説明

じゃばら由来の抽出組成物ならびに当該抽出組成物を含有する健康食品およびサプリメント

【課題】柑橘果実に含まれるフラボノイド成分の一つであるナリルチン(Narirutin)を高濃度に含有する抽出組成物、ならびに当該抽出組成物を含有する健康食品およびサプリメントの提供。
【解決手段】じゃばら(Citrus jabara)の果肉及び/又は果皮から、水又は水/アルコール溶媒で抽出した溶液を乾燥して粉末状抽出組成物とする。また、当該粉末状抽出組成物を含有する健康食品、および粉末状抽出組成物を造粒(粒状化)あるいは錠剤化したサプリメントとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、じゃばら(Citrus jabara)の果肉及び/又は果皮を抽出して得られる粉末状抽出組成物ならびに当該抽出組成物を含有する健康食品に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、柑橘果実に含まれる機能性成分の探索とその有効利用に関する研究が注目を浴びている。即ち、柑橘類はフラボノイド、カロチノイド、クマリン、テルペン、リモノイドなどの多くの機能性成分を含有しており、健康維持や疾病予防に有効な食品素材と考えられている。種々の柑橘果実から、ヘスペリジンなどのフラボノイド類を抽出したサプリメントや抗アレルギー剤の開発が報告されている。
【0003】
【特許文献1】特許第4030495号
【特許文献2】特開2007−77139号
【0004】
ナリルチン(Narirutin)の有用性についても報告されている。即ち、じゃばら(Citrus jabara)には、その果皮にフラボノイド成分の一つであるナリルチンが多量に含まれていることが知られており、花粉症やアトピー症などI型アレルギー症状を引き起こす原因とされる“脱顆粒現象”の抑制効果のあることが、ラットの肥満細胞を用いたモデル系で報告されている。
【0005】
【非特許文献1】木村美和子ほか:ジャバラの脱顆粒抑制作用,日本食品化学工学会第50回大会講演集,29(2003)
【0006】
また、じゃばらが人の花粉症などのアレルギー性諸症状の改善に有効であるとの報告もなされている。
【0007】
【非特許文献2】岐阜大学医学部湊口信也ほか:スギ花粉症の症状とQOLに対する「じゃばら」果汁の効果,臨床免疫・アレルギー科,第50巻第3号,2008,科学評論社発行
【0008】
ナリルチンを多量に含有する柑橘果実は稀少であり、じゃばらは特異的に多量に含有する品種である。しかしながら、じゃばらの果実や果汁、それらのジャム、マーマレード、和洋菓子などの加工食品は存在するものの、いずれもその有効成分であるナリルチンの含有量は少なく、充分な効果を発揮できるような、ナリルチンを高濃度に含有するじゃばら由来の健康食品およびサプリメントは未だ存在しない。僅かに、温州みかんの未熟果実を粉砕乾燥錠剤化した特許製品“商品名ブルーヘスペロンキンダイ:株式会社ア・ファーマ近大;ヘスペリジン含有量99mg/g、ナリルチン含有量28.3mg/g”が市販されてはいるが、ヘスペリジンが主体であり、ナリルチンを高濃度に含有する製品ではない。
【0009】
【特許文献3】特許第3800611号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
多くの人々が手軽に利用できる、高濃度のナリルチンを含有する健康食品およびサプリメントを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の要旨は、じゃばら(Citrus jabara)の果肉及び/又は果皮から、水又は水とアルコールの混合溶媒で抽出した溶液を乾燥してなるナリルチンを高濃度に含有する粉末状抽出組成物であり、当該抽出組成物を含有してなる健康食品およびサプリメントである。
【0012】
じゃばらの果肉及び/又は果皮からの抽出は、水のみでも可能であるが、水とアルコールの混合溶媒がより望ましい。アルコールの種類は特に限定されるものではないが、メタノール、エタノール、イソプロパノール等の低級アルコール類が望ましい。健康食品用途を志向する上では、特にエタノールの使用が望ましい。抽出に用いる水/エタノール混合溶媒の使用量は、抽出温度、時間などの抽出条件により異なるが、通常じゃばら果実重量の1.0〜2.0倍、また水とエタノールの配合比は、重量比で水/エタノール=20〜50/80〜50の範囲で行う。混合溶媒の使用量が少なすぎると有効な抽出ができない。また、水の使用比率が多過ぎるとナリルチンの抽出率が低下する。エタノール使用比率が多過ぎると抽出物中の苦味成分が増大し、健康食品とする上で好ましくない。更には、経済性の面でも望ましくない。抽出条件は果肉及び果皮を少なくとも5mm以下、望ましくは2mm以下に細かく解砕した後、上記溶媒に浸漬し常温〜50℃、より望ましくは30〜40℃で通常24時間程度放置後に濾過分離する。浸漬温度が50℃を超えたり、浸漬時間が長すぎると抽出液が褐色変し、最終製品の品位を低下させるので好ましくない。また、浸漬温度が低すぎたり、抽出時間が短すぎると抽出が充分に行えない。得られた濾液(抽出液)を乾燥し、粉末状抽出組成物を得る。また、本抽出に際し、クエン酸、リンゴ酸、乳酸などの有機酸を加えて弱酸性下で抽出したり、場合によっては炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウムなどの弱アルカリを加えて弱アルカリ性下で抽出することも可能である。乾燥方法は特に限定するものではないが、スプレー乾燥法が適当である。乾燥温度は変色や変質を防ぐため80℃以下の低温で乾燥することが望ましい。また、本抽出組成物は粘着性や吸湿性を有するため、乾燥しても粉末状とならないか経時的に粉末が固結する場合もある。望ましい粉末状態を得るために、デキストリン、澱粉、シリカなどを添加配合してブロッキング性を改善することがより好ましい。特に好ましい配合剤はデキストリンであり、その配合量は抽出組成物100重量部に対し、50〜400重量部、特には100〜300重量部の範囲となる。50重量部以下では充分なブロッキング性の防止ができず経時による固結を生じ製品の安定性が保たれない場合もある。また、400重量部以上のデキストリンの配合は良好な安定性を保てるが、有効成分であるナリルチンの含有率の減少をまねくので好ましくない。更にまた、本抽出組成物には利用目的に応じ甘味料、酸味料、着色剤、果汁、生薬成分、動植物抽出エキス類、抗酸化剤、防腐剤、香料やビタミンなど多様な成分を添加した後、乾燥粉末化することも可能である。
【0013】
本発明の粉末状抽出組成物の製造に用いるじゃばら原料は、生産地や果実の部位(果肉、果皮など)、成熟度(完熟、未熟)、加工度などに拘わらず、基本的にはどのようなものでも使用できる。このような原料は、和歌山県、三重県、愛媛県などの生産地で調達できる。通常、11月〜翌年3月頃までが成熟柑の流通期となり、独特の芳香と香酸柑橘の旨味が増し、この時期が一般的に食品としての利用価値が高い。一方、ナリルチン含有量は未熟柑に多く、成熟柑には少ない。即ち、成熟と共にナリルチン含有量は減退する傾向にある。従って、本発明の主たる目的であるナリルチンを高濃度で含有する健康食品を得るためには、6月〜10月頃までの未熟柑の利用がより望ましい。もちろん、成熟柑でも抽出液を高度濃縮すれば本発明の目的を果たすことは可能であり、未熟柑に限定するものではない。また、部位としてはナリルチン含有量の多い、果皮やじょうのう膜を使用する方がより好ましい。このような原料としては果汁を搾った後の搾汁粕などが挙げられる。
【0014】
かくして得られたじゃばらの粉末状抽出組成物は、そのまま及び造粒(粒状化)あるいは錠剤化して健康食品およびサプリメントとして利用できる。また、粉末状抽出組成物は、液体飲料に配合して健康飲料として、ゼリー状製品に配合してゼリー状健康食品として、様々な固体状製品に配合して固体状の健康食品に利用できる。このような健康食品の具体的な例としては、ジュース、乳飲料、紅茶、ワイン、酒、ヨーグルト、プリン、アイスクリーム、パン、ケーキ、ジャム、ソース、マーマレード、飴、羊羹、などの和洋菓子類、味噌、醤油、ぽん酢、ドレッシングなどの調味料が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【発明の効果】
【0015】
本発明のじゃばら抽出組成物および健康食品は、高濃度のナリルチンを含有するものである。生果やジュース果汁やこれらを用いた一次加工食品などと異なり、粉末状、顆粒状、錠剤状の製品であるため保存性も良く、季節性にとらわれることなく、いつでも、多くの人々が安心して利用できる。花粉症やアトピー症などのI型アレルギー症状の緩和や予防に有用である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明を実施するための好ましい形態の一例として、粉末状抽出組成物を造粒・錠剤化した錠剤状の健康食品(サプリメント)を、また本粉末状抽出組成物を飴製品に配合し、更に表面を糖衣層でコーテイングした糖衣状キャンディーなどの実施例を図面と共に説明するが、これらの外観、構成、処方、表示例などに限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲で種々の形態を選ぶことができる。
【実施例1】
【0017】
〈じゃばら抽出組成物の調整1〉
愛媛県宇和島産のじゃばら未熟柑(9月中旬採取)10kgを1〜2cm角程度に切断したものを、ミキサーにて解砕し、一辺が5mm以下の砕片とした。80%エタノール水溶液(水/エタノール重量比=20/80の混合溶媒)20kgを加え、更に10分間攪拌解砕した。この混合液を30℃の恒温槽に24時間放置した。放置後、この混合液を濾布(100メッシュ)で濾過し、抽出液26kg(pH4.8で固形分2.8%)を得た。エタノールを留去後、デキストリン0.73kg(固形分と当重量)を加え、スプレー乾燥した。淡黄褐色の粉末状抽出組成物約1.2kg(収率約82%)を得た。この組成物は、さわやかな芳香臭のある、甘味と苦味を伴った粉末であり、分析の結果ナリルチンを192mg/g含有していた。
【実施例2】
【0018】
〈じゃばら抽出組成物の調整2〉
愛媛県宇和島産のじゃばら成熟柑(12月採取)の搾汁粕(果皮およびじょうのう膜主体)10kgを解砕し、一辺が2mm以下の砕片とした。50%エタノール水溶液(水/エタノール重量比=50/50の混合溶媒)20kgを加え均一化した後、30℃で24時間放置した。100メッシュ濾布およびセライト濾過し、20kgの抽出液(固形分4.0%)を得た。更に、エタノールを留去し、7kg(固形分10.2%)の濃縮液とした後、スプレー乾燥した。黄褐色の粉末状抽出組成物約600g(収率約85%)を得た。この抽出組成物は、じゃばら特有の芳香臭を持った甘味とやや苦味を伴ったしっとり感のある粉末であり、ナリルチンを64mg/g含有していた。
【実施例3】
【0019】
〈健康食品:錠剤〉
実施例1で得られた粉末状抽出組成物に、水を結合剤としてスプレー噴霧し、流動乾燥法により造粒した。次に、錠剤処方として下記の配合にて打錠した。剤形φ8mm、粒厚4.5mm、重量250mg/粒で、硬度4.8kg/cm2の錠剤を得た。本錠剤は、ナリルチンを89mg/g(一錠中に約22mg)含有していた。
【錠剤処方】
【0020】

【実施例4】
【0021】
〈健康食品:糖衣状キャンディー〉
水飴(日本コーンスターチ製:コーンシラップS)500g、砂糖500gを真空釜で混合加熱し、減圧下(−500mmHg)120℃で炊き上げた。90℃に冷却後、実施例1のじゃばら粉末状抽出組成物50g、クエン酸10g、柚子香料1.5mlを添加した。これを直径10mm、厚さ5mmの円形に打抜いて成型し、単重量1.5gの中心層としての成型キャンディーを得た。この成型キャンディー2kgを小型糖衣パンに入れ、予めビタミンC0.2g、柚子香料0.05mlを加えた水飴(日本コーンスターチ製:コーンシラップS)20gを掛け、更にキシリトール80gを添加した。このような糖衣処理を5回繰り返し、30℃で乾燥してじゃばら抽出組成物を含有する単重量1.7〜1.8gの糖衣状キャンディーを得た。この糖衣状キャンディーは、1粒当たり約13mgのナリルチンを含有していた。また、多層コーティングにより、べとついたり溶けたりすることもなく、夏場の高温時の安定性の優れたものであった。
【効果確認テスト】
【0022】
実施例3で得たじゃばら抽出組成物の錠剤品を花粉症の症状を有する被験者20名(男性12名、女性8名、26歳〜68歳、平均年齢44.4歳)に1日あたり6錠(250mg/錠×6錠=1.5g)を継続して2週間飲用願った。ナリルチンの摂取量は1日あたり132mg(22mg/錠×6錠=132mg)となる。被験者の2週間後の花粉症などのアレルギー性鼻炎諸症状の変化を調べた。症状の質問項目として、鼻水、くしゃみ、鼻づまり、鼻のかゆみ、目のかゆみ、涙目の6種類を、また症状の程度を、1.症状なし 2.軽い 3.中くらい 4.重い 5.非常に重いの5段階に分類し、それぞれを点数として評価した。飲用前後の各質問項目の得点平均値の比較を表1に示した。各症状のスコア平均値は明らかに低下し、飲用の効果が認められた。
【0023】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の一実施例(錠剤)の斜視図である。
【図2】他の実施例(糖衣状キャンディー)の断面図である。
【符号の説明】
【0025】
A錠剤
B糖衣キャンディー
1抽出組成物
2キャンディー層
3糖衣コーティング層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
じゃばら(Citrus jabara)の果肉及び/又は果皮から、水又は水とアルコールの混合溶媒で抽出した溶液を乾燥してなる粉末状抽出組成物
【請求項2】
請求項1記載の粉末状抽出組成物を造粒、錠剤化してなる健康食品
【請求項3】
請求項1記載の粉末状抽出組成物を含有してなる健康食品
【請求項4】
ナリルチン(Narirutin)の含有量が30mg/g以上であることを特徴とする請求項1記載の粉末状抽出組成物

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−90637(P2012−90637A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−284305(P2011−284305)
【出願日】平成23年12月7日(2011.12.7)
【基礎とした実用新案登録】実用新案登録第3166307号
【原出願日】平成22年6月8日(2010.6.8)
【出願人】(510177337)
【Fターム(参考)】