説明

かび臭除去用粉末活性炭

【課題】 浄水処理においてかび臭を効率よく吸着除去できる活性炭を提供する。
【解決手段】 かび臭除去用活性炭は、直径1.8nm以下の細孔容積が0.28ml/g以上(例えば、0.28〜0.5ml/g)、かつメジアン径が30μm以下(例えば、1〜30μm)の粉末状である。活性炭の比表面積は700〜2000m2/gである。活性炭は、水蒸気賦活された木質系活性炭であってもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水道原水などのかび臭を除去するのに有用な粉末活性炭に関する。
【背景技術】
【0002】
不純物成分や臭気成分を除去するため、水道原水の浄化には、粉末状又は粒状活性炭が使用されている。また、平成16年4月より、かび臭物質が水質基準項目に加えられ、浄水処理におけるかび臭対策が一層重要になっている。これらのかび臭物質の処理方法として、緩速ろ過、中間塩素処理なども有効であるが、粉末活性炭、粒状活性炭による処理が広く用いられている。
【0003】
さらに、近年、一般家庭においても、飲料水および水道原水に対する関心が高まっており、残留塩素、トリハロメタン、かび臭などを除去するため、各家庭において、浄水器が設置されている。
【0004】
特開平6−343951号公報(特許文献1)には、活性炭カートリッジを内蔵した浄水器であって、前記活性炭カートリッジが一定の細孔径に揃えられた活性炭素繊維と、これとは異なる細孔径に揃えられた活性炭素繊維とをエレメントとした浄水器が開示され、上記吸着法による活性炭素繊維の細孔分布の中心細孔直径を、除去対象物の分子径の約3倍とすることも開示されている。この文献には、かび臭原因物質としての2−メチルイソボルネオール(分子径0.9nm)を除去するため中心細孔直径2.7nmの活性炭素繊維と、クロロホルム(分子径0.5nm)を除去するため中心細孔直径1.5nmの活性炭素繊維とを用いることも記載されている。
【0005】
特開平7−171385号公報(特許文献2)には、比表面積1500m2/g以上、水蒸気吸着法による細孔半径10〜20Åの細孔が占める累積細孔容積が0.2cc/g以上、水蒸気吸着法による細孔半径10〜20Åの細孔が占める累積細孔容積が細孔半径100Å以下の細孔が占める累積細孔容積の50%以上である繊維状活性炭からなるかび臭除去材が開示されている。特開平11−240707号公報(特許文献3)には、直径が20Å以上の細孔の比表面積が30〜500m2/gであり、かつ直径が20Å未満の細孔の比表面積が600〜2500m2/gである活性炭が開示され、この活性炭は繊維状に形成されていること、かび臭及びトリハロメタン除去材であることも記載されている。特開平11−240708号公報(特許文献4)には、平均細孔径が24Å以上であり直径が20Å以上の細孔の比表面積が500m2/g以上である繊維状活性炭が開示され、かび臭除去材として有用であることも記載されている。
【0006】
これらの繊維状活性炭は浄水器の用途に適している。しかし、これらの活性炭は、比較的高価であるとともに、未だかび臭を高い選択率で効率よく吸着除去することが困難である。そのため、水道原水のかび臭を有効に除去するためには、繊維状活性炭の使用量を増加する必要があり、経済的に不利である。特に、家庭的に処理するためには有効であったとしても、浄水処理場などで多量の水道原水の水質を改善するには十分でない。
【特許文献1】特開平6−343951号公報(特許請求の範囲、段落番号[0013]〜[0015])
【特許文献2】特開平7−171385号公報(特許請求の範囲)
【特許文献3】特開平11−240707号公報(特許請求の範囲)
【特許文献4】特開平11−240708号公報(特許請求の範囲)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、本発明の目的は、かび臭を有効に除去できる活性炭及びその製造方法を提供することにある。
【0008】
本発明の他の目的は、浄水処理においてかび臭を高い選択率で効率よく吸着除去できる活性炭及びその製造方法を提供することにある。
【0009】
本発明のさらに他の目的は、安価で多量の水道原水を処理するのに適したかび臭除去性能の高い水道原水用活性炭及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、原料、製造条件によって活性炭に種々の細孔特性を付与できることに着目し、前記課題を達成するため細孔特性などとかび臭の吸着除去について鋭意検討した結果、特定の細孔容積を有する活性炭を微粉末状にすると、かび臭を極めて高い効率で吸着除去できること、特に木質系活性炭では賦活により特定の細孔径の細孔容積が増大し、かび臭を高い効率で吸着除去できることを見いだし、本発明を完成した。
【0011】
すなわち、本発明のかび臭除去用粉末活性炭は、直径1.8nm以下の細孔容積が0.28ml/g以上、かつメジアン径が30μm以下の粉末状である。この活性炭は木質系活性炭であってもよい。また、活性炭は水蒸気賦活された活性炭であってもよい。前記粉末活性炭の粒子径は特に制限されず、例えば、メジアン径が15μm以下であってもよい。例えば、活性炭は、比表面積が700〜2000m2/g、直径1.8nm以下の細孔容積が0.28〜0.5ml/gであってもよい。代表的な活性炭としては、水蒸気賦活された木質系粉末活性炭が例示でき、直径1.8nm以下の細孔容積は0.3〜0.45ml/g、比表面積は1000〜1600m2/g、メジアン径は1〜30μm(例えば、2〜15μm)程度であってもよい。
【0012】
本発明は、直径1.8nm以下の細孔容積が0.28ml/g以上である活性炭を、メジアン径30μm以下に粉砕し、かび臭除去用粉末活性炭を製造する方法も含む。この方法において、水蒸気賦活により得られた木質系活性炭を粉砕してもよい。さらに本発明は、前記粉末活性炭で被処理液体を処理し、かび臭を除去する方法も包含する。この方法において被処理液体は水道原水であってもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明では、特定の細孔容積を有し、かつ微粉末状の活性炭を用いるため、かび臭を有効に除去できる。そのため、浄水処理においてかび臭を高い選択率で効率よく吸着除去でき、水道原水用の活性炭として有用である。さらに、安価な木質系活性炭を利用して、多量の浄水処理をするのに適している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の活性炭の原料は、一般的に用いられる炭化可能な原料である限り特に制限されない。得られる活性炭としては、例えば、歴青質活性炭(石炭、コークス、石油重質油、ピッチなどの原料から得られる活性炭)、植物系活性炭[木質系活性炭(木材、木粉、おが屑、竹などの原料から得られる活性炭)、果実殻活性炭(やし殻、パームやし殻、クルミ殻、もみ殻、キャンドルナッツ殻などの原料から得られる活性炭)、セルロース系活性炭など]、合成樹脂系活性炭(ポリアクリロニトリル、フェノール樹脂、フラン樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂などの原料から得られる活性炭)、パルプ廃液系活性炭などが例示できる。活性炭の原料(炭素質原料も含む)の形態は特に制限されず、無定形、ブロック状、粉粒状、繊維状(レーヨン、ポリエステル、フェノール樹脂繊維などの半合成繊維(再生繊維)や合成繊維、麻、綿などの天然繊維など)などであってもよい。これらの原料は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。好ましい活性炭は、植物系活性炭(例えば、木粉、おが屑、木材、やし殻、もみ殻、パームやし殻、キャンドルナッツ殻などの原料から得られる活性炭)、特に木質系活性炭(木粉、おが屑などの原料から得られる活性炭)である。植物系活性炭、特に木質系活性炭では、賦活(水蒸気賦活など)により特定の細孔サイズの細孔容積を増大でき、かび臭気成分を効率よく吸着除去できる。
【0015】
本発明の活性炭は、特定の細孔サイズについて所定の細孔容積を有しており、しかも粉末状(又は微粒子状)である。すなわち、本発明の活性炭の直径1.8nm以下の細孔容積は、0.28ml/g以上(0.28〜0.5ml/g)、好ましくは0.30ml/g以上(0.30〜0.45ml/g)、さらに好ましくは0.33ml/g以上(0.33〜0.40ml/g)であり、0.35ml/g以上(例えば、0.35〜0.4ml/g)であってもよい。前記細孔容積が小さいと、かび臭気成分に対する吸着除去能が低下し、かび臭を有効に除去できなくなる。細孔容積は、窒素吸着等温線から直径1.8nm以下の細孔容積をクランストン−インクレイの方法によって計算して求めたものである。
【0016】
さらに、かび臭を除去するためには、粒度の小さな活性炭が有利である。本発明の活性炭の粒度は、メジアン径が30μm以下(例えば、1〜30μm)程度の範囲から選択でき、例えば、25μm以下(例えば、1〜25μm)、好ましくは15μm以下(例えば、2〜15μm)、さらに好ましくは13μm以下(例えば、3〜13μm)程度であり、特に4〜12μm程度であってもよい。粒度の大きな活性炭を用いると、かび臭気成分に対する吸着除去能が低下し、かび臭を有効に除去できなくなる。
【0017】
活性炭の比表面積は、例えば、700〜2000m2/g、好ましくは800〜1800m2/g(例えば、900〜1700m2/g)、さらに好ましくは1000〜1600m2/g(例えば、1100〜1500m2/g)程度であってもよい。なお、比表面積が大きくても前記細孔容積が小さかったり粒度が大きすぎると、かび臭を有効に除去できなくなる。比表面積は、窒素吸着等温線を測定し、BET法より算出したものである。
【0018】
本発明の粉末活性炭は、種々の方法、例えば、炭素質化可能な原料を炭化し、必要により整粒した後、賦活処理し、洗浄・乾燥し、必要より粉砕処理することにより得ることができる。例えば、粉末活性炭は、所定の粒子サイズを有する炭素質原料(又は炭化物)を賦活処理し、必要により洗浄、乾燥して製造してもよいが、通常、前記特定の細孔容積を有する活性炭(賦活した活性炭)を粉砕することにより製造する場合が多い。炭化処理は原料に応じて慣用の方法、例えば、400〜1000℃(例えば、450〜900℃、特に500〜800℃)程度で行うことができ、必要であれば、炭化処理に先立って酸化により原料の表面を酸化又は硬化処理してもよい。
【0019】
活性炭の賦活方法も特に限定されず、例えば、「活性炭工業」、重化学工業通信社(1974),第23頁〜第37頁に記載の方法が採用できる。通常、ハロゲンガス以外の賦活剤で賦活した活性炭、例えば、水蒸気、酸素、炭酸ガスなどの活性ガスによる賦活炭や、リン酸、塩化亜鉛などの薬品を用いる薬品賦活炭などが用いられる。これらの賦活方法のうち、水蒸気賦活、酸素賦活、炭酸ガス賦活などのガス賦活法、特に水蒸気賦活法が好ましい。特に、木質系炭素材を賦活(特に水蒸気賦活)すると、前記直径1.8nm以下の細孔が発達し、その細孔容積を大きく増大でき、かび臭を有効に除去できる。賦活条件は、前記特性の活性炭が得られる限り前記賦活方法に応じて選択でき、通常、温度800〜1200℃(例えば、850〜1150℃)程度で行うことができる。
【0020】
賦活した活性炭は、そのまま、あるいは粉砕して粉末状の形態で用いられる。粉砕には、通常、活性炭の粉砕に用いられる粉砕装置、例えば、「化学工学便覧」、丸善(1999),第845頁〜第852頁に記載の粉砕機が利用できる。このような粉砕機としては、例えば、エロフォールミル、堅型ローラーミル、ハンマーミル、ブレードミル、ピンミルなどの高速回転ミル、ボールミル、ジェットミルなどが例示できる。微粒子状又は粉末状活性炭(水蒸気賦活により得られた木質系粉末活性炭など)は、かび臭の除去に有効である。
【0021】
本発明の粉末活性炭は、単独で使用してもよく、必要により、ハロゲン化物や他の臭気成分を除去するための他の吸着剤(例えば、ゼオライト、シリカなどのケイ酸塩系吸着剤、薬品無担持活性炭、薬品担持活性炭などの活性炭など)と組み合わせて使用してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0022】
本発明の粉末活性炭は、かび臭の除去能が高いため、種々の被処理流体の処理に利用でき、例えば、空気などの被処理気体(家庭、店舗、工場、浄水場などのかび臭を含む気体)、被処理液体(例えば、家庭などでの飲料水、工業用水など)である場合が多い。例えば、湖水処理場、廃水処理場、浄水場などでかび臭を除去するのに適しており、特に、液体(飲料水や浄水などの飲料に供する被処理水、特に水道原水)の処理に有効である。浄水場などで浄水処理に利用すると、かび臭のない品質の高い水道原水を調製できる。
【実施例】
【0023】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0024】
活性炭には、その原料、製造条件によって種々の細孔特性を付与できる。そこで、種々の活性炭について、2つのかび臭成分(2−メチルイソボルネオール(2−MIB)及びジェオスミン)の平衡吸着量を測定し、活性炭の特性とかび臭の除去との関係について検討した。
【0025】
実施例1
ヒノキ材おが屑を、450℃まで昇温して炭化して素炭を得た。この素炭を流動式電気炉に入れ、850℃で50分間水蒸気賦活して、比表面積935m2/g、1.8nm以下の細孔容積が0.30ml/gである活性炭を得た。この活性炭を振動ボールミルを用いて、3分間粉砕し、メジアン径5μmの活性炭No.1を得た。
【0026】
実施例2
実施例1と同様にヒノキ材の素炭を流動式電気炉に入れ、850℃で60分間水蒸気賦活して、比表面積1033m2/g、1.8nm以下の細孔容積が0.31ml/gである活性炭を得た。この活性炭を振動ボールミルを用いて、3分間粉砕し、メジアン径5μmの活性炭No.2を得た。
【0027】
実施例3
実施例1と同様にヒノキ材の素炭を流動式電気炉に入れ、850℃で60分間水蒸気賦活して、比表面積1033m2/g、1.8nm以下の細孔容積が0.31ml/gである活性炭を得た。この活性炭を振動ボールミルを用いて、1分間粉砕し、メジアン径12μmの活性炭No.3を得た。
【0028】
実施例4
実施例1と同様にヒノキ材の素炭を流動式電気炉に入れ、850℃で60分間水蒸気賦活して、比表面積1033m2/g、1.8nm以下の細孔容積が0.31ml/gである活性炭を得た。この活性炭を振動ボールミルを用いて、30秒間粉砕し、メジアン径25μmの活性炭No.4を得た。
【0029】
実施例5
実施例1と同様にヒノキ材の素炭を流動式電気炉に入れ、850℃で75分間水蒸気賦活して、比表面積1203m2/g、1.8nm以下の細孔容積が0.36ml/gである活性炭を得た。この活性炭を振動ボールミルを用いて、3分間粉砕し、メジアン径6μmの活性炭No.5を得た。
【0030】
実施例6
実施例1と同様にヒノキ材の素炭を流動式電気炉に入れ、850℃で90分間水蒸気賦活して、比表面積1442m2/g、1.8nm以下の細孔容積が0.37ml/gである活性炭を得た。この活性炭を振動ボールミルを用いて、1分間粉砕し、メジアン径11μmの活性炭No.6を得た。
【0031】
実施例7
原料としてココナッツやし殻(フィリピン共和国南サンボアンガ州産)を使用し、このやし殻を550℃で炭化した後、粒径2.36〜0.50mmの範囲に破砕して整粒し、流動式電気炉に入れ、850℃で60分間水蒸気賦活して、比表面積1036m2/g、細孔容積0.39ml/gである活性炭を得た。この活性炭を振動ボールミルを用いて、5分間粉砕し、メジアン径5μmの活性炭No.7を得た。
【0032】
実施例8
原料として中国山西省大西炭を使用し、この石炭を粒径2.36〜1.18mmの範囲に破砕して整粒し、350〜550℃まで1時間かけて昇温して炭化した後、流動式電気炉に入れ、850℃で90分間水蒸気賦活して、比表面積1209m2/g、細孔容積0.37ml/gである活性炭を得た。この活性炭を振動ボールミルを用いて、4分間粉砕し、メジアン径8μmの活性炭No.8を得た。
【0033】
比較例1
実施例1と同様にヒノキ材の素炭を流動式電気炉に入れ、850℃で50分間水蒸気賦活して、比表面積935m2/g、1.8nm以下の細孔容積が0.30ml/gであるメジアン径40μmの活性炭No.9を得た。
【0034】
比較例2
実施例1と同様にヒノキ材の素炭を流動式電気炉に入れ、850℃で45分間水蒸気賦活して、比表面積890m2/g、1.8nm以下の細孔容積が0.26ml/gである活性炭を得た。この活性炭を振動ボールミルを用いて、1分間粉砕し、メジアン径10μmの活性炭No.10を得た。
【0035】
比較例3
乾燥した木粉50gに60重量%濃度の塩化亜鉛水溶液95gを加えてよく混合し、るつぼに入れ蓋をした。るつぼを電気炉に入れ、100℃〜250℃まで2時間、250℃〜530℃まで1時間かけて昇温し、そのままの温度で30分保持した後冷却した。冷却物をろ布の付いた洗浄槽にいれ、塩酸50mlを水0.2Lで希釈した水溶液を加え、2時間かくはん洗浄し、水切りした後、50℃の水を0.25L/時間の割合で4時間通水して洗浄した。この洗浄活性炭を115℃±5℃に保った電気乾燥機で乾燥した。乾燥した活性炭を、振動ボールミルを用いて30秒粉砕して、メジアン径12μmの活性炭No.11を得た。
【0036】
なお、2−MIB吸着量及びジェオスミン吸着量、メジアン径および比表面積、細孔容積は次のようにして測定した。
【0037】
[2−MIB吸着量及びジェオスミン吸着量]
2−MIB吸着量及びジェオスミン吸着量は、「JWWA K113 2001 2−メチルイソボルネオール(2−MIB)価の測定方法」に基づいて吸着等温線を作成し、2−MIBの残存濃度20ng/lにおける平衡吸着量で表記した。具体的には、以下の通りである。
【0038】
メスフラスコに所定量の活性炭を計量し、水を添加し、激しく混和し活性炭スラリーを得る。活性炭の濃度は吸着後の2−MIB残存濃度が20ng/lの前後となるように調整する。共栓三角フラスコに2−MIB標準液(400ng/l)を50ml分取し、前記活性炭スラリー0ml、1ml、2〜10mlをすばやく添加し、水で全量100mlとする(試験液量100ml)。次に、振盪機を用いて25℃(吸着温度)で60分間120〜140rpmで振盪し、その後30分静置し、その上澄み液を、メンブランフィルターを用いて加圧ろ過し、ろ液を検水とする。
【0039】
検水10mlをサンプルチューブに入れ、塩析剤である塩化ナトリウム3.0gを加え、島津製作所(株)製AOC−5000 GCMS−QP2010で、SPMEファイバー法を用い、65℃で30分間振盪抽出し、カラムDB−5で注入口温度230℃、カラム温度40℃(3分Hold)−250℃(15℃/分)、インターフェイス250℃、イオン源200℃の条件で分析する。残存濃度に対して、平衡吸着量をプロットし、吸着等温線を作成する。
【0040】
ジェオスミンに関しても、同様の手法で、吸着等温線を作成する。
【0041】
[粒度(メジアン径)]
活性炭約0.3gを界面活性剤で懸濁し、分散媒に水を使用し分散液を調製する。粒度分布測定装置(堀場製作所(株)製,レーザ回折粒度分布測定装置LA−300)を用い、透過率70〜80%の範囲になるように分散液を少量ずつ加える。試料溶液に当てたレーザー光の回折光強度から、フラウンホーファー回折理論により粒度分布を解析し、個数基準での50%粒子径をメジアン径とする。その際、活性炭の屈折率は、1.50−0.40iとした。
【0042】
[比表面積、細孔容積]
マイクロメリティクス社製ASAP2405を用いて−196℃における窒素吸着等温線を測定し、比表面積はBET法より算出し、細孔容積はクランストン−インクレイの方法によって直径30〜1.2nmの区間の細孔容積を順に計算して求める。
【0043】
結果を表1に示す。なお、表中、細孔容積は1.8nm以下の細孔容積を示し、MIBは「2−MIB(2−メチルイソボルネオール)」、GEOは「ジェオスミン」を示す。
【0044】
【表1】

【0045】
表1から明らかなように、比較例に比べ、実施例ではかび臭成分に対する吸着能が高い。特に、石炭系活性炭、やし殻系活性炭、木質系活性炭の順にかび臭成分に対する吸着能が高く、中でも水蒸気賦活した木質系活性炭は高い吸着能を示した。さらに、木質系活性炭に関して、2−MIB吸着量は、直径1.8nm以下の細孔容積との相関性が高く、賦活度と大きく関係し、細孔容積が大きくなるにつれて2−MIB吸着量も増大した。これに対して、同じ直径1.8nm以下の細孔容積を持つ活性炭であっても、やし殻系活性炭や石炭系活性炭は、2−MIB吸着性能が低い値を示した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直径1.8nm以下の細孔容積が0.28ml/g以上、かつメジアン径が30μm以下であるかび臭除去用粉末活性炭。
【請求項2】
活性炭が木質系活性炭である請求項1記載の粉末活性炭。
【請求項3】
活性炭が水蒸気賦活された活性炭である請求項1又は2記載の粉末活性炭。
【請求項4】
メジアン径が15μm以下である請求項1〜3のいずれかに記載の粉末活性炭。
【請求項5】
比表面積が700〜2000m2/g、直径1.8nm以下の細孔容積が0.28〜0.5ml/gである請求項1〜4のいずれかに記載の粉末活性炭。
【請求項6】
水蒸気賦活された木質系粉末活性炭であって、比表面積が1000〜1600m2/g、直径1.8nm以下の細孔容積が0.30〜0.45ml/g、メジアン径が1〜30μmである請求項1記載の粉末活性炭。
【請求項7】
直径1.8nm以下の細孔容積が0.28ml/g以上である活性炭を、メジアン径30μm以下に粉砕し、請求項1記載のかび臭除去用粉末活性炭を製造する方法。
【請求項8】
水蒸気賦活により得られた木質系活性炭を粉砕する請求項7記載の方法。
【請求項9】
請求項1記載の粉末活性炭で被処理液体を処理し、かび臭を除去する方法。
【請求項10】
被処理液体が水道原水である請求項9記載の方法。

【公開番号】特開2006−282441(P2006−282441A)
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−103928(P2005−103928)
【出願日】平成17年3月31日(2005.3.31)
【出願人】(503140056)日本エンバイロケミカルズ株式会社 (95)
【Fターム(参考)】