンサ部端部の2本の導電性糸の端子を共振回路部の接続用の端子に接続した状態を示す断面図である。
【図5】(a)は織布が乾燥状態で共振回路に影響が無い状態の等価回路図であり、(b)は織布が湿潤状態で共振回路に低インピーダンスが並列接続された状態の等価回路図である。
【図6】2本の導電性糸間距離を変化させた場合の1MHzにおける乾燥状態と湿潤状態における導電性糸間インピーダンスの絶対値の測定結果を示すグラフである。
【図7】2本の導電性糸間距離を変化させた場合の10MHzにおける乾燥状態と湿潤状態における導電性糸間インピーダンスの絶対値の測定結果を示すグラフである。
【図8】おむつ本体内部におけるセンサ部の各種配置例を示す断面図である。
【図9】本発明の実施例2のセンサ部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について、図1乃至図9を参照して説明する。なお、各図中、同一または相当する部材または要素には、同一の符号を付して説明する。
【実施例1】
【0013】
図1は、本発明のおむつ濡れの検知装置の概要を示す。紙おむつ等からなるおむつ本体11には吸収材12を備え、装着者が失禁等をした場合には、排泄物(小便あるいは大便)を吸収する。そして、本発明のおむつ濡れの検知装置においては、おむつ本体11の内部に、少なくとも2本の導電性糸を長手方向に配置した異方性導電織布からなる、センサ部13を備える。
【0014】
異方性導電織布の構成例を図3に示す。異方性導電織布は、縦糸xとして絶縁性糸間に少なくとも2本の導電性糸X,Xを含み、横糸yとして絶縁性糸を織り込んだものである。この例では、導電性糸としてポリエステル繊維からなる糸に無電界銅めっきしたものを用い、絶縁性糸としてポリエステル繊維からなる糸を用いている。織り込まれた導電性糸は織布の長手方向に平行に配置され、該方向に電気導電性を有すると同時に通常の糸と同様の柔軟性を有し、装着者の皮膚に優しい織布となるという特徴を有する。また、絶縁性糸に吸水性の高いポリエステル繊維を用いることで、排泄物に対してより高い保持性を有する。
【0015】
図2はセンサ部と共振回路部とを接続した状態を示し、コイルLとコンデンサCからなる共振回路部14に、異方性導電織布からなるセンサ部13の2本の導電性糸が接続されている。この例では、共振回路部14のコイルL又はコンデンサCのどちらかの両端に、センサ部13の2本の導電性糸の一端を接続し、他端を開放状態とする。
【0016】
図4に示すように、2本の導電性糸の一端には端子20a,20bを備え、共振回路部14の端子21a,21bと接続可能とすることが好ましい。この際、開閉が可能な蓋Lを設け、センサ部13と共振回路部14とを任意に接続可能とすることが好ましい。これにより、センサ部13のみを使い捨てとし、共振回路部14を繰り返し使用することも可能である。
【0017】
検知部15は、共振回路部14の共振周波数の発振器と、受信器と、駆動電源とを備え、共振回路部14における共振状態からセンサ部13に付着した排泄物の有無を検知する。すなわち、センサ部13に排泄物が付着すると、2本の導電性糸間のインピーダンスが格段に変化し、共振回路部14の共振周波数が変化する。すると、受信機の受信電力が変化するので、これを検知し、検知部15の表示器に表示する、或いは警報音を出力することでおむつ濡れの検知を介護者等に知らせることができる。
【0018】
この検知部15は例えば箱体状のケースに収容されていて、このおむつ装着者が例えば寝ている状態で、おむつ本体11とは離隔した位置にかざすことで、非接触でおむつ濡れを簡単に検知できる。
【0019】
2本の導電性糸間が乾燥していれば、共振回路部14の共振回路には影響が無く、図5(a)の等価回路となり、検知部15からの共振周波数の電磁波に対して共振する。2本の導電性糸間が尿などの電解液によって濡れた場合、その等価回路は図5(b)に示すようになり、導電性糸間のインピーダンスが低下した状態となる。これによって共振回路には、コイルL又はコンデンサCに並列にコンデンサCwと抵抗Rwとが加わることとなり、異なる共振状態となり、検知部15からの共振周波数の電磁波に対して共振しなくなり、おむつ濡れを効率的に検知することができる。
【0020】
例えば、センサ部13の2本の導電性糸間に1MHz、10MHzの高周波を印加した場合、センサ部となる異方性導電織布を、尿をモデルとする0.8%塩化ナトリウム水溶液に浸漬することで、2本の導電性糸間の等価インピーダンスが浸漬前に比べて1MHzでは約100分の1に、10MHzでも10分の1に低下することが確認されている。
【0021】
異方性導電織布を電解液に浸漬する前後でのインピーダンス成分の変化は、高周波測定であったためか乾燥状態であっても抵抗成分が検出された。電解液の浸漬前後で抵抗成分の変化は大きくはなかったが、容量リアクタンス成分が大幅に減少することが判明した。これは、排泄物の付着により2本の導電性糸間の異方性導電織布が有する静電容量が増大することを表している。係る容量リアクタンス成分の大幅減少により、抵抗成分の減少を検出する方式に対して検出感度を良好なものとすることができる。
【0022】
図6は1MHzにおける2本の導電性糸間のインピーダンス測定結果を示し、図7は10MHzにおける2本の導電性糸間のインピーダンス測定結果を示す。両方共、横軸は2本の導電性糸間の間隔を示し、縦軸は左側が乾燥状態におけるインピーダンスの絶対値を示し、右側が湿潤状態におけるインピーダンスの絶対値を示している。これらのデータから、2本の導電性糸間の間隔は2mm以上で安定した検出結果が得られることが分かり、2本の導電性糸間の間隔を2mm以上とすることが好ましい。
【0023】
センサ部13は、図8に示すように、紙おむつの内部にある吸収材12の付近に配置することで、尿などによって濡れたことを検知することができる。例えば、図8(a)に示すように、吸収材12の上部の着用者に近い箇所に配置した場合、失禁直後に検知することが可能となる。また、図8(b)に示すように、吸収材12の下部、おむつ本体11の外側に配置した場合、微量の失禁では反応せず、一定量の失禁によりセンサ部13が反応するようにできる。また、図8(c)に示すように、吸収材12の内部に配置した場合、微量の失禁では反応せず、時間経過後も安定したおむつ濡れの検知が可能となる。
【実施例2】
【0024】
以上の実施例1ではセンサ部13を1枚の織布で形成し、おむつ本体内部の吸収材12の付近に配置する例について説明した。しかしながら、センサ部13を図9に示すように形成することで、既存の紙おむつをそのまま利用することも可能である。この場合、センサ部13の表面は透湿性が高く保水性の低い素材(ポリオレフィン不織布等)17でコーティングすることで、接触する皮膚への刺激を低減させることができる。また、センサ部13の裏面は接着用片面テープまたは両面テープ18とし、紙おむつへの固定を可能にする。
【0025】
以上に説明したように、共振回路を用いたおむつ濡れ検知方法では、共振回路自体に電源を必要とせず、故障等によって装着者が感電するリスクを避けることができる。また、共振回路部14をセンサ部13と共におむつ本体11に一体成形することで、従来の紙おむつと同様に使い捨てで使用することができる。また、共振回路部14を着脱が可能な接続端子を設けておむつ本体11に着脱可能に取り付けることで、廃棄時に容易に切り離して再利用することができる。これにより、廃棄物量を削減し、紙おむつ一枚の単価を抑えることも可能である。この場合、共振回路部14を樹脂で覆った平坦なマッチ箱状の共振回路部或いは共振回路部14をラミネートした可撓性を有するフィルム状の共振回路部とし、クリップの様に挟むことで取り付けが可能となるような簡便な接続が出来ることが好ましい。
【0026】
なお、おむつ本体は、紙おむつの例で説明したが、布製のおむつ、或いはパッド等の排泄物を吸収する用品にも適用可能である。
【0027】
また、前記実施例では、共振回路部14のコイルLまたはコンデンサCのいずれかに並列に2本の導電性糸を接続する例について説明したが、コイルLおよびコンデンサCに直列に2本の導電性糸を接続するようにしてもよい。これにより、センサ部13が乾燥状態では、共振回路がオープンとなり共振しないが、センサ部13が湿潤状態となると2本の導電性糸間が導通状態となり、所定周波数で共振状態となる。
【0028】
これまで本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されず、その技術的思想の範囲内において種々異なる形態にて実施されてよいことは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明は、介護用おむつ等のおむつ本体に異方性導電織布からなるセンサ部を取り付けたもので、皮膚に優しく、またおむつ本体に取り付けた共振回路部の共振の有無をおむつ本体に非接触で検知できるので、人体に安全で且つ簡単で効率的におむつ濡れの検知が行える。従って、介護等の分野でおむつ濡れの検知に好適に利用可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2本の導電性糸を長手方向に配置した織布からなるセンサ部と、
コイルとコンデンサとからなり、その共振回路に前記2本の導電性糸を接続可能とした共振回路部と、
前記共振回路部の共振周波数の発振器と、受信器と、駆動電源とを備え、前記共振回路部における共振状態から前記センサ部に付着した排泄物の有無を検知する検知部と、を備えたおむつ濡れの検知装置。
【請求項2】
前記織布は2本の導電性糸を長手方向に平行に配置し、その端部に前記共振回路部と接続する端子を備えた請求項1に記載のおむつ濡れの検知装置。
【請求項3】
前記導電性糸はポリエステル繊維からなる糸に無電解メッキを施した糸である請求項1に記載のおむつ濡れの検知装置。
【請求項4】
前記織布の絶縁性糸はポリエステル繊維からなる糸である請求項1に記載のおむつ濡れの検知装置。
【請求項5】
前記共振回路部は、プラスチックフィルム上に導電材からなるパターンを配置して、前記コイルとコンデンサとを形成したものである請求項1に記載のおむつ濡れの検知装置。
【請求項6】
前記センサ部における2本の導電性糸間の間隔は2mm以上である請求項1に記載のおむつ濡れの検知装置。
【請求項7】
前記センサ部は、おむつ本体の内部にある吸収材の付近に配置された請求項1に記載のおむつ濡れの検知装置。
【請求項8】
前記センサ部は、裏面に接着用片面テープまたは両面テープを備え、おむつ本体への固定を可能にした請求項1に記載のおむつ濡れの検知装置。
【請求項9】
前記センサ部は、表面に透湿性が高く、保水性の低い素材でコーティングした請求項1に記載のおむつ濡れの検知装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2011−45613(P2011−45613A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−197703(P2009−197703)
【出願日】平成21年8月28日(2009.8.28)
【出願人】(000105350)コーア株式会社 (201)
【Fターム(参考)】