説明

ずれ防止立体構造経編地

布帛の柔軟性などを損なわずに耐圧性、地組織のずれ防止性に優れた立体構造経編地を提供すること。表裏二面の地組織と該表裏二面の地組織を相互に連結する連結糸4とからなる立体構造経編地1において、連結糸間に挿入糸5を有し、該挿入糸5が裏面地組織3の内側に添って編成係止されている立体構造経編地。また、挿入糸は、押さえ糸により裏面地組織に編成係止されているものである。立体構造経編地が圧縮された際の連結糸の屈曲を極力少なくし、しかも屈曲した連結糸同士の絡みによる復元力低下を防止するとともに、連結糸が傾斜することを防止することができる。そのため、本発明の立体構造経編地は挿入糸の挿入方向によってコース方向或いはウエル方向の力を受けても地組織がコース方向或いはウエル方向にずれることを有効に防止することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
(発明の属する技術分野)
本発明は、クッション材や充填材として衣料分野、特に車両用シート材等の産業資材分野で利用されている立体構造経編地に関し、更に詳しくは、表面地組織と裏面地組織、これらを相互に連結する連結糸、及び、連結糸間に編成係止された挿入糸とを主な構成部材とするもので、耐圧性と圧縮復元性を有し、地組織相互のずれを有効に防止できる立体構造経編地に関する。
【背景技術】
(従来の技術)
表面地組織と裏面地組織、並びにこれらを連結する連結糸とからなる立体構造経編地に関しては、今までに、種々のものが提案されてきている。
これらの立体構造経編地は、主として、繊維素材を2列針床の経編機で編成することによって形成される。
連結糸に関しては、表、裏面地組織に対し、ほぼ直交状態で連結する直交連結糸を有するもの、表、裏面部に斜交した状態で連結する斜交連結糸を有するもの、或いは直交、斜交の連結糸を同時に併せ持つトラス構造のもの等がある。
これら従来の立体構造経編地においては、耐圧性を強化するために、連結糸の表、裏面地組織に対する交錯状態、つまり、どのようなトラス構造を形成して、表、裏面地組織相互のずれ防止を可能にし耐圧性を得るか、或いは連結糸にどのような素材を使用して耐圧性を得るか等がキーポイントとなっていた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、このような従来の立体構造経編地においては、耐圧性を重視し、その圧縮復元性を得る手段として、トラス構造を採用すること、弾性のより高い連結糸を用いること等の他、特に連結糸を高密度に用いるという手段に強く依存していた。
そのため、一方では、圧力が加えられた際、高密度の連結糸が屈曲して互いに絡み合い、復元性が低下するという問題が生じた。
また、表、裏面地組織の両方、或いはいずれか一方にネット組織を採用している場合には、そのネット組織の開口部から連結糸がはみ出し、外部から損耗を受けて毛羽立ち等を生じた。
その結果、使用時に不快感があったり、或いは見栄えが悪くなるなどの原因となった。
この様な問題を解決するために、表面地組織と裏面地組織と、該表、裏面地組織を相互に連結する連結糸と、該該表、裏面地組織に並列に該連結糸間に挿入された複数の経挿入糸および/または緯挿入糸とを含み、少なくとも上記経挿入糸の一列は該連結糸と交錯して織物組織を形成する立体編物が知られている。(特許文献1参照)
しかし、この方法によると、挿入糸を複数本挿入するため、布帛が地厚になり目付が大きくなるばかりか、布帛の柔軟性が損なわれる。
更に複数の挿入糸を用いるため、使用状況によっては挿入糸が接近したり絡んでしまい、連結糸を拘束できなくなる。
その結果、耐圧性や地組織相互のずれ防止性が必ずしも十分に良くならないのである。
【特許文献1】 特開昭62−45760号公報
本発明は、このような問題点を解決するためになされたものである。
すなわち、本発明は、布帛の柔軟性などを損なわずに耐圧性、地組織相互のずれ防止性に優れた立体構造経編地を得ることを目的とする。
(問題を解決するための手段)
上記問題点を解決するために本発明においては、従来の立体構造経編地に見られる、表面地組織、裏面地組織、連結糸の構成部材に加えて、地組織の内側に添って挿入糸を編成係止することによって、柔軟性を損なわずに、圧縮された際の連結糸の屈曲や絡みを極力少なくし復元力低下を防止でき、また地組織相互のずれも有効に防止できることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、(1)、表裏二面の地組織と該表裏二面の地組織を相互に連結する連結糸とからなる立体構造経編地において、連結糸間に挿入糸を有し、該挿入糸が裏面地組織の内側に添って編成係止されている立体構造経編地に存する。
そして、(2)、挿入糸は、押さえ糸により裏面地組織に編成係止されている立体構造経編地に存する。
そしてまた、(3)、挿入糸がコース方向および/またはウエル方向に挿入されていることを特徴とする請求項1記載の立体構造経編地に存する。
そしてまた、(4)、挿入糸が押さえ糸により編成係止されている部分において、挿入糸の重なりが2〜6本であり、挿入糸の重なり部分の総繊度が334〜8400dtexである立体構造経編地に存する。
そしてまた、(5)、下記式1で示す挿入糸の挿入密度が、0.006〜0.4g/cmである立体構造経編地に存する。
挿入密度=S/10000T ・・・(式1)
S:1m当たりの挿入糸使用量(g)
T:立体構造経編地の厚み(cm)
そしてまた、(6)、表裏二面の地組織と該表裏二面の地組織を相互に連結する連結糸とからなる立体構造経編地を製造する方法であって、連結糸間に挿入糸を挿入し、該挿入糸を裏面の地組織の内側に添って押さえ糸によって編成係止する立体構造経編地の製造方法に存する。
本発明は、目的に添うものであれば、上記1〜6の中から選ばれた2つ以上を組み合わせた構成も当然可能である。 本発明の立体構造経編地においては、表裏二面の地組織と該表裏二面の地組織を相互に連結する連結糸とからなる立体構造経編地において、連結糸間に挿入糸を有し、該挿入糸が裏面地組織の内側に添って編成係止されている構造を採用しているので、立体構造経編地が圧縮された際の連結糸の屈曲を極力少なくし、しかも屈曲した連結糸同士の絡みによる復元力低下を防止するとともに、連結糸が傾斜することを防止することができる。
そのため、本発明の立体構造経編地は挿入糸の挿入方向によってコース方向或いはウエル方向の力を受けても地組織がウエル方向或いはコース方向にずれることを有効に防止することができる。
また、挿入糸は、裏面地組織の内側に添って編成係止されるだけであるので、従来のように、挿入糸を厚み方向に複数本用いることによる布帛目付の増加が抑えられると共に、耐圧性と地組織相互の優れたずれ防止性を有する立体構造経編地となる。
【図面の簡単な説明】
第1図は、立体構造経編地を模式的に示す概略斜視図である。
第2図は、第1図の立体構造経編地におけるコース方向の概略断面図を示す。
第3図は、第1図の立体構造経編地におけるウエル方向の概略断面図を示す。
第4図は、実施例1の立体構造経編地における組織図である。
第5図は、実施例2の立体構造経編地における組織図である。
第6図は、実施例3の立体構造経編地における組織図である。
第7図は、実施例4の立体構造経編地における組織図である。
第8図は、実施例5の立体構造経編地における組織図である。
第9図は、比較例1の立体構造経編地における組織図である。
第10図は、比較例2の立体構造経編地における組織図である。
第11図は、2列針床経編機(ダブル・ラッセル機)の編成主要部を示す概略図である。
第12図は、挿入糸と押さえ糸との関係を説明する図である。
【発明を実施するための最良の形態】
本発明の立体構造経編地は、表面地組織と裏面地組織、これらを相互に連結する連結糸、及び、連結糸間で地組織の内側に添って編成保持された挿入糸、とを主な構成部材とする立体構造経編地である。
そして、最適な耐圧性(耐圧縮性)と圧縮復元性を有し、地組織相互のコース方向および/またウエル方向のずれを効果的に防止でき、且つ柔軟性の低下がない特徴を持つ。
この立体構造経編地は、図11に示すように、2列針床経編機(ダブル・ラッシェル機)によって編成されることで得られる。
地糸A1は、筬L−1(図11ではL1と記載)に導入され、バック編針(バックニードル)BNにより裏面地組織Bを形成する。
挿入糸A2は筬L−2に導入され、バック編針BNにより裏面地組織Bの内側に添って押さえ糸A4によって編成係止される。
地糸A5、A6は、それぞれ筬L−5、L−6に導入され、フロント編針(フロントニードル)FNにより表面地組織Fを形成する。
連結糸A3は、筬L−3によりフロント編針FN、バック編針BNに案内されて表面地組織F、裏面地組織Bに順次編み込まれ、2者を連結する。
押さえ糸A4は、筬L−4によりフロント編針FNに案内されて、挿入糸A3を押さえ係止して裏面地組織Bに順次編み込まれる。
本発明の立体構造経編地はその構造を例示する第4図〜第6図の組織図にあるように、筬L−1の裏面地組織の内側に添って筬L−2の挿入糸が編成係止されている。
筬L−4の押さえ糸(鎖糸)は筬L−3の連結糸を跨いで編成され、筬L−2の挿入糸が筬L−4の押さえ糸によって裏面地組織に編成係止される。
第1図は、本発明の立体構造経編地を模式的に示す概略斜視図である。
立体構造経編地1の裏面地組織の内側に添ってウエル方向に挿入糸5(一点鎖線で示す)が編成されている状態を示す。
ここで表面地組織2は、開口部6を有する組織であり、この開口部6は筬L−1と筬L−2を編成する際、ラッピング運動の中で糸抜き部分を作ることで容易に形成される。
第2図は、第1図の立体構造経編地におけるコース方向の概略断面図を示す。
連結糸と連結糸の間で裏面地組織3の内側に添って挿入糸5が編成されている状態がより理解できる。
この状態は、コース方向に対して連結糸4を裏面地組織3の内側で挿入糸5で支えて拘束している状態である。
第3図は、第1図の立体構造経編地におけるウエル方向の概略断面図を示す。
挿入糸5が裏面地組織3の内側に添ってウエル方向に編成され、開口部6からその挿入糸5が視認できることが理解できる。
尚、第1図〜第3図においては、挿入糸が押さえ糸により裏面地組織に編成係止されている状態は示さなかった(この点は後述する)。
第1図〜第6図に示すように、本発明の立体構造経編地は、コース方向に編成された連結糸と連結糸の間で地組織の内側に添って挿入糸がウエル方向に表面地組織に編成係止されていることにより、連結糸が拘束される構造である。
そのため、連結糸の裏面地組織の側が動きにくくなり、連結糸同士が絡みにくくなる。
そして厚み方向に加重に対して優れた圧縮復元性を示すとともに、連結糸が倒れにくくなることで表面及び裏面の地組織が動きにくくなり、コース方向からの圧力に対しても優れたずれ防止性を示す。
以上の図においては、ウエル方向にのみ挿入糸が編成挿入されている場合を示したが、挿入糸は、コース方向、或いは、ウエル方向とコース方向の両方に編成することも当然可能である。
挿入糸をコース方向にのみ編成挿入した場合は、ウエル方向に対して連結糸を裏面地組織の内側で挿入糸が拘束している状態となる。
また両方向に挿入糸を編成した場合は、ウエル方向のみならずコース方向に荷重がかかっても地組織がずれることを防止できる。
なお、挿入糸の編成はすべての連結糸の間に配置してもよく、所定の間隔を置いて挿入してもよい。
例えば、第1図の立体構造経編地において、挿入糸5を一つ置き(例えば、挿入糸a、挿入糸bのように)のみ編成することも可能である。
本発明において用いられる一本の挿入糸の総繊度は、167dtex〜1400dtexが好ましく採用され、更に好ましくは、167dtex〜990dtexである。
167dtex未満であると、糸が撓みやすく連結糸を十分に支えることが難しくなる恐れがあり、また、1400dtexより太くなると布帛の風合いが硬くなり過ぎる恐れがある。
本発明の立体構造経編地においては、挿入糸は押さえ糸により地組織に編成係止されている。
第12図は、その挿入糸と押さえ糸との関係の例を説明する図である。
挿入糸が編成係止される部分において、挿入糸が押さえ糸により押さえられており、その2本の重なり部があることを示している(なお、この糸の振り方については、第4図の組織図における筬L−2の挿入糸、筬L−4の押さえ糸を参照)。
ここで、挿入糸の重なりは、2〜6本、好ましくは3〜5本であり、また、重なった挿入糸の総繊度は334〜8400dtexであることが好ましく、更に501〜7000dtexが好ましい。
総繊度が334dtex未満であると、糸が撓みやすく連結糸を十分に支えることが難しくなる恐れがあり、また、8400dtexより太くなると布帛の風合いが硬くなりすぎる恐れがある。
また、挿入糸として用いられる糸種は、ポリエステルなどの合成繊維のマルチフィラメント糸、モノフィラメント糸やその加工糸および紡績糸を用いることができる。
また、挿入糸として意匠糸などを使用することにより、表面地組織の開口部から裏面地組織の内側に添って編成されている挿入糸が視認でき特殊な意匠性を発揮できる上、表裏面地組織相互のずれの少ない立体構造経編地となる。
また、本発明の立体構造経編地において、下記の式1で算出される挿入密度(立体構造経編地の単位体積当たりの挿入糸の重量)は、耐圧性やずれ防止性の観点から、0.006〜0.4g/cmが採用され、好ましくは0.019〜0.18g/cmである。
挿入密度が0.006g/cmより小さいと挿入糸が連結糸を十分支えることができなくなり、耐圧性が悪くなったり、ずれ防止性が悪くなる恐れがあり、また、挿入密度が0.4g/cmより大きくなると風合いが硬くなったり、通気性が悪くなると共に、目付が増加する恐れがあるため好ましくない。
挿入密度=S/10000T ・・・(式1)
但し、S:1m当たりの挿入糸使用量(g)
T:立体構造経編地の厚み(cm)
【実施例】
次に本発明を実施例を挙げて例証するが、本発明は、この実施例に限定されるものではない。
実施例で用いた測定方法は下記の通りである。
・厚み保持率
7cm×7cmの大きさの厚み保持率確認試験材料を用意し、厚みの変化がわかり易いように4枚重ねて、その上に直径7cmの円柱型の5kgの重りを載せる。
この状態で、厚みの変化が出易いように100℃で2時間放置した。
2時間後、重りを取り除いた直後の厚みを試験後の厚みL2とし、重りを載せる前の厚みをL1として、厚み保持率(%)=L2/L1×100の値を得た。
○ 厚み保持率75%以上
△ 厚み保持率70〜75%未満
× 厚み保持率70%未満
なお、この厚み保持率は、耐圧性(耐圧縮性)を表す指標の一つである。
・ずれ防止性
7cm×7cmの大きさの厚み保持率確認試験材料を用意し、その上に直径7cmの円柱型の5kgの重りを載せる。
この状態のまま、マイクロスコープを使って、荷重を加える前と加えた後の、連結糸の状態を撮影する。
その際、印を付けたある一本の連結糸に注目して、荷重を加える前と加えた後の表裏地組織相互のずれ状態の差を写真上で測定した。
○ 連結糸のずれ幅7mm未満
△ 連結糸のずれ幅7〜10mm未満
× 連結糸のずれ幅10mm以上
【実施例1】
マイヤー社製ダブルラッセル編機RD6DPLM−77E−22Gを使用して第4図に示す組織図の立体構造経編地を作成した。
筬L−1で裏面地組織を編成し、筬L−5,L−6で開口部を有する表地組織を編成し、筬L−3の連結糸で連結し開口部の反対地組織内側(すなわち裏面地組織の内側)に添って950dtexの筬L−2の挿入糸を筬L−4の押さえ糸により編成係止して、仕上がり密度36コース:23ウエルで厚み3.0mmの立体構造体を作成した。
目付けは、550g/mであった。
挿入糸が編成係止されているウエル間の糸の重なりは2本でウエル間の糸の太さは1900dtexであった。
また、挿入密度は0.096g/cmであった。
性能を表1に示す。
【実施例2】
マイヤー社製ダブルラッセル編み機RD6DPLM−77E−22Gを使用して第5図に示す組織図の立体構造経編地を作成した。
筬L−1で裏面地組織を編成し、筬L−5,L−6で開口部を有する表地組織を編成し、筬L−3の連結糸で連結し裏面地組織の内側に添って1250dtexの筬L−2の挿入糸を筬L−4の押さえ糸により編成係止して編成し、仕上がり密度36コース:23ウエルで厚み3.0mmの立体構造体を作成した。
目付けは、580g/mであった。
挿入糸が編成係止されているウエル間の糸の重なりは最大3本でウエル間の糸の太さは3750dtexであった。
また、挿入密度は0.196g/cmであった。
性能を表1に示す。
【実施例3】
マイヤー社製ダブルラッセル編み機RD6DPLM−77E−22Gを使用して第6図に示す組織図の立体構造経編地を作成した。
筬L−1で裏面地組織を編成し、筬L−5,L−6で開口部地組織を編成し筬L−3の連結糸で連結し裏面地組織の内側に添って750dtexの筬L−2の挿入糸を筬L−4の押さえ糸により編成係止して編成し、仕上がり密度36コース:23ウエルで厚み3.0mmの立体構造体を作成した。
目付けは、560g/mであった。
挿入糸が編成係止されているウエル間の糸の重なりは最大4本でウエル間の糸の太さは3000dtexであった。
また、挿入密度は0.173g/cmであった。
性能を表1に示す。
【実施例4】
マイヤー社製ダブルラッセル編機RD6DPLM−77E−22Gを使用して第1図に示すように立体構造経編地を作成した。
筬L−1で裏面地組織を編成し、筬L−5,L−6で開口部を有する表地組織を編成し、筬L−3の連結糸で連結し開口部の反対地組織内側(すなわち裏面地組織の内側)に添って167dtexの筬L−2の挿入糸を筬L−4の押さえ糸により編成係止して、仕上がり密度36コース:23ウエルで厚み3.0mmの立体構造体を作成した。
目付けは、500g/mであった。
挿入糸が編成係止されているウエル間の糸の重なりは2本でウエル間の糸の太さは334dtexであった。
また、挿入密度は0.017g/cmであった。
性能を表1に示す。
【実施例5】
マイヤー社製ダブルラッセル編機RD6DPLM−77E−22Gを使用して第8図に示すように立体構造経編地を作成した。
筬L−1で裏面地組織を編成し、筬L−5,L−6で開口部を有する表地組織を編成し、筬L−3の連結糸で連結し裏面地組織の内側に添って1400dtexの筬L−2の挿入糸を筬L−4の押さえ糸により編成係止して編成し、仕上がり密度36コース:23ウエルで厚み3.0mmの立体構造体を作成した。
目付けは、600g/mであった。
挿入糸が編成係止されているウエル間の糸の重なりは最大4本でウエル間の糸の太さは5600dtexであった。
また、挿入密度は0.323g/cmであった。
性能を表1に示す。
〔比較例1〕
マイヤー社製ダブルラッセル編み機RD6DPLM−77E−22Gを使用して第9図に示す組織図の立体構造経編地を作成した。
裏面地組織と開口部を有する表地組織を編成し、連結糸で連結し、仕上がり密度36コース:23ウエルで厚み3.0mmの立体構造体を作成した。
目付けは、500g/mであった。
性能を表1に示す。
〔比較例2〕
マイヤー社製ダブルラッセル編み機RD6DPLM−77E−22Gを使用して第10図に示す組織図の立体構造経編地を作成した。
裏面地組織と開口部を有する表地組織を編成し連結糸で連結し、表裏面地組織の連結糸間に900dtexの糸を連結糸を地組織間の略中央部に浮遊するように挿入し仕上がり密度36コース:23ウエルで厚み3.0mmの立体構造体を作成した。
目付けは、650g/mであった。
また、挿入密度は0.044g/cmであった。
性能を表1に示す。
以上、説明してきたように、本発明は、実施の形態や実施例に拘束されることなく、その目的に沿う限り変更が可能である。
本発明の立体構造経編地の挿入糸は、裏面地組織の内側に添って編成係止されることにより、連結糸のコースおよび/またはウエル方向のずれを防止できる限り、その形態の変更は可能である。
【産業上の利用可能性】
本発明は、クッション材や充填材として衣料分野、特に車両用シート材等の産業資材分野で利用されている立体構造経編地に関するものであるが、その原理を逸脱しない限り建築用シート、医療用シート等の他の広範囲の分野に提要可能である。

【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】

【図10】

【図11】

【図12】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
表裏二面の地組織と該表裏二面の地組織を相互に連結する連結糸とからなる立体構造経編地において、連結糸間に挿入糸を有し、該挿入糸が裏面地組織の内側に添って編成係止されていることを特徴とする立体構造経編地。
【請求項2】
挿入糸は、押さえ糸により裏面地組織に編成係止されていることを特徴とする請求項1記載の立体構造経編地。
【請求項3】
挿入糸がコース方向および/またはウエル方向に挿入されていることを特徴とする請求項1記載の立体構造経編地。
【請求項4】
挿入糸が押さえ糸により編成係止されている部分において、挿入糸の重なりが2〜6本であり、それら全部の総繊度が334〜8400dtexであることを特徴とする請求項1記載の立体構造経編地。
【請求項5】
下記式1で示す挿入糸の挿入密度が、0.006〜0.4g/cmであることを特徴とする請求項1記載の立体構造経編地。
挿入密度=S/10000T ・・・(式1)
S:1m当たりの挿入糸使用量(g)
T:立体構造経編地の厚み(cm)
【請求項6】
表裏二面の地組織と該表裏二面の地組織を相互に連結する連結糸とからなる立体構造経編地を製造する方法であって、連結糸間に挿入糸を挿入し、該挿入糸を裏面の地組織の内側に添って押さえ糸によって編成係止することを特徴とする立体構造経編地の製造方法。

【国際公開番号】WO2004/088020
【国際公開日】平成16年10月14日(2004.10.14)
【発行日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−504227(P2005−504227)
【国際出願番号】PCT/JP2004/004449
【国際出願日】平成16年3月29日(2004.3.29)
【出願人】(000107907)セーレン株式会社 (462)
【Fターム(参考)】