くも膜下腔を進行するための方法及び装置
本発明は、脊椎動物のくも膜下腔を進行するための方法及び装置に関し、装置を挿入位置から脊髄くも膜下腔へ経皮的に挿入する工程が含まれる。脊髄及び脳並びにそれらの周辺部の領域を含む、くも膜下腔又は頭蓋内腔における所望の位置に到達するために、脊髄くも膜下腔を進行する工程が開示される。所望の位置に到達すると、生理学的に変化させるために、その所望の位置を冷却又は加熱する方法及び装置が提案される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外科的方法及び医療装置に関する。より詳細には、本発明は、くも膜下腔及び頭蓋内腔を含む、くも膜下腔における進行及び処置に有用な方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
20世紀において、脳神経外科は、顕微外科的技術の導入、動脈瘤クリップ等の新しい器具の開発、及び手術への新しい取り組み方を通して発展してきた。外科医は、頭蓋骨を形成する骨の一部を取り除き(頭骨切開)、脳の深部の組織を手術し、同時にその手法に関する問題を最小限にとどめる高度な装置を開発してきた。頭蓋内及び脊髄くも膜下腔に対する外科的な取り組み方には、従来、皮膚の切開、頭蓋骨又は脊骨を覆う骨質の被覆の切開、骨の除去、及び神経組織へ到達するための髄膜からの切開が含まれていた。画像診断法が診断的評価に組み込まれたが、20世紀末になって、コンピュータ断層撮影や血管造影や、最も新しいところでは磁気共鳴(MR)走査法を実際の外科的治療に組み入れるための重要な試みが行われた。
【0003】
残念ながら、開頭術には、現在の画像診断法への適用性に対して限度があった。つまり、外科医は、患者の頭部付近にいて、同時に、頭骨切開により脳を手術し、無菌状態を維持し、患者が中で静止していなければならない大型の走査装置を使って脳の走査を行うことができないからである。画像を得るための装置と頭部を手術する方法との間には矛盾があるため、現在利用可能な画像装置を使用して、そのような手術を適宜行うための能力には限界がある。
【0004】
他の問題は、脳の表面へは、従来の開頭術により到達できるが、より深部の組織への接近は、益々困難になっていることである。頭骨切開の後で、脳内や脳周辺の異なる領域へ容易に到達できるように、脳は収縮されることがあり、そのために脳組織を移動させる必要が生じる場合がある。これらの収縮や移動により、無菌状態を維持し、組織への直接の損傷を回避する上での問題や、組織に損傷を与えないで定位置に戻すための問題が生じる。
【0005】
過去20年間に、血管内神経外科の発達により、動脈内で使用するための特殊な装置が考案されてきた。これらの装置には、カテーテルやガイドワイヤに限らず、カテーテルを介して挿入される塞栓物質が含まれ、それにより、塞栓形成後に頭骨切開を介して行われる治療を向上させることができる。幾つかの症例においては、頭骨切開の必要性が排除されている。しかしながら、脳への接近は、血管内から行われるものに限られている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記した懸案を鑑みてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、医師に治療用及び/又は診断用の手段を提供するための異なる方法及び装置に関する。くも膜下腔内の進行及びカテーテル法が提案され、そのための装置及び方法が開示される。くも膜下腔は、脊髄や脳脊髄液(CSF)の主要部分を収容するための室である。脳脊髄液は、脳室や脳洞や脊髄を満たして包囲する流体であり、潤滑剤及び衝撃に対する機械的な防壁として動作する。脊髄や脳(頭蓋内腔)の領域への接近は、くも膜下腔に到達することにより行われる。接近方法には、診断及び治療目的により使用されるカテーテル法が含まれる。幾つかの実施例には、カテーテル法が含まれ、それにより脊柱の選択された箇所においてカテーテルを経皮的に挿入してくも膜下腔へ達する。他の実施例には、くも膜下腔を通過した後で、カテーテルを頭蓋内腔及び脳葉間へ挿入する工程が含まれる。さらに、幾つかの実施例は、くも膜下腔への到達を確実にして、カテーテルの挿入又は置換を容易にするために、イントロデューサシースの使用を必要とする。そのようなカテーテル法により所望の箇所に到達すると、治療用及び診断用の方法及び装置が提案される。
【0008】
幾つかの実施例において、くも膜下腔に対するカテーテル法により到達した領域(脊柱や脳の領域を含む)に輸液(流体の注入)を行うための方法及び装置が提案される。幾つかの実施例において、輸液には、脳葉、脊柱における領域、くも膜下腔及び/又は頭蓋内腔から接近可能な他の特徴を視覚化するための補助を行う物質が含まれてもよい。他の実施例において、流体には、治療薬、薬剤、抗生物質、治療及び/又は診断用に使用される他の物質が含まれてもよい。
【0009】
他の実施例では、輸液により、脳脊髄液又は近接する組織の通常即ち実際の温度とは異なる温度において流体を提供してもよい。一実施例では、局所的に低体温状態を誘発させるために、脳脊髄液において通常発生するよりも低い温度の流体が、脳や脊柱の領域に提供される。外科治療の条件を改善する治療手段は、局所的な低体温状態を誘発させる工程を含む。冷水中に沈んで溺れかけた犠牲者が、長時間に渡って脳組織に酸素が供給されなくても、ほとんどの脳機能を取り戻して、奇跡的に回復することは広く知られている。その理由の一つとしては、低体温状態により細胞の代謝率が低下して、酸素不足により死滅する細胞が生き残ることができるためである。局所的な低体温状態を誘発させる工程は、血液の供給を短時間制限する手術において、組織を保護するための有用な方法である。また、致命的な傷を負った患者を低体温状態に保つことにより、医師は時間をかけて傷の診断や治療を行うことができる。他の実施例において、脳脊髄液の通常の温度よりも高い温度の流体を注入することにより、局所的な細胞の代謝や成長を促進させ、或いは、他の診断や治療行為を容易にすることも可能である。他の実施例においては、流体を第1の位置から排出して、脳脊髄液をろ過し、脳脊髄液を第2の位置へ注入することにより、脳脊髄液から物質をろ過することを必要とする。
【0010】
幾つかの実施例に関しては、注入された流体は、実際に、くも膜下腔の他の領域から排出される脳脊髄液である。一実施例においては、脳脊髄液は、カテーテルに沿ってその基端側の位置から排出されて、その先端側の位置へ移動させられる。他の実施例においては、第1のカテーテルは脳脊髄液の排出に使用され、第2のカテーテルは脳脊髄液の注入に使用される。さらに別の実施例では、脳脊髄液以外の流体を使って注入される。また、別の実施例では、くも膜下腔或いは頭蓋内腔へ挿入されるカテーテルを使用して、脳脊髄液を排出して脳の一領域の圧力を調節し、植込み可能な装置を備えて、カテーテルが抜去された後の脳脊髄液の流動を可能にする。
【0011】
特定の実施例では、カテーテルの内部に熱伝達装置を構成することにより、熱の伝達を患者の体内で発生させるためのカテーテル及び方法を含む。幾つかの実施例において、カテーテルはくも膜下腔へ挿入され、カテーテルはくも膜下腔内に流体を移動させるための装置を備える。他の実施例において、カテーテルにより移動される流体は、くも膜下腔から取り除かれて、再度注入されるか、或いは、他の流体と置換される。
【0012】
幾つかの実施例においては、カテーテルが脊髄くも膜下腔へ挿入され、同カテーテルは、その先端部において配置される流体移動装置を備える。流体移動装置は、折り畳み可能な部材、回転可能な部材、或いは、様々な実施例におけるバルーンを備えることも可能である。別の実施例においては、カテーテルは、流体の移動方向を制御するためのバルブを備えることも可能である。幾つかの実施例において、カテーテルは内ルーメンを有し、同ルーメンの一部の断面積は、静電気、静磁気、弾性、或いは形状記憶を作用させることにより変更可能であり、その作用により流体を移動させるための駆動力が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下の詳細な説明は、図面を参照して読まれるべきであり、それぞれの図面において、類似する要素には同じ番号が付されている。
【0014】
図面は、必ずしも寸法比率が等しいものではなく、例示する実施例を表すためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。
本明細書においては、「約」という語は、明示的に示唆されているか否かにかかわらず、全ての数値に適用されるものとする。「約」という語は、通常、記載された数値と同等であると当業者が判断するであろう数値の範囲(すなわち、同一の機能または結果を生ずる数値の範囲)を指す。多くの場合において、「約」という語は、最も近い有効数字の周囲の数字を含む。
【0015】
本発明の方法は、脊髄くも膜下腔を含む、くも膜下腔を進行する工程に関する。幾つかの実施例においては、頭蓋内腔を進行する工程も含まれる。本発明の方法により、くも膜下腔を介して頭蓋内への接近が容易となる。例えば、幾つかの実施例において、第1の装置がくも膜下腔へ挿入され、第1の装置内に位置する1つ以上の通路から挿入される他の装置により頭蓋内への接近が容易になる。本明細書において、「頭蓋内への接近(intracranial access)」とは、大後頭孔の上部にある頭部内の腔に接近することである。加えて、頭蓋内のくも膜下腔は、大後頭孔の上部に位置するくも膜下腔であり、脊髄くも膜下腔は、大後頭孔の下方に位置するくも膜下腔であるが、これらの腔は連続している。
【0016】
本発明の方法は、頭骨を切開したり頭骨を取り除く必要のない、脳や脊椎の手術を行うための新しい到達手段を提供し、これらの手術の侵襲的な要素を減少させるものである。本発明の方法は、施術者が、患者の頭部から離れた位置に立って行うことができる。その到達手段により、装置は脊髄くも膜下腔へ経皮的に挿入されるが、幾つかの実施例においては、例えば、腰椎部、胸部、或いは頸部において、標準的な方法により脊髄くも膜下腔を穿刺して行われる。他のカテーテル治療において従来より使用される技術が、くも膜下腔や、幾つかの実施例においては頭蓋内腔を進行するために使用されてもよい。このような方法に関する多くの実施例では、開頭術と比較して、脳を感染物質に露出させることに伴う問題をほとんど無くし、また、脳の収縮や移動を行うことなく多くの組織へ進行して接近できる機会が提供される。
【0017】
以下の説明の多くは人体の構造組織に関するものであるが、本発明は他の様々な動物にも実施可能である。例えば、人間と類似する骨格を有する脊椎動物は、本明細書において開示される方法や装置に適している。一例としては、くも膜下腔を構成する骨格を有する動物のくも膜下腔へ挿入するための方法や装置の使用に関する。よって、幾つかの実施例においては、ほ乳類、鳥類、は虫類、魚類、又は両生類を含む他の脊椎動物のくも膜下腔に関する。幾つかの方法や装置は、例えば、獣医学治療において有用である。
【0018】
図1は、患者の中枢神経系の特定の部位を示しており、それらの部位へ、本発明の技術による幾つかの実施例を使用して進行している。具体的には、図1は、硬膜10、脊髄12、くも膜下腔14、腰椎Ll,L2,L3,L4,L5、仙骨16、及び小脳20を含む脳18を示す。また、図1は、シース24として、皮膚22に装着するのに適した医療装置を示し、同医療装置は、長尺状部材26、第1端部28、第2端部30、皮膚装着装置32、第1端部28に連結されるバルブ装置36、及び流出ライン38を備える。皮膚装着装置32は、皮膚22に装着するために形成された可撓性を有する皮膚装着フラップ34を有する。さらに、皮膚装着装置32は、長尺状部材26に沿った連結位置において同長尺状部材に連結されるべく形成される。図1に示されるように、長尺状部材26に連結される皮膚装着装置32及びバルブ装置36は、それらの間に可撓性を有する部材40を構成する。
【0019】
図1に示されるように、長尺状部材26は、ガイドワイヤを摺動可能に収容するように寸法が設定された第1の通路を有しており、カテーテルを含む他の装置を十分に収容できるように寸法が設定されてもよい。長尺状部材26は、図示されるように、くも膜下腔内へ所望の距離にわたって進められ、幾つかの実施例においては、その距離は約10cmであるが、その他の距離が選択されてもよい。図1において、第1の通路を有する他の装置がカテーテル42として示され、長尺状部材26の第1の通路を介して挿入位置50において経皮的にくも膜下腔14へ挿入されている。ガイドワイヤ44は、図示されるように、カテーテル42及び長尺状部材26の第1の通路を介して、挿入位置50において経皮的にくも膜下腔14へ挿入されている。
【0020】
挿入位置50において経皮的にイントロデューサシース24をくも膜下腔14に挿入する前に、施術者は、シース24の挿入を容易にするために、ガイドワイヤを皮膚22および硬膜10に貫通させてくも膜下腔14に向かわせてもよい。このガイドワイヤの挿入は、例えば、腰椎における任意の椎骨間において針を皮膚および硬膜に貫通させることにより行うことができる。近接する椎骨間の空間は、要素46と称されるLl及びL2間空等の間空として知られている。
【0021】
図1は、腰部において、くも膜下腔(具体的には脊髄くも膜下腔)への挿入を示しているが、挿入位置は、脊椎の頸部や胸部を含む他の部位において形成されてもよい。よって、カテーテル、シース、及びガイドワイヤ等の装置は、腰椎、頸部及び胸部の間空を含む任意の間空を通過してもよい。針が所定の位置に配置されると、針内の管腔を介してガイドワイヤを脊髄くも膜下腔に挿入することができる。次に、ガイドワイヤは、上方に向けられて、患者の頭部に向かって脊髄くも膜下腔内を進められ所望の位置に達するが、他の実施例においては、ガイドワイヤは、脊椎の下部方向へ向けられる。ガイドワイヤの患者体内での位置(くも膜下腔の様々な領域内を含む)は、任意の好適な画像診断法、例えば磁気共鳴映像法、透視法、内視鏡検査、コンピュータ断層撮影、赤外線画像、超音波検査法、X線造影、またはこれらの任意の組み合わせを用いて観察することができる。さらに、これらの画像診断法は、他の医療装置の位置を観察するために、治療全体を通して使用することも可能である。
【0022】
ガイドワイヤ44をくも膜下腔へ挿入した後で、施術者は、ダイレータ等の目的に合った1種類以上の医療装置を使用して、ガイドワイヤ44により形成された経路を広げることができる。これは、針を抜去した後に行うこともできる。あるいは、同じく拡張目的で、かつ、シースの通路内に挿入される第2の装置が容易に頭蓋内へ到達できるように、好適に構成されたシースにガイドワイヤ上を進ませてもよい。施術者がダイレータを使用する場合には、シース24等の医療装置にダイレータ上方を通過させてもよく、その後、ダイレータをシースの通路を介して抜去してもよい。
【0023】
シースを配置後に、血管造影等の他のカテーテル処置中に用いられた技術は、くも膜下腔や頭蓋内腔を含むくも膜下腔を進行するために用いられてもよい。この点に関して、シースを介してくも膜下腔へ他のガイドワイヤを挿入することもでき、チップは脊髄に対して前方又は後方へ向けられる。次に、カテーテル等の医療装置は、ガイドワイヤ上に挿入されることにより、頭蓋内への接近が容易になる。
【0024】
上述したような進行は、異なる医療装置をくも膜下腔へ挿入し、時には患者の頭部に向けてくも膜下腔内を進めるための1つ以上の工程を含んでおり、ロボット装置を全体或いは部分的に使用して行うことも可能である。さらに、以下に述べる本発明の方法の代表的な応用例は、ロボット装置を全体或いは部分的に使用して行われてもよい。このようにロボット装置の使用に対して考えられる利点は、例えば、神経組織を介して進行することに関連している。脳を取り巻く軟膜は、貫入に対して防壁を形成するが、一旦軟膜が穿刺されると、脳内に進行することに対する大脳組織からの抵抗が実質的になくなる。ロボット装置を使用して大脳組織への進行を補助することは、非常に効果的であり、カテーテルやガイドワイヤの動きがロボット装置により制御されて、画像診断法により観察できる。
【0025】
図2Aに関して、中枢神経系の一部の拡大図が示され、シース24は、くも膜下腔14内に配置される。図2Aに示されるように、くも膜下腔14は脊髄くも膜下腔である。脊髄くも膜下腔は、脊椎により形成される骨腔内に位置される。図示されるように、シース24は、挿入位置50において硬膜10から経皮的に脊髄くも膜下腔へ挿入され、患者の頭部に向けて脊髄くも膜下腔を進められて、カテーテル24及びガイドワイヤ44による頭蓋内への到達を容易にする。幾つかの実施例において、シース24は、くも膜下腔内へ約10cm進められるが、他の実施例において、それよりも長い距離や短い距離を進められる。皮膚装着装置32は、シース24の長尺状部材26に連結されており、可撓性を有する皮膚装着フラップ34において、開口部56を介して縫合糸54により皮膚に装着されてもよい。固定機構52は、図2Aにおいて示されるように、長尺状部材26に沿って皮膚装着装置32の位置を固定するために使用される。皮膚装着装置32を長尺状部材26に連結する位置は異なってもよく、それにより固定された皮膚装着装置を備えるシースと比較して、シース24の融通性が増す。さらに、皮膚装着装置32をバルブ装置36から離間させることにより、可撓性を有する部材部分40が、皮膚装着装置32とバルブ装置36との間において構成される。
【0026】
可撓性を有する部材部分40により、施術者は、シース24が皮膚22に装着される位置と、シース24が皮膚22へ進入する位置の両方から離れた位置において、シース24の1つ以上の通路から装置を挿入することができる。施術中の患者の動きは、可撓性を有する部材部分40により吸収される。また、可撓性を有する部材部分40の長さは調整できるため、本発明の方法の異なる工程を行う時に、施術者は患者から離れた位置につくことができるため、異なる装置の位置を磁気共鳴映像法(MRI)等の画像診断法により監視することができる。したがって、好適な長さの可撓性を有する部材部分40により、患者がMRスキャナ内に位置する間は、接近できない患者の周囲から長尺状部材26を延長させることができる。
【0027】
本発明の可撓性を有する部材部分の長さ、及び、皮膚装着装置と長尺状部材のうちの一つの第1端部との間の距離(その距離は、バルブ装置の長さに基づく可撓性を有する部材部分の長さとは異なる)は、特定の作業に適した距離であってもよい。幾つかの実施例において、長さは1cmから70cmまでの範囲が可能であるが、この範囲以外の長さも使用できる。米国特許出願第09/905670号においても、長さに関する幾つかの例が記載されており、同特許文献に記載された内容は本願においても開示されたものとする。可撓性を有する部材部分40の長さは、ロボット装置においてシース24を使用できるように調節されてもよい。一実施例においては、可撓性を有する部材部分40に装着且つ同部材部分を効果的に延ばすための他の可撓性を有する部材により、医師が特定の患者や処置に合わせることができる。
【0028】
図2Bは、シース24を示しており、シース24は、挿入位置50において、経皮的にくも膜下腔14(図示されているのは脊髄くも膜下腔)へ挿入されている。挿入位置50から、シース24は、点線により示されるように第2の位置51へ進められる。カテーテルやイントロデューサシースを備える装置は、挿入位置から好適な距離を進められる。幾つかの実施例において、シースは、脊髄くも膜下腔へ10cmを越える距離を進められるが、他の実施例には、それ以外の距離を進める工程が含まれる。米国特許出願第09/905670号においても、距離に関する幾つかの例が記載されており、同特許文献に記載された内容は本願においても開示されたものとする。
【0029】
図2Bは、図2Aに類似する中枢神経系の一部の拡大図を示す。特に、図2Bは、シース24を示しており、シース24は、挿入位置50において、経皮的にくも膜下腔14へ挿入されている。挿入位置50から、シース24は、第2の位置51までの距離を進められる。この距離は、図2Bにおいて符号D1において示され、シース24が進行する通路に沿ったものである。D1は、挿入位置50を越えて進められたシース24の長さを測定することにより決定される。また、この距離は、符号D2において示され、これは挿入位置50と第2の位置51との間の直線距離を示す。さらに、この距離は、符号D3として示され、シース24が、頭部へ向かって挿入位置50から第2の位置51まで進んだ絶対距離を示す。D3は、挿入位置50と交差して長手方向を向く患者にほぼ直交するように配向される面と、第2の位置51と交差して長手方向を向く患者にほぼ直交するように配向される面との間の距離を測定することにより決定される。距離D1,D2及びD3は、本発明の実施例において、貫入する距離や進行する距離を測定するために使用できる多数の方法の例として示される。本明細書においては、貫入や進行による距離は、D1,D2又はD3、或いは他の適切な方法により測定されてもよい。
【0030】
図3は、シース24の平面図である。図3の一部破断面において示されるように、長尺状部材26は第1の通路58を有する。バルブ装置36は、長尺状部材26の第1端部28に連結されて、メンブレン60を構成する。メンブレン60は、第1の通路58に広がるため、他の装置が通路58内を進むことができるが、流体が第1端部28を通ってシース24から流れ出るのを防止する。図示されるように、メンブレン60は、第1の通路58内の位置において第1の通路58に広がるが、メンブレン60は第1の通路58の外側に配置されて同じ機能を果たすことが可能であることは当業者には理解されるであろう。例えば、図示されないが、メンブレン60は、2つの要素の間に配置されるゴム製のガスケットとして形成されてもよく、それらの要素は互いにはめ込まれて、メンブレン60内の開口部を変化させることにより、調節可能な開口バルブを構成する。バルブ装置36は、ネジ接続、摩擦装着、連動部品、留め具、接着剤(グルー)、一体構造、或いは他の装着装置や装着方法により、長尺状部材26に連結されてもよい。加えて、バルブ装置36は、流出ライン38に装着できるように構成されてもよい。これは、どのような方法において行われてもよく、例えば、バルブ装置36の一部として形成され、流出ライン38が連結されるバルブ装置36から離間して延びる突起を使用することにより行われてもよい。また、バルブ装置36は、流出ライン38と第1の通路58とが連通されるように形成されてもよい。これに代えて、バルブ装置36は、流出ライン38と長尺状部材26内の第1の通路58以外の通路との間が連通できるように形成されてもよい。さらに、バルブ装置36は、ガイドワイヤ、シース、カテーテル及びイントロデューサ等の他の医療装置に装着するためのハブ62を備えるように形成されてもよい。ハブ62は、例えば、オス型やメス型のルアロック部品の形状であってもよい。
【0031】
図面に示される実施例においては、一個の皮膚装着装置32だけが示されるが、他の実施例においては、2個以上の装置が使用されてもよい。各皮膚装着装置は、長尺状部材26に連結されてもよい。皮膚装着装置の一組合せにおいては、一方の皮膚装着装置を永続的に長尺状部材26に装着し、その皮膚装着装置と長尺状部材26の第端部に連結されたバルブ装置との間に他方の皮膚装着装置を連結することにより、第2の皮膚装着装置の連結位置が変更可能となる。さらに、各皮膚装着装置は、患者の皮膚に装着するように形成された可撓性を備える皮膚装着フラップを有してもよい。この点に関して、皮膚装着フラップ34を患者の皮膚に装着するために、開口部56が同フラップにおいて示されているが、温度感性接着剤、再配置可能な接着剤、クリップ、テープ、グルー等の、フラップ34を形成するための任意の好適な方法が使用できることは理解されよう。
【0032】
図4乃至図9は、皮膚装着装置32の異なる実施例を示す。図4において、皮膚装着装置32は、連結位置において長尺状部材26に連結されるように形成され、可撓性を備える皮膚装着フラップ34を備えており、長尺状部材26に連結されることにより、長尺状部材26に永続的に装着される。これは、接着や一体構造等により、可撓性を備える皮膚装着フラップ34を長尺状部材26に固定して行うことが可能である。
【0033】
他の幾つかの皮膚装着装置及び以下に述べるイントロデューサシースの例は、2003年12月23日付けで出願された米国特許出願第10/328349号(発明の名称:イントロデューサシース(INTRODUCER SHEATH)に記載されており、同特許文献に記載された内容は本願においても開示されたものとする。
【0034】
図5は、長尺状部材26に連結された皮膚装着装置32を示し、長尺状部材26に対して皮膚装着装置32が連結される位置が、皮膚装着装置32が患者の皮膚に装着される前或いは装着された後でも変更できるように連結される。例示される実施例において、皮膚装着装置32は、可撓性を有する皮膚装着フラップ34、第2フラップ66、及び固定機構52を備えており、固定機構52は係合されると、長尺状部材26に対してフラップを締め付ける。固定機構は、クリップ(例えば、小型のワニ口クリップ)、留め具、スナップ式のフラップ、糸、フラップ34,66を長尺状部材26の周囲に一時的に固定する他の任意の好適な手段の形態であってもよく、それにより固定機構52の固定が解除されるまで長尺状部材26がフラップから移動するのを防止する。スポンジ、ゼラチン様物質、或いは閉じ込めた空気等の詰め物材料が、フラップ66,34及び長尺状部材26により構成される空間68に配置されることにより、患者に対する皮膚装着装置32の装着をより快適なものにする。
【0035】
図6乃至図8は、1つの固定機構52のみを使用して長尺状部材26に連結された皮膚装着装置32を示す。加えて、図6の皮膚装着装置32は、他の図面において示される開口部56の代わりに、接着剤70を備えており、これは、可撓性を有する皮膚装着フラップ34を患者の皮膚に装着する際に有効である。図7において、可撓性を有する皮膚装着フラップ34は、詰め物材料72(本発明の任意の可撓性を有する皮膚装着フラップ同様に)を収容しており、患者の快適な使用性を向上させる。図6及び図7において、可撓性を有する皮膚装着フラップ34は、長尺状部材26と固定機構52との間に配置される。一方、図8においては、固定機構52は長尺状部材26に直接接している。図8に示される実施例において、可撓性を有する皮膚装着フラップ34は、グルーや一体構成等の任意の好適な手段を使用して固定機構52に固定されてもよい。図4乃至図9において示されていないが、可撓性を有する皮膚装着フラップ34は、長尺状部材26上に折り畳まれたり、スナップ式に固定されるフラップの形状に形成され、スナップを係合させることにより、固定機構52として機能することは理解されるべきである。
【0036】
図9において、示される皮膚装着装置32の実施例では、可撓性を有する皮膚装着フラップ34内に詰め物材料72を備え、空間68においても同様に詰め物材料72を備える。図5及び図9に示されるフラップ66,34は、任意の好適な方法を使用して互いに装着されてもよい。
【0037】
図10、図11及び図12は、シース24の長尺状部材26の異なる実施例を示す。これらの図面は、長尺状部材26及びシース24について説明するものであるが、これらの実施例は、図1のカテーテル42等の装置にも等しく適用でき、図10乃至図12に説明する通路を介して挿入されてもよい。
【0038】
図10は、長尺状部材26の断面を示し、非円形をなす所定の断面の形状を有することが示されている。長尺状部材26がその長さの任意の部分に沿ってそのような形状を有するため、くも膜下腔内の特定の領域(一方の領域において他方の領域よりも広い)を進むのに適しており、或いは屈曲部分や湾曲部分等を通過するのに適している。長尺状部材に沿った特定の位置における好適な断面形状には、楕円形や8の字状、必要に応じて他の形状も含まれる。さらに、本発明の長尺状部材、及び以下に述べる副長尺状部材は、その長さに沿って変化する断面形状を有してもよい。
【0039】
図11は、長尺状部材26の他の断面を示し、第1通路58及び第2通路74を備える。長尺状部材26は、本発明の方法や装置に適合する他の通路を有することが可能である。さらに、本明細書(特許請求の範囲を含む)において記載される通路は、特定の装置(例えば、図1に示すシース24やカテーテル42)の端部と一致する開口部を貫通して延びてもよいが、他の実施例において、開口部は本発明の医療装置の端部以外の位置に配置されてもよい。よって、一端又は両端が閉鎖されたシースやカテーテルでも、その内部に通路を有することは可能である。また、図面において二重通路を有する幾つかのカテーテルは、並列形状をなすように示されるが、同軸形状であってもよく、同軸形状をなすカテーテルは、並列形状と等しく置換できることが多い。
【0040】
図12に関して、2つの副長尺状部材76,78を有する長尺状部材26が示され、これら副長尺状部材は、連結具80を用いて連結されて、施術者が管材の部品をスナップ式に連結できるようにする。副長尺状部材76,78を連結する他の装置が使用されてもよく、例えば、副長尺状部材と一体的に形成される連動部品、副長尺状部材に装着される連動部品、副長尺状部材を固定するが再配置や再固定を可能にする接着剤、副長尺状部材の溶融、グルー等が使用されもよい。これに代えて、副長尺状部材76,78は結合されてもよく、製造中に接合することにより、それらの断面形状が、副長尺状部材76,78間に配置されている連結器80を除いて、図12に示す形状と類似する。副長尺状部材76は第1通路58を有し、副長尺状部材78は第2通路74を有する。図面において例示される多くの実施例は、丸い即ち円形の通路を備えるが、他の実施例において、楕円や多角形を含む他の形状が含まれてもよい。したがって、副長尺状部材76,78は、その長さに沿った任意の位置において、図10に示すような形状を備える断面を有することが可能である。
【0041】
さらに、図13Aに示されるように、シース24が、長尺状部材26を有することができ、長尺状部材26は長さの異なる第1及び第2の副長尺状部材76,78を備える。図示されるように、第1の副長尺状部材76は、第1端部28及び第2端部30を有し、第2の副長尺状部材78は、第1端部82及び第2端部84を有する。また、図13Aに示されるように、バルブ装置36は、皮膚装着装置32のように副長尺状部材76,78に連結される。さらに、端部82は閉鎖されて、第2の副長尺状部材78は、第2の副長尺状部材78の第1端部82において開口部とともに第2通路74を構成する開口部86を有する。
【0042】
図13Hは、図13Aに示されるシース24の副長尺状部材76,78の他の構成を示す。第1の副長尺状部材76は複数の開口部86を有する。第1の副長尺状部材76は、図13Hにおいて、閉鎖された第2端部30を有する。以下に説明するように、流体は1つの通路を介して所望の位置へ注入され、少なくとも一実施例において、他の通路から回収される。図13Hに示されるシース24の形状は、この処置において使用されてもよいが、他のシース形状も使用可能であり、或いは、シースを全く除外することも可能である。
【0043】
図13B乃至図13Gは、副長尺状部材76,78の各第2端部30,84の形状に関する幾つかの実施例を示す。図13Bは、副長尺状部材76の第2端部30は、副長尺状部材78の第2端部84から偏位して配置される。また、図13Bが示すように、副長尺状部材76の第2端部30が、副長尺状部材78へ向かって斜角を付けられ、即ちテーパ状をなし、それによりシース24が意図される部位へ到達する前に他の構造体上で「動かなくなる(hang up)」可能性を減少させる。同様の利点は、図13C,図13D,及び図13Gにおいて示されるシース24の形状を使用することにより(副長尺状部材76,78を介して)得ることも可能である。図13E及び図13Fに示される形状も使用可能である。
【0044】
カテーテルは、その長さに沿って可変剛性を付与する複合の壁構造を有することも可能である。また、カテーテルは、その壁にブレードされた補強材を有することにより、捻れに対してより高い強度と抵抗力を備えることも可能である。カテーテル42やシース24等の本発明の装置は、長さと、それらの長さに沿って変化する剛性とを有し、ブレードされた材料を含む壁を有することも可能である。また、カテーテル42やシース24等の本発明の装置は、屈曲可能であり、屈曲された後に形状を保持することも可能である。
【0045】
シース24やカテーテル42等の本発明の装置のうちの一つの所定の通路の寸法は、所定の用途に合わせて適切に設定されてもよいことは、当業者には理解されるであろう。シース24、特定の長尺状部材26及びカテーテル42等の所定の装置内の通路の直径は、例えば、約0.01cm乃至約0.40cmであるが、幾つかの実施例においては、それ以外の直径を有することも可能である。これらの寸法が、例えば、シース24、長尺状部材26或いはカテーテル42等の本発明の装置のうちの一つの通路(非円形を有する)の最大或いは最小の寸法として適用されてもよい。シース24、特定の長尺状部材26及びカテーテル42等の本発明の装置の外径は、例えば、約0.50cmまで変更されてもよいが、それよりも大きい外径も使用可能である。これらの寸法が、例えば、シース24、特定の長尺状部材26或いはカテーテル42等の本発明の装置のうちの一つの外面(非円形を有する)の最大或いは最小の寸法として適用されてもよい。米国特許出願第09/905670号においても、内径及び外径に関する幾つかの例が記載されており、同特許文献に記載された内容は本願においても開示されたものとする。
【0046】
図1に関して説明したように、本発明の装置(例えば、シース24やカテーテル42)は、硬膜10を貫通した後で脊髄くも膜下腔に進入する。処置の完了後に硬膜10に接近するために、本発明の装置(例えば、シース24、特定の長尺状部材26及びカテーテル42)は、硬膜閉鎖装置を備えてもよい。硬膜閉鎖装置は、該装置に連結されてもよい。硬膜閉鎖装置は、該装置が脊髄くも膜下腔から回収されると、硬膜を閉鎖するように形成されてもよい。一実施例においては、硬膜閉鎖装置は、針や他の縫合糸搬送装置の移動により閉鎖するように形成されてもよく、縫合搬送装置は、硬膜を介して縫合糸が配置されるように施術者により作動される。他の実施例において、硬膜閉鎖装置は、該装置が回収された後に、硬膜の孔を封鎖する化合物を注入することにより閉鎖するように形成されてもよい。変更及び本発明の装置のうちの一つに連結される硬膜閉鎖装置の一例は、ザクローサー(THE CLOSER)(アボット研究所社の子会社であり、カナダ国レッドウッド市サギナウ400に所在するパークローズ社(Perclose,Inc.,an Abbot Laboratories Company,400 Saginaw Drive, Redwood City,CA)より販売されている)である。
【0047】
図19は、シース24の一実施例(カテーテル42にも適用可能である)を示しており、その実施例には副長尺状部材76,78が設けられ、ブレード材料130(ワイヤであってもよい)は、副長尺状部材の長さ(全長は図示せず)に沿ってその周囲に巻回される。そのような巻回は、上部から見た場合に8の字状に見える。ブレード材料は、きつく或いはゆるく巻回されてもよく、巻回の強さは、シース24の長さに沿って変化してもよく、それによりシースに異なる剛性や可撓性が付与される。図20に示されるように、1つの通路のみを有するカテーテルに同様の巻回を行ってもよい。この巻回は、おおよそ中間ポイント132において、カテーテル42の壁に接触するように配置された単一のワイヤを使用して行われてもよい。次に、ブレード材料130の左右中間部が交差することにより所望のブレードが得られ、必要に応じて巻回の強さを変更して、カテーテル42の剛性を変化させる。これに代えて、ブレード材料の一端は、図20に示される端部付近においてカテーテル42に接触するように配置される。ブレードは、カテーテルの周囲にブレード材料の自由端を巻回することにより形成され、次にすでに形成されている環を交差するように同じ動作を繰り返し、さらにわずかに後退させて、同様の方法で繰り返して、所望のブレードを得られるように工程を繰り返す。巻回の締め付け(ブレード材料のセグメントが互いに接近すると考えられる)を変更して、カテーテルの剛性を変化させてもよい。カテーテル分野において周知であるように、ブレードは、複数の形態を有してもよく、異なる技術により、カテーテルの外長尺状部材を形成するカテーテル材料に埋設されてもよい。ブレードは、外長尺状部材内に収容されてもよい。
【0048】
使用されるブレードのパターン即ち材料は、形成されたカテーテルやシースを磁気共鳴により視覚化させることも可能である。くも膜下腔は、比較的静止状態にある脳脊髄液に満たされ、T2強調画像において極めて高い信号強度を有する。磁気共鳴において無信号領域を示す材料は、血管腔においてT1又はT2強調透視法では確認できない(流動する血液が、これらの設定において無信号領域を有する)。一方、無信号領域を有する材料は、くも膜下腔内ではT2強調画像において極めて鮮明に確認できる。プラチナは、本発明の装置の磁気共鳴による視覚化を補強するための好適な金属である。加えて、低い信号強度を有する他の金属も適している。例えば、非強磁性のステンレス鋼、ニチノール、ステンレス鋼、又はケブラー(商標kevlar)は、ブレード材料130として使用可能である。
【0049】
本明細書において述べた2つ以上のカテーテルやシースを含むが、これらに限定されない医療装置は、一方の通路において内視鏡の使用を可能にし、他方の通路を介して挿入される装置を使用して行われる操作や、他方の通路を有する他の副長尺状部材の位置を観察できる。また、2つ以上の通路を有する医療装置は、流体を一方の通路に注入し、他方の通路を介して回収することができる。2つ以上の通路を有する医療装置は、ガイドワイヤを一方の通路や別の通路に挿入し、他方の通路に治療装置を挿入することができる。各通路を介して行われる作用間の相互関係は、作用を併せて行う、或いは互いに補完し合うことにより治療を完了することができる。
【0050】
さらに、図11及び図12に示す形状(即ち、2つ以上の通路)を有するシースやカテーテル等の医療装置は、血管にも応用できる。例えば、動脈瘤治療における最近の症例では、一方のカテーテルは一方の大腿動脈を介して挿入されて動脈瘤内に配置され、他方のカテーテルは他方の大腿動脈を介して挿入されて動脈瘤の頸部を越えてバルーンを挿入する。バルーン以外の装置を使用して動脈瘤のコイリングを補助して、図11及び図12に示す形状のうちの一つ(即ち、2つ以上の通路)を有するシースやカテーテル等の医療装置の一方の通路を介して装置を挿入して、動脈瘤の頸部を改善し、コイルを他方の通路を介して挿入することにより、両方への接近を一方の大腿動脈を介して行うことができる。さらに、この動脈瘤の塞栓治療は、2つの副長尺状部材を備えるシースやカテーテルを使用して行うことができ、これら副長尺状部材の先端部分は、Y字状をなすように互いに離間される。
【0051】
図18は、貫通装置120を示し、同装置は、本発明の方法を使用する異なるメンブレンを貫通するのに使用される。貫通装置120は、外スリーブ要素122、外スリーブ要素122に連結される外スリーブ要素ハブ124、内穿刺要素126、及び内穿刺要素126に連結される内穿刺要素ハブ128を備える。外スリーブ要素ハブ124は、内穿刺要素126に摺動可能に連結され(外スリーブ要素122は内穿刺要素126に沿って摺動し、内穿刺要素126に対してロックされ)、内穿刺要素ハブ128は、内穿刺要素126の通路(図示せず)から挿入される他の装置に摺動可能に連結されるように形成される。内穿刺要素は、少なくとも1つのガイドワイヤを摺動可能に収容するように寸法が設定された通路を備える。これに代えて、内穿刺要素は、外又は内部品が穿刺要素や部品に加えてガイドワイヤとして作用するように同軸要素であってもよい。
【0052】
貫通装置120を操作して穿刺されるメンブレンは、軟膜であり、脆弱な部分と頑丈な部分を有する脳を取り巻く膜である。内穿刺要素の先端チップ130は、脳組織に損傷を与えるような力を付与したり操作することなく、任意の場所において軟膜を貫通するのに十分な鋭利さを備えるように形成される。作動中に、第1通路を備える(シース24やカテーテル42等の)装置は、挿入位置において脊髄くも膜下腔へ経皮的に挿入され、くも膜下腔内を進められる。次に、貫通装置120が、装置の第1通路内を進められて、軟膜等のメンブレンが、貫通装置120を使用して穿刺される。貫通装置120は、ガイドワイヤに沿って進められ、或いは、第1通路内を進められてメンブレンの縁部に達してもよい。内穿刺要素はさらに進められてメンブレンを穿刺する。次に、内穿刺要素は、外スリーブ要素122内へ後退されて、貫通装置120が貫通されたメンブレンの面を介して進められ、或いは、外スリーブ要素122が、貫通されたメンブレンの面を介して内貫通装置126上を進められる。外スリーブ要素122は、カテーテル42等の装置のガイドワイヤとして作用してもよく、脳質内へ進む。前述の工程は、2002年12月23日付けで出願された米国特許出願第10/328373号(発明の名称:くも膜下腔へ挿入するためのガイドカテーテル(GUIDE CATHETER FOR INTRODUCTION TO THE SUBARACHNOID SPACE)に記載されている固定装置即ちガイドカテーテルを使用することにより、さらに容易にすることも可能であり、同特許文献に開示された内容は本願においても開示されたものとする。
【0053】
貫通装置120の内及び外要素に使用される材料は、例えば、金属やプラスチック等のポリマーであってもよい。外スリーブ要素122及び内貫通装置126に好適な材料には、ニチノール、ステンレス鋼及び金が含まれる。例えばプラチナめっきは、放射線による可視性を高めるために含まれてもよい。MRIや放射線による画像化(例えば、透視法)等の画像診断法を使用する場合、使用される画像診断法は、貫通装置120の要素の構成において使用される材料に影響を与える。例えば、MRI装置において、これらの要素を構成する際に非磁性的に作用する材料を使用することが望ましい。
【0054】
図18には図示されない貫通装置120の他の実施例は、内及び外要素126,122が相関する点において、図18に示される実施例とは異なる。この実施例において、内穿刺要素126は、外スリーブ要素122に連結され、内穿刺要素が、「発射される(fired)」即ち迅速に数ミリメートル進んで、迅速な貫通を行う。図18には図示されない貫通装置120の他の実施例において、内穿刺要素126は、ネジを使用して外スリーブ要素122に連結され、内穿刺要素126の高度に制御された進行を可能にする。貫通装置120のこれらの実施例は、例示を目的として本明細書に記載される。他の構成も本発明の範囲内において使用可能である。
【0055】
本発明の方法の少なくとも幾つかの実施例において、頭蓋内や脊髄くも膜下腔へ外科的に到達する従来の方法を凌ぐ多くの利点を提案する。従来の方法とは、皮膚の切開、頭蓋や脊骨の被覆の切開、骨の除去、及び神経組織へ到達するための髄膜からの切開を含むものである。例えば、本発明の方法の幾つかの実施例は、従来の脳外科手術における典型的な頭骨切開や脳の収縮を必要としない。さらに、少なくとも幾つかの実施例において、施術者が腰椎の穿刺部分等の離れた位置から患者の脳に対して外科的に治療を行うことが可能であり、外科領域に磁気の干渉を受けることなく磁気共鳴スキャナにより外科手術を行うことが可能である。また、医師は、頭骨切開術では到達することが困難な脳の領域に接近でき、幾つかの実施例においては、頭骨切開術を介しては容易に行うことができないような、くも膜下腔の洗浄等の幾つかの処置を可能にする。
【0056】
以下に述べる代表的な用途の例は、異なる装置や上記したような例を使用して行うことが可能である。特定の用途に適用される他の装置や方法は、さらに以下に説明する。用途によって、使用される装置は、それらの可視性をMRIや放射線(例えば、透視法)等の所定の画像診断法を介して最大限に生かすように処理される。
【0057】
さらに、所定の用途において、一方の挿入位置において1つの装置をくも膜下腔へ挿入し、その後で或いは同時に、他方の挿入位置において他の装置をくも膜下腔へ挿入すし、次にこれらの装置を共に使用して治療を完了させることが可能であることは理解されるであろう。例えば、少なくとも幾つかの脳組織の温度を変更する際に(詳細は以下に説明する)、一方の挿入位置において、くも膜下腔(例えば、脊髄くも膜下腔)へ挿入された1つの装置の通路から流体を挿入して、他方の挿入位置において、くも膜下腔(例えば、脊髄くも膜下腔)へ挿入された他の装置の通路から流体を回収することは可能である。他の例としては、以下に述べるように脳脊髄液の洗浄において、流体を目的部位へ搬送するための複数の通路を有するシースやカテーテルの2つの通路を使用することは有利である。さらに、この治療は、2つの副長尺状部材を備えるシースやカテーテルを使用して行うことができ、これら副長尺状部材の先端部分は、Y字状をなすように互いに離間される。流体は、異なる挿入位置において挿入された装置の通路から回収され、或いは、流体は、単独のシースやカテーテル内の第3の通路から回収されてもよい。
【0058】
(血管攣縮を軽減するための脳脊髄液の洗浄)
くも膜下の出血における主な合併症は血管攣縮であり、これは脳血管を取り巻くくも膜下腔に血液があるためである。血管攣縮を軽減するために使用される治療は、くも膜下腔内の脳脊髄液を生理食塩水及び溶血剤で洗浄して血液を除去することを含み、挿入箇所を形成するために頭蓋骨の一部を除去して脳脊髄液に接近する。本発明の方法を使用して、経皮的に脊髄へ接近することにより、出血や凝血のある領域においてくも膜下腔又は頭蓋内腔へカテーテルを挿入し、頭骨切開を行わないで洗浄を行うことが可能となる。例えば、図1において述べたように、挿入位置において脊髄くも膜下腔へシース24やカテーテル42等の装置を挿入し、脊髄くも膜下腔内の同装置を挿入位置から一定の距離を進め、生理食塩水及び/又は溶血剤を有する材料を装置の通路から出血や凝血のある領域へ送り、問題の脳脊髄を洗浄する。
【0059】
(少なくとも幾つかの組織の温度の変更)
少なくとも幾つかの組織、例えば、脳や脊柱の組織の温度を変更する例は、そのような組織に低体温法を導入することである。負傷から保護するための低体温法の効果は、公知の情報や医療文献において周知である。不可抗力の状況において最も一般的に遭遇する例は、溺水である。このような状況において、代謝が低下して低酸素状態でも高い耐性を有するため、冷水における生存率が高まる。神経外科において、低体温法は、治療において、動脈瘤の手術中に耐えられる脳血管の閉塞時間を延長するために用いられる。しかしながら、一般的な神経外科技術では、脳だけに低体温法を用いることができない。したがって、体全体に対する低体温法が、多くの付帯リスクを生じる循環停止と併せて用いられることが多い。
【0060】
本発明の方法は、少なくとも幾つかの組織の温度を変更するために使用できる。そのような変更は、生理食塩水や患者自身の脳脊髄液等の温度調整できる流体で、選択された組織を洗浄することにより行われ、そのような流体は異なる場所から排水される。流体は、脊髄くも膜下腔へ挿入された装置から注入される。例えば、カテーテルやシース等の少なくとも1つのルーメンを有する装置を脊髄くも膜下腔へ挿入して、脊髄くも膜下腔内で同装置を挿入位置から一定の距離を進めた後で、ルーメンから温度調整された流体が挿入されて、少なくとも幾つかの脳組織の温度が変更される。
【0061】
選択された組織を冷却するための一実施例においては、挿入された装置は、2つのルーメンを有するカテーテルを備えてもよい。このようなカテーテルの例は、図21Aに示される。例示される注入カテーテル200は、第1のルーメン202及び第2のルーメン206を備える。第1のルーメン202は、カテーテル200の先端チップ201付近の第1のポート204まで延び、第2のルーメン206は、カテーテルの先端チップ201に対してより基端方向における第2のポート208まで延びる。操作時に、治療を受ける患者からの脳脊髄液が、第2のルーメン206から排出され、冷却流体が第1のルーメン202から注入される。
【0062】
冷却流体は、図21Aに示されるように患者自身の脳脊髄液であってもよい。脳脊髄液は、第2のルーメン206を介して患者のくも膜下や頭蓋内腔内から排出され、第2のルーメン206は、脳脊髄液をポンプ210へ送り、ポンプ210は熱交換器212へ脳脊髄液を送る。熱交換器212は脳脊髄液を所望の温度まで冷却する。幾つかの実施例において、注入された流体の温度は、華氏約32度(摂氏約0度)まで低下させてもよい。必ずしも冷却を目的としていない他の実施例においては、脳脊髄液は、華氏約130度(摂氏約54.44度)まで加熱されてもよく、導入された熱は、所望の領域の細胞の代謝を促進し、その付近の細胞を迅速に成長させ、その領域へ増加した血流を送り込む。次に、脳脊髄液は熱交換器212を出て、第1のルーメン202に進入し、そこから、カテーテル200の先端部201において第2のポート204を介して、患者のくも膜下や頭蓋内腔の異なる領域へ再度注入される。
【0063】
熱交換器212は、脳脊髄液に所望の温度を提供する任意の構造や装置を備えてもよい。熱交換構造の幾つかの例には、コイル、チューブインチューブ、放熱器タイプ、及び他の熱交換器を含む。同様に、ポンプ210は、脳脊髄液の所望の流動を可能にする任意のポンプや同様の装置を含んでもよい。ポンプ構造の例は、機械的、磁気的、又は、電気的に動力を供給されたインペラー、ダイヤフラム、バルブ等を含んでもよい。幾つかの実施例において、注入装置や、脳脊髄液の交換や脳脊髄液における温度変更を行うために使用される他の装置は、米国特許出願第10/328373号に記載されているようなガイドカテーテルを使用して挿入することも可能であり、同特許文献に記載された内容は本願においても開示されたものとする。
【0064】
他の実施例において、フィルタ要素が、脳脊髄液をろ過して、損傷を受けた血管から漏出した血液等の望ましくない物質を除去するために備えられてもよい。例えば、そのような装置は、脳脊髄液の洗浄に使用されて、上記したような血管攣縮を軽減することも可能である。他の実施例において、薬剤、抗生物質や放射線不透過性物質が、脳脊髄液を再注入する際に混合されてもよく、それによりくも膜下腔へ注入される。他の実施例において、患者の脳脊髄液は、排出されて他の流体に置換されてもよい。脳脊髄液を置換するための流体は、様々な生体適合性のある流体から選択できる。例えば、生理食塩水が注入されてもよい。薬剤、抗生物質や放射線不透過性材料が注入されてもよい。
【0065】
処置中に、カテーテル200を離れる際に、流体の圧力が制御されていないと、注入された流体により付近の組織に損傷を与えることがある。流体の排出圧力を制御するための方法/装置が、図21A乃至図21Cに示される。図21Bは、第2のポート208の基端側の部分におけるカテーテル200の断面を示す。この部分の断面において、第1のルーメン202は、第2のルーメン206よりもより少ない面積を有するが、その割合は他の実施例において変更可能である。第2のポート208の先端側の位置220において、カテーテル200の断面配置は、図21Cに示されるような断面配置へ変化する。同図に示されるように、第1のルーメン202は利用可能なほとんどの空間を占めている。ルーメン202の断面積は、流体が流れるために実質的に増加するので、ルーメン内の圧力が減少し、カテーテル200を離れる流体が第1のポート202において近接する組織に損傷を与える可能性が軽減される。圧力による流体の噴出が組織を損傷しないための他の装置や方法には、流体注入カテーテルの穿孔即ちポートに対して絞り要素を追加することと、異なる寸法の穿孔を使用することと、流体注入カテーテルを構成するために選択された材料を変更することや、親水性のコーティング等のコーティングを排出ポート付近の領域に塗布したりするための構造や設計が含まれる。
【0066】
図21D及び図21Eは、本発明の他の実施例を示し、この実施例は閉鎖システムを備える。図示される冷却用カテーテル220は、第1のルーメン222と第2のルーメン224とを備える。また、ポンプ230は、図示されるように、熱交換器232へ流体を送る。矢印により示されるように、流体は基端部から流れ、基端部においてポンプ230と熱交換器232は先端部234へ向かう。先端部234は、熱交換要素236を有する。熱交換要素236は、増加された表面積を構成する不規則な形状を特徴とする。また、熱交換要素236は、冷却用カテーテル220の他の部分とは異なる材料或いは他の部分よりも薄い材料からなり、向上した熱伝導性を提供する。図21Dに示す実施例は、熱交換要素236を備え、同熱交換要素は、異なる形状や設計を有してもよく、そのうちの幾つかは、図23乃至図29においてさらに示される。
【0067】
幾つかの実施例において、熱交換要素236は、剛性を備える形状を有しているが、他の実施例においては、熱交換要素は、可撓性を有するメンブレン、膨張可能な部材、或いは折り畳み可能な構造体であってもよい。例えば、幾つかの実施例において、熱交換要素236は、折り畳み可能な部材であってもよく、所望の位置に配置されると拡張してその表面積を増加させる。また、図示されるように、第1のルーメン222の先端部は、メンブレン238内に達し、同メンブレンは、第1のルーメン222からの流体の逆流を防止する単方向性の流動要素である場合に、流体の流れを制御できる。また、メンブレン238は、流動を拡散するように作用し、所望の部分即ち熱交換要素236の領域に向けて、ルーメン222から熱交換要素236へ流体の流れを方向づける。
【0068】
図21Eは、第1のルーメン222及び第2のルーメン224の断面積が、少なくとも例示される一実施例において異なることを示す。他の実施例において、相対するルーメンの寸法は大きく異なるが、ルーメンの形状のように、ルーメンは円形の断面からなる必要はない。例えば、角度のある形状、楕円形や他の形状は、第1のルーメン222及び第2のルーメン224の断面の形状として使用され、これらの形状は、冷却用カテーテル220の長さに沿って変更してもよい。
【0069】
図22A及び図22Cは、注入、洗浄等の用途に合わせて構成されたカテーテルの他の実施例を示す。この実施例において、拡散カテーテル240がまず挿入されて、2つのルーメン265,270を有する二重ルーメンカテーテル260が次に挿入される。拡散カテーテル240は、挿入されて、二重ルーメンカテーテル260を出入りする流体の流れにより生じた高圧噴射から、周囲の組織を保護する。拡散カテーテル240は、穿孔242,244を備えており、二重ルーメンカテーテル260から出る流体がより広い領域にわたって広がり、特定の組織の炎症を引き起こす噴流を減少させる。拡散カテーテル240は、先端部250付近の冷却された領域を拡散カテーテル240の他の部分から密封するための止め部246を備えてもよい。止め部246は、二重ルーメンカテーテル260が拡散カテーテル240の内部に挿入されると、所定の位置に二重ルーメンカテーテル260を固定するためのロック(図示せず)を備えることも可能である。
【0070】
図22A乃至図22Cに示す他の実施例において、拡散カテーテル240及び二重ルーメンカテーテル260は、拡散カテーテル240に対して二重ルーメンカテーテル260が特定の軸方向へ配向するように、取り付け部材248(図22C参照)を備えてもよい。特定の軸方向への配向を確実にする動作は、流体が二重ルーメンカテーテル260を出入りする際に生じる流体の噴流圧力を減少させることである。拡散カテーテル240の1組の穿孔242は、穿孔264を備える二重ルーメンカテーテル260の第1のポート262に対して、長手方向において対応する。図22Bに示される所望の軸方向の配置により、拡散カテーテル240の一方の組の穿孔242が、二重ルーメンカテーテル260の第1のポート262において穿孔264に対して偏位される。同様に、図22Cに示されるように、所望の軸方向の配置により、拡散カテーテル240の他方の組の穿孔244が、二重ルーメンカテーテル260の第2のポート266において穿孔268に対して偏位される。このようにして、二重ルーメンカテーテル260から出る流体は、周囲の組織に対して直線状の経路を有していない。拡散カテーテル240は、この実施例に示されるが、全ての実施例において必要ではないことに留意すべきである。
【0071】
図22Aに示される特徴は、二重ルーメンカテーテル260の第1のルーメン270の断面積を変更することであり、これは特に第2のルーメン265の先端方向で行われる。図21A及び図22Aに示されるように、本明細書において述べられる二重ルーメンカテーテルは、必要に応じて並列カテーテルや同軸カテーテルであってもよい。本明細書において示されるカテーテルの多くが備える他の特徴は、可撓性を有する先端チップ250を備えることであり、これは図22Aに示されるようにテーパ状の部分を有することも可能である。可撓性を有する先端チップ250は、軟性の組織、膜、及びくも膜下や頭蓋内腔の体液が充満する領域内をカテーテルが進行する際に生じる炎症を軽減するために使用できる。全ての図面において具体的に示さないが、本明細書に記載されるカテーテルの多くは、ガイドワイヤが所望の領域に進められた後で挿入される。そのようなカテーテルは、モノレール形状でオーバーザワイヤ式に進められてもよく、或いは、胆管用カテーテルに関して周知なラピッドエクスチェンジ形状を含む、血管カテーテル法において周知な他のガイドワイヤ挿入方法により挿入されてもよい。
【0072】
上記の方法及び装置に関して、異なる長さ(或いは同じ長さ)からなる2つのカテーテルは、二重ルーメンカテーテルの所定の位置に使用される。そのようなシステムの利点は、例えば、これら2つのカテーテルをより安価に製造できることである。他の利点は、これらのカテーテルうちの一方は、処置中に置換されて、一方又は両方のカテーテルポートの位置を変更してもよく、それによりくも膜下腔や頭蓋内腔の異なる領域が、同じ処置の異なる時間において注入された流体を排出又は収容することが可能である。そのような変更における利点は、短時間で同じ位置において流体をポンプで注入することにより生じるその位置の炎症を軽減することであり、或いは、流体の排出位置を失うことなく、異なる位置において処置中に必要な流体を注入できる。
【0073】
ポンプ装置は、少なくとも幾つかの組織の温度を変更する工程において使用され、くも膜下腔内の圧力や温度を維持するための補助を行う。ポンプ装置は、流体が挿入される装置に連結されてもよい。少なくとも一実施例に関して、ポンプ装置は、独立して制御される2種類の目盛り付きポンプを備えてもよく、これらのポンプは、流体が挿入される装置に取り付けられるハブアダプターに連結される。頭蓋内の流体の量を制御するために、くも膜下腔へポンプで注入された流体の量は、くも膜下腔から回収される量を等しくすることにより調整される。ポンプ装置は、流出部位において負圧を導入することなく流出が行える状況においても、このバランスを流量監視や流量制御により行うように形成される。さらに、この点において、ポンプ装置は、頭蓋内圧力の測定やその操作を可能にする、圧力監視や圧力制御により動作するように形成される。加えて、ポンプ装置は、頭蓋内の温度の測定やその操作を可能にする、温度監視や温度制御により動作するように形成される。この点において、ポンプ装置は、注入された流体の温度の測定やその操作を可能にする、温度監視や温度制御により動作するように形成される。
【0074】
ポンプ装置により、毎秒1立方センチメートル分の1程度の低い流速、或いは、毎秒数立方センチメートル程度の高い流速が生じるが、200水銀柱ミリメートルを越える圧力はあり得ないと見なされ、これは生命を維持できる頭蓋内の圧力を超えるためである。注入された液体温度を華氏32度乃至130度(摂氏約0度乃至54.44度)において変化させるには、このポンプ装置を使用して行われてもよい。他の実施例において、注入された液体温度は、この範囲を超えるが、熱交換が組織(患者の体内において)、外気(患者の体外において)、及び注入カテーテルにより行われるために損傷を受けることはない。組織に対して内部で生じた温度変化は、幾つかの例において、組織の損傷に対する耐性により制限されると考えられるが、他の実施例においては、極めて高温或いは低温の流体の注入や、極めて高温或いは低温の要素による熱交換が行われて、所望の組織面積や容積を除去したり焼灼することも可能であり、そのような処置にはより大きく変化する温度が使用されることも留意すべきである。
【0075】
内部に配置された流体を移動させる装置及び/又は熱交換器の幾つかの例が、図23乃至図27に示される。これらの例示的な例は、特定の特徴を示すためだけに記載されており、本発明をこれらの構成に限定されると解釈されるべきではない。図示されるのは、熱交換流体を使用して脳脊髄液をくも膜下腔や頭蓋内腔から除去することなく熱交換を行う方法や、折り畳み可能な流体移動装置を挿入する方法や、熱交換器及び流体移動装置を1つの構造体に一体化する装置である。少なくとも幾つかの実施例においては、挿入可能な熱交換要素が使用されるが、挿入された熱交換要素の周囲の脳脊髄液を移動させることにより、熱移動を向上させることが望ましい。幾つかの図面において示されない幾つかの実施例の他の態様では、特定の温度や圧力を感知する小型のセンサを備えることが可能であり、これらの温度や圧力は、ポンプ装置や注入装置の幾つかの用途において監視を要する重要な要素である。温度や圧力センサを備えることは慣例的には必要ではないが、幾つかの用途においては有効である。
【0076】
図23A乃至図23Cは、折り畳み可能な流体移動装置と熱交換器を示し、その使用方法を例示する。図示される外カテーテル300は、第1のポート302及び第2のポート304を備え、第2のポート304は外カテーテル300の先端部に一致する。他の実施例において、外カテーテル300は、第2のポート304を越えて延びる先端チップ(図示せず)を備える。内部に挿入された外カテーテル300は、ルーメン316に対して連通し、ワイヤ314に機械的に連結される膨張可能な部材312を備える内カテーテル310である。図示されるように、内カテーテル310は、膨張可能な部材312が、2つのポート302,304間にある外カテーテル300の中間部分306に沿って位置するように配置される。
【0077】
図23Aにおいて、膨張可能な部材312は収縮しており、外カテーテル300及び内カテーテル310は、患者のくも膜下腔又は頭蓋内腔内に配置されている。図23Bに示されるように、膨張可能な部材312は部分的に膨張される。膨張は、ルーメン316から膨張流体を膨張可能な部材312へ注入することにより行われる。膨張流体は、周囲の組織の温度とは異なる温度において注入され、例えば、脳脊髄液や組織を局所的に冷却するために低温で注入され、或いは、局所的に暖めるために高温で注入される。膨張可能な部材312は、熱交換機能が行われるための好適な材料から構成され、所定の患者の特定のニーズに合うように選択され、或いは、行われるべき所望の温度変化に応じて選択される。膨張流体は、任意の好適な流体であってもよく、例えば、通常血管の膨張バルーンによる処置に使用される膨張流体であってもよい。膨張流体は、生理食塩水の混合物や脳脊髄液であってもよく、そのため、膨張部材312やルーメン316の不備や障害により膨張流体が漏出した場合に、特定の組織に容易に受容される。処置中に、膨張部材312は、定期的に膨張及び収縮して、膨張部材312内に新しい冷却用又は加熱用の流体を注入する。温度センサ(図示せず)は、膨張部材312内の温度を監視し、新しい冷却用又は加熱用の流体が必要かどうかを測定するために配置される。
【0078】
図23Cに示されるように、十分に膨張すると、膨張部材312の外部分が、中間部分306においてカテーテル300の内壁に近接、即ち、摺動可能に接触し、膨張部材312はアルキメデスポンプの形状を取る。流体を移動する機能を発揮するために接触する必要がない場合でも、中間部分306に摺動可能に接触したり係合することにより、移動を効率よく行うことができる。例示される実施例において、膨張部材312により流体を移動するための少なくとも2つの方法が示される。一方の方法において、膨張部材312は膨張すると、第1のポート302から第2のポート304に向かって流体を押圧する。他方の方法において、ワイヤ314を回転させることにより、膨張部材312が回転して、第1のポート302から第2のポート304に向かって流体を移動させる。流体が膨張部材312を越えて通過すると、膨張部材31の基端側から先端部にかけて接触することにより、熱交換の作業が向上する。
【0079】
十分に膨張すると、膨張部材312は、約10mm乃至50mmの範囲の長さを有するが、この範囲以外の長さであってもよい。膨張部材312の直径は、図23Cに示されるように膨張すると、約1mm乃至3mmになるが、図示される実施例において、バルーンの直径の限度には中間部分306の内径が含まれてもよい。一実施例において、膨張部材は、十分に膨張すると、約20mm乃至25mmの長さと、約1.5mm乃至2mmの直径を有する。中間部分306を形成する材料は弾性を備えることにより、膨張部材312が、カテーテル全体が通常有する直径よりも大きい直径まで拡張できる。
【0080】
図23A乃至図23Cの実施例において、流体が単一のルーメン316を通過することにより膨張した膨張部材312が示されるが、他の設計もまた使用可能である。例えば、複数のルーメンにより膨張を行う設計を使用でき、例えば、図26に関して以下に述べるように、一方のルーメンは流体の流入を行い、第2のルーメンは流体の流出を行う。そのような実施例により、膨張流体の置換や流出の継続や完了を可能にして、より良好な熱交換が行われる。例えば、単一のルーメンが使用されて膨張部材を膨張及び収縮させる場合に、膨張流体を膨張部材とルーメンの両方から完全に引き抜くことは難しいため、膨張が再開すると、膨張部材は、膨張部材とルーメン内に残されていた未処理の流体を受け取ることになり、そのような流体を取り除くことなく再使用することは熱の移動を妨げることがある。
【0081】
図24は、他の膨張部材を使用して流体の移動と熱交換の両方を行うための他の実施例を示す。膨張部材350は、外カテーテル360の先端側の開口部362を越えて配置される。膨張部材350は、十分に膨張され、長尺状の管材352に対して流動的且つ機械的に連通する。長尺状の管材352及び膨張部材350は、閉鎖されたチャンバに延びる膨張用の単一のルーメンを有し、他の実施例においては、図26に示される流水式膨張部材を備える二重ルーメン装置に類似する。膨張部材350は、回転して流体の移動を行ってもよく、或いは、膨張部材350の膨張のみにより、十分な流体の移動を行ってもよい。膨張部材350が、加熱又は冷却流体により膨張され、膨張流体とその周囲の流体や組織との間の熱交換を行うために構成される。膨張部材350は、外カテーテル360の外側に配置されるので、幾つかの実施例においては、膨張部材350は、外カテーテル360の内側に配置される時よりも大きい直径、例えば、5mm以上まで膨張されてもよい。
【0082】
図25は、カテーテルの先端チップを越えて配置された他の膨張部材を示す。例示される実施例において、円形の膨張部材370は、カテーテル380の開口部382の先端側に延びる。二重ルーメン流体交換部材372は、膨張部材370に対して連通する。二重ルーメン流体交換部材372は、注入ルーメン374及び排出ルーメン376を備える。注入ルーメン374は、膨張部材370に対する加圧下において、加熱又は冷却された膨張流体を供給し、一方、排出ルーメン376は、膨張流体を膨張部材370から移動させる。この実施例において、注入ルーメン374を介して制御された温度の流体を継続して流すことにより、装置全体の熱交換能力が向上する。膨張部材370の膨張は、同部材、注入ルーメン374及び排出ルーメン376内の流体の圧力を制御することにより行われる。さらに、膨張と収縮を繰り返すことにより、周囲の脳脊髄液や組織を十分に移動させて、熱交換と脳脊髄液の流動の両方を行う。膨張部材の長さと直径は、直径において約5mm以上、長さにおいて約50mm以上であってもよい。図24及び図25に示される実施例の利点は、膨張部材が収縮された状態で挿入且つ進行できるため、特に大きなルーメンカテーテルを挿入する必要がなく、比較的大きな膨張部材をくも膜下腔へ挿入できることである。
【0083】
例えば、図25に関して、膨張部材370は、挿入される前に、カテーテル380の先端部内において収縮した状態で保持される。カテーテル380の先端部をくも膜下腔へ挿入し、くも膜下腔又は頭蓋内腔の所望の位置へ進めた後で、カテーテル380の外部分は後退して膨張部材370を露出させ、或いはこれに代えて、膨張ルーメン372をカテーテル380の内部に摺動可能に配置して、所望の位置において膨張ルーメン372を進めると、膨張部材370を押圧してカテーテル380の先端チップを越える。次に、膨張部材370の膨張と収縮を繰り返して、到達した領域内で流体の移動と熱交換を行う。膨張部材370の膨張、及び膨張部材370を前後又は前後方へ移動させるための膨張ルーメン372の交換により、流体の移動が行われる。流体の移動を行う第3の方法は、膨張ルーメン372の端部上に偏倚された装置として膨張部材370を提供する工程を含むことも可能であり、それにより膨張ルーメン372が回転して流体の移動が行われる。また、膨張部材370を楕円形状に形成して、回転させることにより流体の移動を行うことも可能である。
【0084】
図26は、図23乃至図25に示された膨張部材の他の構成を示す。膨張部材は、単一の膨張ルーメンを使用して充填され排出されるが、図26の膨張部材はそのように構成されていない。カテーテル400は、内ルーメン402及び外ルーメン404を有する同軸状のカテーテルとして示される。他の実施例においては、並列に配置される二重ルーメン構造体が使用される。カテーテル400の先端チップは、膨張部材410を備える。内ルーメン402及び外ルーメン404両方の内側の矢印により示されるように、膨張流体は、加圧下において膨張部材410内を通過する。例えば、流体は、内ルーメン402から膨張部材410内に進入して、外ルーメン404から排出するが、他の実施例において、流体は、反対方向に流れてもよい。流体は、カテーテル全体を通過して熱交換器やポンプ(図示せず)へ達してもよく、膨張部材410から流れる流体の温度や圧力が制御される。図26に示す実施例に関して、膨張部材410は、膨張中に継続して冷却又は加熱された流体を受け取る。膨張部材410は、アルキメデスポンプとして回転して、その周囲の流体の移動を行い、或いは、膨張部材410は固定されて、図27に示すように膨張部材410を越えて脳脊髄液を通過させる。
【0085】
図26に示す実施例は、幾つかの実施例に含まれる他の特徴を備える。カテーテル400は、脊髄くも膜下腔の挿入位置から一定の距離を移動して、くも膜下腔又は頭蓋内腔の所望の位置に達する。カテーテル400がその機能を果たすために、ルーメン402,404を流れる流体は、周囲の脳脊髄液や他の体液や体組織とは異なる温度でなければならない。流体が、膨張部材410においてカテーテル400の先端部へ達すると、流体は周囲の組織や流体と熱交換を行うことが可能になる。この工程を補助するために、カテーテル400は、基端部分412が低い熱伝導性(図において太線で示される)を有するように構成されるが、カテーテル400は、また、高い熱伝導性を有する膨張部材410を備える。カテーテル400は、膨張部材410の高い熱伝導性と基端部分412の熱伝導性との間の熱伝導性を有する移行領域を備えることも可能である。異なる熱抵抗が図において太線で示されるが、これは、材料自体が所定の位置においてより厚い又はより薄いことを必要とするものではなく、熱伝導性は、実際に、材料の組成や加工条件や厚さや熱伝導性に影響を与える他の任意の要素を変更することにより変化する。
【0086】
図27に示す実施例においては、プロペラ550を使用して、ルーメン554及び熱交換部材560を備えるカテーテル552内の流体を移動させる。熱交換部材560は、剛性を有する部材であってもよく、或いは、折り畳み可能即ち膨張可能な部材であってもよい。熱交換部材560は、熱交換流体がその中を通過して熱交換部材を膨張させるように構成されてもよく、或いは、熱伝導性を備える材料から構成されて、熱交換部材の基端部分が加熱又は冷却されて、熱交換部材の熱伝導性により、一方の場所から他方の場所へ熱伝導を行う。例えば、熱交換流体は、内カテーテル本体562のルーメンを介して熱交換部材560へ供給され、外カテーテル本体564のルーメンを介して熱交換部材560から取り除かれることも可能である。図示するように、熱交換部材560は、らせん形状をなすように配置されることにより、同部材を越えて移動する流体が幾つかの場所に沿って接触する。
【0087】
プロペラ550は、駆動ワイヤ570を捻ることにより回転され、駆動ワイヤ570は固定装置572の先端部において終端となる。固定装置572は、駆動ワイヤ570の先端部を固定し、或いは、方向を選択するラチェットを備え、或いは、駆動ワイヤ570の先端部がカテーテル552の先端チップ付近の組織に接触するのを防止してもよい。プロペラ550は、駆動ワイヤ570を回すことにより回転されて、さらにルーメン554内の流体を基端ポート556から先端ポート558へ移動させて、プロペラ550及び熱交換部材560はポート556,558間において配置される。ポート556,558は、カテーテル552の穿孔部分として示されるが、カテーテル552に単一又は複数の開口部を備えてもよい。
【0088】
図28A乃至図28Eは、他の実施例を示しており、同実施例において、流体の移動を行うための形状記憶材料を使用する。幾つかの実施例において、図28A乃至図28Eに示す流体は脳脊髄液であるが、少なくとも幾つかの実施例においては、他の流体が同じ方法で処理されてもよい。形状記憶部材600は、カテーテル602の一部に配置される。形状記憶部材料600は、貫通してカテーテル602の外ルーメン604に対して連通する流体管を備える。第1の温度を有する流体が外ルーメン604内を通過して形状記憶部材600へ達すると、形状記憶部材600が第1の形状601Aを取ることにより、形状記憶部材600に対応する領域におけるカテーテル602が図28Bに示すようにほぼ円形の断面形状を取る。第2の温度を有する流体が外ルーメン604内を通過して形状記憶部材600へ達すると、形状記憶部材600が第2の形状601Bを取ることにより、形状記憶部材600に対応する領域におけるカテーテル602が図28C及び図28Dに示すようにより細長い断面形状を取る。他の実施例において、形状記憶材の温度が、他の手段、例えば、電気抵抗等を使用して変更できる。例えば、内部領域を加熱する実施例においては、リード線は、基端側の位置から形状記憶材に近接する位置に沿って、貫通して、埋設されて或いは他の方法で延び、抵抗要素は、形状記憶材に近接するリード線の間に配置され、リード線を通過する電流により抵抗器が熱を発生させて形状記憶材の形状を変更する。
【0089】
形状記憶部材が第1の形状601Aを取ると、形状記憶部材600に対応するカテーテル602の部分が、形状記憶部材600が第2の形状601Bを取る時よりも多い量を収容できる。すでに述べたように作動させることにより、流体を押圧して、形状記憶部材600に対応するカテーテル602の部分から流体を移動させる。バルブ装置610により、流体は、図28Cに示されるように逆流(右方へ)しないで、図28Aに示されるように前方(左方へ)流れる。バルブ装置610と形状記憶部材600による作動とを組合せることにより、流体はカテーテル602から矢印612,613の方向へ流れる。第2のバルブ装置が、形状記憶部材600の他の面に構成して、流量をさらに制御して「ポンプで注入する」効率を向上させてもよい。
【0090】
図28Eは、図28A乃至図28Dに示される装置によるポンプで注入する作業を行うために付与される温度と時間の相関関係を示す。付与される温度を変更することにより、すでに説明したような作用と継続するポンプで注入する作業が行われる。これに代えて、形状記憶部材600の内管から第1の温度と第2の温度の流体をポンプで注入するよりは、形状記憶部材は、ポンプで注入された流体により熱の移動を行うように構成できる。例えば、形状記憶部材600は、ポンプで注入された流体の周囲の温度に対応する温度において、第1の形状601Aを取ることができ、ルーメン604を介して流体を注入することにより第2の形状601Bに切り換えられる。ポンプで注入された流体による熱交換により、形状記憶部材600の温度は、ポンプで注入された流体の周囲の温度に対応する温度へ戻り、形状記憶部材600は第1の形状601Aに戻る。
【0091】
図29A乃至図29Cは、膨張部材650を備えるカテーテル640を使用して、流体の移動を行う他の実施例を示す。膨張部材650は、圧力が膨張ルーメン660を介して付与されると、基端側から先端側へ順に膨張するセグメント651,652,653,654,655を備える。一番基端側の第1のセグメント651は、図29A及び図29Bに示すように、最初に膨張する。十分に膨張すると、第1のセグメント651は、流体が第1のセグメント651の先端側からその基端側へ流れるのを遮断する。他のセグメント652からセグメント655までが順に膨張すると、流体は、膨張部材650に対応するカテーテル640の領域から排出される。流体は第1のセグメント651を通過できないので、カテーテル640に沿って先端方向へ流れなければならない。膨張部材650は、ポンプで注入された流体と、膨張部材650を膨張させるために使用された流体との間の熱交換を可能にする。
【0092】
図30A及び図30Bは他の実施例を示す。図30A及び図30Bに示される実施例は、バルブ装置710を有するカテーテル700を使用する。電極720,722は、カテーテル700の壁に係合している。各電極720,722は、カテーテル700と一体化又はカテーテル700内に配置されるワイヤ(図示せず)を介して、静電エネルギー源に対して電気的に接続されてもよい。電極720,722に異極性を付与して、それらの電極間に引力を発生させて、カテーテル700の壁が図30Bに示されるように接近させる。これに代えて、同様の極性を電極720,722に付与して、カテーテル700の壁を図30Aに示されるように互いに反発させてもよい。電極720,722による作動と、バルブ装置によるバルブ機能との間において、流体は、矢印724,726に示されるように、カテーテル700を介してポンプで注入される。
【0093】
図30A及び図30Bの実施例は、例えば、図23A図23Cに示されるような異なる熱交換器により使用されてもよい。静電気又は静磁気力を電極と連動させて使用してもよい。また、図30A及び図30Bに示される動作のいずれか一方は、カテーテルの張力により補助されても、或いは、全体的に行われてもよく、例えば、カテーテルは、弾性を有してもよく、或いは、剛性を有して電極により供給される力により生じる動作に対抗することも可能である。MRスキャナ内で使用する場合は、付与されたMRスキャナの磁界を使用して作動させることも可能である。しかしながら、電極(本明細書において述べる全ての装置及び部品も同様に)に使用する材料を考慮する場合、最新の画像装置に使用される大きな磁界内にそのような材料を配置することの可能な効果を考慮する必要もある。
【0094】
上記の実施例は、本発明全体の異なる特徴を例示するものであり、他の構造体や方法と併用して使用されて、本発明の精神を逸脱することなく、記載されたような熱交換や流体の移動を行ってもよい。さらに、上記の特徴は、異なる構成において分離されても、組み合わされてもよい。
【0095】
(生理学的且つ生化学的特性のモニタリング)
本発明の他の用途には、例えば、くも膜下腔や頭蓋内腔等の体内の位置において、センサや検出器を配置する工程を含む。この点に関して、図14は、壁92と同壁に装着された検出器94を有する装置90を備える実施例を示す。同図において、検出器94は、壁92の外側に装着されているが、特定の実施例において、壁92の外面下の検出器94の奥行きや壁92を形成する材料の種類に応じて、壁92内に埋設されても、或いは、壁92の外面の下方に埋設されてもよい。さらに、壁92は開口部を有してもよく、検出器94は壁92の内面に装着され、開口部を越えて延びてもよく、構成された適切な予防措置が取られて、装置90が進行する際に検出器94の損傷を回避する。加えて、検出器94の位置は、装置90の端部から、壁92に沿って任意の位置に変更されてもよい。
【0096】
検出器94は、電気的活動を監視するために有効な脳波記録電極であってもよい。検出器94は、pH、血糖値、酸素圧、二酸化炭素濃度、ナトリウム濃度等の生化学的特性を監視するために有効なセンサであってもよい。したがって、これらの生化学的特性うちの一つは、センサを使用して監視されてもよい。検出器94は、温度を監視するために有効な熱センサであってもよい。よって、流体や組織等の温度は、熱センサを使用して監視できる。また、検出器94は、神経伝達物質の濃度を監視するために有効である。さらに、検出器94は、圧力センサであってもよく、例えば、不純物、薬剤、抗生物質、血液細胞の注入や濃度等の脳脊髄液の特性を検出できる。幾つかの実施例において、検出器94はカテーテル上に配置され、カテーテルと共に挿入されたり、取り除かれてもよい。或いは、他の実施例において、脊髄くも膜下腔を介して所望の場所へ進められるカテーテルを使用して配置される植込み可能な医療装置であってもよい。
【0097】
図15は、装置90の断面図であり、検出器94は壁92内に埋設されたワイヤ96として示される通信装置に連結されてもよい。通信装置は、装置90の長さに沿って任意の距離を移動し、装置90の端部を含む任意の位置において、又は、装置90の端部に(永続的又は一時的に)連結されたハブにおいて、又は、装置90の端部において、又は、装置90の端部に連結されたバルブ装置(図3に示されるバルブ装置36等)において、壁92を出て即ち壁92から離間して延びる。次に、通信装置は、検出器からの信号を処理するステーションに接続される。ステーションは、検出された特性を監視及び/又は制御する際に、集めたり及び/又は生成するデータを記録するように形成される。また、通信装置は、例えば電波や他の電磁的な伝達手段を使用する無線通信の形態を取ってもよい。例えば、ワイヤ96は検出器94に連結されることにより、信号の出力を行う検出器94と共にアンテナとして使用されてもよい。
【0098】
図16は、MRスキャナ100内で摺動する台102上に位置される患者を示す。施術者104は、スキャンされるべき目的領域から遠隔的に配置されるため、MRスキャナ100内の磁気が施術者の操作を妨害しない。シース24は、患者の体内に挿入されており、ワイヤ96として示される通信装置は、バルブ装置36からステーション106へ延びる。ワイヤ96は、長尺状部材26の壁に装着された検出器(図示せず)に連結される。ステーション106は、紙のデータや電子データを含む任意の好適な媒体上で、検出された特性を監視及び/又は制御する際に、集め及び/又は生成するデータを記録するように形成される。また、ワイヤ108の形態における第2の通信装置は、ステーション106として示され、他の施術者がステーション106により生成且つ集められたデータを観察できる他の場所へ延びる。
【0099】
シース24やカテーテル42等の装置(図14において装置90として示される)に連結される検出器を使用して行われる同種類の監視は、脳組織やくも膜下腔内に植込まれた検出器を使用して行われてもよい。図17は、頭蓋内に配置された検出器112を示す。図17は、頭部110の内部の脳18を示し、さらに、カテーテル42が検出器94が配置される壁を有することを示す。また、図17は、ワイヤ96の形態における通信装置が、検出器94に連結され、破線で示すようにカテーテル42の壁内に埋設されることを示す。ワイヤ114として示される検出器搬送機構は、検出器112に連結される。この連結は、例えば、電磁的又は機械的に行われてもよい。検出器112は、その意図される目的地に到達すると、ワイヤ114から分離できるようにワイヤ114に連結されてもよい。そのような実施例において、検出器112は、図16に示されるステーション106等のステーションと無線で通信できる。これに代えて、ワイヤ114として示される検出器搬送機構は、検出器112と連結されたままで、検出器112と遠隔ステーションとの間の通信装置として動作する。検出器112は、搬送されるとその位置を保持するための固定機構を備えてもよい。検出器112がカテーテル42から出ると配置される固定機構を備え、そのような固定機構は非管状形状を有する。例えば、血管系において使用される好適な固定機構には、装置のワイヤ部材の先端チップにおいて配置される「フック(hook)」や「バーブ(barb)」が含まれ、そのようなフックは血管壁に係合して装置を所定の位置に保持する。また、そのようなフックは固定機構として使用されて、検出器112がくも膜下腔に植込まれるような場合において、硬膜に係合する。他の好適な固定機構は、検出器112の張り出し端部であってもよく、従来技術による心室シャントカテーテルの先端チップ上の張り出し形状に類似する。そのような固定機構は、検出器112が脳組織や心室へ向かうカテーテルに配置される場合において有用である。
【0100】
図14、図15及び図17に示される実施例に加えて、複数の検出器を本発明の装置(シース24やカテーテル42等)の一つの壁の内面又は外面に装着してもよく、或いは、本発明の装置の一つの壁内に配置されてもよく、それにより上記したような異なる特性を良好に監視できる。さらに、単一の通信装置(ワイヤ96等)を使用して、複数の検出器をステーションに接続してもよい。加えて、図13に示される各副長尺状部材は、上記した検出器をすでに述べたように備えることも可能である。例えば、図13に示される副長尺状部材は、共に壁に装着された検出器を有してもよく、一方の副長尺状部材に装着された検出器は、脳組織内に配置されて酸素圧を監視するのに有用であり、他方の副長尺状部材に装着された検出器は、脳脊髄液内に配置されてナトリウム濃度を監視するのに有効なように、これら副長尺状部材は長さを有する。
【0101】
体内の組織及び/又は流体の生理学的又は生化学的な状態を監視するための他の形態は、いわゆる「微量透析(microdialysis)」である。これは、細胞外液及び/又は脳脊髄液等の少量の液体を取り出して分析することを含み、これらの液体は、くも膜下腔や、くも膜下腔へ進行することにより到達可能な領域において得ることができる。例えば、脳に近接する脳脊髄液は、上記のくも膜下腔へ到達するための方法を使用して、接近でき、微量透析処置においてサンプリングされる。髄腔へ進行することにより、画像により誘導(例えば、X線やMRIによる誘導)されて、脳の柔組織やくも膜下腔の他の部分へカテーテルを配置して、細胞外液の化学即ち薬物レベルを監視することが可能である。本明細書において述べたカテーテルの幾つかは、本明細書に記載された方法や後に開発される他の方法により、監視及び/又はサンプリングに使用されてもよい。さらに、本明細書において述べた方法は、監視及び/又はサンプリングを補助するために使用されてもよく、本明細書に開示されたカテーテルや、流体の取り出しが可能で、サンプリングや監視を容易に行うことのできる装置や機構を備える他のカテーテル様装置を使用してもよい。
【0102】
幾つかの実施例において、くも膜下腔や頭蓋内腔へ接近することにより得た流体は、他の作業と連動させて生化学的な特性を検査することも可能である。例えば、患者の脳脊髄液を交換又は冷却する機能を行って、くも膜下腔内の組織を局所的に冷却する一方で、脳脊髄液や他の流体の一部をその生化学性を検査するためにサンプリングすることもできる。
【0103】
(脳波記録用電極の配置)
上記したように、脳波記録(EEG)用電極である検出器は、本発明の方法を使用して、脊髄及び頭蓋内領域のくも膜下腔及び脳組織へ挿入できる。例えば、てんかんの治療において、発作の起きている部位を特定することが困難な場合が多い。特に困難な症例において使用される技術には、EEG用電極を脳の表面(皮質脳波記録法)又は脳質内(深部電極植込み)に直接配置する工程が含まれる。EEGの監視には、脳細胞から発せられる極めて弱い電気信号の検出が含まれるため、頭皮筋肉からの干渉の排除、頭蓋骨からの信号抵抗の排除、及び脳組織に近接して電極を配置してこれらの信号を排除することは、場所の特定や検出の感度や特異性を高めるための手段である。
【0104】
てんかん様症状を検出する感度や特異性を高める一方で、皮質脳波記録法や深部電極植込みのような技術は、深部に電極を配置するために頭蓋にバーホールを形成したり、皮質脳波記録法において皮質に電極アレイを配置するための頭骨切開を行うため、従来通り侵襲的であった。左右相称に監視することが望ましい場合は、バーによる頭蓋への穿孔や頭骨切開を両側に行ってきた。しかしながら、本発明の方法を使用することにより、EEGの電極は、経皮的に脊髄くも膜下腔へ挿入して頭蓋内腔へ進めることにより、脳の表面や脳組織に配置することが可能である。
【0105】
EEGの電極が、図17に関して述べた検出器112の形状である場合は、複数の検出器をワイヤの形状をなす通信装置と接続されてもよい。複数のワイヤや検出器による組合せは、一度の処置を行う間に配置でき、異なるワイヤは、異なる直径や剛性等を有することが可能である。よって、EEGの電極のアレイが、脳組織上やその内部に配置されて、深部の脳構造からの脳波図を描くことができる。例えば、2つの通路を有するカテーテルは、これらの通路の一方に配置されたガイドワイヤ上を所望の場所に向かって進められる。次にEEGの電極が開口する通路を通って所望の場所へ配置される。配置されると、カテーテルはガイドワイヤ上を後退して、ガイドワイヤと第1のEEGの電極は所定の位置に残される。さらに、カテーテルは、ガイドワイヤ上を再度挿入されて、第2の電極が開口する第2の通路から所望の場所へ配置される。この工程は、必要な回数を繰り返すことができる。他の例示される実施例において、カテーテルはガイドワイヤ上に挿入され、ワイヤ等の第2の装置は、その先端チップ付近に配置された離脱可能なEEGの電極を有し、カテーテル内へ進められて先端部に達すると、EEGの電極が解放される。カテーテル全体を取り除くことなく、他のEEGの電極が同様に挿入されてもよい。
【0106】
(脊髄及び脳への刺激)
医学及び研究において、脳や脊髄へ電気的刺激を送ることが望ましい場合がある。本発明の方法を用いて、そのような刺激に適した電極を配置して、患者の組織に電流を流したり、加熱したり、極低温刺激(cryothermal stimulation)を与えることができる。ワイヤ等の伝達装置は、電極に接続されて電極へ刺激信号を送る。また、刺激信号は、無線で電極へ伝達されてもよい。さらに、ワイヤ等の伝達装置が使用される特定の実施例において、ワイヤは、刺激信号を送るのに有用なステーションに接続され、患者の体外に配置され、或いは、皮下腔に植込まれるステーションとして患者の体内に植込まれる。上記した検出器を挿入するための方法及び装置は、刺激伝達装置を配置するのにも使用できる。
【0107】
(腫瘍の治療用の放射性ペレット又はビーズの植込み)
本発明の方法は、放射線を腫瘍に照射するために、放射性ペレット又はビーズを脳等の領域において患者の体内に植込む際に使用できる。放射線を腫瘍に照射するために放射性ペレットを使用することは周知であるが、本発明の方法を用いてそのようなペレットを配置することは新規である。本発明の方法を用いて行われる他の全ての用途と同様に、放射性ペレットの配置は、MRにより視覚化されたものを監視できる。
【0108】
(脳の損傷の除去)
機能的脳神経外科において、脳に損傷を形成することが望ましい場合がある。これは、慢性の疼痛症候群、パーキンソン病、他の病状において見られる。損傷を形成するための最新の技術は、CTやMRによる定位固定を含み、極低温や熱による除去装置が、手術室で脳神経外科医が頭蓋に開けたバーホールを介して、脳の所望の場所へ挿入される。
【0109】
本発明の方法を用いて、装置(シース24やカテーテル42等)やガイドワイヤ(ガイドワイヤ44等)が、くも膜下腔(例えば、脊髄くも膜下腔)に挿入されて、図1に関して述べたように所望の場所へ進められる。次に、熱エネルギーや極低温エネルギー等のエネルギーが、カテーテル、シース、又はガイドワイヤに埋設或いは装着された除去装置に付与され、或いは、カテーテルやシースの通路から挿入される除去装置に付与されて、損傷が脳組織等の近接する組織に形成される。他の応用領域には、従来の技術では到達できない、或いは、従来の技術で治療すると死亡率が高い腫瘍が含まれる。そのような場所には、脳幹、脊髄、くも膜下腔や頭蓋内腔内の場所が含まれる。除去装置が装置やガイドワイヤに装着又は埋設される症例において、除去装置は、装置やガイドワイヤの先端部に配置され、或いは、装置やガイドワイヤの長さに沿って任意の好適な場所に配置されてもよい。他の実施例において、除去装置は、回転部材や切断部材を備えてもよい。切除された組織部分を回収するために、カテーテルやシースのルーメンから吸引を行ってもよい。
【0110】
除去後の治療の成果を監視するために、1種類以上の画像診断法を使用することにより、損傷を形成し、部分的な成果を観察し、挿入装置(カテーテル42等)を再配置することなく、或いは、挿入装置を最小限度に操作することにより、損傷を拡大させることができる。さらに、本発明の方法を用いて行われる組織切除は、従来の外科手術と併用して行うことにより、従来技術による切除の前後に形成して、或いは、術前に切除を強化したり、不完全に切除された損傷の縁部を改善させ、又は、他の方法により異なる種類の悪性腫瘍からの転移性疾病等の複数の脳障害を伴う疾患において広範囲に渡って切除を行う。
【0111】
(1つ以上の脳室への接近)
医学において、脳室系は、一時的(脳室造瘻術)及び永続的(シャント術)にカテーテル法が用いられることが多い。カテーテル法により、水頭症を治療したり、血圧を監視したり、頻度は多くないが、異なる薬剤を投与したり、脳脊髄液を取り出したりする。しかしながら、最近の神経外科治療では、頭蓋骨にバーホールを開け、通常は前頭葉や頭頂葉の脳組織内にカテーテルを挿入して脳室に到達する。経皮的にくも膜下を進行する本発明の方法を用いて、側脳室、第3脳室及び第4脳室に到達できる。したがって、本発明の方法を用いて、頭部内に位置する少なくとも1つの脳室に到達できる。上記したように(本明細書において記載される医療装置の全ての動作を伴う)画像診断法を使用して、医療装置が脳室に接近して進入する際に、医療装置の位置を監視できる。
【0112】
さらに、本発明の方法を用いて、頭部内に位置する少なくとも1つの脳室から脊髄液を排出することが可能である。例えば、シャント術を含む用途において、腹膜腔や心臓への静脈環流において、シャント部品を配置する必要がある。これは、本発明の方法を用いて行うことが可能である。例えば、挿入位置において経皮的に装置を脊髄くも膜下腔へ挿入して、くも膜下腔へ装置を進めた後に頭部内に位置する1つ以上の脳室に到達して及び/又は脳室から排出を行う。排出は、脳室及び排出位置を測り、脳脊髄液や他の流体が該脳室から一方向に流れるような一方向バルブとして動作する機構を使用して行うことが可能である。他の実施例において、本発明の方法を使用して、植込み可能な装置を挿入し、脳脊髄液の排出、圧力制御、又は脳の一領域から他の領域までを平衡に保つことにより、例えば、水頭症の治療を行う。
【0113】
(脳の生体組織検査)
脳を取り巻く膜(軟膜)を貫通すると、脳は極めて軟質のゼラチン質の組織である。神経外科による脳の切除は、メスやハサミで切断するよりも、脳組織を吸引するための吸引器に装着される管状の装置を使用することが多い。脳組織の特性については、吸引されてから生体組織検査が行われる。
【0114】
本発明の方法を用いて、装置が、脳の一部を除去するために使用される装置の通路から挿入される。例えば、脳の一部を除去するために使用される装置は、カテーテル等の装置の通路から挿入するように形成される従来の定位装置であってもよい。
【0115】
これに代えて、装置は、シリンジや他の機構により吸引器に連結されて、カテーテルやシースのチップに位置する組織の標本を回収するために使用されてもよい。生体組織検査の他の特徴は、診断材料を回収するために、組織を複数サンプリングする必要がある場合が多いことである。よって、2種類以上の標本を回収するためにカテーテルを再配置する必要がある。一旦装置が配置されたならば、そのために行った動作を繰り返し行うことを回避するのが望ましい。例えば、カテーテルが目的領域の基端側に配置され、吸引器がカテーテルのルーメンに固定されて脳の一部が回収される。次に、シースやカテーテルが、初めに配置(ガイドワイヤを所定の位置に残すこと)を容易にするために使用されたガイドワイヤに沿って移動し、組織の標本が適切でなければ、カテーテルはガイドワイヤ上に再配置されて、他の生検用の標本が同様の方法により採取される。
【0116】
上記したように、幾つかの実施例において、吸引力は、脳組織を回収するために使用される唯一の力である。他の実施例においては、回転部材を使用して、組織を切除してカテーテル内に引き込んでもよい。幾つかの実施例において、他の切断装置を使用してもよく、例えば、先端部に往復ブレードを備えるカテーテルの基端部から、同ブレードを制御することも可能である。
【0117】
(神経系疾患の治療)
本発明の方法を用いて、遺伝物質をカテーテルの通路から挿入して、神経系疾患を患っている患者の体内に配置して、その疾患の治療を補助することも可能である。そのような遺伝物質にはヒト幹細胞が含まれる。さらに、脳神経の圧迫から生じる神経系疾患も、本発明の方法を用いて治療することが可能である。例えば、本発明の方法を用いて微小血管減圧術を行うことも可能である。そのような用途において、ルーメンを有するカテーテルを挿入位置において経皮的に脊髄くも膜下腔へ挿入して、カテーテルをくも膜下腔内に進めて、装置をルーメンから挿入して血管ループと1つ以上の脳神経との間に配置し、血管ループにより脳神経の圧迫を取り除くことも可能である。他の実施例において、装置を挿入して神経を切断し、神経系疾患を緩和することも可能である。
【0118】
(血管の凝固又は焼灼)
従来の外科手術においては、金属製の電極を出血血管に対して使用し、電極から電流を流して組織を加熱して血管を焼灼する。その焼灼法は、鉗子の先端を接近させて「2点」装置により行われ、それにより電流のループを形成する。本発明の方法を用いることにより、血管は出血が観察されると、或いは、出血を止めるために、手術時に血管を凝固させる。例えば、カテーテルは、挿入位置において経皮的に脊髄くも膜下腔へ挿入され、くも膜下腔内を進められる。そして、「2点」又は「ボビー(Bovie)」装置(従来の外科や神経外科において使用される)等の装置が、カテーテルの先端部付近に接続され、或いは、カテーテルはルーメンを備えて装置はルーメン内を進められる。また、単極焼灼法も周知であり、他の実施例において上記と同様の方法により行うことが可能である。
【0119】
したがって、焼灼要素を有する装置や、焼灼要素(電流誘導装置に装着できるように形成された)に接続された伝達装置(ワイヤ、絶縁ワイヤ、ワイヤループ、又は絶縁ワイヤループ等)を本発明の方法と共に使用して、血管を加熱して凝固又は焼灼させることも可能である。これに代えて、装置は、焼灼要素としてガイドワイヤの端部に配置される鉗子を備えてもよく、鉗子は開閉して従来の「2点」装置上において鉗子と同様の働きをする。伝達装置は、ガイドワイヤを含む本発明の装置の1つに装着される。他の実施例において、MRスキャンを行うのに使用される強磁界は、小型の焼灼装置により使用でき、焼灼装置は、磁界の変化により焼灼用の電流を焼灼装置内に誘導するように構成される。焼灼装置の一部である伝達装置は、ワイヤループであってもよく、挿入される通路から出た後にわずかに張り出す。
【0120】
(カテーテル方法学に関する注意事項)
上記の装置は、幾つかの方法により所望の位置へ挿入することができる。幾つかの方法を使用して、シースを経皮的に挿入して装置を脊髄くも膜下腔へ挿入するが、シースを含むこれらの方法は、シース内を他の装置が通過することにより継続して行われる。次の工程では、ガイドワイヤ又はガイドカテーテルが挿入される。ガイドワイヤは、シースが備わっている場合はシース内を通過して、脊髄くも膜下腔内へ進められて所望の位置に到達する。幾つかの実施例において、MR映像法や他の画像診断法を使用してガイドワイヤの進行を監視することができる。ガイドワイヤが所定の位置に達すると、ガイドカテーテルが挿入される。ガイドカテーテルはルーメンを備え、ルーメンはショートルーメンであってもよく、或いは、ガイドワイヤを収容できるようにカテーテルとほぼ同じ距離に渡って延びてもよい。ガイドカテーテルは、ルーメンを使用してガイドワイヤに続くことも可能である。幾つかの実施例において、ガイドカテーテルを挿入する前に、ガイドワイヤが進められて所望の位置に達するが、他の実施例においては、ガイドワイヤは短い距離を進められて、ガイドカテーテルはその先端部がガイドワイヤの先端チップ付近にくるように進められ、ガイドワイヤ及びガイドカテーテルが所望の位置に達するまでこれらの工程が繰り返される。
【0121】
ガイドカテーテルを備える実施例において、上記した装置の1つのように、所望の装置を担持するカテーテル装置は、ガイドカテーテルのルーメンを通過して所望の位置まで進められる。ガイドカテーテルは、カテーテル装置が所望の位置に達するまで、カテーテル装置を保護又は収容するために備えられている。また、複数のカテーテル装置を挿入する必要がある場合に、ガイドカテーテルは、周囲の組織や膜を複数のカテーテル装置が通過する際に生じる炎症や損傷から保護するために使用されてもよい。
【0122】
他の実施例において、ガイドカテーテルを省いて、カテーテル装置をガイドワイヤ上へ挿入してもよい。ガイドワイヤが所望の位置に達するとカテーテル装置が挿入され、或いは、ガイドワイヤが前方に向かって一定の距離にわたって押圧されると、カテーテル装置がすぐその後に続いて徐々に挿入されてもよい。カテーテル装置を徐々に挿入するのは、くも膜下腔内を一定の距離に渡って補強することにより、ガイドワイヤの押圧性を高めるためである。また、別の理由としては、ガイドワイヤがくも膜下腔内の膜を押圧するのに適していない場合があり、例えば、軟膜を貫通する必要がある場合に、ガイドワイヤを湾曲させて、脊髄くも膜下腔の組織を損傷する可能性があるためである。
【0123】
他の実施例はガイドワイヤを備えなくてもよい。そのような実施例は、ガイドワイヤに類似する方法で、脊髄くも膜下腔へ挿入及び進行する場合は、シース内を通過するカテーテルを使用することができる。そのような実施例では、使用されるカテーテルは、カテーテル装置が挿入されるガイドカテーテルであってもよく、或いは、挿入される第1のカテーテルは、カテーテル装置自身であってもよい。
【0124】
(死体に関する研究)
(研究材料と方法)
防腐処理を施していない二体の男性死体(病死による)を腹臥位に配置した。透視法により、各死体には、標準的な単一壁穿刺用血管造影針を使用して、L3−4及びL4−5間空において腰椎穿刺が行われた。次に、0.038インチ(約0.965mm)径のガイドワイヤが挿入されて上方へ向けられた。続いて、5フレンチ(F)(約1.6mm)の血管造影用拡張器が、ガイドワイヤ上をくも膜下腔へ進められて経路を拡張し、5フレンチ(F)(約1.6mm)の動脈用シースがその先端チップを上方へ向けて配置された。各死体において、一方のシースは、脊髄の後方に対してカテーテル法を行うために使用され、他方のシースは、脊髄の前方に対してカテーテル法を行うために使用された。
【0125】
シースの配置に続いて、血管造影技術がくも膜下腔に対して使用された。具体的には、透視法において親水性コーティングされ角度を有する先端を備えるガイドワイヤ(東京に所在するテルモ(株)によるラジフォーカスガイドワイヤ(商標Radiofocus)、米国マサチューセッツ州ウォータタウンに所在するメディテックボストンサイエンティフィック社により販売される)が、施術者の管理下でその先端を前方又は後方へ向けて進められた。可能な限り正中位置を維持するように注意が払われたが、常時維持することはできなかった。さらに、生理食塩水を注入して、くも膜下腔を膨張させることにより進められた。注入圧力は、死体の脊髄上方の注入袋の高さにより容易に調整できたが、注入圧力及びくも膜下腔の圧力は特に監視されなかった。
【0126】
頭蓋内腔に挿入した後で、カテーテルを操作してカテーテルを挿入する領域を調べた。カテーテル法による操作に続き、切断作業のためにカテーテルが所定の位置に残された。所定の位置に配置されているイントロデューサ及びマイクロカテーテルのある皮膚において、標準的なワイヤカッターを使用してシースが切断された。次に、組織の残端は縫い合わされ、死体は防腐処理が施された。
【0127】
防腐処理の後で、一方の死体について、カテーテル法により脊髄損傷の有無を調べた。頸椎から胸椎にかけて椎弓切除を行い、さらに下方へ向かってカテーテルの挿入位置に達した。切開された硬膜は、所定の位置に配置されたカテーテルと共に写真に収められた。脊髄が取り除かれて、所定の位置に配置された腹部用カテーテルと共に写真に収められた。脳の切開が行われてカテーテルの位置が確認され、予想しなかった脳組織への損傷を調べた。カテーテルが視交叉領域を通過した場合は、その領域に対して特に注意を払って調べた。
【0128】
(結果)
各例において、ガイドワイヤは、胸椎及び頸椎内を比較的容易に進んだ。幾つかの例においては、カテーテルはガイドワイヤを配置することなく容易に進められた。大後頭孔において、後部用カテーテルを第4脳室へ進入させる試みがなされた。後方窩内の小脳後部(retrocerebellar)腔への進行が比較的容易に行われて観察されたが、後方窩の周囲を進行して前方窩から橋へ達する場合があった。また、小脳の後方を上方に進めて小脳テントの位置まで比較的容易に達した。各死体において、正中部へのカテーテル法が行われた時に、頭蓋の基部において硬膜に達した。側方や後部へのカテーテル法において、ガイドワイヤの偏位が容易に起きたが、ガイドワイヤの軟質の先端チップが正中部において硬膜を貫通するのに不適当であったため、ガイドワイヤの剛性の高い端部を使用して硬膜を貫通した。その後、上方へのカテーテル法は容易に行われた。死体1において、透視法により第4脳室へカテーテル法を試みる間に、後方窩用カテーテルは最終的に小脳を越えた。死体2において、第4脳室には良好にカテーテルが挿入されて、以下に述べるように造影剤が注入された。
【0129】
透視法を使用しただけでは、第4脳室の位置を完全に確定することはできなかった。造影剤を注入したが、小脳の構造の輪郭を捕らえることなく、頭蓋内に造影剤が広がった。二死体のうちの一方において、第4脳室へのカテーテルの挿入が可能なところまで、カテーテルにより盲目的に進行した。造影剤を注入することにより、第4脳室への充填、シルビウス水道への逆流、第3脳室への流入、及びモンロー孔を介して両側の側脳室前角への流入が確認できた。
【0130】
両死体において、くも膜下腔の前方から橋部へのカテーテル法は容易に行うことができた。5フレンチ(約1.6mm)程度のカテーテルが、この位置へ良好に進められた。上部脳橋位置において、両死体の硬膜に対して、標準的な技術を使用してより高度なカテーテル法を行うことはできなかった。両死体において、複数のカテーテルの再配置を試みたが、ガイドワイヤはその位置から繰り返し偏位した。そのため、ガイドワイヤが反転したので、ガイドワイヤの剛性の高い端部を使用して硬膜を「突破(punch)」した。この硬膜は、リレクイスト(Lilequist)膜と思われるが、解剖の後では確実に確認することができなかった。一旦越えると、カテーテル法を使用して、鞍上槽へ、マイクロガイドワイヤ(商標Radifocus、テルモ(株)、米国カリフォルニア州フレモントに所在するターゲット セラピューティックス ボストンサイエンティフィック社により販売される0.018インチ乃至0.013インチ(約0.457mm乃至0.330mm)のテーパド グライドワイヤ ゴールド(商標Tapered Glidewire Gold))を円滑に挿入した。トランジット(登録商標Transit)18マイクロカテーテル(米国フロリダ州マイアミレイクに所在するジョンソンエンドジョンソン社より販売されるコルディス エンドバスキュラー システムズ(登録商標Cordis))が、ガイドカテーテルとしてほとんどの症例において使用された。幾つかの症例においては、ガイドカテーテルとして、トラッカー(商標Tracker)38カテーテル(ターゲットセラピューティクス(登録商標Target Therapeutics、ボストンサイエンティフィック社)を使用した。死体1において、単一の4フレンチ(約1.3mm)イントロデューサカテーテルが使用されたが、これは、メドトロニクス社により買収された米国カリフォルニア州サニービルに所在するエムアイエス社(MIS,Inc.,Sunnyvale,CA))より製造されている。そのカテーテルを使用して、イントロデューサカテーテルは鞍上槽へ進められた。
【0131】
死体1の鞍上槽において、カテーテルは比較的容易に進められて、シルビウス裂へのカテーテル挿入が観察され、造影剤が注入されると、シルビウス裂内を流れるのが確認された。カテーテルはその位置に残され、死体には防腐処理が施された。
【0132】
死体2において、鞍上槽へのカテーテルが挿入された後に、統制度に関する実験が行われた。まず、すでにカテーテルが挿入された中頭窩から反対側にある前頭窩にカテーテルが挿入された。カテーテルは、眼窩蓋に沿って進められて、上方に湾曲するのが観察され、カテーテルの先端チップは、最終的に前頭葉に対して前方に位置して、さらに前頭洞へ進んだ。次に、カテーテルは眼窩蓋の位置まで後退させられ、これは造影剤の注入により確認された。さらに、カテーテルを再配置して、中頭蓋窩の対側床にカテーテルを挿入して造影剤を注入して確認した。
【0133】
後方窩へカテーテルが進められて、上記したように、第4室において確認された。造影剤を注入後に、第3室に幾らか混濁が見られた。この混濁は、前方へ配置されるカテーテルに対して「道路地図」として使用され、脚間槽の領域から直接第3室へカテーテルの挿入を試みた(透視法により、正確な位置は特定されなかった)。脳の下面にある軟膜内層は、ガイドワイヤの軟質の端部では穿刺させることができず、第3脳室はそれにより隆起したが穿刺されなかった。しかしながら、保持された造影剤の排出により確認されたように、最終的に第3脳室へ進入することができた。これは、第3脳室のカテーテルから造影剤を注入して確認した。次に、この死体は防腐処理が施された。
【0134】
死体1においては、カテーテルを挿入した脊髄の構成部分を解剖して調べた。上頸部から腰椎の穿刺領域までを椎弓切除した後に、後部硬膜が切除されて映し出された。背側のイントロデューサカテーテルが、脊髄を損傷することなく、脊髄の上方にあるのが確認された。イントロデューサカテーテルは取り除かれ、脊髄は、両側の神経根を切断して取り出すことにより切除され、腹部カテーテルは脊髄と共に保持された。脊髄は、前外側へ向かって横行し、異なる神経根に対して前後方に曲がって進むのが観察された。脊髄の明らかな損傷は見られなかった。
【0135】
死体1において、脳の解剖に先だって、骨頭切除後に血管にラテックスを注入した(動脈に赤色のラテックスを注入し、静脈に青色のラテックスを注入する)。左前側頭領域を広範囲に渡ってドリルで骨に孔を開けて解剖が行われ、シルビウス裂及び頭蓋底頂部領域に対して拡張された外科処置が再現された。手術用顕微鏡を使用して、中脳の前方、即ち小脳と中脳との間にマイクロカテーテルを確認した。マイクロカテーテルは、橋底部の右方へ移動して下方へ続いていた。脳幹の前方をカテーテルが通過する間において、カテーテルによる脳組織の損傷は見られなかった。カテーテルは、左シルビウス裂の溝において横方向に延びていた。側頭葉を取り除くことにより、中脳動脈の枝管付近のシルビウス裂内にカテーテルを確認した。後方窩用カテーテルが小脳に進入するのが観察されたが、さらに綿密な解剖による観察は行われなかった。
【0136】
死体2を解剖することにより、放射線から推測されたように、第3脳室用のカテーテルが所定の位置(第3脳室内)に配置されていることが確認された。カテーテルは、脳幹を貫通することなく小脳に沿って脳幹の前方を通過していた。また、脳蓋底動脈は、カテーテルから分離しているのが確認された。第3脳室の穿孔位置は、脚間槽から正中部においてほぼ垂直方向にあった。第4脳室のカテーテルは、幾らか張力を受けて横方向に湾曲していたが、小脳が正中部において分割され、その正確な位置は再構築できなかった。しかしながら、造影剤の注入中の画像によれば、第4脳室の蓋部において小脳組織内にあると考えられた。
【0137】
当業者には、本発明は、本願に記載され、意図される特定の実施例以外にも、様々な形態で実施できることが理解されるであろう。したがって、請求の範囲に記載される本発明の範囲および精神から逸脱することなく、形態および詳細を変更することができる。
【図面の簡単な説明】
【0138】
【図1】中枢神経系の選択された領域及び脊髄くも膜下腔へ挿入された医療装置を示す図。
【図2A】図1に示される脊髄の腰椎部分を示す拡大図であって、皮膚に装着するのに適した医療装置を示す。
【図2B】図1に示される脊髄の腰椎部分を示す他の拡大図であって、皮膚に装着するのに適した医療装置を示す。
【図3】皮膚に装着するのに好適でありシースとして示される医療装置を示す平面図。
【図4】図3に示されるシースに連結された皮膚装着装置の異なる実施例を示す図。
【図5】図3に示されるシースに連結された皮膚装着装置の異なる実施例を示す図。
【図6】図3に示されるシースに連結された皮膚装着装置の異なる実施例を示す図。
【図7】図3に示されるシースに連結された皮膚装着装置の異なる実施例を示す図。
【図8】図3に示されるシースに連結された皮膚装着装置の異なる実施例を示す図。
【図9】図3に示されるシースに連結された皮膚装着装置の異なる実施例を示す図。
【図10】皮膚に装着するのに好適な医療装置の長尺状部材の実施例を示す断面図であって、その非円形の形状が示される。
【図11】皮膚に装着するのに好適な医療装置の長尺状部材の他の実施例を示す断面図であって、2つのルーメンが示される。
【図12】連結された2つの副長尺状部材示す端面図。
【図13A】異なる長さからなる副長尺状部材示す図。
【図13B】2つの連結された副長尺状部材の端部の異なる実施例を示す部分側面図。
【図13C】2つの連結された副長尺状部材の端部の異なる実施例を示す部分側面図。
【図13D】2つの連結された副長尺状部材の端部の異なる実施例を示す部分側面図。
【図13E】2つの連結された副長尺状部材の端部の異なる実施例を示す部分側面図。
【図13F】2つの連結された副長尺状部材の端部の異なる実施例を示す部分側面図。
【図13G】2つの連結された副長尺状部材の端部の異なる実施例を示す部分側面図。
【図13H】2つの連結された副長尺状部材の端部の異なる実施例を示す部分側面図。
【図14】医療装置の外面に装着された検出器を示す部分側面図。
【図15】医療装置の壁に配置されたワイヤとして示される通信装置に連結されている図14の検出器を示す断面図。
【図16】磁気共鳴スキャナ内に位置する患者に、本発明による方法の実施例を使用する施術者を示す図。
【図17】脳組織内に配置される検出器を示す図。
【図18】貫通装置の一実施例を示す図。
【図19】ブレード材料により連結された2つの副長尺状部材の一実施例を示す部分側面図。
【図20】ブレード材料を巻きつけられたカテーテルの一実施例を示す部分側面図。
【図21A】流体を取り除き、注入するためのカテーテルの一実施例を示す部分側面図であって、カテーテルと共に使用されるポンプ及び熱交換器が図式化されている。
【図21B】図21Aのカテーテル部分を示す断面図。
【図21C】図21Aのカテーテル部分を示す他の断面図。
【図21D】組織の一領域と流体との熱交換を行うための閉鎖システムの一実施例を示す部分側面図。
【図21E】図21Dのカテーテルの一部を示す断面図。
【図22A】拡散カテーテルを備える流体交換カテーテルの一実施例を示す部分側面図。
【図22B】図22Aのカテーテルの一部を示す断面図。
【図22C】図22Aのカテーテルの一部を示す他の断面図。
【図23A】拡張状態にある拡張部材を備えるカテーテルの一実施例を示す部分側面図。
【図23B】異なる拡張状態にある拡張部材を備えるカテーテルの一実施例を示す部分側面図。
【図23C】異なる拡張状態にある拡張部材を備えるカテーテルの一実施例を示す部分側面図。
【図24】先端チップを越えて配置された拡張部材を備えるカテーテルの一実施例を示す部分側面図。
【図25】先端チップを越えて配置された拡張部材を備えるカテーテルの他の実施例を示す部分側面図。
【図26】押出し通路を備えるカテーテルの一実施例を示す一部破断側面面。
【図27A】カテーテルの内部に配置される流体移動装置及び熱交換装置を備える装置の一実施例を示す部分側面。
【図27B】図27Aの装置の一部を示す断面図。
【図28A】第1の形状における形状記憶部材を備えるカテーテルの一実施例を示す部分側面図。
【図28B】図28Aの第1の形状における形状記憶部材を示す断面図。
【図28C】第2の形状における形状記憶部材を備えるカテーテルの一実施例を示す部分側面図。
【図28D】図28Cの第2の形状における形状記憶部材を示す断面図。
【図28E】図28A乃至図28Dの第2の形状における形状記憶を備える装置へ注入された流体の時間の経過に対する温度変化を示す図式。
【図29A】流体を一定方向へ移動させて熱交換を行うために、膨張部材を備えるカテーテル、膨張部材を使用するための設計及び方法の一実施例を示す部分側面図。
【図29B】流体を一定方向へ移動させて熱交換を行うために、膨張部材を備えるカテーテル、膨張部材を使用するための設計及び方法の他の実施例を示す部分側面図。
【図29C】流体を一定方向へ移動させて熱交換を行うために、膨張部材を備えるカテーテル、膨張部材を使用するための設計及び方法の他の実施例を示す部分側面図。
【図30A】作動させるための電極及び流れる方向を制御するためのバルブ装置を備えるカテーテルの一実施例を示す部分側面図。
【図30B】作動させるための電極及び流れる方向を制御するためのバルブ装置を備えるカテーテルの他の実施例を示す部分側面図。
【技術分野】
【0001】
本発明は、外科的方法及び医療装置に関する。より詳細には、本発明は、くも膜下腔及び頭蓋内腔を含む、くも膜下腔における進行及び処置に有用な方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
20世紀において、脳神経外科は、顕微外科的技術の導入、動脈瘤クリップ等の新しい器具の開発、及び手術への新しい取り組み方を通して発展してきた。外科医は、頭蓋骨を形成する骨の一部を取り除き(頭骨切開)、脳の深部の組織を手術し、同時にその手法に関する問題を最小限にとどめる高度な装置を開発してきた。頭蓋内及び脊髄くも膜下腔に対する外科的な取り組み方には、従来、皮膚の切開、頭蓋骨又は脊骨を覆う骨質の被覆の切開、骨の除去、及び神経組織へ到達するための髄膜からの切開が含まれていた。画像診断法が診断的評価に組み込まれたが、20世紀末になって、コンピュータ断層撮影や血管造影や、最も新しいところでは磁気共鳴(MR)走査法を実際の外科的治療に組み入れるための重要な試みが行われた。
【0003】
残念ながら、開頭術には、現在の画像診断法への適用性に対して限度があった。つまり、外科医は、患者の頭部付近にいて、同時に、頭骨切開により脳を手術し、無菌状態を維持し、患者が中で静止していなければならない大型の走査装置を使って脳の走査を行うことができないからである。画像を得るための装置と頭部を手術する方法との間には矛盾があるため、現在利用可能な画像装置を使用して、そのような手術を適宜行うための能力には限界がある。
【0004】
他の問題は、脳の表面へは、従来の開頭術により到達できるが、より深部の組織への接近は、益々困難になっていることである。頭骨切開の後で、脳内や脳周辺の異なる領域へ容易に到達できるように、脳は収縮されることがあり、そのために脳組織を移動させる必要が生じる場合がある。これらの収縮や移動により、無菌状態を維持し、組織への直接の損傷を回避する上での問題や、組織に損傷を与えないで定位置に戻すための問題が生じる。
【0005】
過去20年間に、血管内神経外科の発達により、動脈内で使用するための特殊な装置が考案されてきた。これらの装置には、カテーテルやガイドワイヤに限らず、カテーテルを介して挿入される塞栓物質が含まれ、それにより、塞栓形成後に頭骨切開を介して行われる治療を向上させることができる。幾つかの症例においては、頭骨切開の必要性が排除されている。しかしながら、脳への接近は、血管内から行われるものに限られている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記した懸案を鑑みてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、医師に治療用及び/又は診断用の手段を提供するための異なる方法及び装置に関する。くも膜下腔内の進行及びカテーテル法が提案され、そのための装置及び方法が開示される。くも膜下腔は、脊髄や脳脊髄液(CSF)の主要部分を収容するための室である。脳脊髄液は、脳室や脳洞や脊髄を満たして包囲する流体であり、潤滑剤及び衝撃に対する機械的な防壁として動作する。脊髄や脳(頭蓋内腔)の領域への接近は、くも膜下腔に到達することにより行われる。接近方法には、診断及び治療目的により使用されるカテーテル法が含まれる。幾つかの実施例には、カテーテル法が含まれ、それにより脊柱の選択された箇所においてカテーテルを経皮的に挿入してくも膜下腔へ達する。他の実施例には、くも膜下腔を通過した後で、カテーテルを頭蓋内腔及び脳葉間へ挿入する工程が含まれる。さらに、幾つかの実施例は、くも膜下腔への到達を確実にして、カテーテルの挿入又は置換を容易にするために、イントロデューサシースの使用を必要とする。そのようなカテーテル法により所望の箇所に到達すると、治療用及び診断用の方法及び装置が提案される。
【0008】
幾つかの実施例において、くも膜下腔に対するカテーテル法により到達した領域(脊柱や脳の領域を含む)に輸液(流体の注入)を行うための方法及び装置が提案される。幾つかの実施例において、輸液には、脳葉、脊柱における領域、くも膜下腔及び/又は頭蓋内腔から接近可能な他の特徴を視覚化するための補助を行う物質が含まれてもよい。他の実施例において、流体には、治療薬、薬剤、抗生物質、治療及び/又は診断用に使用される他の物質が含まれてもよい。
【0009】
他の実施例では、輸液により、脳脊髄液又は近接する組織の通常即ち実際の温度とは異なる温度において流体を提供してもよい。一実施例では、局所的に低体温状態を誘発させるために、脳脊髄液において通常発生するよりも低い温度の流体が、脳や脊柱の領域に提供される。外科治療の条件を改善する治療手段は、局所的な低体温状態を誘発させる工程を含む。冷水中に沈んで溺れかけた犠牲者が、長時間に渡って脳組織に酸素が供給されなくても、ほとんどの脳機能を取り戻して、奇跡的に回復することは広く知られている。その理由の一つとしては、低体温状態により細胞の代謝率が低下して、酸素不足により死滅する細胞が生き残ることができるためである。局所的な低体温状態を誘発させる工程は、血液の供給を短時間制限する手術において、組織を保護するための有用な方法である。また、致命的な傷を負った患者を低体温状態に保つことにより、医師は時間をかけて傷の診断や治療を行うことができる。他の実施例において、脳脊髄液の通常の温度よりも高い温度の流体を注入することにより、局所的な細胞の代謝や成長を促進させ、或いは、他の診断や治療行為を容易にすることも可能である。他の実施例においては、流体を第1の位置から排出して、脳脊髄液をろ過し、脳脊髄液を第2の位置へ注入することにより、脳脊髄液から物質をろ過することを必要とする。
【0010】
幾つかの実施例に関しては、注入された流体は、実際に、くも膜下腔の他の領域から排出される脳脊髄液である。一実施例においては、脳脊髄液は、カテーテルに沿ってその基端側の位置から排出されて、その先端側の位置へ移動させられる。他の実施例においては、第1のカテーテルは脳脊髄液の排出に使用され、第2のカテーテルは脳脊髄液の注入に使用される。さらに別の実施例では、脳脊髄液以外の流体を使って注入される。また、別の実施例では、くも膜下腔或いは頭蓋内腔へ挿入されるカテーテルを使用して、脳脊髄液を排出して脳の一領域の圧力を調節し、植込み可能な装置を備えて、カテーテルが抜去された後の脳脊髄液の流動を可能にする。
【0011】
特定の実施例では、カテーテルの内部に熱伝達装置を構成することにより、熱の伝達を患者の体内で発生させるためのカテーテル及び方法を含む。幾つかの実施例において、カテーテルはくも膜下腔へ挿入され、カテーテルはくも膜下腔内に流体を移動させるための装置を備える。他の実施例において、カテーテルにより移動される流体は、くも膜下腔から取り除かれて、再度注入されるか、或いは、他の流体と置換される。
【0012】
幾つかの実施例においては、カテーテルが脊髄くも膜下腔へ挿入され、同カテーテルは、その先端部において配置される流体移動装置を備える。流体移動装置は、折り畳み可能な部材、回転可能な部材、或いは、様々な実施例におけるバルーンを備えることも可能である。別の実施例においては、カテーテルは、流体の移動方向を制御するためのバルブを備えることも可能である。幾つかの実施例において、カテーテルは内ルーメンを有し、同ルーメンの一部の断面積は、静電気、静磁気、弾性、或いは形状記憶を作用させることにより変更可能であり、その作用により流体を移動させるための駆動力が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下の詳細な説明は、図面を参照して読まれるべきであり、それぞれの図面において、類似する要素には同じ番号が付されている。
【0014】
図面は、必ずしも寸法比率が等しいものではなく、例示する実施例を表すためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。
本明細書においては、「約」という語は、明示的に示唆されているか否かにかかわらず、全ての数値に適用されるものとする。「約」という語は、通常、記載された数値と同等であると当業者が判断するであろう数値の範囲(すなわち、同一の機能または結果を生ずる数値の範囲)を指す。多くの場合において、「約」という語は、最も近い有効数字の周囲の数字を含む。
【0015】
本発明の方法は、脊髄くも膜下腔を含む、くも膜下腔を進行する工程に関する。幾つかの実施例においては、頭蓋内腔を進行する工程も含まれる。本発明の方法により、くも膜下腔を介して頭蓋内への接近が容易となる。例えば、幾つかの実施例において、第1の装置がくも膜下腔へ挿入され、第1の装置内に位置する1つ以上の通路から挿入される他の装置により頭蓋内への接近が容易になる。本明細書において、「頭蓋内への接近(intracranial access)」とは、大後頭孔の上部にある頭部内の腔に接近することである。加えて、頭蓋内のくも膜下腔は、大後頭孔の上部に位置するくも膜下腔であり、脊髄くも膜下腔は、大後頭孔の下方に位置するくも膜下腔であるが、これらの腔は連続している。
【0016】
本発明の方法は、頭骨を切開したり頭骨を取り除く必要のない、脳や脊椎の手術を行うための新しい到達手段を提供し、これらの手術の侵襲的な要素を減少させるものである。本発明の方法は、施術者が、患者の頭部から離れた位置に立って行うことができる。その到達手段により、装置は脊髄くも膜下腔へ経皮的に挿入されるが、幾つかの実施例においては、例えば、腰椎部、胸部、或いは頸部において、標準的な方法により脊髄くも膜下腔を穿刺して行われる。他のカテーテル治療において従来より使用される技術が、くも膜下腔や、幾つかの実施例においては頭蓋内腔を進行するために使用されてもよい。このような方法に関する多くの実施例では、開頭術と比較して、脳を感染物質に露出させることに伴う問題をほとんど無くし、また、脳の収縮や移動を行うことなく多くの組織へ進行して接近できる機会が提供される。
【0017】
以下の説明の多くは人体の構造組織に関するものであるが、本発明は他の様々な動物にも実施可能である。例えば、人間と類似する骨格を有する脊椎動物は、本明細書において開示される方法や装置に適している。一例としては、くも膜下腔を構成する骨格を有する動物のくも膜下腔へ挿入するための方法や装置の使用に関する。よって、幾つかの実施例においては、ほ乳類、鳥類、は虫類、魚類、又は両生類を含む他の脊椎動物のくも膜下腔に関する。幾つかの方法や装置は、例えば、獣医学治療において有用である。
【0018】
図1は、患者の中枢神経系の特定の部位を示しており、それらの部位へ、本発明の技術による幾つかの実施例を使用して進行している。具体的には、図1は、硬膜10、脊髄12、くも膜下腔14、腰椎Ll,L2,L3,L4,L5、仙骨16、及び小脳20を含む脳18を示す。また、図1は、シース24として、皮膚22に装着するのに適した医療装置を示し、同医療装置は、長尺状部材26、第1端部28、第2端部30、皮膚装着装置32、第1端部28に連結されるバルブ装置36、及び流出ライン38を備える。皮膚装着装置32は、皮膚22に装着するために形成された可撓性を有する皮膚装着フラップ34を有する。さらに、皮膚装着装置32は、長尺状部材26に沿った連結位置において同長尺状部材に連結されるべく形成される。図1に示されるように、長尺状部材26に連結される皮膚装着装置32及びバルブ装置36は、それらの間に可撓性を有する部材40を構成する。
【0019】
図1に示されるように、長尺状部材26は、ガイドワイヤを摺動可能に収容するように寸法が設定された第1の通路を有しており、カテーテルを含む他の装置を十分に収容できるように寸法が設定されてもよい。長尺状部材26は、図示されるように、くも膜下腔内へ所望の距離にわたって進められ、幾つかの実施例においては、その距離は約10cmであるが、その他の距離が選択されてもよい。図1において、第1の通路を有する他の装置がカテーテル42として示され、長尺状部材26の第1の通路を介して挿入位置50において経皮的にくも膜下腔14へ挿入されている。ガイドワイヤ44は、図示されるように、カテーテル42及び長尺状部材26の第1の通路を介して、挿入位置50において経皮的にくも膜下腔14へ挿入されている。
【0020】
挿入位置50において経皮的にイントロデューサシース24をくも膜下腔14に挿入する前に、施術者は、シース24の挿入を容易にするために、ガイドワイヤを皮膚22および硬膜10に貫通させてくも膜下腔14に向かわせてもよい。このガイドワイヤの挿入は、例えば、腰椎における任意の椎骨間において針を皮膚および硬膜に貫通させることにより行うことができる。近接する椎骨間の空間は、要素46と称されるLl及びL2間空等の間空として知られている。
【0021】
図1は、腰部において、くも膜下腔(具体的には脊髄くも膜下腔)への挿入を示しているが、挿入位置は、脊椎の頸部や胸部を含む他の部位において形成されてもよい。よって、カテーテル、シース、及びガイドワイヤ等の装置は、腰椎、頸部及び胸部の間空を含む任意の間空を通過してもよい。針が所定の位置に配置されると、針内の管腔を介してガイドワイヤを脊髄くも膜下腔に挿入することができる。次に、ガイドワイヤは、上方に向けられて、患者の頭部に向かって脊髄くも膜下腔内を進められ所望の位置に達するが、他の実施例においては、ガイドワイヤは、脊椎の下部方向へ向けられる。ガイドワイヤの患者体内での位置(くも膜下腔の様々な領域内を含む)は、任意の好適な画像診断法、例えば磁気共鳴映像法、透視法、内視鏡検査、コンピュータ断層撮影、赤外線画像、超音波検査法、X線造影、またはこれらの任意の組み合わせを用いて観察することができる。さらに、これらの画像診断法は、他の医療装置の位置を観察するために、治療全体を通して使用することも可能である。
【0022】
ガイドワイヤ44をくも膜下腔へ挿入した後で、施術者は、ダイレータ等の目的に合った1種類以上の医療装置を使用して、ガイドワイヤ44により形成された経路を広げることができる。これは、針を抜去した後に行うこともできる。あるいは、同じく拡張目的で、かつ、シースの通路内に挿入される第2の装置が容易に頭蓋内へ到達できるように、好適に構成されたシースにガイドワイヤ上を進ませてもよい。施術者がダイレータを使用する場合には、シース24等の医療装置にダイレータ上方を通過させてもよく、その後、ダイレータをシースの通路を介して抜去してもよい。
【0023】
シースを配置後に、血管造影等の他のカテーテル処置中に用いられた技術は、くも膜下腔や頭蓋内腔を含むくも膜下腔を進行するために用いられてもよい。この点に関して、シースを介してくも膜下腔へ他のガイドワイヤを挿入することもでき、チップは脊髄に対して前方又は後方へ向けられる。次に、カテーテル等の医療装置は、ガイドワイヤ上に挿入されることにより、頭蓋内への接近が容易になる。
【0024】
上述したような進行は、異なる医療装置をくも膜下腔へ挿入し、時には患者の頭部に向けてくも膜下腔内を進めるための1つ以上の工程を含んでおり、ロボット装置を全体或いは部分的に使用して行うことも可能である。さらに、以下に述べる本発明の方法の代表的な応用例は、ロボット装置を全体或いは部分的に使用して行われてもよい。このようにロボット装置の使用に対して考えられる利点は、例えば、神経組織を介して進行することに関連している。脳を取り巻く軟膜は、貫入に対して防壁を形成するが、一旦軟膜が穿刺されると、脳内に進行することに対する大脳組織からの抵抗が実質的になくなる。ロボット装置を使用して大脳組織への進行を補助することは、非常に効果的であり、カテーテルやガイドワイヤの動きがロボット装置により制御されて、画像診断法により観察できる。
【0025】
図2Aに関して、中枢神経系の一部の拡大図が示され、シース24は、くも膜下腔14内に配置される。図2Aに示されるように、くも膜下腔14は脊髄くも膜下腔である。脊髄くも膜下腔は、脊椎により形成される骨腔内に位置される。図示されるように、シース24は、挿入位置50において硬膜10から経皮的に脊髄くも膜下腔へ挿入され、患者の頭部に向けて脊髄くも膜下腔を進められて、カテーテル24及びガイドワイヤ44による頭蓋内への到達を容易にする。幾つかの実施例において、シース24は、くも膜下腔内へ約10cm進められるが、他の実施例において、それよりも長い距離や短い距離を進められる。皮膚装着装置32は、シース24の長尺状部材26に連結されており、可撓性を有する皮膚装着フラップ34において、開口部56を介して縫合糸54により皮膚に装着されてもよい。固定機構52は、図2Aにおいて示されるように、長尺状部材26に沿って皮膚装着装置32の位置を固定するために使用される。皮膚装着装置32を長尺状部材26に連結する位置は異なってもよく、それにより固定された皮膚装着装置を備えるシースと比較して、シース24の融通性が増す。さらに、皮膚装着装置32をバルブ装置36から離間させることにより、可撓性を有する部材部分40が、皮膚装着装置32とバルブ装置36との間において構成される。
【0026】
可撓性を有する部材部分40により、施術者は、シース24が皮膚22に装着される位置と、シース24が皮膚22へ進入する位置の両方から離れた位置において、シース24の1つ以上の通路から装置を挿入することができる。施術中の患者の動きは、可撓性を有する部材部分40により吸収される。また、可撓性を有する部材部分40の長さは調整できるため、本発明の方法の異なる工程を行う時に、施術者は患者から離れた位置につくことができるため、異なる装置の位置を磁気共鳴映像法(MRI)等の画像診断法により監視することができる。したがって、好適な長さの可撓性を有する部材部分40により、患者がMRスキャナ内に位置する間は、接近できない患者の周囲から長尺状部材26を延長させることができる。
【0027】
本発明の可撓性を有する部材部分の長さ、及び、皮膚装着装置と長尺状部材のうちの一つの第1端部との間の距離(その距離は、バルブ装置の長さに基づく可撓性を有する部材部分の長さとは異なる)は、特定の作業に適した距離であってもよい。幾つかの実施例において、長さは1cmから70cmまでの範囲が可能であるが、この範囲以外の長さも使用できる。米国特許出願第09/905670号においても、長さに関する幾つかの例が記載されており、同特許文献に記載された内容は本願においても開示されたものとする。可撓性を有する部材部分40の長さは、ロボット装置においてシース24を使用できるように調節されてもよい。一実施例においては、可撓性を有する部材部分40に装着且つ同部材部分を効果的に延ばすための他の可撓性を有する部材により、医師が特定の患者や処置に合わせることができる。
【0028】
図2Bは、シース24を示しており、シース24は、挿入位置50において、経皮的にくも膜下腔14(図示されているのは脊髄くも膜下腔)へ挿入されている。挿入位置50から、シース24は、点線により示されるように第2の位置51へ進められる。カテーテルやイントロデューサシースを備える装置は、挿入位置から好適な距離を進められる。幾つかの実施例において、シースは、脊髄くも膜下腔へ10cmを越える距離を進められるが、他の実施例には、それ以外の距離を進める工程が含まれる。米国特許出願第09/905670号においても、距離に関する幾つかの例が記載されており、同特許文献に記載された内容は本願においても開示されたものとする。
【0029】
図2Bは、図2Aに類似する中枢神経系の一部の拡大図を示す。特に、図2Bは、シース24を示しており、シース24は、挿入位置50において、経皮的にくも膜下腔14へ挿入されている。挿入位置50から、シース24は、第2の位置51までの距離を進められる。この距離は、図2Bにおいて符号D1において示され、シース24が進行する通路に沿ったものである。D1は、挿入位置50を越えて進められたシース24の長さを測定することにより決定される。また、この距離は、符号D2において示され、これは挿入位置50と第2の位置51との間の直線距離を示す。さらに、この距離は、符号D3として示され、シース24が、頭部へ向かって挿入位置50から第2の位置51まで進んだ絶対距離を示す。D3は、挿入位置50と交差して長手方向を向く患者にほぼ直交するように配向される面と、第2の位置51と交差して長手方向を向く患者にほぼ直交するように配向される面との間の距離を測定することにより決定される。距離D1,D2及びD3は、本発明の実施例において、貫入する距離や進行する距離を測定するために使用できる多数の方法の例として示される。本明細書においては、貫入や進行による距離は、D1,D2又はD3、或いは他の適切な方法により測定されてもよい。
【0030】
図3は、シース24の平面図である。図3の一部破断面において示されるように、長尺状部材26は第1の通路58を有する。バルブ装置36は、長尺状部材26の第1端部28に連結されて、メンブレン60を構成する。メンブレン60は、第1の通路58に広がるため、他の装置が通路58内を進むことができるが、流体が第1端部28を通ってシース24から流れ出るのを防止する。図示されるように、メンブレン60は、第1の通路58内の位置において第1の通路58に広がるが、メンブレン60は第1の通路58の外側に配置されて同じ機能を果たすことが可能であることは当業者には理解されるであろう。例えば、図示されないが、メンブレン60は、2つの要素の間に配置されるゴム製のガスケットとして形成されてもよく、それらの要素は互いにはめ込まれて、メンブレン60内の開口部を変化させることにより、調節可能な開口バルブを構成する。バルブ装置36は、ネジ接続、摩擦装着、連動部品、留め具、接着剤(グルー)、一体構造、或いは他の装着装置や装着方法により、長尺状部材26に連結されてもよい。加えて、バルブ装置36は、流出ライン38に装着できるように構成されてもよい。これは、どのような方法において行われてもよく、例えば、バルブ装置36の一部として形成され、流出ライン38が連結されるバルブ装置36から離間して延びる突起を使用することにより行われてもよい。また、バルブ装置36は、流出ライン38と第1の通路58とが連通されるように形成されてもよい。これに代えて、バルブ装置36は、流出ライン38と長尺状部材26内の第1の通路58以外の通路との間が連通できるように形成されてもよい。さらに、バルブ装置36は、ガイドワイヤ、シース、カテーテル及びイントロデューサ等の他の医療装置に装着するためのハブ62を備えるように形成されてもよい。ハブ62は、例えば、オス型やメス型のルアロック部品の形状であってもよい。
【0031】
図面に示される実施例においては、一個の皮膚装着装置32だけが示されるが、他の実施例においては、2個以上の装置が使用されてもよい。各皮膚装着装置は、長尺状部材26に連結されてもよい。皮膚装着装置の一組合せにおいては、一方の皮膚装着装置を永続的に長尺状部材26に装着し、その皮膚装着装置と長尺状部材26の第端部に連結されたバルブ装置との間に他方の皮膚装着装置を連結することにより、第2の皮膚装着装置の連結位置が変更可能となる。さらに、各皮膚装着装置は、患者の皮膚に装着するように形成された可撓性を備える皮膚装着フラップを有してもよい。この点に関して、皮膚装着フラップ34を患者の皮膚に装着するために、開口部56が同フラップにおいて示されているが、温度感性接着剤、再配置可能な接着剤、クリップ、テープ、グルー等の、フラップ34を形成するための任意の好適な方法が使用できることは理解されよう。
【0032】
図4乃至図9は、皮膚装着装置32の異なる実施例を示す。図4において、皮膚装着装置32は、連結位置において長尺状部材26に連結されるように形成され、可撓性を備える皮膚装着フラップ34を備えており、長尺状部材26に連結されることにより、長尺状部材26に永続的に装着される。これは、接着や一体構造等により、可撓性を備える皮膚装着フラップ34を長尺状部材26に固定して行うことが可能である。
【0033】
他の幾つかの皮膚装着装置及び以下に述べるイントロデューサシースの例は、2003年12月23日付けで出願された米国特許出願第10/328349号(発明の名称:イントロデューサシース(INTRODUCER SHEATH)に記載されており、同特許文献に記載された内容は本願においても開示されたものとする。
【0034】
図5は、長尺状部材26に連結された皮膚装着装置32を示し、長尺状部材26に対して皮膚装着装置32が連結される位置が、皮膚装着装置32が患者の皮膚に装着される前或いは装着された後でも変更できるように連結される。例示される実施例において、皮膚装着装置32は、可撓性を有する皮膚装着フラップ34、第2フラップ66、及び固定機構52を備えており、固定機構52は係合されると、長尺状部材26に対してフラップを締め付ける。固定機構は、クリップ(例えば、小型のワニ口クリップ)、留め具、スナップ式のフラップ、糸、フラップ34,66を長尺状部材26の周囲に一時的に固定する他の任意の好適な手段の形態であってもよく、それにより固定機構52の固定が解除されるまで長尺状部材26がフラップから移動するのを防止する。スポンジ、ゼラチン様物質、或いは閉じ込めた空気等の詰め物材料が、フラップ66,34及び長尺状部材26により構成される空間68に配置されることにより、患者に対する皮膚装着装置32の装着をより快適なものにする。
【0035】
図6乃至図8は、1つの固定機構52のみを使用して長尺状部材26に連結された皮膚装着装置32を示す。加えて、図6の皮膚装着装置32は、他の図面において示される開口部56の代わりに、接着剤70を備えており、これは、可撓性を有する皮膚装着フラップ34を患者の皮膚に装着する際に有効である。図7において、可撓性を有する皮膚装着フラップ34は、詰め物材料72(本発明の任意の可撓性を有する皮膚装着フラップ同様に)を収容しており、患者の快適な使用性を向上させる。図6及び図7において、可撓性を有する皮膚装着フラップ34は、長尺状部材26と固定機構52との間に配置される。一方、図8においては、固定機構52は長尺状部材26に直接接している。図8に示される実施例において、可撓性を有する皮膚装着フラップ34は、グルーや一体構成等の任意の好適な手段を使用して固定機構52に固定されてもよい。図4乃至図9において示されていないが、可撓性を有する皮膚装着フラップ34は、長尺状部材26上に折り畳まれたり、スナップ式に固定されるフラップの形状に形成され、スナップを係合させることにより、固定機構52として機能することは理解されるべきである。
【0036】
図9において、示される皮膚装着装置32の実施例では、可撓性を有する皮膚装着フラップ34内に詰め物材料72を備え、空間68においても同様に詰め物材料72を備える。図5及び図9に示されるフラップ66,34は、任意の好適な方法を使用して互いに装着されてもよい。
【0037】
図10、図11及び図12は、シース24の長尺状部材26の異なる実施例を示す。これらの図面は、長尺状部材26及びシース24について説明するものであるが、これらの実施例は、図1のカテーテル42等の装置にも等しく適用でき、図10乃至図12に説明する通路を介して挿入されてもよい。
【0038】
図10は、長尺状部材26の断面を示し、非円形をなす所定の断面の形状を有することが示されている。長尺状部材26がその長さの任意の部分に沿ってそのような形状を有するため、くも膜下腔内の特定の領域(一方の領域において他方の領域よりも広い)を進むのに適しており、或いは屈曲部分や湾曲部分等を通過するのに適している。長尺状部材に沿った特定の位置における好適な断面形状には、楕円形や8の字状、必要に応じて他の形状も含まれる。さらに、本発明の長尺状部材、及び以下に述べる副長尺状部材は、その長さに沿って変化する断面形状を有してもよい。
【0039】
図11は、長尺状部材26の他の断面を示し、第1通路58及び第2通路74を備える。長尺状部材26は、本発明の方法や装置に適合する他の通路を有することが可能である。さらに、本明細書(特許請求の範囲を含む)において記載される通路は、特定の装置(例えば、図1に示すシース24やカテーテル42)の端部と一致する開口部を貫通して延びてもよいが、他の実施例において、開口部は本発明の医療装置の端部以外の位置に配置されてもよい。よって、一端又は両端が閉鎖されたシースやカテーテルでも、その内部に通路を有することは可能である。また、図面において二重通路を有する幾つかのカテーテルは、並列形状をなすように示されるが、同軸形状であってもよく、同軸形状をなすカテーテルは、並列形状と等しく置換できることが多い。
【0040】
図12に関して、2つの副長尺状部材76,78を有する長尺状部材26が示され、これら副長尺状部材は、連結具80を用いて連結されて、施術者が管材の部品をスナップ式に連結できるようにする。副長尺状部材76,78を連結する他の装置が使用されてもよく、例えば、副長尺状部材と一体的に形成される連動部品、副長尺状部材に装着される連動部品、副長尺状部材を固定するが再配置や再固定を可能にする接着剤、副長尺状部材の溶融、グルー等が使用されもよい。これに代えて、副長尺状部材76,78は結合されてもよく、製造中に接合することにより、それらの断面形状が、副長尺状部材76,78間に配置されている連結器80を除いて、図12に示す形状と類似する。副長尺状部材76は第1通路58を有し、副長尺状部材78は第2通路74を有する。図面において例示される多くの実施例は、丸い即ち円形の通路を備えるが、他の実施例において、楕円や多角形を含む他の形状が含まれてもよい。したがって、副長尺状部材76,78は、その長さに沿った任意の位置において、図10に示すような形状を備える断面を有することが可能である。
【0041】
さらに、図13Aに示されるように、シース24が、長尺状部材26を有することができ、長尺状部材26は長さの異なる第1及び第2の副長尺状部材76,78を備える。図示されるように、第1の副長尺状部材76は、第1端部28及び第2端部30を有し、第2の副長尺状部材78は、第1端部82及び第2端部84を有する。また、図13Aに示されるように、バルブ装置36は、皮膚装着装置32のように副長尺状部材76,78に連結される。さらに、端部82は閉鎖されて、第2の副長尺状部材78は、第2の副長尺状部材78の第1端部82において開口部とともに第2通路74を構成する開口部86を有する。
【0042】
図13Hは、図13Aに示されるシース24の副長尺状部材76,78の他の構成を示す。第1の副長尺状部材76は複数の開口部86を有する。第1の副長尺状部材76は、図13Hにおいて、閉鎖された第2端部30を有する。以下に説明するように、流体は1つの通路を介して所望の位置へ注入され、少なくとも一実施例において、他の通路から回収される。図13Hに示されるシース24の形状は、この処置において使用されてもよいが、他のシース形状も使用可能であり、或いは、シースを全く除外することも可能である。
【0043】
図13B乃至図13Gは、副長尺状部材76,78の各第2端部30,84の形状に関する幾つかの実施例を示す。図13Bは、副長尺状部材76の第2端部30は、副長尺状部材78の第2端部84から偏位して配置される。また、図13Bが示すように、副長尺状部材76の第2端部30が、副長尺状部材78へ向かって斜角を付けられ、即ちテーパ状をなし、それによりシース24が意図される部位へ到達する前に他の構造体上で「動かなくなる(hang up)」可能性を減少させる。同様の利点は、図13C,図13D,及び図13Gにおいて示されるシース24の形状を使用することにより(副長尺状部材76,78を介して)得ることも可能である。図13E及び図13Fに示される形状も使用可能である。
【0044】
カテーテルは、その長さに沿って可変剛性を付与する複合の壁構造を有することも可能である。また、カテーテルは、その壁にブレードされた補強材を有することにより、捻れに対してより高い強度と抵抗力を備えることも可能である。カテーテル42やシース24等の本発明の装置は、長さと、それらの長さに沿って変化する剛性とを有し、ブレードされた材料を含む壁を有することも可能である。また、カテーテル42やシース24等の本発明の装置は、屈曲可能であり、屈曲された後に形状を保持することも可能である。
【0045】
シース24やカテーテル42等の本発明の装置のうちの一つの所定の通路の寸法は、所定の用途に合わせて適切に設定されてもよいことは、当業者には理解されるであろう。シース24、特定の長尺状部材26及びカテーテル42等の所定の装置内の通路の直径は、例えば、約0.01cm乃至約0.40cmであるが、幾つかの実施例においては、それ以外の直径を有することも可能である。これらの寸法が、例えば、シース24、長尺状部材26或いはカテーテル42等の本発明の装置のうちの一つの通路(非円形を有する)の最大或いは最小の寸法として適用されてもよい。シース24、特定の長尺状部材26及びカテーテル42等の本発明の装置の外径は、例えば、約0.50cmまで変更されてもよいが、それよりも大きい外径も使用可能である。これらの寸法が、例えば、シース24、特定の長尺状部材26或いはカテーテル42等の本発明の装置のうちの一つの外面(非円形を有する)の最大或いは最小の寸法として適用されてもよい。米国特許出願第09/905670号においても、内径及び外径に関する幾つかの例が記載されており、同特許文献に記載された内容は本願においても開示されたものとする。
【0046】
図1に関して説明したように、本発明の装置(例えば、シース24やカテーテル42)は、硬膜10を貫通した後で脊髄くも膜下腔に進入する。処置の完了後に硬膜10に接近するために、本発明の装置(例えば、シース24、特定の長尺状部材26及びカテーテル42)は、硬膜閉鎖装置を備えてもよい。硬膜閉鎖装置は、該装置に連結されてもよい。硬膜閉鎖装置は、該装置が脊髄くも膜下腔から回収されると、硬膜を閉鎖するように形成されてもよい。一実施例においては、硬膜閉鎖装置は、針や他の縫合糸搬送装置の移動により閉鎖するように形成されてもよく、縫合搬送装置は、硬膜を介して縫合糸が配置されるように施術者により作動される。他の実施例において、硬膜閉鎖装置は、該装置が回収された後に、硬膜の孔を封鎖する化合物を注入することにより閉鎖するように形成されてもよい。変更及び本発明の装置のうちの一つに連結される硬膜閉鎖装置の一例は、ザクローサー(THE CLOSER)(アボット研究所社の子会社であり、カナダ国レッドウッド市サギナウ400に所在するパークローズ社(Perclose,Inc.,an Abbot Laboratories Company,400 Saginaw Drive, Redwood City,CA)より販売されている)である。
【0047】
図19は、シース24の一実施例(カテーテル42にも適用可能である)を示しており、その実施例には副長尺状部材76,78が設けられ、ブレード材料130(ワイヤであってもよい)は、副長尺状部材の長さ(全長は図示せず)に沿ってその周囲に巻回される。そのような巻回は、上部から見た場合に8の字状に見える。ブレード材料は、きつく或いはゆるく巻回されてもよく、巻回の強さは、シース24の長さに沿って変化してもよく、それによりシースに異なる剛性や可撓性が付与される。図20に示されるように、1つの通路のみを有するカテーテルに同様の巻回を行ってもよい。この巻回は、おおよそ中間ポイント132において、カテーテル42の壁に接触するように配置された単一のワイヤを使用して行われてもよい。次に、ブレード材料130の左右中間部が交差することにより所望のブレードが得られ、必要に応じて巻回の強さを変更して、カテーテル42の剛性を変化させる。これに代えて、ブレード材料の一端は、図20に示される端部付近においてカテーテル42に接触するように配置される。ブレードは、カテーテルの周囲にブレード材料の自由端を巻回することにより形成され、次にすでに形成されている環を交差するように同じ動作を繰り返し、さらにわずかに後退させて、同様の方法で繰り返して、所望のブレードを得られるように工程を繰り返す。巻回の締め付け(ブレード材料のセグメントが互いに接近すると考えられる)を変更して、カテーテルの剛性を変化させてもよい。カテーテル分野において周知であるように、ブレードは、複数の形態を有してもよく、異なる技術により、カテーテルの外長尺状部材を形成するカテーテル材料に埋設されてもよい。ブレードは、外長尺状部材内に収容されてもよい。
【0048】
使用されるブレードのパターン即ち材料は、形成されたカテーテルやシースを磁気共鳴により視覚化させることも可能である。くも膜下腔は、比較的静止状態にある脳脊髄液に満たされ、T2強調画像において極めて高い信号強度を有する。磁気共鳴において無信号領域を示す材料は、血管腔においてT1又はT2強調透視法では確認できない(流動する血液が、これらの設定において無信号領域を有する)。一方、無信号領域を有する材料は、くも膜下腔内ではT2強調画像において極めて鮮明に確認できる。プラチナは、本発明の装置の磁気共鳴による視覚化を補強するための好適な金属である。加えて、低い信号強度を有する他の金属も適している。例えば、非強磁性のステンレス鋼、ニチノール、ステンレス鋼、又はケブラー(商標kevlar)は、ブレード材料130として使用可能である。
【0049】
本明細書において述べた2つ以上のカテーテルやシースを含むが、これらに限定されない医療装置は、一方の通路において内視鏡の使用を可能にし、他方の通路を介して挿入される装置を使用して行われる操作や、他方の通路を有する他の副長尺状部材の位置を観察できる。また、2つ以上の通路を有する医療装置は、流体を一方の通路に注入し、他方の通路を介して回収することができる。2つ以上の通路を有する医療装置は、ガイドワイヤを一方の通路や別の通路に挿入し、他方の通路に治療装置を挿入することができる。各通路を介して行われる作用間の相互関係は、作用を併せて行う、或いは互いに補完し合うことにより治療を完了することができる。
【0050】
さらに、図11及び図12に示す形状(即ち、2つ以上の通路)を有するシースやカテーテル等の医療装置は、血管にも応用できる。例えば、動脈瘤治療における最近の症例では、一方のカテーテルは一方の大腿動脈を介して挿入されて動脈瘤内に配置され、他方のカテーテルは他方の大腿動脈を介して挿入されて動脈瘤の頸部を越えてバルーンを挿入する。バルーン以外の装置を使用して動脈瘤のコイリングを補助して、図11及び図12に示す形状のうちの一つ(即ち、2つ以上の通路)を有するシースやカテーテル等の医療装置の一方の通路を介して装置を挿入して、動脈瘤の頸部を改善し、コイルを他方の通路を介して挿入することにより、両方への接近を一方の大腿動脈を介して行うことができる。さらに、この動脈瘤の塞栓治療は、2つの副長尺状部材を備えるシースやカテーテルを使用して行うことができ、これら副長尺状部材の先端部分は、Y字状をなすように互いに離間される。
【0051】
図18は、貫通装置120を示し、同装置は、本発明の方法を使用する異なるメンブレンを貫通するのに使用される。貫通装置120は、外スリーブ要素122、外スリーブ要素122に連結される外スリーブ要素ハブ124、内穿刺要素126、及び内穿刺要素126に連結される内穿刺要素ハブ128を備える。外スリーブ要素ハブ124は、内穿刺要素126に摺動可能に連結され(外スリーブ要素122は内穿刺要素126に沿って摺動し、内穿刺要素126に対してロックされ)、内穿刺要素ハブ128は、内穿刺要素126の通路(図示せず)から挿入される他の装置に摺動可能に連結されるように形成される。内穿刺要素は、少なくとも1つのガイドワイヤを摺動可能に収容するように寸法が設定された通路を備える。これに代えて、内穿刺要素は、外又は内部品が穿刺要素や部品に加えてガイドワイヤとして作用するように同軸要素であってもよい。
【0052】
貫通装置120を操作して穿刺されるメンブレンは、軟膜であり、脆弱な部分と頑丈な部分を有する脳を取り巻く膜である。内穿刺要素の先端チップ130は、脳組織に損傷を与えるような力を付与したり操作することなく、任意の場所において軟膜を貫通するのに十分な鋭利さを備えるように形成される。作動中に、第1通路を備える(シース24やカテーテル42等の)装置は、挿入位置において脊髄くも膜下腔へ経皮的に挿入され、くも膜下腔内を進められる。次に、貫通装置120が、装置の第1通路内を進められて、軟膜等のメンブレンが、貫通装置120を使用して穿刺される。貫通装置120は、ガイドワイヤに沿って進められ、或いは、第1通路内を進められてメンブレンの縁部に達してもよい。内穿刺要素はさらに進められてメンブレンを穿刺する。次に、内穿刺要素は、外スリーブ要素122内へ後退されて、貫通装置120が貫通されたメンブレンの面を介して進められ、或いは、外スリーブ要素122が、貫通されたメンブレンの面を介して内貫通装置126上を進められる。外スリーブ要素122は、カテーテル42等の装置のガイドワイヤとして作用してもよく、脳質内へ進む。前述の工程は、2002年12月23日付けで出願された米国特許出願第10/328373号(発明の名称:くも膜下腔へ挿入するためのガイドカテーテル(GUIDE CATHETER FOR INTRODUCTION TO THE SUBARACHNOID SPACE)に記載されている固定装置即ちガイドカテーテルを使用することにより、さらに容易にすることも可能であり、同特許文献に開示された内容は本願においても開示されたものとする。
【0053】
貫通装置120の内及び外要素に使用される材料は、例えば、金属やプラスチック等のポリマーであってもよい。外スリーブ要素122及び内貫通装置126に好適な材料には、ニチノール、ステンレス鋼及び金が含まれる。例えばプラチナめっきは、放射線による可視性を高めるために含まれてもよい。MRIや放射線による画像化(例えば、透視法)等の画像診断法を使用する場合、使用される画像診断法は、貫通装置120の要素の構成において使用される材料に影響を与える。例えば、MRI装置において、これらの要素を構成する際に非磁性的に作用する材料を使用することが望ましい。
【0054】
図18には図示されない貫通装置120の他の実施例は、内及び外要素126,122が相関する点において、図18に示される実施例とは異なる。この実施例において、内穿刺要素126は、外スリーブ要素122に連結され、内穿刺要素が、「発射される(fired)」即ち迅速に数ミリメートル進んで、迅速な貫通を行う。図18には図示されない貫通装置120の他の実施例において、内穿刺要素126は、ネジを使用して外スリーブ要素122に連結され、内穿刺要素126の高度に制御された進行を可能にする。貫通装置120のこれらの実施例は、例示を目的として本明細書に記載される。他の構成も本発明の範囲内において使用可能である。
【0055】
本発明の方法の少なくとも幾つかの実施例において、頭蓋内や脊髄くも膜下腔へ外科的に到達する従来の方法を凌ぐ多くの利点を提案する。従来の方法とは、皮膚の切開、頭蓋や脊骨の被覆の切開、骨の除去、及び神経組織へ到達するための髄膜からの切開を含むものである。例えば、本発明の方法の幾つかの実施例は、従来の脳外科手術における典型的な頭骨切開や脳の収縮を必要としない。さらに、少なくとも幾つかの実施例において、施術者が腰椎の穿刺部分等の離れた位置から患者の脳に対して外科的に治療を行うことが可能であり、外科領域に磁気の干渉を受けることなく磁気共鳴スキャナにより外科手術を行うことが可能である。また、医師は、頭骨切開術では到達することが困難な脳の領域に接近でき、幾つかの実施例においては、頭骨切開術を介しては容易に行うことができないような、くも膜下腔の洗浄等の幾つかの処置を可能にする。
【0056】
以下に述べる代表的な用途の例は、異なる装置や上記したような例を使用して行うことが可能である。特定の用途に適用される他の装置や方法は、さらに以下に説明する。用途によって、使用される装置は、それらの可視性をMRIや放射線(例えば、透視法)等の所定の画像診断法を介して最大限に生かすように処理される。
【0057】
さらに、所定の用途において、一方の挿入位置において1つの装置をくも膜下腔へ挿入し、その後で或いは同時に、他方の挿入位置において他の装置をくも膜下腔へ挿入すし、次にこれらの装置を共に使用して治療を完了させることが可能であることは理解されるであろう。例えば、少なくとも幾つかの脳組織の温度を変更する際に(詳細は以下に説明する)、一方の挿入位置において、くも膜下腔(例えば、脊髄くも膜下腔)へ挿入された1つの装置の通路から流体を挿入して、他方の挿入位置において、くも膜下腔(例えば、脊髄くも膜下腔)へ挿入された他の装置の通路から流体を回収することは可能である。他の例としては、以下に述べるように脳脊髄液の洗浄において、流体を目的部位へ搬送するための複数の通路を有するシースやカテーテルの2つの通路を使用することは有利である。さらに、この治療は、2つの副長尺状部材を備えるシースやカテーテルを使用して行うことができ、これら副長尺状部材の先端部分は、Y字状をなすように互いに離間される。流体は、異なる挿入位置において挿入された装置の通路から回収され、或いは、流体は、単独のシースやカテーテル内の第3の通路から回収されてもよい。
【0058】
(血管攣縮を軽減するための脳脊髄液の洗浄)
くも膜下の出血における主な合併症は血管攣縮であり、これは脳血管を取り巻くくも膜下腔に血液があるためである。血管攣縮を軽減するために使用される治療は、くも膜下腔内の脳脊髄液を生理食塩水及び溶血剤で洗浄して血液を除去することを含み、挿入箇所を形成するために頭蓋骨の一部を除去して脳脊髄液に接近する。本発明の方法を使用して、経皮的に脊髄へ接近することにより、出血や凝血のある領域においてくも膜下腔又は頭蓋内腔へカテーテルを挿入し、頭骨切開を行わないで洗浄を行うことが可能となる。例えば、図1において述べたように、挿入位置において脊髄くも膜下腔へシース24やカテーテル42等の装置を挿入し、脊髄くも膜下腔内の同装置を挿入位置から一定の距離を進め、生理食塩水及び/又は溶血剤を有する材料を装置の通路から出血や凝血のある領域へ送り、問題の脳脊髄を洗浄する。
【0059】
(少なくとも幾つかの組織の温度の変更)
少なくとも幾つかの組織、例えば、脳や脊柱の組織の温度を変更する例は、そのような組織に低体温法を導入することである。負傷から保護するための低体温法の効果は、公知の情報や医療文献において周知である。不可抗力の状況において最も一般的に遭遇する例は、溺水である。このような状況において、代謝が低下して低酸素状態でも高い耐性を有するため、冷水における生存率が高まる。神経外科において、低体温法は、治療において、動脈瘤の手術中に耐えられる脳血管の閉塞時間を延長するために用いられる。しかしながら、一般的な神経外科技術では、脳だけに低体温法を用いることができない。したがって、体全体に対する低体温法が、多くの付帯リスクを生じる循環停止と併せて用いられることが多い。
【0060】
本発明の方法は、少なくとも幾つかの組織の温度を変更するために使用できる。そのような変更は、生理食塩水や患者自身の脳脊髄液等の温度調整できる流体で、選択された組織を洗浄することにより行われ、そのような流体は異なる場所から排水される。流体は、脊髄くも膜下腔へ挿入された装置から注入される。例えば、カテーテルやシース等の少なくとも1つのルーメンを有する装置を脊髄くも膜下腔へ挿入して、脊髄くも膜下腔内で同装置を挿入位置から一定の距離を進めた後で、ルーメンから温度調整された流体が挿入されて、少なくとも幾つかの脳組織の温度が変更される。
【0061】
選択された組織を冷却するための一実施例においては、挿入された装置は、2つのルーメンを有するカテーテルを備えてもよい。このようなカテーテルの例は、図21Aに示される。例示される注入カテーテル200は、第1のルーメン202及び第2のルーメン206を備える。第1のルーメン202は、カテーテル200の先端チップ201付近の第1のポート204まで延び、第2のルーメン206は、カテーテルの先端チップ201に対してより基端方向における第2のポート208まで延びる。操作時に、治療を受ける患者からの脳脊髄液が、第2のルーメン206から排出され、冷却流体が第1のルーメン202から注入される。
【0062】
冷却流体は、図21Aに示されるように患者自身の脳脊髄液であってもよい。脳脊髄液は、第2のルーメン206を介して患者のくも膜下や頭蓋内腔内から排出され、第2のルーメン206は、脳脊髄液をポンプ210へ送り、ポンプ210は熱交換器212へ脳脊髄液を送る。熱交換器212は脳脊髄液を所望の温度まで冷却する。幾つかの実施例において、注入された流体の温度は、華氏約32度(摂氏約0度)まで低下させてもよい。必ずしも冷却を目的としていない他の実施例においては、脳脊髄液は、華氏約130度(摂氏約54.44度)まで加熱されてもよく、導入された熱は、所望の領域の細胞の代謝を促進し、その付近の細胞を迅速に成長させ、その領域へ増加した血流を送り込む。次に、脳脊髄液は熱交換器212を出て、第1のルーメン202に進入し、そこから、カテーテル200の先端部201において第2のポート204を介して、患者のくも膜下や頭蓋内腔の異なる領域へ再度注入される。
【0063】
熱交換器212は、脳脊髄液に所望の温度を提供する任意の構造や装置を備えてもよい。熱交換構造の幾つかの例には、コイル、チューブインチューブ、放熱器タイプ、及び他の熱交換器を含む。同様に、ポンプ210は、脳脊髄液の所望の流動を可能にする任意のポンプや同様の装置を含んでもよい。ポンプ構造の例は、機械的、磁気的、又は、電気的に動力を供給されたインペラー、ダイヤフラム、バルブ等を含んでもよい。幾つかの実施例において、注入装置や、脳脊髄液の交換や脳脊髄液における温度変更を行うために使用される他の装置は、米国特許出願第10/328373号に記載されているようなガイドカテーテルを使用して挿入することも可能であり、同特許文献に記載された内容は本願においても開示されたものとする。
【0064】
他の実施例において、フィルタ要素が、脳脊髄液をろ過して、損傷を受けた血管から漏出した血液等の望ましくない物質を除去するために備えられてもよい。例えば、そのような装置は、脳脊髄液の洗浄に使用されて、上記したような血管攣縮を軽減することも可能である。他の実施例において、薬剤、抗生物質や放射線不透過性物質が、脳脊髄液を再注入する際に混合されてもよく、それによりくも膜下腔へ注入される。他の実施例において、患者の脳脊髄液は、排出されて他の流体に置換されてもよい。脳脊髄液を置換するための流体は、様々な生体適合性のある流体から選択できる。例えば、生理食塩水が注入されてもよい。薬剤、抗生物質や放射線不透過性材料が注入されてもよい。
【0065】
処置中に、カテーテル200を離れる際に、流体の圧力が制御されていないと、注入された流体により付近の組織に損傷を与えることがある。流体の排出圧力を制御するための方法/装置が、図21A乃至図21Cに示される。図21Bは、第2のポート208の基端側の部分におけるカテーテル200の断面を示す。この部分の断面において、第1のルーメン202は、第2のルーメン206よりもより少ない面積を有するが、その割合は他の実施例において変更可能である。第2のポート208の先端側の位置220において、カテーテル200の断面配置は、図21Cに示されるような断面配置へ変化する。同図に示されるように、第1のルーメン202は利用可能なほとんどの空間を占めている。ルーメン202の断面積は、流体が流れるために実質的に増加するので、ルーメン内の圧力が減少し、カテーテル200を離れる流体が第1のポート202において近接する組織に損傷を与える可能性が軽減される。圧力による流体の噴出が組織を損傷しないための他の装置や方法には、流体注入カテーテルの穿孔即ちポートに対して絞り要素を追加することと、異なる寸法の穿孔を使用することと、流体注入カテーテルを構成するために選択された材料を変更することや、親水性のコーティング等のコーティングを排出ポート付近の領域に塗布したりするための構造や設計が含まれる。
【0066】
図21D及び図21Eは、本発明の他の実施例を示し、この実施例は閉鎖システムを備える。図示される冷却用カテーテル220は、第1のルーメン222と第2のルーメン224とを備える。また、ポンプ230は、図示されるように、熱交換器232へ流体を送る。矢印により示されるように、流体は基端部から流れ、基端部においてポンプ230と熱交換器232は先端部234へ向かう。先端部234は、熱交換要素236を有する。熱交換要素236は、増加された表面積を構成する不規則な形状を特徴とする。また、熱交換要素236は、冷却用カテーテル220の他の部分とは異なる材料或いは他の部分よりも薄い材料からなり、向上した熱伝導性を提供する。図21Dに示す実施例は、熱交換要素236を備え、同熱交換要素は、異なる形状や設計を有してもよく、そのうちの幾つかは、図23乃至図29においてさらに示される。
【0067】
幾つかの実施例において、熱交換要素236は、剛性を備える形状を有しているが、他の実施例においては、熱交換要素は、可撓性を有するメンブレン、膨張可能な部材、或いは折り畳み可能な構造体であってもよい。例えば、幾つかの実施例において、熱交換要素236は、折り畳み可能な部材であってもよく、所望の位置に配置されると拡張してその表面積を増加させる。また、図示されるように、第1のルーメン222の先端部は、メンブレン238内に達し、同メンブレンは、第1のルーメン222からの流体の逆流を防止する単方向性の流動要素である場合に、流体の流れを制御できる。また、メンブレン238は、流動を拡散するように作用し、所望の部分即ち熱交換要素236の領域に向けて、ルーメン222から熱交換要素236へ流体の流れを方向づける。
【0068】
図21Eは、第1のルーメン222及び第2のルーメン224の断面積が、少なくとも例示される一実施例において異なることを示す。他の実施例において、相対するルーメンの寸法は大きく異なるが、ルーメンの形状のように、ルーメンは円形の断面からなる必要はない。例えば、角度のある形状、楕円形や他の形状は、第1のルーメン222及び第2のルーメン224の断面の形状として使用され、これらの形状は、冷却用カテーテル220の長さに沿って変更してもよい。
【0069】
図22A及び図22Cは、注入、洗浄等の用途に合わせて構成されたカテーテルの他の実施例を示す。この実施例において、拡散カテーテル240がまず挿入されて、2つのルーメン265,270を有する二重ルーメンカテーテル260が次に挿入される。拡散カテーテル240は、挿入されて、二重ルーメンカテーテル260を出入りする流体の流れにより生じた高圧噴射から、周囲の組織を保護する。拡散カテーテル240は、穿孔242,244を備えており、二重ルーメンカテーテル260から出る流体がより広い領域にわたって広がり、特定の組織の炎症を引き起こす噴流を減少させる。拡散カテーテル240は、先端部250付近の冷却された領域を拡散カテーテル240の他の部分から密封するための止め部246を備えてもよい。止め部246は、二重ルーメンカテーテル260が拡散カテーテル240の内部に挿入されると、所定の位置に二重ルーメンカテーテル260を固定するためのロック(図示せず)を備えることも可能である。
【0070】
図22A乃至図22Cに示す他の実施例において、拡散カテーテル240及び二重ルーメンカテーテル260は、拡散カテーテル240に対して二重ルーメンカテーテル260が特定の軸方向へ配向するように、取り付け部材248(図22C参照)を備えてもよい。特定の軸方向への配向を確実にする動作は、流体が二重ルーメンカテーテル260を出入りする際に生じる流体の噴流圧力を減少させることである。拡散カテーテル240の1組の穿孔242は、穿孔264を備える二重ルーメンカテーテル260の第1のポート262に対して、長手方向において対応する。図22Bに示される所望の軸方向の配置により、拡散カテーテル240の一方の組の穿孔242が、二重ルーメンカテーテル260の第1のポート262において穿孔264に対して偏位される。同様に、図22Cに示されるように、所望の軸方向の配置により、拡散カテーテル240の他方の組の穿孔244が、二重ルーメンカテーテル260の第2のポート266において穿孔268に対して偏位される。このようにして、二重ルーメンカテーテル260から出る流体は、周囲の組織に対して直線状の経路を有していない。拡散カテーテル240は、この実施例に示されるが、全ての実施例において必要ではないことに留意すべきである。
【0071】
図22Aに示される特徴は、二重ルーメンカテーテル260の第1のルーメン270の断面積を変更することであり、これは特に第2のルーメン265の先端方向で行われる。図21A及び図22Aに示されるように、本明細書において述べられる二重ルーメンカテーテルは、必要に応じて並列カテーテルや同軸カテーテルであってもよい。本明細書において示されるカテーテルの多くが備える他の特徴は、可撓性を有する先端チップ250を備えることであり、これは図22Aに示されるようにテーパ状の部分を有することも可能である。可撓性を有する先端チップ250は、軟性の組織、膜、及びくも膜下や頭蓋内腔の体液が充満する領域内をカテーテルが進行する際に生じる炎症を軽減するために使用できる。全ての図面において具体的に示さないが、本明細書に記載されるカテーテルの多くは、ガイドワイヤが所望の領域に進められた後で挿入される。そのようなカテーテルは、モノレール形状でオーバーザワイヤ式に進められてもよく、或いは、胆管用カテーテルに関して周知なラピッドエクスチェンジ形状を含む、血管カテーテル法において周知な他のガイドワイヤ挿入方法により挿入されてもよい。
【0072】
上記の方法及び装置に関して、異なる長さ(或いは同じ長さ)からなる2つのカテーテルは、二重ルーメンカテーテルの所定の位置に使用される。そのようなシステムの利点は、例えば、これら2つのカテーテルをより安価に製造できることである。他の利点は、これらのカテーテルうちの一方は、処置中に置換されて、一方又は両方のカテーテルポートの位置を変更してもよく、それによりくも膜下腔や頭蓋内腔の異なる領域が、同じ処置の異なる時間において注入された流体を排出又は収容することが可能である。そのような変更における利点は、短時間で同じ位置において流体をポンプで注入することにより生じるその位置の炎症を軽減することであり、或いは、流体の排出位置を失うことなく、異なる位置において処置中に必要な流体を注入できる。
【0073】
ポンプ装置は、少なくとも幾つかの組織の温度を変更する工程において使用され、くも膜下腔内の圧力や温度を維持するための補助を行う。ポンプ装置は、流体が挿入される装置に連結されてもよい。少なくとも一実施例に関して、ポンプ装置は、独立して制御される2種類の目盛り付きポンプを備えてもよく、これらのポンプは、流体が挿入される装置に取り付けられるハブアダプターに連結される。頭蓋内の流体の量を制御するために、くも膜下腔へポンプで注入された流体の量は、くも膜下腔から回収される量を等しくすることにより調整される。ポンプ装置は、流出部位において負圧を導入することなく流出が行える状況においても、このバランスを流量監視や流量制御により行うように形成される。さらに、この点において、ポンプ装置は、頭蓋内圧力の測定やその操作を可能にする、圧力監視や圧力制御により動作するように形成される。加えて、ポンプ装置は、頭蓋内の温度の測定やその操作を可能にする、温度監視や温度制御により動作するように形成される。この点において、ポンプ装置は、注入された流体の温度の測定やその操作を可能にする、温度監視や温度制御により動作するように形成される。
【0074】
ポンプ装置により、毎秒1立方センチメートル分の1程度の低い流速、或いは、毎秒数立方センチメートル程度の高い流速が生じるが、200水銀柱ミリメートルを越える圧力はあり得ないと見なされ、これは生命を維持できる頭蓋内の圧力を超えるためである。注入された液体温度を華氏32度乃至130度(摂氏約0度乃至54.44度)において変化させるには、このポンプ装置を使用して行われてもよい。他の実施例において、注入された液体温度は、この範囲を超えるが、熱交換が組織(患者の体内において)、外気(患者の体外において)、及び注入カテーテルにより行われるために損傷を受けることはない。組織に対して内部で生じた温度変化は、幾つかの例において、組織の損傷に対する耐性により制限されると考えられるが、他の実施例においては、極めて高温或いは低温の流体の注入や、極めて高温或いは低温の要素による熱交換が行われて、所望の組織面積や容積を除去したり焼灼することも可能であり、そのような処置にはより大きく変化する温度が使用されることも留意すべきである。
【0075】
内部に配置された流体を移動させる装置及び/又は熱交換器の幾つかの例が、図23乃至図27に示される。これらの例示的な例は、特定の特徴を示すためだけに記載されており、本発明をこれらの構成に限定されると解釈されるべきではない。図示されるのは、熱交換流体を使用して脳脊髄液をくも膜下腔や頭蓋内腔から除去することなく熱交換を行う方法や、折り畳み可能な流体移動装置を挿入する方法や、熱交換器及び流体移動装置を1つの構造体に一体化する装置である。少なくとも幾つかの実施例においては、挿入可能な熱交換要素が使用されるが、挿入された熱交換要素の周囲の脳脊髄液を移動させることにより、熱移動を向上させることが望ましい。幾つかの図面において示されない幾つかの実施例の他の態様では、特定の温度や圧力を感知する小型のセンサを備えることが可能であり、これらの温度や圧力は、ポンプ装置や注入装置の幾つかの用途において監視を要する重要な要素である。温度や圧力センサを備えることは慣例的には必要ではないが、幾つかの用途においては有効である。
【0076】
図23A乃至図23Cは、折り畳み可能な流体移動装置と熱交換器を示し、その使用方法を例示する。図示される外カテーテル300は、第1のポート302及び第2のポート304を備え、第2のポート304は外カテーテル300の先端部に一致する。他の実施例において、外カテーテル300は、第2のポート304を越えて延びる先端チップ(図示せず)を備える。内部に挿入された外カテーテル300は、ルーメン316に対して連通し、ワイヤ314に機械的に連結される膨張可能な部材312を備える内カテーテル310である。図示されるように、内カテーテル310は、膨張可能な部材312が、2つのポート302,304間にある外カテーテル300の中間部分306に沿って位置するように配置される。
【0077】
図23Aにおいて、膨張可能な部材312は収縮しており、外カテーテル300及び内カテーテル310は、患者のくも膜下腔又は頭蓋内腔内に配置されている。図23Bに示されるように、膨張可能な部材312は部分的に膨張される。膨張は、ルーメン316から膨張流体を膨張可能な部材312へ注入することにより行われる。膨張流体は、周囲の組織の温度とは異なる温度において注入され、例えば、脳脊髄液や組織を局所的に冷却するために低温で注入され、或いは、局所的に暖めるために高温で注入される。膨張可能な部材312は、熱交換機能が行われるための好適な材料から構成され、所定の患者の特定のニーズに合うように選択され、或いは、行われるべき所望の温度変化に応じて選択される。膨張流体は、任意の好適な流体であってもよく、例えば、通常血管の膨張バルーンによる処置に使用される膨張流体であってもよい。膨張流体は、生理食塩水の混合物や脳脊髄液であってもよく、そのため、膨張部材312やルーメン316の不備や障害により膨張流体が漏出した場合に、特定の組織に容易に受容される。処置中に、膨張部材312は、定期的に膨張及び収縮して、膨張部材312内に新しい冷却用又は加熱用の流体を注入する。温度センサ(図示せず)は、膨張部材312内の温度を監視し、新しい冷却用又は加熱用の流体が必要かどうかを測定するために配置される。
【0078】
図23Cに示されるように、十分に膨張すると、膨張部材312の外部分が、中間部分306においてカテーテル300の内壁に近接、即ち、摺動可能に接触し、膨張部材312はアルキメデスポンプの形状を取る。流体を移動する機能を発揮するために接触する必要がない場合でも、中間部分306に摺動可能に接触したり係合することにより、移動を効率よく行うことができる。例示される実施例において、膨張部材312により流体を移動するための少なくとも2つの方法が示される。一方の方法において、膨張部材312は膨張すると、第1のポート302から第2のポート304に向かって流体を押圧する。他方の方法において、ワイヤ314を回転させることにより、膨張部材312が回転して、第1のポート302から第2のポート304に向かって流体を移動させる。流体が膨張部材312を越えて通過すると、膨張部材31の基端側から先端部にかけて接触することにより、熱交換の作業が向上する。
【0079】
十分に膨張すると、膨張部材312は、約10mm乃至50mmの範囲の長さを有するが、この範囲以外の長さであってもよい。膨張部材312の直径は、図23Cに示されるように膨張すると、約1mm乃至3mmになるが、図示される実施例において、バルーンの直径の限度には中間部分306の内径が含まれてもよい。一実施例において、膨張部材は、十分に膨張すると、約20mm乃至25mmの長さと、約1.5mm乃至2mmの直径を有する。中間部分306を形成する材料は弾性を備えることにより、膨張部材312が、カテーテル全体が通常有する直径よりも大きい直径まで拡張できる。
【0080】
図23A乃至図23Cの実施例において、流体が単一のルーメン316を通過することにより膨張した膨張部材312が示されるが、他の設計もまた使用可能である。例えば、複数のルーメンにより膨張を行う設計を使用でき、例えば、図26に関して以下に述べるように、一方のルーメンは流体の流入を行い、第2のルーメンは流体の流出を行う。そのような実施例により、膨張流体の置換や流出の継続や完了を可能にして、より良好な熱交換が行われる。例えば、単一のルーメンが使用されて膨張部材を膨張及び収縮させる場合に、膨張流体を膨張部材とルーメンの両方から完全に引き抜くことは難しいため、膨張が再開すると、膨張部材は、膨張部材とルーメン内に残されていた未処理の流体を受け取ることになり、そのような流体を取り除くことなく再使用することは熱の移動を妨げることがある。
【0081】
図24は、他の膨張部材を使用して流体の移動と熱交換の両方を行うための他の実施例を示す。膨張部材350は、外カテーテル360の先端側の開口部362を越えて配置される。膨張部材350は、十分に膨張され、長尺状の管材352に対して流動的且つ機械的に連通する。長尺状の管材352及び膨張部材350は、閉鎖されたチャンバに延びる膨張用の単一のルーメンを有し、他の実施例においては、図26に示される流水式膨張部材を備える二重ルーメン装置に類似する。膨張部材350は、回転して流体の移動を行ってもよく、或いは、膨張部材350の膨張のみにより、十分な流体の移動を行ってもよい。膨張部材350が、加熱又は冷却流体により膨張され、膨張流体とその周囲の流体や組織との間の熱交換を行うために構成される。膨張部材350は、外カテーテル360の外側に配置されるので、幾つかの実施例においては、膨張部材350は、外カテーテル360の内側に配置される時よりも大きい直径、例えば、5mm以上まで膨張されてもよい。
【0082】
図25は、カテーテルの先端チップを越えて配置された他の膨張部材を示す。例示される実施例において、円形の膨張部材370は、カテーテル380の開口部382の先端側に延びる。二重ルーメン流体交換部材372は、膨張部材370に対して連通する。二重ルーメン流体交換部材372は、注入ルーメン374及び排出ルーメン376を備える。注入ルーメン374は、膨張部材370に対する加圧下において、加熱又は冷却された膨張流体を供給し、一方、排出ルーメン376は、膨張流体を膨張部材370から移動させる。この実施例において、注入ルーメン374を介して制御された温度の流体を継続して流すことにより、装置全体の熱交換能力が向上する。膨張部材370の膨張は、同部材、注入ルーメン374及び排出ルーメン376内の流体の圧力を制御することにより行われる。さらに、膨張と収縮を繰り返すことにより、周囲の脳脊髄液や組織を十分に移動させて、熱交換と脳脊髄液の流動の両方を行う。膨張部材の長さと直径は、直径において約5mm以上、長さにおいて約50mm以上であってもよい。図24及び図25に示される実施例の利点は、膨張部材が収縮された状態で挿入且つ進行できるため、特に大きなルーメンカテーテルを挿入する必要がなく、比較的大きな膨張部材をくも膜下腔へ挿入できることである。
【0083】
例えば、図25に関して、膨張部材370は、挿入される前に、カテーテル380の先端部内において収縮した状態で保持される。カテーテル380の先端部をくも膜下腔へ挿入し、くも膜下腔又は頭蓋内腔の所望の位置へ進めた後で、カテーテル380の外部分は後退して膨張部材370を露出させ、或いはこれに代えて、膨張ルーメン372をカテーテル380の内部に摺動可能に配置して、所望の位置において膨張ルーメン372を進めると、膨張部材370を押圧してカテーテル380の先端チップを越える。次に、膨張部材370の膨張と収縮を繰り返して、到達した領域内で流体の移動と熱交換を行う。膨張部材370の膨張、及び膨張部材370を前後又は前後方へ移動させるための膨張ルーメン372の交換により、流体の移動が行われる。流体の移動を行う第3の方法は、膨張ルーメン372の端部上に偏倚された装置として膨張部材370を提供する工程を含むことも可能であり、それにより膨張ルーメン372が回転して流体の移動が行われる。また、膨張部材370を楕円形状に形成して、回転させることにより流体の移動を行うことも可能である。
【0084】
図26は、図23乃至図25に示された膨張部材の他の構成を示す。膨張部材は、単一の膨張ルーメンを使用して充填され排出されるが、図26の膨張部材はそのように構成されていない。カテーテル400は、内ルーメン402及び外ルーメン404を有する同軸状のカテーテルとして示される。他の実施例においては、並列に配置される二重ルーメン構造体が使用される。カテーテル400の先端チップは、膨張部材410を備える。内ルーメン402及び外ルーメン404両方の内側の矢印により示されるように、膨張流体は、加圧下において膨張部材410内を通過する。例えば、流体は、内ルーメン402から膨張部材410内に進入して、外ルーメン404から排出するが、他の実施例において、流体は、反対方向に流れてもよい。流体は、カテーテル全体を通過して熱交換器やポンプ(図示せず)へ達してもよく、膨張部材410から流れる流体の温度や圧力が制御される。図26に示す実施例に関して、膨張部材410は、膨張中に継続して冷却又は加熱された流体を受け取る。膨張部材410は、アルキメデスポンプとして回転して、その周囲の流体の移動を行い、或いは、膨張部材410は固定されて、図27に示すように膨張部材410を越えて脳脊髄液を通過させる。
【0085】
図26に示す実施例は、幾つかの実施例に含まれる他の特徴を備える。カテーテル400は、脊髄くも膜下腔の挿入位置から一定の距離を移動して、くも膜下腔又は頭蓋内腔の所望の位置に達する。カテーテル400がその機能を果たすために、ルーメン402,404を流れる流体は、周囲の脳脊髄液や他の体液や体組織とは異なる温度でなければならない。流体が、膨張部材410においてカテーテル400の先端部へ達すると、流体は周囲の組織や流体と熱交換を行うことが可能になる。この工程を補助するために、カテーテル400は、基端部分412が低い熱伝導性(図において太線で示される)を有するように構成されるが、カテーテル400は、また、高い熱伝導性を有する膨張部材410を備える。カテーテル400は、膨張部材410の高い熱伝導性と基端部分412の熱伝導性との間の熱伝導性を有する移行領域を備えることも可能である。異なる熱抵抗が図において太線で示されるが、これは、材料自体が所定の位置においてより厚い又はより薄いことを必要とするものではなく、熱伝導性は、実際に、材料の組成や加工条件や厚さや熱伝導性に影響を与える他の任意の要素を変更することにより変化する。
【0086】
図27に示す実施例においては、プロペラ550を使用して、ルーメン554及び熱交換部材560を備えるカテーテル552内の流体を移動させる。熱交換部材560は、剛性を有する部材であってもよく、或いは、折り畳み可能即ち膨張可能な部材であってもよい。熱交換部材560は、熱交換流体がその中を通過して熱交換部材を膨張させるように構成されてもよく、或いは、熱伝導性を備える材料から構成されて、熱交換部材の基端部分が加熱又は冷却されて、熱交換部材の熱伝導性により、一方の場所から他方の場所へ熱伝導を行う。例えば、熱交換流体は、内カテーテル本体562のルーメンを介して熱交換部材560へ供給され、外カテーテル本体564のルーメンを介して熱交換部材560から取り除かれることも可能である。図示するように、熱交換部材560は、らせん形状をなすように配置されることにより、同部材を越えて移動する流体が幾つかの場所に沿って接触する。
【0087】
プロペラ550は、駆動ワイヤ570を捻ることにより回転され、駆動ワイヤ570は固定装置572の先端部において終端となる。固定装置572は、駆動ワイヤ570の先端部を固定し、或いは、方向を選択するラチェットを備え、或いは、駆動ワイヤ570の先端部がカテーテル552の先端チップ付近の組織に接触するのを防止してもよい。プロペラ550は、駆動ワイヤ570を回すことにより回転されて、さらにルーメン554内の流体を基端ポート556から先端ポート558へ移動させて、プロペラ550及び熱交換部材560はポート556,558間において配置される。ポート556,558は、カテーテル552の穿孔部分として示されるが、カテーテル552に単一又は複数の開口部を備えてもよい。
【0088】
図28A乃至図28Eは、他の実施例を示しており、同実施例において、流体の移動を行うための形状記憶材料を使用する。幾つかの実施例において、図28A乃至図28Eに示す流体は脳脊髄液であるが、少なくとも幾つかの実施例においては、他の流体が同じ方法で処理されてもよい。形状記憶部材600は、カテーテル602の一部に配置される。形状記憶部材料600は、貫通してカテーテル602の外ルーメン604に対して連通する流体管を備える。第1の温度を有する流体が外ルーメン604内を通過して形状記憶部材600へ達すると、形状記憶部材600が第1の形状601Aを取ることにより、形状記憶部材600に対応する領域におけるカテーテル602が図28Bに示すようにほぼ円形の断面形状を取る。第2の温度を有する流体が外ルーメン604内を通過して形状記憶部材600へ達すると、形状記憶部材600が第2の形状601Bを取ることにより、形状記憶部材600に対応する領域におけるカテーテル602が図28C及び図28Dに示すようにより細長い断面形状を取る。他の実施例において、形状記憶材の温度が、他の手段、例えば、電気抵抗等を使用して変更できる。例えば、内部領域を加熱する実施例においては、リード線は、基端側の位置から形状記憶材に近接する位置に沿って、貫通して、埋設されて或いは他の方法で延び、抵抗要素は、形状記憶材に近接するリード線の間に配置され、リード線を通過する電流により抵抗器が熱を発生させて形状記憶材の形状を変更する。
【0089】
形状記憶部材が第1の形状601Aを取ると、形状記憶部材600に対応するカテーテル602の部分が、形状記憶部材600が第2の形状601Bを取る時よりも多い量を収容できる。すでに述べたように作動させることにより、流体を押圧して、形状記憶部材600に対応するカテーテル602の部分から流体を移動させる。バルブ装置610により、流体は、図28Cに示されるように逆流(右方へ)しないで、図28Aに示されるように前方(左方へ)流れる。バルブ装置610と形状記憶部材600による作動とを組合せることにより、流体はカテーテル602から矢印612,613の方向へ流れる。第2のバルブ装置が、形状記憶部材600の他の面に構成して、流量をさらに制御して「ポンプで注入する」効率を向上させてもよい。
【0090】
図28Eは、図28A乃至図28Dに示される装置によるポンプで注入する作業を行うために付与される温度と時間の相関関係を示す。付与される温度を変更することにより、すでに説明したような作用と継続するポンプで注入する作業が行われる。これに代えて、形状記憶部材600の内管から第1の温度と第2の温度の流体をポンプで注入するよりは、形状記憶部材は、ポンプで注入された流体により熱の移動を行うように構成できる。例えば、形状記憶部材600は、ポンプで注入された流体の周囲の温度に対応する温度において、第1の形状601Aを取ることができ、ルーメン604を介して流体を注入することにより第2の形状601Bに切り換えられる。ポンプで注入された流体による熱交換により、形状記憶部材600の温度は、ポンプで注入された流体の周囲の温度に対応する温度へ戻り、形状記憶部材600は第1の形状601Aに戻る。
【0091】
図29A乃至図29Cは、膨張部材650を備えるカテーテル640を使用して、流体の移動を行う他の実施例を示す。膨張部材650は、圧力が膨張ルーメン660を介して付与されると、基端側から先端側へ順に膨張するセグメント651,652,653,654,655を備える。一番基端側の第1のセグメント651は、図29A及び図29Bに示すように、最初に膨張する。十分に膨張すると、第1のセグメント651は、流体が第1のセグメント651の先端側からその基端側へ流れるのを遮断する。他のセグメント652からセグメント655までが順に膨張すると、流体は、膨張部材650に対応するカテーテル640の領域から排出される。流体は第1のセグメント651を通過できないので、カテーテル640に沿って先端方向へ流れなければならない。膨張部材650は、ポンプで注入された流体と、膨張部材650を膨張させるために使用された流体との間の熱交換を可能にする。
【0092】
図30A及び図30Bは他の実施例を示す。図30A及び図30Bに示される実施例は、バルブ装置710を有するカテーテル700を使用する。電極720,722は、カテーテル700の壁に係合している。各電極720,722は、カテーテル700と一体化又はカテーテル700内に配置されるワイヤ(図示せず)を介して、静電エネルギー源に対して電気的に接続されてもよい。電極720,722に異極性を付与して、それらの電極間に引力を発生させて、カテーテル700の壁が図30Bに示されるように接近させる。これに代えて、同様の極性を電極720,722に付与して、カテーテル700の壁を図30Aに示されるように互いに反発させてもよい。電極720,722による作動と、バルブ装置によるバルブ機能との間において、流体は、矢印724,726に示されるように、カテーテル700を介してポンプで注入される。
【0093】
図30A及び図30Bの実施例は、例えば、図23A図23Cに示されるような異なる熱交換器により使用されてもよい。静電気又は静磁気力を電極と連動させて使用してもよい。また、図30A及び図30Bに示される動作のいずれか一方は、カテーテルの張力により補助されても、或いは、全体的に行われてもよく、例えば、カテーテルは、弾性を有してもよく、或いは、剛性を有して電極により供給される力により生じる動作に対抗することも可能である。MRスキャナ内で使用する場合は、付与されたMRスキャナの磁界を使用して作動させることも可能である。しかしながら、電極(本明細書において述べる全ての装置及び部品も同様に)に使用する材料を考慮する場合、最新の画像装置に使用される大きな磁界内にそのような材料を配置することの可能な効果を考慮する必要もある。
【0094】
上記の実施例は、本発明全体の異なる特徴を例示するものであり、他の構造体や方法と併用して使用されて、本発明の精神を逸脱することなく、記載されたような熱交換や流体の移動を行ってもよい。さらに、上記の特徴は、異なる構成において分離されても、組み合わされてもよい。
【0095】
(生理学的且つ生化学的特性のモニタリング)
本発明の他の用途には、例えば、くも膜下腔や頭蓋内腔等の体内の位置において、センサや検出器を配置する工程を含む。この点に関して、図14は、壁92と同壁に装着された検出器94を有する装置90を備える実施例を示す。同図において、検出器94は、壁92の外側に装着されているが、特定の実施例において、壁92の外面下の検出器94の奥行きや壁92を形成する材料の種類に応じて、壁92内に埋設されても、或いは、壁92の外面の下方に埋設されてもよい。さらに、壁92は開口部を有してもよく、検出器94は壁92の内面に装着され、開口部を越えて延びてもよく、構成された適切な予防措置が取られて、装置90が進行する際に検出器94の損傷を回避する。加えて、検出器94の位置は、装置90の端部から、壁92に沿って任意の位置に変更されてもよい。
【0096】
検出器94は、電気的活動を監視するために有効な脳波記録電極であってもよい。検出器94は、pH、血糖値、酸素圧、二酸化炭素濃度、ナトリウム濃度等の生化学的特性を監視するために有効なセンサであってもよい。したがって、これらの生化学的特性うちの一つは、センサを使用して監視されてもよい。検出器94は、温度を監視するために有効な熱センサであってもよい。よって、流体や組織等の温度は、熱センサを使用して監視できる。また、検出器94は、神経伝達物質の濃度を監視するために有効である。さらに、検出器94は、圧力センサであってもよく、例えば、不純物、薬剤、抗生物質、血液細胞の注入や濃度等の脳脊髄液の特性を検出できる。幾つかの実施例において、検出器94はカテーテル上に配置され、カテーテルと共に挿入されたり、取り除かれてもよい。或いは、他の実施例において、脊髄くも膜下腔を介して所望の場所へ進められるカテーテルを使用して配置される植込み可能な医療装置であってもよい。
【0097】
図15は、装置90の断面図であり、検出器94は壁92内に埋設されたワイヤ96として示される通信装置に連結されてもよい。通信装置は、装置90の長さに沿って任意の距離を移動し、装置90の端部を含む任意の位置において、又は、装置90の端部に(永続的又は一時的に)連結されたハブにおいて、又は、装置90の端部において、又は、装置90の端部に連結されたバルブ装置(図3に示されるバルブ装置36等)において、壁92を出て即ち壁92から離間して延びる。次に、通信装置は、検出器からの信号を処理するステーションに接続される。ステーションは、検出された特性を監視及び/又は制御する際に、集めたり及び/又は生成するデータを記録するように形成される。また、通信装置は、例えば電波や他の電磁的な伝達手段を使用する無線通信の形態を取ってもよい。例えば、ワイヤ96は検出器94に連結されることにより、信号の出力を行う検出器94と共にアンテナとして使用されてもよい。
【0098】
図16は、MRスキャナ100内で摺動する台102上に位置される患者を示す。施術者104は、スキャンされるべき目的領域から遠隔的に配置されるため、MRスキャナ100内の磁気が施術者の操作を妨害しない。シース24は、患者の体内に挿入されており、ワイヤ96として示される通信装置は、バルブ装置36からステーション106へ延びる。ワイヤ96は、長尺状部材26の壁に装着された検出器(図示せず)に連結される。ステーション106は、紙のデータや電子データを含む任意の好適な媒体上で、検出された特性を監視及び/又は制御する際に、集め及び/又は生成するデータを記録するように形成される。また、ワイヤ108の形態における第2の通信装置は、ステーション106として示され、他の施術者がステーション106により生成且つ集められたデータを観察できる他の場所へ延びる。
【0099】
シース24やカテーテル42等の装置(図14において装置90として示される)に連結される検出器を使用して行われる同種類の監視は、脳組織やくも膜下腔内に植込まれた検出器を使用して行われてもよい。図17は、頭蓋内に配置された検出器112を示す。図17は、頭部110の内部の脳18を示し、さらに、カテーテル42が検出器94が配置される壁を有することを示す。また、図17は、ワイヤ96の形態における通信装置が、検出器94に連結され、破線で示すようにカテーテル42の壁内に埋設されることを示す。ワイヤ114として示される検出器搬送機構は、検出器112に連結される。この連結は、例えば、電磁的又は機械的に行われてもよい。検出器112は、その意図される目的地に到達すると、ワイヤ114から分離できるようにワイヤ114に連結されてもよい。そのような実施例において、検出器112は、図16に示されるステーション106等のステーションと無線で通信できる。これに代えて、ワイヤ114として示される検出器搬送機構は、検出器112と連結されたままで、検出器112と遠隔ステーションとの間の通信装置として動作する。検出器112は、搬送されるとその位置を保持するための固定機構を備えてもよい。検出器112がカテーテル42から出ると配置される固定機構を備え、そのような固定機構は非管状形状を有する。例えば、血管系において使用される好適な固定機構には、装置のワイヤ部材の先端チップにおいて配置される「フック(hook)」や「バーブ(barb)」が含まれ、そのようなフックは血管壁に係合して装置を所定の位置に保持する。また、そのようなフックは固定機構として使用されて、検出器112がくも膜下腔に植込まれるような場合において、硬膜に係合する。他の好適な固定機構は、検出器112の張り出し端部であってもよく、従来技術による心室シャントカテーテルの先端チップ上の張り出し形状に類似する。そのような固定機構は、検出器112が脳組織や心室へ向かうカテーテルに配置される場合において有用である。
【0100】
図14、図15及び図17に示される実施例に加えて、複数の検出器を本発明の装置(シース24やカテーテル42等)の一つの壁の内面又は外面に装着してもよく、或いは、本発明の装置の一つの壁内に配置されてもよく、それにより上記したような異なる特性を良好に監視できる。さらに、単一の通信装置(ワイヤ96等)を使用して、複数の検出器をステーションに接続してもよい。加えて、図13に示される各副長尺状部材は、上記した検出器をすでに述べたように備えることも可能である。例えば、図13に示される副長尺状部材は、共に壁に装着された検出器を有してもよく、一方の副長尺状部材に装着された検出器は、脳組織内に配置されて酸素圧を監視するのに有用であり、他方の副長尺状部材に装着された検出器は、脳脊髄液内に配置されてナトリウム濃度を監視するのに有効なように、これら副長尺状部材は長さを有する。
【0101】
体内の組織及び/又は流体の生理学的又は生化学的な状態を監視するための他の形態は、いわゆる「微量透析(microdialysis)」である。これは、細胞外液及び/又は脳脊髄液等の少量の液体を取り出して分析することを含み、これらの液体は、くも膜下腔や、くも膜下腔へ進行することにより到達可能な領域において得ることができる。例えば、脳に近接する脳脊髄液は、上記のくも膜下腔へ到達するための方法を使用して、接近でき、微量透析処置においてサンプリングされる。髄腔へ進行することにより、画像により誘導(例えば、X線やMRIによる誘導)されて、脳の柔組織やくも膜下腔の他の部分へカテーテルを配置して、細胞外液の化学即ち薬物レベルを監視することが可能である。本明細書において述べたカテーテルの幾つかは、本明細書に記載された方法や後に開発される他の方法により、監視及び/又はサンプリングに使用されてもよい。さらに、本明細書において述べた方法は、監視及び/又はサンプリングを補助するために使用されてもよく、本明細書に開示されたカテーテルや、流体の取り出しが可能で、サンプリングや監視を容易に行うことのできる装置や機構を備える他のカテーテル様装置を使用してもよい。
【0102】
幾つかの実施例において、くも膜下腔や頭蓋内腔へ接近することにより得た流体は、他の作業と連動させて生化学的な特性を検査することも可能である。例えば、患者の脳脊髄液を交換又は冷却する機能を行って、くも膜下腔内の組織を局所的に冷却する一方で、脳脊髄液や他の流体の一部をその生化学性を検査するためにサンプリングすることもできる。
【0103】
(脳波記録用電極の配置)
上記したように、脳波記録(EEG)用電極である検出器は、本発明の方法を使用して、脊髄及び頭蓋内領域のくも膜下腔及び脳組織へ挿入できる。例えば、てんかんの治療において、発作の起きている部位を特定することが困難な場合が多い。特に困難な症例において使用される技術には、EEG用電極を脳の表面(皮質脳波記録法)又は脳質内(深部電極植込み)に直接配置する工程が含まれる。EEGの監視には、脳細胞から発せられる極めて弱い電気信号の検出が含まれるため、頭皮筋肉からの干渉の排除、頭蓋骨からの信号抵抗の排除、及び脳組織に近接して電極を配置してこれらの信号を排除することは、場所の特定や検出の感度や特異性を高めるための手段である。
【0104】
てんかん様症状を検出する感度や特異性を高める一方で、皮質脳波記録法や深部電極植込みのような技術は、深部に電極を配置するために頭蓋にバーホールを形成したり、皮質脳波記録法において皮質に電極アレイを配置するための頭骨切開を行うため、従来通り侵襲的であった。左右相称に監視することが望ましい場合は、バーによる頭蓋への穿孔や頭骨切開を両側に行ってきた。しかしながら、本発明の方法を使用することにより、EEGの電極は、経皮的に脊髄くも膜下腔へ挿入して頭蓋内腔へ進めることにより、脳の表面や脳組織に配置することが可能である。
【0105】
EEGの電極が、図17に関して述べた検出器112の形状である場合は、複数の検出器をワイヤの形状をなす通信装置と接続されてもよい。複数のワイヤや検出器による組合せは、一度の処置を行う間に配置でき、異なるワイヤは、異なる直径や剛性等を有することが可能である。よって、EEGの電極のアレイが、脳組織上やその内部に配置されて、深部の脳構造からの脳波図を描くことができる。例えば、2つの通路を有するカテーテルは、これらの通路の一方に配置されたガイドワイヤ上を所望の場所に向かって進められる。次にEEGの電極が開口する通路を通って所望の場所へ配置される。配置されると、カテーテルはガイドワイヤ上を後退して、ガイドワイヤと第1のEEGの電極は所定の位置に残される。さらに、カテーテルは、ガイドワイヤ上を再度挿入されて、第2の電極が開口する第2の通路から所望の場所へ配置される。この工程は、必要な回数を繰り返すことができる。他の例示される実施例において、カテーテルはガイドワイヤ上に挿入され、ワイヤ等の第2の装置は、その先端チップ付近に配置された離脱可能なEEGの電極を有し、カテーテル内へ進められて先端部に達すると、EEGの電極が解放される。カテーテル全体を取り除くことなく、他のEEGの電極が同様に挿入されてもよい。
【0106】
(脊髄及び脳への刺激)
医学及び研究において、脳や脊髄へ電気的刺激を送ることが望ましい場合がある。本発明の方法を用いて、そのような刺激に適した電極を配置して、患者の組織に電流を流したり、加熱したり、極低温刺激(cryothermal stimulation)を与えることができる。ワイヤ等の伝達装置は、電極に接続されて電極へ刺激信号を送る。また、刺激信号は、無線で電極へ伝達されてもよい。さらに、ワイヤ等の伝達装置が使用される特定の実施例において、ワイヤは、刺激信号を送るのに有用なステーションに接続され、患者の体外に配置され、或いは、皮下腔に植込まれるステーションとして患者の体内に植込まれる。上記した検出器を挿入するための方法及び装置は、刺激伝達装置を配置するのにも使用できる。
【0107】
(腫瘍の治療用の放射性ペレット又はビーズの植込み)
本発明の方法は、放射線を腫瘍に照射するために、放射性ペレット又はビーズを脳等の領域において患者の体内に植込む際に使用できる。放射線を腫瘍に照射するために放射性ペレットを使用することは周知であるが、本発明の方法を用いてそのようなペレットを配置することは新規である。本発明の方法を用いて行われる他の全ての用途と同様に、放射性ペレットの配置は、MRにより視覚化されたものを監視できる。
【0108】
(脳の損傷の除去)
機能的脳神経外科において、脳に損傷を形成することが望ましい場合がある。これは、慢性の疼痛症候群、パーキンソン病、他の病状において見られる。損傷を形成するための最新の技術は、CTやMRによる定位固定を含み、極低温や熱による除去装置が、手術室で脳神経外科医が頭蓋に開けたバーホールを介して、脳の所望の場所へ挿入される。
【0109】
本発明の方法を用いて、装置(シース24やカテーテル42等)やガイドワイヤ(ガイドワイヤ44等)が、くも膜下腔(例えば、脊髄くも膜下腔)に挿入されて、図1に関して述べたように所望の場所へ進められる。次に、熱エネルギーや極低温エネルギー等のエネルギーが、カテーテル、シース、又はガイドワイヤに埋設或いは装着された除去装置に付与され、或いは、カテーテルやシースの通路から挿入される除去装置に付与されて、損傷が脳組織等の近接する組織に形成される。他の応用領域には、従来の技術では到達できない、或いは、従来の技術で治療すると死亡率が高い腫瘍が含まれる。そのような場所には、脳幹、脊髄、くも膜下腔や頭蓋内腔内の場所が含まれる。除去装置が装置やガイドワイヤに装着又は埋設される症例において、除去装置は、装置やガイドワイヤの先端部に配置され、或いは、装置やガイドワイヤの長さに沿って任意の好適な場所に配置されてもよい。他の実施例において、除去装置は、回転部材や切断部材を備えてもよい。切除された組織部分を回収するために、カテーテルやシースのルーメンから吸引を行ってもよい。
【0110】
除去後の治療の成果を監視するために、1種類以上の画像診断法を使用することにより、損傷を形成し、部分的な成果を観察し、挿入装置(カテーテル42等)を再配置することなく、或いは、挿入装置を最小限度に操作することにより、損傷を拡大させることができる。さらに、本発明の方法を用いて行われる組織切除は、従来の外科手術と併用して行うことにより、従来技術による切除の前後に形成して、或いは、術前に切除を強化したり、不完全に切除された損傷の縁部を改善させ、又は、他の方法により異なる種類の悪性腫瘍からの転移性疾病等の複数の脳障害を伴う疾患において広範囲に渡って切除を行う。
【0111】
(1つ以上の脳室への接近)
医学において、脳室系は、一時的(脳室造瘻術)及び永続的(シャント術)にカテーテル法が用いられることが多い。カテーテル法により、水頭症を治療したり、血圧を監視したり、頻度は多くないが、異なる薬剤を投与したり、脳脊髄液を取り出したりする。しかしながら、最近の神経外科治療では、頭蓋骨にバーホールを開け、通常は前頭葉や頭頂葉の脳組織内にカテーテルを挿入して脳室に到達する。経皮的にくも膜下を進行する本発明の方法を用いて、側脳室、第3脳室及び第4脳室に到達できる。したがって、本発明の方法を用いて、頭部内に位置する少なくとも1つの脳室に到達できる。上記したように(本明細書において記載される医療装置の全ての動作を伴う)画像診断法を使用して、医療装置が脳室に接近して進入する際に、医療装置の位置を監視できる。
【0112】
さらに、本発明の方法を用いて、頭部内に位置する少なくとも1つの脳室から脊髄液を排出することが可能である。例えば、シャント術を含む用途において、腹膜腔や心臓への静脈環流において、シャント部品を配置する必要がある。これは、本発明の方法を用いて行うことが可能である。例えば、挿入位置において経皮的に装置を脊髄くも膜下腔へ挿入して、くも膜下腔へ装置を進めた後に頭部内に位置する1つ以上の脳室に到達して及び/又は脳室から排出を行う。排出は、脳室及び排出位置を測り、脳脊髄液や他の流体が該脳室から一方向に流れるような一方向バルブとして動作する機構を使用して行うことが可能である。他の実施例において、本発明の方法を使用して、植込み可能な装置を挿入し、脳脊髄液の排出、圧力制御、又は脳の一領域から他の領域までを平衡に保つことにより、例えば、水頭症の治療を行う。
【0113】
(脳の生体組織検査)
脳を取り巻く膜(軟膜)を貫通すると、脳は極めて軟質のゼラチン質の組織である。神経外科による脳の切除は、メスやハサミで切断するよりも、脳組織を吸引するための吸引器に装着される管状の装置を使用することが多い。脳組織の特性については、吸引されてから生体組織検査が行われる。
【0114】
本発明の方法を用いて、装置が、脳の一部を除去するために使用される装置の通路から挿入される。例えば、脳の一部を除去するために使用される装置は、カテーテル等の装置の通路から挿入するように形成される従来の定位装置であってもよい。
【0115】
これに代えて、装置は、シリンジや他の機構により吸引器に連結されて、カテーテルやシースのチップに位置する組織の標本を回収するために使用されてもよい。生体組織検査の他の特徴は、診断材料を回収するために、組織を複数サンプリングする必要がある場合が多いことである。よって、2種類以上の標本を回収するためにカテーテルを再配置する必要がある。一旦装置が配置されたならば、そのために行った動作を繰り返し行うことを回避するのが望ましい。例えば、カテーテルが目的領域の基端側に配置され、吸引器がカテーテルのルーメンに固定されて脳の一部が回収される。次に、シースやカテーテルが、初めに配置(ガイドワイヤを所定の位置に残すこと)を容易にするために使用されたガイドワイヤに沿って移動し、組織の標本が適切でなければ、カテーテルはガイドワイヤ上に再配置されて、他の生検用の標本が同様の方法により採取される。
【0116】
上記したように、幾つかの実施例において、吸引力は、脳組織を回収するために使用される唯一の力である。他の実施例においては、回転部材を使用して、組織を切除してカテーテル内に引き込んでもよい。幾つかの実施例において、他の切断装置を使用してもよく、例えば、先端部に往復ブレードを備えるカテーテルの基端部から、同ブレードを制御することも可能である。
【0117】
(神経系疾患の治療)
本発明の方法を用いて、遺伝物質をカテーテルの通路から挿入して、神経系疾患を患っている患者の体内に配置して、その疾患の治療を補助することも可能である。そのような遺伝物質にはヒト幹細胞が含まれる。さらに、脳神経の圧迫から生じる神経系疾患も、本発明の方法を用いて治療することが可能である。例えば、本発明の方法を用いて微小血管減圧術を行うことも可能である。そのような用途において、ルーメンを有するカテーテルを挿入位置において経皮的に脊髄くも膜下腔へ挿入して、カテーテルをくも膜下腔内に進めて、装置をルーメンから挿入して血管ループと1つ以上の脳神経との間に配置し、血管ループにより脳神経の圧迫を取り除くことも可能である。他の実施例において、装置を挿入して神経を切断し、神経系疾患を緩和することも可能である。
【0118】
(血管の凝固又は焼灼)
従来の外科手術においては、金属製の電極を出血血管に対して使用し、電極から電流を流して組織を加熱して血管を焼灼する。その焼灼法は、鉗子の先端を接近させて「2点」装置により行われ、それにより電流のループを形成する。本発明の方法を用いることにより、血管は出血が観察されると、或いは、出血を止めるために、手術時に血管を凝固させる。例えば、カテーテルは、挿入位置において経皮的に脊髄くも膜下腔へ挿入され、くも膜下腔内を進められる。そして、「2点」又は「ボビー(Bovie)」装置(従来の外科や神経外科において使用される)等の装置が、カテーテルの先端部付近に接続され、或いは、カテーテルはルーメンを備えて装置はルーメン内を進められる。また、単極焼灼法も周知であり、他の実施例において上記と同様の方法により行うことが可能である。
【0119】
したがって、焼灼要素を有する装置や、焼灼要素(電流誘導装置に装着できるように形成された)に接続された伝達装置(ワイヤ、絶縁ワイヤ、ワイヤループ、又は絶縁ワイヤループ等)を本発明の方法と共に使用して、血管を加熱して凝固又は焼灼させることも可能である。これに代えて、装置は、焼灼要素としてガイドワイヤの端部に配置される鉗子を備えてもよく、鉗子は開閉して従来の「2点」装置上において鉗子と同様の働きをする。伝達装置は、ガイドワイヤを含む本発明の装置の1つに装着される。他の実施例において、MRスキャンを行うのに使用される強磁界は、小型の焼灼装置により使用でき、焼灼装置は、磁界の変化により焼灼用の電流を焼灼装置内に誘導するように構成される。焼灼装置の一部である伝達装置は、ワイヤループであってもよく、挿入される通路から出た後にわずかに張り出す。
【0120】
(カテーテル方法学に関する注意事項)
上記の装置は、幾つかの方法により所望の位置へ挿入することができる。幾つかの方法を使用して、シースを経皮的に挿入して装置を脊髄くも膜下腔へ挿入するが、シースを含むこれらの方法は、シース内を他の装置が通過することにより継続して行われる。次の工程では、ガイドワイヤ又はガイドカテーテルが挿入される。ガイドワイヤは、シースが備わっている場合はシース内を通過して、脊髄くも膜下腔内へ進められて所望の位置に到達する。幾つかの実施例において、MR映像法や他の画像診断法を使用してガイドワイヤの進行を監視することができる。ガイドワイヤが所定の位置に達すると、ガイドカテーテルが挿入される。ガイドカテーテルはルーメンを備え、ルーメンはショートルーメンであってもよく、或いは、ガイドワイヤを収容できるようにカテーテルとほぼ同じ距離に渡って延びてもよい。ガイドカテーテルは、ルーメンを使用してガイドワイヤに続くことも可能である。幾つかの実施例において、ガイドカテーテルを挿入する前に、ガイドワイヤが進められて所望の位置に達するが、他の実施例においては、ガイドワイヤは短い距離を進められて、ガイドカテーテルはその先端部がガイドワイヤの先端チップ付近にくるように進められ、ガイドワイヤ及びガイドカテーテルが所望の位置に達するまでこれらの工程が繰り返される。
【0121】
ガイドカテーテルを備える実施例において、上記した装置の1つのように、所望の装置を担持するカテーテル装置は、ガイドカテーテルのルーメンを通過して所望の位置まで進められる。ガイドカテーテルは、カテーテル装置が所望の位置に達するまで、カテーテル装置を保護又は収容するために備えられている。また、複数のカテーテル装置を挿入する必要がある場合に、ガイドカテーテルは、周囲の組織や膜を複数のカテーテル装置が通過する際に生じる炎症や損傷から保護するために使用されてもよい。
【0122】
他の実施例において、ガイドカテーテルを省いて、カテーテル装置をガイドワイヤ上へ挿入してもよい。ガイドワイヤが所望の位置に達するとカテーテル装置が挿入され、或いは、ガイドワイヤが前方に向かって一定の距離にわたって押圧されると、カテーテル装置がすぐその後に続いて徐々に挿入されてもよい。カテーテル装置を徐々に挿入するのは、くも膜下腔内を一定の距離に渡って補強することにより、ガイドワイヤの押圧性を高めるためである。また、別の理由としては、ガイドワイヤがくも膜下腔内の膜を押圧するのに適していない場合があり、例えば、軟膜を貫通する必要がある場合に、ガイドワイヤを湾曲させて、脊髄くも膜下腔の組織を損傷する可能性があるためである。
【0123】
他の実施例はガイドワイヤを備えなくてもよい。そのような実施例は、ガイドワイヤに類似する方法で、脊髄くも膜下腔へ挿入及び進行する場合は、シース内を通過するカテーテルを使用することができる。そのような実施例では、使用されるカテーテルは、カテーテル装置が挿入されるガイドカテーテルであってもよく、或いは、挿入される第1のカテーテルは、カテーテル装置自身であってもよい。
【0124】
(死体に関する研究)
(研究材料と方法)
防腐処理を施していない二体の男性死体(病死による)を腹臥位に配置した。透視法により、各死体には、標準的な単一壁穿刺用血管造影針を使用して、L3−4及びL4−5間空において腰椎穿刺が行われた。次に、0.038インチ(約0.965mm)径のガイドワイヤが挿入されて上方へ向けられた。続いて、5フレンチ(F)(約1.6mm)の血管造影用拡張器が、ガイドワイヤ上をくも膜下腔へ進められて経路を拡張し、5フレンチ(F)(約1.6mm)の動脈用シースがその先端チップを上方へ向けて配置された。各死体において、一方のシースは、脊髄の後方に対してカテーテル法を行うために使用され、他方のシースは、脊髄の前方に対してカテーテル法を行うために使用された。
【0125】
シースの配置に続いて、血管造影技術がくも膜下腔に対して使用された。具体的には、透視法において親水性コーティングされ角度を有する先端を備えるガイドワイヤ(東京に所在するテルモ(株)によるラジフォーカスガイドワイヤ(商標Radiofocus)、米国マサチューセッツ州ウォータタウンに所在するメディテックボストンサイエンティフィック社により販売される)が、施術者の管理下でその先端を前方又は後方へ向けて進められた。可能な限り正中位置を維持するように注意が払われたが、常時維持することはできなかった。さらに、生理食塩水を注入して、くも膜下腔を膨張させることにより進められた。注入圧力は、死体の脊髄上方の注入袋の高さにより容易に調整できたが、注入圧力及びくも膜下腔の圧力は特に監視されなかった。
【0126】
頭蓋内腔に挿入した後で、カテーテルを操作してカテーテルを挿入する領域を調べた。カテーテル法による操作に続き、切断作業のためにカテーテルが所定の位置に残された。所定の位置に配置されているイントロデューサ及びマイクロカテーテルのある皮膚において、標準的なワイヤカッターを使用してシースが切断された。次に、組織の残端は縫い合わされ、死体は防腐処理が施された。
【0127】
防腐処理の後で、一方の死体について、カテーテル法により脊髄損傷の有無を調べた。頸椎から胸椎にかけて椎弓切除を行い、さらに下方へ向かってカテーテルの挿入位置に達した。切開された硬膜は、所定の位置に配置されたカテーテルと共に写真に収められた。脊髄が取り除かれて、所定の位置に配置された腹部用カテーテルと共に写真に収められた。脳の切開が行われてカテーテルの位置が確認され、予想しなかった脳組織への損傷を調べた。カテーテルが視交叉領域を通過した場合は、その領域に対して特に注意を払って調べた。
【0128】
(結果)
各例において、ガイドワイヤは、胸椎及び頸椎内を比較的容易に進んだ。幾つかの例においては、カテーテルはガイドワイヤを配置することなく容易に進められた。大後頭孔において、後部用カテーテルを第4脳室へ進入させる試みがなされた。後方窩内の小脳後部(retrocerebellar)腔への進行が比較的容易に行われて観察されたが、後方窩の周囲を進行して前方窩から橋へ達する場合があった。また、小脳の後方を上方に進めて小脳テントの位置まで比較的容易に達した。各死体において、正中部へのカテーテル法が行われた時に、頭蓋の基部において硬膜に達した。側方や後部へのカテーテル法において、ガイドワイヤの偏位が容易に起きたが、ガイドワイヤの軟質の先端チップが正中部において硬膜を貫通するのに不適当であったため、ガイドワイヤの剛性の高い端部を使用して硬膜を貫通した。その後、上方へのカテーテル法は容易に行われた。死体1において、透視法により第4脳室へカテーテル法を試みる間に、後方窩用カテーテルは最終的に小脳を越えた。死体2において、第4脳室には良好にカテーテルが挿入されて、以下に述べるように造影剤が注入された。
【0129】
透視法を使用しただけでは、第4脳室の位置を完全に確定することはできなかった。造影剤を注入したが、小脳の構造の輪郭を捕らえることなく、頭蓋内に造影剤が広がった。二死体のうちの一方において、第4脳室へのカテーテルの挿入が可能なところまで、カテーテルにより盲目的に進行した。造影剤を注入することにより、第4脳室への充填、シルビウス水道への逆流、第3脳室への流入、及びモンロー孔を介して両側の側脳室前角への流入が確認できた。
【0130】
両死体において、くも膜下腔の前方から橋部へのカテーテル法は容易に行うことができた。5フレンチ(約1.6mm)程度のカテーテルが、この位置へ良好に進められた。上部脳橋位置において、両死体の硬膜に対して、標準的な技術を使用してより高度なカテーテル法を行うことはできなかった。両死体において、複数のカテーテルの再配置を試みたが、ガイドワイヤはその位置から繰り返し偏位した。そのため、ガイドワイヤが反転したので、ガイドワイヤの剛性の高い端部を使用して硬膜を「突破(punch)」した。この硬膜は、リレクイスト(Lilequist)膜と思われるが、解剖の後では確実に確認することができなかった。一旦越えると、カテーテル法を使用して、鞍上槽へ、マイクロガイドワイヤ(商標Radifocus、テルモ(株)、米国カリフォルニア州フレモントに所在するターゲット セラピューティックス ボストンサイエンティフィック社により販売される0.018インチ乃至0.013インチ(約0.457mm乃至0.330mm)のテーパド グライドワイヤ ゴールド(商標Tapered Glidewire Gold))を円滑に挿入した。トランジット(登録商標Transit)18マイクロカテーテル(米国フロリダ州マイアミレイクに所在するジョンソンエンドジョンソン社より販売されるコルディス エンドバスキュラー システムズ(登録商標Cordis))が、ガイドカテーテルとしてほとんどの症例において使用された。幾つかの症例においては、ガイドカテーテルとして、トラッカー(商標Tracker)38カテーテル(ターゲットセラピューティクス(登録商標Target Therapeutics、ボストンサイエンティフィック社)を使用した。死体1において、単一の4フレンチ(約1.3mm)イントロデューサカテーテルが使用されたが、これは、メドトロニクス社により買収された米国カリフォルニア州サニービルに所在するエムアイエス社(MIS,Inc.,Sunnyvale,CA))より製造されている。そのカテーテルを使用して、イントロデューサカテーテルは鞍上槽へ進められた。
【0131】
死体1の鞍上槽において、カテーテルは比較的容易に進められて、シルビウス裂へのカテーテル挿入が観察され、造影剤が注入されると、シルビウス裂内を流れるのが確認された。カテーテルはその位置に残され、死体には防腐処理が施された。
【0132】
死体2において、鞍上槽へのカテーテルが挿入された後に、統制度に関する実験が行われた。まず、すでにカテーテルが挿入された中頭窩から反対側にある前頭窩にカテーテルが挿入された。カテーテルは、眼窩蓋に沿って進められて、上方に湾曲するのが観察され、カテーテルの先端チップは、最終的に前頭葉に対して前方に位置して、さらに前頭洞へ進んだ。次に、カテーテルは眼窩蓋の位置まで後退させられ、これは造影剤の注入により確認された。さらに、カテーテルを再配置して、中頭蓋窩の対側床にカテーテルを挿入して造影剤を注入して確認した。
【0133】
後方窩へカテーテルが進められて、上記したように、第4室において確認された。造影剤を注入後に、第3室に幾らか混濁が見られた。この混濁は、前方へ配置されるカテーテルに対して「道路地図」として使用され、脚間槽の領域から直接第3室へカテーテルの挿入を試みた(透視法により、正確な位置は特定されなかった)。脳の下面にある軟膜内層は、ガイドワイヤの軟質の端部では穿刺させることができず、第3脳室はそれにより隆起したが穿刺されなかった。しかしながら、保持された造影剤の排出により確認されたように、最終的に第3脳室へ進入することができた。これは、第3脳室のカテーテルから造影剤を注入して確認した。次に、この死体は防腐処理が施された。
【0134】
死体1においては、カテーテルを挿入した脊髄の構成部分を解剖して調べた。上頸部から腰椎の穿刺領域までを椎弓切除した後に、後部硬膜が切除されて映し出された。背側のイントロデューサカテーテルが、脊髄を損傷することなく、脊髄の上方にあるのが確認された。イントロデューサカテーテルは取り除かれ、脊髄は、両側の神経根を切断して取り出すことにより切除され、腹部カテーテルは脊髄と共に保持された。脊髄は、前外側へ向かって横行し、異なる神経根に対して前後方に曲がって進むのが観察された。脊髄の明らかな損傷は見られなかった。
【0135】
死体1において、脳の解剖に先だって、骨頭切除後に血管にラテックスを注入した(動脈に赤色のラテックスを注入し、静脈に青色のラテックスを注入する)。左前側頭領域を広範囲に渡ってドリルで骨に孔を開けて解剖が行われ、シルビウス裂及び頭蓋底頂部領域に対して拡張された外科処置が再現された。手術用顕微鏡を使用して、中脳の前方、即ち小脳と中脳との間にマイクロカテーテルを確認した。マイクロカテーテルは、橋底部の右方へ移動して下方へ続いていた。脳幹の前方をカテーテルが通過する間において、カテーテルによる脳組織の損傷は見られなかった。カテーテルは、左シルビウス裂の溝において横方向に延びていた。側頭葉を取り除くことにより、中脳動脈の枝管付近のシルビウス裂内にカテーテルを確認した。後方窩用カテーテルが小脳に進入するのが観察されたが、さらに綿密な解剖による観察は行われなかった。
【0136】
死体2を解剖することにより、放射線から推測されたように、第3脳室用のカテーテルが所定の位置(第3脳室内)に配置されていることが確認された。カテーテルは、脳幹を貫通することなく小脳に沿って脳幹の前方を通過していた。また、脳蓋底動脈は、カテーテルから分離しているのが確認された。第3脳室の穿孔位置は、脚間槽から正中部においてほぼ垂直方向にあった。第4脳室のカテーテルは、幾らか張力を受けて横方向に湾曲していたが、小脳が正中部において分割され、その正確な位置は再構築できなかった。しかしながら、造影剤の注入中の画像によれば、第4脳室の蓋部において小脳組織内にあると考えられた。
【0137】
当業者には、本発明は、本願に記載され、意図される特定の実施例以外にも、様々な形態で実施できることが理解されるであろう。したがって、請求の範囲に記載される本発明の範囲および精神から逸脱することなく、形態および詳細を変更することができる。
【図面の簡単な説明】
【0138】
【図1】中枢神経系の選択された領域及び脊髄くも膜下腔へ挿入された医療装置を示す図。
【図2A】図1に示される脊髄の腰椎部分を示す拡大図であって、皮膚に装着するのに適した医療装置を示す。
【図2B】図1に示される脊髄の腰椎部分を示す他の拡大図であって、皮膚に装着するのに適した医療装置を示す。
【図3】皮膚に装着するのに好適でありシースとして示される医療装置を示す平面図。
【図4】図3に示されるシースに連結された皮膚装着装置の異なる実施例を示す図。
【図5】図3に示されるシースに連結された皮膚装着装置の異なる実施例を示す図。
【図6】図3に示されるシースに連結された皮膚装着装置の異なる実施例を示す図。
【図7】図3に示されるシースに連結された皮膚装着装置の異なる実施例を示す図。
【図8】図3に示されるシースに連結された皮膚装着装置の異なる実施例を示す図。
【図9】図3に示されるシースに連結された皮膚装着装置の異なる実施例を示す図。
【図10】皮膚に装着するのに好適な医療装置の長尺状部材の実施例を示す断面図であって、その非円形の形状が示される。
【図11】皮膚に装着するのに好適な医療装置の長尺状部材の他の実施例を示す断面図であって、2つのルーメンが示される。
【図12】連結された2つの副長尺状部材示す端面図。
【図13A】異なる長さからなる副長尺状部材示す図。
【図13B】2つの連結された副長尺状部材の端部の異なる実施例を示す部分側面図。
【図13C】2つの連結された副長尺状部材の端部の異なる実施例を示す部分側面図。
【図13D】2つの連結された副長尺状部材の端部の異なる実施例を示す部分側面図。
【図13E】2つの連結された副長尺状部材の端部の異なる実施例を示す部分側面図。
【図13F】2つの連結された副長尺状部材の端部の異なる実施例を示す部分側面図。
【図13G】2つの連結された副長尺状部材の端部の異なる実施例を示す部分側面図。
【図13H】2つの連結された副長尺状部材の端部の異なる実施例を示す部分側面図。
【図14】医療装置の外面に装着された検出器を示す部分側面図。
【図15】医療装置の壁に配置されたワイヤとして示される通信装置に連結されている図14の検出器を示す断面図。
【図16】磁気共鳴スキャナ内に位置する患者に、本発明による方法の実施例を使用する施術者を示す図。
【図17】脳組織内に配置される検出器を示す図。
【図18】貫通装置の一実施例を示す図。
【図19】ブレード材料により連結された2つの副長尺状部材の一実施例を示す部分側面図。
【図20】ブレード材料を巻きつけられたカテーテルの一実施例を示す部分側面図。
【図21A】流体を取り除き、注入するためのカテーテルの一実施例を示す部分側面図であって、カテーテルと共に使用されるポンプ及び熱交換器が図式化されている。
【図21B】図21Aのカテーテル部分を示す断面図。
【図21C】図21Aのカテーテル部分を示す他の断面図。
【図21D】組織の一領域と流体との熱交換を行うための閉鎖システムの一実施例を示す部分側面図。
【図21E】図21Dのカテーテルの一部を示す断面図。
【図22A】拡散カテーテルを備える流体交換カテーテルの一実施例を示す部分側面図。
【図22B】図22Aのカテーテルの一部を示す断面図。
【図22C】図22Aのカテーテルの一部を示す他の断面図。
【図23A】拡張状態にある拡張部材を備えるカテーテルの一実施例を示す部分側面図。
【図23B】異なる拡張状態にある拡張部材を備えるカテーテルの一実施例を示す部分側面図。
【図23C】異なる拡張状態にある拡張部材を備えるカテーテルの一実施例を示す部分側面図。
【図24】先端チップを越えて配置された拡張部材を備えるカテーテルの一実施例を示す部分側面図。
【図25】先端チップを越えて配置された拡張部材を備えるカテーテルの他の実施例を示す部分側面図。
【図26】押出し通路を備えるカテーテルの一実施例を示す一部破断側面面。
【図27A】カテーテルの内部に配置される流体移動装置及び熱交換装置を備える装置の一実施例を示す部分側面。
【図27B】図27Aの装置の一部を示す断面図。
【図28A】第1の形状における形状記憶部材を備えるカテーテルの一実施例を示す部分側面図。
【図28B】図28Aの第1の形状における形状記憶部材を示す断面図。
【図28C】第2の形状における形状記憶部材を備えるカテーテルの一実施例を示す部分側面図。
【図28D】図28Cの第2の形状における形状記憶部材を示す断面図。
【図28E】図28A乃至図28Dの第2の形状における形状記憶を備える装置へ注入された流体の時間の経過に対する温度変化を示す図式。
【図29A】流体を一定方向へ移動させて熱交換を行うために、膨張部材を備えるカテーテル、膨張部材を使用するための設計及び方法の一実施例を示す部分側面図。
【図29B】流体を一定方向へ移動させて熱交換を行うために、膨張部材を備えるカテーテル、膨張部材を使用するための設計及び方法の他の実施例を示す部分側面図。
【図29C】流体を一定方向へ移動させて熱交換を行うために、膨張部材を備えるカテーテル、膨張部材を使用するための設計及び方法の他の実施例を示す部分側面図。
【図30A】作動させるための電極及び流れる方向を制御するためのバルブ装置を備えるカテーテルの一実施例を示す部分側面図。
【図30B】作動させるための電極及び流れる方向を制御するためのバルブ装置を備えるカテーテルの他の実施例を示す部分側面図。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基端部と先端部と、それらの間に長尺状シャフトとを有するカテーテルであって、
同先端部の基端方向に配置された流体を移動させるための流体移動装置と、
同先端部の基端方向に配置された流体又は組織と熱交換を行うための熱交換器とを備えるカテーテル。
【請求項2】
前記熱交換器は熱伝導部材を備え、熱交換は、同熱伝導部材に対して熱伝達可能に接触する熱交換流体の流れにより行われる請求項1に記載のカテーテル。
【請求項3】
前記熱交換器は、前記流体移動装置の一部である請求項1に記載のカテーテル。
【請求項4】
前記流体移動装置は、折り畳み可能な部材を備え、流体の移動は折り畳み可能な部材が折り畳み状態から非折り畳み状態に移行することにより生じる請求項1に記載のカテーテル。
【請求項5】
前記熱交換器は、前記折り畳み可能な部材の表面を含む請求項4に記載のカテーテル。
【請求項6】
前記流体移動装置は、膨張可能な部材を備え、流体の移動は同膨張可能な部材を膨張させることにより生じる請求項1に記載のカテーテル。
【請求項7】
前記流体の移動は、前記膨張可能な部材が膨張と収縮を繰り返すことにより生じる請求項6に記載のカテーテル。
【請求項8】
前記流体移動装置は、前記長尺状シャフトのルーメン内において流体を流すように機能する請求項7に記載のカテーテル。
【請求項9】
前記膨張可能な部材は2つのセグメントを備え、第1のセグメントは、第2のセグメントの基端側にあって第2のセグメントより先に膨張し、第1のセグメントの膨張によりルーメンを通過する流体の流れる方向を制御するバルブ機能を提供する請求項8に記載のカテーテル。
【請求項10】
前記熱交換器は膨張可能な部材を備える請求項1に記載のカテーテル。
【請求項11】
前記熱交換器は、前記膨張可能な部材が膨張と収縮を繰り返すことにより熱交換を行う請求項10に記載のカテーテル。
【請求項12】
前記熱交換器は、前記膨張可能な部材内に流体を通過させることにより熱交換を行う請求項10に記載のカテーテル。
【請求項13】
前記流体移動装置は、回転時に流体の移動を行うように構成される回転可能な部材を備える請求項1に記載のカテーテル。
【請求項14】
前記流体移動装置は、折り畳み姿勢から展開される時に流体の移動を行うように構成される折り畳み可能な部材を備える請求項1に記載のカテーテル。
【請求項15】
前記流体移動装置は、展開された姿勢から折り畳まれる時に流体の移動を行うように構成される折り畳み可能な部材を備える請求項1に記載のカテーテル。
【請求項16】
基端部と先端部とを有するカテーテルであって、
同基端部と先端部との間の位置に沿って配置された流体排出装置と、
同流体排出装置の基端側の位置から先端側の位置まで延びるポンプルーメンと、流体排出装置は同ポンプルーメン内に流体を移動させることとからなるカテーテル。
【請求項17】
前記流体排出装置はプロペラを備える請求項16に記載のカテーテル。
【請求項18】
前記プロペラは回転シャフトに装着され、同回転シャフトが回転すると、プロペラにより流体がポンプルーメン内に移動する請求項17に記載のカテーテル。
【請求項19】
前記プロペラは膨張可能な部材を備える請求項17に記載のカテーテル。
【請求項20】
前記流体排出装置は膨張可能な部材を備える請求項17に記載のカテーテル。
【請求項21】
前記膨張可能な部材の膨張により、前記ポンプルーメンの断面積が減少する請求項20に記載のカテーテル。
【請求項22】
前記ポンプルーメンに選択的に流れを供給するバルブをさらに備える請求項20に記載のカテーテル。
【請求項23】
前記膨張可能な部材が少なくとも部分的に膨張すると流体の排出が行われる請求項19に記載のカテーテル。
【請求項24】
前記流体排出装置はカテーテルの先端部付近に配置される請求項16に記載のカテーテル。
【請求項25】
カテーテルの先端部が患者の体内の所望の位置に配置されると、前記流体排出装置は患者の体内に位置されるように構成される請求項16に記載のカテーテル。
【請求項26】
前記流体排出装置は、ポンプルーメン内の互いに対向する面に配置される第1の電極と第2の電極とを備える請求項16に記載のカテーテル。
【請求項27】
前記第1の電極に近接するポンプルーメンの一部は可撓性を有するため、電圧を付加することにより生じる第1の電極と第2の電極との間における静電気力が、ポンプルーメンの断面積を減少させる請求項26に記載のカテーテル。
【請求項28】
前記ポンプルーメン内の流体を加熱又は冷却するための熱交換器をさらに備える請求項16に記載のカテーテル。
【請求項29】
前記熱交換器は膨張可能な部材を備える請求項28に記載のカテーテル。
【請求項30】
前記流体排出装置は前記膨張可能な部材を使用する請求項29に記載のカテーテル。
【請求項31】
前記膨張可能な部材に対して連通する膨張ルーメンをさらに備える請求項29に記載のカテーテル。
【請求項32】
前記膨張可能な部材に対して連通する収縮ルーメンをさらに備える請求項31に記載のカテーテル。
【請求項33】
基端部と先端部と、それらの間に長尺状シャフトとを有するカテーテルであって、
第1ルーメンと、
第2ルーメンと、
第1ポートと、同第1ポートは同第1ルーメンに対して連通することと、
第2ポートと、同第2ポートは同第2ルーメンに対して連通することと、第2ルーメンは、第1ポートの基端方向のより高い圧力と第1ポートの先端方向のより低い圧力との下で流体を搬送するように構成されることとからなるカテーテル。
【請求項34】
前記第2ルーメンを通過する流体の圧力を減少させるために、前記第1ポートに近接して配置される圧力減少構造体をさらに備える請求項33に記載のカテーテル。
【請求項35】
前記第2ポートを介して前記第2ルーメンから出る流体の圧力を減少させるために、第2ポートに近接して配置される圧力減少構造体をさらに備える請求項33に記載のカテーテル。
【請求項36】
前記第2ポートは第1ポートの先端方向に位置される請求項33に記載のカテーテル。
【請求項37】
基端部と先端部と、それらの間に長尺状シャフトとを有するカテーテルであって、
生体の体液を排出するための流体排出装置と、同流体排出装置の少なくとも一部は同生体内に配置されることとからなるカテーテル。
【請求項38】
前記流体排出装置は脳脊髄液(CSF)を排出する請求項37に記載のカテーテル。
【請求項39】
前記流体排出装置は生体の体液を排出し、流体排出装置の少なくとも一部は生体のくも膜下腔内に配置される請求項37に記載のカテーテル。
【請求項40】
前記流体排出装置は生体の体液を排出し、流体排出装置の少なくとも一部は生体の脊髄くも膜下腔内に配置される請求項37に記載のカテーテル。
【請求項41】
前記流体排出装置は生体の体液を排出し、流体排出装置の少なくとも一部は生体の頭蓋内くも膜下腔内に配置される請求項37に記載のカテーテル。
【請求項42】
基端部と先端部と、それらの間に長尺状シャフトとを有するカテーテルであって、
生体の体液と熱交換を行うための熱交換器と、同熱交換器の少なくとも一部は同生体内に配置されることとからなるカテーテル。
【請求項43】
前記熱交換器は脳脊髄液と熱交換を行う請求項42に記載のカテーテル。
【請求項44】
前記熱交換器は生体の体液と熱交換を行い、熱交換器の少なくとも一部は生体のくも膜下腔内に配置される請求項42に記載のカテーテル。
【請求項45】
前記熱交換器は生体の体液と熱交換を行い、熱交換器の少なくとも一部は生体の脊髄くも膜下腔内に配置される請求項42に記載のカテーテル。
【請求項46】
前記熱交換器は生体の体液と熱交換を行い、熱交換器の少なくとも一部は生体の頭蓋内くも膜下腔内に配置される請求項42に記載のカテーテル。
【請求項47】
基端部と先端部と、それらの間に長尺状シャフトとを有するカテーテルであって、
第1の部分と、
同第1の部分の先端側に配置される第2の部分と、第1の部分の熱伝導性は第2の部分の熱伝導性よりも小さいこととからなるカテーテル。
【請求項48】
第3の部分をさらに備え、同第3の部分は前記第1の部分と第2の部分との間に配置されることと、第3の部分は、前記第1の部分の熱伝導性と第2の部分の熱伝導性との間において変化する熱伝導性を有する請求項47に記載のカテーテル。
【請求項49】
前記第2の部分は熱交換構造体を備える請求項47に記載のカテーテル。
【請求項50】
カテーテルは第1ルーメンと第2ルーメンとを備え、これらルーメンは前記熱交換構造体と連通し、同第1ルーメンは熱交換構造体へ熱交換流体を供給し、同第2ルーメンは熱交換構造体から熱交換流体を除去する請求項49に記載のカテーテル。
【請求項51】
脊椎動物のくも膜下腔内を進むように構成且つ形成される請求項50に記載のカテーテル。
【請求項52】
前記熱交換構造体は脊椎動物のくも膜下腔内に配置されるように構成且つ形成される請求項49に記載のカテーテル。
【請求項53】
脊椎動物のくも膜下腔内又は脊椎動物のくも膜下腔に近接する組織の温度を変更するように構成されるカテーテルであって、
先端部分と基端部分とを備える長尺状シャフトと、同先端部分はくも膜下腔内に挿入されて前進するように構成されることと、同先端部分は熱交換器を備えることとからなるカテーテル。
【請求項1】
基端部と先端部と、それらの間に長尺状シャフトとを有するカテーテルであって、
同先端部の基端方向に配置された流体を移動させるための流体移動装置と、
同先端部の基端方向に配置された流体又は組織と熱交換を行うための熱交換器とを備えるカテーテル。
【請求項2】
前記熱交換器は熱伝導部材を備え、熱交換は、同熱伝導部材に対して熱伝達可能に接触する熱交換流体の流れにより行われる請求項1に記載のカテーテル。
【請求項3】
前記熱交換器は、前記流体移動装置の一部である請求項1に記載のカテーテル。
【請求項4】
前記流体移動装置は、折り畳み可能な部材を備え、流体の移動は折り畳み可能な部材が折り畳み状態から非折り畳み状態に移行することにより生じる請求項1に記載のカテーテル。
【請求項5】
前記熱交換器は、前記折り畳み可能な部材の表面を含む請求項4に記載のカテーテル。
【請求項6】
前記流体移動装置は、膨張可能な部材を備え、流体の移動は同膨張可能な部材を膨張させることにより生じる請求項1に記載のカテーテル。
【請求項7】
前記流体の移動は、前記膨張可能な部材が膨張と収縮を繰り返すことにより生じる請求項6に記載のカテーテル。
【請求項8】
前記流体移動装置は、前記長尺状シャフトのルーメン内において流体を流すように機能する請求項7に記載のカテーテル。
【請求項9】
前記膨張可能な部材は2つのセグメントを備え、第1のセグメントは、第2のセグメントの基端側にあって第2のセグメントより先に膨張し、第1のセグメントの膨張によりルーメンを通過する流体の流れる方向を制御するバルブ機能を提供する請求項8に記載のカテーテル。
【請求項10】
前記熱交換器は膨張可能な部材を備える請求項1に記載のカテーテル。
【請求項11】
前記熱交換器は、前記膨張可能な部材が膨張と収縮を繰り返すことにより熱交換を行う請求項10に記載のカテーテル。
【請求項12】
前記熱交換器は、前記膨張可能な部材内に流体を通過させることにより熱交換を行う請求項10に記載のカテーテル。
【請求項13】
前記流体移動装置は、回転時に流体の移動を行うように構成される回転可能な部材を備える請求項1に記載のカテーテル。
【請求項14】
前記流体移動装置は、折り畳み姿勢から展開される時に流体の移動を行うように構成される折り畳み可能な部材を備える請求項1に記載のカテーテル。
【請求項15】
前記流体移動装置は、展開された姿勢から折り畳まれる時に流体の移動を行うように構成される折り畳み可能な部材を備える請求項1に記載のカテーテル。
【請求項16】
基端部と先端部とを有するカテーテルであって、
同基端部と先端部との間の位置に沿って配置された流体排出装置と、
同流体排出装置の基端側の位置から先端側の位置まで延びるポンプルーメンと、流体排出装置は同ポンプルーメン内に流体を移動させることとからなるカテーテル。
【請求項17】
前記流体排出装置はプロペラを備える請求項16に記載のカテーテル。
【請求項18】
前記プロペラは回転シャフトに装着され、同回転シャフトが回転すると、プロペラにより流体がポンプルーメン内に移動する請求項17に記載のカテーテル。
【請求項19】
前記プロペラは膨張可能な部材を備える請求項17に記載のカテーテル。
【請求項20】
前記流体排出装置は膨張可能な部材を備える請求項17に記載のカテーテル。
【請求項21】
前記膨張可能な部材の膨張により、前記ポンプルーメンの断面積が減少する請求項20に記載のカテーテル。
【請求項22】
前記ポンプルーメンに選択的に流れを供給するバルブをさらに備える請求項20に記載のカテーテル。
【請求項23】
前記膨張可能な部材が少なくとも部分的に膨張すると流体の排出が行われる請求項19に記載のカテーテル。
【請求項24】
前記流体排出装置はカテーテルの先端部付近に配置される請求項16に記載のカテーテル。
【請求項25】
カテーテルの先端部が患者の体内の所望の位置に配置されると、前記流体排出装置は患者の体内に位置されるように構成される請求項16に記載のカテーテル。
【請求項26】
前記流体排出装置は、ポンプルーメン内の互いに対向する面に配置される第1の電極と第2の電極とを備える請求項16に記載のカテーテル。
【請求項27】
前記第1の電極に近接するポンプルーメンの一部は可撓性を有するため、電圧を付加することにより生じる第1の電極と第2の電極との間における静電気力が、ポンプルーメンの断面積を減少させる請求項26に記載のカテーテル。
【請求項28】
前記ポンプルーメン内の流体を加熱又は冷却するための熱交換器をさらに備える請求項16に記載のカテーテル。
【請求項29】
前記熱交換器は膨張可能な部材を備える請求項28に記載のカテーテル。
【請求項30】
前記流体排出装置は前記膨張可能な部材を使用する請求項29に記載のカテーテル。
【請求項31】
前記膨張可能な部材に対して連通する膨張ルーメンをさらに備える請求項29に記載のカテーテル。
【請求項32】
前記膨張可能な部材に対して連通する収縮ルーメンをさらに備える請求項31に記載のカテーテル。
【請求項33】
基端部と先端部と、それらの間に長尺状シャフトとを有するカテーテルであって、
第1ルーメンと、
第2ルーメンと、
第1ポートと、同第1ポートは同第1ルーメンに対して連通することと、
第2ポートと、同第2ポートは同第2ルーメンに対して連通することと、第2ルーメンは、第1ポートの基端方向のより高い圧力と第1ポートの先端方向のより低い圧力との下で流体を搬送するように構成されることとからなるカテーテル。
【請求項34】
前記第2ルーメンを通過する流体の圧力を減少させるために、前記第1ポートに近接して配置される圧力減少構造体をさらに備える請求項33に記載のカテーテル。
【請求項35】
前記第2ポートを介して前記第2ルーメンから出る流体の圧力を減少させるために、第2ポートに近接して配置される圧力減少構造体をさらに備える請求項33に記載のカテーテル。
【請求項36】
前記第2ポートは第1ポートの先端方向に位置される請求項33に記載のカテーテル。
【請求項37】
基端部と先端部と、それらの間に長尺状シャフトとを有するカテーテルであって、
生体の体液を排出するための流体排出装置と、同流体排出装置の少なくとも一部は同生体内に配置されることとからなるカテーテル。
【請求項38】
前記流体排出装置は脳脊髄液(CSF)を排出する請求項37に記載のカテーテル。
【請求項39】
前記流体排出装置は生体の体液を排出し、流体排出装置の少なくとも一部は生体のくも膜下腔内に配置される請求項37に記載のカテーテル。
【請求項40】
前記流体排出装置は生体の体液を排出し、流体排出装置の少なくとも一部は生体の脊髄くも膜下腔内に配置される請求項37に記載のカテーテル。
【請求項41】
前記流体排出装置は生体の体液を排出し、流体排出装置の少なくとも一部は生体の頭蓋内くも膜下腔内に配置される請求項37に記載のカテーテル。
【請求項42】
基端部と先端部と、それらの間に長尺状シャフトとを有するカテーテルであって、
生体の体液と熱交換を行うための熱交換器と、同熱交換器の少なくとも一部は同生体内に配置されることとからなるカテーテル。
【請求項43】
前記熱交換器は脳脊髄液と熱交換を行う請求項42に記載のカテーテル。
【請求項44】
前記熱交換器は生体の体液と熱交換を行い、熱交換器の少なくとも一部は生体のくも膜下腔内に配置される請求項42に記載のカテーテル。
【請求項45】
前記熱交換器は生体の体液と熱交換を行い、熱交換器の少なくとも一部は生体の脊髄くも膜下腔内に配置される請求項42に記載のカテーテル。
【請求項46】
前記熱交換器は生体の体液と熱交換を行い、熱交換器の少なくとも一部は生体の頭蓋内くも膜下腔内に配置される請求項42に記載のカテーテル。
【請求項47】
基端部と先端部と、それらの間に長尺状シャフトとを有するカテーテルであって、
第1の部分と、
同第1の部分の先端側に配置される第2の部分と、第1の部分の熱伝導性は第2の部分の熱伝導性よりも小さいこととからなるカテーテル。
【請求項48】
第3の部分をさらに備え、同第3の部分は前記第1の部分と第2の部分との間に配置されることと、第3の部分は、前記第1の部分の熱伝導性と第2の部分の熱伝導性との間において変化する熱伝導性を有する請求項47に記載のカテーテル。
【請求項49】
前記第2の部分は熱交換構造体を備える請求項47に記載のカテーテル。
【請求項50】
カテーテルは第1ルーメンと第2ルーメンとを備え、これらルーメンは前記熱交換構造体と連通し、同第1ルーメンは熱交換構造体へ熱交換流体を供給し、同第2ルーメンは熱交換構造体から熱交換流体を除去する請求項49に記載のカテーテル。
【請求項51】
脊椎動物のくも膜下腔内を進むように構成且つ形成される請求項50に記載のカテーテル。
【請求項52】
前記熱交換構造体は脊椎動物のくも膜下腔内に配置されるように構成且つ形成される請求項49に記載のカテーテル。
【請求項53】
脊椎動物のくも膜下腔内又は脊椎動物のくも膜下腔に近接する組織の温度を変更するように構成されるカテーテルであって、
先端部分と基端部分とを備える長尺状シャフトと、同先端部分はくも膜下腔内に挿入されて前進するように構成されることと、同先端部分は熱交換器を備えることとからなるカテーテル。
【図1】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21A】
【図21D】
【図24】
【図25】
【図26】
【図28E】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21A】
【図21D】
【図24】
【図25】
【図26】
【図28E】
【公表番号】特表2006−511292(P2006−511292A)
【公表日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−564844(P2004−564844)
【出願日】平成15年10月30日(2003.10.30)
【国際出願番号】PCT/US2003/034873
【国際公開番号】WO2004/060465
【国際公開日】平成16年7月22日(2004.7.22)
【出願人】(500332814)ボストン サイエンティフィック リミテッド (627)
【出願人】(500039463)ボード・オブ・リージエンツ,ザ・ユニバーシテイ・オブ・テキサス・システム (115)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成15年10月30日(2003.10.30)
【国際出願番号】PCT/US2003/034873
【国際公開番号】WO2004/060465
【国際公開日】平成16年7月22日(2004.7.22)
【出願人】(500332814)ボストン サイエンティフィック リミテッド (627)
【出願人】(500039463)ボード・オブ・リージエンツ,ザ・ユニバーシテイ・オブ・テキサス・システム (115)
【Fターム(参考)】
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