説明

かみあい伝達誤差の測定装置および測定方法

【課題】 所定の負荷トルクを安定して付与できるとともに装置をコンパクトに維持しつつかみあい伝達誤差を連続測定でき、且つ負荷トルクの向きが異なる場合のかみあい伝達誤差を簡単に測定できるようにする。
【解決手段】 駆動用電動モータ28により第1回転軸20を一定の回転速度で回転駆動する一方、摩擦係合部材32上に負荷錘38を載置するとともに、その負荷錘38の重量に応じて摩擦係合部材32と摩擦回転体12との間に生じる摩擦力により第2回転軸22に付与される負荷トルクをトルクセンサ30によって検出し、所定の負荷トルクが付与されるように負荷錘38の重量を調節する。そして、所定の負荷トルクが付与されるようになったら、第1回転軸20および第2回転軸22の回転角をそれぞれロータリエンコーダ24、26により検出し、その負荷トルクにおけるかみあい伝達誤差を測定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はかみあい伝達誤差の測定装置および測定方法に係り、特に、所定の負荷トルクを安定して付与できるとともに装置をコンパクトに維持しつつかみあい伝達誤差を連続測定でき、且つ負荷トルクの向きが異なる場合のかみあい伝達誤差を簡単に測定できる測定装置および測定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
互いに噛み合う複数の歯車を有する歯車装置を介して連結された第1回転軸および第2回転軸に所定の負荷トルクを付与した状態で、その第1回転軸を回転駆動して前記歯車装置を噛合い回転させるとともに、第1回転軸および第2回転軸の回転角をそれぞれロータリエンコーダにより検出して歯車装置のかみあい伝達誤差を測定する装置が知られている。特許文献1に記載の装置はその一例で、負荷用電動モータで第2回転軸に負荷トルクを付与しつつ、駆動用電動モータで第1回転軸を回転駆動してかみあい伝達誤差を測定するようになっており、負荷トルクを付与する負荷用電動モータが起こす回転変動の測定値への影響を排除するために流体継手や慣性体が設けられている。
【0003】
一方、このように流体継手や慣性体が設けられると、その背反として負荷トルクに変動が生じてしまうことから、負荷錘の重力で負荷トルクを付与することが提案されている。特許文献2に記載の装置はその一例で、第1回転軸や第2回転軸に一体的に設けられた回転体に負荷錘を吊り下げて負荷トルクを付与するようになっており、このようにすれば一定の負荷トルクを安定して付与することができる。
【0004】
なお、「かみあい伝達誤差」は、互いに噛み合う一対の歯車等の歯車装置を介して連結された第1回転軸および第2回転軸が、ギヤ比等に応じて相対回転させられる際に、歯面の形状誤差や歯のたわみなどに起因して生じる相互の回転角のずれであり、互いに噛み合う歯が異なれば相違するとともに、負荷トルクによっても変化する。
【特許文献1】特開平6−74868号公報
【特許文献2】特開平7−120353号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このように負荷錘を吊り下げて負荷トルクを付与する場合には、第1回転軸や第2回転軸の回転に伴って負荷錘が上昇或いは下降するため、歯車装置を何回転もさせてかみあい伝達誤差を連続測定することができないという問題があった。すなわち、例えば歯数が50と53の一対の歯車から成る歯車装置の場合、1回転当たりのかみあい伝達誤差パターンは50×53=2659通りあり、その総てのかみあい伝達誤差パターンを測定するためには2650回転させる必要があるが、負荷錘を付け替えることなく連続して測定するためには装置が極めて大型になり、実質的に不可能である。特に、大きな負荷トルクを付与するためには、負荷錘を吊るす回転体の径寸法を大きくする必要があり、1回転当たりの負荷錘の上下動が一層大きくなって、装置が一層大型になるとともに、連続測定可能な回転数が少なくなる。
【0006】
また、駆動状態と被駆動状態、或いは正回転駆動と逆回転駆動などのように反対側の歯面が接触する動力伝達時のかみあい伝達誤差を測定する場合には、負荷錘の吊り下げ位置を変更するか歯車装置を反対向きに付け替えるという面倒な作業が必要であった。
【0007】
本発明は以上の事情を背景として為されたもので、その目的とするところは、所定の負荷トルクを安定して付与できるとともに装置をコンパクトに維持しつつかみあい伝達誤差を連続測定でき、且つ負荷トルクの向きが異なる場合のかみあい伝達誤差を簡単に測定できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる目的を達成するために、第1発明は、互いに噛み合う複数の歯車を有する歯車装置を介して連結された第1回転軸および第2回転軸に所定の負荷トルクを付与した状態で、その第1回転軸を回転駆動して前記歯車装置を噛合い回転させるとともに、第1回転軸および第2回転軸の回転角をそれぞれロータリエンコーダにより検出してその歯車装置のかみあい伝達誤差を測定する装置であって、(a) 前記第1回転軸を回転駆動する駆動用電動モータと、(b) 前記第2回転軸の回転に伴って機械的に回転させられる摩擦回転体と、(c) 前記摩擦回転体に押圧されることにより摩擦力でその摩擦回転体に回転抵抗を与え、前記第2回転軸に負荷トルクを付与する摩擦係合部材と、(d) その摩擦係合部材を前記摩擦回転体に押圧する押圧手段と、を有することを特徴とする。
【0009】
第2発明は、互いに噛み合う複数の歯車を有する歯車装置を介して連結された第1回転軸および第2回転軸に所定の負荷トルクを付与した状態で、その第1回転軸を回転駆動して前記歯車装置を噛合い回転させるとともに、第1回転軸および第2回転軸の回転角をそれぞれロータリエンコーダにより検出してその歯車装置のかみあい伝達誤差を測定する方法であって、(a) 前記第2回転軸の回転に伴って機械的に回転させられる摩擦回転体を備えており、(b) 前記第1回転軸を回転駆動して前記歯車装置を噛合い回転させる際に、前記摩擦回転体に摩擦係合部材を押圧することにより、摩擦力でその摩擦回転体に回転抵抗を与えるとともに前記第2回転軸に負荷トルクを付与することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
このようなかみあい伝達誤差の測定装置或いは測定方法においては、第2回転軸の回転に伴って機械的に回転させられる摩擦回転体に摩擦係合部材が押圧されることにより、摩擦力でその摩擦回転体に回転抵抗が与えられるとともに第2回転軸に負荷トルクが付与されるため、その摩擦力すなわち摩擦回転体に対する摩擦係合部材の押圧力によって定まる一定の負荷トルクを安定して付与することが可能で、かみあい伝達誤差を高い精度で測定することができる。かみあい伝達誤差に伴う摩擦回転体の回転速度変化によって動摩擦係数が変化し、厳密には摩擦力更には負荷トルクが変動する可能性があるが、かみあい伝達誤差による回転変動は極微小であるため、そのような動摩擦係数の変化による影響は無視できる。
【0011】
また、このように摩擦係合部材を摩擦回転体に押圧することにより負荷トルクが付与されるため、第1回転軸や第2回転軸を何回転もさせてかみあい伝達誤差を連続測定することが可能で、例えば歯車装置の総てのかみあい伝達誤差パターンを連続測定することができるとともに、そのような装置をコンパクトに構成できる。
【0012】
また、第1回転軸を逆回転させれば負荷トルクも反対向きになるため、例えば駆動状態と被駆動状態、或いは正回転駆動と逆回転駆動などのように反対側の歯面が接触する動力伝達時のかみあい伝達誤差を容易に測定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明は、歯の噛み合い状態を解析するものであるため、例えば歯車の1ピッチ分だけ噛合い回転させてかみあい伝達誤差を測定するだけでも良く、必ずしも1回転させる必要はないが、1回転させれば全ての噛合い歯のかみあい伝達誤差を解析することができる。また、互いに噛み合う一対の歯車の歯数が相違する場合には、1回転毎に互いに噛み合う噛合い歯が変化するため、その1回転毎のかみあい伝達誤差パターンが相違し、そのかみあい伝達誤差パターンを総て測定する場合には、例えば一対の歯車の歯数を掛け算した回転数だけ回転させてかみあい伝達誤差を測定すれば良い。
【0014】
かみあい伝達誤差を測定すべき歯車装置は、第1回転軸および第2回転軸にそれぞれ取り付けられるとともに互いに噛み合わされた一対の歯車であっても良いが、互いに噛み合う2対以上の歯車や遊星歯車装置、或いは傘歯車式の差動歯車装置等を有するものでも良く、例えば車両用の変速装置など種々の歯車装置のかみあい伝達誤差測定に本発明は適用できる。
【0015】
第2回転軸の回転に伴って機械的に回転させられる摩擦回転体は、第2回転軸に直接取り付けられて一体的に回転させられるものでも良いし、ベルトおよびプーリや複数の噛合い歯車等から成る連動装置を介して機械的に連結され、第2回転軸の回転に連動して回転させられるものでも良い。連動装置は、変速機のように回転速度変化を伴うものでも良く、これにより摩擦回転体の回転抵抗(摩擦力)を増幅して第2回転軸に伝達することもできる。
【0016】
摩擦回転体は、例えば円板形状のように円筒外周面を有して構成され、その円筒外周面に摩擦係合部材が押圧されるようにすることが望ましいが、板状の回転体の平坦な側面に摩擦係合部材を押圧して摩擦力を発生させることもできる。摩擦回転体および摩擦係合部材は、互いに押圧されることによって所定の摩擦力を発生する種々の摩擦材料にて構成される。
【0017】
摩擦回転体に摩擦係合部材を押圧する押圧手段は、例えば摩擦回転体の上方に配置された摩擦係合部材の上に載置され、重力の作用で押圧する負荷錘や、スプリング、或いは油圧やエア圧で押圧するものなど、種々の態様が可能であるが、重力の作用で押圧する負荷錘は、各部の回転による振動の影響を受けにくいため、負荷トルクが一層安定する。負荷錘による押圧は、負荷錘の重力で摩擦係合部材を直接押圧するものでも良いが、負荷錘の重力で油圧やエア圧等の流体圧を発生させ、その流体圧で摩擦係合部材を押圧することもできる。
【0018】
押圧手段による押圧力、すなわち負荷トルクの大きさは、例えば上記負荷錘の重量を変更することによって適宜変更できるが、一定の重量の負荷錘を使用しながら、てこの原理を利用するなどして押圧力を変更できるようにすることも可能である。
【0019】
駆動用電動モータと第1回転軸との間には、必要に応じて減速装置を設けることが可能で、その第1回転軸を減速回転させることができるとともに、その減速でトルクが増幅されるため、駆動用電動モータとしてトルクが小さい小型の電動モータを採用することができる。
【0020】
摩擦回転体と摩擦係合部材との摩擦によって第2回転軸に付与される負荷トルクは、押圧手段による押圧力だけでは正確に求めることが難しいため、第2回転軸と摩擦回転体との間に磁歪式等のトルクセンサを設けて実際の負荷トルクを検出し、所定の負荷トルクが付与されるように押圧力(負荷錘の重量など)を調節することが望ましい。但し、かみあい伝達誤差の測定に際しては、必ずしも正確な負荷トルクは必要ない場合もあり、予め負荷トルクと押圧力との関係を調べておくなどしてトルクセンサを省略することもできる。
【0021】
かみあい伝達誤差は、駆動用電動モータにより第1回転軸を一定の回転速度で連続回転させながら測定すれば良いが、各部の回転振動による影響を排除する上で、回転速度としては例えば1rpm以下、或いは2〜3rpm程度以下のゆっくりした回転速度が望ましい。
【実施例】
【0022】
以下、本発明の実施例を図面を参照しつつ詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施例であるかみあい伝達誤差測定装置10を説明する概略図で、(a) は上方から見た平面図、(b) は(a) におけるB矢視図で負荷トルクを付与する摩擦回転体12の正面図であり、歯車装置14のかみあい伝達誤差を測定する場合である。歯車装置14は、はすば歯車等の互いに噛み合わされた一対の平行軸歯車16、18を備えており、それ等の平行軸歯車16、18はそれぞれ第1回転軸20、第2回転軸22に一体的に取り付けられている。第1回転軸20と第2回転軸22との軸間距離は、一対の平行軸歯車16、18の中心距離に設定されており、平行軸歯車16、18はそれぞれ第1回転軸20、第2回転軸22に着脱可能に取り付けられるようになっている。また、第1回転軸20および第2回転軸22には、それぞれ光学式等のロータリエンコーダ24、26が配設され、それ等の回転角を検出するようになっているとともに、第1回転軸20には駆動用電動モータ28が連結され、軸心まわりに回転駆動されるようになっている。
【0023】
前記摩擦回転体12は、第2回転軸22と同軸上に回転可能に配設されているとともに、磁歪式等のトルクセンサ30を介してその第2回転軸22に連結され、その第2回転軸22と一体的に回転させられるようになっている。摩擦回転体12は円板形状を成しているとともに、その上方には摩擦係合部材32が上下方向の移動可能に配設され、摩擦回転体12の円筒外周面34に接触させられている。摩擦係合部材32は、ガイド36により摩擦回転体12の上方位置に一定の姿勢で位置決めされているとともに、その摩擦係合部材32上には更に所定の重量の負荷錘38が載置されている。この負荷錘38の重力で、摩擦係合部材32は摩擦回転体12に押圧されて所定の摩擦力を発生し、この摩擦力で摩擦回転体12に回転抵抗が付与されるとともに、この回転抵抗に基づいて第2回転軸22、更には歯車装置14に負荷トルクが付与される。負荷錘38は押圧手段に相当する。
【0024】
そして、このようなかみあい伝達誤差測定装置10においては、先ず、駆動用電動モータ28により第1回転軸20を例えば2〜3rpm以下の一定の回転速度で回転駆動する一方、摩擦係合部材32上に負荷錘38を載置するとともに、その負荷錘38の重量に応じて摩擦係合部材32と摩擦回転体12との間に生じる摩擦力により第2回転軸22に付与される負荷トルクをトルクセンサ30によって検出し、所定の負荷トルクが付与されるように負荷錘38の重量を調節する。そして、所定の負荷トルクが付与されるようになったら、駆動用電動モータ28による第1回転軸20の回転駆動を継続することにより、歯車装置14をその所定の負荷トルクで噛合い回転させつつ、第1回転軸20および第2回転軸22の回転角をそれぞれロータリエンコーダ24、26により検出し、その負荷トルクにおけるかみあい伝達誤差を測定する。その場合に、かみあい伝達誤差に伴う摩擦回転体12の回転速度変化で動摩擦係数が変化し、厳密には摩擦係合部材32との間の摩擦力更には負荷トルクが変動する可能性があるが、かみあい伝達誤差による回転変動は極微小であるため、そのような動摩擦係数の変化による影響は無視できる。
【0025】
また、第1回転軸20を逆回転させれば、第2回転軸22や摩擦回転体12の回転方向も逆になるため、摩擦係合部材32との摩擦で摩擦回転体12に付与される回転抵抗も逆向きになる。このため、その回転抵抗に基づいて第2回転軸22、更には歯車装置14に付与される負荷トルクも反対向きになり、駆動状態と被駆動状態、或いは正回転駆動と逆回転駆動などのように反対側の歯面が接触する動力伝達時のかみあい伝達誤差についても、駆動用電動モータ28による第1回転軸20の回転方向を逆転させるだけで容易に測定することができる。
【0026】
ここで、本実施例では第2回転軸22と一体的に回転させられる摩擦回転体12に摩擦係合部材32が押圧されることにより、摩擦力でその摩擦回転体12に回転抵抗が与えられるとともに第2回転軸22に負荷トルクが付与されるため、その摩擦力すなわち摩擦回転体12に対する摩擦係合部材32の押圧力(この実施例では負荷錘38の重量)によって定まる一定の負荷トルクを安定して付与することが可能で、かみあい伝達誤差を高い精度で測定することができる。
【0027】
また、このように摩擦係合部材32を摩擦回転体12に押圧することにより負荷トルクが付与されるため、第1回転軸20や第2回転軸22を何回転もさせてかみあい伝達誤差を連続測定することが可能で、例えば歯車装置14の総てのかみあい伝達誤差パターンを連続測定することができるとともに、そのような装置をコンパクトに構成できる。
【0028】
また、駆動用電動モータ28による第1回転軸20の回転方向を逆転させれば負荷トルクも反対向きになるため、例えば駆動状態と被駆動状態、或いは正回転駆動と逆回転駆動などのように反対側の歯面が接触する動力伝達時のかみあい伝達誤差を容易に測定することができる。
【0029】
次に、本発明の他の実施例を説明する。なお、以下の実施例において前記実施例と実質的に共通する部分には同一の符号を付して詳しい説明を省略する。
【0030】
図2のかみあい伝達誤差測定装置50は、第1実施例のかみあい伝達誤差測定装置10に比較して、駆動用電動モータ28に減速装置52が設けられており、その駆動用電動モータ28を制御精度が高い通常の回転速度範囲内で回転駆動しつつ、第1回転軸20を1rpm以下のゆっくりした速度で回転させることができる。また、減速装置52によって減速されることによりトルクが増幅されるため、負荷錘38によって大きな負荷トルクを付与する場合でも、駆動用電動モータ28として小型の電動モータを採用できる。図2の(a) 、(b) は、それぞれ図1の(a) 、(b) に相当する。以下の図3〜図6においても、各図の(a) 、(b) はそれぞれ図1の(a) 、(b) に相当する。
【0031】
図3のかみあい伝達誤差測定装置60は、第1実施例のかみあい伝達誤差測定装置10に比較して、摩擦回転体12を第2回転軸22の軸心に対して直角な方向へ平行移動させた場合で、ベルトおよびプーリや複数の噛合い歯車等から成る連動装置62を介して第2回転軸22と摩擦回転体12とを連結し、第2回転軸22の回転に伴って機械的に摩擦回転体12が回転させられるようになっている。このように連動装置62が設けられることにより、摩擦回転体12や第2回転軸22の配設位置の自由度が高くなり、例えば第2回転軸22を摩擦回転体12の軸心を中心とする円弧に沿って平行移動可能とすることにより、連動装置62による連結状態を維持したまま第1回転軸20と第2回転軸22との軸間距離を変更することが可能で、平行軸歯車16、18の大きさすなわち中心距離が異なる種々の歯車装置14のかみあい伝達誤差を容易に測定できるようになる。
【0032】
図4のかみあい伝達誤差測定装置70は、傘歯車やハイポイドギヤのように一対の噛合い歯車72、74の軸心が直角に交差したり食い違っていたりする歯車装置76のかみあい伝達誤差を測定するためのもので、それ等の歯車72、74の軸心に応じて第1回転軸20および第2回転軸22が所定の角度で交差或いは食い違うように配設されている。
【0033】
図5のかみあい伝達誤差測定装置80は、差動歯車装置82を含む複数の歯車が噛み合わされた車両用変速装置等の歯車装置84のかみあい伝達誤差を測定するためのもので、前記第2回転軸22は入力軸86に連結される一方、前記第1回転軸20は差動歯車装置82の一方の出力軸(サイドシャフト)に連結される。また、差動歯車装置82の他方の出力軸(サイドシャフト)には第3回転軸90が連結され、駆動用電動モータ92によって軸心まわりに回転駆動されるとともに、ロータリエンコーダ94により回転角が検出されるようになっている。そして、この駆動用電動モータ92は、差動歯車装置82の一対の出力軸を一体回転させるように駆動用電動モータ28と同期して制御され、例えばロータリエンコーダ24、94によって検出される両側の出力軸の回転角の平均値を用いて、ロータリエンコーダ26によって検出される入力軸86の回転角と比較することにより、歯車装置84の全体のかみあい伝達誤差を測定することができる。また、周波数分析等でノイズを除去すれば、ロータリエンコーダ24によって検出される一方の出力軸の回転角とロータリエンコーダ26によって検出される入力軸86の回転角とを比較して、その一方の出力軸と入力軸86との間のかみあい伝達誤差を測定したり、ロータリエンコーダ94によって検出される他方の出力軸の回転角とロータリエンコーダ26によって検出される入力軸86の回転角とを比較して、その他方の出力軸と入力軸86との間のかみあい伝達誤差を測定したりすることも可能である。第3回転軸90は、請求項1および請求項2の第1回転軸に相当する。
【0034】
なお、差動歯車装置82の一対の出力軸が一体的に回転するように、連結装置等を介して機械的に連結すれば、上記第3回転軸90や駆動用電動モータ92、ロータリエンコーダ94を省略することができる。また、このように一対の出力軸を機械的に連結した場合には、その出力軸側に第2回転軸22や摩擦回転体12等を配設して負荷トルクを付与する一方、入力軸86側に第1回転軸20や駆動用電動モータ28を配設して回転駆動することにより、かみあい伝達誤差測定を行うこともできる。
【0035】
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、これ等はあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えた態様で実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の一実施例であるかみあい伝達誤差測定装置を説明する概略図で、(a) は平面図、(b) は(a) におけるB矢視図に相当する摩擦回転体の正面図である。
【図2】本発明の他の実施例を説明する図で、駆動用電動モータに減速装置を設けた場合であり、(a) は平面図、(b) は(a) におけるB矢視図に相当する摩擦回転体の正面図である。
【図3】本発明の更に別の実施例を説明する図で、連動装置を介して摩擦回転体を接続した場合であり、(a) は平面図、(b) は(a) におけるB矢視図に相当する摩擦回転体の正面図である。
【図4】本発明の更に別の実施例を説明する図で、交差軸歯車や食い違い軸歯車のかみあい伝達誤差を測定する場合であり、(a) は平面図、(b) は(a) におけるB矢視図に相当する摩擦回転体の正面図である。
【図5】本発明の更に別の実施例を説明する図で、車両用変速機等の差動歯車装置を有する歯車装置のかみあい伝達誤差を測定する場合であり、(a) は平面図、(b) は(a) におけるB矢視図に相当する摩擦回転体の正面図である。
【符号の説明】
【0037】
10、50、60、70、80:かみあい伝達誤差測定装置 12:摩擦回転体 14、76、84:歯車装置 20:第1回転軸 22:第2回転軸 24、26、94:ロータリエンコーダ 28、92:駆動用電動モータ 32:摩擦係合部材 38:負荷錘(押圧手段) 90:第3回転軸(第1回転軸)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに噛み合う複数の歯車を有する歯車装置を介して連結された第1回転軸および第2回転軸に所定の負荷トルクを付与した状態で、該第1回転軸を回転駆動して前記歯車装置を噛合い回転させるとともに、該第1回転軸および第2回転軸の回転角をそれぞれロータリエンコーダにより検出して該歯車装置のかみあい伝達誤差を測定する装置であって、
前記第1回転軸を回転駆動する駆動用電動モータと、
前記第2回転軸の回転に伴って機械的に回転させられる摩擦回転体と、
前記摩擦回転体に押圧されることにより摩擦力で該摩擦回転体に回転抵抗を与え、前記第2回転軸に負荷トルクを付与する摩擦係合部材と、
該摩擦係合部材を前記摩擦回転体に押圧する押圧手段と、
を有することを特徴とするかみあい伝達誤差の測定装置。
【請求項2】
互いに噛み合う複数の歯車を有する歯車装置を介して連結された第1回転軸および第2回転軸に所定の負荷トルクを付与した状態で、該第1回転軸を回転駆動して前記歯車装置を噛合い回転させるとともに、該第1回転軸および第2回転軸の回転角をそれぞれロータリエンコーダにより検出して該歯車装置のかみあい伝達誤差を測定する方法であって、
前記第2回転軸の回転に伴って機械的に回転させられる摩擦回転体を備えており、
前記第1回転軸を回転駆動して前記歯車装置を噛合い回転させる際に、前記摩擦回転体に摩擦係合部材を押圧することにより、摩擦力で該摩擦回転体に回転抵抗を与えるとともに前記第2回転軸に負荷トルクを付与する
ことを特徴とするかみあい伝達誤差の測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−40788(P2007−40788A)
【公開日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−224125(P2005−224125)
【出願日】平成17年8月2日(2005.8.2)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】