説明

おむつ監視装置

【課題】介護施設や自宅介護の現場で介護者がおむつに関連して重視している主な項目は、第1におむつの脱落発生、第2に排便の発生。第3に複数回の排尿によるおむつの飽和である。これらについてはそれが発生し次第速やかにおむつを再装着あるいは交換する必要がある。こうした介護者の要望を満たした優れた性能の広く普及した装置を提供する。
【解決手段】おむつの外側またはパッドとおむつの間にサンドイッチ状に配設した少なくとも1個の温度センサー4で検出した温度の時系列データからおむつが正常に装着されているときの温度変化の特徴を抽出し、その特徴とおむつが体から脱落したときの温度変化の差からおむつの脱落を判定する手段を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、おむつが体からの脱落したことやおむつに便や尿が排泄されたことを検出して警報するおむつ監視装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、おむつの脱落を検知し報知する装置については未だ開示された技術や実用化された装置が見当たらない。
【先行技術文献】
【0003】
おむつの交換時期を検知及び報知する装置については、例えば特開2006−43389号や特開2001−318067号公報に開示されているように、前者ではおむつの外に配設した湿度センサーが検出した湿度とその変化から主として赤ちゃんが尿や便を排泄したことを検出し報知するようにしたことと複数個配設した湿度センサーの配設位置から排尿と排便を識別するものが提案されている。また、後者ではおむつの外側に温度検出手段を取り付けて検出した温度変化の上下回数から尿量を判定し介護施設の介護者に警報を発するようにしたものが提案されている。
しかしながら、前者は、配設した湿度センサーが検知した湿度変化のピーク値を算出して尿の排泄と便の排泄とを識別していた。その結果、湿度は単位時間内の水分蒸発量の積分値に依存しているので変化速度が遅く、多量の尿や下痢のような多量の水分量を排泄した場合にはその水分の拡散速度は前記湿度の変化速度に比べて速いので前記2つのセンサーが検出した湿度変化の間には差が出難くなり便と尿が識別不能になることや誤識別を起こすなどの不都合があった。
また、後者は温度センサーを用いた尿量の検出についてなされた提案であり介護現場で切望されている便の検出については言及していない。しかし、後者は下痢のように便に多量の水分を含む場合には尿と誤認してしまう不都合があることは明白である。
そして、特開2000−185066には排泄を検知するシステムに徘徊監視機能を持たせたシステムが提案されている。しかし、このシステムはセンサー装置に定時発報機能や発報種別符号送信機能を備える必要があることや前期センサー装置が送信する無線信号を受信する受信機は各個に受信強度を測定する手段を備える必要があり装置が複雑となりコスト高となる不都合があった。
【発明の概要】
【0004】
介護施設や自宅介護の現場で介護者がおむつに関連して重視している主な項目は、第1におむつの脱落発生、第2に排便の発生。第3に複数回の排尿によるおむつの飽和である。これらについてはそれが発生し次第速やかにおむつを再装着あるいは交換する必要がある。
第1の項目は、意識的あるいは無意識的に使用者自身がおむつを取り外してしまうことはしばしば起こることである。その対処が遅れると排泄物で寝具や衣類また通路や家具などを汚すことになり衛生上好ましくないばかりでなく、介護者に清掃や消毒など負担が増大する。そのような事態にならないよう速やかにおむつを再装着する必要がある。
第2の項目は、便の臭気で同室者にも不快感を与えたり肌へのべとつきがストレスを招いたりさらにはかぶれを誘発するなど即刻おむつの交換が必要となる。
第3の項目は、その時期を過ぎるとおむつからの尿漏れを起こすばかりでなく不快感が一段とつのるのでおむつ交換が不可欠となる。
しかしながら現時点では、上述した先行技術に見るように上記の第3項目については既に実用化されているものの上記の第1項目及び第2項目については介護者要望を満たした優れた性能の広く普及した装置が未だ実現していない。
本発明はこうした課題を解決するための技術的諸問題を解決するにある。
また、本発明のもう一つの課題は、上記の課題を解決した本発明装置に徘徊予防の機能を兼備させることにより製造コストと設置コストを低減させた装置を実現するにある。
【問題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を達成するためになされた請求項1に記載の本発明は、おむつの外側またはパッドとおむつの間にサンドイッチ状に配設した少なくとも1個の温度センサーで検出した温度の時系列データからおむつが正常に装着されているときの温度変化の特徴を抽出し、その特徴とおむつが体から脱落したときの温度変化の特徴との差からおむつの脱落を判定する手段を有することを特徴としている。
【0006】
請求項2に記載の本発明は、おむつの外側またはパッドとおむつの間にサンドイッチ状に配設した少なくとも便排泄口に近接した温度センサーと、尿排泄口に近接した温度センサーと、前者が検知した温度と後者が検知した温度の差分をとることにより通常使用者が日常活動によって前記温度にもたらす温度変化の成分を排除したうえで前記差分が正であれば熱流が便排出口から尿排出口に向って起こったとして便の排泄が起こったと判定する便判定手段を有することを特徴としている。
【0007】
請求項3に記載の本発明は、請求項1と請求項2に記載の本発明において少なくとも1個の温度センサーを共有し、かつそれぞれの請求項が有する判定手段とその判定結果を表示し介護者に通報する手段を有することを特徴としている。
【0008】
請求項4に記載の本発明は、請求項3に記載の本発明において各センサーが検出した時系列データと使用者ごとに設定した使用者IDを微弱電波によりランダムタイミングで外部に送出する送信機と、使用者の居室などに設置して該送信機が送信した電波を受信する小ゾーンを形成しそこで受け取った前記時系列データと前記使用者IDと一緒に各個の受信機に設定した受信機IDを付加してLANなど適当なデータ伝送回線を経由して遠隔に設置した演算判定部に送出する受信機と、この受信機から受け取った前記時系列データに基づいて請求項1に記載のおむつの脱落判定手段および請求項2に記載の便判定手段と同一の演算処理を行いおむつの脱落と便の排泄発生を判定し更に使用者IDと受信機IDおよび別途記憶した使用者名と前記受信機の設置位置から使用者名およびその使用者の現在位置を特定する監視演算手段と、該監視演算手段が演算した結果を介護者に報知する表示通報手段を有することを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
前記のように構成した請求項1に記載のおむつ監視装置は、おむつの外側またはパッドとおむつの間に取り付けた少なくとも1個の温度センサーで検出した温度をおむつの脱落判定に使用する。この温度センサーには例えばサーミスタなどを使用する。
おむつが正常に着用されている間はこの温度は使用者の体温と室温との中間で着用者の衣類や寝具によって決まる特定の値で平衡する。しかし、前記の使用者が不快感や無意識などでおむつを取り外してしまった場合には、おむつの温度は室温に向って降下する。この降下量は前記着用者が通常の日常行動で生ずる降下量より大きい。
本発明では、おむつが正常に着用されているときの前記温度センサーが検出した温度の変化の特徴としてこの温度変化の時系列データの平均値と変動幅の平均値が緩やかに変化する性質を利用する。一方、おむつが脱落したときの特徴として前記温度センサーが検出した温度の降下速度が正常に着用されているときよりも速くまた降下量も大きい性質を利用する。そして前記温度変化の平均値とおむつ温度の現在値との差即ち降下量が前記変動幅を所定値以上超えたときおむつが体から脱落したと判定する。
このようにして、本発明によれば、おむつの脱落を正確に判定し介護者に迅速に情報を提供できるので介護者は頻繁に見回らなくてもおむつ脱落によってしばしば起こる清掃作業などを予防でき労力とストレスの低減に資する効果がある。
【0010】
請求項2に記載の本発明は、少なくとも便排出口付近と尿排出口付近にそれぞれ温度センサーを取り付ける。尚、この取り付けはおむつの外側にするが、昨今の介護現場で広く普及しているおむつの内側にパッドを使用する場合はパッドとおむつの間に取り付ける方が一層安定した動作が得られ望ましい。尿の排出または便の排出が起こると排泄物の排出圧力により排出物に含まれる水分が先ず排出口直近のおむつまたはパッドの布地に押し込まれその水分の温度が前記温度センサーに伝達される。この温度は大略体温と同じと考えてよい。次いで、排泄物の一部はもう一方の排泄口に向って流動拡散するのでそれに含まれる水分がおむつまたはパッドの布地に毛細管現象などにより吸い込まれその水分の温度がその排泄口付近に取り付けられた温度センサーに伝達される。この温度は、排泄物の流動拡散経路上及びおむつまたはパッドの布地への浸透路上での熱放散により低下すると共に排泄の発生から前記温度センサーに到達する時刻が排泄の発生した方の温度センサーへの伝達時刻より遅れている。
本発明はこの物理的現象を利用し前記温度センサー相互の温度変化を比較することにより排泄による熱流が便排泄口から尿排泄口の方向に起こったことを判定すると共に排泄以外の要因によって前記温度センサーに共通にもたらされる擾乱を排除し誤報を低減するようにした。
この熱流が便排泄口から尿排泄口への向きであれば便の排泄と判定する。
このように、本発明では便排泄の判定に便の排泄によるおむつの状態変化に湿度変化よりもすばやく反応する温度変化と熱流の向きを使用したので下痢でも正確に判定できるようになったばかりでなく便排泄発生もすばやく発見できるようになった。その結果、従来より介護現場で要望されながらこれまで実現されなかった新機能を備えた実用的な装置が提供できるという効果が得られた。
【0011】
請求項3に記載の本発明は、請求項1と請求項2に記載の本発明において少なくとも1個の温度センサーを共有しおむつの脱落あるいは排便を液晶表示機またはランプあるいはブザーなどにより介護者に警報するようにしたものである。
おむつの脱落と便の排泄とでは介護者が対応する作業や準備する介護用品が異なるが本発明によれば、それぞれの状態に対応した警報情報を提供するので介護者が目視確認と準備作業のため現場と準備室の間を何度も行き来するなどの必要がなくなり迅速に的確な対応がとれるようになるという効果がある。
【0012】
請求項4に記載の本発明は、請求項3に記載の本発明においておむつ側では前記警報を発生するための各種演算をせずに温度センサーと湿度センサーの検出データを微弱電波で例えば使用者のベッドに取り付けた受信機に送るようにしたもので、おむつ側に取り付ける装置が簡単なもので済み小型で小電力かつ低価格で実現でき使用者に異物感を与える度合いも少なくなる利点が生じた。
更に、各センサーで検知した温度及び湿度のデータを使った各種判定演算は使用者側では行わずに時系列データのまま例えば機械室に設置したパーソナルコンピュータなどで構成した監視演算手段に集め請求項1から請求項3までに記載した各種のデータをパーソナルコンピュータなどで一括処理しその結果をナースステーションなどに表示すればシステム構成が簡素になりコスト削減効果が大きい。尚、おむつ側の装置の低価格化は特に介護対象者の多い施設では導入費用削減効果が大きい。
前記受信機をその受信領域を考慮して使用者の居室内や廊下やトイレや建物の出入り口などに設置すればおむつの使用者がこの受信機が形成する受信領域の小ゾーン内に入るとこの受信機は温度と湿度の時系列データと使用者IDを受信しその受信機の受信機IDと共に監視演算手段に伝送する。この伝送には市場で広く使われているLANなどを使用するのが好適である。前期監視演算手段は前記受信機から受け取った時系列データと使用者IDと受信機IDから使用者名と現在位置を特定すると共にその使用者のおむつ使用状況を確かめることができる。また、使用者の現在位置の移動履歴から使用者の行動軌跡を観察でき徘徊予防にも効果的である。
【発明を実施する為の最良の形態】
【0013】
上記のように構成された請求項1から4に記載の機能を有するおむつ監視装置は、介護施設や自宅介護の現場で、複数の被介護者のおむつ外しや便や尿の排泄を敏速に検知し、おむつからの便や尿漏れを未然に防ぎ、これによって被介護者のおむつかぶれやただれの予防にもなる為、被介護者に優しい介護を提供でき、又、ベッドから或は室外への徘徊をも検知できる。本おむつ監視装置システムにより、被介護者の、おむつ外し、排泄状態、徘徊状況が介護ステーションに置かれた大型デイスプレーに表示、また、必要に応じて警報され、介護者は、予め設定した必要度に応じて被介護者毎への対応・処置の仕方を迅速に判断して取り組めるので、大きな精神的・肉体的負担を軽減する機能を提供する。
【実施例】
【0014】
以下、本発明が適用された実施例について図面を用いて説明する。尚、本発明は、下記の実施例に何ら限定されることなく本発明の技術的範囲に属する限り、種々の形態をとりうることは言うまでもない。
【0015】
(第1実施例)図1は第1実施例及び第2実施例の温度センサーと湿度センサーをパッドのあるおむつに取り付けた場合の説明図である。図2は第1実施例の構成図である。図3は第1実施例がおむつの脱落を判定する原理説明図である。
【0016】
図1において1は人体である。人体1はおむつ2で包まれているがおむつの内側には短冊状のパッド3が挿入されている。パッド3は吸水性並びに保水性に富んだ不織布状の素材で出来ていて厚みは5mmから10mmのものが一般的である。
パッド3の外側には、便の排泄口に近接して温度センサー4が取り付けられ更に尿排泄口に接近してもう一方の温度センサー5が取り付けられている。そして尿排泄口付近には湿度センサー6が取り付けられている。図2において温度センサー4の出力は導線を経由して平均演算手段101と変動幅演算手段102と脱落判定手段103のいずれにも伝達されている。平均演算手段101の出力と変動幅演算手段102の出力は共に脱落判定手段103に伝達されている。一方、湿度センサー6の出力は導線を経由して飽和判定手段201に伝達されている。そして脱落判定手段103の出力と飽和判定手段201の出力は共に警報表示手段300に伝達されている。
尚、尿の排泄口に近接して取り付けられた温度センサー5については後述する。
図3においてTo軸は図2に示した温度センサー4が検知した温度の変化を示している。この温度Toは、おむつが体に正常に装着されている間は体温Tbと室温Trの間で比較的小さな温度変動を示す。この変動は使用者が日常の生活行動の中で例えば室内の空気が衣服の下に侵入し温度センサー4やおむつが冷やされることによって生ずる。しかし、おむつが脱落し人体から離れると人体からの熱の供給が絶たれるのでおむつの温度はその時点から室温に向って急速に低下し始める。図3のt0はおむつが人体から離れた時点を示している。t0時点以後の温度低下は温度センサー4近傍の熱容量に依存するので、おむつが空状態即ち熱容量が最小の状態では低下速度が最も速く、おむつが尿や便で濡れる量が多くなるにつれて熱容量が増え前記低下速度が遅くなる。[図3]には前述したt0時点前後の温度推移の様子を示した。
本発明では先ず脱落判定に必要な2つの要素を演算で求める。第1の要素は温度センサー4が検知した温度Toの平均値Tmである。この平均値Tmはおむつの温度が平衡した値ということができる。そしてこの温度は便尿の排泄や室温や体温の変化や重ね着の着脱などにより変動する。本発明では前記平均値Tmを求めるのに例えば20分間の移動平均法を用い平均値Tmを常に最新のおむつの平衡温度に追尾させおむつ脱落の判定精度が使用者の日常行動に左右されないようにした。第2の要素は前記温度センサー4が検知した温度Toが前記平均温度Tmを下回った値の平均値即ち下降温度の平均値Twである。この平均値Twも前記平均値Tmで説明したのと同じ理由により変動するのでやはり例えば20分間の移動平均法を用いて算出する。従って、この平均値Twも使用者の日常行動によって起こる変化に追尾しているのでおむつの脱落判定制度の向上に役立っている。
こうして求めた2つの要素即ち温度Toおよび温度Toが平均温度Tmを下回った値の平均値Twから次の算式によりおむつの脱落を判定する。
Tm−To>KTw ここでKは判定の余裕度を示す定数
式は即ち、現在のおむつの温度がおむつの平均温度より日常行動では見られないほど大きく低下したらおむつが脱落したと判定することを意味している。
尚、ここで使用する平均値Tmとして現在時刻より適宜さかのぼった時刻のものを使用するとか平均値は加重平均法で算出するとか平均値Twに分散を用いるなど置き換えが可能であるがいずれも本発明の思想の範囲内である。また、余裕度定数Kはおむつが正常に装着されている期間で誤判定を生じない範囲の最小値に設定するのが好適である。
そして、上記説明では温度センサー4を使って説明したが温度センサー5あるいはそのほかに取り付けた温度センサーを使っても同様の効果がえられ本発明の範囲内である。
次に、[図2]を使って第1実施例の動作を説明する。[図2]において、温度センサー4が検知したおむつまたはパッドの温度の時系列データToは平均演算手段101と変動幅演算手段102と脱落判定手段103のいずれにも供給されている。平均演算手段101はこの温度の時系列データToの例えば20分間の移動平均値Tmを算出し脱落判定手段103に送出する。また、変動幅演算手段102は前記前移動平均値Tmから前記温度の時系列データToを減算し正の値のみを例えば20分間移動平均し下降温度の平均値として脱落判定手段103に送出する。脱落判定手段103は温度センサー4から受け取った温度の現在値Toと平均演算手段101から受け取った移動平均値Tmと変動幅演算手段102から受け取った下降温度の平均値Twから前記演算式Tm−To>KTwに従って演算し不等号を満足した場合におむつが脱落したと判定し脱落警報出力を警報表示手段300に送出する。これらの演算は全て容易に入手可能なマイクロコントローラを用いて実施できる。警報表示手段300は例えば液晶ディスプレイなどで構成され脱落判定手段103から伝達された警報出力を表示して介護者に報知する。
一方、湿度センサー6で検知した尿排出口付近の湿度の時系列データは飽和判定手段201に伝達される。飽和判定手段201はこの湿度センサー6から伝達された湿度の時系列データを用いて例えば上記特開2006−43389号で開示されているおむつの使用限界判定手段によりおむつの飽和判定を行う。即ち、前記時系列データと所定値との差及びこの時系列データの一定期間の変化分を算出し、前記差が所定値を超過していた場合及び前記変化分が所定値を上回っていた場合におむつの使用限界と判定しおむつ飽和警報出力を警報表示手段300に送出する。警報表示手段300は、飽和判定手段201から伝達された前記おむつ飽和警報出力を表示して介護者に報知する。尚、湿度センサー6を取り付けるおむつやパッドに防水被服が施されている場合は湿度センサー6の受湿口に接する面にピンホールの穿孔などを施すとよい。
【0017】
(第2実施例)図4は第2実施例の構成図である。図5は排泄物の熱が温度センサーに伝わる熱伝導路を説明するための模式図である。図6は便の排泄を判定する原理を説明する図である。
【0018】
第4図において4は便排泄口に近接して配設した温度センサー、5は尿排泄口に近接して配設した温度センサー、6は尿排泄口に近接して配設した湿度センサー、201は飽和判定手段、401は便判定手段、300は警報表示手段である。温度センサー4と温度センサー5の出力は共に便判定手段401に伝達されている。湿度センサー6の出力は飽和判定手段201に伝達されている。そして便判定手段401と飽和判定手段201の出力は共に警報表示手段300に伝達されている。
次に図5と図6を用いて便の排泄を尿の排泄から識別する原理と第2実施例の動作を説明する。
図5は便排出口および尿排出口付近の位置関係を切り出して示したものである。図5においてパッド2上のP1点及びP2点はそれぞれ便及び尿の排泄口を示している。4と5はいずれも温度センサーでパッド2とおむつ3でサンドイッチされ便排泄口P1と尿排泄口P2に近接して置かれている。便7の排泄があると便7の水分は先ず排泄口P1直近のパッド表面から排出圧力でパッド内に押し込まれ短時間で温度センサー4まで到達する。この水分の温度は熱の伝播経路R1が短いので伝播経路R1上での温度降下が小さく大略体温と同等である。一方、便7の一部は尿排泄口P2の方向に向って流動拡散しその水分はパッド2の表面から毛細管現象によって吸い込まれパッド2内で四方に広がり浸透速度を遅めながら温度センサー5に到達する。この水分の熱は便7がパッド2の表面を流動拡散した経路とパッド2内の伝播経路R2を経由するので熱伝播経路が長くなり便の排泄熱が温度センサー5に到達するのに時間がかかる分だけ温度が低下する。図6においてT4軸は温度センサー4が検知した便排泄温度T4の変化を示している。便排泄時刻t0までは体温や室温や衣類などで決まる平衡温度で落ち着いていたがt0時点で便7の温度が伝わり急速に温度が上がりほぼ体温近くまで上昇したのちゆっくり下降する。下降する速度は便の量と便の性質などに依存するが長時間後には前記の平衡温度近辺に戻る。図6においてT5軸は温度センサー5が検知した便排泄温度T5の変化を示している。便排泄時刻t0を経過後もしばらくは前記平衡温度を保っているが便排泄温度が伝わると急速に温度が上がる。この温度の変化はT4軸に示した温度変化とほぼ相似であるが上昇を始める時刻は熱伝播経路の長い分だけ遅れる。また温度の上昇幅は熱伝播経路で起こった熱放散の分だけ低下する。
また、DT軸は便排泄口付近の温度センサー4が検知した温度T4から尿排泄口付近の温度センサー5が検知した温度T5を差し引いた差分温度DTを示したものである。即ち、
DT=T4−T5
DTが正であれば排泄による熱流が温度センサー4から温度センサー5に向って発生したことを示し便排泄があったと断定できる。前記差分温度DTでは、室温の変動や使用者の動きに伴う衣服内への風の吹き込みなどによって生ずるおむつの温度変動のように前記2つの温度センサーに共通に加わる外乱は相殺されるので、外乱に強い便の判定ができる。
図4において便判定手段401は前記差分温度DTを算出し、かつ温度センサー4の温度T4が変化開始後例えば3分後とか前記差分温度DTがピークを打ったときとか適宜決定した時間後にこの算出結果の正負を判定し正であれば便の排泄があったと判定し便警報出力を警報表示手段300に出力する。この警報表示手段300は、便判定手段401から伝達された前記便警報出力を表示して介護者に報知する。なお、図4において湿度センサー6および飽和判定手段201の動作は第1実施例の場合と同一であるので説明は省略する。
便判定手段401は容易に入手可能なマイクロコントローラを使えば全てデジタルで小型かつ安価で低電力の装置が実現できる。
【0019】
(第3実施例)図7は第3実施例の構成図である。第3実施例は第1実施例の便排泄口に近接して配設した温度センサー4を第2実施例の一方の温度センサーに流用して第1実施例と第2実施例を合体したものでそれ以外の点では第1実施例および第2実施例と同一の構成であり、動作も同じであるので繰り返して説明することは省略する。第1実施例と第2実施例と第3実施例で実施する全ての演算は同一のマイクロコントローラで実施できそれは市販で容易に入手可能なものである。
【0020】
(第4実施例)図8は第3実施例の構成図である。図9は受信機の設置場所と受信範囲を説明する説明図である。図10は送信機の送信タイミングと混信対策を説明する説明図である。
【0021】
図8において4は便排泄口に近接して配設された温度センサー、5は尿排泄口に近接して配設された温度センサー、6は尿排泄口に近接して配設された湿度センサー、501は送信機、502は使用者IDメモリ、503はランダムタイミング発生手段である。601は受信機、602は受信機IDメモリである。701は監視演算手段、702は使用者・場所対応メモリ、300は警報表示手段である。温度センサー4の出力と温度センサー5の出力と湿度センサー6の出力はいずれも送信機501に伝達されている。また、使用者IDメモリの出力とランダムタイミング発生手段503の出力も送信機501に伝達されている。そして、受信機IDメモリ602の出力は受信機601に伝達されている。受信機601の出力はLANなど適当なデータ伝送手段を経由して監視演算手段701に伝達されている。使用者・場所対応メモリ702の出力も監視演算手段701に伝達されている。監視演算手段701の出力は警報表示手段300に伝達されている。尚、受信機601の他に監視に必要な箇所全てに受信機を敷設する場合はそれらの出力もLANなどを経由して全て監視演算手段701に伝達する。
次に図8と図9を用いて第4実施例の動作を説明する。使用者のおむつには、温度センサー4と温度センサー5と湿度センサー6が取り付けられると共に送信機501と使用者IDメモリ502とランダムタイミング発生手段503が小容器に収納されおむつ前面上端部などに取り付けられる。先ず、後に詳述するランダムタイミング発生手段503がタイミング出力を送出すると送信機501は温度センサー4と温度センサー5と湿度センサー6が検知した温度と湿度の現在値と共に使用者IDメモリ502に格納され送信機ごとに付与されている使用者IDとを電波に乗せて送信する。そしてこの4種類のデータの送信が終わり次第動作を休止し次回のランダムタイミング発生手段503が送出するタイミング出力を待つ。前記送信機501が送信する電波は電波法適用外の微弱電波を用い有効到達距離が例えば2mとする。この電波がその到達距離範囲内にある例えば受信機601で受信されると受信機601はその受信データと受信機IDメモリ602に格納されている受信機IDとをLANなど適当なデータ伝送手段により監視演算手段701に伝送する。従って、この一連の動作により監視演算手段701には便排泄口付近の温度の現在値と尿排泄口付近の温度の現在値と尿排泄口付近の湿度の現在値と使用者IDと受信機IDの5種類のデータが収集される。送信機501が次回以後繰り返し送信するたびに同一使用者からのデータと受信機IDが監視演算手段701に収集される。監視演算手段701はこうして収集したデータを同一使用者IDごとに順次記憶してその特定使用者のおむつの状態を示す温度及び湿度の時系列データおよびそのデータを受信した受信機の推移を得る。図9は例えば介護施設に受信機を敷設した場合の1例である。居室内に6個と廊下の出入り口に1個の受信機を敷設している。これら受信機による受信領域をA1,A2,・・・A6,A7として示した。これら受信領域の半径は前記送信機501が発射した電波の有効到達距離である2mである。これら6個の受信機の出力は前述したようにLANなどを経由して監視演算手段701に集められる。このように本実施例では介護施設の居室内を小ゾーンの電波監視網で区切っている。そのため前記受信機601の使用者が居室内を例えば前記受信領域A3からA2,A1次いでA7などと動けば監視演算手段701は収集したデータからそのことを把握できるので警報表示手段300で表示できる。監視演算手段701はその内部あるいは外部に使用者・場所対応メモリ702を備え前記収集したデータに含まれる使用者IDに対応した使用者名と受信機IDに対応した受信機の敷設場所の情報をあらかじめ記憶しておく。監視演算手段701はその情報を利用して使用者名とその使用者の現在位置や移動履歴を特定し警報表示手段300に表示する。使用者が廊下の出入り口2のゾーンA7に来たときには徘徊予防などのために警報を発するよう監視演算手段701のプログラムに組み込むことも当該技術者ならば容易にできることである。尚、監視演算手段701にはパーソナルコンピュータなどを使うのが一般的である。監視演算手段701は収集した前記温度及び湿度の時系列データから前記第1実施例と第2実施例および第3実施例で記載した判定法に従って各使用者のおむつの脱落と便の排泄と尿によるおむつの飽和を判定し警報表示装置に表示する。この判定方法については重複するので説明を省略する。使用者の現在位置の表示については未だ業務に不慣れな介護者に対する利便性向上のため介護施設の平面図を表示することも容易である。また、介護施設での利用にあたっては、監視演算手段701と使用者・場所対応メモリ701を機械室に置き警報表示手段300をナースステーションに設置するのは好適な配置である。
次に図10を用いてランダムタイミング発生手段503を使用した混信対策を説明する。第4実施例で使用する送信機の送信周波数はどの送信機にも同一である。そのことにより送信機および受信機を簡素化し小型と低価格並びに低電力化を実現した。また、送信機と受信機間のデータのやりとりには双方向通信は使用しない。そのことによってもやはり装置が簡素化し小型と低価格並びに低電力化を実現した。反面図9に示した小ゾーン内に複数の使用者が入った場合は電波の混信が生じる。ここで、前記小ゾーンに入る使用者の数は通常2乃至3人と考えて実用上差し支えない。第4実施例では前記混信によるデータ伝送障害を実用上支障ないようにするためランダムタイミング発生手段503を備えその出力で送信機501の送信タイミングをランダムに変えるようにした。図10のU1軸は使用者U1の送信機501がデータD11,D12,D13,・・・を発射するタイミングを示しておりU2軸は使用者U1と同じ小ゾーンに存在する使用者U2の送信機がデータD21,D22,D23,・・・を発射するタイミングである。ランダムタイミング発生手段503が発生するランダムタイミングは例えば255種類の異なったタイミングから成り立っていて256番目から510番目までは255番目までと同じタイミングを繰り返す。以下同じ様に同じタイミングを繰り返す。このランダムタイミングは少しの論理回路あるいはマイクロコントローラのプログラムで発生でき当該分野の技術者ならば容易に発生させることができる。また、必要に応じて255種類を増減して使用することも容易である。図10には前記の繰り返すタイミングの周期をRCとして示した。第4実施例ではこの周期RCを例えば1秒に設定する。即ち送信機501から送信されるデータの送信間隔は平均1秒である。しかし、おむつの温度変化の時定数は30秒から100秒程度であるので前記平均1秒間隔のデータ送信間隔はおむつの状態監視には十分の精度である。使用者U1の送信機501が発射するタイミングは図10の最初の周期でデータD11を発射した位置と2番目の周期でデータD12を発射した位置は異なり以下255周期までは先行するいずれの位置とも異なった位置で発射する。一方、使用者U2の送信機は図10の最初の周期でデータD11と異なった位置でデータD21を発射した後使用者U1で説明したのと同様に255周期まで異なった位置で発射するが偶然2番目の周期でデータD22を発射したとすると混信が起こり最悪ではデータ伝送が損なわれる。しかしランダムタイミングの性質上以後255周期が経過するまでは2度と混信は起こらないので実用上は支障をきたさない。第4実施例ではこうして混信障害問題を解決した。その結果第4実施例では一般に言う放送モードでのおむつの使用状態監視と使用者の移動状況監視ならびに徘徊予防監視などを遠隔のナースステーションから可能にした。
【図面の簡単な説明】
図1は第1実施例及び第2実施例の温度センサーと湿度センサーをパッドのあるおむつに取り付けた場合の説明図である。
図2は第1実施例の構成図である。
図3は第1実施例がおむつの脱落を判定する原理説明図である。
図4は第2実施例の構成図である。
図5は排泄物の熱が温度センサーに伝わる熱伝導路を説明するための模式図である。
図6は便の排泄を判定する原理を説明する図である。
図7は第3実施例の構成図である。
図8は第3実施例の構成図である。
図9は受信機の設置場所と受信範囲を説明する説明図である。
図10は送信機の送信タイミングと混信対策を説明する説明図である
【符号の説明】
1…人体 2…おむつ 3…パッド
4…温度センサー 5…温度センサー
6…湿度センサー 101…平均演算手段
102…変動幅演算手段
103…脱落判定手段
201…飽和判定手段
300…警報表示手段
410…便判定手段
501…送信機 502…使用者IDメモリ
503ランダムタイミング発生手段
601…受信機 602…受信機IDメモリ
701…監視演算手段
702…使用者・場所対応メモリ
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】

【図10】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
おむつの外側またはパッドとおむつの間にサンドイッチ状に配設した少なくとも1個の温度センサーで検出した温度の時系列データからおむつが正常に装着されているときの平均温度と温度の変動幅を算出し、該平均温度とおむつ温度の現在値との差が前記変動幅を所定値以上超えたときおむつが体から脱落したと判定する手段と該判定手段が判定した結果を表示し介護者に通報する手段を有することを特徴としている。
【請求項2】
おむつの外側またはパッドとおむつの間にサンドイッチ状に配設した少なくとも便排泄口に近接した温度センサーと尿排泄口に近接した温度センサーと前者が検知した温度と後者が検知した温度の差分に基づいて便の排泄が発生したことを判定する手段と該判定手段が判定した結果を表示し介護者に通報する手段を有することを特徴としている。
【請求項3】
請求項2に記載の温度センサーでそのうちの少なくとも1個を請求項1に記載の温度センサーとして使用するように構成した温度センサーと、請求項1に記載のおむつの脱落と請求項2に記載の便排泄の発生との両方を判定する判定手段と該判定手段が判定した結果を表示し介護者に通報する手段を有することを特徴としている。
【請求項4】
請求項3に記載の本発明において各センサーが検出した時系列データと使用者ごとに設定した使用者IDを微弱電波によりランダムタイミングで外部に送出する送信機と、使用者の居室などに設置して該送信機が送出した電波を受信し受け取った時系列データと使用者IDと一緒に各個の受信機に設定した受信機IDを付加してLANなど適当な伝送手段により遠隔に設置した演算判定部に送出する受信機と、該受信機が送出した時系列データを収集して少なくとも請求項1あるいは請求項2に記載の判定手段と同様の判定演算を行い更に収集した使用者IDと受信機IDと別途メモリに記憶した使用者名と受信機設置位置とから使用者名および前記使用者の現在位置を特定する監視演算手段と、該監視演算手段が演算した結果を介護者に報知する表示通報手段を有することを特徴としている。

【公開番号】特開2010−194277(P2010−194277A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−63528(P2009−63528)
【出願日】平成21年2月20日(2009.2.20)
【出願人】(504334164)ミーノス電子有限会社 (5)
【Fターム(参考)】