説明

かつら

【課題】毛髪が所望のボリューム感を有するかつらをより確実に提供することを目的とする。
【解決手段】人工毛髪または天然毛髪からなり、第1のカール径を有する複数の第1の毛髪が植設されたかつらベースの第1領域と、人工毛髪または天然毛髪からなり、前記第1のカール径よりも小さい第2のカール径を有する複数の第2の毛髪が植設された前記かつらベースの第2領域と、を含み、前記第1領域と前記第2領域が隣接して交互に配置された交互配置部を有することを特徴とするかつら。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はかつらベースに人工毛髪または天然毛髪を植設したかつら、とりわけ前記人工毛髪または天然毛髪が所定のカールを有するかつらに関する。
【背景技術】
【0002】
多くのかつらは、例えばウレタン等の合成樹脂製の人工皮膚よりなるかつらベースもしくは合成繊維等を網目状に編んで形成したネットより形成したかつらベース、または人工皮膚とネットとを組み合わせて形成したかつらベースに人工毛髪または人毛等の天然毛髪を植設することにより形成されている。
【0003】
近年、同じ量の毛髪(人工毛髪または天然毛髪)を植設したかつらであっても、よりボリューム感のあるかつらが好まれる傾向にある。
【0004】
このため、かつらベースに植設された毛髪が所定のカール径を有するようにカール付されている(すなわち、カール毛である)かつらが普及しつつある。
【0005】
毛髪に付与するカールのカール径が比較的大きい方が、毛髪がより垂直に近い状態でかつらベースから立ち上がった後、カール径に応じてゆっくりと横方向に広がるため、ボリューム感を容易に奏することができる傾向にある。しかし、カール径が大きいとこの立ち上がり部分の長さが長くなるため、弱い風等の弱い外力により毛髪が容易に倒れてしまい、結果的に所望のボリューム感を得られない場合があるという問題があった。
【0006】
一方、カール径が小さいと、かつらベースから垂直に近い状態で立ち上がっている部分の長さが短くなるため、毛髪が弱い外力により倒れてしまうことを効果的に防止できる。
しかし、カール径が小さいために所望のボリューム感を得ることが困難な場合が多いという問題があった。
【0007】
そこで、引用文献1が開示するかつらでは、カール径の異なる毛髪を所定の比率で混合して植設することでボリューム感を向上させるかつらを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2006−183214号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
引用文献1のかつらでは、カール径の異なる毛髪を混合して配置することにより、カール径の大きい毛髪の立ち上がり部(基端部)をカール径の小さい毛髪が支持することでカール径の大きい毛髪が倒れるのを防止している。
【0010】
しかし、外観、触感及びスタイリング性の観点より、適用可能な毛髪の剛性の範囲が限られているので、カール径の小さい毛髪による支持が十分でないことから、カール径の大きい毛髪が倒れてしまい所望のボリューム感を得られない場合があるという問題があった。
【0011】
そこで、本発明は、カール径の大きい毛髪が倒れるのをより確実に防止することにより、毛髪が所望のボリューム感をより確実に有するかつらを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本願発明の態様1は、人工毛髪または天然毛髪からなり、第1のカール径を有する複数の第1の毛髪が植設されたかつらベースの第1領域と、人工毛髪または天然毛髪からなり、前記第1のカール径よりも小さい第2のカール径を有する複数の第2の毛髪が植設された前記かつらベースの第2領域と、を含み、前記第1領域と前記第2領域が隣接して交互に配置された交互配置部を有することを特徴とするかつらである。
【0013】
本願発明の態様2は、前記交互配置部を複数有することを特徴とする態様1のかつらである。
【0014】
本願発明の態様3は、前記かつらベースが複数のセクションに区分けされ、該複数のセクションの1つが前記交互配置部を有し、前記複数のセクションの他の1つが、人工毛髪または天然毛髪からなり、第1のカール径と異なる第3のカール径を有する複数の第3の毛髪が植設された第3領域と、人工毛髪または天然毛髪からなり、前記第3のカール径よりも小さい第4のカール径を有する複数の第4の毛髪が植設された第4領域とが、隣接して交互に配置された第2交互配置部を有することを特徴とする態様1または2に記載のかつらである。
【0015】
本願発明の態様4は、前記かつらベースが複数のセクションに区分けされ、該複数のセクションの1つが前記交互配置部を有し、前記複数のセクションの他の1つが、前記第1領域と、人工毛髪または天然毛髪からなり、前記第1のカール径よりも小さく、かつ前記第2のカール径と異なる第5のカール径を有する複数の第5の毛髪が植設された第5領域とが、隣接して交互に配置された第3交互配置部を有することを特徴とする態様1または2に記載のかつらである。
【0016】
本願発明の態様5は、前記かつらベースの外周に沿って、前記第1の領域が形成されていることを特徴とする態様1〜4のいずれかに記載のかつらである。
【0017】
本願発明の態様6は、前記第1のカール径が20mm〜80mmであることを特徴とする態様1〜5のいずれかに記載のかつらである。
【0018】
本願発明の態様7は、前記第2のカール径が前記第1のカール径の40%〜70%であることを特徴とする態様1〜6のいずれかに記載のかつらである。
【0019】
本願発明の態様8は、前記第2領域の幅と前記第1領域の幅との比が、1:1.5〜1:4であることを特徴とする態様1〜7のいずれかに記載のかつらである。
【0020】
本願発明の態様9は、前記第1領域は、前記第1の毛髪が1平方センチメートルあたり50本〜90本植設されていることを特徴とする態様1〜8のいずれかに記載のかつらである。
【0021】
前記第2領域は、前記第2の毛髪が1平方センチメートルあたり50本〜90本植設されていることを特徴とする態様1〜9のいずれか1に記載のかつらである。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係るかつらは、大きいカール径を有する毛髪が複数植設されている領域と、小さいカール径を有する毛髪が複数植設されている領域とが隣接して交互に配置されている。このため、大きいカール径を有する毛髪が倒れるのをより確実に防止することができ、これにより所望のボリューム感を有するかつらをより確実に提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】図1は、第1のカール径を有する毛片(毛髪)が植設された領域(1)と第1のカール径よりも小さな第2のカール径を有する毛片(毛髪)が植設された領域(2)とが隣接して交互に配置された交互配置部を示す模式斜視図である。
【図2】図2は、図1のネット状のかつらベース10の複数の横方向のフィラメント8Aのうちの1本に植設された毛片1および毛片2の詳細を示す図であり、図2(a)は、毛片1が毛片2により支持されていない場合を示し、図2(b)は、毛片1の一部が毛片2により支持されている場合を示す。
【図3】図3は、本願発明に係る、交互配置部を含むかつら100の上面図である。
【図4】かつら100と異なる形態のセクションを有するかつら200の上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態を詳細に説明する。なお、以下の説明では、必要に応じて特定の方向や位置を示す用語(例えば、「上」、「下」、「右」、「左」、「縦」、「横」及びそれらの用語を含む別の用語)を用いるが、それらの用語の使用は図面を参照した発明の理解を容易にするためであって、それらの用語の意味によって本発明の技術的範囲が制限されるものではない。また、複数の図面に表れる同一符号の部分は同一の部分又は部材を示す。
【0025】
図1は、本願発明に係るかつらに含まれる、第1のカール径を有する毛片(毛髪)が植設された領域(1)と第1のカール径よりも小さな第2のカール径を有する毛片(毛髪)が植設された領域(2)とが隣接して交互に配置された交互配置部を示す模式斜視図である。
【0026】
図2は、図1のネット状のかつらベース10の複数の横方向のフィラメント8Aのうちの1本に植設された毛片1および2の詳細を示す図であり、図2(a)は、毛片1が毛片2により支持されていない場合を示し、図2(b)は、毛片1の一部が毛片2により支持されている場合を示す。
図1および図2では、領域(1)および(2)を容易に認識できるように点線で示してある。
【0027】
なお、図1では、図示する毛片1および2の量が多すぎると、図が煩雑となり、毛片の植設位置およびカールの状態を視認するのが困難となるため、毛片1および2の一部の記載を省略している(かつらベース10において、その横方向のフィラメント8Aと縦方向のフィラメント8Bとが交わる部分に植設された毛片1および2は記載し、横方向のフィラメント8A上でかつ縦方向のフィラメント8Bと交わっていない部分に植設された毛片1および2は記載を省略した)。
【0028】
領域(1)および(2)は、それぞれかつらベース10上の毛髪(毛片)が植設された領域である。
領域(1)に複数(多数)植設されている毛片1は、それぞれ、比較的大きなカール径を有している。
そして、1つの領域(1)内に配置された毛片1は同じカール径を有している。
本明細書において、同じカール径とは、工業的に同じカール径という意味である。例えば、同じ領域内に配置された複数の毛片のカール径の算術的な平均値(毛片が20本以上ある場合は、任意に選んだ20本の毛片のカール径の平均値を用いてよい)からプラスマイナス10%以内に概ね全ての毛片のカール径が入ることを意味する。
なお、毛片のカール径は、毛片1をかつらベース10より切り離した後、平板の上に毛片を載置することにより、毛片が平板上に形成する略円弧状の形状の直径として求めることができる。
【0029】
毛片1の好ましいカール径は、20mm〜80mmである。毛片1のカール径が、この範囲内にあると十分なボリューム感を得ることができ、かつ毛片2が容易に毛片1を支持できるからである。
【0030】
領域(2)に複数(多数)植設されている毛片2は、領域(1)の毛片1よりも小さいカール径を有している。そして、1つの領域(2)内に配置された毛片2は同じカール径を有している。
毛片2のカール径は、好ましくは、毛片1のカール径の40〜70%であり、より好ましくは50〜60%である。毛片2のカール径が、この範囲内にあるとより確実に毛片1を支持できるからである。
毛髪1のカール径と毛髪2のカール径との比率は、毛片1と毛片2のそれぞれの平均値(例えば、それぞれ任意に選択した20本(同一の領域(1)および(2)内の毛片の数が20本より少ない場合は全て)をかつらベース10から切取り測定して得た平均値)を比べることにより求めることができる。
【0031】
そして、領域(1)と領域(2)とは互いに隣接して交互に配置され、交互配置部を形成する。ここで、交互に配置するとは、図1に示されるように、互いに隣接する領域(1)と領域(2)のうち、少なくとも一方が、2つ以上配置されていることをいう。
【0032】
本願発明者は、交互配置部を設けることで、かつらベースに植設された毛髪のボリューム感を増加させることができることを見出した。
これは、以下の理由によるものであると推定される。
カール径の大きい毛片1は、そのカール径に応じて、基端(かつらベース10)から、垂直に近い角度で立ち上がり、先端に向けて徐々に外側(側方、図1および図2では左方向)に広がっていく。
このため、毛片1は、基端から(かつらベース)より高い位置まで達することができ、より優れたボリューム感を奏することができる。
【0033】
しかし、カール径の大きい毛片は、カール径の小さい同じ長さの毛片と比べると、風等の外力で倒れ易いという欠点がある。そして、毛片が倒れてしまうと、かつらベース(基端)から高い位置まで毛片を供給できないことから、十分なボリューム感を奏することが困難となる。
【0034】
一方、毛片2は、カール径が小さいために基端(かつらベース10)から立ち上がった後、毛片1のように高い位置に達することなく、先端に向けて外側(側方、図1および図2では左方向)に広がっていく。このため、毛片1よりボリューム感向上への寄与は小さい。
しかし、外力を受けても倒れにくいという利点を有している。
【0035】
そして、毛片1が複数植設された領域(1)と毛片2が複数植設された領域(2)とを交互に配置することで、毛片1が外力等により傾いてもカール径の小さい毛片2が毛片1を支持することにより、毛片1が倒れてしまうのを防止し、この結果、十分なボリューム感を確保できる。
【0036】
この毛片2による毛片1の支持について、図2を用いて、模式的に示す。
図2(a)は、毛片1および毛片2に外力が作用していない状態を示す。毛片1および毛片2とも倒れることなく、従って、毛片2は毛片1を支持していない。
【0037】
図2(b)では、毛片1および2に外力(毛片を図の左方向倒そうとする力)が作用している。
カール径の小さい毛片2は、外力の影響をほとんど受けておらず、特に傾くようなことはない。一方、カール径の大きい毛片1は、外力により容易に傾く。図2(b)では、毛片1のうち毛片1Aと毛片2Aが外力により左方向に傾いている。
しかし、毛片2が毛片1と接触し(特に基端に近い部分に接触し)、毛片2が毛片1Aおよび毛片1Bを支持することで、毛片1Aおよび毛片1Bは、それ以上傾かず、従って、毛片1Aおよび1Bがボリューム感の向上に十分寄与することがわかる。例えば、図2(b)に示す例では、毛片1Aおよび1Bは、傾いているにもかかわらず、その先端は、毛片2の先端よりも高い位置にあるためボリューム感の向上に寄与している。
なお、毛片1(図2(b)の毛片1Aおよび1Bに相当するものも含む)が傾いていない状態を示す図2(a)においては、当然ながら、毛片1の先端は毛片2の先端よりも高い位置にあり、従って、ボリューム感の向上に寄与している。
【0038】
上述したように従来からカール径の異なる毛髪を混合して植設したかつらは知られていたが、十分なボリューム感が得られない場合があった。
これは、2種類のカール径を有する毛髪がランダムに混合した状態であり、基本的には、1本のカール径の大きい毛片を1本のカール径の小さい毛片が支持することになるため、大きいカール径を有する毛片が、小さいカール径を有する毛片の位置する方向と少しでも異なる方向に傾くと、小さいカール径を有する毛片が大きいカール径を有する毛片を支持できなこと、および傾いた大きいカール径を有する毛片を支えるのが小さいカールを有する毛片1本だけであるため、十分に支持できず、大きいカール径を有する毛片が倒れしまうためと考えられる。
【0039】
これに対して、本願発明では、例えば図1において、右側に位置する領域(1)の毛髪であれば、左方向に傾く場合、フィラメント8Aと平行な方向だけでなく、この方向からずれた方向に傾いても、図1に示すように領域(2)にはフィラメント8Bに平行な方向にも複数の毛片2が植設されていることから、帯状の領域(2)内のいずれかの部位に向いた方向に傾く限りは、確実に領域(2)の毛片2により毛片1を支持することができる。
さらに、傾いた毛片1を領域(2)内の複数の毛片2で支持できるため、より確実に毛片1が倒れてしまうのを防止できる。
【0040】
なお、上述した図1の右側の領域(1)の右側に更に領域(2)が配置されている場合(すなわち、領域(1)の両側に領域(2)が配置されている場合)には、当該領域(1)の毛片1は、左右方向どちらに傾いても領域(2)により支持され、倒れてしまうことが防止される。
【0041】
なお、以上のメカニズムは、領域(1)および(2)を交互に配置した交互配置部を設けることで、毛髪のボリューム感を向上させることを見出した本願発明者らが、得られた知見から類推したメカニズムであって、本願発明の技術的範囲を制限することを意図するものではない。
【0042】
次に、交互配置部を構成する各要素の詳細を以下に示す。
領域(1)および領域(2)が形成されるかつらベース10は、ウレタン等の合成樹脂製から成る人工皮膚もしくは合成繊維等の繊維を網目状に編んで形成したネットより形成したネット状かつらベース、または人工皮膚とネットとを組み合わせて形成したかつらベースを含む、かつらに用いられている各種のかつらベースを用いてよい。
【0043】
図1に示す例では、横方向に延在するフィラメント8Aと縦方向に延在するフィラメント8Bとが直交するように配置された、網目が四角形であるネット状かつらベースが用いられているが、例えば六角形の網目構造を有する等既知の各種のネット形状を用いてよい。
【0044】
次に、かつらベース10に設ける領域(1)および(2)について説明する。
上述のように、本願発明にかかるかつらは、領域(1)と領域(2)が互いに隣接して交互に配置された交互配置部を有している。本願発明に係るかつらは、交互配置部を少なくとも1つ含んでおり、好ましくは複数の交互配置部を含んでいる。
複数の交互配置部を含むことでそれぞれの部分で毛髪の所望のボリューム感を得ることができるからである。
【0045】
領域(1)および領域(2)は、好ましくは幅が3mm以上であり15mm以下である。幅が3mm以上だと領域(2)は、より確実に領域(1)の毛片1を支持でき、領域(1)はより確実にボリューム感を奏することができるからである。また、幅が15mm以下だと、かつらを目視した際に、毛材1と毛材2が分離して識別され難くなり、第3者にかつらを装着していることを認識される可能性を低くできるからである。
なお、ここでいう幅とは、領域(1)と(2)が交互に配置されている方向におけるそれぞれの領域の長さを意味する。
【0046】
毛髪(1)および毛髪(2)は、それぞれ、ポリアミド樹脂等の合成樹脂等から成る人工毛髪であってもよいし、または人毛等の天然毛髪であってもよい。
【0047】
図1および図2で示す例では、1本の毛材を用い、当該毛材の略中央で2つ折りして、略中央部をかつらベース10のネットを構成するフィラメントに巻回して結着している(図では結着している部分の詳細は記載を省略)。これにより1本の毛材から、その一端側と他端側の2本の毛片1または毛材2を得ている。
【0048】
しかし、これに限定されるものではなく、1本の毛片の一端をかつらベースに固定し、他端を自由端とすることで、1つの毛片1または毛片2を得てもよい。
【0049】
領域(1)において、好ましくは、毛片1は1平方センチメートルあたり50本から90本植設されている。すなわち、図1に示すように1本の毛材を2つ折りして植設し、2本の毛片1を得ている場合には、1平方センチメートルあたり25本〜45本の毛材が植設されている。
この範囲の密度で毛片1が植設されていると、見た目が自然でかつボリューム感を得ることができるからである。
【0050】
領域(2)において、好ましくは、毛片2は1平方センチメートルあたり50本から90本植設されている。すなわち、図1に示すように1本の毛材を2つ折りして植設し、2本の毛片2を得ている場合には、1平方センチメートルあたり25本から45本の毛材が植設されている。
この範囲の密度で毛片2が植設されていると、見た目が自然でかつ確実に毛片1を支持できるからである。
【0051】
毛片1および毛片2は、結着および接着を含む、かつらベースに毛髪を固定する形態をとして知られた各種の形態により、かつらベース10に植設されてよい。
【0052】
図1に示す実施形態では、毛片1および毛片2は、横方向のフィラメント8Aまたは縦方向のフィラメント8Bに沿って整列して植設されているが、これ以外にも、例えば千鳥配置となるように植設する、規則的な配置をベースに意図的にいくつかの箇所に植設しないことで規則性を乱して、より自然にみせる、またはランダムに植設する等の各種の配置で植設してよい。
【0053】
領域(1)に植設される毛片1と領域(2)に植設される毛片2とは、同じ材料より成ってもよく、または異なる材料より成ってもよい。
領域(1)に植設される毛片1と領域(2)に植設される毛片2とは、同じ太さを有してもよく、または異なる太さを有してもよい。
【0054】
領域(1)に植設される毛片1と領域(2)に植設される毛片2とは、同じ長さを有してもよく、または異なる長さを有してもよい。
毛髪1と毛髪2が同じ材料より成り同じ長さを有する場合、同一の毛材(または毛片)を用いて、付与するカール径を変えるだけで、毛材1と毛材2を準備できるため、高い生産性で本願に係るかつらを得ることができる。
一方、毛髪1と毛髪2の長さを、異ならせて、それぞれに適した長さとすることで、より自然なシルエットが得られ、かつらを装着していることを第3者が認識する可能性をより低くすることができる
【0055】
1つの領域(1)に植設される複数の毛片1の先端は、かつらのなかで配置される場所に応じて、同じ方向を向いてもよく、また違った方向を向いてもよい。
同様に、同一の領域(2)に植設される複数の毛片2の先端は、かつらのなかで配置される場所に応じて、同じ方向を向いてもよく、また違って方向を向いてもよい。
【0056】
図3は、本願発明に係る、交互配置部を含むかつら100の上面図である。
図3では、図1および図2と同様に、領域(1)および(2)をより明確に認識できるように点線で示した。
【0057】
本願発明に係るかつらは好ましくは、複数のセクションに区分けされ、それぞれのセクションが交互配置部を有している。
人間の頭に生育している毛髪は太さ、本数(密度)及びうねり度合いが全て同じことはあり得ず、それらは頭部の位置により異なる。セクションは、このような人間の頭部を模してより自然なかつらに仕上げることを目的に設けられる。そして、セクションは、毛髪の毛先の流れる方向、毛髪の密度、カール径、毛髪の長さおよび毛髪の色の少なくとも1つが異なる区画を表している。
図3に各セクションの境界を実線で示した。かつら100は、前頭部11、後頭部13、天頂部12、左側頭部14および右側頭部15の5つのセクションを有する。
そして、それぞれのセクションが領域(1)と領域(2)とが互いに隣接して交互に配置されている交互配置部を有する。
それぞれの領域(1)には毛片1が植設され、それぞれの領域(2)には、毛片2が植設されているが、図3では、領域(1)、(2)の配置およびセクションの配置が容易に認識できるように、毛片(毛髪)1および毛片(毛髪)2の記載を省略してある。
【0058】
それぞれのセクション毎に、用いる毛片1および毛片2の長さ、色、カール径、植設密度および太さのいずれか1つ以上を変えてよい。セクション毎にこれらを変更できることで、かつら装着者の要望によりきめ細かく対応することができる。
【0059】
セクションによりカール径を変更する場合について詳述する。
複数のセクションを有する場合、それぞれのセクション毎に領域(1)の毛片1のカール径が違っていてもよく、またいくつかのセクションの毛片1は同じカール径を有し、それ以外のセクションの毛片1は異なるカール径を有してよい。
同様に、領域(2)の毛片2についても、同じセクションの領域(1)の毛片2よりも小さいカール径を有する限りは、セクション毎に領域(2)の毛片2のカール径が違っていてもよく、またいくつかのセクションの毛片2は同じカール径を有し、それ以外のセクションの毛片2は異なるカール径を有してよい。
【0060】
例えば、図3に示すかつら100を例に取ると、前頭部11、後頭部13、天頂部12、左側頭部14および右側頭部15は、それぞれの領域(1)の毛片1のカール径が互いに異なり、これと併せてまたはこれに代えて、それぞれの領域(2)の毛片2のカール径が互いに異なってもよい。
また、左側頭部14および右側頭部15の領域(1)の毛片1は、同じカール径を有し、これ以外の、前頭部11、後頭部13および天頂部12の領域(1)の毛片1は、他のセクションの毛片1と異なるカール径を有する等、いくつかのセクションの毛片1は他のセクションの毛片1と同じカール径を有してよい。
同様に、左側頭部14および右側頭部15の領域(2)の毛片2は、同じカール径を有し、これ以外の、前頭部11、後頭部13および天頂部12の領域(2)の毛片2は、他のセクションの毛片2と異なるカール径を有する等、いくつかのセクションの毛片2は他のセクションの毛片2と同じカール径を有してよい。
【0061】
好ましくは、本願発明に係るかつらは、かつらベースの外周に沿って、領域(1)が設けられる。すなわち、かつら100では、図3に示すように、かつらベース10の外周に沿って設けられた内周線5と外周との間が領域(1)となっている。
このようにかつら100の外周部に、大きなカール径を有する毛片1を植設することで、かつらを装着していることを第3者が認識する可能性を低下することができる。
とりわけ、かつら装着者の自毛が残っている頭にかつらを装着する場合、カール径の大きい毛材1と自毛とは容易になじみ(容易に両者が混ざり合い)、この結果、かつらを装着していることを第3者が認識する可能性を顕著に低下することができる。
【0062】
領域(1)と領域(2)の幅については、例えばセクション毎に決定してよいが、好ましくは領域(2)の幅を1としたとき、領域(1)の幅を1.5〜4とすることが好ましい。大きいカール径を有し、ボリューム感をより増加させる毛片1が植設された領域(1)をより多くするとともに、毛片1を支持するのに十分な量の毛片2を提供できるからである。
そして、より好ましくは領域(2)の幅を1としたとき、領域(1)の幅は概ね2である。
【0063】
例えば、図3に示す天頂部12では、幅10mmの領域(1)と幅5mmの領域(2)とが、かつらベース10の前頭方向からかつらベースの中心C1を通り後頭部方向に向けて、互いに隣接して交互に配置されている。
【0064】
また、後頭部13、左側頭部14および右側頭部15では、かつらベース10の外周からかつらベース10の中心C1に向かって、かつらベース10の外周に沿って設けた幅5mmの領域(1)があり、更に中心から上方向および下方向に向けて幅が減少する(最大部分で幅約5mm)領域(1)を有し(すなわち、2つの領域(1)を併せて幅が5〜10mmの領域(1)を形成している)、その後に、幅5mmの領域(2)と幅10mmの領域(1)が交互に配置されている。
【0065】
なお、図3では、セクション11〜15内における領域(2)と領域(1)との交互配置について、図面のスペースの制約から、各セクションが有する領域(1)と領域(2)とが交互に配置されている形態が判る最小限の数の領域(1)と領域(2)しか示していない。
従って、各セクションにおいて、実際には、図3に示すよりも多くの数の領域(2)と領域(1)を有し、これらが交互に配置されてよいことに留意すべきである。
【0066】
前頭部11では、かつらベース10の外周からかつらベース10の中心C1に向かって、かつらベース10の外周に沿って設けた幅5mmの領域(1)があり、更に幅が広くなった部分を3箇所有する複雑な形状の領域(1)(最大部分で幅約5mm)を有し(すなわち、2つの領域(1)を併せて幅が5〜10mmの領域(1)を形成している)、その後に、幅5mmの領域(2)と幅10mmの領域(1)が交互に配置されている。
【0067】
すなわち、セクション11〜15は、いずれも上述した好ましい領域(2)と領域(1)の幅の比1:1.5〜1:4およびより好ましい幅の比1:2を満足している。
【0068】
図4は、かつら100と異なる形態のセクションを有するかつら200の上面図である。図3と同様に図4でもセクションの境界を実戦で示す。
かつら200は、かつら100と異なり、境界が曲線となっている5つセクション、前額部21、後頭部22、側周部23、頭頂部24および前頭部25を有する。
このようなセクションの配置は、図3に示す5つのセクションと異なり、人間の頭の形状に即した区分であり、植設した毛髪の毛分かれや、一見してかつらと判るような不自然な外観となることをより確実回避できること、より細かい毛髪の本数(密度)、長さ、色、カールの指示が可能になり、より満足度が高いかつらを得ることができる。
【0069】
セクション21〜25は、それぞれ領域(1)と領域(2)が互いに隣接して配置された、交互配置部を有している。
セクション21〜25内での領域(1)および領域(2)の配置は、それぞれのセクションの形状等に応じて任意に決定してよい。
または、図4に示すようにかつら100と同じ配置をそのまま用いてもよい。
【0070】
この場合、図4において点線で囲まれて示される1つの領域(1)および領域(2)の中には、2つ以上のセクションに跨っているものがある。
複数のセクションに跨って配置されている領域(1)では、その毛片1は、それぞれのセクション毎に決められたカール径、長さ、色、植設密度および太さ等を有する。従って、これらの特性がセクションによって異なれば、点線で囲まれた1つの領域(1)の中に、セクションに応じて異なる毛髪1が植設されることとなる。
同様に、複数のセクションに跨って配置されている領域(2)では、その毛片1は、それぞれのセクション毎に決められたカール径、長さ、色、植設密度および太さ等を有する。従って、これらの特性がセクションによって異なれば、点線で囲まれた1つの領域(2)の中に、セクションに応じて異なる毛髪2が植設されることとなる。
すなわち、点線で囲まれた1つの領域(1)は、実質的には、セクションの境界線により区切られた複数の領域(1)となり、同様に点線で囲まれた1つの領域(2)は、実質的には、セクションの境界線により区切られた複数の領域(2)となる。
【0071】
次にかつら100および200の製造方法を説明する。
以下に示す製造方法は、例であり、製造方法を限定することを意図したものではないことに留意されたい。
【0072】
先ず、かつらベース10を次の手順で作製する。
かつらベースがネット地を素材とするネット状かつらベースである場合、かつら装着者の頭部形状雄型の石膏の上に所望のネットを配置および固定して、その上から石膏の形状に容易に対応するとともに保持性を良好にするためにウレタン等の樹脂を有機溶剤で溶解した樹脂溶液を塗布した後乾燥させて、石膏から樹脂を外すことで、装着者の頭部形状に対応したかつらベースを得る。
【0073】
かつらベースが合成樹脂製のシート材を素材とする、所謂人工皮膚の場合、有機溶剤で溶解した樹脂溶液を塗布して乾燥後にかつら装着者の頭部形状雄型の石膏から樹脂を外して装着者の頭部形状に対応したかつらベースを得る。またはシート状の合成樹脂をかつら装着者の頭部形状雄型の石膏の上から被せて固定し、その後、加熱して樹脂を石膏の形状に対応するよう変形した後に、石膏から樹脂を外してかつら装着者の頭部形状に対応した、かつらベースを得る。
この時に使用される樹脂としては、柔軟性を有するポリウレタンやシリコーンなどの熱可塑性エラストマーが好ましい。
【0074】
次に毛片1および毛片2に用いる毛片または毛材(2つ折りして2本の毛片を得るために用いる毛髪であり、2つ折りする前の状態)を用意する。
用いる毛片(または毛材)としては、ポリアミド樹脂等から成る人工毛髪等の既知の人工毛髪もしくは人毛等の天然毛髪またはこれらの両方を用いてよい。
【0075】
これらの毛片または毛髪は、それぞれ毛片1および毛片2(かつらがセクションを有する場合にはそれぞれのセクションの毛片1および毛片2)として適切な、材質、太さ、長さ、色等の特性を有している。
なお、毛片1および毛片2のカール径については、かつらベース10に毛片1および毛片2を植設した後にドライヤー等で加熱してカール付けをすることで所望の値としてよい。
しかし、好ましくは、例えば、かつらベース10に植設する前に毛片または毛材を所定の直径を有するパイプに巻き付けた後、加熱保持する等により、予め所定のカール径を付与することが好ましい。
植設後に、第1のカール径および第2のカール径のような領域毎に異なるカール径となるようにカール付けするよりも生産性に優れるからである。
【0076】
次に、用意した毛片(または毛材)をかつらベース10に植設する。
かつらベース10には、予め、セクション(設ける場合)および領域(1)と領域(2)と成る部分をそれぞれ、識別できるようにしておき、適切な毛片(毛材)を植設する。
【0077】
例えば、図1に示すように、かつらベース10がネットであり、毛片1および毛片2が毛材を概ね中央部から二つ折りして得ている場合、鉤針を用いて、二つ折りした毛材の折り返し部を、ネットを構成するフィラメント(例えば横方向フィラメント8Aおよび/または縦方向のフィラメント8B)に結びつけることにより毛材1および毛材2を植設することができる。
フィラメントに毛材を結着する方法は、例えば特開2007−92202号公報に開示されている方法を含む、かつらの製造に用いられる既知の方法を用いてよい。
【0078】
かつらベースが人工皮膚より成る場合、かつらベースに鉤針を挿通し、鉤針の先端の鉤部に2つ折にした毛材のループ部(折り返し部)を引っ掛け、鉤針を旋回してループとの係合が解けない状態で、先端鉤部を毛材の解放端部側に引っ掛けてループ中から抜き出す等の既知の方法を用いてかつらベースに毛材を結び付ける。
【0079】
かつらベースに毛片または毛材を植設する方法は、これに限定されるものではなく、結着および接着を含む、かつら製造に用いられる既知の任意の方法を用いてよい。
【0080】
なお、領域(1)または領域(2)の幅が広い場合は、1つ領域の幅方向を2つ以上の小領域に区分して、1つの小領域内に全ての毛片1または毛片2を植設した後、次の小領域に毛片1または毛片2を植設してもよい。
すなわち、例えば、図3に示すかつら100において、セクション11、セクション12、及びセクション13では、幅が1cmの領域(1)に毛髪1を植設する場合、例えば幅5mmの2つの小領域に区分けし、1つの小領域に必要な毛片1を全て植設した後、もう1つの小領域に毛片1を植設してよい。
【0081】
植設は、多くの場合、上述のように鉤針を用いて人手により行われることが多く、同じ毛片(または毛材)を植設する1つの領域であっても、幅が広い場合(例えば、幅が5mm程度以上の場合)、小領域に小分けした方が、仕上がりがより綺麗(自然)になるからである。
【0082】
上述のように、植設された毛材または毛片が予め所定のカール径を有する場合は、以上の工程により本願発明に係るかつらを得ることができる。
【0083】
一方、予め毛片(または毛材)にカール付けを行っていない場合は、更に、ドライヤー、アイロン等を用いて領域(1)および領域(2)毎に、毛片が所望のカール径を有するように、カール付けを行うことで本願発明に係るかつらを得ることができる。
【符号の説明】
【0084】
1 毛片
2 毛片
5 内周線
8A 横方向のフィラメント
8A 縦方向のフィラメント
10 かつらベース
11 前頭部
12 天頂部
13 後頭部
14 左側頭部
15 右側頭部
100、200 かつら

【特許請求の範囲】
【請求項1】
人工毛髪または天然毛髪からなり、第1のカール径を有する複数の第1の毛髪が植設されたかつらベースの第1領域と、
人工毛髪または天然毛髪からなり、前記第1のカール径よりも小さい第2のカール径を有する複数の第2の毛髪が植設された前記かつらベースの第2領域と、
を含み、
前記第1領域と前記第2領域が隣接して交互に配置された交互配置部を有することを特徴とするかつら。
【請求項2】
前記交互配置部を複数有することを特徴とする請求項1のかつら。
【請求項3】
前記かつらベースが複数のセクションに区分けされ、該複数のセクションの1つが前記交互配置部を有し、
前記複数のセクションの他の1つが、人工毛髪または天然毛髪からなり、第1のカール径と異なる第3のカール径を有する複数の第3の毛髪が植設された第3領域と、人工毛髪または天然毛髪からなり、前記第3のカール径よりも小さい第4のカール径を有する複数の第4の毛髪が植設された第4領域とが、隣接して交互に配置された第2交互配置部を有することを特徴とする請求項1または2に記載のかつら。
【請求項4】
前記かつらベースが複数のセクションに区分けされ、該複数のセクションの1つが前記交互配置部を有し、
前記複数のセクションの他の1つが、前記第1領域と、人工毛髪または天然毛髪からなり、前記第1のカール径よりも小さく、かつ前記第2のカール径と異なる第5のカール径を有する複数の第5の毛髪が植設された第5領域とが、隣接して交互に配置された第3交互配置部を有することを特徴とする請求項1または2に記載のかつら。
【請求項5】
前記かつらベースの外周に沿って、前記第1の領域が形成されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のかつら。
【請求項6】
前記第1のカール径が20mm〜80mmであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のかつら。
【請求項7】
前記第2のカール径が前記第1のカール径の40%〜70%であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のかつら。
【請求項8】
前記第2領域の幅と前記第1領域の幅との比が、1:1.5〜1:4であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載のかつら。
【請求項9】
前記第1領域は、前記第1の毛髪が1平方センチメートルあたり50本〜90本植設されていることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載のかつら。
【請求項10】
前記第2領域は、前記第2の毛髪が1平方センチメートルあたり50本〜90本植設されていることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載のかつら。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−36134(P2013−36134A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−172678(P2011−172678)
【出願日】平成23年8月8日(2011.8.8)
【出願人】(000126676)株式会社アデランス (49)