こわさ検出装置、こわさ検出方法、及びこわさ検出装置を備える紙葉類処理装置
【課題】より高精度に紙葉類のこわさを検出することができるこわさ検出装置、こわさ検出方法、及びこわさ検出装置を備える紙葉類処理装置を提供する。
【解決手段】こわさ検出装置(10)は、搬搬送される紙葉類(7)に対して音波を送信してラム波を励起させ、前記紙葉類の表面の検出点から射出されるラム波の漏洩波を検出し、前記紙葉類の裏面の検出点から射出されるラム波の漏洩波を検出する。こわさ検出装置は、前記紙葉類の表面から検出する信号と、前記紙葉類の裏面から検出する信号とに基づいて比較データを算出し、算出した比較データと、予め設定される基準値とを比較し、比較結果に基づいて前記紙葉類が正券であるか否かを判定する。
【解決手段】こわさ検出装置(10)は、搬搬送される紙葉類(7)に対して音波を送信してラム波を励起させ、前記紙葉類の表面の検出点から射出されるラム波の漏洩波を検出し、前記紙葉類の裏面の検出点から射出されるラム波の漏洩波を検出する。こわさ検出装置は、前記紙葉類の表面から検出する信号と、前記紙葉類の裏面から検出する信号とに基づいて比較データを算出し、算出した比較データと、予め設定される基準値とを比較し、比較結果に基づいて前記紙葉類が正券であるか否かを判定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙葉類のこわさを検出するこわさ検出装置、こわさ検出方法、及びこわさ検出装置を備える紙葉類処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、種々の紙葉類の計数及び判別を行う紙葉類処理装置が実用化されている。紙葉類処理装置は、投入部に投入された紙葉類を1枚ずつ取り込み、紙葉類の検査装置に搬送する。検査装置は、紙葉類に対して種々の処理を行い紙葉類の状態を判別する。例えば、紙葉類が紙幣である場合、紙葉類処理装置は、検査装置の検査結果に基づいて、紙葉類の種類判定、真偽判定、及び再流通が可能な紙葉類であるか否かの判定(正損判定)などを行う。
【0003】
紙葉類処理装置は、剛性の劣化した紙葉類は再流通に適さない紙葉類であると判定する。この為に、検査装置は、紙葉類の剛性の劣化の度合い等の機械的特性を検出する。
【0004】
例えば、特許文献1には、紙葉類に対して音波を送信し、反射波、または透過波のレベルに基づいて、紙葉類の単位面積あたりの重量を測定する技術が開示されている。
【0005】
また、特許文献2には、金属板等の試験体に超音波を入射し、試験体を伝播する波の漏洩波を受信し、受信する波形の振幅に基づいて試験体中の欠陥を検出する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平5−806054号公報
【特許文献2】特開2008−164394号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上記した技術を備える装置により検査を行う紙葉類には、表面にインクなどによる印刷が施されている場合がある。この場合、紙葉類の表面に付着するインクが媒体を伝播する波に影響を与える可能性がある。
【0008】
紙葉類の印刷は、表面と裏面とで図柄が異なる。この為、検査装置に対向する紙葉類の面が表面か裏面かで検査結果が異なる。また、搬送される紙葉類の搬送向きによっても検査結果が異なる場合がある。
【0009】
検査装置に搬送される紙葉類は、搬送状態が表面と裏面とでばらつく。また、検査装置に搬送される紙葉類は、搬送向きがばらつく。この結果、検査装置が紙葉類の正損を正確に判定できない可能性があるという問題がある。
【0010】
また、紙葉類に折り目などが存在する場合がある。紙葉類の折り目が、紙葉類の表面及び裏面から漏洩する波(漏洩波)に影響を与える可能性があるという問題がある。
【0011】
そこで、本発明は、より高精度に紙葉類のこわさを検出することができるこわさ検出装置、こわさ検出方法、及びこわさ検出装置を備える紙葉類処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一実施形態としてのこわさ検出装置は、搬送される紙葉類に対して音波を送信してラム波を励起させる送信手段と、前記紙葉類の表面の検出点から射出されるラム波の漏洩波を検出する第1の受信手段と、前記紙葉類の裏面の検出点から射出されるラム波の漏洩波を検出する第2の受信手段と、前記第1の受信手段により検出する信号と、前記第2の受信手段により検出する信号とに基づいて比較データを算出する比較データ算出手段と、前記比較データ算出手段により算出した比較データと、予め設定される基準値とを比較し、比較結果に基づいて前記紙葉類が正券であるか否かを判定する正損判定手段と、を具備する。
【0013】
また、本発明の一実施形態としてのこわさ検出方法は、搬送される紙葉類に対して音波を送信してラム波を励起させ、前記紙葉類の表面の検出点から射出されるラム波の漏洩波を検出し、前記紙葉類の裏面の検出点から射出されるラム波の漏洩波を検出し、前記紙葉類の表面から検出する信号と、前記紙葉類の裏面から検出する信号とに基づいて比較データを算出し、前記算出した比較データと、予め設定される基準値とを比較し、比較結果に基づいて前記紙葉類が正券であるか否かを判定する。
【0014】
また、本発明の一実施形態としての紙葉類処理装置は、紙葉類を搬送する搬送部と、前記搬送部により搬送される紙葉類に対して音波を送信してラム波を励起させる送信手段と、前記紙葉類の表面の検出点から射出されるラム波の漏洩波を検出する第1の受信手段と、前記紙葉類の裏面の検出点から射出されるラム波の漏洩波を検出する第2の受信手段と、前記第1の受信手段により検出する信号と、前記第2の受信手段により検出する信号とに基づいて比較データを算出する比較データ算出手段と、前記比較データ算出手段により算出した比較データと、予め設定される基準値とを比較し、比較結果に基づいて前記紙葉類が正券であるか否かを判定する正損判定手段と、前記正損判定手段による判定結果に基づいて、前記紙葉類を区分する区分処理部と、を具備する。
【発明の効果】
【0015】
この発明の一形態によれば、より高精度に紙葉類のこわさを検出することができるこわさ検出装置、こわさ検出方法、及びこわさ検出装置を備える紙葉類処理装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、一実施形態に係るこわさ検出装置の構成例について説明するための説明図である。
【図2】図2は、図1に示すこわさ検出装置の動作について説明するための説明図である。
【図3】図3は、こわさ検出装置の各部の配置の例について説明するための説明図である。
【図4】図4は、こわさ検出装置により検査する紙葉類の例について説明するための説明図である。
【図5】図5は、こわさ検出装置により検査する紙葉類の例について説明するための説明図である。
【図6】図6は、こわさ検出装置により検査する紙葉類の例について説明するための説明図である。
【図7】図7は、こわさ検出装置の受信部により検出する波形の例について説明するための説明図である。
【図8】図8は、こわさ検出装置の受信部により検出する波形の例について説明するための説明図である。
【図9】図9は、こわさ検出装置の信号処理系の構成の例について説明するための説明図である。
【図10】図10は、こわさ検出装置の受信部により検出する波形に対する処理について説明するための説明図である。
【図11】図11は、こわさ検出装置の受信部の他の構成例について説明するための説明図である。
【図12】図12は、こわさ検出装置の受信部の他の構成例について説明するための説明図である。
【図13】図13は、こわさ検出装置の受信部の他の構成例について説明するための説明図である。
【図14】図14は、透過波の強度と疲弊度との関係について説明する為の説明図である。
【図15】図15は、一実施形態に係る紙葉類処理装置の外観について説明するための説明図である。
【図16】図16は、図15に示す紙葉類処理装置の構成例について説明するための説明図である。
【図17】図17は、図15及び図16に示す紙葉類処理装置の制御系の構成例について説明するためのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しながら、本発明の一実施形態に係るこわさ検出装置、こわさ検出方法、及びこわさ検出装置を備える紙葉類処理装置について詳細に説明する。
【0018】
図1は、一実施形態に係るこわさ検出装置の構成例について説明するための説明図である。
こわさ検出装置10は、紙葉類7の機械的性質を検査する。例えば、こわさ検出装置10は、紙葉類7の弾性率、引っ張り強度、または曲げ強度などのこわさを検出する。こわさ検出装置10は、例えば紙葉類処理装置の搬送部の近傍に設置される。
【0019】
図1に示すように、こわさ検出装置10は、送信部1、受信部2A、受信部2B、及び制御部9を備える。
【0020】
送信部1は、搬送される紙葉類7に対して音波を送信してラム波を励起させる送信手段として機能する。送信部1は、紙葉類7にラム波(板波)を励起させる超音波の発信器である。
【0021】
送信部1は、例えば、スピーカ、圧電トランスデューサ、またはMicro Electro Mechanical System(MEMS)を用いた振動発生器などを備える。送信部1は、印加される電圧に応じて振動面を振動させ、音波を発生させる。送信部1は、受信部2A、及び受信部2Bより上流側に設置される。
【0022】
受信部2A、及び受信部2B(受信部2と称する)は、紙葉類7において発生したラム波の波形を検出する受信器である。受信部2は、紙葉類の表面及び裏面の検出点から射出されるラム波の漏洩波を検出する受信手段として機能する。
【0023】
受信部2は、送信部1と同様の構成であり、例えば、マイクロフォン、圧電トランスデューサ、または振動を変位として計測する干渉光を用いた変位計(干渉計)などの受信センサを備える。受信部2は、紙葉類7から漏洩する波により励起される振動面の振動に応じて電圧を得る。
【0024】
送信部1及び受信部2は、振動面を備える。振動面は、印加される電圧に応じて変位する。また、振動面は、面の変位に応じて電圧を発生させる。即ち、送信部1は、振動面に電圧を印加することにより、振動面を振動させ、波を生成する。また、受信部2は、波により振動する振動面の変位により生じる電圧を検出する。なお、送信部1は、振動面と直交する方向に音波を射出すると仮定する。また、受信部2は、振動面と直交する方向で入射する音波を検出すると仮定する。
【0025】
図1に示すように、受信部2A、及び受信部2Bは、互いに対向する位置に設けられている。即ち、受信部2Aは、送信部1と同じ側に設けられている。また、受信部2Bは、受信部2Aと対向する位置に設けられている。なお、送信部1と受信部2とは、紙葉類7の搬送方向Aにおいて距離Lを離隔して設置されている。
【0026】
送信部1は、搬送される紙葉類7に対して音波を照射する。また、受信部2は、搬送される紙葉類7を伝播するラム波の漏洩波を検出する。しかし、非接触で紙葉類7に音波を射出する場合、音波の減衰が大きい。この為に、送信部1及び受信部2は、搬送ベルト5により搬送される紙葉類7に近い位置に設置される。
【0027】
搬送ベルト5は、搬送部として機能する。搬送ベルト5は、図1に示すように、上下1対のベルトを備える。搬送ベルト5は、駆動プーリなどにより駆動される。搬送ベルト5は、上下1対のベルトにより紙葉類7を挟み入れて図1に示す搬送方向Aの方向に一定の速度で搬送する。
【0028】
制御部9は、こわさ検出装置10の全体の制御を司るものである。制御部9は、CPU、バッファメモリ、プログラムメモリ、及び不揮発性メモリなどを備えている。CPUは、種々の演算処理を行う。バッファメモリは、CPUにより演算結果を一時的に記憶する。プログラムメモリ及び不揮発性メモリは、CPUが実行する種々のプログラム及び制御データなどを記憶する。制御部9は、CPUによりプログラムメモリに記憶されているプログラムを実行することにより、種々の処理を行うことができる。例えば、制御部9は、送信部1及び受信部2の動作タイミングを制御する。本実施形態では、制御部9は、受信部2Aと受信部2Bとが同時に波を検出するように制御する。
【0029】
また、制御部9は、受信部2により検出した信号に対して信号処理を施す信号処理手段と、正損判定を行う正損判定手段とを備える。信号処理手段及び正損判定手段に関しては後に詳述する。
【0030】
こわさ検出装置10は、紙葉類7を検知する場合、送信部1により超音波を発生させる。これにより、こわさ検出装置10は、紙葉類7に超音波を照射する。紙葉類7中では、超音波によりラム波が励起される。励起されたラム波は、紙葉類7内部を伝播する間に、紙葉類7の表面及び裏面から漏洩波を発生させる。こわさ検出装置10は、受信部2A及び受信部2Bによりラム波の漏洩波を検出する。
【0031】
ラム波は、振動方向が媒体に垂直であり、且つ、伝播方向に同じ振動成分を持って伝播する波である。ラム波は、波長と同程度の厚さを持つ媒体を伝播する波である。ラム波は、伝播する媒体中のどの点においてでも検出することができる、伝播時間から音速を算出することができる、媒体が均一でない場合に影響を受ける、狭時により信号強度が変動しない、などの特徴を有する。
【0032】
紙葉類7は、繊維とバインダとにより構成される。しかし、紙葉類7が疲弊する場合、バインダが欠損し、相対的に空気の含有量が増加する。この結果、疲弊した紙葉類7は、疲弊していない紙葉類に比べて密度が低くなる。紙葉類7の中の空気の比率が大きくなる場合、空気の性質と紙葉類7の性質とが近くなる。この為、音響的な抵抗値が低下する。即ち、紙葉類7を伝播するラム波が外部に漏洩しやすくなる。この結果、受信部2A及び受信部2Bの検出点に到達するまでにラム波が減衰し、受信部2A及び受信部2Bにより検出する波の振幅が小さくなる。
【0033】
上記したように、本実施形態に係るこわさ検出装置10の制御部9は、受信部2A及び受信部2Bにより検出する信号のレベル(振幅)に基づいて紙葉類7が正券であるか損券であるかを判定する。この為に、制御部9は、判定の基準となる基準値を記憶する基準値記憶部を備える。
【0034】
図2は、図1に示すこわさ検出装置10を送信部1側から見た図である。
図2に示すように、こわさ検出装置10は、紙葉類7の搬送方向に並んで設置される送信部1及び受信部2Aを備える。また、こわさ検出装置10は、受信部2Aと紙葉類7を挟んで対向する位置設けられる図示しない受信部2Bを備える。なお、受信部2は、搬送される紙葉類7上の常に同じ領域(検出点)から漏洩波を検出するように設置される。即ち、受信部2は、受信部2の振動面の中心と搬送される紙葉類7の幅方向における中心とが重なる位置に設けられる。
【0035】
図3は、図2に示すこわさ検出装置10をBB線で切り取った断面図である。
送信部1は、振動面から音波3Aを射出し、搬送路115により搬送される紙葉類7中にラム波3Bを励起させる。ラム波3Bは、紙葉類7内を伝播する。
【0036】
紙葉類7を伝播するラム波3Bは、紙葉類7上の受信部2Aの検出点から漏洩波3Cを射出する。また、ラム波3Bは、紙葉類7上の受信部2Bの検出点から漏洩波3Dを射出する。受信部2Aは、漏洩波3Cに基づいて電圧を生成し、制御部9に出力する。また、受信部2Bは、漏洩波3Dに基づいて電圧を生成し、制御部9に出力する。
【0037】
なお、送信部1から射出される音波が入射する入射点と、受信部2の検出点との水平方向における距離を、ラム波を受信部2が受信でき、且つ十分なS/N比を確保することができる範囲で最短距離にすることにより、こわさ検出装置10をコンパクトに配置することができる。
【0038】
図4及び5は、本実施形態に係るこわさ検出装置10により検査する紙葉類7の例について説明する為の説明図である。図4は、紙葉類7の表面の例について示す図である。図5は、紙葉類7の裏面の例について示す図である。
また、図6は、紙葉類7に塗布されているインクの量について説明する為の説明図である。
【0039】
図4及び図5に示すように、表面と裏面とで印刷の図柄が異なる。この為、図6に示すように、紙葉類7に塗布されているインク8の量が表面と裏面とで異なる。図6に示す例では、表面のほうが裏面より塗布されているインク8の量が多い。
【0040】
図7は、図6に示す例において受信部2Aにより検出する信号について説明する為の説明図である。即ち、図7に示す信号71は、インク8の量の多い表面から漏洩した漏洩波を検出した信号である。また、図8は、図6に示す例において受信部2Bにより検出する信号について説明する為の説明図である。即ち、図8に示す信号81は、インク8の量の少ない裏面から漏洩した漏洩波を検出した信号である。
【0041】
なお、図7及び図8に示す信号71及び81は、搬送されている紙葉類7から連続して検出する漏洩波の波高値である。図7及び図8に示す信号の横軸は、紙葉類7の先端を0とする場合の紙葉類7上における受信部2の検出点の移動距離である。また、図7及び図8に示す信号の縦軸は、受信部2により検出する漏洩波の波高値に応じた値である。
【0042】
インク8は、紙葉類7を伝播するラム波が紙葉類7の外に漏洩するのを妨げる異物である。ラム波を用いて紙葉類7のこわさを検出する場合、受信部2の検出結果は、紙葉類7に塗布されているインク8の量に影響を受ける。この為、図7及び8に示すように、インク8の量の多い表面から漏洩する漏洩波は、インク8の量の少ない裏面から漏洩する漏洩波に比べて波高値が小さい。なお、受信部2A及び受信部2Bにより検出する漏洩波の信号は、疲弊度が高くなるに従って、波高値が小さいレベルになる。
【0043】
図9は、図1に示す制御部9について説明する為の説明図である。
制御部9は、ゲイン調整回路11A及び11B(ゲイン調整回路11)、アナログディジタル変換器12A及び12B(アナログディジタル変換器12)、平均化処理部13、及び判定部14などを備える。
【0044】
受信部2A及び受信部2Bは、1枚の紙葉類の全体から検出した漏洩波の信号をゲイン調整回路11に入力する。即ち、ゲイン調整回路11には、1枚の紙葉類の表面と裏面とから検出する漏洩波の信号71及び81が入力される。
【0045】
ゲイン調整回路11及びアナログディジタル変換器(A/D変換器)12は、信号処理手段として機能する。なお、ゲイン調整回路11は、ゲイン調整手段として機能する。ゲイン調整回路11Aは、受信部2Aから出力される信号を予め設定される増幅率で増幅する。また、ゲイン調整回路11Bは、受信部2Bから出力される信号を予め設定される増幅率で増幅する。ゲイン調整回路11Aは、増幅した信号をA/D変換器12Aに入力する。また、ゲイン調整回路11Bは、増幅した信号をA/D変換器12Bに入力する。
【0046】
なお、紙葉類7を伝播するラム波は、波が入射した側に多く漏洩するという特性を有する。この為、紙葉類7が均一な媒体である場合でも、受信部2Bにより検出する信号より送信部1と同じ側に設置されている受信部2Aにより検出する信号のほうが小さい。
【0047】
そこで、本実施形態では、ゲイン調整回路11Aよりゲイン調整回路11Bの増幅率を大きく設定する。例えば、制御部9は、印刷などの無い均一な紙葉類7に対する検出結果が、受信部2Aと受信部2Bとで同じ値になるようにゲイン調整回路11A及びゲイン調整回路11Bの増幅率を設定する。
【0048】
A/D変換器12Aは、ゲイン調整回路11Aから入力されるアナログ信号をディジタル信号に変換する。A/D変換器12Bは、ゲイン調整回路11Bから入力されるアナログ信号をディジタル信号に変換する。A/D変換器12は、アナログ変換した信号を平均化処理部13に入力する。即ち、ゲイン調整回路11及びA/D変換器12は、受信部2Aから出力される信号と、受信部2Bから出力される信号とに信号処理を施し、信号を平均化処理部13に出力する。
【0049】
平均化処理部13及び判定部14は、正損判定手段として機能する。平均化処理部13は、A/D変換器12A及びA/D変換器12Bから入力される信号を平均化する。即ち、平均化処理部13は、紙葉類7の表面から漏洩する漏洩波の信号と、裏面から漏洩する漏洩波の信号との平均化する。
【0050】
平均化処理部13は、受信部2A及び2Bにより検出する信号に基づいて比較データを算出する比較データ算出手段として機能する。平均化処理部13は、図10に示すように、受信部2Aにより検出する信号71と、受信部2Bにより検出する信号81とに基づいて、比較データとしての平均値91を算出する。即ち、平均化処理部13は、受信部2Aにより検出する信号71と、受信部2Bにより検出する信号81との全体の平均値91を算出する。平均化処理部13は、算出した平均値91を判定部14に入力する。
【0051】
判定部14は、予め基準値を記憶する基準値記憶部15を備える。基準値記憶部15は、判定の基準となる基準値を紙葉類7の種類毎に記憶する。
【0052】
判定部14は、基準値記憶部15に記憶される基準値と、平均化処理部13から入力される平均値91とを比較し、紙葉類7が正券であるか否かを判定する。判定部14は、平均化処理部13により算出する比較データと、予め設定される基準値とを比較し、比較結果に基づいて紙葉類7が正券であるか否かを判定する正損判定手段として機能する。
【0053】
即ち、判定部14は、平均化処理部13から入力される平均値91が基準値記憶部15に記憶される基準値以上の値である場合、紙葉類7が正券であると判定する。また、判定部14は、平均化処理部13から入力される平均値91が基準値記憶部15に記憶される基準値未満の値である場合、紙葉類7が損券であると判定する。
【0054】
なお、基準値記憶部15は、予め基準値を記憶する構成としたが、この構成に限定されない。例えば、こわさ検出装置10により紙葉類7を処理し、基準値を設定する構成であってもよい。この場合、こわさ検出装置10は、予め正券と判定した紙葉類7と予め損券と判定された紙葉類7とを処理し、それぞれの紙葉類7から信号を検出する。こわさ検出装置10は、検出した信号の値に基づいて基準値を算出し、算出した基準値を基準値記憶部15に記憶する。
【0055】
例えば、こわさ検出装置10は、紙葉類7から上記した方法により表面の信号と裏面の信号との平均値を算出する。こわさ検出装置10は、算出した損券及び正券の平均値をさらに平均化した値を基準値として基準値記憶部15に記憶する。
【0056】
上記したように、本実施形態に係るこわさ検出装置10は、送信部1により、搬送される紙葉類7に対して音波を照射する。こわさ検出装置10は、紙葉類7の表面と裏面から発せられるラム波の漏洩波を受信部2A及び受信部2Bにより検出する。こわさ検出装置10の制御部9は、受信部2Aにより検出した信号と、受信部2Bにより検出した信号の平均値91を算出する。こわさ検出装置10は、予め記憶される基準値と、算出した平均値91とを比較し、紙葉類7が正券であるか否かを判定する。これにより、こわさ検出装置10は、紙葉類7が表面と裏面のどちらが送信部1側に対向している場合であっても、紙葉類7の正損判定を行う事ができる。
【0057】
この結果、高精度に紙葉類のこわさを検出することができるこわさ検出装置、こわさ検出方法、及びこわさ検出装置を備える紙葉類処理装置を提供することができる。
【0058】
なお、上記した実施形態では、こわさ検出装置10は、受信部2Aにより検出した信号と、受信部2Bにより検出した信号との平均値を算出し、算出した平均値と基準値とを比較する構成として説明したがこの構成に限定されない。例えば、こわさ検出装置10は、受信部2Aにより検出した信号と、受信部2Bにより検出した信号との和を算出し、算出した値と基準値とを比較する構成であってもよい。なお、基準値記憶部15に記憶する基準値は、比較の方法に応じて適宜設定する必要がある。また、比較の方法は、受信部2Aにより検出した信号と、受信部2Bにより検出した信号とに基づく値と基準値とを比較する方法であれば如何なる方法であってもよい。
【0059】
また、上記した実施形態における受信部2は、図2に示すように、搬送される紙葉類7上の一部の検出点から漏洩波を検出する構成として説明したが、これに限定されない。受信部2を複数設置することにより、紙葉類7全体から漏洩波を検出する構成であってもよい。
【0060】
図11は、こわさ検出装置10の受信部2の他の構成例について説明するための説明図である。
図11に示すように、受信部2A及び受信部2Bは、紙葉類7の搬送方向と直交する方向に複数配列されるトランスデューサを備える。これらのトランスデューサは、少なくとも紙葉類7の搬送される領域を覆う幅を持って設置される。これにより、受信部2A及び受信部2Bは、紙葉類7の全体から漏洩波を検出することができる。
【0061】
なお、この場合、平均化処理部13は、各トランスデューサにより検出される信号のレベルを平均化することにより、平均値91を算出する。
【0062】
また、受信部2A及び受信部2Bのトランスデューサは、如何なる形状で構成されていてもよい。この為、受信部2A及び受信部2Bのトランスデューサの形状を変形させることにより、紙葉類7全体から漏洩波を検出する構成であってもよい。
【0063】
図12は、こわさ検出装置10の受信部2の他の構成例について説明するための説明図である。
図12に示すように、受信部2A及び受信部2Bは、紙葉類7の搬送方向と直交する方向に少なくとも紙葉類7の搬送される領域を覆う幅で設置される。即ち、受信部2A及び受信部2Bの振動面が、少なくとも紙葉類7の幅以上の長さを有する。このようなトランスデューサを設置することにより、受信部2A及び受信部2Bは、紙葉類7の全体から漏洩波を検出することができる。
【0064】
また、こわさ検出装置10は、さらに受信部2Cを備える構成であってもよい。
図13は、こわさ検出装置10の受信部2の他の構成例について説明するための説明図である。
図13に示すこわさ検出装置10は、図3に示す構成にさらに受信部2Cを備える。
【0065】
受信部2Cは、受信部2Cは、受信部2A及び2Bと同様の構成であり、送信部1と紙葉類7を挟んで対向する位置に設置される。即ち、受信部2Cの振動面は、送信部1の振動面と同じ角度で設置されている。また、受信部2Cは、送信部1の振動面の中心から
送信部1の振動面と直交する方向に延長した線上に受信部2Cの振動面の中心が重なるように設置される。
【0066】
送信部1から射出されて紙葉類7に入射する波の一部は、送信部1の反対側に透過する。受信部2Cは、紙葉類7を透過する透過波3Eを検出する。紙葉類7を透過する透過波3Eは、紙葉類7の状態に影響を受ける。制御部9は、受信部2Cにより検出する信号に基づいて、紙葉類7が複数枚重なっていること、または、紙葉類7にテープなどの異物が貼付されていること検知する。この場合、制御部9は、検知手段として機能する。
【0067】
また、透過波は、紙葉類7の疲弊度が著しく高くなった場合にも影響をうける。図14は、紙葉類7の疲弊度と、透過波及びラム波の漏洩波との関係について説明する為の図である。横軸は、紙葉類7の疲弊度を数値化した値(tawami[mm])である。縦軸は、受信部2A、受信部2B、及び受信部2Cにより検出する波の振幅(normalized amplitude[dB])である。
【0068】
なお、グラフ141は、受信部2Aにより検出する波の振幅と受信部2Bにより検出する波の振幅との平均値を示すグラフである。また、グラフ142は、受信部2Cにより検出する透過波の振幅を示すグラフである。
【0069】
図14に示すように、例えば、紙葉類7の疲弊度が低い(例えば、tawami=20)場合、グラフ141及びグラフ142は、振幅が大きい。また、例えば、紙葉類7の疲弊度が中程度(例えば、tawami=30)である場合、グラフ141の振幅が小さく、グラフ142の振幅が大きい。またさらに、紙葉類7の疲弊度が高い(例えば、tawami=50)である場合、グラフ141及びグラフ142の振幅が小さい。
【0070】
上記したように、紙葉類7の疲弊度に対する変化は、透過波よりラム波の方が大きい。そこで、例えば、ラム波と透過波とにそれぞれ個別に閾値を設定することにより、紙葉類7の疲弊度を段階的に検出することができる。
【0071】
次に、上記したこわさ検出装置10を備える紙葉類処理装置について説明する。
図15は、一実施形態に係る紙葉類処理装置の外観について説明するための説明図である。
図15に示すように、紙葉類処理装置100は、装置外部に、投入部112、操作部136、操作表示部137、ドア138、取出口139、及びキーボード140を備えている。
【0072】
投入部112は、紙葉類7を投入するための構成である。投入部112は、重ねられた状態の紙葉類7をまとめて受け入れる。操作部136は、オペレータによる各種操作入力を受け付ける。操作表示部137は、オペレータに対して各種の操作案内、及び処理結果などを表示する。なお、操作表示部137は、タッチパネルとして構成されていてもよい。この場合、紙葉類処理装置100は、操作表示部137に表示されるボタンと、操作表示部137に対するオペレータによる操作と、に基づいて、各種の操作入力を検知する。
【0073】
ドア138は、投入部112の投入口を開閉する為のドアである。取出口139は、紙葉類処理装置100により再流通不可と判断された紙葉類7がスタックされる集積部から紙葉類7を取り出す為の構成である。キーボード140は、オペレータによる各種操作入力を受け付ける入力部として機能する。
【0074】
図16は、図15に示す紙葉類処理装置100の構成例について説明するための説明図である。
紙葉類処理装置100は、装置内部に、投入部112、取出部113、吸着ローラ114、搬送路115、検査部116、ゲート120乃至125、排除搬送路126、排除集積部127、集積・結束部128乃至131、裁断部133、及びスタッカ134を備える。また、紙葉類処理装置100は、主制御部151を備える。主制御部151は、紙葉類処理装置100の各部の動作を統合的に制御する。
【0075】
取出部113は、投入部の上部に設けられる。取出部113は、吸着ローラ114を備えている。吸着ローラ114は、投入部112にセットされた紙葉類7を集積方向の上端に接するように設けられている。即ち、吸着ローラ114は、回転することにより、投入部112にセットされた紙葉類7を集積方向の上端から1枚ずつ装置内部に取り込む。吸着ローラ114は、たとえば、1回転するごとに1枚の紙葉類7を取出すように機能する。これにより、吸着ローラ114は、紙葉類7一定のピッチで取出す。吸着ローラ114により取り込まれた紙葉類7は、搬送路115に導入される。
【0076】
搬送路115は、紙葉類7を紙葉類処理装置100内の各部に搬送する搬送手段である。搬送路115は、搬送ベルト5及び図示しない駆動プーリなどを備えている。搬送路115は、図示しない駆動モータ及び駆動プーリにより搬送ベルト5を動作させる。搬送路115は、吸着ローラ114により取り込まれた紙葉類7を搬送ベルト5により一定速度で搬送する。なお、搬送路115における取出部113に近い側を上流側、スタッカ134に近い側を下流側として説明する。
【0077】
取出部113から延びた搬送路115上には、検査部116が設けられている。検査部116は、画像読取装置117、画像読取装置118、こわさ検出装置10、及び厚み検査部119を備えている。検査部116は、紙葉類7の光学的特徴情報、機械的特徴、及び磁気的特長情報を検出する。これにより、紙葉類処理装置100は、紙葉類7の種類、汚棄損、表裏、及び真偽などを検査する。
【0078】
画像読取装置117、及び118は、それぞれ搬送路115を挟んで対面するように設けられている。画像読取装置117、及び118は、搬送路115を搬送される紙葉類7の両面の画像を読み取る。画像読取装置117、及び118は、それぞれ、Charge Coupled Device(CCD)カメラを備える。紙葉類処理装置100は、画像読取装置117、及び118により撮像した画像に基づいて、紙葉類7の表面及び裏面の模様画像を取得する。
【0079】
画像読取装置117、及び118は、読み取った画像を検査部116内の図示しないメモリに一時的に記憶する。紙葉類処理装置100は、このメモリに記憶されている画像を操作入力に応じて操作表示部137に表示する。
【0080】
こわさ検出装置10は、上記したように、紙葉類7の機械的特性を検出する。これにより、こわさ検出装置10は、紙葉類7が疲弊して再流通不可能な損券であるか、再流通可能な正券であるかを判定する。
【0081】
厚み検査部119は、搬送路115を搬送される紙葉類7の厚みを検査する。例えば、検出した厚みが規定値以上である場合、紙葉類処理装置100は、紙葉類7の2枚取りを検出する。
【0082】
また、検査部116は、図示しない磁気センサなどを備えている。磁気センサは、紙葉類7の磁気的な特徴情報を検出する。
【0083】
主制御部151は、画像読取装置117、118、こわさ検出装置10、厚み検査部119、及び磁気センサなどによる検出結果に基づいて、紙葉類7が正券、損券、または排除権であるかを判定する。
【0084】
紙葉類処理装置100は、正券と判定した紙葉類7を集積・結束部128乃至131に搬送する。また、紙葉類処理装置100は、損券と判定した紙葉類7を裁断部133に搬送する。裁断部133は、搬送される損券を裁断する。なお、紙葉類処理装置100は、損券をスタッカ134に搬送し集積してもよい。スタッカ134は、集積した損券が例えば100枚に到達するごとに施封を行う。
【0085】
排除券は、正券及び損券に該当しない紙葉類7である。紙葉類処理装置100は、排除券と判定した紙葉類7を排除集積部127に搬送する。排除券は、例えば、2枚取り券などの搬送異常券、折れ・破れなどの不良券、及び適用外券種・偽券などの判別不能券を含む。
【0086】
検査部116の下流側の搬送路115上には、ゲート120乃至125が順に配設されている。ゲート120乃至125は、それぞれ、主制御部151により制御される。主制御部151は、検査部116による検査の結果に基づいて各ゲート120乃至125の動作を制御する。これにより、主制御部151は、搬送路115を搬送されている紙葉類7を所定の処理部に搬送するように制御する。
【0087】
検査部116の直後に配設されたゲート120は、搬送路115を排除搬送路126に分岐する。即ち、ゲート120は、検査部116による検査の結果、真券ではないと判定された排除券、または、検査部116による検査を行うことができない検査不能券等を排除搬送路126に搬送するように切り替えられる。
【0088】
排除搬送路126の終端部には、排除集積部(排除部)127が設けられている。排除集積部127は、取出部113にて取出した姿勢のまま、上記したような排除券、及び検査不能券を集積する。排除集積部127に集積された紙葉類7は、取出口139から取り出すことができる。
【0089】
また、ゲート121乃至124により分岐される先には、集積・結束部128乃至131(総じて集積結束部132と称する)がそれぞれ設けられている。集積・結束部132には、再流通可能であると判定された紙葉類7が種類及び表裏毎に区別されて集積される。集積・結束部132は、集積した紙葉類7を所定枚数毎に結束して格納する。また、紙葉類処理装置100は、図示しない大束結束部により、所定枚数毎で結束した紙葉類7を複数集積し、結束する。
【0090】
ゲート125により分岐される先には、裁断部133が配設されている。裁断部133は、紙葉類7を裁断して収納する。ゲート125に搬送される紙葉類7は、正規の紙葉類7であり、且つ、再流通が不可能であると判定された紙葉類7(損券)である。
【0091】
また、ゲート125により分岐される他方の搬送路の先には、スタッカ134が配設されている。主制御部151は、損券裁断モードが選択されている場合、紙葉類7を裁断部133に搬送するようにゲート125を制御する。また、主制御部151は、損券裁断モードが選択されていない場合、紙葉類7をスタッカ134に搬送するようにゲート125を制御する。
【0092】
なお、主制御部151は、集積・結束部132に集積された紙葉類7の枚数、及び、裁断部133により裁断された紙葉類7の枚数及び識別情報を逐次記憶する。
【0093】
図17は、図15及び図16に示す紙葉類処理装置100の制御系の構成例について説明するためのブロック図である。
【0094】
紙葉類処理装置100は、主制御部151、検査部116、搬送制御部152、集積・結束制御部153、裁断制御部156、操作表示部137、及びキーボード140などを備える。
【0095】
主制御部151は、紙葉類処理装置100の全体的な制御を司る。主制御部151は、操作表示部137により入力される操作、及び検査部116による検査結果に基づき、搬送制御部152及び集積・結束制御部153を制御する。
【0096】
例えば、操作員は、操作表示部137またはキーボード140により、処理する紙葉類7の券種、枚数、正損判別レベル、供給元の名称、及び処理方法などを入力する。
【0097】
検査部116は、画像読取装置117、及び118、厚み検査部119、こわさ検出装置10、その他のセンサ類154、及びCPU155を備える。
【0098】
画像読取装置117、及び118は、搬送路115を搬送される紙葉類7の両面の画像を読み取る。画像読取装置117、及び118は、例えばCCDなどの受光素子と光学系とを備える。画像読取装置117、及び118は、搬送される紙葉類7に対して光を投光し、反射光または透過光を光学系により受光する。画像読取装置117、及び118は、光学系により受光した光をCCDに結像させ、電気信号(画像)を取得する。
【0099】
主制御部151は、紙葉類7の基準となる画像(基準画像)を記憶部151aに予め記憶する。主制御部151は、紙葉類7から取得した画像と、記憶部151aに記憶される基準画像とを比較することにより、静養類の正損判定及び偽券判定を行う。
【0100】
こわさ検出装置10は、上記したように、こわさ検出装置10は、送信部1により搬送される紙葉類7に対して音波を照射する。こわさ検出装置10は、紙葉類7の表面及び裏面から漏洩するラム波の漏洩波を、受信部2A及び受信部2Bにより受信する。こわさ検出装置10の制御部9は、受信部2A及び2Bにより検出した信号に基づいて、平均値91を算出する。
【0101】
制御部9は、基準値記憶部15に記憶される基準値と、算出した平均値91とを比較し、紙葉類7が正券であるか否かを判定する。これにより、こわさ検出装置10は、紙葉類7が正券として再流通可能であるか否かを判定することができる。
【0102】
厚み検査部119は、搬送路115を搬送される紙葉類7の厚みを検査する。その他のセンサ類154は、例えば、磁気センサなどである。磁気センサは、搬送路115を搬送される紙葉類7から磁気的な特徴情報を検出する。
【0103】
CPU155は、画像読取装置117、118、厚み検査部119、こわさ検出装置10、及びその他のセンサ類154などによる検査の結果に基づいて、搬送路115を搬送される紙葉類7の種類、正損、表裏、及び真偽などを判別する。
【0104】
搬送制御部152は、主制御部151の制御に基づき、取出部113、搬送路115、排除搬送路126、及びゲート120乃至125を制御する。これにより、搬送制御部152は、紙葉類7の取り込み及び搬送を制御する。また、搬送制御部152は、判定した紙葉類7の種類毎に区分する区分処理を行う。即ち、搬送制御部152は、区分処理部として機能する。なお、搬送制御部152は、紙葉類7の種類毎に区分するとしたがこれに限定されない。例えば、こわさ検出装置10の検出結果に基づいて、紙葉類7を疲弊度毎に区分して処理してもよい。
【0105】
集積・結束制御部153は、主制御部151の制御に基づき、前記排除集積部127及び集積・結束部128〜131を制御する。これにより、集積・結束制御部153は、紙葉類7の集積、及び結束の制御を行なう。
【0106】
裁断制御部156は、主制御部151の制御に基づき、裁断部133の動作を制御する。これにより、裁断部133は、搬送される紙葉類7の裁断を行う。
【0107】
上記したように、本発明の一実施形態に係るこわさ検出装置10を備える紙葉類処理装置100は、紙葉類7に対してこわさ検出装置10により検査を行う。こわさ検出装置10は、紙葉類7の機械的特性を検査し、再流通可能であるか否かを判定する。紙葉類処理装置100は、判定結果に基づいて紙葉類7を適切に処理することができる。
【0108】
なお、この発明は、上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具現化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。更に、異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0109】
1…送信部、2…受信部、3A…音波、3B…ラム波、3C…漏洩波、3D…漏洩波、3E…透過波、5…搬送ベルト、7…紙葉類、8…インク、9…制御部、10…検出装置、11…ゲイン調整回路、12…アナログディジタル変換器、13…平均化処理部、14…判定部、15…基準値記憶部、100…紙葉類処理装置、112…投入部、113…取出部、114…吸着ローラ、115…搬送路、116…検査部、117…画像読取装置、118…画像読取装置、119…厚み検査部、151…主制御部、151a…記憶部、152…搬送制御部、153…集積・結束制御部、154…他のセンサ類、155…CPU、156…裁断制御部。
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙葉類のこわさを検出するこわさ検出装置、こわさ検出方法、及びこわさ検出装置を備える紙葉類処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、種々の紙葉類の計数及び判別を行う紙葉類処理装置が実用化されている。紙葉類処理装置は、投入部に投入された紙葉類を1枚ずつ取り込み、紙葉類の検査装置に搬送する。検査装置は、紙葉類に対して種々の処理を行い紙葉類の状態を判別する。例えば、紙葉類が紙幣である場合、紙葉類処理装置は、検査装置の検査結果に基づいて、紙葉類の種類判定、真偽判定、及び再流通が可能な紙葉類であるか否かの判定(正損判定)などを行う。
【0003】
紙葉類処理装置は、剛性の劣化した紙葉類は再流通に適さない紙葉類であると判定する。この為に、検査装置は、紙葉類の剛性の劣化の度合い等の機械的特性を検出する。
【0004】
例えば、特許文献1には、紙葉類に対して音波を送信し、反射波、または透過波のレベルに基づいて、紙葉類の単位面積あたりの重量を測定する技術が開示されている。
【0005】
また、特許文献2には、金属板等の試験体に超音波を入射し、試験体を伝播する波の漏洩波を受信し、受信する波形の振幅に基づいて試験体中の欠陥を検出する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平5−806054号公報
【特許文献2】特開2008−164394号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上記した技術を備える装置により検査を行う紙葉類には、表面にインクなどによる印刷が施されている場合がある。この場合、紙葉類の表面に付着するインクが媒体を伝播する波に影響を与える可能性がある。
【0008】
紙葉類の印刷は、表面と裏面とで図柄が異なる。この為、検査装置に対向する紙葉類の面が表面か裏面かで検査結果が異なる。また、搬送される紙葉類の搬送向きによっても検査結果が異なる場合がある。
【0009】
検査装置に搬送される紙葉類は、搬送状態が表面と裏面とでばらつく。また、検査装置に搬送される紙葉類は、搬送向きがばらつく。この結果、検査装置が紙葉類の正損を正確に判定できない可能性があるという問題がある。
【0010】
また、紙葉類に折り目などが存在する場合がある。紙葉類の折り目が、紙葉類の表面及び裏面から漏洩する波(漏洩波)に影響を与える可能性があるという問題がある。
【0011】
そこで、本発明は、より高精度に紙葉類のこわさを検出することができるこわさ検出装置、こわさ検出方法、及びこわさ検出装置を備える紙葉類処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一実施形態としてのこわさ検出装置は、搬送される紙葉類に対して音波を送信してラム波を励起させる送信手段と、前記紙葉類の表面の検出点から射出されるラム波の漏洩波を検出する第1の受信手段と、前記紙葉類の裏面の検出点から射出されるラム波の漏洩波を検出する第2の受信手段と、前記第1の受信手段により検出する信号と、前記第2の受信手段により検出する信号とに基づいて比較データを算出する比較データ算出手段と、前記比較データ算出手段により算出した比較データと、予め設定される基準値とを比較し、比較結果に基づいて前記紙葉類が正券であるか否かを判定する正損判定手段と、を具備する。
【0013】
また、本発明の一実施形態としてのこわさ検出方法は、搬送される紙葉類に対して音波を送信してラム波を励起させ、前記紙葉類の表面の検出点から射出されるラム波の漏洩波を検出し、前記紙葉類の裏面の検出点から射出されるラム波の漏洩波を検出し、前記紙葉類の表面から検出する信号と、前記紙葉類の裏面から検出する信号とに基づいて比較データを算出し、前記算出した比較データと、予め設定される基準値とを比較し、比較結果に基づいて前記紙葉類が正券であるか否かを判定する。
【0014】
また、本発明の一実施形態としての紙葉類処理装置は、紙葉類を搬送する搬送部と、前記搬送部により搬送される紙葉類に対して音波を送信してラム波を励起させる送信手段と、前記紙葉類の表面の検出点から射出されるラム波の漏洩波を検出する第1の受信手段と、前記紙葉類の裏面の検出点から射出されるラム波の漏洩波を検出する第2の受信手段と、前記第1の受信手段により検出する信号と、前記第2の受信手段により検出する信号とに基づいて比較データを算出する比較データ算出手段と、前記比較データ算出手段により算出した比較データと、予め設定される基準値とを比較し、比較結果に基づいて前記紙葉類が正券であるか否かを判定する正損判定手段と、前記正損判定手段による判定結果に基づいて、前記紙葉類を区分する区分処理部と、を具備する。
【発明の効果】
【0015】
この発明の一形態によれば、より高精度に紙葉類のこわさを検出することができるこわさ検出装置、こわさ検出方法、及びこわさ検出装置を備える紙葉類処理装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、一実施形態に係るこわさ検出装置の構成例について説明するための説明図である。
【図2】図2は、図1に示すこわさ検出装置の動作について説明するための説明図である。
【図3】図3は、こわさ検出装置の各部の配置の例について説明するための説明図である。
【図4】図4は、こわさ検出装置により検査する紙葉類の例について説明するための説明図である。
【図5】図5は、こわさ検出装置により検査する紙葉類の例について説明するための説明図である。
【図6】図6は、こわさ検出装置により検査する紙葉類の例について説明するための説明図である。
【図7】図7は、こわさ検出装置の受信部により検出する波形の例について説明するための説明図である。
【図8】図8は、こわさ検出装置の受信部により検出する波形の例について説明するための説明図である。
【図9】図9は、こわさ検出装置の信号処理系の構成の例について説明するための説明図である。
【図10】図10は、こわさ検出装置の受信部により検出する波形に対する処理について説明するための説明図である。
【図11】図11は、こわさ検出装置の受信部の他の構成例について説明するための説明図である。
【図12】図12は、こわさ検出装置の受信部の他の構成例について説明するための説明図である。
【図13】図13は、こわさ検出装置の受信部の他の構成例について説明するための説明図である。
【図14】図14は、透過波の強度と疲弊度との関係について説明する為の説明図である。
【図15】図15は、一実施形態に係る紙葉類処理装置の外観について説明するための説明図である。
【図16】図16は、図15に示す紙葉類処理装置の構成例について説明するための説明図である。
【図17】図17は、図15及び図16に示す紙葉類処理装置の制御系の構成例について説明するためのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しながら、本発明の一実施形態に係るこわさ検出装置、こわさ検出方法、及びこわさ検出装置を備える紙葉類処理装置について詳細に説明する。
【0018】
図1は、一実施形態に係るこわさ検出装置の構成例について説明するための説明図である。
こわさ検出装置10は、紙葉類7の機械的性質を検査する。例えば、こわさ検出装置10は、紙葉類7の弾性率、引っ張り強度、または曲げ強度などのこわさを検出する。こわさ検出装置10は、例えば紙葉類処理装置の搬送部の近傍に設置される。
【0019】
図1に示すように、こわさ検出装置10は、送信部1、受信部2A、受信部2B、及び制御部9を備える。
【0020】
送信部1は、搬送される紙葉類7に対して音波を送信してラム波を励起させる送信手段として機能する。送信部1は、紙葉類7にラム波(板波)を励起させる超音波の発信器である。
【0021】
送信部1は、例えば、スピーカ、圧電トランスデューサ、またはMicro Electro Mechanical System(MEMS)を用いた振動発生器などを備える。送信部1は、印加される電圧に応じて振動面を振動させ、音波を発生させる。送信部1は、受信部2A、及び受信部2Bより上流側に設置される。
【0022】
受信部2A、及び受信部2B(受信部2と称する)は、紙葉類7において発生したラム波の波形を検出する受信器である。受信部2は、紙葉類の表面及び裏面の検出点から射出されるラム波の漏洩波を検出する受信手段として機能する。
【0023】
受信部2は、送信部1と同様の構成であり、例えば、マイクロフォン、圧電トランスデューサ、または振動を変位として計測する干渉光を用いた変位計(干渉計)などの受信センサを備える。受信部2は、紙葉類7から漏洩する波により励起される振動面の振動に応じて電圧を得る。
【0024】
送信部1及び受信部2は、振動面を備える。振動面は、印加される電圧に応じて変位する。また、振動面は、面の変位に応じて電圧を発生させる。即ち、送信部1は、振動面に電圧を印加することにより、振動面を振動させ、波を生成する。また、受信部2は、波により振動する振動面の変位により生じる電圧を検出する。なお、送信部1は、振動面と直交する方向に音波を射出すると仮定する。また、受信部2は、振動面と直交する方向で入射する音波を検出すると仮定する。
【0025】
図1に示すように、受信部2A、及び受信部2Bは、互いに対向する位置に設けられている。即ち、受信部2Aは、送信部1と同じ側に設けられている。また、受信部2Bは、受信部2Aと対向する位置に設けられている。なお、送信部1と受信部2とは、紙葉類7の搬送方向Aにおいて距離Lを離隔して設置されている。
【0026】
送信部1は、搬送される紙葉類7に対して音波を照射する。また、受信部2は、搬送される紙葉類7を伝播するラム波の漏洩波を検出する。しかし、非接触で紙葉類7に音波を射出する場合、音波の減衰が大きい。この為に、送信部1及び受信部2は、搬送ベルト5により搬送される紙葉類7に近い位置に設置される。
【0027】
搬送ベルト5は、搬送部として機能する。搬送ベルト5は、図1に示すように、上下1対のベルトを備える。搬送ベルト5は、駆動プーリなどにより駆動される。搬送ベルト5は、上下1対のベルトにより紙葉類7を挟み入れて図1に示す搬送方向Aの方向に一定の速度で搬送する。
【0028】
制御部9は、こわさ検出装置10の全体の制御を司るものである。制御部9は、CPU、バッファメモリ、プログラムメモリ、及び不揮発性メモリなどを備えている。CPUは、種々の演算処理を行う。バッファメモリは、CPUにより演算結果を一時的に記憶する。プログラムメモリ及び不揮発性メモリは、CPUが実行する種々のプログラム及び制御データなどを記憶する。制御部9は、CPUによりプログラムメモリに記憶されているプログラムを実行することにより、種々の処理を行うことができる。例えば、制御部9は、送信部1及び受信部2の動作タイミングを制御する。本実施形態では、制御部9は、受信部2Aと受信部2Bとが同時に波を検出するように制御する。
【0029】
また、制御部9は、受信部2により検出した信号に対して信号処理を施す信号処理手段と、正損判定を行う正損判定手段とを備える。信号処理手段及び正損判定手段に関しては後に詳述する。
【0030】
こわさ検出装置10は、紙葉類7を検知する場合、送信部1により超音波を発生させる。これにより、こわさ検出装置10は、紙葉類7に超音波を照射する。紙葉類7中では、超音波によりラム波が励起される。励起されたラム波は、紙葉類7内部を伝播する間に、紙葉類7の表面及び裏面から漏洩波を発生させる。こわさ検出装置10は、受信部2A及び受信部2Bによりラム波の漏洩波を検出する。
【0031】
ラム波は、振動方向が媒体に垂直であり、且つ、伝播方向に同じ振動成分を持って伝播する波である。ラム波は、波長と同程度の厚さを持つ媒体を伝播する波である。ラム波は、伝播する媒体中のどの点においてでも検出することができる、伝播時間から音速を算出することができる、媒体が均一でない場合に影響を受ける、狭時により信号強度が変動しない、などの特徴を有する。
【0032】
紙葉類7は、繊維とバインダとにより構成される。しかし、紙葉類7が疲弊する場合、バインダが欠損し、相対的に空気の含有量が増加する。この結果、疲弊した紙葉類7は、疲弊していない紙葉類に比べて密度が低くなる。紙葉類7の中の空気の比率が大きくなる場合、空気の性質と紙葉類7の性質とが近くなる。この為、音響的な抵抗値が低下する。即ち、紙葉類7を伝播するラム波が外部に漏洩しやすくなる。この結果、受信部2A及び受信部2Bの検出点に到達するまでにラム波が減衰し、受信部2A及び受信部2Bにより検出する波の振幅が小さくなる。
【0033】
上記したように、本実施形態に係るこわさ検出装置10の制御部9は、受信部2A及び受信部2Bにより検出する信号のレベル(振幅)に基づいて紙葉類7が正券であるか損券であるかを判定する。この為に、制御部9は、判定の基準となる基準値を記憶する基準値記憶部を備える。
【0034】
図2は、図1に示すこわさ検出装置10を送信部1側から見た図である。
図2に示すように、こわさ検出装置10は、紙葉類7の搬送方向に並んで設置される送信部1及び受信部2Aを備える。また、こわさ検出装置10は、受信部2Aと紙葉類7を挟んで対向する位置設けられる図示しない受信部2Bを備える。なお、受信部2は、搬送される紙葉類7上の常に同じ領域(検出点)から漏洩波を検出するように設置される。即ち、受信部2は、受信部2の振動面の中心と搬送される紙葉類7の幅方向における中心とが重なる位置に設けられる。
【0035】
図3は、図2に示すこわさ検出装置10をBB線で切り取った断面図である。
送信部1は、振動面から音波3Aを射出し、搬送路115により搬送される紙葉類7中にラム波3Bを励起させる。ラム波3Bは、紙葉類7内を伝播する。
【0036】
紙葉類7を伝播するラム波3Bは、紙葉類7上の受信部2Aの検出点から漏洩波3Cを射出する。また、ラム波3Bは、紙葉類7上の受信部2Bの検出点から漏洩波3Dを射出する。受信部2Aは、漏洩波3Cに基づいて電圧を生成し、制御部9に出力する。また、受信部2Bは、漏洩波3Dに基づいて電圧を生成し、制御部9に出力する。
【0037】
なお、送信部1から射出される音波が入射する入射点と、受信部2の検出点との水平方向における距離を、ラム波を受信部2が受信でき、且つ十分なS/N比を確保することができる範囲で最短距離にすることにより、こわさ検出装置10をコンパクトに配置することができる。
【0038】
図4及び5は、本実施形態に係るこわさ検出装置10により検査する紙葉類7の例について説明する為の説明図である。図4は、紙葉類7の表面の例について示す図である。図5は、紙葉類7の裏面の例について示す図である。
また、図6は、紙葉類7に塗布されているインクの量について説明する為の説明図である。
【0039】
図4及び図5に示すように、表面と裏面とで印刷の図柄が異なる。この為、図6に示すように、紙葉類7に塗布されているインク8の量が表面と裏面とで異なる。図6に示す例では、表面のほうが裏面より塗布されているインク8の量が多い。
【0040】
図7は、図6に示す例において受信部2Aにより検出する信号について説明する為の説明図である。即ち、図7に示す信号71は、インク8の量の多い表面から漏洩した漏洩波を検出した信号である。また、図8は、図6に示す例において受信部2Bにより検出する信号について説明する為の説明図である。即ち、図8に示す信号81は、インク8の量の少ない裏面から漏洩した漏洩波を検出した信号である。
【0041】
なお、図7及び図8に示す信号71及び81は、搬送されている紙葉類7から連続して検出する漏洩波の波高値である。図7及び図8に示す信号の横軸は、紙葉類7の先端を0とする場合の紙葉類7上における受信部2の検出点の移動距離である。また、図7及び図8に示す信号の縦軸は、受信部2により検出する漏洩波の波高値に応じた値である。
【0042】
インク8は、紙葉類7を伝播するラム波が紙葉類7の外に漏洩するのを妨げる異物である。ラム波を用いて紙葉類7のこわさを検出する場合、受信部2の検出結果は、紙葉類7に塗布されているインク8の量に影響を受ける。この為、図7及び8に示すように、インク8の量の多い表面から漏洩する漏洩波は、インク8の量の少ない裏面から漏洩する漏洩波に比べて波高値が小さい。なお、受信部2A及び受信部2Bにより検出する漏洩波の信号は、疲弊度が高くなるに従って、波高値が小さいレベルになる。
【0043】
図9は、図1に示す制御部9について説明する為の説明図である。
制御部9は、ゲイン調整回路11A及び11B(ゲイン調整回路11)、アナログディジタル変換器12A及び12B(アナログディジタル変換器12)、平均化処理部13、及び判定部14などを備える。
【0044】
受信部2A及び受信部2Bは、1枚の紙葉類の全体から検出した漏洩波の信号をゲイン調整回路11に入力する。即ち、ゲイン調整回路11には、1枚の紙葉類の表面と裏面とから検出する漏洩波の信号71及び81が入力される。
【0045】
ゲイン調整回路11及びアナログディジタル変換器(A/D変換器)12は、信号処理手段として機能する。なお、ゲイン調整回路11は、ゲイン調整手段として機能する。ゲイン調整回路11Aは、受信部2Aから出力される信号を予め設定される増幅率で増幅する。また、ゲイン調整回路11Bは、受信部2Bから出力される信号を予め設定される増幅率で増幅する。ゲイン調整回路11Aは、増幅した信号をA/D変換器12Aに入力する。また、ゲイン調整回路11Bは、増幅した信号をA/D変換器12Bに入力する。
【0046】
なお、紙葉類7を伝播するラム波は、波が入射した側に多く漏洩するという特性を有する。この為、紙葉類7が均一な媒体である場合でも、受信部2Bにより検出する信号より送信部1と同じ側に設置されている受信部2Aにより検出する信号のほうが小さい。
【0047】
そこで、本実施形態では、ゲイン調整回路11Aよりゲイン調整回路11Bの増幅率を大きく設定する。例えば、制御部9は、印刷などの無い均一な紙葉類7に対する検出結果が、受信部2Aと受信部2Bとで同じ値になるようにゲイン調整回路11A及びゲイン調整回路11Bの増幅率を設定する。
【0048】
A/D変換器12Aは、ゲイン調整回路11Aから入力されるアナログ信号をディジタル信号に変換する。A/D変換器12Bは、ゲイン調整回路11Bから入力されるアナログ信号をディジタル信号に変換する。A/D変換器12は、アナログ変換した信号を平均化処理部13に入力する。即ち、ゲイン調整回路11及びA/D変換器12は、受信部2Aから出力される信号と、受信部2Bから出力される信号とに信号処理を施し、信号を平均化処理部13に出力する。
【0049】
平均化処理部13及び判定部14は、正損判定手段として機能する。平均化処理部13は、A/D変換器12A及びA/D変換器12Bから入力される信号を平均化する。即ち、平均化処理部13は、紙葉類7の表面から漏洩する漏洩波の信号と、裏面から漏洩する漏洩波の信号との平均化する。
【0050】
平均化処理部13は、受信部2A及び2Bにより検出する信号に基づいて比較データを算出する比較データ算出手段として機能する。平均化処理部13は、図10に示すように、受信部2Aにより検出する信号71と、受信部2Bにより検出する信号81とに基づいて、比較データとしての平均値91を算出する。即ち、平均化処理部13は、受信部2Aにより検出する信号71と、受信部2Bにより検出する信号81との全体の平均値91を算出する。平均化処理部13は、算出した平均値91を判定部14に入力する。
【0051】
判定部14は、予め基準値を記憶する基準値記憶部15を備える。基準値記憶部15は、判定の基準となる基準値を紙葉類7の種類毎に記憶する。
【0052】
判定部14は、基準値記憶部15に記憶される基準値と、平均化処理部13から入力される平均値91とを比較し、紙葉類7が正券であるか否かを判定する。判定部14は、平均化処理部13により算出する比較データと、予め設定される基準値とを比較し、比較結果に基づいて紙葉類7が正券であるか否かを判定する正損判定手段として機能する。
【0053】
即ち、判定部14は、平均化処理部13から入力される平均値91が基準値記憶部15に記憶される基準値以上の値である場合、紙葉類7が正券であると判定する。また、判定部14は、平均化処理部13から入力される平均値91が基準値記憶部15に記憶される基準値未満の値である場合、紙葉類7が損券であると判定する。
【0054】
なお、基準値記憶部15は、予め基準値を記憶する構成としたが、この構成に限定されない。例えば、こわさ検出装置10により紙葉類7を処理し、基準値を設定する構成であってもよい。この場合、こわさ検出装置10は、予め正券と判定した紙葉類7と予め損券と判定された紙葉類7とを処理し、それぞれの紙葉類7から信号を検出する。こわさ検出装置10は、検出した信号の値に基づいて基準値を算出し、算出した基準値を基準値記憶部15に記憶する。
【0055】
例えば、こわさ検出装置10は、紙葉類7から上記した方法により表面の信号と裏面の信号との平均値を算出する。こわさ検出装置10は、算出した損券及び正券の平均値をさらに平均化した値を基準値として基準値記憶部15に記憶する。
【0056】
上記したように、本実施形態に係るこわさ検出装置10は、送信部1により、搬送される紙葉類7に対して音波を照射する。こわさ検出装置10は、紙葉類7の表面と裏面から発せられるラム波の漏洩波を受信部2A及び受信部2Bにより検出する。こわさ検出装置10の制御部9は、受信部2Aにより検出した信号と、受信部2Bにより検出した信号の平均値91を算出する。こわさ検出装置10は、予め記憶される基準値と、算出した平均値91とを比較し、紙葉類7が正券であるか否かを判定する。これにより、こわさ検出装置10は、紙葉類7が表面と裏面のどちらが送信部1側に対向している場合であっても、紙葉類7の正損判定を行う事ができる。
【0057】
この結果、高精度に紙葉類のこわさを検出することができるこわさ検出装置、こわさ検出方法、及びこわさ検出装置を備える紙葉類処理装置を提供することができる。
【0058】
なお、上記した実施形態では、こわさ検出装置10は、受信部2Aにより検出した信号と、受信部2Bにより検出した信号との平均値を算出し、算出した平均値と基準値とを比較する構成として説明したがこの構成に限定されない。例えば、こわさ検出装置10は、受信部2Aにより検出した信号と、受信部2Bにより検出した信号との和を算出し、算出した値と基準値とを比較する構成であってもよい。なお、基準値記憶部15に記憶する基準値は、比較の方法に応じて適宜設定する必要がある。また、比較の方法は、受信部2Aにより検出した信号と、受信部2Bにより検出した信号とに基づく値と基準値とを比較する方法であれば如何なる方法であってもよい。
【0059】
また、上記した実施形態における受信部2は、図2に示すように、搬送される紙葉類7上の一部の検出点から漏洩波を検出する構成として説明したが、これに限定されない。受信部2を複数設置することにより、紙葉類7全体から漏洩波を検出する構成であってもよい。
【0060】
図11は、こわさ検出装置10の受信部2の他の構成例について説明するための説明図である。
図11に示すように、受信部2A及び受信部2Bは、紙葉類7の搬送方向と直交する方向に複数配列されるトランスデューサを備える。これらのトランスデューサは、少なくとも紙葉類7の搬送される領域を覆う幅を持って設置される。これにより、受信部2A及び受信部2Bは、紙葉類7の全体から漏洩波を検出することができる。
【0061】
なお、この場合、平均化処理部13は、各トランスデューサにより検出される信号のレベルを平均化することにより、平均値91を算出する。
【0062】
また、受信部2A及び受信部2Bのトランスデューサは、如何なる形状で構成されていてもよい。この為、受信部2A及び受信部2Bのトランスデューサの形状を変形させることにより、紙葉類7全体から漏洩波を検出する構成であってもよい。
【0063】
図12は、こわさ検出装置10の受信部2の他の構成例について説明するための説明図である。
図12に示すように、受信部2A及び受信部2Bは、紙葉類7の搬送方向と直交する方向に少なくとも紙葉類7の搬送される領域を覆う幅で設置される。即ち、受信部2A及び受信部2Bの振動面が、少なくとも紙葉類7の幅以上の長さを有する。このようなトランスデューサを設置することにより、受信部2A及び受信部2Bは、紙葉類7の全体から漏洩波を検出することができる。
【0064】
また、こわさ検出装置10は、さらに受信部2Cを備える構成であってもよい。
図13は、こわさ検出装置10の受信部2の他の構成例について説明するための説明図である。
図13に示すこわさ検出装置10は、図3に示す構成にさらに受信部2Cを備える。
【0065】
受信部2Cは、受信部2Cは、受信部2A及び2Bと同様の構成であり、送信部1と紙葉類7を挟んで対向する位置に設置される。即ち、受信部2Cの振動面は、送信部1の振動面と同じ角度で設置されている。また、受信部2Cは、送信部1の振動面の中心から
送信部1の振動面と直交する方向に延長した線上に受信部2Cの振動面の中心が重なるように設置される。
【0066】
送信部1から射出されて紙葉類7に入射する波の一部は、送信部1の反対側に透過する。受信部2Cは、紙葉類7を透過する透過波3Eを検出する。紙葉類7を透過する透過波3Eは、紙葉類7の状態に影響を受ける。制御部9は、受信部2Cにより検出する信号に基づいて、紙葉類7が複数枚重なっていること、または、紙葉類7にテープなどの異物が貼付されていること検知する。この場合、制御部9は、検知手段として機能する。
【0067】
また、透過波は、紙葉類7の疲弊度が著しく高くなった場合にも影響をうける。図14は、紙葉類7の疲弊度と、透過波及びラム波の漏洩波との関係について説明する為の図である。横軸は、紙葉類7の疲弊度を数値化した値(tawami[mm])である。縦軸は、受信部2A、受信部2B、及び受信部2Cにより検出する波の振幅(normalized amplitude[dB])である。
【0068】
なお、グラフ141は、受信部2Aにより検出する波の振幅と受信部2Bにより検出する波の振幅との平均値を示すグラフである。また、グラフ142は、受信部2Cにより検出する透過波の振幅を示すグラフである。
【0069】
図14に示すように、例えば、紙葉類7の疲弊度が低い(例えば、tawami=20)場合、グラフ141及びグラフ142は、振幅が大きい。また、例えば、紙葉類7の疲弊度が中程度(例えば、tawami=30)である場合、グラフ141の振幅が小さく、グラフ142の振幅が大きい。またさらに、紙葉類7の疲弊度が高い(例えば、tawami=50)である場合、グラフ141及びグラフ142の振幅が小さい。
【0070】
上記したように、紙葉類7の疲弊度に対する変化は、透過波よりラム波の方が大きい。そこで、例えば、ラム波と透過波とにそれぞれ個別に閾値を設定することにより、紙葉類7の疲弊度を段階的に検出することができる。
【0071】
次に、上記したこわさ検出装置10を備える紙葉類処理装置について説明する。
図15は、一実施形態に係る紙葉類処理装置の外観について説明するための説明図である。
図15に示すように、紙葉類処理装置100は、装置外部に、投入部112、操作部136、操作表示部137、ドア138、取出口139、及びキーボード140を備えている。
【0072】
投入部112は、紙葉類7を投入するための構成である。投入部112は、重ねられた状態の紙葉類7をまとめて受け入れる。操作部136は、オペレータによる各種操作入力を受け付ける。操作表示部137は、オペレータに対して各種の操作案内、及び処理結果などを表示する。なお、操作表示部137は、タッチパネルとして構成されていてもよい。この場合、紙葉類処理装置100は、操作表示部137に表示されるボタンと、操作表示部137に対するオペレータによる操作と、に基づいて、各種の操作入力を検知する。
【0073】
ドア138は、投入部112の投入口を開閉する為のドアである。取出口139は、紙葉類処理装置100により再流通不可と判断された紙葉類7がスタックされる集積部から紙葉類7を取り出す為の構成である。キーボード140は、オペレータによる各種操作入力を受け付ける入力部として機能する。
【0074】
図16は、図15に示す紙葉類処理装置100の構成例について説明するための説明図である。
紙葉類処理装置100は、装置内部に、投入部112、取出部113、吸着ローラ114、搬送路115、検査部116、ゲート120乃至125、排除搬送路126、排除集積部127、集積・結束部128乃至131、裁断部133、及びスタッカ134を備える。また、紙葉類処理装置100は、主制御部151を備える。主制御部151は、紙葉類処理装置100の各部の動作を統合的に制御する。
【0075】
取出部113は、投入部の上部に設けられる。取出部113は、吸着ローラ114を備えている。吸着ローラ114は、投入部112にセットされた紙葉類7を集積方向の上端に接するように設けられている。即ち、吸着ローラ114は、回転することにより、投入部112にセットされた紙葉類7を集積方向の上端から1枚ずつ装置内部に取り込む。吸着ローラ114は、たとえば、1回転するごとに1枚の紙葉類7を取出すように機能する。これにより、吸着ローラ114は、紙葉類7一定のピッチで取出す。吸着ローラ114により取り込まれた紙葉類7は、搬送路115に導入される。
【0076】
搬送路115は、紙葉類7を紙葉類処理装置100内の各部に搬送する搬送手段である。搬送路115は、搬送ベルト5及び図示しない駆動プーリなどを備えている。搬送路115は、図示しない駆動モータ及び駆動プーリにより搬送ベルト5を動作させる。搬送路115は、吸着ローラ114により取り込まれた紙葉類7を搬送ベルト5により一定速度で搬送する。なお、搬送路115における取出部113に近い側を上流側、スタッカ134に近い側を下流側として説明する。
【0077】
取出部113から延びた搬送路115上には、検査部116が設けられている。検査部116は、画像読取装置117、画像読取装置118、こわさ検出装置10、及び厚み検査部119を備えている。検査部116は、紙葉類7の光学的特徴情報、機械的特徴、及び磁気的特長情報を検出する。これにより、紙葉類処理装置100は、紙葉類7の種類、汚棄損、表裏、及び真偽などを検査する。
【0078】
画像読取装置117、及び118は、それぞれ搬送路115を挟んで対面するように設けられている。画像読取装置117、及び118は、搬送路115を搬送される紙葉類7の両面の画像を読み取る。画像読取装置117、及び118は、それぞれ、Charge Coupled Device(CCD)カメラを備える。紙葉類処理装置100は、画像読取装置117、及び118により撮像した画像に基づいて、紙葉類7の表面及び裏面の模様画像を取得する。
【0079】
画像読取装置117、及び118は、読み取った画像を検査部116内の図示しないメモリに一時的に記憶する。紙葉類処理装置100は、このメモリに記憶されている画像を操作入力に応じて操作表示部137に表示する。
【0080】
こわさ検出装置10は、上記したように、紙葉類7の機械的特性を検出する。これにより、こわさ検出装置10は、紙葉類7が疲弊して再流通不可能な損券であるか、再流通可能な正券であるかを判定する。
【0081】
厚み検査部119は、搬送路115を搬送される紙葉類7の厚みを検査する。例えば、検出した厚みが規定値以上である場合、紙葉類処理装置100は、紙葉類7の2枚取りを検出する。
【0082】
また、検査部116は、図示しない磁気センサなどを備えている。磁気センサは、紙葉類7の磁気的な特徴情報を検出する。
【0083】
主制御部151は、画像読取装置117、118、こわさ検出装置10、厚み検査部119、及び磁気センサなどによる検出結果に基づいて、紙葉類7が正券、損券、または排除権であるかを判定する。
【0084】
紙葉類処理装置100は、正券と判定した紙葉類7を集積・結束部128乃至131に搬送する。また、紙葉類処理装置100は、損券と判定した紙葉類7を裁断部133に搬送する。裁断部133は、搬送される損券を裁断する。なお、紙葉類処理装置100は、損券をスタッカ134に搬送し集積してもよい。スタッカ134は、集積した損券が例えば100枚に到達するごとに施封を行う。
【0085】
排除券は、正券及び損券に該当しない紙葉類7である。紙葉類処理装置100は、排除券と判定した紙葉類7を排除集積部127に搬送する。排除券は、例えば、2枚取り券などの搬送異常券、折れ・破れなどの不良券、及び適用外券種・偽券などの判別不能券を含む。
【0086】
検査部116の下流側の搬送路115上には、ゲート120乃至125が順に配設されている。ゲート120乃至125は、それぞれ、主制御部151により制御される。主制御部151は、検査部116による検査の結果に基づいて各ゲート120乃至125の動作を制御する。これにより、主制御部151は、搬送路115を搬送されている紙葉類7を所定の処理部に搬送するように制御する。
【0087】
検査部116の直後に配設されたゲート120は、搬送路115を排除搬送路126に分岐する。即ち、ゲート120は、検査部116による検査の結果、真券ではないと判定された排除券、または、検査部116による検査を行うことができない検査不能券等を排除搬送路126に搬送するように切り替えられる。
【0088】
排除搬送路126の終端部には、排除集積部(排除部)127が設けられている。排除集積部127は、取出部113にて取出した姿勢のまま、上記したような排除券、及び検査不能券を集積する。排除集積部127に集積された紙葉類7は、取出口139から取り出すことができる。
【0089】
また、ゲート121乃至124により分岐される先には、集積・結束部128乃至131(総じて集積結束部132と称する)がそれぞれ設けられている。集積・結束部132には、再流通可能であると判定された紙葉類7が種類及び表裏毎に区別されて集積される。集積・結束部132は、集積した紙葉類7を所定枚数毎に結束して格納する。また、紙葉類処理装置100は、図示しない大束結束部により、所定枚数毎で結束した紙葉類7を複数集積し、結束する。
【0090】
ゲート125により分岐される先には、裁断部133が配設されている。裁断部133は、紙葉類7を裁断して収納する。ゲート125に搬送される紙葉類7は、正規の紙葉類7であり、且つ、再流通が不可能であると判定された紙葉類7(損券)である。
【0091】
また、ゲート125により分岐される他方の搬送路の先には、スタッカ134が配設されている。主制御部151は、損券裁断モードが選択されている場合、紙葉類7を裁断部133に搬送するようにゲート125を制御する。また、主制御部151は、損券裁断モードが選択されていない場合、紙葉類7をスタッカ134に搬送するようにゲート125を制御する。
【0092】
なお、主制御部151は、集積・結束部132に集積された紙葉類7の枚数、及び、裁断部133により裁断された紙葉類7の枚数及び識別情報を逐次記憶する。
【0093】
図17は、図15及び図16に示す紙葉類処理装置100の制御系の構成例について説明するためのブロック図である。
【0094】
紙葉類処理装置100は、主制御部151、検査部116、搬送制御部152、集積・結束制御部153、裁断制御部156、操作表示部137、及びキーボード140などを備える。
【0095】
主制御部151は、紙葉類処理装置100の全体的な制御を司る。主制御部151は、操作表示部137により入力される操作、及び検査部116による検査結果に基づき、搬送制御部152及び集積・結束制御部153を制御する。
【0096】
例えば、操作員は、操作表示部137またはキーボード140により、処理する紙葉類7の券種、枚数、正損判別レベル、供給元の名称、及び処理方法などを入力する。
【0097】
検査部116は、画像読取装置117、及び118、厚み検査部119、こわさ検出装置10、その他のセンサ類154、及びCPU155を備える。
【0098】
画像読取装置117、及び118は、搬送路115を搬送される紙葉類7の両面の画像を読み取る。画像読取装置117、及び118は、例えばCCDなどの受光素子と光学系とを備える。画像読取装置117、及び118は、搬送される紙葉類7に対して光を投光し、反射光または透過光を光学系により受光する。画像読取装置117、及び118は、光学系により受光した光をCCDに結像させ、電気信号(画像)を取得する。
【0099】
主制御部151は、紙葉類7の基準となる画像(基準画像)を記憶部151aに予め記憶する。主制御部151は、紙葉類7から取得した画像と、記憶部151aに記憶される基準画像とを比較することにより、静養類の正損判定及び偽券判定を行う。
【0100】
こわさ検出装置10は、上記したように、こわさ検出装置10は、送信部1により搬送される紙葉類7に対して音波を照射する。こわさ検出装置10は、紙葉類7の表面及び裏面から漏洩するラム波の漏洩波を、受信部2A及び受信部2Bにより受信する。こわさ検出装置10の制御部9は、受信部2A及び2Bにより検出した信号に基づいて、平均値91を算出する。
【0101】
制御部9は、基準値記憶部15に記憶される基準値と、算出した平均値91とを比較し、紙葉類7が正券であるか否かを判定する。これにより、こわさ検出装置10は、紙葉類7が正券として再流通可能であるか否かを判定することができる。
【0102】
厚み検査部119は、搬送路115を搬送される紙葉類7の厚みを検査する。その他のセンサ類154は、例えば、磁気センサなどである。磁気センサは、搬送路115を搬送される紙葉類7から磁気的な特徴情報を検出する。
【0103】
CPU155は、画像読取装置117、118、厚み検査部119、こわさ検出装置10、及びその他のセンサ類154などによる検査の結果に基づいて、搬送路115を搬送される紙葉類7の種類、正損、表裏、及び真偽などを判別する。
【0104】
搬送制御部152は、主制御部151の制御に基づき、取出部113、搬送路115、排除搬送路126、及びゲート120乃至125を制御する。これにより、搬送制御部152は、紙葉類7の取り込み及び搬送を制御する。また、搬送制御部152は、判定した紙葉類7の種類毎に区分する区分処理を行う。即ち、搬送制御部152は、区分処理部として機能する。なお、搬送制御部152は、紙葉類7の種類毎に区分するとしたがこれに限定されない。例えば、こわさ検出装置10の検出結果に基づいて、紙葉類7を疲弊度毎に区分して処理してもよい。
【0105】
集積・結束制御部153は、主制御部151の制御に基づき、前記排除集積部127及び集積・結束部128〜131を制御する。これにより、集積・結束制御部153は、紙葉類7の集積、及び結束の制御を行なう。
【0106】
裁断制御部156は、主制御部151の制御に基づき、裁断部133の動作を制御する。これにより、裁断部133は、搬送される紙葉類7の裁断を行う。
【0107】
上記したように、本発明の一実施形態に係るこわさ検出装置10を備える紙葉類処理装置100は、紙葉類7に対してこわさ検出装置10により検査を行う。こわさ検出装置10は、紙葉類7の機械的特性を検査し、再流通可能であるか否かを判定する。紙葉類処理装置100は、判定結果に基づいて紙葉類7を適切に処理することができる。
【0108】
なお、この発明は、上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具現化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。更に、異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0109】
1…送信部、2…受信部、3A…音波、3B…ラム波、3C…漏洩波、3D…漏洩波、3E…透過波、5…搬送ベルト、7…紙葉類、8…インク、9…制御部、10…検出装置、11…ゲイン調整回路、12…アナログディジタル変換器、13…平均化処理部、14…判定部、15…基準値記憶部、100…紙葉類処理装置、112…投入部、113…取出部、114…吸着ローラ、115…搬送路、116…検査部、117…画像読取装置、118…画像読取装置、119…厚み検査部、151…主制御部、151a…記憶部、152…搬送制御部、153…集積・結束制御部、154…他のセンサ類、155…CPU、156…裁断制御部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送される紙葉類に対して音波を送信してラム波を励起させる送信手段と、
前記紙葉類の表面の検出点から射出されるラム波の漏洩波を検出する第1の受信手段と、
前記紙葉類の裏面の検出点から射出されるラム波の漏洩波を検出する第2の受信手段と、
前記第1の受信手段により検出する信号と、前記第2の受信手段により検出する信号とに基づいて比較データを算出する比較データ算出手段と、
前記比較データ算出手段により算出した比較データと、予め設定される基準値とを比較し、比較結果に基づいて前記紙葉類が正券であるか否かを判定する正損判定手段と、
を具備することを特徴とするこわさ検出装置。
【請求項2】
前記第1の受信手段及び第2の受信手段は、前記第1の受信手段及び第2の受信手段の検出点が前記送信手段からそれぞれ同じ距離だけ離隔されるように設置されることを特徴とする請求項1に記載のこわさ検出装置。
【請求項3】
前記比較データ算出手段は、前記第1の受信手段により検出する信号と、前記第2の受信手段により検出する信号との平均値を比較データとして算出することを特徴とする請求項2に記載のこわさ検出装置。
【請求項4】
前記第1の受信手段により検出する信号のゲイン調整を行う第1のゲイン調整手段と、
前記第2の受信手段により検出する信号のゲイン調整を行う第2のゲイン調整手段と、
をさらに具備し、
前記比較データ算出手段は、前記第1のゲイン調整手段によりゲイン調整した信号と、前記第2のゲイン調整手段によりゲイン調整した信号との平均値を比較データとして算出することを特徴とする請求項2に記載のこわさ検出装置。
【請求項5】
前記正損判定手段は、前記比較データ算出手段により算出した比較データと、予め設定される基準値とを比較し、前記比較データ算出手段により算出した比較データが前記予め設定される基準値未満である場合、前記紙葉類を損券と判定することを特徴とする請求項2に記載のこわさ検出装置。
【請求項6】
前記第1の受信手段及び第2の受信手段は、前記紙葉類が搬送される搬送領域の全体から漏洩波を検出することを特徴とする請求項2に記載のこわさ検出装置。
【請求項7】
前記第1の受信手段及び第2の受信手段は、前記紙葉類の搬送方向と直交する方向に複数配列される受信センサを具備することを特徴とする請求項6に記載のこわさ検出装置。
【請求項8】
前記第1の受信手段及び第2の受信手段は、前記紙葉類の搬送方向と直交する方向に前記紙葉類が搬送される搬送領域以上の長さを有する受信センサを具備することを特徴とする請求項6に記載のこわさ検出装置。
【請求項9】
前記紙葉類を挟んで前記送信手段と対向する位置に設けられ、前記送信手段から射出されて前記紙葉類を透過する透過波を検出する第3の受信手段と、
前記第3の受信手段により検出する信号に基づいて前記紙葉類の重なり、及び前記紙葉類に異物が貼付されていること、を検知する検知手段と、
をさらに具備することを特徴とする請求項1に記載のこわさ検出装置。
【請求項10】
前記紙葉類を挟んで前記送信手段と対向する位置に設けられ、前記送信手段から射出されて前記紙葉類を透過する透過波を検出する第3の受信手段をさらに具備し、
前記正損判定手段は、前記第3の受信手段により検出する信号と、前記比較データ算出手段により算出した比較データとに基づいて、前記紙葉類の疲弊度を判定し、判定した疲弊度に基づいて前記紙葉類が正券であるか否かを判定する、
ことを特徴とする請求項1に記載のこわさ検出装置。
【請求項11】
搬送される紙葉類に対して音波を送信してラム波を励起させ、
前記紙葉類の表面の検出点から射出されるラム波の漏洩波を検出し、
前記紙葉類の裏面の検出点から射出されるラム波の漏洩波を検出し、
前記紙葉類の表面から検出する信号と、前記紙葉類の裏面から検出する信号とに基づいて比較データを算出し、
前記算出した比較データと、予め設定される基準値とを比較し、比較結果に基づいて前記紙葉類が正券であるか否かを判定する、
ことを特徴とするこわさ検出方法。
【請求項12】
紙葉類を搬送する搬送部と、
前記搬送部により搬送される紙葉類に対して音波を送信してラム波を励起させる送信手段と、
前記紙葉類の表面の検出点から射出されるラム波の漏洩波を検出する第1の受信手段と、
前記紙葉類の裏面の検出点から射出されるラム波の漏洩波を検出する第2の受信手段と、
前記第1の受信手段により検出する信号と、前記第2の受信手段により検出する信号とに基づいて比較データを算出する比較データ算出手段と、
前記比較データ算出手段により算出した比較データと、予め設定される基準値とを比較し、比較結果に基づいて前記紙葉類が正券であるか否かを判定する正損判定手段と、
前記正損判定手段による判定結果に基づいて、前記紙葉類を区分する区分処理部と、
を具備することを特徴とする紙葉類処理装置。
【請求項1】
搬送される紙葉類に対して音波を送信してラム波を励起させる送信手段と、
前記紙葉類の表面の検出点から射出されるラム波の漏洩波を検出する第1の受信手段と、
前記紙葉類の裏面の検出点から射出されるラム波の漏洩波を検出する第2の受信手段と、
前記第1の受信手段により検出する信号と、前記第2の受信手段により検出する信号とに基づいて比較データを算出する比較データ算出手段と、
前記比較データ算出手段により算出した比較データと、予め設定される基準値とを比較し、比較結果に基づいて前記紙葉類が正券であるか否かを判定する正損判定手段と、
を具備することを特徴とするこわさ検出装置。
【請求項2】
前記第1の受信手段及び第2の受信手段は、前記第1の受信手段及び第2の受信手段の検出点が前記送信手段からそれぞれ同じ距離だけ離隔されるように設置されることを特徴とする請求項1に記載のこわさ検出装置。
【請求項3】
前記比較データ算出手段は、前記第1の受信手段により検出する信号と、前記第2の受信手段により検出する信号との平均値を比較データとして算出することを特徴とする請求項2に記載のこわさ検出装置。
【請求項4】
前記第1の受信手段により検出する信号のゲイン調整を行う第1のゲイン調整手段と、
前記第2の受信手段により検出する信号のゲイン調整を行う第2のゲイン調整手段と、
をさらに具備し、
前記比較データ算出手段は、前記第1のゲイン調整手段によりゲイン調整した信号と、前記第2のゲイン調整手段によりゲイン調整した信号との平均値を比較データとして算出することを特徴とする請求項2に記載のこわさ検出装置。
【請求項5】
前記正損判定手段は、前記比較データ算出手段により算出した比較データと、予め設定される基準値とを比較し、前記比較データ算出手段により算出した比較データが前記予め設定される基準値未満である場合、前記紙葉類を損券と判定することを特徴とする請求項2に記載のこわさ検出装置。
【請求項6】
前記第1の受信手段及び第2の受信手段は、前記紙葉類が搬送される搬送領域の全体から漏洩波を検出することを特徴とする請求項2に記載のこわさ検出装置。
【請求項7】
前記第1の受信手段及び第2の受信手段は、前記紙葉類の搬送方向と直交する方向に複数配列される受信センサを具備することを特徴とする請求項6に記載のこわさ検出装置。
【請求項8】
前記第1の受信手段及び第2の受信手段は、前記紙葉類の搬送方向と直交する方向に前記紙葉類が搬送される搬送領域以上の長さを有する受信センサを具備することを特徴とする請求項6に記載のこわさ検出装置。
【請求項9】
前記紙葉類を挟んで前記送信手段と対向する位置に設けられ、前記送信手段から射出されて前記紙葉類を透過する透過波を検出する第3の受信手段と、
前記第3の受信手段により検出する信号に基づいて前記紙葉類の重なり、及び前記紙葉類に異物が貼付されていること、を検知する検知手段と、
をさらに具備することを特徴とする請求項1に記載のこわさ検出装置。
【請求項10】
前記紙葉類を挟んで前記送信手段と対向する位置に設けられ、前記送信手段から射出されて前記紙葉類を透過する透過波を検出する第3の受信手段をさらに具備し、
前記正損判定手段は、前記第3の受信手段により検出する信号と、前記比較データ算出手段により算出した比較データとに基づいて、前記紙葉類の疲弊度を判定し、判定した疲弊度に基づいて前記紙葉類が正券であるか否かを判定する、
ことを特徴とする請求項1に記載のこわさ検出装置。
【請求項11】
搬送される紙葉類に対して音波を送信してラム波を励起させ、
前記紙葉類の表面の検出点から射出されるラム波の漏洩波を検出し、
前記紙葉類の裏面の検出点から射出されるラム波の漏洩波を検出し、
前記紙葉類の表面から検出する信号と、前記紙葉類の裏面から検出する信号とに基づいて比較データを算出し、
前記算出した比較データと、予め設定される基準値とを比較し、比較結果に基づいて前記紙葉類が正券であるか否かを判定する、
ことを特徴とするこわさ検出方法。
【請求項12】
紙葉類を搬送する搬送部と、
前記搬送部により搬送される紙葉類に対して音波を送信してラム波を励起させる送信手段と、
前記紙葉類の表面の検出点から射出されるラム波の漏洩波を検出する第1の受信手段と、
前記紙葉類の裏面の検出点から射出されるラム波の漏洩波を検出する第2の受信手段と、
前記第1の受信手段により検出する信号と、前記第2の受信手段により検出する信号とに基づいて比較データを算出する比較データ算出手段と、
前記比較データ算出手段により算出した比較データと、予め設定される基準値とを比較し、比較結果に基づいて前記紙葉類が正券であるか否かを判定する正損判定手段と、
前記正損判定手段による判定結果に基づいて、前記紙葉類を区分する区分処理部と、
を具備することを特徴とする紙葉類処理装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2011−107775(P2011−107775A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−259218(P2009−259218)
【出願日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
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