説明

がん化学療法誘発脱毛に対する抗脱毛用組成物

【課題】がん化学療法によって生じる脱毛を予防または低減するための組成物(がん化学療法誘発脱毛に対する抗脱毛用組成物)を提供する
【解決手段】本発明の抗脱毛用組成物の有効成分として、次の一般式(1)で示される化合物、またはその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和を用いる:


〔式中、RおよびRは、同一または異なって、水素原子または炭素数1〜3の低級アルキル基を示し、RおよびRは、異なって、水素原子であるか、またはS結合したSH化合物若しくはそのエステル(但し、システアミンは除く。)を示し、Rは水酸基、N−置換アミノ酸、そのエステル(但し、アミノエタンスルホン酸、アミノエタンスルフィン酸は除く。)またはアミン。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、がん化学療法によって誘発される脱毛を予防または低減するために用いられる抗脱毛用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、抗がん剤治療(以下、本発明では「がん化学療法」という)は、その治療法の進歩に伴い、優れた治療実績をあげている。しかし、その反面、がん化学療法には、皮膚、粘膜および頭髪に対して有毒作用があり、色素沈着、超過敏反応や光感受性の亢進、口内炎及び脱毛といった副作用を伴うことも知られている(非特許文献1及び2)。そのなかでも、がん化学療法によって生じる脱毛に関しては、身体機能に及ぼす影響が少ないことや治療後に再び髪が生えてくることなどから、これまで積極的な対策はとられていないのが実情である。しかし、脱毛は、他人の目に明らかに見える副作用であるため、がん患者にとって精神的苦痛は大きく、また患者のQOL(生活の質)を向上させる点から早急に改善すべき問題でもある。
【0003】
従来、がん化学療法によって誘発される脱毛に対して、ビタミンD3を含むいくつかの化合物に改善効果があることが報告されている(非特許文献3及び4)。また、がん化学療法による脱毛を予防または軽減する目的で、頭皮止血帯や頭皮冷却キャップ等の医療用具も用いられている。これは頭皮を冷却することで、頭皮の血管を収縮させて毛包に流れる血液の量を低減させ、抗がん剤による毛包へのダメージを低下しようとするものである。しかし、かかる医療用具によって脱毛が予防できるケースは限られている(非特許文献5)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Sausville EA, Longo DL. Principles of cancer treatment. In: Fauci AS, Braunwald E, Kasper DL, Hauser SL, Longo DL, Jameson JL, et al., editors. Harrison's Principles of Internal Medicine. 17th ed. New York: McGraw-Hill; 2008. p. 514-33
【非特許文献2】Viele CS. Managing oral chemotherapy: the healthcare practitioner's role. Am J Health Syst Pharm 2007;64:S25-32
【非特許文献3】Schilli MB, Paus R, Menrad A. Reduction of intrafollicular apoptosis in chemotherapy-induced alopecia by topical calcitriol-analogs. J Invest Dermatol 1998;111:598-604.
【非特許文献4】Davis ST, Benson BG, Bramson HN. Prevention of chemotherapy-induced alopecia in rats by CDK inhibitors. Science 2001;291:134-7.
【非特許文献5】Hesketh PJ, Batchelor D, Golant M, Lyman GH, Rhodes N, Yardley D. Chemotherapy-induced alopecia: psychosocial impact and therapeutic approaches. Support Care Cancer 2004;12:543-9.
【非特許文献6】Gregoriou S, Papafragkaki D, Kontochristopoulos G, Rallis E, Kalogeromitros D, Rigopoulos D. Cytokines and other mediators in alopecia areata. Mediators Inflamm 2010;2010:928030.
【非特許文献7】Mills PJ, Ancoli-Israel S, Parker B, Natarajan L, Hong S, Jain S, et al. Predictors of inflammation in response to anthracycline-based chemotherapy for breast cancer. Brain Behav Immun 2008;22:98-104.
【非特許文献8】Abushamaa AM, Sporn TA, Folz RJ. Oxidative stress and inflammation contribute to lung toxicity after a common breast cancer chemotherapy regimen. Am J Physiol Lung Cell Mol Physiol 2002;283:L336-45.
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開公報WO 99/33818 A1
【特許文献2】特開2000-191528号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、がん化学療法によって誘発される副作用のうち脱毛について、それを予防または軽減するのに有効な組成物、すなわちがん化学療法誘発脱毛に対する抗脱毛用組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねていたところ、下記の一般式(I)で示される水溶性ビタミン誘導体に、がん化学療法によって誘発される脱毛を顕著に予防または軽減する作用があることを見出した。当該水溶性ビタミン誘導体は公知の化合物であるが(例えば、特許文献1及び2等参照)、それに抗脱毛作用があることについては知られていない。そこで本発明者らは、当該化合物(1)によれば、がん化学療法によって誘発される脱毛を、性別や年齢に関わらず、予防または軽減することができ、その結果、がん患者のQOL向上に寄与できることを確信し、本発明を開発するにいたった。
【0008】
本発明はかかる知見に基づいて完成したものであり、下記の実施態様を包含する。
【0009】
(I)がん化学療法誘発脱毛に対する抗脱毛用組成物
(I-1)下記一般式(I)で示される水溶性ビタミンE誘導体またはその薬理学的に許容される塩若しくは溶媒和物を有効成分とする、がん化学療法誘発脱毛に対する抗脱毛用組成物:
【0010】
【化1】

【0011】
〔式中、RおよびRは、同一または異なって、水素原子または炭素数1〜3の低級アルキル基を示し、RおよびRは、異なって、水素原子であるか、またはS結合した下記式(1)〜(5)のいずれかに示されるSH化合物若しくはそのエステル(但し、システアミンは除く。)を示し、Rは水酸基、下記式(6)〜(11)のいずれかに示されるN−置換アミノ酸、そのエステル(但し、アミノエタンスルホン酸、アミノエタンスルフィン酸は除く。)または下記式(12)に示されるアミンを示す〕
【0012】
【化2】

【0013】
(I-2)一般式(I)で示される水溶性ビタミンE誘導体が下記(a)〜(o)からなる群から選択されるいずれかである、(I-1)に記載する抗脱毛用組成物:
(a)γ-グルタミル-S-[1-[[[3,4-ジヒドロ-2,5,7,8-テトラメチル-2-(4,8,12-トリメチルトリデシル)-2H-1-ベンゾピラン-6-イル]オキシ]カルボニル]-3-カルボキシプロピル]システニイルグリシン、
(b)γ-グルタミル-S-[2-[[[3,4-ジヒドロ-2,5,7,8-テトラメチル-2-(4,8,12-トリメチルトリデシル)-2H-1-ベンゾピラン-6-イル]オキシ]カルボニル]-3-オキソ-3-[(2-スルフォエチル)アミノ]プロピル]システニイルグリシン、
(c)γ-グルタミル-S-[2-[[[3,4-ジヒドロ-2,5,7,8-テトラメチル-2-(4,8,12-トリメチルトリデシル)-2H-1-ベンゾピラン-6-イル]オキシ]カルボニル]-3-オキソ-3-[(2-カルボキシフェニル)アミノ]プロピル]システニイルグリシン、
(d)γ-グルタミル-S-[2-[[[3,4-ジヒドロ-2,5,7,8-テトラメチル-2-(4,8,12-トリメチルトリデシル)-2H-1-ベンゾピラン-6-イル]オキシ]カルボニル] -3-オキソ-3-[(3-カルボキシプロピル)アミノ] プロピル]システニイルグリシン、
(e)S-[2-[[[3,4-ジヒドロ-2,5,7,8-テトラメチル-2-(4,8,12-トリメチルトリデシル)-2H-1-ベンゾピラン-6-イル]オキシ]カルボニル]-3-オキソ-3-[(2-スルフォエチル)アミノ] プロピル]システイン、
(f)γ-グルタミル-S-[2-[[[3,4-ジヒドロ-2,5,7,8-テトラメチル-2-(4,8,12-トリメチルトリデシル)-2H-1-ベンゾピラン-6-イル]オキシ]カルボニル]-3-オキソ-3-[[2-(1H-インドール-3-イル)エチル]アミノ]プロピル]システニイルグリシン、
(g)γ-グルタミル-S-[2-[[[3,4-ジヒドロ-2,5,7,8-テトラメチル-2-(4,8,12-トリメチルトリデシル)-2H-1-ベンゾピラン-6-イル]オキシ]カルボニル]-3-オキソ-3-[(5-カルボキシペンチル)アミノ]プロピル]システニイルグリシン、
(h)γ-グルタミル-S-[2-[[[3,4-ジヒドロ-2,5,7,8-テトラメチル-2-(4,8,12-トリメチルトリデシル)-2H-1-ベンゾピラン-6-イル]オキシ]カルボニル]-3-オキソ-3-[(トランス-4-カルボキシシクロヘキシルメチル)アミノ]プロピル]システニイルグリシン、
(i)γ-グルタミル-S-[2-[[[3,4-ジヒドロ-2,5,7,8-テトラメチル-2-(4,8,12-トリメチルトリデシル)-2H-1-ベンゾピラン-6-イル]オキシ]カルボニル]-3-オキソ-3-[(2-スルフォエチル)アミノ]プロピル]システイン、
(j)S-[2-[[[3,4-ジヒドロ-2,5,7,8-テトラメチル-2-(4,8,12-トリメチルトリデシル)-2H-1-ベンゾピラン-6-イル]オキシ]カルボニル]-3-オキソ-3-[(2-スルフォエチル)アミノ]プロピル]ペニシラミン、
(k)S-[2-[[[3,4-ジヒドロ-2,5,7,8-テトラメチル-2-(4,8,12-トリメチルトリデシル)-2H-1-ベンゾピラン-6-イル]オキシ]カルボニル]-3-オキソ-3-[(2-スルフォエチル)アミノ]プロピル]システナミン、
(l)γ-グルタミル-S-[2-[[[3,4-ジヒドロ-2,5,7,8-テトラメチル-2-(4,8,12-トリメチルトリデシル)-2H-1-ベンゾピラン-6-イル]オキシ]カルボニル]-3-オキソ-3-[(エトキシカルボニルメチル)アミノ]プロピル]システニイルグリシン、
(m)γ-グルタミル-S-[2-[[[3,4-ジヒドロ-2,5,7,8-テトラメチル-2-(4,8,12-トリメチルトリデシル)-2H-1-ベンゾピラン-6-イル]オキシ]カルボニル]-3-オキソ-3-[(2-スルフォエチル)アミノ]プロピル]システニイルグリシン イソプロピルエステル、
(n)γ-グルタミル-S-[2-[[[3,4-ジヒドロ-2,5,7,8-テトラメチル-2-(4,8,12-トリメチルトリデシル)-2H-1-ベンゾピラン-6-イル]オキシ]カルボニル]-3-オキソ-3-[(2-スルフィノエチル)アミノ]プロピル]システニイルグリシン、
(o)γ-グルタミル-S-[2-[[[3,4-ジヒドロ-2,5,7,8-テトラメチル-2-(4,8,12-トリメチルトリデシル)-2H-1-ベンゾピラン-6-イル]オキシ]カルボニル]-3-オキソ-3-(2-カルボキシピロリジノ)プロピル]システニイルグリシン。
【0014】
(I-3)がん患者に対して、がん化学療法と並行して投与されるものである、(I-1)または(I-2)に記載する抗脱毛用組成物。
(I-4)経皮投与形態または全身投与形態を有するものである、(I-1)乃至(I-3)のいずれかに記載する抗脱毛用組成物。
(I-5)皮膚外用剤である(I-1)乃至(I-3)のいずれかに記載する抗脱毛用組成物。
(I-6)がん化学療法が脱毛を伴うものである、(I-1)乃至(I-5)のいずれかに記載する抗脱毛用組成物。
(I-7)がん化学療法が、アポトーシス作用による抗がん剤治療である(I-1)乃至(I-6)のいずれかに記載する抗脱毛用組成物。
(I-8)がん化学療法が、酸化ストレスを伴う抗がん剤治療である(I-1)乃至(I-7)のいずれかに記載する抗脱毛用組成物。
(I-9)がん化学療法が、DNA合成阻害作用による抗がん剤治療である(I-1)乃至(I-8)のいずれかに記載する抗脱毛用組成物。
【0015】
(II)がん化学療法によって誘発される脱毛の予防または低減方法
(II-1)がん化学療法を受けるがん患者に対して、下記一般式(I)で示される水溶性ビタミンE誘導体、またはその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物を有効量含有する組成物を投与する工程を有する、当該がん患者のがん化学療法によって誘発される脱毛を予防または低減する方法:
【0016】
【化3】

【0017】
〔式中、RおよびRは、同一または異なって、水素原子または炭素数1〜3の低級アルキル基を示し、RおよびRは、異なって、水素原子であるか、またはS結合した下記式(1)〜(5)のいずれかに示されるSH化合物若しくはそのエステル(但し、システアミンは除く。)を示し、Rは水酸基、下記式(6)〜(11)のいずれかに示されるN−置換アミノ酸、そのエステル(但し、アミノエタンスルホン酸、アミノエタンスルフィン酸は除く。)または下記式(12)に示されるアミンを示す〕
【0018】
【化4】

【0019】
(II-2)一般式(I)で示される水溶性ビタミンE誘導体が下記(a)〜(o)からなる群から選択されるいずれかである、(II-1)に記載する脱毛を予防または低減する方法:
(a)γ-グルタミル-S-[1-[[[3,4-ジヒドロ-2,5,7,8-テトラメチル-2-(4,8,12-トリメチルトリデシル)-2H-1-ベンゾピラン-6-イル]オキシ]カルボニル]-3-カルボキシプロピル]システニイルグリシン、
(b)γ-グルタミル-S-[2-[[[3,4-ジヒドロ-2,5,7,8-テトラメチル-2-(4,8,12-トリメチルトリデシル)-2H-1-ベンゾピラン-6-イル]オキシ]カルボニル]-3-オキソ-3-[(2-スルフォエチル)アミノ]プロピル]システニイルグリシン、
(c)γ-グルタミル-S-[2-[[[3,4-ジヒドロ-2,5,7,8-テトラメチル-2-(4,8,12-トリメチルトリデシル)-2H-1-ベンゾピラン-6-イル]オキシ]カルボニル]-3-オキソ-3-[(2-カルボキシフェニル)アミノ]プロピル]システニイルグリシン、
(d)γ-グルタミル-S-[2-[[[3,4-ジヒドロ-2,5,7,8-テトラメチル-2-(4,8,12-トリメチルトリデシル)-2H-1-ベンゾピラン-6-イル]オキシ]カルボニル] -3-オキソ-3-[(3-カルボキシプロピル)アミノ] プロピル]システニイルグリシン、
(e)S-[2-[[[3,4-ジヒドロ-2,5,7,8-テトラメチル-2-(4,8,12-トリメチルトリデシル)-2H-1-ベンゾピラン-6-イル]オキシ]カルボニル]-3-オキソ-3-[(2-スルフォエチル)アミノ] プロピル]システイン、
(f)γ-グルタミル-S-[2-[[[3,4-ジヒドロ-2,5,7,8-テトラメチル-2-(4,8,12-トリメチルトリデシル)-2H-1-ベンゾピラン-6-イル]オキシ]カルボニル]-3-オキソ-3-[[2-(1H-インドール-3-イル)エチル]アミノ]プロピル]システニイルグリシン、
(g)γ-グルタミル-S-[2-[[[3,4-ジヒドロ-2,5,7,8-テトラメチル-2-(4,8,12-トリメチルトリデシル)-2H-1-ベンゾピラン-6-イル]オキシ]カルボニル]-3-オキソ-3-[(5-カルボキシペンチル)アミノ]プロピル]システニイルグリシン、
(h)γ-グルタミル-S-[2-[[[3,4-ジヒドロ-2,5,7,8-テトラメチル-2-(4,8,12-トリメチルトリデシル)-2H-1-ベンゾピラン-6-イル]オキシ]カルボニル]-3-オキソ-3-[(トランス-4-カルボキシシクロヘキシルメチル)アミノ]プロピル]システニイルグリシン、
(i)γ-グルタミル-S-[2-[[[3,4-ジヒドロ-2,5,7,8-テトラメチル-2-(4,8,12-トリメチルトリデシル)-2H-1-ベンゾピラン-6-イル]オキシ]カルボニル]-3-オキソ-3-[(2-スルフォエチル)アミノ]プロピル]システイン、
(j)S-[2-[[[3,4-ジヒドロ-2,5,7,8-テトラメチル-2-(4,8,12-トリメチルトリデシル)-2H-1-ベンゾピラン-6-イル]オキシ]カルボニル]-3-オキソ-3-[(2-スルフォエチル)アミノ]プロピル]ペニシラミン、
(k)S-[2-[[[3,4-ジヒドロ-2,5,7,8-テトラメチル-2-(4,8,12-トリメチルトリデシル)-2H-1-ベンゾピラン-6-イル]オキシ]カルボニル]-3-オキソ-3-[(2-スルフォエチル)アミノ]プロピル]システナミン、
(l)γ-グルタミル-S-[2-[[[3,4-ジヒドロ-2,5,7,8-テトラメチル-2-(4,8,12-トリメチルトリデシル)-2H-1-ベンゾピラン-6-イル]オキシ]カルボニル]-3-オキソ-3-[(エトキシカルボニルメチル)アミノ]プロピル]システニイルグリシン、
(m)γ-グルタミル-S-[2-[[[3,4-ジヒドロ-2,5,7,8-テトラメチル-2-(4,8,12-トリメチルトリデシル)-2H-1-ベンゾピラン-6-イル]オキシ]カルボニル]-3-オキソ-3-[(2-スルフォエチル)アミノ]プロピル]システニイルグリシン イソプロピルエステル、
(n)γ-グルタミル-S-[2-[[[3,4-ジヒドロ-2,5,7,8-テトラメチル-2-(4,8,12-トリメチルトリデシル)-2H-1-ベンゾピラン-6-イル]オキシ]カルボニル]-3-オキソ-3-[(2-スルフィノエチル)アミノ]プロピル]システニイルグリシン、
(o)γ-グルタミル-S-[2-[[[3,4-ジヒドロ-2,5,7,8-テトラメチル-2-(4,8,12-トリメチルトリデシル)-2H-1-ベンゾピラン-6-イル]オキシ]カルボニル]-3-オキソ-3-(2-カルボキシピロリジノ)プロピル]システニイルグリシン。
【0020】
(II-3)上記組成物を、がん患者に対してがん化学療法と並行して投与する、(II-1)または(II-2)に記載する方法。
(II-4)がん患者に対して経皮投与または全身投与する、(II-1)乃至(II-3)のいずれかに記載する方法。
(II-5)がん化学療法が脱毛を伴うものである、(II-1)乃至(II-4)のいずれかに記載する方法。
(II-6)がん化学療法が、アポトーシス作用による抗がん剤治療である(II-1)乃至(II-5)のいずれかに記載する方法。
(II-7)がん化学療法が、酸化ストレスを伴う抗がん剤治療である(II-1)乃至(II-6)のいずれかに記載する方法。
(II-8)がん化学療法が、DNA合成阻害作用による抗がん剤治療である(II-1)乃至(II-7)のいずれかに記載する方法。
【0021】
(III)がん化学療法誘発脱毛に対する抗脱毛用組成物製造のための使用
(III-1)上記一般式(I)で示される水溶性ビタミンE誘導体、またはその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物の、がん化学療法誘発脱毛に対する抗脱毛用組成物の製造のための使用。
(II-2)一般式(I)で示される水溶性ビタミンE誘導体が上記(a)〜(o)からなる群から選択されるいずれかである、(III-1)に記載する使用。
(III-3)抗脱毛用組成物が、がん患者に対して、がん化学療法と並行して投与されるものである、(III-1)または(III-2)に記載する使用。
(III-4)抗脱毛用組成物が経皮投与形態または全身投与形態を有するものである、(III-1)乃至(III-3)のいずれかに記載する使用。
(III-5)がん化学療法が脱毛を伴うものである、(III-1)乃至(III-4)のいずれかに記載する使用。
(III-6)がん化学療法が、アポトーシス作用による抗がん剤治療である(III-1)乃至(III-5)のいずれかに記載する使用。
(III-7)がん化学療法が、酸化ストレスを伴う抗がん剤治療である(III-1)乃至(III-6)のいずれかに記載する使用。
(III-8)がん化学療法が、DNA合成阻害作用による抗がん剤治療である(III-1)乃至(III-7)のいずれかに記載する使用。
【0022】
(IV)がん化学療法誘発脱毛を予防または低減するための水溶性ビタミンE誘導体(1)
(IV-1)がん化学療法を受けるがん患者に対して、当該がん患者のがん化学療法によって誘発される脱毛を予防または低減するための、上記一般式(1)で示される水溶性ビタミンE誘導体、またはその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物。
(IV-2)一般式(I)で示される水溶性ビタミンE誘導体が上記(a)〜(o)からなる群から選択されるいずれかである、(IV-2)に記載する水溶性ビタミンE誘導体、またはその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物。
(IV-3)がん患者に対してがん化学療法と並行して投与されるものである、(IV-1)または(IV-2)に記載する水溶性ビタミンE誘導体、またはその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物。
(IV-4)がん患者に対して経皮投与または全身投与されるものである、(IV-1)乃至(IV-3)のいずれかに記載する水溶性ビタミンE誘導体、またはその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物。
(IV-5)がん化学療法が脱毛を伴うものである、(IV-1)乃至(IV-4)のいずれかに記載する水溶性ビタミンE誘導体、またはその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物。
(IV-6)がん化学療法が、アポトーシス作用による抗がん剤治療である(IV-1)乃至(IV-5)のいずれかに記載する水溶性ビタミンE誘導体、またはその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物。
(IV-7)がん化学療法が、酸化ストレスを伴う抗がん剤治療である(IV-1)乃至(IV-6)のいずれかに記載する水溶性ビタミンE誘導体、またはその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物。
(IV-8)がん化学療法が、DNA合成阻害作用による抗がん剤治療である(IV-1)乃至(IV-7)のいずれかに記載する水溶性ビタミンE誘導体、またはその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物。
【発明の効果】
【0023】
前述するように、抗がん剤は、様々な悪性腫瘍の治療に有効であり、このため、その使用頻度は年々増加している。その一方で、その副作用の一つである脱毛に対しては、いまだ有効な対策がないのが実情であり、それが化学療法を受けるがん患者の精神的苦痛になっている。
【0024】
本発明の抗脱毛用組成物によれば、がん患者に対する抗がん剤治療(がん化学療法)に伴って生じる脱毛を有意に抑制し低減することができる。このため、本発明の抗脱毛用組成物によれば、化学療法を受けるがん患者の精神的苦痛を和らげ、また生活の質(QOL)を改善することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】実験例1において、実験開始(AraC投与開始)から12日目に、AraC投与群(ESeroS-GS塗布群(AraC+0.5% ESeroS-GS, AraC+1% ESeroS-GS, AraC+2% ESeroS-GS, AraC+4% ESeroS-GS)、及びESeroS-GS非塗布群(AraCのみ))のラットを背部から写した写真の画像を示す。ここで「AraC」とは抗がん剤であるサイトシンアラビノサイド(アップジョン社)を、「ESeroS-GS」は本発明が対象とするビタミンE誘導体であるγ-グルタミル-S-[2-[[[3,4-ジヒドロ-2,5,7,8-テトラメチル-2-(4,8,12-トリメチルトリデシル)-2H-1-ベンゾピラン-6-イル]オキシ]カルボニル]-3-オキソ-3-[[2-(1H-インドール-3-イル)エチル]アミノ]プロピル]システニイルグリシン(製造例6)を意味する。
【図2】実験例1において、実験開始(AraC投与開始)から12日目に、対照群のラット(処置なし、AraC:-、ESeroS-GS:0)、及びAraC投与群のラット(5:AraCのみ、4:AraC +4% ESeroS-GS)の頭皮から採取した皮膚切片をHI染色した頭皮組織標本について、光学顕微鏡により観察した結果を示す。
【図3】実験開始から12日目にAraC投与群(ESeroS-GS塗布群(AraC+0.5% ESeroS-GS、 AraC+1% ESeroS-GS, AraC+2% ESeroS-GS, AraC+4% ESeroS-GS)のラットから採取した皮膚から調製した細胞抽出液を試料として、アポトーシス誘導に伴うCaspase 3/7の活性を測定した結果を示す。
【図4】実験開始から12日目に各被験群(AraC投与群[ESeroS-GS塗布群(AraC+0.5% ESeroS-GS, AraC+1% ESeroS-GS, AraC+2% ESeroS-GS, AraC+4% ESeroS-GS)]及び対照群)のラットから採取した皮膚から調製した細胞抽出液を試料として、酸化ストレスを反映するマロニルジアルデヒドの量を測定した結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の抗脱毛用組成物は、次の一般式(I)で示される化合物、またはその薬学的に許容される塩若しくはその溶媒和物(以下、これらを総称して「本発明化合物」という)を有効成分とすることを特徴とする:
【0027】
【化5】

【0028】
〔式中、RおよびRは、同一または異なって、水素原子または炭素数1〜3の低級アルキル基を示し、RおよびRは、異なって、水素原子であるか、またはS結合した下記式(1)〜(5)のいずれかに示されるSH化合物若しくはそのエステル(但し、システアミンは除く。)を示し、Rは水酸基、下記式(6)〜(11)のいずれかに示されるN−置換アミノ酸、そのエステル(但し、アミノエタンスルホン酸、アミノエタンスルフィン酸は除く。)または下記式(12)に示されるアミンを示す〕
【0029】
【化6】

【0030】
当該ビタミンE誘導体(本化合物)は、式(I)で表されるように、ビタミンE(α,β,γ,δ−トコフェロール)マレイン酸(またはフマール酸)とSH化合物とがS結合した化学構造、並びにこれらにさらにアミノ酸またはアミンが結合した化学構造を有している。
【0031】
なお、上記式(I)中、RまたはRで示される低級アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、及びイソプロピル基を挙げることができる。好ましくはメチル基及びエチル基であり、より好ましくはメチル基である。
【0032】
また、上記式(I)中、RまたはRで示されるSH化合物としては、上記式に対応して(1)グルタチオン、(2)γ−グルタミルシステイン、(3)システイン、(4)ペニシラミン、これらのエステルまたは(5)システナミンを挙げることができる。なお、RおよびRは、いずれか一方が水素原子である場合は、他方は水素原子ではなく、SH化合物またはそのエステルである。
【0033】
また、上記式(I)中、Rで示されるN−置換アミノ酸としては、上記式に対応して(6)グリシン(式中n=1)、β−アラニン(式中n=2)、γ−アミノ酪酸(式中n=3)、5−アミノ吉草酸(式中n=4)、ε−アミノカプロン酸(式中n=5)、(7)アントラニル酸、(8)トラネキサム酸、(9)プロリン、これらのエステル、(10)2−アミノエタンスルホン酸、(11)2−アミノエタンスルフィン酸を挙げることができる。なお、本発明において「N−置換アミノ酸」とは、上記の各アミノ酸が、その分子内の窒素原子(N)を介して、式(I)で示される化合物の基本骨格に結合していることを意味する用語である。
【0034】
また、上記式(I)中、Rで示されるアミンとしては、上記式に対応して(12)セロトニンを挙げることができる。
【0035】
本化合物の具体例としては、下記の化合物を挙げることができる。
(a)γ-グルタミル-S-[1-[[[3,4-ジヒドロ-2,5,7,8-テトラメチル-2-(4,8,12-トリメチルトリデシル)-2H-1-ベンゾピラン-6-イル]オキシ]カルボニル]-3-カルボキシプロピル]システニイルグリシン、
(b)γ-グルタミル-S-[2-[[[3,4-ジヒドロ-2,5,7,8-テトラメチル-2-(4,8,12-トリメチルトリデシル)-2H-1-ベンゾピラン-6-イル]オキシ]カルボニル]-3-オキソ-3-[(2-スルフォエチル)アミノ]プロピル]システニイルグリシン、
(c)γ-グルタミル-S-[2-[[[3,4-ジヒドロ-2,5,7,8-テトラメチル-2-(4,8,12-トリメチルトリデシル)-2H-1-ベンゾピラン-6-イル]オキシ]カルボニル]-3-オキソ-3-[(2-カルボキシフェニル)アミノ]プロピル]システニイルグリシン、
(d)γ-グルタミル-S-[2-[[[3,4-ジヒドロ-2,5,7,8-テトラメチル-2-(4,8,12-トリメチルトリデシル)-2H-1-ベンゾピラン-6-イル]オキシ]カルボニル] -3-オキソ-3-[(3-カルボキシプロピル)アミノ] プロピル]システニイルグリシン、
(e)S-[2-[[[3,4-ジヒドロ-2,5,7,8-テトラメチル-2-(4,8,12-トリメチルトリデシル)-2H-1-ベンゾピラン-6-イル]オキシ]カルボニル]-3-オキソ-3-[(2-スルフォエチル)アミノ] プロピル]システイン、
(f)γ-グルタミル-S-[2-[[[3,4-ジヒドロ-2,5,7,8-テトラメチル-2-(4,8,12-トリメチルトリデシル)-2H-1-ベンゾピラン-6-イル]オキシ]カルボニル]-3-オキソ-3-[[2-(1H-インドール-3-イル)エチル]アミノ]プロピル]システニイルグリシン、
(g)γ-グルタミル-S-[2-[[[3,4-ジヒドロ-2,5,7,8-テトラメチル-2-(4,8,12-トリメチルトリデシル)-2H-1-ベンゾピラン-6-イル]オキシ]カルボニル]-3-オキソ-3-[(5-カルボキシペンチル)アミノ]プロピル]システニイルグリシン、
(h)γ-グルタミル-S-[2-[[[3,4-ジヒドロ-2,5,7,8-テトラメチル-2-(4,8,12-トリメチルトリデシル)-2H-1-ベンゾピラン-6-イル]オキシ]カルボニル]-3-オキソ-3-[(トランス-4-カルボキシシクロヘキシルメチル)アミノ]プロピル]システニイルグリシン、
(i)γ-グルタミル-S-[2-[[[3,4-ジヒドロ-2,5,7,8-テトラメチル-2-(4,8,12-トリメチルトリデシル)-2H-1-ベンゾピラン-6-イル]オキシ]カルボニル]-3-オキソ-3-[(2-スルフォエチル)アミノ]プロピル]システイン、
(j)S-[2-[[[3,4-ジヒドロ-2,5,7,8-テトラメチル-2-(4,8,12-トリメチルトリデシル)-2H-1-ベンゾピラン-6-イル]オキシ]カルボニル]-3-オキソ-3-[(2-スルフォエチル)アミノ]プロピル]ペニシラミン、
(k)S-[2-[[[3,4-ジヒドロ-2,5,7,8-テトラメチル-2-(4,8,12-トリメチルトリデシル)-2H-1-ベンゾピラン-6-イル]オキシ]カルボニル]-3-オキソ-3-[(2-スルフォエチル)アミノ]プロピル]システナミン、
(l)γ-グルタミル-S-[2-[[[3,4-ジヒドロ-2,5,7,8-テトラメチル-2-(4,8,12-トリメチルトリデシル)-2H-1-ベンゾピラン-6-イル]オキシ]カルボニル]-3-オキソ-3-[(エトキシカルボニルメチル)アミノ]プロピル]システニイルグリシン、
(m)γ-グルタミル-S-[2-[[[3,4-ジヒドロ-2,5,7,8-テトラメチル-2-(4,8,12-トリメチルトリデシル)-2H-1-ベンゾピラン-6-イル]オキシ]カルボニル]-3-オキソ-3-[(2-スルフォエチル)アミノ]プロピル]システニイルグリシン イソプロピルエステル、
(n)γ-グルタミル-S-[2-[[[3,4-ジヒドロ-2,5,7,8-テトラメチル-2-(4,8,12-トリメチルトリデシル)-2H-1-ベンゾピラン-6-イル]オキシ]カルボニル]-3-オキソ-3-[(2-スルフィノエチル)アミノ]プロピル]システニイルグリシン、
(o)γ-グルタミル-S-[2-[[[3,4-ジヒドロ-2,5,7,8-テトラメチル-2-(4,8,12-トリメチルトリデシル)-2H-1-ベンゾピラン-6-イル]オキシ]カルボニル]-3-オキソ-3-(2-カルボキシピロリジノ)プロピル]システニイルグリシン。
【0036】
本化合物は、遊離のものであっても、その薬理学的に許容できる塩であっても、本発明の目的のため適宜に用いることができる。その薬理学的に許容できる塩としては、たとえばナトリウム塩やカリウム塩などのアルカリ金属塩、およびカルシウム塩やマグネシウム塩などのアルカリ土類金属塩、さらに有機アミン塩としてエタノールアミン塩やリジン塩などが例示される。これら以外の塩であっても薬理学的に許容できる塩であればいずれのものであっても適宜に使用することができる。
【0037】
本化合物の第一の構成成分であるビタミンEとしては、α,β,γ,δ−トコフェロールのいずれもが適宜使用することができる。
【0038】
本化合物の第二の構成成分であるSH化合物としては、上記のように、(1)グルタチオン、(2)γ−グルタミルシステイン、(3)システイン、(4)ペニシラミン、これらのエステルまたは(5)システナミンが用いられる。グルタチオン、γ−グルタミルシステイン、システイン、ペニシラミンのエステルとしては、炭素数2〜6のアルキルエステルが挙げられる。具体的には、メチルエステル、エチルエステル、n−プロピルエステル、iso−プロピルエステル、シクロプロピル、n−ブチルエステル、tert−ブチルエステル、sec−ブチルエステル、n−ペンチルエステル、l−エチルプロピルエステルおよびiso−ペンチルエステルなどが挙げられる。
【0039】
さらに、本化合物の第三の構成成分であるN−置換アミノ酸としては、上記のように、(6)グリシン(式中n=1)、β−アラニン(式中n=2)、γ−アミノ酪酸(式中n=3)、5−アミノ吉草酸(式中n=4)、ε−アミノカプロン酸(式中n=5)、(7)アントラニル酸、(8)トラネキサム酸、(9)プロリン、これらのエステル、(10)2−アミノエタンスルホン酸、(11)2−アミノエタンスルフィン酸が用いられる。
【0040】
N−置換アミノ酸のエステル(但し、アミノエタンスルホン酸、アミノエタンスルフィン酸は除く。)としては、炭素数2〜6のアルキルエステルが挙げられる。具体的には、メチルエステル、エチルエステル、n−プロピルエステル、iso−プロピルエステル、シクロプロピル、n−ブチルエステル、tert−ブチルエステル、sec−ブチルエステル、n−ペンチルエステル、l−エチルプロピルエステルおよびiso−ペンチルエステルなどが挙げられる。
【0041】
本化合物の第四の構成成分であるアミンとしては、(12)セロトニンが用いられる。
【0042】
本化合物は、例えば次の合成経路により、またはこれに準じて適宜合成することができる。
【0043】
【化7】

【0044】
具体的には以下のとおりである。まずビタミンE(II)を無水マレイン酸(III)と炭酸アルカリ(炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなど)または酢酸アルカリ(酢酸ナトリウム、酢酸カリウムなど)の存在下でアセトン、アセトニトリルまたはテトラハイドフラン(THE)などの無極性溶媒中で加熱して約1〜3時間反応させて、マレイン酸(またはフマール酸)モノトコフェロール(IV)とする。さらに、このように生成した化合物(IV)とアミノ酸(グリシン、β−アラニン、γ−アミノ酪酸、5−アミノ吉草酸、ε−アミノカプロン酸、アントラニル酸、トラネキサム酸、プロリン、これらのエステル、2−アミノエタンスルホン酸、2−アミノエタンスルフィン酸)またはアミン(セロトニン)とを、クロロホルムまたはテトラヒドロフランなどの溶媒中、有機アミン(ピリジン、トリエチルアミンなど)の存在下、クロル炭酸エチルなどによる混合酸無水物法により縮合し、マレイン酸(またはフマール酸)モノトコフェロール(IV)のそれぞれ対応する酸アミド(V)とする。次に、これらの化合物(IV)または(V)と本化合物の構成成分であるSH化合物(グルタチオン、γ−グルタミルシステイン、システイン、ペニシラミン、これらのエステルまたはシステナミン)とを室温下で約3〜6時間、加温下で約1〜3時間付加反応させることにより本化合物(I)を得ることができる。この際の反応溶媒としては、水または水と混和できる溶媒、たとえばアルコール、アセトニトリル、ジオキサンなどが挙げられ、好ましくは水との混合液がよい。
【0045】
このようにして得られた本化合物(I)は、公知の方法により、薬理学的に許容できる塩として、また溶媒和物として得てもよい。
【0046】
後述する実験例1で示すように、本発明化合物は抗がん剤投与によって誘発される抜け毛(脱毛)を抑制し低減することができる。本発明化合物の当該機能は明らかではないが、実験例1の実験により、抗がん剤投与によって脱毛した頭皮では毛包に炎症細胞浸潤が生じていること、本発明化合物の投与によって当該毛包の炎症細胞浸潤が顕著に縮小することが判明したことから、本発明化合物は抗がん剤投与(がん化学療法)によって生じる毛包の炎症を、直接的または間接的に抑制または縮小することによって、がん化学療法に起因する脱毛を抑制または低減しているものと考えられる。なお、がん化学療法によって毛包に炎症細胞浸潤が生じているという本発明での知見は、がん化学療法による副作用のいくつかは炎症性メディエーターの産生が増加することによってもたらされるという従来の報告(非特許文献6〜8)とも一致する。また、実験例1に示すように、本発明化合物の化学療法に対する抗脱毛抑制作用は、抗がん剤の皮膚細胞へのアポトーシス誘導作用を抑制することによるもの、または抗がん剤の皮膚細胞への酸化ストレスを抑制することによるものと考えられる。
【0047】
本発明化合物は、抗脱毛用組成物として、がん化学療法を受けるがん患者に対して経口的あるいは非経口的〔静脈投与、皮下投与、筋肉内投与、経皮投与、経肺投与、経粘膜投与(点鼻など)、腹腔内投与、直腸投与など〕に投与される。好ましくは、経皮投与(皮膚上投与)、皮下投与、筋肉内投与、静脈内投与または経口投与である。より好ましくは経皮投与(皮膚上投与)である。なお、上記がん患者は通常ヒトであるが、例えば実験動物としてヒト以外の哺乳動物(例えば、マウス、ラット、ハムスター、ウサギ、ネコ、イヌ、ウシ、ヒツジ、サルなど)に用いることもできる。
【0048】
本発明化合物は、上記投与経路に応じて、通常用いられる薬学的に許容される担体(例えば、賦形剤、結合剤、崩壊剤、崩壊補助剤、滑沢剤、湿潤剤など)や添加剤(例えば、再吸収促進剤、pH調整剤、界面活性剤、溶解補助剤、保存剤、乳化剤、等張化剤、安定化剤、浸透促進剤、抗酸化剤、香料、殺菌剤、角質溶解剤)などと混合し、顆粒剤、散剤、錠剤(糖衣錠を含む)、丸剤、バッカル剤、カプセル剤、シロップ剤、液剤(ローションを含む)、乳剤、懸濁剤、クリーム剤、軟膏剤、注射剤、点滴剤、点鼻剤、貼付剤、坐剤などの所望の形態に剤型化することにより調製することができる。
【0049】
斯くして調製される抗脱毛用組成物の形態(剤型)としては、好ましくは経皮投与(皮膚上投与)に適した外用組成物(皮膚外用剤)の形態であり、具体的には液剤(ローション)、乳剤、懸濁剤、クリーム剤、軟膏剤を挙げることができる。なお、当該外用組成物には、医薬組成物、医薬部外組成物及び化粧組成物が含まれる。かかる外用組成物には、本発明の効果を妨げない限り、通常の皮膚外用剤(毛髪用化粧料を含む)に配合され得る一般的な基剤成分や薬効成分を、具体的な組成物の剤型や形態に応じて、配合することができる。具体的には、水;エタノールやイソプロピルアルコールなどの低級アルコール;グリセリン、プロピレングリコール等の多価アルコール;各種界面活性剤(アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、ノニオン界面活性剤、両性界面活性剤)、高級アルコール、油分、増粘剤、保湿剤、ビタミン類、アミノ酸類、酸化防止剤、殺菌剤、清涼剤、動植物抽出エキス、香料等を、組成物の目的とする剤型や形態に応じて、配合することができる。また本発明の有効性を高めるために、本発明の効果を妨げない範囲で、浸透促進剤や毛包細胞活性化成分を配合することもできる。浸透促進剤としては、アミンオキシド、ドデシル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレン(40モル)硬化ヒマシ油などが知られている。また毛包細胞活性化成分としては、ヒノキチオール、ニコチン酸アミド、ビタミンB6類、セファランチン、ビオチン、パントテン酸等が知られている。
【0050】
本発明の抗脱毛用組成物は、がん化学療法によって誘発される脱毛を抑制する作用を発揮する有効量の本発明化合物を含有する。本発明の抗脱毛用組成物中に配合される本発明化合物の具体的な含有量は、抗脱毛用組成物の形態や投与経路によっても異なるが、通常1〜100重量%の範囲、好ましくは1〜50重量%の範囲で適宜調整することができる。
【0051】
本発明の抗脱毛用組成物を使用する際の投与量は、がん患者の体重や年齢、投与経路、組成物の剤型、医薬用途とそれ以外の用途の別等によっても異なるが、たとえば、本発明化合物の量に換算して、注射剤の場合は成人1日1回約1mg〜約30mg;錠剤等の経口投与剤の場合は、成人1日数回、1回量約1mg〜約100mg程度;さらにローション、軟膏及びクリーム等の皮膚外用剤の場合は、1回量約1mg〜約1000mg程度を投与するのがよい。
【0052】
本発明の抗脱毛用組成物は、がん化学療法(抗がん剤治療)によって誘発される脱毛を抑制または減少するために、専らがん化学療法を受けるがん患者に対して用いられる。がん患者が受けるがん化学療法(抗がん剤治療)が、副作用として抜け毛(脱毛)を誘発し得るものであれば、本発明の抗脱毛用組成物を投与する対象となり得る。このため、この限りにおいて、患者が罹患しているがんの種類、男性と女性の別、またがん患者の年齢も特に制限されない。
【0053】
抗がん剤は、大きくアルキル化薬(例えば、シクロホスファミド、イホスファミド、ブスルファン、カルボコン、メルファラン等のマスタード薬;ニムスチン、ラニムスチン等のニトロウレア類;ダカルバジン、プロカルバジン)、代謝拮抗薬(メトトレキサートなどの葉酸拮抗薬;5−FU、テガフール、ゲムシタビン、カペシタビン等のピリミジン拮抗薬;メルカプトプリン、ペントスタチン、フルダラビン、クラドリビン等のプリン拮抗薬;L−アスパラギナーゼ)、抗生物質(ドキソルビシン、ダウノルビシン、エピルビシン、イダルビシン等のアントラサイクリン系抗生物質;マイトマイシンC,アクチノマイシンD,ブレオマイシン等)、微小管阻害薬(ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビンデシン、ビノレルビン等のビンカアルカロイド;パクリタキセル、ドセタキセル等のタキサン)、白金製剤(シスプラチン、カルボプラチン、ネダプラチン)、トポイソメラーゼ阻害薬(イリノテカンやノギテカン等のトポイソメラーゼI阻害薬;ポドフィロトキシン誘導体やアントラサイクロン系抗生物質等のトポイソメラーゼII阻害薬)、生物製剤、分子標的治療薬(トレチノイン、イマチニブ、ゲフィチニブ、リツキシマブ、トラスツズマブ)等に分類することができる。これらの抗がん剤の多くに副作用として脱毛が生じる。
【0054】
本発明の抗脱毛用組成物の投与は、上記がん化学療法(抗がん剤治療)と並行して実施することが好ましい。「並行して」とは、がん化学療法期間と抗脱毛用組成物の投与期間とに重複期間があることを意味する。本発明の抗脱毛用組成物の好ましい投与態様は、がん化学療法(抗がん剤投与)期間中、抗脱毛用組成物も継続して投与しつづける投与態様である。またこの場合、がん化学療法(抗がん剤投与)前から事前に抗脱毛用組成物を投与しておいてもよいし、またがん化学療法(抗がん剤投与)後も抗脱毛用組成物を継続して投与してもよい。
【実施例】
【0055】
次に、製造例、実験例および実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明の範囲に限定されない。
【0056】
[製造例]
製造例1
(1)γ-グルタミル-S-[1-[[[3,4-ジヒドロ-2,5,7,8-テトラメチル-2-(4,8,12-トリメチルトリデシル)-2H-1-ベンゾピラン-6-イル]オキシ]カルボニル]-3-カルボキシプロピル]システニイルグリシン(略称:EM-GS)のモノナトリウム塩の製造
dl−α−トコフェロール4.3g(0.01モル)、無水マレイン酸2.0g(0.02モル)および炭酸ナトリウム2.1g(0.02モル)にアセトン80mlを加えて1時間、加熱還流した後、無機塩を濾別し、溶媒を留去した。残渣油状物に水60mlを加え、さらに塩酸で酸性とした後、酢酸エチルで抽出した。次にこれを水で洗浄した後、酢酸エチルを留去させ、残渣油状物のマレイン酸モノα−トコフェロールエステル約5gを得た。次に70%メタノール100mlに水酸化ナトリウム0.6gおよびグルタチオン3.4g(0.011モル)を加えて溶解し、これに上記のマレイン酸モノα−トコフェロールエステルをメタノール30mlに溶解したものを加えて、40℃、3時間攪拌した。次にこれを冷却し析出した半固型油状物を集め、80%含水メタノールで2〜3回洗い、次にメタノールを加えて結晶化させ、結晶を濾取しアセトンで洗い4.0gを得た。これを水−エタノールから再結晶して、標題の化合物のモノナトリウム塩2.8gを得た。
【0057】
(2)γ-グルタミル-S-[1-[[[3,4-ジヒドロ-2,5,7,8-テトラメチル-2-(4,8,12-トリメチルトリデシル)-2H-1-ベンゾピラン-6-イル]オキシ]カルボニル]-3-カルボキシプロピル]システニイルグリシンの製造
dl−α−トコフェロール4.3g、無水マレイン酸3.0gおよび酢酸ナトリウム1.5gにアセトン80mlを加えて3時間、加熱還流した後、溶媒を留去し、残渣油状物に水60mlを加え、さらに塩酸で酸性とした後、ジイソプロピルエーテルで抽出し、水洗後、ジイソプロピルエーテルを留去させ、残渣油状物のマレイン酸モノα−トコフェロールエステル(放置すると結晶化)5.1gを得た。(これをn−ヘキサンから再結晶すると融点70〜72℃の白色結晶3.8gを得ることができる。)次にメタノール80mlに水酸化ナトリウム0.6gを加えて溶解し、これにグルタチオン3.4gおよび上記のマレイン酸モノα−トコフェロールエステルをエタノール30mlに溶解したものを加えて、50℃、3時間攪拌した。次に、これを冷却し析出した白色結晶を濾取し、アセトンで洗浄後、この結晶に水100mlを加えてのり状とし、これに塩酸を加えてpH3とし、析出する白色結晶を濾取、水洗し、乾燥後テトラハイドロフラン/エタノールから再結晶して、標題の遊離酸3.5gを得た。
【0058】
(3)γ-グルタミル-S-[1-[[[3,4-ジヒドロ-2,5,7,8-テトラメチル-2-(4,8,12-トリメチルトリデシル)-2H-1-ベンゾピラン-6-イル]オキシ]カルボニル]-3-カルボキシプロピル]システニイルグリシン 2ナトリウム塩の製造
上記(2)で得られた遊離酸を3.5gテトラハイドロフラン60mlに溶かし、これに水酸化ナトリウム/メタノールを徐々に加えてpH6.5とした後、溶媒を留去し、これにメタノールを加えて析出する白色結晶を濾取し、これを水−メタノールから再結晶して、標題の化合物の2ナトリウム塩3.0gを得た。
【0059】
製造例2 γ-グルタミル-S-[2-[[[3,4-ジヒドロ-2,5,7,8-テトラメチル-2-(4,8,12-トリメチルトリデシル)-2H-1-ベンゾピラン-6-イル]オキシ]カルボニル]-3-オキソ-3-[(2-スルフォエチル)アミノ]プロピル]システニイルグリシン(略称:ETS-GS)のナトリウム塩の製造
製造例1の製造過程で得られたマレイン酸モノα−トコフェロールエステル5.3gをクロロホルム30mlに溶かし、これにトリエチルアミン1.2gを加えて−5℃に冷却して置き、これにクロル炭酸エチル1.3gを徐々に滴下した後、15分後にこれにタウリン(2−アミノエタンスルホン酸)1.6gおよび水酸化ナトリウム0.5gをメタノール50mlに溶かしたものを一挙に加えて30分間攪拌し、更に室温にもどして1時間攪拌した。次に溶媒を留去させ、これにアセトンを加えて析出する白色結晶を濾取し、4.0gを得た。更に母液に水酸化ナトリウム/メタノールを加えてpH8として析出する結晶を濾取し1.6gを得た。これらを合わせてメタノール/エタノールから再結晶して、白色結晶のN−(α−トコフェロールマレイニル)アミノエタンスルホン酸ナトリウム塩4.5gを得た。
【0060】
次に、90(V/V)%メタノール溶液60mlに水酸化ナトリウム0.45gおよびグルタチオン3.3gを加えて溶解し、これに上記の化合物4.5gをメタノール50mlに溶解したものを加えて、50℃、3時間攪拌し、冷却後析出した白色結晶を濾取し、メタノールで洗浄し6.0gを得た。これを水200mlに溶かし、これに酢酸銅2.5gを水50ml、酢酸2mlに溶解したものを加えて析出する銅塩を濾取し、水洗後アセトン、メタノールで洗い5.3gを得た。これをテトロラハイドロフラン/メタノール(3:5)の混液100mlに懸濁して置き、これに硫化水素を通じて硫化銅として濾別後、濾液に水酸化ナトリウム/メタノールを加えてpH5として析出する白色結晶を濾取し、メタノールで洗浄して乾燥させて、標題の目的化合物のナトリウム塩3.9gを得た。
【0061】
製造例3 γ-グルタミル-S-[2-[[[3,4-ジヒドロ-2,5,7,8-テトラメチル-2-(4,8,12-トリメチルトリデシル)-2H-1-ベンゾピラン-6-イル]オキシ]カルボニル]-3-オキソ-3-[(2-カルボキシフェニル)アミノ]プロピル]システニイルグリシン(略称:E-Ant-S-GS)のナトリウム塩の製造
製造例1の製造過程で得られたマレイン酸モノα−トコフェロールエステル5.3gをクロロホルム30mlに溶解し、製造例1と同様にトリエチルアミン1.2g、クロル炭酸エチル1.3gを用いて混合酸無水物法によりアントラニル酸1.5g、ピリジン3mlをテトラハイドロフラン40mlに溶かしたものを反応させ、溶媒留去後、塩酸酸性として酢酸エチルで抽出、水洗後、酢酸エチルを留去し、残渣油状物7.5gを得た。
【0062】
一方、メタノール70mlに水酸化ナトリウム0.8gを加えて溶かし、これにグルタチオン3.3gおよび上記の油秋物7.5gをメタノール20mlに溶かしたものを加えて、50℃、3時間攪拌する。次に冷却後、析出した白色結晶を濾取した。これに水50mlを加えてゲル状とし、これに酢酸3mlを加えて析出する白色結晶を濾取し、これを酢酸エチル/エタノールの混液に溶解し、水酸化ナトリウム/メタノール液を加えてPH6.5として析出する白色結晶を濾取し、テトラハイドロフラン/エタノールから再結晶して、標題の目的化合物のナトリウム塩3.7gを得た。
【0063】
製造例4 γ-グルタミル-S-[2-[[[3,4-ジヒドロ-2,5,7,8-テトラメチル-2-(4,8,12-トリメチルトリデシル)-2H-1-ベンゾピラン-6-イル]オキシ]カルボニル]-3-オキソ-3-[(3-カルボキシプロピル)アミノ]プロピル]システニイルグリシン(略称:EGABA-GS)のナトリウム塩の製造
製造例1で得たマレイン酸モノα−トコフェロールエステル5.3gをクロロホルム30mlに溶かし、前記と同様にトリエチルアミン1.2g、クロル炭酸エチル1.3gを用いて混合酸無水物法によりγ−アミノ酪酸 (GABA)1.3g、水酸化カリウム0.6gをN,N’−ジメチルホルムアミド50mlに溶解したものを加えて、以下製造例3と同様に反応処理して標題の目的化合物のナトリウム塩4.0gを得た。
【0064】
製造例5 S-[2-[[[3,4-ジヒドロ-2,5,7,8-テトラメチル-2-(4,8,12-トリメチルトリデシル)-2H-1-ベンゾピラン-6-イル]オキシ]カルボニル]-3-オキソ-3-[(2-スルフォエチル)アミノ]プロピル]システインのナトリウム塩の製造
製造例2で示したN−(α−トコフェロールマレイニル)アミノエタンスルホン酸のナトリウム塩2.4gをメタノール50mlに溶かし、これにL−システイン0.6gを加えて、50℃、2時間攪拌する。次に冷却後析出する白色結晶を濾取し、水/メタノールから再結晶して、白色結晶の標題の目的化合物のナトリウム塩1.8gを得た。
【0065】
製造例6 γ-グルタミル-S-[2-[[[3,4-ジヒドロ-2,5,7,8-テトラメチル-2-(4,8,12-トリメチルトリデシル)-2H-1-ベンゾピラン-6-イル]オキシ]カルボニル]-3-オキソ-3-[[2-(1H-インドール-3-イル)エチル]アミノ]プロピル]システニイルグリシン(略称:ESeroS-GS)のナトリウム塩の製造
製造例1で得たマレイン酸モノα−トコフェロールエステル5.3g、トリエチルアミン1.2g、クロル炭酸エチル1.3gをクロロホルム中で製造例1と同様に混合酸無水物法によりセロトニン塩酸塩2.4g、トリエチルアミン1.5gをメタノール40mlに溶かしたものを加え、製造例2と同様に反応させ、溶媒を留去後、残渣油状物を酢酸エチルで抽出し、1%酢酸、水で洗った後、酢酸エチルを留去した。これにメタノールを加えて放置し、析出する白色結晶をメタノールから再結晶して、N−(α−トコフェロールマレイニル)セロトニンなる化合物4.5gを得た。次に、これとグルタチオン3.4g、水酸化ナトリウム0.4gにメタノール70mlを加えて、50℃、3時間攪拌後、反応液を30mlまで濃縮し、析出した結晶を濾取し、以下製造例3と同様に処理して、標題の目的化合物のナトリウム塩3.7gを得た。
【0066】
製造例7 γ-グルタミル-S-[2-[[[3,4-ジヒドロ-2,5,7,8-テトラメチル-2-(4,8,12-トリメチルトリデシル)-2H-1-ベンゾピラン-6-イル]オキシ]カルボニル]-3-オキソ-3-[(5-カルボキシペンチル)アミノ]プロピル]システニイルグリシンのナトリウム塩の製造
製造例1で得たマレイン酸モノα−トコフェロールエステル5.3g、トリエチルアミン1.2g、クロル炭酸エチル1.3gおよびε−アミノカプロン酸1.5gを用いて、製造例2と同様に混合酸無水物法により反応処理して、溶媒を留去後残渣に水を加え、更に塩酸酸性として酢酸エチルで抽出し水洗後留去した。これをメタノール70mlに溶かし、これにグルタチオン3.3gを加え、さらに水酸化ナトリウム/メタノールでpH6.5として、50℃、3時間攪拌した後冷却し、析出する結晶を濾取し、これに水50mlを加えた。更にこれを酢酸酸性として結晶を濾取し、水洗後THF/エタノールに溶解し、THF留去後、水酸化ナトリウム/メタノールでpH7として析出する白色結晶を濾取し、これをメタノール/エタノールから再結晶して標題の目的化合物の2−ナトリウム塩2.5gを得た。
【0067】
製造例8 γ-グルタミル-S-[2-[[[3,4-ジヒドロ-2,5,7,8-テトラメチル-2-(4,8,12-トリメチルトリデシル)-2H-1-ベンゾピラン-6-イル]オキシ]カルボニル]-3-オキソ-3-[(トランス-4-カルボキシシクロヘキシルメチル)アミノ]プロピル]システニイルグリシンのナトリウム塩の製造
製造例1で得たマレイン酸モノα−トコフェロールエステル5.3g、トリエチルアミン1.2g、クロル炭酸エチル1.3gおよびトラネキサム酸(トランス−4−アミノメチルシクロヘキサンカルボン酸)1.7gを用いて、製造例7と同様に反応処理して目的化合物の2−ナトリウム塩2.2gを得た。
【0068】
製造例9 γ-グルタミル-S-[2-[[[3,4-ジヒドロ-2,5,7,8-テトラメチル-2-(4,8,12-トリメチルトリデシル)-2H-1-ベンゾピラン-6-イル]オキシ]カルボニル]-3-オキソ-3-[(2-スルフォエチル)アミノ]プロピル]システインのナトリウム塩の製造
製造例2で得た中間体、N−(α−トコフェロールマレイニル)アミノエタンスルホン酸ナトリウム塩2.6gおよびγ−グルタミルシステイン1.0gにメタノール50mlを加え、更に水酸化ナトリウム/メタノールでPH6.5として、50℃、3時間攪拌した。次に反応液を20mlまで濃縮し、析出した白色結晶を濾取し、これに水70mlを加えて溶かし、塩酸でpH3として析出する白色結晶を濾取した。次に、これをTHF/エタノールに溶かし、水酸化ナトリウム/メタノールでpH6.5として、THEを留去後、析出した結晶を濾取し、少量のメタノールで洗い、メタノール/エタノールから再結晶して、標題の目的化合物の2−ナトリウム塩1.3gを得た。
【0069】
製造例10 S-[2-[[[3,4-ジヒドロ-2,5,7,8-テトラメチル-2-(4,8,12-トリメチルトリデシル)-2H-1-ベンゾピラン-6-イル]オキシ]カルボニル]-3-オキソ-3-[(2-スルフォエチル)アミノ]プロピル]ペニシラミンのナトリウム塩の製造
製造例2で得た中間体、N−(α−トコフェロールマレイニル)アミノエタンスルホン酸ナトリウム塩3.2gおよびD−ペニシラミン0.8gを用いて、製造例5と同様に反応処理して得られる結晶をメタノール/エタノールから再結晶させて、目的化合物のナトリウム塩2.5gを得た。
【0070】
製造例11 S-[2-[[[3,4-ジヒドロ-2,5,7,8-テトラメチル-2-(4,8,12-トリメチルトリデシル)-2H-1-ベンゾピラン-6-イル]オキシ]カルボニル]-3-オキソ-3-[(2-スルフォエチル)アミノ]プロピル]システナミンの製造
製造例2で得た中間体、N−(α−トコフェロールマレイニル)アミノエタンスルホン酸ナトリウム塩2.4gおよびシステナミン0.5gをメタノール70mlに溶解し、酢酸を加えてpH6とし、50℃、3時間攪拌した。冷後析出した結晶を濾取し、これをメタノールに懸濁しておき、水酸化ナトリウム/メタノールでpH7として溶解後、酢酸酸性として析出する白色結晶を濾取し、メタノールで洗って乾燥させて、白色結晶の標題の目的化合物1.3gを得た。
【0071】
製造例12 γ-グルタミル-S-[2-[[[3,4-ジヒドロ-2,5,7,8-テトラメチル-2-(4,8,12-トリメチルトリデシル)-2H-1-ベンゾピラン-6-イル]オキシ]カルボニル]-3-オキソ-3-[(エトキシカルボニルメチル)アミノ]プロピル]システニイルグリシンのナトリウム塩の製造
製造例1で得たマレイン酸モノα−トコフェロールエステル5.3g、トリエチルアミン1.2g、クロル炭酸エチル1.3gおよびグリシンエチル塩酸塩1.5gを用いて、製造例2と同様に混合酸無水物法により反応処理して、溶媒を留去後、酢酸エチルで抽出し、3%炭酸水素ナトリウム、1N−塩酸、水の順で洗浄し、酢酸エチル留去後、残渣油状物約6gを得た。これをメタノール50mlに溶かした。一方、グルタチオン3.3g、水酸化ナトリウム0.5gを70%メタノール50mlに溶かし、上記のメタノール溶液に加えて50℃、2時間攪拌する。次に溶媒を留去しエタノールを加えて析出した結晶を濾取し、これに水50mlを加えて溶解し、これに塩酸を加えて析出する白色結晶を濾取し、THF/エタノール(1:1)に溶解し、製造例7と同様にして標題の目的化合物のナトリウム塩2.0gを得た。
【0072】
製造例13 γ-グルタミル-S-[2-[[[3,4-ジヒドロ-2,5,7,8-テトラメチル-2-(4,8,12-トリメチルトリデシル)-2H-1-ベンゾピラン-6-イル]オキシ]カルボニル]-3-オキソ-3-[(2-スルフォエチル)アミノ]プロピル]システニイルグリシン イソプロピルエステルのナトリウム塩の製造
グルタチオンイソプロピルエステル硫酸塩(γ−グルタミル−システニルグリジンイソプロピルエステル硫酸塩)4.0gを水60mlに懸濁しておき、これに2N−水酸化ナトリウムを徐々に加えてpH4として溶解後、濃縮した。これに80%メタノール100mlを加え、更に製造例2で得た中間体、N−(α−トコフェロールマレイニル)アミノエタンスルホン酸のナトリウム塩4.8gを加えて、50℃、3時間攪拌する。次に溶媒を約60ml留去し、析出する結晶を濾取した。これにTHE−メタノール(1:1)に溶解し、不溶物を濾別した後、溶媒を留去、残渣結晶物にエタノールを加えて結晶を濾取した。これをメタノール/エタノールから再結晶させて白色結晶の標題の目的化合物のナトリウム塩3.6gを得た。
【0073】
製造例14 γ-グルタミル-S-[2-[[[3,4-ジヒドロ-2,5,7,8-テトラメチル-2-(4,8,12-トリメチルトリデシル)-2H-1-ベンゾピラン-6-イル]オキシ]カルボニル]-3-オキソ-3-[(2-スルフィノエチル)アミノ]プロピル]システニイルグリシンのナトリウム塩の製造
製造例7のε−アミノカプロン酸の代わりにヒポタウリン(2−アミノエタンスルフィン酸)1.5gを用いて、製造例2と同様に反応処理して、標題の目的化合物のナトリウム塩3.9gを得た。
【0074】
製造例15 γ-グルタミル-S-[2-[[[3,4-ジヒドロ-2,5,7,8-テトラメチル-2-(4,8,12-トリメチルトリデシル)-2H-1-ベンゾピラン-6-イル]オキシ]カルボニル]-3-オキソ-3-(2-カルボキシピロリジノ)プロピル]システニイルグリシンのナトリウム塩の製造
製造例7のε−アミノカプロン酸の代わりにL−プロリン1.5gを用いて、製造例2と同様に反応処理して、標題の目的化合物のナトリウム塩3.9gを得た。
【0075】
[実験例]
下記の実験において、本発明化合物の一例として、製造例6で作製した下式で示される化合物〔γ-グルタミル-S-[2-[[[3,4-ジヒドロ-2,5,7,8-テトラメチル-2-(4,8,12-トリメチルトリデシル)-2H-1-ベンゾピラン-6-イル]オキシ]カルボニル]-3-オキソ-3-[[2-(1H-インドール-3-イル)エチル]アミノ]プロピル]システニイルグリシン:ESeroS-GS〕のナトリウム塩を用いた(以下、これを単にESeroS-GSという)。この化合物は水溶性で、安定であることを特徴とする。
【0076】
【化8】

【0077】
実験例1
抗がん剤(サイトシンアラビノサイド、以下「AraC」という。:アップジョン社)を用いて人為的に脱毛を生じさせたラット(化学療法誘発脱毛モデル動物)に、製造例6で調製したESeroS-GSを投与し、化学療法誘発脱毛に対するESeroS-GSの抗脱毛作用を評価した。なお、当該実験は、大分大学医学部における動物研究の倫理委員会による承認のもとで実施した。またすべてのプロトコルは国立衛生研究所のガイドラインに従って行った。さらにラットは「Principles of Laboratory Animal Care」の法規に従って人道的配慮をしながら取り扱った。
【0078】
(1-1)化学療法誘発脱毛モデル動物の作製とESeroS-GS 投与
SD rat(雄、8日齢、体重約30g:Kyudou社)を、大きくAraC投与群(ESeroS-GS背部塗布群)及び対照群に分け、さらにAraC投与群をESeroS-GS塗布群(1:AraC+0.5% ESeroS-GS、2:AraC+1% ESeroS-GS、3:AraC+2% ESeroS-GS、4:AraC+4% ESeroS-GS)とESeroS-GS非塗布群(5:AraCのみ)の合計5群に分けた。
【0079】
AraC投与群のラットに、14日齢になる(実験開始から6日目)までの7日間、毎日AraCを腹腔内に投与した(1日あたり30mg/kg投与)。またESeroS-GS塗布群のラットには、AraC投与と同時に12日間に亘って、毎日白色ワセリン基剤に溶解したESeroS-GS(ESeroS-GS軟膏)(0.5%、1%、2%、4%)を背部に薄く塗布した。ESeroS-GS非塗布群のラットには、上記ESeroS-GS軟膏の塗布に代えて白色ワセリン基剤そのものを、AraC投与と同時に12日間に亘って、毎日背部に塗布した。
【0080】
対照群のラットには、14日齢になる(実験開始から6日目)までの7日間、毎日生理食塩水を腹腔内に投与し(1日あたり1.0ml/k投与)、生理食塩水と同時に12日間に亘って、毎日白色ワセリン基剤を背部に塗布した。
【0081】
(1-2)抗脱毛作用の評価(肉眼観察)
実験開始(AraC投与開始)から13日目に、各被験群のラットについて体毛の密度や被覆率を評価した。なお、評価は、被験ラット群の分類を知らせていない3名の観察者によって行った。各被験群のラットは、体毛密度及び体毛被覆率の両面から0〜5段階のスケールでスコア化した(0:完全に脱毛している、5:正常な体毛密度を有し、且つ体毛被覆率100%)。生理食塩水で処理した対照群(AraC:-、ESeroS-GS:0)のラットは体毛が正常に成長(体毛密度、被覆率100%)していることが確認できたため、対照群のラットの体毛密度及び体毛被覆率をスコア5として、AraC投与群(ESeroS-GS塗布群、ESeroS-GS非塗布群)の各ラットをスコア化し、平均値を求めた。結果を図1及び表1に示す。
【0082】
図1は、左から順番に、ESeroS-GS 塗布群のラット(1:AraC+0.5% ESeroS-GS、2:AraC+1% ESeroS-GS、3:AraC+2% ESeroS-GS、4:AraC+4% ESeroS-GS)及びESeroS-GS非塗布群のラット(5:AraCのみ)について、実験開始(AraC投与開始)から12日目に背部から写した写真の画像を示す。
【0083】
【表1】

【0084】
これらの結果からわかるように、ESeroS-GS非塗布群(5:AraCのみ)のラット(AraC 投与のみでESeroS-GS投与なしのラット)はほぼ完全な脱毛を示した(図1右端)。これに対して、AraC投与と並行してESeroS-GS を塗布したラットは、体毛の密度および被覆率とも、ESeroS-GS の塗布濃度(投与量)に依存して増加を示した。
【0085】
(1-3)組織学観察:HI染色
各被験群のラットは、実験開始から12日目にペントバルビタール麻酔して解剖に供した。対照群のラット(AraC:-、ESeroS-GS:0)、及びAraC投与群のラット(5:AraCのみ、4:AraC+4% ESeroS-GS)の頭皮から採取した皮膚切片を、10%ホルマリン緩衝液に固定化し、ヘマトキシロンおよびエオシンで染色(HI染色)して(頭皮組織標本)、光学顕微鏡により観察した。
【0086】
結果を図2に示す。図2の結果から、抗がん剤投与(AraC)により脱毛した頭皮組織は、毛包に炎症細胞浸潤が生じていることが観察された(図2右上)。かかる組織変化は、ETS-GSで処置することで著しく減少することが確認された(図2中央下)。
【0087】
また、実験データは示さないが、ESeroS-GSは、腎機能や肝臓などの生体臓器に対しても影響を及ぼさず、生体に安全な化合物であることが確認されている。
【0088】
(1-4)アポトーシスアッセイ(Caspase 3/7活性測定)
実験開始から12日目に各被験群のラットから採取した皮膚切片から皮膚抽出液を調製し、これを試料として、アポトーシス誘導に伴うCaspase 3/7の活性をCaspase-Glo 3/7 Assay kit(プロメガ社製)を用いて測定した。皮膚細胞液中のCaspase 3/7の活性を測定することで、皮膚細胞におけるアポトーシスを評価することができる。
【0089】
結果を図3に示す。図3の結果から、抗がん剤投与(AraC)により誘導されたアポトーシスが、ESeroS-GSで処置することで著しく低下することが確認された。このことから、ESeroS-GSによる抗脱毛作用は、抗がん剤によって誘導されるアポトーシスが阻止若しくは抑制されることによるものと考えられる。
【0090】
(1-5)酸化ストレスに対する影響(マロンジアルデヒド)
実験開始から12日目に各被験群のラットから採取した皮膚から組織抽出液を調製し、これを試料として、抽出液中のマロンジアルデヒド(MDA)量をTBARS法(日本老化制御研究所)を用いて測定した。
【0091】
結果を図4に示す。図4の結果から、抗がん剤投与(AraC)により増加したMDAが、ESeroS-GSで処置することで有意に低下することが確認された。このことから、ETS-GSによる抗脱毛作用は、抗がん剤によって誘導増加する酸化ストレスが抑制されることも寄与していると考えられる。
【0092】
[製剤実施例]
製剤実施例1 内服錠
ESeroS-GS 30mg
乳糖 80mg
馬鈴薯澱粉 17mg
ボリエチレングリコール6000 3mg
以上の成分を1錠分の材料として常法により成型する。
【0093】
製剤実施例2 注射剤
ESeroS-GS 5.0g
マニトール 2.0g
注射用蒸留水 残 部
全量 100mL
以上の成分を常法により混合溶解して注射剤とする。
【0094】
製剤実施例3 外用剤(クリーム剤)
ESeroS-GS 0.5g
ステアリン酸 2.0g
ステアリルアルコール 7.0g
スクワラン 5.0g
オクチルデカノール 6.0g
ポリオキシエチレンセチルエーテル 3.0g
グリセリンモノステアレート 2.0g
プロピレングリコール 5.0g
p−オキシ安息香酸メチル 0.2g
p−オキシ安息香酸プロピル 0.1g
滅菌精製水 73.7g
以上の成分を常法により混合してクリーム剤とする。
【0095】
製剤実施例4 外用剤(ローション)
ESeroS-GS 0.5g
リン酸二水素ナトリウム 0.2g
グリセリン 3.0g
亜硫酸水素ナトリウム 0.1g
p−オキシ安息香酸メチル 0.05g
p−オキシ安息香酸プロピル 0.03g
水酸化ナトリウム 適 量
精製水 全量が100mlになるように配合
以上を常法により混合溶解してローションとする。
【0096】
製剤実施例5 ヘアートニック
ESeroS-GS 0.3g
β−グリチルレチン酸アンモニウムム 0.1g
パントテニルアルコール 0.2g
ニコチン酸アミド 0.2g
カルボキシビニルポリマーナトリウム 0.1g
プロピレングリコール 3.0g
l−メントール 0.05g
p−オキシ安息香酸メチル 0.02g
p−オキシ安息香酸プロピル 0.01g
精製水 全量100mlになるように配合
以上を常法により混合溶解してヘアートニックとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(I)で示される水溶性ビタミンE誘導体またはその薬理学的に許容される塩若しくは溶媒和物を有効成分とする、がん化学療法誘発脱毛に対する抗脱毛用組成物:
【化1】

〔式中、RおよびRは、同一または異なって、水素原子または炭素数1〜3の低級アルキル基を示し、RおよびRは、異なって、水素原子であるか、またはS結合した下記式(1)〜(5)のいずれかに示されるSH化合物若しくはそのエステル(但し、システアミンは除く。)を示し、Rは水酸基、下記式(6)〜(11)のいずれかに示されるN−置換アミノ酸、そのエステル(但し、アミノエタンスルホン酸、アミノエタンスルフィン酸は除く。)または下記式(12)に示されるアミンを示す〕
【化2】

【請求項2】
一般式(I)で示される水溶性ビタミンE誘導体が下記(a)〜(o)からなる群から選択されるいずれかである、請求項1に記載する抗脱毛用組成物:
(a)γ-グルタミル-S-[1-[[[3,4-ジヒドロ-2,5,7,8-テトラメチル-2-(4,8,12-トリメチルトリデシル)-2H-1-ベンゾピラン-6-イル]オキシ]カルボニル]-3-カルボキシプロピル]システニイルグリシン、
(b)γ-グルタミル-S-[2-[[[3,4-ジヒドロ-2,5,7,8-テトラメチル-2-(4,8,12-トリメチルトリデシル)-2H-1-ベンゾピラン-6-イル]オキシ]カルボニル]-3-オキソ-3-[(2-スルフォエチル)アミノ]プロピル]システニイルグリシン、
(c)γ-グルタミル-S-[2-[[[3,4-ジヒドロ-2,5,7,8-テトラメチル-2-(4,8,12-トリメチルトリデシル)-2H-1-ベンゾピラン-6-イル]オキシ]カルボニル]-3-オキソ-3-[(2-カルボキシフェニル)アミノ]プロピル]システニイルグリシン、
(d)γ-グルタミル-S-[2-[[[3,4-ジヒドロ-2,5,7,8-テトラメチル-2-(4,8,12-トリメチルトリデシル)-2H-1-ベンゾピラン-6-イル]オキシ]カルボニル] -3-オキソ-3-[(3-カルボキシプロピル)アミノ] プロピル]システニイルグリシン、
(e)S-[2-[[[3,4-ジヒドロ-2,5,7,8-テトラメチル-2-(4,8,12-トリメチルトリデシル)-2H-1-ベンゾピラン-6-イル]オキシ]カルボニル]-3-オキソ-3-[(2-スルフォエチル)アミノ] プロピル]システイン、
(f)γ-グルタミル-S-[2-[[[3,4-ジヒドロ-2,5,7,8-テトラメチル-2-(4,8,12-トリメチルトリデシル)-2H-1-ベンゾピラン-6-イル]オキシ]カルボニル]-3-オキソ-3-[[2-(1H-インドール-3-イル)エチル]アミノ]プロピル]システニイルグリシン、
(g)γ-グルタミル-S-[2-[[[3,4-ジヒドロ-2,5,7,8-テトラメチル-2-(4,8,12-トリメチルトリデシル)-2H-1-ベンゾピラン-6-イル]オキシ]カルボニル]-3-オキソ-3-[(5-カルボキシペンチル)アミノ]プロピル]システニイルグリシン、
(h)γ-グルタミル-S-[2-[[[3,4-ジヒドロ-2,5,7,8-テトラメチル-2-(4,8,12-トリメチルトリデシル)-2H-1-ベンゾピラン-6-イル]オキシ]カルボニル]-3-オキソ-3-[(トランス-4-カルボキシシクロヘキシルメチル)アミノ]プロピル]システニイルグリシン、
(i)γ-グルタミル-S-[2-[[[3,4-ジヒドロ-2,5,7,8-テトラメチル-2-(4,8,12-トリメチルトリデシル)-2H-1-ベンゾピラン-6-イル]オキシ]カルボニル]-3-オキソ-3-[(2-スルフォエチル)アミノ]プロピル]システイン、
(j)S-[2-[[[3,4-ジヒドロ-2,5,7,8-テトラメチル-2-(4,8,12-トリメチルトリデシル)-2H-1-ベンゾピラン-6-イル]オキシ]カルボニル]-3-オキソ-3-[(2-スルフォエチル)アミノ]プロピル]ペニシラミン、
(k)S-[2-[[[3,4-ジヒドロ-2,5,7,8-テトラメチル-2-(4,8,12-トリメチルトリデシル)-2H-1-ベンゾピラン-6-イル]オキシ]カルボニル]-3-オキソ-3-[(2-スルフォエチル)アミノ]プロピル]システナミン、
(l)γ-グルタミル-S-[2-[[[3,4-ジヒドロ-2,5,7,8-テトラメチル-2-(4,8,12-トリメチルトリデシル)-2H-1-ベンゾピラン-6-イル]オキシ]カルボニル]-3-オキソ-3-[(エトキシカルボニルメチル)アミノ]プロピル]システニイルグリシン、
(m)γ-グルタミル-S-[2-[[[3,4-ジヒドロ-2,5,7,8-テトラメチル-2-(4,8,12-トリメチルトリデシル)-2H-1-ベンゾピラン-6-イル]オキシ]カルボニル]-3-オキソ-3-[(2-スルフォエチル)アミノ]プロピル]システニイルグリシン イソプロピルエステル、
(n)γ-グルタミル-S-[2-[[[3,4-ジヒドロ-2,5,7,8-テトラメチル-2-(4,8,12-トリメチルトリデシル)-2H-1-ベンゾピラン-6-イル]オキシ]カルボニル]-3-オキソ-3-[(2-スルフィノエチル)アミノ]プロピル]システニイルグリシン、
(o)γ-グルタミル-S-[2-[[[3,4-ジヒドロ-2,5,7,8-テトラメチル-2-(4,8,12-トリメチルトリデシル)-2H-1-ベンゾピラン-6-イル]オキシ]カルボニル]-3-オキソ-3-(2-カルボキシピロリジノ)プロピル]システニイルグリシン。
【請求項3】
がん患者に対して、がん化学療法と並行して投与されるものである、請求項1または2に記載する抗脱毛用組成物。
【請求項4】
経皮投与形態を有するものである、請求項1乃至3のいずれかに記載する抗脱毛用組成物。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2012−193146(P2012−193146A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−58433(P2011−58433)
【出願日】平成23年3月16日(2011.3.16)
【出願人】(304028726)国立大学法人 大分大学 (181)
【出願人】(502384060)有限会社オガ リサーチ (14)
【Fターム(参考)】