説明

ご飯の保存性向上に寄与する茶成分抽出製法

【課題】 安全性の確認された食品から抽出した成分を、ご飯を一週間程度常温保存するための抗カビ・抗バクテリア剤として提供する。
【解決手段】 茶葉を構成する成分の内、エピガロカテキンやエピガロカテキンガレート、エピカテキン、エピカテキンガレートなどのカテキン類からなる有効成分の混合物を抽出濃縮し、米を炊飯する前または炊飯後に添加することにより、炊飯しても死滅していないカビ胞子の増殖を抑えるとともに空中浮遊バクテリアの付着増殖を抑制する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、常温保存するご飯に繁殖するカビやバクテリア等の有害微生物の増殖を抑えることにより、保存性を高めるために添加する食品由来の添加剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
米を炊飯したご飯は、我国はもとより東アジアの主食に位置するが、β化しやすいと共にカビやバクテリア等の有害微生物の繁殖による腐敗が短時間で進むため、保存性が悪いという弱点を有する。ご飯の食感を保ちながらカビやバクテリア等の有害微生物の増殖を抑える食品由来の添加物の開発が待たれているところであった。
【0003】
一般的には、脂肪を添加することにより空中浮遊カビやバクテリア等の有害微生物の付着を減少させるという方法が行われているが、食感が変化するだけでなく、常温保存の場合にはカビやバクテリア等の有害微生物増殖を1日程度伸ばすに留まるため、業務用のおにぎりや弁当程度の普及に留まっている。
【0004】
従来開発され使用が認可されている防腐剤を添加する方法も行われているが、健康への影響が危惧されることから、消費者に敬遠され、使用が自粛される傾向にある。
【0005】
我国で古代より利用されてきた茶葉に含まれる成分の中から、ご飯に付着増殖するカビやバクテリア等の有害微生物の増殖を抑制する成分を抽出し、ご飯の保存性を高める技術が本発明である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−304761号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】村松敬一郎著 「茶の科学」朝倉書店 2002年 P.161−167
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
解決しようとする問題点は、摂氏100℃で炊飯し、無菌状態で保存しても繁殖するカビやバクテリア等の有害微生物の繁殖抑制に有効な成分を、自然食品から抽出する方法が確立されていない点である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、請求項に記載の発明により、茶葉からカビやバクテリア等の有害微生物の繁殖抑制に有効な成分を抽出し、炊飯前の米に混入して炊飯する、または炊飯後のご飯に混入することを主要な特徴とする。
【0010】
第1の発明は、茶葉を食用エタノール抽出する工程を含むことを特徴とする抗カビ・抗バクテリア組成物の抽出製造方法に関するものである。
【0011】
第2の発明は、前項記載の方法により得られ、エピガロカテキンガレートおよびエピカテキンの一方または双方を含むことを特徴とする抗カビ・抗バクテリア組成物に関するものである。
【0012】
第3の発明は、茶葉から抽出したエピガロカテキンガレートやエピカテキンなどの有効成分の混合物を添加することにより、ご飯の保存性を向上する方法に関するものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明により加工したご飯は、25℃程度の室温環境下において一週間程度の保存性を有するため、ご飯またはご飯加工物を携行し、常時食することができるという利点を有する。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明により、ご飯を加工した携行可能な形態へと加工または非加工状態として、常時食することが出来る状態に長期間保つという目的を、古来より食物として利用してきた茶葉から抽出した成分を微量添加することにより可能とした。
【0015】
茶葉からエピガロカテキンガレートやエピカテキンなどの抗カビ・抗バクテリア有効成分を抽出するために、前処理工程として、茶葉を出来るだけ粉砕する。望ましくは、抹茶状とする。
【0016】
茶葉からエピガロカテキンガレートやエピカテキンなどの抗カビ・抗バクテリア有効成分を抽出するために、溶媒として食用エタノールを用いる。
【0017】
食用エタノール100ミリリットルに対し、2g〜20gの茶葉を浸漬し、常温で20分程度放置する。
【0018】
前項で得られた溶液をろ過して得られた溶液を、湯煎または常温乾燥させることにより、10倍程度の濃縮液を得る。
【0019】
前項で得られた濃縮液を、米重量比1%程度添加して通常炊飯する。または、通常炊飯したご飯に米重量比1%程度の濃縮液を添加して混合する。
【実施例】
【0020】
抹茶10gを食用エタノール100ミリリットルに20分間浸漬した後、ろ過して得た抹茶抽出溶液から食用エタノールを常温乾燥させて、濃縮液10ミリリットルを得た。
【0021】
前項により得られた濃縮液を、エピガロカテキンガレートを標準物質として高速液体クロマトグラフィーを用いて分析したところ、エピガロカテキンガレートおよびエピカテキンを含む数種のカテキン類混合物であることがわかった。
【0022】
本発明による茶葉抽出濃縮液を米重量比1%添加し、炊飯したご飯を25℃程度の室温環境下で保存した場合、7日後においてもカビの発生が見られず、ご飯保存の効果が見られた。
【0023】
本発明による抹茶抽出濃縮液を、炊飯したご飯重量比1%添加攪拌し、25℃程度の室温環境下で保存した場合、4日後においてもカビの発生が見られず、ご飯保存の効果が見られた。
【0024】
本発明によるカビやバクテリア等の有害微生物抑止剤を利用する場合、米粒全ての表面および内部まで浸透させ被膜することによりカビやバクテリア等の有害微生物繁殖抑止効果が得られており、米炊飯による水分との接触面を被膜する手法であれば炊飯方法および添加方法は問わない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
茶葉を食用エタノール抽出する工程を含むことを特徴とする抗カビ・抗バクテリア組成物の抽出製造方法。
【請求項2】
請求項1記載の方法により得られ、エピガロカテキンガレートおよびエピカテキンの一方または双方を含むことを特徴とする抗カビ・抗バクテリア組成物。
【請求項3】
茶葉から抽出したエピガロカテキンガレートやエピカテキンなどの有効成分の混合物を添加することにより、ご飯の保存性を向上させる保存加工方法。

【公開番号】特開2011−155936(P2011−155936A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−21830(P2010−21830)
【出願日】平成22年2月3日(2010.2.3)
【出願人】(308032770)
【Fターム(参考)】