説明

さく井工事用の作業装置

【課題】 櫓を組まずに、安全かつ迅速にさく井工事を行うことができるようにする、さく井工事用の作業装置を提供する。
【解決手段】さく井工事用の作業装置において、2本の側方フレームを平行に配置し、各側方フレームの両端に脚を設け、2本の側方フレーム間に中央フレームを固定し、中央フレームにアームベースとボーリングマシンベースを設定し、アームベースにアームを設け、アームを油圧で作動させてアームの長さと傾斜角度を調整する油圧作動手段を設け、ボーリングマシンベースにボーリングマシンとワイヤ巻上手段を設ける。吊上ワイヤが、ワイヤ巻上手段の巻上ドラムに巻上可能に装着されているとともに、アームの先端部で案内されており、ボーリングマシン付近で高さレベルを調整可能に吊上滑車を保持している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、さく井工事用の作業装置、とくに装置全体を搬送できる、さく井工事用の作業装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来は、温泉のさく井工事前に、まず櫓を組み、資材を搬入し、さく井をするための機械を組み立てていた。それらの工程に2〜3日、作業員が2〜4名ほど必要であった。危険な作業を伴うこともあった。
【0003】
従来は、温泉のさく井工事をするにあたり、櫓を立てる場所の土地を水平に整地する必要があった。水平地にするバクホーと作業員2〜3名が必要であった。さらに、櫓組立て移動クレーン車と作業員2〜3名が必要であった。
【0004】
従来のさく井工事のやぐら台では、1000Kg前後の資材を櫓のそばに寄せ、吊り上げる時に櫓に衝突しないように人力で支えていた。
【0005】
また、作業員が高い櫓に登る作業は、危険と無駄が多かった。
【0006】
特表平9-501504号公報に示されているように、ボーリング用の櫓は、多数のロッドからなるロッド列とボーリングドリルを備えたボーリング装置一式を支えている。ボーリング装置一式は、地下のさく井中に伸びていて、櫓の低部に配置された回転テーブルによって回転する。
【特許文献1】特表平9-501504号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、櫓を組まずに、安全かつ迅速にさく井工事を行うことができるようにする、さく井工事用の作業装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の解決手段を例示すると、次のとおりである。
【0009】
(1)2本の側方フレームを平行に配置し、各側方フレームの両端に脚を設け、2本の側方フレーム間に中央フレームを固定し、中央フレームにアームベースとボーリングマシンベースを設定し、アームベースにアームを設け、アームを油圧で作動させてアームの長さと傾斜角度を調整する油圧作動手段を設け、ボーリングマシンベースにボーリングマシンとワイヤ巻上手段を設け、吊上ワイヤが、ワイヤ巻上手段の巻上ドラムに巻上可能に装着されているとともに、アームの先端部で案内されており、ボーリングマシン付近で高さレベルを調整可能に吊上滑車を保持していることを特徴とする、さく井工事用の作業装置。
【0010】
(2)吊上ワイヤが、主吊上ワイヤと副吊上ワイヤで構成されており、主吊上ワイヤに主吊上滑車が取りつけられ、副吊上ワイヤに副吊上滑車が取りつけられていることを特徴とする前述のさく井工事用の作業装置。
【0011】
(3)アームは、長さ調整のためにテレスコープ式に伸縮自在に構成されており、かつ、傾斜角度調整のために基端部がアーム支柱に回転可能に支持されており、油圧シリンダ手段がアームと中央フレームとの成す角度を任意の角度に調整することを特徴とする前述のさく井工事用の作業装置。
【0012】
(4)アームは、中央フレームの真上領域のみで任意の傾斜角度に調整され、旋回によって中央フレームの真上領域から外れることがない、前述のさく井工事用の作業装置。
【0013】
(5)各脚の下方部にレベル調整ジャッキが設けられていることを特徴とする、前述のさく井工事用の作業装置。
【0014】
(6)作業装置全体が搬送可能に構成されていることを特徴とする、前述のさく井工事用の作業装置。
【0015】
(7)各側方フレームがアウトリガーシャフトであり、各脚がアウトリガーであることを特徴とする、前述のさく井工事用の作業装置。
【0016】
(8)各アウトリガーが、アウトリガーシャフトの両端にその軸心方向において伸縮可能に配装されていることを特徴とする前述のさく井工事用の作業装置。
【0017】
(9)油圧作動手段が、作動オイルタンクと、作動オイルタンクに接続された油圧ポンプと、油圧ポンプの油圧を操作する油圧操作ハンドルを有することを特徴とする、前述のさく井工事用の作業装置。
【0018】
(10)アームの吊上荷重に対して油圧シリンダ手段の作動がアンバランスになったことを検知して警報を発する警報装置を設けたことを特徴とする、前述のさく井工事用の作業装置。
【0019】
(11)2本の側方フレームと中央フレームが、平面で見て工の字形に構成されていることを特徴とする、前述のさく井工事用の作業装置。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明の1つの最良の形態においては、2本のアウトリガーシャフト等の側方フレームを平行に配置し、各アウトリガーシャフト等の側方フレームの両端にアウトリガー等の脚を設け、2本のアウトリガーシャフト等の側方フレーム間にシャーシとして機能する中央フレームを設ける。中央フレームには、アームベースとボーリングマシンベースを設定する。
【0021】
アームベースには、アームを設ける。さらに、アームを油圧で作動させてアームの長さと傾斜角度を調整する油圧作動手段を設ける。
【0022】
ボーリングマシンベースには、ボーリングマシンとワイヤ巻上手段を設ける。
【0023】
吊上ワイヤが、ワイヤ巻上手段の巻上ドラムに巻上可能に装着されているとともに、アームの先端部で案内されており、ボーリングマシン付近で高さレベルを調整可能に吊上滑車を保持している。
【0024】
吊上ワイヤが、主吊上ワイヤと副吊上ワイヤで構成されている。主吊上ワイヤには、主吊上滑車が取りつけられている。副吊上ワイヤには、副吊上滑車が取りつけられている。
【0025】
アームは、とくに先端領域において、長さ調整のために、3段式のムーブでテレスコープ式に伸縮自在に構成されている。しかも、傾斜角度調整のために、アームの基端部がアーム支柱に回転可能に支持されている。そして、油圧シリンダ手段によって、アームと中央フレーム(シャーシ)との成す角度を任意の角度に調整するようになっている。
【0026】
アームは、中央フレームの真上領域のみで任意の傾斜角度に調整され、旋回によって中央フレームの真上領域から外れることがない。それゆえ、アームと中央フレーム(シャーシ)との成す角度を任意の角度に調整するとき、アームは、高い安定性を有している。
【0027】
好ましくは、各脚(アウトリガー)の下方部にレベル調整ジャッキが設けられている。
【0028】
また、作業装置全体が搬送可能に構成されている。作業装置は、予め工場等で組み立てる。組み立て状態の作業装置をトラック等で工事の現場に搬送する。好ましくは、その搬送の際は、ボーリングマシンベースには何も設置せず、工事現場で、ボーリングマシンとワイヤ巻上手段をボーリングマシンベースに取りつける。
【0029】
各脚(各アウトリガー)が、各側方フレーム(アウトリガーシャフト)の両端にその軸心方向において伸縮可能に配装されていることが好ましい。
【0030】
油圧作動手段は、作動オイルタンクと、作動オイルタンクに接続された油圧ポンプと、油圧ポンプの油圧を操作する油圧操作ハンドルを有する。
【0031】
アームの吊上荷重に対して油圧シリンダ手段の作動がアンバランスになったことを検知して警報を発する警報装置を設ける。
【0032】
2本の側方フレーム(アウトリガーシャフト)と中央フレームが、平面で見て工の字形に構成されていることが好ましい。
【0033】
アームの操作高さは最高14mとする。そして、アームは、最小に畳んだ状態で、幅2m、長さ5m、高さ2mとし、総重量は2.9tとする。このような寸法及び重量の作業装置は、4t車での移動が容易である。
【0034】
油圧作動手段と連動して警報がでる仕組みにすると、安全性が格段に向上する。
【0035】
各脚の下方部にレベル調整ジャッキが設けられていると、例えば、油圧3.5KWで4本の脚を交互に高さ調整することが可能であるため、あらゆる形状の土地で整地の必要がなくなる。
【0036】
アームの全長を伸縮自在に延ばすように操作することにより、1000Kg前後のロッド等の資材の吊り上げや目的位置への移動が容易になる。
【0037】
さく井機のウィンチ(巻上ドラム)は通常1台でよいが、それを2台に変えてアームの先端に滑車を3台にすると、ワイヤを2本にして交互に吊ることが出来るようになる。
【0038】
本発明の作業装置を使用すれば、次のような効果が得られる。
【0039】
(1)地下さく井工事を施工するにあたり、土地の整地をする必要がなくなる。その結果、水平地にする機械(バクホー)と作業員2〜3人が不必要となる。
【0040】
(2)クレーン用櫓立ての作業が不要となる。その結果、移動クレーン車と作業員2〜3人が不要となる。
【0041】
(3)スラムマット工法を利用して、1日30〜40mの深さを堀削することが可能になる。
【0042】
(4)地下100mのさく井工事日数について、1/3〜1/2の短縮が可能になる。
【実施例】
【0043】
以下、図面を参照して、本発明の好適な実施例を説明する。
【0044】
図1〜2において、側方フレームとして機能するアウトリガーシャフト10を2本平行に配置し、各側方フレーム(アウトリガーシャフト)10の両端に脚12を設ける。これらの脚12は、アウトリガーとして構成されており、側方フレームつまりアウトリガーシャフト10の長さ方向に約1m伸縮可能になっている。
【0045】
2本の側方フレーム10間に中央フレーム14を溶接等で固定する。中央フレーム14にアームベース16とボーリングマシンベース18を設定する。
【0046】
アームベース16には、アーム20を設ける。アームを油圧で作動させてアーム20の長さと傾斜角度を調整する油圧作動手段22を設ける。
【0047】
ボーリングマシンベース18には、ボーリングマシン26とワイヤ巻上手段28を設ける。
【0048】
吊上ワイヤ30が、ワイヤ巻上手段28の巻上ドラム32に巻上可能に装着されている。さらに、吊上ワイヤ30は、アーム20の先端部36で案内されており、ボーリングマシン26付近で高さレベルを調整可能に1つ以上の吊上滑車を保持している。
【0049】
吊上ワイヤ30は、主吊上ワイヤ38と副吊上ワイヤ40で構成されている。主吊上ワイヤ38に主吊上滑車42が取りつけられ、副吊上ワイヤ40に副吊上滑車44が取りつけられている。
【0050】
アーム20は、長さ調整のために3段のブーム46によってテレスコープ式に伸縮自在に構成されており、最大伸長が14mになる。さらに、アーム20の傾斜角度調整のために基端部20aがアーム支柱50に回転可能に支持されている。油圧作動手段22の油圧シリンダ手段52の作動によって、アーム20と中央フレーム14との成す角度を任意の角度に調整する。
【0051】
アーム20は、中央フレーム14の真上領域のみで任意の傾斜角度に調整される。アーム20は、旋回によって中央フレーム14の真上領域から外れることがない。そのため、安全性が良好となる。
【0052】
各脚12(アウトリガー)の下方部にレベル調整ジャッキ58が設けられており、最大500mmの高さレベル調整が可能になっている。
【0053】
作業装置全体が搬送可能に構成されている。例えば、ボーリングマシン26とワイヤ巻上手段28は、さく井工事の現場でボーリングマシンベース18に取りつける。作業装置の他の構成要素は、すべて予め工場等で組み立てるのが好ましい。
【0054】
各アウトリガー12をアウトリガーシャフト10の両端にその軸心方向において伸縮させ配装し、かつ、レベル調整ジャッキ58でレベル調整をして、側方フレーム(アウトリガーシャフト10)と中央フレーム14とが水平状態になるように設定する。
【0055】
油圧作動手段22は、作動オイルタンク62と、作動オイルタンク62に接続された油圧ポンプ64と、油圧ポンプ64の油圧を操作する油圧操作ハンドル66を有する。
【0056】
また、アーム20の吊上荷重に対して油圧シリンダ手段52の作動がアンバランスになったことを検知して警報を発する警報装置70が設けられている。
【0057】
図2によく示されているように、2本の側方フレーム10(アウトリガーシャフト)と中央フレーム14が、平面で見て工の字形に構成されている。
【0058】
前述のさく井工事用の作業装置の使用法の一例について説明する。
【0059】
2本の中央フレームつまりアウトリガーシャフト10と中央フレーム14とが全体的に水平状態になるように、アウトリガー12とレベル調整ジャッキ38とを調整する。
【0060】
ボーリングマシン26とワイヤ巻上手段28をボーリングマシンベース18にボルト等で固定する。
【0061】
ワイヤ巻上手段28の巻上ドラム32にワイヤ38、40を巻きつける。
【0062】
油圧操作ハンドル66を操作して、アーム20の長さと傾斜角度を調整する。例えば、図3に示すように、アーム20の長さと傾斜角度を調整する。
【0063】
ボーリングマシン26とワイヤ巻上手段28を作動して、多数のロッド(図示せず)を地下のさく井中に1本ずつ伸ばしていく。
【0064】
温泉のさく井工事の場合、各ロッドは、1本6mで、外径73mm、内径50mmのパイプ形状をしており、多数のロッドをテーパー状のオネジとメネジで互いに結合することによって列をなすように構成する。その際、各ロッドは、周知のように、チャックによってはさまれて固定される。
【0065】
列をなすように連結されて、さく井中に伸びたロッド列は、さく井の所望位置まで降下したあと、いったん主吊上ワイヤ38の吊上滑車42によって約6mの高さまで吊り上げられる。そのあと、副吊上ワイヤ40の吊上滑車44によって新しい別のロッドをロッド列に追加して、再びボーリングマシン26によって所定のボーリング作業をする。
【0066】
以上の工程をくり返すことによって、ロッド列を所望の長さにしていく。
【0067】
図4は、本発明の別の実施例を示している。
【0068】
図4の実施例においては、吊上ワイヤ80は1本であり、吊上滑車82は1個である。
【0069】
これらの吊上ワイヤ80と吊上滑車82に関連する構成を除けば、図4の実施例は、図1〜3の実施例と実質的に同じ構成になっているので、詳細な説明は省略する。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明によるさく井工事用の作業装置の側面図。
【図2】図1に示すさく井工事用の作業装置の平面図。
【図3】図1〜2に示す作業装置のアームの傾斜角度の変化を示す説明図。
【図4】本発明の別の実施例によるさく井工事用の作業装置を示す側面図。
【符号の説明】
【0071】
10 側方フレーム(アウトリガーシャフト)
12 脚(アウトリガー)
14 中央フレーム
16 アームベース
18 ボーリングマシンベース
20 アーム
22 油圧作動手段
26 ボーリングマシン
28 ワイヤ巻上手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2本の側方フレームを平行に配置し、各側方フレームの両端に脚を設け、2本の側方フレーム間に中央フレームを固定し、中央フレームにアームベースとボーリングマシンベースを設定し、アームベースにアームを設け、アームを油圧で作動させてアームの長さと傾斜角度を調整する油圧作動手段を設け、ボーリングマシンベースにボーリングマシンとワイヤ巻上手段を設け、吊上ワイヤが、ワイヤ巻上手段の巻上ドラムに巻上可能に装着されているとともに、アームの先端部で案内されており、ボーリングマシン付近で高さレベルを調整可能に吊上滑車を保持していることを特徴とする、さく井工事用の作業装置。
【請求項2】
吊上ワイヤが、主吊上ワイヤと副吊上ワイヤで構成されており、主吊上ワイヤに主吊上滑車が取りつけられ、副吊上ワイヤに副吊上滑車が取りつけられていることを特徴と+する、請求項1に記載のさく井工事用の作業装置。
【請求項3】
アームは、長さ調整のためにテレスコープ式に伸縮自在に構成されており、かつ、傾斜角度調整のために基端部がアーム支柱に回転可能に支持されており、油圧シリンダ手段がアームと中央フレームとの成す角度を任意の角度に調整することを特徴とする、請求項1又は2に記載のさく井工事用の作業装置。
【請求項4】
アームは、中央フレームの真上領域のみで任意の傾斜角度に調整され、旋回によって中央フレームの真上領域から外れることがない、請求項1〜3のいずれか1項に記載のさく井工事用の作業装置。
【請求項5】
各脚の下方部にレベル調整ジャッキが設けられていることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載のさく井工事用の作業装置。
【請求項6】
作業装置全体が搬送可能に構成されていることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載のさく井工事用の作業装置。
【請求項7】
各側方フレームがアウトリガーシャフトであり、各脚がアウトリガーであることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載のさく井工事用の作業装置。
【請求項8】
各アウトリガーが、アウトリガーシャフトの両端にその軸心方向において伸縮可能に配装されていることを特徴とする請求項7に記載のいずれか1項に記載のさく井工事用の作業装置。
【請求項9】
油圧作動手段が、作動オイルタンクと、作動オイルタンクに接続された油圧ポンプと、油圧ポンプの油圧を操作する油圧操作ハンドルを有することを特徴とする、請求項1〜8のいずれか1項に記載のさく井工事用の作業装置。
【請求項10】
アームの吊上荷重に対して油圧シリンダ手段の作動がアンバランスになったことを検知して警報を発する警報装置を設けたことを特徴とする、請求項1〜9のいずれか1項に記載のさく井工事用の作業装置。
【請求項11】
2本の側方フレームと中央フレームが、平面で見て工の字形に構成されていることを特徴とする、請求項1〜10のいずれか1項に記載のさく井工事用の作業装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−24704(P2010−24704A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−187004(P2008−187004)
【出願日】平成20年7月18日(2008.7.18)
【出願人】(507264516)有限会社 村田組 (1)
【Fターム(参考)】