説明

がん関連遺伝子発現抑制剤

【課題】複数のがん関連遺伝子の発現を抑制可能ながん関連遺伝子発現抑制剤を提供する。
【解決手段】本発明のがん関連遺伝子発現抑制剤は、α−グルコシダーゼ活性阻害成分、好ましくは、サラシア属植物、桑、グァバ、ラフマ、トウチ及びギムネマからなる群から選択される少なくとも1種の植物に由来する成分を含み、複数のがん関連遺伝子の発現を抑制するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、がん関連遺伝子発現抑制剤に関する。
【背景技術】
【0002】
がんは、複数のがん関連遺伝子に変異が生じて過剰発現又は発現抑制が生じることにより発症すると知られている。このうち、過剰発現によってがんを引き起こす複数の遺伝子の場合、発現を抑制することができればがんの発症がある程度抑制できると期待できる。このため、がん関連遺伝子の発現抑制を目的として種々の技術が開発されている。
【0003】
例えば特許文献1には、特定の標的遺伝子に対して配列相同性を有する核酸を用いて、当該標的遺伝子の発現を阻害する方法が開示されている。この方法では、標的遺伝子としてがん遺伝子を選択した場合、がん遺伝子の発現が阻害されてがんの発症に効果があることが記載されている。
【0004】
一方、種々の天然由来成分には特定の薬理活性を有するものが知られている。例えば、特許文献2には、植物由来成分のような天然由来の成分を用いてがん関連遺伝子の発現を調整可能であることが記載されている。
また、特許文献3には、免疫バランス調整作用及び免疫賦活化作用を有する天然由来成分として、サラシア属植物由来の成分が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2004−520833号公報
【特許文献2】国際公開弟2006/043671号パンフレット
【特許文献3】特開2010−7739号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、これまでのがん関連遺伝子の発現抑制による発がん予防又は治療方法としては、特定の一のがん関連遺伝子の発現を抑制するものであるため、複数のがん関連遺伝子の発現過剰によって発症するがんに対しては十分な抑制効果が期待できない。
従って、本発明の目的は、複数のがん関連遺伝子の発現を抑制可能ながん関連遺伝子発現抑制剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は以下のとおりである。
[1] α−グルコシダーゼ活性阻害成分を含み、複数のがん関連遺伝子の発現を抑制するがん関連遺伝子発現抑制剤。
[2] 前記α−グルコシダーゼ活性阻害成分のスクラーゼ50%阻害(IC50)が0.0001μg/ml以上800μg/ml以下である[1]に記載のがん関連遺伝子発現抑制剤。
[3] 前記α−グルコシダーゼ活性阻害成分が、サラシア属植物、桑、グァバ、ラフマ、トウチ及びギムネマからなる群から選択される少なくとも1種の植物に由来する成分である[1]又は[2]に記載のがん関連遺伝子発現抑制剤。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、複数のがん関連遺伝子の発現を抑制可能ながん関連遺伝子発現抑制剤を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明のがん関連遺伝子発現抑制剤は、α−グルコシダーゼ活性阻害成分を含む。
本発明のがん関連遺伝子発現抑制剤に含まれるα−グルコシダーゼ活性阻害成分に、複数のがん関連遺伝子の発現を抑制し得る効果があることが、今回初めて見出された。従って、本発明のがん関連遺伝子発現抑制剤を摂取することにより、複数のがん関連遺伝子の発現を抑制できる。
【0010】
本明細書において「工程」との語は、独立した工程だけでなく、他の工程と明確に区別できない場合であっても本工程の所期の作用が達成されれば、本用語に含まれる。
本明細書において「〜」を用いて示された数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。
本発明において、各成分の量について言及する場合、各成分が複数存在する場合には、単独であることを特に断らない限り、存在する複数の成分の合計量を意味する。
以下、本発明について説明する。
【0011】
本発明における「がん関連遺伝子」とは、発現過剰によってがんの発症に関与する遺伝子を広く包含し、所謂、がん遺伝子(oncogene)に限定されない。
前記がん関連遺伝子は、その発現が上昇することにより、がんの誘発、がん細胞の増殖促進、炎症の誘導、がんの浸潤、がんの増悪、がんの転移又はこれらの2つ以上の組み合わせに作用する可能性を有する全ての遺伝子を指す。
【0012】
がん関連遺伝子の例としては、例えばAbli、Bcli、Bcl2、Bcl6、Cbfa2、Cbl、Csfir、Erba、Erbb、Erbb2、Etsi、Etv6、Fgr、Fos、Fyn、Hcr、Hras、Hsp90、Jun、Kras、Lck、Lyn、Mdm2、Mll、Myb、Myc、Mycli、Mycn、Nras、Pimi、Pml、Ret、Skp2、Src、Tali、Tcl3、Yes、ras、raf、cyclin D、Bcl−2、VEGF、VEGFR、NFkB、Her2、EGFRなどを挙げることができる。
【0013】
本発明のおける「発現抑制」とは、上記がん関連遺伝子のタンパク質の生体試料中における量が、がんを発症している生体に由来の試料中での量よりも少ないことを意味し、好ましくは、前記がん関連遺伝子のmRNAの生体試料中における量が、がんを発症している生体に由来する試料中での量よりも少ないことを意味する。
【0014】
がん関連遺伝子のタンパク質の量は、当業界で既知の方法により測定すればよく、例えば、ウェスタンブロット法、カラムクロマトグラフィー法等を挙げることができる。
がん関連遺伝子のmRNAの発現量は、当業界で既知の方法により測定すればよく、例えば、RT−PCR法、マイクロアレイ法等を挙げることができる。
測定対象となる生体試料としては、特に制限はなく、血液、尿、リンパ液などの体液、組織、細胞等を挙げることができる。
【0015】
本がん関連遺伝子発現抑制剤は、上記のがん関連遺伝子のうち複数の遺伝子の発現を抑制する。前記がん関連遺伝子発現抑制剤によって発現が抑制されるがん関連遺伝子は、複数であれば特に制限はなく、2つ以上であっても、3つ以上であってもよい。また、複数のがん関連遺伝子のそれぞれは、1のがん関連遺伝子の発現抑制が他のがん関連遺伝子の発現抑制を誘導する関係にあるものであってもよく、このような関係がないものであってもよい。発現が抑制される複数のがん関連遺伝子の種類としては、特に制限はなく、上述したがん関連遺伝子のうちの2つ以上のがん関連遺伝子の任意の組み合わせを挙げることができる。
【0016】
本発明におけるα−グルコシダーゼ活性阻害成分は、小腸上皮にあるα−グルコシダーゼを阻害する成分であれば構わない。例として、アカルボース、ボグリボース、ミグリトール、サラシノール、コタラノール、デオキシノジリマイシン、アクテオシドなどの他、天然の植物に由来する成分であってもよい。植物に由来するα−グルコシダーゼ活性阻害成分としては、グァバ、豆鼓、甘草、小麦、サラシア属植物、桑、バラ花、ギムネマ、ウコギ類(ウコギ、ウド、タラノキなど。以下、同じ)、ユーカリ、ケイヒ、ビワ、ラフマなどの植物に由来する天然成分を挙げることができる。これらは単独でも2種以上を組み合わせてもよい。このように、配列相同性を有する特定の核酸配列などではなく、天然由来の成分によってがん関連遺伝子の発現が抑制されるので、特定の配列を作製する必要がなく、がんの予防をよりいっそう簡便に行うことが期待できる。
【0017】
また、サラシア属植物、桑、グァバ、ラフマ、豆鼓(トウチ)、ギムネマ又はこれらの組み合わせである植物に由来するものであることが、がん関連遺伝子の発現を確実に抑制してがん症状の軽減又はQOL向上の観点から、また、薬剤の投与に伴う副作用が低いため好ましい。
【0018】
天然のα−グルコシダーゼ活性阻害成分の具体的としては、グァバ葉ポリフェノール、豆鼓エキス、甘草エキス、小麦アルブミン、サラシアエキス(サラシア属植物の粉砕物または抽出物)、桑の葉エキス、バラ花エキス、ギムネマ葉末、ウコギ類、ユーカリ、ケイヒ、ビワの葉、ラフマ、豆鼓エキスなどが挙げられる。
これらの中でもアカルボース、ボグリボース、デオキシノジリマイシン、グァバ葉ポリフェノール、サラシア属植物の粉砕物または抽出物、桑の葉エキス、ギムネマ葉末、豆鼓エキスが好ましい。α−グルコシダーゼ阻害成分として、特に好ましくはサラシア属植物の粉砕物又は抽出物である。
【0019】
これらは、化学合成品であってもよいが、天然物の粉砕物または抽出物の形態で使用されることが好ましい。なお、サラシア属植物の抽出物である場合には、熱水抽出物であってもアルコール抽出物であってもよい。
これらは単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0020】
なかでも、サラシア属植物とは、主としてスリランカやインドや東南アジア地域に自生するニシキギ科の植物で、より具体的にはサラシア・レティキュラータ(Salacia reticulata)、サラシア・オブロンガ(S. oblonga)、サラシア・プリノイデス(S. prinoides)、サラシア・キネンシス(S. chinensis)から選ばれる1種類以上の植物が用いられる。これらの植物を粉砕したものや、根、幹、葉、花、果実など可食部から抽出したエキス末が用いられる。1種類以上の部位を混合して使用してもよい。より好ましくは根、幹から抽出したエキス末が用いられる。
【0021】
サラシア属植物の抽出エキス末を用いる場合、前述の可食部から溶媒抽出によって得られたものを乾燥させたものである。抽出溶媒としては、水、またはメタノール、エタノールを初めとするアルコール類、あるいは水とアルコール類またはアセトンなどのケトン類との混合溶媒から選択されてよい。安全性等の面から、好ましくは水、アルコール、含水アルコールを用いる。より好ましくは、抽出溶媒として熱水もしくはエタノールあるいは含水エタノールを用いる。前記含水アルコールのアルコール濃度は、30v/v%〜90v/v%、好ましくは40v/v%〜70v/v%の濃度のものを使用すればよい。乾燥方法は噴霧乾燥、凍結乾燥などが挙げられるが、これに限られるものではない。
【0022】
本発明におけるα−グルコシダーゼ阻害成分としては、スクラーゼ50%阻害濃度(IC50値)が0.0001μg/ml以上800μg/ml以下のものが好ましい。また、スクラーゼ50%阻害濃度は0.001μg/ml以上600μg/ml以下がより好ましく、0.001μg/ml以上450μg/ml以下が更に好ましい。スクラーゼ50%阻害濃度(IC50値)は、特開2009−249315号公報の段落[0009]〜[0012]に記載の方法で測定すればよい。例えば、サラシア属植物、桑、グァバ、ラフマ、トウチ及びギムネマ等のIC50値は800μg/ml以下であり、特に、サラシア属植物、桑の葉、及びトウチ等のIC50値は450μg/ml以下である。
【0023】
本発明のがん関連遺伝子発現抑制剤は、液状、固形状、粉末、ゲル状のいずれの形態であってもよく、溶液、錠剤、ハードカプセル剤、ソフトカプセル剤、顆粒剤等の形態としてもよい。
【0024】
α−グルコシダーゼ活性阻害成分のがん関連遺伝子発現抑制剤における含有量としては、がん関連遺伝子発現抑制剤の剤型又は投与形態によって異なるが、がん関連遺伝子の発現を抑制に有効な量であればよく、例えばがん関連遺伝子発現抑制剤が溶液形態の組成物の場合には、組成物の全質量の99質量%〜0.0001質量%、好ましくは90質量%〜0.0005質量%とすることができ、固形形態の組成物の場合には組成物の全質量の95質量%〜0.0001質量%、好ましくは90質量%〜0.0001質量%とすることができるが、特に制限はない。投与量としては、剤型等によって異なるが、一般に、1日あたり、体重kgあたり、α−グルコシダーゼ活性阻害成分として0.1mg〜10000mgとすることができ、好ましくは2mg〜5000mgとすることができ、より好ましくは5mg〜2000mgとすることができる。
【0025】
また、本発明のがん関連遺伝子発現抑制剤は、上述したα−グルコシダーゼ活性阻害成分のみで構成してもよく、それぞれの薬剤の形態に応じて、製薬的に許容可能な担体や周知の他の添加成分を含んでいてもよい。
溶液状とする場合に好ましく用いられる担体としては、水等の水性媒体を挙げることができる。固形状にするために好ましく用いられる添加成分としては、結晶セルロース、ステアリン酸マグネシウムのような賦形剤、コーンスターチ、アルギン酸のような膨化剤を用いることができる。また、錠剤、カプセル剤、顆粒剤の被覆剤として、シェラックや砂糖、フイルムコーティング基材、イーストラップ等を用いることができる。
【0026】
本発明では、例えばサラシア属植物の抽出エキス末の経時による変色を改善するため、炭酸カルシウムまたは二酸化ケイ素を、錠剤またはハードカプセルの形態にした際の質量の1%以上の量を含有することが好ましい。更に食品あるいは食品添加物として利用可能な低吸湿原料、吸湿剤を用いることができる。好ましくは低吸湿性原料としてセルロース、結晶セルロース、粉末セルロース、微結晶セルロース、乳糖、オリゴ糖、糖アルコール、トレハロース、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウムなどが用いられる。吸湿剤としてはケイ酸塩類、炭酸マグネシウム、フェロシアン化物、多糖類などが用いられる。より好ましくは低吸湿性原料として結晶セルロース、微結晶セルロース、乳糖が用いられる。また、粉末、固形剤または液剤に成型するのに必要な化合物として、エリスリトール、マルチトール、ヒドロキシプロピルセルロース、カオリン、タルクなどが挙げられる。
【0027】
本がん関連遺伝子発現抑制剤の投与形態としては、経口投与であることが好ましいが、非経口投与、例えば、経直腸投与又は舌下投与を適用してもよい。
【0028】
本発明のがん関連遺伝子発現抑制剤は、簡便且つ効果的にがん関連遺伝子の発現を抑制することによるがんの予防が期待できるので、食品として好ましく用いることができる。即ち、本発明は、上記のがん関連遺伝子発現抑制剤を含む食品も提供する。
本発明にかかる食品は、がん関連遺伝子発現抑制剤を含有するものであればよく、がん関連遺伝子発現抑制剤に関する事項が、本発明の食品においてもそのまま適用可能である。
本発明にかかる食品におけるがん関連遺伝子発現抑制剤の含有量は、がん関連遺伝子発現抑制剤の効果が得られる範囲であればよく、例えば、有効成分として食品の全質量の0.001質量%以上含有されていればよい。
【0029】
本発明は、α−グルコシダーゼ活性阻害成分を含む前記がん関連遺伝子発現抑制剤を、がんの予防又は治療の対象となる対象へ投与することを含むがんの予防又は治療方法も包含する。本がんの予防又は治療方法に適用可能ながん関連遺伝子発現抑制剤については、前述した事項がそのまま適用可能である。本がんの予防又は治療方法によれば、特別な設備を必要とせずに副作用が少なく、簡便にがんの予防又は治療を期待することができる。
【実施例】
【0030】
以下、本発明を実施例にて詳細に説明する。しかしながら、本発明はそれらに何ら限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は質量基準である。
【0031】
[実施例1、2]
【0032】
6週齢のオスの生後6週齢のオスのSprague Dawley(登録商標)ラット(SDラット)(CLEA Japan, Inc., Shizuoka, Japan)を購入し、1週間の検疫馴化を行なった後、ラットをランダムに10匹ごとの群に分けた。
サラシア属植物エキス粉末は、サラシア・レチキュラータ(S. reticulata)とサラシア・オブロンガ(S. oblonga)の根及び幹の部分を粉砕後、98℃の熱水抽出工程を経て得られた液をスプレー乾燥して調製した。
【0033】
得られたサラシア属植物エキス粉末を80mg/mlの濃度となるように注射用水(Otsuka Pharmaceutical Co., Ltd., Tokyo, Japan)に溶解して試料液を調製し、この試料液を、金属性胃ゾンデを用いてサラシアエキス粉末重量にして2mg/kg(実施例1)又は20mg/kg(実施例2)になるように強制経口胃内投与した。1日1回13週間反復投与を行った後、投与最終日の夕刻から16時間の絶食を行い、放血により安楽死させた。その後、解剖により肝臓を摘出した。肝臓の全mRNA及び総タンパクを常法により抽出及び精製し、それぞれがん関連遺伝子の発現解析に供した。
【0034】
がん関連遺伝子の発現解析としては、4つのがん関連遺伝子(Fos,Jun,Myc,Hsp90)を対象として、mRNAの発現解析はRT−PCR(実施例1のみ)にて、タンパクの遺伝子発現解析はWestern Blotにて、それぞれ常法に従って行った。
RT−PCRに用いたプローブは、タカラバイオ社より購入したものを使用し、また、ウェスタンブロットに用いた抗体(モノクローナル抗体)は、和光純薬工業株式会社より購入したものを使用した。
【0035】
[比較例1]
80mg/mlのサラシア属植物エキス粉末を含む試料液を、注射用水のみとし、比較用試料液を調製した以外は、実施例1と同様に比較用試料液をラットに投与し、がん関連遺伝子の発現解析を行った。
【0036】
[比較例2]
80mg/mlのサラシア属植物エキス粉末を含む試料液に換えて、200mg/mlのフラクトオリゴ糖を含む比較用試料液とし、0.5g/kgのフラクトオリゴ糖の投与量とした以外は、実施例1と同様に比較用試料液をラットに投与し、がん関連遺伝子の発現解析を行った。なお、サラシア属植物エキスを摂取すると体内でオリゴ糖が生成され、そのオリゴ糖にはフラクトオリゴ糖やガラクトオリゴ糖が含まれることが知られているため、がん関連遺伝子への発現に対するフラクトオリゴ糖の影響についても併せて確認した。
【0037】
実施例1〜2及び比較例1〜2のがん関連遺伝子の発現解析の結果を、比較例1での発現量に対する相対値として表1及び表2に示す。比較例1との有意差については、*はP<0.05、**はP<0.01をそれぞれ表す。
【0038】
【表1】

【0039】
【表2】

【0040】
表1及び表2に示されるように、実施例1及び実施例2はいずれも、Fos、Jun、Myc及びHsp90の4つのがん関連遺伝子のうちの少なくとも2つの発現を抑制することができた。これらのがん関連遺伝子は互いに独立に存在しており、1の遺伝子の発現が他の遺伝子の発現に拘束されないため、1の成分により同時に発現抑制できることは予想外であった。
このような効果は、フラクトオリゴ糖を投与した比較例2では得られない。
これらのことから、サラシア属植物エキス粉末を含む試料を経口投与することにより、がん関連遺伝子の発現が抑制されて、がんの予防又は治療を期待できる。
【0041】
従って、本発明によれば、複数のがん関連遺伝子の発現を効果的に抑制することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
α−グルコシダーゼ活性阻害成分を含み、複数のがん関連遺伝子の発現を抑制するがん関連遺伝子発現抑制剤。
【請求項2】
前記α−グルコシダーゼ活性阻害成分のスクラーゼ50%阻害(IC50)が0.0001μg/ml以上800μg/ml以下である請求項1記載のがん関連遺伝子発現抑制剤。
【請求項3】
前記α−グルコシダーゼ活性阻害成分が、サラシア属植物、桑、グァバ、ラフマ、トウチ及びギムネマからなる群から選択される少なくとも1種の植物に由来する成分である請求項1又は請求項2記載のがん関連遺伝子発現抑制剤。

【公開番号】特開2012−167049(P2012−167049A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−28697(P2011−28697)
【出願日】平成23年2月14日(2011.2.14)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】