説明

かみそりの刃

【課題】基材への接着を促進するような中間層を使用しないで硬質被覆層をかみそり刃先基材に被覆する方法を提供する。
【解決手段】金属でドープ塗装されたグラファイトを有するターゲットをスパッタリングすることにより、金属ドープされたダイヤモンド状炭素からなる被覆層16をかみそり刃の研がれた刃先ならびにその近接部の基材12に直接蒸着形成し、次いでポリ四フッ化エチレンからなる外側層18を前記金属でドープ塗装されたダイヤモンド状炭素の被覆層上へ被覆形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、かみそり及びかみそりの刃に係る。
【背景技術】
【0002】
かみそりの刃は、典型的には、ステンレス鋼等の適切な基材の材料で形成され、刃先は、例えば約200乃至300オングストローム等の約1000オングストロームより小さい半径を有する最先端を備えた楔形の形状を備えて形成される。ダイヤモンド、非晶質ダイヤモンド、ダイヤモンド状炭素(DLC)、窒化物、炭化物、酸化物、又はセラミック等の硬質な被覆剤は、強度、耐食性、及び剃毛能力を向上させるようしばしば使用され、使用されるべきより低い刃の力を備えたより薄い端部を許容し、必要な強度を保持する。ポリ四フッ化エチレン(PTFE)の外側層は、摩擦低減を与えるよう使用され得る。ニオブ又はクロムを有する材料の中間層は、典型的にはステンレスである基材と、DLC等の硬質な炭素被覆剤との間の接着を強化するよう役立ち得る。かみそりの刃の刃先の形状、及び製造の工程の例は、米国特許第5,295,305号明細書(特許文献1)、米国特許第5,232,568号明細書(特許文献2)、米国特許第4,933,058号明細書(特許文献3)、米国特許第5,032,243号明細書(特許文献4)、米国特許第5,497,550号明細書(特許文献5)、米国特許第5,940,975号明細書(特許文献6)、米国特許第5,669,144号明細書(特許文献7)、欧州特許第0591334号明細書(特許文献8)、PCT92/0330(特許文献9)、及びPCT01−64406(特許文献10)に開示され、参照としてここに盛り込まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第5,295,305号明細書
【特許文献2】米国特許第5,232,568号明細書
【特許文献3】米国特許第4,933,058号明細書
【特許文献4】米国特許第5,032,243号明細書
【特許文献5】米国特許第5,497,550号明細書
【特許文献6】米国特許第5,940,975号明細書
【特許文献7】米国特許第5,669,144号明細書
【特許文献8】欧州特許第0591334号明細書
【特許文献9】PCT92/03330
【特許文献10】PCT01/64406
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
硬質被覆層の基材への接着を促進するよう使用される中間層を使用しないこと。
【課題を解決するための手段】
【0005】
かみそりの刃を作る方法であって、
金属でドープ塗装されたグラファイトを有するターゲットをスパッタリングすることによって、直接金属でドープ塗装されたダイヤモンド状炭素の被覆剤を研がれた先端及び近接する面によって定義付けられた刃先を備えた基材上へと直接蒸着する段階と、
ポリ四フッ化エチレンを前記金属でドープ塗装されたダイヤモンド状炭素の被覆剤上へと被覆する段階と、
によって特徴付けられる方法。
【発明の効果】
【0006】
いかなる介在層(例えばクロム・オーバーレイヤ)もなく、炭素含有材料の被覆剤上にPTFEの被覆剤を更に有する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】かみそりの刃の実施例の刃先部の垂直断面図である。
【図2】図1のかみそりの刃を有するかみそりの斜視図である。
【図3】他の実施例のかみそりの刃の刃先部の垂直断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
一般的には、本発明は、研がれた先端及び近接する面によって定義付けられた刃先を有するかみそりの刃を特徴とする。刃先は、ドーパントを有する炭素含有材料(例えばDLC)の被覆剤を有する。ドーパントは、ケイ素、あるいは、クロム、チタン、モリブデン、ニオブ、又はタングステン等の金属であり得る。炭素含有材料は、望ましくは1乃至10原子百分率、更に望ましくは、1乃至5原子百分率のドーパントを有する。
【0009】
一実施例では、ドーパントはクロムであり、かみそりの刃は、いかなる介在層(例えばクロム・オーバーレイヤ)もなく、炭素含有材料の被覆剤上にPTFEの被覆剤を更に有する。
【0010】
他の実施例では、ドーパントはやはりクロムであり、かみそりの刃は、また、PTTE被覆剤を含んでもよく、任意で炭素含有材料の被覆剤とPTFEの被覆剤との間に介在層を有してもよい。
【0011】
本発明は、また、ドーパントを有する炭素含有材料の被覆剤を有するかみそりの刃を有するかみそりを特徴とする。実施例の中には、ドーパントが、かみそりの刃に強化された熱的安定性及び耐磨耗性を与えるものもある。
【0012】
本発明はまた、ドーパントを有する炭素含有材料を有するかみそりの刃を作ることを特徴とする。一実施例では、かみそりの刃は、ドーパント(望ましくはクロム)を有する炭素含有材料の被覆剤を刃先に加えることによって作られる。続いてPTFEの被覆剤は、炭素含有材料の被覆剤をPTFEの水性分散に接触させることによって、炭素含有材料の被覆剤に直接加えられる。
【0013】
本発明の他の特徴及び利点は、以下の実施例の説明及びクレームから明らかである。
【0014】
図1を参照すると、かみそりの刃10は、基材12、中間層14、硬質炭素層16、及び外側層18を有する。基材12は、(他の基材も用いられ得るが)ステンレス鋼から作られ、望ましくは200乃至300オングストロームである1,000オングストロームより小さい半径の先端に研がれた最先端を有し、また、先端から40ミクロンで測定された、望ましくは約19度である15乃至30度の含まれ角度で側部面20を備えた側面を有する。
【0015】
中間層14は、硬質被覆層の基材への接着を促進するよう使用される。適切な中間層材料の例は、ニオブ、及びクロム含有材料である。特定の中間層は、100オングストロームより大きく、望ましくは500オングストロームより小さい厚さのニオブで作られる。特許文献9は、ニオブの中間層の使用を説明する。
【0016】
硬質の炭素層16は、強化された強度、耐食性、及び剃毛能力を与え、ダイヤモンド、及び非晶質ダイヤモンド等の炭素含有材料、及びクロムでドープ塗装されたDLCから作られ得る。炭素含有材料は、スパッタ中に炭素層を適用する間、対象にクロムを有することによって、クロムでドープ塗装される。クロムは、例えば、金属クロム、又はCrPt等のクロムの合金であり得る。炭素含有材料は、望ましくは0.1乃至10原子百分率のクロムを有し、より望ましくは、0.5乃至7原子百分率、又は1乃至5原子百分率のクロムを有する。炭素含有材料は、また、水添のDLC等の水素を組み入れ得る。
【0017】
硬質な炭素層の特定の実施例は、2原子百分率のクロムでドープ塗装されたDLCである。層は、望ましくは厚さ2,000オングストロームより小さく、より望ましくは厚さ1,000オングストロームより小さい。DLC被覆剤及び蒸着の方法は、特許文献2に説明されており、参照としてここに組み込まれる。2原子百分率のクロムでドープ塗装されたグラファイト・ターゲットが純粋なグラファイト・ターゲットの代わりに使用されたという点において、特許文献2に説明された一般的な手順は改善される。クロムでドープ塗装されたDLC層は、例えば約500ボルト且つ約2ミリトールの圧のDCバイアスを使用するスパッタリングを使用することによって、適用され得る。「Handbook of Physical Vapor Description (PVD) Processing」に説明される通り、DLCは、非晶質炭素材料であって、多くの所望される性質を現すが、ダイヤモンドの結晶構造は有さない。
【0018】
外側層18は、摩擦低減を与え、PTFEを有し、短鎖重合体として称されることもある。望ましいPTFE材料は、DuPont社より入手可能なKrytox LW1200(登録商標)である。かかる材料は、安定的な分散をもたらす小粒子を有する不燃性且つ安定的な乾燥潤滑剤である。重量で約20%固体の水性分散として与えられ、浸漬、噴霧、又ははけ塗りによって適用され得、また、その後空気乾燥又は融解被覆剤され得る。層は、連続的な被覆剤が維持されるという条件下では、望ましくは5,000オングストロームより小さく、典型的には1,500オングストローム乃至4,000オングストロームであり得、薄さは100オングストロームであり得る。連続的な被覆剤が達成されるという条件下では、低減された短鎖重合体被覆剤の厚さは、改善された第1の剃りの結果を与え得る。米国特許第5,263,256号明細書及び米国特許第5,985,459号明細書は、参照としてここに組み込まれており、適用された短鎖重合体層の厚さを低減するよう使用され得る技術を説明する。
【0019】
ポリ四フッ化エチレン層は、たとえ水性分散としてクロムでドープ塗装されたDLC層に直接適用されたとしても、クロムでドープ塗装されたDLC層によく接着する。クロムのドーパントは、層の間の接着に役立つとされる。
【0020】
かみそりの刃10は、一般的には、上述された特許文献に説明された工程に従って作られる。特定の実施例は、厚さ200オングストロームのニオブ中間層14、厚さ700オングストロームのクロム塗装されたDLC層16、及び厚さ200オングストロームのKrytox LW1200ポリ四フッ化エチレン外側被覆層18を有する。刃10は、望ましくは、外側層18を加える前にSEMによって測定された約200乃至400オングストロームの先端半径を有する。
【0021】
図2を参照すると、刃10は、握り部112及び交換式の剃毛カートリッジ114を有する剃毛かみそり10に使用され得る。カートリッジ114は、3枚の歯10、ガード120、及びキャップ122を有する筐体116を有する。刃10は、可動式に取り付けられ、参照として組み入れられた米国特許第5,918,369号明細書等に説明される通りである。カートリッジ114は、また、相互接続部材124を有し、その上に筐体116が回転式に2つのアーム138に取り付けられる。相互接続部材124は、交換可能式に握り部112に接続されるベース127を有する。あるいは、刃10は、他のかみそりに使用され得る。該他のかみそりは、1つ、2つ、3つ、又は3つより多い刃や両面刃を有するかみそり、及び、可動式の刃、又はカードリッジが交換可能であるか又は恒常的にかみそりの握り部に取り付けられているかのいずれかである回転ヘッド部を有さないかみそりである。
【0022】
図3を参照すると、代替のかみそりの刃は、基材12、硬質炭素層16、保護膜層24、及び外側層18を有する。基材、硬質炭素層、及び外側層は、一般的には、かみそりの刃10にあるものと同一である。
【0023】
保護膜層24は、米国特許第09/515,421号明細書に説明され、ここに参照として組み入れられる。保護膜層は、硬質な被覆剤された端部の先端の丸みを低減する。保護膜層24は、望ましくは、ポリ四フッ化エチレンと互換性のあるクロム又はクロム合金、CrPt等のクロム含有材料で作られる。特定の保護膜層は、厚さ約100乃至200オングストロームのクロムである。刃10は、繰り返し剃った場合に、保護膜層がない場合よりも少ない丸みを有する刃先を有する。クロム保護層24は、最低100オングストローム、最高500オングストロームに蒸着される。蒸着は、(−50ボルトよりも陰性であり、望ましくは−200ボルトよりも陰性である)DCバイアス、及び約2ミリトールのアルゴンの圧力を使用してスパッタリングによってなされる。増加した陰性バイアスは、よい剃毛性能を保持すると同時に先端が丸まることに対して強化された耐性を促進すると考えられるクロム保護層で、(引張応力とは反対である)圧縮応力を促進すると考えられる。刃10は、望ましくは、保護層24の適用後且つ外側層20の追加前に、SEMによって測定された、約200乃至400オングストロームの先端半径を有する。
【0024】
硬質の炭素層16は、クロムでドープ塗装されており、硬質炭素層が基材に直接蒸着されていても、中間層なく基材12に接着する。クロムのドーパントの存在が、硬質炭素層と刃先との間の接着に役立っていると考えられる。
【0025】
他の実施例は請求項内にある。例えば、かみそりの刃は、任意で、中間層14も保護膜層も有さなくてもよい。加えて、硬質炭素材料でのドーパントとして、チタン、ニオブ、タングステン、モリブデン、又はケイ素が、クロムの代わりに、又はクロムに加えて使用され得る。
【0026】
更に、かみそりの刃は、2つ又はそれ以上の硬質炭素層を有し得る。各層は、異なる量のドーパントを有し得、1つ又はそれ以上の層はドーパントを有さなくてよい。硬質炭素層は、同一又は異なる炭素含有材料を有し得る。
【0027】
例えば、硬質炭素層は、可変量のドーパントを有し得る。例えば、硬質炭素層の内側面は、1原子百分率のドーパントを有し得、その量は傾斜して増加し得、5又は10原子百分率のドーパントを含んだ硬質炭素層の外側面を有する。
【0028】
加えて、硬質炭素含有層は、前述されたものの中から選択された2つ又はそれ以上のドーパントを有し得る。
【0029】
他の実施例は請求項内にある。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
かみそりの刃を作る方法であって、
金属でドープ塗装されたグラファイトを有するターゲットをスパッタリングすることによって、直接金属でドープ塗装されたダイヤモンド状炭素の被覆剤を研がれた先端及び近接する面によって定義付けられた刃先を備えた基材上へと直接蒸着する段階と、
ポリ四フッ化エチレンを前記金属でドープ塗装されたダイヤモンド状炭素の被覆剤上へと被覆する段階と、
によって特徴付けられる方法。
【請求項2】
前記金属はクロムである、
ことを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記ダイヤモンド状炭素の被覆剤は、原子百分率で0.1%乃至10%の前記金属でドープ塗装される、
ことを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記ダイヤモンド状炭素の被覆剤は、原子百分率で1%乃至5%の前記金属でドープ塗装される、
ことを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記ポリ四フッ化エチレンは、前記金属でドープ塗装される前記ダイヤモンド状炭素の被覆剤上へと直接被覆される、
ことを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項6】
作られたかみそりの刃は、200オングストローム乃至400オングストロームの先端半径を備える、
ことを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項7】
前記金属はクロムであり、前記ダイヤモンド状炭素の被覆剤は、原子百分率で0.1%乃至10%の該クロムでドープ塗装され、
作られたかみそりの刃は、200オングストローム乃至400オングストロームの先端半径を備える、
ことを特徴とする請求項1記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−66093(P2012−66093A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−237331(P2011−237331)
【出願日】平成23年10月28日(2011.10.28)
【分割の表示】特願2006−508960(P2006−508960)の分割
【原出願日】平成16年3月1日(2004.3.1)
【出願人】(593093249)ザ ジレット カンパニー (349)
【Fターム(参考)】