説明

くすみ改善に好適な皮膚外用剤

【課題】スキンケアにより、くすみの存在そのものに対応する手段の提供。
【解決手段】1)リンドウ科センブリ属の植物体の抽出物と、2)次に示す特性を有するYAC化合物及び/又はその塩とを含有する皮膚外用剤。<化合物の特性>(1)λmaxを405〜415nmと、660〜670nmとに有する。(2)1H−NMRスペクトルを有する。(3)以下の条件でのHPLC分析において、15分前後にシングルピークを示す。(移動相:90%アセトニトリル、カラム:ODS4.6×250mm、流速:1ml/min.、温度:40℃、検知:紫外部210nm)(4)化学組成式はC34H40O9であり、質量分析スペクトルは593(M+H)。前記リンドウ科センブリ属の植物体の抽出物は、ヒト肝ガン由来細胞株HepG2を培養した場合において、非存在下に比し40%グルタチオンの産生量を増加させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧料などの皮膚外用剤に関し、更に詳細には、くすみ改善に有用な化粧料などの皮膚外用剤に関する。
【背景技術】
【0002】
化粧料に於いて、「くすみ対応」は近年重要な課題となっている。従前、くすみはメラニンの蓄積と、その分布様式(メラニンの分布の不均一性)に起因するものである(例えば、特許文献1を参照)、或いは、血行の不順やそれによって生じるヘモグロビン酸素飽和度の低下によるものである(例えば、特許文献2を参照)等の諸説が存するが、その原因については明確ではない。又、明らかな点ではくすみはメラニン産生抑制作用を有する美白剤によって多少の改善はするが、解消はしない等の特性を有し、単一原因によるよりは、複合化した原因背景が存することが推測される。又、この素因によって「くすみ」の一言に包含されている生理現象に於いても多種多様なものが存することが推測される。又、この様なくすみが存することにより、第三者に於ける外観印象において、「疲れている」、「元気がない」、「加齢している」等のネガティブな印象を形成せしめることから、その対応が求められていたが、スキンケアに於いては根本的な解決策が存しないため、メークアップ化粧料による外観印象の改変によって対応されるのが常であった(例えば、特許文献3を参照)。確かに、外観印象の改変による対応手段も重要であるが、スキンケアにより、くすみの存在そのものに対応することも望まれており、この様なスキンケア手段の開発が望まれていた。
【0003】
一方、リンドウ科センブリ属の植物は、開花期の全草を乾燥したものを生薬として民間療法において、腹痛の抑制、消化促進、食欲増進の目的で使用されており、化粧料の分野に於いても、その抽出物を血行促進(例えば、特許文献4を参照)或いは発毛促進(例えば、特許文献5を参照)の目的などで使用されている。しかしながらリンドウ科センブリ属の植物体の抽出物が細胞に於いて、グルタチオンの産生量を増加させる作用を有することは全く知られていない。又、キク科ヨモギの植物体に含有される、次に示す特性を有するYAC化合物及び/又はその塩は、文献未記載の新規化合物であり、当然その薬効についても全く知られていない。更に、これらを組み合わせて皮膚外用剤に含有させることにより、著しいくすみ改善効果を示すことも全く知られていない。
<YAC化合物の特性>
(1)λmaxを405〜415nmと、660〜670nmとに有する。
(2)図1に示す1H−NMRスペクトルを有する。
(3)図2に示す13C−NMRスペクトルを有する。
(4)以下の条件でのHPLC分析において、15分前後にシングルピークを示す。
移動相:90%アセトニトリル
カラム:ODS4.6×250mm
流速:1ml/min.
温度:40℃
検知:紫外部210nm
(5)化学組成式はC3440であり、質量分析スペクトルは593(M+H)
【0004】
観点を変えて、皮膚老化現象においては、アドバンスド・グリケーション・エンドプロダクツ(以下、AGEsと略することもある)が重要な役割を担っており、これを分解する成分としてはオリーブの葉の抽出物、ヨモギの葉の抽出物などが存することが知られている(例えば、特許文献6、特許文献7、特許文献8を参照)。しかし、AGEs分解剤とリンドウ科センブリ属の植物の抽出物とを組み合わせる技術も、全く開示も示唆も存しない。ヨモギの抽出物とセンブリ属の植物の抽出物とを組み合わせて化粧料に含有させることは、その可能性については開示されている(例えば、特許文献9を参照)が、実際の組み合わせての配合は全く為されていない。
【0005】
【特許文献1】特開平09−38045号公報
【特許文献2】特開2008−50316号公報
【特許文献3】特開2007−291066号公報
【特許文献4】特開2005−336116号公報
【特許文献5】特開2005−272432号公報
【特許文献6】特開2001−122758号公報
【特許文献7】特開2001−108622号公報
【特許文献8】特開2007−161663号公報
【特許文献9】特開2004−35440号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、この様な状況下為されたものであり、スキンケアにより、くすみの存在そのものに対応する手段を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この様な状況に鑑みて、本発明者らは、スキンケアにより、くすみの存在そのものに対応する手段を求めて、鋭意研究努力を重ねた結果、1)リンドウ科センブリ属の植物体の抽出物と、2)次に示す特性を有するYAC化合物及び/又はその塩とを含有する、皮膚外用剤がその様な作用を有していることを見出し、発明を完成させるに至った。。
<YAC化合物の特性>
(1)λmaxを405〜415nmと、660〜670nmとに有する。
(2)図1に示す1H−NMRスペクトルを有する。
(3)図2に示す13C−NMRスペクトルを有する。
(4)以下の条件でのHPLC分析において、15分前後にシングルピークを示す。
移動相:90%アセトニトリル
カラム:ODS4.6×250mm
流速:1ml/min.
温度:40℃
検知:紫外部210nm
即ち、本発明は以下に示すとおりである。
<1>1)リンドウ科センブリ属の植物体の抽出物と、2)次に示す特性を有するYAC化合物及び/又はその塩とを含有することを特徴とする、皮膚外用剤。
<YAC化合物の特性>
(1)λmaxを405〜415nmと、660〜670nmとに有する。
(2)図1に示す1H−NMRスペクトルを有する。
(3)図2に示す13C−NMRスペクトルを有する。
(4)以下の条件でのHPLC分析において、15分前後にシングルピークを示す。
移動相:90%アセトニトリル
カラム:ODS4.6×250mm
流速:1ml/min.
温度:40℃
検知:紫外部210nm
(5)化学組成式はC3440であり、質量分析スペクトルは593(M+H)
<2>リンドウ科センブリ属の植物体の抽出物は、該抽出物の20μg/mLの濃度での存在下、ヒト肝ガン由来細胞株HepG2を培養した場合において、非存在下に比して少なくと40%グルタチオンの産生量を増加させる作用を有することを特徴とする、<1>に記載の皮膚外用剤。
<3>複合乳化剤形であることを特徴とする、<1>又は<2>に記載の皮膚外用剤。
<4>前記複合乳化剤形は、水相を連続相とし、該連続相中に油滴及び油中水乳化滴が分散した形態の剤形であることを特徴とする、<3>に記載の皮膚外用剤。
<5>1)リンドウ科センブリ属の植物体の抽出物と、2)次に示す特性を有するYAC化合物及び/又はその塩とを、ともに水相中に分散した油中水乳化滴の油相中に含有することを特徴とする、<4>に記載の皮膚外用剤。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、スキンケアにより、くすみの存在そのものに対応する手段を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
<1>本発明の皮膚外用剤の必須成分であるセンブリの抽出物
本発明の皮膚外用剤は、リンドウ科センブリ属の植物の抽出物を必須成分として含有することを特徴とする。リンドウ科センブリ属の植物としては、センブリ乃至はムラサキセンブリが好ましく例示できる。かかる植物体より抽出物を作成するには、乾燥、細切、粉砕などの加工を施した植物体に、1〜50質量倍の溶媒を加え、所望により攪拌、ホモジネートなど抽出促進措置を加え、室温であれば数日間、沸点付近の温度であれば数時間浸漬し、必要に応じて、濾過などで不溶物を取り除き、減圧留去、凍結乾燥などを行って、適宜分画、精製などを加えて、皮膚外用剤に含有させることが出来る。使用する植物体の部位としては全草が好ましく、植物体の採取時期としては開花期が好ましい。この時、皮膚外用剤に含有させることが出来るか否かの指標としては、ヒト肝ガン由来細胞株HepG2に対して、グルタチオンの産生を促進させることが出来るか否かを用いることが出来る。即ち、以下の手順でグルタチオンの産生に対する作用を計測し、産生の促進値(検体の存在下のグルタチオンの産生量/検体非存在下のグルタチオンの産生量)が1.4以上であった場合には、含有させることが可能であると判別し、1.5以上の場合はより好ましいと判別する。本発明の皮膚外用剤では、かかる含有に適すると判別されたセンブリ属の植物の抽出物を、好ましくは、0.001〜1質量%、より好ましくは、0.01〜0.1質量%含有する。かかるグルタチオンの産生促進が、後記のYAC化合物とともに働いて、くすみの改善を促す。
【0010】
<手技>
ヒト肝ガン由来細胞株HepG2(ATCC;CRL-11997)を用いてグルタチオン産生量の測定試験を実施した。10容量%牛胎児血清(GIBCO社製)加RPMI1640培地(GIBCO社製)に細胞を懸濁し、培養プレートに播種し、CO2インキュベーター(95容量%空気、5容量%二酸化炭素)内、37℃の条件下で24時間培養した。24時間培養後、ジメチルスルホキシドにて懸濁した各抽出物を乾燥固形物量として培地中に20μg/mlの濃度で含む試料添加培地に交換し、さらに24時間培養した。
細胞を回収し、その後−30℃で凍結、融解することで細胞を破砕し、細胞内のグルタチオンを溶出させた。1000xgで15分間、20℃で遠心し、上清を測定試料とした。GSH/GSSG−412キット(OXIS Research社製)を用いて、DTNB法により、グルタチオン量を測定した。即ち、グルタチオン標準品、ブランク、測定試料200μLを、各々のキュベットへ入れ、キット付属のクロモジェン200μLと酵素液200μLを各キュベットに加え、室温で5分間インキュベートした。その後各キュベットにキット付属のNADPH液200μLを添加し、412nmの吸光度の変化を3分間測定した。グルタチオン量は、同時に設定したグルタチオン標準品にて作成した検量線から計算した。
【0011】
<製造例>
リンドウ科センブリ属センブリを開花期に採取し、全草を乾燥後、ミキサーで細切し、100gを秤取った。これに50%エタノール水溶液500mLを加え、5分間超音波処理し、遠心分離(3000rpm;5分)を行い、上清を濾過し、減圧留去した後、水100mLと酢酸エチル100mLを加え、液液抽出を行い、酢酸エチル相を取り、減圧留去し、センブリ抽出物1を得た。このもののグルタチオン産生の促進値(検体の存在下のグルタチオンの産生量/検体非存在下のグルタチオンの産生量)は、1.69± 0.34であった。尚、水相を減圧留去したセンブリ抽出物2のグルタチオン産生の促進値(検体の存在下のグルタチオンの産生量/検体非存在下のグルタチオンの産生量)は、1.45±0.48であった。
【0012】
<2>本発明の化粧料の必須成分であるYAC化合物
本発明の化粧料の必須成分であるYAC化合物は次に示す性状を有することを特徴とする。
(性状)
(1)λmaxを405〜415nmと、660〜670nmとに有する。
(2)図1に示す1H−NMRスペクトルを有する。
(3)図2に示す13C−NMRスペクトルを有する。
(4)以下の条件でのHPLC分析において、15分前後にシングルピークを示す。
(5)化学組成式はC3440であり、質量分析スペクトルは593(M+H)
本発明の化粧料の必須成分であるYAC化合物の紫外・可視吸収スペクトルは図3に示す。この図より、405〜415nmと、660〜670nmとにλmaxが存する特徴が明確に判別できる。本発明の化粧料の必須成分であるこの化合物を特定する場合、かかる紫外・可視部吸収特性は非常に有利である。即ち、多波長の検出器を備えたHPLCを用いて、210nmの吸収で分析し、ピークについて405〜415nmと、660〜670nmとの吸収を確認し、同様に強い吸収が認められた場合には、本願発明のYAC化合物である蓋然性が非常に高い。この意味で有力な確認手段となる。本願発明のYAC化合物は、極性溶媒抽出物の非極性部分に存在する。この為、溶媒で抽出し、抽出溶媒を減圧濃縮などで除去した後に酢酸エチルと水で分液し、酢酸エチル相を採取することにより、濃縮することが出来る。このものをシリカゲルカラムクロマトグラフィーなどを用いて、クロロホルム/メタノール混液系で分画精製することにより単離することが出来る。単離したかどうかについては、以下の条件のHPLC分析でシングルピーク(リテンションタイム15分前後)であるか否かを判別することにより特定することが出来る。図4に分析例を示す。この場合のリテンションタイムは14.7分である。
(HPLC条件)
移動相:90%アセトニトリル
カラム:ODS4.6×250mm
流速:1ml/min.
温度:40℃
検知:紫外部210nm
【0013】
かかる本発明の化粧料の必須成分であるYAC化合物は、キク科ヨモギ乃至はキク科カワラヨモギの植物体を極性溶媒、例えば、含水していても良い有機溶媒、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオールなどのアルコール類、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類、ジエチルエーテル、イソプロピルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル類、クロロホルム、ジクロロメタンなどのハロゲン化炭化水素、酢酸エチル、蟻酸メチルなどのカルボン酸エステル類、アセトニトリルなどのニトリル類などで抽出することにより、前記YAC化合物を含む抽出物を得ることが出来、これを前記の如く、液液抽出やカラムクロマトグラフィーなどの精製手段により単離精製することが出来る。抽出溶媒としては、含水アルコールが特に好ましく、70〜90%エタノール水溶液を用いることが特に好ましい。抽出に用いる植物体の部位は、地上部を用いることが好ましい。植物体は、抽出に先立って、細切乃至は乾燥して粉砕するなど、細片化処置を行うことが好ましい。抽出は、室温であれば数日間、沸点付近の温度であれば数時間植物体乃至はその加工物を溶媒に浸漬することにより為しうる。
【0014】
斯くして得られたYAC化合物は、シリカゲルを担体とする薄層クロマトグラフィー(展開液、クロロホルム:メタノール=95:5〜8:2)においてシングルスポットを呈し、AGEs分解活性を示す。AGEs分解活性は、簡易的にはα−ジケトンの切断活性の強さを指標とし、定量化することが出来る。即ち、1−フェニル−1,2−プロパンジオンとともにインキュベートし、切断によって生じる安息香酸を吸光度で定量し、安息香酸の生成量が多いほどAGEs分解能が高いと判別できる。これよりvivoに近い評価としては、実際にグルコースと牛血清アルブミンとをインキュベートして作成したAGEsを分解せしめ、分解量を定量し、かかる分解量を指標にAGEs分解能を定量する方法も存する。本発明の化粧料の必須成分であるYAC化合物はこの様な方法でAGEs分解能を定量した場合、α−ジケトンの分解において40〜60%程度の分解率を呈し、牛アルブミンAGEsに対しては、10−3質量%で65〜80%程度の分解率を呈する。この性質を利用して本発明の化粧料の必須成分であるYAC化合物はAGEs分解剤として化粧料等に配合し、光照射などで生じたAGEsを速やかに分解し、この蓄積を防ぐことが出来る。以下に、これらの評価方法の手順を示す。本発明の化粧料に於いては、かかるAGEs分解作用がくすみ改善、特にメラニン産生抑制剤で改善しにくいくすみの改善に有用であると考えられる。本発明の化粧料に於いてはかかるAGEs分解作用を明確に発現するドーズでのYAC化合物の含有が好ましい。具体的には、10−4〜10−2質量%含有させることが特に好ましい。
【0015】
<α−ジケトンのC−C結合切断能の測定>
22mM 1−phenyl−1,2−propanedion/MeOH+0.1Mリン酸緩衝液(PH7.4)1mlと、測定用試料1mlを混合し、37℃で10時間反応させ、安息香酸の量をHPLCにて定量する。
(HPLC条件)
・分析条件 検出器 :紫外吸光光度計(測定波長:260nm)
・カラム :東ソー TSK−ODS80TsQA カラム温度:室温
・移動層 :氷酢酸2g/アセトニトリル500ml+エデト酸二ナトリウム溶液(1→250)500ml 流量:1ml/min
【0016】
<グルコース−牛血清アルブミンAGEs分解能の測定>
用いる材料は以下の通り。
AGE−BSA:グルコースとBSAを37℃で12週間以上インキュベートし、
PD−10 columns(Amersham Biosciences 17−0851−01)にて余分なglucoseを除いたもの
1次抗体 :Anti−Albumin,Bovine Serum,Rabbit−Poly ROCKLAND 201−41331/20000
2次抗体 :Goat anti−rabbitIGg horseradish
peroxidase conjugate Bio RAD 170−6515 1/10000
基質 :TMB solution Wako 546−01911
(手順)
typeIコラーゲンコートした96穴マイクロプレート(Bio Coat 35 4407)に10μg/mlのAGE−BSAを100μl加え、(1.0μgAGE−BSA/well) 37℃にて4時間静置した後、0.05%Tween20/PBS(−)にて3回洗浄(マイクロミキサー上で室温・3分間振とう)し、PBS(−)に溶解した各濃度の試料を100μlを加え、37℃で10時間以上反応させる。その後、0.05%Tween20/PBS(−)にて3回洗浄し、1次抗体を各wellに100μl/well加え、室温で30分間静置する。0.05%Tween20/PBS(−)にて3回洗浄し、2次抗体を100μl/well入れ、室温30分間静置する。0.05%Tween20/PBS(−)にて3回洗浄し、TMBを100μl/well加え、室温15分反応させる。1N HClを100μl/well入れ、反応を止め、450nmの吸光度を測定する。AGEsの量を変え、検量線を引き、この検量線より残存AGEs量を定量した。残存AGEsを添加したAGEsより減じ、添加したAGEsで除し、100を乗じてAGEs分解率を算出した。
【0017】
本発明の化粧料の必須成分であるYAC化合物は、図1、図2のNMRデータより、水酸基、カルボキシル基等の反応性置換基を有すると考えられ、かかる反応性基を利用して誘導体へと導くことが出来る。かかる誘導体が本発明の化粧料の必須成分であるYAC化合物の誘導体である。本発明の誘導体としては、例えば、メチルアイオダイドなどのハロゲン化炭化水素を用いてアルキル化したアルキルエーテル体、アルキルエステル体、アシルハライドを反応させて得られるアシル化体、モノエタノールアミンなどを反応させたアミド体などが好適に例示できる。前記の評価法においてAGEs分解能を有する限り、これらの誘導体は本発明の化粧料の必須成分として、本発明の技術的範囲に属する。
【0018】
<3>本発明の皮膚外用剤
本発明の皮膚外用剤は、前記必須成分を含有し、乳化剤形であることを特徴とする。前記乳化剤形としては、水中油乳化剤形、油中水乳化剤形、複合乳化剤形の何れもが適用可能であり、特に複合乳化剤形が好ましい。複合乳化剤形には、油中水中油剤形や水中油中水剤形のように、エマルションの分散している滴の構造自身が複合化しているタイプ(分散滴複合タイプ)と、連続相は油相なり、水相なりの一相であり、分散的が油滴、油中水滴分散或いは水滴、水中油滴分散などのように分散滴が多様化しているタイプ(分散滴多様化タイプ)とが存し、本発明の皮膚外用剤では、分散滴多様化タイプが特に好ましい。
【0019】
分散滴複合タイプの複合乳化剤形の皮膚外用剤は、連続相に予め調整しておいた水中油乳化組成物(連続相は油相)、或いは、油中水乳化組成物(連続相は水相)を攪拌下徐々に加え、しかる後に均質化すれば製造することが出来る。
【0020】
分散滴多様化タイプは、予め水中油乳化剤形乃至は油中水乳化剤形を作成しておき、これに油中水乳化組成物乃至は水中油乳化組成物を添加し均質化すれば製造することが出来る。
【0021】
本発明の皮膚外用剤では、分散液多様化タイプの複合乳化剤形であって、水相を連続相とし、ここに油滴と油中水乳化滴が混在して分散する剤形であることが好ましい。この様な乳化剤形に於いて、本発明の皮膚外用剤の必須成分である水溶性共重合体の乳化滴安定化効果が特に著しく発揮されるからである。
【0022】
前記の分散液多様化タイプの複合乳化剤形であって、水相を連続相とし、ここに油滴と油中水乳化滴が混在して分散する剤形の場合、必須成分である有機変性粘土鉱物は、連続相である水相に分散している油中水乳化滴中に含有することが好ましい。又、この場合、分散する油滴は、アルカリを含有する、予め水酸化レシチンを溶解させた水相に、脂肪酸を含む油相を加え、水中油乳化組成物を形成せしめ、これに有機変性粘土鉱物を含む油中水乳化組成物を加え、所望により均質化し調整することが好ましい。この様な形態を採用することにより、乳化滴、油滴と水相の界面が強化され乳化安定性が向上する。又、水相中に分散する油中水乳化滴は、経皮吸収性に優れるので、有効成分である前記必須成分はここに含有させることが好ましい。
【0023】
本発明の皮膚外用剤に於いては、前記成分以外に通常皮膚外用剤で使用される任意成分を含有することが出来る。この様な任意成分としては、例えば、マカデミアナッツ油、アボガド油、トウモロコシ油、オリ−ブ油、ナタネ油、ゴマ油、ヒマシ油、サフラワ−油、綿実油、ホホバ油、ヤシ油、パ−ム油、液状ラノリン、硬化ヤシ油、硬化油、モクロウ、硬化ヒマシ油、ミツロウ、キャンデリラロウ、カルナウバロウ、イボタロウ、ラノリン、還元ラノリン、硬質ラノリン、ホホバロウ等のオイル、ワックス類;流動パラフィン、スクワラン、プリスタン、オゾケライト、パラフィン、セレシン、ワセリン、マイクロクリスタリンワックス等の炭化水素類;オレイン酸、イソステアリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、ウンデシレン酸等の高級脂肪酸類;セチルアルコ−ル、ステアリルアルコ−ル、イソステアリルアルコ−ル、ベヘニルアルコ−ル、オクチルドデカノ−ル、ミリスチルアルコ−ル、セトステアリルアルコ−ル等の高級アルコール等;イソオクタン酸セチル、ミリスチン酸イソプロピル、イソステアリン酸ヘキシルデシル、アジピン酸ジイソプロピル、セバチン酸ジ−2−エチルヘキシル、乳酸セチル、リンゴ酸ジイソステアリル、ジ−2−エチルヘキサン酸エチレングリコ−ル、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、ジ−2−ヘプチルウンデカン酸グリセリン、トリ−2−エチルヘキサン酸グリセリン、トリ−2−エチルヘキサン酸トリメチロ−ルプロパン、トリイソステアリン酸トリメチロ−ルプロパン、テトラ−2−エチルヘキサン酸ペンタンエリトリット等の合成エステル油類;ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、ジフェニルポリシロキサン等の鎖状ポリシロキサン;オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサンシロキサン等の環状ポリシロキサン;アミノ変性ポリシロキサン、ポリエ−テル変性ポリシロキサン、アルキル変性ポリシロキサン、フッ素変性ポリシロキサン等の変性ポリシロキサン等のシリコーン油等の油剤類;ラウリル硫酸カリウム、アルキル硫酸トリエタノ−ルアミンエ−テル等のアニオン界面活性剤類;塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ベンザルコニウム、ラウリルアミンオキサイド等のカチオン界面活性剤類;イミダゾリン系両性界面活性剤(2−ココイル−2−イミダゾリニウムヒドロキサイド−1−カルボキシエチロキシ2ナトリウム塩等)、ベタイン系界面活性剤(アルキルベタイン、アミドベタイン、スルホベタイン等)、アシルメチルタウリン等の両性界面活性剤類;ソルビタン脂肪酸エステル類(ソルビタンモノステアレ−ト、セスキオレイン酸ソルビタン等)、グリセリン脂肪酸類(モノステアリン酸グリセリン等)、プロピレングリコール脂肪酸エステル類(モノステアリン酸プロピレングリコ−ル等)、硬化ヒマシ油誘導体、グリセリンアルキルエ−テル、POEソルビタン脂肪酸エステル類(POEソルビタンモノオレエ−ト、モノステアリン酸ポリオキエチレンソルビタン等)、POEソルビット脂肪酸エステル類(POE−ソルビットモノラウレ−ト等)、POEグリセリン脂肪酸エステル類(POE−グリセリンモノイソステアレ−ト等)、POE脂肪酸エステル類(ポリエチレングリコ−ルモノオレ−ト、POEジステアレ−ト等)、POEアルキルエ−テル類(POE2−オクチルドデシルエ−テル等)、POEアルキルフェニルエ−テル類(POEノニルフェニルエ−テル等)、プルロニック型類、POE・POPアルキルエ−テル類(POE・POP2−デシルテトラデシルエ−テル等)、テトロニック類、POEヒマシ油・硬化ヒマシ油誘導体(POEヒマシ油、POE硬化ヒマシ油等)、ショ糖脂肪酸エステル、アルキルグルコシド等の非イオン界面活性剤類;ポリエチレングリコ−ル、グリセリン、1,3−ブチレングリコ−ル、エリスリト−ル、ソルビト−ル、キシリト−ル、マルチト−ル、プロピレングリコ−ル、ジプロピレングリコ−ル、ジグリセリン、イソプレングリコ−ル、1,2−ペンタンジオ−ル、2,4−ヘキサンジオ−ル、1,2−ヘキサンジオ−ル、1,2−オクタンジオ−ル等の多価アルコ−ル類;ピロリドンカルボン酸ナトリウム、乳酸、乳酸ナトリウム等の保湿成分類;表面を処理されていても良い、マイカ、タルク、カオリン、合成雲母、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、無水ケイ酸(シリカ)、酸化アルミニウム、硫酸バリウム等の粉体類、;表面を処理されていても良い、ベンガラ、黄酸化鉄、黒酸化鉄、酸化コバルト、群青、紺青、酸化チタン、酸化亜鉛の無機顔料類;表面を処理されていても良い、雲母チタン、魚燐箔、オキシ塩化ビスマス等のパ−ル剤類;レ−キ化されていても良い赤色202号、赤色228号、赤色226号、黄色4号、青色404号、黄色5号、赤色505号、赤色230号、赤色223号、橙色201号、赤色213号、黄色204号、黄色203号、青色1号、緑色201号、紫色201号、赤色204号等の有機色素類;ポリエチレン末、ポリメタクリル酸メチル、ナイロン粉末、オルガノポリシロキサンエラストマ−等の有機粉体類;パラアミノ安息香酸系紫外線吸収剤;アントラニル酸系紫外線吸収剤;サリチル酸系紫外線吸収剤、;桂皮酸系紫外線吸収剤、;ベンゾフェノン系紫外線吸収剤;糖系紫外線吸収剤;2−(2’−ヒドロキシ−5’−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾ−ル、4−メトキシ−4’−t−ブチルジベンゾイルメタン等の紫外線吸収剤類;エタノ−ル、イソプロパノ−ル等の低級アルコール類;ビタミンA又はその誘導体、ビタミンB6塩酸塩、ビタミンB6トリパルミテ−ト、ビタミンB6ジオクタノエ−ト、ビタミンB2又はその誘導体、ビタミンB12、ビタミンB15又はその誘導体等のビタミンB類;α−トコフェロ−ル、β−トコフェロ−ル、γ−トコフェロ−ル、ビタミンEアセテ−ト等のビタミンE類、ビタミンD類、ビタミンH、パントテン酸、パンテチン、ピロロキノリンキノン等のビタミン類等;フェノキシエタノ−ル等の抗菌剤;ヘクトライト等の粘土鉱物などが好ましく例示できる。
【0024】
以下に、実施例を挙げて更に詳細に本発明について、説明を加える。
【実施例1】
【0025】
下記に示す処方に従って、本発明の化粧料を製造した。即ち、イ、ロ、ハの成分をそれぞれ80℃に加温し、イに攪拌下徐々にロを加えて、一次乳化して水中油乳化物を形成させ、これに更にハの成分を攪拌下加えて、二次乳化をして水中油中水・水中油混在の分散滴多様化タイプの複合乳化剤形とした。これを攪拌冷却し、本発明の化粧料である化粧料1を得た。同様に操作して、YAC化合物を水に置換した比較例1、センブリ抽出物1を水に置換した比較例2、YAC化合物とセンブリ抽出物1とを水に置換した比較例3も同様に作成した。
【0026】
【表1】



(製法)イ、ロを80℃で加熱溶解させ、非溶解分を良く攪拌して均一に為し、攪拌下イにロを徐々に加えて、乳化を行い、中間油中水乳液1を得た。
【0027】
<評価1>
化粧料1、比較例1〜3について、くすみ改善効果として、目の下のクマの改善作用を検討した。即ち、パネラー1群4名、計16名を集め、標準白色板で調整した色彩色差計(「ミノルタCR400」)で、頬部と白色板との色差、目の下のクマの部分と白色板との色差を求め、これより頬部とクマの色差を算出した。その後に、1日朝晩2回サンプルをクマの部分に適量投与してもらい、この作業を6週間続け、しかる後に再度頬部とクマとの色差を計測、算出した。結果を表2に示す。これより、本発明の化粧料はクマなどのくすみの改善に有用であることがわかる。
【0028】
【表2】

【0029】
<評価2>
1群4名のパネラーで半顔を化粧料1で、もう半顔を比較例3で1日2回、20日間処置してもらい、しかる後に、比較例3に対して化粧料1がくすみの改善に優れるか否かを応えてもらった。結果は4名とも化粧料1の方が優れるとの回答であり、評価1の評価が裏付けられた。
【実施例2】
【0030】
化粧料1と同様に操作して、化粧料2を製造した。このものを比較例3と、評価2の方法で評価したところ、4名中3名は化粧料2の方が優れると回答したが、1名は差異が不明瞭と回答した。センブリ抽出物のグルタチオン産生促進作用がくすみ改善に係わっており、グルタチオン産生促進値が1.4以上であることが好ましいことが判る。
【0031】
【表3】



(製法)イ、ロを80℃で加熱溶解させ、非溶解分を良く攪拌して均一に為し、攪拌下イにロを徐々に加えて、乳化を行い、中間油中水乳液2を得た。
【実施例3】
【0032】
実施例1と同様に、水中油単純乳化剤形の本発明の化粧料3を作成した。このものを比較例3と、評価2の方法で評価したところ、4名中3名は化粧料3の方が優れると回答したが、1名は差異が不明瞭と回答した。複合乳化剤形における、油中水乳化滴への配合効果が確認された。
【0033】
【表4】

【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明は化粧料などの皮膚外用剤に応用できる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】YAC化合物のNMRを示す図である。
【図2】YAC化合物のNMRを示す図である。
【図3】YAC化合物のHPLCチャートを示す図である。
【図4】YAC化合物の紫外吸収スペクトルを示す図である。
【図5】YACの化合物の質量分析スペクトルを示す図である。
【図6】YAC化合物のグルコース−牛血清アルブミンAGEs分解作用の測定結果を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1)リンドウ科センブリ属の植物体の抽出物と、2)次に示す特性を有するYAC化合物及び/又はその塩とを含有することを特徴とする、皮膚外用剤。
<YAC化合物の特性>
(1)λmaxを405〜415nmと、660〜670nmとに有する。
(2)図1に示す1H−NMRスペクトルを有する。
(3)図2に示す13C−NMRスペクトルを有する。
(4)以下の条件でのHPLC分析において、15分前後にシングルピークを示す。
移動相:90%アセトニトリル
カラム:ODS4.6×250mm
流速:1ml/min.
温度:40℃
検知:紫外部210nm
(5)化学組成式はC3440であり、質量分析スペクトルは593(M+H)
【請求項2】
リンドウ科センブリ属の植物体の抽出物は、該抽出物の20μg/mLの濃度での存在下、ヒト肝ガン由来細胞株HepG2を培養した場合において、非存在下に比して少なくと40%グルタチオンの産生量を増加させる作用を有することを特徴とする、請求項1に記載の皮膚外用剤。
【請求項3】
複合乳化剤形であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の皮膚外用剤。
【請求項4】
前記複合乳化剤形は、水相を連続相とし、該連続相中に油滴及び油中水乳化滴が分散した形態の剤形であることを特徴とする、請求項3に記載の皮膚外用剤。
【請求項5】
1)リンドウ科センブリ属の植物体の抽出物と、2)次に示す特性を有するYAC化合物及び/又はその塩とを、ともに水相中に分散した油中水乳化滴の油相中に含有することを特徴とする、請求項4に記載の皮膚外用剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−138155(P2010−138155A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−318858(P2008−318858)
【出願日】平成20年12月15日(2008.12.15)
【出願人】(000113470)ポーラ化成工業株式会社 (717)
【Fターム(参考)】