説明

がんに関する遺伝子HOXB13の重要性

本発明は、がん表現型の侵襲又は転移の指標として、HoxB13 (ホメオボックスB13)遺伝子からの発現の増加の検出に関連する。本発明は、HoxB13遺伝子からの、任意に、結節状態との組み合わせにおける、発現のレベルを、表現型の侵襲性又は転移並びに細胞の転移及び/又は運動性の増加の指標として検出する方法を供する。本発明は、患者予後並びに臨床診断及び治療を特定することにおいて役立つHoxB13遺伝子からの発現の測定法を供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、米国仮出願60/577,085の優先権を主張し、それは本明細書中参照によって組み込まれている。
【0002】
がん表現型指標として遺伝子発現を検出することに関連する。特に、HoxB13 (ホメオボックスB13)遺伝子に由来する発現の増加は、侵襲性がん表現型の指標である。本発明は、侵襲性表現型並びに細胞の転移及び/又は移動性の増加の指標としてHoxB13遺伝子からの発現のレベルを検出する方法を供する。本発明は、臨床診断及び治療、並びに患者予後の決定を補助するためにHoxB13遺伝子由来の発現の測定を供する。
【発明の開示】
【0003】
発明の分野
本発明は、特定のがん表現の指標としての遺伝子発現レベルを特定することを供する。本発明は、ある程度、HoxB13遺伝子由来の発現の増加は、侵襲性がん表現型の指標並びに細胞の転移及び/又は移動の増加の指標でありうるという発見に基づく。本発明は、HoxB13遺伝子からの発現の増加の特定がされないことを、侵襲表現型の不在の指標であるとして供する。HoxB13配列の発現と侵襲性表現型の存在又は不在の関係は、対象者のための診断及び治療を選択するために適用されて良い。加えて、前記一致は、対象者の可能性のある予後又は疾患の兆候を特定するために使用されて良い。侵襲表現型の限定されない例としては、一次腫瘍塊の周辺組織への拡大及び様々な組織型への転移の一部としての転移細胞の侵襲が挙げられる。いくつかの実施態様において、本発明は、ヒト対象者であって、がんに侵されている、又はがんに侵されている疑いのあるものに適用される。いくつかの特定の実施態様において、本発明はヒト患者の乳がんの場合に適用される。
【0004】
本発明の起源は、終末乳管小葉単位の正常細胞、乳がんが生ずるヒト乳房の解剖学的構造におけるHoxB13発現の検出を含む。このことは、ホメオボックスタンパク質が胸部の成長及び生理学においてある役割を果たすことを示唆した。かかる正常な細胞におけるHoxB13遺伝子からの発現のレベルは、任意の適切な技術によりアッセイされて良い。かかる細胞中の発現のレベルは、本明細書中に記載の同じ型及び/又は組織の非正常細胞又は異常細胞(例えば、がん細胞)における発現のレベルと比較するための参照として使用した場合に正常として認識されうる。代替的に、特定の型又組織の正常細胞の発現は、かかる使用に対する適切さを決定することにより異種非正常細胞又は異常細胞の比較のための参照として使用されて良い。
【0005】
本発明は、ある程度、細胞中のHoxB13異所性発現は、細胞の侵襲及び転移を増強し、HoxB13がin vitroで腫瘍の侵襲及び転移に寄与することを示す、という発見にも基づいている。侵襲及び/又は転移特性に関する可能性の増強は、反応性細胞におけるEGFによる又はコラーゲンの存在によって刺激されうる。
【0006】
第一の観点において、本発明は、増加した又は正常を超えるとしてHoxB13遺伝子からの発現のレベルを特定することによって侵襲及び/又は転移の可能性が増えているとして1又は複数の細胞を同定又は分類する方法を供する。このことは、1又は複数細胞が発見された対象者の様々な部分及び/又は様々な組織への転移の可能性を含む。同じ型及び/又は組織の正常細胞の発現レベルとの相対比較によって、増加又は正常を超えることの決定がなされて良い。1又は複数の細胞は、がんに侵されている、又はがんに侵される疑いのある対象者から獲得した細胞の生物学的サンプル中にあって良い。本発明のいくつかの実施態様において、がんは乳がんである。いくつかの実施態様において、がん細胞中のHoxB13遺伝子からの発現は、同じ型又は同じ組織に由来する正常細胞と比較され; 非限定的な例として、乳がん細胞における発現が、正常な乳腺細胞のそれと比較される。
【0007】
HoxB13発現の増加の特定は、HoxB13発現の他の適切な測定のとの比較でありうる。これらには、他の対象者又はかかる対象者の集団の同じ型のがん細胞中のHoxB13に対する比較が含まれる。いくつかの実施態様において、対象者は、同じがん有する集団であるが、がんの転移又は再発を経験していない集団である。これは、サンプルのレトロスペクチブ分析の例えば、対象者又はかかる対象者の集団由来の固定化サンプルの分析によって用意に行われて良い。比較は、後の転移又はがん再発を伴わない対象者の細胞サンプル由来の発現レベルを含んで成るHoxB13発現レベルのデータベースとの比較であっても良い。他の比較は、HoxB13発現の閾値レベルであって、それ以上で移動、侵襲及び/又は転移が増加した可能性が示される閾値レベルに対する比較であって良い。
【0008】
従って、本発明は、1又は複数の細胞は前侵襲性であるとして、並びに/又は侵襲及び/又は転移、例えば様々な部位への転移の可能性が増加しているとして同定又は分類するために使用されて良い。従って、1又は複数の細胞が獲得された対象者は、このような可能性が増加した前侵襲性がん細胞を有するとして同定されて良い。代替的に、本発明は、侵襲性であるとして1又は複数の細胞を同定するために使用されて良い。いくつかの実施態様において、1又は複数の細胞 は、対象者に由来する一次がん細胞、例えば一次乳がん細胞である。本発明の観点は、対象者における一次がん細胞の侵襲もしくは転移の早期予測又は指標として使用されて良い。それはまた、まだがんが再発していない対象者などにおけるがんの再発のための可能性の予測又は指標として使用されても良い。再発は、後になって、局所的、局部又は遠位であるかにかかわらず、がん再発として同定される、未検出又は微量な転移の結果でありうる。
【0009】
他の観点において、HoxB13発現は、侵襲又は転移可能性の組み合わせ予測体(combined predictor)として結節状態との組み合わせにおいて使用されて良い。従って、本発明は1)少なくとも一次がんを有する対象者が1又は複数のリンパ節へ広がったがんを有するかどうかを決定すること及び2)一次がんの1又は複数の細胞のHoxB13発現のレベルの決定することを供する。対象者が「結節陰性」(リンパ節でがんが検出されない)であり且つ1もしくは複数のがん細胞が高いもしくは正常を超えるレベルのHoxB13発現を有する場合、がん細胞は、侵襲、転移、及び/又は転移に関する可能性が増加しているとして同定される。本発明はしかしながら、かかる組み合わせ評価に限定されるわけではなく、何故なら、増加したHoxB13発現との組み合わせにおける「結節陽性」決定は更に、侵襲、転移、及び/又は転移に関する可能性をしめすからである。
【0010】
上記及びここで記載のとおり、サンプルの1又は複数の細胞におけるHoxB13遺伝子に由来する増加した又は超過の正常な発現レベルの同定は、1又は複数の細胞及び/又はサンプルを侵襲性表現型を有するとして同定するために使用されて良い。サンプルは、がんの例えば、乳がんに侵されている、又は侵される疑いがある対象者から獲得した生物サンプルを含む細胞であって良い。1又は複数の細胞は、非典型的又は前がん性として同定されるものでもありうる。
【0011】
いくつかの実施態様において、サンプルは、がんの例えば、乳がんに侵されている又は有する疑いがある対象者に由来する。いくつかの場合、がんの存在はすでに知られており、そして本発明はがんの例えば乳がんが、侵襲性表現型を有するかどうかを確かめるために使用される。他の実施態様において、 本発明の方法は、乳がん患者が侵襲性表現型を有したかどうか、従って転移(局所、局部又は遠位)の可能性が増加したかどうかの傾向を特定するるために、例えば、幾人かの乳がん患者において生ずる外科的診療に由来するサンプルを含む細胞とともに使用されうる。
【0012】
本発明の方法は、上皮細胞増殖因子(EGF)、インスリン、グルココルチコイド、及びコレラ内毒素に対して反応性であり、従って、細胞の侵襲及び/又は転移特性はEGF及び他の因子の存在下で増強される細胞へ有利に適用されて良い。EGFに対する反応性の特定は、任意の適切な方法、例えば、細胞中のEGFに対するレセプターの発現の検出などによってなされて良い。EGFレセプター発現、突然変異EGFレセプター発現、並びにEGFレセプター遺伝子増幅の検出のための方法は知られており且つ限定ではないが、レセプターmRNA発現の検出、レセプタータンパク質発現の検出、レセプター遺伝子増幅の検出、及びEGFレセプターとの関係において発現される1又は複数の遺伝子の発現の検出が挙げられる。かかる方法は、細胞が、HoxB13遺伝子からの発現レベルの増加及び陽性EGFレセプター発現の増加が理由により、EGFの存在下で侵襲性が増強されていることを同定するために、本明細書中に記載の方法との組み合わせにおいて使用されて良い。かかる方法は、細胞を、EGFの存在下、HoxB13遺伝子からの発現のレベル増加及び陽性EGFレセプター発現が理由により、侵襲性が増加としているとして同定するために、本明細書中に記載の方法との組み合わせにおいて使用されて良い。
【0013】
本発明の方法は、HoxB13 遺伝子に対応する発現した核酸分子又は発現したポリペプチド分子をアッセイすることによってHoxB13 遺伝子からの発現のレベルを特定することを含んで成る。従って、転写もしくは翻訳レベルの検出、並びに核酸もしくはポリペプチド分子の安定性に基づくアッセイが本発明の実施において使用されて良い。本発明は、HoxB13遺伝子から任意の転写された発現を検出することによって実施されて良い。HoxB13発現のためのDNA状態の指標として、HoxB13遺伝子のジメチル化に関するアッセイが使用されて良い。
【0014】
従って、本発明は、HoxB13 遺伝子から発現した核酸分子又はポリペプチド分子の一部の検出によって行われて良い。遺伝子発現、及びHoxB13遺伝子からの転写産物中で発現したHoxB13配列の発現の検出のための様々な方法が2003年9月19日に提出されたU.S.出願06/504,087、2003年12月2日に提出された10/727,100、及び2004年2月6日に提出された10/773,761(これら3つは全て十分に開示されているものとして本明細書中参照によって組み込まれている)に開示されており且つ本発明の実施において使用されて良い。簡潔に、HoxB13転写産物の一部又は全部の発現は、限定的ではない例として、ハイブリダイゼーション介在検出(例えば、限定されないが、マイクロアレー、ビーズ、又は粒子ベースの技術)又は定量的PCR介在検出(例えば、限定されないが、リアルタイムPCR及びリバーストランスクリプターゼPCR)の使用によって検出されて良い。HoxB13ポリペプチドの全部又は一部の発現は、限定的ではない例として、免疫組織化学的技術又は他の抗体介在検出(例えば、限定されないが、他のポリペプチドに対してHOXB13ポリペプチドの少なくとも一部へ特異的に結合する標識された抗体の使用)の使用によって検出されて良い。従って、上記3つの出願に開示されたHoxB13核酸及び/又はポリペプチド配列並びに当業界で公知の配列もしくは当業界で公知になる配列の全部又は一部の発現を検出することによって行われて良い。本願において供された場合、HoxB13発現は、タモキシフェン治療に対して反応性又は感受性である乳がん細胞で減少しており、他方、タモキシフェン治療に対して耐性又は非感受性である乳がん細胞において増加したことに留意されたい。
【0015】
本発明の更なる観点において、本発明の方法は、サンプルの1又は複数の細胞を、同じ型及び/又は組織の正常細胞の発現レベルと比較してHoxB13遺伝子からの発現レベルの増加の欠如又はかかる増加の不在に基づき、侵襲及び/又は転移特性に関する可能性が増加していないとして同定又は分類するために使用されて良い。かかる方法は、1又は複数の細胞を、侵襲及び/又は転移についての可能性の増加を伴わずに、侵襲性でない又は前侵襲性であるとして、同定するために使用されても良い。
【0016】
更に他の観点において、本発明の方法は、がんを有する対象者の診断及び治療を補助するために適用されて良い。本明細書中に記載の方法は、細胞含有サンプルが獲得されHoxB13発現レベルについてアッセイした対象者における侵襲性又は非侵襲性がんの例えば、侵襲性非侵襲性の乳がんの診断を確立するために使用されて良い。非侵襲性乳がんの分類上、この方法は、前侵襲性がんの例えば、前侵襲性乳がん(侵襲及び/又は転移の可能性の増加を伴う)の診断を、確立するために使用されて良い。乳がんを非限定的な例として使用することで、本発明は、例えばIDCの場合に確認される侵襲性及び/又は転移の可能性の増加を伴うが、ADH又はDCIS前侵襲性として同定される細胞と共に使用されて良い。一層一般に、本発明の方法は、転移、を有することが知られていないがんもしくは前がん細胞などを前転移及び/又は転移の可転移の可能性の増加転移の可能性の増加を有するとして診断もしくは同定するために使用されて良い。HoxB13発現レベルをアッセイすることは、細胞含有サンプル又は標本を分析するための標準的な臨床病理学プロトコルにおいて使用される免疫組織化学的技術(及び/又はin situハイブリダイゼーションでの蛍光)に一部として行われて良い。従って、診断に基づく適切な治療は、HoxB13発現レベルの測定の使用に基づいて選択され且つ適用されて良い。
【0017】
本発明の方法は、侵襲性がんの例えば、侵襲性乳がん又は転移の可能性が増加した乳がん転移の可能性の増加を伴う乳がんの診断を、本明細書中に記載の細胞含有サンプルにおけるHoxB13発現レベルをアッセイすることに基づいて対象者にとって、確認又は否定するために使用されて良い。確認又は否定は、対象者由来の細胞含有サンプルの、標準的な臨床病理学的技術 (HoxB13発現の検出を伴わない)、例えば、免疫組織化学的及び視覚検査の使用に基づく所期診断であって良い。従って、本発明は、従来のプロトコルを超える、がん侵襲性を参照することによる一層正確な診断を達成するために能力の向上を供する。
【0018】
HoxB13遺伝子からの発現のレベルに全体的に又はある程度依存する診断に基づく治療の選択には、有益さが少ない所定の治療を避ける又は排除することを含む。非限定的な例として、対象者を、非侵襲性がんとは逆に侵襲性がんを有する又は転移可能性のあるがんを有するとして正確に診断することは、攻撃的な治療を少なく使用しがんの症度の進行を許すリスクよりも一層攻撃的な治療を選択するための支持を供する。代替的に、非侵襲性がんの正確な診断は、一層攻撃的治療の不快且つ不都合な副作用を与えない、より少ない攻撃的治療の選択をサポートするために使用されて良い。
【0019】
更なる観点において、本発明は、本明細書中に記載のHoxB13遺伝子からの発現レベルに基づく対象者の予後を決定する方法を供する。この観点において、がん侵襲性に対するHoxB13発現の一致は、がん侵襲性及び患者予後又は疾患転帰にに関する情報に関連し、従って、HoxB13発現は、予後及び/又は疾患発生の兆候である。非限定的な例として、予後及び/又は疾患の結果には、推定寿命、長期間に渡るがん再発の可能性、並びに患者の他の組織、他の部分中へのがんの侵襲及び/又は転移の可能性が含まれる。
【0020】
本発明は、患者の臨床又は医薬治療の一部としてのその使用を供する。他の臨床方法には、本明細書中に記載のHoxB13発現の決定に基づいて患者へ臨床ケアを供することを含む。いくつかの実施態様において、本発明は、HoxB13発現レベルに基づき、当該レベルの有意性もしくは意味の解釈を伴うもしくは伴わずに、診断サービスを提供することに関連する。いくつかの実施態様において、本発明の診断サービスを提供する方法は、当該サービスの必要性の特定が先行する。他の実施態様において、当該方法は、前記サービスの性能をモニタリングする活動並びに当該サービスの実施の返還の要請又は受け取りにおける活動を含む。
【0021】
本発明の1又は複数の実施態様の詳細は、付随する図及び下の詳細な説明に開示されている。本発明の他の特徴及び利点は、図及び詳細な説明から、そして特許請求の範囲から明らかであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
発明を実施するための詳細な説明
本発明は、侵襲及び/又は転移特性の表現型、例えば、一次がんに侵された対象者の他の組織又は部分におけるがんの進行のための転移可能性の表現型に対して増加したHoxB13発現に関連する方法を供する。かかる特徴の非限定的な例としては、細胞移動及び/又は転移の増加並びに細胞外マトリクス又は基底膜を通じて侵襲及び/又は移動する能力の例えばin vivo又はコラーゲンの存在下でのものが挙げられる。前記特徴はまた、侵襲及び/又は転移の可能性の増加、又は侵襲及び/又は転移の能力であると考えられて良い。従って、本発明は、1又は複数の細胞におけるHoxB13遺伝子の発現レベルを特定することによって、1又は複数の細胞を侵襲及び/又は転移特徴の可能性が増加したとして同定又は分類する方法を供し、ここで正常な発現のレベルの相対的増加又は超過は、1又は複数の細胞における転移、侵襲及び又は移動の可能性の増加を示す。
【0023】
HoxB13発現の相対的な増加の特定は、他のHoxB13発現レベル、例えば、他の対象者又は対象者集団の細胞のレベルとの比較によって行われうる。細胞は、がん性ではないもの並びにがん細胞であってよく、例えば、がんの転移又は侵襲をもたらさなかったものを含む。当然、比較は、同一の組織型の間で、例えば、胸部組織に対する乳がん、又は乳がん対乳がんで行われて良い。いくつかの実施態様において、この比較は他の対象者又はかかる対象者の集団の同じ型のがん細胞のHoxB13発現に対して行われ、ここで本明細書中に記載のように、同がんは転移、侵襲及び/又は本明細書に記載の転移特性を有さなかった。かかる比較は、疾患の以降の経過及び転帰が知られる対象者からのがんの固定化サンプルの使用によって容易になされる。かかる後の病歴の限定的ではない例としては、転移又はがん再発などが挙げられる。従って、かかるサンプルの発現レベルは、参照レベルであると考えられ、それに対して、新たなサンプル、テストサンプル、又は未知のサンプルが比較される。これら参照発現レベルは、 それに対して、新たなサンプル、テストサンプル、又は未知のサンプルが比較されるデータベースの形態にありうる。このデータベースは、がん転移又は再発を後に経験しなかった対象者からのサンプルの参照発現レベルを含む。これらの参照実現レベルは、本発明の実施において新たなサンプル、テストサンプル、又は未知のサンプルにおいてHoxB13発現のレベルとの比較において使用されても良く、ここで類似するレベルは、類似の転帰の可能性を示唆する。他の限定的ではない実施態様において、HoxB13発現レベルの閾値レベル(当該閾値レベルより上で、転移、侵襲及び/又は転移の可能性の増加が存在する)を導くために転移又はがん再発が有無のいずれかの対象者の参照発現レベルが使用されて良い。
【0024】
本発明は、1又は複数のサンプル細胞を、当該1又は複数の細胞中のHoxB13遺伝子からの発現レベルを特定することによって、侵襲性であるとして同定又は分類するための第二の方法を供し、ここで上記正常な発現のレベルは、1又は複数の細胞が侵襲性であることを示す。第3の方法は、1又は複数の細胞におけるHoxB13遺伝子からの発現レベルを特定することによって、1又は複数のサンプル細胞を侵襲性であるとして同定又は分類するために供されており、ここで前記細胞は、EGFに対して反応性であり且つ上記正常な発現のレベルは、当該1又は複数の細胞がEGFの存在下で侵襲性であることを示す。いくつかの実施態様において、1又は複数の細胞は、EGFに対するタンパク質レセプターを発現し且つ本発明の方法は、HoxB13発現についてアッセイされる細胞におけるタンパク質レセプターの検出を含んで成りうる。
【0025】
本発明は、1又は複数の細胞中のHoxB13遺伝子からの発現レベルを特定することによって、一次がんに侵されている対象者の他の組織又は一部におけるがんの進行について、転移可能性の表現型などの、侵襲及び/又は移動の可能性の特徴増加を有するとして1又は複数のサンプル細胞を同定又は分類するための第四の方法を供し、ここで正常な発現レベル又は正常な発現レベルより下の発現レベルは、1又は複数の細胞中の転移、侵襲及び/又は転移特性が増加した可能性の不在を示す。従って、本発明は、上記第1の方法との組合せにおいて、1又は複数のサンプル細胞が他の組織へと転移する可能性を同定又は分類する方法を供する。かかる方法は、1又は複数の細胞中のHoxB13遺伝子からの発現レベルを特定することを含んで成って良く、ここで1又は複数の細胞中、正常を超える発現レベルは転移の可能性の増加を示唆し且つ正常又はそれより下の発現レベルは転移の可能性の増加の不在、又は転移の可能性の減少を示す。
【0026】
第5の方法は、対象者から獲得した生物サンプルの1又は複数の細胞中でHoxB13遺伝子からの発現レベルを特定することによって、対象者の予後を決定するために供されており、ここで正常を超える発現レベルは当該対象者における侵襲性がんの可能性の増加を示し且つ正常又は正常以下のHoxB13発現レベルは、侵襲性がんの可能性の増加の不在を示す。関連の態様おいて、本発明は、対象者の予後又は疾患の転帰を予測する方法を供する。かかる方法は、対象者から獲得した生物サンプルの1又は複数の細胞中でのHoxB13遺伝子からの発現レベルを特定することを含んで成り、ここで、上記正常な発現のレベルは、がん転移の可能性の増加、がん再発の可能性の増加を示すかあるいは、当該対象者の推定寿命の減少を示し、そしてHoxB13の正常レベルより下の発現は、がん転移の可能性の増加の不在、がん再発の可能性の増加の不在、又は推定寿命減少の不在を示す。
【0027】
本発明は、対象者の治療を決定することにおいて予後又は転帰の使用を供する。かかる方法は、上記対象者の予後又は転帰を特定すること及び当該予後又は転帰に基づいて当該対象者のための治療を決定することを含んで成る。治療の選択は、利点が少ない所定の治療を回避する又は排除することを含んで成りうる。いくつかの場合、これは一層攻撃的な治療の選択を意味し、ここで対象者は、非侵襲性がんとは反対に転移可能性のあるがんを有する。他の場合、対象者は非侵襲性がんを有するので不快且つ不都合な副作用を対象者へ与えることがない攻撃性がより少ない治療を選択することを意味しうる。
【0028】
本発明の更なる実施態様において、対象者の結節状態は、開示された方法におけるHoxB13発現レベルとの組み合わせにおいて決定され且つ使用されて良い。従って、本発明は、対象者の結節状態をアッセイする方法を含んで成り、ここで正常なレベルを超えるHoxB13発現との組み合わせにおけるリンパ節中のがんの不在は、転移及び/又は侵襲又は転移の可能性の増加を示すために使用される。かかる方法は、患者の治療を不十分にもたらす結節陰性特定の可能性を減らすために有意に適用されて良い。かかる結節陰性対象が侵襲性又は転移性がんの危険性を増加した状態でありうるかどうかを特定するために本発明の能力は、HoxB13発現に基づいて当業者が、結節陰性状態が転移の可能性が増加したことを含むかどうかを特定することを可能にする。
【0029】
当業者によって認識されるように、侵襲性表現型のひとつの例は、腫瘍塊から細胞を分離する必要性を伴わずに、一次(又は初代)腫瘍塊が周辺組織へ拡大すること及び生物の様々な組織又は様々な部分を侵襲することである。他の例は、生物の一部から他の部分(又は異なる組織)へのがん細胞の拡大、転移である。これは、転移過程の一部として、がん細胞がそれらの初期の位置から再移動して1又は複数の第二の(又は転移)腫瘍を生ずることが必要となる。従って、侵襲性腺管がんの細胞は転移する必要性がなく、何故ならそれらは、腺環境を超えて、転移の可能性を有する必要がなく、周辺の胸部組織へと移動する能力を単に有するからである。しかしながら、本発明はかかる細胞を、HoxB13発現に基づいて、転移可能性を有するとして、同定する能力を供する。当業者に知られているように、転移した細胞は、さらに転移する可能性を維持してもしなくとも良い。従って、二次又は転移腫瘍は、本明細書中に記載のように、HoxB13発現が上昇してもしなくても良い。
【0030】
いくつかの実施態様において、HoxB13発現は、胸部の腺がん、頸部の腺がん、食道の腺がん、胆嚢の腺がん、肺の腺がん、すい臓の腺がん、大腸-小腸の腺がん、胃の腺がん、星状細胞腫、皮膚の基底細胞がん、肝臓の胆管がん、卵巣の透明細胞腺がん、B細胞リンパ腫の分散拡大、精巣の胚性がん、子宮の類内膜がん、Ewings肉腫、甲状腺濾胞腺がん、胃腸ストロマ腫瘍、卵巣の胚細胞腫瘍、精巣の胚細胞腫瘍、多形成グリア細胞腫、肝臓の肝細胞がん、ホジキンリンパ腫、肺の巨大細胞がん、平滑筋肉腫、脂肪肉腫、乳腺の小葉がん、悪性繊維性組織球腫、甲状腺の髄様がん、メラノーマ、髄膜腫、肺の中皮腫、卵巣の粘液腺がん、心筋繊維肉腫(Myofibrosarcoma)、腸の神経内分泌腫瘍、希突起グリオーマ、骨肉腫、甲状腺の 乳頭がん、褐色細胞腫、腎臓の腎細胞がん、黄紋筋肉腫、精巣のセミノーマ、卵巣の漿液性腺がん、肺の小細胞がん、頸部の扁平上皮細胞がん、食道の扁平上皮細胞がん、喉頭の扁平上皮細胞がん、肺の扁平上皮細胞がん、皮膚の扁平上皮細胞がん、滑膜肉腫、T-細胞リンパ腫、又は膀胱の移行細胞がんから選択されたがんの細胞において測定されている。他の実施態様において、HoxB13発現は、副腎、膀胱、骨、脳、胸部、頸部、子宮内膜、食道、胆嚢、膀胱、腎臓、喉頭、肝臓、肺、リンパ節、卵巣、すい臓、前立腺、皮膚、軟組織、小/大腸、胃、精巣、甲状腺、又は子宮から選択された組織の細胞、又はがん細胞において測定されている。
【0031】
本発明は、ある程度、2つの発見に基づいている。第一の発見とは、HoxB13 発現が、前侵襲性及び侵襲性の一次がんの、例えば、乳がん及びメラノーマで増加していることである。第二の発見とは、MCFlOA及びANlO細胞中、HoxB 13の異所性発現は、細胞転移及び侵襲を増強し、HoxB13発現が腫瘍侵襲及び転移に寄与することを示す。MCFlOA細胞は、ATCC (American Type Culture Collection)からナンバーCRL-10317で入手可能である。MCFlOAは、非形質転換、非腫瘍形成の、インスリン、グルココルチコイド、及びEGFに反応する哺乳類乳房上皮細胞である。侵襲及び/又は転移のレベルの増加は、EGF、 コラーゲン、又はAPと1510、タンパク質-タンパク質相互作用を増加させる合成二量体化剤により増強される(例えば、Amaraら、Proc. Natl. Acad. ScL, USA 94:10618-10623, (1997) AP1510の議論、を参照のこと)。
【0032】
特定の理論にとらわれることなく、そして本発明の理解を向上させる提案により、HOXB 13とEGFRシグナル伝達経路の機能的共同は、タモキシフェン耐性の背景に関連しうる。何故なら、増殖因子シグナル伝達経路(EGFR, ERBB2)の活性化は、タモキシフェン-耐性腫瘍増殖を生ずるからだ(例えば、Nicholsonら、"Epidermal growth factor receptor expression in breast cancer": association with response to endocrine therapy." Breast cancer Res. Treat. 29:117-25 (1994)及びDowsett "Overexpression of HER-2 as a resistance mechanism to hormonal therapy for breast cancer."Endocr. Relat. cancer 8:191-5 (2001)を参照のこと)。ヒト乳がんで過剰に発現するERBB2の公知の役割を考えれば、HOXB13発現とEGFシグナル伝達経路の明らかなin vitro相互作用が、HOXB13の高発現を伴う腫瘍における治療の選択を可能にしうる。実際に、ERBB2遮断抗体(ヘルセプチン)によりERBB2経路をターゲッティングすることは、増殖因子シグナル伝達経路の活性化とエストロゲン非依存性腫瘍増殖のつながりに基づくタモキシフェン耐性の関係を示唆してきた。HOXB13は、ERシグナル伝達に対する直接の効果をも有し、何故ならホメオボックスタンパク質は、CBP/p300(Shenら. "The HOX homeodomain proteins block CBP histone acetyltransferase activity." MoI Cell Biol 21:7509-22 (2001)を参照のこと), a key co-activator for ER-dependent transcriptional regulation (Chakravartiら "Role of CBP/P300 in nuclear signaling." Nature 383:99-103 (1996) 及び Hanstein ら. "p300 is a component of an estrogenrecepter coactivator complex." Proc Natl Acad Sci. USA 93:11540-5 (1996)を参照のこと)のヒストンアセチルトランスフェラーゼ活性の阻害を示すからである。従って、HOXB13はERシグナル伝達経路のモジュレーションに直接的又は間接的に関連して良く、タモキシフェン耐性との臨床関係の注目を与える可能性がある。
【0033】
従って、本発明は、がんの例えば、乳がん又はメラノーマの、エストロゲン又はEGFに対する感度又は反応性に関連する治療の治療転帰を予測する方法を提供する。いくつかの実施態様において、本方法は、HoxB13発現のレベルを特定することを含んで成り、ここで上記正常な発現は、細胞による侵襲、 転移、及び/又は移動を予防するもしくは減らすために、エストロゲンレセプター(例えば、「抗エストロゲン」剤の使用)に関連する治療に対する感度又は反応性の欠損を予見するだろう。かかる治療は、1又は複数の特異的エストロゲンレセプターモジュレーター(SERM)、例えば、タモキシフェン;特異的エストロゲンレセプター下方制御物質(SERD)(又はその組み合わせ);アロマターゼ阻害物質(AI)、例えば、ステロイド又は非ステイロイド剤;及びエストロゲンレセプターの不可逆的阻害物質を伴う治療を含む。反対に、HoxB13発現増加の欠損は、細胞による侵襲、転移及び/もしくは転移を予防もしくは減らすかかる治療の効率を予測するだろう。
【0034】
アロマターゼは、体組織の胸部、肝臓、筋及び脂肪などにおけるエストロゲンの主要な源を提供する酵素である。ヘム補欠分子を介してアロマターゼを阻害する非ステロイド系AIの例としては、限定されないが、アナストロゾール(アリミデックス)、レトロゾール(フェマラ)、及びボロゾール(リビゾール)が挙げられる。アロマターゼを不活性化するステロイド系AIの例としては、限定されないが、エクセメスタン(アロマシン)、アンドロステンジオン、及びホルメスタン(レンタロン)が挙げられる。エストロゲンレベルを下げる他の治療形態としては、外科的(卵巣の物理的除去)又は化学的卵巣切除(エストロゲンの卵巣生産を遮断する剤の使用)が挙げられる。後者の限定的ではない例の一つは、ゴナドトロピン放出ホルモン(GnRH)のアゴニストの、例えばゴセレリン(ゾラデクス)である。
【0035】
類似して、本発明の実施態様としては、HoxB13発現のレベルを決定する方法を含み、ここで、上記正常な発現は、細胞による侵襲、転移、及び/もしくは移動を予防もしくは下げるためにEGFシグナル伝達経路に関連する治療に対する感度又は反応性を予測する。かかる治療としては、EGFレセプターファミリーの例えば、エルビチュクス、及びチロシンキナーゼ阻害物質の例えば、イレッサ及びタラセバと直接的に相互作用する剤を伴う治療が挙げられる。他の治療剤としては、EGFレセプター経路において他の因子(例えば限定されないが、タンパク質及び酵素)をターゲッティング又は阻害するものが挙げられる。反対に、 HoxB13発現増加の欠損は、細胞による侵襲、転移、及び/もしくは移動を予防するもしくは減らすかかる治療の効果の欠損を予測するだろう。
【0036】
上記のような治療は、手術前、例えば、ネオアジュバント治療の一部として、又は手術後、例えば、アジュバント治療として提供されうる。手術前治療の場合、治療転帰の非限定的な例としては、完全、介在、又は「臨床反応」又は「病理学的反応」に基づいた無反応が挙げられる。代替的に、転帰は、疾患衰退又は安定な疾患(例えば、転移又は侵襲の欠如)、又は疾患進行(例えば、後の転移又はがん再発)でありうる。手術後治療の場合、治療転帰の限定的ではない例としては、がんが理由の、局所再発、部位限定(regional)再発、対側再発、遠位再発、二次的一次再発、及び死又は生存をもたらすがん転移又は侵襲が挙げられる。他の転帰としては、転移又は侵襲、無再発生生存、無疾患生存及び全生存への関連が挙げられる。
【0037】
いくつかの実施態様において、従って、本発明は、外科的診療(例えば、全部又は一部における腫瘍の外科的除去)との組み合わせにおいて有利に使用されて良く、ここで外科的に除去された組織は、本明細書中に記載のように、HoxB13発現について試験される。発現レベルは、局所、部位限定、遠位、又は対側がん再発;1又は複数の転移腫瘍、例えばマクロ転移から生じるもの;二次的な一次;又は死亡もしくは生存、例えば、無再発又は無再発生存、無疾患生存、及び全生存の可能性の指標又は予測として使用されて良い。
【0038】
本発明を実施する様々な限定的ではない方法を考えれば、本発明は、ヒトホメオボックスB13(HOXB 13)(それはヒト以外の動物の侵襲性細胞を特定するためにヒト17番染色体の17q 21.2及びその動物上の同位置においてマッピングされている)の同定に基づいて行われて良い一方で、本発明はまた、HoxB13配列の発現と関連する他の配列の発現とともに行われて良いことに留意すべきである。
【0039】
HoxB13配列の発現レベルは、単独であるいは非がん細胞又は正常細胞に比較してがん細胞の様々な表現型又は特性を決定できる他の配列との組み合わせにおいて使用されて良い。非限定的な例として、本発明は、HoxB13及びEGFレセプターの両方の発現レベルがアッセイされるように行われうる。本発明の実施において使用される細胞は、上皮細胞増殖因子(EGF)の検出できる量のタンパク質性レセプターを発現しうる。いくつかの実施態様において、かかる細胞は、上皮細胞増殖因子(EGF)に反応性であるかあるいはEGFの存在下で増殖するように刺激される。代替的に、本発明は、HoxB13発現レベルが結節状態との組み合わせにおいて評価されるように実施されて良い。
【0040】
いくつかの実施態様において、HoxB13配列の発現は、同じ細胞含有サンプルにおいて、例えば、HoxB13発現が増加したかあるいはしないかを容易に示すことができるような発現レベルの比の形態において、他の遺伝子(例えば、限定されないが、がん及び非がんの両方又は正常細胞において同じレベルで発現する参照遺伝子)からの発現との組み合わせにおいて使用されて良い。代替的に、本発明はHoxB13配列の発現レベルのある配列(侵襲性又は侵襲可能性;転移の増加又は転移の可能性の増加;又は転移可能性の増加、の指標として侵襲性細胞で発現していない)の発現レベルの比を提供する。非限定的な例としては、2004年2月6日に提出された米国出願10/773,761に開示されているHoxb13発現のILl 7br発現に対する比又はHoxbl3のChdh発現に対する比である。当然、HoxB13発現の他の遺伝子(がん細胞中のILl7br及びChdhの発現を伴う)の比も使用されてよい。当業者は、HoxB13発現レベルの測定が、本明細書中に記載のように、HoxB13発現とがん表現型の関係の複雑さを伴わずに、かかる比において分子又は分母のいずれかとして使用されて良い。
【0041】
HoxB13配列の発現に対する観点は、客観的、分子基準に基づいて、がんに侵された対象者を診断する方法及び/又は治療する方法を提供する。この方法は、患者予後を特定するためにそして同様に疾患の転帰を特定するために使用されても良い。本発明の方法は、細胞形態学の使用を超える前進であり且つ患者に対するリスクを同定すること超える前進である。いくつかの実施態様において、この方法は、例えばTan-Chiuら(J Natl がん Inst. 95(4):302-307, 2003)によって議論された乳がんの相対的危険性のアッセイとの組み合わせにおいて使用されて良い。非限定的な例としては、本明細書中に記載のように、最小限に侵襲性の標本の例えば、胸部細胞のランダム(乳輪周辺)微細針吸引又は管内洗浄液サンプル(及び任意に、両性又は悪性乳がんについて、マンモグラムポジティブな乳房撮影にとの組み合わせにおいて又は加えて)をHoxB13配列の発現レベルについてアッセイすることを含む。本発明の他の用途は、本来、転移する疑いがあるがんなど、乳がんの進行をアッセイすることを含む。
【0042】
本発明のアッセイ方法は、当該アッセイが、HoxB13配列の発現を定量的又は定性的に反映する限り、当該配列の発現レベルに関連した方法が使用されて良い。いくつかの実施態様において、定量的アッセイ手段が使用されて良い。転移、侵襲性及び/又は転移特性を特定する能力は、HoxB13の発現レベルの関連性の認識によって供されて良く且つ発現の実際のレベルを特定するために使用される形態によって供されるのではない。配列の特徴の例えば、限定されないが、コード(DNA)するため、又は発現(RNA)させるために使用されるユニーク核酸配列、HoxB13配列又はHoxB13配列によってコードされるタンパク質に対して特異的なエピトープ、当該タンパク質の活性などを同定することが挙げられる。他の手段は、発現の増加の指標として、多くの組織において通常メチル化されるHoxB13コーディングDNAのジメチル化による。
【0043】
代替手段は、発現レベルの増加及び核酸の不活性化、欠失、又は減少した発現レベルの指標としてのメチル化の検出を含む。つまり、本発明は、1又は複数のHoxB13配列の発現を構成する1又は複数のDNA鋳型の、1又は複数の配列を発現する中間体として使用されるRNAの、又は1又は複数の配列によって発現されるタンパク質産物の、並びにかかる産物のタンパク質分解断片の1又は複数の観点をアッセイすることによって行われてよい。従って、例えば、DNA、RNA及びタンパク質分子の存在の、量の、安定性の、又は分解(例えば、速度を含む)の検出は、本発明の実施において使用されて良い。当然、任意のHoxB13核酸分子の測定は、非限定的な例として、プローブ配列をハイブリダイゼーションさせることによって行われてよい。
【0044】
更に、HoxB13がコードした産物の機能、又は翻訳後修飾は、発現の指標としてアッセイされて良い。非限定的な例として、HOXB13タンパク質の1もしくは複数の結合パートナーとの相互作用の、又はHOXB13タンパク質ポリペプチドの共有結合修飾の、例えば、限定されないが、リン酸化反応、グリコシル化又はアシル化反応の測定が挙げられる。当業者によって理解されるように、HoxB 13の発現レベルを測定することは、対象者の集団を規定する又は患者を少なくとも2つの集団、例えば、正常な細胞の発現レベルよりも上及び下に分けるために使用されて良い。
【0045】
本発明の実施は、特定のHoxB13配列と対象者のサンプルの細胞によって発現されるそれとのマイナーなミスマッチの存在によって影響を受けることはない。かかるミスマッチが存在する非限定的な例は、個々の種、例えばホモ・サピエンスに該当する個々のヒト患者間の配列多型の場合に確認される。HoxB13配列(マイナーなミスマッチにより変化する配列)の発現が侵襲性及び/又は転移表現型と相関するという知見は、発現のためのアッセイにより適切な細胞含有サンプルを伴う本発明の実施のために十分である。
【0046】
いくつかの実施態様において、本発明において使用される細胞含有サンプルは、単純なサンプル生検によって可能なものを超えて、夾雑細胞から分離された、又はさもなければ単離もしくは精製された単一の又は均質な細胞集団を含む。細胞は、例えば、限定されないが、人間などの生物に由来する、サンプルを含有する、液体含有、細胞含有、又は組織サンプルに由来しうる。他の非限定的な例としては、生検の、例えば、前がん生検又はがん診断生検が挙げられる。1又は複数の細胞は、非典型的又は前がんのものとして同定されて良いが、しかし、本明細書中に記載のように、本発明との使用が、侵襲性表現型の同定を可能にする。
【0047】
細胞を単離する方法は、当業者に公知であり且つ顕微解剖、レーザーキャプチャー顕微解剖(LCM)、又はレーザー顕微解剖(LMD)が挙げられる。代替的に、組織の「部分」内で解剖されなかった細胞が使用されて良い。かかる分析のために複数の手段、例えば、サンプル中の遺伝子発現の、全体的、又はほぼ全体的(例えばマイクロアレー上での遺伝子発現プロファイリング分析の一部として)なアッセイにおける発現の検出又は例えば、定量的PCR(Q-PCR)、又はリアルタイム定量的PCRによる検出を含む。他の非限定的な測定技術としては、マススペクトロスコピーに基づくものが挙げられる。
【0048】
更なる実施態様において、サンプルは、非侵襲性又は最小の侵襲性の手段により単離される。本発明のいくつかの実施態様において、サンプルは、異型管過形成(ADH)、in situ腺管がん(DCIS)、及び侵襲性管がん(IDC)から選択される1又は複数の乳がん細胞を含む。サンプル中の1又は複数のHoxB13配列の発現は、測定されて正常又は非がん細胞の参照データにおいて前記1又は複数の配列の発現と比較されて良い。いくつかの場合、参照データは、同じサンプル又は対象者から獲得される。本発明の実施態様において、Q-PCR、発現レベルを使用することは、サンプル中の1又は複数の参照遺伝子の発現レベルと比較されて良い又は発現レベルの比(非限定的な例として、例えば、デルタCtに基づいて)が使用されて良い。従って、本発明は、ADH、DCIS、及び/又はIDC細胞を、本明細書中に記載のように、がん表現型、例えば転移可能性を有する細胞として同定するために容易に使用されて良い。これはまた、ADH又はDCIS細胞を、侵襲可能性又は傾向を有するとして有利に同定することも可能にする。
【0049】
個々の胸部又はがん細胞が本発明の実施において単離される場合、ひとつの利点とは、夾雑する非胸部又は非がん細胞(例えば、浸潤性又は他の免疫系細胞)が1又は複数のHoxB13配列の発現の検出に可能性として影響を与えるようには存在しないことである。
【0050】
本発明が、ヒト乳がんの観点において主に記載されている一方で、それは、任意のヒト又は任意の動物のがんの観点において実施されて良い。本発明の適用のための好適な動物は、特に、農業用途のために重要なもの(例えば、限定的ではないが、ウシ、ヒツジ、ウマ、及び他の「家畜」)、及びヒト同伴者(例えば、限定されないが、イヌ及びネコ)が挙げられる。
【0051】
本明細書中で使用した場合、「遺伝子」とは、産物を、本来RNAであるかあるいはタンパク質であるかに関わらず個別の産物をコードするポリヌクレオチドである。複数のポリヌクレオチドが個別の産物をコードすることができることに留意されたい。この用語は、同じ産物、又は機能的に関連した遺伝子(例えば、機能の獲得、ロス、又は変更)その類似体を、染色体の位置及び正常な有糸分裂の間に組み替えする能力に基づいて、コードする遺伝子のアレル及び多型を含む。
【0052】
本明細書中、「配列」又は「遺伝子配列」とは、ヌクレオチド塩基の個別の順番からなる核酸分子又はポリヌクレオチドである。この用語は、本来、RNAであるかタンパク質であるかにかかわらず、個別の産物(即ち、「コーディング領域」)をコードする塩基の順番を意味する。複数のポリヌクレオチドが、個別の産物をコードできうることを理解されたい。開示されたHoxB13配列のアレル及び多型が存在して良く、そしてHoxB13配列もしくはアレルもしくは多型に開示された1又は複数の発現レベルを同定するために本発明の実施において使用されて良い。アレル又は多型の同定は、ある程度、染色体の位置及び有糸分裂中に組み換えする能力に依存する。
【0053】
用語「相関関係を有する」もしくは「相関関係」もしくはその同義語は、1又は複数の遺伝子の発現と生理学的表現型又は特徴との関係を意味する。
【0054】
「ポリヌクレオチド」とは、任意の長さの、リボヌクレオチド又はデオキシリボヌクレオチドのヌクレオチドの多型形態である。この用語は、分子の一次構造のみを意味する。従って、この用語は、二本鎖及び一本鎖DNA及びRNAを意味する。それはまた当業界で公知の標識など公知の型の修飾体の、例えば、メチル化、「キャップ」、1又は複数の天然に生ずるヌクレオチドの類似体による置換、及びヌクレオチド間修飾の、例えば、非電荷結合(例えば、フォスフォロチオエート、フォスフォロジチオエートなど)、並びにポリヌクレオチドの未修飾形態を含む。
【0055】
用語「増幅する」とは、本明細書中で使用される場合、増幅添付がDNA又はRNAポリメラーゼにより酵素的に調製されて良いことを意味する。「増幅」とは、本明細書中で使用される場合、所望の配列の複数のコピーを生産する方法、特にサンプルのそれを生産する方法を意味する。「複数のコピー」とは、少なくとも2コピーを意味する。「コピー」とは、必ずしも完全な配列相補性又は鋳型配列を固定する必要がないことを意味する。mRNAを増幅する方法は、一般に当業者に公知であり、そして逆転写PCR(RT-PCR)並びに米国特許 Application 10/062,857 (2001年10月25日に提出済)、並びにU.S. Provisional Patent Applications 60/298,847 (2001年7月15日に提出済) 及び 60/257,801 (2000年12月22日に提出済)が挙げられ、それらは全て本願明細書中参照によって開示されている。使用されて良い他の方法は、 定量的PCR(又はQ-PCR)である。代替的に、RNAは、当業に公知の方法によって対応するcDNAとして直接標識されて良い。
【0056】
「対応する」とは、核酸分子が、実質的な量の配列同一性を他の核酸分子と共有することを意味する。実質的な量とは、95%以上、通常は98%以上及び一層通常は99%以上を意味し、そして配列同一性は、Altschulら(1990), J. MoI. Biol. 215:403-41に記載のBLASTアルゴリズム(using the published default setting, i.e. parameters w=4, t=17)に記載のBLASTアルゴリズムを使用することで決定されている。
【0057】
「マイクロアレー」とは、固相支持体の例えば、限定されないが、ガラス、プラスティック、又は合成膜上で形成された、各々が規定の領域を有する、好適に個別の領域の一次元もしくは二次元もしくは三次元(及び固相)アレーである。マイクロアレー上の個別の領域の密度は、約50/cm2、一層好適にも約100/cm2以上、一層好適に少なくとも約500/cm2、しかし好適に約1,000/cm2未満の単一の固相支持体の表相乗で検出される固定化されたポリヌクレオチドの総数によって特定される。好適に、アレーは、合計で約500、約1000、約1500、約2000、約2500、又は約3000未満のポリヌクレオチドを含む。本明細書中で使用された場合、DNAマイクロアレーとは、サンプルに由来する増幅されたもしくはクローン化されたポリヌクレオチドとハイブリダイズさせるために使用されるチップもしくは他の表層上に配置されたオリゴヌクレオチドもしくはポリヌクレオチドプローブのアレーを意味する。アレー中のプローブの各特定の集団の位置は既知であるので、サンプルポリヌクレオチドの同定は、マイクロアレー中の特定の位置へのそれらの結合に基づいて決定されて良い。マイクロアレーの使用の代わりとして、任意のサイズのアレー、例えば、単一の遺伝子配列の発現を検出するために固相における二次元もしくは三次元配置の1もしくは複数の位置の配置が本発明の実施において使用されて良い。いくつかの実施態様において、本発明とともに使用するためのマイクロアレーは、フォトリソグラフィー技術を使用することによって(例えば、3'末端からの表層上での核酸プローブの合成)又は核酸合成、しかる後の固体表層上の沈着により調製されて良い。
【0058】
本発明は遺伝子発現の同定に依存するので、本発明のひとつの実施態様は、サンプル細胞mRNA、又は増幅したもしくはクローン化したそれらの、又は特定のHoxB13 配列に独特であるポリヌクレオチドに対するのハイブリダイゼーションによって発現を特定することを伴う。このタイプの好適なポリヌクレオチドは、少なくとも約16、少なくとも約18、少なくとも約20、少なくとも約22、少なくとも約24、少なくとも約26、少なくとも約28、少なくとも約30、又は少なくとも約32の連続する、他の遺伝子配列では発見されないHoxB13配列の連続する塩基対を含む。用語「約」とは、先の文章中で使用された場合、記載した数値からの1の増加又は減少を意味する。一層好適には、少なくとも又は約50、少なくとも又は約100、少なくとも又は約150、少なくとも又は約200、少なくとも又は約250、少なくとも又は約300、少なくとも又は約350、少なくとも又は約400、少なくとも又は約450、又は少なくとも又は約500の連続する、他の遺伝子配列中では発見されない塩基である。用語「約」とは、本明細書中で使用された場合、記載した数値からの10%の増加又は減少を含む。より長いポリヌクレオチドは、もちろんサンプルの核酸に対するハイブリダイゼーションに影響を与えないマイナーミスマッチ(突然変異の存在による)を含みうる。かかるポリヌクレオチドは、本明細書中に記載の、遺伝子の配列、又はその独特の部分へハイブリダイズすることができるポリヌクレオチドプローブとも言われる。かかるポリヌクレオチドは、それらの検出を助けるために標識されて良い。好適に、配列は、遺伝子、かかるmRNAに対応するcDNA及び/又はかかる配列の増幅されたバージョンによってコードされるmRNAのものである。本発明の好適な実施態様において、ポリヌクレオチドプローブは、アレイ、他の固体支持装置、又はプローブを局在化させる個々のスポット上に固定化される。
【0059】
本発明の他の実施態様において、HoxB13配列の全部又は一部が例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)及び様々なその変更型の、例えば、限定されないが、定量的PCR(Q-PCR)、逆転写PCR(RT-PCR)、及びリアルタイムPCR(例えば、サンプル中の各配列に関するmRNAコピーの初期量を測定するための手段として)、任意にリアルタイムRT-PCR又はリアルタイムQ-PCRによって増幅及び検出されて良い。かかる方法は、HoxB13配列の部分に対して相補的である1又は2個のプライマーを使用するだろうが、ここで、当該プライマーは核酸合成に使用されて良い。新たに合成された核酸は任意に標識され且つ直接的に又は本発明のポリヌクレオチドに対するハイブリダイゼーションによって検出されて良い。新たに合成された核酸は、本発明のポリヌクレオチド(配列を含む)と、それらがハイブリダイゼーションするのを可能にする条件下で接触させられて良い。発現した核酸の発現を検出する更なる方法は、RNAse保護アッセイ、例えば、細胞の液体ハイブリダイゼーション、及び細胞のin situ ハイブリダイゼーションが挙げられる。
【0060】
代替的に、本発明の更なる他の実施態様において、HoxB13発現は、対象者の前記細胞サンプル又は生体流体において、個々のHoxB13遺伝子産物(タンパク質)、又はそのタンパク質分解断片の1又は複数のエピトープに対して特異的な1又は複数の抗体の使用によって注目の細胞サンプル中で発現したタンパク質を分析することによって特定されて良い。前期細胞サンプルは、例えば細胞表層マーカーに対して標識された抗体の使用しかる後の蛍光活性化細胞ソーティング(FACS)の使用により対象者の血液から濃縮したひとつの乳がん上皮細胞であって良い。かかる抗体は、好適に遺伝子産物に結合した後にそれらの検出を容易にするために標識される。本発明の実施において使用するための適切な検出方法論は、限定されないが、細胞含有サンプル又は組織の組織免疫化学、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)の例えば、細胞含有組織又は血液サンプルの抗体サンドイッチアッセイ、マススペクトロスコピー、及びイムノ-PCRが挙げられる。
【0061】
用語「標識」又は「標識された」とは、標識された分子の存在の検出可能シグナル表示を生み出すことができる組成物を意味する。適切な標識としては、ラジオアイソトープ、ヌクレオチドクロモフォア、酵素、基質、蛍光分子、化学発光成分、電磁粒子、生物蛍光分子などが挙げられる。従って、標識は、スペクトロスコピー、光化学、生物化学、免疫化学、電気、光学又は化学的手段によって検出可能である。
【0062】
用語「支持体」とは、常用の支持体の例えば、ビーズ、粒子、計深棒、繊維、フィルター、膜及び生理食塩水又はシリケート支持体の例えば、ガラススライドが挙げられる。
【0063】
胸部由来の細胞含有のコンセプトとは、乳がんに浸されている、浸されている疑がある、又は発症する危険性のある個体に由来する胸部組織又は流体のサンプルを意味する。サンプルは、一次単離体(培養細胞との対象において)であり且つ任意の非侵襲性又は最小限の侵襲性手段によって、例えば、限定されないが、管洗浄液、微細針吸引、針による生検、米国特許6,328,709に記載の装置及び方法、又は当業者に公知の任意の他の適切な手段によって回収されて良い。代替的に、「サンプル」は、侵襲性方法、限定されないが、外科的生検によって回収されて良い。
【0064】
本発明において使用するための細胞含有サンプルの非限定的な例としては、流体サンプルの例えば、血液、血清、又は血しょう;上皮細胞、内皮細胞、循環する腫瘍細胞、又は任意の注目の細胞について濃縮したサンプル;細胞及び/又はタンパク質、DNA、又はRNAを含む流体の、例えば、尿もしくは膀胱洗浄物、又は細胞ペレット又はそのスプレッド(spread thereof);頸部断片(例えば、PAP塗付物);子宮内膜断片;排泄物;口腔細胞;例えば、任意に身体に由来するもの、例えば、腫瘍塊などを含む細胞含有吸引物;剥離物を含有する細胞;及び組織サンプルの、例えば組織の微針吸引物、針生検、切除生検及びcに由来するシンプレップ(ThinPrep)が挙げられる。いくつかの実施態様において、サンプルは、対象者もしくは患者の一次(原)がんもしくは腫瘍である。腫瘍は、任意にエストロゲンレセプター陽性であって良い。
【0065】
「発現」及び「遺伝子発現」には、核酸物質の転写及び/又は翻訳が含まれる。
【0066】
本明細書中で使用された場合、用語「含んで成る」及びその同義語は、それらの包括的な意味;即ち、用語「含む」及びその対応する同義語に等しい。
【0067】
事象を生じさせることを「可能」にする条件又は事象、例えば ハイブリ鎖伸長などの事象を生じさせるために適切である条件又は適切な条件とは、かかる事象を生じさせない条件である。従って、これらの事象が生じるのを増強する、促す及び/又は誘導する条件は、当業者に公知であり且つ本明細書中に記載のように、例えば、ヌクレオチド配列の性質、温度、及びバッファー条件に依存する。これらの条件は、何の事象が望ましいか、例えばハイブリダイゼーション、解裂、鎖伸長又は転写に依存する。
【0068】
配列「突然変異」とは、本明細書中で使用された場合、参照配列との比較において本明細書中に開示された注目の遺伝子の配列の任意の変化を意味する。配列突然変異は、単一のヌクレオチドの置換、欠失又は挿入が理由複数のヌクレオチドの変化が挙げられる。単一のヌクレオチド多型(SNP)は、本明細書中で使用された場合、配列の突然変異を意味する。本発明は、遺伝子発現の相対レベルに依存するので、遺伝子の非コーディング領域における突然変異の相対レベルをベースとしているので、本明細書中に記載のとおり、遺伝子の非コーディング領域における突然変異も本発明の実施においてアッセイされて良い。
【0069】
「検出」又は「検出すること」とは、遺伝子発現及びそこにおける変化の直接的及び間接的検出の任意の手段を含む。例えば、産物の「検出可能な増加」は、間接的又は直接的に確認されて良く、そして当該用語は、任意の増加を含む。産物の「検出可能な減少」は、直接的又は間接的に確認されて良く、そして当該用語は任意の減少(例えば、検出可能シグナルの不在を含む)を示す。
【0070】
HoxB13配列の発現の増加及び減少は、正常細胞における発現を超える%又は倍の変化に基づき以下の用語で規定される。増加は、正常細胞の発現レベルに比較して、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、120、140、160、180、又は200%の増加であって良い。代替的に、倍の増加は正常細胞の発現レベルに比較して1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9.5又は10倍であって良い。減少は、正常細胞中における発現レベルと比較して10、20、30、40、50、55、60、65、70、75、80、82、84、86、88、90、92、94、96、98、99又は100%であって良い。
【0071】
「選択的エストロゲンレセプターモジュレーター」又はSERMとは、いくつかの組織においてエストロゲン(アゴニスト)のように働くが他の組織(アンタゴニスト)においてエストロゲンを遮断する「抗エストロゲン」剤を意味する。「選択的エストロゲンレセプター下方制御物質」(又は「SERD」)又は「純粋な」 抗エストロゲンとは、全部の組織においてエストロゲン活性を阻害する剤を含む。Howellら(Best Bractice & Res. Clin. Endocrinol. Metab. 18(l):47-66, 2004)を参照のこと。本発明の好適なSERMは、例えば、乳がんの胸部組織及び細胞などのエストロゲンのアンタゴニストであるものである。かかる非限定的な例としては、TAM、ラロキシフェン、GW5638及びICI 182,780が挙げられる。様々なSERMによる作用の可能なメカニズムが確認されている(例えば、Jordan ら、 2003, 乳がんRes. 5:281-283; Hall et al., 2001, J. Biol. Chem. 276(40):36869-36872; Dutertreら、 2000, J. Pharmacol. Exp. Therap. 295(2):431-437;及びWijayaratneら, 1999, Endocrinology 140(12):5828-5840)を参照のこと。本発明の背景におけるSERMの他の非限定的な例としては、トリフェニルエチレン、例えばタモキシフェン、GW5638、TAT-59、クロミフェン、トレミフェン、ドロロキシフェン、及びヨードキシフェン;ベンゾチオフェン、例えばアルゾキシフェン(LY353381又はLY353381-HC1);ベンゾピラン、例えばEM-800;ナフタレン、例えばCP-336,156;及びERA-923が挙げられる。
【0072】
SERD又は「純粋な」アンチエストロゲンの非限定的な例としては、剤の例えば、ICI182,780 (フルベストラント又はファスロデクス)又は経口類似物のSRl6243及びZK191703並びに本明細書中に記載のアロマターゼ阻害物質及び化学阻害物質及び化学的卵巣アブレーション剤が挙げられる。
【0073】
本明細書中で使用された場合SERMによって包含される他の剤としては、プロゲステロンレセプター阻害物質及び類縁薬物の、例えばプロゲストミメチクスの例えば、メドロキシプロゲステロンアセテート、メガース、及びRU-486;並びにER作用のペプチドベースの阻害物質の、例えば、LH-RH類似物(ループロリド、ゾラデクス、[D-Trp6]LH-RH)、ソマトスタチン類似物、及びERのLXXLLモチーフ擬態並びにチボロン及びレスベラトロールが挙げられる。上記のように、本発明の好適なSERMは、例えば、乳がんの感受性組織及び細胞におけるエストロゲンのアンタゴニストである。好適なSERMの非限定的な例としては、任意のSERMの実際又は熟考された代謝産物(in vivo)、例えば、限定されないが、4-ヒドロキシタモキシフェン(タモキシフェンの代謝産物)、EM652(又はSCH 57068、ここでEM-800はEM-652のプロドラッグである)、及びGW7604(GW5638の代謝産物)が挙げられる。例えば、Willsonら(1997, Endocrinology 138(9):3901-3911)及びDauvoisら(1992, Proc. Nat'l. Acad. Sci., USA 89:4037-4041)を特異的SERMの議論に関して参照のこと。
【0074】
他の好適なSERMは、タモキシフェン又は4-ヒドロキシタモキシフェンとして同じ関連する遺伝子発現プロファイルを生み出すものである。かかるSERMを同定する1つの例は、levensonら(2002,cancer Res,62:4419-4426)により供される。
【0075】
かかるSERMを同定するための手段の一つの例は、Levensonら(2002, がん Res. 62:4419-4426)によって提供されている。本明細書中で使用した全ての技術及び科学的用語は、特に断らない限り、本発明の属する当業者に通常に理解されるのと同じ意味を有する。
【0076】
本発明の実施において、HoxB13 の発現レベル(増加した又は減少した)を特定するために、当業界における任意の公知の方法が使用されて良い。本発明の一つの好適な実施態様において、同定され且つ開示された遺伝子とハイブリダイズするRNAの検出に基づく発現が使用される。これは、本明細書中に記載されているかあるいは公知であるか当業者においてそのように認識されている任意のRNA検出又は増幅+検出方法の、例えば、限定されないが、安定化配列の存在、又は不在を検出する方法によって容易に行われて良い。
【0077】
代替的に、DNA状態の検出に基づく発現が使用されて良い。HoxB13遺伝子のメチル化された又は欠失したものとしての検出は、発現減少を検出するために使用されて良い。HOXB 13のプロモーター領域の状態は、HOXB13配列の発現の減少の指標としてアッセイされて良い。限定的ではない例としては、プロモーター領域において発見される配列のメチル化状態である。反対に、増幅体としてのHoxB13遺伝子の検出は、特に乳がん転帰との相関関係において増加した発現を有する遺伝子のために使用されて良い。これらの方法は、当業者に公知のPCRベースの、蛍光in situ ハイブリダイゼーション(FISH)及び染色体in situ ハイブリダイゼーション(CISH)によって容易に行われて良い。
【0078】
HOXB13タンパク質の存在、レベルもしくは活性における増加、もしくは減少の検出に基づく発現も使用されて良い。検出は、任意の、免疫組織化学(IHC)ベースの、生体流体ベースの(ここでHOXB13ポリペプチド又はその断片は、生体流体、例えば、限定されないが、血液中で発見される)、抗体(例えば、タンパク質が存在する場合に対抗する自己抗体)ベースの、剥離細胞(がんに由来する)ベースの、マススペクトロスコピーベースの、及び画像(標識されたリガンドの使用を含む)ベースの、当業界で公知且つタンパク質の検出のために適切であるとして認識されている方法によって行われて良い。抗体及び画像ベースの方法は、加えて、非侵襲性手順(例えば、管洗浄又は微細針吸引)によって獲得した細胞の使用によるがんの特定の後に、腫瘍の局在化のために更に有用であり、ここでがん細胞の源は未知である。標識された抗体又はリガンドは、患者内のがんを局所化するため又は生体流体からの剥奪したがん細胞の濃縮における補助のために使用されて良い。
【0079】
かかる検出の方法で使用するための抗体としては、ポリクローナル抗体であって、入手可能な天然に生ずる源から任意に単離される抗体、及びモノクローナル抗体の、例えば、HOXB13ポリペプチドの又はその抗原としてのその断片使用によって調製されたものを含む。かかる抗体、並びにその断片(例えば、限定されないがFab断片)は、他のポリペプチドを排除し、HOXB13ポリペプチドへ特異的に結合して検出可能シグナルを生産するそれらの能力によって非正常又はがん細胞を検出又は診断する働きをする。同じ能力を有する組換え、合成、及びハイブリッド抗体は、本発明の実施において使用されても良い。抗体は、HOXB13ポリペプチド又はその断片による免疫化により容易に生じさせられて良く、そしてポリクローナル血清は、本発明の実施においても使用されて良い。
【0080】
抗体ベースの検出方法は、当業者に周知であり且つサンドウィッチ及びELISAアッセイ並びにウェスタンブロット及びフローサイトメトリーベースのアッセイが非限定的な例として挙げられる。かかる方法における分析のためのサンプルには、HOXB13ポリペプチドを含む任意の方法が挙げられる。任意の非限定的な例としては、胸部細胞及び細胞含有物を含むもの並びにポリペプチドを含有する生体流体(例えば、非限定的な例として血液、血清、唾液、リンパ流体、並びに粘膜及び他の細胞分泌物)が挙げられる。
【0081】
発現を特定するために核酸ベースのアッセイを使用する好適な実施態様は、1又は複数のHoxB13配列の固層支持体、例えば、限定されないが、固層支持体又は当業者に公知の技術に基づくビーズ上へのアレイとしての固定化が挙げられる。代替的に、当業者に公知の溶液ベースの発現アッセイも使用されて良い。固定化された1又は複数のHoxB13遺伝子は、独特又は本来HoxB13に対して特異的であるポリヌクレオチドの形態であって良く、従って当該ポリヌクレオチドはHoxB13DNA又はRNAへハイブリダイズすることができただろう。これらのポリヌクレオチドは、HoxB13に対応するDNA又はRNAとのハイブリダイゼーションが影響を受けないように、完全長HoxB13遺伝子又は任意の干渉(例えば、ミスマッチ又は挿入された非相補的塩基対)が最小である遺伝子(配列の5'又は3'末端からの欠失による、当業者に公知の完全長配列よりも短い最大で1個のヌクレオチド)の当該遺伝子の短い配列であって良い。好適に、使用されるポリヌクレオチドは、当該遺伝子の3'末端に由来し、例えば、遺伝子又は発現した配列のポリアデニル化シグナル又はポリアデニル化部位から約350、約300、約250、約200、約150、約100、又は約50以内ヌクレオチドである。開示された遺伝子の配列に比較して突然変異を含むポリヌクレオチドは、突然変異の存在が、検出可能シグナルを生み出すハイブリダイゼーションをなおも可能にする限り、使用されて良い。
【0082】
固定化された1又は複数のHoxB13遺伝子は、サンプルの対象者(例えば、サンプルを獲得した患者)の転帰が知られていない1又は複数の胸部細胞サンプルから調製した核酸サンプルの状態を特定するため又はサンプルの対象者に既に与えられている転帰を確認するために使用されて良い。本発明を限定することなく、かかる細胞は、ER+又はER-乳がんを有する患者に由来しうる。固定化された1又は複数のポリヌクレオチドは、適切な条件下でサンプルに由来する対応する核酸分子に対して特異的にハイブリダイズさせるためにのみ十分である必要がある。
【0083】
当業者によって明らかであるように、いくつかのHoxB13配列は、3'ポリA(又は相補鎖上のポリT)ストレッチを含み、それは開示された配列の特異性に寄与しない。従って、本発明は、3'ポリA(又はポリT)ストレッチを欠くHoxB13配列で行われて良い。開示された配列の特異性は、核酸中にのみ発見される配列の部分又は実態、例えば、その3'未翻訳部分に発見される特異的な配列などを意味する。本発明の実施のための好適な特異的配列は、HoxB13のコンセンサス配列に寄与するものであり、従ってユニーク配列は、いくつかの個体に存在する多型に特異的であるよりも様々な個体における発現を検出することにおいて有用であろう。代替的に、ある個体又は亜種に対して特異的な配列が使用されて良い。好適なユニーク配列は、本明細書に記載のように、本発明の所定の長さのポリヌクレオチドである。
【0084】
本発明の特に好適な実施態様において、HoxB13配列の3'未翻訳及び/又は非コーディング領域に存在する配列を有するポリヌクレオチドが、本発明の実施において、がん細胞又は乳がん細胞の発現レベルを検出するために使用される。かかるポリヌクレオチドは、HoxB13配列のコーディング領域の3'部分で発見される配列を任意に含みうる。コーディング及び3'非コーディング領域に由来する配列の組み合わせを含むポリヌクレオチドは、好適に、介在する1又は複数の異種配列を伴わず連続的に配置された配列を有する。
【0085】
代替的に、本発明は、がん細胞又は乳がん細胞における発現のレベルを検出するためにHOXB13配列の5'非翻訳領域及び/又は非コーディグ領域に存在する配列を有するポリヌクレオチドで実施されて良い。かかるポリヌクレオチドは、任意に、コーディング領域の5'部分で発見される配列を含む。コーディング及び5'非コーディング領域に由来する配列の組み合わせを含むポリヌクレオチドは、好適に、介在する1又は複数の非相同配列を伴わず、連続的に配置された配列を有する。本発明は、HOXB13配列のコーディング領域中に存在する配列で行われても良い。
【0086】
好適なポリヌクレオチドは、少なくとも約16、少なくとも約18、少なくとも約20、少なくとも約22、少なくとも約24、少なくとも約26、少なくとも約28、少なくとも約30、少なくとも約32、少なくとも約34、少なくとも約36、少なくとも約38、少なくとも約40、少なくとも約42、少なくとも約44、又は少なくとも約46の連続するヌクレオチドの3'又は5'非翻訳及び/又は非コーディング領域に由来する配列を含む。用語「約」とは、先の文中で使用したように、特定の数値からの1の増加又は減少を意味する。一層好適には、少なくとも又は約50、少なくとも又は約100、少なくとも約150、少なくとも又は約200、少なくとも又は約250、少なくとも又は約300、少なくとも又は約350、又は少なくとも又は約400の連続するヌクレオチドの配列を含むポリヌクレオチドである。用語「約」とは、先の文中で使用したように、規定した数値からの10%の増加又は減少を意味する。
【0087】
本発明のポリヌクレオチド中で発見されるように、HoxB13コーディング領域の3'又は5'末端に由来する配列は、上記と同じ長さのものであり、但し、それらはコーディング領域の長さによって天然に限定されることを除く。コーディング領域の3'末端は、コーディング領域の最大で3'コーディング領域の半分の配列を含みうる。反対に、コーディング領域の5'末端は、5'コーディング領域の半分の配列を含んで良い。当然、上記配列、又はそのコーディング領域及びポリヌクレオチドを含む部分は、それらの全体が使用されて良い。
【0088】
本発明の他の実施態様において、HoxB13配列の5'及び/又は3'末端に由来するヌクレオチドの欠失を含むポリヌクレオチドが使用されて良い。欠失は好適に5'及び/又は3'末端に由来する1-5、5-10、10-15、15-20、20-25、25-30、30-35、35-40、40-45、45-50、50-60、60-70、70-80、80-90、90-100、100-125、125-150、150-175、又は175-200ヌクレオチドの欠失であり、しかし、欠失の程度は配列の長さ及び発現レベルの検出のためにポリヌクレオチドを使用することができる必要性によって天然に限定されるだろう。
【0089】
HoxB13配列の3'末端に由来する本発明の他のポリヌクレオチドには、定量的PCRのためのプライマー及び任意のプローブが含まれる。好適に、当該プライマー及びプローブは、遺伝子又は発現した配列のポリアデニル化シグナル又はポリアデニル化部位に由来する約350未満、約300未満、約250未満、約200未満、約150未満、約100未満、又は約50未満のヌクレオチド領域を増幅するものである。
【0090】
本発明の実施において使用するための他のポリヌクレオチドは、ハイブリダイゼーション技術の使用によってそれらの発現を検出するためにHoxB13配列に対して十分に相同性を有するものが挙げられる。かかるポリヌクレオチドは、好適に、約又は95%、約又は96%、約又は97%、約又は98%、又は約又は99%の同一性をHoxB13配列と有するものである。同一性は、上記BLASTアルゴリズムを使用することで同定される。本発明の実施において使用するための他のポリヌクレオチドは、ハイブリダイゼーションのための約30%v/v〜約50%ホルムアミド及び約0.01M〜約0.15M塩及び約55〜約65℃以上における洗浄条件のための約0.01M〜約0.15Mの塩のストリンジェント条件、又はそれと等しい条件下で本発明のポリヌクレオチドに対してハイブリダイズする能力に基づいて記載されている。
【0091】
本発明の更なる実施態様において、ヒトHoxB13配列の1方又は両方の鎖を含んで成る一本鎖核酸分子の集団は、少なくとも前記集団の一部が、がんの例えば、 乳がん細胞のRNAから定量的に増幅した核酸分子の鎖の一方又は両方とハイブリダイズしうるようなプローブとして提供されている。集団は、がん又は乳がんに由来する分子又は増幅された分子のセンス鎖が当該集団の一部にハイブリダイズしうるようなヒトHoxB13配列のアンチセンス鎖のみであって良い。集団は好適に、正常細胞に由来する相補的HoxB13配列を含む所定量の発現した(又は増幅した)核酸分子との比較して十分に過剰な量のヒトHoxB13配列の鎖の一本鎖又は両方の鎖を含んで成る。この条件は、がん又は乳がん細胞において発現した核酸の量の増加を、増加として容易に検出可能にする。
【0092】
代替的に、一本鎖分子の集団は、がん又は乳がん細胞から増幅した核酸分子の一方もしくは両方の鎖の全てと同じもしくは過剰であり、従って、当該集団は、鎖の一方又は両方の全部に対して十分にハイブリダイズする。好適な細胞は、ER+であるかあるいはタモキシフェンによる治療又は乳がんに対する1もしくは複数の他の「抗エストロゲン」剤治療が考えられている乳がん患者のものである。一本鎖分子は当然、本明細書中に記載の二本鎖核酸分子又はポリヌクレオチドを含む任意のHoxB13配列の変性形態であって良い。
【0093】
集団は、核酸分子を、正常な細胞の核酸分子の量の少なくとも2倍の量で含むHoxB13配列にハイブリダイズするように記載されうる。上記実施態様において、核酸分子は、細胞での規定量の発現をそれらが反映するように、がん又は乳がん細胞から定量的に増幅されたものであって良い。
【0094】
集団は好適に、任意に、マイクロアレー上の位置に形態するおいて固層支持体上に固定化されている。集団の部分は、好適に、RNA増幅によって非正常又は異常(胸部)細胞から定量的に増幅された核酸分子に対してハイブリダイズする。増幅されたRNAは、HoxB13含有配列に関して定量的であった増幅を使用する限り、がん又は乳がん細胞に由来するものであって良い。
【0095】
他の実施態様において、1又は複数のサンプルがん細胞に由来する核酸は、HoxB13配列のみが増幅され細胞において発現した他の遺伝に由来する混在するバックグランドシグナルが減らされるように好適に適切なプライマーの使用によって増幅され、代替的に、そして他の遺伝子の発現が分析される又は非常にわずかな細胞(又はひとつの細胞)が使用される場合、サンプル由来の核酸は、固定化されたポリヌクレオチドに対するハイブリダイゼーションの前に全体的に増幅されて良い。当然、RNA又はそのcDNAカウンターパートは、当業者に公知の方法によって、直接標識され且つ使用されて良い。
【0096】
本明細書中に記載のアッセイ実施態様は、侵襲性がんを同定又は検出する多くの様々な方法において使用されて良い。いくつかの場合、これは、一次スクリーニングとしてマンモグラフィー又は生体試験を既に受けていて良い患者のための二次スクリーニングを反映するだろう。一次スクリーニングから陽性であれば、後の、針による生検、管洗浄、微針吸引、又は他の類似する最小の侵襲性方法が、アッセイ実施態様において使用するためのサンプルを提供しうる。本発明は、非侵襲性プロトコルの、例えば管洗浄又は微針吸引との組み合わせにおいて、胸部細胞サンプルを調製するために特に有用である。
【0097】
本発明は、(乳)がん転帰を区別する(又は描くする)ために、HoxB13発現レベルの形態において、一層の客観的な基準を提供する。本発明の特に好適な実施態様において、アッセイは、がんが侵襲性であるかどうかに基づいて、良好及び乏しい転帰の間を特定するために使用される。比較は、約10、約20、約30、約40、約50、約60、約70、約80、約90、約100、又は約150月後の間の転帰を区別するために行われて良い。
【0098】
良好及び乏しい生存の転帰は、互いの比較において相対的に規定される一方、「良好な」転帰は、1又は複数の乳がん腫瘍を除去するために外科的診断の約60月後、50%を越えてより良い生存率として確認されて良い。「良好な」転帰は、外科的診断の60月後、約60%、約70%、約80%又は約90%より良好な生存率であって良い。「乏しい」転帰は、1又は複数の乳がん腫瘍を除去するために外科的診断後約60月後に50%未満の生存率として確認されうる。「乏しい」転帰は、外科的診断の約40月後70%未満の生存率、又は約20月後80%未満の生存率でありうる。
【0099】
一つの実施態様において、乳がん細胞サンプルの単離及び分析は以下のとおり行われうる:
(1)管洗浄又は他の非侵襲性もしくは最小の侵襲性手段が、サンプルを獲得するために患者に対して行われる。
(2)サンプルが調製されて顕微鏡用スライド上へコーティングされる。但し、管洗浄は、組織学的に検査されうる細胞のクラスターをもたらす。
(3)病理学者又は画像分析ソフトウェアは、異常な細胞の存在についてサンプルをスキャンする。
(4)もし、異常な細胞が確認されれば、それらの細胞は収穫される(例えば、顕微解剖の例えばLCMによって).
(5)RNAは、収穫した細胞から抽出される。
(6)RNAは、HoxB13配列の発現について、直接又はcDNAへの転換もしくはそれらの増幅の後にアッセイされる。
【0100】
本発明の使用により、医者は、本発明の実施により特定した予後に基づいて乳がんに対してタモキシフェン又は他の治療剤による治療を処方するかあるいは差し控える。
【0101】
上記議論はまた、明らかな病変が検出され、しかる後に胸部からの微細針吸引又は針生検をする場合にも適用可能である。細胞が播かれそして病理学者によって又は細胞を上記分析のために選択する自動化画像装置によって確認される。
【0102】
本発明は、固体組織生検、例えば、凍結させた又はFFPE(ホルマリン固定化、パラフィン包埋)標本として保存されたものとともに使用されても良い。代替的に、新鮮な又は固定化されたサンプルが獲得され且つ使用されて良い。非限定的な例として、固体生検は、視覚化、しかる後の(胸部)がん転帰を特定するために本明細書中で同定された1又は複数の遺伝子の発現を特定するこために回収され且つ調製されて良い。他の限定的な例として、固体生検は、回収されそして視覚化しかる後のHoxB13発現の特定のために調製されて良い。一つの好適な手段は、HoxB13発現をアッセイするためのプローブを同定するポリヌクレオチド又はタンパク質とのin situハイブリダイゼーションの使用による手段である。固定化されたサンプルの非限定的な例としては、ホルマリン又はホルムアルデヒド(例えば、FFPEサンプル)で、Boudinグルタルアルデヒド、アセトン、アルコール、又は他の固定化剤の、例えば、免疫組織化学(IHC)のために細胞又は組織サンプルを固定化するためのもので固定化されたものが挙げられる。他の例は、核酸及び/又はタンパク質と結合した細胞を沈殿させる固定化剤が挙げられる。本発明のいくつかの用途において、サンプルは標準的な病理学的技術の例えば、限定されないが、免疫組織化学ベースのアッセイを使用することでは分類されていなかった。
【0103】
代替方法において、固体組織生検は、分子を抽出ししかる後にHoxB13を分析するために使用されて良い。これは、がん細胞又はがんの疑いのある細胞のみを視覚化し且つ回収する必要性を除外する可能性を供する。この方法は当然、分析のために、陽性として選択された細胞が回収され且つ分子を抽出するように変更が加えられて良い。これは、遺伝子発現分析に対する必須条件として視覚化及び選択を必要とするだろう。FFPEサンプルの場合、細胞が獲得され、しかる後に本明細書中に記載のように、RNA抽出、増幅及び検出されて良い。
【0104】
本発明の方法によって提供されるこの方法は、全部又は一部が自動化されて良い。
【0105】
本発明の更なる観点は、臨床作用との関係における本発明の使用を供する。いくつかの実施態様において、HoxB13発現の特定又は測定は、本明細書中に記載のように、医療ケアの提供のサポートにおける診断サービスの提供など患者に対して提供する医療ケアの一部として行われる。従って、本発明は、本明細書中に記載のように、患者の医療ケアの方法において患者から獲得した細胞含有サンプル中でのHoxB13発現レベルを決定又は測定することを含んで成る方法を含む。この方法は更に、本明細書中に記載の態様において、がん表現型の存在を表示又は予測することなどのように、特定/測定の解釈、又は有意性を更に含んで成る。
【0106】
発現レベルの特定又は測定には、様々な類縁作用が先に起こりうる。いくつかの実施態様において、前記測定には測定の必要性があるようにしてヒト対象者の診断又は特定が先に行われる。測定は、測定のための必要性の、例えば、医者、看護士、もしくは他のヘルスケア提供者、もしくはそれらの指示の下で働くものによる、又は、健康保険又は維持機関の人間実施に対して必要な支払い又は補償を基にして測定の実行を承認するによる測定の主要決定が先に生ずる。
【0107】
測定には、実際の測定に必要な準備活動も先に生じうる。非限定的な例としては、ヒト 対象者からの細胞含有サンプルの実際の獲得;もしくは細胞含有サンプルの受け取り;もしくは細胞含有サンプルを選択すること;もしくは細胞含有サンプルから細胞を単離すること;もしくは細胞含有サンプルの細胞からRNAを獲得すること;細胞含有サンプルの細胞からのRNAを逆転写することが挙げられる。サンプルは、本明細書中、本発明の実施のために任意に記載されて良い。
【0108】
更なる実施態様において、本発明は、患者の医療ケアにおける方法又は本発明の他の方法の実施のための、順番の決定又は順番を受ける方法を提供する。当該順番決定は、医者、看護士、もしくは他のヘルスケア提供者、もしくはそれらの指示の下で働くもの、もしくは、実施に対して必要な支払い又は補償を基にして測定の実行を承認する健康保険又は維持機関の人間によって行われる。順番決定は、任意の連絡手段、例えば、人における、記述、口伝え、電気的、デジタル、アナログ、電話、ファックス、メール又は他の米国管轄において通過する方法によって行われる。
【0109】
本発明は更に、患者の医療ケアにおける方法又は本発明の他の方法の実施などのテストための、補償又は支払いを処理する方法を供する。償還又は支払いの処理の方法は、1)支払いが受け取られた、もしくは2)支払いが他の支払い者によって行われる予定である、もしくは3)支払いが、発現レベル検出の実施後に紙上又はデータベース上未払いを維持することを示すことを含んで成りうる。このデータベースは、電子形態の例えば、本発明の範囲内のコンピューター実行データベースを伴う任意の形態であって良い。この表示は、紙上又はこのデータベース上のでのコード(例えば、CPTコード)の形態であって良い。「他の支払費」とは、償還又は支払いの事前要請がなされたかわからない(beyond)任意の人又は実体であって良い。
【0110】
代替的に、本発明は、患者の医療ケアにおいて開示された方法の技術的又は実際の性能について;当該方法よりもたらされる解釈について;又は本発明の任意の他の方法について償還又は支払いを受けることを含んで成りうる。当然、本発明は、償還又は支払いを受けるために、他の人又は団体を指示することを含んで成る実施態様をも伴う。順番決定は、上記のような任意の連絡手段によって行われうる。受け取りは、非限定的な例として、任意の実体の、例えば、保険会社、健康維持機関、政府健康機関(governmental health agency)、又は患者からであって良い。支払いは、全体又は一部であって良い。患者の場合、支払いは、個人負担として知られるように、部分的な支払いの形態であって良い。
【0111】
更に他の実施態様において、本発明の方法は、保険会社、健康維持機関、政府健康機関、又は患者に対する償還又は支払い請求を、患者の医療ケアにおける上記方法の実施、又は本発明の他の方法を実施するために進める又は進めていることを含んで成りうる。請求は、上記のような任意の連絡手段であって良い。
【0112】
更なる実施態様において、前記方法は、支払いの承認、もしくは支払いの拒否の表示を、患者の医療ケアにおける本発明の実施又は本発明の他の方法のために受け取ることを含んで成りうる。かかる表示は、償還又は支払いの要請がなされた任意の人又は団体に由来しうる。非限定的な例としては、保険会社、健康維持機関、政府健康機関Medicare又はMedicaidなどが挙げられる。表示は、上記のような任意の連絡手段によりうる。
【0113】
更なる実施態様は、患者の医療ケアにおける上記方法又は本発明の他の方法の実施のための償還請求を送ることを含んで成る。かかる要請は、上記の任意の連絡手段によって行われて良い。要請は、保険会社、健康維持機関、政府健康機関、又は当該方法が実施された患者に対して行われて良い。
【0114】
更なる方法は、患者の医療ケアにおける上記方法又は本発明の他の方法の実施のためにある形態又はデータベース上へ償還又は支払いの必要性を示すことを更に含んで成る。代替的に、当該方法は、単に当該方法の実施を示しうる。前記データベースは、電気形態の例えば、本発明の範囲内のコンピューター実施データベースを伴う、任意の形態であって良い。表示は、紙上のコード又はこのデータベース中のコードの形態であって良い。
【0115】
患者の医療ケアにおける上記方法又は本発明の他の方法において、当該方法は、当該方法の結果を、任意にヘルスケア機関、ヘルスケア提供者又は専門家、医者、看護士、又はそこで働く人々へ報告することを含んで成る。当該報告は、患者に対して直接又は間接的であっても良い。当該報告は、例えば上記任意の連絡手段であって良い。
【0116】
本発明の材料と方法は、理想的には、周知の手順に従い生産したキットの生産に適している。従って、本発明は、HoxB13配列の発現の検出のための剤(本明細書中、非限定的な例としてポリヌクレオチド及び/又は抗体)を含んで成るキットを提供する。かかるキットであって、任意に本発明の方法においてそれらを使用することに関連する識別記載もしくはラベルもしくは説明書を含んで成るキットが提供されている。かかるキットは、容器であって各々が本発明の方法で使用される1又は複数の様々な試薬(典型的に濃縮形態)、例えば、予め調製されたマイクロアレー、バッファー、適切なヌクレオチド三リン酸(例えば、dATP、dCTP、dGTP及びdTTP;又はrATP、rCTP、rGTP及びUTP)、逆転転写酵素、DNAポリメラーゼ、RNAポリメラーゼ、及び本発明の1又は複数のプライマー複合体(例えば、適切な長さの、反応性のプロモーターに結合したポリ(T)又はランダムプライマー、そしてRNAポリメラーゼ)を含んで成る容器を含んで成る。説明書の一式も典型的に含まれるだろう。
【0117】
本発明は、以下の限定する目的ではなく、そして本発明を特に断りが無い限り限定することのない目的で記載された実施例によって更に理解されるだろう。
【実施例】
【0118】
実施例
実施例1 :細胞培養及び細胞系統構築
MCF-1OA細胞(ATCC; Souleら. "Isolation and characterization of a spontaneously immortalized human breast epithelial cell line, MCF-10." canser Res 50:6075-86 (1990)を参照のこと)を増殖培地(DMEM/F12 (Invitrogen)中 5%ウマ血清(Invitrogen)、20ng/mlEGF(Peprotech)、10μg/mlインスリン(Sigma)、100ng/mlコレラ毒、0.5μg/mlヒドロコルチゾン、50U/mlペニシリン、及び50μg/mlストレプトマイシンを伴う)中で、記載(Debnathら "Morphogenesis and oncogenesis of MCF-IOA mammary epithelial acini grown in three-dimentional basement membrane cultures." Methods 30:256-68 (2003)を参照のこと)されたように維持した。アッセイ培地(AM)は、5%ウマ血清の代わりに2%血清を使用したことを除けば同じである。
【0119】
pDNRプラスミド中のHoxB13に関するヒトcDNAは一般にJoshua LaBaer (Harvard Medical School)によって提供された。HOXB13を、レトロウィルス発現ベクターpBabe-puro(Morgenstern ら"Advanced mammalian gene transfer: high titre retroviral vectors with multiple drug selection markers and a complementary helper-free packaging cell line." Nucleics Acid Res 18:3587-96 (1990)を参照のこと)のSnaB1部位へサブクローン化して、制限マッピングにより適当なOriを決定した。水泡性口内炎ウィルス(VSV)エンベロープを有する複製不能ウィルスを、記載(Oryら"A stable human-derived packaging cell line for production of high titer retro virus/vesicular stomatitis virus G pseudotypes." Proc Natl Acad ScL USA 93:11400-6 (1996)を参照のこと)されたようにVSV-GPGパッケージング細胞から生じさせ、そしてMCF-IOA細胞の安定なプールを、 選択のために、2μg/mlピューロマイシンを使用することで、記載(Debnathらを参照のこと)されたようにレトロウィルス感染によって生じさせた。
【0120】
実施例2:トランスウェル転移及び侵襲アッセイ
In vitro転移及び侵襲アッセイを24ウェルの変更を加えたBoydenチャンバートランスウェル(8ミクロンの孔を含むPET (ポリエチレンテレフタラート)膜を伴う)(BD BioCoat)で行った。コーティングしていない膜を転移アッセイのために使用し、そしてMatrigel(Engelbroth-Holm-Swarm (EHS)肉腫に由来する細胞外マトリクスの複合混合物) コーティングした膜を侵襲性アッセイ(Repeshら"A new in vitro assay for quantitating fumor cell invasion." Metastasis 9:192-208 (1989)を参照のこと)のために使用した。
【0121】
レトロウィルス構築体で感染させたMCF-IOA細胞の安定なプールを、アッセイの日迄、増殖培地中で維持した。100μlのアッセイ培地中5×104細胞を上方のチャンバー中で播きそして500μlのアッセイ培地(20ng/mlのEGF有無)で下方チャンバーへ加えた。細胞を37℃で24時間に渡りインキュベートし、次いで、70%エタノール中で20分に渡り固定化し、PBSで洗浄し、そしてDAPI(500ng/ml)で染色した。上方の表層に残った細胞を機械的に綿スワブで取り除いた。下側に残る細胞を計算した(倍率×20/トランスウェルにおいて5つの場)。トランスウェルを3重に播いて、結果を平均化した。
【0122】
Matrigelコーティングした変更を加えたBoydenチャンバーを介する侵襲性を記載(Albiniら "A rapid in vitro assay for quantitating the invasive potential of tumor cells." Cancer Res 47:3239-45 (1987)及び Repeshらを参照のこと)されたようにアッセイした。
【0123】
実施例3:結果
HoxB13は、乳房上皮細胞転移及び侵襲を刺激する。図1に示すように、予め公になった一団(n=45, Maら "Gene expression profiles of human Breast cancer progression." Proc Natl Acad Sci, USA 100:5974-9 (2003)を参照のこと)に由来するLCM生産正常及び悪性胸部上皮細胞のRT-PCR分析により、正常胸部上皮細胞に比較して、HOXB13の平均発現レベルが、管がん(DCIS,P=0.002)及び侵襲性管がん(IDC,P=0.006)の両方において有意に高いことが示された。同等正常患者(patient-matched)に比較して、56%DCIS又はIDCケースでは HoxB13が2倍を超えて過剰に発現されていた。
【0124】
図2は、HOXB13の腫瘍特異的発現のRNA in situハイブリダイゼーション確認を示す。注目すべきことに、一組の正常胸部標本は終末乳管水葉単位におけるHOXB13の発現を示し、それは正常乳房生理学において役割を果たしうる可能性を生じさせる。
【0125】
HOXB13の潜在的な生物学的機能をMCF-1OA細胞中でCMV誘導構築体を発現させることによって研究した。MCF10AにおけるHOXB13の異所性発現をRT-QPCRによって確かめた(図3、昆虫)。HOXB13を発現する細胞は、上皮型の連結部の減少を特徴とする明らかな形態学的変化を示した(データは示していない)。コントロールの感染細胞と比較して、HOXB 13を発現するMCF10A細胞は、EGFの存在下でのトランスウェル転移アッセイにいて細胞運動における5倍の増加をした(図3)。HOXB13を発現する細胞は、細胞外供給されたEGFの不在下で転移の増加を示した。
【0126】
Matrigelコーティングした変更を加えたBoydenチャンバー(in vivo転移可能性との相関するを有し十分に確立されたアッセイ)による侵襲は、EGFの発現下でのHoxB13発現より5倍増強された(図4)。特定の理論にとらわれることなく、これらの観察は、HOXB13がin vitro細胞運動及び侵襲性を刺激するEGF-依存性シグナル伝達と相乗的に機能をする経路を制御しうることを示す。
【0127】
図5は、MCF10A細胞、そしてHoxB13を異所発現するMCF10A細胞の2D形態学を示す。
【0128】
図6は、MCF10A細胞中の異所HoxB13発現は、EHS(Engelbroth- HoIm-Swarm)がんに由来する細胞外マトリクス成分を介するEGF刺激転移を増強する。挿入は、図3に記載のとおりである。HOXB13を発現する細胞の転移は、コラーゲン又はEGFのいずれかの存在において更に増加させられる。
【0129】
図7は、MCF10A細胞中の異所HoxB13発現は、EHF基質を介するEGF刺激侵襲を増強することを示す。
【0130】
図8は、AN10細胞におけるHoxB13発現は、合成二両体化物質(AP1510)の有無で転移を増強することを示す。AMは、アッセイ培地を意味し;とはコラーゲンを意味する。
【0131】
本明細書中で引用した全ての、例えば、特許、特許願、及び刊行物は、本明細書中、従来詳細に組み込まれているかいないかにかかわらず、それらの全体は参照によって組み込まれている。しかし、本明細書中、所定の文書は、適当な従来技術として承認されることを目的としていない。日付についてもしくは表現についてもしくは内容について文書の全ての記載は出願人に適用可能である情報に基づいており、そして当該文書の日付又は内容の正確性について何らの承認を構成しない。
【0132】
本発明は、当業者により同等のパラメーター、濃度及び条件で本発明の精神及び範囲を逸脱することなく且つ実験を伴わずに行われて良いように十分な記載がなされている。
【0133】
本発明は特定の実施態様との関係において記載されている一方で、更なる変更も可能であることを理解されるだろう。本願は、本発明の任意の様々な変更、使用、又は適用を、一般的な本発明の原理に従い網羅することを意味し、そして本願が属する当業界の通常の知識又は慣例から本開示内容から出発すること及び本願明細書中に開示された本質的な発明特定事項に適用されて良いことを含む。
【図面の簡単な説明】
【0134】
【図1】胸部細胞の正常(N,n=45)、DCIS(n=42)、及びIDC(n=29)ケースにおける定量的HOXB13 遺伝子発現値を示す。エラーバーは95%信頼区間を示す。
【図2】HoxB13 mRNAのin situハイブリダイゼーションの結果を示す。(i)正常終末管小葉ユニット(倍率×200)、(ii)in situ管がん(倍率×400)及び(iii)侵襲性管がん(倍率×400) のヒト胸部上皮に対するアンチセンスハイブリダイゼーションを伴うDIG11UTP-標識RNA、及び(iv)侵襲性管がん(倍率×400)に対するセンスプローブハイブリダイゼーションを伴うDIG11UTP-標識RNA。挿入は、×1000の倍率における各選定の領域を示す。L、S、及びTが小片、ストロマ及び腫瘍をそれぞれ規定する。
【図3】HoxB13を異所的に発現する細胞を伴う転移アッセイの結果を示す。トランスウェルフィルター(20×/フィールド)を介して移動した平均細胞数を示す(3重のウェルの+/-標準偏差)。EGFとは、上皮細胞増殖因子の存在を意味する。挿入は、MCF10A細胞中でのHoxB13の異所発現;pBABE ベクター単独(レーン1)又はHoxB13(レーン2)を伴う発現構築体由来のHOXB13の逆転写PCR分析を示す。エラーバーは、標準偏差を示す。アスタリスク*はコントロール細胞と比較した P< 0.05を示す。
【図4】HOXB13を異所的に発現する細胞を伴う侵襲アッセイの結果を示す。侵襲された細胞の平均数を示す。EGFとは、上皮細胞増殖因子の存在を意味する。エラーバーは、一つの標準偏差を示す。アスタリスク*はコントロール細胞と比較したP<0.05を示す。
【図5】MCF10A細胞、そしてHOXB13を異所的に発現するMCF10A細胞の2D形態学を示す。
【図6】MCF10A細胞中でのHoxB13の異所発現は、EHS(Engelbroth-Holm-Swarm)肉腫に由来する細胞外マトリクス成分を介するEGF刺激転移を増強する。
【図7】MCF10A細胞中でのHoxB13の異所発現は、EHS(Engelbroth-Holm-Swarm)肉腫に由来する細胞外マトリクス成分を介するEGF刺激侵襲を増強する。
【図8】AN10細胞におけるHoxB13発現は、合成二量体化物質(AP1510)の有無で転移を増強する。AMは、アッセイ培地を意味し;collはコラーゲンを意味する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1又は複数のサンプル細胞が他の組織中へと転移する可能性を同定又は分類する方法であって、当該方法は、1又は複数の細胞中のHoxB13遺伝子からの発現レベルを特定することを含んで成り、ここで比較的増加した発現のレベルは、1又は複数の細胞における転移の可能性の増加を示す方法。
【請求項2】
1又は複数のサンプル細胞の他の組織へ侵入する可能性を同定又は分類する方法であって、当該方法は、1又は複数の細胞中のHoxB13遺伝子からの発現レベルを特定することを含んで成り、ここで比較的増加した発現のレベルは、1又は複数の細胞における侵襲性の可能性の増加を示す方法。
【請求項3】
前記1又は複数のサンプル細胞は、対象者又は患者の一次がん、任意のエストロゲンレセプター陽性がんである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記がんが、胸部の腺がん、頸部の腺がん、食道の腺がん、胆嚢の腺がん、肺の腺がん、すい臓の腺がん、小/大腸の腺がん、胃の腺がん、星状細胞腫、皮膚の基底細胞がん、肝臓の胆管がん、卵巣の透明細胞腺がん、分散性巨大B-細胞リンパ腫、精巣の胎生期がん、子宮の類内膜がん、Ewings肉腫、甲状腺の濾胞肉腫、消化管間質腫瘍、卵巣の肺細胞腫瘍、精巣の肺細胞腫瘍、多形性膠芽腫、肝臓の肝細胞がん、Hodgkinリンパ腫、肺の巨大細胞肉腫、平滑筋肉腫、脂肪肉腫、胸部の小葉がん、悪性線維性組織球腫、甲状腺の髄質肉腫、メラノーマ、髄膜腫、肺の中皮腫、卵巣の粘液性腺がん、筋繊維肉腫、腸の神経内分泌腫瘍、希突起グリオーマ、骨肉腫、甲状腺の乳頭がん、褐色細胞腫、腎臓の腎細胞がん、黄紋筋肉腫、精巣のセミノーマ、卵巣の漿液性腺がん、肺の小細胞がん、頸部の扁平上皮細胞がん、食道の扁平上皮細胞がん、喉頭の扁平上皮細胞がん、肺の扁平上皮細胞がん、皮膚の扁平上皮細胞がん、滑膜肉腫、T-細胞リンパ腫、及び膀胱の移行細胞がんから選択される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記がんが副腎、膀胱、骨、脳、胸部、頸部、子宮内膜、食道、胆嚢、腎臓、喉頭、肝臓、肺、リンパ節、卵巣、すい臓、前立腺、皮膚、軟組織、小/大腸、胃、精巣、甲状腺及び子宮から選択される組織のがんである、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
対象者の結節状態を更に特定することを更に含んで成り、ここで、HoxB13の上記正常レベルの発現との組み合わせにおけるリンパ節中のがんの不在は、転移の可能性の増加を示すために使用されている、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記1又は複数の細胞が、対象者から獲得した細胞の生物サンプル中の細胞である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記サンプルが、新鮮サンプル、凍結サンプル、又は固定化サンプルである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記特定することが、HoxB13 mRNA発現、HoxB13 DNAのジメチル化、又はHOXB13タンパク質発現のレベルをアッセイすることを更に含んで成る、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記特定することが、定量的PCR、例えば、逆転写酵素-PCR及びリアルタイムPCRの使用によりmRNA発現をアッセイすることを含んで成る、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記特定することが、マイクロアレーの使用によりmRNA発現をアッセイすることを含んで成る、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記特定することが、発現したHoxB13配列の断片又はエピトープを検出することによってタンパク質発現をアッセイすることを含んで成る、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
正常又は正常より低い発現のレベルが、転移の可能性の増加の不在、又は可能性の減少を示す、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
対象者の予後又は疾患転帰を予測する方法であって、当該方法は、対象者から獲得した生物サンプルの1又は複数の細胞におけるHoxB13遺伝子からの発現のレベルを特定することを含んで成り、ここで正常を超える発現レベルは、がん転移の可能性の増加、がん再発の可能性の増加、又は当該対象者の推定寿命の増加を示し、そして正常な又は正常より低いHoxB13発現レベルは、がん転移の可能性の増加の不在、がん再発可能性の増加の不在、又は推定寿命の減少の不在を示す方法。
【請求項15】
前記がん再発が局所再発、部位限定再発、 遠位再発、又は対側再発から選択される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記サンプルが、前がんサンプル又生検サンプル、又は診断したがんサンプル又は生検サンプルである、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
対象者の治療を決定することであって、前記方法が、請求項14に記載の方法によって対象者の予後又は転帰を特定し;そして
当該予後又は転帰に基づいて当該対象者の治療を決定すること、
を含んで成る方法。
【請求項18】
前記がん再発が、局所再発、部位限定再発、遠位再発、又は対側再発から選択される、請求項14に記載の方法。
【請求項19】
前記1又は複数の細胞が、がん、任意に一次又はエストロゲンレセプター陽性がんの細胞である、請求項14に記載の方法。
【請求項20】
前記細胞が、胸部細胞、任意にADH又はDCIS細胞である、請求項2に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2008−501346(P2008−501346A)
【公表日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−515666(P2007−515666)
【出願日】平成17年6月3日(2005.6.3)
【国際出願番号】PCT/US2005/019737
【国際公開番号】WO2006/004600
【国際公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【出願人】(505333366)アビアラデックス,インコーポレイティド (6)
【出願人】(592017633)ザ ジェネラル ホスピタル コーポレイション (177)
【Fターム(参考)】