説明

し渣分離脱水機

【課題】し渣排出部での付着、乾燥固形化、並びにその成長を防止するようにしたし渣分離脱水機を提供すること。
【解決手段】周面より排水するように水切スクリーン部11を形成した円筒ケーシング1と、この円筒ケーシング1の内部に挿通するスクリュー2とを互いに逆方向に回転駆動するようにし、かつ円筒ケーシング1内に導入された汚水中のし渣を水切スクリーン部11で捕捉し、スクリュー2の回転によりし渣を加圧、脱水して排出するようにしたし渣分離脱水機Aにおいて、し渣排出部14のスクリュー回転軸21に、排出される脱水し渣をほぐしつつ円周方向へ拡散させて掻き落とすように形成したし渣掻き落とし盤4を配設する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、し渣分離脱水機に関し、特に、汚水の固液分離を行うようにした円筒ケーシングと該円筒ケーシング内に挿通し、し渣を搬送するようにしたスクリューとを1台の駆動装置にて互いに逆回転させて、汚水中に含まれる夾雑物(以下、「し渣」と言う。)の固液分離及び脱水を効率的に行うようにしたし渣分離脱水機において、脱水し渣の排出部において乾燥固形化する脱水し渣を確実に、かつスムースに排出できるようにしたし渣分離脱水機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、汚水中に含まれる夾雑物(し渣)を汚水より分離し、該し渣を脱水する装置として、特許文献1に開示されるし渣分離脱水機が本件出願人によって提案されている。
【0003】
ところで、従来のし渣分離脱水機は、図4に示すように、汚水の固液分離を行うようにした円筒形で、一端側を少し小径となるよう円錐形円筒部とした円筒ケーシング1内に固液分離したし渣を送り出すように形成したし渣搬送用のスクリュー2を挿通し、円筒ケーシングの円錐形円筒部側より駆動モータM、駆動機構Gを介して円筒ケーシング1、スクリュー2を互いに逆回転するよう駆動し、かつスクリュー回転軸の反駆動側端部より汚水を供給し、駆動側に向かってし渣を含む汚水を搬送するようにすることで、汚水とし渣とを分離し、汚水を水切スクリーン部から排水しつつし渣分を駆動側へ搬送する際、水切スクリーン部の端部に配設した背圧抵抗板3の作用にて加圧して脱水し、その後反駆動側端部に形成したし渣排出口15より本体ケーシングKの外部へ排出するように構成している。
【0004】
また、円筒ケーシングの円筒部を汚水とし渣とを分離する水切スクリーン部11とし、この円筒部の反駆動側端に連接する円筒テーパ部で背圧抵抗板3により加圧するようにして脱水するようにしているが、この背圧抵抗板3にゴム板を採用することで、脱水に要する背圧力を必要最小限に抑えることで、所謂絞りすぎを防ぎ、し渣の不必要な固形化を防止して、このテーパ部に連接する圧密部を経て排出部より脱水し渣を機外へ排出するようにしている。
【0005】
しかし、し渣排出部より排出されるべき脱水し渣が、し渣の性状等、何らかの理由でし渣分離脱水機内で所定時間以上、長時間滞留した場合、該脱水し渣が必要以上に圧密されてその排出部で付着し、これが経時的にさらに乾燥、固形化してホッパ内へ落下しないという問題があった。
さらには、この乾燥固形化したし渣がし渣排出部で成長すると、これがケーシングを突く形となって円筒ケーシングの回転負荷をさらに増すようになり、駆動動力を必要以上に増大し、さらにはこれが過トルクとなって駆動モータの焼損、スクリューの変形破損等、し渣分離脱水機の故障の原因になるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−142723号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記従来のし渣分離脱水機の有する問題点に鑑み、し渣排出部での付着、乾燥固形化、並びにその成長を防止するようにしたし渣分離脱水機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明のし渣分離脱水機は、周面より排水するように水切スクリーン部を形成した円筒ケーシングと、この円筒ケーシングの内部に挿通するスクリューとを互いに逆方向に回転駆動するようにし、かつ円筒ケーシング内に導入された汚水中のし渣を水切スクリーン部で捕捉し、スクリューの回転によりし渣を加圧、脱水して排出するようにしたし渣分離脱水機において、し渣排出部のスクリュー回転軸に、排出される脱水し渣をほぐしつつ円周方向へ拡散させて掻き落とすように形成したし渣掻き落とし盤を配設したことを特徴とする。
【0009】
この場合において、し渣掻き落とし盤を、し渣がし渣排出口側より反排出口側に向かうに従って円周方向へ拡散させるような傾斜面に形成することができる。
【0010】
また、し渣掻き落とし盤の傾斜面に、し渣との摩擦力を増してほぐすようにしたプレートを一体に形成することができる。
【0011】
また、し渣掻き落とし盤の傾斜面と対峙するようにしてし渣をほぐすためのプレートをスクリュー回転軸外周面に突設することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明のし渣分離脱水機によれば、周面より排水するように水切スクリーン部を形成した円筒ケーシングと、この円筒ケーシングの内部に挿通するスクリューとを互いに逆方向に回転駆動するようにし、かつ円筒ケーシング内に導入された汚水中のし渣を水切スクリーン部で捕捉し、スクリューの回転によりし渣を加圧、脱水して排出するようにしたし渣分離脱水機において、し渣排出部のスクリュー回転軸に、排出される脱水し渣をほぐしつつ円周方向へ拡散させるように形成したし渣掻き落とし盤を配設することにより、排出された脱水し渣が、その性状等によりし渣排出口近傍やスクリュー回転軸外周面に付着せんとしても、スクリュー回転軸と共に回転するし渣掻き落とし盤にて強制的にほぐされ、拡散されるようになってし渣の性状に関係なく確実に下方のホッパ側へ排出することができ、し渣分離脱水機の過トルク、破損を未然に防止して安全な運転をすることができる。
【0013】
また、し渣掻き落とし盤を、し渣がし渣排出口側より反排出口側に向かうに従って円周方向へ拡散させるような傾斜面に形成することにより、排出口から押し出されるようにして排出された脱水し渣は、その押し出し量に応じて自然にし渣掻き落とし盤の傾斜面に沿って拡散されるので、し渣排出口部での付着、成長を防止することができる。
【0014】
また、し渣掻き落とし盤の傾斜面に、し渣との摩擦力を増してほぐすようにしたプレートを一体に形成することにより、簡単な構成でし渣の性状に関係なく、確実にし渣をほぐし、拡散落下させることができる。
【0015】
また、し渣掻き落とし盤の傾斜面と対峙するようにしてし渣をほぐすためのプレートをスクリュー回転軸外周面に突設することにより、し渣の性状に関係なく、確実にし渣をほぐし、拡散落下させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明のし渣分離脱水機の一実施例を示す正面縦断面図である。
【図2】し渣排出部の拡大断面図である。
【図3】し渣排出部の異なる実施例の拡大断面図である。
【図4】従来のし渣分離脱水機を示す正面縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明のし渣分離脱水機の実施の形態を、図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0018】
図1〜図2に、本発明のし渣分離脱水機の一実施例を示す。
このし渣分離脱水機Aは、本体ケーシングK内に回転可能に周面より排水するように水切スクリーン部11を形成した円筒ケーシング1を配設するとともに、該円筒ケーシング1内にし渣を圧縮脱水しつつ搬送するようにしたし渣搬送用のスクリュー2を回転可能に挿通して配設し、この円筒ケーシング1とスクリュー2の一端部に駆動機構Gを配設し、駆動モータMの駆動にて駆動機構Gを介して円筒ケーシング1、スクリュー2を互いに逆回転駆動するように構成する。
【0019】
本体ケーシングKは、処理する汚水が周囲に飛散しないよう、望ましくは円筒ケーシング1、スクリュー2を密閉できるような構造とし、内部に円筒ケーシング1を水平或いは反駆動側が低くなるよう緩やかな傾斜をするようにして回転可能に配設するとともに、この円筒ケーシング1の上方位置に洗浄ノズルNを配設して洗浄水を円筒ケーシング1の外周面に向かって噴射するようにして円筒ケーシング1に目詰まりが生じることがないように洗浄を行うようにし、洗浄後の洗浄水及び円筒ケーシング1にて固液分離された汚水を排水するための排水口Kaを形成する。
【0020】
また、円筒ケーシング1は、特に限定されるものではないが、例えば、図1に示すように、円筒型ウェッジワイヤスクリーンとし、水切スクリーン部11となる円筒部の一端側に該円筒部より少し小径となるよう円錐形に形成してし渣を脱水する加圧脱水部12、及び円錐形加圧脱水部の最小径と同じ径とした圧密部13を一連にして形成する。
これにより、水切スクリーン部11にてスクリュー回転軸21より導入される汚水の固液分離をしてその汚水を本体ケーシングK内に排水できるように、円錐形部でし渣Sを脱水できるように形成し、該円筒ケーシング1の加圧脱水部12である円錐形端部より脱水し渣を排出するようにし、さらに円筒ケーシング端部にし渣Sに加圧して脱水できるようにした背圧抵抗板3を配設する。この背圧抵抗板3を、特に限定されるものではないが、例えば、脱水に要する背圧力を必要最小限に抑え、不必要な圧密を防止できるようゴム板を用いることができる。
【0021】
スクリュー2は、内部を中空としたスクリュー回転軸21の外周に旋回するスクリュー羽根22を巻き付けるようにする。
このスクリュー2の羽根ピッチはスクリュー回転軸21の全長に亘って均等とすることも、或いは汚水の固液分離を行う分離ゾーンとし渣Sを脱水する脱水ゾーンとをその作用に応じて異なるようにすることもでき、スクリュー回転軸21の反駆動側の端部は円筒ケーシング端部のし渣排出口15よりも外側へ突出するように長くしてし渣排出部14とし、脱水し渣の排出を確実に行えるようにする。
このスクリュー回転軸21は、反駆動側端部より汚水を供給できるようにし、円筒ケーシング内において、望ましくは円筒ケーシング1の閉鎖された内端部近傍にて1もしくは2以上形成した汚水吐出口23から、中空状スクリュー回転軸内に供給された汚水を円筒ケーシング内に吐出供給するようにする。
また、これら円筒ケーシング1、スクリュー2は一端部に配設した駆動機構Gに接続し、それぞれ逆回転するようにして駆動する。
【0022】
また、スクリュー回転軸21には、その反駆動側でし渣排出部14の位置に、し渣掻き落とし盤4を配設する。このし渣掻き落とし盤4は、脱水されたし渣Sがスクリュー2の回転によりし渣排出口15よりスクリュー回転軸21の外周面に沿って出てきたとき、脱水し渣がスクリュー回転軸21の外周面に付着しようとしても、該し渣掻き落とし盤4にて強制的にほぐされ、スクリュー回転軸21の外周方向に拡散されるようにして排出されるようにする。
したがって、該し渣掻き落とし盤4は、図2に示すように、し渣がし渣排出口側より反排出口側に向かうに従って円周方向へ拡散するような傾斜面41に形成する。この場合、傾斜面41を円錐形状のテーパ面とすることも、或いは図2に示すように凹面円錐形状のテーパ面とすることも可能である。
【0023】
さらに、し渣掻き落とし盤4の傾斜面41には、図2に示すように、し渣排出口15より排出されてきた脱水し渣との摩擦力を増すことができるよう、プレート42を一体に形成することができる。この場合、プレート42は、し渣掻き落とし盤4の傾斜面41の周回方向に沿って複数個を熔着その他の方法で配設するが、このプレート42の大きさや厚さ等は、傾斜面41にし渣が絡みつかない程度とし、これにより脱水し渣をほぐして拡散を効果的に行えるようにする。
【0024】
また、図2に示したようにし渣掻き落とし盤4の傾斜面41に直接プレートを突設することなく、図3に示すように、し渣掻き落とし盤4の傾斜面41と対峙する位置でスクリュー回転軸21にし渣拡散用のプレート43を突設することができる。この場合も各プレート43は、スクリュー回転軸21の軸心に対して少し捻ったようにして所定間隔で配設し、これにより脱水し渣が該プレート43に付着することなく、ほぐして拡散を効果的に行えるような形状とする。
【0025】
以上のように構成されたし渣分離脱水機の作用について次に述べる。
駆動モータMの駆動にて駆動機構Gを介して本体ケーシングK内で円筒ケーシング1とスクリュー2とは互いに逆回転する。
この状態で、反駆動側のスクリュー回転軸端部の汚水供給口24より汚水を供給すると、中空状のスクリュー回転軸21内を駆動側に向かって流下してその端部に形成した汚水吐出口23から円筒ケーシング1内に吐出供給される。このとき、円筒ケーシング1とスクリュー2は互いに逆回転しているので、円筒ケーシング1の水切スクリーン部11にて汚水の固液分離が促進され、水分としての汚水分が円筒ケーシング1の水切スクリーン部11より本体ケーシングK内に排水され、その排水口Kaから外部へ排水されるとともに、一方分離されたし渣分は、円筒ケーシング1内をこれと逆回転するスクリュー2にて吐出口側へ搬送される。
【0026】
そして、し渣が円筒ケーシング1の円錐形の加圧脱水部12に達すると背圧抵抗板3との作用にて加圧されるようになるため脱水され、その後この脱水されたし渣は圧密部13で圧密され、次いで円筒ケーシング端部に形成したし渣排出口15から外部に確実に、安定して排出される。このとき、し渣排出部14にはし渣掻き落とし盤4が配設され、スクリュー回転軸21と共に回転しているので、圧密された脱水し渣は、し渣の性状等に関係なくし渣排出口15の近傍等に付着することなく、ほぐされて周回方向に拡散されるので、確実にし渣排出口15からホッパへ排出され、このようにして汚水の連続固液分離、し渣分の脱水を行うものである。
【0027】
以上、本発明のし渣分離脱水機について、実施例に基づいて説明したが、本発明は上記実施例に記載した構成に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成を変更することができるものである。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明のし渣分離脱水機は、排出部において乾燥固形化せんとする脱水し渣を、その性状等に関係なく強制的にほぐしつつ拡散させて排出するという特性を有していることから、し渣の性状が一定でない処理場で使用するし渣分離脱水機の用途に好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0029】
A し渣分離脱水機
K 本体ケーシング
S し渣
1 円筒ケーシング
11 水切スクリーン部
12 加圧脱水部
13 圧密部
14 し渣排出部
15 し渣排出口
2 スクリュー
21 スクリュー回転軸
22 スクリュー羽根
23 汚水吐出口
24 汚水供給口
3 背圧抵抗板
4 し渣掻き落とし盤
41 傾斜面
42 プレート
43 プレート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
周面より排水するように水切スクリーン部を形成した円筒ケーシングと、この円筒ケーシングの内部に挿通するスクリューとを互いに逆方向に回転駆動するようにし、かつ円筒ケーシング内に導入された汚水中のし渣を水切スクリーン部で捕捉し、スクリューの回転によりし渣を加圧、脱水して排出するようにしたし渣分離脱水機において、し渣排出部のスクリュー回転軸に、排出される脱水し渣をほぐしつつ円周方向へ拡散させて掻き落とすように形成したし渣掻き落とし盤を配設したことを特徴とするし渣分離脱水機。
【請求項2】
し渣掻き落とし盤を、し渣がし渣排出口側より反排出口側に向かうに従って円周方向へ拡散させるような傾斜面に形成したことを特徴とする請求項1記載のし渣分離脱水機。
【請求項3】
し渣掻き落とし盤の傾斜面に、し渣との摩擦力を増してほぐすようにしたプレートを一体に形成したことを特徴とする請求項1又は2記載のし渣分離脱水機。
【請求項4】
し渣掻き落とし盤の傾斜面と対峙するようにしてし渣をほぐすためのプレートをスクリュー回転軸外周面に突設したことを特徴とする請求項1又は2記載のし渣分離脱水機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−235265(P2011−235265A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−111285(P2010−111285)
【出願日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【出願人】(000005452)株式会社日立プラントテクノロジー (1,767)
【Fターム(参考)】