説明

がん関連抗原

本発明は、がんの処置および診断において使用できる新規のがん関連抗原を提供する。さらに、本発明は新規の抗原のアミノ酸および核酸の配列、結合タンパク質、ならびに免疫複合体を提供する。本発明は同様に、診断および治療の方法ならびにキットに関する。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、がんと関連する新規の抗原ならびにがんを処置するおよび検出するための方法および組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
2000年には、推定2200万人が世界中でがんに罹患し、620万例の死亡はこの部類の疾患によるものであった。毎年、1000万例を越える新たな症例があり、この推定値は次の15年で50%増加すると予想されている(WHO, World Cancer Report. Bernard W. Stewart and Paul Kleihues, eds. IARC Press, Lyon, 2003)。現在のがん処置は侵襲的手術法、放射線療法および化学療法に限られており、その全てが重篤となる可能性のある副作用、非特異的な毒性、ならびに/または人の身体像および/もしくは生活の質に対して精神的外傷を与える変化のいずれかを引き起こす。がんは化学療法に不応性となり、さらなる処置の選択肢を狭め、成功の可能性を低くすることがある。一部のがんの予後は他のがんよりも不良であり、ほとんど常に致死的であるものもある。さらに、処置成功率の比較的高い一部のがんもその高い発生率が原因で依然として主要な死因のままである。
【0003】
現在のがん処置が不十分である原因の一つは、罹患組織および細胞に対する選択性の欠如である。外科的切除は、罹病率および合併症の危険性を増大させる可能性があり、「安全域」として外見上正常に見える組織についての除去を伴う。それは同様に、腫瘍細胞が散在している可能性のある、かつ罹患器官または罹患組織の機能を潜在的に維持または回復する可能性のある健常な組織の一部を常に除去する。放射線および化学療法は、非特異的な作用様式によって多くの正常細胞を死滅または損傷するものと考えられる。これは、後年に二次がんを発症する危険性を増大させるだけでなく、ひどい吐き気、体重の減少およびスタミナの低下、脱毛などのような重篤な副作用をもたらす可能性がある。がん細胞に対して選択性の高い処置は、正常細胞を無傷のまま残し、それによって転帰、副作用プロファイルおよび生活の質を改善すると考えられる。
【0004】
がん処置の選択性は、がん細胞に特異的でありかつ正常細胞上には見られない分子を標的化することで改善することができる。これらの分子をその後、抗体に基づく診断法もしくは治療法のまたはそれらの機能を変化させることができる薬物のための、標的として使用することができる。
【0005】
野生型スクラッチ(Scratch)タンパク質について知られている僅かなことは、概念上の翻訳および結果として得られた仮定的タンパク質配列の分析に基づいて得られた。哺乳類スクラッチ (Scrt) mRNAの発現は、脳、脊髄および新たに分化している、有糸分裂後の神経細胞に限定されることが分かっており、神経分化における潜在的な役割を示唆するものである。ヒト哺乳類スクラッチ遺伝子はq24.3 (第8染色体)にマッピングされている。Nakakura et al 2001a, PNAS vol 98 p 4010-4015およびNakakura et al 2001. Mol. Brain. Res. Vol 95 p 162-166。
【0006】
哺乳類スクラッチはSNAGドメインをSNAI1、SNAI2、SNAI3、GFIIおよびGFIIBのような、他の亜鉛フィンガータンパク質と共有する。SNAGドメイン(Batlle E et al. 2000. Nat. Cell Biol, Vol. 2:84-89; Kataoka H et al., 2000. Nucleic Acids Res. Vol. 28:626-633; Grimes HL et al. 1996. Mol. Cell. Biol. Vol. 16:6263-6272; Hemavathy K et al. 2000. Mol. Cell. Biol. Vol: 20:5087-5095)およびカタツムリの歩行運動機能に取り組んでいる、かなりの数の研究室によってScrt遺伝子の過剰発現が見出されているが、タンパク質それ自体の存在はこれまでに示されていない。仮定的タンパク質配列に基づけば、スクラッチタンパク質は五つの亜鉛フィンガードメインおよび転写抑制での機能に関与する一つのSNAGドメインを有するはずである。その配列から、結果的に生じるタンパク質は核内タンパク質であることが示唆され、実際に組換え哺乳類スクラッチの発現はトランスフェクト細胞の核に限定されることが分かっている(Nakakura et al 2001a, PNAS vol 98 p 4010-4015)。
【発明の開示】
【0007】
発明の概要
本発明者らは新規のがん関連タンパク質を同定した。したがって、本発明は、がんの処置および診断において使用できる新規のがん関連抗原を提供する。特に、この抗原は膠芽細胞腫、黒色腫、乳がん、肺がん、卵巣がん、リンパ腫、結腸がん、胃がんおよび/または前立腺がんと関連する。
【0008】
新規の抗原は哺乳類スクラッチの変種である。この変種は、野生型スクラッチには存在していない膜貫通ドメインを有し、結果として本発明のタンパク質は細胞表面上にて検出可能である。したがって、本発明は、がん細胞の表面に発現される哺乳類スクラッチのがん関連変種を含んだ単離タンパク質を含む。本発明の態様において、哺乳類スクラッチのがん関連変種は、SEQ ID NO:1により規定されるアミノ酸配列もしくはその変種、またはSEQ ID NO:2により規定されるアミノ酸配列もしくはその変種を含む。
【0009】
本発明の別の局面は、SEQ ID NO:1のアミノ酸配列もしくはその変種またはSEQ ID NO:2のアミノ酸配列もしくはその変種を含む単離タンパク質である。
【0010】
本発明は同様に、本発明の単離タンパク質をコードする単離核酸配列、本発明の核酸配列を含んだ組換え発現ベクターおよび本発明の組換え発現ベクターを含んだ宿主細胞を含む。
【0011】
本発明の別の局面において、本発明は、がんを有するかまたは有する疑いがある被験体においてがんを検出するかまたはモニターする方法であり、本発明の単離タンパク質をサンプル中の細胞上にて検出する段階を含み、単離タンパク質が細胞上にて検出される場合にがんが示唆される方法を含む。
【0012】
さらに、本発明は、がんを有するかまたは有する疑いがある被験体においてがんを検出するかまたはモニターする方法であり、哺乳類スクラッチのがん関連変種の発現をサンプル中の細胞において検出する段階を含み、哺乳類スクラッチのがん関連変種の発現が細胞において検出される場合にがんが示唆される方法を含む。
【0013】
本発明のさらなる局面は、がん細胞における哺乳類スクラッチの機能または発現を調節することで、被験体においてがんを処置するかまたは予防する方法である。
【0014】
本発明は同様に、本発明の単離タンパク質、本発明の単離核酸配列および/または本発明の組換え発現ベクターの有効量を含んだ薬学的組成物を含む。
【0015】
本発明のさらなる局面は、被験体において免疫反応を誘発するための、本発明の単離タンパク質、本発明の単離核酸配列および/または本発明の組換え発現ベクターの使用である。
【0016】
本発明の別の局面は、がんを処置するかまたは予防するための、本発明の単離タンパク質、本発明の単離核酸配列および/または本発明の組換え発現ベクターの使用である。
【0017】
さらに、本発明は、本発明の単離タンパク質、本発明の単離核酸配列および/または本発明の組換え発現ベクターの有効量を被験体または被験体由来の細胞に投与する段階を含む、被験体においてがんを処置するかまたは予防するための方法を含む。
【0018】
本発明は同様に、本発明の単離タンパク質、本発明の単離核酸配列および/または本発明の組換え発現ベクターの有効量を被験体または被験体由来の細胞に投与する段階を含む、本発明の単離タンパク質に対する被験体での免疫反応を誘導するための方法を含む。
【0019】
本発明のさらなる局面は以下の段階を含む、被験体においてがんを検出するかまたはモニターする方法である:
(1) 結合タンパク質-抗原複合体を生成させるためがん細胞上の抗原に特異的に結合する結合タンパク質と被験体から採取された試験サンプルを接触させる段階;
(2) 試験サンプル中の結合タンパク質-抗原複合体の量を測定する段階; および
(3) 試験サンプル中の結合タンパク質-抗原複合体の量を対照と比較する段階。
【0020】
本発明の他の特徴および利点は、以下の詳細な説明から明らかになると考えられる。しかしながら、この詳細な説明から当業者には本発明の趣旨および範囲内のさまざまな修正および変更が明らかになるものと考えられるので、詳細な説明および具体的な例は、本発明の好ましい態様を示すが、例証として与えられるにすぎないことが理解されるべきである。
【0021】
発明の詳細な説明
(A) 定義
「細胞」という用語は単一の細胞および複数の細胞または細胞の集団を含む。細胞に作用物質(がん関連タンパク質など)を投与することは、インビトロおよびインビボ双方の投与を含む。
【0022】
本明細書において用いられる「全身的に投与する」という用語は、免疫複合体および/または他のがん治療薬を注射(皮下注射、静脈内注射、筋肉内注射など)、経口投与、吸入、経皮投与または局所適用(局所クリームもしくは軟膏などなど)、坐薬適用、あるいはインプラント手段によるような従来の方法で全身的に投与できることを意味する。インプラントはシアラスティック(sialastic)膜、または繊維のような膜を含む、多孔性、非多孔性、またはゼラチン状材料であってもよい。座薬は0.5重量%〜10重量%の範囲の活性成分を一般に含有する。
【0023】
「アミノ酸」という用語は全ての天然アミノ酸および修飾アミノ酸を含む。
【0024】
本明細書において用いられる「抗体」という用語は、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、およびキメラ抗体を含むよう意図される。抗体は組換え起源であってもおよび/またはトランスジェニック動物において産生されてもよい。本明細書において用いられる「抗体断片」という用語はそのFab、Fab'、F(ab')2、scFv、dsFv、ds-scFv、二量体、ミニボディ(minobodies)、ダイアボディ(diabodies)、および多量体ならびに二重特異性抗体断片を含むよう意図される。抗体は従来の技術を用いて断片化することができる。例えば、F(ab')2断片は、抗体をペプシンで処理することにより作出することができる。得られたF(ab')2断片は、ジスルフィド架橋を還元するように処理して、Fab'断片を産生することができる。パパイン消化によって、Fab断片の形成をもたらすことができる。Fab、Fab'およびF(ab')2、scFv、dsFv、ds-scFv、二量体、ミニボディ、ダイアボディ、二重特異性抗体断片ならびにその他の断片を組換え技術によって合成することもできる。
【0025】
「少なくとも中程度にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件」とは、溶液中の二つの相補的な核酸分子間の選択的なハイブリダイゼーションを促進する条件を選択することを意味する。ハイブリダイゼーションは、核酸配列分子の全部または一部に対して行われてもよい。ハイブリダイゼーション部分は、典型的には、長さが少なくとも15 (例えば、20、25、30、40または50)ヌクレオチドである。核酸二重鎖、またはハイブリッドの安定性は、ナトリウム含有緩衝液において、ナトリウムイオン濃度および温度の関数であるTm (Tm = 81.5℃ - 16.6 (Log10 [Na+]) + 0.41 (%(G+C) - 600/I)または同様の等式)によって判定されることを当業者なら認識すると考えられる。したがって、ハイブリッドの安定性を判定する洗浄条件のパラメータはナトリウムイオン濃度および温度である。公知の核酸分子と類似しているが、同一ではない分子を同定するためには、1%のミスマッチによりTmが約1℃低下すると推定できるので、例えば>95%の同一性を有する核酸分子を探索する場合には、最終の洗浄温度は約5℃下げられると考えられる。これらの考慮に基づいて、当業者は適切なハイブリダイゼーション条件を容易に選択することができると考えられる。好ましい態様において、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件が選択される。例証として、ストリンジェントなハイブリダイゼーションを達成するために以下の条件を用いることができる: 上記の等式に基づきTm - 5℃で5×塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム(SSC)/5×デンハルト液/1.0% SDSにてハイブリダイゼーションの後、60℃で0.2×SSC/0.1% SDSでの洗浄。中程度にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件は、42℃で3×SSC中での洗浄段階を含む。しかしながら、別の緩衝液、塩および温度を用いて等価なストリンジェンシーを達成できることが理解されると考えられる。ハイブリダイゼーション条件に関するさらなる指針は、Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, N.Y., 2002において、およびSambrook et al., Molecular Cloning: a Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, 2001において見出すことができる。
【0026】
本明細書において用いられる「結合タンパク質」という用語は、本発明のがん関連抗原のような別の物質に特異的に結合するタンパク質をいう。一態様において、結合タンパク質は抗体または抗体断片である。
【0027】
「インビボでの投与に適した生物学的に適合する形態」とは、治療作用が任意の毒性作用を上回るような、投与される物質の形態を意味する。
【0028】
本明細書において用いられる「哺乳類スクラッチのがん関連変種」、「本発明のがん関連抗原」、「本発明の腫瘍関連抗原」または「本発明の単離タンパク質」という用語は、がん細胞の表面に発現される哺乳類スクラッチの新規の変種、またはがん細胞の表面に同様に発現されるその変種をいう。一つの態様において、新規のがん関連抗原は少なくとも一つの膜貫通ドメインを有する。具体的な態様において、哺乳類スクラッチのがん関連抗原は、SEQ ID NO:1により規定されるアミノ酸配列を含む単離タンパク質、またはSEQ ID NO:2により規定されるアミノ酸配列を含む単離タンパク質である。
【0029】
「がん細胞」という用語は、がんもしくは腫瘍形成細胞、形質転換細胞またはがんもしくは腫瘍形成細胞になりやすい細胞を含む。
【0030】
本明細書において用いられる「保存的アミノ酸置換」は、あるアミノ酸残基が、タンパク質の望ましい特性をなくすことなく、他のアミノ酸残基と置換されるものである。
【0031】
本明細書において用いられる「対照」は、がんを有しているとしてまたはがんを有していないとして公知の被験体または被験体の群由来のサンプルをいう。
【0032】
使用される「制御放出系」という用語は、本発明の免疫複合体および/または他のがん治療薬を制御された様式で投与できることを意味する。例えば、マイクロポンプは、制御された用量を腫瘍の領域に直接的に送達し、それによって薬学的組成物のタイミングおよび濃度を細かく調節することができる(例えば、Goodson, 1984, Medical Applications of Controlled Release, 第2巻, 115〜138頁中を参照のこと)。
【0033】
「ペプチドの誘導体」という用語は、官能側基の反応によって化学的に誘導体化される一つまたは複数の残基を有するペプチドをいう。このような誘導体化分子としては、例えば、アミン塩酸塩、p-トルエンスルホニル基、カルボベンゾキシ基、t-ブチルオキシカルボニル基、クロロアセチル基またはホルミル基を形成するよう遊離アミノ基が誘導体化された分子が挙げられる。遊離カルボキシル基は、塩、メチルおよびエチルエステルまたは他のタイプのエステルもしくはヒドラジドを形成させるよう誘導体化することができる。遊離ヒドロキシル基は、O-アシルまたはO-アルキル誘導体を形成させるよう誘導体化することができる。ヒスチジンのイミダゾール窒素は、N-im-ベンジルヒスチジンを形成させるよう誘導体化することができる。誘導体として同様に含まれるのは、20種の標準的なアミノ酸の一つまたは複数の天然アミノ酸誘導体を含有するペプチドである。例えば、4-ヒドロキシプロリンをプロリンの代わりに使用することができ、5-ヒドロキシリジンをリジンの代わりに使用することができ、3-メチルヒスチジンをヒスチジンの代わりに使用することができ、ホモセリンをセリンの代わりに使用することができ、およびオルニチンをリジンの代わりに使用することができる。
【0034】
「がんを検出するかまたはモニターする」という語句は、被験体ががんを有しているか有していないか、がんの程度、がんの重症度および/またはがんの進行度を判定する方法または工程をいう。
【0035】
本明細書において用いられる「直接投与」という用語は、限定されるものではないが、腫瘍内に、血管内におよび腫瘍周辺にがん治療薬を投与できることを意味する。例えば、がん治療薬は腫瘍内への1回もしくは複数回の直接注射により、腫瘍内への連続もしくは不連続灌流により、がん治療薬の貯留層の導入により、腫瘍内への徐放性装置の導入により、腫瘍内への徐放性配合物の導入により、および/または腫瘍への直接適用により投与することができる。「腫瘍内への」投与方法とは、腫瘍の領域への、または腫瘍の領域内に実質的に直接流入する血管内もしくはリンパ管内へのがん治療薬の導入を含む。
【0036】
本明細書において用いられる「有効量」という語句は、望ましい結果を達成するのに必要な投与量でおよび期間に、有効な量を意味する。治療薬の有効量は、動物の疾患状態、年齢、性別、体重のような要因によって変化しうる。用量投与計画は最適な治療反応を供与するように調整することができる。例えば、数回の分割用量を毎日投与してもよく、または治療状況の危急性によって示されるように用量を比例的に減らしてもよい。
【0037】
本明細書において用いられる「免疫反応を誘発する」または「免疫反応を誘導する」という用語は、例えば体液性または細胞媒介性のいずれかの、免疫系の任意の反応を惹起すること、誘因すること、引き起こすこと、増強すること、改善することまたは増大することを意味する。免疫反応の惹起または増強は、以下に限定されるものではないが、抗体アッセイ法(例えばELISAアッセイ法)、抗原特異的細胞傷害アッセイ法およびサイトカインの産生(例えばELISPOTアッセイ法)を含む、当業者に公知のアッセイ法を用いて評価することができる。好ましくは、本発明の単離タンパク質、核酸配列または組換え発現ベクター、および本発明の方法は細胞性免疫反応、より好ましくはT細胞反応を誘因するかまたは増強する。
【0038】
本明細書において用いられる「VB3-011抗体」という用語は、正常な組織または細胞に特異的に結合せず、さまざまながん細胞に特異的に結合することが明らかにされている国際公開公報第97/044461号に開示の抗体の可変領域を有する抗体をいう。
【0039】
本明細書において用いられる「単離核酸配列」という用語は、組換えDNA技術により産生される場合には細胞材料もしくは培地を、または化学的に合成される場合には化学的前駆体もしくは他の化学物質を実質的に含まない核酸をいう。単離核酸は同様に、由来される核酸にもともと隣接している配列(すなわち、核酸の5'および3'末端に位置する配列)を実質的に含まない。「核酸」という用語は、DNAおよびRNAを含むよう意図され、二本鎖または一本鎖であってもよい。
【0040】
「単離タンパク質」という用語は、組換えDNA技術により産生される場合には細胞材料もしくは培地を、または化学的に合成される場合には化学的前駆体もしくは他の化学物質を実質的に含まないタンパク質をいう。これには本発明の新規のがん関連抗原が含まれる。
【0041】
「哺乳類スクラッチ」(gi|13775236; gi|46397014; gi|13129535)は、ヒト第8染色体q24.3に遺伝子座が決定されている遺伝子によってコードされるタンパク質である。概念上の翻訳に基づく仮定的タンパク質配列の分析から、哺乳類スクラッチは五つの亜鉛フィンガードメインおよび一つのSNAGドメインを有する。これは核内タンパク質であると考えられる。この仮定的タンパク質配列はSEQ ID NO:3に示されている。
【0042】
本明細書において用いられる「核酸配列」という用語は、天然の塩基、糖および糖間(骨格)の連結からなるヌクレオシドまたはヌクレオチド単量体の配列をいう。この用語は同様に、非天然の単量体またはその一部を含んだ修飾配列または置換配列を含む。本発明の核酸配列はデオキシリボ核酸配列(DNA)またはリボ核酸配列(RNA)であってもよく、アデニン、グアニン、シトシン、チミジンおよびウラシルを含む天然の塩基を含んでもよい。この配列は修飾塩基を含有してもよい。このような修飾塩基の例としては、アザおよびデアザアデニン、グアニン、シトシン、チミジンおよびウラシル; ならびにキサンチンおよびヒポキサンチンが挙げられる。
【0043】
本明細書において用いられる「サンプル」という用語は、がんについてアッセイされうる被験体由来の任意の流体、細胞または組織サンプルをいう。
【0044】
本明細書において用いられる「配列同一性」という用語は、二つのポリペプチド配列間の配列同一性の割合をいう。二つのポリペプチド配列間の同一性の割合を判定するため、配列のうち一方の全長の少なくとも50%がアライメントの中に含まれるような、最も高いオーダーの適合が二つの配列間で得られるように、好ましくはClustal Wアルゴリズム(Thompson, JD, Higgins DG, Gibson TJ, 1994, Nucleic Acids Res. 22 (22): 4673-4680)をBLOSUM 62スコアリングマトリックス(Henikoff S. and Henikoff J. G., 1992, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89: 10915-10919)ならびに10のギャップ開始ペナルティおよび0.1のギャップ伸張ペナルティとともに用いて、このような二つの配列のアミノ酸配列を整列化させる。配列を整列化させるために使用できる他の方法は、最も高いオーダーの適合が二つの配列間で得られ、同一アミノ酸の数が二つの配列間で決定されるように、SmithおよびWaterman (Adv. Appl. Math. , 1981, 2: 482)によって修正されたNeedlemanおよびWunsch (J. Mol. Biol., 1970, 48: 443)のアライメント法である。二つのアミノ酸配列間の同一性の割合を算出するための他の方法は、当技術分野において一般に認識されており、例えばCarilloおよびLipton (SIAM J. Applied Math., 1988, 48:1073)によって記述されているもの、ならびにComputational Molecular Biology, Lesk (編), Oxford University Press, New York, 1988, Biocomputing: Informatics and Genomics Projectsに記述されているものが挙げられる。一般に、このような算出にはコンピュータプログラムが使用されると考えられる。この関連で使用できるコンピュータプログラムはGCG (Devereux et al., Nucleic Acids Res., 1984, 12: 387)、BLASTP、BLASTNおよびFASTA (Altschul et al., J. Molec. Biol., 1990: 215: 403)を含むが、これらに限定されるものではない。
【0045】
本明細書において用いられる「被験体」という用語は、動物界の任意のメンバー、好ましくは哺乳類、より好ましくはヒトをいう。好ましい態様において、被験体は、がんを有する疑いがあるか、またはがんを有する。
【0046】
本明細書において用いられる「がんを処置するかまたは予防する」という語句は、がん細胞複製の阻害、がん形成細胞への細胞の形質転換の阻止、がん拡散(転移)の阻害、腫瘍増殖の阻害、がん細胞数もしくは腫瘍増殖の低下、がんの悪性度の低減(例えば、分化の増大)、またはがん関連症状の改善をいう。
【0047】
本明細書において用いられる「変種」という用語は、本発明のタンパク質または核酸分子と実質的に同じ方法で実質的に同じ機能を発揮する本発明のアミノ酸およびヌクレオチド配列の修飾物または化学的等価物を含む。例えば、本発明のタンパク質の変種は、限定されるものではないが、保存的アミノ酸置換物を含む。本発明のタンパク質の変種は同様に、本発明のタンパク質の追加物および欠損物を含む。さらに、変種ペプチドおよび変種ヌクレオチド配列は類似体およびその誘導体を含む。本発明のがん関連抗原の変種は、がん細胞に発現されるが正常細胞には発現されないタンパク質配列を意味する。
【0048】
(B) 新規のがん関連抗原
本発明は、がん細胞の表面に発現されかつ正常細胞の表面に有意には発現されない新規のがん関連抗原を提供する。新規のがん関連抗原は哺乳類スクラッチの変種である。それは、哺乳類スクラッチに存在しない膜貫通ドメインを有する。膜貫通ドメインの配列はSEQ ID NO:2に示されている。がん関連変種の配列はSEQ ID NO:1に示されている。
【0049】
一つの態様において、本発明は、SEQ ID NO:1により規定されるアミノ酸配列を含む単離タンパク質またはその変種を提供する。別の態様において、本発明は、SEQ ID NO:2により規定されるアミノ酸配列を含む単離タンパク質またはその変種を提供する。
【0050】
新規のがん関連抗原は、がん細胞の表面に発現される哺乳類スクラッチの変種である。したがって、本発明は、がん細胞の表面に発現される哺乳類スクラッチのがん関連変種を含む単離タンパク質を提供する。一つの態様において、哺乳類スクラッチのがん関連変種は、SEQ ID NO:1により規定されるアミノ酸配列を含む。別の態様において、哺乳類スクラッチのがん関連変種は、SEQ ID NO:2により規定されるアミノ酸配列を含む。
【0051】
本発明が、SEQ ID NO:1〜2のアミノ酸配列の変種であり、がん関連抗原でもあるそのような変種を含むことを、当業者なら理解すると考えられる。変種は、本発明により開示される配列の化学的等価物を含む。そのような変種は、本明細書において開示される特定のタンパク質と実質的に同じ方法で実質的に同じ機能を発揮するタンパク質を含む。例えば、等価物は、限定されるものではないが、保存的アミノ酸置換物を含む。
【0052】
一つの態様において、本発明の単離タンパク質の変種アミノ酸配列は、SEQ ID NO:1または2に少なくとも50%、好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも70%、最も好ましくは少なくとも80%、およびさらにより好ましくは少なくとも90%の配列同一性を有する。
【0053】
本発明は同様に、本発明の単離タンパク質をコードする単離核酸配列を提供する。一つの態様において、単離核酸は、SEQ ID NO:6に示される配列を有する。さらに、本発明は、本発明の単離タンパク質をコードする単離核酸配列の変種を含む。例えば、変種は、少なくとも中程度にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件の下で、本発明の単離タンパク質をコードする核酸配列にハイブリダイズするヌクレオチド配列を含む。変種核酸配列は、がん関連抗原であるタンパク質をコードすると考えられる。
【0054】
本発明は、単離されたタンパク質またはがん関連抗原および対応する核酸配列の使用、例えば、被験体においてがんを検出するもしくはモニターするために使用できるかまたはがんを処置するもしくは予防するために使用できる結合タンパク質および免疫複合体を作出するための本発明の単離タンパク質の使用を含む。したがって、本発明は、がんを処置するもしくは予防するための、およびがんを処置するもしくは予防するための薬物の製造でのまたはがんの診断のための、本発明の単離されたタンパク質および核酸配列の使用を含む。
【0055】
(C) 新規のがん関連抗原の薬学的組成物、方法および使用
本発明は、がん細胞の表面に発現されかつ正常細胞の表面に有意には発現されない新規のがん関連抗原を提供する。すなわち、新規のがん関連抗原はインビボで免疫反応を誘発するための本発明の単離タンパク質の使用を含む、がんを処置するおよび予防するための治療法において使用することができる。さらに、本発明は、新規のがん関連抗原を検出する段階を含むがんの診断方法を含む。
【0056】
がんは、本発明のがん関連抗原をその細胞表面に発現する任意のがんでありうる。本発明の一つの態様において、がんは、限定されるものではないが、胃がん、結腸がん、前立腺がんならびに子宮頸がん、子宮がん、卵巣がん、膵臓がん、腎臓がん、肝臓がん、頭頸部がん、扁平細胞がん、消化器がん、乳がん(乳管がん、小葉がんおよび乳頭がんなど)、肺がん、非ホジキンリンパ腫、多発性骨髄腫、白血病(急性リンパ性白血病、慢性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病および慢性骨髄性白血病など)、脳腫瘍、神経芽細胞腫、肉腫、直腸がん、膀胱がん、膵臓がん、子宮内膜がん、形質細胞腫、リンパ腫、および黒色腫を含む。好ましい態様において、がんは、限定されるものではないが、膠芽細胞腫、黒色腫、乳がん、肺がん、卵巣がん、リンパ腫、結腸がん、胃がんおよび/または前立腺がんを含む。
【0057】
(i) 薬学的組成物
本発明の一つの局面は、適当な希釈剤または担体との混合物の中に本発明の単離タンパク質の有効量を含む薬学的組成物である。本発明の別の局面は、適当な希釈剤または担体との混合物の中に本発明の単離核酸の有効量を含む薬学的組成物である。本発明のさらなる局面は、適当な希釈剤または担体との混合物の中に本発明の組換え発現ベクターの有効量を含む薬学的組成物である。
【0058】
例えば、本発明の薬学的組成物はがんを処置するかまたは予防するために使用することができる。さらに、この薬学的組成物は本発明の単離タンパク質に対する被験体での免疫反応を誘発するために使用することができる。
【0059】
本明細書において記述される組成物は、活性物質の有効量が混合物中で薬学的に許容される媒体と混合されるような、被験体に投与できる薬学的に許容される組成物の公知の調製方法によって調製することができる。適当な媒体は、例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences (Remington's Pharmaceutical Sciences, 20th ed., Mack Publishing Company, Easton, Pa., USA, 2000)に記述されている。これに基づき、組成物は、一つまたは複数の薬学的に許容される媒体または希釈剤に付随する、ならびに生理液に適したpHおよび等浸透圧の緩衝液に含有される、物質の溶液を含むが、これらに限定されるものではない。
【0060】
免疫剤(すなわち、本発明の単離タンパク質、および/もしくは核酸配列のコーディングそれゆえ、および/もしくは組換え発現ベクター)ならびに/または組成物が投与形式にかかわらず、アジュバントと同時に免疫される場合には、免疫原性を顕著に改善することができる。一般に、アジュバントはリン酸緩衝生理食塩水中0.05〜1.0パーセントの溶液として使用される。アジュバントは、免疫原の免疫原性を促進するが、しかしそれ自体が必ずしも免疫原性であるとは限らない。アジュバントは、免疫原を投与部位の近くで局所的に保持して、免疫系の細胞への免疫原の緩徐な持続放出を促進するデポー効果をもたらすことによって、作用することができる。アジュバントは同様に、免疫系の細胞を免疫原デポーに誘引し、このような細胞を刺激して免疫反応を誘発しうる。したがって、本発明の態様には、アジュバントをさらに含む薬学的組成物が包含される。
【0061】
アジュバントは、例えば、ワクチンに対する宿主免疫反応を改善するよう長年にわたって使用されてきた。内因性のアジュバント(リポ多糖類など)は、通常、ワクチンとして使用される殺処理されたまたは弱毒化された細菌の成分である。外因性のアジュバントは、典型的には抗原に非共有結合的に連結される免疫調節物質であり、宿主免疫反応を増強するように配合される。このように、非経口的に送達される抗原に対する免疫反応を増強するアジュバントが特定されている。しかしながら、これらのアジュバントの中には有毒なものもあり、それらをヒトおよび多くの動物で用いるのに不適当とする望ましくない副作用を引き起こすことがある。実際に、水酸化アルミニウムおよびリン酸アルミニウム(まとめてミョウバン(alum)とよくいわれる)しかヒトおよび動物ワクチンでのアジュバントとして日常的に使用されていない。ジフテリアおよび破傷風トキソイドに対する抗体反応を増大させるうえでのミョウバンの効力が十分に確立されている。にもかかわらず、それには限界がある。例えば、ミョウバンは、インフルエンザワクチン接種には効果がなく、他の免疫原とともに細胞媒介性の免疫反応を一貫性なしに誘発する。ミョウバンアジュバントの抗原によって誘発される抗体は、マウスでは主としてIgG1アイソタイプのものであり、これは一部のワクチン剤による保護に最適ではない可能性がある。
【0062】
幅広い外因性のアジュバントが免疫原に対する強力な免疫反応を引き起こすことができる。これらには膜タンパク質抗原と複合体を形成したサポニン(免疫刺激複合体)、ミネラルオイルとのプルロニック重合体(pluronic polymers with mineral oil)、殺処理されたマイコバクテリウムおよびミネラルオイル、フロインド完全アジュバント、ムラミルジペプチド(MDP)およびリポ多糖類(LPS)のような細菌産物、ならびに脂質A、およびリポソームが含まれる。
【0063】
本発明の一つの局面において、本明細書において記述される本発明の態様のいずれかにおいて有用なアジュバントは、次の通りである。非経口免疫のためのアジュバントは、アルミニウム化合物(水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウム、およびヒドロキシリン酸アルミニウムなど)を含む。抗原は標準的なプロトコルによってアルミニウム化合物で沈殿されても、またはアルミニウム化合物に吸着されてもよい。RIBI (ImmunoChem, Hamilton, MT)のような他のアジュバントを非経口投与において使用することもできる。
【0064】
粘膜免疫のためのアジュバントは、細菌毒素(例えば、コレラ毒素(CT)、大腸菌(E. coli)易熱性毒素(LT)、クロストリジウム・ディフィシレ(Clostridium difficile)毒素Aおよび百日咳毒素(PT)、またはそれらの組合せ、サブユニット、類毒素もしくは変異体)を含む。例えば、天然のコレラ毒素サブユニットB (CTB)の精製調製物が有用でありうる。これらの毒素のいずれかに対する断片、相同体、誘導体、および融合体も、アジュバント活性を保持している場合には、適当である。毒性の低下した変異体が使用されることが好ましい。適当な変異体は(例えば、国際公開公報第95/17211号(Arg-7-Lys CT変異体)、国際公開公報第96/6627号(Arg-192-Gly LT変異体)、および国際公開公報第95/34323号(Arg-9-LysおよびGlu-129-Gly PT変異体)に)記述されている。本発明の方法および組成物において使用できるさらなるLT変異体は、例えばSer-63-Lys、Ala-69-Gly、Glu-110-AspおよびGlu-112-Asp変異体を含む。その他のアジュバント(さまざまな供給源(例えば、大腸菌、サルモネラ・ミネソタ(Salmonella minnesota)、サルモネラ・チフィムリウム(Salmonella typhimurium)もしくはシゲラ・フレキシネリ(Shigella flexneri))の細菌モノホスホリル脂質A (MPLA)、サポニン、またはポリ乳酸グリコール酸(PLGA)ミクロスフェアなど)を粘膜投与において使用することもできる。
【0065】
粘膜免疫にも非経口免疫にもともに有用なアジュバントは、ポリホスファゼン(例えば、国際公開公報第95/2415号)、DC-chol (3 b-(N-(N',N'-ジメチルアミノメタン)-カルバモイル)コレステロール(例えば、米国特許第5,283,185号および国際公開公報第96/14831号)ならびにQS-21 (例えば、国際公開公報第88/9336号)を含む。
【0066】
被験体は、当業者には公知であるように、任意の従来経路によって本発明の単離タンパク質、本発明の単離核酸配列および/または本発明の組換え発現ベクターを含む薬学的組成物で免疫することができる。これは、例えば、粘膜の(例えば、眼の、鼻腔内の、経口の、胃の、肺の、腸の、直腸の、膣のもしくは尿路の)表面を介した、非経口の(例えば、皮下の、皮内の、筋肉内の、静脈内のもしくは腹腔内の)経路を介したまたは結節内での免疫付与を含むことができる。好ましい経路は、当業者には明らかであるように、免疫原の選択に依る。投与は単回用量で達成されてもまたは間隔をあけて繰り返されてもよい。適切な投与量は、免疫原それ自体(すなわち、ペプチド 対 核酸(およびさらに具体的にはそのタイプ))、投与経路およびワクチン接種される動物の状態(体重、年齢など)のような、当業者によって理解されている種々のパラメータに依る。
【0067】
薬学的組成物をインビボでの投与に適した生物学的に適合する形態で被験体における投与に向けて配合できることを当業者なら理解すると考えられる。この物質はヒトおよび動物を含めた生物に投与することができる。本発明の薬学的組成物の治療的に活性な量の投与は、望ましい結果を達成するのに必要な投与量でおよび期間に、有効な量と定義される。例えば、ある物質の治療的に活性な量は、個体の疾患状態、年齢、性別および体重のような要因、ならびに個体での所望の反応を誘発する本発明の組換えタンパク質の能力によって変化しうる。用量投与計画は最適な治療反応を供与するように調整することができる。例えば、数回の分割用量を毎日投与してもよく、または治療状況の危急性によって示されるように用量を比例的に減らしてもよい。
【0068】
本発明の薬学的組成物は全身的に投与することができる。この薬学的調製物はがんの部位に直接的に投与することができる。投与経路に応じて、薬学的組成物は酵素、酸および化合物を不活性にしうる他の自然状態の作用から組成物を保護するための材料で覆われてもよい。
【0069】
本発明の一つの局面によれば、薬学的組成物は直接投与により被験体に送達される。本発明では、薬学的組成物が、少なくともエンドポイントを達成するのに十分な量で投与されること、および必要に応じて、薬学的に許容される担体を含むことを企図する。
【0070】
別の局面によれば、薬学的組成物はインビトロで投与することができる。例えば、リンパ球を、がんの被験体から取り出し、該組成物によりインビトロで刺激し、次いで被験体に注入し戻すことができる。
【0071】
本発明は同様に、がんを処置するための外科手術の前に、間に、または後に本発明の薬学的組成物の有効量を投与する段階を含む、術後合併症の危険性を低減する方法を提供する。
【0072】
薬学的組成物は、限定されるものではないが、凍結乾燥粉末または水性もしくは非水性の無菌注射溶液もしくは懸濁液を含み、これらは抗酸化剤、緩衝液、静菌薬および対象とする受容者の組織または血液と組成物を実質的に適合させる溶質をさらに含有してもよい。このような組成物に存在してもよい他の成分には、例えば、水、界面活性剤(Tweenなど)、アルコール、多価アルコール、グリセリンおよび植物油が含まれる。即時調製注射溶液および懸濁液は、無菌粉末、顆粒、錠剤、または濃縮溶液もしくは懸濁液から調製することができる。本発明の薬学的組成物は、例えば、限定する目的ではないが、被験体への投与の前に無菌水または無菌食塩液で再構成される凍結乾燥粉末として供給することができる。
【0073】
本発明の薬学的組成物は薬学的に許容される担体を含むことができる。薬学的に許容される適当な担体は、薬学的組成物の生物学的活性の有効性を妨害することのない本質的に化学的に不活性なかつ無毒性の組成物を含む。適当な薬学的担体の例としては、水、生理食塩溶液、グリセロール溶液、エタノール、N-(1(2,3-ジオレイルオキシ)プロピル)N,N,N-トリメチルアンモニウムクロライド(DOTMA)、ジオレオイルフォスファチジル(diolesylphosphotidyl)-エタノールアミン(DOPE)、およびリポソームが挙げられるが、これらに限定されるものではない。このような組成物は、被験体への直接投与のための形態をもたらすよう適当な量の担体とともに、治療的に有効な量の化合物を含有すべきである。
【0074】
この組成物は、限定されるものではないが、塩酸、リン酸、酢酸、シュウ酸、酒石酸などから誘導されるものなどの遊離アミノ基で形成されるもの、およびナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウム、水酸化第二鉄、イソプロピルアミン、トリエチルアミン、2-エチルアミノ(ethylarnino)エタノール、ヒスチジン、プロカインなどから誘導されるものなどの遊離カルボキシル基で形成されるものを含む薬学的に許容される塩の形態であってもよい。
【0075】
本発明のさまざまな態様において、薬学的組成物は全身的にまたは腫瘍の領域に直接的に直接投与される。
【0076】
この薬学的組成物は、がんを有する哺乳類、好ましくはヒトを含む、動物を処置する方法において使用することができる。投与される薬学的組成物の投与量およびタイプは、ヒト被験者において容易にモニターできるさまざまな要因に依ると考えられる。このような要因は、がんの病因および重症度(悪性度および病期)を含む。
【0077】
本発明の薬学的組成物によるがん処置の臨床転帰は、医師のような、関連分野の当業者によって容易に識別できる。例えば、がんの臨床マーカーを測定する標準の医学的試験は、処置の効力の強力な指標でありうる。このような試験は、限定されるものではないが、身体検査、性能尺度、疾患マーカー、12誘導ECG、腫瘍測定、組織生検、細胞検査、細胞診断、腫瘍計算のうち最長の直径、X線検査、腫瘍のデジタル画像、生命徴候、体重、有害事象の記録、感染エピソードの評価、併用薬の評価、疼痛評価、血液または血清化学、尿検査、CTスキャン、および薬物動態分析を含むことができる。さらに、本発明の薬学的組成物および別のがん治療薬を含む併用療法の相乗作用は、単剤療法を受けている患者との比較研究によって判定することができる。
【0078】
本発明の別の態様は、本発明の薬学的組成物の有効量、およびがんを処置するためのその使用説明書を含んだ、がんを処置するかまたは予防するためのキットである。
【0079】
承認されている抗がん療法の大半において、抗がん療法は他の抗がん療法と併用で用いられる。したがって、本発明は、本発明の薬学的組成物を少なくとも一つのさらなる抗がん療法と併用で用いてがんを予防するかまたは治療する方法を提供する。他のがん療法は、本発明の薬学的組成物の投与の前に、投与と重複して、同時に、および/または投与の後に施すことができる。同時に投与される場合、本発明の薬学的組成物および他のがん治療薬は単一の配合物でまたは別々の配合物で投与されてもよく、別々に投与される場合には、任意により、異なる投与方法で投与されてもよい。本発明の一つまたは複数の薬学的組成物および一つまたは複数の他のがん療法の併用は、腫瘍またはがんに対抗するよう相乗的に作用することができる。他のがん療法は、限定されるものではないが、放射線および他の抗がん治療剤を含む。これらの他のがん治療薬は、限定されるものではないが、2,2',2''トリクロロトリエチルアミン、6-アザウリジン、6-ジアゾ-5-オキソ-L-ノルロイシン、6-メルカプトプリン、アセグラロン(aceglarone)、アクラシノマイシンアクチノマイシン、アルトレタミン、アミノグルテチミド、アムサクリン、アナストロゾール、アンシタビン、アンギオゲニンアンチセンスオリゴヌクレオチド、アンスラマイシン、アザシチジン、アザセリン、アジリジン、バチマスター(batimastar)、bcl-2アンチセンスオリゴヌクレオチド、ベンゾデパ、ビカルタミド、ビサントレン、ブレオマイシン、ブセレリン、ブスルファン、カクチノマイシン(cactinomycin)、カルステロン、カルボプラチン、カルボコン、カルミノマイシン、カルモフール、カルムスチン、カルビシン、カルジノフィリン、クロラムブシル、クロルナファジン、酢酸クロルマジノン、クロロゾトシン、クロモマイシン、シスプラチン、クラドリビン、シクロホスファミド、シタラビン、ダカルバジン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デフォスファミド、デメコルシン、デノプテリン(denopterin)、デトルビシン、ジアジコン、ドセタキセル、ドキシフルリジン、ドキソルビシン、ドロロキシフェン、ドロモスタノロン、エダトレキセート、エフロミシン(eflomithine)、酢酸エリプチニウム(elliptinium)、エミテフル、エノシタブン(enocitabune)、エピルビシン、エピチオスタノール、エソルビシン(esorubicin)、エストラムスチン、エトグルシド、エトポシド、ファドロゾール、フェンレチニド、フロキシウリジン、フルダラビン、フルオロウラシル、フルタミド、フォリン酸、ホルメスタン、ホスフェストロール、ホテムスチン、硝酸ガリウム、ゲムシタビン、ゴセレリン、ヘキセストロール、ヒドロキシウレア、イダルビシン、イフォスファミド、インプロスルファン、インターフェロン-α、インターフェロン-β、インターフェロン-γ、インターロイキン-2、L-アスパラギナーゼ、レンチナン、レトロゾール、ロイプロリド、ロムスチン、ロニダミン、マンノムスチン、マルセロマイシン(marcellomycin)、メクロレタミン、塩酸メクロレタミンオキサイド、メドロキシプロゲステロン、酢酸メゲストロール、メレンゲストロール、メルファラン、メノガリル、メピチオスタン、メトトレキセート、メツレデパ、ミボプラチン、ミルテフォシン、ミトブロニトール、ミトグアゾン、ミトラクトール、マイトマイシン、ミトタン、ミトキサントロン、モピダモール、ミコフェノール酸、ニルタミド、ニムスチン、ニトラシン、ノガラマイシン、ノベムビチン(novembichin)、オリボマイシン、オキサリプラチン、パクリタキセル、ペントスタチン、ペプロマイシン、ペルフォスファミド、フェナメット(phenamet)、フェネステリン(phenesterine)、ピポブロマン、ピポスルファン、ピラルビシン、ピリトレキシム、プリカマイシン、ポドフィリン酸(podophyllinic acid) 2-エチル-ヒドラジド、リン酸ポリエストラジオール、ポルフィマーナトリウム、ポルフィロマイシン、プレドニムスチン(prednimustine)、プロカバジン、プロパゲルマニウム、PSK、プテロプテリン、ピュロマイシン、ケラマイシン(quelamycin)、ラニムスチン、ラゾキサン、ロドルビシン(rodorubicin)、ロキニメクス、シゾフィカン(sizofican)、ソブゾキサン、スピロゲルマニウム、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、タモキシフェン、タキソテレ、テガフル、テモゾロミド、テニポシド、テヌゾン酸(tenuzonic acid)、テストラコン(testolacone)、チアミプリン、チオグアニン、チオテパ、トムデックス、トポテカン、トレミフェン、トリアジクオン、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホラミド、トリエチレンチオホスホラミド、トリロスタン、トリメトレキセート、トリプトレリン、トロフォスファミド、トロンテカン(trontecan)、ツベルシジン、ウベニメックス、ウラシルマスタード、ウレデパ、ウレタン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ジノスタチン、およびゾルビシン(zorubicin)、シトシンアラビノシド、ゲムツズマブ、チオエパ(thioepa)、シクロホスファミド(cyclothosphamide)、代謝拮抗剤(例えば、メトトレキセート、6-メルカプトプリン、6-チオグアニン、シタラビン、5-フルオロウラシル、フルダラビン、ゲムシタビン、デカルバジン、テモゾアミド)、ヘキサメチルメラミン、リソドレン(LYSODREN)、ヌクレオシド類似体、植物アルカロイド(例えば、タキソール、パクリタキセル、カンプトテシン、トポテカン、イリノテカン(CAMPTOSAR、CPT-11)、ビンクリスチン、ビンブラスチンなどのビンカアルカロイド)、ポドフィロトキシン、エピポドフィロトキシン、VP-16 (エトポシド)、サイトカラシンB、グラミシジンD、臭化エチジウム、エメチン、アントラサイクリン(例えば、ダウノルビシン)、リポソーマルドキソルビシン、ジヒドロキシアントラシンジオン(dihydroxyanthracindione)、ミトラマイシン、アクチノマイシンD、アルデスロイキン、アルタミン、ビアオマイシン(biaomycin)、カペシタビン、カルボプラチン(carboplain)、クロラブシン(chlorabusin)、シクララビン(cyclarabine)、ダクリノマイシン(daclinomycin)、フロクスウリジン(floxuridhe)、酢酸ラウプロリド(lauprolide)、レバミソール、ロムスリン(lomusline)、メルカプトプリン(mercaptopurino)、メスナ、ミトランク(mitolanc)、ペガスペルガーゼ(pegaspergase)、ペントスラチン(pentoslatin)、ピカマイシン(picamycin)、リウキシルマブ(riuxlmab)、カンパス(campath)-1、ストラプロゾシン(straplozocin)、トレチノイン、VEGFアンチセンスオリゴヌクレオチド、ビンデシン、ならびにビノレルビンを含むことができる。一つまたは複数のがん治療薬を含む組成物(例えば、FLAG、CHOP)も本発明によって企図される。FLAGはフルダラビン、シトシンアラビノシド(Ara-C)およびG-CSFを含む。CHOPはシクロホスファミド、ビンクリスチン、ドキソルビシン、およびプレドニゾンを含む。当技術分野において公知のがん治療薬の詳細な一覧については、例えば、The Merck Index and the Physician's Desk Referenceの最新版を参照されたい。
【0080】
併用療法のための薬学的組成物は同様に、限定されるものではないが、抗生物質(例えば、ダクチノマイシン、ブレオマイシン、ミトラマイシン、アンスラマイシン)、アスパラギナーゼ、バチルス(Bacillus)およびゲラン(Guerin)、ジフテリア毒素、プロカイン、テトラカイン、リドカイン、プロプラノロール、抗有糸分裂剤、アブリン、リシンA、緑膿菌(Pseudomonas)外毒素、神経増殖因子、血小板由来増殖因子、組織プラスミノゲン活性化因子、抗ヒスタミン剤、制吐剤などを含むことができる。
【0081】
実際に、本発明の薬学的組成物の有効量の、このような処置の必要性がある患者への投与は、臨床的に有意な効果を有する別のがん治療薬の用量の減少をもたらすことができる。他のがん治療薬の用量の減少というこのような効力は、本発明の薬学的組成物の投与がない場合には認めることができない。したがって、本発明は、一つまたは複数の他のがん治療薬のいっそう少ない用量を投与する段階を含む腫瘍またはがんを処置する方法を提供する。
【0082】
さらに、そのような処置の必要性がある患者に対する本発明の薬学的組成物を含む併用療法は、標準的な処置計画の期間またはサイクル数と比べて、比較的短い処置時間を可能にすることができる。したがって、本発明は、比較的短い期間にわたっておよび/またはいっそう少ない処置サイクルで一つまたは複数の他のがん治療薬を投与する段階を含む腫瘍またはがんを処置する方法を提供する。
【0083】
このように、本発明によれば、本発明の薬学的組成物および別のがん治療薬を含む併用療法は、がん処置全体の毒性(すなわち、副作用)を低減することができる。例えば、単剤療法または別の併用療法と比べて、毒性の減少は、いっそう少ない用量の本発明の薬学的組成物および/もしくは他のがん治療薬を送達する場合に、ならびに/またはサイクルの期間(すなわち、単回投与の期間もしくは一連のこのような投与の期間)を短くする場合に、ならびに/またはサイクル数を減らす場合に認めることができる。
【0084】
したがって、本発明は、一つまたは複数のさらなる抗がん治療薬を、任意で薬学的に許容される担体中に、さらに含む本発明の薬学的組成物を提供する。
【0085】
本発明は同様に、本発明の薬学的組成物の有効量を、任意により一つまたは複数の他のがん治療薬との組み合わせて、がんを処置するためのその使用説明書とともに含むキットを提供する。
【0086】
上記のように、本発明の薬学的組成物との併用療法は、がんまたは腫瘍をさらなるがん治療薬の投与に対して高感受性にすることができる。したがって、本発明は、いっそう少ない用量のがん治療薬の前に、その後に、またはそれと同時に本発明の薬学的組成物の有効量を投与する段階を含む、がんを予防する、がんを処置する、および/またはがんの再発を予防する併用療法を企図する。例えば、本発明の薬学的組成物による初期の処置は、ある用量のがん治療薬によるその後の曝露に対するがんまたは腫瘍の感受性を増大させることができる。この用量は、がん治療薬が単独で、もしくは本発明の薬学的組成物の非存在下で投与される場合の標準的な投与量の低域に近いか、またはそれに満たない。同時に投与される場合、本発明の薬学的組成物は、がん治療薬と別々に、および任意で、異なる投与方法を介して投与することができる。
【0087】
別の態様において、さらなるがん治療薬の投与は、がんまたは腫瘍を本発明の薬学的組成物に対して高感受性にすることができる。このような態様において、さらなるがん治療薬は本発明の薬学的組成物の投与の前に与えることができる。
【0088】
一つの態様において、さらなるがん治療薬はおよそ5〜10、11〜20、21〜40、または41〜75 mg/m2/サイクルに及ぶ用量での、シスプラチン、例えば、PLATINOLまたはPLATINOL-AQ (Bristol Myers)を含む。
【0089】
別の態様において、さらなるがん治療薬はおよそ2〜3、4〜8、9〜16、17〜35、または36〜75 mg/m2/サイクルに及ぶ用量での、カルボプラチン、例えば、PARAPLATIN (Bristol Myers)を含む。
【0090】
別の態様において、さらなるがん治療薬はおよそ0.25〜0.5、0.6〜0.9、1〜2、3〜5、6〜10、11〜20、または21〜40 mg/kg/サイクルに及ぶ用量での、シクロホスファミド、例えば、CYTOXAN (Bristol Myers Squibb)を含む。
【0091】
別の態様において、さらなるがん治療薬はおよそ0.5〜1、2〜4、5〜10、11〜25、26〜50、または51〜100 mg/m2/サイクルに及ぶ用量での、シタラビン、例えば、CYTOSAR-U (Pharmacia & Upjohn)を含む。別の態様において、さらなるがん治療薬はおよそ5〜50 mg/m2/サイクルに及ぶ用量での、シタラビンリポソーム、例えば、DEPOCYT (Chiron Corp.)を含む。
【0092】
別の態様において、さらなるがん治療薬はおよそ15〜250 mg/m2/サイクルに及ぶまたはおよそ0.2〜2 mg/kg/サイクルに及ぶ用量での、ダカルバジン、例えば、DTICまたはDTICDOME (Bayer Corp.)を含む。
【0093】
別の態様において、さらなるがん治療薬はおよそ0.1〜0.2、0.3〜0.4、0.5〜0.8、または0.9〜1.5 mg/m2/サイクルに及ぶ用量での、トポテカン、例えば、HYCAMTIN (SmithKline Beecham)を含む。別の態様において、さらなるがん治療薬はおよそ5〜9、10〜25、または26〜50 mg/m2/サイクルに及ぶ用量での、イリノテカン、例えば、CAMPTOSAR (Pharmacia & Upjohn)を含む。
【0094】
別の態様において、さらなるがん治療薬はおよそ2.5〜5、6〜10、11〜15、または16〜25 mg/m2/サイクルに及ぶ用量での、フルダラビン、例えば、FLUDARA (Berlex Laboratories)を含む。
【0095】
別の態様において、さらなるがん治療薬はおよそ200〜2000 mg/m2/サイクル、300〜1000 mg/m2/サイクル、400〜800 mg/m2/サイクル、または500〜700 mg/m2/サイクルに及ぶ用量でのシトシンアラビノシド(Ara-C)を含む。
【0096】
別の態様において、さらなるがん治療薬はおよそ6〜10、11〜30、または31〜60 mg/m2/サイクルに及ぶ用量でのドセタキセル、例えば、TAXOTERE (Rhone Poulenc Rorer)を含む。
【0097】
別の態様において、さらなるがん治療薬はおよそ10〜20、21〜40、41〜70、または71〜135 mg/kg/サイクルに及ぶ用量での、パクリタキセル、TAXOL (Bristol Myers Squibb)を含む。
【0098】
別の態様において、さらなるがん治療薬はおよそ0.5〜5 mg/kg/サイクル、1〜4 mg/kg/サイクル、または2〜3 mg/kg/サイクルに及ぶ用量での5-フルオロウラシルを含む。
【0099】
別の態様において、さらなるがん治療薬はおよそ2〜4、5〜8、9〜15、16〜30、または31〜60 mg/kg/サイクルに及ぶ用量での、ドキソルビシン、例えば、アドリアマイシン(ADRIAMYCIN) (Pharmacia & Upjohn)、ドキシル(DOXIL) (Alza)、ルベックス(RUBEX) (Bristol Myers Squibb)を含む。
【0100】
別の態様において、さらなるがん治療薬はおよそ3.5〜7、8〜15、16〜25、または26〜50 mg/m2/サイクルに及ぶ用量での、エトポシド、例えば、VEPESID (Pharmacia & Upjohn)を含む。
【0101】
別の態様において、さらなるがん治療薬はおよそ0.3〜0.5、0.6〜0.9、1〜2、または3〜3.6 mg/m2/サイクルに及ぶ用量での、ビンブラスチン、例えば、VELBAN (Eli Lilly)を含む。
【0102】
別の態様において、さらなるがん治療薬はおよそ0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6または0.7 mg/m2/サイクルに及ぶ用量での、ビンクリスチン、例えば、ONCOVIN (Eli Lilly)を含む。
【0103】
別の態様において、さらなるがん治療薬はおよそ0.2〜0.9、1〜5、6〜10、または11〜20 mg/m2/サイクルに及ぶ用量でのメトトレキセートを含む。
【0104】
別の態様において、本発明の薬学的組成物は、限定されるものではないが、リツキサン、リツキシマブ、カンパス(campath)-1、ゲムツズマブ、およびトラスツズマブ(trastuzutmab)を含む、少なくとも一つの他の免疫治療薬と併用で投与される。
【0105】
別の態様において、本発明の薬学的組成物は、限定されるものではないが、アンギオスタチン、サリドマイド、クリングル5、エンドスタチン、セルピン(Serpin) (セリンプロテアーゼ阻害剤; Serine Protease Inhibitor)、抗トロンビン、フィブロネクチンの29 kDa N末端および40 kDa C末端タンパク質分解断片、プロラクチンの16 kDaタンパク質分解断片、血小板因子-4の7.8 kDaタンパク質分解断片、血小板因子-4の断片に対応する13アミノ酸のペプチド(Maione et al., 1991, Cancer Res. 51:2077-2083)、コラーゲンIの断片に対応する14アミノ酸のペプチド(Tolsma et al., 1993, J. Cell Biol. 122: 497-51 1)、トロンボスポンジンIの断片に対応する19アミノ酸のペプチド(Tolsma et al., 1993, J. Cell Biol. 122:497-511)、SPARCの断片に対応する20アミノ酸のペプチド(Sage et al., 1995, J. Cell. Biochem. 57:1329-1334)、および薬学的に許容されるその塩を含む、その変種を含む一つまたは複数の抗血管新生剤と併用で投与される。
【0106】
別の態様において、本発明の薬学的組成物は、放射線療法の投与計画と併用で投与される。この療法は同様に、外科手術および/または化学療法を含むことができる。例えば、本発明の薬学的組成物は、放射線療法およびシスプラチン(プラチノール(Platinol))、フルオロウラシル(5-FU、アドルシル(Adrucil))、カルボプラチン(パラプラチン(Paraplatin))、および/またはパクリタキセル(タキソール(Taxol))と併用で投与することができる。本発明の薬学的組成物による処置は低線量の放射線の使用および/または低頻度の放射線処置を可能にすることができ、これは例えば、嚥下機能を妨げて望ましくない体重低下または脱水を生じる可能性のある重症咽頭炎の発生率を低減することができる。
【0107】
別の態様において、薬学的組成物は、限定されるものではないが、リンホカイン、腫瘍壊死因子、腫瘍壊死因子様サイトカイン、リンホトキシン、インターフェロン、マクロファージ炎症性タンパク質、顆粒球単球コロニー刺激因子、インターロイキン(限定されるものではないが、インターロイキン-1、インターロイキン-2、インターロイキン-6、インターロイキン-12、インターロイキン-15、インターロイキン-18を含む)、および薬学的に許容されるその塩を含む、その変種を含む一つまたは複数のサイトカインと併用で投与される。
【0108】
さらに別の態様において、本発明の薬学的組成物は、限定されるものではないが、自己細胞または組織、非自己細胞または組織、がん胎児性抗原、α-フェトプロテイン、ヒト絨毛性ゴナドトロピン、BCG生ワクチン、放線菌細胞壁-DNA複合体、メラニン細胞系統タンパク質、および突然変異した腫瘍特異的抗原を含むがんワクチンまたは生物剤と併用で投与される。
【0109】
さらに別の態様において、薬学的組成物はホルモン療法との関連で投与される。ホルモン治療薬は、限定されるものではないが、ホルモンアゴニスト、ホルモンアンタゴニスト(例えば、フルタミド、タモキシフェン、酢酸ロイプロリド(LUPRON))、およびステロイド(例えば、デキサメタゾン、レチノイド、ベタメタゾン、コルチゾール、コルチゾン、プレドニゾン、デヒドロテストステロン、グルココルチコイド、ミネラルコルチコイド、エストロゲン、テストステロン、プロゲスチン)を含む。
【0110】
さらに別の態様において、薬学的組成物は、がんを処置するかまたは予防する遺伝子治療プログラムとの関連で投与される。
【0111】
併用療法はこのように、投与される本発明の薬学的組成物および/またはさらなるがん治療薬に対するがんまたは腫瘍の感受性を増大させることができる。この方法では、より短い処置サイクルが可能となり、それによって毒性事象を低減することができる。サイクル期間は、使用されている特定のがん治療薬に応じて変化しうる。本発明は同様に、連続的もしくは不連続的投与、またはいくつかの部分的投与に分けられた日用量を企図する。当業者なら特定のがん治療薬に適したサイクル期間を理解しており、本発明は各がん治療薬に最適な処置スケジュールの継続的な評価を企図する。当業者のための具体的な指針は当技術分野において公知である。例えば、Therasse et al., 2000, 「New guidelines to evaluate the response to treatment in solid tumors. European Organization for Research and Treatment of Cancer, National Cancer Institute of the United States, National Cancer Institute of Canada」, J Natl Cancer Inst. Feb 2;92(3):205-16を参照されたい。
【0112】
本発明の薬学的組成物は注射、経口投与、吸入、経皮または腫瘍内のような任意の適当な方法によって投与されてもよく、その一方で任意の他のがん治療薬が同じまたは別の投与方法によって患者に送達されてもよいと考えられる。さらに、複数のがん治療薬を被験体に送達することが意図される場合、本発明の薬学的組成物および他のがん治療薬の一つまたは複数は一つの方法によって送達されてもよく、その一方で他のがん治療薬は別の投与方法によって送達されてもよい。
【0113】
本発明は同様に、本発明の薬学的組成物の有効量を、任意により一つまたは複数の他のがん治療剤との組み合わせて、その使用説明書とともに含むキットを提供する。
【0114】
(ii) 診断方法
新規のがん関連抗原はがん細胞に発現され、かつ正常細胞に有意には発現されておらず、すなわち新規のがん関連抗原の検出はがんの診断方法として使用することができる。
【0115】
本発明の一つの態様は、がんを有するかまたは有する疑いがある被験体においてがんを検出するかまたはモニターする方法であり、哺乳類スクラッチのがん関連変種をサンプル中の細胞上にて検出する段階を含み、哺乳類スクラッチのがん関連変種が細胞上にて検出される場合にがんが示唆される方法である。
【0116】
本発明の一つの態様において、
(a) 被験体由来のサンプルを提供する段階;
(b) サンプル中のがん関連抗原のレベルを検出する段階; および
(c) サンプル中のがん関連抗原のレベルを対照サンプルと比較する段階
を含み、対照と比べてがん関連抗原のレベルの増大が、被験体ががんを有することを示唆する、
被験体においてがん細胞を検出する方法が提供される。
【0117】
「がん関連抗原のレベルを検出する段階」という語句は、がん関連抗原のレベルの検出、およびがん関連抗原をコードする核酸分子のレベルの検出を含む。タンパク質および核酸を検出する方法の例は、以下にさらに詳細に論じられている。
【0118】
がん関連抗原は、SEQ ID NO:2、より好ましくはSEQ ID NO:1に示される配列を含むことが好ましい。
【0119】
サンプルという用語は、生体液(血液、血清、腹水を含む)、組織抽出物、新たに採取された細胞、および細胞培養においてインキュベートされた細胞の溶解物を含むが、これらに限定されない、検出することを望むがん細胞を含有する任意のサンプルでありうる。
【0120】
「対照サンプル」という用語は、基礎または正常レベルを確立するために使用できる任意のサンプルを含み、健常人から採取された組織サンプルまたは生理液を模倣するサンプルを含むことができる。対照サンプルは同様に、別の時点からの、例えばがん療法前の、被験体由来のサンプルでありうる。
【0121】
本発明の方法は、がんの診断および病期診断において使用することができる。本発明は同様に、がんの進行をモニターするために、および特定の処置が有効であるか否かをモニターするために使用することができる。特に、この方法は、外科手術、がん化学療法、および/または放射線療法後の全ての腫瘍組織の非存在または摘出を確認するために使用することができる。この方法はさらに、がん化学療法および腫瘍再発をモニターするために使用することができる。
【0122】
一つの態様において、本発明は、
(a) 被験体由来のサンプルを提供する段階;
(b) サンプル中のがん関連抗原の発現レベルを判定する段階;
(c) 段階(a)および(b)をさらに後の時点で繰り返す段階ならびに段階(b)の結果を段階(c)の結果と比較する段階
を含み、
がん関連抗原の発現レベルの相違が被験体におけるがんの進行を示す、
被験体においてがんの進行をモニターする方法を企図する。
【0123】
特に、さらに後の時点でのがん関連抗原のレベル増大は、がんが進行していること、および処置(適用可能なら)が有効でないことを示しうる。対照的に、さらに後の時点でのがん関連抗原のレベル低下は、がんが退縮していること、および処置(適用可能なら)が有効であることを示しうる。
【0124】
細胞上の哺乳類スクラッチのがん関連変種を検出するために、いくつかの技術を使用することができる。例えば、哺乳類スクラッチのがん関連変種に結合する抗体のような結合タンパク質は、哺乳類スクラッチのがん関連変種の細胞表面発現を検出するよう免疫アッセイ法において使用することができる。限定されるものではないが、ウエスタンブロット、免疫沈降後のSDS-PAGE、免疫細胞化学、FACS、タンパク質アレイなどを含む、哺乳類スクラッチのがん関連変種の細胞表面発現を検出するおよび/または定量化するために、いくつかの技術を使用できることを当業者なら理解すると考えられる。
【0125】
核酸分子を検出する方法
一つの態様において、本発明の方法は、がん関連抗原をコードする核酸分子の検出を含む。当業者は、サンプル中のがん関連抗原をコードする核酸配列の検出に用いられるヌクレオチドプローブを構築することができる。適当なプローブは、SEQ ID NO:6またはSEQ ID NO:25に示される核酸配列に基づいて調製することができる。適当なプローブは、がん関連抗原の領域からの少なくとも5個の連続アミノ酸をコードする核酸配列に基づく核酸分子を含み、好ましくはそれらは15〜30ヌクレオチドを含む。ヌクレオチドプローブは、32P、3H、14Cなどのような、適切なシグナルを供与するかつ十分な半減期を有する放射性標識のような検出可能な物質によって標識することができる。使用できる他の検出可能な物質は、特異的な標識抗体によって認識される抗原、蛍光化合物、酵素、標識抗原に特異的な抗体、および発光化合物を含む。適切な標識は、検出されるヌクレオチドに対するプローブのハイブリダイゼーションおよび結合の比率、ならびにハイブリダイゼーションに利用可能なヌクレオチドの量を考慮して選択することができる。標識プローブはSambrook et al, 1989, Molecular Cloning, A Laboratory Manual (2nd ed.)に一般的に記述されているように、ニトロセルロースフィルタまたはナイロン膜のような固相支持体上の核酸にハイブリダイズされることができる。核酸プローブは、好ましくはヒト細胞において、がん関連抗原をコードする遺伝子を検出するために使用することができる。ヌクレオチドプローブは同様に、がん関連抗原が関与する障害の診断において、このような障害の進行のモニタリングにおいて、または治療的処置のモニタリングにおいて有用でありうる。一つの態様において、プローブはがん、好ましくは婦人科がんの診断において、およびその進行のモニタリングにおいて使用される。
【0126】
プローブは、がん関連抗原をコードする遺伝子を検出するためにハイブリダイゼーション技術において使用することができる。この技術は一般的に、被験体または他の細胞供給源由来のサンプルから得られた核酸(例えば、組換えDNA分子、クローニングされた遺伝子)を、核酸中の相補的配列とのプローブの特異的アニーリングに好都合な条件の下でプローブと接触させる段階およびインキュベートする段階を含む。インキュベーション後、アニールしていない核酸を除去し、もしあればプローブにハイブリダイズした核酸の存在を検出する。
【0127】
核酸分子の検出は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)のような、増幅法による特異的遺伝子配列の増幅の後、当業者に公知の技術による増幅分子の分析を含むことができる。当業者は、適当なプライマーを日常的に設計することができる。
【0128】
本明細書において記述されるハイブリダイゼーションおよび増幅技術は、がん関連抗原をコードする遺伝子の発現の定性的および定量的局面をアッセイするために使用することができる。例えば、がん関連抗原をコードする遺伝子を発現することが公知の細胞型または組織からRNAを単離し、当技術分野において公知であるハイブリダイゼーション(例えば、標準的なノザン分析)またはPCR技術を用いて試験することができる。
【0129】
プライマーおよびプローブは、上記の方法においてインサイチューで、すなわち生検または切除から得られた被験体組織の組織(固定および/または凍結)切片にて直接的に使用することができる。
【0130】
したがって、本発明は、
(a) 被験体由来のサンプルを提供する段階;
(b) がん関連抗原またはその一部分をコードする核酸分子をサンプルから抽出する段階;
(c) 抽出された核酸分子をポリメラーゼ連鎖反応を用いて増幅する段階;
(d) がん関連抗原をコードする核酸分子の存在を判定する段階; および
(e) サンプル中のがん関連抗原をコードする核酸分子のレベルを対照サンプルと比較する段階
を含み、対照と比べてがん関連抗原をコードする核酸分子のレベルの増大が、被験体ががんを有することを示唆する、
被験体においてがん細胞を検出する方法を提供する。
【0131】
好ましい態様において、核酸分子は、SEQ ID NO:2、より好ましくはSEQ ID NO:1を含むがん関連抗原をコードする。具体的な態様において、核酸分子は、SEQ ID NO:6に示される配列またはその診断的断片を含む。別の態様において、核酸分子は、SEQ ID NO:25に示される配列(これは、SEQ ID NO:2に示される膜貫通断片をコードする)またはその診断的断片を含む。
【0132】
本明細書において記述されている本発明の方法は同様に、オリゴヌクレオチドアレイ、cDNAアレイ、ゲノムDNAアレイ、または組織アレイのような、マイクロアレイを用いて行うことができる。好ましくは、アレイは組織マイクロアレイである。
【0133】
好ましい例において、哺乳類スクラッチのがん関連変種をコードするRNA発現産物が、細胞による哺乳類スクラッチのがん関連変種の発現を検出するために使用される。哺乳類スクラッチのがん関連変種をコードするmRNAもしくはその断片、あるいは哺乳類スクラッチのがん関連変種をコードするmRNAもしくはその断片に特異的におよび/または選択的にハイブリダイズするオリゴヌクレオチド、cDNA、DNA、RNA、PCR産物、合成DNA、合成RNA、または天然もしくは修飾ヌクレオチドの他の組み合わせを検出することで、RNA発現産物を検出できるかまたは定量化できることを当業者なら理解すると考えられる。
【0134】
細胞による哺乳類スクラッチのがん関連変種のRNA発現を検出するおよび/または定量化するために、RT-PCR、ヌクレアーゼ保護アッセイ法、例えばリボヌクレアーゼ保護アッセイ法およびS1ヌクレアーゼアッセイ法、ならびにノザンブロットなどを含むいくつかの方法を使用することができる。
【0135】
特定の態様において、本発明者らは、実施例4に記述されているように、変種スクラッチも野生型スクラッチもともに増幅するPCRプライマー(SEQ ID NO:26)または変種スクラッチのみ増幅するPCRプライマー(SEQ ID NO:27)を調製した。このようなプライマーを使用することで、変種スクラッチと野生型スクラッチを識別することが可能になる。
【0136】
本発明者らは同様に、野生型哺乳類スクラッチの配列には、がん関連変種に存在していないヌクレオチド番号118位のKpnI制限部位が含まれることを見つけ出した。それゆえに、がんが変種を発現するかどうかを試験するため、増幅されたPCR産物をKpnI制限酵素で消化した後に、ゲル電気泳動を行うことができる。試験されている細胞が野生型哺乳類スクラッチを発現する場合には、67 bpおよび93 bpの2本の断片が検出されると考えられる。細胞ががん関連変種を発現する場合には、PCR産物のサイズは未消化の対照と同じと考えられる。
【0137】
したがって、本発明は、
(a) 被験体由来のサンプルを提供する段階;
(b) 野生型スクラッチまたはスクラッチのがん関連変種をコードする核酸分子をサンプルから抽出する段階;
(c) 核酸分子をKpnI制限酵素で消化する段階; および
(d) 消化された核酸分子のサイズを判定する段階
を含み、未消化の核酸分子の存在が、被験体ががんを有することを示唆する、
がんを有するかまたは有する疑いがある被験体においてがん細胞を検出するかまたはがんをモニターする方法を提供する。
【0138】
がん関連抗原を検出する方法
別の態様において、本発明の方法はがん関連抗原の検出を含む。一つの態様において、がん関連抗原は、がん関連抗原に特異的に結合する抗体を用いて検出される。がん関連抗原に対する抗体は、当技術分野において公知の技術を用いて調製することができる。
【0139】
酵素抱合体または標識誘導体のような、がん関連抗原、または誘導体と特異的に反応する抗体は、さまざまなサンプル(例えば、生物学的材料)においてがん関連抗原を検出するために使用することができる。それらは診断的または予後的試薬として使用することができ、それらはタンパク質発現レベルの異常、または構造の異常、および/またはがん関連抗原の一時的な、組織の、細胞の、もしくは細胞内の位置を検出するために使用することができる。インビトロイムノアッセイ法を用いて、特定の治療法の効力を評価またはモニターすることもできる。本発明の抗体をインビトロで用いて、がん関連抗原を産生するよう遺伝子操作された細胞におけるがん関連抗原をコードする遺伝子の発現レベルを判定することもできる。
【0140】
抗体は、がん関連抗原の抗原決定基と抗体との間の結合相互作用に依存する任意の公知の免疫アッセイ法において使用することができる。そのようなアッセイ法の例は放射免疫アッセイ法、酵素免疫アッセイ法(例えばELISA)、免疫蛍光、免疫沈降、ラテックス凝集、血球凝集、および組織化学的試験である。抗体はサンプル中のがん関連抗原を、がんにおけるその役割を判定するためにおよびがんを診断するために、検出するおよび定量化するよう使用することができる。
【0141】
特に、本発明の抗体は、がん関連抗原を検出するために、これを特定の細胞かつ組織におよび特定の細胞内の位置に位置特定するために、ならびに発現レベルを定量化するために、例えば、細胞のおよび細胞内のレベルで、免疫組織化学的分析において使用することができる。
【0142】
光学顕微鏡および電子顕微鏡を用いて抗原の位置を特定するための当技術分野において公知の細胞化学技術を、がん関連抗原を検出するために使用することができる。一般的に、本発明の抗体を検出可能な物質で標識することができ、検出可能な物質の存在に基づいて、がん関連抗原を組織および細胞において位置特定することができる。検出可能な物質の例としては、以下: 放射性同位体(例えば、3H、14C、35S、125I、131I)、蛍光標識(例えば、FITC、ローダミン、ランタニド蛍光体)、ルミノールのような発光標識; 酵素標識(例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ、β-ガラクトシダーゼ、ルシフェラーゼ、アルカリホスファターゼ、アセチルコリンエステラーゼ)、ビオチニル基(これは、光学的方法もしくは熱量測定法によって検出できる酵素活性または蛍光マーカーを含有する標識アビジン、例えば、ストレプトアビジンにより検出することができる)、二次レポーターによって認識される所定のポリペプチドエピトープ(例えば、ロイシンジッパー対配列、二次抗体の結合部位、金属結合ドメイン、エピトープタグ)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。いくつかの態様において、標識は、潜在的な立体障害を減少させるために種々の長さのスペーサーアームを介して付着される。抗体は同様に、電子顕微鏡によって容易に可視化されるフェリチンまたは金コロイドのような、電子密度の高い物質に結合されてもよい。
【0143】
抗体またはサンプルは、細胞、抗体などを固定できる担体または固相支持体に固定化することができる。例えば、担体または支持体は、ニトロセルロース、またはガラス、ポリアクリルアミド、ハンレイ岩、および磁鉄鉱でありうる。支持体材料は、球状(例えば、ビーズ)、円柱状(例えば、試験管もしくはウェルの内面、または棹の外面)、あるいは平板(例えば、シート、試験片)を含む、任意の可能な形状を有することができる。がん関連抗原に対し反応性の抗体に特異性を有する、二次抗体の導入によって一次抗原-抗体反応が増幅される、間接的な方法を用いることもできる。一例として、がん関連抗原に対し特異性を有する抗体がウサギIgG抗体である場合には、二次抗体は、本明細書において記述されているように検出可能な物質で標識されたヤギ抗ウサギγグロブリンでありうる。
【0144】
放射性標識が検出可能な物質として使用される場合、がん関連抗原はラジオオートグラフィーによって位置を特定することができる。ラジオオートグラフィーの結果は、さまざまな光学的方法によりラジオオートグラフにおいて粒子密度を測定することで、または粒子を計数することで定量化することができる。
【0145】
がん関連抗原に対する標識抗体は、外科手術を受けている被験体での腫瘍組織の位置特定において、すなわち画像化において使用することができる。典型的にはインビボでの適用の場合、抗体を放射性標識(例えば、ヨウ素-123、ヨウ素-125、ヨウ素-131、ガリウム-67、テクネチウム-99、およびインジウム-111)で標識する。組織が画像化される数時間〜4日前の時点で、標識抗体調製物を適切な担体中にて被験体に静脈内投与することができる。この期間中に、未結合の画分を被験体から除去すると、残存する抗体だけが腫瘍組織に結び付いたものである。同位体の存在は適当なγ線カメラを用いて検出される。外科医が腫瘍の位置を正確に示すため、標識組織を被験体の身体にある公知のマーカーと相関させることができる。
【0146】
したがって、別の態様において、本発明は、
(a) 被験体由来のサンプルを提供する段階;
(b) がん関連抗原に結合する抗体とサンプルを接触させる段階;
(c) サンプル中のがん関連抗原のレベルを検出する段階; および
(d) サンプル中のがん関連抗原のレベルを対照サンプルと比較する段階
を含み、対照と比べてがん関連抗原のレベルの増大が、被験体ががんを有することを示唆する、
被験体においてがんを検出する方法を提供する。
【0147】
(iii) 治療方法
上記のように、新規のがん関連抗原は、がん細胞に存在しているが、しかし正常細胞に有意には存在していない。したがって、新規のがん関連抗原は、がんを予防するおよび処置するために、治療方法において使用することができる。さらに、新規のがん関連抗原またはその断片を、インビボにおいて、例えばワクチンにおいて、またはインビトロにおいて免疫反応を誘発するために使用することができる。
【0148】
本発明の一つの態様は、がんを処置するかまたは予防するための薬物の製造での本発明の単離タンパク質またはその断片の使用である。本発明のさらに別の態様は、がんを処置するかまたは予防するための本発明の単離タンパク質またはその断片の使用である。本発明のさらなる態様は、免疫反応を誘発するための薬物の製造での本発明の単離タンパク質またはその断片の使用である。本発明のさらに別の態様は、免疫反応を誘発するための本発明の単離タンパク質またはその断片の使用である。
【0149】
本発明は同様に、がんを処置するかまたは予防するための薬物の製造での本発明の単離核酸配列の使用を含む。本発明はさらに、がんを処置するかまたは予防するための本発明の単離核酸配列の使用を含む。さらに、本発明は免疫反応を誘発するための薬物の製造での本発明の単離核酸配列の使用を含む。本発明はさらに、免疫反応を誘発するための本発明の単離核酸配列の使用を含む。
【0150】
本発明のさらなる態様は、がんを処置するかまたは予防するための薬物の製造での本発明の組換え発現ベクターの使用である。本発明のさらに別の態様は、がんを処置するかまたは予防するための本発明の組換え発現ベクターの使用である。同様に、本発明は、被験体において免疫反応を誘発するための薬物の製造での本発明の組換え発現ベクターの使用を含む。本発明のさらに別の態様は、被験体において免疫反応を誘発するための本発明の組換え発現ベクターの使用である。
【0151】
本発明のさらなる態様は、本発明の単離タンパク質またはその断片の有効量をその必要性がある被験体または細胞に投与する段階を含む、がんを処置するかまたは予防する方法である。さらに、本発明は、本発明の単離核酸配列の有効量をその必要性がある被験体または細胞に投与する段階を含む、がんを処置するかまたは予防する方法を含む。さらに、本発明は、本発明の組換え発現ベクターの有効量をその必要性がある被験体または細胞に投与する段階を含む、がんを処置するかまたは予防する方法を含む。
【0152】
本発明の別の態様は、本発明の単離タンパク質またはその断片の有効量をその必要性がある被験体または細胞に投与する段階を含む、本発明の単離タンパク質に対する被験体での免疫反応を誘導する方法である。さらに、本発明は、本発明の単離核酸配列の有効量をその必要性がある被験体または細胞に投与する段階を含む、本発明の単離タンパク質に対する被験体での免疫反応を誘導する方法を含む。さらに、本発明は、本発明の組換え発現ベクターの有効量をその必要性がある被験体または細胞に投与する段階を含む、本発明の単離タンパク質に対する被験体での免疫反応を誘導する方法を含む。
【0153】
上記の方法は、本発明の単離タンパク質のインビボおよびインビトロ両方の投与を含む。インビトロでの使用の場合、このタンパク質を用いて、患者から得られたリンパ球を刺激することができ、これを被験体に再注入して、がん関連抗原を発現するがん細胞に対する免疫反応を開始させる。
【0154】
本発明のさらなる局面は、がん細胞上のまたはがん細胞中の哺乳類スクラッチのがん関連変種の活性または発現を調節することで被験体においてがんを処置するかまたは予防する方法である。
【0155】
本発明の一つの態様において、被験体においてがんを処置するかまたは予防する方法は、哺乳類のがん関連抗原の機能を阻止する段階または低減する段階を含む。本発明の一つの態様において、本発明の結合タンパク質が、哺乳類スクラッチのがん関連変種の機能を阻止するかまたは低減するために使用される。
【0156】
本発明の別の態様において、哺乳類スクラッチのがん関連変種の機能は、細胞における哺乳類スクラッチのがん関連変種の発現を低減するかまたは阻止することで阻止されるかまたは低減される。
【0157】
哺乳類スクラッチ遺伝子のがん関連変種の転写産物に対するアンチセンス分子、三重らせん分子、またはリボザイム分子の使用を含む、標準的な技術を、細胞における哺乳類スクラッチのがん関連変種の発現を阻止するかまたは低減するために使用することができる。
【0158】
例えば、標準的な技術を、アンチセンス核酸分子、すなわち、関心対象のポリペプチドをコードするセンス核酸に相補的な、例えば、二本鎖cDNA分子のコード鎖に相補的なまたはmRNA配列に相補的な分子の産生のために用いることができる。したがって、アンチセンス核酸はセンス核酸に水素結合することができる。アンチセンス核酸はコード鎖全体に、またはその一部分だけに、例えば、タンパク質コード領域(もしくは読み取り枠)の全部または一部に相補的であってもよい。アンチセンス核酸分子は、関心対象のポリペプチドをコードするヌクレオチド配列のコード鎖の非コード領域の全部または一部に対してアンチセンスであってもよい。非コード領域(「5'および3'非翻訳領域」)は、コード領域に隣接しかつアミノ酸に翻訳されない5'および3'配列である。
【0159】
アンチセンスオリゴヌクレオチドは、例えば、長さが約5、10、15、20、25、30、35、40、45もしくは50ヌクレオチドまたはそれ以上でありうる。本発明のアンチセンス核酸は、当技術分野において公知の手順を用いて、化学的合成および酵素ライゲーション反応により構築することができる。例えば、アンチセンス核酸(例えば、アンチセンスオリゴヌクレオチド)は、天然ヌクレオチドまたは該分子の生物学的安定性を増大させるようにもしくはアンチセンス核酸とセンス核酸との間で形成された二重鎖の物理的安定性を増大させるように設計された各種の修飾ヌクレオチドを用いて化学的に合成することができ、例えば、ホスホロチオエート誘導体およびアクリジン置換ヌクレオチドを使用することができる。アンチセンス核酸を作出するために使用できる修飾ヌクレオチドの例としては、5-フルオロウラシル、5-ブロモウラシル、5-クロロウラシル、5-ヨードウラシル、ヒポキサンチン、キサンチン、4-アセチルシトシン、5-(カルボキシヒドロキシルメチル)ウラシル、5-カルボキシメチルアミノメチル-2-チオウリジン、5-カルボキシメチルアミノメチルウラシル、ジヒドロウラシル、β-D-ガラクトシルケオシン、イノシン、N6-イソペンテニルアデニン、1-メチルグアニン、1-メチルイノシン、2,2-ジメチルグアニン、2-メチルアデニン、2-メチルグアニン、3-メチルシトシン、5-メチルシトシン、N6-アデニン、7-メチルグアニン、5-メチルアミノメチルウラシル、5-メトキシアミノメチル-2-チオウラシル、β-D-マンノシルケオシン、5'-メトキシカルボキシメチルウラシル、5-メトキシウラシル、2-メチルチオ-N6-イソペンテニルアデニン、ウラシル-5-オキシ酢酸(v)、ワイブトキソシン、シュードウラシル、ケオシン、2-チオシトシン、5-メチル-2-チオウラシル、2-チオウラシル、4-チオウラシル、5-メチルウラシル、ウラシル-5-オキシ酢酸メチルエステル、ウラシル-5-オキシ酢酸(v)、5-メチル-2-チオウラシル、3-(3-アミノ-3-N-2-カルボキシプロピル)ウラシル、(acp3)w、および2,6-ジアミノプリンが挙げられる。あるいは、アンチセンス核酸は、アンチセンス方向に核酸がサブクローニングされた発現ベクターを用いて生物学的に産生されてもよい(すなわち、挿入核酸から転写されるRNAは、関心対象の標的核酸に対しアンチセンス方向のものである)。
【0160】
アンチセンス核酸分子は、被験体に投与されるか、またはそれらが関心対象のポリペプチドをコードする細胞mRNAとハイブリダイズするようにもしくはそれに結合するようにインサイチューで作出され、それにより、例えば、転写および/または翻訳を阻害することで発現を阻害する。ハイブリダイゼーションは安定な二重鎖を形成する通常のヌクレオチド相補性によるものであることができるか、または、例えば、DNA二重鎖に結合するアンチセンス核酸分子の場合、二重らせんの主要な溝での特異的相互作用を介することができる。本発明のアンチセンス核酸分子の投与経路の例としては、組織部位での直接注射が挙げられる。あるいは、アンチセンス核酸分子を、選択の細胞を標的にするよう修飾し、その後、全身的に投与してもよい。例えば、全身投与の場合、アンチセンス分子は、それらが選択の細胞、例えば、T細胞または脳細胞上に発現される受容体または抗原に、例えば、アンチセンス核酸分子を、細胞表面受容体または抗原に結合するペプチドまたは抗体と連結させることで特異的に結合するように修飾することができる。アンチセンス核酸分子は同様に、以下に記述のベクター、例えば、遺伝子治療ベクターを用いて細胞に送達することができる。アンチセンス分子の十分な細胞内濃度を達成するには、アンチセンス核酸分子が強力なpol IIまたはpol IIIプロモーターの制御下に配されたベクター構築体が好ましい。
【0161】
関心対象のアンチセンス核酸分子はαアノマー核酸分子でありうる。αアノマー核酸分子は、通常のαユニットとは違って、鎖が相互と平行して走る相補RNAと特異的な二本鎖ハイブリッドを形成する(Gautier et al., 1987, Nucleic Acids Res. 15:6625-6641)。アンチセンス核酸分子は同様に、2'-o-メチルリボヌクレオチド(Inoue et al., 1987, Nucleic Acids Res. 15:6131-6148)またはキメラRNA-DNA類似体(Inoue et al., 1987, FEBS Lett. 215:327-330)を含むことができる。
【0162】
リボザイムは、それが相補的な領域を有する一本鎖核酸、例えばmRNAを切断できるリボヌクレアーゼ活性を持った触媒的RNA分子であり、標準的な技術を用いて作出することもできる。すなわち、リボザイム(例えば、ハンマーヘッドリボザイム(Haseloff and Gerlach, 1988, Nature 334:585-591に記述されている))を用いてmRNA転写産物を触媒的に切断し、それによってmRNAによりコードされるタンパク質の翻訳を阻害することができる。関心対象のポリペプチドをコードする核酸分子に対し特異性を有するリボザイムは、哺乳類スクラッチのがん関連変種をコードするcDNAのヌクレオチド配列に基づいて設計することができる。例えば、Cechらの米国特許第4,987,071号; およびCechらの米国特許第5,116,742号においては、切断されるヌクレオチド配列に対し活性部位のヌクレオチド配列が相補的なテトラヒメナL-19 IVS RNAの誘導体が構築可能とされる。あるいは、関心対象のポリペプチドをコードするmRNAを用いて、RNA分子のプールから特異的なリボヌクレアーゼ活性を有する触媒的RNAを選択してもよい。例えば、Bartel and Szostak, 1993, Science 261 :1411-1418を参照されたい。
【0163】
三重らせん構造を周知の技術により作出することもできる。例えば、関心対象のポリペプチドの発現は、該ポリペプチドをコードする遺伝子の調節領域(例えば、プロモーターおよび/またはエンハンサー)に相補的なヌクレオチド配列を標的にして、標的細胞における該遺伝子の転写を阻止する三重らせん構造を形成させることで阻害することができる。一般的にはHelene, 1991 , Anticancer Drug Des. 6(6):569-84; Helene, 1992, Ann. N.Y. Acad. Sci. 660:27-36; およびMaher, 1992, Bioassays 14(12):807-15を参照されたい。
【0164】
さまざまな態様において、核酸組成を塩基部分、糖部分またはリン酸骨格で修飾して、例えば、分子の安定性、ハイブリダイゼーション、または溶解性を改善することができる。例えば、核酸のデオキシリボースリン酸骨格を修飾して、ペプチド核酸を作出することができる(Hyrup et al., 1996, Bioorganic & Medicinal Chemistry 4(1): 5-23を参照のこと)。本明細書において用いられる「ペプチド核酸」または「PNA」という用語は、デオキシリボースリン酸骨格が擬ペプチド骨格に置き換えられ、かつ4種の天然の核酸塩基だけが保持された核酸模倣体、例えば、DNA模倣体をいう。PNAの天然骨格は、低イオン強度の条件下でDNAおよびRNAとの特異的なハイブリダイゼーションを可能にすることが示されている。PNAオリゴマーの合成はHyrup et al.,1996, 前記; Perry-O'Keefe et al., 1996, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 93: 14670-675に記述の標準的な固相ペプチド合成プロトコルを用いて行うことができる。
【0165】
例えば、PNAは、親油基もしくは他のヘルパー基をPNAに付着させることにより、PNA-DNAキメラの形成により、またはリポソームもしくは当技術分野において公知の他の薬物送達技術の使用により、例えば、その安定性または細胞取り込みを増強させるように修飾することができる。例えば、PNAおよびDNAの有利な特性を兼ね備えうるPNA-DNAキメラを作出することができる。このようなキメラでは、DNA認識酵素、例えば、RNAse HおよびDNAポリメラーゼがDNA部分と相互作用することを可能にし、その一方でPNA部分が高い結合親和性および特異性をもたらすと考えられる。PNA-DNAキメラは、塩基スタッキング、核酸塩基間の結合数、および方向という点で選択される適切な長さのリンカーを用いて連結することができる(Hyrup, 1996、前記)。PNA-DNAキメラの合成は、Hyrup, 1996、前記、およびFinn et al., 1996, Nucleic Acids Res. 24(17):3357-63に記述されているように行うことができる。例えば、標準的なホスホロアミダイトカップリング化学反応および修飾ヌクレオシド類似体を用いて、DNA鎖を支持体上で合成することができる。5'-(4-メトキシトリチル)アミノ-5'-デオキシ-チミジンホスホロアミダイトのような化合物をPNAとDNAの5'末端との間の連結として使用することができる(Mag et al., 1989, Nucleic Acids Res. 17:5973-88)。次に、PNA単量体を段階的なやり方でカップリングさせて、5' PNAセグメントおよび3' DNAセグメントを有するキメラ分子を産生する(Finn et al., 1996, Nucleic Acids Res. 24(17):3357-63)。あるいは、キメラ分子を5' DNAセグメントおよび3' PNAセグメントで合成してもよい(Petersen et al., 1995, Bioorganic Med. Chem. Lett. 5:1119-1124)。
【0166】
他の態様において、オリゴヌクレオチドは、他の付加基、例えばペプチド(例えば、インビボにおいて宿主細胞受容体を標的化するため)、または細胞膜を越えた輸送を容易にする作用物質(例えば、Letsinger et al., 1989, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86:6553-6556; Lemaitre et al., 1987, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 84:648-652; 国際公開公報第88/09810号を参照のこと)もしくは血液脳関門を越えた輸送を容易にする作用物質(例えば、国際公開公報第89/10134号を参照のこと)を含むことができる。さらに、オリゴヌクレオチドをハイブリダイゼーション誘発性の切断剤(例えば、van der Krol et al., 1988, Bio/Techniques 6:958-976を参照のこと)またはインターカレート剤(例えば、Zon, 1988, Pharm. Res. 5:539-549を参照のこと)で修飾することができる。この目的を達成するために、オリゴヌクレオチドを、別の分子、例えば、ペプチド、ハイブリダイゼーション誘発性の架橋剤、輸送剤、ハイブリダイゼーション誘発性の切断剤などに結合させることができる。
【0167】
本発明の別の局面は、がんを予防するかまたは処置するために使用できる、哺乳類スクラッチのがん関連変種の発現または活性を調節できる化合物を同定するための方法である。本発明の一つの態様において、がんの予防能または処置能について化合物を同定する方法は、以下の段階:
(a) 哺乳類スクラッチのがん関連変種を発現する細胞を試験化合物と接触させる段階; および
(b) 哺乳類スクラッチのがん関連変種の発現または機能を判定する段階; および
(c) 哺乳類スクラッチのがん関連変種の発現または機能を対照と比較する段階
を含み、
対照と比べて哺乳類スクラッチのがん関連変種の発現または機能の低下が、がんを予防するかまたは処置するのに有用な化合物を示す。
【0168】
(D) 結合タンパク質
本発明の別の局面は、本発明の単離タンパク質に結合する、結合タンパク質、好ましくは抗体または抗体断片である。このような結合タンパク質は「本発明の結合タンパク質」、または好ましくは「本発明の抗体または抗体断片」と本明細書において総称されうる。
【0169】
一つの態様において、本発明は、哺乳類スクラッチのがん関連変種に特異的な結合タンパク質を含む。好ましい態様において、哺乳類スクラッチのがん関連変種は、SEQ ID NO:1により規定されるアミノ酸配列もしくはその変種またはSEQ ID NO:2により規定されるアミノ酸配列もしくはその変種を含む。別の態様において、結合タンパク質は、SEQ ID NO:1により規定されるアミノ酸配列もしくはその変種またはSEQ ID NO:2により規定されるアミノ酸配列もしくはその変種を含む単離タンパク質に結合する。
【0170】
ある種の態様において、抗体または抗体断片はIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、IgA2、IgE、IgMまたはIgD定常領域のような、重鎖定常領域の全部または一部を含む。さらに、抗体または抗体断片はκ軽鎖定常領域またはλ軽鎖定常領域の全部または一部を含むことができる。
【0171】
本発明の単離タンパク質は、モノクローナル抗体またはポリクローナル抗体を調製するために使用することができる。抗体を調製するために従来の方法を使用することができる。例えば、Goding, J. W., Monoclonal Antibodies: Principles and Practice, 2nd Ed., Academic Press, London, 1986を参照されたい。
【0172】
細胞表面成分を有する細菌において発現される免疫グロブリン遺伝子、またはその一部分をコードする発現ライブラリーをスクリーニングすることにより、がん細胞上の抗原または分子のような、特定の抗原または分子に対して反応性の特異的な抗体、または抗体断片を作出することもできる。例えば、ファージ発現ライブラリーを用いて、完全なFab断片、VH領域およびFV領域を細菌において発現することができる(例えばWard et al., Nature 341:544-546 (1989); Huse et al., Science 246:1275-1281 (1989); およびMcCafferty et al., Nature 348:552-554 (1990)を参照のこと)。
【0173】
本発明は同様に、本発明の結合タンパク質、好ましくは抗体および抗体断片を、薬学的に許容される賦形剤、担体、緩衝液または安定剤とともに含む組成物を提供する。
【0174】
さらに、本発明の結合タンパク質はがんの診断において使用することができる。
【0175】
好ましい態様において、結合タンパク質は、がん細胞の表面に発現される哺乳類スクラッチのがん関連変種、好ましくはSEQ ID NO:1または2のアミノ酸配列のいずれか一つを含む単離タンパク質に結合する抗体または抗体断片である。さらに、がん細胞を、例えば、がん細胞サンプルの入手および本発明の結合タンパク質、好ましくは抗体または抗体断片に結合する該サンプルの能力の判定により、本発明の処置方法に対するその感受性を判定するように評価することができる。
【0176】
したがって、本発明は、抗原を発現し、本発明の結合タンパク質、好ましくは抗体および抗体断片に結合しうるがん細胞が存在するか否かを判定するために、単独でまたは本発明の治療方法の前に、その間にもしくはその後に使用できる診断方法、作用物質、およびキットを含む。
【0177】
一つの態様において、本発明は、以下の段階:
(1) 結合タンパク質-抗原複合体を生成させるためがん細胞上の抗原に特異的に結合する結合タンパク質と被験体から採取された試験サンプルを接触させる段階;
(2) 試験サンプル中の結合タンパク質-抗原複合体の量を測定する段階; および
(3) 試験サンプル中の結合タンパク質-抗原複合体の量を対照と比較する段階
を含む、被験体においてがんを検出するかまたはモニターする方法を提供する。
【0178】
一つの態様において、抗原は哺乳類スクラッチのがん関連変種、好ましくはSEQ ID NO:1〜2のアミノ酸配列のいずれか一つを含む単離タンパク質である。
【0179】
本発明はさらに、がん細胞上の抗原に結合する本発明の結合タンパク質のいずれか一つおよびその使用説明書を含んだ、がんを検出するかまたはモニターするためのキットを含む。
【0180】
診断的用途で用いられる場合、本発明の結合タンパク質、好ましくは抗体または抗体断片は、放射線不透過体もしくは放射性同位体、例えば3H、14C、32P、35S、123I、125I、131I; 蛍光(フルオロフォア)もしくは化学発光(クロモフォア)化合物、例えばフルオレセインイソチオシアネート、ローダミンもしくはルシフェリン; 酵素、例えばアルカリホスファターゼ、β-ガラクトシダーゼもしくは西洋ワサビペルオキシダーゼ; 造影剤; または金属イオンのような検出可能なマーカーで標識することができる。上記のように、抗体または抗体断片のような、結合タンパク質に標識を付着させる方法は、当技術分野において公知である。
【0181】
本発明の別の局面は、以下の段階:
(1) 被験体から採取された試験サンプル中の本発明の抗体の量を測定する段階; および
(2) 試験サンプル中の本発明の抗体の量を対照と比較する段階
を含む、被験体においてがんを検出するかまたはモニターする方法である。
【0182】
一つの態様において、本発明の抗体の量は、例えばELISAにより、試験サンプル中の本発明の抗体の量を測定することで測定される。別の態様において、本発明の抗体の量は、例えばRT-PCRにより、試験サンプル中の本発明の抗体をコードする核酸の発現レベルを測定することで測定される。
【0183】
(E) 本発明のタンパク質の調製
新規のがん関連抗原、結合タンパク質、好ましくは抗体および抗体断片のような本発明のタンパク質は、いくつかの方法のいずれかにて調製できるが、組換え法を用いて調製されるのが最も好ましいことを当業者なら理解すると考えられる。
【0184】
したがって、本発明の核酸分子を公知の方法において、本発明のタンパク質の十分な発現を確実にする適切な発現ベクターに組み込むことができる。考えられる発現ベクターは、使用される宿主細胞とベクターが適合する限り、コスミド、プラスミド、または改変ウイルス(例えば、複製欠損レトロウイルス、アデノウイルスおよびアデノ随伴ウイルス)を含むが、これらに限定されるものではない。発現ベクターは「宿主細胞の形質転換に適して」おり、これは、本発明の核酸分子およびこの核酸分子に機能的に連結されている、発現用に使用される宿主細胞に基づき選択された調節配列を、発現ベクターが含有することを意味する。機能的に連結されているとは、核酸の発現を可能にする方法で、核酸が調節配列に連結されていることを意味するよう意図される。
【0185】
本発明はそれゆえに、本発明の核酸分子、またはその断片、ならびに挿入されたタンパク質配列の転写および翻訳に必要な調節配列を含有する本発明の組換え発現ベクターを、企図する。
【0186】
適当な調節配列は、細菌の、真菌の、ウイルスの、哺乳類の、または昆虫の遺伝子を含む、さまざまな供給源から得ることができる(例えば、Goeddel, Gene Expression Technology: Methods in Enzymology 185, Academic Press, San Diego, CA (1990)に記述されている調節配列を参照のこと)。適切な調節配列の選択は、以下に論じられているように選択の宿主細胞に依り、当業者によって容易に達成されることができる。このような調節配列の例としては、翻訳開始シグナルを含む、転写プロモーターおよびエンハンサーまたはRNAポリメラーゼ結合配列、リボソーム結合配列が挙げられる。さらに、選択される宿主細胞および使用されるベクターに応じて、複製起点、さらなるDNA制限部位、エンハンサー、および転写の誘導を与える配列のようなその他の配列を、発現ベクターに組み込むことができる。
【0187】
本発明の組換え発現ベクターは、本発明の組換え分子を形質転換したまたはトランスフェクトした宿主細胞の選択を容易にする選択可能なマーカー遺伝子を含有することもできる。選択可能なマーカー遺伝子の例は、ある種の薬物に対する耐性を与えるG418およびハイグロマイシン、β-ガラクトシダーゼ、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ、ホタルルシフェラーゼ、または免疫グロブリンもしくは免疫グロブリン、好ましくは、IgGのFc部分のようなその一部分などのタンパク質をコードする遺伝子である。選択可能なマーカー遺伝子の転写は、β-ガラクトシダーゼ、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ、またはホタルルシフェラーゼのような選択可能なマーカータンパク質の濃度の変化によってモニターされる。選択可能なマーカー遺伝子が、ネオマイシン耐性のような抗生物質耐性を与えるタンパク質をコードする場合には、形質転換細胞はG418で選択することができる。選択可能なマーカー遺伝子を組み込んだ細胞は生存するはずであり、一方でその他の細胞は死滅する。これによって、本発明の組換え発現ベクターの発現を可視化することおよびアッセイすることが可能になり、特に、発現および表現型に及ぼす突然変異の影響を判定することが可能になる。選択可能なマーカーは関心対象の核酸とは別のベクターに導入できることを理解されたい。
【0188】
組換え発現ベクターは同様に、組換えタンパク質の発現の増大をもたらす、組換えタンパク質の溶解性の増大をもたらす、およびアフィニティー精製においてリガンドとして作用することにより標的組換えタンパク質の精製での補助をもたらす融合部分をコードする遺伝子を含有することもできる。例えば、タンパク質分解的切断部位を標的組換えタンパク質に付加して、融合タンパク質の精製後に融合部分からの組換えタンパク質の分離を可能にすることができる。典型的な融合発現ベクターは組換えタンパク質に、それぞれ、グルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST)、マルトースE結合タンパク質、またはプロテインAを融合するpGEX (Amrad Corp., Melbourne, Australia)、pMal (New England Biolabs, Beverly, MA)およびpRIT5 (Pharmacia, Piscataway, NJ)を含む。
【0189】
組換え発現ベクターを宿主細胞に導入して、形質転換宿主細胞を作出することができる。「を形質転換した」、「をトランスフェクトした」、「形質転換」および「トランスフェクション」という用語は、当技術分野において公知の多くの可能な技術の一つによる細胞への核酸(例えば、ベクター)の導入を包含するよう意図される。本明細書において用いられる「形質転換宿主細胞」という用語は、本発明の組換え発現ベクターを形質転換した、グリコシル化可能な細胞を同様に含むよう意図される。原核細胞は、例えば、エレクトロポレーションまたは塩化カルシウムによる形質転換によって核酸を形質転換することができる。例えば、リン酸カルシウムもしくは塩化カルシウム共沈、DEAE-デキストランによるトランスフェクション、リポフェクチン、エレクトロポレーションまたはマイクロインジェクションのような従来の技術によって核酸を哺乳類細胞に導入することができる。宿主細胞を形質転換するおよびトランスフェクトするのに適した方法は、Sambrookら(Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 3rd Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press, 2001)および他の実験室教本において見出すことができる。
【0190】
適当な宿主細胞は多種多様の真核宿主細胞および原核細胞を含む。例えば、本発明のタンパク質は酵母細胞または哺乳類細胞において発現することができる。他の適当な宿主細胞は、Goeddel, Gene Expression Technology: Methods in Enzymology 185, Academic Press, San Diego, CA (1990)において見出すことができる。さらに、本発明のタンパク質は、大腸菌(Escherichia coli)のような、原核細胞において発現することができる(Zhang et al., Science 303 (5656): 371-3 (2004))。さらに、蛍光菌(Pseudomonas fluorescens)のような、緑膿菌に基づく発現系を使用することができる(米国特許出願公開第2005/0186666号、Schneider, Jane C et al)。
【0191】
本発明を行うのに適した酵母および真菌宿主細胞は、サッカロマイセスセレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、ピチア(Pichia)属またはクルイベロマイセス(Kluyveromyces)属およびアスペルギルス(Aspergillus)属の種々の種を含むが、これらに限定されるものではない。酵母S.セレビシエでの発現用ベクターの例としては、pYepSec1 (Baldari. et al., Embo J. 6:229-234 (1987))、pMFa (Kurjan and Herskowitz, Cell 30:933-943 (1982))、pJRY88 (Schultz et al., Gene 54:113-123 (1987))、およびpYES2 (Invitrogen Corporation, San Diego, CA)が挙げられる。酵母および真菌の形質転換のためのプロトコルは当業者に周知である(Hinnen et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 75:1929 (1978); Itoh et al., J. Bacteriology 153:163 (1983)、およびCullen et al. (BiolTechnology 5:369 (1987)を参照のこと)。
【0192】
本発明を行うのに適した哺乳類細胞は、特に、COS (例えば、ATCC No. CRL 1650または1651)、BHK (例えば、ATCC No. CRL 6281)、CHO (ATCC No. CCL 61)、HeLa (例えば、ATCC No. CCL 2)、293 (ATCC No. 1573)およびNS-1細胞を含む。哺乳類細胞での発現を指令するのに適した発現ベクターは一般に、プロモーター(例えば、ポリオーマ、アデノウイルス2、サイトメガロウイルスおよびサルウイルス40のようなウイルス材料に由来する)、ならびに他の転写および翻訳制御配列を含む。哺乳類発現ベクターの例としては、pCDM8 (Seed, B., Nature 329:840 (1987))およびpMT2PC (Kaufman et al., EMBO J. 6:187-195 (1987))が挙げられる。
【0193】
本明細書において示されている教示を考慮すると、適切な種類の発現ベクターを植物、鳥類、および昆虫細胞に導入するためのプロモーター、ターミネーター、および方法も容易に達成することができる。例えば、一つの態様において、植物細胞からの本発明のタンパク質を発現させることができる(Sinkar et al., J. Biosci (Bangalore) 11:47-58 (1987)を参照されたく、これはアグロバクテリウムリゾゲネス(Agrobacterium rhizogenes)ベクターの使用を概説している; Zambryski et al., Genetic Engineering, Principles and Methods, Hollaender and Setlow (eds.), Vol. VI, pp. 253-278, Plenum Press, New York (1984)も参照されたく、これは、特にPAPS2022、PAPS2023、およびPAPS2034を含む、植物細胞用の発現ベクターの使用について記述している)。
【0194】
本発明を行うのに適した昆虫細胞は、カイコガ属(Bombyx)、トリコプルシア(Trichoplusia)またはスポドプテラ(Spodotera)種由来の細胞および細胞株を含む。培養昆虫細胞(SF9細胞)でのタンパク質の発現に利用可能なバキュロウイルスベクターは、pAc系列(Smith et al., Mol. Cell Biol. 3:2156-2165 (1983))およびpVL系列(Luckow, V.A., and Summers, M. D., Virology 170:31-39 (1989))を含む。本発明の組換えタンパク質の発現に適した一部のバキュロウイルス-昆虫細胞発現系がPCT/US/02442に記述されている。
【0195】
あるいは、本発明のタンパク質はマウス、ラット、ウサギ、ヤギおよびブタのような非ヒトトランスジェニック動物において発現されてもよい(Hammer et al. Nature 315:680-683 (1985); Palmiter et al. Science 222:809-814 (1983); Brinster et al. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 82:4438-4442 (1985); Palmiter and Brinster Cell 41:343-345 (1985)および米国特許第4,736,866号)。
【0196】
本発明のタンパク質は固相合成(Merrifield, J. Am. Chem. Assoc. 85: 2149-2154 (1964); Frische et al., J. Pept. Sci. 2(4): 212-22 (1996))または均一溶液での合成(Houbenweyl, Methods of Organic Chemistry, ed. E. Wansch, Vol. 15 I and II, Thieme, Stuttgart (1987))のようなタンパク質化学において周知の技術を用いた化学的合成によって調製することもできる。
【0197】
タンパク質のような、他の分子を抱合した本発明のタンパク質を含むN末端またはC末端融合タンパク質は、組換え技術により、融合によって調製することができる。得られた融合タンパク質は、本明細書において記述されている選択のタンパク質またはマーカータンパク質に融合された本発明のタンパク質を含有する。本発明の組換えタンパク質は、公知の技術によって他のタンパク質に抱合することもできる。例えば、該タンパク質は、国際公開公報第90/10457号に記述されているヘテロ二官能性チオール含有リンカー、N-スクシンイミジル-3-(2-ピリジルジチオ-プロプリオネート)またはN-スクシンイミジル-5チオアセテートを用いてカップリングすることができる。融合タンパク質または抱合体を調製するために使用できるタンパク質の例としては、免疫グロブリン、ホルモン、増殖因子、レクチン、インスリン、低密度リポタンパク質、グルカゴン、エンドルフィン、トランスフェリン、ボンベシン、アシアロ糖タンパク質グルタチオン-S-トランスフェラーゼ(GST)、ヘマグルチニン(HA)、および切断型mycのような細胞結合タンパク質が挙げられる。
【0198】
したがって、本発明は、本発明の単離タンパク質のような本発明のタンパク質をコードする核酸配列を含む組換え発現ベクターを提供する。さらに、本発明は、本発明の組換え発現ベクターを含む宿主細胞を提供する。
【0199】
以下の限定するものではない例により本発明を例示する。
【0200】
実施例
実施例1: がん関連スクラッチの単離および同定
実験計画
黒色腫細胞株(A-375)、神経膠腫細胞株(U118MGおよびU87MG)、乳がん細胞株(MDA-MB 435S)、膵臓細胞株(PANC-1)ならびにT細胞株(Daudi)を研究に使用した(表1)。これらの細胞株は、フローサイトメトリーによる腫瘍細胞株プロファイリングの結果に基づき選択した。
【0201】
腫瘍細胞株の増殖および維持
研究における細胞株は、ATCCから購入し、ATCCの指針および推奨にしたがって培養した。細胞は集密度90%で収集し、生存度>90%であった。
【0202】
VB3-011に対する抗原結合の予備的な特徴付け
予備的な特徴付けデータは、ドットブロットアッセイ法によるゲルに基づいた手法の実行可能性を評価するために設計された実験から; および抗原と関連するエピトープの性質を判定するために行われた実験から得た。
【0203】
これらの実験のデータから、VB3-011抗原は、グリカン修飾を有する「ブロット不可能な」抗原と分類された。すなわち、抗原上のVB3-011への結合に関わるエピトープはグリコシル化されていた。
【0204】
VB3-011 Agの濃縮および精製
ブロット可能性の研究の予備的データからレクチンに基づく精製法がVB3-011に対する最良の抗原提示法と特定された。大規模な実験から、グリカン修飾はCS (コンドロイチン硫酸)の可溶型を含み、これらのうちの二つ(CSBおよびCSE)は組織分布が限られていることが明らかにされた。したがって、グリカン修飾はCSAに起因し、それほどではないにせよヒアルロン酸に起因しうる。
【0205】
コンドロイチン硫酸A (CSA)は、D-ガラクトサミンおよびD-グルクロン酸を含有する直線状の繰返し単位で構成されている。コンドロイチン硫酸Aの基本単位中のガラクトサミンのアミノ基がアセチル化されて、N-アセチル-ガラクトサミンを生じ; N-アセチル-ガラクトサミン中の4位に対しエステル化された硫酸基が存在する(図1A) (Sugahara K et al. 1988. J. Biol. Chem. Vol. 263:10168-10174; Sugahara K et al. 1991. Eur. J. Biochem. Vol. 202:805-811; Prydz K and Dalen KT. 2000. J. Cell Sci. Vol. 113:193-205)。複数のCSA直鎖に相当する単一のグリカン単位が存在するように、これらの直線状の繰返し単位が第2の炭素鎖のC2および第1の炭素鎖のC6の分枝点で架橋(α2-6)される場合、硫酸化を除けば、これはHAによって認識されるグリカン、Neu5Ac (α2→6) Gal(β1→4)グルクロン酸に似ている(図1B)。
【0206】
二つまたはそれ以上のCSA分子は、一緒に架橋される場合、ヘマグルチニン(HA)によって認識されるグリカン- Neu5Ac (α2→6) Gal (β1→4)グルクロン酸に似ており、Azumiら(1991)は、ホヤ類のマボヤ(Halocynthia roretzi)の血球から単離されたヘマグルチニンの活性がヘパリン、コンドロイチン硫酸、およびリポ多糖類(LPS)によって阻害されるが、しかしN-アセチル-ガラクトサミン、ガラクトース、およびメリビオースのような単糖類および二糖類によって阻害されないことを示した。ヘマグルチニンはヘパリン-セファロースクロマトグラフィーおよび遠心分離実験によってそれぞれ実証されているように、ヘパリン、コンドロイチン硫酸およびLPSに対する結合能を示した(Ajit Varki et al eds. 1999. Essentials of Glycobiology)。同様に、マイコバクテリウム由来のヘマグルチニンはヘパラン硫酸に結合することが示されており、インフルエンザ菌(Hemophilius influenzae)由来のヘマグルチニンは、さらなるα2-6連結を有するCSAに結合する(Azumi K et al. A1991. Dev. Comp. Immunol. Vol. 15(1-2):9-16; Menozzi FD et al. I1996. J. Exp. Med., Vol. 184(3):993-1001)。ヘパラン硫酸およびコンドロイチン硫酸Aは、C5エピマー化の点で異なる。それゆえに、レクチンに基づく精製を可能にしうる新たな試薬を以下のように作出した。IP試薬として使用された場合、HAが、細胞表面上の抗原と結びついたCSAを認識するように、組換えHAをピメルイミド酸ジメチル(Dimethylpimelimidate; DMP)とカップリングさせることで抗HA抗体に固定化した。膜調製物を固定化HAでアフィニティー精製し、溶出液をSDS-PAGEおよびWB分析に供し、その後にVB3-011抗体でプロービングした。
【0207】
レクチンに基づく精製
グリカン-Neu5Ac (α2→6) Gal (β1→4) Glcに特異的に結合する組換えHA分子を旋回装置(nutator)上にて室温で2時間抗HA抗体に結合させた後に、HA-抗HA複合体のプロテインG-セファロースへの結合を行った。これに引き続き遠心分離工程を行って、未結合の画分を除去した。固定化複合体を次いで、すぐ近くに存在する公知の架橋タンパク質であるピメルイミド酸ジメチル(DMP)により架橋した。過剰のまたは未使用の架橋剤および未結合の材料を短時間の遠心分離工程によって除去した。架橋結合工程の副産物として生じた可能性がある非特異的なアミン群を室温にて2時間、トリエタノールアミンで中和した。このように作出されたレクチンに基づく試薬をPBSで十分に洗浄し、2〜8℃にて0.05% NaN3含有のPBSで貯蔵した。HA試薬のほか、さらに良好な抗原回復を検出するようCon-A-アガロースおよびWGA-アガロースもアフィニティー精製試薬として使用した。
【0208】
最低限500 μgの膜タンパク質をレクチンに基づく精製に使用した。プロテインGセファロースだけを用いる予備浄化工程が、試薬の添加前の抗原精製における第一工程であった。計15〜20 μLの試薬を混合物中の沈殿剤として使用した。生理的条件を模倣した緩衝液条件を用いて、抗原-レクチン混合物を4℃で終夜旋回混和(nutate)した。必ずプロテアーゼ阻害剤が抗原単離過程のあらゆる工程で使用されるように注意を払った。
【0209】
抗原-レクチン複合体を遠心分離し、RIP-A溶解緩衝液で洗浄し、0.2 MグリシンpH 2.5で溶出した。未結合の画分に相当する上清は、アフィニティー精製によって単離されないタンパク質を試験するために貯蔵した。レクチンに基づく精製は2種の神経膠腫細胞株(U118MGおよびU87MG)、1種の黒色腫細胞株(A-375)、1種の上皮細胞株(MDA-MB-435S)ならびに2種の陰性細胞株(Panc-1; およびDaudi)において行った。
【0210】
ゲルに基づく分析およびウエスタンブロッティング
1D-PAGE:
精製タンパク質を還元条件のサンプル調製に供し、その後SDS-PAGE/ウエスタンブロッティングによって分析した。還元条件を用いた場合には、単離抗原を15分間65℃にて1%β-メルカプトエタノール含有のサンプル緩衝液で処理した。得られたブロットをVB3-011およびHRPに抱合された対応の二次抗体でプロービングして、化学発光により精製タンパク質を可視化した。
【0211】
2D-PAGE:
精製タンパク質を二次元ゲル電気泳動により分離して、1D-PAGE分析で生じた可能性がある任意のタンパク質スタッキングの影響を解消した。2D-ゲル電気泳動では、第一の次元においてタンパク質をその等電点(pI)により、および第二の次元においてその分子量に基づき分離した。このように分離されたタンパク質を終夜ニトロセルロース膜に転写し、1D-PAGEの場合と同様に処理した。ウエスタンブロットをVB3-011でプロービングし、反応性のタンパク質を化学発光によって可視化した。
【0212】
ペプチド抽出および抗原ID
ゲル内および溶液内トリプシン消化からのペプチド抽出:
トリプシン消化を最終的にはペプチドの抽出に至る20時間のペプチド抽出過程において配列決定等級のトリプシンによって行い、そのペプチドを使用流量20〜50 nL/分のナノソースが装備された、QSTAR Pulsar-I (ESI-qTOF-MS/MS)にて分析した。ペプチドは、イオン化し、二価、三価または四価分子として検出され、これらがその各質量に精緻化される。同定されたタンパク質の新規配列決定も可能なら行った。ペプチドを陽性および陰性の両細胞株から抽出して、それが的確な抗原であることを確実にした。質量スペクトルから抽出されたペプチド質量を直接的に使用して、MASCOT検索エンジンをによりアクセス可能な、タンパク質データベースにて得られたMOWSEスコアにしたがい抗原を同定した。ペプチドをゲル片からもおよび溶液内からも抽出し(U118MG、U87MG、A-375、435S)、これらをMS分析に供した。
【0213】
結果
HA試薬の固定化
組換えHA分子は、抗体ではなく、それゆえ、固定化パートナーとして直接的にプロテインG-スファロースに結合しない。この分子が抗原精製過程において機能的であることを可能とするため、HAに特異的に結合しうる抗HA抗体に、HAを結合し、この分子を連続的にプロテインG-スファロースによって固定化した。これによって、図2に図示されるように、複合体が固定化されるだけでなく、抗HAの存在から生じうる任意の非特異的な相互作用が遮断されると考えられる。固定化されたHA-抗HA複合体をその後、ピメルイミド酸ジメチル、つまり各種の反応物質の近接性を維持する架橋剤を用いて安定化した。最終的な複合体は、HA分子上の反応性の結合部位以外に、過程においていくつかの反応性アミンをもたらした。これらの反応性基を1 Mトリエタノールアミンによって持続的に遮断し、このようにしてHA分子上の反応部位の最大限の曝露を確実にした。
【0214】
レクチン-精製
全ての精製反応は、予備浄化されたタンパク質で行った。非特異性を最小限にするためにおよび同種抗原-抗体複合体の安定性を増強するために、いっそう長いインキュベーション時間を使用した。6種の細胞株(A-375、U118MG、U87MG、MDA-MB-435S、Panc-1およびDaudi)をこの研究において使用した。SDS-PAGEにて単離された抗原の分析の前に、サンプル調製用の還元条件を用いた。ウエスタンブロットをVB3-011でプロービングして、精製された抗原がVB3-011に対する同種の結合パートナーであることを確実にした。
【0215】
1D-PAGE/ウエスタン分析
HA試薬が使用された場合、抗原陽性の細胞株(A-375)おいて還元条件の下では、1D-PAGEでの分離後に約50 kDaの位置に一本の特異的なバンドしか検出されず(図3A)、これは陰性の細胞株(Panc-1)では存在していなかった。非特異的な相互作用がCon-AおよびWGAレクチンで観察されたことから、VB3-011抗原上に存在するグリカンがHAによって認識されるものであることが示唆された。神経膠腫細胞株(U118MGおよびU87MG)も、HA試薬を用いて精製された場合に、約50 kDaの位置に単一バンドの存在を示した(図3B)。サンプルをSDS-PAGEでのその分離の前に1時間室温で放置させた場合、約36 kDaの主要なバンドおよびかすかな50 kDaのバンドが抗原陽性の細胞株(A-375、U118MGおよびU87MG)において観察された(図4)。
【0216】
2D-PAGE分析
等電点(pI)を判定するためにおよび1D-PAGE分析でのタンパク質スタッキングの可能性を評価するために、HAによって精製された抗原を、第一の次元での分離がpIに基づきかつ第二の次元での分離が分子量に基づく、二次元ポリアクリルアミドゲル電気泳動(2D-PAGE)にて分離した。次いで、このゲルをニトロセルロース膜に転写し、標準的なウエスタンブロッティング処理に供した。2Dゲルでのタンパク質の検出に必要な量は1Dゲルに対する必要条件よりも約4倍高いので、4回の別反応から精製された抗原を一回の2D-PAGE分析のために一緒にしてプールした。二枚の別個のゲルをウエスタンブロット分析のために同時に処理して、クマシー染色ゲルにて検出されるタンパク質がウエスタンブロットで観察されるものと同じであることを確実にした。2DウエスタンブロットをVB3-011でプロービングし、ECL (化学発光)により検出した。図5において分かるように、一つの単一のスポットが約36 kDa/pI = 9.7±0.2で検出された。
【0217】
ペプチド抽出およびタンパク質分析
VB3-011に特異的に結合する抗原を精製するために、A-375、U 87MGおよびU118 MGの膜を使用した。図3Aおよび3Bにおいて示されるように、約50 kDaのバンドが全三種の細胞株において観察された。タンパク質のバンドをクマシー染色ゲルから切り出し、ゲル内消化に用いてMS分析用のペプチドを抽出した。
【0218】
1D-ゲルのバンドおよび2D-スポットからのタンパク質をトリプシンで消化して、それらをゲルから放出し、逆相LC-MS/MSシステムにて分析した。タンパク質の同一性は、バイオインフォマティクス手段を用いたデータベース分析によって明らかにされた。生データには、TOF-MSスペクトル、MS/MS断片化データ、および単離されたタンパク質の分子量またはpIに適合しない夾雑物を含めた示唆されるタンパク質の一覧に記載されているように得られたペプチドが含まれていた。分析を得るため、MS/MSスペクトルをwww.Matrixscience.comで利用可能なMascot検索エンジンに直接かけた。
【0219】
質量スペクトル分析
ペプチド分析を二通りの方法で行った。
・タンパク質のIDを得るため、回収されかつその正確な質量にまで再構築された全てのペプチドをペプチド質量フィンガープリンティング工程で直接使用した。
・「y」イオンおよび「b」イオンを用いてその一次構造を推測する、さらなるMS/MSイオン断片化のため、豊富にありかつよくイオン化されるペプチドを選択した。その後、タンパク質IDに関するタンパク質データベースで、これらの配列を相同性について検索した。
【0220】
ペプチドは、イオン化し、MALDIでのようなマトリックス支援イオン化による一価分子としての検出とは対照的に、LC-MS/MSシステムによって、二価、三価、または四価分子として検出される。その後、質量再構築工程において、異なる電荷を有するペプチドをその各質量にまで精緻化した。その後、マトリックス科学に基づくmascot検索エンジンにより、抗原IDについて、これらのペプチド質量を直接分析した。質量スペクトルから抽出されたペプチド質量を用いて、MASCOT、SEQUEST、およびProspectorのような検索エンジンによりアクセス可能なタンパク質データベース上で得られたMOWSEスコアにより、抗原を直接同定した。全てのタンパク質の同一性のためにQSTAR-pulsar-Iを使用かつ選択した。何故なら、それはPepseaからの最新のタンパク質データベースの増加分を含み、MASCOTと適合するからである。
【0221】
2Dスポットの分析
2D-ゲルから切り出されたタンパク質によりスクラッチが特定された。pIおよび分子量は哺乳類スクラッチと明らかに適合していた。各ペプチドが元のタンパク質に対し100%の相同性を示す、15の適合ペプチドで計37%の配列包括度(sequence coverage)が回収された(図6参照)。
【0222】
神経膠腫および黒色腫細胞株から精製された50 kDaのバンドの分析
全三種の細胞株(U87MG、U118MGおよびA375)の質量スペクトルから得られたデータより、哺乳類スクラッチがVB3-011に結合する抗原と示唆される。スクリーニングされた全ての細胞株のうち、神経膠腫細胞株(U87MGおよびU118MG)が最高スコアの同一性を示した。黒色腫細胞株A-375も該抗原の過剰発現を示した。上記の細胞株のほか、元のスクラッチ分子の配列番号158-366に対し100%の相同性を有するスクラッチの切断型、すなわち、17.823 kDaのタンパク質gi|15928387の存在を示したMDA-MB-435Sを除くが、MDA-MB-435S、PC-3、A-549およびCFPAC-1のような、上皮細胞株も同じようにスクリーニングした。図7 (SEQ ID NO:4)を参照されたい。HA試薬を用いてVB3-011抗原をアフィニティー精製するために、これらの細胞株の各々からの膜調製物を使用した。ほかの上皮細胞株は検出可能なタンパク質を示さなかった。
【0223】
TOF-MSスキャンを手動モードおよびIDAモードの両方において得て、有意義なIDに対する最大ペプチド数を回収した。図8〜10を参照されたい。
【0224】
回収されたペプチドおよび哺乳類スクラッチ由来の配列に対するそのマップ位置の一覧は、図11 (SEQ ID NO:1)および表2 (SEQ ID NO:2および7〜24)に示した通りである。表示された全てのペプチドは新規配列決定により得られた。
【0225】
ペプチド2402.1206および2134.9614のMS/MS断片化
ナノソースに取り付けられた別個のナノスプレーヘッドを本目的に使用した。衝突エネルギーは48Vで、カーテンガスおよびCADガスをそれぞれ25および6で維持し、安定な質量イオン断片化を得るのにサンプルを1.667分間(100サイクル)循環させた。ペプチドのうち二つ(2402.978172 - 802.00000, 3+; 2134.985448 - 1068.500000, 2+)のMS/MS断片化によって、図14および15に示される断片イオンが生じた。ペプチド質量2402.97812由来のペプチドの一つ

はスクラッチ由来の配列に100%マッピングされた一方、ペプチド質量2134.985448由来のペプチド

は隣接配列において100%の相同性を示したが、中央の配列によっては示さなかったことから、新規配列の同定が示唆された。この配列の存在はタンパク質で利用可能な唯一の膜貫通ドメインに関与する。データベース内で利用可能な哺乳類スクラッチ配列は概念的翻訳の結果であり、配列の中に膜貫通ドメインがない。回収されたタンパク質配列は、データベース内で利用可能な哺乳類スクラッチタンパク質に対して67%の相同性を示し、膜貫通ドメインの存在により細胞表面に存在していることを示唆している。スペクトルから得られたほかのペプチドは、哺乳類スクラッチ由来の配列に明らかに適合し、それゆえ主要なヒットとしてプルダウンされた。イオン断片化データによって、VB3-011に対する同種抗原としてのスクラッチの新規形態の同一性がさらに確認されている。
【0226】
図12および13は哺乳類スクラッチを抗原と同定している。
【0227】
考察
IgG MAbのVB3-011はViventiaの専売プラットフォーム技術Hybridomics(商標)およびImmunoMine(商標) (国際公開公報第97/044461号参照)を用いて、中等度(grade II)の星細胞腫と診断された患者から単離された末梢血リンパ球(PBL)より作出された。この抗体は、各々が異なるがんの徴候を代表する多くの他の細胞株に対する反応性を示す。広範な腫瘍細胞型の反応性に関するこの実証にもかかわらず、VB3-011は正常組織に対してわずかな結合しか示さない。VB3-011抗原はCSAに起因した、グリカン修飾を有する「ブロット不可能な」抗原と分類された。
【0228】
CSA分子は(1-4) GlcNAc/グルクロン酸構造によって特徴付けられるので、それらは同様に、ヘマグルチニン(HA)によって認識されるレクチン-Neu5Ac (α2→6) Gal(β1→4)グルクロン酸に似ている。レクチンに基づく精製を可能にしうる新たな試薬は、抗HA抗体に固定化された組換えHAを精製剤として用い作出された。膜調製物を固定化-HAでアフィニティー精製し、溶出液をSDS-PAGEおよびWB分析に供し、その後にVB3-011抗体でプロービングした。VB3-011は1D-PAGEにて約50 kDaのタンパク質を検出し、これは2D-PAGE分析にて約36 kDaのバンドにさらに分離された。1Dおよび2DスポットのLC-MS/MS分析は哺乳類スクラッチを分子量36 kDa (1D-PAGEのWB分析によって観察された約50 kDaのうち)の抗原と同定し、したがってその残りをグリカンの4-硫酸化Neu5Ac (α2→6) Gal(β1→4)グルクロン酸の存在によるものとした。2D-PAGEでの36 kDaのスポットの検出は、哺乳類スクラッチに特有の分子量および等電点[(pI)、すなわち、9.7±0.2]に適合した。
【0229】
MS/MS断片イオン分析から新規配列決定によって回収されたタンパク質配列は、データベース内で見出される哺乳類スクラッチ配列(gi|13775236)に対し100%の相同性を示す17個のペプチドのうち16個で67%の包括度をもたらした。ペプチド質量2134.985448由来の一つのペプチド

は隣接配列において100%の相同性を示したが、中央の配列によっては示さなかったことから、新規配列の同定が示唆された。この配列の存在はタンパク質で利用可能な唯一の膜貫通ドメインに関与しており、スクラッチを細胞質ゾルとは対照的に細胞表面に配する。これは、哺乳類スクラッチを細胞表面の腫瘍抗原と表現する最初の報告である。
【0230】
実施例2: スクラッチの腫瘍関連発現
HDホルマリン固定TMAを用い、哺乳類スクラッチに特異的な抗体を腫瘍特異性について試験した。正常組織の場合には表3および腫瘍特異的な膜結合の場合には表4を参照されたい。正常組織の膜上でのスクラッチ抗原の検出は認められなかった。しかしながら、強度に陽性の膜染色がさまざまな腫瘍組織にて見出された。
【0231】
実施例3: がん診断としてのスクラッチの局在性
がんの指標としてのスクラッチタンパク質の異常な局在性:
野生型スクラッチタンパク質はNakakura et al, 2001によって記述されているように、細胞の核内に発現パターンが限られている。しかしながら、腫瘍組織型およびがん細胞型の場合の発現は、本発明者らによって細胞の細胞質内でおよび膜上で立証された。フローサイトメトリー(flow cytometery)、免疫組織化学、細胞の膜画分のウエスタンブロッティングのような当技術分野において公知の技術を用いて、スクラッチタンパク質およびその変種の異常な発現をがん細胞の細胞質内でおよび膜上で立証することができる。局在性のこの変化は、がんを示す診断として使用することができる。
【0232】
変種スクラッチタンパク質の膜発現は、U-87Mg、A375、MDA-MB-435S、U118-MGのようながん細胞型由来の膜画分のウエスタンブロッティングおよびフローサイトメトリー(flow cytometery)の両方によって立証された。これは表1、ならびに図3、4および15に示されている。
【0233】
実施例4: がんの指標としての変種mRNAの検出
膜貫通ドメインを含有する哺乳類スクラッチの変種mRNAの高感度検出用RT-PCR法:
伝令RNAを異なる種類の腫瘍細胞から単離し、第一鎖相補DNA (cDNA)を逆転写酵素およびオリゴdTプライマーを用いて合成する。その後、以下のプライマーを用いてPCRにより、野生型スクラッチ mRNAならびに考えられる変種および具体的には膜貫通変異体の発現について試験するためにcDNAを使用する。
5'プライマー1: wtおよび変種用(ヌクレオチド番号51〜82に対応する)

5'プライマー2: 膜貫通変種用(ヌクレオチド番号76〜105に対応する)

ここでX1はTまたはCであり、X2はAまたはGでありおよびX3はA、G、C、またはTである。
3'プライマー: (ヌクレオチド番号183〜210に対応する)

PCR反応物には、以下を含有する反応容量50 μLが含まれた。
10×PCR緩衝液 5 μL
2 mM dNTPs 5 μL
プライマー5' 20 pmol
プライマー3' 20 pmol
Tag DNAポリメラーゼ 2.5 U
鋳型DNA 50 ng
【0234】
PCRのサイクリング条件は以下であった: 計30サイクルを1分間94℃、1分間62℃、および30秒間72℃、その後に72℃で10分間の最終伸長。
【0235】
1%アガロースゲルでの電気泳動により、膜貫通変異体が存在する場合には、プライマー1を用いた反応では159 bpの、およびプライマー2を用いた反応では140 bpの関心対象のバンドが存在することが証明されると考えられる。
【0236】
野生型哺乳類スクラッチの配列分析により、変種には存在しないKpnI制限部位(118位)が明らかにされた。それゆえに、変種形態が腫瘍細胞において発現されているかを試験するには、増幅されたPCR産物をKpnI制限酵素で消化し、その後に1.5%アガロースゲルでの電気泳動を行うことができると考えられる。腫瘍細胞が野生型哺乳類スクラッチを発現している場合には、67および92 bpの二つの断片がUVランプの下で検出されると考えられる。対照的に、腫瘍細胞が、KpnI部位を欠いたスクラッチの変種を発現している場合には、PCR断片のサイズは未消化の対照と同一と考えられる。変種哺乳類スクラッチの膜貫通領域に特異的なプライマー(プライマー#2)を用いれば、PCR断片は、膜貫通ドメインを有する変種を含んだサンプルにおいて見出されるだけであり、それによって特異的な変種が同定されると考えられる。
【0237】
実施例5: がんの指標としてのゲノムDNA配列の検出
ヒト哺乳類スクラッチタンパク質をコードする遺伝子は、第8染色体q24.3に位置付けられており、二つのエクソンからなる。がんに関連する膜結合型スクラッチ変種に対する遺伝子配列は、エクソン特異的PCR増幅、またはプライマーから始まり公知の配列までの直接的DNA配列決定のような、当技術分野において公知の遺伝子配列決定技術を用いて容易に決定することができる。
【0238】
変異遺伝子の配列が知れたら、その検出に基づく診断試験を用いて患者を評価することができる。野生型と変異型の両遺伝子のセンスおよびアンチセンス配列に対応するオリゴヌクレオチドを付着させることで、DNAチップアレイを作出することができる。ゲノムDNAを末梢全血からまたは腫瘍組織から単離することができる。関心対象の遺伝子をその後、野生型配列にも予想される変異にもともに対応するプライマーを用いてPCRを用いて増幅し、適切なプローブ(通常は蛍光性の)で標識する。このDNAをその後、チップ上のオリゴヌクレオチドにハイブリダイズさせ、蛍光のパターンを蛍光読み取り機で測定する。蛍光のパターンをオリゴヌクレオチド配列の公知位置のマップと比較することで、患者遺伝子の配列を野生型または変異型のいずれかと立証することができる(Cooper et al 2004)。
【0239】
特にp53遺伝子中でよく見られる変異に対するアレイ(Affymetrix)は既に市販されており、特注アレイサービスも利用可能である。
【0240】
実施例6: 免疫毒素に対する標的としての変種がん関連スクラッチ
VB6-011は、腫瘍細胞表面の哺乳類スクラッチタンパク質を特異的に認識する抗体との修飾ボウガニン(bouganin)抱合体の免疫複合体である。細胞表面の膜貫通ドメインを含んだ変種スクラッチを発現する細胞の処理によって、免疫複合体の特異的な取込みおよびその後の細胞死が起こる。
【0241】
VB6-011タンパク質の細胞毒性
VB6-011の細胞毒性をMTSアッセイ法によって測定した。手短に言えば、抗原陽性および抗原陰性の細胞を1ウェル当たり細胞1000個で播種し、3時間37℃でインキュベートした。その後に、さまざまな濃度のVB6-011および脱ボウガニン(de-bouganin)を細胞に添加し、5日後、細胞生存率を測定した。
【0242】
陰性および陽性抗原の細胞株を1 nM〜1 mMの異なる濃度のVB6-011とインキュベートした。5日間のインキュベーションの後、VB6-011のIC50計算値は350 nMであった(図18) (表5)。対照的に、IC50は抗原陰性の細胞株で測定できなかった。
【0243】
好ましい例であると現在考えられるものに関連して本発明を記述してきたが、本発明は開示の例に限定されないと理解されるべきである。それとは反対に、本発明は、添付の特許請求の範囲の趣旨およびその範囲のなかに含まれるさまざまな変更および等価な組合わせ方を網羅するよう意図される。
【0244】
全ての刊行物、特許および特許出願は、各個別の刊行物、特許または特許出願がその全体として参照により組み入れられると具体的かつ個別的に示されているかのようにその全体として参照により本明細書に組み入れられる。
【0245】
(表1)研究において使用された各細胞株に対するアイソタイブ適合の対照と比べたVB3-011に対する中央蛍光値の増大

【0246】
(表2)ペプチドの一覧は再構築工程後に得られたその各質量計算値とともに表に示される通りである

【0247】
(表3)IHCによる正常組織との抗原結合断片の反応性に関するTMA評価

スコア記録は尺度0〜4+にて評価し、0 = 染色なしおよび1+未満だが、0よりも大きいものを微量とした。等級1+〜4+は染色強度の増大を表し、強い濃褐色の染色を4+とした。
【0248】
(表4)抗原結合断片に対する腫瘍TMA分析

得点記録は尺度0〜4+にて評価し、0 = 染色なしおよび1+未満だが、0よりも大きいものを微量とした。等級1+〜3+は染色強度の増大を表し、強い濃褐色の染色を4+とした。nd: 測定されず。
【0249】
(表5)VB6-011の生物学的特徴付け

ND: 測定されず。VB6結合の50%を阻害するIgGの濃度。
【0250】
参照文献







【図面の簡単な説明】
【0251】
本発明をここで添付の図面と関連して記述する。
【図1】本発明のタンパク質へのVB3-011の結合に関与するグリカン構造を示す。(4位の硫酸分子の存在により)コンドロイチン-4-硫酸としても公知のコンドロイチン硫酸Aは、繰返しのD-ガラクトサミンおよびグルクロン酸の直線状分子である(A)。二つのそのようなCSA分子が2-6α連結を介して架橋される場合、このグリカン単位がここでヘマグルチニン(HA)によって認識されるものとなる(B)。
【図2】HA試薬固定化の略図である。第1の段階で、抗HA/プロテインG-セファロースエピトープを遮断することによりHAの特異性を増強する。第2の段階で、それをプロテインG-セファロースで固定化し、抗IgGカップリング工程によって生じる任意の非特異性を同時に遮断する。第3段階で、エタノールアミンとの反応により、HAエピトープは別として、その他全ての反応性アミン基が遮断されることを確実とし、これによってHAの特異性を増大させる。
【図3】VB3-011によって検出される本発明のタンパク質のレクチンに基づく精製の結果を示す。Con-AおよびWGAレクチンは非特異的なタンパク質をプルダウンしたのに対し、HAは、陽性細胞株に存在しかつ陰性細胞株に存在しない唯一のタンパク質をプルダウンした(図3A)。HAで精製した場合にU87MG、U118MGおよびA375は単一のバンドを示すのに対し、Panc-1およびDaudiは検出可能なバンドを示さない(図3B)。
【図4】室温での分解によるグリカン残基の消失を示す。HA試薬でのIPにて通常観察される50 kDaのバンドは、SDS-PAGEでの分離の前に1時間室温で放置された場合、グリカン残基の分解をもたらし、したがって36 kDaの、抗原のグリカン部分がないタンパク質バンドの存在を示す。
【図5】Mw - 36 kDaおよびpI = 9.7の位置の、精製された抗原複合体における一つの単一のタンパク質スポットの存在を示す。これは、VB3-011抗原精製にて得られた2D-PAGEのウエスタンブロットプロファイルを表す。ゲル由来の対応スポットをIDの目的に使用した。
【図6】この図およびSEQ ID NO:3は、得られたペプチドの完全なマッピングおよび野生型哺乳類スクラッチ分子、アクセッション番号 gi|13775236の配列包括度を示す。下線のアミノ酸は、MS分析から同定されたアミノ酸の配列を表す。
【図7】この図およびSEQ ID NO:4は、MDA-MB-435由来のgi|15928387に対し得られた配列包括度、ならびに435S由来の配列およびScrtに対するBLAST配列比較を示す。MDA-MD-435Sは、野生型哺乳類スクラッチ分子の配列番号185-366に対し100%の相同性を有するスクラッチの切断型、すなわち、17.823 kDaのタンパク質gi|15928387の存在を示す。
【図8】サンプル中の全てのペプチドイオンの存在を検出するための、A-375細胞株から得られたペプチドのTOF-MSスキャンを示す。静電ナノスプレーにて100〜1200 amuの範囲の1200〜1400 Vでの100回のスキャンは、かなりの数のペプチドの回収をもたらし、これらは分析時に哺乳類スクラッチとしてのタンパク質IDを生じた。図8Aは全ての多価ペプチドイオンでのTOF-MSスキャンを表し、図8Bは一価ペプチドイオンでのデコンボリューション処理スペクトルを表す。
【図9】サンプル中の全てのペプチドイオンの存在を検出するための、U87MG細胞株から得られたペプチドのTOF-MSスキャンを示す。静電ナノスプレーにて100〜1200 amuの範囲の1200〜1400 Vでの300回のスキャンは、かなりの数のペプチドの回収をもたらし、これらは分析時に哺乳類スクラッチとしてのタンパク質IDを生じた。図9Aは全ての多価ペプチドイオンでのTOF-MSスキャンを表し、図9Bは一価ペプチドイオンでのデコンボリューション処理スペクトルを表す。
【図10】サンプル中の全てのペプチドイオンの存在を検出するための、U118MG細胞株から得られたペプチドのTOF-MSスキャンを示す。静電ナノスプレーにて100〜1200 amuの範囲の1200〜1400 Vでの27回のスキャンは、かなりの数のペプチドの回収をもたらし、これらは分析時に哺乳類スクラッチとしてのタンパク質IDを生じた。図10Aは全ての多価ペプチドイオンでのTOF-MSスキャンを表し、図10Bは一価ペプチドイオンでのデコンボリューション処理スペクトルを表す。
【図11】この図およびSEQ ID NO:1は、表2に記載の質量分析から回収されたペプチドの配列包括度を示す。計18個のペプチドがゲル内トリプシン消化から回収され、67%のタンパク質包括度が得られた。下線の配列は、回収されたペプチド配列を表す。強調表示されているペプチドは、新規の配列を含む。具体的には、太字体の配列は新規の配列であり、イタリック体の配列は哺乳類スクラッチとの完全な一致を表す。
【図12】VB3-011Agから回収されたペプチドに対するペプチド質量フィンガープリンティングの結果を示す。77を上回るタンパク質スコアを有意とみなした。観察された唯一の有意なタンパク質IDは、149のスコアを有する哺乳類スクラッチとして公知の、一つの抗原を提示していた。
【図13】同定された抗原である、哺乳類スクラッチが、149という有意なスコアを有することを示す。データベースサーバーおよび類似性/相同性関連タンパク質の性質により、本タンパク質の全てのアイソフォームがヒットとしてプルダウンされた。ペプチドのMS/MS断片化および同一性により、抗原が哺乳類スクラッチであることが確認されている。
【図14】三価分子(802.00000, 3+)と考えられる、分子量2402.978172の中性ペプチドのMS/MSイオン断片化を示す。ペプチド配列はスクラッチ由来のペプチドと完全に一致した。
【図15】二価分子(1068.500000, 2+)と考えられる、分子量2134.985448の中性ペプチドのMS/MSイオン断片化を示す。回収されたペプチドの隣接領域はスクラッチ由来のペプチドと完全に一致したが、しかしながら残りの配列は配列情報において40%以下の相同性を示した。
【図16】神経芽細胞腫組織(A〜C)および黒色腫組織(D〜F)のVB3-011による免疫組織化学的染色の代表的写真を示す。組織切片は(A) - 早期神経芽細胞腫(第I期、第II期、第III期の非N-myc増幅型)、3+; (B) - 非N-myc増幅型の第IV期神経芽細胞腫、2+; (C) - N-myc増幅型の第IV期神経芽細胞腫、3+であり、(D) - 早期黒色腫(第I〜III期)、3+; (E) - 第IV期黒色腫、3+; (F) - 転移性疾患、3+である。全ての写真は倍率400×で示されている。
【図17】この図ならびにSEQ ID NO:5および3はスクラッチ-1の制限地図を示す。
【図18】抗原陽性細胞MB-435S (白丸)および抗原陰性細胞Panc-1 (黒丸)でのVB6-011のMTSアッセイ法におけるVB6-011のインビトロでの細胞毒性を示す。1ウェル当たり細胞1000個で播種された細胞をFab-脱ボウガニン精製タンパク質とインキュベートした。5日間のインキュベーションの後、細胞生存率を測定し、IC50を決定した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
がん細胞の表面に発現される哺乳類スクラッチ(Scratch)のがん関連変種を含む、単離タンパク質。
【請求項2】
哺乳類スクラッチのがん関連変種が膜貫通ドメインを含む、請求項1記載の単離タンパク質。
【請求項3】
哺乳類スクラッチのがん関連変種がSEQ ID NO:1に示されるアミノ酸配列またはその変種を含む、請求項1記載の単離タンパク質。
【請求項4】
哺乳類スクラッチのがん関連変種がSEQ ID NO:2に示されるアミノ酸配列またはその変種を含む、請求項1記載の単離タンパク質。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項記載の単離タンパク質またはその断片をコードする、単離核酸配列。
【請求項6】
SEQ ID NO:6に示される配列またはその断片を有する、請求項5記載の単離核酸配列。
【請求項7】
SEQ ID NO:25に示される配列またはその断片を有する、請求項6記載の単離核酸配列。
【請求項8】
請求項5〜7のいずれか一項記載の核酸配列を含む、組換え発現ベクター。
【請求項9】
請求項8記載の組換え発現ベクターを含む、宿主細胞。
【請求項10】
がんを有するかまたは有する疑いがある被験体においてがん細胞を検出するかまたはがんをモニターする方法であって、
請求項1〜4のいずれか一項記載のタンパク質またはその断片を、サンプル中の細胞上にて検出する段階を含み、該タンパク質が細胞上にて検出される場合にがんが示唆される方法。
【請求項11】
(a) 被験体由来のサンプルを提供する段階;
(b) タンパク質に結合する抗体とサンプルを接触させる段階;
(c) サンプル中のタンパク質のレベルを検出する段階; および
(d) サンプル中のレベルを対照サンプルと比較する段階
を含み、
対照と比べてタンパク質のレベルの増大が、被験体ががんを有することを示唆する、
請求項10記載の方法。
【請求項12】
がんを有するかまたは有する疑いがある被験体においてがん細胞を検出するかまたはがんをモニターする方法であって、
請求項5〜7のいずれか一項記載の核酸配列またはその断片を、サンプル中にて検出する段階を含み、核酸配列が検出される場合にがんが示唆される方法。
【請求項13】
(a) 被験体由来のサンプルを提供する段階;
(b) 請求項5〜7のいずれか一項記載の核酸分子をサンプルから抽出する段階;
(c) 抽出された核酸分子をポリメラーゼ連鎖反応を用いて増幅する段階;
(d) タンパク質をコードする核酸分子の存在を判定する段階; および
(e) サンプル中の核酸配列のレベルを対照サンプルと比較する段階
を含み、
対照と比べて核酸配列のレベルの増大が、被験体ががんを有することを示唆する、
請求項12記載の方法。
【請求項14】
核酸分子が、SEQ ID NO:27に示される配列を有するプライマーを用いて増幅される、請求項13記載の方法。
【請求項15】
(a) 被験体由来のサンプルを提供する段階;
(b) 野生型スクラッチまたはスクラッチのがん関連変種をコードする核酸分子をサンプルから抽出する段階;
(c) 核酸分子をKpnI制限酵素で消化する段階; および
(d) 消化された核酸分子のサイズを判定する段階
を含み、
未消化の核酸分子の存在が、被験体ががんを発症する素因を有することを示唆する、
がんを有するかまたは有する疑いがある被験体においてがん細胞を検出するかまたはがんをモニターする方法。
【請求項16】
適当な希釈剤または担体との混合物の中に請求項1〜4のいずれか一項記載の単離タンパク質またはその断片の有効量を含む、薬学的組成物。
【請求項17】
アジュバントをさらに含む、請求項14記載の薬学的組成物。
【請求項18】
適当な希釈剤または担体との混合物の中に請求項5〜7のいずれか一項記載の単離核酸配列の有効量を含む、薬学的組成物。
【請求項19】
アジュバントをさらに含む、請求項18記載の薬学的組成物。
【請求項20】
適当な希釈剤または担体との混合物の中に請求項8記載の組換え発現ベクターの有効量を含む、薬学的組成物。
【請求項21】
アジュバントをさらに含む、請求項20記載の薬学的組成物。
【請求項22】
がんを処置するかまたは予防するための請求項1〜4のいずれか一項記載の単離タンパク質またはその断片の使用。
【請求項23】
免疫反応を誘発するための請求項1〜4のいずれか一項記載の単離タンパク質またはその断片の使用。
【請求項24】
がんを処置するかまたは予防するための請求項5〜7のいずれか一項記載の単離核酸配列の使用。
【請求項25】
被験体において免疫反応を誘発するための請求項5〜7のいずれか一項記載の単離核酸配列の使用。
【請求項26】
がんを処置するかまたは予防するための請求項8記載の組換え発現ベクターの使用。
【請求項27】
被験体において免疫反応を誘発するための請求項8記載の組換え発現ベクターの使用。
【請求項28】
哺乳類スクラッチのがん関連変種の機能を阻止する段階または低減する段階を含む、被験体においてがんを処置するかまたは予防するための方法。
【請求項29】
請求項1〜4のいずれか一項記載のタンパク質に結合する結合タンパク質が哺乳類スクラッチのがん関連変種の機能を阻止するかまたは低減するために使用される、請求項28記載の方法。
【請求項30】
哺乳類スクラッチのがん関連変種の機能が、細胞における哺乳類スクラッチのがん関連変種の発現を低減するかまたは阻止することで阻止されるかまたは低減される、請求項29記載の方法。
【請求項31】
がんの予防能または処置能について化合物を同定する方法であって、
以下の段階:
(a) 請求項1〜4のいずれか一項記載の単離タンパク質を発現する細胞を試験化合物と接触させる段階;
(b) 単離タンパク質の発現または機能を判定する段階; および
(c) 単離タンパク質の発現または機能を対照と比較する段階
を含み、
対照と比べて単離タンパク質の発現または機能の低下が、がんを予防するかまたは処置するのに有用な化合物を示す方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17−1】
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【図17−2】
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【図18】
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【公表番号】特表2009−520467(P2009−520467A)
【公表日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−546058(P2008−546058)
【出願日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【国際出願番号】PCT/CA2006/002101
【国際公開番号】WO2007/071051
【国際公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【出願人】(506410877)ヴィヴェンティア バイオテック インコーポレーティッド (5)
【Fターム(参考)】