説明

お札用原紙

【課題】 撥水性、耐水性が良好で、水への浮揚性に優れ、祈願札等として川に流した際に水面に長時間浮いて流れていく様を見ることができ、しかも、焼却処理が容易であり、焼却時に環境に与える影響が少ないお札用原紙を提供すること。
【解決手段】 パルプ100重量部に対して、内添サイズ剤を0.1〜2.0重量部、内添紙力剤を0.2〜3.0重量部含有するシートの表面に、表面サイズプレス処理により表面サイズ剤を塗工し、坪量が250〜500g/m2、密度が0.8g/cm3以下、JIS P 8122で規定されるステキヒトサイズ度が1000秒以上、JIS P 8140で規定されるコッブ吸水度が40g/m2以下であるお札用原紙。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種祈願や報謝のために、願い事や感謝の文を書いて川に流す絵馬や祈願札などに用いるお札用原紙に係り、特に、撥水性と耐水性に優れ、焼却処理が容易であるお札用原紙に関する。
【背景技術】
【0002】
願い事や感謝の意を絵馬や祈願札に書いて、社寺や神社の掲示板、木の枝等に吊り下げて祈願、報謝等行うことは、古くからよく行われている。即ち、神社等で購入した絵馬や祈願札に、成功、合格、安産、必勝、大漁、豊作、交通安全、無病息災、家内安全、良縁成就等の各種祈願文や、又、祈願成就した場合にはその感謝の意を書いて奉納するものである。
【0003】
このような祈願札等は、奉納、鎮魂、身代わり等の目的で川に流すことがあり、川に流した場合には、後日、下流に網を張るなどして祈願札等を回収し、その後に焼却処理をするのが通例である。
【0004】
しかしながら、従来の祈願札等は木製の札が用いられていたため、大量の祈願札が奉納される大きな社寺や神社では、その処理に大変な労力を伴っていた。更に近年は、大気中の二酸化炭素による地球の温暖化が国際的な問題となっており、環境保護の観点からも焼却等の処理の簡素化や絵馬や祈願札等の材料の変更が望まれ、紙製の祈願札等が提案されている。
【0005】
このような紙製の祈願札等として、特許文献1には、重ね合わせたシートの内面に文章を記載でき、紙等により構成されるため燃焼処理時に環境に与える影響が少ない祈願札が開示されている。また、特許文献2には、所定長の縦幅、前記縦幅を横切る横幅、および厚みを有する1枚の板紙などの板材から成り、前記板材を少なくとも2枚に分離させることのできる所定幅および所定長のスリットが前記厚みを分断して形成されていることを特徴とする祈願札が開示されている。更に、特許文献3には、厚紙等により形成された一対の所定形状の絵馬片の下端部を折曲自在に連設し、この絵馬片の上端中央位置に綴じ紐を取付け、重ね合わせる内面に願い事を記載して前記綴じ紐により綴じ合わせ、その綴じ紐で吊すように構成された絵馬が開示されている。
【0006】
また、水に浮く紙製品としては、ビニール等からなる袋状体に紙材を封入し、防水加工を施してなるいかだの登録票が特許文献4において開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−16286号公報
【特許文献2】実用新案第3078798号公報
【特許文献3】特開平9−56570号公報
【特許文献4】特開平9−187187号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1〜3にて開示された紙製の祈願札等は、材料として紙を選択したことで焼却処理は容易となるものの、川に流されるなどの大量の水に長時間に亘って接触する事態が考慮されてないため、川に流すと、下流に流れ着く前に水中で分散したり、川底に沈んでしまうなど、後の回収が困難となるものであった。更に、紙の特性を生かした印刷適性や筆記適性などについても、必ずしも満足する性質を備えたものではなかった。
【0009】
また、特許文献4にて開示されたいかだの登録票は、水に浮くように構成されているものの、焼却処分が考慮されてないために焼却時の環境への配慮がなされておらず、祈願札等へ転用するのに十分なものとは言えなかった。
【0010】
本発明は上述の問題点に着目してなされたものであり、その目的とするところは、撥水性、耐水性が良好で、水への浮揚性に優れ、祈願札等として川に流した際に水面に長時間浮いて流れていく様を見ることができ、しかも、焼却処理が容易であり、焼却時に環境に与える影響が少ないお札用原紙を提供することにある。
【0011】
また本発明の他の目的としては、上述の特性に加えて、多色刷りや網点印刷を行った場合でも印刷機のブランケット等を汚したり、紙の表面が剥けたりしないオフセット印刷適性と、墨汁、サインペン、マジックなどで筆記した際に文字が滲まない筆記適性を有するお札用原紙を提供することにある。
【0012】
また、本発明の他の目的並びに作用効果については、以下の記述を参照することにより、当業者であれば容易に理解されるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、原紙に使用する内添サイズ剤、内添紙力剤、表面サイズ剤の点から検討を重ね、上記課題を解決しようとするものである。すなわち本発明は、次に示す構成をとる。
【0014】
本発明に係るお札用原紙は、パルプ100重量部に対して、内添サイズ剤を0.1〜2.0重量部、内添紙力剤を0.2〜3.0重量部含有するシートの表面に、表面サイズプレス処理により表面サイズ剤を塗工し、坪量が250〜500g/m2、密度が0.8g/cm3以下、JIS P 8122で規定されるステキヒトサイズ度が1000秒以上、JIS P 8140で規定されるコッブ吸水度が40g/m2以下のものである。
【0015】
内添サイズ剤は、ワックス系サイズ剤である。また、内添紙力剤は、澱粉、変性澱粉、ポリアクリルアミド系樹脂、ポリアミド・ポリアミン系樹脂、尿素ホルマリン樹脂、メラミンホルマリン樹脂、植物ガム、ポリビニルアルコール、ゴム系ラテックス、ポリエチレンオキサイド、ポリアミド樹脂の中から1種又は2種以上を用いるものである。
【0016】
更に、表面サイズ剤は、澱粉、変性澱粉、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド系樹脂の中から1種又は2種以上を用いた塗工液である。
【0017】
このような構成を採用したことにより、撥水性と耐水性と水への浮揚性に優れ、川に流した際に水面に長時間浮き、また、焼却処理が容易で、焼却時に環境に与える影響が少ないお札原紙が得られる。
【0018】
また、本発明の好ましい実施の形態においては、前記内添サイズ剤として用いられるワックス系サイズ剤は、パラフィンワックス系サイズ剤、マイクロクリスタリンワックス系サイズ剤、カルナウバワックス系サイズ剤、アルキルケテンダイマーワックス系サイズ剤の中から1種又は2種以上を用いるものであってもよい。
【0019】
このような構成によれば、撥水性、耐水性、水への浮揚性がより向上したお札用原紙が得られる。
【0020】
また、本発明の好ましい実施の形態においては、シートの主成分であるパルプとして、フリーネスが400〜600mlC.S.Fの範囲のものを用いるようにしてもよい。
【0021】
このような構成によれば、オフセット印刷適性に優れて多色刷りや網点印刷を行った際にもインクによってブランケットを汚したりせず、また、墨汁、サインペン、マジックなどにより筆記時に文字が滲まない優れた筆記適性を有したお札用原紙が得られる。
【0022】
また、本発明の好ましい実施の形態においては、前記内添紙力剤として、カチオン化澱粉とポリアクリルアミド系樹脂とを併用してもよい。
【0023】
このような構成によれば、より紙力(表面強度と層間強度)に優れ、オフセット印刷時に紙剥け等が発生せず、優れたオフセット印刷適性を有するお札用原紙が得られる。
【0024】
また、本発明の好ましい実施の形態においては、前記内添サイズ剤として用いられるワックス系サイズ剤として、アルキルケテンダイマーワックス系サイズ剤を使用してもよい。
【0025】
このような構成によれば、アルキルケテンダイマーワックス系サイズ剤はパルプへの定着性が良好であることから、撥水性、耐水性、水への浮揚性をより発現させやすい。
【0026】
また、本発明の好ましい実施の形態においては、前記表面サイズプレス剤として、澱粉又は変性澱粉と、ポリビニルアルコール又は変性ポリビニルアルコールを併用したもの、もしくは、変性ポリアクリルアミド系樹脂を使用してもよい。
【0027】
また、本発明の他の好ましい実施の形態においては、前記表面サイズ剤の塗布量は、乾燥固形分質量で両面あたり0.5〜4g/m2の範囲であり、かつ、表面と裏面の塗布量の比率が、4:6〜6:4の範囲であってもよい。
【0028】
このような構成によれば、表裏何れかの面の表面サイズ剤塗布量が少ないために、塗布量の少ない方の面から早期に水が染み込むという問題が起こりにくくなる。
【発明の効果】
【0029】
本発明のお札用原紙によれば、撥水性、耐水性が良好で、水への浮揚性に優れ、祈願札等として川に流した際に水面に長時間浮いて流れていく様を見ることができ、しかも、焼却処理が容易であり、焼却時に環境に与える影響が少ないお札用原紙が得られる。
【0030】
また、本発明の好ましい実施の形態によれば、上述の特性に加えて、多色刷りや網点印刷を行った場合でも印刷機のブランケット等を汚したり、紙の表面が剥けたりしないオフセット印刷適性と、墨汁、サインペン、マジックなどで筆記した際に文字が滲まない筆記適性を有するお札用原紙が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】実施例及び比較例の物性評価結果を示す図表である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施形態に限定して解釈されない。
【0033】
先にも述べたように、本発明に係るお札用原紙は、パルプ100重量部に対して、内添サイズ剤を0.1〜2.0重量部、内添紙力剤を0.2〜3.0重量部含有するシートの表面に、表面サイズプレス処理により表面サイズ剤を塗工し、坪量が250〜500g/m2、密度が0.8g/cm3以下、JIS P 8122で規定されるステキヒトサイズ度が1000秒以上、JIS P 8140で規定されるコッブ吸水度が40g/m2以下であり、
前記内添サイズ剤は、ワックス系サイズ剤であり、
前記内添紙力剤は、澱粉、変性澱粉、ポリアクリルアミド系樹脂、ポリアミド・ポリアミン系樹脂、尿素ホルマリン樹脂、メラミンホルマリン樹脂、植物ガム、ポリビニルアルコール、ゴム系ラテックス、ポリエチレンオキサイド、ポリアミド樹脂の中から1種又は2種以上を用いるものであり、
前記表面サイズ剤は、澱粉、変性澱粉、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド系樹脂の中から1種又は2種以上を用いた塗工液であることを特徴とするものである。
【0034】
本発明においてシートに使用するパルプとしては、主にN−BKP(針葉樹晒クラフトパルプ)及びL−BKP(広葉樹晒クラフトパルプ)に代表される木材漂白化学パルプを使用することができる。また、必要に応じて、GP(砕木パルプ)、TMP(サーモメカニカルパルプ)、BCTMP(晒ケミサーモメカニカルパルプ)等の機械パルプ、古紙パルプを適宜配合することもでき、本発明の目的とする効果を損なわない範囲で、ケナフやバガスなどの各種非木材パルプを用いることも可能である。
【0035】
本発明のお札用原紙は、一層抄きによる単層構造又は多層抄きによる多層構造のいずれであってもよい。また、本発明においてお札用原紙の坪量は200〜500g/m2の範囲とし、好ましくは250〜500g/m2、特に好ましくは320〜450g/m2の範囲とするものである。坪量が200g/m2未満になると目標とするサイズ性を得ることが難しくなり、逆に坪量が500g/m2を超えると、サイズ性の上昇が頭打ちとなりコストアップとなるばかりか、祈願札等への加工適性を損なう虞があり好ましくない。
【0036】
先にも述べたように、本発明のお札用原紙は、川に流すなどした場合に長時間に亘って水面に留まっていることが求められており、長時間水に浮くことができるよう設計する必要がある。そのため、本願のお札用原紙には十分な撥水性、耐水性を付与することの他、密度を高くしすぎないことが要求される。この点から、本発明のお札用原紙は、密度を0.8g/cm3以下とするものであり、0.7g/cm3以下とするとより好ましい。
【0037】
本発明のお札用原紙に用いる内添紙力剤としては公知のものが使用でき、澱粉、変性澱粉、ポリアクリルアミド系樹脂、ポリアミド・ポリアミン系樹脂、尿素ホルマリン樹脂、メラミンホルマリン樹脂、植物ガム、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール、ゴム系ラテックス、ポリエチレンオキサイド、ポリアミド樹脂などを用いることが可能である。また、内添紙力剤の含有量は、パルプ100重量部に対して、0.2〜3.0重量部とするものである。
【0038】
上述の内添紙力剤の中でも、紙力(表面強度と層間強度)を満たすという点から、カチオン化澱粉とポリアクリルアミド系樹脂とを併用して用いることがより好ましい。また、内添紙力剤としてカチオン化澱粉とポリアクリルアミド系樹脂とを併用して用いる場合には、先の内添紙力剤の総量に加えて、カチオン化澱粉の含有量は、木材パルプ100重量部に対して0.1〜2.0重量部、好ましくは0.5〜1.5重量部とし、ポリアクリルアミド系樹脂の含有量は、木材パルプ100重量部に対して0.1〜1.0重量部、好ましくは0.3〜1.0重量部とする。紙力剤としてカチオン化澱粉とポリアクリルアミド系樹脂とをそれぞれ上記範囲で含有させることにより十分な紙力を得ることが可能となる。
【0039】
次に、本発明において内添紙力剤と共に用いるワックス系サイズ剤としては、パラフィンワックス系サイズ剤、マイクロクリスタリンワックス系サイズ剤、カルナウバワックス(カルナバワックス)系サイズ剤、アルキルケテンダイマーワックス系サイズ剤、等を用いることが可能であり、これらワックス系サイズ剤の中でも、パルプへの定着が良好であることから、アルキルケテンダイマー系サイズ剤を含有させることが好ましい。これらワックス系サイズ剤を内添することで、シートに良好な撥水性及び耐水性を付与することができ、長時間水面に浮くことが可能となる。
【0040】
本発明において、ワックス系サイズ剤の含有量は、パルプ100重量部に対して、0.1〜2.0重量部とし、好ましくは0.3〜1.0重量部とする。ワックス系サイズ剤の含有量が0.1重量部未満であると、所望する撥水性及び耐水性が得られない虞があり、逆にワックス系サイズ剤の含有量が2.0重量部を超えると、撥水性及び耐水性の向上はほぼ頭打ちとなり、過剰な添加によるコストアップとなる。
【0041】
本発明においては、抄紙工程において、パルプを主成分とするシートに所定の表面サイズ剤を用いて表面サイズプレス処理を行い、JIS P 8122で規定されるステキヒトサイズ度が1000秒以上、JIS P 8140で規定されるコッブ吸水度が40g/m2以下となるように調整する。先にも述べたように、本発明のお札用原紙には長時間水面に浮くことが可能となるような撥水性及び耐水性が求められているが、ステキヒトサイズ度及びコッブ吸水度が上記範囲外となると、所望する撥水性及び耐水性を満足できない。
【0042】
ここで、本発明の表面サイズプレス処理に用いる表面サイズ剤としては、澱粉、変性澱粉、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド系樹脂の何れか1種または2種以上の混合物からなる塗工液を用いることができる。シートへの表面サイズ剤の塗布量は、乾燥固形分質量で両面あたり0.5〜4g/m2の範囲であることが好ましく、1〜3g/m2の範囲であればより好ましい。
【0043】
また、本発明においては、表面サイズ剤の表裏両面の塗布量のバランスは、4:6〜6:4の比率であることが好ましく、5:5の比率であれば特に好ましい。表裏両面の塗布量のバランスを上記範囲とすることで、表裏何れかの面の表面サイズ剤塗布量が少ないために、塗布量の少ない方の面から早期に水が染み込むという問題が起こりにくくなる。
【0044】
本発明において、表面サイズ剤の塗布方法は、通常の2本ロールサイズプレスの他、ゲートロールサイズプレスやメタリングサイズプレスも使用できるが、表面強度、紙層強度向上効果の観点からは、2本ロールサイズプレスの使用が好ましい。また表面サイズ剤には本発明の目的とする効果を損なわない範囲で、保水剤、耐水化剤、流動性改良剤、防黴剤、防腐剤、消泡剤等の公知の添加剤を加えることができる。
【0045】
本発明において、シートに用いるパルプのフリーネスは、400〜600mlC.S.Fの範囲とすることが好ましく、400〜500mlC.S.Fの範囲とすれば特に好ましい。パルプのフリーネスが400mlC.S.F未満であると、繊維自体の水吸収性が悪くなることに加え、シートの地合が緻密になりすぎることによっても吸水性が低下する。逆に、パルプのフリーネスが600mlC.S.Fを超えると、シートの地合が悪くなって吸水性が不均一となり、お札用原紙の水への浮揚性能には良い傾向となることもあるが、その一方で、筆記適性に劣りにじみが生じる場合がある。
【0046】
また、本発明においては、シートを抄紙する際に本発明の目的とする効果を損なわない範囲で、紙料に紙力剤、填料、バンド、歩留まり向上剤、染料、蛍光染料等を適宜用いてもよい。ここで、填料を用いる場合には、炭酸カルシウム、タルク、クレー、酸化チタン、合成ゼオライト、ケイ酸カルシウム等の公知の填料を適宜用いることが可能である。
【0047】
本発明において、シートの製法は特に限定されるものではなく、公知の抄紙機、すなわち長網、円網、ハイブリッドフォーマー、ギャップフォーマー等を使用し、プレス工程、乾燥工程を経てお札用原紙を作成する。また、抄造乾燥後には、スーパーキャレンダー、マシンキャレンダー、ソフトキャレンダー等のキャレンダー装置を用いて平滑化処理を行うことができる。
【0048】
以下において、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明は、勿論これに限定されるものではない。なお、特に断らない限り、各実施例及び比較例中の部、添加%は、固形分換算での質量部または、質量%を示す。
【実施例1】
【0049】
(原料スラリー)
表層用、中層用、裏層用として、針葉樹晒クラフトパルプ(N−BKP)40部と広葉樹晒クラフトパルプ(L−BKP)60部とを配合した後に、叩解機によってカナダ標準濾水度(CSF)が450mlとなるように叩解処理し、原料パルプを得た。この原料パルプ100部に対して固形分換算で、ワックス系サイズ剤としてアルキルケテンダイマー(AKD)ワックス系サイズ剤(SE−2360、星光PMC社製)0.5部、内添紙力剤としてカチオン化澱粉(ネオタック40T、日本食品化工社製)1.0部、及び、共重合ポリアクリルアミド樹脂(DS4638、星光PMC社製)0.3部を含有するように添加して原料スラリーを調成した。
(シート)
次に、これらの原料スラリーを用いて、円網式抄紙機にて表層、中層、裏層の4層抄合せでシートを抄造し、該シートに2本ロールサイズプレスにおいて表面サイズ剤として濃度30%の変性ポリアクリルアミド系樹脂(ST−5000、星光PMC社製)を両面あたりの塗布量が3g/m2(固形分)となるように塗布することで、坪量320g/m2の4層抄合せであるお札用原紙を得た。
【実施例2】
【0050】
ワックス系サイズ剤であるアルキルケテンダイマー(AKD)ワックス系サイズ剤(SE−2360、星光PMC社製)の配合量を0.2部に変更した以外は、実施例1と同様にして実施した。
【実施例3】
【0051】
ワックス系サイズ剤であるアルキルケテンダイマー(AKD)ワックス系サイズ剤(SE−2360、星光PMC社製)の配合量を1.0部に変更した以外は、実施例1と同様にして実施した。
【実施例4】
【0052】
原紙の坪量を380g/m2に変更した以外は、実施例1と同様にして実施した。
【実施例5】
【0053】
原紙の坪量を450g/m2に変更し、5層抄合せ原紙とした以外は、実施例1と同様にして実施した。
【実施例6】
【0054】
表面サイズ剤として、酸化澱粉(SK−20、日本コーンスターチ社製)5.0%と、カルボキシル基変性ポリビニルアルコール(ゴーセナールT−350、日本合成化学工業社製)4.0%とを配合したサイズ液を調整し、両面あたり3.6g/m2(固形分)となるように塗布した以外は、実施例1と同様にして実施した。
【0055】
[比較例1]
原紙の坪量を100g/m2に変更し、2層抄合せ原紙とした以外は、実施例1と同様にして実施した。
【0056】
[比較例2]
原紙の坪量を230g/m2に変更し、2層抄合せ原紙とした以外は、実施例1と同様にして実施した。
【0057】
[比較例3]
比較例1において、ワックス系サイズ剤、カチオン化澱粉、共重合ポリアクリルアミド樹脂を添加せず、代わりに、ロジン系サイズ剤(AL−1300、星光PMC社製)0.3部、及び、硫酸バンド0.3部を添加して原料スラリーを調成した以外は、比較例1と同様にして実施した。
【0058】
[比較例4]
比較例1において、ワックス系サイズ剤、カチオン化澱粉を添加せず、代わりに、ロジン系サイズ剤(AL−1300、星光PMC社製)0.7部、及び硫酸バンド0.2部を添加し、内添紙力剤である共重合ポリアクリルアミド樹脂(DS4638、星光PMC社製)の添加量を0.6部に変更して原料スラリーを調成し、坪量を230g/m2として抄紙した以外は、比較例1と同様にして実施した。
【0059】
[比較例5]
ワックス系サイズ剤を使用しない以外は、実施例1と同様にして実施した。
【0060】
[比較例6]
ワックス系サイズ剤であるアルキルケテンダイマー(AKD)ワックス系サイズ剤(SE−2360、星光PMC社製)の添加量を0.05部に変更した以外は、実施例1と同様にして実施した。
【0061】
実施例1〜6、及び比較例1〜6にて得られたお札用原紙について、23℃、50%RHで調湿後、各物性の測定(坪量、厚さ、密度、ステキヒトサイズ度、コッブ吸水度)、浮揚性(水面に浮いていた日数)の評価、オフセット印刷適性の評価及び筆記適性の評価を、それぞれ次の方法に準拠して行い、その結果を図1に示した。
【0062】
[坪量]
JIS P 8124で規定される「紙及び板紙の坪量測定方法」に準拠して、各お札用原紙の坪量の測定を行った。
【0063】
[厚さ、密度]
JIS P 8118で規定される「紙及び板紙の厚さ及び密度の試験方法」に準拠して、各お札用原紙の厚さ、及び密度の測定を行った。
【0064】
[ステキヒトサイズ度]
JIS P 8122で規定される「紙及び板紙のサイズ度試験方法−ステキヒト法」に準拠して、各お札用原紙の表裏両面のステキヒトサイズ度の測定を行った。
【0065】
[コッブ吸水度]
JIS P 8140で規定される「紙及び板紙の吸水度試験方法−コッブ法」に準拠して、各お札用原紙両面のコッブ吸水度の測定を行った。なお、図1中のコッブ吸水度の表記は、(表面のコッブ吸水度)/(裏面のコッブ吸水度)として記載されている。
【0066】
[浮揚性評価(水面に浮いていた日数の評価)]
バケツに水道水を入れ、50mm角にしたお札用原紙を水面に浮かべて、毎日1回ずつお札用原紙への水掛けと、手で水中に押し沈めることを行い、お札用原紙がバケツの底に沈むまでの日数で評価を行った。
○:30日以上。
×:30日未満。
【0067】
[オフセット印刷適性の評価」
各お札用原紙について、オフセット印刷枚葉機(三菱重工社製ダイヤ4色機)で10000枚/時の印刷速度で5000枚印刷後、ブランケットの汚れ、お札用原紙の紙ムケを目視評価した。なお、インキは、FusionG(DIC社製)を用いた。
○:ブランケットの汚れ、及びお札用原紙の紙ムケがなく、印刷適性が良好。
×:ブランケットの汚れ、又はお札用原紙の紙ムケ、若しくはその両方があり、印刷適性が不良。
【0068】
[筆記適性の評価」
各お札用原紙に対して、ペンてる筆ペン(ぺんてる社製)、サインペン(黒)、油性マジックで筆記し、それぞれの筆記部のにじみ具合を目視で評価し、判定を行った。
○:にじみがなく、良好。
×:にじみあり、不良。
【0069】
図1における実施例1〜6の結果から明らかなように、本発明によれば、オフセット印刷適性と筆記適性を有し、水への浮揚性も良好なお札用原紙が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0070】
以上述べたように、本発明によれば、撥水性、耐水性が良好で、水への浮揚性に優れたお札用原紙が得られる。このお札用原紙を祈願札等に用いれば、願い事を記して川に流した場合でも、水への浮揚性が良好であるため長時間水面に浮き続け、後日下流において網で回収することができることに加え、焼却処理が容易であり、焼却時に環境に与える影響も少ない。
【0071】
また本発明のお札用原紙は、多色刷りや網点印刷を行った場合でも印刷機のブランケット等を汚したり紙の表面が剥けたりしないオフセット印刷適性と、墨汁、サインペン、マジックなどで筆記した際に文字が滲まない筆記適性を有し、印刷を行ったり文字を書き込んだりする場合にも好適である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パルプ100重量部に対して、内添サイズ剤を0.1〜2.0重量部、内添紙力剤を0.2〜3.0重量部含有するシートの表面に、表面サイズプレス処理により表面サイズ剤を塗工し、坪量が250〜500g/m2、密度が0.8g/cm3以下、JIS P 8122で規定されるステキヒトサイズ度が1000秒以上、JIS P 8140で規定されるコッブ吸水度が40g/m2以下であり、
前記内添サイズ剤は、ワックス系サイズ剤であり、
前記内添紙力剤は、澱粉、変性澱粉、ポリアクリルアミド系樹脂、ポリアミド・ポリアミン系樹脂、尿素ホルマリン樹脂、メラミンホルマリン樹脂、植物ガム、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール、ゴム系ラテックス、ポリエチレンオキサイド、ポリアミド樹脂の中から1種又は2種以上を用いるものであり、
前記表面サイズ剤は、澱粉、変性澱粉、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド系樹脂の中から1種又は2種以上を用いた塗工液であることを特徴とするお札用原紙。
【請求項2】
前記内添サイズ剤として用いられるワックス系サイズ剤は、パラフィンワックス系サイズ剤、マイクロクリスタリンワックス系サイズ剤、カルナウバワックス系サイズ剤、アルキルケテンダイマーワックス系サイズ剤の中から1種又は2種以上を用いるものである、ことを特徴とする請求項1に記載のお札用原紙。
【請求項3】
前記シートの主成分であるパルプは、フリーネスが400〜600mlC.S.Fの範囲であることを特徴とする請求項1又は2に記載のお札用原紙。
【請求項4】
前記内添紙力剤として、カチオン化澱粉とポリアクリルアミド系樹脂とを併用することを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載のお札用原紙。
【請求項5】
前記内添サイズ剤として用いられるワックス系サイズ剤として、アルキルケテンダイマーワックス系サイズ剤を使用したことを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載のお札用原紙。
【請求項6】
前記表面サイズ剤は、澱粉又は変性澱粉とポリビニルアルコール又は変性ポリビニルアルコールを併用したもの、もしくは、変性ポリアクリルアミド系樹脂である、ことを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載のお札用原紙。
【請求項7】
前記表面サイズ剤の塗布量は、乾燥固形分質量で両面あたり0.5〜4g/m2の範囲であり、かつ、表面と裏面の塗布量の比率が、4:6〜6:4の範囲であることを特徴とする請求項1〜6の何れかに記載のお札用原紙。

【図1】
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【公開番号】特開2013−64204(P2013−64204A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−202032(P2011−202032)
【出願日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【出願人】(000241810)北越紀州製紙株式会社 (196)
【Fターム(参考)】