説明

すぐ使用できる全血回収容器

本発明は、全血試料を回収および処理するためのサンプリングチューブに関する。サンプリングチューブは全血の特異的溶血のための試薬を含み、該特異的溶血のための試薬は特異的溶血のための化学物質および抗凝固剤を含み、該サンプリングチューブはすぐ使用できるおよび使い捨てサンプリングチューブである。また、本発明は、液体クロマトグラフィーのための全血試料の処理における該サンプリングチューブの使用、および液体クロマトグラフィー系分析におけるかかるサンプリングチューブで処理された血液試料の使用にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全血試料を回収および処理するためのサンプリングチューブに関する。サンプリングチューブは全血の特異的溶血のための試薬を含み、該特異的溶血のための試薬は特異的溶血のための化学物質および抗凝固剤を含み、該サンプリングチューブはすぐ使用できるおよび使い捨てサンプリングチューブである。また、本発明は、液体クロマトグラフィーのための全血試料の処理における該サンプリングチューブの使用、および液体クロマトグラフィー系分析におけるかかるサンプリングチューブで処理された血液試料の使用にも関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
臨床慣例において、血液は分析される試料の最も重要な供給源である。全血は得られる最初の試料であるが、全血試料は通常、簡便な試料取り扱いまたは信頼性のある分析物検出を可能にするためにさらに処理されなければならない。
【0003】
試料中に成分がより多く存在するほど、そこに含まれる標的分析物の分析がより困難である。赤血球は、検出される任意の分析物に潜在的に干渉する劇的な量のタンパク質および低分子量成分を含む。これが主な理由の1つであるために、臨床慣例において、好ましくは血液血漿(しばしば単純に血漿、即ち抗凝固全血試料と呼ばれる;細胞および赤血球を除く)または血液血清(しばしば単純に血清、即ち凝固全血と呼ばれる;細胞、赤血球および凝固系、特にフィブリン/フィブリノーゲンの大部分のタンパク質を除く)のそれぞれが使用される。また、全血試料は、例えば、血清または血漿と比べて取り扱うことがより困難である傾向がある。全血は安定でない傾向があり、赤血球の緩やかな破壊は目的の多くの分析物の信頼性のある測定を損なう。また、全血試料の輸送および保存には、特別な予防措置手段を要する。
【0004】
分析物が全血から測定されなければならない場合、全血試料を回収し、血液回収中または直後に適切な抗凝固剤でかかる試料を処理することは一般的な方法である。臨床慣例において、適切な抗凝固剤を予め充填したチューブが全血試料の回収に使用される。該名称が伝えるように、これらの抗凝固剤は凝固系の活性化を妨げる。血液細胞および赤血球は、非常にかつできる限りインタクトのままであるべきである。例えば、血液細胞または赤血球の沈降によって生じるまたは赤血球の溶解によって生じる問題を回避するために、抗凝固血液は非常に慎重に取り扱わなければならない。通常、かかる抗凝固全血試料のアリコートは次に、目的の分析物、例えば、赤血球に少なくとも部分的に含まれる分析物の検出に使用される。
【0005】
また、この時点で、既存のオンライン検出法のいずれにも全血試料を使用することは可能でないように思われる。例えば、液体クロマトグラフィー(LC)に基づいた分離工程を要する臨床診断慣例手順において全血試料を使用することは可能でない。通常、慣例液体クロマトグラフィー分離は、本質的に、カラム物質を保護するフィルターユニットまたはフリットおよび目的の分析物の分離に必要なカラム物質からなるカラムに基づいている。全血がかかるカラムに適用される場合、カラムは、カラムのサイズおよび系に応じてかなり早くまたは直後にふさがれる。この問題によって、例えば、臨床慣例診断において好ましいLC法と組み合わせたオンライン検出プロセスにおける全血の使用が単に不可能になる。現在、かかる処理試料が適切にかつ信頼して分析することができる前に、例えば遠心分離、濾過、沈殿または分析物抽出による血液試料の適切な分離/取り扱いが必須であるようである。
【0006】
上述に示すように、血清または血漿は、全血から得られてもよく、分析物の検出に使用されてもよい。また、理論では、細胞および赤血球は濾過または遠心分離によって全血から除去されてもよい。しかし、これらの方法は、慣例診断設定における使用に適切でなく、赤血球内に少なくとも部分的に存在する分析物の正確な測定も可能にしない。
【0007】
試料処理のさらなる方法において、目的の分析物は最初に、選択的沈殿または抽出法によって潜在的に干渉する物質の大部分から分離される。抽出は液相または固相で行うことができる。このことは、免疫抑制薬の検出に使用されるいくつかの手順を示すことで例示される。
【0008】
周知の免疫抑制薬は、例えば、ミコフェノール酸モフェチル(MMF)、ラパマイシン(RAPA、シロリムスとしても公知)およびタクロリムス(FK-506)である。免疫抑制薬のための治療薬物モニタリングは、移植患者およびAIDSに罹患する患者に特に重要である(例えば、Drug. Ther. Perspect 17 (2001) 8-12参照)。固体の臓器移植を受けるほとんどの患者は同種異系移植拒絶を妨げるために長期免疫抑制治療を要する。しかし、多くの免疫抑制剤は治療ウィンドウとも呼ばれる狭い治療範囲を有し、種々の毒性および薬物相互反応の潜在性と相関するために、患者の臨床評価と共に治療薬物モニタリング(TDM)の使用が特に重要であるかもしれない。
【0009】
ミコフェノール酸モフェチルは、プロドラッグである。経口投与後に、ミコフェノール酸モフェチル(MMF)は腸および血液中で急速な加水分解を受け、その活性代謝物ミコフェノール酸(MPA)を形成する。MMFは広範囲で利用可能であり、コルチコステロイドおよびシクロスポリンと組み合わせた腎臓、肝臓または心臓同種異系移植拒絶の防止のためにUSおよびUKで承認されている。薬物は腎臓同種異系移植の急性拒絶の発生を減少する点でアザチオプリンに対する卓越性を示した。治療凹部濃度は、1〜3.5mg/Lの範囲である。MMFは、血漿および全血から測定することができる。
【0010】
タクロリムスはマクロライド抗生物質であり、肝臓同種異系移植拒絶の防止のために1994年に米国食品医薬品局(FDA)によって最初に承認された。これはインビトロでシクロスポリンよりも100倍まで効力があり、臨床的に、これは組織拒絶の発生の大きな減少と関連する。タクロリムスは様々な移植手順を受ける患者の一次免疫抑制治療および肝臓または腎臓移植後の免疫性急性同種異系移植拒絶を有する患者のための救助治療としての両方に効能を示した。治療凹部濃度は5〜20μg/Lの範囲である。
【0011】
血液循環に存在する少なくとも一部のタクロリムスが赤血球内に区画化されるので、全血試料はこの薬物の臨床慣例測定に使用される。タクロリムスは、例えば、高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)、HPLC質量分析(MS)、ラジオリセプターアッセイ(RRA)、または免疫アッセイ(IA)によって検出することができる。後者の2つの方法はタクロリムスおよび特定の様々のその代謝物を同じ感度で検出しない。このことは使用される手順の干渉をもたらすかもしれない(Murthy, J. N., et al., Clin. Biochem. 31(1998) 613-617)。少なくとも様々なタクロリムス代謝物の検出において、HPLC-MS手順を黄金標準とみなしてもよい。しかし、全ての上記手順は、全血からのタクロリムスの抽出を要する。通常、アセトニトリルが全血からのタクロリムスの抽出のための臨床慣例に使用され、全血試料からのタクロリムスのオンライン測定を可能にする方法は存在しないように思われる。
【0012】
シロリムスは、タクロリムスと同様に、マクロライド抗生物質である。これは、腎臓移植後の同種異系移植拒絶の防止のためにUS FDAによって1999年に最初に承認され、シクロスポリンおよびコルチコステロイドと組み合わせて急性使用される場合にこれに関して見込みのある結果を実際に示した。インビトロで、シロリムスはシクロスポリンよりも100倍まで効力があり、臨床的に、これはシクロスポリンと相乗効果を示し、おそらくはシクロスポリン用量の低減を可能にするかもしれない。治療凹部(trough)濃度は5〜15μg/Lの範囲である。
【0013】
タクロリムスについて、有意な量のシロリムスが赤血球に存在する。従って、全血試料の抽出はどの検出方法が使用されようとも必要とされる。臨床慣例において、シロリムスを含むことが疑われる試料はHPLCに供され、シロリムスは紫外光(UV)またはMS/MSによって検出される。また最近、微粒子酵素免疫アッセイが記載された(Jones, K., et al., Clinical Therapeutics 22, Suppl.B(2000)B49-B61)。
【0014】
葉酸(folate)は酸化状態で異なる関連分子群の集合名である。葉酸は、水溶性ビタミンB群の一部であり、ホモシステイン代謝の補酵素としておよびDNA複製に必要な1炭素基の転移に重要である。不十分な葉酸状態は、神経管欠損のリスクの増大に関連し、心臓血管疾患、貧血、特定の癌およびアルツハイマー病と関連する。血清または血漿葉酸濃度は最近の食餌物を反映するが、赤血球葉酸濃度は体内貯蔵をより示す(Gunter, E.W., et al., Clin. Chem. 42(1996)1689-1694; Fazili, Z., et al., Clin. Chem. 51(2005)2318-2325; Pfeiffer, C.M., et al., Clin. Chem. 50(2004)423-432)。赤血球全葉酸(赤血球葉酸=RBC葉酸)は、全身葉酸状態の最良の基準である。最近の研究によって、5-メチルテトラヒドロ葉酸が循環赤血球の主要な葉酸ビタマーであることが示された。葉酸欠乏症の診断について、葉酸は95%より多く赤血球に存在するので、血清または血漿だけでなく赤血球からも測定が行われることが推奨される。赤血球中の濃度は実際の葉酸状態をより本当に反映する。
【0015】
種々のマトリックス中の葉酸を測定するために多くの方法が利用可能である。主要な分析法は微生物学アッセイ、ラジオイムノアッセイ、化学発光、クロマトグラフィー法および質量分析法である。ほとんどの方法は葉酸の葉酸結合タンパク質への競合結合に基づいている。
【0016】
RBC葉酸の測定のために、溶血試薬の使用が明らかに必須である。例えば、RBC葉酸の測定のためのElecsysTMアッセイ(ElecsysはRocheグループの一員の登録商標である)は、溶解試薬としてアスコルビン酸を使用する。Elecsys RBC葉酸溶血試薬は赤血球中の葉酸(RBC葉酸)の定量測定のためのElecsys葉酸アッセイと共に使用される。抗凝固剤(ヘパリンまたはEDTA)で処理された全血は、アスコルビン酸溶液(0.2%)で希釈され、20〜25℃でおよそ90分間インキュベートされる。赤血球の溶解が細胞内葉酸の遊離で起こる。溶血物は次にElecsys葉酸アッセイの次の測定のための「予め希釈された」試料(血清と同様に)として使用される。全血で測定されたヘマトクリット値および試料の前処理によってもたらされる希釈効果が、赤血球葉酸濃度の算出に補正される(Greiling, H., Gressner, A.M., Lehrbuch der Klinischen Chemie und Pathobiochemie, 3rd ed., Stuttgart, New York, Schattauer (1995) pp.460-462; Gunter, E.W., et al., Clin. Chem. 42 (1996) 1689-1694)。
【0017】
アスコルビン酸による処理によって生じた溶血物は、慣例クロマトグラフィー手順に使用することができない。クロマトグラフィー手順または質量分析測定におけるかかる溶血物の使用のために、分析前に細胞残骸および沈殿タンパク質を除去することが必要である。
【0018】
残骸および沈殿タンパク質は通常、遠心分離、オフライン濾過または固相抽出によって試料から除去される。
【0019】
固相抽出(SPE)は、例えば、分析試料の前濃縮および洗浄、様々な化学物質の精製、および水溶液からの毒性物質または重要な物質の除去のために、広く使用されるクロマトグラフィー技術である。SPEは通常、適切な樹脂を含むカラムまたはカートリッジを用いて行われる。疎水性、イオン交換、キレート化、吸着、および他の機構によって分析物と相互作用して結合し、液体で分析物を除去することができる吸着剤を用いて、SPE手順が開発された。種々の種類の分析物のための種々のSPE適用には種々の吸着剤を必要とすることができるために、目的の分析物または種類の分析物の固有選択性を有する特定の特性を有する吸着剤のための同時の必要性がある。SPE物質およびSPEカラムの代表的な例はそれぞれ、US 6,322,695およびUS 6,723,236に見ることができる。
【0020】
目的の多くの他の分析物と同様に、全血試料からのオンライン手順におけるシロリムスまたはタクロリムスの検出を可能にする方法は利用可能でないように思われる。
【0021】
ヘモグロビン自体の濃度および非糖化ヘモグロビンに対する糖化ヘモグロビン(HbA1c)の比は、血液学および糖尿病で重要な分析物である。かかる評価において、全血試料に含まれる赤血球が溶解され、ヘモグロビンが次に測定される。US 6,050,956は標準量の血液溶解液を予め充填した溶血チューブを記載している。しかし、全血は最初に、慣例血液回収チューブに回収される。その後、血液は溶血チューブに1〜100倍に希釈される。ヘモグロビンの非常に高い濃度のために、1〜100倍希釈の全血が可能であり、特異的溶血、即ち、タンパク質沈殿および/またはDNA放出などのネガティブ副作用を回避する溶血は必要とされない。
【0022】
US 5,874,310; EP 1 000 356; EP 0 874 988; EP 0 305 491またはEP 0 185 048等のCoulter International Inc.の様々な特許ファミリーは血液学の分野、特に血液細胞の分析に関する。EP 1 000 356は例えば、血液細胞の列挙および選別(sizing)、ヘモグロビンパラメーターの決定、および単一血液試料中の白血球亜集団の分化に適切である血液試料の希釈のための改善された希釈剤を記載している。分析は適切な電子装置の使用によって行われる。かかる分析について、血液は通常、医師によって回収され、次に臨床実験室に移されなければならず、分析直前に溶解試薬を添加する。
【0023】
明らかに、抗凝固全血試料の慎重な移送が重要である。凍結および温度上昇が回避されなければならない。また、抗凝固全血試料の移送に関連する有意なバイオハザードもある。移送中に漏れるまたは壊れるチューブは、パッケージング物質を汚染することがあり、または感染性であることがある。
【0024】
全血試料は更に臨床慣例において継子扱いであることが当該分野の水準の上記議論から明らかになる。全ての慣例手順は最新で、抗凝固処理、試料の高倍希釈、および/または目的の分析物のもしくはかかる試料に含まれる残りの化合物からの特定の種類の化合物の分離もしくは画分を必要とするように思われる。また、全血試料のオンライン測定方法は利用可能でないように思われる。
【0025】
しかし、このことは、全血が試料として直接かつ容易に使用できる場合に非常に望ましい。これは、液体クロマトグラフィー(LC)分離工程を利用するオンライン検出手順において特に有利である。また、処理試料の保存、取り扱いおよび移送を容易にする全血試料の直接処理が、臨床慣例診断適用のための重要な進歩を示すことが明らかである。
【0026】
前記全血試料の特異的溶血のための試薬を予め充填したすぐ使用できるおよび使い捨て全血サンプリングチューブに全血試料を回収することが大きな利点で可能であることが驚くべきことに見出され、確立することができた。本発明によるサンプリングチューブは、大いに全血試料の使用を容易にし、かかる試料の取り扱いおよびかかる試料の移送を容易かつ簡便にし、全血試料からの分析物の直接検出を可能にする。本発明によるサンプリングチューブにおける全血の回収は、例えば、全血を、クロマトグラフィーによる直接分離および例えば質量分析による分析物検出のための適切な試料にする。このことは、葉酸または免疫抑制薬シロリムスおよびタクロリムスなどの赤血球内の関連拡張物にも存在する分析物に特に重要である。
【0027】
(発明の要旨)
第一の態様において、本発明は、全血試料を回収および処理するためのサンプリングチューブであって、該サンプリングチューブは該全血試料の特異的溶血(differential hemolysis)のための試薬を含み、該特異的溶血のための試薬は特異的溶血のための化学物質および抗凝固剤を含み、すぐ使用できる(ready-to-use)および使い捨て(single-use)サンプリングチューブである、サンプリングチューブに関する。
【0028】
さらなる態様において、本発明は、液体クロマトグラフィーのための全血試料の処理における本発明によるサンプリングチューブの使用に関する。
【0029】
さらなる態様において、本発明は、液体クロマトグラフィー系分析における本発明によるサンプリングチューブ内での特異的溶血によって得られた処理血液試料の使用を記載する。
【0030】
また、本発明は、液体クロマトグラフィーのための全血試料の処理における全血試料の特異的溶血に適切な試薬組成物の使用であって、該試薬組成物が抗凝固剤を含む使用に関する。
【0031】
(発明の詳細な説明)
好ましい態様において、本発明は、全血試料を回収および処理するためのサンプリングチューブであって、該サンプリングチューブは該全血試料の特異的溶血のための試薬を含み、該特異的溶血のための試薬は特異的溶血のための化学物質および抗凝固剤を含み、すぐ使用できるおよび使い捨てサンプリングチューブである、サンプリングチューブに関する。
【0032】
本発明の意味において「抗凝固剤」は、実験用血液検体が凝血しないように使用される薬剤である。これらの薬剤としては、ヘパリン、およびカルシウムイオンを凝血プロセスに利用可能にせず、凝血の形成を防ぐいくつかの薬剤が挙げられる;これらの薬剤としては、例えば、エチレンジアミノテトラ酢酸(一般にEDTAと呼ばれる)、EGTA、クエン酸、オキサル酸、およびフッ素化物が挙げられる。本発明によるサンプリングチューブにおける特異的溶血のための試薬における使用のための好ましい抗凝固剤は、ヘパリン、EGTA、およびクエン酸である。好ましくは、抗凝固剤はヘパリンまたはクエン酸である。
【0033】
本発明による「サンプリングチューブ」は、回収される血液試料を受けるために適切な貯臓器を有する任意のデバイスであってもよい。当業者が認めるように、サンプリングチューブは、好ましくは実際にチューブである。好ましくは、サンプリングチューブは、自動分析器の試料受けステーション、例えば、Roche DiagnosticsのElecsys(登録商標)分析器の要件に合うように適合されたサイズおよび寸法を有する。サンプリングチューブは円錐底、好ましくは丸底を有してもよい。臨床慣例において、市場の分析器システムと適合する標準チューブサイズが使用される。標準でかつ好ましいチューブは、例えば以下の寸法:13×75mm;13×100mm、または16×100mmを有する。
【0034】
冠詞「a」および「an」は、冠詞の文法目的の1つまたは1つより多いこと(即ち、少なくとも1つ)をいう。例として、「赤血球」は、1つの赤血球または1つより多い赤血球を意味する。
【0035】
本発明によるサンプリングチューブは、特異的溶血のための試薬で予め充填され、即ち、これはこの試薬を含んでいる。チューブは、すぐ使用できる形態で消費者に提供される。これは血液試料の特異的溶血を達成するために適切な量および濃度で提供されるので、消費者は特異的溶血のための試薬を調製または取り扱うことを必要としない。
【0036】
さらなる好ましい態様において、本発明のサンプリングチューブは大気圧より低い内部圧力を有する。好ましくは、サンプリングチューブはBD Diagnostics, Franklin Lakes, NJによって配布されるvacutainer(登録商標)brand lineに関連する利点を有する。
【0037】
本発明による血液回収チューブは、たった一度使用され、即ち、これは使い捨てデバイスである。
【0038】
本発明によるサンプリングチューブは、全血試料の回収に適切であるだけでなく、全血試料の処理を可能にするようにも適合される。特異的溶血のための試薬を含む、予め充填したサンプリングチューブに全血を回収することによって、所望の結果、即ち、特異的溶血が達成される。
【0039】
本発明のさらなる好ましい態様において、全血試料を回収および処理するためのサンプリングチューブは、特異的溶血のための試薬が赤血球の細胞膜の溶解を生じ、同時に試料成分の沈殿を生じないことをさらに特徴とする。
【0040】
本発明の意味において「赤血球」は細胞核を有さない赤血球である。細胞核を有さないかかる赤血球は例えば、哺乳動物の循環で見られる成熟赤血球である。本発明は、例えば、鳥類の種類で公知の有核赤血球に関さない。後のものは有核細胞または真核生物細胞の基準を満たす。
【0041】
本発明の目的のための「哺乳動物」とは、ヒト、家畜動物および農場動物、ならびに動物園、スポーツ、またはペットの動物、例えば、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ヒツジ、ブタ、ヤギ、ウサギ等を含む哺乳動物として分類される任意の動物のことをいう。好ましくは、哺乳動物はヒトである。
【0042】
本発明の意味において「真核生物細胞」または「有核細胞」は、真核生物体由来の細胞であり、さらにその細胞核を有している。真核生物細胞の例は、有核組織由来細胞、有核組織培養細胞および有核血液細胞である。好ましい態様において、真核生物細胞は血小板、単球、好中球、好酸球、または白血球等の有核血液細胞である。遺伝物質を含むが細菌のような下等生物由来の細胞は、真核生物細胞ではない。
【0043】
本発明によれば、全血試料がすぐ使用できるサンプリングチューブに充填される。試料は該チューブに含まれる特異的溶血のための試薬と混合され、それによって特異的溶血が達成される。特異的溶血のための適切な試薬の使用によって、2つの要件:a)赤血球の膜が溶解されることおよびb)同時に試料成分の沈殿が生じないことを満たすということが確実にされる。このプロセス:即ち、赤血球の膜を破壊するが、同時に試料成分の沈殿が生じないことは本明細書で特異的溶血と呼ばれる。処理試料は特異的に溶血された血液または特異的に溶血された血液試料と呼ばれる。
【0044】
好ましくは、特異的溶血のための試薬は、試料中に存在する赤血球の少なくとも95%の溶解をもたらす。さらに好ましくは、特異的溶血のための試薬は、試料中に存在する赤血球の少なくとも97%、98%、99%、99.5%の溶解をもたらす。
【0045】
以下の理論に拘束されたくはないが、赤血球の膜を破壊するが、同時に試料成分の沈殿を生じない有利なバランスは、当該分野で公知の問題の少なくともいくつかを克服するためには必須であると仮定することができる。適切な条件下で特異的溶血のための適切な試薬を適用することによって、例えば、血漿から赤血球の内容物を遮断するために不可欠である細胞膜の完全性が失われる。赤血球の内容物(例えば、ヘモグロビン以外に目的のある分析物)は周囲液体に放出される。試料成分の沈殿は同時に生じない。
【0046】
当業者が認めるように、後の分析に干渉するかもしれない試料成分は特に、DNAおよび変性タンパク質のそれぞれであってもよい。例えば、リンパ球または単球等の真核生物細胞の核が破壊されない限り、DNAはこれらの核から放出されない。タンパク質が沈殿しない限り、特異的溶血に供される試料中に含まれるタンパク質は、少なくとも有意な程度ではなく、クロマトグラフィー工程または分析に干渉しない。
【0047】
赤血球の完全性は例えば、適切な生物染色によって容易に評価できる。本発明による好ましい態様において、トリパンブルーが赤血球膜の完全性を評価するために使用される。インタクトの赤血球はトリパンブルーを蓄積しないが、膜を破壊した赤血球はトリパンブルーで染色される。赤血球の膜完全性は、トリパンブルーで試料を染色した後に顕微鏡下で容易に評価される。破壊された赤血球のパーセントは、処理前後のインタクトの赤血球をカウントし、次に第一の数を後者の数で割って、次にこの値に100を掛けることで計算される。溶解される赤血球は溶解された赤血球(lyzed red blood cell)または溶解された赤血球(lyzed erythrocyte)と呼ばれる。
【0048】
適切な処理は、赤血球を溶解するが、同時に試料成分の沈殿を生じないことが適切である。本発明による方法における適切な溶血処理はまた、真核生物細胞の外膜に影響を及ぼすことが予測される。しかし、細胞核に含まれるDNAが試料中に放出されないことに注意してもよく、注意しなければならない。使用される溶血試薬および特異的溶血の条件は、好ましくは核膜を残し、従って核を巨視的にインタクトのままにするか少なくともDNAがその周囲およびDNA安定化核タンパク質から遊離されないかのいずれかである。DNAが有意な程度で放出される場合、かかるDNAは試料のさらなる取り扱いに干渉するかもしれないし、または干渉もする。例えば放出されたDNAによって、液体が非常に粘性になる傾向がある。次に、かかる試料をピペッティングもしくは移送することまたは特定のフィルターもしくはカラムに通過させることはもはや可能ではない。
【0049】
タンパク質沈殿が生じないことに注意してもよく、また、注意しなければならない。当業者が認めるように、生物学的試料、例えば、全血試料中に存在する多くの種々のタンパク質がある。これらのタンパク質の全ては沈殿または凝集する傾向に影響を及ぼす個々の特性を有する。
【0050】
特異的溶血のための試薬を用いた試料処理は、用語が示すように、一方で赤血球の細胞膜を溶解し、同時に試料成分の沈殿が生じないための適切な条件下で行われるかどうかを記載でき、定義できることが見出された。溶解されない赤血球および沈殿試料成分の両方は、かかる試料の特性に対してネガティブな影響を与える。
【0051】
特異的溶血のための条件が適切であるかどうかは、以下の標準手順を用いることによって容易にかつ好ましくは決定することができる。ヘマトクリット40を有する全血試料が1:10に希釈され、次に候補溶血試薬と1:1で混合される。特異的溶血をもたらす試薬の効力が視覚で見られる。赤血球の溶解時に、混合物は透明になる。試料成分の沈殿が生じる場合、試料は不透明または粘性またはその両方になる。
【0052】
上述に示すように、本発明による特異的溶血の方法に使用される条件は視覚で容易に評価できる。全血試料が特異的溶血のための適切な候補試薬とインキュベートされる場合、赤血球を溶血するために必要な最小濃度は不透明血液試料が透明または清澄になる濃度として認めることができる。可能な最大濃度は透明試料および非粘性試料をなおもたらす濃度である。
【0053】
候補溶血試薬の適切な最小濃度を、処理全血試料の透明性の変化をもたらす濃度として決定することがかなり容易であることが分かった。この透明性の変化はHPLCによる直接分析のためのかかる処理試料の適切さと十分に相関する。
【0054】
可能な溶血試薬の最大濃度は、DNAの放出および/またはタンパク質の沈殿をなお生じない濃度である。それにより、試料は粘性または不透明またはその両方となり、直接HPLC適用にもはや適切ではない。粘度および不透明度は視覚に従うことができるが、溶血試薬の最大濃度は以下に記載されるHPLC法によって確認されることが好ましい。
【0055】
非常に多くの溶解されない赤血球をなお含む全血試料および沈殿試料成分を含む処理全血試料の両方は、任意のクロマトグラフィー手順に適切ではない。この理由で、特異的溶血をもたらす適切な条件は、好ましくは標準な様式で特異的溶血のための候補試薬で処理した全血試料をHPLCカラムに適用することによって決定される。
【0056】
不完全な溶血および/または試料成分の沈殿は、10μlの処理全血試料を50回HPLCカラムに適用することによって評価される。特異的溶血のための候補化学物質または試薬が適切であるかを評価するために、前記溶血試薬が全血試料と混合される。好ましくは生理学的食塩水に1:10に予め希釈されたEDTA血液が使用される。これは候補溶血試薬と1:1の比で混合され、混合物は20℃で30分間インキュベートされる。従って、この混合物中の全血の最終希釈は1:20である。50の10μLアリコートのこの混合物、即ち、処理全血試料は、HPLCシステムの一部であり、かつ2mmの直径および0.5μmの孔径を有するフィルターに適用される。フリットがHPLCカラムに一部である場合、固定相が任意の干渉またはブロッキングを生じないように選択されなければならない。背圧がモニターされる。20bar以上の背圧の増加を生じる特異的溶血のための候補試薬は、インジェクション50のための背圧および第一インジェクションのための背圧が互いに比較される場合に、適切であるとはみなされない。このように、特異的溶血のための適切な試薬の最小濃度および最大濃度は容易に同定することができる。最小濃度は、上記の設定で評価されるように特異的溶血をもたらす候補溶血試薬の最低濃度である。
【0057】
好ましくは、特異的溶血のための候補試薬の上記評価に使用されるフィルターはHPLCフリットである。また好ましくは、フリットは、床物質として100Åの孔径を有する3.5μmのSymmetry(登録商標)C18粒子を充填し、2mmの内部カラム直径を有する長さ20mmのHPLCカラムの一部である。
【0058】
当業者が容易に認めるように、かかる評価に使用される全血試料は健常個体、即ち、既知疾患を有さず、正常範囲の生化学値を有する個体から得られる。
【0059】
特異的溶血の両方の要件を満たすために、適切な条件が非常に多くの試薬で確立することができるということが本発明において見出され、確立された。
【0060】
本発明による特異的溶血のための試薬は、好ましくは溶媒として水、上述記載の特異的溶血をもたらす化学物質または試薬、抗凝固剤に基づいており、また好ましくはバッファ、酵素および/または保存剤を含んでいてもよい。特異的溶血のための化学物質は膜可溶化化学物質または膜分解活性化学物質である。特異的溶血のための試薬は好ましくは、1000ダルトン未満の分子量を有し、特異的膜可溶化をもたらす血液分解活性化学物質または膜分解活性化学物質に基づいている。
【0061】
特異的溶血に使用される試薬は、以下の血液分解活性化学物質;KBr;KJ;およびKSCNの一つ以上、または以下のカチオンおよびアニオンの1つ以上からなる塩に基づいている。
【0062】
カチオンは好ましくは


(式中、mは0または1、nは4または6である)
から選択される。
【0063】
アニオンは好ましくはクロライド、テトラフルオロボレート、オクチルスルフェート、ヨウ化物(iodide)、およびチオシアネートから選択される。上記化学物質の混合物を使用することも可能である。当業者が認めるように、特異的溶血を容易にするのはこれらの化学物質であるが、溶血試薬の他の成分がバッファまたは保存剤として機能してもよい。
【0064】
好ましくは、特異的溶血に使用される化学物質は、カチオンが好ましくは


(式中、mは0または1、nは4または6である)
から選択され、アニオンが好ましくはクロライド、テトラフルオロボレート、オクチルスルフェート、ヨウ化物およびチオシアネートから選択される塩である。
【0065】
特異的溶血のための適切な化学物質は、好ましくは1-ブチル-4-メチルピリジニウムテトラフルオロボレート;1-ブチル-3-メチル-イミダゾリウムテトラフルオロボレート;1-ブチル-3-メチル-イミダゾリウムオクチルスルフェート;1-ブチル-3-メチルピリジニウムクロライド;1-ヘキシルピリジニウムクロライド;1-メチル-1-オクチルピロリジニウムクロライド;N-オクチルピリジニウムクロライド;3-カルバモイル-1-オクチルオキシメチルピリジニウムクロライド;KBr;KJ;およびKSCNならびにそれらの組み合わせからなる群より選択される。
【0066】
また好ましくは、特異的溶血に使用される化学物質は、1-ブチル-4-メチルピリジニウムテトラフルオロボレート;1-ブチル-3-メチル-イミダゾリウムテトラフルオロボレート;1-ブチル-3-メチル-イミダゾリウムオクチルスルフェート;1-ブチル-3-メチルピリジニウムクロライド;1-ヘキシルピリジニウムクロライド;1-メチル-1-オクチルピロリジニウムクロライド;N-オクチルピリジニウムクロライド;および3-カルバモイル-1-オクチルオキシメチルピリジニウムクロライドからなる群より選択される。これらの1つの試薬およびKSCNの混合物を使用することがさらに好ましい。
【0067】
当業者に明らかなように、特異的溶血のための候補試薬の適切な濃度が1:20希釈の全血試料:候補溶血試薬に基づいた上述に定義された方法で同定されると、調節された溶血試薬に対する全血試料の別の比が必要に応じて使用できる。
【0068】
目的の分析物が調査中の血液試料に高く濃縮されると予測される場合、溶血試薬の濃度は上述設定で同定されたものと同じままでもよく、溶血試薬に対する全血の低い比、例えば、1:30、1:40または1:50が使用できる。好ましくは、特異的溶血のための試薬における血液分解活性化学物質は上述で決定されるように特異的溶血を達成するために十分な少なくとも最小濃度で使用される。
【0069】
目的の分析物がかなり低い濃度で存在する場合、全血試料を1:20未満に希釈しないことが必要であり得る。これは、溶血試薬および全血試料の混合物中の全血に対する溶血試薬の最終相対濃度が上述記載の評価で決定されるように溶血試薬の必要な最小濃度として同定される比と同じままであるように、溶血試薬の濃度を徐々に調節することによって可能である。最大濃度は、上述記載の設定で評価されるように、特異的溶血をもたらすが試料成分の沈殿を生じない候補溶血試薬の可能な最大濃度である。
【0070】
例として、1-メチル-1-オクチルピロリジニウムクロライド/KSCNが、それぞれ1%および0.4%の最終濃度で使用される場合、所望の結果、即ち、1:20の最終希釈の全血試料の特異的溶血を達成するために適切であることがわかった。処理血液試料中の分析物の希釈は、例えば、この溶血試薬の濃度がそれぞれ1-メチル-1-オクチルピロリジニウムクロライドで2%およびKSCNで0.8%に調節される場合に低減することができる。溶血試薬に対する全血の比が一定に保たれるので、この調節された溶血試薬はまた、後に1:5希釈の全血試料と1:1で混合される場合に全血試料の特異的溶血をもたらす。10%の1-メチル-1-オクチルピロリジニウムクロライドおよび4%のKSCNのそれぞれを含む1mlの溶血試薬をPBS中に1:1で希釈された1mlの全血と混合する場合も、溶血が観察される。あるいは、1mlの全血は10%の1-メチル-1-オクチルピロリジニウムクロライドおよび4%のKSCNのそれぞれを含む2mlの溶血試薬に添加することができる。
【0071】
多くの慣例適用について、溶血試薬に対する全血試料の理想比は10:1〜1:20であることが予想される。好ましくは、本発明による方法において、全血試料は5:1〜1:15の比で溶血試薬と混合される。より好ましくは、比は2:1〜1:10であり、また好ましくは1:1〜1:5である。臨床慣例に使用され、調節された溶血試薬の可能な最終濃度、即ち、最大濃度は、溶解性およびかかる試薬の値段にも依存する。
【0072】
1-ブチル-4-メチルピリジニウムテトラフルオロボレートまたは1-ブチル-3-メチル-イミダゾリウムテトラフルオロボレートのそれぞれが、特異的溶血のための試薬において単独の膜可溶化化学物質として使用される場合、本発明によるサンプリングチューブは、好ましくは10〜30%の濃度で含み、また好ましくは12〜25%の濃度である。
【0073】
1-ブチル-3-メチル-イミダゾリウムオクチルスルフェートが特異的溶血のための試薬において単独の膜可溶化化学物質として使用される場合、本発明によるサンプリングチューブは好ましくは、1〜30%の濃度で含み、また好ましくは2〜10%の濃度である。
【0074】
1-ブチル-3-メチルピリジニウムが特異的溶血のための試薬においてカチオンとして使用される場合、好ましくは、これはアニオンとしてヨウ化物またはロダニド(rhodanide)と共に使用され、本発明によるサンプリングチューブは好ましくは、5〜30%の濃度の1-ブチル-3-メチルピリジニウムを含み、また好ましくは10〜25%の濃度で含む。
【0075】
1-ヘキシルピリジニウムクロライドが特異的溶血のための試薬において単独の膜可溶化化学物質として使用される場合、本発明によるサンプリングチューブは好ましくは、15〜30%の濃度で含み、また好ましくは20〜25%の濃度である。
【0076】
等モル濃度のKSCNと組み合わせた1-ヘキシルピリジニウムクロライドが特異的溶血のための試薬において膜可溶化化学物質として使用される場合、本発明によるサンプリングチューブは好ましくは4〜30%の濃度の1-ヘキシルピリジニウムクロライドを含み、また好ましくは5〜20%の濃度である。
【0077】
1-メチル-1-オクチルピロリジニウムクロライドが特異的溶血のための試薬において単独の膜可溶化化学物質として使用される場合、本発明によるサンプリングチューブは好ましくは、5〜30%の濃度で含み、また好ましくは10〜25%の濃度である。
【0078】
等モル濃度のKSCNと組み合わせた1-メチル-1-オクチルピロリジニウムクロライドが特異的溶血のための試薬において使用される場合、本発明によるサンプリングチューブは好ましくは、1〜30%の濃度の1-メチル-1-オクチルピロリジニウムクロライドを含み、また好ましくは1〜20%の濃度および1〜10%または1〜5%の濃度である。
【0079】
N-オクチルピリジニウムクロライドが特異的溶血のための試薬において単独の膜可溶化化学物質として使用される場合、本発明によるサンプリングチューブは好ましくは、10〜30%の濃度で含み、また好ましくは10〜25%の濃度である。
【0080】
3-カルバモイル-1-オクチルオキシメチルピリジニウムクロライドが特異的溶血のための試薬において単独の膜可溶化化学物質として使用される場合、本発明によるサンプリングチューブは好ましくは、0.5〜30%の濃度で含み、また好ましくは0.75〜25%の濃度、および1〜10%または1〜5%の濃度である。
【0081】
本発明による溶血チューブにおける使用のための特異的溶血のためのさらなる好ましい化学物質は、SCN-アニオンと組み合わせた1-ヘキシルピリジニウムカチオン、SCN-アニオンと組み合わせた1-メチル-1-オクチルピロリジニウムカチオン、および3-カルバモイル-1-オクチルオキシメチルピリジニウムカチオンである。
【0082】
好ましくは、本発明のすぐ使用できるチューブに含まれる特異的溶血に使用される化学物質は、50%重量/容積以下の濃度で使用され、また好ましくは30%以下、あるいはまた好ましくは25もしくは20%重量/容積以下で使用される。
【0083】
特異的溶血は、プロテアーゼを含むタンパク質のような細胞内成分の放出によって達成される。タンパク質の検出のような特定の適用において、酵素、例えばプロテアーゼの活性を阻害することが有利である。好ましい態様において、本発明によるサンプリングチューブは、酵素インヒビターも含む特異的溶血のための試薬を含む。好ましくは、酵素インヒビターはプロテアーゼインヒビターである。
【0084】
プロテアーゼおよび適切なプロテアーゼインヒビターが必要に応じて選択できる対応のプロテアーゼインヒビターの数が常に増大している。1つの重要な種類のプロテアーゼは、活性部位にアミノ酸セリンを有するいわゆるセリンプロテアーゼである。セリンプロテアーゼの周知の例は、トリプシン、キモトリプシン、カリクレイン、およびウロキナーゼである。当業者は、特定のプロテアーゼインヒビターがセリンプロテアーゼに対して活性であるという事実に精通している。かかるプロテアーゼの阻害能力および活性範囲は、例えば、Serva, Heidelberg またはRoche Diagnostics GmbH, Mannheimのような製造業者のデータシートに記載されている。好ましくは、セリンプロテアーゼインヒビターは、AEBSF-HCl(例えば、Serva Cat.No. 12745)、APMSF-HCl(例えば、Serva Cat.No.12320)、アプロチニン(例えば、Roche Diagnostics, Cat.No. 10 981 532 001)、キモスタチン(例えば、Roche Diagnostics, Cat.No. 11 004 638 001)、Pefabloc(登録商標)SC(例えば、Roche Diagnostics, Cat.No. 11 585 916 001)、およびPMSF(例えば、Roche Diagnostics, Cat.No. 10 837 091 001)からなる群より選択される。
【0085】
さらなる重要な種類のプロテアーゼは、活性部位にアミノ酸システインを有するいわゆるシステインプロテアーゼである。システインプロテアーゼの周知の例は、パパインおよびカルパインである。当業者は、特定のプロテアーゼインヒビターがシステインプロテアーゼに対して活性であるという事実に精通している。これらのいくつかのインヒビターは、セリンプロテアーゼに対しても活性であり、例えば、PMSFはシステインプロテアーゼインヒビターおよびセリンプロテアーゼインヒビターとして使用されてもよい。かかるプロテアーゼの阻害能力および活性範囲は、例えば、Serva, HeidelbergまたはRoche Diagnostics GmbH, Mannheimのような製造業者のデータシートに記載されている。好ましくは、システインプロテアーゼインヒビターは、ロイペプチン(例えば、Roche Diagnostics, Cat.No. 11 034 626 001)、PMSF(上述参照)、およびE-64(例えば、Roche Diagnostics, Cat.No. 10 874 523 001)からなる群より選択される。
【0086】
さらなる重要な種類のプロテアーゼは、いわゆるメタロプロテアーゼである。メタロプロテアーゼは活性中心に例えば、Zn2+、Ca2+、またはMn2+の金属イオンを含むことを特徴とする。メタロプロテアーゼの周知の例は、カルボキシペプチダーゼAおよびBならびにサーモリシンなどの消化酵素である。当業者は、特定のプロテアーゼインヒビターがメタロプロテアーゼに対して活性であるという事実に精通している。メタロプロテアーゼは、金属イオンと結合し、かつ金属キレート複合体を形成する物質によって最も容易に不活性化される。好ましくは、メタロプロテアーゼを不活性化するために、エチレンジアミノテトラ酢酸(EDTA)、エチレングリコールビス(アミノエチルエーテル)テトラ酢酸(EGTA)、および/または1,2-ジアミノシクロへキサン-N,N,N',N'-テトラ酢酸(CDTA)が使用される。他の適切なメタロプロテアーゼのインヒビターは、ホスホラミドン(=N-(α-ラムノピラノシルオキシヒドロキシホスフィニル)-L-ロイシル-Lトリプトファン、二ナトリウム塩;例えば、Roche Diagnostics, Cat.No. 10 874 531 001)およびベスタチン(例えば、Roche Diagnostics, Cat.No. 10 874 515 001)である。これらのプロテアーゼインヒビターの阻害能力および活性範囲は、例えば、Serva, Heidelberg, またはRoche Diagnostics GmbH, Mannheimのような製造業者の対応するデータシートに記載されている。好ましいメタロプロテアーゼのインヒビターは、EDTA、EGTAおよび/またはベスタチンである。
【0087】
さらなる重要な種類のプロテアーゼは、アスパラギン(酸性)プロテアーゼとして公知である。アスパラギン酸プロテアーゼは活性中心にアスパラギン酸残基を有することを特徴とする。アスパラギン酸プロテアーゼの周知の例は、ペプシン、カセプシンD、キモシン、およびレニンである。当業者は、特定のプロテアーゼインヒビターがアスパラギン酸プロテアーゼに対して活性であるという事実に精通している。好ましいアスパラギン酸プロテアーゼのインヒビターは、α2-マクログロブビン(例えば、Roche Diagnostics, Cat.No. 10 602 442 001)およびペプスタチン(例えば、Roche Diagnostics, Cat.No. 11 359 053 001)である。
【0088】
特定の適用のために、特定の種類のプロテアーゼのためのプロテアーゼインヒビターを含む特異的溶血のための試薬を使用することができる。
【0089】
2つ以上のプロテアーゼインヒビターのカクテルが、特異的に溶血された血液試料中のタンパク質分析物の好ましくない分解を阻害するために使用されることは、本発明による好ましい態様を示す。好ましくは、本発明によるサンプリングチューブに使用される特異的溶血のための試薬は、セリンプロテアーゼ、システインプロテアーゼ、メタロプロテアーゼおよびアスパラギン酸プロテアーゼからなる群より選択される2種類のプロテアーゼに対して活性を有する少なくとも2つの異なるプロテアーゼインヒビターを含む。また好ましくは、これらの酵素種類の少なくとも3つが適切なインヒビターカクテルによって阻害される。好ましくは、本発明による糞試料希釈物がセリンプロテアーゼ、システインプロテアーゼ、メタロプロテアーゼ、およびアスパラギン酸プロテアーゼのそれぞれに対して活性であるプロテアーゼインヒビターから構成されるプロテアーゼインヒビターカクテルを含む。
【0090】
好ましくは、10以下の異なるプロテアーゼインヒビターが、使用され、特異的に溶血された血液試料中の目的のタンパク質分析物を安定化するために十分なプロテアーゼ阻害を達成するのに十分である。
【0091】
好ましくは、プロテアーゼインヒビターは、アプロチニン、キモスタチン、ロイペプチン、EDTA、EGTA、CDTA、ペプスタチンA、フェニルメチルスルホニルフルオリド(PMSF)、およびPefabloc(登録商標)SCからなる群より選択される。好ましくは、特異的溶血のための試薬にさらに含まれるプロテアーゼインヒビターは、プロテアーゼインヒビターのキモスタチン、ロイペプチン、CDTA、ペプスタチンA、PMSF、およびPefabloc(登録商標)SCの1つ以上を含む。また好ましくは、これは、アプロチニン、ロイペプチン、EDTA、およびPefabloc(登録商標)SCを含む。
【0092】
さらに好ましい態様において、本発明によるサンプリングチューブは、上述のような、特異的溶血のための化学物質および抗凝固剤を含み、ヌクレアーゼをさらに含む。特異的に溶血された血液試料の長期保存または移送は、核酸の放出によって達成されてもよく、特にDNAが真核生物の血液細胞の核から放出されてもよい。有意な量のDNAが遊離される場合、これによって、高粘度の試料がもたらされ、かかる試料はもはや診断慣例に使用することができない。この効果は、ヌクレアーゼの使用によって妨げることができる。好ましくは、本発明によるサンプリングチューブは、DNaseを含む特異的溶血のための試薬を含む。好ましいDNaseはベンゾナーゼである。
【0093】
好ましい態様において、本発明は、液体クロマトグラフィーのための全血試料の処理における特異的溶血のための化学物質および抗凝固剤を含むすぐ使用できるおよび使い捨てサンプリングチューブの使用に関する。サンプリングチューブおよびそこに含まれる特異的溶血のための試薬に好ましい上述の態様はまた、液体クロマトグラフィーのための全血試料の処理におけるかかるサンプリングチューブの使用に適用する。
【0094】
液体クロマトグラフィー(LC)は、種々の試料成分の複合混合物中に存在する場合にも目的の分析物の分離、同定および定量に使用される極めて重要な分析技術である。LC中に混合物中の化学成分は、液体移動相のフローによって固定相から運ばれる。液体クロマトグラフィーの分離は、移動相および固定相の両方を用いた分析物の相互作用の差異の手段によって達成される。当業者が認めるように、調査中の分析物に適切な固定相および移動相の両方が選ばれなければならない。また、ユーザーは、試料が固定相カラムから検出器に移動する場合に分析物バンドの鋭敏さを維持するために適切なクロマトグラフィー条件を同定する。
【0095】
高圧力液体クロマトグラフィーとしても公知で、HPLCと省略される高性能液体クロマトグラフィーは、液体クロマトグラフィーの特別な形態であり、現在生化学および分析化学において頻度高く使用される。分析物は固定相のカラムから高圧力で液体(移動相)に押し出され、分離される成分が固定相に残る時間、従ってカラムに拡散しなければならない時間を低減する。このことは、得られるクロマトグラムの狭いピークをもたらし、LCと比較して良好な分解能および感度をもたらす。
【0096】
移動相は試料溶質の溶解性を確実にするように選ばれる。固定相について、高い表面積が溶質-固定相相互作用の違いを強調するために、好ましくは微粒子シリカ(そのまままたは化学修飾)が使用される。溶質移動相相互作用に関して溶質と強力に相互作用する固定相の使用は、非常に長い保持時間となり、その状態は分析に有用でない。従って、固定相は、移動相に対して弱〜中程度の溶質相互作用を提供するように選択されなければならない。結果として、溶質の性質が選択されるLCの種類を支配する。より強い相互作用が試料溶解性および準備溶出を確実にするために移動相で生じるべきだが、固定相は溶質間での微妙な違いに応答するべきである。例えば、極性中性化合物は通常、溶質の分散特性における微妙な違いを区別する非極性固定相と共に極性移動相を用いて良好に分析される。HPLCの強力な側面の1つは、移動相が保持機構を変更するように変化できることである。修飾剤は、保持を制御する移動相に添加することができる。例えば、pHは水性移動相において重要な変数である。
【0097】
LCは一般的な5つの種類に分類できる:
1.正常相クロマトグラフィーは非極性(分散性)移動相と共に極性固定相の使用を必要とする。
2.反対の可能性である、逆相クロマトグラフィーは、非極性固定相および極性移動相(溶媒の水、メタノール、アセトニトリルおよびテトラヒドロフランの1つ以上から構成される)の使用を必要とする。
3.イオン交換クロマトグラフィーはイオン性相互作用を伴う。この場合において、移動相はイオン性溶質の溶解性を確実にするためにイオン化を支持しなければならない。固定相はまた、ある保持を促進するために部分的にイオン性でなければならない。結果的に、固定相を用いた相互作用は、強力であり、これは通常、長い分析時間および広いピークに反映される。
4.サイズ排除クロマトグラフィーは分子サイズのみに基づいた分離を伴い、理想的に溶質の固定相との強力な相互作用がないことを必要とする。
5.アフィニティークロマトグラフィーは、例えば抗原および対応する抗体またはレセプターおよび対応するリガンドのような、特異的結合対の一員の間の特定の相互作用に基づいている。例えば、結合対の第一パートナーは適切な固定相に結合され、結合対の第二のパートナーを捕捉するために使用される。第二のパートナーは、適切な手段によって放出でき、単離できる。
【0098】
固定相の慣例適用において、いわゆる床物質、例えば、RP-HPLC適用におけるアルキルシラノールをコートした多孔性シリカ粒子が、適切なカラムに充填される。固定相粒子の直径は、通常、HPLC適用の大部分について1〜10μmの範囲であり、これらの粒子の平均孔径は、数ナノメートル〜数百ナノメートルで変化する。また、非多孔性粒子があるHPLC適用に使用される。また、いわゆるモノシリック物質も、HPLC適用に使用されてもよい。固定相物質の小粒子はHPLCに使用される高い圧力を必要とする。床物質は通常、フリットによって保護される。典型的なフリットは、1μm、0.45μmまたは0.2μmの孔径を有する。粒子が小さくなれば、フリットの孔径も通常小さくなる。試料がHPLCフリットをふさぐことができる成分を含む場合、これは任意の慣例分析に有害である。
【0099】
全血試料、および試料成分の沈殿物を含む「過剰処理された」全血試料は、任意の慣例HPLCフリットまたはカラムの急速ブロッキングを生じる。当業者が認めるように、フリットの孔径が小さいほど、固定相粒子の直径が小さいほど、カラム直径が小さいほど、HPLCカラムに使用されるフリットのブロッキングがより急速に生じる。フリットが適切に選択されない、即ち、非常に大きな孔径である場合に、カラム物質の粒子径が問題となって、粒子がより小さいほどカラム自体がより急速にふさがれる。
【0100】
本発明によるサンプリングチューブへの全血試料の直接サンプリングによって、カラムをふさぐリスクがなく、HPLCカラムに直接適用できる処理全血試料が得られる。好ましい態様において、本発明は、本発明によるすぐ使用できるサンプリングチューブに血液を回収する方法であって、全血試料を特異的に溶血された血液試料に処理し、その後該処理血液試料をHPLC工程に供する方法に関する。
【0101】
好ましくは、かかるHPLC工程に使用される固定相粒子は直径で1〜10μmの範囲であり、また好ましくは2〜7μmの範囲である。好ましくは、かかるHPLC工程に使用されるフリットは0.45μmの孔径または好ましくは0.2μmの孔径を有する。
【0102】
さらなる好ましい態様において、本発明は、目的の分析物の液体クロマトグラフィー系分析における本発明によるサンプリングチューブに全血を回収することによって得られた特異的に溶血された血液試料の使用に関する。
【0103】
目的の分析物は任意の適切な手段によって検出することができる。適切で好ましい検出器は通過する化合物の存在を検出し、電気シグナルをレコーダーまたはコンピューターデータステーションに提供する。出力は通常、クロマトグラムの形式であり、目的の物質は通常、特定のピークに見られる。ピーク面積またはピーク高さは調査される試料に存在する分析物の量を定量するために使用することができる。
【0104】
HPLC系の検出器は試料化合物の溶出による応答を発し、次にクロマトグラムでピークのシグナルとなるコンポーネントである。これは、化合物がカラムから溶出するときに化合物を検出するために固定相のすぐ後部に置かれる。検出および感度パラメーターは、当業者によって調節されてもよい。HPLCに使用できる多くの種類の検出器がある。いくつかのより一般的な検出器としては、屈折率(RI)、紫外光(UV)、蛍光、放射性化学、電気化学、近赤外(Near-IR)、質量分析(MS)、核磁気共鳴(NMR)、および光散乱(LS)が挙げられる。
【0105】
屈折率(RI)検出器は試料分子が光を曲げるまたは反射する能力を測定する。各分子または化合物のこの特性はその屈折率と呼ばれる。ほとんどのRI検出器について、光は二モジュラーフローセルから光検出器に進む。フローセルの1つのチャネルはカラムを通過する移動相に連結され、他は移動相のみに連結される。検出器は光がカラムから溶出される試料によって曲げられる場合に生じ、これは2つのチャネル間の不均衡として読み取られる。
【0106】
蛍光検出器は化合物がそれぞれ所定の波長で光を吸収し、再発光する能力を測定する。蛍光を発光できる各化合物は、特徴的な励起波長および発光波長を有する。励起光はフローセルを通過するが、直交位置の光検出器は特定波長の発光された光を測定する。
【0107】
放射性化学検出は、放射性標識物質、通常三重水素(3H)または炭素-14(14C)の使用を伴う。これは、β粒子イオン化と関連する蛍光の検出を操作し、代謝物研究において最も一般的である。
【0108】
電気化学検出器は、酸化反応または還元反応を受ける化合物を測定する。これは、通常、所定の電位差の電極間を通過するときに移動する試料からの電子の獲得または消失を測定することによって達成される。
【0109】
質量分析は、イオンの質量対電荷比(m/z(またはm/q))を測定するために使用される分析技術である。これは、試料成分の大きさを示す質量スペクトルを生じることによって物理的試料の組成を分析するために最も一般的に使用される。該技術はいくつかの適用を有し、化合物および/またはその断片の質量によって未知の化合物を同定すること;化合物における1つ以上の要素の定組成を決定すること;化合物の断片化を観察することによって化合物の構造を決定すること;慎重に設計された方法(質量分析は固有的に定量的ではない)を用いて試料中の化合物の量を定量すること;気相イオン化学の基盤を研究すること(減圧におけるイオンおよび中性子の化学);様々な他のアプローチを用いて化合物の他の物理的、化学的または生物学的特性を決定することを含む。
【0110】
質量分析器は質量分析に使用されるデバイスであり、試料の質量スペクトルを生じ、その組成を分析する。これは通常、試料をイオン化し、異なる質量のイオンを分離し、イオン流出の強度の測定による相対的重複を記録することによって達成される。典型的な質量分析器は、イオン供給源、質量分析器、および検出器の3つの部分を備える。
【0111】
イオン供給源の種類は、どんな種類の試料が質量分析によって分析できるかに非常に影響を及ぼす寄与因子である。電子イオン化および化学イオン化は気体および蒸気に使用される。化学イオン化供給源において、分析物は供給源の衝突中の化学イオン分子反応によってイオン化される。液体および固体生物学的試料によく使用される2つの技術としては、電子スプレーイオン化(ESI)およびマトリックス補助レーザー脱離/イオン化(MALDI)が挙げられる。他の技術としては、高速原子衝突(FAB)、熱スプレー、大気圧化学イオン化(APCI)、二次イオン質量分析(SIMS)および熱イオン化が挙げられる。
【0112】
好ましい態様において、本発明による方法における分析物の検出は、質量分析によって行われる。
【0113】
核磁気共鳴(NMR)検出は、Hおよび13Cを含む奇数質量を有する特定核がランダムな様式で軸を回転するという事実に基づいている。しかし、強磁場に置かれる場合、スピンが磁場に平行してまたは逆平行してのいずれかで整列され、平行配置がエネルギーにおいて少し低いので好ましい。これらの磁気核は、特定強度の磁場に置かれる場合にRFエネルギーを吸収することができる。この吸収が起こる場合、核は共鳴していると言われる。分析科学者にとって驚くべきことに、分子内の種々の原子が所定の場強度の種々の振動数で共鳴する。分子の共鳴振動数の観察によって、ユーザーは分子についての構造情報を発見することができる。
【0114】
供給源が溶液中の粒子に当たる平行ビーム光を放出する場合、ある光は反射、吸収、透過、または散乱される。これらの現象は、光散乱(LS)検出器によって測定できる。LS検出の最も卓越した形態は、比濁分析および濁度測定と呼ばれる。比濁分析は、照射された懸濁液の容量から現れた散乱光の強度測定として定義される。照射強度に対する散乱強度の比は標準の公知特性と比較される。濁度測定は、溶液中の粒子による透過光の減少の基準として定義される。これは、粒子溶液によって透過される光の減少として光散乱を測定する。従って、これは、透過された残光を定量する。
【0115】
近赤外検出器は、700〜1100nmのスペクトルにおける化合物のスキャニングで作動する。各分子の特定化学結合の伸縮振動および変角振動が特定波長で検出される。
【0116】
本発明による好ましい態様において、哺乳動物由来の全血試料または哺乳動物由来の抗凝固全血試料が本発明によるすぐ使用できるサンプリングチューブに回収され、それによって得られた処理試料に含まれる目的の分析物が、オンライン、即ち、濾過、沈殿または遠心分離のような任意の更なる工程なしで検出される。従って、好ましい態様において、本発明は、全血試料を分析する方法であって、本発明によるすぐ使用できるサンプリングチューブに試料を回収する工程、特異的に溶血された全血試料を得る工程、該処理試料をHPLC工程に供する工程、およびそれによってまたはその後に該試料中の目的の分析物を検出する工程を含む方法に関する。
【0117】
本発明による分析物は、生物分子を含む任意の無機分子または有機分子であってもよい。好ましくは、分析物は、核酸でなく、特にDNAでない。好ましくは、分析物は、ポリペプチド、炭水化物、および無機または有機薬物分子からなる群より選択される。好ましくは、目的の分析物は10,000Da以下のMWを有し、また好ましくはそれぞれ9kDa以下、8以下、7kDa以下、6kDa以下、または5kDa以下である。
【0118】
ポリペプチドまたはタンパク質は、本質的にアミノ酸から構成され、かつペプチド結合によって結合された少なくとも2つのアミノ酸を有する分子である。本明細書に開示される方法で調査される目的の分析物において、ポリペプチドは好ましくは、少なくとも3、4、5、6、7、8、9、10、12、15、20、25および30から約100アミノ酸までからなる。好ましくは、ポリペプチドは5〜100アミノ酸を含み、また好ましくは10〜40アミノ酸を含む。目的の適切なペプチド分析物は、例えばペプチドホルモン、および循環に存在する他のポリペプチド、特に例えば本明細書に開示されるサンプリングチューブで全血試料をインキュベートすることによる赤血球から放出されるポリペプチドである。
【0119】
好ましくは、本発明による方法は、全血試料からの分析物のオンライン検出に使用され、該分析物は赤血球に少なくとも部分的に局在する。
【0120】
本発明による好ましい標的分析物は、乱用薬物および免疫抑制薬からなる群より選択される。
【0121】
好ましい標的分析物は、乱用薬物である。乱用薬物は、好ましくはアンフェタミン、コカインおよびベンゾイルエクグノニンなどのコカイン代謝物、メタアンフェタミン、オピエートおよびオピエート誘導体、テトラヒドロカンナビノールなどのカンナビノイド、およびフェンシクリジンからなる群より選択される。
【0122】
好ましい標的分析物は、免疫抑制薬である。免疫抑制薬は好ましくは、シクロスポリン(CsA)、ミコフェノール酸モフェチル(MMF)、ラパマイシン(RAPAはシロリムスとしても公知)、タクロリムス(FK-506)アザチオプリン(AZA)、およびメチルプレドニゾロン(MP)からなる群より選択される。
【0123】
さらなる好ましい標的分析物は、葉酸、特に血漿および赤血球の両方に含まれる全ての葉酸である。
【0124】
本発明によるサンプリングチューブに回収される全血試料から測定される好ましい分析物は、シロリムス、タクロリムスおよび葉酸である。
【0125】
さらなる態様において、本発明は、全血試料の特異的溶血のための試薬を含むサンプリングチューブの使用であって、該特異的溶血のための試薬は血液分解活性化学物質および抗凝固剤を含み、液体クロマトグラフィーのための全血試料の処理におけるすぐ使用できるおよび使い捨てサンプリングチューブの使用に関する。本発明によるサンプリングチューブに含まれる特異的溶血のための試薬に関して好ましく上述に記載される態様はまた、液体クロマトグラフィーのための全血試料の処理における溶血試薬の使用に適用する。
【0126】
本発明による全血試料のための使い捨ておよびすぐ使用できるサンプリングチューブならびに慣例診断環境におけるその使用は、サンプリング時の全血試料が特異的に溶血された血液試料に直接処理されるという顕著な利点を有する。これは、他の場合に全血試料または抗凝固全血試料の取り扱いおよび保存に必要な予防措置手段を省く。特異的に溶血された血液は、血漿または血清試料のように取り扱うことができる。細胞を置くことはなく、正しい分析物測定に干渉するかもしれない溶血の段階増大はもはや生じることができない。特異的に溶血された血液試料の移送は容易で、便利である。ウイルス粒子は、存在する場合、特異的溶血のための試薬と接触させる場合に可溶化され、破壊されるべきである。従って試験されないが、バイオハザードリスクも本発明による全血サンプリングチューブの使用によって大きく減少されることが予測される。
【0127】
以下の実施例および図面は、本発明の理解を補助するために提供され、その真の範囲は添付の特許請求の範囲に示される。本発明の精神を逸脱することなく示される手順において変更が行うことができることが理解されよう。
【実施例】
【0128】
実施例1
様々な候補溶血試薬の評価
実施例1.1 溶血の視覚評価
溶液A:新鮮EDTA安定化全血を、0.15モル塩化ナトリウム溶液で1:10の比に希釈する(50μL EDTA血液+450μL 塩化ナトリウム溶液)。
【0129】
溶液B:0.15モル塩化ナトリウム中の候補溶血試薬溶液を調製し、溶血試薬の濃度は溶血物中の所望の最終濃度より2倍高くする。例えば、最終濃度25%の1-ブチル-4-メチルピリジニウムテトラフルオロボレートを得るために、50%の溶液(50mg塩+50mL 0.15モル水中塩化ナトリウム)を調製する。第二のアニオン、例えばヨウ素(1-ブチル-3-メチルピリジニウムクロライド/KJ)の添加の場合、記載された塩を等モル量で添加する。
【0130】
溶血物は溶液AおよびBを等容積、例えば、500μL溶液A+500μL溶液Bで混合することで調製される。
【0131】
混合後に、溶血物を混合直後、1分、2、5、6、7、20および40分後に濁度および透明度について視覚で検査する。透明溶液が観察されるまでの時間を記録する。
【0132】




上述の表から明らかなように、視覚評価によって特異的溶血のための良好な候補試薬が視覚で同定することができる。
【0133】
実施例1.2 溶血の顕微鏡評価
溶液A:新鮮EDTA安定化全血を、0.15モル塩化ナトリウム溶液で1:10の比に希釈する(50μL EDTA血液+450μL 塩化ナトリウム溶液)。
【0134】
溶液B:0.15モル塩化ナトリウム中の溶血試薬溶液を調製し、溶血試薬の濃度は溶血物中の所望の最終濃度より2倍高くする。例えば、最終濃度25%の1-ブチル-4-メチルピリジニウムテトラフルオロボレートを得るために、50%の溶液(50mg塩+50mL 0.15モル水中塩化ナトリウム)を調製する。第二のアニオン、例えばヨウ素(1-ブチル-3-メチル ピリジニウムクロライド/KJ)の添加の場合、記載された塩を等モル量で添加する。
【0135】
溶血物は溶液AおよびBを等容積、例えば、20μL溶液A+20μL溶液Bで混合することで調製される。
【0136】
メイ-グルンワルド染色および顕微鏡
溶血物の混合後に、滴を顕微鏡スライドに塗り、室温で空気乾燥し、メイ-グルンワルド染色試薬(Merck Cat. No. 1.01424 May-Grunwald's Eosin Methylene Blue Solution)で染色する。メイ-グルンワルド染色後に、核は様々な彩度の紫色に染色し、細胞質は青色から淡いピンク色の色調で見られ、鮮やかな赤みがかった色からライラック色の顆粒がいくつかの細胞種類の細胞質に存在することがあり、好塩基球は細胞質で濃い青黒色顆粒を示し、好中球は、細胞質で明るいオレンジ色顆粒を示し、赤血球はピンク色からオレンジ色に染色される。
【0137】
顕微鏡検査は、油浸光学顕微鏡(倍率X630倍)によって実施される。
【0138】
比較結果−それぞれ水で得られた図1溶解物および特異的溶血のための適切な試薬で得られた図2溶解物−は、数分以内の適切な溶血試薬の添加によって、赤血球の完全な溶解がもたらされることを示す。
【0139】
トリパンブルー染色および顕微鏡検査
処理全血試料をトリパンブルー溶液(Merck cat. no 1.11732; Trypanblau C.I. 23850)と(1:1)混合し、顕微鏡検査のためのNeugebauer-chamberに分配する。顕微鏡検査は、油浸光学顕微鏡(倍率X630倍)によって実施される。
【0140】
比較結果−それぞれ水で得られた図3溶解物および特異的溶血のための適切な試薬で得られた図4a)およびb)溶解物−は、数分以内の適切な溶血試薬の添加によって、赤血球の完全な溶解がもたらされることを示す。
【0141】
実施例2
HPLCによる様々な候補溶血試薬の評価
溶解効率を評価するために、実施例1によって調製された溶血された全血試料をHPLC系に注入し、系の背圧をモニターする。
【0142】
HPLC系は、DR5溶媒送達系、自動試料回収器および自動インジェクターを備えたサーモスタットを有するHP 1090液体クロマトグラフ(Agilent)からなる。
溶解効率は、50の10μLの処理全血試料を、床物質として5μm Symmetry C18粒子、2mmの内部カラム直径、20mmのカラム長および0.5μmの孔径を有するフリットを有するHPLCカラムに適用することによって評価される。溶出は、5分以内の0.1%蟻酸を有する水〜0.1%蟻酸を有するアセトニトリルの勾配、および0.2mL/分の流速である。50インジェクションに対する観察された背圧の増加は、20 bar未満である。
【0143】
溶解が蒸留水のみで達成される場合、上記HPLC条件下で観察される背圧の増加は100 barより大きい。
【0144】
実施例3
特異的溶血のための試薬を含むチューブにピペッティングして優しく混合物を振とうすることによるEDTA抗凝固全血の処理
3.1 1-ブチル-4-メチルピリジニウムテトラフルオロボレート
溶解試薬を、11.25mLチオシアネートカリウム溶液(0.1モル;即ち9.72g KSCNが1L蒸留水に溶解される)を12.5mL 1-ブチル-4-メチルピリジニウムテトラフルオロボレート(BMPBF4)および23.7mL塩化ナトリウム(水中0.15モル)と混合することによって調製する。従って、特異的溶血のためのこの試薬は約25%BMPBF4の濃度を有する。チオシアネートカリウムがかなり低いモル濃度で存在するので、観察される効果に有意にはほとんど寄与しないようである。
【0145】
250μLのEDTA抗凝固全血を5mlのこの溶解試薬を含むバイアルにピペッティングする。溶血のために、チューブの内容物を振とうによって優しく混合する。光学的に透明溶解物が5分以内に得られる。溶解物を4℃で保存する。溶解物の安定性を、視覚検査によって1、4、および7日後に検査する。溶解物は光学的に7日間も透明のままである。
【0146】
3.2 1-メチル-1-オクチルピロリジニウムクロライドを用いるチオシアネートカリウム
この溶解試薬を、23.7mLチオシアネートカリウム溶液(0.2モル;即ち9.72g KSCNが0.5L蒸留水に溶解される)を1000mg 1-メチル-1-オクチルピロリジニウムクロライド(Me-octPCI)および23.7mL塩化ナトリウム(水中0.15モル)と混合することによって調製する。従って、特異的溶血のためのこの試薬は、約2%Me-octPClの濃度を有する。
【0147】
250μLのEDTA抗凝固全血を5mlのこの溶解試薬を含むバイアルにピペッティングする。溶血のために、チューブの内容物を振とうによって優しく混合する。光学的に透明溶解物が5分以内に得られる。溶解物を4℃で保存する。溶解物の安定性を、視覚検査によって1、4、および7日後に検査する。溶解物は光学的に7日間も透明のままである。
【0148】
3.3 チオシアネートカリウムを用いた1-メチル-1-オクチルピロリジニウムクロライド
実施例3.2と比較してこの濃縮溶解試薬を、470μLチオシアネートカリウム溶液(1モル)を300μL塩化ナトリウム溶液(水中の0.15モル)および110mgの1-メチル-1-オクチルピロリジニウムクロライドと混合することによって調製する。特異的溶血のためのこの試薬は、約15%Me-octPCIの濃度を有する。
【0149】
20μLのEDTA抗凝固全血を80μLのこの溶解試薬を含む容器にピペッティングする。溶血のために、チューブの内容物を振とうによって優しく混合する。光学的に透明溶解物が5分以内に得られる。溶解物を4℃で保存する。溶解物の安定性を、視覚検査によって1および2日後に検査する。溶解物は光学的に透明のままである。
【0150】
3.4 3-カルバモイル-1-オクチルオキシメチルピリジニウムクロライド
この溶解試薬を、80μL水と50μL塩化ナトリウム溶液(水中0.15モル)および20mg 3-カルバモイル-1-オクチルオキシメチルピリジニウムクロライドと混合することによって調製する。特異的溶血のためのこの試薬は、約10%COMPClの濃度を有する。
【0151】
50μLのEDTA抗凝固全血を130μLのこの溶解試薬を含む容器にピペッティングする。溶血のために、チューブの内容物を振とうによって優しく混合する。光学的に透明溶解物が5分以内に得られる。溶解物を4℃で保存する。溶解物の安定性を、視覚検査によって1および2日後に検査する。溶解物は光学的に透明のままである。
【0152】
上記に議論した実験から、すぐ使用できるサンプリングチューブに直接抗凝固剤を含むこと、従って、全血試料の特異的溶血のための試薬を含み、該特異的溶血のための試薬が抗凝固剤を含むサンプリングチューブがもたらされることが可能で、有利であるということが当業者に明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0153】
【図1】水で溶血された1:10希釈の全血の光学顕微鏡検査。メイ-グルンワルド染色を適用する。赤血球の膜および核が可視化される。
【図2】1-ブチル-4-メチルピリジニウムテトラフルオロボレート(25%)で溶血された1:10希釈の全血の光学顕微鏡検査。メイ-グルンワルド染色を適用する。赤血球または膜は残っていないが、核はなおインタクトである。
【図3】水で溶血された1:10希釈の全血の光学顕微鏡検査。トリパンブルー染色を使用する。
【図4】1-ブチル-4-メチルピリジニウムテトラフルオロボレート(25%)で溶血された1:10希釈の全血の光学顕微鏡検査。トリパンブルー染色を使用する。a)2.5分インキュベーション時間:僅かな残渣赤血球が残るb)15分インキュベーション時間:赤血球または膜は残らない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
全血試料を回収および処理するためのサンプリングチューブであって、該サンプリングチューブは該全血試料の特異的溶血のための試薬を含み、該特異的溶血のための試薬は塩および抗凝固剤を含み、該塩はKBr;KJ;KSCN、またはカチオン


(式中、mは0または1、nは4または6である)
ならびにクロライド、テトラフルオロボレート、オクチルスルフェート、ヨウ化物および/またはチオシアネートのアニオンの1つ以上からなる塩から選択され、すぐ使用できるおよび使い捨てサンプリングチューブである、サンプリングチューブ。
【請求項2】
前記特異的溶血のための試薬が赤血球の細胞膜の溶解を生じ、同時に試料成分の沈殿を生じない、請求項1記載のサンプリングチューブ。
【請求項3】
前記特異的溶血のための試薬がプロテアーゼインヒビターをさらに含む、請求項1または2記載のサンプリングチューブ。
【請求項4】
前記特異的溶血のための試薬がヌクレアーゼをさらに含む、請求項1〜3いずれかに記載のサンプリングチューブ。
【請求項5】
前記ヌクレアーゼがデオキシリボヌクレアーゼである、請求項4記載のサンプリングチューブ。
【請求項6】
前記デオキシリボヌクレアーゼがベンゾナーゼである、請求項5記載のサンプリングチューブ。
【請求項7】
前記特異的溶血のための試薬によって、フィルターをふさがずに2mmの直径および0.5μmの孔径を有するフィルターに少なくとも50の10μLアリコートで適用できる処理全血試料がもたらされる、請求項1〜6いずれかに記載のサンプリングチューブ。
【請求項8】
液体クロマトグラフィーのための全血試料の処理における前記請求項いずれかに記載のサンプリングチューブの使用。
【請求項9】
液体クロマトグラフィー系分析における請求項1〜7いずれかに記載のサンプリングチューブ内での特異的溶血によって得られた処理血液試料の使用。
【請求項10】
液体クロマトグラフィーのための全血試料の処理における全血試料の特異的溶血に適切な試薬組成物の使用であって、該組成物が抗凝固剤を含む、使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2009−540276(P2009−540276A)
【公表日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−513586(P2009−513586)
【出願日】平成19年6月4日(2007.6.4)
【国際出願番号】PCT/EP2007/004925
【国際公開番号】WO2007/140963
【国際公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【出願人】(591003013)エフ.ホフマン−ラ ロシュ アーゲー (1,754)
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN−LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
【Fターム(参考)】