説明

きのこ廃培地の処理方法

【課題】きのこ廃培地を低コストで再利用することが可能なきのこ廃培地の処理方法を提供する。
【解決手段】きのこ栽培後に発生した廃培地を脱水し、脱水廃培地と搾液を得る工程と、前記搾液を加熱殺菌して培養液を得る工程と、前記培養液に酵母菌を接種して酵母菌の培養を行う工程と、増殖して浮上した前記酵母菌の菌体を前記培養液から分離する工程と、前記脱水廃培地を洗浄する工程と、前記洗浄廃培地を脱水して、洗浄廃培地を第2の搾液と脱水処理された脱水洗浄廃培地とに分離する工程と、前記脱水洗浄廃培地を水分調整してリサイクル固形燃料の燃焼基材を得る工程と、を有していることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はきのこ廃培地の処理方法に関し、より詳細には、含水量の多い廃培地からの搾液を用いて酵母菌を培養して増殖させた菌体を得ることができると共に、搾液の残液処理を容易にし、しかも、廃培地を低コストで再利用することが可能なきのこ廃培地の処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
きのこの人工栽培には培地としてコーンコブやおが粉等を主成分とした培地材料が用いられる。このようなきのこ栽培用培地は、きのこ栽培の都度新しい培地が用いられ、使用後に発生する廃培地は一部が堆肥として用いられていたものの、ほとんどの廃培地は廃棄処分されていた。近年においては、このような廃培地を堆肥以外に有効利用するための提案がいくつかなされている。
具体的には、きのこ廃培地を家畜用飼料の原料に用いる方法(特許文献1)や、きのこ廃培地からバイオマス燃料を製造する方法(特許文献2)や、きのこ廃培地の再利用方法(特許文献3)が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第2543756号公報
【特許文献2】特開2010−77201号公報
【特許文献3】特開平11−299348号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1〜3に記載されているきのこ廃培地の処理方法によれば、きのこの廃培地を有効に再利用することができる。しかしながら、きのこ廃培地を再利用するにあたっては、きのこ廃培地に大量に含まれている水分を除去する必要がある。また、きのこ廃培地から除去した水分は所定の浄化処理が必要になるため、これらの処理コストの面から再利用が困難であるといった課題がある。
このような課題を回避すべく、きのこ廃培地を乾燥処理する方法も考えられるが、この乾燥処理には多量の化石燃料が必要であり、乾燥処理にも時間がかかってしまうため依然としてきのこ廃培地の再利用は運用面でのコスト的な課題が未解決のままになっている。
【0005】
そこで本願発明は、きのこの収穫を終えた後に発生するきのこ廃培地を再利用する際において、きのこ廃培地から除去した水分の有効利用が可能であり、また、有効利用後の水は低コストでの処理ができ、さらには洗浄処理したきのこ廃培地を低コストで再利用することが可能なきのこ廃培地の処理方法の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために本発明者は鋭意研究を行った結果、以下の構成に想到した。
すなわち、きのこ栽培後に発生した廃培地を脱水し、脱水廃培地と搾液を得る工程と、前記搾液を加熱殺菌して培養液を得る工程と、前記培養液に酵母菌を接種して酵母菌の培養を行う工程と、増殖して浮上した前記酵母菌の菌体を前記培養液から分離する工程と、前記脱水廃培地を洗浄する工程と、前記洗浄廃培地を脱水して、洗浄廃培地を第2の搾液と脱水処理された脱水洗浄廃培地とに分離する工程と、前記脱水洗浄廃培地を水分調整してリサイクル固形燃料の燃焼基材を得る工程と、を有していることを特徴とするきのこ廃培地の処理方法である。
【0007】
また、他の発明は、きのこ栽培後に発生した廃培地を脱水し、脱水廃培地と搾液を得る工程と、前記搾液を加熱殺菌して培養液を得る工程と、前記培養液に酵母菌を接種して酵母菌の培養を行う工程と、増殖して浮上した前記酵母菌の菌体を前記培養液から分離する工程と、前記脱水廃培地を洗浄する工程と、前記洗浄廃培地を脱水して、洗浄廃培地を第2の搾液と脱水処理された脱水洗浄廃培地とに分離する工程と、前記脱水洗浄廃培地を水分調整して再生培地材を得る工程と、を有していることを特徴とするきのこ廃培地の処理方法もある。
【発明の効果】
【0008】
本発明にかかるきのこ廃培地の処理方法によれば、きのこ栽培後の廃培地から除去した水分を酵母菌の培養液として用い、酵母菌を培養して有価物である酵母菌の菌体を得ることができ、廃培地から除去した水分に溶解している成分の有効利用が可能になる。また、酵母菌を培養した後の残水は、糖分やたんぱく質が酵母菌により消費されているので後処理(浄化処理)が容易であるため水処理費用を低減させることができる。さらには、きのこ栽培後の廃培地から余分な水分を除去することができるため、きのこ廃培地を再生培地やリサイクル固形燃料の燃焼基材として使用する際に必要な化石燃料の使用量や加熱殺菌処理時間を大幅に短縮させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本実施形態におけるきのこ廃培地への処理順序の一部を示すフロー図である。
【図2】図1内のA部分の処理順序を示すフロー図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明にかかるきのこ廃培地の処理方法について図面に基づいて説明する。図1は、本実施形態におけるきのこ廃培地への処理順序の一部を示すフロー図である。図2は、図1内のA部分の処理順序を示すフロー図である。
まず、図示しないきのこの人工栽培容器から十分に子実体が生育したきのこを収穫する(S100)。次に、人工栽培容器内の廃培地を脱水装置に投入する(S101)。脱水装置に所定量の廃培地が投入された後、脱水装置により脱水処理(S102)をし、投入された廃培地を搾液と脱水処理された脱水廃培地とに固液分離する。本実施形態においては、脱水装置としてプレス脱水機を用い、プレス脱水機に投入された廃培地をバッチ処理により脱水処理する構成を採用しているが、他の公知の脱水装置を用いることも可能であり、また、きのこ栽培後の廃培地の脱水処理はバッチ処理ではなく連続的に行ってもよい。
【0011】
廃培地の脱水処理(S102)で得られた搾液は、摂氏60〜70度にて30分間加熱殺菌処理が施され、培養液を得る(S103)。続いて培養液に酵母菌を接種する(S104)。本実施形態においては、酵母菌として培養液にミコトルラを接種したが、他の公知の酵母菌を培養液に接種してもよいのはもちろんである。ミコトルラを接種した培養液は、摂氏28度以上の温度環境下で1週間程度の期間ミコトルラを培養する(S105)。培養期間を経過すると酵母菌が増殖し、培養液内にミコトルラの菌体が浮上する。培養液内でミコトルラの菌体が浮上した後、培養液とミコトルラの菌体を固液分離装置に投入し、培養液をミコトルラの菌体と残液とに固液分離させる(S106)。この固液分離処理(S106)により分離されたミコトルラの菌体は、商品として販売する等有価物として用いる(S10-END)ことができる。
【0012】
ミコトルラの菌体が分離された残液は、ミコトルラの菌体生育のために糖分およびたんぱく質が消費されているため、廃培地をプレス処理して得た搾液(S102で得た搾液)に比較して糖分およびたんぱく質の含有量が少なくなっている。このように糖分およびたんぱく質の含有量が少ないため、残液の浄化処理(S120)に要する時間が短縮され、残液の浄化処理コストがわずかで済むため好都合である。ここでは残液の浄化処理方法として、好気性微生物による処理を採用している。残液が好気性微生物分解されると、浄化水(S12-END)と汚泥が得られる。浄化水は任意の目的に用いることができる。汚泥は焼却処理(S14-END)される。また、残液は浄化処理をする代わりに、残液の水分調整を行った後に肥料(液肥)として用いる(S16-END)こともできる。
【0013】
脱水処理(S102)で得られた脱水廃培地は、図2に示すように洗浄処理(S110)される。この洗浄処理には、残液を浄化処理(S120)して得た浄化水(S12-END)を用いることもできる。脱水廃培地を洗浄処理(S110)して得た洗浄廃培地は、脱水処理装置により脱水処理(S111)され、脱水洗浄廃培地と第2搾液とに固液分離される。本実施形態においては脱水処理(S111)を行う脱水処理装置として圧縮プレス装置を用いたバッチ処理を採用しているが、他の公知の脱水処理装置を用いることもできる。また洗浄廃培地の脱水処理は連続処理方式を採用してもよい。
脱水洗浄廃培地は、乾燥処理(S112)を施し、含水率を調整した後に再生培地として再利用(S13-END)することができる。また、脱水洗浄廃培地は、脱水処理(S111)または脱水処理(S111)に加えて乾燥処理(S112)を施した後に、出願人による特願2009−295130号にかかる廃培地を用いたリサイクル固形燃料製造装置等に投入してリサイクル固形燃料の燃焼基材の一部として用いることもできる(S11-END)。
【0014】
洗浄廃培地の脱水処理(S111)において得られた第2搾液は、好気性微生物分解等の浄化処理(S130)が施され、第2搾液は好気性微生物により汚泥と浄化水に分解処理されることになる。第2搾液を浄化処理(S130)する前に、好気性微生物を第2搾液に投入または追加投入等すればなお好適である。また、必要に応じて、浄化処理(S130)すべき第2搾液を微生物の分解処理能力に合わせて濃度調整(BODの調整)を行うことも好適である。第2搾液は、浄化処理(S130)の後に汚泥と浄化水とに固液分離処理(S131)される。ここでは固液分離装置としてフィルタプレス装置が採用されているが、他の固液分離装置を用いることも可能である。フィルタプレス装置により分離された汚泥は有機物であるため焼却処理(S14-END)される。また、浄化水は任意の目的に用いることができる(S15-END)。
また、第2搾液を浄化処理(S130)する代わりに、第2搾液をそのまま、または、水分調整をして肥料(液肥)として使用する(S16-END)ことも可能である。
【0015】
以上に、本願発明にかかるきのこ廃培地の処理方法について実施形態に基づいて説明をしたが、本願発明の技術的範囲は、以上に示した実施形態に限定されるものではない。例えば、きのこ栽培容器から取り出したきのこ廃培地を脱水装置に投入する処理(S101)に先だって、きのこ廃培地の含水率を低下させるための乾燥処理を施せば、搾液の容積を削減することができる点で好都合である。これと同様の理由により、洗浄処理(S110)で得た洗浄廃培地を脱水処理(S111)する前に洗浄廃培地の含水率を低下させるための乾燥処理を施すこともできる。このような可能処理には熱源が必要になるが、可燃物(可燃ゴミ)の焼却炉からの廃熱や汚泥を焼却処理(S14-END)した際に発生する廃熱等を利用すれば、化石燃料を消費することなく乾燥処理をすることができる。
【0016】
また、本実施形態において得られた浄化水は、いずれも、脱水廃培地の洗浄処理(S110)の洗浄用水として使用することができる。また、第2搾液を浄化処理(S130)する際における第2搾液の濃度調整(BODの調整)や、第2搾液を肥料として使用する(S16-END)際における水分調整用水としても用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
きのこ栽培後に発生した廃培地を脱水し、脱水廃培地と搾液を得る工程と、
前記搾液を加熱殺菌して培養液を得る工程と、
前記培養液に酵母菌を接種して酵母菌の培養を行う工程と、
増殖して浮上した前記酵母菌の菌体を前記培養液から分離する工程と、
前記脱水廃培地を洗浄する工程と、
前記洗浄廃培地を脱水して、洗浄廃培地を第2の搾液と脱水処理された脱水洗浄廃培地とに分離する工程と、
前記脱水洗浄廃培地を水分調整してリサイクル固形燃料の燃焼基材を得る工程と、
を有していることを特徴とするきのこ廃培地の処理方法。
【請求項2】
きのこ栽培後に発生した廃培地を脱水し、脱水廃培地と搾液を得る工程と、
前記搾液を加熱殺菌して培養液を得る工程と、
前記培養液に酵母菌を接種して酵母菌の培養を行う工程と、
増殖して浮上した前記酵母菌の菌体を前記培養液から分離する工程と、
前記脱水廃培地を洗浄する工程と、
前記洗浄廃培地を脱水して、洗浄廃培地を第2の搾液と脱水処理された脱水洗浄廃培地とに分離する工程と、
前記脱水洗浄廃培地を水分調整して再生培地材を得る工程と、
を有していることを特徴とするきのこ廃培地の処理方法。
【請求項3】
前記菌体を分離した培養液の残液と、前記第2の搾液とを混合し、または個別に好気性微生物分解させる工程と、
好気性微生物分解により生じた汚泥と浄化水とを固液分離する工程をさらに有していることを特徴とする請求項1または2に記載のきのこ廃培地の処理方法。
【請求項4】
前記菌体を分離した培養液の残液および前記第2の搾液を水分調整して肥料の基材として用いる工程をさらに有していることを特徴とする請求項1または2に記載のきのこ廃培地の処理方法。
【請求項5】
前記きのこ栽培後に発生した廃培地を脱水する前に、前記廃培地を所要の含水率まで乾燥処理する工程をさらに有していることを特徴とする請求項1〜4のうちのいずれか一項に記載のきのこ廃培地の処理方法。
【請求項6】
前記洗浄廃培地を脱水する前に、前記洗浄廃培地を所要の含水率まで乾燥処理する工程をさらに有していることを特徴とする請求項1〜5のうちのいずれか一項に記載のきのこ廃培地の処理方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−34647(P2012−34647A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−179284(P2010−179284)
【出願日】平成22年8月10日(2010.8.10)
【出願人】(504376289)豊田興産株式会社 (10)
【Fターム(参考)】