説明

くん炭ボード製造装置

【課題】本発明は、天然素材のみを利用し接着剤を使用しない、建築材料に適したくん炭ボードを製造するくん炭ボード製造装置を提供する。
【解決手段】本発明のくん炭ボード製造装置は、水を満たした水槽4の上部に、前記水槽4と水密となるように嵩上げ水槽(昇降枠7及び型枠17)を一体に形成し、前記嵩上げ水槽(昇降枠7及び型枠17)に混練物を充填して表面を均した後、前記嵩上げ水槽(昇降枠7及び型枠17)の水位を前記水槽4の水位まで下降させて前記嵩上げ水槽(昇降枠7及び型枠17)の水を前記水槽4を通過させて排水して前記嵩上げ水槽(昇降枠7及び型枠17)内の混練物を自然脱水し、その後、前記混練物を前記水槽4の水面上で圧縮成型してくん炭ボードを形成するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、天然素材のみを利用し接着剤を使用しない、建築材料に適したくん炭ボードを製造するくん炭ボード製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
本出願人は、くん炭ボード及びその製造方法につき、先に特許を取得したものである(特許文献1を参照)。
この特許の製造方法は、楮(こうぞ)、桑、杉などの木材の樹皮を繊維状に解(ほぐ)した樹皮繊維材料と、黄葵(とろろあおい)の根又は糊空木(のりうつぎ)の樹皮から抽出した液体を主体にした繊維分散液と、籾殻を蒸し焼きにした籾殻炭とから構成されるくん炭ボードの製造方法であって、前記繊維分散液を水に混ぜた混合水溶液に、前記樹皮繊維材料と籾殻炭を入れてよく混ぜて前記隙間空間に籾殻炭が入り込むように良く練り、この混練物をボード成型の型枠に入れて脱水乾燥させて、樹皮繊維材料の繊維同士が絡み合い水素結合によりくっ付き合い固めてくん炭ボードを成型したものであるが、原料供給と均し処理に多くの手間を要する上、プレス機への移送と圧縮除去した排水処理にも手間取るものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3847324号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、ボード型枠への混練物の供給と均し処理を自動化して省力化を達成するとともに、プレス処理に型枠の移送を要することなく同一ステーション内で圧縮成型と脱水処理が行われ、かつプレス成型と脱水処理とを嵩上げ水槽内で同時に行うことにより、長尺状のくん炭ボードに「凹窪み部」(引け)を生じないようにしたくん炭ボード製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のくん炭ボード製造装置は、上部に架設される駆動チェーンと、該駆動チェーンにより搬送される混練物供給ホッパーと、該混練物供給ホッパーと所要間隔で搬送される混練物振動体と、前記駆動チェーンの長手方向中央部に設けられるプレス機と、該プレス機の下部に配設されるスクリーンコンベアと、該スクリーンコンベア内に配設され、水位調節可能なU字状排水管を有する水槽と、該水槽の上面を走行する前記スクリーンコンベアの透水ベルト上に配設される型枠と、該型枠を押圧解放自在に支持する昇降枠と、前記型枠と昇降枠とで前記水槽と一体に嵩上げ水槽を形成し、前記混練物供給ホッパーから混練物を嵩上げ水槽に供給し、前記混練物振動体で嵩上げ水槽の混練物を均し、前記プレス機で前記嵩上げ水槽内の混練物を圧縮脱水成型して前記型枠内にくん炭ボードを形成するものである。
本発明のくん炭ボード製造方法は、水を満たした水槽の上部に、前記水槽と水密となるように嵩上げ水槽を一体に形成し、前記嵩上げ水槽に混練物を充填して表面を均した後、前記嵩上げ水槽の水位を前記水槽の水位まで下降させて前記嵩上げ水槽の水を前記水槽を通過させて排水して前記嵩上げ水槽内の混練物を自然脱水し、その後、前記混練物を前記水槽の水面上で圧縮成型してくん炭ボードを形成するものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明のくん炭ボード製造装置によれば、嵩上げ水槽を有するプレス処理ステーション上で型枠への混練物の適量供給と適度な均し処理及び圧縮固化が一連の工程で自動的になされるから、生産性が向上するとともに、品質も安定化し、高品質で安価な長尺状のくん炭ボードを提供できる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明のくん炭ボード製造装置の第1実施形態の説明図で、混練物供給ホッパーの走行する方向の側面図である。
【図2】本発明のくん炭ボード製造装置の第1実施形態の説明図で、混練物供給ホッパーの走行方向に直交する方向からの正面図である。
【図3】型枠の説明図で、(a)はその平面図、(b)は(a)のA-A矢視拡大断面図である。
【図4】本発明のくん炭ボード製造装置の第1実施形態の説明図で、均し装置の走行する方向の側面図である。
【図5】本発明のくん炭ボード製造装置の第1実施形態の説明図で、均し装置の走行方向に直交する方向からの正面図である。
【図6】均し装置の図3における平面視説明図である。
【図7】本発明に係るくん炭ボード製造装置の第2実施形態の説明図で、スクリーンコンベアと固定型枠との関係を示す説明図である。
【図8】固定型枠と昇降枠との関係を示す説明図である。
【図9】図7のB-B矢視拡大断面図である。
【図10】本発明のくん炭ボード製造装置の第1実施形態の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明のくん炭ボード製造装置の第1実施形態を図面に基づき、以下に説明する。
図1の側面図及び図2の正面図に示すように、本発明のくん炭ボード製造装置Aは、4本の支持脚1に支持された矩形の支持台2と、該支持台2に固定され、格子状の仕切板3を有する水槽4と、前記支持台2の前後両端に軸支されたスプロケット5を設け、前記水槽4の上部開口を塞ぐようにスプロケット5に掛け渡されたスクリーンコンベア6を設け、前記水槽4の四周囲には長尺状のくん炭ボードの幅、長さ及び厚さ2倍の昇降枠7を設ける。
そして、前記昇降枠7の外側には架台8に支持されたプレス機9が設けられ、該プレス機9には前記昇降枠7と嵌合し、油圧シリンダー10により混練物を圧縮成型する昇降自在の押圧体11が設けられる。
前記混練物は、楮(こうぞ)、桑、杉などの木材の樹皮を繊維状に解(ほぐ)した樹皮繊維材料と、黄葵(とろろあおい)の根又は糊空木(のりうつぎ)の樹皮から抽出した液体を主体にした繊維分散液と、籾殻を蒸し焼きにした籾殻炭とから構成され、前記繊維分散液を水に混ぜた混合水溶液に、前記樹皮繊維材料と籾殻炭を入れてよく混ぜて前記隙間空間に籾殻炭が入り込むように良く練り込んだものである。なお、49は前記押圧体11のガイドロッドである。
【0009】
さらに、前記昇降枠7と前記押圧体11との中間には、前後に渡ってエンドレス状に手前側と奥側に2列の駆動チェーン12が張設され、後述する混練物供給ホッパー13及び混練物振動体14が案内フレーム15を移動できるように前記駆動チェーン12がそれぞれの前記混練物供給ホッパー13及び混練物振動体14に駆動連結される。
前記水槽4には、スクリーンコンベア6の網目状の透水ベルト16の上部走行ラインの下面が当接載置され、前記水槽4上の前記スクリーンコンベア6の透水ベルト16上には型枠17が位置決めされる。
前記昇降枠7は、図3(a)の平面図及び図3(b)のA-A矢視拡大断面図に示す前記型枠17の四周枠18を包蔵するように押圧して型枠17の下面と透水ベルト16間の密着性を確保して水密性を図って嵩上げ水槽を形成すると共に、混練物の圧縮成型処理後は押圧状態を解放状態とする。
【0010】
また、前記水槽4には、底部にU字状排水管19が設けられ、該U字状排水管19の排水管先端20を図1の一点鎖線のように傾斜することにより前記排水管先端20の水位レベルまで前記水槽4の水抜きを行うことができる。
前記排水管先端20を図1の一点鎖線のように傾斜することにより自然脱水された嵩上げ水槽(昇降枠7及び型枠17)の内部で待機する混練物を前記架台8に支持されたプレス機9の押圧体11で圧縮成型することができる。
一方、前記駆動チェーン12で搬送され、前記嵩上げ水槽(昇降枠7及び型枠17)に混練物を供給する混練物供給ホッパー13と、該混練物供給ホッパー13と所要間隔で前記駆動チェーン12により搬送され、嵩上げ水槽(昇降枠7及び型枠17)内の混練物を混合水溶液中で均一に均す混練物振動体14とが設けられる。
【0011】
さらに、前記各要件を詳述すると、前記駆動チェーン12は、図1の最右側の支持脚1に長手方向に沿って手前側と奥側に配設された縦断面コ字形の案内フレーム15にそれぞれ取着されたテークアップユニット21と、各テークアップユニット21に軸支された搬送スプロケット22と、該搬送スプロケット22と同軸の駆動スプロケット23と、該駆動スプロケット23を正、逆の回転力で駆動するモータ24と、前記案内フレーム15の最左側にそれぞれ軸支された従動スプロケット(図外)と、前記各搬送スプロケット22と各従動スプロケット(図外)にエンドレスに巻き回されて成る。
各駆動チェーン12は、その下走行ラインが図2に示す前記混練物供給ホッパー13と図6に示す前記混練物振動体14に配設された各駆動スプロケット25の歯にそれぞれ固着され、上方走行ラインのチェーンが各駆動スプロケット25の歯に干渉しないように、該歯を切除するなど適宜に処理されるものである。
【0012】
そして、前記混練物供給ホッパー13と混練物振動体14は、図6に示すように、両側方に設けた前後一対のコロ26を支持脚1の案内フレーム15の横向き凹状の案内溝に案内することによって安定した姿勢で搬送されるものである。
なお、このほか、安定姿勢で搬送する手段は各種形態のもので提案され得ることは勿論である。
【0013】
前記混練物供給ホッパー13は、図2に示すように、ホッパー27の上面に振動モータ28と、該ホッパー27の底部に設けたスクリューコンベア29を駆動するモータ30とが設けられ、モータ軸に軸着された小スプロケット31とスクリューコンベア軸に軸着された駆動スプロケット32にチェーン33が噛合され、所要回転速度でスクリューコンベア29が駆動され、プレス機9の近傍に設けられたタンク(図外)からホッパー27の投入口より供給された混練物を振動モータ28の振動と相俟って下端の供給口34から落下させつつ嵩上げ水槽(昇降枠7及び型枠17)の全面に渡って所要速度で搬送される。
したがって、嵩上げ水槽(昇降枠7及び型枠17)に供給される混練物はスクリューコンベア29の回転速度と搬送速度とによってその適量供給が決定されるものである。
【0014】
次に、前記混練物振動体14を説明すると、図4の側面図及び図5の正面図に示すように、枠体35には摺動台36を介して均し体37を所要高さまで引き上げ、均し処理時には所要位置まで押し下げる主流体圧シリンダー38と、前記摺動台36上に設けられ、枠体17内に供給された混練物を混合水溶液中で均すための均し体37を短いストロークでジャブジャブ上下動させる一対の副流体圧シリンダー39とを備えて成る。
なお、前記摺動台36は、図5に示すように、枠体35に対してアリ溝構造で上下摺動自在に案内されるものである。
そして、図6の平面図に示すように、両側方に固着された駆動スプロケット25の下方の歯が駆動チェーン12の下方走行ラインに一体に接合されて混練物振動体14は駆動チェーン12によって所要の搬送速度で搬送されるものである。
したがって、嵩上げ水槽(昇降枠7及び型枠17)に供給された混練物は、均し体37の上下動の回数(取りも直さず副流体圧シリンダー39のストローク速度)や上下動の形態(同時か位相差ありか)、搬送速度などによって適正な均しが決定される。
なお、前記した位相差を有する上下動の形態としては、副流体圧シリンダー39の各ロッドと均し体37との接合を、両ロッドの軸心を含む平面に直交する方向でピンジョイントとすれば、両副流体圧シリンダー39の各ロッドの上下動するタイミングをずらすことができるものである。
【0015】
また、図3に示すように、前記型枠17は、平面視横長矩形状で縦断面視コ形の上片を短尺にして昇降枠7が滑り込み易くした形状の軽量形鋼製(木質材でも可)で要所にリブ40を配設した四周枠18で形成されるとともに、底面に網目体41が配設され、前記水槽4上で、フォトスイッチ等の位置決め手段で正確に位置決めされる。
図5に示すように、前記昇降枠7は、前記支持台2の手前側と奥側の中央に立設した流体圧シリンダー42のロッド43にL形の金具44を介して接合され、前記流体圧シリンダー42を挟んで立設された各一対のガイドロッド45に案内されて所要ストローク分昇降するものであり、形状は型枠17をすっぽり包蔵して嵩上げ水槽を形成できる高さの四周枠からなる。
前記昇降枠7の底面四周には、図4に示すように弾性シール材46が周設され、型枠17に被せて該型枠17を位置決めして嵩上げ水槽を形成したときに、型枠17を押圧して水槽4の上面と透水ベルト16間からの漏水が極力押さえられる。
前記昇降枠7の上昇端では、その下端が型枠17の上面より要所分上方に位置するから、型枠17の搬入、搬出が支障なくなされる。
また、前記水槽4は、平面視では格子状で下方に連通口が開口された仕切板3が配設されて圧縮強度が増強され、その上面には金網またはパンチングメタル等の網目体が着脱自在に接合され、内部の洗浄がし易い構造となっている。
【0016】
次に、くん炭ボード製造装置Aを工程順に従って操作動作を以下に説明する。
まず、初期設定として、図外の流体圧源による流体圧シリンダー42の操作で昇降枠7が所要分持ち上げられた上昇端で待機し、型枠17が前記昇降枠7の真下で位置決めされ、次いで前記昇降枠7の降下によって前記型枠17が水密状に透水ベルト16上に圧着されて前記昇降枠7と型枠17の水密性が確保されて嵩上げ水槽が形成され、嵩上げ水槽工程としての水槽4の上面水位まで水又は混合水溶液(混練物の脱水混濁水溶液)が充填される。
次いで、原料供給工程で混練物供給ホッパー13の運転で、すなわち、モータ30の動力で駆動されるスクリューコンベア29と振動モータ28の振動により混練物が型枠17を含む嵩上げ水槽に絞り出され、所要の搬送速度で適量(ほぼ昇降枠7の上面まで)供給される。
そして、次の均し工程では駆動チェーン12の駆動で図4に示すように、混練物振動体14が嵩上げ水槽上に搬送され、主流体圧シリンダー38の操作で下降端に位置決めされた摺動台36上の副流体圧シリンダー39の操作で均し体37が上下動され、かつ、駆動チェーン12によって所要搬送速度で嵩上げ水槽の全長に渡って均し処理され、混練物が全面(本実施形態では3尺×6尺)に渡って均一に均される。
【0017】
次いで、水槽4に設けられたU字状排水管19の排水管先端20の口端が図1の一点鎖線のように傾動操作されて嵩上げ水槽から自然排水され、さらに水槽4の上面より僅かに低い水位に調節されて嵩上げ水槽の内部の水が自然排水される。
そして、自然排水後の圧縮工程で、プレス機9に取着された押圧体11の下降に従って嵩上げ水槽内の混練物は圧縮脱水されて図2に示すくん炭ボードの半製品47が成型されるものである。
このとき除去された水(正確には混合水溶液)は、水槽4を介してU字状排水管19の排水管先端20から排水されるが、リサイクルも可能である。
前記プレス機9に取着された押圧体11による混練物の圧縮成型後、前記押圧体11は上昇端に引き上げられるが、前記押圧体11の押圧面には網目が配設されたものであるから、半製品47の表面から剥離され易いものである。
そして、前記昇降枠7も前記型枠17から抜き取られて所要高さに引き上げられ、前記昇降枠7の下端と前記型枠17の上面間には前記型枠17が通過するに足る隙間が形成されるので、前記昇降枠7の上昇位置決め端をリミットスイッチ等の電気的確認手段で確認後、スクリーンコンベア6と下流側の搬出コンベア48が同時駆動され、スクリーンコンベア6の透水ベルト16によって半製品47が詰められた型枠17が移送され、搬出コンベア48によって搬送され、次工程で自然乾燥又は人工乾燥手段で乾燥されて本願出願人の特許品であるくん炭ボードが製造されるものである。
【0018】
図10に示すように、本発明のくん炭ボード製造装置の第1実施形態は、上部に架設される駆動チェーン12と、該駆動チェーン12により搬送される混練物供給ホッパー13と、該混練物供給ホッパー13と所要間隔で搬送される混練物振動体14と、前記駆動チェーン12の長手方向中央部に設けられるプレス機9と、該プレス機9の下部に配設されるスクリーンコンベア6と、前記スクリーンコンベア6内に配設され、水位調節可能なU字状排水管18を有する水槽4と、該水槽4の上面を走行する前記スクリーンコンベア6の透水ベルト16上に配設される型枠17と、該型枠17を押圧解放自在に支持する昇降枠7と、前記型枠17と昇降枠7とで前記水槽4と一体に嵩上げ水槽を形成し、前記混練物供給ホッパー13から混練物を嵩上げ水槽に供給し、前記混練物振動体14で嵩上げ水槽の混練物を均し、前記プレス機9で前記嵩上げ水槽内の混練物を圧縮脱水成型して前記型枠17内にくん炭ボードを形成するものである。
なお、スクリーンコンベア6の上流側に型枠17の搬入コンベア56を設けて、前記型枠17の搬入を自動化することができる。
【0019】
次に、本発明のくん炭ボード製造装置の第2実施形態を図面に基づき、以下に説明する。
本発明のくん炭ボード製造装置の第2実施形態は、型枠17と昇降枠7の形態が異なることと、スクリーンコンベア6上での特定型枠50への半製品47の受け継ぎ工程が増える点で異なる他は、プレス機9、駆動チェーン12、混練物供給ホッパー13、混練物振動体14の配置等は第1実施形態と同じであるため、それらの説明は省略する。
図7の平面説明図に示すように、スクリーンコンベア6のスパンが増大され、図示で縦長矩形にして下流側の横枠のない無底の固定型枠51は、水槽枠52にその底部が固定されるとともに、図8のB-B矢視拡大断面図に示すように、透水ベルト16が固定型枠51の底面に走行自在に挿通されるものであり、この固定型枠51に対向してその先端部(下方側)が開閉自在なストッパー53で支持され、対向横枠がなく、かつ、底面に網目体41が配設された特定型枠50には、前記固定型枠51内で前記と同様の一連の工程により成形されたくん炭ボードの半製品47が透水ベルト16の駆動により移送される。
対向して待機する特定型枠50の網目体41の上面に半製品47が、特定型枠50開口端の跳ね上がり防止と案内を兼ねたガイド54に案内されて移し換えられ、移し換え完了後、ストッパー53が解除されて透水ベルト16の走行と搬出コンベア(図外)の駆動により、半製品47を受け取った特定型枠50は搬出コンベア48に移送され、適宜な乾燥手段で乾燥されてくん炭ボードが成型される。
この場合の昇降枠7について、昇降用の流体圧シリンダー42やガイドロッド45及びこれらに関連する部材を省略した状態の図9の断面説明図で説明すると、前記固定型枠51の四周を包蔵するものであるが、該固定型枠51の下流側の横枠がないものであるから、その部分に相当する分だけ昇降枠7の下方枠部55が受け持つ形状に形成され、底面四周には弾性シール材46が周設される。
【0020】
このように第2実施形態のくん炭ボード製造装置Aによれば、スクリーンコンベア6上からの型枠17の移送もなく、半製品47の製造工程は省力化されるが、半製品47を受け取る特定型枠50のセットと半製品47を受け取った特定型枠50の移送に手間取ることと、特定型枠50の処理が完了しなければスクリーンコンベア6上の固定型枠51に原料を供給できないから、混練物の供給からプレス機9によるくん炭ボードの半製品47の製造までのサイクルタイムが長くなるため、特定型枠50への半製品47の受け渡し完了と同時に混練物供給を開始し、特定型枠50の移送を手動にするか、移送手段を別方法、すなわち、透水ベルト16の停止状態で、該特定型枠50の左右の周枠上面を回転ローラで送り出すなどであれば量産工程に組み入れられるものである。
【0021】
以上のように、本発明のくん炭ボード製造装置Aによれば、水槽4の上部に設けられた型枠17と、該型枠17に被蓋重畳された昇降枠7とで嵩上げ水槽を形成し、その適量供給された混練物を均し体37によって手漉き和紙の製造に見られるように均一に均されるから、くん炭ボードの品質が安定化し、しかも、原料供給からプレス機9による半製品47の完成までが省力化されて生産性が向上するものである。
また、前記嵩上げ水槽の混合水溶液は、水槽4のU字状排水管19を介してその水位が原料供給工程からプレス工程まで繰り返し調節されるから、排水管先端20からオーバーフローする混合水溶液を別途タンクに回収して給水手段を介在させれば、均し工程にリサイクルできることは、本発明から容易に想起できる事項である。
【産業上の利用可能性】
【0022】
本発明は、くん炭ボードの製造の省力化を達成するとともに、くん炭ボード1枚当りの混練物の適量供給及び適正均しが自動的に処理されるため、品質が安定化され、高品質で安価なくん炭ボードを提供できる上、結果物としてのくん炭ボードは住宅環境に優しい空間を形成できることから、建築業界での需要が増大し、産業機械業界や木質系ボード製造業界における利用可能性が大なる技術である。
【符号の説明】
【0023】
1 支持脚
2 支持台
3 仕切板
4 水槽
5 スプロケット
6 スクリーンコンベア
7 昇降枠
8 架台
9 プレス機
10 油圧シリンダー
11 押圧体
12 駆動チェーン
13 混練物供給ホッパー
14 混練物振動体
15 案内フレーム
16 透水ベルト
17 型枠
18 四周枠
19 U字状排水管
20 排水管先端
21 テークアップユニット
22 搬送スプロケット
23 駆動スプロケット
24 モータ
25 駆動スプロケット
26 コロ
27 ホッパー
28 振動モータ
29 スクリューコンベア
30 モータ
31 小スプロケット
32 駆動スプロケット
33 チェーン
34 供給口
35 枠体
36 摺動台
37 均し体
38 主流体圧シリンダー
39 副流体圧シリンダー
40 リブ
41 網目体
42 流体圧シリンダー
43 ロッド
44 金具
45 ガイドロッド
46 弾性シール材
47 半製品
48 搬出コンベア
49 ガイドロッド
50 特定型枠
51 固定型枠
52 水槽枠
53 ストッパー
54 ガイド
55 下方枠部
56 搬入コンベア
A くん炭ボード製造装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部に架設される駆動チェーンと、該駆動チェーンにより搬送される混練物供給ホッパーと、該混練物供給ホッパーと所要間隔で搬送される混練物振動体と、前記駆動チェーンの長手方向中央部に設けられるプレス機と、該プレス機の下部に配設されるスクリーンコンベアと、該スクリーンコンベア内に配設され、水位調節可能なU字状排水管を有する水槽と、該水槽の上面を走行する前記スクリーンコンベアの透水ベルト上に配設される型枠と、該型枠を押圧解放自在に支持する昇降枠と、前記型枠と昇降枠とで前記水槽と一体に嵩上げ水槽を形成し、前記混練物供給ホッパーから混練物を嵩上げ水槽に供給し、前記混練物振動体で嵩上げ水槽の混練物を均し、前記プレス機で前記嵩上げ水槽内の混練物を圧縮脱水成型して前記透水ベルト上にくん炭ボードを形成することを特徴とするくん炭ボード製造装置。
【請求項2】
前記型枠が、平面視横長矩形の四周枠にして底面に網目体が配設されて成ることを特徴とする請求項1記載のくん炭ボード製造装置。
【請求項3】
前記型枠が、前記透水ベルト上に跨設されて前記水槽に固定され、該透水ベルトを走行自在に案内する無底横長コ字形枠で、かつ前記透水ベルトの搬出走行方向側でこれに直交する横枠が除去された固定型枠であり、前記昇降枠が、前記横枠を共有して該固定型枠のコ字形枠に昇降自在に被蓋されるものであることを特徴とする請求項1記載のくん炭ボード製造装置。
【請求項4】
水を満たした水槽の上部に、前記水槽と水密となるように嵩上げ水槽を一体に形成し、前記嵩上げ水槽に混練物を充填して表面を均した後、前記嵩上げ水槽の水位を前記水槽の水位まで下降させて前記嵩上げ水槽の水を前記水槽を通過させて排水して前記嵩上げ水槽内の混練物を自然脱水し、その後、前記混練物を前記水槽の水面上で圧縮成型してくん炭ボードを形成することを特徴とするくん炭ボード製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−224937(P2011−224937A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−99350(P2010−99350)
【出願日】平成22年4月23日(2010.4.23)
【出願人】(500573347)株式会社工房成瀬 (3)
【Fターム(参考)】