かぎ針編み方法および編み物
【課題】 例えば、プルオーバー、カーディガン、ボレロ等の輪郭にカーブラインを形成し、また多数のモチーフがあっても製作時間を短縮でき、リメーク等のためにも容易かつ迅速にほどけるようにする。
【解決手段】 複数かつ同径のモチーフ1、1、1・・・・を斜め方向に連続編みし、しかも輪郭OLを形成する前記同径のモチーフ1、1、1・・・・群の中に、前記各モチーフ1より大きい径大モチーフ2、2を編み込んで前記輪郭OLを湾曲させることを特徴とするものである。
【解決手段】 複数かつ同径のモチーフ1、1、1・・・・を斜め方向に連続編みし、しかも輪郭OLを形成する前記同径のモチーフ1、1、1・・・・群の中に、前記各モチーフ1より大きい径大モチーフ2、2を編み込んで前記輪郭OLを湾曲させることを特徴とするものである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は毛糸などの糸をかぎ針により編む方法および編み物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から複数かつ同径のモチーフ(模様の主題を構成する単位。以下同じ)を個別に製作した後、これらをつないだり、前記モチーフを縦若しくは横方向に連続編みし、また前記方法により編み物を製作している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】なし。
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】なし。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記従来例では、いずれもショール、テーブルセンター等の編地若しくは和服のようなカーブラインのないストレートな輪郭だけによる衣服しか得られず、プルオーバー、カーディガン、ボレロ等のように輪郭にカーブラインを必要とする衣服を製作することができない。
【0006】
また多数のモチーフを個別につないだ場合、製作に時間がかかり、さらにリメーク等のためにこれらをほどくにも手間、時間がかかる。
【0007】
本発明は前記不都合を解消することを課題にする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は第1に、複数かつ同径のモチーフを斜め方向に連続編みし、しかも輪郭を形成する前記同径のモチーフ群の中に、前記各モチーフより大きい径大モチーフを編み込んで前記輪郭を湾曲させることを特徴とするものである。
【0009】
また本発明は第2に、前記第1のかぎ針編み方法により形成されたことを特徴とする編み物である。
【発明の効果】
【0010】
本発明は輪郭に所望のカーブラインを有するかぎ針編み物、例えばプルオーバー、カーディガン、ボレロ等の衣服を製作することができる。
【0011】
また編み物の製作時間を短縮でき、さらにリメイクするような場合に連続して極めて容易かつ迅速にほどくことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明第1例におけるモチーフの配列を示す正面図である。
【図2】同上の背面図である。
【図3】同上の分解説明図である。
【図4】本発明第2例におけるモチーフの配列を示す中間省略を示した正面図である。
【図5】同上にあみ方記号を付加した部分拡大図である。
【図6】本発明のあみ方記号による部分拡大図である。
【図7】同上の接続部を示す部分拡大図である。
【図8】従来第1モチーフ例と本発明第1モチーフ例との原理を比較した説明図である。
【図9】従来第2モチーフ例と本発明第2モチーフ例との原理を比較した説明図である。
【図10】従来第3モチーフ例と本発明第3モチーフ例との原理を比較した説明図である。
【図11】従来第4モチーフ例と本発明第4モチーフ例との原理を比較した説明図である。
【図12】本発明による斜め連続編みと従来例の縦横編みによる比較説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
基本的に複数かつ同径のモチーフ1、1、1・・・・をたとえば図1、2、3のA1〜A38(前記数字は編み順を意味する。以下同じ)で示すように編み糸を切らずに斜め方向に連続編みする。連続編み自体は本発明においても従来からの周知の編み方によるものであり、その詳細な説明は省略し、本発明の特徴部分を以下のとおり説明する。
【0014】
前記連続編みA1〜A38の途中でA21で示す他の複数かつ同径のモチーフ1、1、1・・・・より大きい径大モチーフ2を編み込む。この径大モチーフ2の位置、大きさ、数は目的とする編み物(製作品)により異なるが、湾曲した輪郭OLを形成したい所望位置に編み込む。前記例ではA20とA22との間に別に編んだA21を挿入して、これらをつなぐのではなく、A20、A21、A22と順に途切れることなく、連続して編み進める。
【0015】
ここで前記方法により湾曲部3が形成される理由を図8により説明する。この例は円形モチーフの場合を示すもので、一定の範囲(距離)L内に(X)で示すように複数かつ同径のモチーフ1、1、1・・・・を並設すると前記モチーフ1、1・・・・群は直立する。つまり従来はこの方法で編んでいたのでストレートな輪郭の編地しか形成されない。
【0016】
一方、(X)の1点鎖線で示すように各同径のモチーフ1より大きい径大モチーフ2を入れると、一定の範囲(距離)L内では、(Y)で示すように距離l1、l2が加算されるため湾曲部3が形成される。さらに前記モチーフ1、1・・・・、径大モチーフ2を二つ折りすると、(Z)の2点鎖線で示す湾曲ライン4を出すことができる。
【0017】
図9、10、11は他のモチーフの場合を示すものであり、前記円形モチーフの場合と原理的に同一であり、同一部分については同一符号を付けてその詳細な説明を省略する。図9の(X)では六角モチーフ1、1、1・・・・が直立した状態である。径大モチーフ2はモチーフ1の一辺とほぼ同一および僅かに大きい辺とからなる七角形である。正円と異なり、六角形で同径モチーフ1、1・・・・より大きい径の径大モチーフ2を形成し、しかも連続編みするには、径大モチーフ2の一辺を可能な限りモチーフ1の一辺の距離に均等にしつつ径大化する必要があり、図示のような七角形で試作したところ成功したものである。これは糸、例えば毛糸のような素材自体、特にモチーフ自体に伸縮性があるため、多少の誤差を吸収できるからである。
【0018】
図10は三角モチーフの場合を示すものであり、この三角形のモチーフ1、1・・・は前記六角のモチーフを六等分してなるもので、6個の三角形により形成される六角モチーフ1′より大きい径大モチーフ2を前記同様、七角形にしたものである。
【0019】
図11は花モチーフの場合を示すもので、(X)で示すように12枚の花弁1a、1a、1a・・・・からなる同径の花形のモチーフ1、1、1・・・・の間に、(Y)で示すように前記モチーフ1より大きい径の14枚の花弁2a、2a、2a・・・・からなる径大モチーフ2を編み込んだものであり、いずれも本発明方法により湾曲部3が形成され、二つ折りにした場合は湾曲ライン4を出すことができる。
【0020】
図6は頭書のA20とA22のモチーフ1、1の間に径大モチーフ2としてA21を編み込んだ場合の径大モチーフ2の周辺のモチーフ1、1、1・・・・の状態を示すものであり、前記各モチーフ1、2は対向する外回りの山型部5、5、5・・・および接続用ループ6、6・をそれぞれ、接続しつつ連続して編むものであり、前記の接続手段自体は従来から周知であり、それ自体の詳細な説明を省略する。図7は図6からモチーフ部分を省略し、接続部分である各山型部5、各接続用ループ6を示して接続手段を明示したものである。
【0021】
また本発明はモチーフ1、1、1・・・・、2を連続編みするが、縦横に連続編みするものではなく、図6のように斜め方向に連続するものである。
【0022】
縦横に連続編みする場合と、斜め方向に連続する場合の原理上の差を説明する。縦横に連続編みすると、図12の(b)で示す湾曲する最右列b1と左隣列b2との間に大きい隙間b3が形成される。この隙間b3を後述のために左隣りに仮想線で示す。一方、斜めに連続編みすると、(a)で示す湾曲する最右列a1と左隣列a2との間に隙間b3より小さい隙間a3が形成される(以下の説明のために左隣りに仮想線で示す)。図示の隙間a3、b3は編み物全体の隙間の合計と考えられ、これらの隙間a3、b3は各モチーフ1、2の周囲に誤差として配分する必要がある。この配分面積が小さいほど所望の編み物が形成しやすいことはいうまでもなく、本発明では配分面積の小さい斜め方向に連続編みすることにより所望の編み物を製作することができたものである。
【実施例1】
【0023】
プルオーバーを例にあげ、図1〜3により説明する。図1はプルオーバーの前側モチーフ1、径大モチーフ2の編み順を示し、図2はその後側を示す。図3は説明の便宜上、編み順符号を(A)(B)(C)(D)に分けた図で、必ずしも4つの連続編み群を示したものではなく、以下の説明のように(B)(C)(D)とが連続している場合もある。
【0024】
また編み物において当然であるが、「編み進める」、「編み戻る」といった場合、既に編んだモチーフ列が隣りにあるときは、各モチーフの外回りを接続しながら「進む」若しくは「戻る」ものである。
【0025】
さらに以下の説明では、連続してしているが、図1、図2で示す「前側」と「後側」とにモチーフの位置が変わる際は、わかりやすくするため「前」若しくは「後」の表示をする。
【0026】
a.「前」「後」モチーフ1、1・・・、2をA1からA25まで斜め連続編みをする。
【0027】
このときA21のみ径大モチーフ2であり、他はモチーフ1である。またA9、A14、A21では二つ折りし、A14からA16まで、またA21からA25まで「後」に編み進み、糸を切らずに休む。つまり図3の糸玉Aの状態にしておく。なお、A4からA5へはA4からA2まで編み戻り、A5に編み進む。A9からA10へはA9からA5に編み戻り、A10に編み進む。「後」のA16から「前」のA17へはA16からA10に編み戻り、A17に編み進む。
【0028】
b.前記糸玉Aとは別の糸玉からモチーフ1、1、1・・・、2をB1からB59の順で斜め連続編みする。
【0029】
このときの編み順は、「後」B1からB12まで編み進み、B12からB1に編み戻り、B13に編み進む。B13からB26に編み進み、このB26で「前」に二つ折りするとともに、B26を「後」でB13に編み戻り、B13からB27に編み進み、このB27からB40に編み進み、B40を「前」に二つ折りするとともにB42まで編み進み、B42からB40、続いて「後」のB27まで編み戻り、このB27を「前」に二つ折りしてB43に編み進み、B43からB45に編み進み、B45を「後」に二つ折りしてB56に編み進み、B56を二つ折りして「前」にし、B57からB59まで編み進み、糸を切らずに休む。つまり図1・3の糸玉Bの状態にしておく。
【0030】
前記B1からB59中、B1、B5、B56のみ径大モチーフ2であり、他はモチーフ1である。
【0031】
c.「後」A25つまり糸玉Aの残り糸でB11、A25、B10、A24と接続し、A21まで編み戻る。二つ折りの「前」A21をA17まで編み戻り、A17からA26そしてA26からA29まで編み進み、A29からA26まで編み戻り、A26からA30そしてA30からA33まで編み進んだ後、B5に接続し、さらにA33からA30に編み戻り、A30からA34そしてA34からA38まで編み進んでAを仕上げ、さらにA糸をB4に接続した後、A38からA34、A34からA30、A26、A17、A10、A5、A2、A1と編み戻り、A糸は切らず後で裾を仕上げる。
【0032】
d.「前」B59つまり糸玉Bの残り糸をA1、A2に接続し、B59からB56まで編み戻り、二つ折りのB56を「後」でB56からB45まで編み戻り、二つ折りのB45から「前」のB43に編み戻り、このB43をB60に編み進み、B60からB63に編み進み、このB63を「後」に二つ折りするとともにB72まで編み進み、このB72から「前」のB73へと編み進み、B73からB76に編み進み、このB76をA2、A5に接続しながらB76に戻り、B76からB73、そして「後」のB72を経てB63に編み戻り、二つ折りのB63を「前」のB60まで編み戻り、B60からB77に、そしてこのB77からB81に編み進んで「後」に二つ折りし、B81からB89に編み進み、さらにこのB89を「前」に二つ折りし、C1に編み進める。BとCとは説明の便宜上、符号を分けただけで、BとCとは同じ糸の連続である。そしてC1からC4へと編み進み、A5、A10に接続し、C4からC1に編み戻ってC5に編み進み、C5からC7に編み進み、このC7をA10、A17に接続するとともにC5まで編み戻り、C8、C9、C8、C10の順に編む。C10からはC8、C5、C1、B89の順で編み戻り、二つ折りのB89を「後」のB81まで編み戻り、さらに二つ折りのB81を「前」のB77に編み戻り、B77からC11に編み進み、C11からC16に編み進み、C16で「後」に二つ折りにし、このC16からC23に編み進み、C23で「前」に二つ折りし、C23からC28まで編み進む。そしてC28から二つ折りのC23まで編み戻り、D1に進む。このCとDも説明の便宜上、符号を分けただけでB、CとDは同じ糸の連続である。
【0033】
「前」においてD1、D2、D3と編み進み、しかもこれらをそれぞれ二つ折りするとともにD3からD1に編み戻り、二つ折りのD1から「後」のD4に編み進み、D4からD7に編み進み、D7からD4に編み戻ってD8に編み進み、D8からD12に編み進み、D12を二つ折りにするとともに「後」でD12からD8に編み戻り、D8からD13に編み進み、D13からD16に編み進むとともにD16を二つ折りにし、「前」でD16からD18に編み進み、D18をD3に接続し、D18からD16に編み戻り、「後」でD16からD13に編み戻り、D13からD19に編み進むとともにD21に編み進み、D21を「前」に二つ折りにし、さらに「前」でD21からD24に編み進み、D3、D2に接続し、「前」のD24から二つ折りのD21に編み戻り、D21から「後」でD19まで編み戻り、D19からD25に編み進み、D25、D26と編み進むとともにD26で「前」に二つ折りし、D26からD30に編み進む。「前」でD30をD2、D1に接続し、このD30からD26に編み戻り、「後」でさらにD26からD25に編み戻ってD31に編み進み、このD31を「前」に二つ折りにし、D36まで編み進む。D36をD1、C23に接続し、D31に戻る。
【0034】
前記B60からB89、C1からC28、D1からD36中、B89とD3のみ径大モチーフ2であり、他はモチーフ1である。
【0035】
e.以上のようにDは終了するが、糸玉Bは切らずにそのままの状態にし、さらに「後」でD31からD25、D19、D13、D8、D4、D1まで編み戻る。そしてD1からC23、C23からC18に接続しながら戻り、さらにC18をD31に接続し、D31から「後」のC17(後、中心)まで進む。続いてC17からC16に再度接続し、C16から「前」のA34を接続しながら左袖口まで編み、袖口の始末をする。
【0036】
つまりA34からA38を接続し、同糸でB4も接続した上、B4からB1まで接続する。またA1に残してあった糸で裾の始末をする(この裾の始末は従来からの周知方法と同じであり、より具体的な説明を省略する)。
【実施例2】
【0037】
図4・5で示すものはモチーフ1を六角形、径大モチーフ2を七角形として編んだセーターの部分図で、当然その両脇を二つ折りに示したものであり、図4は各モチーフ1、2の外周の一部のみ、図5はモチーフ自体をも模式化して示すものである。
【0038】
この実施例の場合、正七角形は分数で表現する以外にあり得ず、つまり事実上、無理があり、各辺は同一距離ではない。そのため六角形の各モチーフ1、径大(七角)モチーフ2とは各モチーフ1、2の外周の接続部分、つまり図7で示す山型部5、5、5・・・・及び接続用ループ6、6・・の長さ調節および糸の有する伸縮性により調節すればよい。ちなみに各モチーフ1あたりの山型部5は12個、径大モチーフ2あたりの山型部5は14個にして製作したところ成功したものである。
【符号の説明】
【0039】
1 モチーフ
2 径大モチーフ
【技術分野】
【0001】
本発明は毛糸などの糸をかぎ針により編む方法および編み物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から複数かつ同径のモチーフ(模様の主題を構成する単位。以下同じ)を個別に製作した後、これらをつないだり、前記モチーフを縦若しくは横方向に連続編みし、また前記方法により編み物を製作している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】なし。
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】なし。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記従来例では、いずれもショール、テーブルセンター等の編地若しくは和服のようなカーブラインのないストレートな輪郭だけによる衣服しか得られず、プルオーバー、カーディガン、ボレロ等のように輪郭にカーブラインを必要とする衣服を製作することができない。
【0006】
また多数のモチーフを個別につないだ場合、製作に時間がかかり、さらにリメーク等のためにこれらをほどくにも手間、時間がかかる。
【0007】
本発明は前記不都合を解消することを課題にする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は第1に、複数かつ同径のモチーフを斜め方向に連続編みし、しかも輪郭を形成する前記同径のモチーフ群の中に、前記各モチーフより大きい径大モチーフを編み込んで前記輪郭を湾曲させることを特徴とするものである。
【0009】
また本発明は第2に、前記第1のかぎ針編み方法により形成されたことを特徴とする編み物である。
【発明の効果】
【0010】
本発明は輪郭に所望のカーブラインを有するかぎ針編み物、例えばプルオーバー、カーディガン、ボレロ等の衣服を製作することができる。
【0011】
また編み物の製作時間を短縮でき、さらにリメイクするような場合に連続して極めて容易かつ迅速にほどくことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明第1例におけるモチーフの配列を示す正面図である。
【図2】同上の背面図である。
【図3】同上の分解説明図である。
【図4】本発明第2例におけるモチーフの配列を示す中間省略を示した正面図である。
【図5】同上にあみ方記号を付加した部分拡大図である。
【図6】本発明のあみ方記号による部分拡大図である。
【図7】同上の接続部を示す部分拡大図である。
【図8】従来第1モチーフ例と本発明第1モチーフ例との原理を比較した説明図である。
【図9】従来第2モチーフ例と本発明第2モチーフ例との原理を比較した説明図である。
【図10】従来第3モチーフ例と本発明第3モチーフ例との原理を比較した説明図である。
【図11】従来第4モチーフ例と本発明第4モチーフ例との原理を比較した説明図である。
【図12】本発明による斜め連続編みと従来例の縦横編みによる比較説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
基本的に複数かつ同径のモチーフ1、1、1・・・・をたとえば図1、2、3のA1〜A38(前記数字は編み順を意味する。以下同じ)で示すように編み糸を切らずに斜め方向に連続編みする。連続編み自体は本発明においても従来からの周知の編み方によるものであり、その詳細な説明は省略し、本発明の特徴部分を以下のとおり説明する。
【0014】
前記連続編みA1〜A38の途中でA21で示す他の複数かつ同径のモチーフ1、1、1・・・・より大きい径大モチーフ2を編み込む。この径大モチーフ2の位置、大きさ、数は目的とする編み物(製作品)により異なるが、湾曲した輪郭OLを形成したい所望位置に編み込む。前記例ではA20とA22との間に別に編んだA21を挿入して、これらをつなぐのではなく、A20、A21、A22と順に途切れることなく、連続して編み進める。
【0015】
ここで前記方法により湾曲部3が形成される理由を図8により説明する。この例は円形モチーフの場合を示すもので、一定の範囲(距離)L内に(X)で示すように複数かつ同径のモチーフ1、1、1・・・・を並設すると前記モチーフ1、1・・・・群は直立する。つまり従来はこの方法で編んでいたのでストレートな輪郭の編地しか形成されない。
【0016】
一方、(X)の1点鎖線で示すように各同径のモチーフ1より大きい径大モチーフ2を入れると、一定の範囲(距離)L内では、(Y)で示すように距離l1、l2が加算されるため湾曲部3が形成される。さらに前記モチーフ1、1・・・・、径大モチーフ2を二つ折りすると、(Z)の2点鎖線で示す湾曲ライン4を出すことができる。
【0017】
図9、10、11は他のモチーフの場合を示すものであり、前記円形モチーフの場合と原理的に同一であり、同一部分については同一符号を付けてその詳細な説明を省略する。図9の(X)では六角モチーフ1、1、1・・・・が直立した状態である。径大モチーフ2はモチーフ1の一辺とほぼ同一および僅かに大きい辺とからなる七角形である。正円と異なり、六角形で同径モチーフ1、1・・・・より大きい径の径大モチーフ2を形成し、しかも連続編みするには、径大モチーフ2の一辺を可能な限りモチーフ1の一辺の距離に均等にしつつ径大化する必要があり、図示のような七角形で試作したところ成功したものである。これは糸、例えば毛糸のような素材自体、特にモチーフ自体に伸縮性があるため、多少の誤差を吸収できるからである。
【0018】
図10は三角モチーフの場合を示すものであり、この三角形のモチーフ1、1・・・は前記六角のモチーフを六等分してなるもので、6個の三角形により形成される六角モチーフ1′より大きい径大モチーフ2を前記同様、七角形にしたものである。
【0019】
図11は花モチーフの場合を示すもので、(X)で示すように12枚の花弁1a、1a、1a・・・・からなる同径の花形のモチーフ1、1、1・・・・の間に、(Y)で示すように前記モチーフ1より大きい径の14枚の花弁2a、2a、2a・・・・からなる径大モチーフ2を編み込んだものであり、いずれも本発明方法により湾曲部3が形成され、二つ折りにした場合は湾曲ライン4を出すことができる。
【0020】
図6は頭書のA20とA22のモチーフ1、1の間に径大モチーフ2としてA21を編み込んだ場合の径大モチーフ2の周辺のモチーフ1、1、1・・・・の状態を示すものであり、前記各モチーフ1、2は対向する外回りの山型部5、5、5・・・および接続用ループ6、6・をそれぞれ、接続しつつ連続して編むものであり、前記の接続手段自体は従来から周知であり、それ自体の詳細な説明を省略する。図7は図6からモチーフ部分を省略し、接続部分である各山型部5、各接続用ループ6を示して接続手段を明示したものである。
【0021】
また本発明はモチーフ1、1、1・・・・、2を連続編みするが、縦横に連続編みするものではなく、図6のように斜め方向に連続するものである。
【0022】
縦横に連続編みする場合と、斜め方向に連続する場合の原理上の差を説明する。縦横に連続編みすると、図12の(b)で示す湾曲する最右列b1と左隣列b2との間に大きい隙間b3が形成される。この隙間b3を後述のために左隣りに仮想線で示す。一方、斜めに連続編みすると、(a)で示す湾曲する最右列a1と左隣列a2との間に隙間b3より小さい隙間a3が形成される(以下の説明のために左隣りに仮想線で示す)。図示の隙間a3、b3は編み物全体の隙間の合計と考えられ、これらの隙間a3、b3は各モチーフ1、2の周囲に誤差として配分する必要がある。この配分面積が小さいほど所望の編み物が形成しやすいことはいうまでもなく、本発明では配分面積の小さい斜め方向に連続編みすることにより所望の編み物を製作することができたものである。
【実施例1】
【0023】
プルオーバーを例にあげ、図1〜3により説明する。図1はプルオーバーの前側モチーフ1、径大モチーフ2の編み順を示し、図2はその後側を示す。図3は説明の便宜上、編み順符号を(A)(B)(C)(D)に分けた図で、必ずしも4つの連続編み群を示したものではなく、以下の説明のように(B)(C)(D)とが連続している場合もある。
【0024】
また編み物において当然であるが、「編み進める」、「編み戻る」といった場合、既に編んだモチーフ列が隣りにあるときは、各モチーフの外回りを接続しながら「進む」若しくは「戻る」ものである。
【0025】
さらに以下の説明では、連続してしているが、図1、図2で示す「前側」と「後側」とにモチーフの位置が変わる際は、わかりやすくするため「前」若しくは「後」の表示をする。
【0026】
a.「前」「後」モチーフ1、1・・・、2をA1からA25まで斜め連続編みをする。
【0027】
このときA21のみ径大モチーフ2であり、他はモチーフ1である。またA9、A14、A21では二つ折りし、A14からA16まで、またA21からA25まで「後」に編み進み、糸を切らずに休む。つまり図3の糸玉Aの状態にしておく。なお、A4からA5へはA4からA2まで編み戻り、A5に編み進む。A9からA10へはA9からA5に編み戻り、A10に編み進む。「後」のA16から「前」のA17へはA16からA10に編み戻り、A17に編み進む。
【0028】
b.前記糸玉Aとは別の糸玉からモチーフ1、1、1・・・、2をB1からB59の順で斜め連続編みする。
【0029】
このときの編み順は、「後」B1からB12まで編み進み、B12からB1に編み戻り、B13に編み進む。B13からB26に編み進み、このB26で「前」に二つ折りするとともに、B26を「後」でB13に編み戻り、B13からB27に編み進み、このB27からB40に編み進み、B40を「前」に二つ折りするとともにB42まで編み進み、B42からB40、続いて「後」のB27まで編み戻り、このB27を「前」に二つ折りしてB43に編み進み、B43からB45に編み進み、B45を「後」に二つ折りしてB56に編み進み、B56を二つ折りして「前」にし、B57からB59まで編み進み、糸を切らずに休む。つまり図1・3の糸玉Bの状態にしておく。
【0030】
前記B1からB59中、B1、B5、B56のみ径大モチーフ2であり、他はモチーフ1である。
【0031】
c.「後」A25つまり糸玉Aの残り糸でB11、A25、B10、A24と接続し、A21まで編み戻る。二つ折りの「前」A21をA17まで編み戻り、A17からA26そしてA26からA29まで編み進み、A29からA26まで編み戻り、A26からA30そしてA30からA33まで編み進んだ後、B5に接続し、さらにA33からA30に編み戻り、A30からA34そしてA34からA38まで編み進んでAを仕上げ、さらにA糸をB4に接続した後、A38からA34、A34からA30、A26、A17、A10、A5、A2、A1と編み戻り、A糸は切らず後で裾を仕上げる。
【0032】
d.「前」B59つまり糸玉Bの残り糸をA1、A2に接続し、B59からB56まで編み戻り、二つ折りのB56を「後」でB56からB45まで編み戻り、二つ折りのB45から「前」のB43に編み戻り、このB43をB60に編み進み、B60からB63に編み進み、このB63を「後」に二つ折りするとともにB72まで編み進み、このB72から「前」のB73へと編み進み、B73からB76に編み進み、このB76をA2、A5に接続しながらB76に戻り、B76からB73、そして「後」のB72を経てB63に編み戻り、二つ折りのB63を「前」のB60まで編み戻り、B60からB77に、そしてこのB77からB81に編み進んで「後」に二つ折りし、B81からB89に編み進み、さらにこのB89を「前」に二つ折りし、C1に編み進める。BとCとは説明の便宜上、符号を分けただけで、BとCとは同じ糸の連続である。そしてC1からC4へと編み進み、A5、A10に接続し、C4からC1に編み戻ってC5に編み進み、C5からC7に編み進み、このC7をA10、A17に接続するとともにC5まで編み戻り、C8、C9、C8、C10の順に編む。C10からはC8、C5、C1、B89の順で編み戻り、二つ折りのB89を「後」のB81まで編み戻り、さらに二つ折りのB81を「前」のB77に編み戻り、B77からC11に編み進み、C11からC16に編み進み、C16で「後」に二つ折りにし、このC16からC23に編み進み、C23で「前」に二つ折りし、C23からC28まで編み進む。そしてC28から二つ折りのC23まで編み戻り、D1に進む。このCとDも説明の便宜上、符号を分けただけでB、CとDは同じ糸の連続である。
【0033】
「前」においてD1、D2、D3と編み進み、しかもこれらをそれぞれ二つ折りするとともにD3からD1に編み戻り、二つ折りのD1から「後」のD4に編み進み、D4からD7に編み進み、D7からD4に編み戻ってD8に編み進み、D8からD12に編み進み、D12を二つ折りにするとともに「後」でD12からD8に編み戻り、D8からD13に編み進み、D13からD16に編み進むとともにD16を二つ折りにし、「前」でD16からD18に編み進み、D18をD3に接続し、D18からD16に編み戻り、「後」でD16からD13に編み戻り、D13からD19に編み進むとともにD21に編み進み、D21を「前」に二つ折りにし、さらに「前」でD21からD24に編み進み、D3、D2に接続し、「前」のD24から二つ折りのD21に編み戻り、D21から「後」でD19まで編み戻り、D19からD25に編み進み、D25、D26と編み進むとともにD26で「前」に二つ折りし、D26からD30に編み進む。「前」でD30をD2、D1に接続し、このD30からD26に編み戻り、「後」でさらにD26からD25に編み戻ってD31に編み進み、このD31を「前」に二つ折りにし、D36まで編み進む。D36をD1、C23に接続し、D31に戻る。
【0034】
前記B60からB89、C1からC28、D1からD36中、B89とD3のみ径大モチーフ2であり、他はモチーフ1である。
【0035】
e.以上のようにDは終了するが、糸玉Bは切らずにそのままの状態にし、さらに「後」でD31からD25、D19、D13、D8、D4、D1まで編み戻る。そしてD1からC23、C23からC18に接続しながら戻り、さらにC18をD31に接続し、D31から「後」のC17(後、中心)まで進む。続いてC17からC16に再度接続し、C16から「前」のA34を接続しながら左袖口まで編み、袖口の始末をする。
【0036】
つまりA34からA38を接続し、同糸でB4も接続した上、B4からB1まで接続する。またA1に残してあった糸で裾の始末をする(この裾の始末は従来からの周知方法と同じであり、より具体的な説明を省略する)。
【実施例2】
【0037】
図4・5で示すものはモチーフ1を六角形、径大モチーフ2を七角形として編んだセーターの部分図で、当然その両脇を二つ折りに示したものであり、図4は各モチーフ1、2の外周の一部のみ、図5はモチーフ自体をも模式化して示すものである。
【0038】
この実施例の場合、正七角形は分数で表現する以外にあり得ず、つまり事実上、無理があり、各辺は同一距離ではない。そのため六角形の各モチーフ1、径大(七角)モチーフ2とは各モチーフ1、2の外周の接続部分、つまり図7で示す山型部5、5、5・・・・及び接続用ループ6、6・・の長さ調節および糸の有する伸縮性により調節すればよい。ちなみに各モチーフ1あたりの山型部5は12個、径大モチーフ2あたりの山型部5は14個にして製作したところ成功したものである。
【符号の説明】
【0039】
1 モチーフ
2 径大モチーフ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数かつ同径のモチーフを斜め方向に連続編みし、しかも輪郭を形成する前記同径のモチーフ群の中に、前記各モチーフより大きい径大モチーフを編み込んで前記輪郭を湾曲させることを特徴とするかぎ針編み方法。
【請求項2】
請求項1のかぎ針編み方法により形成されたことを特徴とする編み物。
【請求項1】
複数かつ同径のモチーフを斜め方向に連続編みし、しかも輪郭を形成する前記同径のモチーフ群の中に、前記各モチーフより大きい径大モチーフを編み込んで前記輪郭を湾曲させることを特徴とするかぎ針編み方法。
【請求項2】
請求項1のかぎ針編み方法により形成されたことを特徴とする編み物。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2010−236104(P2010−236104A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−82127(P2009−82127)
【出願日】平成21年3月30日(2009.3.30)
【出願人】(509090195)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年3月30日(2009.3.30)
【出願人】(509090195)
【Fターム(参考)】
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